説明

記録媒体及びシート

【課題】磁性材料を含有しているにも拘わらず、画像形成時の磁性材料の欠落を抑制することができる記録媒体を提供すること。
【解決手段】磁性材料と、記録媒体平面方向に対して配向したパルプ繊維とを含み、前記パルプ繊維の配向方向に対して平行な辺の端部と前記磁性材料との最短距離の最小値が1mm以上であることを特徴とする記録媒体。記録媒体表面に磁性材料が露出しなこと。磁性材料が第バルクハウゼン効果を有する物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーやインク等の一般的な記録材により印刷が可能であると共に、磁気的手段により情報を記録・再生することができる磁性材料を含む記録媒体及びシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報流出を防ぐため個人情報保護、プライバシーマーク制度、情報セキュリティ等の法律が整備されてきている。しかしながら、記録用紙の持ち運び性や収納性等の利便性から、記録用紙に印字された個人情報や機密情報等の情報流出は完全に抑えられていないのが現状である。このため、記録用紙の利便性を損なわず、且つ記録用紙に記録された機密情報の流出や偽造を防止することが急務となっている。
【0003】
このような課題に対応するため、様々な提案がなされている。
例えば、記録用紙に予め固有の識別番号を記録し、プリンタ等の画像形成装置において画像を記録用紙に印刷する過程において、記録用紙毎の固有の識別番号を読み取ることで、文書の機密性の保持や原本であるか否かを判別する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1の技術によれば、記録用紙に記録する識別番号に対応付けて複写可否情報を予めデータベースに記録し、複写機が記録用紙毎の固有の識別番号を読み取ったときに、読み取った識別情報に対応する複写可否情報に基づいて記録用紙への複写可否を判断している。また、特許文献1の技術では、記録用紙に固有の識別番号を記録する手段として、バーコードや無線式データキャリアを利用しており、特に、2次元バーコードや半導体で製作される無線式データキャリアを用いた場合が、識別番号を付与する形態を小さくすることができるために好適であるとされている。
【0005】
しかしながら特許文献1の技術では、記録用紙上への画像や文字の記録が可能な領域が、識別情報の付与により狭められることを抑制するために、記録用紙上の狭い一部の領域に識別番号を付与していることから、識別番号のすり替えなどが容易であるという問題がある。
【0006】
記録用紙毎の識別番号の改ざんが困難な技術としては、例えば、特許文献2、特許文献3、及び特許文献4に示す技術が公開されている。特許文献2の技術では、記録用紙毎の識別情報として、特定のB−H磁化特性を有するアモルファス強磁性材料よりなる安全線条を記録用紙内に埋め込んでいる。このように、記録用紙内に、識別番号として安全線条を埋め込み、この安全線条による信号を識別情報として読み取るので、識別番号の容易な改ざんを防ぐことが可能となる。
【0007】
特許文献3及び特許文献4の技術では、大バルクハウゼン効果や磁歪振動するような特性を有する磁性材料を用紙内に抄きこむことにより、識別情報を用紙に付加している。このように、用紙内に識別情報として磁性材料を抄きこむので、識別番号の容易な改ざんを防ぐことが可能となる。
【0008】
【特許文献1】特開2001−265183号公報
【特許文献2】特開平7−32778号公報
【特許文献3】特開2005−213654号公報
【特許文献4】特開2004−285524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献2から特許文献4の技術では、記録用紙内に安全線条等の磁性材料を埋め込むことで、識別番号の容易な改ざんを防止することは可能である。しかし、安全線条等の磁性材料を含有する記録用紙では、当該記録用紙を作製する際に磁性材料が記録用紙を構成するパルプ等の繊維間に形成される水素結合を阻害する。このため、一般的に用いられている画像形成装置に安全線条等の磁性材料を含有する記録用紙を用いた場合、画像形成装置内において搬送時に加えられる外部応力や、さらに電子写真方式の画像形成装置では転写時に印加される電界等により、記録媒体から磁性材料が欠落しやすくなるという問題があった。特に紙の断裁面からの欠落が大きいという問題があった。
このように、画像形成時に記録用紙中に埋め込まれている磁性材料が記録用紙から欠落すると、画像形成装置内を汚染すると共に、欠落した磁性材料が画質の劣化を引き起こす可能性もある。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、磁性材料を含有しているにも拘わらず、画像形成時の磁性材料の欠落を抑制することができる記録媒体及びシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、本発明は、
<1>
磁性材料と、記録媒体平面方向に対して配向したパルプ繊維とを含み、
前記パルプ繊維の配向方向に対して平行な辺の端部と前記磁性材料との最短距離の最小値が1mm以上であることを特徴とする記録媒体である。
【0012】
<2>
記録媒体表面に、前記磁性材料が露出していないことを特徴とする<1>に記載の記録媒体である。
【0013】
<3>
記録媒体表面と前記磁性材料との最短距離の最小値が5μm以上であることを特徴とする<1>に記載の記録媒体である。
【0014】
<4>
前記磁性材料が大バルクハウゼン効果を有することを特徴とする<1>に記載の記録媒体である。
【0015】
<5>
前記磁性材料は、長さが10mm〜350mmの範囲内で、且つ、直径が20〜60μmの範囲内である線状体であることを特徴とする<4>に記載の記録媒体である。
【0016】
<6>
2つ以上の層を有することを特徴とする<1>に記載の記録媒体である。
【0017】
<7>
磁性材料と、シート平面方向に対して配向したパルプ繊維とを含み、
前記パルプ繊維の配向方向と平行な方向に帯状を成し、且つ、前記パルプ繊維の配向方向と直交する方向に交互に形成され、前記磁性材料を含む第1の領域及び前記磁性材料を含まない第2の領域を有し、
隣接する2つの第1の領域間に形成された第2の領域の幅が2mm以上であることを特徴とするシート。
【発明の効果】
【0018】
以上に説明したように本発明によれば、磁性材料を含有しているにも拘わらず、画像形成時の磁性材料の欠落を抑制することができる記録媒体及びシートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の記録媒体は、磁性材料と、記録媒体平面方向に対して配向したパルプ繊維とを含み、前記パルプ繊維の配向方向に対して平行な辺の端部と前記磁性材料との最短距離の最小値が1mm以上であることを特徴とする。
従って、本発明の記録媒体を用いて電子写真方式やインクジェット方式等により画像の形成を行う場合でも記録媒体からの磁性材料の欠落を抑制することができる。
【0020】
磁性材料を含む記録媒体では、パルプ繊維等の紙基材を構成する材料と共に磁性材料を用いて用紙を作製する際に、磁性材料の近くに位置するパルプ繊維等の材料間に形成される水素結合などの結合が、磁性材料によって阻害されるという問題がある。このため磁性材料は、その周囲のパルプ繊維等の材料により記録媒体中で固定されにくい。
一方、電子写真方式やインクジェット方式等の公知の画像記録方法では、画像記録に際して記録媒体を搬送させるのが一般的である。例えば、電子写真方式の画像形成装置では、記録媒体は、給紙トレイから感光体(又は中間転写体)表面のトナー像を記録媒体表面に転写する転写部を経た後、記録媒体表面に転写されたトナー像を定着する定着部を経て、機外へと搬送される。また、インクジェット方式の画像形成装置では、記録媒体は、給紙トレイから用紙にインクを吐出する記録ヘッドが配置された記録部を経た後、機外へと搬送される。このように画像記録方式により搬送時の経路、距離、速度などには違いがあるものの、画像形成に際して記録媒体には、その搬送中に生じる摺動負荷や、接触応力が加わることになる。
【0021】
これらのことから、本発明者らは、搬送時に外部から加わる応力等によって、記録媒体中に含まれる磁性材料の欠落が発生する可能性があるものと考えた。そこで、本発明者らは、磁性材料を含む記録媒体を、搬送時に記録媒体に加わる摺動負荷や、接触応力の強度や頻度が非常に高い記録方式である電子写真方式の画像形成装置内を搬送させた際に発生する磁性材料の脱落状態について鋭意検討した。
その結果、記録媒体中に含まれる磁性材料は、記録媒体中に含まれるパルプ繊維の配向方向と直交する辺の端部からは、磁性材料が欠落することはなく、パルプ繊維の配向方向に平行な方向の辺の端部から欠落しやすいことが判明した。
このため、本発明者らは、記録媒体の端部近傍に含まれる磁性材料については、パルプ繊維の配向方向に対して平行な方向の辺の端部から、この辺と直交する方向により内側に配置すれば、記録媒体搬送時の磁性材料の欠落を防止できるものと考え、上述した本発明を見出すに至った。
【0022】
なお、パルプ繊維の配向方向に対して平行な辺の端部(以下、「端部」と略す場合がある)と磁性材料との最短距離の最小値は1mm以上であることが必要であるが、これは両端部において満たされる必要がある。また、端部と磁性材料との最短距離の最小値は2mm以上であることが好ましく、3mm以上であることがより好ましい。端部と磁性材料との最短距離の最小値が1mm未満の場合には、記録媒体搬送時に磁性材料の欠落が発生してしまう。
但し、端部と磁性材料との最短距離が大きすぎる場合には、記録媒体中に磁性材料を分散含有させる領域が狭くなりすぎる場合がある。このため、実用上、端部と磁性材料との最短距離の最小値は70mm以下であることが好ましい。
【0023】
このように本発明の記録媒体は、搬送時の磁性材料の欠落が抑制されるため、画像形成装置内が磁性材料で汚染されることを防ぐことができる。また、装置内の磁性材料による汚染に伴う種々の副次的な障害;例えば、記録媒体から脱落した磁性材料による画像形成装置内の各種部品(例えば、電子写真方式の装置であれば搬送装置、転写装置、クリーニング装置、定着装置等)の摩耗や破損、搬送不良、画質劣化等の発生を抑制することができる。
また、本発明の記録媒体は搬送時に外部から応力等が加わっても磁性材料の欠落が起こりにくいことから、搬送時に記録媒体に加わる応力等のストレスの大きい装置でも利用すすることが可能である。このような観点からは、本発明の記録媒体は、画像形成方式を問わず記録媒体を高速で搬送する画像形成装置;具体的には搬送速度が200mm/s〜2000mm/s程度である高速搬送が可能な記録媒体搬送手段を備えた画像形成装置にも適用することができる。
【0024】
なお、本発明の記録媒体は、方形を有し、いずれか一方の互いに平行な1対の辺(すなわち、記録媒体のMD方向(抄紙機の進行方向)又はCD方向(抄紙機の進行方向に対して垂直に交わる方向))に対して、パルプ繊維が配向するものである。ここで、「パルプ繊維が配向する」とは、記録媒体平面方向に対してパルプ繊維が完全に等方的に配向した状態以外の状態全てを意味する。
パルプ繊維の配向方向は、記録媒体のMD方向(抄紙機の進行方向)の超音波伝播速度と、記録媒体のCD方向(抄紙機の進行方向に対して垂直に交わる方向)の超音波伝播速度とを比較して、いずれか大きい超音波伝播速度を有する方向を意味し、両者の超音波伝播速度が等しい場合には、パルプ繊維が完全に等方的に配向した状態を意味する。
ここで、超音波伝播速度はSonicSheetTester(野村商事(株)社製)を使用して測定することができる。
【0025】
パルプ繊維の配向方向の超音波伝播速度と、パルプ繊維の配向方向と直交する方向の超音波伝播速度との比(パルプ繊維の配向方向の超音波伝播速度/パルプ繊維の配向方向と直交する方向の超音波伝播速度)が大きくなるほど、パルプ繊維の配向方向に対して平行な方向の辺の端部近傍に含まれる磁性材料は記録媒体搬送時に加わる応力等により脱落しやすくなる傾向にある。しかし、本発明では、磁性材料は、端部からの最短距離が1mm以上となる位置に含まれるため、パルプ繊維の配向方向の超音波伝播速度/パルプ繊維の配向方向と直交する方向の超音波伝播速度の値の大小に依存することなく磁性材料の脱落を抑制することができる。
また、上述した理由から、本発明において、超音波伝播速度の比率で表される記録媒体中のパルプ繊維の配向状態は、パルプ繊維の配向方向の超音波伝播速度/パルプ繊維の配向方向と直交する方向の超音波伝播速度で1.1以上であることが好ましく、1.2以上であることがより好ましい。また、超音波伝播速度の比率の上限は特に限定されないが、実用上は2.7以下である。
なお、通常、パルプ繊維の配向方向は、記録媒体のMD方向と一致することから、パルプ繊維の配向方向の超音波伝播速度/パルプ繊維の配向方向と直交する方向の超音波伝播速度の値は、いわゆる繊維配向比(MD方向超音波伝播速度/CD方向超音波伝播速度)を意味する。
【0026】
また、記録媒体平面方向における磁性材料の存在位置の確認は、上述した超音波伝播速度法により記録媒体中に含まれるパルプ繊維の配向方向を確認した後、このパルプ繊維の配向方向に対して平行な辺の端部近傍に存在する磁性材料を観察することにより行った。
具体的には、記録媒体をスキャナーにより取り込んだ画像を、画像処理ソフト(例えば、DIPP−98 株式会社ディテクト製)で記録媒体中の磁性材料と磁性材料が含まれない無地の部分とを二値化 {二値化方法については「判別および最小2乗基準に基づく自動しきい値選定法」(電子通信学会論文誌, Vol.J63−D, No.4, pp.349−356)、「ディジタル画像処理の基礎と応用」(酒井 幸市著)を参照}し、パルプ繊維の配向方向に対して平行な辺の端部(2つの辺の端部)から、この辺と直交する方向に何mmの位置に磁性材料が存在するのかを確認した。なお、本発明において磁性材料は通常、線状のものが用いられるため、1本の磁性材料のうち、パルプ繊維の配向方向に対して平行な辺の端部に最も近い部分を起点として端部と磁性材料との最短距離を求めた。この測定を、端部近傍に存在する全ての磁性材料について行い、最も小さい値(最小値)を求めた。
【0027】
図1は、パルプ繊維の配向方向に対して平行な辺の端部近傍に存在する磁性材料と、当該端部との最短距離の測定方法を説明するための概略模式図であり、図中、100は記録媒体、110は端部、120A、120B、120Cは磁性材料を表し、符合Aで示される矢印は、パルプ繊維(図中、不図示)の配向方向を意味する。測定対象となる磁性材料が、図中に示される3本の磁性材料のみである場合には、図に示されるように端部と各々の磁性材料120A、120B、120Cとの最短距離X1,X2,X3を測定し、これらの値の中で最も小さい値(X1)を最小値として求めた。
【0028】
本発明の記録媒体は断裁工程を経ることなく作製されたものでもよいが、通常は、大判のシートを断裁する断裁工程を経て作製される、いわゆるカットシートであることが好ましい。この場合、本発明の記録媒体の端部は断裁面を意味する。なお、当該断裁工程には、画像形成に利用するユーザーに対して本発明の記録媒体を提供する以前の断裁プロセス全てが含まれる。
なお、断裁工程は、特に限定されるものではないが、例えば、ワインダーに巻き取られたロールから、カッター、スリッターを介して、大判シートにされた後、ギロチン断裁により所望のサイズのカットシートにしたり、例えば、ワインダーに巻き取られたロールから、カッター、スリッターを介して所望幅のロールにし、さらにこのロールからカッター、スリッターにより小判断裁機でカットシートにしたり、所望幅のロール形態にする方法が挙げられる。
【0029】
一方、記録媒体表面には、搬送時に搬送部材等との接触による摩擦などの外部応力が加わるため、記録媒体を搬送する際に、その表面から磁性材料が欠落することがある。
このため、本発明の記録媒体は、その表面に、磁性材料が露出していないことが好ましい。記録媒体表面に磁性材料が露出している場合には記録媒体を搬送する際に、その表面から磁性材料が欠落してしまう場合がある。更に、電子写真方式による画像形成時に、磁性材料が表面に露出した記録媒体が転写部を通過すると、リークを起こすことがある。なお、磁性材料は記録媒体の両面で露出していないことが特に好ましい。ここで、記録媒体表面への磁性材料の露出の有無は目視により容易に確認することができる。
【0030】
なお、記録媒体表面からの磁性材料の欠落や、電子写真方式による画像形成時におけるリークをより確実に抑制するためには、記録媒体表面と磁性材料との最短距離の最小値が5μm以上であることが好ましく、8μm以上であることがより好ましい。記録媒体表面と磁性材料との最短距離の最小値は大きければ大きいほど好ましく、実質的には、磁性材料が記録媒体厚み方向において略中央部に位置した場合の値と一致することが最も好ましい。
【0031】
次に、記録媒体表面と記録媒体中に存在する(表面に露出していない)磁性材料との最短距離の測定方法について説明する。まず、記録媒体表裏面と磁性材料との距離を測定するために、磁性材料が存在する記録媒体の断面を作製する。断面観察サンプルの作製は特に限定されず、寸法変化を伴わない切断法であればいずれも利用でき、例えば、樹脂含浸法、切断法、凍結割断法などが利用できる。
【0032】
記録媒体表面と磁性材料との距離の測定方法としては、記録媒体の断面形状を観察可能で、記録媒体表裏面からの距離を測定できる方法であれば特に限定は無く、光学顕微鏡や走査電子顕微鏡(SEM)、透過電子顕微鏡(TEM)等を用いることが出来る。望ましくは、SEMを使用し、100〜1000倍の倍率で距離を測定することが好ましい。
また、SEM観察等により得られた断面画像から記録媒体表裏と磁性材料との距離を測定する場合、画像処理ソフト(例えば、DIPP−98 株式会社ディテクト製)でパルプ層と非パルプ層(磁性材料)とに二値化{二値化方法については「判別および最小2乗基準に基づく自動しきい値選定法」(電子通信学会論文誌, Vol.J63−D, No.4, pp.349−356)、「ディジタル画像処理の基礎と応用」(酒井幸市著)を参照}し、記録媒体表面から磁性材料までの最短距離を測定する。
【0033】
なお、本発明に用いられる磁性材料の形状は特に限定されないが、長さが数ミリ以上の線状の磁性材料(以下、「磁性体線材」と称す場合がある)が好適に利用される。それゆえ、測定箇所としては磁性体線材の両端部及び中心部付近を断裁して断面観察サンプルを作製し測定した。なお、個々の磁性体線材についての磁性体線材と記録媒体表面との最短距離の測定は、記録媒体の両面から磁性体線材までの最短距離を求めた。
測定に際しては、記録媒体一枚あたりで、この記録媒体に含まれる磁性材料を任意に5本選択して測定し、これを50枚の記録媒体について実施した(50枚で合計250箇所測定する)。但し、記録媒体一枚中に含まれる磁性材料が5本未満である場合は、合計測定数が250箇所となるように任意の枚数の記録媒体を測定した。このようにして得られた250箇所の測定値のうちから最小値を求めた。
【0034】
図2は、記録媒体表面と磁性材料との最短距離の測定方法を説明するための概略模式図であり、102は記録媒体断面、112は記録媒体表面、120は磁性材料を表す。図に示されるように記録媒体表面と磁性材料との最短距離は、磁性材料120の最も記録媒体表面112に近い部分と、記録媒体表面112とを結ぶ距離が最短となる直線距離(図中、両矢印Yで示される距離)として測定した。
【0035】
次に、本発明の記録媒体の構成についてより詳細に説明する。
本発明の記録媒体は、パルプ繊維と磁性材料とを少なくとも含み、パルプ繊維を主成分として含む紙基材を有する。なお、必要に応じて紙基材の少なくとも片面に表面層を設けることができる。また、記録媒体が複数の層から構成される場合、磁性材料は任意の層に含まれていてもよいが通常は紙基材中に含まれることが好ましい。
【0036】
本発明に用いられる磁性材料は、大バルクハウゼン効果を有するものであることが特に好ましい。
ここで、大バルクハウゼン効果について簡単に説明する。図3は、大バルクハウゼン効果を説明するための図である。大バルクハウゼン効果は、図3(a)に示すようなB−H特性、つまり、ヒステリシスループがほぼ長方形で、保磁力(Hc)が比較的小さな材料、例えば、Co−Fe−Ni−B−Siからなるアモルファス磁性材料を交番磁界中においた際に、急峻な磁化反転が起きる現象である。このため、励磁コイルに交番電流を流して交番磁界を発生させ、その交番磁界中に磁性材料を置くと、磁化反転時に、磁性材料の近傍に配置した検知コイルにパルス状の電流が流れることとなる。
【0037】
例えば、励磁コイルにより図3(b)の上段に示すような交番磁界を発生させた場合、発生された交番磁界内に記録媒体が配置されると、検知コイルには、図3(b)の下段に示すようなパルス電流が流れることとなる。
【0038】
本発明に用いられる磁性材料としては、一般には永久磁石、例えば希土類系のネオジュウム(Nd)−鉄(Fe)−ボロン(B)を主成分としたもの、サマリウム(Sm)−コバルト(Co)を主成分としたもの、アルニコ系のアルミ(Al)−ニッケル(Ni)−コバルト(Co)を主成分としたもの、フェライト系のバリュウム(Ba)又はストロンチウム(Sr)と酸化鉄(Fe)を主成分としたものや、その他に軟質磁性材料、酸化物軟質磁性材料等があるが、上記大バルクハウゼン効果を起こす磁性材料としては、基本組成がFe−Co−SiやCo−Fe−Ni系のアモルファス磁性材料を用いることが好ましい。
【0039】
磁性材料の形状としては、大バルクハウゼン効果を起こすのに適した形状であれば特に限定されないが、大バルクハウゼン効果を起こすには、断面積に対して所定の長さが必要となってくることから、線状(ワイヤ状)や帯状であることが好ましく、ワイヤー状であることがより好ましい。
【0040】
磁性材料がワイヤー状である場合には、上述のように、大バルクハウゼン効果を起こすために必要な最小直径として20μm以上であることが好ましい。また、最大直径としては特に限定はされないが、記録媒体表面に磁性材料が露出することを抑制するために、その直径は記録媒体の厚みに依存し、例えば100μm前後の厚さの記録媒体の場合には、60μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。
【0041】
また、長さとしては、大バルクハウゼン効果を起こすために必要な最小長さとして10mm以上が好ましい。磁性材料の最大長については、内部に含有されたときに、記録媒体から露出されない程度の長さであればよく、特に限定はされないが、350mm以下であることが好ましい。また、磁性材料の記録媒体端部からの脱落を防止する観点からも、10mm以上の長さが好ましい。
【0042】
紙基材を構成する材料としては、パルプ繊維等、電子写真方式やインクジェット方式等で画像を記録媒体に記録する画像形成装置に適した厚み等を有するシート状に加工可能な材料であれば特に限定されない。
【0043】
紙基材を構成する主材料であるパルプ繊維としては、特に限定されるものではないが、例えば、広葉樹および/または針葉樹のクラフトパルプ繊維、サルファイトパルプ繊維、セミケミカルパルプ繊維、ケミグラウンドパルプ繊維、砕木パルプ繊維、リファイナーグラウンドパルプ繊維、サーモメカニカルパルプ繊維等を使用することが好ましい。また、これらの繊維中のセルロースあるいはヘミセルロースを化学的に修飾した繊維も必要に応じて使用することができる。
さらに、綿パルプ繊維、麻パルプ繊維、ケナフパルプ繊維、バガスパルプ繊維、ビスコースレーヨン繊維、再生セルロース繊維、銅アンモニアレーヨン繊維、セルロースアセテート繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリウレタン系繊維、フルオロカーボン系繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、金属繊維、シリコンカーバイド繊維等の各繊維を、単独あるいは複数組み合わせて使用することができる。
【0044】
また、必要に応じて、上記パルプ繊維にポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル等の合成樹脂を含浸あるいは熱融着させて得られた繊維を使用することもできる。
【0045】
また、更に上記パルプ繊維に、上質系および中質系の古紙パルプを配合することもできる。古紙パルプの配合量としては、用途や目的等に応じて決定される。さらに、資源保護の観点から、いわゆる森林認証された認証林、植林木または間伐材チップから得たパルプを使用することが好ましい。
【0046】
本発明の記録媒体には、不透明度、白さ、及び表面性を調製するために、填料を添加することができる。
但し、記録媒体中に含まれるパルプ繊維間の繊維間結合力を保持し、磁性材料の欠落を防止する観点から、記録媒体の固形分(絶乾重量)に対する填料の配合量は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。さらに好ましくは、5質量%以下である。
【0047】
紙基材の固形分に対する填料の配合量が20質量%より多いと、紙基材を構成するパルプ繊維等の紙基材を構成する材料間で生成される結合を分断したり、紙基材を構成するパルプ繊維間の距離が大きくなりやすく、紙基材を構成する主材料同士の結合強度が低下してしまう。このため、記録媒体から磁性材料が欠落しやすくなる場合がある。
【0048】
この填料の配合量は、本発明の記録媒体をJIS P 8128(575℃、4時間)で規定される方法に準拠して灰化処理を行い、残留した灰化物(JIS P 8128で規定される灰分)をIPC発光分析などの方法で元素分析することにより、記録媒体の紙基材に含まれる磁性材料と填料の配合量を計算することにより求めることができる。
【0049】
本発明の記録媒体に使用可能な填料としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、焼成クレー、パイオロフェライト、セリサイト、タルク等の珪酸類や二酸化チタン等の無機填料、及び尿素樹脂、スチレン等の有機顔料、さらにはポリエステル系や、スチレンアクリル系などの熱可塑性樹脂粒子を挙げることができる。
【0050】
さらに、本発明の記録媒体を構成する紙基材には、サイズ剤等の各種薬品を内添または外添させることができる。
紙基材に添加可能なサイズ剤の種類としては、ロジン系サイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、中性サイズ剤等のサイズ剤を挙げることができる。さらに、硫酸バンド、カチオン化澱粉などのサイズ剤と、定着剤とを組み合わせて使用してもよい。
【0051】
上記サイズ剤の内、電子写真方式の画像形成装置やインクジェット方式の画像形成装置等において、画像が形成された後の記録媒体の保存性の観点から、中性サイズ剤、例えば、アルケニル無水コハク酸系サイズ剤、アルキルケテンダイマー、アルケニルケテンダイマー、中性ロジン、石油サイズ、オレフィン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂等を用いることが好ましい。また、表面サイズ剤として、酸化変性澱粉、酵素変性澱粉、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース変性体、スチレンアクリル系ラテックス、スチレンマレイン酸系ラテックス、アクリル系ラテックスなどを単独もし
くは組み合わせて使用することができる。
【0052】
さらに、本発明の記録媒体を構成する紙基材には、紙力増強剤を内添あるいは外添することができる。
紙力増強剤としては、でんぷん、変性でんぷん、植物ガム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、スチレン−無水マレイン酸共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアクリル酸エステル尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ジアルデヒドでんぷん、ポリエチレンイミン、エポキシ化ポリアミド、ポリアミド−エピクロルヒドリン系樹脂、メチロール化ポリアミド、キトサン誘導体等が挙げられ、これらの材料を単独あるいは混合して使用することができる。
また、この他にも、染料、pH調整剤等、通常の紙媒体に配合される各種助剤を適宜使用しても構わない。
【0053】
本発明の記録媒体の作製に際しては、紙基材を構成する材料の抄紙方法・順序や、必要に応じて表面層を設けることにより、所望の層構成を有する記録媒体を作製することができる。例えば、上述したパルプ繊維等の紙基材を構成する材料を混合し紙料スラリーを抄紙することによって作製した紙基材層の片面に、磁性材料を分散配置した後、この磁性材料が配置された面に他の紙基材層を貼り合わせるプロセスを経て紙基材を作製し、更に必要に応じてこの紙基材の表面に表面層を設けることができる。
また、パルプ繊維等の紙基材を構成する材料に磁性材料も配合した紙料スラリーを抄紙して単層の紙基材を作製し、必要に応じてこの紙基材の表面に表面層を設けることができる。あるいは、磁性材料を含む紙基材層の両面に、磁性材料を含まない紙料スラリーを用いて抄紙された紙基材層を貼り合わせて3層構成の紙基材を作製し、更に必要に応じてこの紙基材の表面に表面層を設けることができる。このように多層抄紙を利用して紙基材を作製したり、更に表面層を形成することで記録媒体を作製してもよい。
【0054】
なお、本発明の記録媒体は1層の紙基材のみからなる単層構成であってもよいが、2つ以上の層を有するものであることが好ましい。この場合、紙基材自体が2つ以上の層から構成されるものであってもよく、紙基材の片面あるいは両面に表面層を設けたものであってもよく、両者を組み合わせた構成としてもよい。
紙基材が2つ以上の層から構成される場合、磁性材料は層と層との界面に配置することにより、磁性材料が記録媒体表面に露出するのを防ぐと共に、記録媒体表面からより内部側の位置に磁性材料を含有させることができる。また、紙基材が3つ以上の層から構成される場合、磁性材料を紙基材の最外層以外の層中や層間に含有させることにより、記録媒体表面からより内部側の位置に磁性材料を含有させることができる。
また、磁性材料が記録媒体表面に露出するのを防いだり、記録媒体表面からより内部側の位置に磁性材料を含有させたりする上では、表面層を設けることも好ましく、特に紙基材が単層構成からなる場合に有効である。
【0055】
以上に説明したように記録媒体の厚み方向の層構成については、その製造プロセスを適宜選択して組み合わせることにより所望の構成とすることが可能である。
一方、本発明の記録媒体においては、磁性材料の欠落を抑制するために、パルプ繊維の配向方向に対して平行な辺の端部から最短距離で1mm未満の領域には磁性材料が含まれていてはいけない。このため、本発明の記録媒体の作製に際しては、記録媒体平面方向(パルプ繊維の配向方向と直交する方向)における磁性材料の配合位置を制御することが重要である。
【0056】
例えば、パルプ繊維の配向方向(抄紙ワイヤーの移動方向)に対して交差する方向に沿って配置された複数本のノズルから吐出される紙料スラリー中の磁性材料の濃度や流量を各ノズル毎に制御したり、ワイヤー幅方向に対するノズル先端部の位置を調整することによって、ワイヤー幅方向における磁性材料の配合位置を制御することができる。
【0057】
これにより断裁工程を実施する前のシートとして、磁性材料と、シート平面方向に対して配向したパルプ繊維とを含み、前記パルプ繊維の配向方向と平行な方向に帯状を成し、且つ、前記パルプ繊維の配向方向と直交する方向に交互に形成され、前記磁性材料を含む第1の領域及び前記磁性材料を含まない第2の領域を有し、隣接する2つの第1の領域間に形成された第2の領域の幅が2mm以上であるシート(大判の乾燥シート)を得ることができ、Aサイズ系列、Bサイズ系列など、作製する記録媒体の寸法幅に対して、特定の幅と位置に磁性材料を分布させることが可能となる。
そして上述の大判の乾燥シートの断裁に際しては、断裁ラインから磁性材料が含まれる帯状の領域(第1の領域)までの最短距離が1mm以上となるように磁性材料が含まれない帯状の領域(第2の領域)内を断裁すれば本発明の記録媒体を得ることができる。なお、大判の乾燥シートを断裁する代わりにミシン目を入れたり切り込み線を付したりして、ユーザーがシートに予め付されたミシン目や切り込み線等に沿って分離したり切断したりすることにより本発明の記録媒体として利用できるようにしてもよい。
【0058】
図4は、本発明のシートの一例を示す概略模式図であり、矢印Yはパルプ繊維の配向方向、40はシート、50は第1の磁性材料を含む領域、60は第2の磁性材料を含まない領域、62はシート40の矢印Y方向と平行な辺の端部に沿って設けられた磁性材料が含まれない帯状の領域(以下、「端部の磁性材料非含領域」と略す)を表し、図中の点線Y11−Y12、点線Y21−Y22、点線X11−X12、点線X21−X22、点線X31−X32は断裁ラインを表す。
図4に示すシート40は、パルプ繊維の配向方向Yと直交する方向(符号X21−X22方向)に対して、端部の磁性材料非含領域62、第1の磁性材料を含む領域50、第2の磁性材料を含まない領域60、第1の領域50、第2の領域60、第1の磁性材料を含む領域50、端部の磁性材料非含領域62の順に各領域が形成されたものであり、第2の磁性材料を含まない領域60の符号X21−X22方向の幅は2mm以上であり、端部の磁性材料非含領域62の符号X21−X22方向の幅は1mm以上である。シート40を断裁して記録媒体を得る場合には、図中の点線で示される断裁ラインに沿って切断される。ここで、第2の磁性材料を含まない領域60を2分するように設定される断裁ラインY11−Y12およびY21−Y22は、これら断裁ラインから第1の領域50までの最短距離が1mm以上となるように設定される。
【0059】
本発明の記録媒体の作製に際して利用される抄紙法としては特に限定するものではない。例えば、多層抄紙法または、従来知られている長網抄紙機や、円網抄紙機、ツインワイヤー方式など何れも使用できる。酸性または中性抄紙法いずれでも構わない。
【0060】
多層抄紙の方法としては、円網多筒抄紙、長網多筒、長網・円網コンビ、マルチヘッドボックス、短網・長網方式いずれの方法を用いても構わないし、例えば石黒三郎著の「最新抄紙技術−理論と実際」(製紙化学研究所,1984)に詳しく記載されている方法いずれを用いても構わないし、丸網を複数連ねた丸網多筒式等を用いてもよい。
【0061】
本発明の記録媒体の作製に際しては、紙基材の表面に塗布液を塗布することもできる。塗布液に含まれる接着剤には、水溶性及び水分散性の何れか一方または双方の高分子化合物が用いられ、例えば、カチオン性澱粉、両性澱粉、酸化澱粉、酵素変性澱粉、熱化学変性澱粉、エステル化澱粉、エ−テル化澱粉等の澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ゼラチン、カゼイン、大豆蛋白、天然ゴム等の天然あるいは半合成高分子化合物、ポリビニルアルコール、イソプレン、ネオプレン、ポリブタジエン等のポリジエン類、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリアルケン類、ビニルハライド、酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、メチルビニルエーテル等のビニル系重合体や共重合体類、スチレン−ブタジエン系、メチルメタクリレート−ブタジエン系等の合成ゴムラテックス、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、オレフィン−無水マレイン酸樹脂、メラミン樹脂等の合成高分子化合物等を用いることができる。そしてこれらの中から、単独あるいは混合して使用することができるがこれに限定されるものではない。ただし、製造コストの観点からは、より安価である澱粉を使用することが好ましい。
【0062】
塗布液に含まれる顔料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、構造性カオリン、デラミカオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、アルミノ珪酸マグネシウム、微粒子状珪酸カルシウム、微粒子状炭酸マグネシウム、微粒子状軽質炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等の鉱物質顔料や、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル共
重合樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂並びにそれらの微小中空粒子や貫通孔型の有機顔料等が挙げられ、これらの中から1種あるいは2種以上が用いられる。
【0063】
上記塗布液中の顔料に対する接着剤の配合割合は、顔料100質量部に対して5〜50質量部の範囲内にあることが好ましい。接着剤の顔料100質量部に対する配合割合が5質量部未満では、表面層の塗膜強度が低く、紙粉が発生するという問題がある。また接着剤の顔料100質量部に対する配合割合が50質量部を越えると、接着剤が過剰で、コストアップとなり実用性が低いという問題がある。
【0064】
なお、上記表面層に用いられる樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂であれば特に限定はなく、例えばエステル結合を有する樹脂;ポリウレタン樹脂;尿素樹脂等のポリアミド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−プロビオン酸ビニル共重合体樹脂;ポリビニルブチラール等のポリオール樹脂、エチルセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等のセルロース樹脂;ポリカプロラクトン樹脂、スチレン−無水マレイン酸樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロ
ピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、エチレンやプロピレン等のオレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体樹脂、アクリル樹脂などを例示することができる。
【0065】
フィルム形成能の高さという観点からは、塗布液には、けん化度が90mol%以上のポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアクリル酸エステル等を用いることが好ましい。
【0066】
上記塗布液中には、更に、各種助剤、例えば界面活性剤、pH調節剤、粘度調節剤、柔軟剤、光沢付与剤、分散剤、流動変性剤、導電防止剤、安定化剤、帯電防止剤、架橋剤、酸化防止剤、サイズ剤、蛍光増白剤、着色剤、紫外線吸収剤、消泡剤、耐水化剤、可塑剤、滑剤、防腐剤、及び香料等を必要に応じて適宜添加することも可能である。
【0067】
上記表面層を形成するために、塗布液を紙基材上に塗布する方法としては一般に公知の塗被装置、例えばサイズプレス、ブレードコータ、エヤーナイフコータ、ロールコータ、リバースロールコータ、バーコータ、カーテンコータ、ダイコータ、グラビアコータ、チャンプレックスコータ、ブラシコータ、ツーロールあるいはメータリングブレード式のサイズプレスコータ、ビルブレードコータ、ショートドウェルコータ、ゲートロールコータ等を適宜用いることができる。
【0068】
上記塗布液を上記塗布方法により紙基材表面に塗布することにより、紙基材表面に表面層を形成することができる。紙基材片面あたりの塗布液の処理量としては、乾燥質量で片面あたり0.3〜20g/mの範囲が好ましく、0.3〜8g/mの範囲がより好ましく、コスト面を考慮すれば0.6〜3.0g/mが更に好ましい。
処理量が0.3g/mに満たないと、記録媒体表面の強度が不十分となり表面近傍に存在する磁性材料が欠落してしまう場合がある。処理量が20g/mより大きいと、特に高湿環境で粘着性を持ち、画像形成装置内で記録媒体を搬送する際に搬送不良を引き起こす場合がある。
【0069】
紙基材表面に表面層を設ける場合には、記録媒体の片面或いは両面に形成できる。また、表面層は、1層のみから構成されてもよいが2層以上からなる多層構造とすることも可能である。なお、記録媒体の両面に表面層を形成する場合や、多層構造の表面層を形成する場合、各々の表面層を形成するために用いる塗布液の量や組成は同一である必要はなく、所望の品質レベルに応じて適宜選択できる。
なお、表面層を形成する場合には、カール防止の観点から、記録媒体の両面に表面層を設けることが好ましい。
【0070】
本発明の記録媒体が表面層を有するものである場合には、表面層を形成した後に、スーパーカレンダ、グロスカレンダ、ソフトカレンダ等の平滑化処理装置を用いて平滑化処理することが好ましい。また、オンマシンやオフマシンで適宜平滑化処理を施してもよく、加圧装置の形態、加圧ニップの数、加温等も通常の平滑化処理装置に準じて適宜調節できる。
【0071】
一方、2つの紙基材層の間に、磁性材料を分散配置する方法としては、少なくとも一方の紙基材層の片面に接着層を設けた後、この接着層上に磁性材料を単独で散布し、磁性材料を配置した面に他方の紙基材層を貼り合わせる方法や、あらかじめ磁性材料を分散させた接着剤を一方の紙基材層の片面に塗工してから、他方の紙基材層を貼り合わせる方法などが挙げられる。このようにして紙基材層を貼り合わせた後、必要に応じて表面層を形成することもできる。
【0072】
上記接着層に用いたれる接着剤としては、水系、溶剤系の接着剤(具体的には、澱粉、変性澱粉、PVA、カルボキシメチルセルロース、ウレタン系、ポリエステル系、エポキシ系、ゴム系、シアノアクリレート系、エマルジョン系接着剤等を用いることができ、安全性の点からポリエステル系接着剤を用いることが特に好ましい。)を塗布して設けることに加え、両面テープを用いることも出来る。
【0073】
また、本発明の記録媒体の記録媒体の表面抵抗率は得に限定されないが、電子写真方式で画像を形成する場合には、電子写真用転写紙として要求される特性を満たしていることが好ましく、表面抵抗率は1×10Ω/□〜5×1011Ω/□の範囲内であることが好ましい。
この表面抵抗率は、JIS P8111に規定される前処理及び測定環境において、JIS K6911に準拠した測定を行うことにより測定される。
【0074】
表面抵抗率を調整するためには、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の無機物や、アルキルリン酸エステル酸、アルキル硫酸エステル酸、スルホン酸ナトリウム塩、第4級アンモニウム塩等の有機系の材料等の導電剤を利用することができ、導電剤の種類や紙基材への添加量を調整することによって、記録媒体の表面抵抗率を所望の値に制御することができる。なお、環境保護の観点からは、導電剤として、硫酸ナトリウムなどの非ハロゲン系の導電剤を使用することが望ましい。
【0075】
本発明の記録媒体の坪量(JIS P 8124)は特に規定しないが、好ましくは60g/m以上であることが望ましい。坪量が60g/mを下回ると、記録媒体のこしが小さくなる傾向にある。このため、電子写真方式の画像形成装置により画像を形成する場合に、記録媒体表面に転写されたトナー像を定着させる定着装置を構成する加熱ロール等の定着部材に記録媒体が巻き付いたり、定着部材と記録媒体との剥離不良にともなう画像欠陥が発生してしまう場合がある。
また、同様に、坪量が60g/mを下回ると、記録媒体中に含有されている磁性材料が表面に露出しやすくなったり、磁性材料が記録媒体表面から欠落しやすくなったりしてしまう場合がある。加えて、電子写真方式やインクジェット方式等で画像を形成した場合に記録媒体表面に磁性材料が視認されやすくなるため、画像の見栄えが悪くなる場合もある。
【0076】
さらに、本発明の記録媒体は、防湿包装によって密閉された状態から開封された直後の製品水分率が適切な範囲内、具体的には好ましくは3〜6.5質量%、より好ましくは4.5〜5.5質量%程度の範囲内に収まるように、紙基材を抄紙するときに抄紙機等により含水量を調整することが好ましい。また、作製された記録媒体の保管時に吸脱湿が発生しないように、作製された記録媒体は、所定枚数毎にポリエチレンラミネート紙等の防湿包装紙やポリプロピレンフィルム等の材料を用いて包装することが望ましい。
【0077】
次に、本発明の記録媒体を用いた画像の形成について、電子写真方式の画像形成を一例として説明する。
図5は、電子写真方式の画像形成装置の一例を示す概略模式図であり、図5に示すように、画像形成装置10は、所定方向に回転され静電潜像が形成される像保持体12を備えている。像保持体12の近傍には、像保持体12の回転方向に沿って、帯電装置14、露光装置16、現像装置18、転写装置22、クリーニング装置24がこの順に配置されている。また、画像形成装置10は、画像形成装置10に含まれる各種デバイスを制御するための制御部(図示省略)を含んで構成されている。
【0078】
なお、転写装置22はロール状の部材から構成され、像保持体12と圧接するように配置されている。また、不図示の搬送手段により転写装置22と像保持体12との圧接部(転写部)に搬送されてきた記録媒体20は、転写部を、像保持体12の回転方向と一致する方向に通過することができる。
また、記録媒体20の搬送方向上で、転写部よりも記録媒体20の搬送方向下流側には互いに接触押圧するように配置され、少なくとも一方が加熱源を内蔵した一対の定着ロール27を有する定着装置26が設けられており、転写部を通過した記録媒体20が一対の定着ロール27の間(圧接部)を通過することができる。
【0079】
帯電装置14は、像保持体12表面を均一に帯電する。露光装置16は、図示を省略する外部装置から有線または無線通信により図示を省略する入出力部を介して入力された画像データに応じて変調したレーザ光を像保持体12上に走査露光することによって像保持体12上に静電潜像を形成する。現像装置18は、像保持体12上に形成された静電潜像をトナーによって現像することで、像保持体12上にトナー像を形成する。転写装置22は、像保持体12との間で記録媒体20を挟持搬送すると共に、図示を省略する電源により転写電圧が印加されることで、像保持体12上に形成されたトナー像を記録媒体20に転写する。クリーニング装置24は、像保持体12上の残留トナーを除去する。定着装置26は、記録媒体20上に転写されたトナー像を記録媒体20上に定着させる。
【0080】
定着装置26は、圧接部を通過するトナー像が転写された記録媒体20を加熱加圧することによりトナー像を記録媒体20表面に定着する。なお、定着はオイルレス定着により施されることが好ましい。オイルレス定着とは、定着に際して、定着ロール27表面にオイル等の離型剤を含まない状態で定着する定着方法である。オイルレス定着を実施する場合、定着装置26には、定着ロール27表面に離型剤を供給するための供給装置を有していなくてもよい。
【0081】
画像の形成に用いられるトナーとしては公知のトナーが利用でき、通常は、着色剤とポリエステル樹脂やスチレン−アクリル樹脂等の結着樹脂を含むトナーが利用できる。なお、オイルレス定着を実施する場合には、トナー中には離型剤も含まれる。使用されるトナーの製造方法については特に限定されず、粉砕法、重合法などの公知の製造方法が利用できる。
【0082】
画像形成に際しては、まず、帯電装置14によって像保持体12表面が一様に帯電された後に、露光装置16によってレーザ光が走査露光される。像保持体12表面には、レーザ光の走査露光により静電潜像が形成される。像保持体12上に形成された静電潜像は、像保持体12の回転によって現像装置18の設置位置に対向する領域に達すると、現像装置18によって現像される。現像装置18による現像によって、像保持体12上には、静電潜像に応じたトナー像が形成される(以下、現像工程と称する)。
【0083】
記録媒体20は、図示を省略する記録媒体貯留部から画像形成装置10内の搬送経路(図示省略)へと、図示を省略する各種搬送ロール等の搬送装置によって供給され、像保持体12と転写装置22との圧接部(転写部)まで搬送される。像保持体12表面のトナー像の形成領域が、転写部に達すると共に、像保持体12と転写装置22との間を記録媒体20が挟持搬送された際に、像保持体12上のトナー像が記録媒体20に転写される。
【0084】
この記録媒体20へのトナー像の転写は、図示を省略する電源によってロール状の転写装置22に電圧が印加されることにより行われる。転写装置22に電圧が印加されることで、像保持体12上に形成されたトナー像を構成する各トナーが記録媒体20の方向へと移動するような電界が、像保持体12と転写装置22との間に形成され、像保持体12上のトナー像は記録媒体20へと転写される(以下、転写工程と称する)。
【0085】
記録媒体20に転写されたトナー像は、不図示の搬送手段によって定着装置26へと搬送され、定着装置26にて記録媒体20上に定着(以下、定着工程と称する)され、記録媒体20に画像が形成される。画像が形成された記録媒体20は、図示を省略した排出ロールによって画像形成装置10の外部へと排出される。
【実施例】
【0086】
下記に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが,勿論、本発明の範囲はそれらにより限定されるものでない。
(実施例1)
LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)85質量部、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)15質量部とを混合したパルプスラリー中に、パルプ固形分100質量部に対して、填料として軽質炭酸カルシウム(タマパール TP−121、奥多摩工業(株)製)3質量部、カチオン化デンプン(商品名:MS4600、日本食品化学工業(株)製)0.10質量部、およびアルケニル無水コハク酸(ファイブラン81、日本NSC社製)0.05質量部を添加した。
【0087】
これらの混合物を白水で希釈した固形分濃度0.4%紙料スラリーを調製した。
この紙料スラリーをオリエンテッドシートフォーマー(熊谷理機工業社製、商品名ORIENTED SHEET FORMER)を用いて以下の抄紙条件にて40g/mの坪量のWetシートを2枚抄紙した。
<抄紙条件>
・抄紙ワイヤー速度1200m/min
・試料噴射圧力1kgf/cm
・ストローク回数7回
【0088】
次に、一方のシート表面に直径30μm長さ30mmの磁性材料(組成:Fe−Co−Si)を配置した。なお、磁性材料は、シートのMD方向と平行な辺の端部から、最終断裁位置を基準とした場合に、パルプ繊維の配向方向に対して直角方向に1.5mm以上離れた領域に位置するようにシート表面に配置した。
その後、もう一枚のシートを磁性材料が配置された面に重ね合わせ、この2枚のシートの積層体を、角型シートマシンプレス(熊谷理機工業株式会社製)により、5kgf/cmの圧力で10分間プレスした後、回転方乾燥機(熊谷理機工業株式会社製、商品名 ROTARY DRYER DR―200)でドラム温度100℃、回転速度120cm/minの条件で乾燥させ、断裁後、A4サイズの紙基材を得た。
【0089】
次に、上記作製した紙基材の両面に、紙基材の片面あたり乾燥重量で酸化澱粉(エースA、王子コーンスターチ(株)製)が0.6g/m、ケン化度99mol%のポリビニルアルコール(PVA−117、クラレ社製)が0.05g/m、及び硫酸ナトリウムが0.1g/mとなるように、これらを混合した塗布液を、サイズプレス装置により塗布し、乾燥させた。
さらに、カレンダー装置により王研式平滑度が50秒になるように平滑化処理を施し、坪量80g/mの記録媒体を得た。
【0090】
得られた記録媒体のパルプ繊維の配向方向と平行な辺の端部と磁性材料との最短距離の最小値は1.5mmであり、記録媒体表面と磁性材料との最短距離の最小値は30μmであった。また、坪量は、JIS P 8124の方法により測定した。
【0091】
(実施例2)
実施例1において、一方のシート表面に磁性材料を配置する際に、磁性材料を、シートのMD方向と平行な辺の端部から、最終断裁位置を基準とした場合に、パルプ繊維の配向方向に対して直角方向に1.0mm以上離れた領域に位置するようにシート表面に配置した以外は実施例1と同様にして記録媒体を作製した。
【0092】
(実施例3)
実施例1において、一方のシート表面に磁性材料を配置する際に、磁性材料を、シートのMD方向と平行な辺の端部から、最終断裁位置にあわせて、パルプ繊維の配向方向に対して直角方向に10mm以上離れた領域に位置するようにシート表面に配置した以外は実施例1と同様にして記録媒体を作製した。
【0093】
(実施例4)
LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)85質量部、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)15質量部とを混合したパルプスラリー中に、パルプ固形分100質量部に対して、填料として軽質炭酸カルシウム(タマパール TP−121、奥多摩工業(株)製)3質量部、カチオン化デンプン(商品名:MS4600、日本食品化学工業(株)製)0.10質量部、およびアルケニル無水コハク酸(ファイブラン81、日本NSC社製)0.05質量部を添加した。
【0094】
これらの混合物を白水で希釈した固形分濃度0.4%紙料スラリーを調製した。
この紙料スラリーをオリエンテッドシートフォーマー(熊谷理機工業社製、商品名ORIENTED SHEET FORMER)を用いて以下の抄紙条件にて10g/mの坪量のWetシート(第1のシート)を2枚抄紙した。
<抄紙条件>
・抄紙ワイヤー速度1200m/min
・試料噴射圧力1kgf/cm
・ストローク回数2回
【0095】
第1のシートの作製に用いた紙料スラリー100質量部に対して、実施例1で用いた磁性材料を2.5質量部配合した紙料スラリーを調整した。
次に、この紙料スラリーをオリエンテッドシートフォーマー(熊谷理機工業社製、商品名ORIENTED SHEET FORMER)を用いて以下の抄紙条件にて60g/mの坪量のWetシート(第2のシート)を1枚抄紙した。
<抄紙条件>
・抄紙ワイヤー速度1200m/min
・試料噴射圧力1kgf/cm
・ストローク回数11回
【0096】
次に、第1のシートの片面に、第2のシートと第1のシートとをこの順に重ね合わせて積層し、この3枚のシートの積層体を、実施例1と同様の条件でプレス処理、乾燥処理した後A4サイズに断裁し、サイズプレス処理し、記録媒体を作製した。
得られた記録媒体のうち、MD方向と平行な辺の端部から最終断裁位置を基準とした場合に、磁性材料がパルプ繊維の配向方向に対して直角方向に1mm以上の位置にあるものを選別した。
【0097】
(実施例5)
実施例1においてWetシートの抄紙条件を以下に示す条件に変更し、磁性材料として直径20μm長さ290mmの磁性材料(組成:Fe−Co−Si)を用い、一方のシート表面に磁性材料を配置する際に、磁性材料を、シートのMD方向と平行な辺の端部から、最終断裁位置を基準とした場合に、パルプ繊維の配向方向に対して直角方向に2mm以上離れた領域に位置するようにシート表面に配置した以外は実施例1と同様にして記録媒体を作製した。
なお下記抄紙条件にて得られたWetシートの坪量は45g/mであった。
<抄紙条件>
・抄紙ワイヤー速度1200m/min
・試料噴射圧力1kgf/cm
・ストローク回数7回
【0098】
(比較例1)
実施例1において、一方のシート表面に磁性材料を配置する際に、磁性材料を、シートのMD方向と平行な辺の端部から、最終断裁位置を基準とした場合に、パルプ繊維の配向方向に対して直角方向に0.5mm以上離れた領域に位置するようにシート表面に配置した以外は実施例1と同様にして記録媒体を作製した。
【0099】
(比較例2)
第1のシートを抄紙する際のストローク回数を1回にし、坪量を7g/mに変更した以外は、実施例4と同様にして記録媒体を作製した。
得られた記録媒体のうち、MD方向と平行な辺の端部から、最終断裁位置を基準とした場合にパルプ繊維の配向方向に対して直角方向に0.5〜0.6mmの位置に磁性材料があるものを選別した。
【0100】
(比較例3)
実施例1においてWetシートの抄紙条件を以下に示す条件に変更し、磁性材料として直径20μm長さ290mmの磁性材料(組成:Fe−Co−B)を用い、一方のシート表面に磁性材料を配置する際に、磁性材料を、シートのMD方向と平行な辺の端部から、最終断裁位置を基準とした場合に、パルプ繊維の配向方向に対して直角方向に0.5mm以上離れた領域に位置するようにシート表面に配置した以外は実施例1と同様にして記録媒体を作製した。
なお下記抄紙条件にて得られたWetシートの坪量は45g/mであった。
<抄紙条件>
・抄紙ワイヤー速度1200m/min
・試料噴射圧力1kgf/cm
・ストローク回数7回
【0101】
(比較例4)
実施例1において、一方のシート表面に磁性材料を配置する際に、磁性材料を、シートのMD方向と平行な辺の端部から、最終断裁位置を基準とした場合に、パルプ繊維の配向方向に対して直角方向に0mmに位置するように(断裁後の端部に磁性材料が露出するように)シート表面に配置した以外は実施例1と同様にして記録媒体を作製した。
【0102】
−評価−
各実施例、比較例の記録媒体について、電子写真方式の画像形成装置を用いて画像形成テストを行った。
なお、画像形成装置としてはDocuCentreColor f450(富士ゼロックス株式会社製)を用い、定着条件は普通紙モード(搬送速度160mm/s)に設定し、記録媒体全面にハーフトーン画像を連続2000枚形成した際の磁性材料の欠落や、画質欠陥、搬送不良について評価した。結果を表1に示す。
【0103】
【表1】

【0104】
なお、表1中に示す磁性材料の欠落、画質欠陥、搬送不良については以下の基準で評価した。
〔磁性材料の欠落〕
磁性材料の欠落は、2000枚のハーフトーン画像形成後に装置内の紙送りロール、転写ベルトクリーナー、定着ロールに付着堆積した磁性材料の量を目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:磁性材料の欠落は全く確認されない。
○:磁性材料の欠落はほとんど確認されない。
△:磁性材料の欠落が散見され、実用上問題がある。
×:顕著な磁性材料の欠落が確認される。
【0105】
〔画質欠陥〕
画質欠陥は、ハーフトーン画像形成テスト終了直前の画像(2000枚目近傍)をサンプリングし、磁性材料の欠落に起因する筋や抜けなどの画像欠陥の有無を目視により観察し、以下の基準で評価した。
○:サンプル中に画像欠陥はみられない。
△:サンプル中にわずかな画像欠陥が観察される。
×:サンプル中に画像欠陥が認められる。
【0106】
〔搬送不良〕
搬送不良は、連続2000枚のハーフトーン画像形成テスト中のミスフィードなどの搬送不良の発生回数をカウントし、以下の基準で評価した。
○:搬送不良なし。
△:搬送不良が1回以上5回未満発生
×:搬送不良が5回以上発生
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】パルプ繊維の配向方向に対して平行な辺の端部近傍に存在する磁性材料と、当該端部との最短距離の測定方法を説明するための概略模式図である。
【図2】記録媒体表面と磁性材料との最短距離の測定方法を説明するための概略模式図である。
【図3】大バルクハウゼン効果を示す説明図である。
【図4】本発明のシートの一例を示す概略模式図である。
【図5】電子写真方式の画像形成装置の一例を示す概略模式図である。
【符号の説明】
【0108】
10 画像形成装置
12 像保持体
14 帯電装置
16 露光装置
18 現像装置
20 記録媒体
22 転写装置
24 クリーニング装置
26 定着装置
27 定着ロール
40 シート
50 第1の磁性材料を含む領域
60 第2の磁性材料を含まない領域
62 シート40の矢印Y方向と平行な辺の端部に沿って設けられた磁性材料が含まれない帯状の領域
100 記録媒体
102 記録媒体断面
110 端部
112 記録媒体表面
120、120A、120B、120C 磁性材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材料と、記録媒体平面方向に対して配向したパルプ繊維とを含み、
前記パルプ繊維の配向方向に対して平行な辺の端部と前記磁性材料との最短距離の最小値が1mm以上であることを特徴とする記録媒体。
【請求項2】
記録媒体表面に、前記磁性材料が露出していないことを特徴とする請求項1に記載の記録媒体。
【請求項3】
記録媒体表面と前記磁性材料との最短距離の最小値が5μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の記録媒体。
【請求項4】
前記磁性材料が大バルクハウゼン効果を有することを特徴とする請求項1に記載の記録媒体。
【請求項5】
前記磁性材料は、長さが10mm〜350mmの範囲内で、且つ、直径が20〜60μmの範囲内である線状体であることを特徴とする請求項4に記載の記録媒体。
【請求項6】
2つ以上の層を有することを特徴とする請求項1に記載の記録媒体。
【請求項7】
磁性材料と、シート平面方向に対して配向したパルプ繊維とを含み、
前記パルプ繊維の配向方向と平行な方向に帯状を成し、且つ、前記パルプ繊維の配向方向と直交する方向に交互に形成され、前記磁性材料を含む第1の領域及び前記磁性材料を含まない第2の領域を有し、
隣接する2つの第1の領域間に形成された第2の領域の幅が2mm以上であることを特徴とするシート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−25058(P2008−25058A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−199264(P2006−199264)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】