説明

記録媒体及び情報記憶装置、並びに制御装置

【課題】記録再生ヘッドの高精度な位置決めを実現する。
【解決手段】第1のサーボパターン34、第2のサーボパターン36及びシステム領域62が、磁気ディスク18のディスク基板の内周部において、周方向に沿って配置されているので、第1のサーボパターン34と第2のサーボパターン36を用いて、磁気ディスクの内周端又は外周端の近傍から、第2のサーボパターン36上に第3のサーボパターン64a〜64cを記録することができる。この場合、第1のサーボパターンに連結した状態で第3のサーボパターンを記録しなくても良いので、外部STW設備のヘッドの軌道(例えば円弧軌道)と、記録再生ヘッド12の軌道(例えば円弧軌道)が異なる(円弧の半径が異なる)場合でも、第3のサーボパターンを高精度に記録することができ、ひいては、記録再生ヘッドの高精度な位置決めを実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体及び情報記憶装置、並びに制御装置に関し、特に絶対位置情報を有する第1のサーボパターン及び相対位置情報を有する第2のサーボパターンを備える記録媒体、及び当該記録媒体を具備する情報記憶装置、並びに当該情報記憶装置に接続される制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置などの情報記憶装置に搭載される磁気ディスクなどの記録媒体上には、当該記録媒体に対するデータの読み書きを実行する記録再生ヘッドの位置決め制御に使用されるサーボパターンが形成されている。記録再生ヘッドは、このサーボパターンの読み出し結果に基づいて、記録媒体上における目標トラックに位置決めされる。
【0003】
記録媒体上に形成されるサーボパターンは、一般的には、記録媒体の内側から外側に向かって放射状に形成されている。また、他のサーボパターンとして、スパイラル形状(螺旋状)のサーボパターンと、それに接続する同心円状のサーボパターンとを有するものも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記記録媒体上へのサーボパターンの形成は、外部STW(Servo Track Writing)設備において実行されている。しかしながら、外部STW設備にて記録媒体全面にサーボパターンを記録することとすると、1枚の記録媒体に対するサーボパターンの記録が長時間となるため、1つの設備を1枚の記録媒体が長期にわたって占有することになる。また、上記理由から、外部STW設備の増設などの必要も生じることから、設備投資コストの増大を招くおそれがある。
【0005】
これに対し、近年においては、外部STW設備での設備投資コストの低減を目的として、記録媒体が実装される情報記憶装置内で、サーボパターンを磁気的に書き込む方法が提案されている(例えば、特許文献2、3参照)。この方法では、情報記憶装置内の記録再生ヘッドによりスパイラル形状(螺旋状)のスパイラルサーボパターンを形成し、このスパイラルサーボパターンを用いて、放射状のサーボパターンの形成を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−59671号公報
【特許文献2】米国特許第5668679号明細書
【特許文献3】米国特許第7145744号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
最近では、スパイラル形状(螺旋状)のサーボパターンをリファレンスとして、サーボパターンを形成する方法の実用化に関する種々の検討がなされている。この方法は、記録媒体の一部に絶対位置情報を含む第1のサーボパターンを予め形成するとともに、記録媒体の全面に相対位置情報を含む第2のサーボパターンを予め形成しておき、記録媒体を磁気記憶装置内に実装した後に、第1、第2のサーボパターンを用いて、絶対位置情報を含む第3のサーボパターンを磁気ディスクの全面に形成するというものである。
【0008】
しかしながら、本方法の実用化に向けた検討において、精度上の課題や、コスト上の課題など、様々な課題が新たに出現してきている。
【0009】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、記録媒体本体の内周から外周のほぼ全範囲に第3のサーボパターンを高精度に記録することが可能な記録媒体を提供することを目的とする。また、本発明は、情報の記録再生を高精度に行うことが可能な情報記憶装置を提供することを目的とする。また、本発明は、情報記憶装置における記録再生の高精度化に寄与することが可能な制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書に記載の記録媒体は、円盤状の記録媒体本体と、前記記録媒体本体上における絶対位置情報を有する第1のサーボパターンと、前記記録媒体本体上における相対位置情報を有する第2のサーボパターンと、前記記録媒体本体上における絶対位置情報を有する第3のサーボパターンを前記第1、第2のサーボパターンを利用して記録するときに用いられるデータが格納されるシステム領域と、を備え、前記第1のサーボパターン、前記第2のサーボパターン及び前記システム領域が、前記記録媒体本体の外周部及び内周部の少なくとも一方において、周方向に沿って配置されている。
【0011】
これによれば、第1のサーボパターン、第2のサーボパターン及びシステム領域が、記録媒体本体の外周部及び内周部の少なくとも一方において、周方向に沿って配置されているので、第1のサーボパターンに書き継いだりすることなく、記録媒体本体の外周部及び内周部の一側から、第2のサーボパターン上に第3のサーボパターンを記録することができる。このように、第3のサーボパターンを第1のサーボパターンに書き継ぐ必要が無いことから、第1のサーボパターンと第3のサーボパターンの形状誤差(記録するヘッドの軌道の誤差(円弧軌道の半径差))等の影響を受けずに、記録媒体本体の内周及び外周の一側から他側にかけて第3のサーボパターンを高精度に記録することができる。
【0012】
本明細書に記載の情報記憶装置は、本明細書記載の記録媒体と、前記記録媒体に対する情報の記録・再生を行う記録再生ヘッドと、前記第1、第2のサーボパターンの情報、及び前記システム領域に格納されているデータに基づいて、前記第3のサーボパターンを前記記録再生ヘッドを用いて前記記録媒体上に記録させるための制御信号を生成する記録信号生成部と、を備える情報記憶装置である。
【0013】
これによれば、記録信号生成部により生成される制御信号により、本明細書に記載の記憶媒体に、第3のサーボパターンを高精度に記録することができるので、第3のサーボパターンを用いることにより、情報の記録再生を高精度に行うことが可能となる。また、第3のサーボパターンを装置内で記録するので、外部STW設備に対して費やすコストを低減することが可能となる。
【0014】
本明細書に記載の制御装置は、本明細書に記載の記録媒体と、前記記録媒体に対する情報の記録・再生を行う記録再生ヘッドと、を有する情報記憶装置に接続され、前記第1、第2のサーボパターンの情報、及び前記システム領域に格納されているデータに基づいて、前記第3のサーボパターンを前記記録再生ヘッドを用いて前記記録媒体上に記録させるための制御信号を生成する制御装置である。
【0015】
これによれば、第1、第2のサーボパターンの情報、及びシステム領域に格納されているデータに基づいて生成した制御信号により、本明細書に記載の記憶媒体に第3のサーボパターンを高精度に記録することができるので、このように記録された第3のサーボパターンを用いることで、情報記憶装置における情報の記録再生精度を向上することができる。すなわち、本明細書に記載の制御装置によれば、情報記憶装置における情報の記録再生の高精度化に寄与することができる。
【発明の効果】
【0016】
本明細書に記載の記録媒体は、記録媒体本体の内周から外周のほぼ全範囲に第3のサーボパターンを高精度に記録することができるという効果を奏する。また、本明細書に記載の情報記憶媒体は、情報の記録再生を高精度に行うことができるという効果を奏する。また、本明細書に記載の制御装置は、情報記憶装置における記録再生の高精度化に寄与することできるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一実施形態に係る磁気ディスク装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】図1の磁気ディスク(磁気ディスク装置への実装前又は直後の磁気ディスク)を示す平面図である。
【図3】図2の磁気ディスクの内周側の領域を拡大して示す図である。
【図4】第1のサーボパターンに記録されているデータのフォーマットを説明するための図である。
【図5】第3のサーボパターンのリライト形成処理を示すフローチャートである。
【図6】図6(a)は、システム領域に対する読み書きを行う際のサーボゲートの制御方法を示す図であり、図6(b)は、システム領域以外に対する読み書きを行う際のサーボゲートの制御方法を示す図である。
【図7】第3のサーボパターンの形成方法について説明するための図(その1)である。
【図8】第3のサーボパターンの形成方法について説明するための図(その2)である。
【図9】従来検討されていた第1のサーボパターン及びシステム領域の配置について示す図である。
【図10】図9の配置で、第3のサーボパターンを形成した状態を示す図である。
【図11】変形例に係る、第1のサーボパターン及びシステム領域の配置について示す図である。
【図12】図11の配置で、第3のサーボパターンを形成した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の記録媒体及び情報記憶装置の一実施形態である、磁気ディスク18及び磁気ディスク装置100について、図1〜図10に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1には、本実施形態に係る磁気ディスク装置100のブロック図が示されている。この図1に示すように、磁気ディスク装置100は、ディスクエンクロージャ80と、制御ボード90と、を備える。
【0020】
このうち、ディスクエンクロージャ80は、ヘッドアンプ10、記録再生ヘッド12、ボイスコイルモータ14、スピンドルモータ16、及び磁気ディスク18を有している。
【0021】
ヘッドアンプ10は、リードチャネル28から入力されるデータを、記録再生ヘッド12(記録素子)に送信するとともに、記録再生ヘッド12(再生素子)によって読み取られたデータをリードチャネル28に送信する。
【0022】
記録再生ヘッド12は、セラミックなどからなる本体と、当該本体に組み込まれた、磁気ディスク18に情報(データ)を書き込むための記録素子、及び書き込まれたデータを読み取るための再生素子と、を有する。
【0023】
ボイスコイルモータ14は、サーボコントローラ26の制御の下、記録再生ヘッド12を保持するヘッド・スタック・アッセンブリ(HSA)を駆動し、磁気ディスク18上の所望の位置に記録再生ヘッド12を位置決めする。スピンドルモータ16は、サーボコントローラ26の制御の下、磁気ディスク18を、例えば4200〜15000rpmなどの適切な回転速度で回転させる。
【0024】
磁気ディスク18は、磁性体の磁化状態を変化させることにより、データを記録する記録媒体である。磁気ディスク18上には、ユーザデータを格納する領域のほか、記録再生ヘッド12の位置決め制御に用いられるサーボパターンが形成される。ここで、ディスクエンクロージャ80に搭載される前及び搭載された直後の磁気ディスク18は、図2に示すようなサーボパターンを有している。具体的には、磁気ディスク18は、記憶媒体本体としてのディスク基板190の内周部近傍の領域において、周方向に沿って所定間隔で設けられた第1のサーボパターン34と、ディスク基板190の全面に設けられたスパイラル形状(螺旋状)の第2のサーボパターン36と、を有している。
【0025】
本実施形態では、磁気ディスク18が磁気ディスク装置100に搭載された後、磁気ディスク18の全面に絶対位置情報を含む第3のサーボパターンを記録するが、上記第1、第2のサーボパターン34、36は、この記録における記録再生ヘッド12の位置決め用として用いられる。これら第1のサーボパターン34と第2のサーボパターン36は、外部のSTW(Servo Track Writing)設備において、予め形成されたものである。
【0026】
図3には、磁気ディスク18の内周部近傍の領域の一部を拡大した状態が示されている。第1のサーボパターン34は、図3に示すように、磁気ディスク18の半径方向に延在している。すなわち、第1のサーボパターン34は、磁気ディスク18の内側から放射状に設けられている。
【0027】
図4には、第1のサーボパターン34に記録されているデータのフォーマットが示されている。この図4に示すように、第1のサーボパターン34には、プリアンブル38、サーボシンクマーク40、セクタデータ42、グレイコード44、及び位相バースト46が含まれる。
【0028】
プリアンブル38は、セクタデータやグレイコードなどのサーボデータを読み出す前に、再生出力の増幅率を調整して、振幅を一定にするのに用いられる。サーボシンクマーク40は、サーボデータの先頭を見つけるために用いられる。セクタデータ42は、セクタ番号情報を有しており、1つのトラック中の何番目のサーボデータかを示す。グレイコード44は、トラック番号情報をグレイコードにより記録している。位相バースト46は、トラックに対する記録再生ヘッド12の相対位置情報を有し、記録再生ヘッド12を目標トラックの中心に正確に位置付けるために用いられる。
【0029】
このように、本実施形態では、第1のサーボパターン34がグレイコード44等を含んでいることから、第1のサーボパターン34を読み取ることにより、磁気ディスク18上での絶対位置を特定することができる。すなわち、第1のサーボパターン34は、磁気ディスク18上における絶対位置情報を含んでいるといえる。
【0030】
図3に戻り、第2のサーボパターン36は、スパイラル形状(螺旋状)をしたパターンであり、第1のサーボパターン34と交差した状態となっている。この第2のサーボパターン36は、シンクマークと、バーストと、を含んでいる(いずれも不図示)。このうち、シンクマークは、円周方向における基準タイミング情報として使用される。また、バーストは、その振幅ピーク位置タイミングにより、第2のサーボパターン36の位置を示す。このように、本実施形態では、第2のサーボパターン36がグレイコード等を含んでいないことから、第2のサーボパターン36を読み取っても、磁気ディスク18上の絶対位置を特定することはできず、相対位置のみ特定することができる。すなわち、第2のサーボパターン36は、磁気ディスク18上における相対位置情報を含んでいるといえる。
【0031】
第1のサーボパターン34に隣接した位置には、図3に示すように、システム領域62が設けられている。このシステム領域62には、後述するインナー基準位置の情報や、第3のサーボパターンを記録する際のスケジュールデータなどが格納される。
【0032】
これまでの説明から分かるように、磁気ディスク18の半径方向に関する所定範囲(図3の範囲A)においては、第1のサーボパターン34、第2のサーボパターン36、及びシステム領域62が、周方向に沿って繰り返し配列されている。
【0033】
図1に戻り、制御ボード90は、ハードディスクコントローラ20、データバッファ22、記録部としてのメモリ24、サーボコントローラ26、リードチャネル28、及びMPU(Micro Processing Unit)30を有する。これらのうち、ハードディスクコントローラ20、メモリ24、サーボコントローラ26、リードチャネル28、及びMPU30は、システムバス32を介して互いに接続した状態となっている。
【0034】
ハードディスクコントローラ20は、磁気ディスク装置100のホストであるコンピュータなどのホストシステムとの間で各種命令・データの授受を行う。データバッファ22は、ホストシステムからのデータなどを一時的に記憶する。
【0035】
メモリ24は、例えばRAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリと、フラッシュROM(Read Only Memory)などの不揮発性メモリとを含んでいる。RAMは、MPU30が制御処理を実行するときに使用するワークメモリである。フラッシュROMは、MPU30によって実行される制御プログラムが予め格納されている。
【0036】
サーボコントローラ26は、MPU30からの指示に基づき、ボイスコイルモータ14やスピンドルモータ16の駆動を制御する。
【0037】
リードチャネル28は、ライト変調部及びリード復調部として機能する。
【0038】
MPU30は、磁気ディスク装置100全体を制御する。このMPU30は、図1に示すように、基準位置検出部52、ヘッド位置制御部54、及び記録信号生成部56を有する。基準位置検出部52は、記録再生ヘッド12で読み取られ、復調された第1のサーボパターン34と第2のサーボパターン36との位置関係から、第2のサーボパターン36の基準位置を求める。ヘッド位置制御部54は、磁気ディスク18上の所望の位置に記録再生ヘッド12を位置決め制御する。記録信号生成部56は、対象位置に位置決め制御された記録再生ヘッド12により、対象位置における磁気ディスク18に、絶対位置情報を有する第3のサーボパターンを記録させるための記録信号を生成する。
【0039】
次に、磁気ディスク18の全面に、第1のサーボパターン34、第2のサーボパターン36を用いて、絶対位置情報を有する第3のサーボパターンを形成する方法(リライト形成方法)について、図5のフローチャートに沿って説明する。
【0040】
図5の処理が実行される前提として、MPU30の基準位置検出部52は、予め基準位置(図3に示すインナー基準位置)についての検出を行っており、当該検出結果(基準位置に関する情報)は、システム領域62に格納されている。また、システム領域62には、第3のサーボパターンを形成するために実行する必要のあるリライト回数、各リライトにおけるシリンダ位置などの情報(スケジュールデータ)が格納されている。なお、本実施形態では、3回のリライト形成により、第3のサーボパターン(64a,64b,64c)を形成する場合を例に採り説明する。
【0041】
まず、1回目のリライト形成について説明する。
【0042】
MPU30(ヘッド位置制御部54)は、図5のステップS30において、サーボコントローラ26を介してスピンドルモータ16やボイスコイルモータ14の駆動を制御し、記録再生ヘッド12を第1のサーボパターン34内の目標トラックに位置決めする。この場合、第1のサーボパターン34のグレイコード44や位相バースト46などの情報を用いることで、記録再生ヘッド12を目標トラックに位置決めすることが可能である。
【0043】
次いで、MPU30は、ステップS32において、システム領域62に記録されている基準位置の情報(シリンダ位置の情報など)を読み出す。また、MPU30は、ステップS34において、システム領域62に記録されているリライト形成のスケジュールデータを読み出す。ここで、システム領域62から情報を読み取る際には、図6(a)に示すように、システム領域62以外においてサーボゲートSGを開くようにする。一方、システム領域62へのアクセスを行わない場合には、図6(b)に示すように、サーボゲートSGを、第1のサーボパターン34をカバーする範囲で開くようにする。このようなサーボゲートSGの制御を行うことで、システム領域62からの情報の読み取りが可能となる。なお、システム領域62に対する情報の書き込みを行う場合であっても、上記と同様、図6(a)のようなサーボゲート制御を行うこととすれば良い。
【0044】
次に、MPU30は、ステップS36において、リライト形成スケジュールが全て終了したかを判断する。ここでは、まだリライト形成を行っていないので判断は否定され、ステップS38に移行する。次いで、MPU30(ヘッド位置制御部54)は、ステップS38において、サーボコントローラ26を介してスピンドルモータ16やボイスコイルモータ14を制御し、システム領域62から読み出した基準位置(図3参照)に、記録再生ヘッド12を移動する。この移動に際しても、第1のサーボパターン34のグレイコード44や位相バースト46などの情報を用いることができる。
【0045】
次に、MPU30は、ステップS40において、記録再生ヘッド12の位置決め制御を、第1のサーボパターン34を用いた位置決め制御から第2のサーボパターン36を用いた位置決め制御に乗り換える。その後、MPU30(ヘッド位置制御部54)は、ステップS42において、システム領域62から読み出したスケジュールデータに基づき、リライト形成開始位置に記録再生ヘッド12を移動させる。なお、本実施形態では、1回目のリライト形成の場合は、基準位置におけるシリンダ位置からリライト形成を進めて行くため、ステップS42による記録再生ヘッド12の移動は行われないが、基準位置を基準とした所定のシリンダ位置からリライト形成を進めてもよい。
【0046】
次に、MPU30(ヘッド位置制御部54)は、ステップS44において、システム領域62から読み出した1回目のリライト形成スケジュールにおけるシリンダ位置情報に基づき、サーボコントローラ26を介してスピンドルモータ16やボイスコイルモータ14を駆動し、記録再生ヘッド12の位置決め制御を行う。この際の、記録再生ヘッド12の位置決め制御は、第2のサーボパターン36を用いて行う。記録再生ヘッド12の位置決め制御が行われている間、MPU30(記録信号生成部56)は、ステップS46において、第3のサーボパターン(64a)をリライト形成するための記録信号を生成する。第3のサーボパターン(64a)をリライト形成するための記録信号は、リードチャネル28を介して記録再生ヘッド12に送信される。これにより、図7(a)に示すように、記録再生ヘッド12が移動した位置に、第3のサーボパターン64aが形成される(ステップS48)。この場合、第3のサーボパターン64aは、図7(a)に示すように、第1のサーボパターン34及びシステム領域62に対して、周方向にずれた位置(第2のサーボパターン36上)に形成される。すなわち、磁気ディスク18の半径方向に関する所定範囲(図3の範囲A)においては、第1のサーボパターン34、第2のサーボパターン36、第3のサーボパターン、及びシステム領域62が、周方向に沿って繰り返し配列されている。なお、磁気ディスク18上に第3のサーボパターン64aを形成する場合には、回転する磁気ディスク18に対して、記録再生ヘッド12を半径方向に移動させながら、セクタごとに順次形成する。
【0047】
ここで、第2のサーボパターン36は、前述したように、磁気ディスク18上における相対位置情報を有し、第2のサーボパターン36の基準位置は、絶対位置情報を有する。したがって、記録再生ヘッド12の位置決め制御を、第2のサーボパターン36の基準位置から実行し、その後は、第2のサーボパターン36を用いることで、磁気ディスク18上での絶対位置を特定しつつ、記録再生ヘッド12の位置決め制御を行うことができる。
【0048】
なお、第1のサーボパターン34と第3のサーボパターン64aとは、基本的には同一の構成(図4の構成)を有しているが、サーボシンクマーク40の内容(定義)のみが異なったものとなっている。このようにサーボシンクマーク40を異ならせることにより、第1のサーボパターン34と第3のサーボパターン64aが磁気ディスク18上に共存していても、以降の処理において、第1のサーボパターン34(又は第3のサーボパターン64a)を確実に検出することが可能である。したがって、この後に行われる2回目、3回目のリライト形成においても、第1のサーボパターン34を用いた適切な位置決めを行うことができる。
【0049】
以上のようにして、1回目のリライト形成が終了した後、MPU30(ヘッド位置制御部54)は、ステップS50において、第2のサーボパターン36を用いた位置決め制御を停止して、記録再生ヘッド12を磁気ディスク18の外部にアンロードする。
【0050】
次いで、MPU30(ヘッド位置制御部54)は、ステップS52において、再度、第1のサーボパターン34のグレイコード44や位相バースト46などの情報を用い、記録再生ヘッド12を第1のサーボパターン34内の目標トラックに位置決めする。なお、前述したステップS50において、記録再生ヘッド12を磁気ディスク18の外部に一旦アンロードさせるのは、記録再生ヘッド12の位置決め制御を、第2のサーボパターン36から第1のサーボパターン34に切り替える必要があるからである。
【0051】
次いで、MPU30は、ステップS54において、システム領域62に1回目のリライト形成が終了したこと(第3のサーボパターン64aの形成が終了したこと)を記録する。
【0052】
次に、2回目のリライト形成を以下のようにして実行する。
【0053】
MPU30は、ステップS34において、システム領域62より、リライト形成のスケジュールデータとステップS52で記録した1回目のリライト形成が終了したことを示す情報を読み出すと、次のステップS36において、リライト形成スケジュールが全て終了したかを判断する。ここでは、ステップS34において、3回のリライト形成のうち、1回目のリライト形成が終了した情報が読み出されているのみであるため判断は否定され、ステップS38に移行する。そして、MPU30(ヘッド位置制御部54)は、ステップS38において、記録再生ヘッド12を基準位置に移動させ、ステップS40において、記録再生ヘッド12の位置決め制御を、第1のサーボパターン34を用いた位置決め制御から第2のサーボパターン36を用いた位置決め制御に乗り換える。その後、MPU30は、ステップS42、S44において、システム領域62から読み出したリライト形成のスケジュールデータと1回目のリライト形成が終了したことの情報とに基づき、2回目のリライト形成開始位置に記録再生ヘッド12を移動して、位置決めする。この場合、2回目のリライト形成開始位置は、1回目のリライト形成終了位置に隣接するシリンダ位置である。その後は、MPU30が、ステップS46〜S48を実行し、図7(b)のように、第3のサーボパターン64bを形成する。
【0054】
以上のようにして、2回目のリライト形成が終了した段階で、MPU30は、記録再生ヘッド12を磁気ディスク18の外部にアンロードし(ステップS50)、再度、記録再生ヘッド12を第1のサーボパターン34内の目標トラックに位置決めし(ステップS52)、システム領域62に、2回目のリライト形成が終了したことを記録する(ステップS54)。
【0055】
その後は、MPU30が、ステップS34〜S54を再度実行することにより、3回目のリトライ形成を実行する。この3回目のリトライ形成により、図8に示すような第3のサーボパターン64cが磁気ディスク18上に形成される。なお、ステップS54では、MPU30は、3回目のリライト形成が終了したことをシステム領域62に記録する。
【0056】
次に、MPU30は、システム領域62から、リライト形成のスケジュールデータと3回目のリライト形成が終了した情報とを読み出し(ステップS34)、リライト形成スケジュールが全て終了したかを判断する(ステップS36)。MPU30は、システム領域62から読み出したリライト形成のスケジュールデータと3回目のリライト形成が終了した情報とに基づき、リライト形成スケジュールが全て終了したと判断すると、ステップS36の判断が肯定されて、ステップS56に移行する。
【0057】
その後、MPU30は、ステップS56において、システム領域62に全てのリライト形成が完了したことを記録し、図5の全処理を終了する。
【0058】
上述したようにして磁気ディスク18上に第3のサーボパターン64a〜64cが形成された後は、磁気ディスク100においては通常の記録再生処理を実行することができるようになる。すなわち、磁気ディスク装置100では、第3のサーボパターン64a〜64cを用いた記録再生ヘッド12の位置決めが可能となるので、これ以降は、絶対位置情報を有する第3のサーボパターン64a〜64cを用いることで、記録再生ヘッド12の高精度な位置決めができ、ひいては、記録再生ヘッド12を用いた高精度な記録再生が可能となる。
【0059】
以上詳細に説明したように、本実施形態によると、第1のサーボパターン34、第2のサーボパターン36及びシステム領域62が、磁気ディスク18のディスク基板190の内周部において、周方向に沿って配置されているので、第1のサーボパターン34と第2のサーボパターン36を用いて、磁気ディスク18の内周端近傍から、第2のサーボパターン36上に第3のサーボパターン64a〜64cを記録することができる。
【0060】
ここで、従来においては、図9に示すような第1のサーボパターン34’、第2のサーボパターン36’及びシステム領域62の配置が検討されていた。しかるに、図9のような配置を採用した場合、システム領域62を消去することなく、かつ磁気ディスク18の半径方向ほぼ全域に第3のサーボパターンを形成するためには、図10に示すように、第3のサーボパターン64a’〜64c’を第1のサーボパターン34に繋げて形成する必要があった。この場合、第1のサーボパターン34は、外部STW設備内のヘッドを用いて形成されており、第3のサーボパターン64a’〜64c’は磁気ディスク装置100内の記録再生ヘッド12を用いて形成されることから、以下のような課題が生じていた。
(1) 外部STW設備のヘッドの軌道(例えば円弧軌道)と、記録再生ヘッド12の軌道(例えば円弧軌道)が異なる(円弧の半径が異なる)場合には、第1のサーボパターン34’と第3のサーボパターン64a’とが連結される部分にずれが生じてしまい、記録再生ヘッドの高精度な位置決めができなくなるおそれがある。
(2) 外部STW設備と磁気ディスク装置100とでは、サーボパターンを形成する際の機構が異なるため、半径方向に関する送り精度や制御方法が異なり、第1のサーボパターンのトラックピッチと、第3のサーボパターンのトラックピッチが異なるおそれがある。
(3) 外部STW設備で記録された第1のサーボパターンは、磁気ディスク装置100に搭載された状態では、偏心成分を有する可能性がある。
(4) 外部STW設備で用いる記録再生ヘッドと、磁気ディスク装置100内で用いる記録再生ヘッド12は、同一ではないため、ヘッドにおける記録素子と再生素子との間の距離差により、第1のサーボパターンと、第3のサーボパターンとの間に非連続性が生じる。このような非連続な部分が存在すると、グレイコードやバーストを用いた位置決め情報に誤差が生じるため、位置決め精度が低下するおそれがある。
これに対し、本実施形態(図8)では、第3のサーボパターン64aを、第1のサーボパターン34に連結せずに形成することができるので、上述した(1)〜(4)のような事態を回避し、記録再生ヘッドの高精度な位置決めを実現することができる。
【0061】
また、本実施形態の磁気ディスク装置100によると、MPU30(記録信号生成部56)により生成される制御信号により、磁気ディスク18に第3のサーボパターン64a〜64cを高精度に記録することができるので、この第3のサーボパターン64a〜64cを用いて記録再生ヘッド12の位置決めを行うことにより、データ(ユーザデータ)の記録再生を高精度に行うことができる。また、第3のサーボパターン64a〜64cを磁気ディスク装置100内で記録するので、外部STW設備に対して費やすコストを低減することができる。
【0062】
また、本実施形態では、システム領域62が、磁気ディスク18の半径方向に延びるように設けられているので、第3のサーボパターンを記録する領域を確保しつつ、システム領域62に記録可能なデータ量を多く確保することが可能である。
【0063】
なお、上記実施形態では、第1のサーボパターン34及びシステム領域62を、磁気ディスク18の内周側の領域に設ける場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、図11に示すように、磁気ディスク18の外周側の領域に設けることとしても良い。この場合にも、外周側の所定領域(図11の半径方向に関する範囲B)において、第1のサーボパターン34、第2のサーボパターン36、システム領域62を周方向に沿って配列することで、図12に示すように、第3のサーボパターン64a,64b,64cを上記実施形態と同様にして形成することが可能となる。また、これに限らず、内周側の領域と外周側の領域の両側に第1のサーボパターン34及びシステム領域62を設けることとしても良い。
【0064】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0065】
12 記録再生ヘッド
18 磁気ディスク(記録媒体)
34 第1のサーボパターン
36 第2のサーボパターン
56 記録信号生成部
62 システム領域
64a〜64c 第3のサーボパターン
90 ディスク基板(記録媒体本体)
100 磁気ディスク装置(情報記憶装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状の記録媒体本体と、
前記記録媒体本体上における絶対位置情報を有する第1のサーボパターンと、
前記記録媒体本体上における相対位置情報を有する第2のサーボパターンと、
前記記録媒体本体上における絶対位置情報を有する第3のサーボパターンを前記第1、第2のサーボパターンを利用して記録するときに用いられるデータが格納されるシステム領域と、を備え、
前記第1のサーボパターン、前記第2のサーボパターン及び前記システム領域が、前記記録媒体本体の外周部及び内周部の少なくとも一方において、周方向に沿って配置されていることを特徴とする記録媒体。
【請求項2】
前記システム領域は、前記記録媒体本体の半径方向に延びることを特徴とする請求項1に記載の記録媒体。
【請求項3】
前記第1のサーボパターンのサーボシンクマークは、前記記録媒体本体上に記録される前記第3のサーボパターンのサーボシンクマークと異なることを特徴とする請求項1又は2に記載の記録媒体。
【請求項4】
前記第3のサーボパターンが記録された後は、
当該第3のサーボパターンと、前記第1、第2のサーボパターンと、前記システム領域が、前記記録媒体本体の外周部及び内周部の少なくとも一方において、周方向に沿って配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の記録媒体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の記録媒体と、
前記記録媒体に対する情報の記録・再生を行う記録再生ヘッドと、
前記第1、第2のサーボパターンの情報、及び前記システム領域に格納されているデータに基づいて、前記第3のサーボパターンを前記記録再生ヘッドを用いて前記記録媒体上に記録させるための制御信号を生成する記録信号生成部と、を備える情報記憶装置。
【請求項6】
前記記録信号生成部は、
前記システム領域への情報の読み書きの際には、前記システム領域外をカバーするようにサーボゲートを開き、
前記読み書き完了後には、前記第1のサーボパターンの配置された領域のみをカバーするようにサーボゲートを開くことを特徴とする請求項5に記載の情報記憶装置。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の記録媒体と、前記記録媒体に対する情報の記録・再生を行う記録再生ヘッドと、を有する情報記憶装置に接続され、
前記第1、第2のサーボパターンの情報、及び前記システム領域に格納されているデータに基づいて、前記第3のサーボパターンを前記記録再生ヘッドを用いて前記記録媒体上に記録させるための制御信号を生成することを特徴とする制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−165411(P2010−165411A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6857(P2009−6857)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(309033264)東芝ストレージデバイス株式会社 (255)
【Fターム(参考)】