説明

記録媒体ガイド機構およびプリンター

【課題】操作性良く媒体ガイド幅を変更可能な記録媒体ガイド機構を提案すること。
【解決手段】記録媒体ガイド機構30は、記録媒体を媒体ガイド方向Aにガイドするガイド面38を備えたガイド部材31と、ガイド面38の媒体ガイド幅を規定するスライド側ガイド幅規定面44を備え、所定方向にスライド可能な状態でガイド部材31に取り付けられているガイド幅規定部材32と、ロックレバー34がアンロック位置34Bにあるとガイド幅規定部材32をスライド可能なアンロック状態に保持し、ロックレバー34がロック位置34Aに切り替わるとガイド幅規定部材32をガイド部材31に係合させたスライド不可のロック状態に切り替えるロック・アンロック機構33とを有し、ロックレバー34がガイド幅規定部材32に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンターに送り込む記録媒体あるいはプリンターから送り出される記録媒体をガイドする記録媒体ガイド機構、および当該記録媒体ガイド機構を備えたプリンターに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンターの記録紙供給口あるいは記録紙排出口には、そこに送り込まれる記録紙あるいはそこから排出される記録紙をガイドすると共に、その幅方向の位置を規制する記録紙ガイド機構が取り付けられている。記録紙ガイド機構としては、異なる幅の記録紙をガイドできるように、その幅方向の一方の端あるいは両端を規定しているガイド幅規定部材を記録紙の幅に応じて幅方向にスライド可能なものが知られている。
【0003】
特許文献1には、このような記録紙ガイド機構を備えたインクジェットプリンターが提案されている。当該特許文献1においては、排出口に取り付けた案内部材の両端に、幅方向に連動してスライド可能な一対の紙幅ガイドが取り付けられており、一対の紙幅ガイドは排出されるロール紙の幅に対応する間隔となる位置に固定可能になっている。案内部材の前端面における幅方向の中央には操作突起が配置されており、この操作突起を操作することにより、一対の紙幅ガイドをスライド可能な状態およびスライド後の位置にロックできるようになっている。
【0004】
紙幅ガイドを所望のスライド位置に固定できるので、通帳などの冊子、厚紙などのように腰の強い記録媒体をガイドする場合に、記録媒体が当たってスライド式の紙幅ガイドの位置が移動してしまうことを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−173207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、従来における記録媒体の幅に応じて媒体ガイド幅を変更可能な記録媒体ガイド機構においては、次のような解決すべき課題がある。まず、紙幅ガイドをスライドさせた後に、紙幅ガイドとは別の位置に配置されている操作部材を操作して紙幅ガイドをスライド後の位置にロックする操作が必要である。このため、媒体ガイド幅を変更するためには異なる位置にある紙幅ガイドおよび操作部材を繰り返し操作する必要があるので、媒体ガイド幅の変更作業の作業性が悪いという課題がある。
【0007】
また、紙幅ガイドがスライドしないように固定されているか否かを目視によって簡単に識別することが困難であるという課題がある。紙幅ガイドを固定しないまま記録媒体を搬送すると、記録媒体によって紙幅ガイドが押されて移動してしまい、供給あるいは排出される記録媒体が斜行状態になり、紙詰まりが発生するおそれがある。逆に、固定されている状態の紙幅ガイドをスライドさせようとすると無理な力が紙幅ガイド、それを固定している部位に加わるので、これらの部位が破損するなどの危険性がある。
【0008】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、操作性良く媒体ガイド幅を変更可能な記録媒体ガイド機構およびプリンターを提案することにある。また、本発明の課題は、操作性良く媒体ガイド幅を変更可能であると共にガイド幅規定部材がロックされているか否かを目視により簡単に判別可能な記録媒体ガイド機構およびプリンターを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、プリンターに送り込む記録媒体あるいはプリンターから送り出される記録媒体をガイドする記録媒体ガイド機構において、
前記記録媒体を予め定めた媒体ガイド方向にガイドするためのガイド面を備えたガイド部材と、
前記ガイド面における媒体ガイド幅を規定するためのガイド幅規定面を備え、所定方向にスライド可能な状態で前記ガイド部材に取り付けられているガイド幅規定部材と、
ロックレバーを備え、当該ロックレバーがアンロック位置にあると前記ガイド幅規定部材を前記ガイド部材に対してスライド可能なアンロック状態に保持し、前記ロックレバーがロック位置に切り替わると前記ガイド幅規定部材を前記ガイド部材に係合させたスライド不可のロック状態に切り替えるロック・アンロック機構とを有し、
前記ロックレバーは前記ガイド幅規定部材に取り付けられていることを特徴としている。
【0010】
スライド可能なガイド幅規定部材をロック・アンロック状態に切り替えるために操作されるロックレバーがガイド幅規定部材に取り付けられている。したがって、操作者は、媒体ガイド幅を変更する場合に、ガイド幅規定部材に取り付けられているロックレバーをロック位置からアンロック位置に切り替える操作、アンロック状態のガイド幅規定部材を記録媒体の幅に対応した位置までスライドさせる操作、スライド後のガイド幅規定部材をロック状態に切り替えるためにロックレバーをアンロック位置からロック位置に切り替える操作を、同一位置において簡単に行うことができる。
【0011】
本発明の記録媒体ガイド機構において、前記ロックレバーは、前記ロック位置にある場合に比べて前記アンロック位置にある場合の方が、前記ガイド幅規定部材の表面からより多く突出した状態になるレバー部分を備えていることを特徴としている。
【0012】
ロックレバーがロック・アンロック対象のガイド幅規定部材に取り付けられており、しかも、ロックレバーをアンロック位置に操作すると当該ロックレバーがガイド幅規定部材から大きく突出した状態になるので、操作者は目視によってガイド幅規定部材がスライド可能な状態にあるのか、スライドしないようにロックされた状態にあるのかを簡単に知ることができる。この結果、ガイド幅規定部材をロックすることを忘れたまま記録媒体が搬送されてしまうことや、ロック状態のガイド幅規定部材をスライドさせようとして無理に操作してしまうことを確実に防止できる。
【0013】
本発明の記録媒体ガイド機構において、前記ロックレバーは、前記ガイド幅規定部材のスライド方向に直交する方向に移動して前記ロック位置および前記アンロック位置に切り替わることを特徴としている。
【0014】
ロックレバーの操作方向がガイド幅規定部材のスライド方向に直交する方向となっているので、ロック位置からアンロック位置に切り替えた後のロックレバーのレバー部分を、そのままスライド方向に押せば、ロックレバーをアンロック位置に保持したままガイド幅規定部材をスライドさせることができる。また、ガイド幅規定部材をスライドさせた後にそのままレバー部分を押せば、ガイド幅規定部材をスライド後の位置に保持したままロックレバーをロック位置に切り替えることができる。よって、媒体ガイド幅の変更操作をロックレバーのレバー部分を操作するだけで行うことができ、操作性に優れている。
【0015】
本発明の記録媒体ガイド機構において、前記レバー部分は、前記アンロック位置において前記ガイド幅規定部材から前記ガイド幅規定面に沿った方向に突出した状態になり、前記ガイド幅規定部材から突出した状態における前記レバー部分の表面輪郭形状は、前記媒体ガイド方向に沿って見た場合に、前記ガイド幅規定部材の表面輪郭形状に滑らかに連続する凸状の輪郭形状となっていることを特徴としている。
【0016】
この構成によれば、ロックレバーがロックされずに、そのレバー部分が突出したままの状態で記録媒体が搬送された場合においても、レバー部分が記録媒体の搬送の障害となることを防止できる。すなわち、ガイド面に沿ってガイドされる記録媒体の幅方向の縁端等の部位がガイド幅規定部材に乗り上げた状態で移動してしまうことがある。この場合、ガイド幅規定部材から突出しているレバー部分に記録媒体の端等が当たり、記録媒体の円滑な搬送動作が遮られるおそれがある。本発明では、このような場合であっても搬送される記録媒体がガイド幅規定部材からレバー部分に乗り上げ、当該レバー部分に乗り上げた状態で円滑に搬送される。よって、ロックレバーがロックされずに、そのレバー部分が突出したままの状態であっても記録媒体の円滑な搬送を確保できる。
【0017】
このように、記録媒体の円滑な搬送あるいはガイドが阻害されることの無いように、本発明では、ガイド幅規定部材から突出した状態におけるレバー部分の表面輪郭形状がガイド幅規定部材の表面輪郭形状に「滑らかに連続する」凸状の輪郭形状となっている。したがって、「滑らかに連続する」とは、厳密な意味での「滑らかに連続する」場合は勿論のこと、記録媒体の搬送あるいはガイドが阻害されない限り、双方の部材の表面輪郭形状の繋ぎ目に多少の隙間あるいはズレがあっても、本明細書においては「滑らかに連続する」場合に含まれる。
【0018】
次に、本発明の記録媒体ガイド機構において、
前記ガイド幅規定部材を前記ガイド部材に対してスライド可能に取り付けているスライドガイド機構は、ガイド溝と、当該ガイド溝にスライド可能な状態で挿入されているガイドレールとを備えており、
前記ガイド部材には、前記ガイド溝および前記ガイドレールのうちの一方の部位が、当該ガイド部材の前記媒体ガイド方向の中央の部位において、前記ガイド幅規定部材のスライド方向に延びる状態に形成されており、
前記ガイド幅規定部材には、前記ガイド溝および前記ガイドレールのうちの他方の部位が、当該ガイド幅規定部材における前記媒体ガイド方向の中央の部位において前記スライド方向に延びる状態に形成されており、
前記ロック・アンロック機構は、前記ガイド部材の側に形成した固定側係合部と、前記ガイド幅規定部材の側に形成したスライド側係合部と、前記スライド側係合部を前記固定側係合部に対して前記媒体ガイド方向に沿った方向から押圧して係合させることにより前記ロック状態を形成する付勢部材とを備えており、
前記固定側係合部は、前記ガイド溝が形成されているガイド溝形成部および前記ガイドレールのうちの前記ガイド部材に形成されている側の部位、あるいは、当該部位を前記スライド方向に延長させた部分に形成されており、
前記スライド側係合部は、前記ガイド溝形成部および前記ガイドレールのうちの前記ガイド幅規定部材に形成されている側の部位、あるいは、当該部位を前記スライド方向に延長させた部分に形成されていることを特徴としている。
【0019】
この構成によれば、スライド式のガイド幅規定部材は、ガイドレールとガイド溝との係合によって円滑にスライド可能である。また、これらの係合位置が媒体ガイド方向の中央に位置しているので、ガイド幅規定部材の媒体ガイド方向のがたつきを効果的に抑制できる。さらに、ガイド幅規定部材のスライド位置(ガイドレールとガイド溝の係合位置)あるいはその延長上の位置において、ロック・アンロック機構によってガイド幅規定部材をロックしている。よって、ガイド幅規定部材を、媒体ガイド方向にがたつくことなく、確実にガイド部材の側にロックすることができる。
【0020】
次に、本発明の記録媒体ガイド機構において、
前記ロックレバーは、前記スライド方向に延びる旋回軸部を中心として前記ロック位置から前記アンロック位置までの間を旋回可能であると共に前記媒体ガイド方向に予め定めた範囲を移動可能な状態で、前記ガイド部材と前記ガイド幅規定部材の間に挟持されており、
前記旋回軸部には、その中心軸線から半径方向に延びる旋回腕が形成されており、
前記媒体ガイド方向に沿って、前記固定側係合部、前記スライド側係合部および前記旋回軸部がこの順序に配置され、前記スライド側係合部には前記旋回腕の先端が当接しており、
前記付勢部材は、前記媒体ガイド方向において前記固定側係合部と前記旋回軸部の間に架け渡した状態で、前記ガイド部材と前記ガイド幅規定部材の間に挟持されている板バネであり、
前記ロックレバーが前記アンロック位置から前記ロック位置に旋回すると、これに伴って旋回する前記旋回腕によって前記スライド側係合部が前記固定側係合部の側に押し出され、前記旋回軸部と前記固定側係合部の間に架け渡されている前記付勢部材が引き伸ばされることにより発生する弾性復帰力によって、前記スライド側係合部が前記固定側係合部に摩擦係合した前記ロック状態が形成されることを特徴としている。
【0021】
ロック・アンロック機構のロックレバーおよび付勢部材が、ガイド部材とガイド幅規定部材の間に挟まれた状態で保持されている。したがって、ロック・アンロック機構の固定側係合部材をガイド部材に一体形成し、スライド側係合部材をガイド幅規定部材の側に一体形成しておけば、ガイド部材とガイド幅規定部材の間の所定位置にロックレバーおよび付勢部材を挟む状態で、これらの部材を組み付けるだけで、ロック・アンロック機構が構成される。部品取り付け用のビスなどを用いることなく、簡単な作業によってロック・アンロック機構を構成できる。
【0022】
次に、スライド式のガイド幅規定部材は、ガイド部材のガイド面におけるスライド方向の両側に配置することが可能であるが、一方の側にのみ配置することも可能である。また、スライド式のガイド幅規定部材に、ガイド幅規定面と共に、ガイド面と同一平面上に位置するようにスライド側ガイド面を形成しておくことも可能である。このようにすれば、媒体ガイド幅を広くした場合においても、常に、ガイド面とスライド側ガイド面によって記録媒体の幅方向の両側部分がガイドされるので、記録媒体を確実にガイドすることができる。
【0023】
一方、本発明のプリンターは、印刷ヘッドによる印刷位置に記録媒体を送り込むと共に印刷位置を経由した後の記録媒体を送り出す媒体供給・排出口と、前記媒体供給・排出口に取り付けられている記録媒体ガイド機構とを有し、前記記録媒体ガイド機構が上記構成の記録媒体ガイド機構であることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を適用したプリンターの外観斜視図および断面図である。
【図2】記録媒体ガイド機構のガイド幅調整動作を示す斜視図である。
【図3】記録媒体ガイド機構のロック・アンロック状態を示す部分斜視図である。
【図4】記録媒体ガイド機構の断面図である。
【図5】記録媒体ガイド機構のガイド部材およびガイド幅規定部材を示す斜視図である。
【図6】記録媒体ガイド機構のロック状態での側面図および断面図である。
【図7】記録媒体ガイド機構のアンロック状態での側面図および断面図である。
【図8】ロック・アンロック機構のロックレバーおよび板バネを示す斜視図である。
【図9】記録媒体ガイド機構の組み付け手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した記録媒体ガイド機構付のプリンターの実施の形態を説明する。
【0026】
(プリンターの構成)
図1(a)は本発明の実施の形態に係るプリンターの外観斜視図であり、図1(b)はプリンターの縦断面図である。図1(a)に示すように、プリンター1は装置幅方向に長いプリンター本体2を有している。プリンター本体2の外装ケース3の前面には所定幅の媒体出入口4が形成されており、媒体出入口4の下側には記録媒体ガイド機構30が装置前方に突出した状態で取り付けられている。外装ケース3の後面には、図1(b)に示すように、記録媒体の一つである連続紙を挿入するための媒体入口6が形成されている。
【0027】
記録媒体ガイド機構30は、記録媒体をガイドするためのガイド部材31と、ガイドされる記録媒体の幅に応じて媒体ガイド幅を変更するためにガイド部材31にスライド可能に取り付けられているガイド幅規定部材32と、ガイド幅規定部材32をガイド部材31に対してスライド可能なアンロック状態およびスライドしないように固定したロック状態に切り替えるロック・アンロック機構33とを備えている。ロック・アンロック機構33は手動操作用のロックレバー34を備えており、ロックレバー34を操作することによってガイド幅規定部材32をロック状態およびアンロック状態に切り替えることができる。
【0028】
図1(b)を主に参照してプリンター内部構造を説明する。まず、プリンター本体2は、外装ケース3の内側に板金製のプリンター本体フレーム10を備えている。プリンター本体フレーム10は装置幅方向の両端に上下方向に延びる一対の側壁部11を備えている。これら一対の側壁部11の内側に、媒体出入口4から媒体入口6に向かって装置前後方向に延びる媒体搬送路12が設けられている。
【0029】
媒体搬送路12の途中には、印刷ヘッド13による印刷位置を規定するプラテンローラー14が、回転中心軸線を媒体搬送方向と直交する方向に向けて配置されている。プラテンローラー14の装置前方には前側搬送ローラー15が配置されている。前側搬送ローラー15には上方から前側押圧ローラー16が所定の押圧力で押し付けられている。プラテンローラー14の装置後方には後側搬送ローラー17が配置されている。後側搬送ローラー17には上方から後側押圧ローラー18が所定の押圧力で押し付けられている。プラテンローラー14、前側搬送ローラー15、前側押圧ローラー16、後側搬送ローラー17および後側押圧ローラー18は、媒体搬送路12と平行な状態でプリンター本体フレーム10に架け渡されている。また、プラテンローラー14、前側搬送ローラー15および後側搬送ローラー17は、媒体搬送路12に沿って記録媒体を搬送するための媒体搬送機構19を構成しており、プリンター本体フレーム10に搭載されている不図示の搬送モーターによって駆動される。後側押圧ローラー18の装置後方には、記録媒体の一つである連続紙を搬送するためのトラクターユニット20が配置されている。
【0030】
媒体搬送路12の上方には、印刷ヘッド13と、印刷ヘッド13を搭載するキャリッジ21と、キャリッジ21の装置幅方向への移動をガイドするキャリッジガイド軸22およびガイド部材23が配置されている。また、媒体搬送路12の上方には、キャリッジ21をキャリッジガイド軸22およびガイド部材23に沿って往復移動させるためのタイミングベルトおよびキャリッジモーター(共に図示せず)が配置されている。
【0031】
印刷ヘッド13およびキャリッジ21はプラテンローラー14の真上に位置している。本例において、印刷ヘッド13は、インクリボンに記録ワイヤーを打ち当ててインクリボンのインクを連続用紙に付着させて印刷するシリアル・インパクト・ドット・マトリクス・プリントヘッドであり、印刷ヘッド13とプラテンローラー14の間にはインクリボンカートリッジから引き出されたインクリボン(図示せず)が位置している。
【0032】
キャリッジガイド軸22はプラテンローラー14よりも装置後方で媒体搬送路12に対向しており、プラテンローラー14と平行な状態で、プリンター本体フレーム10の一対の側壁部11に架け渡されている。ガイド部材23は、一定厚さの板状の部材であり、キャリッジガイド軸22の真上(キャリッジガイド軸22の媒体搬送路12とは反対側)において、プラテンローラー14およびキャリッジガイド軸22と平行な状態で、プリンター本体フレーム10の一対の側壁部11に架け渡されている。キャリッジ21には、媒体搬送路12に沿ってプラテンローラー14上を搬送される印刷媒体の厚さに追随させて印刷ヘッド13を上下動(プラテン13に接近する方向および離れる方向に移動)させるためのプラテンギャップ調整機構25が構成されている。
【0033】
ここで、本例のプリンター1では、2つの印刷動作を選択的に行うことが可能となっている。第1の印刷動作は、装置前側の媒体出入口4から記録媒体を挿入して、媒体搬送路12に沿って装置後方に向かって記録媒体を搬送し、印刷位置において印刷を施し、しかる後に記録媒体を装置前方に向かって搬送して媒体出入口4から排出するものである。第2の印刷動作は、装置後側の媒体入口6から記録媒体を挿入して、媒体搬送路12に沿って装置前方に向かって記録媒体を搬送し、印刷位置において印刷を施し、しかる後に記録媒体を装置前方の媒体出入口4から排出するものである。
【0034】
第1の印刷動作は、例えば、記録媒体の一つである通帳などのブックレットのページへの印刷の際に選択される。すなわち、ブックレットのページへ印刷を施す際には、ブックレットを見開き状態として印刷対象ページを上面に露出させる。そして、見開き状態としたブックレットを媒体ガイド5に沿って媒体出入口4から媒体搬送路12に挿入する。ブックレットが媒体搬送路12に挿入されると搬送モーターが駆動され、ブックレットは媒体搬送機構19によって媒体搬送路12に沿って装置後方に向かって搬送される。そして、ブックレットがプラテンローラー14上を通過する際に、印刷ヘッド13によって印刷対象ページに印刷が施される。印刷が終了すると、搬送モーターが逆方向に駆動され、これによりブックレットは媒体搬送機構19によって装置前方に向かって搬送され、媒体出入口4より排出される。
【0035】
第2の印刷動作は、例えば、記録媒体の一つである連続紙、たとえば、ファンフォールド紙への印刷の際に選択される。すなわち、ファンフォールド紙は、トラクターユニット20を介して装置後側の媒体入口6から媒体搬送路12に挿入される。ファンフォールド紙が媒体搬送路12に挿入されると、これにより、搬送モーターが駆動され、ファンフォールド紙は媒体搬送機構19によって媒体搬送路12に沿って装置前方に向かって搬送される。そして、ファンフォールド紙がプラテンローラー14上を通過する際に、印刷ヘッド13によって印刷が施される。印刷が施されたファンフォールド紙はそのまま装置前方に搬送されて、媒体出入口4より排出される。
【0036】
(記録媒体ガイド機構)
次に、図2(a)は記録媒体ガイド機構30を示す斜視図であり、図2(b)〜図2(d)はそのガイド幅規定部材32をスライドさせて媒体ガイド幅を変更する際の動作を示す説明図である。図3(a)はガイド幅規定部材32のロック状態を示す部分斜視図であり、図3(b)はガイド幅規定部材32のアンロック状態を示す部分斜視図である。
【0037】
これらの図を参照して説明すると、記録媒体ガイド機構30のガイド部材31は、全体として長方形輪郭をした板状のガイド板部分35と、このガイド板部分35における両端部から垂直に起立している左端板部分36および右端板部分37とを備えている。ガイド板部分35の上面には、記録媒体Pを予め定めた媒体ガイド方向A、すなわちプリンター前後方向にガイドするための平坦なガイド面38が形成されている。また、右端板部分37の内側の側面は、ガイド面38から垂直に起立した固定側ガイド幅規定面39となっており、ガイド面38の上をガイドされる記録媒体Pの右端が当該固定側ガイド幅規定面39によってガイドされる。ガイド面38の反対側の左端縁38aと左端板部分36の間には、ガイド面38よりも僅かに低い底面を備えた凹部40が形成されており、この凹部40には、スライド式のガイド幅規定部材32がガイド板部分35の幅方向B(媒体ガイド方向Aに直交する方向)にスライド可能な状態で配置されている。本例では、ガイド幅規定部材32のスライド方向が媒体ガイド方向Aに直交する幅方向Bとなっているが、スライド方向を幅方向Bとは異なる方向、例えば、媒体ガイド方向Aおよび幅方向Bの双方に対して傾斜した方向として、媒体ガイド幅を変更できるようにしてもよい。
【0038】
記録媒体ガイド機構30のスライド式のガイド幅規定部材32は、長方形輪郭をしたガイド板部分41と、このガイド板部分41の左端部から垂直に起立している端板部分42とを備えている。ガイド板部分41の上面はガイド部材31のガイド面38と同一平面上に位置する平坦なスライド側ガイド面43となっている。端板部分42の内側の側面は、スライド側ガイド面43の左端から垂直に起立したスライド側ガイド幅規定面44となっている。このスライド側ガイド幅規定面44によって、ガイド面38をガイドされる記録媒体Pの左端がガイドされる。
【0039】
したがって、記録媒体Pの幅方向の位置が、スライド側ガイド幅規定面44と固定側ガイド幅規定面39によって規定される。また、これらによって規定される媒体ガイド幅は、スライド式のガイド幅規定部材32をスライドさせることにより変更可能である。本例では、図2(a)に示す最小幅w(min)から図2(d)に示す最大幅w(max)の範囲で変更可能である。
【0040】
次に、図3を主に参照して説明すると、記録媒体ガイド機構30のロック・アンロック機構33は、ガイド幅規定部材32の裏面と、ガイド部材31における凹部40の間に配置されている。ロック・アンロック機構33のロックレバー34は、スライド式のガイド幅規定部材32における端板部分42に取り付けられている。ロックレバー34は、幅方向Bに平行に延びる旋回中心線45を中心として、図3(a)に示すロック位置34Aから図3(b)に示すアンロック位置34Bまでの間を上下方向に旋回可能である。すなわち、ロックレバー34は、ガイド幅規定部材32のスライド方向(幅方向B)に直交する上下方向に旋回する。
【0041】
また、ロックレバー34における上端側のレバー部分46は、図3(a)に示すロック位置34Aにある場合に比べて、図3(b)に示すアンロック位置34Bにある場合の方が、ガイド幅規定部材32の端板部分42の上面部分42aから上方により多く突出した状態になる。さらに、レバー部分の表面輪郭形状は、ガイド幅規定部材32から上方に突出した状態において、スライド側ガイド幅規定面44に直交する方向(幅方向B)から見た場合に、ガイド幅規定部材32の端板部分42の上面輪郭形状に滑らかに連続する凸状の輪郭形状となっている。
【0042】
記録媒体ガイド機構30における媒体ガイド幅を変更するための操作は次のように行われる。例えば、図2(a)、図3(a)に示すように、ガイド幅規定部材32が最小幅w(min)を規定する位置にロックされているものとする。この状態から媒体ガイド幅を最大幅w(max)に変更する場合には、ロックレバー34のレバー部分に指を掛けて、ロックレバー34を上方に旋回させ、ロックレバー34をロック位置34Aから図2(b)、図3(b)に示すアンロック位置34Bに切り替える。これによりガイド幅規定部材32がスライド可能な状態に切り替わる。次に、ロックレバー34のレバー部分を持ったまま当該ロックレバー34を幅方向Bの左方に向けて押し出す。この結果、図2(c)に示すように、ガイド幅規定部材32がガイド部材31の左端板部分36に当る位置までスライドする。この後は、ロックレバー34のレバー部分を下方に押し込むと、ロックレバー34がアンロック位置34Bからロック位置34Aに切り替わり、図2(d)に示すように、ガイド幅規定部材32が最大幅w(max)の位置にロックされた状態になる。
【0043】
このように、本例では、スライド可能なガイド幅規定部材32をロック・アンロック状態に切り替えるために操作されるロックレバー34がスライド式のガイド幅規定部材32に取り付けられている。したがって、操作者は、媒体ガイド幅を変更する場合に、ガイド幅規定部材32に取り付けられているロックレバー34をロック位置34Aからアンロック位置34Bに切り替える操作、アンロック状態のガイド幅規定部材32を記録媒体の幅に対応した位置までスライドさせる操作、スライド後のガイド幅規定部材32をロック状態に切り替えるためにロックレバー34をアンロック位置34Bからロック位置34Aに切り替える操作を、同一位置において簡単に行うことができる。
【0044】
また、ロックレバー34をアンロック位置34Bまで旋回させると当該ロックレバー34のレバー部分がガイド幅規定部材32の上面部分42aから大きく上方に突出した状態になる。操作者は目視によってガイド幅規定部材32がスライド可能な状態にあるのか、スライドしないようにロックされた状態にあるのかを簡単に知ることができる。ガイド幅規定部材32をロックし忘れたまま記録媒体Pが搬送されてしまうことや、ロック状態のガイド幅規定部材32を無理にスライドさせようとしてしまうことを確実に防止できる。
【0045】
さらに、ロックレバー34の操作方向はガイド幅規定部材32のスライド方向(幅方向B)に直交する方向となっており、媒体ガイド幅を変更する際には、アンロック状態のロックレバー34のレバー部分がガイド幅規定部材32の上方に突出する。したがって、このレバー部分のみを操作するだけで、媒体ガイド幅を変更するための操作を行うことができる。よって、媒体ガイド幅の変更操作を簡単かつ効率良く行うことができる。
【0046】
(ガイド幅規定部材のスライドガイド機構)
図4は記録媒体ガイド機構30の断面図であり、図3(a)のT3−T3線で切断した部分の断面を表している。図5(a)はガイド部材31を示す斜視図であり、図5(b1)、(b2)はガイド幅規定部材32を示す表面側斜視図および裏面側斜視図である。これら図4、図5を主に参照して、記録媒体ガイド機構30におけるガイド幅規定部材32をガイド部材31に対してスライド可能に取り付けているスライドガイド機構を説明する。
【0047】
スライドガイド機構50は、ガイド溝51を形成しているガイド溝形成部52と、ガイド溝51にスライド可能な状態で挿入されているガイドレール53を備えている。本例ではガイド部材31の凹部40の底板部分54に、当該ガイド部材31の媒体ガイド方向Aのほぼ中央の部位において幅方向Bに延びる状態にガイド溝形成部52が形成されており、当該ガイド溝形成部52に、上方に開口した細幅のガイド溝51が形成されている。図5(a)から分かるように、凹部40の底板部分54には一段深い底板部分54aが形成されている。この底板部分54aには、ガイド溝形成部52におけるプリンター本体側の側板部分52aがガイド溝51の端に連続して左側の端まで延びている。
【0048】
スライドガイド機構50のガイドレール53は、ガイド幅規定部材32におけるガイド板部分41の裏面から垂直に突出している一定高さのレールである。図5(b2)から分かるように、当該ガイドレール53は、ガイド幅規定部材32における媒体ガイド方向Aのほぼ中央の部位において幅方向Bに直線状に延びている。また、ガイドレール53は、ガイド板部分41の裏面においてその右端から左端近傍位置まで延びている。
【0049】
ここで、図5(b2)から分かるように、ガイド幅規定部材32の裏面における媒体ガイド方向Aの縁端部分には、裏面からほぼ垂直に突出している突出板56、57が形成されている。これらの突出板56、57はガイド幅規定部材32の裏面において幅方向Bのほぼ全幅に亘って形成されている。また、突出板56、57の先端部には、それらの長さ方向の両端部分に、媒体ガイド方向Aに向けて反対方向に折れ曲がった一対の外れ防止フック56a、56b、57a、57bがそれぞれ形成されている。ガイド部材31における媒体ガイド方向Aの両端部には、図4から分かるように、幅方向Bに直線状に延びる上方に開口したフック嵌め込み溝58、59が形成されている。
【0050】
ガイド幅規定部材32をガイド部材31の凹部40の底板部分54に対して上側から位置決めして押し込むと、外れ防止フック56a、56b、57a、57bがそれぞれフック嵌め込み溝58、59に嵌め込まれて、これらのフック嵌め込み溝58、59内に形成されているフック係合面58a、59aに対して下側から係合した状態が形成される。また、ガイド幅規定部材32のガイドレール53がガイド部材31の側のガイド溝51にスライド可能に差し込まれた状態が形成される。この結果、ガイド幅規定部材32は、ガイド部材31から外れることなく、幅方向Bにスライド可能な状態でガイド部材31に取り付けられる。
【0051】
(記録媒体ガイド機構のロック・アンロック機構)
次に、図6(a)はロック状態における記録媒体ガイド機構30の左側面図であり、図6(b)〜(d)はその断面図であり、図6(e)は図6(a)〜(d)の表示位置を示す説明図である。図7(a)はアンロック状態における記録媒体ガイド機構30の左側面図であり、図7(b)〜(d)はアンロック状態における記録媒体ガイド機構30の断面図であり、それぞれ図6(b)、(c)、(d)に対応する位置の断面である。また、図8(a1)、(a2)はロック・アンロック機構33の構成部品であるロックレバー34を示す斜視図であり、図8(b)はロック・アンロック機構33の構成部品である板バネ(付勢部材)を示す斜視図である。
【0052】
図6〜8を主に参照してロック・アンロック機構33の構造を説明する。まず、ロック・アンロック機構33は、ガイド部材31の側に形成した固定側係合部61と、ガイド幅規定部材32の側に形成したスライド側係合部62と、スライド側係合部62を固定側係合部61に対して媒体ガイド方向Aに沿った方向から押圧して係合させることによりロック状態を形成するために用いる板バネ63(付勢部材)と、板バネ63を伸長させてロック状態に切り替えるロックレバー34とを備えている。
【0053】
ガイド部材31の側の固定側係合部61は、本例では、ガイド部材31の底板部分54aに形成されている側板部分52aが用いられている。この側板部分52aは先に図5(a)を参照して説明したように、ガイド溝形成部52のプリンター本体側の側板部分の延長部分である。これに対して、ガイド幅規定部材32の側のスライド側係合部62は、図5(b1)から良く分かるように、ガイドレール53を、その左端から広幅で直線状に延長して形成した板状部分である。
【0054】
ロックレバー34は、図8(a1)、(a2)から分かるように、全体として台形状輪郭をしているレバー本体板71を備えており、このレバー本体板71の上端には、これに直交する状態に長方形輪郭の平板状のレバー操作部72が一体形成されており、この上面72aは平坦面となっている。レバー本体板71の一方の端面(プリンター本体側を向く端面)の表面輪郭形状は僅かに凸の凸曲面71aによって規定されており、反対側の端面の表面輪郭形状は上面72aから滑らかに連続して延びる傾斜面71bによって規定されている。アンロック位置34Bにおいてガイド幅規定部材32から上方に突出するレバー部分46は、レバー操作部72とレバー本体板71の一部である。レバー本体板71の下端における傾斜面71bの側の角には、レバー本体板71に対して直交方向に延びる一定長さの旋回軸部73が一体形成されている。旋回軸部73には、その旋回中心線45から半径方向に延びる一定長さの矩形板状の旋回腕74が一体形成されている。また、傾斜面71bには当該傾斜面71bから直交する方向に突出している位置決め板75が一体形成されている。
【0055】
一方、板バネ63は、図8(b)から分かるように、一定幅の板バネ部材を全体としてU状に折り曲げた形状をしている。板バネ63は、図8(b)、図6(d)、図7(d)から分かるように、固定側係合部61に掛止される側板部分81と、この端から折れ曲がって延びている連結板部分82と、連結板部分82の端から折れ曲がって延びている側板部分83とを備えている。側板部分83はロックレバー34の旋回軸部73に掛止される部分であり、旋回軸部73の外周面に掛止されるように鈍角に折れ曲がった形状となっている。
【0056】
ロックレバー34は、幅方向Bに延びる旋回軸部73を中心としてロック位置34Aからアンロック位置34Bまでの間を旋回可能であると共に媒体ガイド方向Aに僅かな量だけ移動可能な状態で、ガイド部材31とガイド幅規定部材32の間に挟まれて保持されている。また、図6(d)、図7(d)から分かるように、媒体ガイド方向Aに沿って、固定側係合部61、スライド側係合部62および旋回軸部73がこの順序で位置し、スライド側係合部62には旋回腕74の先端74aが当接している。また、板バネ63は、媒体ガイド方向Aにおいて固定側係合部61と旋回軸部73の間に架け渡した状態で、ガイド部材31とガイド幅規定部材32の間に挟まれて保持されている。
【0057】
ここで、図7(d)に示すように、ロックレバー34がアンロック位置34Bに旋回している状態では、その旋回腕74が媒体ガイド方向Aに対して斜め上方に傾斜した旋回姿勢で先端74aがスライド側係合部62に当っている。ロックレバー34をアンロック位置34Bからロック位置34Aに旋回すると、これに伴って旋回する旋回腕74が斜め上方に傾斜した姿勢から媒体ガイド方向に向く水平な姿勢に切り替わる。
【0058】
この結果、図6(d)に示すように、旋回腕74によってスライド側係合部62が固定側係合部61の側に押し出される。換言すると、固定側係合部61は固定位置にあり、これに当接しているスライド側係合部62も媒体ガイド方向Aには移動しないので、ロックレバー34が全体としてスライド側係合部62から離れる方向に移動する。これにより、固定側係合部61とロックレバー34の旋回軸部73の間に架け渡されている板バネ63が媒体ガイド方向Aに押し広げられる。これにより発生した板バネ63の弾性復帰力によって、スライド側係合部62が固定側係合部61に強く押圧されて、これらの間が摩擦係合したロック状態が形成される。ロック状態が形成されると、ガイド幅規定部材32がスライド不可の状態になりガイド部材31に固定される。
【0059】
ロックレバー34を、図6に示すロック位置34Aから図7に示すアンロック位置34Bに旋回すると、上記とは逆に、ロック・アンロック機構33のロックが解除されて、ガイド幅規定部材32がガイド部材31に対して幅方向にスライド可能なアンロック状態に切り替わる。
【0060】
本例の記録媒体ガイド機構30では、上記のように、スライド式のガイド幅規定部材32は、ガイドレール53とガイド溝51との係合によって幅方向に円滑にスライド可能である。また、これらの係合位置が双方の部材31、32における媒体ガイド方向Aの中央に位置しているので、ガイド幅規定部材32が媒体ガイド方向Aにがたつくことなく、ガイド幅規定部材32をスライドさせることができる。また、ガイドレール53とガイド溝51の延長上の位置に、ロック・アンロック機構33によるロック位置(固定側係合部材61とスライド側係合部材62の摩擦係合位置)が配置されているので、ガイド幅規定部材32を、媒体ガイド方向Aにがたつくことなく、確実にロックすることができる。よって、腰の強い通帳、厚手の記録媒体を、媒体ガイド方向Aに確実かつ円滑にガイドすることができる。
【0061】
次に、本例の記録媒体ガイド機構30では、アンロック状態においてガイド幅規定部材32から突出したロックレバー34のレバー部分46の表面輪郭形状が、図7(a)、(b)に示すように、スライド側ガイド幅規定面44に直交する方向(幅方向B)から見た場合に、レバー操作部72の平坦な上面72aと、この端から延びている凸曲面71aとによって規定されており、凸曲面71aは、ガイド幅規定部材32の端板部分42におけるプリンター本体側の上面部分42aの表面輪郭形状に滑らかに連続している。
【0062】
本例のプリンター1においては、先に図1(b)を参照して説明したように、第2の印刷動作においては、ファンフォールド紙が、トラクターユニット20を介して装置後側の媒体入口6から媒体搬送路12に挿入される。挿入されたファンフォールド紙は媒体搬送路12に沿って装置前方に搬送されて印刷ヘッド13によって印刷された後に、媒体出入口4から記録媒体ガイド機構30のガイド面38、43上に排出される。このようにプリンター本体側から送り出される記録媒体の幅が、スライド式のガイド幅規定部材32によって規定されるガイド幅に一致していない場合、特に、ガイド幅規定部材32が送り出される記録媒体の端よりも内側に位置している場合には、媒体出入口4から送り出された記録媒体は、ガイド幅規定部材32の端板部分42の上面部分42aに乗り上げ、当該上面部分42aに沿って送り出される。
【0063】
アンロック位置34Bのままロックレバー34が放置されている場合に、ガイド幅規定部材32から上方に突出しているロックレバー34に、送り出される記録媒体が衝突し、当該記録媒体の送り出し動作が円滑に行われないおそれがある。本例では、図7(a)、(b)から分かるように、ガイド幅規定部材32の上面部分42aに対して、突出状態のロックレバー34の上面部分(71a、72a)が滑らかに連続した表面輪郭形状となっている。よって、ガイド幅規定部材32に乗り上げた状態で記録媒体が送り出された場合に、たとえ、ロックレバー34がアンロック位置34Bのままであっても、図7(b)において一点鎖線で示すように、記録媒体はガイド幅規定部材32の上面部分42aからロックレバー34の上面部分(71a、72a)に沿ってガイドされるので、記録媒体の送り出し動作に支障を来すことがない。
【0064】
勿論、ロック状態になっている場合には、図6(a)、(b)に示すように、ロックレバー34の平坦な上面72aが、ガイド幅規定部材32におけるプリンター本体側の上面部分42aと反対側の上面部分42bとの間を滑らかに繋ぐ傾斜表面となるので、この場合においても、ガイド幅規定部材32の上面に乗り上げた記録媒体の送り出し動作に支障を来すことがない。
【0065】
(記録媒体ガイド機構の組み付け)
次に、図9は記録媒体ガイド機構30の組み付け手順を示す説明図である。図9(a1)、(a2)に示すように、ガイド幅規定部材32の裏面90には、ガイドレール53の端に連続してロック・アンロック機構33のスライド側係合部62が形成されている。このスライド側係合部62は、ガイド幅規定部材32の裏面90から僅かに浮き上がった状態に形成されており、一方の端が裏面90から垂直に突出している側板91によって支持され、他方の端が裏面90の縁端に形成した媒体ガイド方向Aに延びるリブ92によって支持されている。側板91の側にもリブ92に平行に延びるリブ93が形成されている。板バネ63はスライド側係合部62と裏面90の間の隙間を通してガイド幅規定部材32の裏面90に取り付けられる。
【0066】
図9(b1)、(b2)には板バネ63を取り付けた状態を示してある。板バネ63を取り付けた後は、ガイド幅規定部材32の裏面90にロックレバー34を取り付ける。ガイド幅規定部材32の裏面90の端には、板バネ63の取り付け部分を挟み、媒体ガイド方向Aの両側の部位に、ロックレバー34のレバー本体板71の一方の端部分と、当該レバー本体板71の他方の端から突出している位置決め板75を差し込み可能な差し込み溝94、95が形成されている。これらの差し込み溝94、95に差し込むことにより、ロックレバー34がガイド幅規定部材32に取り付けられる。
【0067】
図9(c1)、(c2)、(c3)はロックレバー34を取り付けた状態を示している。この状態では、板バネ63がスライド側係合部62とロックレバー34の旋回軸部73によって、ガイド幅規定部材32の裏面90から外れないように保持される。また、ロックレバー34はガイド幅規定部材32に対して媒体ガイド方向Aに所定量だけ移動(スライド)可能な状態に差し込まれている。
【0068】
この後は、ガイド幅規定部材32をガイド部材31に位置決めして、ガイドレール53をガイド溝51に差し込むと共に、両側の外れ防止フック56a、56b、57a、57bをガイド部材31の側に嵌め込み、固定する。この結果、ロックレバー34および板バネ63がガイド部材31とガイド幅規定部材32の間に挟まれ、これらに組み付けられた状態になる。
【0069】
このように、本例の記録媒体ガイド機構30は、ガイド部材31に対するガイド幅規定部材32、ロック・アンロック機構33の組み付けを、固定ネジ、ビスなどを用いることなく簡単に行うことができる。
【0070】
(その他の実施の形態)
上記の例では、ガイド部材31の側に固定側ガイド幅規定面39を配置しているが、たとえば、先行技術として引用した特許文献1(特開2010−173207号公報)に開示されているように、両側にスライド式のガイド幅規定部材を配置し、これらを連動させて幅方向に移動させるようにしてもよい。
【0071】
また、ロック・アンロック機構としては、上記の板バネを使用した機構以外の機構を用いることも可能である。例えば、ロックレバーによって回転する偏心カムなどを用いて、固定側係合部にスライド側係合部を押圧して係合させる機構を用いることができる。また、板バネ以外の付勢部材を用いることも可能である。例えば、付勢部材としての引張コイルバネを、固定側係合部と旋回軸部の間に引張り状態で架け渡しておくことも可能であり、これ以外の付勢部材であってもよい。
【符号の説明】
【0072】
1・・プリンター、2・・プリンター本体、3・・外装ケース、4・・媒体出入口、5・・媒体ガイド、6・・媒体入口、10・・プリンター本体フレーム、11・・側壁部、12・・媒体搬送路、13・・印刷ヘッド、14・・プラテンローラー、15・・前側搬送ローラー、16・・前側押圧ローラー、17・・後側搬送ローラー、18・・後側押圧ローラー、19・・媒体搬送機構、20・・トラクターユニット、21・・キャリッジ、22・・キャリッジガイド軸、23・・ガイド部材、25・・プラテンギャップ調整機構、30・・記録媒体ガイド機構、31・・ガイド部材、32・・ガイド幅規定部材、33・・ロック・アンロック機構、34・・ロックレバー、34A・・ロック位置、34B・・アンロック位置、35・・ガイド板部分、36・・左端板部分、37・・右端板部分、38・・ガイド面、38a・・左端縁、39・・固定側ガイド幅規定面、40・・凹部、41・・ガイド板部分、42・・端板部分、42a,42b・・上面部分、43・・スライド側ガイド面、44・・スライド側ガイド幅規定面、45・・旋回中心線、46・・レバー部分、50・・スライドガイド機構、51・・ガイド溝、52・・ガイド溝形成部、52a・・側板部分、53・・ガイドレール、54・・底板部分、54a・・底板部分、56,57・・突出板、56a,56b,57a,57b・・外れ防止フック、58,59・・フック嵌め込み溝、58a,59a・・フック係合面、61・・固定側係合部、62・・スライド側係合部、63・・板バネ、71・・レバー本体板、71a・・凸曲面、71b・・傾斜面、72・・レバー操作部、72a・・上面、73・・旋回軸部、74・・旋回腕、81・・側板部分、82・・連結板部分、83・・側板部分、90・・裏面、91・・側板、92,93・・リブ、94,95・・差し込み溝、A・・媒体ガイド方向、B・・幅方向(スライド方向)、P・・記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンターに送り込む記録媒体あるいはプリンターから送り出される記録媒体をガイドする記録媒体ガイド機構であって、
前記記録媒体を予め定めた媒体ガイド方向にガイドするためのガイド面を備えたガイド部材と、
前記ガイド面における媒体ガイド幅を規定するためのガイド幅規定面を備え、所定方向にスライド可能な状態で前記ガイド部材に取り付けられているガイド幅規定部材と、
ロックレバーを備え、当該ロックレバーがアンロック位置にあると前記ガイド幅規定部材を前記ガイド部材に対してスライド可能なアンロック状態に保持し、前記ロックレバーがロック位置に切り替わると前記ガイド幅規定部材を前記ガイド部材に係合させたスライド不可のロック状態に切り替えるロック・アンロック機構とを有し、
前記ロックレバーは前記ガイド幅規定部材に取り付けられていることを特徴とする記録媒体ガイド機構。
【請求項2】
請求項1において、
前記ロックレバーは、前記ロック位置にある場合に比べて前記アンロック位置にある場合の方が、前記ガイド幅規定部材の表面からより多く突出した状態になるレバー部分を備えていることを特徴とする記録媒体ガイド機構。
【請求項3】
請求項2において、
前記ロックレバーは前記ガイド幅規定部材のスライド方向に直交する方向に移動して前記ロック位置および前記アンロック位置に切り替わることを特徴とする記録媒体ガイド機構。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記レバー部分は、前記アンロック位置において前記ガイド幅規定部材から前記ガイド幅規定面に沿った方向に突出した状態になり、
前記ガイド幅規定部材から突出した状態における前記レバー部分の表面輪郭形状は、前記媒体ガイド方向に沿って見た場合に、前記ガイド幅規定部材の表面輪郭形状に滑らかに連続する凸状の輪郭形状となっていることを特徴とする記録媒体ガイド機構。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちのいずれかの項において、
前記ガイド幅規定部材を前記ガイド部材に対してスライド可能に取り付けているスライドガイド機構は、ガイド溝と、当該ガイド溝にスライド可能な状態で挿入されているガイドレールとを備えており、
前記ガイド部材には、前記ガイド溝および前記ガイドレールのうちの一方の部位が、当該ガイド部材の前記媒体ガイド方向の中央の部位において、前記ガイド幅規定部材のスライド方向に延びる状態に形成されており、
前記ガイド幅規定部材には、前記ガイド溝および前記ガイドレールのうちの他方の部位が、当該ガイド幅規定部材における前記媒体ガイド方向の中央の部位において前記スライド方向に延びる状態に形成されており、
前記ロック・アンロック機構は、前記ガイド部材の側に形成した固定側係合部と、前記ガイド幅規定部材の側に形成したスライド側係合部と、前記スライド側係合部を前記固定側係合部に対して前記媒体ガイド方向に沿った方向から押圧して係合させることにより前記ロック状態を形成する付勢部材とを備えており、
前記固定側係合部は、前記ガイド溝が形成されているガイド溝形成部および前記ガイドレールのうちの前記ガイド部材に形成されている側の部位、あるいは、当該部位を前記スライド方向に延長させた部分に形成されており、
前記スライド側係合部は、前記ガイド溝形成部および前記ガイドレールのうちの前記ガイド幅規定部材に形成されている側の部位、あるいは、当該部位を前記スライド方向に延長させた部分に形成されていることを特徴とする記録媒体ガイド機構。
【請求項6】
請求項5において、
前記ロックレバーは、前記スライド方向に延びる旋回軸部を中心として前記ロック位置から前記アンロック位置までの間を旋回可能であると共に前記媒体ガイド方向に移動可能な状態で、前記ガイド部材と前記ガイド幅規定部材の間に挟持されており、
前記旋回軸部には、その中心軸線から半径方向に延びる旋回腕が形成されており、
前記媒体ガイド方向に沿って、前記固定側係合部、前記スライド側係合部および前記旋回軸部がこの順序に配置され、前記スライド側係合部には前記旋回腕の先端が当接しており、
前記付勢部材は、前記媒体ガイド方向において前記固定側係合部と前記旋回軸部の間に架け渡した状態で、前記ガイド部材と前記ガイド幅規定部材の間に挟持されている板バネであり、
前記ロックレバーが前記アンロック位置から前記ロック位置に旋回すると、これに伴って旋回する前記旋回腕によって前記スライド側係合部が前記固定側係合部の側に押し出され、前記旋回軸部と前記固定側係合部の間に架け渡されている前記付勢部材が引き伸ばされることにより発生する弾性復帰力によって、前記スライド側係合部が前記固定側係合部に摩擦係合した前記ロック状態が形成されることを特徴とする記録媒体ガイド機構。
【請求項7】
請求項1ないし6のうちのいずれかの項において、
前記ガイド部材は、前記ガイド面が形成されているガイド板部分と、前記ガイド幅規定面に対峙している固定側ガイド幅規定面が形成されている端板部分とを備えており、
前記ガイド幅規定部材は、前記ガイド面と同一平面上に位置するスライド側ガイド面が形成されているスライド側ガイド板部分と、前記ガイド幅規定面が形成されているスライド側端板部分とを備えており、
前記ガイド部材の前記ガイド板部分には、前記ガイド幅規定部材がスライド可能な状態で取り付けられており、
前記ロックレバーは、前記スライド側端板部分に取り付けられていることを特徴とする記録媒体ガイド機構。
【請求項8】
印刷ヘッドによる印刷位置に記録媒体を送り込むと共に印刷位置を経由した後の記録媒体を送り出す媒体供給・排出口と、
前記媒体供給・排出口に取り付けられている記録媒体ガイド機構とを有し、
前記記録媒体ガイド機構は請求項1ないし7のうちのいずれかの項に記載の記録媒体ガイド機構であることを特徴とするプリンター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−43702(P2013−43702A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180193(P2011−180193)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】