説明

記録装置、記録装置の制御方法、および記録装置の制御プログラム

【課題】記録用紙を搬送する駆動系のバックラッシュに起因する挙動不安定を解消し、安定した記録用紙搬送制御を行なえるようにする。
【解決手段】用紙搬送用モータを前回の駆動方向と反対方向に反転駆動する場合、エンコーダセンサにより所定量モータが駆動されたことを検出していない間(S605〜S610)は駆動位置情報および速度情報を推定処理により発生して用紙搬送用モータの駆動制御に用い、一方、エンコーダセンサにより所定量モータが駆動されたことを検出したら、反転駆動開始時点からの搬送量とバックラッシュ量を加算した値を駆動位置情報として用いるとともに、エンコーダセンサの出力に基づき決定した値を速度情報として用いて用紙搬送用モータの駆動を制御する(S605〜S608)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録用紙を搬送する搬送用モータと、前記搬送用モータの駆動力を記録用紙に伝達するギアを含む駆動系と、前記搬送用モータの回転状態を検出するエンコーダセンサを有し、前記エンコーダセンサの出力から検出される駆動位置情報および速度情報に基づき前記搬送用モータの駆動を制御する記録装置、記録装置の制御方法、および記録装置の制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタにおいて、用紙を給紙する際に用紙を給紙カセットやオートシートフィーダーからピックアップした後、記録用紙の斜行を防止する技術が知られている。これは搬送用モータを正転/逆転させ、記録用紙の先端をピンチローラに一旦つきあて、その後記録開始位置へ記録用紙を搬送させるものである(いわゆるレジ調整)。
【0003】
通常、用紙搬送の駆動源としてはDCモータなどのモータが用いられ、モータから複数のギアを含む駆動系を介して搬送ローラに動力を伝達する。しかしながら、上記のレジ調整においてモータを正転、逆転させる際、ギアのバックラッシュが発生することがある。
【0004】
そして、駆動源のモータにDCモータを用いサーボ制御で構成する場合には、バックラッシュの発生時にエンコーダからの信号の変化がなくなってしまうので、モータの駆動位置情報、速度情報が得られず、プリンタの挙動が安定しないという問題点があった。
【0005】
プリンタにおける駆動系のバックラッシュを考慮し、駆動源のDCモータの駆動を特定の態様で制御する技術としては、たとえば下記の特許文献1に記載されるような構成が知られている。
【特許文献1】特開2005−237198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術はバックラッシュ音を低減させるため、モータ起動後、所定期間だけDCモータの駆動電流を低減させるもので、上記のような正転/逆転制御の際のバックラッシュに起因する挙動の不安定さを解消できるものではない。
【0007】
上述のように駆動系のバックラッシュに起因する不安定な挙動の下で記録用紙を搬送すると、搬送時に異音が発生したり、記録用紙に予測不能な力が加えられ、記録用紙の破損を引き起す可能性があり、このような問題を解消できる技術が望まれている。
【0008】
本発明の課題は、上記の問題を解決し、モータの正転/逆転制御が必要な場合でも、記録用紙を搬送する駆動系のバックラッシュに起因する挙動不安定を解消し、安定した記録用紙搬送制御を行なえるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題を解決するため、本発明においては、記録用紙を搬送する搬送用モータと、前記搬送用モータの駆動力を記録用紙に伝達するギアを含む駆動系と、前記搬送用モータの回転状態を検出するエンコーダセンサを有し、前記エンコーダセンサの出力から検出される駆動位置情報および速度情報に基づき前記搬送用モータの駆動を制御する記録装置、記録装置の制御方法、および記録装置の制御プログラムにおいて、前記搬送用モータを前回の駆動方向と反対方向に反転駆動する場合、前記エンコーダセンサにより所定量前記搬送用モータが駆動されたことを検出していない間は前記駆動位置情報および前記速度情報を推定処理により発生して前記搬送用モータの駆動制御に用い、一方、前記エンコーダセンサにより所定量前記搬送用モータが駆動されたことを検出したら、反転駆動開始時点からの搬送量とバックラッシュ量を加算した値を前記駆動位置情報として用いるとともに、前記エンコーダセンサの出力に基づき決定した値を前記速度情報として用いて前記搬送用モータの駆動を制御する構成を採用した。
【発明の効果】
【0010】
上記構成によれば、用紙搬送用モータを前回の駆動方向と反対方向に反転駆動する場合、エンコーダセンサにより所定量モータが駆動されたことを検出していない間は駆動位置情報および速度情報を推定処理により発生して用紙搬送用モータの駆動制御に用い、一方、エンコーダセンサにより所定量モータが駆動されたことを検出したら、反転駆動開始時点からの搬送量とバックラッシュ量を加算した値を駆動位置情報として用いるとともに、エンコーダセンサの出力に基づき決定した値を速度情報として用いて用紙搬送用モータの駆動を制御するようにしているので、バックラッシュが発生した区間でも、安定した用紙搬送を行なうことができる、という優れた効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に示す実施例では、脱着可能なインクタンク付き記録ヘッドを搭載したシリアル式インクジェットプリンタを例示する。なお、本発明は記録用紙搬送用のモータの制御に係わるものであるから、記録ヘッドの記録方式は上記のインクジェット方式に限定されるものではない。
【実施例1】
【0012】
図1は本発明を採用したインクジェットプリンタの全体構成を示している。同図において、符号101はインクタンクを有する記録ヘッド、102は記録ヘッド101を搭載するキャリッジである。
【0013】
記録ヘッド101は、たとえば、600DPIで160ノズルのブラックヘッドと、1200DPIでY、M、Cの各色各48ノズルで構成されるカラーヘッドの2ヘッドで構成される。
【0014】
キャリッジ102には光学センサが装着されており、記録ヘッド101をキャリッジ102に搭載した時、光学センサが遮断される構成となっており、これにより記録ヘッド101の有無が検知可能である。
【0015】
また、キャリッジ102の軸受け部102aには主走査方向に摺動可能な状態でガイドシャフト103が挿入される。ガイドシャフト103の両端はシャーシ114に固定されている。
【0016】
キャリッジ102に係合したキャリッジ駆動伝達手段であるベルト104を介して、キャリッジ駆動手段である駆動モータ105の駆動が伝達され、ガイドシャフト103に沿ってキャリッジ102が主走査方向に移動可能である。
【0017】
キャリッジ102の速度は、エンコーダスケール122のスリットをキャリッジ102上に装着された不図示のエンコーダセンサで検知/カウントすることで管理される。
【0018】
待機中、記録用紙115は給紙ベース106にスタックされており、記録開始時にはピックアップローラ(不図示)を回転することにより記録用紙が給紙される。
【0019】
この給紙の際に、記録用紙の頭出し量を制御するために、PEセンサ(不図示)がピンチローラ111の下部に設けられている。
【0020】
給紙された記録用紙の搬送にはDCモータからなる用紙搬送用モータ107が駆動源として用いられる。用紙搬送用モータ107の駆動力はギア列(たとえばモータギア108、搬送ローラギア109、搬送ローラギア130…)からなる駆動系を介して搬送ローラ110に伝達される。
【0021】
駆動系(ギアトレーン)を構成するモータギア108、搬送ローラギア109、搬送ローラギア130…のギア数やその配列は任意である。
【0022】
たとえば、図1の構成は、モータギア108からプーリ(あるいは他の不図示のギア)を介して搬送ローラ110へ駆動力を伝達し、搬送ローラギア109から後述のコードホイール116と連結された搬送ローラギア130へと駆動力が伝達される旨図示されている。
【0023】
しかし、このようなギアトレーンの構成はあくまでも一例にすぎない。たとえば、搬送ローラギア130から他の搬送ローラ(不図示)へと必要に応じて駆動力が伝達されるようになっていてもよい。
【0024】
搬送ローラ110はピンチローラばね(不図示)により押圧され従動回転するピンチローラ111と協働して、記録用紙115を適切な送り量だけ搬送する。
【0025】
記録用紙115の搬送量はコードホイール(ロータリーエンコーダフィルム)116のスリットをエンコーダセンサ117で検知、カウントすることで管理される。これにより高精度な記録用紙搬送が可能となる。
【0026】
図1の例では、コードホイール116は上記駆動系を構成する搬送ローラギア130に連結されている。このように駆動系を構成するギアトレーンの一部にコードホイール116を設ける構成では、上述のように搬送用モータ107の反転時には、バックラッシュの影響で有意な回転位置(駆動位置)情報を取得することができない。本発明では後述のような手法によりこの問題を解決する。
【0027】
さらに、図1において112はプラテンであり、このプラテン112上で記録ヘッド101による記録が行なわれ、記録済みの記録用紙は排紙ローラ113により排紙される。
【0028】
図2は本発明を採用したプリンタの制御系の構成を示している。
【0029】
図2においてCPU201はプリンタ装置の記録データの作成、記録制御のためのモータ駆動、記録ヘッド101のインク吐出制御、上位装置から転送されたコマンドの解析、パネルからの入力による各種設定などを行なう演算装置である。
【0030】
ROM202には後述のプリンタ制御プログラム、制御データ、記録データに使用するフォントデータなどが格納されている。ROM202に格納されたプリンタ制御プログラムはCPU201によって読み出され、実行される。なお、ROM202中の制御データはそのまま初期値として使用されるものと、RAM203に展開されCPU201により加工され使用されるものがある。
【0031】
必要に応じて指定されたフォントデータは、CPU201によって読み出されRAM203に展開され、プリンタ制御回路が扱える記録データ(たとえばビットマップデータ)として生成される。フォントデータは機種により搭載個数、搭載文字種類が異なり、したがってその容量も異なる。本実施例のプリンタではたとえば、明朝体1フォントを塔載している。RAM203は上述したフォントデータを指定された修飾方法にて修飾された結果を展開し記録データとして使用する。
【0032】
イメージデータの場合は、同様にCPU201によって読み込まれたイメージデータが指定された記録位置に対応するRAM203の記憶領域上に展開されることにより、プリンタ制御回路が扱える記録データ(たとえばビットマップデータ)として生成される。
【0033】
さらにRAM203はプログラム実行に必要なワークメモリ、インターフェース204からの入力データの一時格納場所としての受信バッファとしても使用している。
【0034】
インターフェース204は不図示のホスト装置と接続され、記録データ、プリント指示コマンド等のデータを受信するためのものである。本実施例のインターフェース204はIEEE−1284に準拠した電気的仕様となっており、ホストからのデータだけでなく、プリンタの状態をホストに転送するため、双方向の通信が可能なインターフェースとなっている。
【0035】
EEPROM205にはプリンタの設定状態を保管しておくだけでなく、その他、印刷枚数、インク残量なども格納される。EEPROM205に記憶されるこれらの管理データは、主電源が遮断されている間もその記憶内容が保持される。
【0036】
EEPROM205に管理データとして記録されるプリンタの状態としては、フォント種別、対応用紙、自動電源ON/OFFなどの設定状態などの情報が含まれる。
【0037】
モータコントローラ206は、CPU201の指令に基づき、駆動モータ105および用紙搬送用モータ107を制御する。
【0038】
本実施例のプリンタは、主走査方向に記録ヘッド101を走査させて記録を行なう形式である。したがって、モータコントローラ206は、記録ヘッド101を1回、または複数回走査させて記録を行なうよう駆動モータ105を制御する。このとき、記録ヘッド101の記録動作は駆動モータ105の等速域を使用して行なわれる。
【0039】
また、モータコントローラ206は、記録用紙115を進行方向へ移動させる用紙搬送用モータ107を制御する。このモータ107はヘッド走査用のモータ105とは独立で動作可能である。
【0040】
用紙搬送用モータ107は、通常印刷においては、ヘッド走査用モータが1回または複数回走査後、モータコントローラ206により所定量紙を送るように制御される。
【0041】
さらに、本実施例では、給紙用のピックアップモータ(不図示)により、給紙ベース106上の記録用紙115を給紙ベース106に面した給紙口からピックアップし、用紙搬送用モータ107の駆動力が伝わる所定の位置まで搬送する。
【0042】
このピックアップモータの動作は別途に設けられたピックアップモータコントローラか、あるいは上記のモータコントローラ206により制御される。
【0043】
記録ヘッドコントローラ207は記録ヘッドのヒート処理、ヘッドメンテナンス制御、インク量検知等の処理を行なう。
【0044】
ヘッドセンサ213は記録ヘッドコントローラ207内に設けられている。CPU201は、ヘッドセンサ213の出力値を定期的に読み出しており、これによりヘッドの有無を検知する。
【0045】
本実施例ではヘッドセンサ213の出力がHIGHの場合は記録ヘッド装着状態であり、出力値がLOWの場合は記録ヘッド非装着状態になるような電気的仕様となっている。
【0046】
符号208はCPU201内のADコンバーターであり、一回あたり約5マイクロ秒で8ビットの値に変換する機能を備えている。バスライン209はデータを転送するためのデータおよびアドレスバスである。CPU201はこのバスライン209を介して上記の各ブロック202〜207を制御する。
【0047】
符号210、211は各ユニットへの電源供給ラインであり、212は記録装置本体上部に備えられている表示パネルである。
【0048】
表示パネル212には、たとえば電源キーと、回復、テストプリント、エラーからの回復を指定するリジュームキー、データ受信、電源状態を表示するLED、その他のスイッチなどが備えられている。
【0049】
図3は、位置サーボ技術を用いた一般的なモータ(用紙搬送用モータ107)のフィードバック制御を説明する模式図である。
【0050】
この種のフィードバック制御では、たとえば、制御対象に与えたい目標位置は、理想位置プロファイル301の形式で与える。これは該当する時刻における位置指令値として表現されるもので、時刻の進行とともに、この位置情報は変化していく。この理想位置プロファイルに対して追値制御を行なうことによりモータ駆動が遂行される。
【0051】
エンコーダセンサ306(図1のエンコーダセンサ117と同じもの)は、モータの物理的な回転を検知する。位置情報取得手段307は、エンコーダセンサが検知したスリット数を加算していき、これにより絶対位置情報を得る。
【0052】
速度情報取得手段308はエンコーダセンサ306の信号と、プリンタに内蔵された時計から、現在のモータの駆動速度を算出する。
【0053】
図3において、理想位置プロファイル301から、位置情報取得手段307により得られた実際の物理的位置を減算した数値を目標位置に対して足りない位置誤差として、位置サーボのフィードバック処理に受け渡す。符号302以降のブロックは位置サーボのフィードバック処理のメジャーループを示している。
【0054】
ブロック302は比例項Pに関する計算を行ない、演算の結果として速度指令値をブロック303以降の速度サーボのフィードバック処理に受け渡す。ブロック303による速度サーボのマイナーループは、比例項P、積分項I、微分項Dに対する演算を行なうPID演算により行なうのが一般的である。
【0055】
速度サーボのマイナーループにおいては、ブロック302の速度指令値から速度情報取得手段308のエンコーダ速度情報を減算した数値を、目標速度に対して足りない速度誤差として、ブロック303のPID演算回路に受け渡される。
【0056】
そして、その時点でDCモータに与えるべき駆動エネルギーを、PID演算と呼ばれる手法で算出する。ブロック303から駆動エネルギー情報を受け取ったモータドライバ回路は、たとえばPWM制御を用い、用紙搬送用DCモータ305(図1の搬送用モータ107と同じもの)に印加する電圧のDutyを変化させて電流値を調節する。これにより、用紙搬送用DCモータ305に与えるエネルギーが調節され、該モータの回転速度が制御される。
【0057】
電流値を印可されて回転するDCモータ305は、外乱304による影響を受けながら物理的に回転する。この外乱304の影響も含めた回転状態の情報がエンコーダセンサ306を介して上記のフィードバック系に入力されることになる。
【0058】
図4は理想的なモータ駆動プロファイルの一例を示している。
【0059】
図4の横軸は時間軸であり、404の矢印の方向に時間が経過する。また、縦軸方向は速度軸であり、405の矢印の方向が高速になっていく。
【0060】
符号401は加速エリアであり、本実施例では初速を0slit/sec、到達目標速度を定速エリア402の18000slit/secとしている。なお、ここで例示するslit/secの単位は、毎秒あたりエンコーダセンサ306が検出するスリット数である。
【0061】
また符号403は減速エリアであり、加速エリアとは逆に定速エリア402の速度18000slit/secから最終速度0slit/secへと減速していくよう構成されている。
【0062】
このような加速、あるいは減速プロファイルはあくまでも一例であり、機構の特性に依存して、二次曲線、三次曲線、六次曲線など、種々の曲線形状のプロファイルで制御する手法が知られているが、本実施例では、最もシンプルな直線プロファイルを用いている。加速エリア401および減速エリア403ともに理想の制御時間はたとえば60mSecである。
【0063】
符号406は、駆動系(たとえば図1のギア108、109)のバックラッシュが発生した場合、バックラッシュ駆動が終了し実際のエンコーダスリットが検知できるようになるまでの区間に相当する。
【0064】
この区間406の間は、前述のように有意な速度情報、位置情報を得られないため、本実施例においては、速度情報、位置情報を予測して駆動制御を行なう。
【0065】
また、符号407はバックラッシュ発生後、エンコーダスリットを検知できた後の区間であり、この区間407では、通常通りエンコーダセンサ306の検出情報から速度情報および位置情報を取得し、モータ制御を行なう。
【0066】
本実施例において、区間406〜407で実施するモータ制御を、以下、図5、図6を参照して詳細に説明する。図5は本実施例のモータ駆動制御の全体構成を、図6は図5中の位置情報および速度情報の取得制御(ステップS507)を示している。
【0067】
ステップS501でモータの駆動を開始する。ステップS502では、モータの回転方向を調べ、その方向が前回転方向と反対方向の駆動かを判断する。
【0068】
ステップS502で前回転方向と反対方向の駆動である場合にはステップS503でバックラッシュ制御をONにする。また、ステップS502で同方向の駆動を検出している場合はステップS504でバックラッシュ制御をOFFにセットし今回の駆動は通常制御を行なう。
【0069】
ステップS505ではサーボ制御用のタイマーを起動する。ステップS506では1mSecの経過を待ちステップS507へと処理を移行する。
【0070】
なお、図5ではステップS506でのウエイト処理がCPUを占有しているように図示しているが、これは説明を容易にするためのものである。実際の制御では、たとえば、ステップS505で起動したタイマーのタイムアップまで、他のタスクにCPUの制御が移行する。そして、該タイマーがタイムアップするとタイマー割り込みによりステップS507へと処理が移行する構成となっている。
【0071】
ステップS507では位置情報および速度情報を取得する。ステップS507の位置情報および速度情報取得処理は図6のように構成される。
【0072】
まず、ステップS601で位置情報、および速度情報の取得が開始され、ステップS602ではバックラッシュ制御が必要(バックラッシュ制御ON)か否かを判断する。バックラッシュ制御が不必要な(バックラッシュ制御OFF)場合にはステップS603で位置情報をエンコーダセンサの値より決定する。
【0073】
同様に、ステップS604では速度情報をエンコーダセンサの値より決定する。速度情報の取得は、エンコーダセンサがスリットを検知してから、次のスリットを検知するまでの区間においてクロックをカウントし、そのクロック数より速度を検出することにより行なう。バックラッシュ制御がOFFの場合はこの後、ステップS611で位置情報、および速度情報の取得を終了する。
【0074】
一方、ステップS602でバックラッシュ制御が必要と判断した場合には、ステップS605でエンコーダセンサ117の出力から駆動開始より2Slit以上、搬送用モータ107が回転(移動)したか否かを判断する。
【0075】
このステップS605の判定は、現在、駆動系にバックラッシュが発生している区間であるか否かの判断に相当する。そして、ステップS605で駆動開始より2Slit以上のモータ軸回転を検出できない間は、下記のステップS609およびステップS610で位置情報および速度情報を推定処理により発生する。また、ステップS605で駆動開始より2Slit以上のモータ軸回転を検出した場合には、下記のステップS606およびS607の処理を行ない、バックラッシュ制御をオフ(ステップS608)にする。
【0076】
まず、ステップS605において、エンコーダセンサ117により2slit以上の移動を検出できていない場合には、ステップS609で位置情報を、ステップS610で速度情報を推定する。
【0077】
この推定処理の手法としては様々なものがあるが、本実施例では、速度、および位置が、理想とするプロファイルの所定の割合の速度、位置だと推定するアルゴリズムを用いる。このアルゴリズムを用いるために、実際の速度、および位置情報が推定される情報とかけ離れないよう、最適な割合を決定するためのチューニングを施す必要がある。本実施例では、機構の特性に応じてこのチューニングが施された値を駆動テーブル上に格納してある。
【0078】
たとえば、この駆動テーブルは、タイマーで計時した経過時間を入力すると、その時点での位置情報および速度情報の推定値を出力できるように構成しておくことが考えられる。なお、テーブルから出力される位置情報および速度情報がバックラッシュ発生時のものとなるように当該の駆動系の特性に合せて駆動テーブルを構成するのはいうまでもない。
【0079】
ステップS609およびステップS610では、上記の駆動テーブルを参照して得た位置情報および速度情報の推定値が図3の位置情報取得手段307および速度情報取得手段308の出力値として用いられるよう、回路の入出力を制御する。
【0080】
一方、ステップS605で駆動開始位置より2Slit以上移動したと判断した場合には、ステップS606で位置情報を取得する。位置情報には、駆動開始位置からの距離2Slitと、本実施例のメカ構成に応じて定めたバックラッシュ量、すなわち、駆動系のギアの遊びに相当するコードホイール116のスリット数、たとえば63Slitを加算したものを位置情報とする。
【0081】
続いてステップS607で速度情報をバックラッシュ制御がOFFの場合のステップS604の処理と同様に、エンコーダセンサの値より決定する。ステップS608ではバックラッシュ制御をOFFにする。この処理により、この後、続く駆動制御では、速度情報、および位置情報は全てエンコーダセンサの情報より決定されることになる。
【0082】
上記のステップS610、ステップS608の処理の後、ステップS611で位置情報、および速度情報取得処理を終了する。
【0083】
再び図5において、ステップS507で位置情報、および速度情報を取得後、ステップS508で上述のP(比例)制御を行ない、速度指令値を算出する。ステップS509でPID制御を行ない、モータへの出力を行なう。
【0084】
ステップS510では停止判定を行ない、位置情報が目標位置に到達していなければ、ステップS506にループし、再度一連の処理を実行する。また、ステップS510で目標位置に到達している場合には、ステップS511でモータ停止処理を行い、ステップS512でモータ駆動処理を終了する。
【0085】
上述のように、本実施例によれば、モータを正転/逆転させて記録用紙の搬送を行なう記録装置において、用紙搬送用モータを前回の駆動方向と反対方向に反転駆動する場合、エンコーダセンサにより所定量モータが駆動されたことを検出していない間は駆動位置情報および速度情報を推定処理により発生して用紙搬送用モータの駆動制御に用い、一方、エンコーダセンサにより所定量モータが駆動されたことを検出したら、反転駆動開始時点からの搬送量とバックラッシュ量を加算した値を駆動位置情報として用いるとともに、エンコーダセンサの出力に基づき決定した値を速度情報として用いて用紙搬送用モータの駆動を制御するようにしているので、バックラッシュが発生した区間でも、安定した用紙搬送を行なうことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、記録用紙を搬送する搬送用モータと、搬送用モータの駆動力を記録用紙に伝達するギアを含む駆動系を有し、この駆動系の途中に搬送用モータの回転状態を検出するエンコーダセンサが設けられる記録装置、記録装置の制御方法、および記録装置の制御プログラムにおいて実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明を採用したプリンタの要部構成を示した説明図である。
【図2】図1のプリンタの制御系の構成を示したブロック図である。
【図3】図1のプリンタの制御系の機能を示した模式図である。
【図4】図1のプリンタのモータ制御プロファイルを示した説明図である。
【図5】図1のプリンタの制御手順を示したフローチャート図である。
【図6】図5中の位置情報および速度情報の取得処理を詳細に示したフローチャート図である。
【符号の説明】
【0088】
101 記録ヘッド
102 キャリッジ
103 ガイドシャフト
105 駆動モータ
107 用紙搬送用モータ
110 搬送ローラ
111 ピンチローラ
113 排紙ローラ
115 記録用紙
201 CPU
202 ROM
203 RAM
204 インターフェース
205 EEPROM
206 モータコントローラ
207 記録ヘッドコントローラ
209 バスライン
212 表示パネル
213 ヘッドセンサ
305 用紙搬送用DCモータ
307 位置情報取得手段
308 速度情報取得手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録用紙を搬送する搬送用モータと、前記搬送用モータの駆動力を記録用紙に伝達するギアを含む駆動系と、前記搬送用モータの回転状態を検出するエンコーダセンサを有し、前記エンコーダセンサの出力から検出される駆動位置情報および速度情報に基づき前記搬送用モータの駆動を制御する記録装置において、
前記搬送用モータを前回の駆動方向と反対方向に反転駆動する場合、前記エンコーダセンサにより所定量前記搬送用モータが駆動されたことを検出していない間は前記駆動位置情報および前記速度情報を推定処理により発生して前記搬送用モータの駆動制御に用い、一方、前記エンコーダセンサにより所定量前記搬送用モータが駆動されたことを検出したら、反転駆動開始時点からの搬送量とバックラッシュ量を加算した値を前記駆動位置情報として用いるとともに、前記エンコーダセンサの出力に基づき決定した値を前記速度情報として用いて前記搬送用モータの駆動を制御する制御手段を有することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
記録用紙を搬送する搬送用モータと、前記搬送用モータの駆動力を記録用紙に伝達するギアを含む駆動系と、前記搬送用モータの回転状態を検出するエンコーダセンサを有し、前記エンコーダセンサの出力から検出される駆動位置情報および速度情報に基づき前記搬送用モータの駆動を制御する記録装置の制御方法において、
前記搬送用モータを前回の駆動方向と反対方向に反転駆動する場合、前記エンコーダセンサにより所定量前記搬送用モータが駆動されたことを検出していない間は前記駆動位置情報および前記速度情報を推定処理により発生して前記搬送用モータの駆動制御に用い、一方、前記エンコーダセンサにより所定量前記搬送用モータが駆動されたことを検出したら、反転駆動開始時点からの搬送量とバックラッシュ量を加算した値を前記駆動位置情報として用いるとともに、前記エンコーダセンサの出力に基づき決定した値を前記速度情報として用いて前記搬送用モータの駆動を制御する制御過程を含むことを特徴とする記録装置の制御方法。
【請求項3】
記録用紙を搬送する搬送用モータと、前記搬送用モータの駆動力を記録用紙に伝達するギアを含む駆動系と、前記搬送用モータの回転状態を検出するエンコーダセンサを有し、前記エンコーダセンサの出力から検出される駆動位置情報および速度情報に基づき前記搬送用モータの駆動を制御する記録装置の制御プログラムにおいて、
前記搬送用モータを前回の駆動方向と反対方向に反転駆動する場合、前記エンコーダセンサにより所定量前記搬送用モータが駆動されたことを検出していない間は前記駆動位置情報および前記速度情報を推定処理により発生して前記搬送用モータの駆動制御に用い、一方、前記エンコーダセンサにより所定量前記搬送用モータが駆動されたことを検出したら、反転駆動開始時点からの搬送量とバックラッシュ量を加算した値を前記駆動位置情報として用いるとともに、前記エンコーダセンサの出力に基づき決定した値を前記速度情報として用いて前記搬送用モータの駆動を制御する制御過程を含むことを特徴とする記録装置の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−168976(P2007−168976A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−368939(P2005−368939)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】