説明

記録媒体ローディング装置

【課題】記録媒体を内蔵し、本体との接続用I/Fコネクタを備えた可搬型カートリッジ(iVDR)のローディング装置で、カートリッジを本体装着後、コネクタ接続直前までの駆動負荷の少ない搬送を、駆動源の減速により第一の速度で行い、負荷の大きいコネクタ嵌合工程を減速比の大きい第二の速度で行うよう減速比の異なるピニオンへの切り替えにより行うカートリッジ搬送機構を簡単な構造で実現する。
【解決手段】ラックと噛合する第一ピニオンから第二ピニオンへ噛合が変わるとき、双方のピニオンが同時に噛合わない間隙を設ける。回転駆動源の一方向回転を、カートリッジ装着工程と排出工程に対応付けた正・逆方向回転する回転方向変換手段を駆動源とラックピニオン間に設ける。コネクタ嵌合後と、カートリッジ排出後にメインギヤから反転ギヤへ回転を伝達しない区間を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部との接続用コネクタを有する記録媒体を、電子機器本体の装着口へ手動で装着後、機器内部へローディングし、相手側コネクタと嵌合させ電気接続を完了するまでの装着工程、並びに、上記嵌合状態のコネクタ同士を外し、記録媒体を機器外部への取り外し可能位置まで搬送するようにしたローディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、記録媒体として内部にハードディスクや、フラッシュメモリーなど半導体素子を筐体内に配置し、外部との接続用インターフェスコネクタを該筐体の外面に臨んで設けたものがみられる。図2の斜視図は一例として可搬使用の記憶媒体1を示す。同図で101は外部との接続用インターフェスコネクタで、このコネクタを介しデータの記録や、記録されたデータの読み出しが行われる。
【0003】
図3にこの記録媒体1が使用される電子機器としてコンピュータ201を示す。このコンピュータ201には記録媒体1の専用受け口である装着口301が設けられ、コネクタ101を前方にして所定の深さまで差し込むと自動的に記録媒体1が吸い込まれるローディング装置3が実装されている。記憶媒体1がローディング装置3によりコンピュータ201内に搬送され、コネクタ101とローディング装置側のコネクタとが嵌合し接続状態となりデータの書込み、読み出しが可能となる(不図示)。
【0004】
更に、装着された記録媒体をコンピュータから取り出すときは、釦302を押すことで内蔵する排出機構が動作し、装着口301より記憶媒体1の後部が露出し、手で取り出し可能状態となる。
【0005】
上述の如く接続用のコネクタを有する記録媒体をローディングし機器本体と接続する装置では、記録媒体をトレー又はシャーシなどに装着し、トレーに取付けられたラック又はカム受けピンをそれぞれに係合したピニオンやカムを駆動源であるモータで駆動し搬送する構造がとられている(特許文献1、2、3)。
【0006】
その際、装着動作または装着検知手段により記録媒体左右の縁に設けた凹部(図2、102など)に嵌入する係止部材を動作させて、トレー又はシャーシと記憶媒体が一体となった動きを行う(特許文献1)。これによりトレー又はシャーシと記憶媒体は装置内を搬送される。
【0007】
記録メディアの搬送最終段階に、搬送負荷が大きくなるコネクタとの嵌合工程が有り、この高負荷時にピニオンーラック搬送からカムーピン搬送などの別の搬送方式に切替え、送り速度を低下させつつも力強く動かす構成がとられる(特許文献1)。
【0008】
又、装着最終工程でトレーを所定位置に停止させる際、駆動モータへの通電停止後、慣性による過剰押圧力を緩和させるために駆動力伝達機構内にすべりクラッチを設け力を逃がす構成が採られている(特許文献3)。
【0009】
電子機器内に装着された記録媒体を取り外す排出工程では、ピニオンまたはカムを装着時とは逆方向に回転させることにより行われる。これは、一般的には駆動源であるモータに逆電圧を印加し、モータを逆回転させることにより行われる。更にトレーの装着、脱却停止直前にトレーの移動を利用しスイッチを切換え、駆動モータの停止と印加極性切換えを行うモータ駆動回路方式も提案されている(特許文献2)。
【0010】
なお、参考文献4は後述する回転方向変換手段に関するものである。
【特許文献1】特開2003-99722号公報
【特許文献2】特開2004-030791号公報
【特許文献3】特開2004-005111号公報
【特許文献4】特開平4-288264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記従来例の記録媒体ローディング装置では以下の課題があった。
【0012】
1)通常のトレー搬送の駆動負荷にあわせると、最終工程であるコネクタの嵌合時には負荷は更に大きいため、コネクタが完全に接続できない。
【0013】
2)コネクタ嵌合時の負荷に見合った駆動力を出す為、モータの減速比を大きく取ると、トレー搬送スピードが遅くなり、記録媒体の着脱に時間が掛かる。
【0014】
3)送り速度が速いラックによるトレー送りから、コネクタ嵌合時にカムによる低速の可変送りへと切換えることによりコネクタ嵌合力を補う構成は、トレー搬送機構が複雑な構造となるのは避けられない。又ピニオ駆動からカム駆動またはその逆に駆動を切替えタイミングで、負荷や慣性などによりトレーの動きが一定にならずうまく引き渡しが行われないことがある。
【0015】
又記憶媒体の装着、脱却時のトレー双方向動作について言えば、
4)モータの可逆回転で装着と脱却のトレー双方向駆動を行う為、モータ駆動制御にマイクロコンピュータなどでモータ電源の極性反転を制御する必要がある。
【0016】
5)モータを停止するタイミングも、トレーの到来を検知して停止するように制御するのが一般的であるが、所定位置の前方でトレーが停止したり又所定位置へ到着してもトレーの慣性により所定位置で停止せず、嵌合するコネクタや搬送機構に必要以上の負荷をかけてしまう。
【0017】
といった課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成する為の本発明に係る第一の構成は、
記憶媒体を装着した状態で移動可能なトレーであって、
該トレーには前記移動方向に沿って、少なくとも移動ストロークをカバーする長さのラックを有し、
前記トレーの移動動力源となるモータからの伝達により第一の速度で回転する第一ピニオンギヤと、
該モータ回転の伝達により前記第一ピニオンギヤの速度より低速の第二の回転速度で回転する第二ピニオンギヤと、
により前記ラックが駆動され、
前記第一ピニオンギヤが前記ラックと噛合する工程から、前記第二ピニオンに前記ラックと噛合する工程に移行する間、双方のピニオンギヤが前記ラックと噛合しないタイミングを有する記憶媒体ローディング装置である。
【0019】
前記第一ピニオンギヤは同軸上に一体の減速ギヤを有し、第一ピニオンが前記ラックとの噛合が終了してから前記減速ギヤの回転が減速手段を介し前記第二ピニオンを駆動し、ラックと噛合し前記トレーに動力を伝達する記憶媒体ローディング装置である。
【0020】
前記第二ピニオンギヤと前記ラックの噛合によるトレーの移動工程は、前記記憶媒体のコネクタが嵌合接続する工程を含む記憶媒体ローディング装置である。
【0021】
更に本発明に係る第二の構成は、前記モータと前記第一ピニオンギヤとの間に、前記モータの一方向回転を双方向回転に変換する回転方向変換手段を設けた記憶媒体ローディング装置である。
【0022】
前記回転方向変換手段は前記モータからの駆動力を伝達するための第一回転部材と、
前記第一回転部材からの回転を伝える第一の状態と、伝えない第二の状態との二つの状態を有する第二回転部材と、
前記第二回転部材の前期第一の状態時に回転を受け第一の回転方向へ回転し、かつ前記第二の状態時には前記第一回転部材からの回転を請け、前記第一の回転方向と逆方向に回転する第三回転部材によりなる記憶媒体ローディング装置である。
【0023】
前記第一回転部材の半回転により、前記トレーの装着工程を、他の半回転により前記トレーの脱去工程を対応付けた記憶媒体ローディング装置である。
【0024】
前記トレーの装着工程と脱却工程の間、脱却工程と装着工程の間のそれぞれには、前記第二回転部材と前期第三回転部材の双方が前記第一回転部材からの回転を受けないタイミングを設けた記憶媒体ローディング装置である。
【0025】
前記第一回転部材からの回転を受けない前記タイミングを、
前記第一回転部材の回転位置を検知する検知手段を設け、
該検知手段の検知情報に基づき、前記モータを停止させることで、前記タイミングに前記トレーを停止させる記憶媒体ローディング装置である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ピニオンの回転によりラックを駆動する方式をとりながら、負荷の少ない一般のトレー搬送と、負荷の増大するコネクタ嵌合時で、同一のラックに対しピニオンを切替え減速比を変える事で、負荷変動に対する最適な駆動力を得ることが出来る。
【0027】
又、2つのピニオン間で駆動を切換えるとき、双方のギヤが同時に噛合わないタイミングを設ける事でラック歯との噛合いをスムースに行え、ピニオン間の動力引き渡しが安定する。
【0028】
更に、駆動源であるモータと前記ピニオン間に回転方向変換機構を設けたので、記憶媒体の装着と、排出で、トレーの移動方向が逆向きであるにも係らずモータは常に一方回転で駆動することができ、回転方向の制御を不要とする事が出来る。
【0029】
更に、モータとピニオン間に装着と排出の一サイクルに対応して一回転する回転体を設けたので、その回転位置を一つの検出器で検出する事で、トレー装着、排出動作後のモータ停止を行う事が可能である。
【0030】
更に、トレーは所定ストロークの装着、排出搬送工程後、所定位置で正確に停止させる必要がある。前記回転体は各工程に対応したギヤ歯の割当てとピニオンに回転を伝達しない欠歯部が割当てられているので、ピニオンへの回転駆動の後、ピニオンへ回転を伝達しない一定の期間が設けられている。その間にモータを停止するれば良く、従ってモータ停止のタイミングに幅があり、停止制御がた易くなると供に、モータの慣性による停止誤差などの影響も取り除く事が出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
(第1の実施形態)
以下本発明の実施の形態を図を用いて説明する。
【0032】
図2は前述した携帯型の記憶媒体1の斜視図を示す。この記憶媒体1には前述の構造に加え更に筐体左右側面に装着ガイドとなる一対の溝103が装着方向に沿って形成されている。この記憶媒体1を装着、脱却する為のローディング装置の例をもって本発明一例を示す。
【0033】
図4(a)、(b)はそれぞれ本発明のローディング装置3の平面図と正面図を示す。301は記録媒体が装脱される開口部で、開口部近傍の左右垂直壁に一対のガイドレール303が設けられている。記録媒体1が装着された時左右溝103(図2)が該ガイドレール301と嵌合し案内され、後述するコネクタ同士が嵌合するまでの間、ローディング装置内にあって正確な位置を保ち搬送される。
【0034】
該開口301は略コの字形状に形付けられたトレー304と、基台305によって形成される。基台305の左右両側にはほぼ全長に渡り、一対の平行なトレーガイド306が形成され該トレーガイドによってトレー304がローディング装置内を案内され移動する。ローディング装置3の開口301から見て奥位置に、機器本体とのインタ−フェース回路が設けられた回路基板307上に前記記憶媒体側コネクタ(図2、101)と嵌合し電気接続を行う為のコネクタ308が位置する。
【0035】
ここで記憶媒体がトレーに挿入された時の係止機構を説明する。
【0036】
記憶媒体係止機構はトレー304に設けられた係止片312R、312Lが左右に形成された前記凹部102に入り込み左右から挟持される事で行われる。
トレー304の左右上面には対称形状のスライド片R 309R、スライド片L 309Lがトレー304の中心に向かい斜め方向に移動可能状態に支持されている。トレー304の上面には左右に二対の傾斜長孔310R、310Lが空けられ該長孔に対してスライド片下面に設けられた二対の突起311R、311Lが嵌入し傾斜スライド時の案内となっている。記憶媒体が挿入されていないの状態では、該左右のスライド片R、Lは図示しないバネ等の付勢手段により図4(a)で示す左右最外位置に停止している。
【0037】
又、右側スライド片R 309Rには一対の突起311Rの中間に係止片312Rが傾斜長孔311Rと同様の傾斜で下方に凸形状に設けられ、一部が前述のトレーガイド306に刻まれた傾斜溝313Rに移動可能状態に入り込んでいる。更に記憶媒体挿入方向前端位置には、挿入経路内に突出し挿入時に記憶媒体の先端と当接する検出片314Rがスライド片R 309Rに設けられる。
【0038】
同様に左側スライド片L 309Lには上述と対称形の係止片リブ312L、検出片314Lと左側トレーガイド306に傾斜溝313Lが対称位置に配置される。従って、記憶媒体が未挿入の場合はトレー304は左右の係止片312R、312Lが傾斜溝313R、313Lに入り込みロック状態にある。
【0039】
図5の平面図(a)及び正面図(b)は記録媒体1がローディング装置3に挿入され先端がスライド片L、Rを作動させ、トレー304と係止状態になった時の位置関係を示す。左右の係止片312R、312Lの内側先端は左右の記憶媒体凹部102に入り込み狭持去され以後ローディング装置の動力によりトレーが内部に取り込まれている間は本係止関係が維持され一体的に動作する。
【0040】
同時に係止片312R、312Lの外側端は左右トレーガイド306の傾斜溝313R、313Lから外れる事により、トレーは記録媒体1と一体となって挿入方向の動きが可能となる。本図の状態で、トレー304への装着駆動力が働きコネクタ嵌合に向けて稼動する事になる。
【0041】
以下に本発明の主題であるトレー駆動部の機構について図1を用いて説明する。図1(a)はローディング装置3の基台305の一部を削除した平面図である。トレー304は図1(b)に示す如く装着方向右側部が基台の下面に延出し、その先にラック315が固定されている。該ラック315は少なくともトレー304が記録媒体挿入されてコネクタが嵌合するまでの装着工程で駆動される全ストロークの長さを持ち、噛合するピニオンギヤの回転が直線運動に変換されることで行われる。トレーを駆動するモータと、動力伝達機構は、基台305の下面に固定されている。
【0042】
該ラック315と噛合うピニオンギヤは高速ピニオンギヤ316と低速ピニオンギヤ317の適宜な切替えによって行われ、装着と脱却工程の双方において一般のトレー搬送とコネクタ嵌合とで切換えられる。
【0043】
先ず記録媒体が装着され、コネクタが嵌合し装着工程が完了するまでの動作を、順次回転駆動源であるモータ318からの動力伝達経路順に従って説明する。
モータ318は一般に入手可能な直流モータ、ステップモータ等で、駆動制御が容易な一方向のみの回転で使用する。回転開始のきっかけはトレー304に記憶媒体がし挿入され、前述の如く左右スライド片309R、309Lが前方へ押圧される(図5参照)ことにより、図示しないスイッチがONしモータ318が回転開始する。
【0044】
モータ318は回転軸が装置に対し水平方向に取付けられており、その出力軸にウオーム319が固定され、メインギヤ310の最下部に形成されたウオームギヤ320aへと直角方向の回転変換と共に減速伝達される。メインギヤ320の回転軸はほぼ垂直に配置され、以下後段に噛合するギヤ類の回転軸方向も同様である。
【0045】
メインギヤ320は概略3つ機能部分に別れ、前述最下部の動力入力部であるウオームギヤ320a部、大径平歯車よりなる最上部のA歯車320b部、中間位置のB歯車320cよりなり、これらが一体となっている。A歯車320bは更に21歯の平歯車が形成されたA平歯車部320b−a、5歯分の歯車を歯先円の径で接続したA楔部320b−b、残りの円周を歯底円の径で形成したA欠歯部320b−cとに分かれている。A歯車320bの円周に全て歯車を形成した場合、58歯の歯車となる。
【0046】
中間に位置するB歯車320cは同様に21歯の平歯車が形成されたB平歯車部320c−a、5歯分の歯車を歯先円の径で接続したB楔部320c−b、残りの円周を歯底円の径で形成したB欠歯部320c−cとに分かれている。B歯車320cも円周に全て歯車を形成した場合、58歯の歯車となる。
【0047】
各機能部の配置は、図1の平面図の矢印に示す如く、メインギヤ320の回転方向はモータ318の一方向回転を受けCW(右回転)のみの回転となり、A歯車320bは定位置から見るとA平歯車部320b−a→A楔部320b−b→A欠歯部320b−c→A平歯車部320b−a→・・・・の順に各機能部が廻ってくる。B歯車320cも同様の順に配置してあるが、A歯車320bとの配置関係はメインギヤ320の中心から見て所定角の位相を持って配置される。
【0048】
前記メインギヤ320には321、322で示す反転ギヤAと反転ギヤBが噛合する。
【0049】
該反転ギヤA、Bは上下2段のギヤが一体に形成され、各上段ギヤ321aと322aはメインギヤ320の歯車部とモジュールの等しい歯車で、22歯の歯車と、欠歯3歯分の歯底円の径で構成さた欠歯部よりなる。各下段部321b、322bは上部の歯車と同径の欠歯のない25歯の完全歯車で互いに噛合関係にある。
【0050】
図6(a)に上段の噛合い関係を示す平面図を示し、図6(b)に高さ関係を示す側面図及び図(c)に下面より見た下段歯車の噛合い関係を示す平面図を示す。
【0051】
図7の斜視図によって更に、メインギヤ320、該反転ギヤA 321、反転ギヤB 322の3つの歯車全体の噛合い位置関係を示す。これら上下2段の機能を有する3つの歯車によって回転方向が変換される機構が構成される。
【0052】
回転方向変換手段は、メインギヤ320のCW方向の一方向回転が、出力ギヤとし反転ギヤB 322の下段ギヤ322bのCW、CCW(左回転)の往復回転に変換される。その回転状況を特徴のあるポイントである図8(a)〜(g)の平面図で示し説明する。
【0053】
なお、メインギヤから伝達を受けている方の反転ギヤは、回転方向を示す矢印を実線で、受けていない方の反転ギヤの回転方向を示す矢印は破線で示してある。
【0054】
図8(a)はトレー304に記憶媒体1が挿入されていない時の、即ち初期位置でのギヤ噛合い関係を示す。この時点でメインギヤ320の上下段双方の歯車は反転ギヤA、Bの双方のどの歯車とも噛合しておらず、下段の楔320c−bが反転ギヤBの欠歯部322a−bに面しており、回転抑止している。反転ギヤA 321の上段歯車321a−aで欠歯部に面する最初の1歯目はメインギヤ上段の歯部320b−aの歯先円軌跡内に位置している。
【0055】
トレー304に記憶媒体が挿入され、モータ318が回転開始するとメインギヤはCW方向の回転を開始し、図8(b)の状態へ移行する。この状態では楔320c−bが反転ギヤB欠歯部322a-bから外れ回転可能状態となり、反転ギヤAの一歯目と、メインギヤ一歯目が噛合い反転ギヤAにCCW方向の回転が伝えられる。反転ギヤB 322へは反転ギヤAとのギヤ噛合いによりCW方向の回転が伝えられる。
【0056】
図8(c)は引き続き回転が進行し反転ギヤ歯部321a−aの13歯目がメインギヤの歯車と正対する。この状態で後述するラック送りが高速ピニオンギヤ316から低速ピニオンギヤ317へと引渡される。
【0057】
図8(d)は反転ギヤAの歯部321a−aの22歯目最終歯が楔部320b−bの前縁で押され、欠歯部に進入する直前の状態を示す。
【0058】
図8(e)は楔部320b−bが反転ギヤAの欠歯部321a−bに入り込み、反転ギヤA、Bともに回転を停止した状態である。反転ギヤBの上段歯部322a−aの一歯目は、メインギヤ下段のギヤ部320c−cの歯先円軌跡内に入り込んだ位置で停止している。
【0059】
該各歯車位置で、トレーはローディング装置の最奥位置に搬送され停止し、装着工程が終了する。図8(c)から(e)までの間で、後述詳細開示する低速ピニオンギヤ317のラック送りにより駆動力を要するコネクタ嵌合が行われ、記録媒体と本体装置の間の信号授受が可能状態となる。又、メインギヤ320は図8(a)から当図8(e)の間で半回転している。
【0060】
次に、エジェクト釦が押される事から開始する脱却工程を、嵌合しているコネクタが外れ、記憶媒体が手動取り出し可能位置まで搬送されるまでの動作を手順を追って説明する。
【0061】
装着状態の記憶媒体1を取り出す場合、前述のエジェクト釦302(図3)が押され、モータ制御部(不図示)より駆動電圧が印加され回転開始する事によってメインギヤ320の回転が開始する。図8(f)はメインギヤの回転開始に引き続き反転ギヤが回転開始する状態を示している。楔部320b−bが欠歯部321a−bから外れ、反転ギヤBのギヤ部322a−a第一歯目とメインギヤ320下段の歯部320c−c一歯目が噛合し始める状態を示す。同図の矢印で示すように反転ギヤA321、B322は前の回転方向とは逆のそれぞれCW、CCW方向の回転を開始する。しかも、反転ギヤBはメインギヤ下段の320Cから歯車噛合いにより回転力を受け、反転ギヤAは反転ギヤBからの駆動力を受けて回転する。これによりトレー304の脱却工程が開始し、コネクタの嵌合が外される。
【0062】
なお、メインギヤ320が回転しながら楔320b−bにより反転ギヤAの回転阻止を開始した後、即ち図8(e)の直前の状態から、回転が開始する図8(f)まで比較的広い回転角範囲の間にメインギヤ320の回転が停止するようモータを制御すれば、コネクタ嵌合し所定の位置に静止しているので、モータの制御が非常に容易である。
【0063】
引き続き図8(g)状態であるトレー304一般搬送を経過し記憶媒体1がトレー304に係止された状態で開口部3(図3参照)に近づく。
【0064】
更にメインギヤ320の回転が進行し、元の図8(a)の状態に戻ることで、メインギヤが1回転し、連動するトレーの動作も装着→停止→脱却→停止の一サイクル分が終了する。この位置では前述の如く、装着している記録媒体1はトレーから外すことが可能であり、図9の平面図に示す如く、該取り外し可能位置では、左右の係止片312R、312Lが記憶媒体1の左右凹部102より外れた位置に移動し、トレーガイド306に刻まれた左右の傾斜溝313R、313Lに入り込んでいる。その為、トレー304はローディング装置内で固定状態になる(図5と図9の相違に注意されたい)。
【0065】
空のトレーに対しては新たに記憶媒体1を装着する事が可能である。
【0066】
当初期位置へ停止する為に、モータへの通電を停止しするタイミングは前述にコネクタ嵌合が終了してから停止させたときと同様に、メインギヤ320が回転しながら楔320c−bにより反転ギヤBの回転阻止を開始した後、即ち図8(a)の直前の状態から、回転が開始する図8(b)まで比較的広い回転角範囲の間にメインギヤ320の回転が停止するようモータを制御すればよく、トレーが所定の位置に静止しているので、モータの制御が非常に容易である。
【0067】
先の技術背景の項で挙げた特許文献5は、以上の回転方向変換手段と同様な機構を、シリアルプリンタのキャリッジ動作を直線往復で動作させるために用いた例である。この例ではモータの一方向回転をリードスクリューの双方向回転に変える機構として、同様な回転方向変換手段を用いて行う構成を開示している。
【0068】
次に、ラックを駆動する2つピニオンギヤの駆動引渡し機構を説明する。前述のように、回転方向変換手段の動力出力ギヤである反転ギヤBの回転は、下段のギヤ部322bに噛合する高速ピニオンギヤ316に伝達される。高速ピニオンギヤ上段316aは全周歯車が切られている。さらに下段には上段と一体的に設けられた減速ギヤ部316bが配置され、ギヤ部316b−aと歯底円の径の欠歯部316b−bとで構成されている。該減速ギヤ部316bは低速ピニオンギヤ317と一体になった内歯車で構成され扇ギヤ323の歯と噛合う位置関係にある。扇ギヤ323の回転中心は低速ピニオンギヤ317の中心と同位置の同軸回転を行う。
【0069】
これらメインギヤ、反転ギヤA、反転ギヤB(以上、回転方向変換手段)、高速ピニオンギヤ、扇ギヤ、低速ピニオンギヤ、ラックのギヤ間噛合いと動作関係を図10(a)から(c)に示す。図10(a)はトレーが初期位置停止状態から、搬送を開始するときのギヤ位置関係を示し、回転方向変換手段は、その説明で用いた図8(b)と同位置である。
【0070】
高速ピニオンギヤ316の上段はギヤ部316aが反転ギヤBと噛合い位置で、ラック315と第一歯目が噛合い位置にある。該状態で高速ピニオンギヤ316がCCW方向回転をおこないラックを図の矢印A方向へ送り出す。この時扇ギヤ323の第一歯目は高速ピニオンギヤ316下段の減速ギヤ316bの歯先円回転軌跡内に位置しているが、欠欠歯部316b−bの位置にあるので、回転の伝達は行われない。又、低速ピニオンギヤ317も欠歯部がラック側に面しており、ラック315の動きを規制する位置ではない。
【0071】
メインギヤの回転が更に進み、高速ピニオンギヤ図の矢印A方向へラックを13歯送った後、低速ピニオンギヤへ切り替わる時の図を図10(b)に示す。同図は回転方向変換手段で図8(c)に対応し、高速ピニオンギヤ上段316aのギヤがラック最終歯を送り出した状態で、この時下段の減速ギヤ316bは欠歯部から続くギヤ部316b−aの一歯目が到来し、扇ギヤ323の1歯目と噛合い低速ピニオンギヤ317と一体にCCW方向に回転する。この時、ラック315の最終歯が高速ピニオンギヤ316により送られてから、前述の扇ギヤ323が送られるまでの間、ラックは何れの駆動力を受けない間がある。
【0072】
低速ピニオンギヤのギヤ部317aの第一歯目は、ラック歯を図の矢印A方向へ高トルクで移動させる。該低速ピニオンギヤによるラック送り時がコネクタ嵌合工程のストロークと一致しているので、トレーは低速で搬送されるが、コネクタが嵌合するのに必要な駆動力を発生する事が出来る。
【0073】
更に扇ギヤが回転し、低速ピニオンギヤ317がラックを送り切ったところを図10(c)示す。該状態は回転方向変換手段の説明で示す図8(e)に対応し、コネクタの嵌合が終了し、電気的接続が取れる状態である。
【0074】
以上のように、コネクタの嵌合工程では、扇ギヤ323のギヤ径と、低速ピニオンギヤ317のギヤ径の比が、ラック送りトルク増加となるので、力強いコネクタ嵌合力が得られる。
【0075】
コネクタの脱却工程では、回転方向変換手段により反転ギヤA、B以下が装着工程とは逆に回転するので、高速ピニオンギヤ316がCW方向に回転し図10(c)のギヤ関係位置から(b)の位置へ変位する間、低速ピニオンギヤ317によりラックが矢印B方向へと搬送されコネクタ嵌合が解除さる。更に(b)から(a)と変位する間は、高速ピニオンギヤ316によりラックが搬送され、ラックと一体になったトレーが初期位置へ戻り、記憶媒体1が取り外し可能となる。
【0076】
以上の説明では,コネクタの着脱時以外のトレー搬送(一般搬送)はラック315を動作させる歯車として高速ピニオンギヤ316で行う例で示したが、複雑となるが反転ギヤB 322がラックを噛合する構成で行っても良い。この場合高速ピニオンギヤを省略する事が可能である。
【0077】
又、低速ピニオンギヤのピッチ円形、歯数、回転角、減速比は、コネクタ着脱時の負荷と一般搬送時に要する負荷との比、コネクタ嵌合ストローク量で決まるものであり、本実施例を応用することで様々なローディング装置のケースに応じて利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】(a)(b)一部基台を削除し内部を示した本発明のローディング装置を示す平面図及び正面図。
【図2】本発明ローディング装置に用いる記憶媒体1の斜視図。
【図3】記憶媒体1が使用される機器としてのコンピュータ。
【図4】(a)(b)本発明のローディング装置の平面図及び正面図。
【図5】(a)(b)記録装置1が挿入され係止片309が作動した時のトレー304への係止状態を示す平面図及び正面図。
【図6】(a)回転方向変換手段の構成ギヤ噛合い関係を示す平面図、(b)側面図、(c)下面から見た反転ギヤ噛合い関係を示す平面図。
【図7】回転方向変換手段の構成ギヤ噛合い関係を示す斜視図。
【図8】回転方向変換手段の1サイクル分の動きを示した平面図。 (a)トレーに記憶媒体が挿入されていない時の初期位置のギヤ噛合い関係を示す、(b)メインギヤが回転し始めたときの状態を示す、(c)反転ギヤAの13歯目がメインギヤと正対する状態を示す、(d)メインギヤの楔部が反転ギヤAの欠歯部に進入する状態を示す、(e)メインギヤの楔部が反転ギヤAの欠歯部に入り停止した時の状態を示す、(f)メインギヤの回転開始に引き続き反転ギヤBが回転開始する状態を示す、(g)トレーが開口に近づく時のギヤ状態を示す。
【図9】記憶媒体1が取り外し可能位置でのスライド片との関係を示す平面図。
【図10】ラックを駆動する2つのピニオンギヤの動力引渡し機構を示す平面図。 (a)トレー初期位置停止状態から搬送を開始する時のギヤ位置関係を示す、(b)高速ピニオンギヤから扇ギヤを介し、低速ピニオンギヤへ動力を引渡す状態を示す、(c)低速ピニオンギヤがラックを送り切った状態を示す。
【符号の説明】
【0079】
1 記憶媒体
3 ローディング装置
101 コネクタ
102 凹部
103 溝
201 コンピュータ
301 装着口
302 開口
303
304 トレー
305 基台
306 トレーガイド
307 回路基板
308 コネクタ
309R スライド片R
309L スライド片L
310 傾斜長孔
311 突起
312 係止片リブ
313 傾斜溝
314 検出片
315 ラック
316 高速ピニオンギヤ
317 低速ピニオンギヤ
318 モータ
319 ウオーム
320 メインギヤ
321 反転ギヤA
322 反転ギヤB

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶媒体を装着した状態で移動可能なトレーであって、
該トレーには前記移動方向に沿って、少なくとも移動ストロークをカバーする長さのラックを有し、
前記トレーの移動動力源となるモータからの伝達により第一の速度で回転する第一ピニオンギヤと、
該モータ回転の伝達により前記第一ピニオンギヤの速度より低速の第二の回転速度で回転する第二ピニオンギヤと、
により前記ラックが駆動され、
前記第一ピニオンギヤが前記ラックと噛合する工程から、前記第二ピニオンに前記ラックと噛合する工程に移行する間、双方のピニオンギヤが前記ラックと噛合しないタイミングを有する記憶媒体ローディング装置。
【請求項2】
前記第一ピニオンギヤは同軸上に一体の減速ギヤを有し、第一ピニオンが前記ラックとの噛合が終了してから前記減速ギヤの回転が減速手段を介し前記第二ピニオンを駆動し、ラックと噛合し前記トレーに動力を伝達することを特徴とした請求項1記載の記憶媒体ローディング装置。
【請求項3】
前記第二ピニオンギヤと前記ラックの噛合によるトレーの移動工程は、前記記憶媒体のコネクタが嵌合接続する工程を含むことを特徴とする請求項1、2記載の記憶媒体ローディング装置。
【請求項4】
前記モータと前記第一ピニオンギヤとの間に、前記モータの一方向回転を双方向回転に変換する回転方向変換手段を設けたことを特徴とする請求項1から3記載の記憶媒体ローディング装置。
【請求項5】
前記回転方向変換手段は前記モータからの駆動力を伝達するための第一回転部材と、
前記第一回転部材からの回転を伝える第一の状態と、伝えない第二の状態との二つの状態を有する第二回転部材と、
前記第二回転部材の前記第一の状態時に回転を受け第一の回転方向へ回転し、かつ前記第二の状態時には前記第一回転部材からの回転を受け、前記第一の回転方向と逆方向に回転する第三回転部材によりなる事を特徴とした請求項4記載の記憶媒体ローディング装置。
【請求項6】
前記第一回転部材の半回転により、前記トレーの装着工程を、他の半回転により前記トレーの脱却工程を対応付けた事を特徴とした請求項5記載の記憶媒体ローディング装置。
【請求項7】
前記トレーの装着工程と脱却工程の間、脱却工程と装着工程の間のそれぞれには、前記第二回転部材と前期第三回転部材の双方が前記第一回転部材からの回転を受けないタイミングを設けたことを特徴とする請求項6記載の記憶媒体ローディング装置。
【請求項8】
前記第一回転部材からの回転を受けない前記タイミングを、
前記第一回転部材の回転位置を検知する検知手段により検出し、
該検知手段の検知情報に基づき、前記モータを停止させることで、前記タイミングに前記トレーを停止させることを特徴とした請求項7記載の記憶媒体ローディング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−171937(P2006−171937A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−360832(P2004−360832)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】