説明

記録装置および記録媒体の搬送制御方法

【課題】上流側への記録媒体の搬送において、より正確に搬送することができる記録装置を提供する。
【解決手段】記録媒体をセンサの検出位置から前記第1の方向に向けて所定距離だけ搬送させた後、第2の方向に向けて記録媒体の先端がセンサによって検出されるまで記録媒体を第2の方向に向けて搬送させる。また、第2の方向への記録媒体の搬送量と所定距離とを比較し、その比較した結果に基づいて第2の方向への記録媒体の搬送量を補正するための補正処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体を第1の方向と、第1の方向とは逆方向である第2の方向とに搬送することが可能な搬送手段を備えた記録装置および記録媒体の搬送制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、ファクシミリ、インクジェット式プリンタ等の記録装置は、ロール紙あるいは単票紙などの記録媒体を、搬送ローラにより画像記録部まで搬送し、紙素材やプラスチック素材などをはじめとする種々の素材からなる記録媒体に画像を記録する。シリアルタイプのインクジェット方式の記録装置に関しては、搬送ローラによる画像記録部までの記録媒体の搬送と、記録ヘッドが主走査方向に移動しつつインクを吐出して記録を行う記録走査と、を繰り返すことで記録媒体上に画像を完成させる。
【0003】
ポスターなどを記録する大判系のインクジェット方式を用いたプリンタ等の記録装置においては、対応可能な記録媒体の幅は数十インチあり、種類も普通紙、コート紙、光沢紙、フィルム素材など多種多様である。従って、記録装置では、摩擦係数、厚さ、硬さ、柔軟性などの要素が異なる様々な特性の記録媒体に対応しなければならない。また、高精細の画像を形成するためには種々の記録媒体それぞれに最適な搬送量で記録媒体の搬送を行う必要がある。
【0004】
特許文献1に開示されている記録装置では、基準となる記録媒体に対して搬送ローラをN0回回転したときに搬送量センサによって検出した搬送量をL0とする。次いで、記録対象となる記録媒体に対して搬送ローラをN0回回転したときの搬送量を、同様に搬送量センサによって検出する。ここで、基準となる記録媒体の搬送量L0と、記録対象となる記録媒体の搬送量とを比較し、その結果に基づいて記録対象となる記録媒体の搬送量を補正し、最適な搬送量とするように制御する制御方法が記載されている。
【0005】
また、高精細の画像を形成するための色校正である色管理の為のカラーマッチングの手法として、特許文献2に開示されているように画像記録後に搬送ローラにより記録画像を上流側へ逆送り(巻戻し)する動作を行い、搭載したセンサにより記録したパターンを読み取ることで画像の色を補正するための補正値を得る補正手段が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−098550号公報
【特許文献2】特開2008−254221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1では、下流側への記録媒体の搬送時において補正手段により搬送ローラに最適な搬送量で記録媒体を搬送するようにしている。しかしながら、特許文献2に示すように、搬送ローラにより上流側へと搬送する逆搬送において、その逆搬送独自で搬送ローラによる搬送量の最適化を行っていない。すなわち、従来は、上流側への搬送動作を補正するにしても、下流側への搬送の適正化に際して求めた補正値を用いて上流側へ記録媒体の搬送を補正している。このため、下流側への実際の送り量に誤差が生じることがあった。すなわち、下流側に一定の搬送ローラの回転量で搬送を行った搬送量と、同じ搬送ローラの回転量で上流側へ搬送を行ったときの実際の搬送量との間に差異が発生することがある。これは、上流側への記録媒体の搬送と、下流側への記録媒体の搬送とで、記録媒体に対する搬送経路からの影響が異なることによる。
【0008】
また、同一の素材からなる記録媒体であっても、幅サイズが異なる場合においては、幅サイズにより搬送ローラとピンチローラとにより狭持したときの保持力が異なることにより下流側への搬送量が異なることもある。この場合には、上記のような記録媒体の搬送方向の違いによって発生する搬送量の差異に加え、前述のような搬送方向の違いによる搬送量の誤差が累積されることとなり、上流側への搬送量と下流側への搬送量との間には、さらに大きな差異が生じることとなる。また、記録媒体の厚さ、素材の摩擦係数など、搬送動作に影響する条件に応じてピンチローラによる保持力を変化させる場合も、下流側への搬送量が異なる場合もある。この場合には、上流側への搬送量にも同様に差異が発生する。
【0009】
このような上流側と下流側への搬送量に差が生じると、特許文献2のように、色校正における画像の読取動作などにおいて、記録部により記録したパターンを記録動作による下流側への搬送量と同じ搬送ローラの回転量で上流側に記録媒体を送っても、センサによりパターンを読み込むときにパターンの位置が所定の位置からずれてしまい、適正な画像の読取ができないという可能性が生じる。
【0010】
本発明は、搬送ローラによる上流側への記録媒体の搬送において、搬送ローラの回転による搬送量と記録媒体の実際の搬送量との誤差を低減し、記録媒体をより正確に搬送することができる搬送機構を備える記録装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0012】
すなわち、本発明の第1の形態は、記録媒体への記録を行う記録部と、供給部から前記記録部へ向かう第1の方向に記録媒体を搬送する第1の搬送動作と該第1の搬送動作とは逆方向である第2の方向に記録媒体を搬送する第2の搬送動作とを行うことが可能な搬送手段と、を備えた記録装置であって、前記記録媒体の先端位置を検出するセンサと、前記搬送手段の駆動を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記記録媒体を前記センサの検出位置から前記第1の方向に向けて所定距離だけ搬送させた後、前記第2の方向に向けて前記記録媒体の先端が前記センサによって検出されるまで前記記録媒体を前記第2の方向に向けて搬送させると共に、当該第2の方向への記録媒体の搬送量と前記所定距離とを比較し、その比較した結果に基づいて前記第2の方向への記録媒体の搬送量を補正するための補正処理を行うことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の第2の形態は、記録媒体への記録を行う記録部と、供給部から前記記録部へ向かう第1の方向に記録媒体を搬送する第1の搬送動作と該第1の搬送動作とは逆方向である第2の方向に記録媒体を搬送する第2の搬送動作とを行うことが可能な搬送手段と、前記記録部より第1の方向における下流側に設けられた記録媒体切断機構と、を備えた記録装置であって、前記記録媒体の先端位置を検出するセンサと、前記搬送手段の駆動を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記記録媒体切断機構によって記録媒体を切断した後、当該切断された記録媒体の先端が前記センサによって検出されるまで前記記録媒体を前記第2の方向に向けて搬送させると共に、当該第2の方向への記録媒体の搬送量と前記記録媒体切断機構による記録媒体の切断位置から前記センサまでの距離とを比較し、その比較した結果に基づいて前記第2の方向への記録媒体の搬送量を補正するための補正処理を行うことを特徴とする。
【0014】
本発明の第3の形態は、記録媒体への記録を行う記録部と、供給部から前記記録部へ向かう第1の方向に記録媒体を搬送する第1の搬送動作と該第1の搬送動作とは逆方向である第2の方向に記録媒体を搬送する第2の搬送動作とを行う記録媒体の搬送制御方法であって、前記記録媒体の先端を検出するセンサの検出位置から前記第1の方向に向けて所定距離だけ搬送させた後、前記第2の方向に向けて前記記録媒体の先端が前記センサによって検出されるまで前記記録媒体を前記第2の方向に向けて搬送させると共に、当該第2の方向への記録媒体の搬送量と前記所定距離とを比較し、その比較した結果に基づいて前記第2の方向への記録媒体の搬送量を補正するための補正処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、搬送ローラにより記録媒体を上流側へ搬送する時に搬送ローラの回転による搬送量と、実際に搬送された搬送量の誤差を低減することが可能になり、記録媒体をより正確に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成を示す模式的断面図である。
【図2】図1の実施形態に係るインクジェット記録装置の制御系の主要部の構成例を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態の制御部において実行される、逆搬送量の補正値設定処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】第2の実施形態の制御部において実行される、逆搬送量の補正値設定処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図を用いて詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成を示す模式的断面図である。ここでは、給紙部(供給部)4に記録媒体としてのロール紙5が装着されている状態を示している。装着されたロール紙5は搬送ローラ1とこれに対向して設けられた従動ローラであるピンチローラ2との間に挟持され、プラテン3上の領域の中で記録ヘッド(記録部)6によって記録が行われる領域(記録領域)へと搬送される。
【0018】
本実施形態における記録ヘッド6は、インクを吐出する複数のノズルの開口部であるインク吐出口が形成されたインクジェット方式の記録ヘッドである。記録ヘッドの各ノズル内にはインクを吐出させるためのエネルギーを発生する吐出エネルギー発生素子が設けられている。この吐出エネルギー発生素子としては、発熱素子(ヒータ)、ピエゾ素子、静電素子、MEME素子などが知られており、いずれを用いてもよい。この記録ヘッドは、インク吐出口が形成された吐出口面が前記記録領域に対向するようにキャリッジ7に搭載されている。
【0019】
キャリッジ7は、キャリッジモータ(図示せず)により主走査方向(図1において紙面と直交する方向)に往復移動を行う。キャリッジ7に搭載された記録ヘッド6は、キャリッジ7と共に主走査方向へと移動しつつ、記録データに従ってインク吐出口からインクを吐出し、所定の長さ(Y方向におけるインク吐出口の配列範囲の幅)毎に画像を形成して行く。この主走査方向への移動と共に行う記録動作(記録走査)と、搬送ローラ1による間欠的な回転動作による一定量毎の搬送動作と、を繰り返すことにより、ロール紙の中の一定の長さ範囲に画像が形成される。
【0020】
また、キャリッジ7にはキャリッジセンサ(CRセンサ)8が搭載されている。このキャリッジセンサ8は、CRセンサ108はキャリッジ7に搭載された記録ヘッドによって記録された位置の検出および記録された画像の読み取りなどを行う。本実施形態では、CCDなどの撮像素子によって構成されている。
【0021】
記録ヘッド7と対向するプラテン3上の領域である記録領域PAの下流側には、記録媒体を切断する媒体切断手段としてのカッター機構(記録媒体切断機構)9が設けられている。記録媒体としてロール紙5が装着されている場合、このカッター機構9は、画像が記録された画像形成部分をロール紙5から切り離す。搬送ローラ1は図示しないエンコーダで位置を検出しながら不図示の搬送モータの駆動力によって回転し、その回転によって記録媒体の搬送を行う。さらに、給紙部4にはセットされたロール紙の巻き径を検出する巻き径検出機構11、ロール紙にかかる負荷を変更できる負荷切替機構12が設けられている。この負荷切替機構12としては、例えば、プラテン3上のロール紙を平坦な状態に保つためにロール紙にバックテンションを発生させるバックテンション発生機構がある。通常、このバックテンション発生機構には、発生させるバックテンションの大きさを適宜切り替える切替機構が設けられており、この切替機構が負荷切替機構として作用することとなる。なお、この負荷切替機構および巻径検出機構は周知であるためこれらの詳細説明は省略する。
【0022】
図2は本発明の実施形態に係わるインクジェット記録装置における制御系の主要部の構成例を示す。ここで、100は本実施形態に係わるインクジェット記録装置の各駆動部の制御を行う制御部である。制御部100はCPU101、ROM102、EEPROM103およびRAM104を備え、本願発明の制御手段として機能する。CPU101は、後述する処理手順を含め、記録動作等に関係する処理のための種々の演算、判別および制御を行うほか、画像データ、記録データおよびテストパターンデータなどについてのデータ処理を行うものである。
【0023】
ROM102は、CPU101が実行する処理手順に対応したプログラムや、その他の固定データなどを格納する。EEPROM103は不揮発性メモリであり、所定の情報を記録装置の電源オフ時にも保持しておくために用いられる。特に本実施形態においては、予め定められた複数種の記録媒体それぞれの搬送量に関する補正値を保持するためにも用いられる。RAM104は、外部から供給された画像データや、これを装置構成に合わせて展開した記録データを一時的に格納するほか、CPU101による演算処理のワークエリアとして機能する。
【0024】
また、上記の制御部には、インターフェース(I/F)105、エンコーダ106、シートセンサ107、CRセンサ108、モータドライバ109、ヘッド駆動回路110およびカッター機構などが接続されている。インターフェース(I/F)105は、外部のホスト装置1000と接続する機能を有し、ホスト装置1000との間で所定のプロトコルに基づいて双方向の通信を行う。なお、ホスト装置1000はコンピュータその他の公知の形態を有し、本実施形態の記録装置で記録する画像のデータの供給源をなすとともに、その記録動作を行わせるためのプログラムであるプリンタドライバがインストールされている。すなわち、プリンタドライバからは、画像データや、これを記録する記録媒体の種別情報といった記録設定情報、および記録装置の動作制御を行わせる制御コマンドが送られるようになっている。
【0025】
エンコーダ106は記録ヘッド6の主走査方向の位置を検出するものである。シートセンサ107は記録媒体搬送路上の適宜の位置に設けられている。このシートセンサ107を用いて記録媒体の先後端を検出することにより、記録媒体の搬送(副走査)位置を知ることができる。CRセンサ108は、記録媒体の先端位置の検出、画像の読み取りなどを行うセンサである。制御部100にはさらに、モータドライバ109と、記録ヘッド6に設けられた吐出エネルギー発生素子を駆動するヘッド駆動回路110とが接続されている。モータドライバ109は、制御部100の制御のもとで、記録媒体の搬送駆動源をなす搬送モータ、キャリッジ7の移動の駆動源をなす主走査モータ、カッター機構のメス駆動モータおよびその他の各種モータの駆動を行う。ヘッド駆動回路110は制御部100の制御のもとで記録ヘッド112の駆動を行い、インクの吐出動作を行わせる。
【0026】
次に、本実施形態により実行される制御動作を説明する。
図3は本実施形態の制御部において実行される、逆搬送量の補正値設定処理の手順を示すフローチャートである。図3において、ステップS1では、記録装置に装着されているロール紙5の先端10の位置をキャリッジ7に搭載しているCRセンサ8により検出し、ロール紙5の初期位置を確認する。
【0027】
ステップS2では、ロール紙5を搬送ローラ1により所定の搬送量L0だけY方向に送る(下流側に送る)。この下流側への搬送動作(第1の搬送動作)が行われると、次にステップS3において、搬送ローラ1を逆回転させることによりロール紙5を、第1の方向とは逆方向である第2の方向(上流側の方向)へと戻す逆搬送(第2の搬送動作)を行う。このとき、キャリッジ7に搭載されたCRセンサ8によりロール紙の先端10の位置確認を行いながら逆搬送を行い、先端を検出したところで逆搬送を停止する。この後、ステップS4では、記録媒体の逆搬送量L1をRAM104に格納する。
【0028】
ステップS5では、第2の方向である下流側の方向への搬送量L0と、実際に上流側へと搬送したときの実際の搬送量L1とを比較し、その比較した結果に基づき、上流側への搬送量を補正するための補正値を求める演算L1/L0を行う。ステップS6では求めた補正値をEEPROM103に格納する。これ以降の記録媒体への記録動作時において、上流側への逆搬送を行う時は記録媒体の搬送ローラ1による搬送の基準となる下流側への搬送量に対してこの補正値により補正した搬送量を搬送ローラ1で送る。これにより、記録媒体の位置の把握および位置の設定を正確に行うことが可能となり、記録された画像の読取動作を適切に行うことが可能になる。
【0029】
ところで、本実施形態においては、下流側への搬送ローラ1による搬送は、記録媒体の種類に応じて補正をすることも可能である。すなわち、基準となる記録媒体の搬送量に対し、搬送特性の異なる複数種類の記録媒体それぞれの補正値を予め求めてROM102等に格納しておき、その記録媒体毎の補正値を用いて搬送量を補正することも可能である。この場合にも上記実施形態によれば、逆搬送時において前述のL1/L0の演算によって求めた逆搬送時の補正値を用いた補正処理が行なわれる。従って、上流側への逆搬送においても、下流側への搬送時の補正と同様に各記録媒体に応じた最適な搬送量が算出されることとなり、記録媒体の位置の把握および設定を正確に行うことが可能になる。このため、画像の読取動作を適切に行うことが可能になる。
【0030】
また、本実施形態における上流側への搬送の補正処理は、記録媒体の先端位置の検出動作などが行われる他の処理と合わせて行うことにより、効率的に補正処理を実行することができる。例えば、給紙部4にロール紙5を装着した後、記録待機状態になるまでの間には、ロール紙5の傾きを補正するための補正動作などが行われる。この補正動作中に上述の本実施形態における補正処理を実施することで、補正動作時間を他の処理時間内に行うことが可能となり、処理の効率化を図ることができる。
【0031】
また、記録媒体が上記のようにロール紙5を用いる記録装置の場合、ロール紙5を装着する給紙部4において搬送ローラ1にかかる負荷変動を抑制するため、通常はバックテンションを切り替える機構が設けられている。このバックテンションの切替動作が行われた場合、搬送ローラ1に係る負荷が変動するため、その変動に応じて上述の上流側への逆搬送における補正処理を行うようにすれば、負荷の変動に応じて、より正確な搬送を実現することができる。同様に、記録装置にロール紙の巻き径を検知する機構が設けられている場合は、このロール紙5の巻き径の変化に応じて補正処理を行うことでより正確な搬送を実現することができる。
【0032】
また、搬送ローラ1とピンチローラ2とによる記録媒体の保持力(挟持力)は、ピンチローラ2を搬送ローラ1へ向けて付勢する付勢手段の付勢力を切換える周知の保持力切替機構などによって一般に切替可能となっている。この保持力切替機構によって切換える場合にも、切替えられたピンチローラ2の付勢力毎に上述の補正処理を行い、得られた補正値を用いて上流側への搬送に反映させるようにすれば、より正確な搬送を実現することができる。
【0033】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。なお、この第2の実施形態においても図1及び図2に示す構成を備える。但し、この第2の実施形態では、カッター機構9によって切断される記録媒体の切断位置からキャリッジ7上の先端検知を行うCRセンサ8の検出位置までの距離が、既知の固定値として記録装置に記憶されている。このため、この第2の実施形態では、図4のフローチャートに示すような手順で上流側への搬送量(逆搬送量)の補正値設定処理を行う。
【0034】
まず、ステップS11では、記録動作終了後の記録媒体としてのロール紙5の切断が行われる。このとき、ロール紙5の切断位置から記録媒体の先端位置を検知するCRセンサ8の検出位置までの所定距離はL2(図1参照)として本体ROMに格納されている。次にステップ12では、ロール紙5の切断を行った後、ロール紙5の上流側への搬送(逆搬送)を行う。このとき、キャリッジ7に搭載したCRセンサ8によりロール紙5の先端の確認を行いながら逆搬送を行い、ロール紙5の先端(切断端)を検知したところで搬送を停止する。そしてステップS13では、ロール紙5の逆搬送量L3を格納する。さらにステップ14では、ロール紙5の切断位置からCRセンサ8までの既知の所定距離L2と、実際に上流側へ搬送したときの搬送量L3とに基づき、逆搬送量を補正するための補正値を、L3/L2の演算によって求める。求めた補正値はステップS6においてEEPROM103に記憶する。
【0035】
以上の処理を行った後、記録された画像の読取を行うべく、上流側への逆搬送を行う場合には、上記の処理によって求めた補正値を用いて逆搬送量を補正するように搬送ローラ1の回転を制御する。これにより、上記第1の実施形態と同様に、記録媒体の位置の把握および位置の設定を正確に行うことが可能となり、記録された画像の読取動作を適切に行うことが可能になる。
【0036】
上記各実施形態では、記録ヘッドを記録媒体の搬送方向と交差する方向(主走査方向)へと移動させて記録を行う、いわゆるシリアル型のインクジェット記録装置を例に採り説明した。しかし、本発明は、使用する記録媒体の幅以上の範囲に亘ってノズルを配列した長尺な記録ヘッドを定位置に保持しておき、記録媒体のみを連続的に移動させて記録を行う、いわゆるフルライン型のインクジェット記録装置にも適用可能である。
【0037】
また、上記実施形態では、記録媒体としてロール紙を用いた場合を例に採り説明したが、単票紙(カットシート)などを使用する記録装置にも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 搬送ローラ
7 キャリッジ
8 CRセンサ
9 カッター機構
10 記録媒体先端
100 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体への記録を行う記録部と、
供給部から前記記録部へ向かう第1の方向に記録媒体を搬送する第1の搬送動作と該第1の搬送動作とは逆方向である第2の方向に記録媒体を搬送する第2の搬送動作とを行うことが可能な搬送手段と、
前記記録媒体の先端位置を検出するセンサと、
前記搬送手段の駆動を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記記録媒体を前記センサの検出位置から前記第1の方向に向けて所定距離だけ搬送させた後、前記第2の方向に向けて前記記録媒体の先端が前記センサによって検出されるまで前記記録媒体を前記第2の方向に向けて搬送させると共に、当該第2の方向への記録媒体の搬送量と前記所定距離とを比較し、その比較した結果に基づいて前記第2の方向への記録媒体の搬送量を補正するための補正処理を行うことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記第2の方向への搬送量の補正処理は、前記記録媒体を前記供給部に装着する動作中に行うことを特徴とする、請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記記録媒体は、前記供給部に装着されたロール紙であることを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記第2の方向への搬送量の補正処理は、前記ロール紙の巻径に応じて前記第2の方向への搬送量の補正処理を行うことを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記ロール紙の巻径があらかじめ設定された径になったときに、前記第2の方向への搬送量の補正処理を行うことを特徴とする請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
前記ロール紙にかけられたバックテンションの大きさを切替える機構を有し、前記ロール紙にかけられたバックテンションの設定を変更したとき、前記第2の方向への搬送量の補正処理を行うことを特徴とする請求項3ないし5のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記搬送手段は、搬送ローラと、該搬送ローラとの間に記録媒体を挟持するピンチローラとを備えることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項8】
前記搬送ローラと前記ピンチローラとによって記録媒体を挟持する挟持力を切替える切替機構を備え、前記挟持力を切り替えに応じて前記記録媒体の前記第2の方向への搬送量の補正処理を行うことを特徴とする請求項7に記載の記録装置。
【請求項9】
記録媒体への記録を行う記録部と、供給部から前記記録部へ向かう第1の方向に記録媒体を搬送する第1の搬送動作と該第1の搬送動作とは逆方向である第2の方向に記録媒体を搬送する第2の搬送動作とを行うことが可能な搬送手段と、前記記録部より第1の方向における下流側に設けられた記録媒体切断機構と、を備えた記録装置であって、
前記記録媒体の先端位置を検出するセンサと、
前記搬送手段の駆動を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記記録媒体切断機構によって記録媒体を切断した後、当該切断された記録媒体の先端が前記センサによって検出されるまで前記記録媒体を前記第2の方向に向けて搬送させると共に、当該第2の方向への記録媒体の搬送量と前記記録媒体切断機構による記録媒体の切断位置から前記センサまでの距離とを比較し、その比較した結果に基づいて前記第2の方向への記録媒体の搬送量を補正するための補正処理を行うことを特徴とする記録装置。
【請求項10】
記録部へ向かう第1の方向に記録媒体を搬送する第1の搬送動作と、該第1の搬送動作とは逆方向である第2の方向に記録媒体を搬送する第2の搬送動作とを行う際に、
前記記録媒体の先端を検出するセンサの検出位置から前記第1の方向に向けて所定距離だけ搬送させた後、前記第2の方向に向けて前記記録媒体の先端が前記センサによって検出されるまで前記記録媒体を前記第2の方向に向けて搬送させると共に、当該第2の方向への記録媒体の搬送量と前記所定距離とを比較し、比較の結果に基づいて前記第2の方向への記録媒体の搬送量を補正することを特徴とする記録媒体の搬送制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−28004(P2013−28004A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164110(P2011−164110)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】