説明

記録方法および記録物

【課題】白色以外の地色を有する記録媒体上に高白色度の画像を形成するための記録方法を提供すること。
【解決手段】白色色材として中空樹脂粒子を含むインク組成物を用いて白色以外の地色を有する記録媒体に画像を記録することを特徴とする記録方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色以外の地色を有する記録媒体上に高白色度の画像を形成するための記録方法及びその記録物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、インクジェット等の画像記録においては、白色色材として二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム等の金属酸化物、硫酸バリウムまたは炭酸カルシウムなどの白色顔料が用いられている。
特許文献1では、被印刷面の地色が黄ばんだ白色の記録媒体または有色紙に対してカラー印刷を行なった場合においても、記録媒体の地色に影響されずに、彩やかなカラー画像を再現できる記録方法を開示している。特許文献1ではその具体的な方法として、例えば、記録媒体が白色以外の地色を有している場合に、予め白色インクを記録媒体の画像形成可能な領域の一部あるいは全面に白色インクを打ち込むことによって、該記録媒体の下地を白色とする方法を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−38063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような金属酸化物、硫酸バリウムまたは炭酸カルシウムのような白色顔料を用いた下地処理では、記録媒体を地色に影響されずに完全に白色とすることはできず、必ずしも満足できるものではなかった。特に、黒紙やダンボールなどの地色が濃色で且つセルロースを主体とする繊維状の記録媒体の場合には、高い白色度の画像を形成することが困難であった。
また他方で、記録媒体上に白色画像を下地処理画像としてではなく視認画像として形成する場合には、より高い白色度の画像の形成が望まれる。
【0005】
本発明は、白色以外の地色を有する記録媒体上に高白色度の画像を形成するための記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、上記課題を満足する本発明は下記の通りである。
【0007】
(1) 白色色材として中空樹脂粒子を含むインク組成物を用いて白色以外の地色を有する記録媒体に画像を記録することを特徴とする記録方法。
(2) 前記記録媒体がセルロースを主体とする繊維状記録媒体であることを特徴とする、上記(1)に記載の記録方法。
(3) 前記中空樹脂粒子の平均粒径が500nm以上1000nm以下であることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の記録方法。
(4) インクジェット記録方式に適用したことを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の記録方法。
(5) 上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の記録方法により得られる記録物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の記録方法によれば、記録媒体の被記録面の地色に影響されることなく、該記録媒体上に高白色度の画像を形成することができる。特に、黒紙やダンボールなどの地色が濃色で且つセルロースを主体とする繊維状の記録媒体の場合に印刷する場合においても、記録媒体の被記録面の地色に影響されることなく、高い白色度の画像を形成することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[インク組成物]
本発明におけるインク組成物は、白色色材として中空樹脂粒子を含む。
1.中空樹脂粒子
本発明における中空樹脂粒子としては、その内部に空洞を有しており、その外殻が液体透過性を有する樹脂から形成されていることが好ましい。かかる構成により、中空樹脂粒子が水性インク組成物中に存在する場合には、内部の空洞は水性媒質で満たされることになる。水性媒質で満たされた粒子は、外部の水性媒質とほぼ等しい比重を有するため、水性インク組成物中で沈降することなく分散安定性を保つことができる。これにより、インク組成物の貯蔵安定性や吐出安定性を高めることができる。
【0010】
また、本発明におけるインク組成物を、紙その他の記録媒体上に吐出させると、中空樹脂粒子の内部の水性媒質が乾燥時に抜けることにより空洞となる。中空樹脂粒子の内部に空気が含まれて空気層が形成されることによって、該中空樹脂粒子は屈折率の異なる樹脂層と空気層とにより入射光を効果的に散乱させるため、白色を呈することができる。
【0011】
本発明で用いられる中空樹脂粒子は、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。例えば、米国特許第4,880,465号や特許第3,562,754号などの明細書に記載されている中空樹脂粒子を好ましく用いることができる。
【0012】
中空樹脂粒子の平均粒子径(外径)は、好ましくは200〜1000nmである。外径が1000nmを超えると、粒子が沈降するなどして分散安定性を損なうことがあり、またインクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性を損なうことがある。一方、外径が200nm未満であると、白色度等の色濃度が不足する傾向にある。中空樹脂粒子の平均粒子径(外径)は、セルロースを主成分とする繊維状記録媒体を記録媒体とする場合には、白色度と定着性の両立の観点から500〜1000μmとすることが好ましい。また、内径は、100〜800nm程度が適当である。
【0013】
中空樹脂粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置として、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPA」日機装株式会社製)を用いることができる。
【0014】
上記中空樹脂粒子の含有量(固形分)は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは5〜20質量%であり、より好ましくは8〜15質量%である。中空樹脂粒子の含有量(固形分)が20質量%を超えると、インクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性を損なうことがある。一方、5質量%未満であると、白色度が不足する傾向にある。
【0015】
上記中空樹脂粒子の調製方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法を適用することができる。中空樹脂粒子の調製方法として、例えば、ビニルモノマー、界面活性剤、重合開始剤、および水系分散媒を窒素雰囲気下で加熱しながら撹拌することにより中空樹脂粒子エマルジョンを形成する、いわゆる乳化重合法を適用することができる。
【0016】
ビニルモノマーとしては、非イオン性モノエチレン不飽和モノマーが挙げられ、例えば、スチレン、ビニルトルエン、エチレン、ビニルアセテート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0017】
また、ビニルモノマーとして、二官能性ビニルモノマーを用いることもできる。二官能性ビニルモノマーとして、例えば、ジビニルベンゼン、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタン−ジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどが挙げられる。上記単官能性ビニルモノマーと上記二官能性ビニルモノマーとを共重合させて高度に架橋することにより、光散乱特性だけでなく、耐熱性、耐溶剤性、溶剤分散性などの特性を備えた中空樹脂粒子を得ることができる。
【0018】
界面活性剤としては、水中でミセルなどの分子集合体を形成するものであればよく、例えば、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
【0019】
重合開始剤としては、水に可溶な公知の化合物を用いることができ、例えば、過酸化水素、過硫酸カリウムなどが挙げられる。
【0020】
水系分散媒としては、例えば、水、親水性有機溶媒を含有する水などが挙げられる。
【0021】
2.定着樹脂
本発明におけるインク組成物は、中空樹脂粒子を定着させる樹脂を含むことが望ましい。かかる樹脂としては、アクリル系樹脂(例えば、アルマテックス(三井化学社製))、ウレタン系樹脂(例えば、WBR−022U(大成ファインケミカル社製))が挙げられる。
これらの定着樹脂の含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.5〜10質量%であり、より好ましくは0.5〜5.0質量%である。特に好ましくは0.5〜3.0質量%である。
【0022】
3.浸透性有機溶剤
本発明におけるインク組成物は、アルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。アルカンジオールやグリコールエーテルは、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
【0023】
アルカンジオールとしては、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールなどの炭素数が4〜8の1,2−アルカンジオールであることが好ましい。この中でも炭素数が6〜8の1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールは、記録媒体への浸透性が特に高いため、より好ましい。
【0024】
グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテルを挙げることができる。この中でも、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを用いると良好な記録品質を得ることができる。
【0025】
これらのアルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種の含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは1〜20質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。
【0026】
4.界面活性剤
本発明におけるインク組成物は、アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤を含有することが好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤は、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
【0027】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品を利用することもでき、例えば、オルフィンE1010、STG、Y(以上、日信化学社製)、サーフィノール104、82、465、485、TG(以上、Air Products and Chemicals Inc.製)が挙げられる。
【0028】
ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えば、BYK−347、BYK−348(ビックケミー・ジャパン社製)などが挙げられる。
【0029】
さらに、本発明におけるインク組成物は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などのその他の界面活性剤を含有することもできる。
【0030】
上記界面活性剤の含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.01〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜0.5質量%である。
【0031】
5.多価アルコール
本発明おけるインク組成物は、多価アルコールを含有することが好ましい。多価アルコールは、本発明おけるインク組成物をインクジェット式記録装置に適用した場合に、インクの乾燥を抑制し、インクジェット式記録ヘッド部分におけるインクの目詰まりを防止することができる。
【0032】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
【0033】
上記多価アルコールの含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.1〜3.0質量%であり、より好ましくは0.5〜20質量%である。
【0034】
6.第三級アミン
本発明におけるインク組成物は、第三級アミンを含有することが好ましい。第三級アミンは、pH調整剤としての機能を有し、インク組成物のpHを容易に調整することができる。
【0035】
第三級アミンとしては、例えば、トリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0036】
上記第三級アミンの含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.01〜10質量%であり、より好ましくは0.1〜2質量%である。
【0037】
7.溶剤および添加剤
本発明におけるインク組成物は、通常溶媒として水を含有する。水は、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水などの純水または超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を紫外線照射または過酸化水素添加などにより滅菌処理した水は、長期間に亘りカビやバクテリアの発生を抑制することができるので好ましい。
【0038】
本発明におけるインク組成物は、必要に応じて、水溶性ロジンなどの定着剤、安息香酸ナトリウムなどの防黴剤・防腐剤、アロハネート類などの酸化防止剤・紫外線吸収剤、キレート剤、酸素吸収剤などの添加剤を含有させることができる。これらの添加剤は、1種単独で用いることもできるし、もちろん2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0039】
8.調整方法
本発明におけるインク組成物は、従来公知の装置、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、バスケットミル、ロールミルなどを使用して、従来の顔料インクと同様に調製することができる。調製に際しては、メンブランフィルターやメッシュフィルターなどを用いて粗大粒子を除去することが好ましい。
【0040】
[記録方法]
記録媒体へ画像を記録する記録方法は特に限定されることはなく、例えば、凸版印刷方式、凹版印刷方式、平版印刷方式、孔版印刷方式、電子写真記録方式、熱転写記録方式、インクジェット記録方式等が挙げられ、特に好ましくはインクジェット記録方式による記録方法である。
インクジェット記録方式としては、各種インクジェット記録方式に適用することができる。インクジェット記録方式としては、例えば、サーマルジェット式インクジェット、ピエゾ式インクジェット、連続インクジェット、ローラーアプリケーション、スプレーアプリケーションなどが挙げられる。
【0041】
本発明における記録媒体は白色以外の地色を有するものであれば特に限定されないが、例えば、紙、厚紙、繊維製品、シートまたはフィルム、プラスチック、ガラス、セラミックスなどが挙げられる。また、記録媒体自体は白色や透明であっても、予め被記録面に白色以外の画像を形成した記録媒体であっても良い。
白色色材としての中空樹脂粒子は高い白色度を呈することが可能であるため、記録媒体の被記録面の地色に影響されることなく、高い白色度の画像を形成することができる。特に、本発明の記録方法は黒紙やダンボールなどの地色が濃く、且つセルロースを主体とする繊維状の記録媒体に白色画像を形成する場合に好適である。セルロースを主体とする繊維状記録媒体は、繊維が立体的に込み入った構造を有するため、繊維の隙間に中空樹脂粒子が入り込んで定着することで、高白色度且つ耐擦傷性に優れた白色画像を形成することが可能となる。
【0042】
[記録物]
上記記録方法により得られる記録物は良好な白色度を有し、記録媒体の地色に影響されずに視認性の高い白色画像を有する。特に、記録媒体種がセルロースを主体とする繊維状記録媒体である場合には、白色度に加えて定着性にも優れる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0044】
[白色インク組成物]
表1に示す配合量で、色材、定着樹脂、多価アルコール、第三級アミン、界面活性剤、およびイオン交換水を混合撹拌し、孔径5μmの金属フィルターにてろ過、真空ポンプを用いて脱気処理をして白色インク1〜3を得た。なお、表1に記載されている数値の単位は、質量%(固形分換算)である。
【0045】
【表1】

【0046】
以下、表1に記載されている各成分について説明する。
【0047】
白色中空樹脂微粒子1は、表1に記載の市販品「SX8782(D)」(JSR(株)社製)を使用した。SX8782(D)は、外径1.0μm・内径0.8μmの水分散タイプであり、固形分濃度が20.5%である。
【0048】
白色中空樹脂微粒子2は、表1に記載の市販品「Nipol MH5055」(日本ゼオン(株)社製)を使用した。Nipol MH5055は外径0.5μm・内径0.3μmの水分散タイプであり、固形分濃度が30%である。
【0049】
金属酸化物は、表1に記載の市販品「NanoTek (R) Slurry」(シーアイ化成株式会社製)を用いた。NanoTek (R) Slurryは、平均粒子径300nmの二酸化チタンを固形分として15%の割合で含むスラリーである。
【0050】
ウレタン樹脂は、「WBR−022U」(大成ファインケミカル社(製))を用いた。
【0051】
「BYK−348」(ビックケミー・ジャパン株式会社製)は、ポリシロキサン系界面活性剤である。
【0052】
表1に記載の各白色インクをインクジェットプリンター(「PX−G930」セイコーエプソン(株)社製)の専用カートリッジのブラックインク室にそれぞれ充填した。
このようにして作製されたインクカートリッジをプリンターに装着し、印刷試験を行った。ブラック以外のインクカートリッジはそれぞれ市販のものを装着した。これは、ダミーとして用いるもので、本実施例の評価では用いないので、効果には関与しない。
【0053】
次いで、出力は、各種記録媒体に対して720×720dpiの解像度で行った。印刷パターンは、100%dutyベタパターンとした。
記録媒体には、黒紙(「プレイン・デザインペーパー ブラックペーパー」(トチマン(株)社製))、ダンボール、および、膨潤タイプの透明PET(「写真用紙<光沢>」(セイコーエプソン(株)社製))をそれぞれ使用した。
【0054】
尚、本明細書において、「duty」とは、下式で算出される値である。
duty(%)=実印字ドット数/(縦解像度×横解像度)×100
(式中、「実印字ドット数」は単位面積当たりの実印字ドット数であり、「縦解像度」および「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。100%dutyとは、画素に対する単色の最大インク質量を意味する。)
【0055】
[評価方法]
(白色度評価)
値の測定は、市販の測色機、例えばGretag Macbeth SpetroscanおよびSpectrolino(X-Rite社製)を用いた。結果を表2に示す。
【0056】
(耐擦性評価)
耐擦性の評価は、「不織布による擦り試験」により行った。不織布による擦り試験とは、白色インク組成物により印刷されたメディアを1時間、室温において乾燥させた後、不織布(ベンコット ラボ(旭化成せんい社製))に200g相当の荷重をかけた状態で、印刷面を擦る試験方法である。評価基準は、以下のとおりである。
A:50回以上擦っても、印刷面の剥がれが目視で確認できない
B:20〜49回擦ると印刷面の剥がれが目視で確認できる
C:1〜19回擦ると印刷面の剥がれが目視で確認できる
【0057】
【表2】

【0058】
表2の結果から、色材として中空樹脂粒子を含む白色インクを用いれば、地色が黒色、茶色(ダンボール)等の記録媒体に印刷する場合においても、透明な記録媒体に印刷した場合と同等の高い白色度の印刷物が得られることが判る。特に、記録媒体の地色が黒色や茶色等の白色以外の色で且つセルロースを主体とする繊維状媒体(黒紙、ダンボール)に白色印刷を行なう場合には、二酸化チタン等の金属化合物を色材とする白色インクでは十分な白色度が得られない。これに対し、色材を中空樹脂粒子とすることで、繊維状の立体的に入り込んだ構造を有する記録媒体に中空樹脂粒子が効果的に配置され、二酸化チタンなどの白色顔料よりも高い白色度の画像を形成することができる。また、上記のようなセルロース等を主体とする繊維状媒体では色材が繊維に入り込んで定着するため、高い白色度と共に耐擦性に優れた画像を形成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色色材として中空樹脂粒子を含むインク組成物を用いて白色以外の地色を有する記録媒体に画像を記録することを特徴とする記録方法。
【請求項2】
前記記録媒体がセルロースを主体とする繊維状記録媒体であることを特徴とする、請求項1に記載の記録方法。
【請求項3】
前記中空樹脂粒子の平均粒径が500nm以上1000nm以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の記録方法。
【請求項4】
インクジェット記録方式に適用したことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の記録方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の記録方法により得られる記録物。

【公開番号】特開2011−20362(P2011−20362A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167641(P2009−167641)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】