説明

記録装置および記録制御方法

【課題】データファイルを記録媒体に保存し損じることを抑制する技術を提供する。
【解決手段】一時記憶部40は、データを受信して保持する。記録制御部22は、一時記憶部40の保持するデータを、第1記録媒体と第2記録媒体とにファイル形式で記録する。ここで記録制御部22は、第2記録媒体へのデータ記録の準備が整う前に開始された第1記録媒体へのデータの記録中に、第2記録媒体へのデータ記録の準備が整った場合、第1記録媒体に記録中のファイルをクローズさせるとともに、第1記録媒体と第2記録媒体との双方にデータの記録を開始するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置および記録制御方法に関し、特に複数の記録媒体に同時にデータを記録するための記録装置および記録制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
映像および音声データをリアルタイムで多重化をして生成したファイルを複数の記録媒体に記録する記録装置が存在する。このような装置の中には、長時間記録のために複数の記録媒体を直列的に順番に使用する、いわゆる通常記録を行う装置と、複数の記録媒体を同時に使用することでバックアップをリアルタイム生成する、いわゆる同時記録を行う装置とが存在する。
【0003】
これらの装置で記録されるコンテンツは、汎用的なPC(Personal Computer)で取り扱い可能なファイルに格納されることが通常である。また、PC上で動作する編集ソフトウェアで取り扱うことができるように、所定の規格に基づいて構造化されたファイルが生成される。ひとつのコンテンツは単一のファイルに格納される必要はなく、例えばファイルシステムの制限等の何らかの制限によって、複数のファイルをひとつのコンテンツとして扱う場合もある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−273327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
記録装置のユーザの利便性の観点から、品質と性能の安定性とが保証された高価な記録媒体のみならず、入手が容易で安価なコンシューマ向けの記録媒体も記録装置がサポートすることが求められる。しかしながら、コンシューマ向けメディアの品質や性能は、製造メーカーや製造ロット、または製品ラインナップ等によって大きくばらつくこともある。その結果、ユーザが同時記録の実行を望んでいても、場合によっては一つの記録媒体のみが記録可能な状況も起こりうる。そのような状況下においても、データを可能な限り記録媒体に記録し、データ消失を抑制する技術が求められている。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、データファイルを記録媒体に保存し損じることを抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のある態様は記録装置である。この装置は、データを取得して保持する一時記憶部と、前記一時記憶部の保持するデータを、第1記録媒体と第2記録媒体とにファイル形式で記録する記録制御部とを含む。ここで前記記録制御部は、第2記録媒体へのデータ記録の準備が整う前に開始された第1記録媒体へのデータの記録中に、第2記録媒体へのデータ記録の準備が整った場合、第1記録媒体に記録中のファイルをクローズさせるとともに、第1記録媒体と第2記録媒体との双方にデータの記録を開始するように制御する。
【0008】
本発明の別の態様も記録装置である。この装置は、データを取得して保持する一時記憶部と、前記一時記憶部の保持するデータを、第1記録媒体と第2記録媒体とにファイル形式で記録する記録制御部とを含む。ここで前記記録制御部は、第1記録媒体と第2記録媒体とにデータを記録中に第2記録媒体の容量が許容量に達した場合、第1記録媒体と第2の記録媒体との双方に記録中のファイルをクローズさせるとともに、新たなファイルにデータの記録を開始するように制御する。
【0009】
本発明のさらに別の態様は、記録制御方法である。この方法は、データを取得して一時記憶部に保持するデータ保持ステップと、一時記憶部の保持するデータを、第1記録媒体と第2記録媒体とにファイル形式で記録する記録制御ステップとをプロセッサに実行させる。ここで記録制御ステップは、第2記録媒体へのデータ記録の準備が整う前に開始された第1記録媒体へのデータの記録中に、第2記録媒体へのデータ記録の準備が整った場合、第1記録媒体に記録中のファイルをクローズさせるとともに、第1記録媒体と第2記録媒体との双方にデータの記録を開始するように制御する。
【0010】
本発明のさらに別の態様も、記録制御方法である。この方法は、データを取得して一時記憶部に保持するデータ保持ステップと、一時記憶部の保持するデータを、第1記録媒体と第2記録媒体とにファイル形式で記録する記録制御ステップとをプロセッサに実行させる。ここで前記記録制御ステップは、第1記録媒体と第2記録媒体とにデータを記録中に第2記録媒体の容量が許容量に達した場合、第1記録媒体と第2の記録媒体との双方に記録中のファイルをクローズさせるとともに、新たなファイルにデータの記録を開始するように制御する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、データファイルを記録媒体に保存し損じることを抑制する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態に係る記録装置の全体構成を模式的に示す図である。
【図2】実施の形態に係る記録装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【図3】実施の形態に係る記録装置における、同時記録モードの動作の流れを示すフローチャートである。
【図4】記録部が扱う記録媒体の残量が所定の残量以下となる前後における、記録部の動作を説明する図である。
【図5】記録部に発生したエラーの前後における、記録部の動作を説明する図である。
【図6】単一記録中の記録部が同時記録モードに移行する前後における、記録部の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、実施の形態に係る記録装置100の全体構成を模式的に示す図である。記録装置100は、ユーザインタフェース10、制御部20、記録部30、一時記憶部40、信号処理部50、および信号入力部60を含む。
【0014】
信号入力部60は、映像や音声等の時間的に連続するデータの入力を受け付ける。信号処理部50は、信号入力部60が取得したデータを処理して記録媒体に記録するためのデータを生成する。例えば、信号入力部60が取得したデータが映像データの場合、信号処理部50は、取得した映像データをMPEG2(Moving Picture Experts Group 2)で符号化することで、記録媒体に記録するためのデータを生成する。別の例として、信号入力部60が取得したデータが音声データの場合、信号処理部50は、音声データをMP3(MPEG Audio Layer 3)で符号化することで、記録媒体に記録するためのデータを生成する。
【0015】
一時記憶部40は、信号処理部50が生成したデータを記録媒体に格納する前に一時的に格納する。一時記憶部40は、例えば既知のRAM(Random Access Memory)を用いて実現できる。記録部30は、例えばNAND型フラッシュメモリやハードディスクドライブ等の記録媒体に一時記憶部40に格納されたデータを所定のファイル形式で記録する。
【0016】
実施の形態に係る記録装置100は、一時記憶部40に格納されたデータを複数の記録媒体に、直列的に順番に格納する通常記録モードと、複数の記録媒体に同時に格納することでバックアップをリアルタイムで生成する同時記録モードとの記録モードを持つ。このため、記録部30は、第1記録部32と第2記録部34とを含む。以下本明細書において、第1記録部32と第2記録部34とを特に区別しない場合は、両者を含めて単に「記録部30」という。
【0017】
ユーザインタフェース10は、記録装置100を利用するユーザからの指示を受け付けたり、記録装置100からの通知をユーザに表示したりする。これは例えばキーボードやマウス、モニタ、タッチパネル等の既知のデバイスを用いて実現できる。
【0018】
制御部20は記録制御部22と検査部24とを含み、記録部30の動作を制御する。記録制御部22は、ユーザインタフェース10を介してユーザから記録装置100の記録モードを取得する。ここで「記録モード」とは、記録装置100が記録媒体にデータを記録するときの方式であり、具体的には上述した「通常記録モード」と「同時記録モード」、および後述する「単一記録モード」を意味する。ユーザから取得した記録モードの指示は、記録制御部22内の図示しないメモリに格納される。
【0019】
検査部24は、記録部30の状態を検査する。ここで「記録部の状態」とは、第1記録部32や第2記録部34が扱う記録媒体が記録可能か否かを示す情報である。例えば、記録部30が扱う記録媒体に空き領域が少なかったり、記録媒体または記録部30に何らかのエラーが生じたり、あるいは記録媒体が着脱可能な媒体であるときに記録媒体が記録部30に装着されていなかったり、装着された記録媒体の書き込み速度が記録装置100の定める所定の速度未満であったりするような場合に、検査部24は、記録部30が扱う記録媒体が記録不可能であると判断する。
【0020】
図2は、実施の形態に係る記録装置100の動作の流れを示すフローチャートである。本フローチャートにおける処理は、ユーザが記録装置100に記録開始を指示したときに開始する。
【0021】
記録制御部22は、記録装置100の現在の記録モードを確認する(S10)。前述したように、記録モードはユーザインタフェース10を介してユーザから取得し、記録制御部22内のメモリに格納されている。ユーザからの記録モードの指示を受けていない場合、記録制御部22は標準モードとして「同時記録モード」を採用する。このため標準モードは記録装置100の製造時に製造者によって設定される。なお、標準モードを通常記録モードと同時記録モードとのいずれかにするかは、ユーザは自由に設定を変更することができる。
【0022】
記録モードが通常記録モードの場合(S12の通常記録モード)、記録制御部22は、記録部30に通常記録を実行させる(S16)。具体的には、第1記録部32と第2記録部34とが両方とも記録可能な場合、まず第1記録部32に一時記憶部40に格納されたデータを記録媒体に記録させる。検査部24が、第1記録部32が扱う記録媒体が記憶容量の許容量に達したことを検知した場合、記録制御部22は、第1記録部32が記録中のデータファイルをクローズするとともに、第2記録部34に一時記憶部40に格納されたデータを記録媒体に記録することを開始させる。
【0023】
これにより、第1記録部32が記録するデータファイルと第2記録部34が記録するデータファイルとに格納されるデータは、連続的で途切れることなくつながる。また、ふたつの記録媒体に直列に一時記憶部40に格納されたデータを記録することにより、撮影時間の長い映像データ等の大きなサイズのデータを記録することができる点で有利である。
【0024】
記録モードが同時記録モードの場合(S12の同時記録モード)、記録制御部22は、記録部30に同時記録を実行させる(S14)。
【0025】
図3は、実施の形態に係る記録装置100における、同時記録モードの動作の流れを示すフローチャートであり、図2におけるステップS14を詳細に説明する図である。
【0026】
検査部24は、第1記録部32と第2記録部34との状態を検査する(S18)。同時記録が可能な場合、すなわち第1記録部32が扱う記録媒体と第2記録部34が扱う記録媒体との双方とも記録可能な場合(S20のY)、記録制御部22は、記録部30に一時記憶部40に格納されたデータを同時記録させる(S22)。具体的には、記録制御部22は、第1記録部32と第2記録部34との双方に一時記憶部40に格納されたデータを同時に記録させる。
【0027】
記録部30が同時記録を実行している間に、記録すべきデータが一時記憶部40からなくなった場合(S24のY)、記録制御部22は記録部30に同時記録を終了させる。記録すべきデータが一時記憶部40に存在する場合(S24のN)、検査部24は、記録部30の状態を検査する(S26)。
【0028】
検査の結果、第1記録部32の扱う記録媒体と第2記録部34が扱う記録媒体との双方の記録媒体における記録可能な領域の残量が所定量以下の場合(S28のN)で、かつ、第1記録部32と第2記録部34との双方ともエラーが存在しない場合(S30のN)、ステップS22に戻って記録制御部22は記録部30に同時記録を継続させる。
【0029】
ここで、記録媒体の記録可能な領域の残量における「所定量」とは、記録制御部22が記録部30に記録中のファイルをクローズさせるか否かを判断するための基準量であり、例えば、記録媒体の記憶容量の1%である。もし、第1記録部32の扱う記録媒体または第2記録部34が扱う記録媒体のいずれか一方の残量が所定量以下となった場合(S28のY)、記録制御部22は、第1記録部32が記録中のファイルと第2記録部34が記録中のファイルとの双方をクローズさせる(S34)。
【0030】
説明の便宜上、第2記録部34が扱う記録媒体の残量が所定量以下となったとする。このとき、記録制御部22は、第2記録部34が扱う記録媒体が記憶可能な許容量となるタイミングでファイルをクローズする。記録制御部22は、第1記録部32が扱う記録媒体の記憶領域の残量が十分である場合であっても、第2記録部34にファイルをクローズさせると同時に、第1記録部32に記録中のファイルもクローズさせる。
【0031】
第1記録部32と第2記録部34との双方がファイルをクローズしている間、一時記憶部40は、信号処理部50から取得したデータを保持し続ける。記録制御部22は、第1記録部32に記録中のファイルをクローズさせた後、すぐに新しいファイルに記録を再開させる(S36)。このとき、記録制御部22は、一時記憶部40に保持されたデータのうち、ファイルをクローズした直後のデータから記録を再開させる。これにより、同時記録が可能な間は、第1記録部32が扱う記録媒体と第2記録部34が扱う記録媒体とに同一のファイルが生成される。第2記録部の容量がいっぱいとなった後は、第1記録部32が扱う記録媒体にのみ新たなファイルが生成されるが、第1記録部32が扱う記録媒体に生成されるふたつのファイルに格納されるデータは、連続的で途切れることなく繋がる。
【0032】
第1記録部32と第2記録部34とのいずれかにエラーが発生した場合(S30のY)、記録制御部22は、エラーが発生した方の記録部の動作を停止する(S32)。ここで「エラー」とは、記録媒体の記憶残量がなくなる以外の理由で記録部30がデータの記録を続行できなくなった状態を意味する。検査部24は、記録媒体の記録残量は事前に予測することができる。このため、「エラー」とは、記録制御部22が事前に予測することのできない理由で記録部30がデータの記録を続行できなくなった状態をいうこともできる。具体的には、上述したとおり、記録媒体に何らかの不具合が発生したり、ユーザが記録媒体を記録部30から取り出したり、あるいは、記録部30のハードウェアに不具合が発生したりする場合である。
【0033】
説明の便宜上、第2記録部34が扱う記録媒体の容量が許容量に達する前に第2記録部34にエラーが発生したとする。この場合、記録制御部22は、第2記録部34の動作を停止させるが(S32)、エラーの発生していない第1記録部32に、記録中のファイルをクローズさせることはしない。記録部30にエラーが発生した場合、記録部30の扱う記録媒体または記録部30のハードウェアが、ファイルの記録中にアクセスを発生させることは、動作を保証することができずリスクが高い。このため、エラーが発生した記録部30の記録媒体は放置し、その旨をユーザインタフェース10の図示しないモニタを介して通知するのが望ましい。第1記録部32は、第2記録部34で発生したエラーとは関係なく、ひとつのファイルにデータの記録を継続する。
【0034】
ステップS18に戻り、検査部24は、記録部30の状態を検査する。第2記録部34の扱う記録媒体の記録残量がなくなっていたり、あるいは第2記録部34にエラーが発生したりして記録部30が同時記録を実行できない場合(S20のN)、記録制御部22は、第1記録部32に単一記録を実行させる(S38)。
【0035】
ここで「単一記録」とは、ユーザの指示が同時記録となっている場合に何らかの理由で記録部30が同時記録を実行できないときに、記録可能な記録媒体に単独で記録を行う記録モードを意味する。記録部30に単一記録を実行させることにより、同時記録は実行できなくても最低限ひとつのファイルにデータを記録することで、記録媒体に記録すべきデータの消失を防ぐことができる。
【0036】
第1記録部32が単一記録を実行中に、記録すべきデータが一時記憶部40からなくなった場合(S40のY)、記録制御部22は第1記録部32に単一記録を終了させる。記録すべきデータが一時記憶部40に存在する場合(S40のN)、検査部24は、記録部30の状態を検査する(S42)。
【0037】
ユーザが、記憶残量がなくなった記録媒体に代えて新しい記録媒体を第2記録部34に挿入したり、第2記録部34で発生したエラーが復旧したりする等の理由によって記録部30が同時記録可能となると(S44のY)、記録制御部22は第1記録部32に記録中のファイルをクローズさせる(S46)。その後すぐに、記録制御部22は記録部30に同時記録を開始させる(S48)。これにより、同時記録が可能となるとすぐに、第1記録部32が扱う記録媒体と第2記録部34が扱う記録媒体とに同一のファイルが生成され、リアルタイムにデータのバックアップが開始される。また、第1記録部32が扱う記録媒体に生成されるふたつのファイルに格納されるデータは、連続的で途切れることなく繋がる。
【0038】
検査部24の検査の結果、記録部30が同時記録可能でない場合(S44のN)、ステップ38に戻って記録部30は単一記録を継続する。以上のステップを繰り返すことにより、記録制御部22は記録部30の状態によって同時記録と単一記録とを切り替えながら、一時記憶部40に格納されたデータがなくなるまで、そのデータをファイル形式で保存する。
【0039】
図4は、記録部30が扱う記録媒体の残量が所定の残量以下となる前後における、記録部30の動作を説明する図である。図4において、Tは記録部30が同時記録を開始した時刻、Tは記録部30が記録中のファイルをクローズした時刻、Tは記録を終了した時刻を示す。以下図において、データの格納されたファイルを「クリップ」と呼ぶ。
【0040】
第2記録部34が扱う記録媒体の記憶残量が所定量以下となった後、時刻Tにおいて、記録制御部22は第1記録部32と第2記録部34との双方に記録中のクリップAをクローズさせる。この結果、第1記録部32の扱う記録媒体と第2記録部34が扱う記録媒体とには、時刻Tから時刻Tまでのデータが格納された同一のクリップAが作成される。
【0041】
記録制御部22は、第1記録部32にクリップをクローズさせるとともに、新たなクリップBに一時記憶部40のデータを格納させる。このとき記録制御部22は、クリップAとクリップBとに格納されるデータがシームレスにつながるように、第1記録部32に一時記憶部40に蓄積されているデータを記録させる。
【0042】
この結果、第1記録部32の扱う記録媒体と第2記録部34が扱う記録媒体とはクリップAを共通に格納する。さらに、第1記録部32が扱う記録媒体にはクリップAに格納されたデータとシームレスにつながる時刻Tから時刻Tまでのデータが格納されたクリップBが格納される。
【0043】
図5は、記録部30に発生したエラーの前後における、記録部30の動作を説明する図である。図5において、Tは記録部30が同時記録を開始した時刻、Tは記録部30にエラーが発生した時刻、Tは記録を終了した時刻を示す。
【0044】
第2記録部34にエラーが発生した後、時刻Tにおいて、記録制御部22は第2記録部34にデータの記録を停止させる。この結果、第2記録部34が扱う記録媒体には時刻Tから時刻Tまでのデータが格納されたクリップDが生成されることになる。クリップDは、エラーの発生した第2記録部34で生成されたファイルであるため、データが正常に書き込まれていない可能性もあり、信頼性に欠ける。このため、記録制御部22は時刻Tにおいて第1記録部32に記録中のクリップをクローズさせることなく、一時記憶部40に格納されたデータの記録を継続させる。その結果、第1記録部32が扱う記録媒体には、時刻Tから時刻Tまでのデータが格納されたクリップCが生成される。
【0045】
第1記録部32が扱う記録媒体と第2記録部34が扱う記録媒体とにはそれぞれ異なるクリップが生成されることになるが、上述したように、第2記録部34が扱う記録媒体のクリップは信頼性に欠けるため、バックアップとして扱わない方が好ましい。そこで、第1記録部32が扱う記録媒体には、はじめから同時記録をしない場合と同様に、時刻Tから時刻Tまでのデータが格納されたクリップCを生成するように記録制御部22は記録部30を制御する。
【0046】
図6は、単一記録中の記録部30が同時記録モードに移行する前後における、記録部30の動作を説明する図である。図6において、Tは記録部30が同時記録を開始した時刻、Tは記録部30が同時記録モードに移行した時刻、Tは記録を終了した時刻を示す。
【0047】
記録装置100のユーザが同時記録モードをしている場合であっても、第2記録部34が扱う記録媒体へのデータ記録の準備が整う前である場合、記録制御部22は、第1記録部32にデータの記録を開始させる。その後、第1記録部32が記録媒体にデータを記録中に、第2記録部34が扱う記録媒体へのデータ記録の準備が整った場合、その後の時刻Tにおいて、記録制御部22は第1記録部32が記録中のクリップEをクローズさせるとともに記録部30に同時記録を開始させる。この結果、第1記録部32が扱う記録媒体には、時刻Tから時刻Tまでのデータが記録されたクリップEと、時刻Tから時刻Tまでのデータが記録されたクリップFとが生成される。
【0048】
一方、第2記録部34が扱う記録媒体には、時刻Tから時刻Tまでのデータが記録されたクリップFが生成される。これにより、第1記録部32の扱う記録媒体と第2記録部34が扱う記録媒体とはクリップFを共通に格納する。さらに、第1記録部32が扱う記録媒体に格納されたクリップEとクリップFとは、格納するデータとシームレスにつながる。
【0049】
以上の構成による動作は以下のとおりである。ユーザはユーザインタフェース10を介して記録装置100の動作モードを設定する。動作モードが「同時記録モード」の場合、記録装置100内の記録制御部22は、同時記録が可能な限り記録部30に同時記録を実行させ、ひとつの記録媒体しか利用できない場合には、記録部30に単一記録を実行させる。
【0050】
この結果、同時記録が行われた間は、ふたつの記録媒体に同一のクリップが生成され、単一記録が行われた間は、同時記録が行われたクリップとシームレスにつながるクリップが生成される。
【0051】
このように、実施の形態に係る記録装置100によれば、ふたつの記録媒体に可能な限り同時記録を行うことにより、仮に一方の記録媒体が何らかの理由で使用できない場合であっても、もう一方の記録媒体中のデータは活用できることになる。このように、同時記録を可能な限り「データをバックアップすること」を目的として用いることで、ユーザに安心感を提供することが可能となる。例えば、同時記録をファイルの複製のために使用する場合と比較して、ユーザの安心感は大きい。ファイルの複製を目的とすると、例えばエラーのあった記録媒体を再利用することも考えられ、信頼性の点で欠ける場合もあるからである。
【0052】
以上説明したように、実施の形態によれば、データファイルを記録媒体に保存し損じることを抑制する技術を提供することができる。
【0053】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0054】
例えば、記録媒体はふたつに限らず、3つ以上の記録媒体を有する記録装置の場合であっても本発明は有効である。また、本発明は上記した記録装置100の機能をコンピュータに実現させるためのプログラムを含むものである。これらのプログラムは、記録媒体から読み取られてコンピュータに取り込まれてもよいし、通信ネットワークを介して伝送されてコンピュータに取り込まれてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 ユーザインタフェース、 20 制御部、 22 記録制御部、 24 検査部、 30 記録部、 32 第1記録部、 34 第2記録部、 40 一時記憶部、 50 信号処理部、 60 信号入力部、 100 記録装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを取得して保持する一時記憶部と、
前記一時記憶部の保持するデータを、第1記録媒体と第2記録媒体とにファイル形式で記録する記録制御部とを含み、
前記記録制御部は、第2記録媒体へのデータ記録の準備が整う前に開始された第1記録媒体へのデータの記録中に、第2記録媒体へのデータ記録の準備が整った場合、第1記録媒体に記録中のファイルをクローズさせるとともに、第1記録媒体と第2記録媒体との双方にデータの記録を開始するように制御することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
データを取得して保持する一時記憶部と、
前記一時記憶部の保持するデータを、第1記録媒体と第2記録媒体とにファイル形式で記録する記録制御部とを含み、
前記記録制御部は、第1記録媒体と第2記録媒体とにデータを記録中に第2記録媒体の容量が許容量に達した場合、第1記録媒体と第2記録媒体との双方に記録中のファイルをクローズさせるとともに、新たなファイルとしてデータの記録を開始するように制御することを特徴とする記録装置。
【請求項3】
前記記録制御部は、第2記録媒体の容量が許容量に達する前に第2記録媒体への記録にエラーが生じた場合、第1記録部に記録中のファイルをクローズさせることなくデータの記録を継続するように制御することを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
データを取得して一時記憶部に保持するデータ保持ステップと、
一時記憶部の保持するデータを、第1記録媒体と第2記録媒体とにファイル形式で記録する記録制御ステップとを含み、
前記記録制御ステップは、第2記録媒体へのデータ記録の準備が整う前に開始された第1記録媒体へのデータの記録中に、第2記録媒体へのデータ記録の準備が整った場合、第1記録媒体に記録中のファイルをクローズさせるとともに、第1記録媒体と第2記録媒体との双方にデータの記録を開始するように制御することをプロセッサに実行させることを特徴とする記録制御方法。
【請求項5】
データを取得して一時記憶部に保持するデータ保持ステップと、
一時記憶部の保持するデータを、第1記録媒体と第2記録媒体とにファイル形式で記録する記録制御ステップとを含み、
前記記録制御ステップは、第1記録媒体と第2記録媒体とにデータを記録中に第2記録媒体の容量が許容量に達した場合、第1記録媒体と第2記録媒体との双方に記録中のファイルをクローズさせるとともに、新たなファイルとしてデータの記録を開始するように制御することをプロセッサに実行させることを特徴とする記録制御方法。
【請求項6】
前記記録制御ステップは、第2記録媒体の容量が許容量に達する前に第2記録媒体への記録にエラーが生じた場合、第1記録部に記録中のファイルをクローズさせることなくデータの記録を継続するように制御することを特徴とする請求項5に記載の記録制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−165186(P2012−165186A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24059(P2011−24059)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】