説明

記録材判別装置

【課題】透光部材に載置された記録材に対して、透光部材を介して光を斜めに照射するように構成された記録材判別装置において、装置の大型化を招くことなく、照射光量を増加させることで、記録材判別精度を向上させる。
【解決手段】大光量LED51からの光が、カバー部材C1を透過した後、カバー部材C1に載置された記録材Pに予め設定された角度で照射されるように、カバー部材C1には、大光量LED51からの光が垂直に入射する受光面C14が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録材の種類を判別する記録材判別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機、レーザプリンタ等の画像形成装置は、静電潜像を担持する像担持体と、現像装置と、転写手段と、定着装置を備えている。ここで、現像装置は、像担持体に現像剤を付与することにより静電潜像を現像剤像として可視化するものである。また、転写手段は、所定方向に搬送される記録材に現像装置による現像剤像を所定の転写条件にて転写するものである。また、定着装置は、転写手段によって現像剤像の転写を受けた記録材を所定の定着条件にて加熱及び加圧することにより現像剤像を記録材に定着させるものである。
従来、かかる画像形成装置においては、制御パネル等によって記録材のサイズや種類(以下、紙種ともいう)がユーザによって設定され、その設定に応じて転写条件や定着条件が設定されるよう制御されている。ここで、転写条件は、例えば転写バイアスや転写時の記録材の搬送速度である。また、定着条件は、定着温度や定着時の記録材の搬送速度である。
【0003】
また近年では、画像形成装置内部に記録材を判別するセンサを用いて記録材の種類を判別し、判別結果に応じて転写条件あるいは定着条件等が設定されるよう制御する手法が提案されている。
具体的には、特許文献1や特許文献2において提案されているように記録材の表面をCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサによって撮像することで表面
平滑性を判別するものがある。また、特許文献3にあるように、撮像方法を工夫することにより記録材表面平滑性の判別性能を向上させたものなどがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−182518号公報
【特許文献2】特開2004−38879号公報
【特許文献3】特開2010−266432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者の検討によれば、記録材の表面平滑性を判別する手法として、例えば特許文献1に記載されているような手法は、表面の凹凸に起因して生じる陰影を直接的に撮影しているため、超音波を使う等する他の手法よりも判別精度が優れている。特にコート紙とノンコート紙を区別する時のように、凹凸の有無あるいはその大きさや深さが視覚的にはっきりと区別できる記録材の判別において優れた精度が得られている。
しかしながら、例えば一般オフィス用紙を判別する場合などにおいて、表面の凹凸に起因して生じる陰影の様子は、用紙の繊維配向方向(漉き目)によって大きく異なる事が多い。
これに拠れば、用紙の繊維配向方向と直交方向から光を照射すると表面の凹凸の様子が強調されたコントラストの高い撮影像が得られるが、繊維配向方向と同一方向から光を照射した場合には凹凸に起因した陰影が出づらくコントラストの低い撮影像となってしまう。このため、同一の用紙であっても縦通紙した場合と横通紙した場合では異なる判別結果になってしまうことが懸念される。
【0006】
これに対し、特許文献2では光の照射方向を用紙の搬送方向に対して斜めにすることで
判別精度の向上を図っている。また、特許文献3においては、2つの独立した光源により2つの方向からそれぞれ光を記録材に照射することにより、記録材を形成する繊維配向方向違いの影響を受けにくくして判別精度を向上させることが可能であることが示されている。
このように、記録材表面に対して照射する角度を10〜15°程度と比較的浅くすることで記録材表面の凹凸を際立たせることにより、記録材判別精度を向上させることができる。更に記録材判別精度を向上させたい場合、光源の光量を増加させ、いわゆる記録材表面の凹凸画像コントラストを大きくする事が考えられる。
【0007】
しかしながら、光源の光量増加を図ろうとした場合、光源サイズの大きな大型光源を用意すれば良いが、記録材表面に対する照射角度が浅いため、記録材判別装置高さ方向において光源設置スペースの確保が困難であると考えられる。そのため、大型光源を設置する場合には、記録材表面からの距離を離して記録材判別装置高さ方向のスペースを確保する必要性が生じ、装置が大型化してしまうことが懸念される。また、光量確保の為に大型光源を確保できても、光源から記録材表面までの距離が増加することで、高コントラストを得る為の照射光量が確保できないことが懸念される。
また記録材搬送性を維持し、かつ、トナーや紙粉等の塵埃から光学素子を保護するためカバー部材(透光部材)を設け、カバー部材を透過させて記録材を照射させる場合には、次のようなことが懸念される。それは、カバー部材での光量反射成分が大きくなり、本来必要な光量が確保できないことである。
本発明は、透光部材に載置された記録材に対して、透光部材を介して光を斜めに照射するように構成された記録材判別装置において、装置の大型化を招くことなく、照射光量を増加させることで、記録材判別精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明にあっては、
記録材が載置される透光部材と、
前記透光部材に載置された記録材に対して、前記透光部材を介して光を斜めに照射する照射手段と、
前記照射手段により前記透光部材を介して照射され記録材で反射した光を画像データとして読取る読取り手段と、
を有し、前記読取り手段により読取られた画像データから、記録材の種類を判別する記録材判別装置において、
前記照射手段からの光が、前記透光部材を透過した後、前記透光部材に載置された記録材に予め設定された角度で照射されるように、前記透光部材には、前記照射手段からの光が垂直に入射する入射面が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、透光部材に載置された記録材に対して、透光部材を介して光を斜めに照射するように構成された記録材判別装置において、装置の大型化を招くことなく、照射光量を増加させることで、記録材判別精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1の画像形成装置の概略構成を示す断面図
【図2】比較例の記録材判別装置を示す図
【図3】実施例1の記録材判別装置を示す図
【図4】実施例1のカバー部材を示す図
【図5】屈折率nの定義を示す図
【図6】カバー部材に対する光路を示す図
【図7】実施例2の記録材判別装置を示す図
【図8】実施例2のカバー部材を示す図
【図9】実施例3の記録材判別装置を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0012】
以下、図面に沿って、本発明の実施例1について説明する。
本実施例の記録材判別装置は、例えば電子写真方式のカラー画像形成装置で用いられることが可能であり、図1はその一例である中間転写ベルトを採用したタンデム方式のカラー画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【0013】
まず図1を用いて本実施例の画像形成装置の動作について説明する。
画像形成装置は、給送部15、画像形成部、一次転写部、二次転写部、定着部21、及びこれらを制御動作させる制御部10によって構成されている。
【0014】
画像形成部は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)各色のステーション毎の感光体(以下、感光ドラム)1Y,1M,1C,1Bkを有している。そして、感光ドラム1Y,1M,1C,1Bkの周囲にそれぞれ、帯電ローラ2Y,2M,2C,2Bk、スキャナ部11Y,11M,11C,11Bk、現像器8Y,8M,8C,8Bkが設けられることで、画像形成部が構成されている。
ここで、帯電ローラ2Y,2M,2C,2Bkは帯電手段を構成している。また、スキャナ部11Y,11M,11C,11Bkは露光手段を構成している。また、現像器8Y,8M,8C,8Bkは現像手段を構成している。
【0015】
一次転写部は、感光ドラム1、中間転写ベルト24、一次転写ローラ4Y,4M,4C,4Bkで構成されている。中間転写ベルト24は、駆動ローラ23及び張架ローラ13で駆動される。
二次転写部は、中間転写ベルト24、二次転写ローラ25、二次転写対向ローラ26で構成されている。
ここで、各画像形成部、各一次転写部の構成及び動作は、用いるトナーの色が異なることを除いて実質的に同じである。従って、以下の説明において特に区別を要しない場合は、いずれかの色用に設けられた要素であることを表すために図1中符号に与えた添え字Y,M,C,Bkは省略して総括的に説明する。
【0016】
感光ドラム1は、アルミシリンダの外周に有機光導伝層が塗布されて構成され、図示しない駆動モータの駆動力が伝達されて回転するもので、駆動モータは感光ドラム1を画像形成動作に応じて図中時計周りに回転させる。
制御部10が画像信号を受け取ると、記録材Pは、給送部15から給送ローラ17,18によって画像形成装置内に送り出される。その後、後述する画像形成動作と記録材Pの搬送との同期をとるためのローラ状同期回転体、即ち、搬送(レジスト)ローラ19a、及び搬送(レジスト)対向ローラ19bからなる搬送ローラ対19a,19bに一旦挟持され、停止して待機する。
【0017】
一方、制御部10は、受け取った画像信号に応じて、スキャナ部11によって帯電ローラ2の作用により一定電位に帯電した感光ドラム1の表面に静電潜像を形成する。
現像器8は静電潜像を可視化するための手段であり、ステーション毎にイエロー(Y)
、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の現像を行う。各現像器には、スリーブ5(5Y,5M,5C,5Bk)が設けられており、静電潜像を可視化するための現像バイアスが印加される。
【0018】
このように、感光ドラム1の表面に形成された静電潜像は、現像器8の作用により単色トナー像として現像される。
各々の感光ドラム1、帯電ローラ2、現像器8は一体構成となっており、画像形成装置本体から脱着可能なトナーカートリッジ31の形態で取り付けられている。
【0019】
中間転写ベルト24は、感光ドラム1に接触しており、カラー画像形成時に反時計周り方向に感光ドラム1の回転と同期して回転する。現像された単色トナー像は一次転写ローラ4に印加された一次転写バイアスの作用により順次転写され、中間転写ベルト24上で多色トナー像となる。
【0020】
その後、中間転写ベルト24上に形成された多色トナー像は、中間転写ベルト24と二次転写ローラ25とで形成された二次転写ニップ部に搬送される。
これと同時に、搬送ローラ対19a,19bに挟持された状態で待機していた記録材Pが搬送ローラ対19a,19bの作用により中間転写ベルト24上の多色トナー像と同期を取りながら二次転写ニップ部に搬送される。
このようにして、中間転写ベルト24上の多色トナー像が、二次転写ローラ25に印加された二次転写バイアスの作用により二次転写ニップ部で記録材Pに一括転写される。
【0021】
定着部21は、記録材Pを搬送させながら、転写された多色トナー像を溶融定着させるものであり、図1に示すように記録材Pを加熱する定着ローラ21aと、記録材Pを定着ローラ21aに圧接させるための加圧ローラ21bとを備えている。
定着ローラ21aと加圧ローラ21bは、中空状に形成され、内部にそれぞれヒータ21ah,21bhが内蔵されている。
【0022】
多色トナー像を保持した記録材Pは定着ローラ21aと加圧ローラ21bにより搬送されるとともに、熱及び圧力を加えられ、トナーが記録材表面に定着される。
トナー像定着後の記録材Pは、排出ローラ20によって排出トレイ16に排出され画像形成動作が終了する。
【0023】
クリーニング手段28は、中間転写ベルト24上に残った転写残トナーをクリーニングするものであり、ここで回収された転写残トナーは廃トナーとしてクリーナ容器29に蓄えられる。
このような一連の画像形成動作は画像形成装置内に設けられた制御部10によって制御動作される。
【0024】
本実施例の画像形成装置において特徴となる記録材判別装置50は、記録材搬送方向において搬送ローラ対19a,19bの上流の記録材判別部に設置されており、給送部15から搬送された記録材Pの表面平滑性を反映した情報を検出することが可能である。本実施例において記録材判別装置50による判別は、記録材Pが給送部15から画像形成装置内に送り出され、搬送ローラ対19a,19bに挟持されて停止している間に行われる。制御部10は記録材判別装置50から送られてくる記録材の種類の判別情報(判別結果)を基に、最適な転写バイアス・定着温度等の画像形成条件を設定して画像形成装置の制御動作を行う。
【0025】
次に、本実施例の記録材判別装置50について説明する。
説明を分かり易くするために、記録材判別装置における本実施例の特徴的な構成を有し
ていない形態と比較して説明する。ここでは、特許文献3同様、2つの独立した光源からの光を2つの方向からそれぞれ記録材に照射する形態について説明する。
【0026】
図2に、比較例の記録材判別装置40を示す。図2(b)は記録材判別装置40の概略構成を示す上面図(光源等の配置を分かり易くする為に上部のフタ部を一部透視図として示す)、図2(a)は図2(b)のA−A断面図である。
【0027】
記録材判別装置40は、次のようにして記録材Pの表面性状(表面の状態)を撮像する。
装置本体44内の基板45に設置され高さh40の砲弾型LED41(光源)から、光路46を介して図中矢印方向に移動する記録材Pに向けてカバー部材Cを透過させながら10°〜15°程度の浅い角度で光が照射される。そして、その反射光が集光素子(ロッドレンズ)42で集光され基板45に設置された撮像素子(CMOSラインセンサ)43にて記録材Pの表面性状が撮像される。
【0028】
カバー部材Cは記録材Pの搬送性を向上させるとともに、記録材判別装置内の光学素子を汚損から保護している。この時、図2(b)において、光源41R,41Lからの光路46R,46Lに示されるように、2方向から記録材Pに向けて光が照射されることにより記録材Pの繊維配向方向に影響されずに記録材の表面性状を判別することができる。図2(b)において、記録材判別装置40本体の幅をL40で示している。
【0029】
図3に、本実施例の記録材判別装置50を示す。
図3(b)は記録材判別装置50の概略構成を示す上面図(光源等の配置を分かり易くする為に上部のフタ部を一部透視図として示す)、図3(a)は図3(b)のB−B断面図である。
【0030】
記録材判別装置50は、次のようにして記録材Pの表面性状を撮像する。
照射手段(光源)としての砲弾型大光量LED(以下、大光量LED)51(51R,51L)は、装置本体54内の基板55に設置され、図3(a)に示すように、基板55から高さh50の位置に配置されている。
大光量LED51からの光は、図中に光路56を示すように、図中矢印方向に移動する記録材Pに向けて、透光部材としのカバー部材C1を透過させながら、記録材Pに対して10°〜15°の浅い角度で(斜めに)光が照射される。
この時、記録材Pに向けてカバー部材C1を透過した照射光によって記録材P表面が照射され、その反射光が集光素子52で集光され、基板55に設置された撮像素子53にて記録材表面性状が撮像される。ここで、撮像素子53は、大光量LED51によりカバー部材C1を介して照射され記録材Pで反射した光を画像データとして読取る読取り手段に相当する。記録材判別装置50は、読取り手段により読取られた画像データから、記録材の種類を判別する。
この時、図3(b)に示すように、大光量LED51R,51Lから光路56R,56Lのように2方向から記録材Pに向けて光が照射されるように構成されている。このことにより、記録材Pの繊維配向方向に影響されずに記録材Pの表面性状を撮像することができる。この2方向からの照射により得られた2つの撮像を総合的に勘案することで、記録材表面の状態(凹凸状態)に関する情報(平滑性、平滑度)が得られ、この情報から特許文献3に記載があるように記録材の種類を判別することができる。
ここで、カバー部材C1は、カバー部材C同様、記録材Pをガイドして記録材Pの搬送性を向上させるとともに、記録材判別装置内の光学素子を汚損から保護している。
【0031】
図4は、カバー部材C1を示す図であり、図4(a)はカバー部材C1の上面図、図4(b)はカバー部材C1の側面図、図4(c)はカバー部材C1の底面図である。
C11はカバー部材C1の表面であり、通紙ガイド(記録材Pが載置される載置面)としての平面を示す。C12はカバー部材C1の裏面であり、凸部C13を有する。凸部C13は光源からの光を受ける受光面(入射面)C14を有する。受光面C14は図3(a)中の光路56で示すように、光路に対して直交する面である。比較例で示したカバー部材Cには上記凸面によって形成される受光面がない為、光源からの照射光の反射成分が大きく、記録材表面を照射する光量が十分でない事があった。
【0032】
ここで、受光面C14は、カバー部材C1に設けられ大光量LED51からの光が垂直に入射する入射面に相当する。受光面C14は、大光量LED51からの光が、カバー部材C1を透過した後、カバー部材C1に載置された記録材Pに予め設定された角度αで照射されるように、カバー部材C1に設けられている。
【0033】
これに対して、本実施例の特徴について詳細に説明する。
図5は、屈折率nの定義を示す図である。図5において、一点鎖線で示す光路に対して入射角度Rと出射角度Iの間には一般的には以下に示す式(1)の関係がある。
sin(R)/sin(I)=n・・・(1)
この点について本実施例に則して図6を用いて説明する。図6(a)は、比較例におけるカバー部材Cに対する光路を示す図、図6(b)は本実施例におけるカバー部材C1に対する光路を示す図である。図中、光路は、矢印付き一点鎖線で示している。また、図6(b)は、カバー部材C1の表面C11に垂直であり、かつ、大光量LED51からの光の光路を含む断面(仮想平面)で見たときの図であり、図6(a)も同様である。
【0034】
先に屈折率の説明で示した入射角度Rに対して、図6(a)では、カバー部材Cに入射角度(照射角度)α(=90°−R)で入射する。出射角度Iに対しては、カバー部材C内を角度β(=90°−I)で導光されており、カバー部材Cから記録材に向けて再び角度αで出射する。これにより、記録材P表面に対して角度αで入射し、その反射を受けて受光素子へと誘導される。
この時の角度αを10°〜15°程度と浅い角度として記録材P表面を照射することにより、記録材Pの表面性状を精緻に計測することができるが、この場合、カバー部材Cからの反射量も大きく、記録材P表面に対する照射光量が不足となることが懸念される。
【0035】
そこで、本実施例では、図6(b)に示すように、カバー部材C1の受光面C14を、光路に対して直交するように構成している。
このようにカバー部材C1の受光面C14を、光路に対して直交する面とすることで、光が屈折することなくカバー部材C1に入射させることができる。これにより、図6(b)に示すように、カバー部材C1内においては、比較例同様、角度βで導光されることとなる。したがって、本実施例においても、カバー部材C1から記録材Pへの照射角度を、比較例と同じ角度αとすることができる。
【0036】
このように本実施例においては、記録材Pへの浅い入射角度αを確保しつつ、カバー部材C1への入射角度を角度αよりも大きくとることができるようになる。
したがって、大光量LEDの位置をh40からh50へと装置内でより低い位置に設置することが可能となり、砲弾型LED41(例えばφ3mm)から砲弾型の大光量LED51(例えばφ5mm)へと大型化することが可能となる。
また、図3(b)に示す装置幅L50は、図2(b)に示す比較例の装置幅L40と比較すると、
L50<L40
なる関係となる。これにより、記録材表面までの距離を増加させることなく大光量LED51を設置することができるので、高コントラストを得る為の照射光量を確保することが可能となる。また、記録材判別装置の記録材搬送方向の設計自由度が増し、画像形成装置
内での記録材判別装置の設置自由度が向上する効果が得られる。
【0037】
このように照射光源の大型化が可能となることで、記録材表面に対する照射光量を増加させることができ、更に高コントラストな記録材表面性状画像を得ることができる。
【0038】
この時、角度αと角度βに関しては、カバー部材C1の屈折率をnとして以下の式(2)が成り立つ。ここで、図6(b)に示すように、角度βは、カバー部材C1内を通る光と、カバー部材C1の上面(記録材Pのガイド面、載置面)との交差角のうち鋭角側の角となる。また、角度αは、カバー部材C1を透過した光と記録材Pとの交差角のうち鋭角側の角となっている。
【0039】
【数1】

・・・(2)
【0040】
この式(2)によって定義される角度を持つ受光面C14を下面に有するカバー部材C1を設置することにより、カバー部材C1を効率的に透過した十分な光量を記録材P表面に浅い角度で照射することが可能となる。これにより、高コントラストな記録材表面性状画像を得ることができる。
【0041】
例えば、記録材Pへの入射角度αを10°とし、カバー部材C1をアクリル材とすれば屈折率n=1.5として、角度βは49°となる.また、記録材Pへの入射角度αを15°とすると、角度βは50°、入射角度αを20°とすると角度βは51°となる。よって、角度βは、約50°程度が設計的には適当な角度となる。
【0042】
本実施例によれば、カバー部材表面の反射による光量の低下を抑えた受光面を、光路に対して直交するようにカバー部材に設けたことで、大光量の光源を、装置の大型化を招くことなく設置することが可能となる。
これにより、記録材の表面性状を判別するのに十分な光量を有する独立した2つの光源からの拡散光によって、一定方向に繊維配向した記録材の表面を2方向からの光束で撮像することができる。このことで、繊維の配向方向によらず、確実に、表面の凹凸が強調されたコントラストの高い表面凹凸像(撮像)を得ることが可能となる。このようにして得られた2つの表面凹凸像を基に記録材の種類を判別することができるので、装置の大型化を招くことなく、記録材判別精度を向上させることができる。
【0043】
また本実施例では、光源からの光量を効率的に受光する受光面を有するとともに、光学素子(結像手段)を保護する機能を有するカバー部材を介して記録材表面を照射するように構成している。このことにより、記録材を安定して搬送でき、光学素子を汚損のない状態にできることで安定した光量を確保することができ、コントラストの高い画像を得ることが可能となるので、記録材判別精度の安定性を向上させることができる。
【0044】
このように、2つの方向から記録材に光を照射することにより記録材繊維配向方向に影響を受けず、かつ所定の入射角度を持つ受光面を下面に有したカバー部材を透過させて記録材に対して浅い角度で照射することにより高コントラスト画像が撮像可能となる。
また、大型の大光量LEDを設置することが可能となり、これにより更に記録材表面を照射する光量が十分確保された記録材判別装置を実現することができる。
また、本実施例の記録材判別装置を画像形成装置に搭載し、判別結果に応じて画像形成
条件を制御することで、常に良好な画質の画像が形成された記録材を得ることができる。
【実施例2】
【0045】
以下に、実施例2の記録材判別装置ついて説明する。なお、実施例1と同様の構成部分については、その説明を省略する。
図7に、本実施例の記録材判別装置60を示す。図7(b)は、本実施例の記録材判別装置60の概略構成を示す上面図(光源等の配置を分かり易くする為に上部のフタ部を一部透視図として示す)、図7(a)は、図7(b)のC−C断面図である。
【0046】
記録材判別装置60は、装置本体64内の基板65上に設置された実装型チップLED61を光源として、光路66を介して記録材Pに向けて照射される。この時、実装型チップLED61から照射された光は、偏向手段としての偏向器67によって装置本体64内で光路を偏向され、カバー部材C2を介して記録材Pへと誘導される。その後、記録材P表面で反射された反射光が集光素子62で集光され、基板65に設置された撮像素子63にて記録材表面性状が撮像される。
この時、図7(b)に示すように、記録材表面性状が記録材繊維配向方向に拠らず判別できるように、光源61R,61Lから偏向器67R,67Lを介して光路66R,66Lのように2方向から記録材Pに向けて照射されている。
【0047】
ここで、偏向器67は、カバー部材C1の表面C11に垂直な方向において、光源61R,61Lとカバー部材C2との間に設けられている。偏向器67は、所謂ガラスやアクリルのような板材表面に反射膜等を形成したものでも良いし、反射率が高いシート材、例えば東レ株式会社製の、PET基材にアルミ蒸着を施したメタルミー(商標)等を両面テープ等を用いて接着したものであっても良い。また、ハウジングの一部に凸部を形成し、反射面を蒸着等で形成する方法により偏向手段を構成するものであっても良い。
【0048】
図8は、カバー部材C2の詳細を示す図である。図8(a)は、カバー部材C2の上面図、図8(b)カバー部材C2の側面図、図8(c)はカバー部材C2の底面図である。
C21はカバー部材C2の表面であり、通紙ガイドとしての平面を示す。C22はカバー部材C2の裏面であり、凸部C23、凸部C24を有する。凸部C23、凸部C24は受光面C25をそれぞれ有する。受光面C25は、図7(a)中の光路66で示すように、光路に対して直交する面を有する。
【0049】
このような受光面C25を、2つの光源それぞれの光路に設置することにより、カバー部材C2を効率的に透過した十分な光量を記録材表面に浅い角度で照射することができるので、実施例1同様、高コントラストな記録材表面性状画像を得ることが可能となる。
また、本実施例においては、偏向器を用いて光源からの光を偏向誘導する構成とすることによって、記録材判別装置の構成として実装型チップLEDの実装が可能となり、光源たるLEDの選択自由度をより向上させることができる。また、装置幅L60は先述した比較例の装置幅L40(図2(b)参照)と比較すると、
L60<L40
なる関係となる。また、実施例1の装置幅L50よりも小さくすることも可能である。
【0050】
これにより、記録材の表面性状を判別するのに十分な光量を有する独立した2つの光源からの拡散光が、それぞれ偏向器によって設定されたコンパクトな光路を経由して2方向からの光束によって、一定方向に繊維配向した記録材の表面を撮像できる。
このことで、実施例1よりも、よりコンパクトな構成で、繊維の配向方向によらず確実に表面の凹凸が強調されたコントラストの高い表面凹凸像を得ることが可能となる。
【実施例3】
【0051】
以下に、実施例3の記録材判別装置ついて説明する。なお、実施例1,2と同様の構成部分については、その説明を省略する。
図9に、本実施例の記録材判別装置70を示す。図9(b)は、本実施例の記録材判別装置70の概略構成を示す上面図(光源等の配置を分かり易くする為に上部のフタ部を一部透視図として示す)、図9(a)は、図9(b)のD−D断面図である。
【0052】
記録材判別装置70は、装置本体74内の基板75上に設置されたレンズ付き実装型チップLED71を光源として、光路76を介して記録材Pに向けて照明される。
本実施例においては、実施例2に対して、光源としてレンズ付き実装型チップLEDを採用したものであり、これにより、より大光量で記録材Pを照射することができるものである。
【0053】
本実施例において、レンズ付き実装型チップLED71から照射された光は、偏向手段としてのシート状偏向器77によって装置本体74内で光路を偏向され、カバー部材C2を透過して記録材Pへと誘導される。このようにして記録材P表面が大光量で照射され、その反射光が集光素子72で集光される。
そして、基板75に設置された撮像素子73にて記録材表面性状が撮像される。
この時、図9(b)に示すように、記録材表面性状が記録材繊維配向方向に拠らず判別できるように、光源71R,71Lからシート状偏向器77R,77Lを介して光路76R,76Lのように2方向から記録材Pに向けて照射されている。
【0054】
本実施例においても、実施例2同様の、受光面を裏面に有するカバー部材C2を設置することにより、カバー部材C2を効率的に透過した十分な光量を記録材表面に浅い角度で照射することができる。したがって、実施例2同様、高コントラストな記録材表面性状画像を得ることが可能となる。
また、シート状偏向器77を用いて光路76を設定することで、実施例2同様、光源たるLEDの選択自由度をより向上させることができる。また、装置幅L70は先述した比較例の装置幅L40(図2(b)参照)と比較すると、
L70<L40
なる関係となる。
【0055】
これにより、実施例2同様の効果が得られる。また、本実施例においては、シート状の偏向器を採用して光路を設定しているので、基板75に設置された光源の配置空間を実施例2の場合よりも大きく確保することができ、光源の配置部を比較的自由に設計することが可能となる。
【0056】
なお、上述した実施例1〜3においては、2つの独立した光源からの光を2つの方向からそれぞれ記録材に照射する形態について説明したが、本発明は、単一光源からの光を記録材に斜めに照射する場合においても、好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
50…記録材判別装置、51…大光量LED、53…撮像素子、C1…カバー部材、C14…受光面、P…記録材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材が載置される透光部材と、
前記透光部材に載置された記録材に対して、前記透光部材を介して光を斜めに照射する照射手段と、
前記照射手段により前記透光部材を介して照射され記録材で反射した光を画像データとして読取る読取り手段と、
を有し、前記読取り手段により読取られた画像データから、記録材の種類を判別する記録材判別装置において、
前記照射手段からの光が、前記透光部材を透過した後、前記透光部材に載置された記録材に予め設定された角度で照射されるように、前記透光部材には、前記照射手段からの光が垂直に入射する入射面が設けられていることを特徴とする記録材判別装置。
【請求項2】
前記透光部材のうち記録材を載置する載置面に垂直であり、かつ、前記照射手段からの光の光路を含む仮想平面において、
前記透光部材を透過した光と記録材との交差角のうち鋭角側の角をα、
前記透光部材の内部を通る光と前記載置面との交差角のうち鋭角側の角をβ、
前記透光部材の屈折率をnとした場合、
【数1】

の関係が成り立つことを特徴とする請求項1に記載の記録材判別装置。
【請求項3】
前記透光部材のうち記録材を載置する載置面に垂直な方向において、前記照射手段と前記透光部材との間に設けられ、前記照射手段からの光を偏向して前記透光部材に入射させる偏向手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の記録材判別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−173415(P2012−173415A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33580(P2011−33580)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】