説明

記録制御装置、記録制御方法、及び、プログラム

【課題】記録対象のデータに係るデータ処理と、記録動作に係る駆動部の制御とを効率よく実行し、データ処理が間に合わないことに起因する待ち時間の発生を抑える。
【解決手段】プリンター1を制御する制御部40は、記録媒体に記録する記録対象データを処理するデータ処理部52と、複数の駆動部を制御する駆動制御部53と、データ処理部52及び駆動制御部53の処理負荷に応じて、駆動制御部53による駆動部の制御を抑制する負荷管理部54と、を備え、負荷管理部54は、駆動制御部53が制御している駆動部の種類に応じて、駆動制御部53による制御を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置を制御する記録制御装置、記録制御方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録媒体に記録を行う記録装置は、記録するデータを画像展開する処理を行うとともに、記録媒体を搬送するモーター等の様々な駆動部を制御する(例えば、特許文献1参照)。例えば、特許文献1に記載の装置は、CPUによって画像展開の処理を行う一方でスキャナーモーターを制御する。この種の記録装置は、画像展開の処理に時間がかかるために駆動部を動作させるタイミングが遅れることがあった。このため、例えば特許文献1に記載の装置は、画像展開処理の実行中であってもスキャナーモーターを動作させるために、画像展開処理とは独立してスキャナーモーターの駆動制御を行う手段を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−289246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、記録装置が複数の駆動部を備える構成においては、個々の駆動部を独立して制御する手段を設けることは困難である。
その一方で、複数の駆動部の動作を制御しながら、画像展開等のデータ処理を行う場合には、データ処理が追いつかずに記録動作に待ち時間が発生してしまうという問題があった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、記録対象のデータに係るデータ処理と、記録動作に係る駆動部の制御とを効率よく実行し、データ処理が間に合わないことに起因する待ち時間の発生を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、記録媒体に記録する記録対象のデータを処理するデータ処理手段と、複数の駆動部を制御する駆動制御手段と、前記データ処理手段及び前記駆動制御手段の処理負荷に応じて、前記駆動制御手段による前記駆動部の制御を制限する負荷管理手段と、を備え、前記データ処理手段及び前記駆動制御手段は共通のCPUを用いて構成され、前記負荷管理手段は、前記駆動制御手段が制御している前記駆動部の種類に応じて、前記駆動制御手段による制御を制限することを特徴とする。
本発明によれば、処理負荷の高さに起因してデータ処理が追いつかずに記録が中断される等の事態を回避できる。また、駆動部の種類に応じて駆動部の制御を制限するので、記録品質に影響を与えるような駆動部については制御を制限しない等のきめ細かい制御を行える。データ処理と駆動部の制御とを共通のCPUを用いて実行するので、駆動部の制御を制限することによりデータ処理に要するリソースを確保できる。これにより、記録品質等に影響を与えることなく、記録対象のデータの処理が間に合わないことによる待ち時間を低減できる。また、限られたハードウェアを効率よく利用して記録することができる。
【0006】
また、本発明は、上記記録制御装置において、前記負荷管理手段は、前記データ処理手段が前記記録対象のデータを処理するのに要する時間をもとに、処理負荷が高いと判定した場合に、前記駆動制御手段による制御を制限することを特徴とする。
本発明によれば、データ処理に要する時間をもとに処理負荷の高さを正確に判定することができ、負荷が高い場合のみ駆動部の制御を制限してデータ処理を優先して実行させる。これにより、必要な場合にのみデータ処理に多くのリソースを割り当てて、速やかに必要なデータ処理を実行できるので、不要な動作の制限をすることがなく、スループットの低下を避けることができる。
【0007】
また、本発明は、上記記録制御装置において、前記データ処理手段は、前記記録対象のデータをバッファーメモリーに画像展開する処理を実行するものであり、前記負荷管理手段は、前記バッファーメモリーに展開されたデータ量をもとに、処理負荷が高いと判定した場合に、前記駆動制御手段による制御を制限することを特徴とする。
本発明によれば、バッファーメモリーに展開されたデータ量をもとに処理負荷を正確に判定でき、負荷が高い場合のみ駆動部の制御を制限してデータ処理を優先して実行させる。これにより、必要な場合にのみデータ処理に多くのリソースを割り当てて、速やかに必要なデータ処理を実行できるので、不要な動作の制限をすることがなく、スループットの低下を避けることができる。
【0008】
また、本発明は、上記記録制御装置において、前記駆動手段は、前記記録媒体を搬送する搬送モーターを含み、前記負荷管理手段は、処理負荷が高いと判定した場合に、前記駆動制御手段による前記搬送モーターの制御を制限することを特徴とする。
本発明によれば、停止しても記録品質に影響を与えにくい搬送モーターの制御を制限することで、データ処理に多くのリソースを割り当てて、速やかにデータ処理を実行できる。
【0009】
また、本発明は、上記記録制御装置において、前記駆動部には、前記記録媒体に記録を行う記録ヘッドのメンテナンスを行う駆動部が含まれ、前記負荷管理手段は、前記記録ヘッドのメンテナンスを行う駆動部の制御を制限しないことを特徴とする。
本発明によれば、記録ヘッドのメンテナンスに係る動作を制限しないので、記録品質に影響を与えないように、データ処理を優先して実行できる。
【0010】
また、上記目的を達成するために、本発明は、記録媒体に記録する記録対象のデータを処理するデータ処理と、複数の駆動部を制御する駆動制御処理と、前記データ処理及び前記駆動制御処理の処理負荷に応じて、前記駆動制御処理を制限する負荷管理処理を実行し、前記負荷管理処理において、前記駆動制御処理により制御されている前記駆動部の種類に応じて、前記駆動制御処理を制限することを特徴とする。
本発明の制御方法を記録装置に適用することにより、処理負荷の高さに起因してデータ処理が追いつかずに記録が中断される等の事態を回避できる。また、駆動部の種類に応じて駆動部の制御を制限するので、記録品質に影響を与えるような駆動部については制御を制限しない等のきめ細かい制御を行える。これにより、記録品質等に影響を与えることなく、記録対象のデータの処理が間に合わないことによる待ち時間を低減できる。
【0011】
本発明は、上記記録制御方法において、前記記録媒体を搬送する搬送モーターを制御する処理を含み、前記負荷管理処理において、前記搬送モーターの制御を制限することを特徴とする。
本発明によれば、停止しても記録品質に影響を与えにくい搬送モーターの制御を制限することによって処理負荷を軽減し、これによりデータ処理に多くのリソースを割り当てることができ、速やかにデータ処理を実行できる。
【0012】
また、上記目的を達成するために、本発明は、記録装置を制御する制御部によって実行可能なプログラムであって、前記制御部により、記録媒体に記録する記録対象のデータを処理するデータ処理と、前記記録媒体を搬送する搬送モーターを含む駆動部を制御する駆動制御処理と、前記データ処理及び前記駆動制御処理の処理負荷に応じて、前記駆動制御処理を制限するとともに、前記駆動制御処理により制御されている前記駆動部の種類に応じて、前記駆動制御処理を制限する負荷管理処理とを実行するためのプログラムであることを特徴とする。
本発明のプログラムを実行することにより、処理負荷の高さに起因してデータ処理が追いつかずに記録が中断される等の事態を回避できる。また、駆動部の種類に応じて駆動部の制御を制限するので、記録品質に影響を与えるような駆動部については制御を制限しない等のきめ細かい制御を行える。これにより、記録品質等に影響を与えることなく、記録対象のデータの処理が間に合わないことによる待ち時間を低減できる。
【0013】
また、本発明は、上記のプログラムをコンピューターにより読み取り可能に記録した情報記録媒体として実現することも可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、記録品質に影響を与えることなく、記録対象のデータの処理が間に合わないことに起因する待ち時間を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係るプリンターの構成を示す斜視図である。
【図2】プリンターの概略縦断面図である。
【図3】ヘッドクリーニング部の構成を示す要部縦断面図である。
【図4】プリンターの制御系の構成を示すブロック図である。
【図5】プリンターの制御系の機能ブロック図である。
【図6】プリンターの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明を適用した実施形態について説明する。
図1は実施形態に係るプリンター1の構成を示す斜視図である。この図1には、プリンター1の前面カバーを全開にした状態の外観を示している。また、図2はプリンター1の内部構造を示す概略縦断面図であり、外装ケース1aを取り外した状態で示してある。
【0017】
プリンター1は、ロール状に巻かれたロール紙7を記録媒体として用い、このロール紙7の記録面にインクを吐出して記録(印刷)する、いわゆるインクジェット式のロール紙プリンターとして構成されている。プリンター1は、全体としてほぼ直方体形状をした外装ケース1aを備えており、その前面には所定幅の排出口2が形成されている。排出口2の下側には排紙ガイド3が前方に突出しており、当該排紙ガイド3の側方には開閉レバー4が配置されている。外装ケース1aにおける排紙ガイド3および開閉レバー4の下側には矩形の開口部が形成され、この開口部は前方に開く前面カバー5で封鎖されている。
開閉レバー4を操作して不図示の蓋ロック機構を解除して、排紙ガイド3を前方に引くと、図1に示すように、前面カバー5が下端部を中心として前方にほぼ水平となるまで開く。前面カバー5を開くと、プリンター内部に形成されているロール紙収容部6が開放状態となり、プリンター前方からロール紙7の交換作業などを行うことができる。ここで、ロール紙収容部6の右側の側壁部分61には、ロール紙7の残りが少なくなった状態(以下、「ニアエンド」と称する)を検出するためのニアエンド検出器30が取り付けられている。
【0018】
プリンター1の内部に形成されているロール紙収容部6は、ロール紙7を転動可能な状態で保持するロール紙ホルダー8を備えている。ロール紙収容部6の上方における後側の部位にはプリンター1の前後方向に水平に記録紙ガイド9が配置されている。記録紙ガイド9の前側には、一段高い位置においてプリンター前後方向に水平に、プラテンガイド10が配置されている。プラテンガイド10の真上には、記録ヘッド11が配置されている。記録ヘッド11のノズル面11aは、プラテンガイド10の上面10aに対して一定のギャップで対峙しており、当該上面10aによって印字位置が規定されている。
【0019】
印字位置を規定しているプラテンガイド10と、記録紙ガイド9との間には、第1紙送りローラー12がプリンター幅方向に水平に架け渡されている。第1紙送りローラー12には下側から所定幅の第1紙押さえローラー13が所定の押圧力で押し付けられている。第1紙押さえローラー13は、ベルト・プーリー式の伝達機構を介して搬送モーター65(図4)によって駆動される。プラテンガイド10における前端側の部位には、第2紙送りローラー16が配置されている。第2紙送りローラー16には、上側から第2紙押さえローラー17が押し付けられている。
【0020】
記録ヘッド11はキャリッジ18に搭載されており、キャリッジ18は、プリンター幅方向に水平に延びるキャリッジガイド軸19に沿ってプリンター幅方向(印字幅方向)に移動可能な状態で支持されている。キャリッジ18はプリンター幅方向に架け渡したタイミングベルト20に連結されており、タイミングベルト20はキャリッジ駆動モーター21によって駆動される。キャリッジ駆動モーター21を駆動すると、キャリッジ18に搭載されている記録ヘッド11がプリンター幅方向に移動し、この移動に同期して記録ヘッド11が駆動されて、ロール紙7から繰り出されて印字位置を通過する記録紙7aの表面(記録面)に印字が行われる。
【0021】
記録ヘッド11には、ロール紙収容部6の側方に配置されているインクカートリッジ収容部に収納されているインクカートリッジ37からインクチューブを介してインクが供給されるようになっている。インクカートリッジ37は、複数の色ごとにインクを貯留するものであり、例えば黒色のインクを貯留する黒インクタンク37Aおよび赤色のインクを貯留する赤インクタンク37Bを備えている。
【0022】
一方、図2に示すように、排出口2にはカッターユニット22が配置されている。カッターユニット22の固定刃23は上向き状態で垂直に配置されており、その可動刃24は下向きで垂直に配置されている。可動刃24は可動刃駆動機構25を介してカッター駆動モーター26に連結され、カッター駆動モーター26の回転動作により、可動刃24がプリンター幅方向の一方の端を支点として上下方向に旋回する。この可動刃24の動作により可動刃24と固定刃23との接触点がプリンター幅方向に移動して、記録紙7aを切断する。
【0023】
プリンター1では、図2において太い一点鎖線で示すように、ロール紙収容部6に収納されているロール紙7から引き出された記録紙7aが、記録紙ガイド9によってガイドされ、第1紙送りローラー12および第1紙押さえローラー13の間からプラテンガイド10の上面10aを経由して第2紙送りローラー16および第2紙押さえローラー17の間を通って排出口2から外部に引き出された状態にセットされる。
【0024】
この状態で第1紙送りローラー12および第2紙送りローラー16が回転すると、記録紙7aの搬送が開始される。記録紙7aの搬送に同期させて記録ヘッド11が駆動され、印字位置を通過する記録紙7aの表面に印字が行われる。例えば、印字後の記録紙7aが排出口2から排出された状態で搬送が停止し、カッターユニット22によって記録紙7aが切断され、所定長さの印字済みの記録紙片が、レシートあるいはクーポンとして発行される。
【0025】
プリンター1は、記録ヘッド11を搭載したキャリッジ18が、キャリッジ駆動モーター21の駆動力により、キャリッジガイド軸19に沿って図1中に符号Xで示すように往復走査される。この動作により記録ヘッド11はロール紙7の記録面上を、ロール紙7の幅方向に移動する。従って、記録ヘッド11を走査させながらインクを吐出させ、ロール紙7を長手方向(図2中の一点鎖線)に搬送することで、ロール紙7の記録面全体に文字、記号、画像等を記録できる。
【0026】
プリンター1の本体内部において、キャリッジ18の走査範囲の一端には図示しないホームポジションが設けられている。このホームポジションはロール紙7が搬送される領域から外れた位置にあり、記録ヘッド11が記録を行わない待機状態において記録ヘッド11を収容する場所となっている。
【0027】
図3は、ホームポジションに配置されるヘッドクリーニング部27の構成を示す要部縦断面図であり、記録ヘッド11およびヘッドキャップ28が正対している状態を示す部分断面図である。
ホームポジションには、記録ヘッド11のノズル先端の乾燥を防止するため、ノズル面11aを封止するヘッドキャップ28が配置されている。ヘッドキャップ28は、封止面28aの縁部28bが垂直に立ち上がっている箱型状であり、ゴムなどの弾力性のある素材で形成されている。ノズル面11aのノズル形成部分を縁部28bで囲むように覆いながら、ノズル面11aに密着させることが可能な大きさおよび形状である。
封止面28aおよび縁部28bで囲まれる凹部28c内には、ポンプモーター67(図4)から延びる吸引用チューブが接続されている。縁部28bをノズル面11aに密着させた状態でポンプモーター67が作動すると、ポンプモーター67の吸引力により凹部28cとノズル面11aで囲まれた密閉空間が減圧され、記録ヘッド11の各ノズルに残留しているインクが吸引されて凹部28c内に吐出される。
ヘッドキャップ28は、ノズル面11aに対して接離可能に移動可能となっており、このヘッドキャップ28を動かす動力源として、プリンター1はキャップ駆動モーター68(図4)を備えている。
【0028】
ヘッドクリーニング部27には不良ノズルを検出するためのノズルチェック機構が備わっている。すなわち、凹部28c内には、吐出された廃インクを吸収するための吸収材28dが配置されていると共に、吸収材28dと電気的に導通するように導電材28eが取り付けられている。導電材28eを流れた電気信号は配線などによって取り出され、後述する制御部40(図4)に入力される。このため、制御部40によって、記録ヘッド11の各ノズルから帯電したインク液滴を吐出して、帯電したインク液滴が吸収材28dに着弾する際に生じる電流変化の信号を取り出すことができる。記録ヘッド11がインク液滴を吐出したにも関わらず、この信号が所定の閾値以下の場合、ノズルの吐出不良と判断することができる。
すなわち、記録ヘッド11のノズルから帯電したインク液滴を吐出し、このインク液滴が凹部28c内の吸収材28dに着弾する際の電流変化の信号に基づき、ノズルからのインク液滴の吐出状態を検査する。ノズルチェック処理の際には、ノズル面11aとヘッドキャップ28における縁部28bの上端との隙間L1、および、ノズル面11aと吸収材28dの表面との隙間L2が所定寸法になるようにヘッドキャップ28を位置決めし、この状態で、記録ヘッド11とヘッドキャップ28が所定の電位差になるように、記録ヘッド11側を接地し、ヘッドキャップ28側に電圧を印加し所定の電界状態にする。記録ヘッド11から吐出したインクは、この電界により着弾するまでに所定量の電荷を帯電する。インクが着弾すると帯電した電荷が導電材28eに流れる。このようにすると、インク液滴の吐出状態を精度良く検査することができる。
なお、不良ノズルの検出方法としては、上記の例のほか、吐出したインク滴をレーザーなど光学的な手段で検出する方法がある。
【0029】
図4は、プリンター1にホストコンピューター100を接続して構成される記録システム200の機能的構成を示すブロック図である。
記録装置としてのプリンター1は、通信ケーブル等を介してホスト装置としてのホストコンピューター100に接続される。記録システム200は、例えばスーパーマーケット等の小売店や飲食店等に設置されるPOSとして機能する。この場合、プリンター1は、ホストコンピューター100から送信される記録対象データに基づいて、レシートやクーポンを記録及び出力する。
この記録システム200をPOSシステムに用いる場合には、例えば購入商品名や購入金額等の決済情報を含む記録対象データがホストコンピューター100からプリンター1に送信される。このホストコンピューター100は、画像や映像等を表示するディスプレイやユーザーにより操作されるキーボード等を備えたコンピューターシステムにより構成される。
【0030】
プリンター1は、CPU41、フラッシュROM42及びRAM43を備えた制御部40を備えて構成されている。制御部40は、フラッシュROM42に記憶された制御プログラムをCPU41により実行して、プリンター1の各部を中枢的に制御する。また、制御部40は、CPU41がプログラムを実行することで、制御部40としての各種の機能を実現する。
制御部40は通信インターフェース(I/F)46を介して、ホストコンピューター100に接続される。制御部40は、ホストコンピューター100が送信したから記録対象の記録対象データ、記録実行を指示するコマンドなどを通信インターフェース46によって受信する。また、制御部40には、入力部44及び表示部45が接続される。入力部44は、操作パネルのスイッチ等に対するユーザーの操作を検出して、当該操作に対応する操作信号を制御部40に出力する。また、表示部45は、上記操作パネルに設けられたLEDを、制御部40の制御に従って点灯、消灯、点滅させる。
【0031】
制御部40の入力側には、ニアエンド検出器30の検出状態をデジタルデータとして出力するニアエンド検出部69と、ヘッドクリーニング部27に設けられたヘッドキャップ28の導電材28eに接続され、インクの着弾を検出するインク検出部62とが接続される。制御部40は、ニアエンド検出部69からの入力に基づいてロール紙収容部6の残量が十分か否かを判別し、また、ノズルチェックを実行する際にはインク検出部62からの入力に基づいて記録ヘッド11の不良ノズルを検出する。
また、制御部40には、インクカートリッジ37のインクの残量を検出し、検出した残量を色ごとに示す検出信号を制御部40に入力するインク残量検出装置(図示略)を接続してもよい。
【0032】
制御部40には、プリンター1が備える各モーターを動作させるドライバー64が接続されている。ドライバー64は、制御部40の制御に従って、各モーターに駆動電流を供給するとともに、駆動パルスを出力する等してモーターを回転させる。
ドライバー64には、それぞれ種類の異なる複数の駆動部が接続されている。例えば、駆動部として、キャリッジ18を往復走査させるキャリッジ駆動モーター21、第1紙送りローラー12、第2紙送りローラー16を回転させてロール紙7を搬送する搬送モーター65、搬送モーター65の動力を切り替える搬送部アクチュエーター66、ヘッドキャップ28を介してインクを吸引するポンプモーター67、ヘッドキャップ28を上昇及び下降させ、ノズル面11aをヘッドキャップ28で封止し、或いは封止を解除するキャップ駆動モーター68、及び、カッターユニット22を動作させてロール紙7を切断するカッター駆動モーター26が、ドライバー64に接続されている。
【0033】
搬送部アクチュエーター66は、搬送モーター65の駆動力を第1紙送りローラー12及び第2紙送りローラー16に伝達する機構の切換を実行する1または複数のアクチュエーターである。搬送部アクチュエーター66は、例えば、ロール紙7を搬送する方向を、排出口2側(正方向)と、ロール紙収容部6内部側(逆方向)とに切り替える切替用のアクチュエーター(例えば、ソレノイド等)を含む。また、例えば、第1紙押さえローラー13を第1紙送りローラー12に接離する方向に移動させて、第1紙送りローラー12と第1紙押さえローラー13でロール紙7を挟持する状態と、ロール紙7の挟持を解除した状態とを切り替えるアクチュエーターを含む。同様に、第2紙送りローラー16と第2紙押さえローラー17とを接離させるものを含んでもよい。
これらの各モーター及びアクチュエーターは、ドライバー64を介して制御部40により制御され、動作する。
【0034】
図5は、プリンター1の制御系の機能ブロック図であり、特に、制御部40の機能的構成を示す。
上述したように、制御部40(記録制御装置)は、CPU41が所定のプログラムを実行することにより、プリンター1を制御するための各種の機能部を構成する。この機能部としては、プリンター1による記録動作全体を制御する記録制御部51、記録するデータを処理するデータ処理部52(データ処理手段)、駆動部としての記録ヘッド11及び上記各種モーターを制御する駆動制御部53(駆動制御手段)、データ処理部52及び駆動制御部53の負荷の算出や判定を行う負荷管理部54(負荷管理手段)、ホストコンピューター100から受信したコマンドやデータを一時的に格納する受信バッファー57、及び、データ処理部52が記録ヘッド11で記録を行うための画像データを展開するプリントバッファー58がある。
記録制御部51、データ処理部52、駆動制御部53、及び負荷管理部54は、CPU41によりプログラムを実行することで実現される。このプログラムは、フラッシュROM42に記憶されている。また、受信バッファー57及びプリントバッファー58は、RAM43の記憶領域の一部に設けられる。
【0035】
駆動制御部53は、記録ヘッド11を制御するための制御部である記録ヘッド制御部53A、キャリッジ駆動モーター制御部53B、搬送モーター制御部53C、搬送部アクチュエーター制御部53D、ポンプモーター制御部53E、キャップ駆動モーター制御部53F、カッター駆動モーター制御部53Gを有する。記録ヘッド制御部53Aは、記録制御部51の制御に従って、ヘッドドライバー63を介して記録ヘッド11の動作を制御する。具体的には、記録ヘッド11が備える複数のノズルからのインクの吐出を制御する。
キャリッジ駆動モーター制御部53Bは、ドライバー64を介して、キャリッジ駆動モーター21の回転、増速、減速のタイミング及び回転方向を制御する。搬送モーター制御部53Cは、ドライバー64を介して、上述した搬送部アクチュエーター66の動作を制御し、例えば動作するアクチュエーターを指定し、動作方向、動作量、及び、動作開始と動作終了のタイミングを制御する。
ポンプモーター制御部53Eは、ヘッドキャップ28(図4)からインクを吸引するポンプモーター67に対し、ドライバー64を介して、吸引開始と停止のタイミングを制御する。キャップ駆動モーター制御部53Fは、ドライバー64を介してキャップ駆動モーター68の動作方向及び動作開始/停止のタイミングを制御する。同様に、カッター駆動モーター制御部53Gは、カッター駆動モーター26の回転方向、回転量、回転開始及び停止のタイミングを制御する。
【0036】
記録制御部51は、通信インターフェース46を介してホストコンピューター100(図4)から受信したコマンド及び記録対象データを取得し、受信順に受信バッファー57に格納する。記録制御部51は、受信バッファー57に格納されたコマンドを受信順に読み出して実行し、記録実行を指示するコマンドである場合には、受信バッファー57から記録対象データを読み出して、データ処理部52によって処理させる。データ処理部52は、受信バッファー57の記録対象データをビットマップに展開して、プリントバッファー58の記憶領域に展開する。記録制御部51は、データ処理部52が展開したデータに基づいて、駆動制御部53によって記録ヘッド11を制御させる。駆動制御部53は、搬送モーター制御部53Cにより搬送モーター65を制御して、ロール紙7を搬送させ、キャリッジ駆動モーター制御部53Bによりキャリッジ駆動モーター21を制御してキャリッジ18を走査させ、記録ヘッド制御部53Aにより記録ヘッド11を制御してインクを吐出させる。この動作を実行することで、ロール紙7の記録面に記録がなされる。
【0037】
また、記録制御部51は、記録ヘッド11のインク吐出開始から、予め設定された時間が経過すると、記録ヘッド11のフラッシングを実行する。記録制御部51の制御に従い、駆動制御部53は、キャリッジ駆動モーター制御部53Bによってキャリッジ駆動モーター21を動作させてキャリッジ18をホームポジションに移動させる。駆動制御部53は、記録ヘッド制御部53Aにより記録ヘッド11を制御し、ノズル面11aに開口する各ノズル孔からインクを吐出させる。ここで、駆動制御部53はポンプモーター制御部53Eの制御によりポンプモーター67を動作させて、吐出されたインクを吸引して、図示しない廃インクタンクに回収する。
記録ヘッド11による記録が終了すると、駆動制御部53は、搬送モーター制御部53Cにより搬送モーター65を駆動してロール紙7を搬送し、カッター駆動モーター制御部53Gによりカッター駆動モーター26を動作させてロール紙7をカットするとともに、キャリッジ駆動モーター制御部53Bによりキャリッジ駆動モーター21を動作させて記録ヘッド11をホームポジションに移動させ、キャップ駆動モーター制御部53Fによりキャップ駆動モーター68を動作させてノズル面11aにヘッドキャップ28をかぶせる。
【0038】
記録制御部51は、駆動制御部53が記録ヘッド11及び各モーターを駆動している間も、受信バッファー57から記録対象データを読み出して、データ処理部52によって画像展開する処理を実行させる。
ところで、制御部40のデータ処理部52及び駆動制御部53は、共通のハードウェアリソースであるCPU41(図4)及びRAM43(図4)を用いている。このため、データ処理部52が記録対象データを画像展開する処理と、駆動制御部53が記録ヘッド11及び各モーターを制御する処理との両方の処理負荷が集中すると、CPU41の処理能力に対して負荷が大きくなる。その結果、記録ヘッド11による記録が終了した後で、次に記録すべき記録対象データの展開が終了していないといった事態が起こり得る。このような事態が発生した場合、記録対象データの展開が進行するまで記録ヘッド11をホームポジションで停止して待機するので、待ち時間が発生する。
そこで、本実施形態のプリンター1は、共通のハードウェアリソースを使用するデータ処理部52及び駆動制御部53の負荷に応じて適切な処理を実行し、待ち時間を減らすため、負荷管理部54を備えている。
【0039】
負荷管理部54は、CPU41が実行するプログラム毎、或いは機能ブロック毎のCPU占有率を算出するCPU占有率算出部54Aと、CPU処理時間を測定するCPU処理時間測定部54Bと、データ処理部52がプリントバッファー58に展開しているデータのデータ量を検出する処理データ量検出部54Cとを備えている。
CPU占有率算出部54Aが求める占有率は、CPU41が複数の機能部を実現する場合に、各機能部に係る処理にCPU41の処理能力が使用される時間の割合を求めたものである。CPU占有率算出部54Aは、CPU処理時間測定部54Bが実際のCPU41の処理時間を測定し、この測定された時間に基づいて占有率を求める。なお、CPU占有率算出部54Aは、データ処理部52,駆動制御部53及び負荷管理部54の各々について、占有率を求めてもよいし、これら各機能部に関連して実行するプログラムの実行時間の割合から占有率を求めてもよい。
【0040】
また、予め、駆動制御部53の各制御部に対応づけて、各制御部の機能を実行する場合のCPU41の処理時間をフラッシュROM42に記憶しておいても良い。この場合の処理時間は、駆動制御部53の制御部毎に記憶していても良いし、より詳細に、制御部毎、かつ制御の内容毎に記憶していてもよく、具体的にはテーブル形式でデータを記憶することが考えられる。
処理データ量検出部54Cは、データ処理部52が記録対象データの画像展開処理を実行している場合に、プリントバッファー58に格納されている画像データのデータ量を検出する。また、処理データ量検出部54Cは、プリントバッファー58の画像データのデータ量の変化に基づき、データ処理部52がデータを展開する速度を求めることも可能である。
【0041】
負荷管理部54は、データ処理部52の処理負荷を判定するためのしきい値を記憶している。このしきい値は、具体的にはフラッシュROM42に予め記憶されている。負荷管理部54は、例えば以下の方法により、CPU41の負荷を求める。
【0042】
第1の方法:プリントバッファー58に展開された画像データのサイズ及び/またはデータ処理部52が画像データを展開する速度を求め、しきい値と比較する。
第2の方法:データ処理部52に係る処理のCPU占有率をしきい値と比較する。
第3の方法:制御を実行している駆動制御部53の制御部を特定し、予め記憶している各制御部の処理負荷を集計して処理負荷を求め、しきい値と比較する。
【0043】
第1の方法によれば、実際にデータ処理部52の処理状態に合わせて負荷の軽減を図ることができるという利点がある。記録対象データのデータ量は一様ではないため、駆動制御部53の処理負荷がデータ処理部52の処理に与える影響も一様ではない。第1の方法では、データ処理部52の処理負荷が低い場合は駆動制御部53の制御を制限(抑制)しなくて済み、データ処理部52の処理負荷が高い場合は多くの制御部に制限を加えることができる。これにより、必要な分だけ制御に制限を加えることによって、処理負荷に合わせて適正にリソースを分配し、スループットの向上を図ることができる。
第2の方法によれば、データ処理部52のCPU占有率をもとに駆動制御部53の制御を制限するので、常に一定以上のリソースをデータ処理部52に割り当てることができる。このため、駆動制御部53よりもデータ処理部52を常に優先させることができ、安定した動作の実現に寄与する。
第3の方法によれば、駆動制御部53の各制御部のうち制御を行っているものを特定し、各制御部に対応づけて予めフラッシュROM42に記憶した係数または定数を集計するだけで、処理負荷の高さを速やかに判定できるという利点がある。
負荷管理部54は、上記第1〜第3の方法のいずれかを、随時選択し、或いは設定された方法を用いて、CPU41の処理負荷の高さに起因してデータ処理部52の処理に遅れを生じているか否かを正確に判定できる。
【0044】
そして、負荷管理部54は、データ処理部52の処理が遅延等の影響を受けていると判定した場合に、CPU41の負荷を軽減してデータ処理部52に係る処理を優先的に実行するため、駆動制御部53の動作を制限する。
すなわち、駆動制御部53が有するキャリッジ駆動モーター制御部53B、搬送モーター制御部53C、搬送部アクチュエーター制御部53D、ポンプモーター制御部53E、キャップ駆動モーター制御部53F、及びカッター駆動モーター制御部53Gが記録ヘッド11及び各モーターを制御する処理を制限する。この制限は、負荷管理部54がデータ処理部52の処理に遅れを生じていると判定してから、データ処理部52の処理の遅れが解消または軽減するまで、或いは、データ処理部52の処理の速度が所定レベルに回復するまでの間、行われる。
【0045】
この制限の内容は、制御部の制御対象によって異なる。
例えば、キャリッジ駆動モーター制御部53Bに対しては、記録ヘッド11からインクを吐出して記録している間は制限を加えないが、記録ヘッド11がインクを吐出していない間はキャリッジ駆動モーター制御部53Bの制御を制限して、キャリッジ駆動モーター21を停止させたり、キャリッジ駆動モーター21の加速または減速をしないで一定速度で回転させたりする。具体的には、記録ヘッド11によるインクの吐出が終了してキャリッジ18をホームポジションへ移動する間、或いは、記録ヘッド11を記録開始位置に運ぶためキャリッジ駆動モーター21を加速する間等に制限を加える。
また、例えば、搬送モーター制御部53Cに対して、負荷管理部54は、キャリッジ駆動モーター21が動作していない間や、記録ヘッド11がインクを吐出していない間は、搬送モーター制御部53Cにより搬送モーター65を停止させる制限を行う。キャリッジ駆動モーター21の停止中や記録ヘッド11がインクを吐出していない間は、単にロール紙7を繰り出し、或いは巻き取る動作であるから、停止しても記録品質に影響を与えない。
【0046】
また、搬送部アクチュエーター制御部53Dが制御を行っている場合には、負荷管理部54は、搬送モーター制御部53Cの制御とともに制限を加える。この場合、搬送モーター65とともに搬送部アクチュエーター66が一時停止される。搬送部アクチュエーター66が停止しても記録品質に影響を与えないのは、搬送モーター65と同様の理由による。負荷管理部54は、カッター駆動モーター制御部53Gの制御に対しては、カッター駆動モーター26の動作を停止させる、或いはカッター駆動モーター26の動作開始を遅延させる制限を行う。この制御はロール紙7をカットする動作が止まるだけで、記録品質に影響を及ぼさない。
【0047】
負荷管理部54は、ポンプモーター制御部53Eの制御に対しては、記録ヘッド11のクリーニングを実行している間を除き、ポンプモーター67を停止させることで制限を行う。ヘッドキャップ28(図4)は所定量のインクを貯留できるため、インク検出部62を利用したノズルチェックの動作や、フラッシングにより吐出されたインクが溢れることはない。しかしながら、記録ヘッド11のノズルのクリーニングでは、比較的多量のインクが吐出される。さらに、クリーニング中にポンプモーター67の吸引力によりノズルのつまりを解消することもある。負荷管理部54は、記録ヘッド11のクリーニング中を除き、制御を制限するので、記録ヘッド11のメンテナンスに影響を及ぼさない範囲でCPU41の負荷を軽減する。
【0048】
これに対し、負荷管理部54は、記録ヘッド制御部53Aの制御を制限することはない。記録ヘッド制御部53Aは記録ヘッド11のインクの吐出を制御するので、該当する動作は記録動作、フラッシング、ノズルチェック、クリーニング動作等である。これらの動作はいずれも記録品質または記録ヘッド11の状態に影響を及ぼす。また、ノズルチェックやクリーニングを中断すればキャップ駆動モーター制御部53Fによりキャップ駆動モーター68を動作させ、ヘッドキャップ28によりノズル面11aを封止することになり、かえってスループットの低下を招きかねない。このため、記録ヘッド制御部53Aは、負荷管理部54が制御を制限する対象から除外されている。
但し、例えば記録動作のように、搬送モーター制御部53Cによる搬送モーター65の制御など他の制御部の制御と記録ヘッド制御部53Aの制御とが一つのシーケンスを構成する場合には、当該他の制御部の制御が負荷管理部54によって制限されることで、記録ヘッド制御部53Aの制御の開始タイミングが遅れることがある。この場合は、記録ヘッド制御部53Aが記録ヘッド11の制御を中断する場合とは異なり、記録品質に影響を与える虞はない。
負荷管理部54が駆動制御部53の各制御部の制御を制限する内容は、制御部毎に、予め設定されており、フラッシュROM42に記憶されている。負荷管理部54は、この設定に従って各制御部の制御を制限する。
【0049】
図6は、プリンター1の動作を示すフローチャートであり、詳細には、負荷管理部54がCPU41の処理負荷を軽減するための動作を示す。この動作は、記録動作やクリーニング動作等、駆動制御部53の制御部の制御に基づいて各駆動部が動作している間に繰り返し実行される。
負荷管理部54は、上述した第1〜第3のいずれか、或いは他の処理負荷の判定方法により、CPU41の処理負荷を求め(ステップS11)、処理負荷が過大になっているか否かを判定する(ステップS12)。ここで、処理負荷が過大であると判定した場合(ステップS12;Yes)、負荷管理部54は、駆動制御部53が備える各制御部のうち、制御を実行している制御部を特定する(ステップS13)。このステップS12では、複数の制御部が駆動部を制御している場合には、その全ての制御部を特定する。また、他の制御部の制御が完了するのを待機している、アイドル中の制御部も、制御を実行しているものとして特定する。
【0050】
負荷管理部54は、制御を実行中の制御部のうち、制御を制限可能な制御部があるか否かを判別する(ステップS14)。このステップS13では、ステップS12で特定した制御部のうち、記録ヘッド制御部53Aのように制限の対象から除外された制御部、及び、すでに制限が課された制御部を除いて、新たに制限を加えることが可能な制御部の有無を判別する。
そして、制限を加えることが可能な制御部がある場合は(ステップS14;Yes)、負荷管理部54はフラッシュROM42に記憶された設定情報に従って一つまたは複数の制御部を選択して制限を加え(ステップS15)、本処理を終了する。ステップS14で、制限を加えることが可能な制御部が複数ある場合に、ステップS15でいずれかの制御部を選択して制限を加えても良い。この場合、どの制御部を選択するかの基準として、処理負荷が高い制御を行っている制御部を優先して、制限を加えてもよい。また、どの制御部を優先するかの優先順位を制御部毎に予め設定しておいても良い。
負荷管理部54は、駆動制御部53が動作している間、ステップS11以後の処理を所定時間おきに繰り返し実行する。
また、新たに制限を加えることが可能な制御部がない場合は(ステップS14;No)、負荷管理部54は本処理を終了する。
【0051】
一方、処理負荷が過大でないと判定した場合(ステップS12;No)、負荷管理部54は、駆動制御部53が備える各制御部のうち、制御が制限されている制御部の有無を判別する(ステップS16)。制限を加えられている制御部がある場合は(ステップS16;Yes)、負荷管理部54は制限中の一つまたは複数の制御部を選択して制限を解除し(ステップS17)、本処理を終了する。
ステップS16で、制限を加えられた制御部が複数ある場合に、ステップS17でいずれかの制御部を選択して制限を解除しても良い。この場合、どの制御部を選択するかの基準として、処理負荷が低い制御を行っている制御部から順に制限を解除してもよいし、どの制御部を優先するかの優先順位を制御部毎に予め設定しておいても良い。
制限中の制御部がない場合は(ステップS16;No)、負荷管理部54は本処理を終了する。
【0052】
以上説明したように、本発明を適用した実施形態に係るプリンター1を制御する制御部40は、ロール紙7に記録する記録対象データを処理するデータ処理部52と、複数の駆動部を制御する駆動制御部53と、データ処理部52及び駆動制御部53の処理負荷に応じて、駆動制御部53による駆動部の制御を抑制する負荷管理部54と、を備え、負荷管理部54は、駆動制御部53が制御している駆動部の種類に応じて、駆動制御部53による制御を抑制するので、処理負荷が高いことに起因してデータ処理が追いつかずに記録が中断される等の事態を回避できる。また、駆動制御部53の駆動部の種類に応じて駆動部の制御を抑制するので、記録品質に影響を与えるような駆動部については制御を抑制しないといったきめ細かい制御を行える。これにより、記録品質に影響を与えることなく、記録対象データの処理が間に合わないことに起因する待ち時間を低減できる。
さらに、データ処理部52及び駆動制御部53は共通のCPUがプログラムを実行することにより構成されるので、データ処理と駆動部の制御とを共通のCPUを用いて実行することができ、駆動部の制御を抑制してデータ処理に要するリソースを確保できるので、限られたハードウェアを効率よく利用して記録を行うことができる。
【0053】
また、負荷管理部54は、データ処理部52が記録対象データを処理するのに要する時間をもとに、処理負荷が高いと判定した場合に、駆動制御部53による制御を抑制するので、負荷が高い場合のみ駆動部の制御を抑制してデータ処理を優先して実行させる。これにより、必要な場合にのみデータ処理に多くのリソースを割り当てて、速やかに必要なデータ処理を実行できるので、不要な動作の抑制をすることがなく、スループットの低下を避けることができる。
【0054】
また、データ処理部52は、記録対象データをプリントバッファー58に画像展開する処理を実行し、負荷管理部54は、プリントバッファー58に展開されたデータ量をもとに、データ処理部52の処理負荷が高いと判定した場合に、駆動制御部53による制御を抑制するので、負荷を正確に判定することができ、負荷が高い場合のみ駆動部の制御を抑制してデータ処理を優先して実行させる。これにより、必要な場合にのみデータ処理に多くのリソースを割り当てて、速やかに必要なデータ処理を実行できるので、不要な動作の抑制をすることがなく、スループットの低下を避けることができる。
【0055】
また、負荷管理部54は、処理負荷が高いと判定した場合に、駆動制御部53による搬送モーター65の制御を抑制する。このように、駆動部のうち、停止しても記録品質に影響を与えにくいモーターの制御を抑制することで、データ処理に多くのリソースを割り当てて、速やかにデータ処理を実行できる。
【0056】
また、駆動制御部53が制御する駆動部には、ロール紙7に記録を行う記録ヘッド11のメンテナンスを行うキャップ駆動モーター68等の駆動部が含まれ、負荷管理部54は、これら記録ヘッド11のメンテナンスを行う駆動部の制御を抑制しないので、記録品質に影響を与えないように、データ処理を優先して実行できる。
【0057】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。例えば、上述した実施形態において、駆動部は図4に示した各駆動部に限らず、より多くのモーターやアクチュエーター等を含むことも可能であるし、これらの駆動部に対応して、駆動制御部53が、より多くの制御部を備える構成としても良い。また、図5に示した制御部40の各部はCPU41がプログラムを実行することで、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される。このため、各機能ブロックはハードウェアの実装形態を限定するものではないし、複数の機能ブロックの機能を一つの機能部が具備する構成とすることも勿論可能である。
また、上記実施形態のプリンター1は、記録ヘッド11を往復走査して記録ヘッド11からインクを吐出することで記録を行うシリアルインクジェット式プリンターであったが、これはあくまで一例であり、ラインヘッドを備えたラインインクジェットプリンターに本発明を適用することも可能であり、また、ドットインパクト式プリンター、熱転写型プリンター、レーザープリンター、これらのプリンターを内蔵した複合機においても本発明を適用可能である。
さらに、上記実施形態においてフラッシュROM42が記憶していたプログラムが、図示しない不揮発性の記憶装置や可搬型の記録媒体に記憶されている構成であってもよいし、或いは、通信回線を介して接続された他の装置にダウンロード可能に記憶され、これらの装置からプリンター1やホストコンピューター100が上記プログラムをダウンロードして実行してもよい。また、プリンター1は、1つのホストコンピューター100に接続される形態に限らず、通信ネットワーク等を介して複数のホストコンピューター100に接続されてもよく、その他、上記実施の形態に係る他の細部構成についても、任意に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
1…プリンター、7…ロール紙(記録媒体)、11…記録ヘッド(駆動部)、21…キャリッジ駆動モーター(駆動部)、22…カッターユニット、26…カッター駆動モーター(駆動部)、27…ヘッドクリーニング部、28…ヘッドキャップ、40…制御部(記録制御装置)、41…CPU、42…フラッシュROM、43…RAM、51…記録制御部、52…データ処理部(データ処理手段)、53…駆動制御部(駆動制御手段)、53A…記録ヘッド制御部、53B…キャリッジ駆動モーター制御部、53C…搬送モーター制御部、53D…搬送部アクチュエーター制御部、53E…ポンプモーター制御部、53F…キャップ駆動モーター制御部、53G…カッター駆動モーター制御部、54…負荷管理部(負荷管理手段)、54A…CPU占有率算出部、54B…CPU処理時間測定部、54C…処理データ量検出部、58…プリントバッファー(バッファーメモリー)、65…搬送モーター(駆動部)、66…搬送部アクチュエーター(駆動部)、67…ポンプモーター(駆動部)、68…キャップ駆動モーター(駆動部)、100…ホストコンピューター、200…記録システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に記録する記録対象のデータを処理するデータ処理手段と、
複数の駆動部を制御する駆動制御手段と、
前記データ処理手段及び前記駆動制御手段の処理負荷に応じて、前記駆動制御手段による前記駆動部の制御を制限する負荷管理手段と、を備え、
前記データ処理手段及び前記駆動制御手段は共通のCPUを用いて構成され、
前記負荷管理手段は、前記駆動制御手段が制御している前記駆動部の種類に応じて、前記駆動制御手段による制御を制限すること、
を特徴とする記録制御装置。
【請求項2】
前記負荷管理手段は、前記データ処理手段が前記記録対象のデータを処理するのに要する時間をもとに、処理負荷が高いと判定した場合に、前記駆動制御手段による制御を制限することを特徴とする請求項1記載の記録制御装置。
【請求項3】
前記データ処理手段は、前記記録対象のデータをバッファーメモリーに画像展開する処理を実行するものであり、
前記負荷管理手段は、前記バッファーメモリーに展開されたデータ量をもとに、処理負荷が高いと判定した場合に、前記駆動制御手段による制御を制限することを特徴とする請求項1記載の記録制御装置。
【請求項4】
前記駆動手段は、前記記録媒体を搬送する搬送モーターを含み、
前記負荷管理手段は、処理負荷が高いと判定した場合に、前記駆動制御手段による前記搬送モーターの制御を制限することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の記録制御装置。
【請求項5】
前記駆動部には、前記記録媒体に記録を行う記録ヘッドのメンテナンスを行う駆動部が含まれ、
前記負荷管理手段は、前記記録ヘッドのメンテナンスを行う駆動部の制御を制限しないことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の記録制御装置。
【請求項6】
記録媒体に記録する記録対象のデータを処理するデータ処理と、複数の駆動部を制御する駆動制御処理と、前記データ処理及び前記駆動制御処理の処理負荷に応じて、前記駆動制御処理を制限する負荷管理処理を実行し、
前記負荷管理処理において、前記駆動制御処理により制御されている前記駆動部の種類に応じて、前記駆動制御処理を制限すること、
を特徴とする記録制御方法。
【請求項7】
前記駆動制御処理は、前記記録媒体を搬送する搬送モーターを制御する処理を含み、
前記負荷管理処理において、前記搬送モーターの制御を制限することを特徴とする請求項6に記載の記録制御装置。
【請求項8】
記録装置を制御する制御部によって実行可能なプログラムであって、
前記制御部により、
記録媒体に記録する記録対象のデータを処理するデータ処理と、前記記録媒体を搬送する搬送モーターを含む駆動部を制御する駆動制御処理と、
前記データ処理及び前記駆動制御処理の処理負荷に応じて、前記駆動制御処理を制限するとともに、前記駆動制御処理により制御されている前記駆動部の種類に応じて、前記駆動制御処理を制限する負荷管理処理と、
を実行するためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−223897(P2012−223897A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90757(P2011−90757)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】