説明

記録液

静電像用液体トナー又は現像剤は、キャリア液、不溶性記録粒子、及び分散剤を含む。上記分散剤は、キャリア液に非相溶性又は不溶性である。上記液体トナー又は現像剤は、静電潜像の現像前にトナー蓄積物内で個別トナー粒子の配向を調整したり変更するために、コロナ発生ワイヤ、ローラーなどを使用する必要がない。例えば、上記液体トナー又は現像剤は、キャリア液相、記録粒子相及び分散剤を含む三相コロイドシステムである。上記記録粒子は、キャリア液及び分散剤相に不溶性である。上記分散剤は、キャリア液に非相溶性又は不溶性である液滴を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非衝撃式静電式プリンタで使用するための記録液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノンインパクト−プリンティング方式は、簡単に言えば、機械的手段ではない電子的、電気的、又は光学的手段を用いて文字を生成する工程であると定義することができる。ノンインパクト−プリンティング方式の中には、静電技法を使用する一群の印刷方法がある。静電式印刷は、静電気的に荷電された記録粒子と電場の間の相互作用を利用して基材上の上記記録粒子の蓄積を制御する方法であると定義することができ、一般的には、電子記録式、電子写真式、又は静電記録式印刷として知られている工程等を含む。
静電記録法は、荷電された画像形成粒子又は記録粒子を基材上に存在する荷電された部位に誘導することによって可視的画像を生成することに関する各種のノンインパクト−プリンティング方式を説明するために用いられる用語である。このような荷電された部位は、普通静電潜像と呼ばれるものを形成するが、光導電体又は純粋誘電体上に一時的に支持されることもでき、現場で可視化されたり、また他の基材に移転されてその位置で現像されることもできる。また、このような荷電された部位は、強誘電体又はその他のエレクトレットの場合のように、永久的に分極化された物質内に存在する構造化された電荷を反映するものであることができる。
【0003】
静電記録法では、一般的に、トナーとして知られている画像形成粒子が乾式あるいは湿式であることができる。乾式粉末トナーは短所が多い。例えば、乾式粉末トナーの性能は、環境条件に影響され易く、例えば、電荷安定性に影響を及ぼし、その結果、様々な画像の遂行を発生させる。また、乾式粉末トナーの大きな粒子サイズは、高解像度の画像を現像することができない主な理由である。
乾式粉末トナーで高解像度の画像を実現するためには、乾式トナーの粒子サイズを好適な解像度を許容する水準にさらに減少させる必要がある。しかし、充分に小さな乾式トナーの粉末は、現像剤から抜け出やすく、プリンタ装置の内部及び外部全てのどの表面にも発生するこれらの蓄積物は、装置内の機械的故障及び装置外部の環境問題の原因となる。一般的に飛散と呼ばれているこの問題は、上記のような乾式粉末印刷装置が高速動作するときにひどくなる。従って、乾式粉末システムは、現実的には普通のオフセット及びグラビア印刷法のようなアナログ印刷法に伴われる高解像度画像を、特に高速では実現することができない。他の短所としては、プリンタの全体的な保持補修の費用及び乾式粉末トナーの費用が含まれる。
【0004】
静電潜像(電像)は、絶縁性又は非極性液体の中に分散された記録粒子を用いて現像され得るものと知られている。このような分散体としては、液体トナー又は液体現像剤が知られている。このような記録粒子は、一般的に、顔料のような分散用樹脂又はワニス等とともに粉砕されるか、あるいは、組合された着色物質を含む。また、トナー粒子の極性及び電荷に対する質量比を調節するために、電荷調整剤が通常含まれる。このような分散体は、液体トナー又は液体現像剤として知られている。使用時には、液体現像剤が潜像維持部材の表面に塗布され、その部材上に静電像を現像する。
一般的に、静電記録液の製造工程は、樹脂又は樹脂組合物を含むことができ、粉砕され、適合な混合機で押出されたり、あるいは、例えば、ツインロールミルのようなマスターバッチ製造用手段を含み、当分野で公知であるその他の技法により組合することができる着色剤をさらに含んでもよい樹脂系によって開始される。上記樹脂系にさらに含まれるものとしては、一般的に当分野で公知である分散用樹脂、可塑化剤、又はワニスを添加することができる。
着色剤は、樹脂に可溶性の染料、又は樹脂に不溶性の着色剤粒子からなる顔料であることができる。上記樹脂系及び着色剤は、次いで、樹脂や着色剤のどれも溶解させないキャリア液の中で製粉され、非常に微細な記録粒子が分布している記録液を製造する。
また、電荷調整剤が普通トナー粒子の極性、及び電荷に対する質量比を調節するように記録液に含まれる。
【0005】
液体現像剤としては、一般的に、低粘度液体及び低濃度の固形物、つまり記録粒子を利用してきた。このような従来のトナー及び関連工程システムは、低粘度トナー又はLVT(low viscosity toner)システムとも呼ばれている。一般的に、LVTシステムは、通常1〜3mPasの低粘度、及び、通常0.5〜2重量%の低い固形物体積を有するトナーを使用する。記録粒子の均一な分散を維持することが、低粘度のトナーシステムでは難しいこともある。記録粒子は、キャリア液の中でドリフトし沈殿する傾向がある。さらに、トナーの中で低い固形物体積は、与えられた潜像を現像するのに必要なトナーの量を増加させる。所望の画像密度を得るのに充分な記録粒子を提供するためにより多量のトナーが光導電体に転移されなければならない。低粘度液体は、通常は高度の揮発性を有するので、このような物質を基にするLVT印刷システムは、重大な環境的問題を引き起こす恐れがあり、特にオフィスで使用する場合にそうである。
LVTシステムに関連して発生し得るこのような問題点及び他の知られた問題点を解決するために、固形物濃度が60重量%であり、粘度が10,000mPasであるトナーを使用し、上記高濃縮粘性液体トナーの、通常1〜40μmの薄膜を用いる高濃縮液体トナー現像システムが開示された。このような粘性高濃縮液体トナーシステムを利用して静電潜像を現像するこのシステムは、高粘度トナー又はHVT(high viscosity toner)システムとも呼ばれている。このような液体トナーの一例は、全体が参照してここに組み込まれる、Lawsonらに共同譲受された特許文献1に開示れている。高粘度、高濃度液体現像方法及び装置の例は、Itayaらに共同譲受された特許文献2、及びSasakiらに共同譲受された特許文献3に開示されており、この文献は全体が参照してここに組み込まれる。このような新しいHVT液体現像システムは、従来のLVTシステムの多くの短所を解決した。
【0006】
液体電子記録分野の当業者は、LVTシステムで潜像の現像に利用される工程及び技法の多くは、HVTシステムにも適用可能であることが理解できる。
全体が参照してここに組み込まれる、Matkanに許与された特許文献4は、コロナ発生ワイヤ又はローラーなどが液体トナー層移送手段に隣接した位置に配置され、個別トナー粒子上の電荷を強化したり、トナー蓄積物内の配向を変えるのに使用することもできるコロナ生成電圧が加えられる、上述のような工程技法の一種を開示している。このようなトナー物質は、潜像に提供されるとき、極めて均一な密度を有してバックグラウンドにムラのない画像を現像できるようにする。
このような従来技術は、HVTシステムでトナー層内のトナー粒子の配向を変えるために頻繁に使用されてきた。そのような電圧の印加は、均一な配向及び連続的トナー層の生成に役立ち、これは高現像効率及びそれに伴う優れた画像品質の達成につながる。
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,612,162号
【特許文献2】米国特許第6,137,976号
【特許文献3】米国特許第6,167,225号
【特許文献4】米国特許第4,021,586号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、均一な配向及び連続的トナー層の形成を容易にする液体静電記録用トナーであって、コロナ発生ワイヤ、ローラーなどを使用する必要なく、又は、均一な配向及び連続的トナー層の促進のためのその他の類似した手段を使用する必要なく、高現像効率及び優れた画像品質が実現することができるようにする静電記録用液体トナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の出願人は、驚くことに、キャリア流体、記録粒子、及びキャリア流体に非相溶性又は不溶性である分散剤を使用する液体現像剤が、当分野で通常使用されるように、静電潜像の現像前にトナー蓄積物内のトナー粒子の配向を変えるため、コロナ発生ワイヤ、ローラーなどを使用する必要なく、高現像効率及び優れた画像品質のための均一な荷電及び配向された連続的トナー層の形成を可能としていることを見出した。
本明細書において、「非相溶性」という用語は、固体である場合にはキャリア流体に不溶性であり、液体である場合にはキャリア流体と非混合性である化合物を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
従って、一実施形態によれば(これが唯一の、又は最も広範囲の実施形態である必要はない。)、本発明は、液体静電記録用トナー又は現像剤であって、キャリア液、不溶性記録粒子及び分散剤を含み、上記分散剤が上記キャリア液に非相溶性であることを特徴とする現像剤である。
また他の実施形態によれば、本発明は、キャリア液、不溶性記録粒子及び分散剤を含む液体静電記録用トナー又は現像剤であって、上記分散剤はキャリア液と非混合性である液体を含むトナー又は現像剤である。
また他の実施形態によれば、本発明は、キャリア液、不溶性記録粒子及び分散剤を含む液体静電記録用トナー又は現像剤であって、上記分散剤はキャリア液に不溶性である固体を含むトナー又は現像剤である。
また他の実施形態によれば、本発明は、キャリア液相、記録粒子がキャリア液に不溶性である記録粒子相、及び分散剤相を含む三相コロイドシステムを含む、静電像用液体トナー又は現像剤であって、上記分散剤はキャリア液と非相溶性である液滴を含むことを特徴とするトナー又は現像剤である。
一般的に、静電記録用液体現像剤又はトナーは、無機又は有機着色剤をキャリア液に分散させることによって製造される。上記液体現像剤は、懸濁安定性だけでなく、電気電荷の面でも安定している必要がある。再現性を有する高品質の画像を表現する液体現像剤を得るために、付加的成分を現像剤内に混入することができる。
【0011】
このような現像剤において、キャリア液の特定物性が通常の静電記録液体の現像工程の效果的な機能のための必須要求条件であることが明らかになった。上記必須要求条件には低い電気伝導度が含まれるが、低毒性、高まった火災安全性、低い溶解力、少ない臭い等に対する必要性のような他の要求条件も明らかになった。このような理由から、Exxon Mobil社製造のIsopar(登録商標)類、Shell Chemical社製造のShellsol(登録商標)類、Chevron Phillips Chemical Company社製造のSoltrol(登録商標)類のようなイソパラフィン系炭化水素類が液体トナーキャリアのための業界標準になった。
その他のキャリア液も使用することができ、これらは直鎖状のシリコン流体、環状のシリコン流体、分枝状のシリコン流体、又はこれらの組み合せをさらに含むことができる。
また、キャリア液は、植物油を含むことができる。植物油の代表的な例には、大豆油、綿実油、紅花油、ヒマワリ油、ヒマシ油、亜麻仁油及びオリーブ油が含まれる。
また、キャリア液は、合成油を含むことができる。合成油の代表的な例には、高級脂肪酸とアルコールの間の反応によって得られる脂肪酸エステル、及び高級脂肪酸とエチレングリコール又はグリセリンの間の反応によって得られるエステル化合物が含まれる。
また、キャリア液は、鉱油又は白油を含むこともできる。
当業者は、配合物又はその他の適当なキャリア液を本発明と関連して使用可能であることが理解できる。
【0012】
記録粒子は、着色剤、及び仕上げられた蓄積画像で結着剤として作用する選択的な樹脂又は樹脂系を含むことができる。
キャリア液に不溶性である着色剤が、提示された特定の最終用途によって選択されることができる。記録粒子の例には、酸化鉄、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、磁性酸化鉄のような無機顔料、又はカーボンブラック、フタロシアニンブルー、アルカリ及びリフレックスブルー、フタロシアニングリーン、ジアリライドイエロ、アリールアミドイエロ、アゾ及びジアゾイエロ、アゾレッド、ルビントナー、キナクリドンレッド、塩基性染料複合体、レーキレッドのような有機顔料、又は塩基性染料及びスピリット可溶性染料のような蛍光顔料及び染料、又はこれらの組み合せが含まれる。当業者に公知のように、その他の物質も着色剤又は記録粒子として使用されることができる。
上述のように、液体現像剤又はトナーは、有機又は無機不溶性記録粒子を含有することができ、このような記録粒子は、最終トナーの1〜60重量%の範囲であり得る。
【0013】
樹脂系を構成する樹脂又は樹脂組合物は、エチルセルロース、オイル変性アルキド樹脂、アクリル酸又はメタクリル酸エステル樹脂、ポリスチレン、シリコン−アクリル共重合体、シリコン樹脂、シリコン−(メタ)アクリル共重合体、ブロック重合体又はグラフト重合体、ポリオレフィン共重合体、ポリ(塩化ビニル)樹脂、塩化ポリプロピレン、ポリアミド樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジン変性樹脂、及びアルキルフェノール変性キシレン樹脂、合成ポリエステル類;ポリプロピレン又は変性ポリプロピレン;アルキル化ポリビニルピロリドン;モンタンワックス、カンデリラワックス、サトウキビワックス、蜜蝋のような天然ワックス、エステルゴム及び硬化ロジンのような天然樹脂類;天然樹脂変性マイレン酸樹脂類、天然樹脂変性フェノール樹脂類、天然樹脂変性ポリエステル樹脂類、天然樹脂変性ペンタエリトリトール樹脂類のような天然樹脂変性硬化樹脂類、アクリル酸スチレン類及びエポキシ樹脂類のうちの一つ以上から選択されることができる。
可塑化剤のような他の成分も混入されることができ、その例には、スルホンアミド、アジピン酸塩、セバシン酸塩及びフタル酸塩である。
【0014】
また、上記のような分散した粒子上の静電荷に影響を及ぼしたり増大させるために、電荷調整剤又は電荷調節剤として知られている添加剤を含有することもできる。このような物質は、当分野で公知のように、金属石鹸、脂肪酸、レシチン、有機リン化合物、スクシンイミド及びスルホスクシン酸塩であることができる。
電荷調節剤は、使用時にトナーの0.01〜5重量%の範囲であり得る。
分散剤の使用を開示したが、従来技術では分散剤がトナーシステムのキャリア液との相容性のために選択された。例えば、Markoに許与された米国特許第6,287,741号を参照する。
本発明の出願人は、驚くことに、非相溶性分散剤、つまりキャリア流体に不溶性又は非混合性である分散剤として製造された液体トナーが静電潜像の現像前にトナー蓄積物内の個別トナー粒子の配向を変えるためにコロナ発生ワイヤ、ローラーなどを使用する必要なく、高現像効率及び優れた画像品質のための均一荷電及び配向された連続的トナー層の現像部材上の形成を可能にすることを見出した。
分散剤を含有することができ、例えば、Wacker Chemicals社製造のFinish WT1250、Finish WR1600、Finish WR1300、Finish WR1100、及びFluid L656を含むアミノシリコン群;Avecia社製造のSolsperse 17000、Solsperse 21000及びSolsperse 13940を含む高分子性分散剤群;Rohm and Haas社製造のPlexol 954を含む高分子性油類添加剤群;Phillips Petroleum者製造のSolprene 201及びSolprene 1205を含むポリオレフィン群;3M社製造のFluorad FC−740を含むフッ素化界面活性剤群から選択されることができる。分散剤は、特定液体現像剤又はトナーの中で使用されるキャリア液によって選択される。
【0015】
シリコン流体キャリア液としては、例えば、下記の非相溶性分散剤を使用することができる:Solsperse 17000、Solsperse 13940、Plexol 954、Solprene 201、Solprene 1205、Solsperse 21000、及びFluorad FC−740。
炭化水素系キャリア液としては、下記の非相溶性分散剤を使用することができる:Finish WT1250、Finish WR1600、Finish WR1300、Finish WR1100及びFluid L656。
キャリア液が軽質パラフィン油を含む場合には、非相溶性分散剤は、アミノ−シリコン類、Finish WT1250、Finish WR1600、Finish L656、Finish WR1300、Finish WR1100及びFluid L656を含む群から選択することができる。
【0016】
非相溶性分散剤は、ボールジャーミル、アトリションミル、ビーズミル等のような液体組成物の製造によく採用される技法により、液体組成物内に混入されることができる。また、記録粒子の添加前及び製粉段階前にキャリア液内に分散剤を配合することに係る予備混合技法を、上記非相溶性分散剤を液体現像剤製剤内に混入させるのに使用することができる。
上記非相溶性分散剤は、使用時にトナーの0.1〜30重量%の範囲であり得る。
液体トナーのこのような好適な特徴を達成できる正確な工程については完全に理解されていないが、以下に説明するとおりである。しかし、本出願人はこの説明に拘束されない。
画像現像工程は、トナー粒子を液体キャリアから分離する多段階工程であることが分かる。荷電された粒子及び可溶性分散剤を含有する従来のLVTシステムは、立体的反発力及び静電気的反発力の全てによって安全化する。これらは一般的に、安定したコロイドであり、従って保管寿命が長い。一般的に、画像現像工程中にトナー粒子の間の反発力を克服するのに充分なエネルギーを加える必要がある。
【0017】
しかし、従来技術のHVTシステムのトナーは、トナー蓄積物内の個別トナー粒子の配向を変え、これによって画像現像前に現像部材上に圧縮された液体トナー層を形成するために、コロナ発生ワイヤ、ローラーなどを有利に使用できることが明らかになった。画像現像中に粒子蓄積過程を決定するのは、層全体の平均電荷であるので、画像現像工程に影響を及ぼし得る従来技術のトナーに存在するトナー粒子の間の任意的電荷の変化は、圧縮された液体トナー層で大きく減少される。
本明細書において、配向という用語は、トナー層内の個別トナー粒子の配向又は空間的分布に対する変化を意味する。
本発明の出願人は、準安定性のトナー、つまり凝集に対して安定し、長い保管寿命を得ることはできるものの、特定粒子分離間隔での凝結に対しては不安定なトナーを製造することにより、現像前に液体トナー層に強力な電場を印加する必要を除去できることを見出した。このようなトナーの電位エネルギー曲線は2次最小値を有し、これは粒子が弱い力によってともに結合している凝結された分散状態に該当する。凝結された状態では粒子の表面積の減少がないが、粒子はその動的独立性を失って一体として動く。従って、均一な配向、連続的なトナー層、及びこれによる高現像効率及びこれに伴う優れた画像品質を実現するために、現像前に液体トナー層に強力な電場を印加する必要がない。
【0018】
粒子配向、及び/又は、キャリア液からの分離は、現像領域又はニップでの電場によりトナー層に導入されるエネルギーによって簡単に行われることができる。粒子配向、及び/又は、圧縮の工程は、現像部材と、潜像を支持する部材の間のニップ領域で行われる。このような現像工程は、潜像を現像する前に、トナー蓄積物内の個別トナー粒子の配向を変えて現像工程を単純化する付加的段階に対する必要性を除去する。
液体トナーが液体キャリアに不溶性又は非相溶性である分散剤とともに安定化する場合、該不溶性分散剤は、長い時間の振動又は製粉の後に、液体キャリアの中に分離された層の形態又は液滴の形態で存在する。このような液滴が不安定に維持される場合には、これらは結局分離された層を形成するようになる。液体キャリアが不溶性分散剤と記録粒子とともに製粉されれば、凝集に対して安定した分散液を製造することができる。このような分散額は、固体記録粒子、液体キャリア、及び液体キャリアに不溶性である分散剤の微細液滴の三相コロイドである。一方、従来のLVTシステムトナーは、固体記録粒子及び液体キャリアの二相コロイドである。また、可溶性分散剤を有するHVTシステムも固体記録粒子及び液体キャリアの二相コロイドとして認められることができる。
なお、分散剤は、粒子の表面上に吸着する傾向があり、その第1の理由は、該分散剤が液体キャリアに不溶性で非相溶性液体から遠ざかるためであり、第2の理由は、分散剤の粒子表面上の吸着を促進する分散剤の活性作用基のためである。本発明の液体トナー中の微細液滴は、長期間のトナー安定性に寄与する。
【0019】
このような液体トナーが外部電場に露出する場合、上記微細液滴はその遥かに小さな粒子大きさ及び高い運動性によって記録粒子から遠ざかることがある。このような微細液滴の記録粒子から遠ざかる運動は、記録粒子が集まったり凝結するようにし、これによって均一配向され、連続的なトナー層を形成するようにし、これはトナー層の電荷の均一性を改善する。
本発明により製造された液体トナーは、改善された印刷性能を示す。また、本発明により製造された液体トナーは、静電潜像の現像前にトナー蓄積物内の個別トナー粒子の配向を変えるために、コロナ発生ワイヤ、ローラーなどを使用する必要なく、実質的に増加した光学密度と、減少したバックグラウンドのぼやけ又はむら、及びより高い画像解像度を示す。
以上、理解を助けるために本発明について一般的に記載した。
【実施例】
【0020】
以下に、比較例及び本発明の実施形態を示す非制限的な実施例を説明する。
比較例及び実施例
下記の組成を有する押出物を製造した:
Epikote 1001 49.4g
Corflex DIDP 4g
Araldite GY280 26.6g
Irgalite Blue LGLD 20g
上記成分を、例えば、高温溶融押出機を利用して一緒に配合して押出物を形成し、冷却させた。上記押出物は、次いで粗い粉末に破砕し、実施例で直ぐに使用できるようにした。
Epikote 1001は、オーストラリアのShell Chemicals社製造のエポキシ樹脂である。Corflex DIDPは、米国のCSR Chemicals社製造の可塑化剤である。Araldite GY280は、スイスのCiba−Geigy社製造のエポキシ樹脂である。Irgalite Blue LGLDは、スイスのCiba−Geigy社製造のCIピグメントブルー15:3である。
【0021】
比較例1
次に、上記押出物を使用して下記組成の記録液を製造した:
押出物 100g
Solsperse 13940 20g
軽質パラフィン油 380g
Solsperse 13940は、軽質パラフィン油に相容性である分散剤である。Solsperse 13940は、英国のAvecia社製造の軽質パラフィン油に可溶性である液体高分子性分散剤(脂肪族蒸留物の中に40%の活性分散剤)である。軽質パラフィン油は、オーストラリアのBP社製造の14〜18mPasの(40℃で)鉱油である。
このように製造された上記実施例の記録液は、球状のセラミック粉砕媒体を含有するセラミックボールジャーに上記成分を添加し、4日間製粉し、樹脂状のトナーを形成することによって製造した。
【0022】
実施例1
上記押出物を再び使用して下記組成の記録液を製造した:
押出物 100g
Finish WT1250 15g
軽質パラフィン油 385g
Finish WT1250は、軽質パラフィン油に非相溶性である分散剤である。Finish WT1250は、独国のWacker Chemicals社製造の、アミン作用基を有し、軽質パラフィン油に不溶性である液体ポリシロキサンである。
このように製造された上記実施例の記録液は、球状のセラミック粉砕媒体を含有するセラミックボールジャーに上記成分を添加し、4日間製粉し、樹脂状の液体トナーを形成することによって製造した。
【0023】
実施例2
上記押出物を再び使用して下記組成の記録液を製造した:
押出物 100g
Solsperse 13940 15g
DC200 Fluid 50cSt 385g
Solsperseは、DC200 Fluid 50cStに非相溶性である分散剤である。Solsperse 13940は、英国のAvecia社製造の、DC200 Fluid 50cStに不溶性である液体高分子性分散剤である。DC200 Fluid 50cStは、米国のDow Corning社製造のシリコン流体である。
このように製造された上記実施例の記録液は、球状セラミック粉砕媒体を含有するセラミックボールジャーに上記成分を添加し、4日間製粉し、樹脂状液体トナーを形成することによって製造した。
【0024】
実施例3
上記押出物を再び使用して下記組成の記録液を製造した:
押出物 100g
Solsperse 17000 15g
DC200 Fluid 50cSt 385g
Solsperse 17000は、DC200 Fluid 50cStに非相溶性である分散剤である。Solsperse 17000は、英国のAvecia社製造のDC200 Fluid 50cStに不溶性であるワックス状の固体高分子性分散剤である。
このように製造された上記実施例の記録液は、球状のセラミック粉砕媒体を含有するセラミックボールジャーに上記成分を添加し、4日間製粉し、樹脂状液体トナーを形成することによって製造した。
上記実施例において、原料の量は必要な液体現像剤又はインキの特徴、及び静電式プリンタの作動方式によって変更可能である。
【0025】
物理的設計
分散安定性
上記比較例及び実施例に対し、明示された期間における凝結及び沈降評価により分散安定性を試験した。沈降は、試料を容量的に目盛り付き沈降フラスコに入れ、所定期間後に沈降率(百分率基準)を分析することで評価した。粒子とキャリアの間の界面の増加量は分離された(沈降した)固形物を示す。凝結は、試料を明示された期間ビーカーに入れた後、試料をゆっくり攪拌して評価を行なった。凝結の水準は、試料の攪拌に対する抵抗によって求めることができる。
6ヶ月の保存期間中の非相溶性分散剤を含有する記録液の分散安定性は、下記結果のように、匹敵するほどの安定性を有することが分かる。


【0026】
印刷試験
試料を、Sasakiらに許与された米国特許第6,167,225号に一般的に開示されたタイプの静電式プリンタを使用し、画像光学密度(ODU)及びバックグラウンドのぼやけ又はむらについて試験を行なった。画像密度及びバックグラウンドのぼやけに対する測定は、スイスのGretag社製造のGretag D186密度計を使用して行なった。比較例及び実施例のいずれにおいて、液体トナー層移送手段に隣接した位置に配置されたコロナ発生ワイヤの存在及び部材下で、現像ニップ領域に入る前にトナー蓄積物内の個別トナー粒子の配向を変えるために、コロナ生成電圧を加えることによって画像形成した。その結果は以下のとおりである。


【0027】
上記結果は、本発明の新規記録液が静電潜像の現像前にトナー蓄積物内の個別トナー粒子の配向に対するいかなる調整又は変化を必要とせずに、改善した画像品質を達成することができることを示す。即ち、本発明の実施例によれば、画像現像前に液体トナー層を調整する必要なく、より高い画像光学密度、及び減少したバックグラウンドのぼやけ又はむらを実現することができることを示している。
以上、物理的及び電気的特性及び安定性を有し、優れた画像形成性能を示す記録液の新規な製造方法について説明した。このような新規な記録液は、静電潜像の現像前にトナー蓄積物内の個別トナー粒子の配向を調整したり変えるために、コロナ発生ワイヤ、荷電ローラーなどを使用する必要なく、高現像効率及び優れた画像品質のための均一配向された連続的トナー層の形成を可能とする。
【0028】
上記実施形態はいずれも本発明の範囲から逸脱することなく変更が可能であり、当業者によりまた他の変形例が、添付の請求の範囲に定義されたような発明から逸脱することなく行なわれることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア液、不溶性記録粒子及び分散剤を含む、静電像用液体トナー又は現像剤において、前記分散剤が前記キャリア液に非相溶性又は不溶性であることを特徴とする、液体トナー又は現像剤。
【請求項2】
前記非相溶性分散剤がアミノ−シリコン類、高分子性超分散剤類、高分子性油類添加剤、ポリオレフィン類、及びフッ素化界面活性剤を含む群から選択され、特定液体現像剤又はトナーの中から使用されるキャリア液を考慮する、請求項1に記載の液体トナー又は現像剤。
【請求項3】
前記キャリア液がイソパラフィン系炭化水素類、直鎖状のシリコン流体、環状のシリコン流体、分枝状のシリコン流体、又はこれらの組み合せ、植物油、大豆油、綿実油、紅花油、ヒマワリ油、ヒマシ油、亜麻仁油及びオリーブ油、合成油、高級脂肪酸とアルコールの間の反応によって得られる脂肪酸エステル、及び高級脂肪酸とエチレングリコール又はグリセリンの間の反応によって得られるエステル化合物、鉱油又は白油、並びに上述のキャリア液の配合物を含む群から選択される、請求項1に記載の液体トナー又は現像剤。
【請求項4】
前記非相溶性分散剤は、トナーの0.1〜30重量%の範囲である、請求項1に記載の液体トナー又は現像剤。
【請求項5】
前記キャリア液は軽質パラフィン油を含み、前記非相溶性分散剤がアミノシリコンである、請求項1に記載の液体トナー又は現像剤。
【請求項6】
前記キャリア液はシリコン流体を含み、前記非相溶性分散剤は高分子性油類添加剤、ポリオレフィン類及びフッ素化界面活性剤を含む群から選択される、請求項1に記載の液体トナー又は現像剤。
【請求項7】
前記キャリア液は炭化水素を含み、前記非相溶性分散剤はアミノシリコンである、請求項1に記載の液体トナー又は現像剤。
【請求項8】
前記不溶性記録粒子は着色剤を含む、請求項1に記載の液体トナー又は現像剤。
【請求項9】
前記着色剤は、酸化鉄、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、磁性酸化鉄のような無機顔料、又はカーボンブラック、フタロシアニンブルー、アルカリ及びリフレックスブルー、フタロシアニングリーン、ジアリライドイエロ、アリールアミドイエロ、アゾ及びジアゾイエロ、アゾレッド、ルビントナー、キナクリドンレッド、塩基性染料複合体、レーキレッドのような有機顔料、又は塩基性染料及びスピリット可溶性染料のような蛍光顔料及び染料、又はこれらの組み合せを含む群から選択される、請求項8に記載の液体トナー又は現像剤。
【請求項10】
前記不溶性記録粒子が樹脂又は樹脂系をさらに含む、請求項8又は9に記載の液体トナー又は現像剤。
【請求項11】
前記樹脂又は樹脂系は、エチルセルロース、オイル変性アルキド樹脂、アクリル酸又はメタクリル酸エステル樹脂、ポリスチレン、シリコン−アクリル共重合体、シリコン樹脂、シリコン−(メタ)アクリル共重合体、ブロック重合体又はグラフト重合体、ポリオレフィン共重合体、ポリ(塩化ビニル)樹脂、塩化ポリプロピレン、ポリアミド樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジン変性樹脂、及びアルキルフェノール変性キシレン樹脂、合成ポリエステル類;ポリプロピレン又は変性ポリプロピレン;アルキル化ポリビニルピロリドン;モンタンワックス、カンデリラワックス、サトウキビワックス、蜜蝋のような天然ワックス類、エステルゴム及び硬化ロジンのような天然樹脂類;天然樹脂変性マイレン酸樹脂類、天然樹脂変性フェノール樹脂類、天然樹脂変性ポリエステル樹脂類、天然樹脂変性ペンタエリトリトール樹脂類のような天然樹脂変性硬化樹脂類、アクリル酸スチレン類及びエポキシ樹脂類を含む群から選択される、請求項11に記載の液体トナー又は現像剤。
【請求項12】
前記記録粒子は、最終トナーの1〜60重量%の範囲である、請求項1から11のいずれか一項に記載の液体トナー又は現像剤。
【請求項13】
キャリア液相の中のキャリア液、記録粒子相の中の記録粒子、及び分散剤相の中の分散剤を含む三相コロイドシステムとして特徴付けられる静電像用液体トナー又は現像剤であって、前記記録粒子はキャリア液及び分散剤相に不溶性であり、前記分散剤はキャリア液と非相溶性である液滴を含む、液体トナー又は現像剤。
【請求項14】
キャリア液と、該キャリア液に不溶性である記録粒子、及び分散剤を含む液体電気記録用トナー又は現像剤であって、前記分散剤は前記キャリア液に非混合性の液体である、液体電気記録用トナー又は現像剤。
【請求項15】
キャリア液、該キャリア液に不溶性である記録粒子、及び分散剤を含む液体電気記録用トナー又は現像剤であって、前記分散剤が前記キャリア液に不溶性の固体である、液体電気記録用トナー又は現像剤。
【請求項16】
キャリア液、不溶性記録粒子及び分散剤を含む静電像用液体トナー又は現像剤であって、前記分散剤が前記キャリア液と非相溶性であり、前記液体トナー又は現像剤は、静電潜像の現像前にトナー蓄積物内の個別トナー粒子の配向を調整したり変えるために、コロナ発生ワイヤ、ローラーなどを使用する必要がない、液体トナー又は現像剤。

【公表番号】特表2008−524640(P2008−524640A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545782(P2007−545782)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【国際出願番号】PCT/AU2005/001884
【国際公開番号】WO2006/066312
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(598136172)リサーチ ラボラトリーズ オブ オーストラリアプロプライエタリイ リミテッド (5)
【Fターム(参考)】