説明

記録装置および電磁変換素子の位置決め方法

【課題】マルチスパイラルパターン等のセルフサーボライト(SSW)用中間パターンに対しヘッド位置決めする際に、従来の補助サーボパターン(SSW開始位置にヘッド位置決めするための専用パターン)を不要とする。
【解決手段】SSWを生成するSSWクロック生成部は、SSWクロック生成後、電磁変換素子をSSW開始位置となる記録媒体14のSSW用中間パターン55へオントラックさせるオントラック部によるオントラックが正常に終了するまで、中間パターン55に対応した復調ゲート間隔を回転同期成分に合わせて逐次変化させてスパイラル再生波形を捕捉する。これにより、マルチスパイラルパターン等のSSW用中間パターン55に対しヘッド位置決めする際に、記録媒体14には従来の補助サーボパターンを不要とすることが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、記録装置および電磁変換素子の位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク駆動装置の分野では、いわゆるスパイラルサーボは広く知られている。このスパイラルサーボでは、磁気ディスクの表面にセルフサーボライト用の中間パターンであるマルチスパイラルパターンが確立される。マルチスパイラルパターンは、記録域の最内周から最外周までスパイラル線に沿って延びている。そして、このようなスパイラル線は、記録域の全域で円周線に対し規定の傾斜角を維持している。
【0003】
ハードディスク駆動装置では、磁気ディスクの回転に応じてヘッド(電磁変換素子)がマルチスパイラルパターンから磁気情報を読み取る。そして、読み取られた磁気情報に基づき、ヘッド(電磁変換素子)が磁気ディスクの半径方向に位置決めされる。こうして位置決めされたヘッド(電磁変換素子)は、磁気ディスク上のサーボセクターにサーボパターンを書き込む。
【0004】
マルチスパイラルパターンは、高周波域を備えている。高周波域では円周方向に交互に磁極が配列される。電磁変換素子が高周波域を横切ると、高周波の再生信号が出力される。同時に、マルチスパイラルパターンには円周方向に所定の間隔で同期マークが形成されている。同期マークは高周波の再生信号同士の間にギャップを形成する。ギャップ同士の間隔はトラック幅に相当する。同期マークの働きで1記録トラックごとにヘッド(電磁変換素子)は位置決めされることができる。
【0005】
前述のスパイラルサーボでは、ヘッド(電磁変換素子)がマルチスパイラルパターンを横切る際に復調されるヘッド(電磁変換素子)の微小変位のみに基づきヘッド(電磁変換素子)は位置決めされる。したがって、スパイラルパターン間でサーボパターンの書き込みが開始される際に、磁気ディスク上には限定された領域でサーボパターン間にサーボパターン(マルチスパイラルパターンとは異なる通常のサーボパターンすなわち補助サーボパターン)が確立されなければならない。
【0006】
すなわち、従来は、SSW(Self Servo Write)開始位置にヘッド(電磁変換素子)を位置決めするために、先ず磁気ディスクの一部に生成したSEEDパターン(補助サーボパターン)に基づき書き込みの開始位置にヘッド(電磁変換素子)を位置決めする。その後、サーボ情報の検出元は、補助サーボパターンとマルチスパイラルパターンのRRO(Repetitive Run−Out)との相似性を利用して復調ゲートタイミングをマルチスパイラル再生波形に合わせて復調する。こうしてヘッド(電磁変換素子)は、補助サーボパターンからマルチスパイラルパターンにオントラック対象パターンを乗り換えることにより、マルチスパイラルパターンに基づきオントラックされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7002761号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来技術においては、1サンプリング周期の中で、補助サーボパターンとマルチスパイラルパターンのサーボ処理を同時に実行する必要があり、サーボコントローラのCPU負荷およびメモリ容量が増大するという欠点があった。
【0009】
また、最終パターンの書込み範囲が補助サーボパターンの範囲だけ狭まるという問題があり、特に近年のサンプリング周期の短縮化に際し無視できない状況にある。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、マルチスパイラルパターン等のセルフサーボライト(SSW)用中間パターンに対しヘッド位置決めする際に、従来の補助サーボパターン(SSW開始位置にヘッド位置決めするための専用パターン)を不要とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態の記録装置は、セルフサーボライト用のマルチスパイラルパターンで形成される中間パターンを有して回転駆動される記録媒体と、電磁変換素子を搭載し、ボイスコイルモーターに対するVCM電流によって回転し、前記電磁変換素子を前記記憶媒体上の所定位置に位置づけるアームと、を備える。また、実施形態の記録装置は、前記電磁変換素子が前記中間パターンの回転同期成分を検出する位置に前記アームを位置付ける位置付け部と、前記検出された回転同期成分に基づいて、SSW(Self Servo Write)クロックを生成するSSWクロック生成部と、前記生成されたSSWクロックに基づいて、前記電磁変換素子をSSW開始位置となる前記中間パターンへオントラックさせるオントラック部と、を備える。そして、実施形態の記録装置のSSWクロック生成部は、前記オントラック部によるオントラックが正常に終了するまで、前記中間パターンに対応した復調ゲート間隔を回転同期成分に合わせて逐次変化させてスパイラル再生波形を捕捉する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施形態にかかるハードディスク駆動装置(HDD)の内部構造を概略的に示す平面図である。
【図2】図2は、トラッキングサーボの制御系を概略的に示すブロック図である。
【図3】図3は、マルチスパイラルパターンの概念を示す磁気ディスクを示す平面図である。
【図4】図4は、磁気ディスクの表面の構造を概略的に示す拡大部分平面図である。
【図5】図5は、サーボセクター領域の構造を部分的に拡大して示す平面図である。
【図6】図6は、マルチスパイラルパターンの詳細およびマルチスパイラルパターンに基づく再生信号の概念についてマルチスパイラルパターンを部分的に拡大して示す平面図である。
【図7】図7は、SEEDパターンを有する従来の磁気ディスクを示す平面図である。
【図8】図8は、従来の1サンプリング周期の再生波形を例示的に示す模式図である。
【図9】図9は、復調ゲートのタイミングコントロールの原理を示す模式図である。
【図10】図10は、従来の復調ゲートのタイミングコントロールの原理を示す模式図である。
【図11】図11は、電磁変換素子の位置決め処理を実現する機能ブロック図である。
【図12】図12は、復調ゲートのタイミングを変える修正信号の例を示す模式図である。
【図13】図13は、SSW開始位置へのオントラック処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】図14は、SSWクロック生成処理の流れを示すフローチャートである。
【図15】図15は、復調ゲート制御処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、実施形態にかかるハードディスク駆動装置(HDD)の内部構造を概略的に示す平面図である。
【0014】
図1に示すように、記録装置の一具体例であるハードディスク駆動装置(HDD)11は、筐体すなわちハウジング12を備える。ハウジング12は箱形のベース13およびカバー(図示されず)を有する。ベース13は、例えば扁平直方体の内部空間すなわち収容空間を区画する。
【0015】
収容空間には、記録媒体の一具体例すなわち1枚以上の磁気ディスク14が収容される。磁気ディスク14は、スピンドルモーター15のスピンドル軸に装着される。スピンドルモーター15は、例えば5400rpmや7200rpm、10000rpm、15000rpmといった高速度で磁気ディスク14を回転させることができる。後述されるように、個々の磁気ディスク14はいわゆる垂直磁気記憶媒体に構成される。
【0016】
収容空間にはキャリッジ16がさらに収容される。キャリッジ16は、キャリッジブロック17を備える。キャリッジブロック17は、ベース13の底板から垂直方向に立ち上がる支軸18に回転自在に連結される。キャリッジブロック17には、支軸18から水平方向に延びる複数のキャリッジアーム19が区画される。
【0017】
個々のキャリッジアーム19の先端にはヘッドサスペンション21が取り付けられる。ヘッドサスペンション21は、キャリッジアーム19の先端から前方に延びる。ヘッドサスペンション21にはフレキシャが張り合わせられる。フレキシャ上には浮上ヘッドスライダー22が支持される。フレキシャに基づき浮上ヘッドスライダー22はヘッドサスペンション21に対してその姿勢を変化させることができる。浮上ヘッドスライダー22にはヘッドすなわち電磁変換素子40(図2参照)が搭載される。
【0018】
電磁変換素子40は、書き込み素子44(図2参照)と読み出し素子35(図2参照)とを備える。書き込み素子44にはいわゆる単磁極ヘッドが用いられる。単磁極ヘッドは薄膜コイルパターンの働きで磁界を生成する。磁界は、主磁極の働きで、磁気ディスク14の表面に直交する垂直方向から磁気ディスク14に作用する。この磁界の働きで磁気ディスク14に情報は書き込まれる。その一方で、読み出し素子35には巨大磁気抵抗効果(GMR)素子やトンネル接合磁気抵抗効果(TMR)素子が用いられる。GMR素子やTMR素子では、磁気ディスク14から作用する磁界の向きに応じてスピンバルブ膜やトンネル接合膜の抵抗変化が引き起こされる。こういった抵抗変化に基づき磁気ディスク14から情報は読み出される。
【0019】
磁気ディスク14の回転に基づき磁気ディスク14の表面で気流が生成されると、気流の働きで浮上ヘッドスライダー22には正圧すなわち浮力および負圧が作用する。浮力と負圧およびヘッドサスペンション21の押し付け力とは釣り合う。こうした釣り合いに基づき磁気ディスク14の回転中に比較的に高い剛性で浮上ヘッドスライダー22は浮上し続けることができる。
【0020】
キャリッジブロック17には、ボイスコイルモーター(VCM)23が連結される。ボイスコイルモーター23の働きでキャリッジブロック17は支軸18回りで回転することができる。こうしたキャリッジブロック17の回転に基づきキャリッジアーム19およびヘッドサスペンション21の揺動は実現される。浮上ヘッドスライダー22の浮上中に支軸18回りでキャリッジアーム19が揺動すると、浮上ヘッドスライダー22は磁気ディスク14の半径線に沿って移動することができる。その結果、浮上ヘッドスライダー22上の電磁変換素子40は最内周記録トラックと最外周記録トラックとの間で同心円状の記録トラックを横切ることができる。こうした浮上ヘッドスライダー22の移動に基づき電磁変換素子40は目標記録トラックに対して位置決めされる。
【0021】
なお、キャリッジアーム19の移動可能な範囲は、キャリッジブロック17に設けられるアウタストッパ26およびインナストッパ27により規制される。
【0022】
ヘッドサスペンション21の先端には、ヘッドサスペンション21の先端から前方に延びるロードタブ24が区画される。ロードタブ24は、キャリッジアーム19の揺動に基づき磁気ディスク14の半径方向に移動することができる。ロードタブ24の移動経路上には磁気ディスク14の外側には、ランプ部材25が配置される。ランプ部材25はベース13に固定される。ロードタブ24はランプ部材25に受け止められる。
【0023】
ランプ部材25には、ロードタブ24の移動経路に沿って延びるランプ25aが形成される。このランプ25aは磁気ディスク14の回転軸から遠ざかるにつれて磁気ディスク14の表面を含む仮想平面から遠ざかる。したがって、キャリッジアーム19が支軸18回りで磁気ディスク14の回転軸から遠ざかると、ロードタブ24はランプ25aを上っていく。こうして浮上ヘッドスライダー22は磁気ディスク14の表面から引き剥がされる。浮上ヘッドスライダー22は磁気ディスク14から外側に待避する。反対に、キャリッジアーム19が支軸18回りに磁気ディスク14の回転軸に向かって揺動すると、ロードタブ24はランプ25aを下っていく。回転中の磁気ディスク14から浮上ヘッドスライダー22には浮力が作用する。ランプ部材25およびロードタブ24は協働でいわゆるロードアンロード機構を構成する。
【0024】
次いで、ハードディスク駆動装置(HDD)11の制御系について説明する。図2は、トラッキングサーボの制御系を概略的に示すブロック図である。図2に示されるように、ボイスコイルモーター23にはモータードライバー回路41が接続される。モータードライバー回路41はボイスコイルモーター23に駆動電流を供給する。ボイスコイルモーター23は、供給される駆動電流に基づき指定の変位量で変位することができる。こうした変位量はキャリッジブロック17の回転量(回転角)に従って設定される。
【0025】
ヘッドIC42にはリードライトチャネル回路43が接続される。リードライトチャネル回路43は決められた変復調方式に従って信号の変調や復調を実施する。変調後の信号すなわち書き込み信号はヘッドIC42に供給される。ヘッドIC42は書き込み信号を増幅する。増幅後の書き込み信号は書き込み素子44に供給される。読み出し素子35から出力される読み出し信号はヘッドIC42で増幅された後にリードライトチャネル回路43に供給される。リードライトチャネル回路43は読み出し信号を復調する。
【0026】
モータードライバー回路41およびリードライトチャネル回路43にはハードディスクコントローラー(HDC)45が接続される。HDC45はモータードライバー回路41に制御信号を供給する。この制御信号に基づきモータードライバー回路41の出力すなわち駆動電流は制御される。HDC45は同様にリードライトチャネル回路43に変調前の書き込み信号を送り込むとともにリードライトチャネル回路43から復調後の読み出し信号を受け取る。変調前の書き込み信号は例えばホストコンピューターから送り込まれるデータに基づきHDC45で生成されればよい。そういったデータはコネクター46からHDC45に受け渡されればよい。コネクター46には、例えばホストコンピューターのメインボードから延びる制御信号用ケーブルや電源用ケーブル(ともに図示されず)が接続されればよい。同様に、HDC45は復調後の読み出し信号に基づきデータを再現する。再現されたデータはホストコンピューターに向けてコネクター46から出力されればよい。こうしたデータの送受信にあたってHDC45は例えばバッファメモリー47を利用することができる。バッファメモリー47は一時的にデータを保存する。バッファメモリー47には例えばSDRAM(シンクロナスダイナミックランダムアクセスメモリー)が用いられればよい。
【0027】
HDC45にはマイクロプロセッサーユニット(MPU)48が接続される。MPU48は、例えばROM(リードオンリーメモリー)51に記憶されるプログラムに基づき動作するCPU(中央演算処理装置)52を備える。プログラムには一実施形態に係る電磁変換素子40の位置決めプログラムが含まれる。電磁変換素子40の位置決めプログラムはいわゆるファームウェアとして提供されればよい。CPU52はその動作の実現にあたって例えばフラッシュROM53からデータを取得することができる。そういったプログラムやデータは一時的にRAM(ランダムアクセスメモリー)54に格納されることができる。ROM51やフラッシュROM53、RAM54はCPU52に直接に接続されればよい。
【0028】
次に、磁気ディスク14について説明する。図3は、マルチスパイラルパターンの概念を示す磁気ディスクの平面図、図4は磁気ディスクの表面の構造を概略的に示す拡大部分平面図である。
【0029】
図3および図4に示されるように、磁気ディスク14の表裏面には、磁気ディスク14の半径方向に沿って湾曲しつつ延びる複数筋(例えば200本)のサーボセクター領域28が規定される。サーボセクター領域28は円周方向に等間隔で配置される。サーボセクター領域28にはサーボパターンが確立される。サーボパターンに書き込まれる磁気情報は、浮上ヘッドスライダー22上の電磁変換素子40で読み取られる。サーボパターンから読み出される情報に基づき浮上ヘッドスライダー22は磁気ディスク14の半径方向に位置決めされる。位置決めに応じて1本の円形の記録トラックが確立される。浮上ヘッドスライダー22の半径方向変位に基づき同心円状に記録トラックは確立される。サーボセクター領域28の湾曲は、電磁変換素子40の移動経路に基づき設定される。
【0030】
円周方向で隣接するサーボセクター領域28の間には、データ領域29が確保される。サーボパターンに基づく位置決めに応じてデータ領域29内で電磁変換素子40は記録トラックを辿る。電磁変換素子40の書き込み素子44は記録トラックに沿って磁気情報を書き込む。電磁変換素子40の読み出し素子35は記録トラックに沿って磁気情報を読み出す。
【0031】
ここで、図5はサーボセクター領域の構造を部分的に拡大して示す平面図である。図5に示されるように、各サーボセクター領域28では、上流から順番にプリアンブル域31、サーボマークアドレス域32および位相バースト域33が区画される。プリアンブル域31では、例えば、磁気ディスク14の半径方向に延びる複数筋の磁化パターン34が確立される。磁化パターン34は磁気ディスク14の円周方向に等間隔で配置される。こういったプリアンブル域31の働きで読み出し素子35から読み出される信号の同期が確保される。同時に、読み出し素子35から読み出される信号に基づきゲインが調整される。ここで、「上流」や「下流」は、磁気ディスク14の回転中に規定される浮上ヘッドスライダー22の走行方向に基づき定義される。
【0032】
サーボマークアドレス域32には特定のパターンで磁極すなわちN極およびS極が配置される。磁極の配置はセクタ番号やトラック番号を反映する。同時に、サーボマークアドレス域32には磁気ディスク14の半径方向に延びる複数筋の磁化パターンが確立される。この磁化パターンはサーボクロック信号を特定する。このサーボクロック信号に基づき後述の位相は特定される。サーボマークアドレス域32の働きでセクタ番号やトラック番号は特定される。同時に、プリアンブル域31およびサーボマークアドレス域32の働きで位相の基準タイミングは特定される。
【0033】
位相バースト域33には、磁気ディスク14の半径線に対して所定の傾斜角で延びる複数本の磁化パターンすなわち位相バーストライン36が確立される。位相バーストライン36の確立にあたって位相バースト域33には偶数(even)域33aと奇数(odd)域33bとが交互に配置される。偶数域33aおよび奇数域33bは対で利用される。偶数域33aでは、位相バーストライン36を通過する読み出し素子35が磁気ディスク14の内周側にずれればずれるほど、位相は遅れる。反対に、奇数域33bでは、位相バーストライン36を通過する読み出し素子35が磁気ディスク14の外周側にずれればずれるほど、位相は早まる。
【0034】
このような構成により、ハードディスク駆動装置11においては、トラッキングサーボ制御にあたって、読み出し素子35が順番にプリアンブル域31、サーボマークアドレス域32および位相バースト域33を通過すると、読み出し素子35から信号が出力される。HDC45は、サーボマークアドレス域32の通過に基づき、サーボクロック信号を生成する。続いて、HDC45は、位相バースト域33の通過に基づき、偶数域33aおよび奇数域33bごとに信号波形を取り込む。HDC45は、高速フーリエ変換に基づき信号波形の平均化を実施する。HDC45は、偶数域33aおよび奇数域33bごとにサーボクロック信号および信号波形に基づき位相差を演算する。HDC45は、こうして演算された位相差に基づき位置誤差信号を出力する。位置誤差信号は制御信号としてボイスコイルモーター23に供給される。その結果、電磁変換素子40は確実に目標の記録トラックを追従することができる。なお、位相バースト域33の代わりに振幅復調方式を前提とした、所謂、振幅バースト域を設けることも可能である。
【0035】
ここで、磁気ディスク14に対するサーボセクター領域28の構築手法について説明する。まず、セルフサーボライト用の中間パターンが書き込まれていない磁気ディスク14にセルフサーボライト用の中間パターンであるマルチスパイラルパターン55が書き込まれる。マルチスパイラルパターン55の書き込みにあたってサーボトラックライター(STW)が用いられる。磁気ディスク14はSTWに装着される。STWは一定の回転速度で磁気ディスク14を回転させる。同時に、STWは一定の移動速度で半径方向に書き込み素子を移動させる。書き込み素子は例えば所定の浮上ヘッドスライダーに搭載されればよい。浮上ヘッドスライダーは例えば磁気ディスク14の半径線上で移動すればよい。書き込み素子から磁気ディスク14に磁界は作用する。
【0036】
図3に示されるように、マルチスパイラルパターン55は円周方向に等間隔で配置される。マルチスパイラルパターン55の本数はサーボセクター領域28の本数の倍に設定される。すなわち、1本のサーボセクター領域28に対して2本のマルチスパイラルパターン55が割り当てられる。ただし、1本のサーボセクター領域28に対して3本以上のマルチスパイラルパターンが割り当てられてもよい。そういった場合でも、マルチスパイラルパターンは円周方向に等間隔に配置されればよい。図中、便宜上、サーボセクター領域28およびマルチスパイラルパターン55は間引いて表示される。
【0037】
個々のマルチスパイラルパターン55は記録域の最外周56aから最内周56bまでスパイラル線に沿って延びる。記録域は、書き込み素子44で磁気情報を書き込むことができる最大範囲に相当する。スパイラル線は、図6に示されるように、記録域の全域にわたって円周線に対し規定の傾斜角Φを維持する。
【0038】
個々のマルチスパイラルパターン55はスパイラル線に沿って磁化領域を配列する。円周方向にN極およびS極は交互に配置される。こういった配置に基づき高周波域57が確立される。磁化領域の半径方向長さは記録トラックの幅TWに設定される。半径方向長さは磁気ディスク14の半径線上で測定される。こういった高周波域57の確立にあたって書き込み素子には所定の書き込みクロックに従って高周波の書き込み信号が供給される。
【0039】
マルチスパイラルパターン55には円周方向に規定の間隔で同期マーク58が形成される。同期マーク58は例えば単一の磁極で構成される。こういった同期マーク58の確立にあたって書き込み素子には一定値の書き込み信号が供給される。一定値の書き込み信号は書き込みクロックの規定数のクロックパルスにわたって維持される。こうして高周波は途切れる。
【0040】
読み出し素子35が高周波域57を横切ると、高周波の再生信号61が読み出し素子35から出力される。再生信号61の振幅はマルチスパイラルパターン55にさしかかると徐々に増大する。読み出し素子35がトラックの幅TWでマルチスパイラルパターン55を横切ると、再生信号61は最大振幅を示す。その後、再生信号61の振幅は徐々に縮小する。同期マーク58は高周波の再生信号61同士の間にギャップ62を形成する。ギャップ62で高周波の再生信号61同士は隔てられる。同期マーク58同士の間隔は任意に設定される。ただし、読み出し素子35の再生信号上でギャップ62の位置が最適化されれば、ノイズは最大限に抑制されることができる。同期マーク58同士の間隔は必ずしもトラックピッチを特定する必要はない。同期マーク58は円周方向に等間隔で配置される。読み出し素子35が1本のマルチスパイラルパターン55を横切る際に読み出し素子35は少なくとも2本の同期マーク58を通過する。
【0041】
マルチスパイラルパターン55の書き込みが完了すると、磁気ディスク14はSTWから下ろされる。
【0042】
書き込み後の磁気ディスク14は、ハードディスク駆動装置11に組み込まれる。続いて、個々のハードディスク駆動装置11ごとに、SSW(Self Servo Write)開始位置に電磁変換素子40を位置決めし、書き込まれたマルチスパイラルパターン55に基づきサーボセクター領域28の磁化が書き込まれる。この書き込みにあたってCPU52は一実施形態に係る電磁変換素子40の位置決めプログラムを実行する。このとき、CPU52は当該位置決めプログラムの実行に基づき電磁変換素子40の位置決め装置として機能する。
【0043】
ところで、従来においては、図7に示すように、SSW開始位置にヘッドを位置決めするために、先ず磁気ディスク1の一部に生成した補助サーボパターンであるSEEDパターン2に位置決めし、SEEDパターン2とマルチスパイラルパターン3のRRO(Repetitive Run−Out)との相似性を利用して復調ゲートタイミングをマルチスパイラル再生波形に合わせて復調している。このように従来においては、SEEDパターン2からマルチスパイラルパターン3にオントラック対象パターンを乗り換える方式を採用していた。
【0044】
しかしながら、上述の方法によれば、図8に示されるように、1サンプリング周期の中で、SEEDパターン2とマルチスパイラルパターン3のサーボ処理を同時に実行する必要があり、サーボコントローラのCPU負荷およびメモリ容量が増大するという欠点があった。
【0045】
また、図8中に表示した再生波形のとおり、最終パターンの書込み範囲がSEEDパターン2の範囲だけ狭まるという問題があり、特に近年のサンプリング周期の短縮化に際しこの問題は無視できない状況にある。
【0046】
そこで、実施形態にかかるハードディスク駆動装置11においては、上述のように、補助サーボパターンであるSEEDパターンを廃し、マルチスパイラルパターン55単独の磁気ディスク14を用いてSSW開始位置にヘッド位置決めすることにより、上述のような問題を解決するようにしたものである。
【0047】
基本原理を図9を参照しつつ、かつ、従来方法(図10参照)と比較しながら以下に説明する。
【0048】
図10に示されるように、従来は、マルチスパイラルパターン3を復調する場合に、SEEDパターン2を利用してヘッドを半径方向に正確に位置決めし、マルチスパイラルパターン3の再生波形をほぼ等間隔に制御することにより、復調ゲート4のタイミングを容易にスパイラルパターン3に適合させることができた。しかしながら、実施形態にかかるハードディスク駆動装置11においては、磁気ディスク14にSEEDパターンが存在しないため、先ず適当なVCM電流を与えることによりヘッド位置をインナストッパ27の位置に概略固定する。このとき、マルチスパイラルパターン55の再生波形の間隔は図9に示されるように不均一になるが、RRO(Repetitive Run−Out)成分が支配的であることを利用し、復調信号の取り出しに用いる復調ゲート10のタイミングを特定同期成分(1次成分など)で可変にコントロールすることにより、復調ゲート10のタイミングをマルチスパイラルパターン55に適合させる方法を採用する。
【0049】
次に、上記に示した基本原理に従った位置決めプログラムをCPU52が実行する電磁変換素子40の位置決め処理について説明する。
【0050】
ここで、図11は電磁変換素子40の位置決め処理を実現する機能ブロック図である。なお、実施形態にかかるハードディスク駆動装置11においては、RROの影響が大きいため、電磁変換素子40の位置決め処理として、復調ゲートタイミングを順次変更しながら、SSWクロック制御およびサーボロック制御を試行錯誤的に繰り返しながら適切なタイミングを学習させるようにしている。
【0051】
図11に示すように、CPU52は位置決めプログラムに従うことにより、オントラック部104と、SSWクロック生成部105と、位置付け部106と、を備える。
【0052】
位置付け部106は、電磁変換素子40がマルチスパイラルパターン55の回転同期成分を検出する位置にキャリッジアーム19を位置付けるものであって、インナストッパ位置付け部101と、開放部102と、を備える。
【0053】
インナストッパ位置付け部101は、インナ方向に適切なVCM電流を与え、電磁変換素子40の位置をインナストッパ27の位置に概略固定する。開放部102は、徐々にVCM電流を微妙に減少させ、電磁変換素子40をインナストッパ位置付け部101により固定されたインナストッパ27の位置から開放状態に移行させ、回転同期成分を検出可能状態とする。
【0054】
SSWクロック生成部105は、SSWクロックを生成し、SSW開始位置へ電磁変換素子40を移動させる。SSWクロック生成部105は、図11に示すように、復調ゲート設定部103を備えている。復調ゲート設定部103は、復調ゲート10のタイミングに特定のディスク回転同期成分に相当する修正信号を加えてゲート間隔を調整して、復調ゲート10のタイミングをマルチスパイラルパターン55に適合させる。修正信号としては、図12に示すように、振幅、位相、周波数を含む。
【0055】
オントラック部104は、オントラック(ここで、オントラックは、トラックトレースという意味ではなく、マルチスパイラルパターンと交わるという意味である。)させる目標位置を、相対的に磁気ディスク14のアウタ方向よりに設定し、サーボロックを実行する。
【0056】
ここで、復調ゲート設定部103とオントラック部104とSSWクロック生成部105とにおける処理の流れについて、図13ないし図15のフローチャートを参照して説明する。
【0057】
図13に示すように、CPU52は、まず初期値として繰り返し回数Nを設定する(ステップS1)。例えば、繰り返し回数Nとして4回(N=4)を設定する。
【0058】
次いで、CPU52は、電磁変換素子40の位置を決定するサーボをOffにし(ステップS2)、PE(Position Error)生成を中断した後(ステップS3)、SSWクロックの生成処理を実行する(ステップS4)。
【0059】
ステップS4のSSWクロックの生成処理について説明する。図14に示すように、CPU52は、まず初期値として繰り返し回数Mを設定する(ステップS11)。例えば、繰り返し回数Mとして4回(M=4)を設定する。
【0060】
次いで、CPU52は、PLLをOffにした後(ステップS12)、復調ゲート制御処理を実行する(ステップS13)。
【0061】
ステップS13の復調ゲート制御処理について説明する。図15に示すように、CPU52は、まず初期値として繰り返し回数Lを設定する(ステップS21)。例えば、繰り返し回数Lとして10回(L=10)を設定する。
【0062】
次いで、CPU52は、初期値として繰り返し回数Kを設定する(ステップS22)。例えば、繰り返し回数Kとして8回(K=8)を設定する。
【0063】
繰り返し回数Kの設定後、CPU52は、復調ゲートをOff、Onした後(ステップS23、24)、復調ゲートタイミングの良否を判定する(ステップS25)。具体的には、CPU52は、マルチスパイラルパターン55のsync markの検出確率から復調ゲートタイミングの良否を判定する。
【0064】
CPU52は、復調ゲートタイミングがスパイラル再生波形に合わないと判定した場合には(ステップS25のNo)、繰り返し回数K以内であることを条件に(ステップS26、ステップS27のYes)、ステップS23に戻り復調ゲートのOff、Onを繰り返す。
【0065】
一方、CPU52は、繰り返し回数がKを超えた場合には(ステップS26、ステップS27のNo)、パラメータ更新処理を実行する(ステップS28)。ステップS28のパラメータ更新処理は、具体的には、復調ゲートタイミングに特定のディスク回転同期成分に相当する修正信号を加えて、ゲート間隔を調整する(復調ゲート設定部103)。
【0066】
CPU52は、このようにして復調ゲートタイミングを修正した後、繰り返し回数L以内であることを条件に(ステップS29、ステップS30のYes)、ステップS22に戻り、改めて予め設定した数Kを超えない範囲で復調ゲートのオンオフ処理をリトライする。
【0067】
なお、CPU52は、繰り返し回数がLを超えた場合には(ステップS29、ステップS30のNo)、異常通知して処理を終了する。
【0068】
そして、CPU52は、復調ゲートタイミングがスパイラル再生波形に合うと判定した場合には(ステップS25のYes)、ステップS13の復調ゲート制御処理を終了し、PLLをOnにした後(ステップS14)、PLL制御誤差を適当な閾値と比較してPLLロックの可否を判定する(ステップS15)。
【0069】
CPU52は、PLLロック状態に異常があると判定した場合には(ステップS15のNo)、パラメータ更新処理を実行する(ステップS16)。ステップS16のパラメータ更新処理は、具体的には、復調ゲートタイミングに特定のディスク回転同期成分に相当する修正信号を加えて、ゲート間隔を調整する(復調ゲート設定部103)。
【0070】
なお、図14中のパラメータ更新処理(ステップS16)および図15中のパラメータ更新処理(ステップS28)は、磁気ディスク14の1次同期成分を基にした復調ゲートタイミングの補正量yを算出する過程であり、具体的には下記の式で表される。

y = Asin(2πi/Ns+Φ)
A=A0 (初期値)
A=A+ΔA (パラメータ更新処理時)

ここで、 i:セクタ番号
Ns:セクタ数
Φ:初期位相(予め適当な値を設定)
A0:振幅の初期値(予め適当な値を設定:例えばゼロ)
ΔA:振幅の補正量(予め適当な値を設定)

【0071】
CPU52は、このようにして復調ゲートタイミングを修正した後、繰り返し回数M以内であることを条件に(ステップS17、ステップS18のYes)、ステップS12に戻り、処理を繰り返す。すなわち、CPU52は、復調ゲートタイミングを修正し、所定の繰り返し数Mに満たない場合に限り再度PLLをかけ直す。
【0072】
なお、CPU52は、繰り返し回数がMを超えた場合には(ステップS17、ステップS18のNo)、異常通知して処理を終了する。
【0073】
そして、CPU52は、PLLロック状態に異常がないと判定した場合には(ステップS15のYes)、ステップS4のSSWクロックの生成処理を終了する。
【0074】
SSWクロックの生成処理が終了すると、CPU52は、PE生成を開始した後(ステップS5)、オントラックさせる目標位置を、相対的にアウタ方向よりに設定する(ステップS6:オントラック部104)。
【0075】
ステップS6の目標位置設定処理は、ステップS5で生成されたPEの最小値PE0(ただし負極性がアウタ方向と仮定)から次式で表される。

Pt=PE0−ΔP
ここで ΔP:適当に選んだ正の値

【0076】
オントラック目標位置を設定後、CPU52は、電磁変換素子40の位置を決定するサーボをOnにする(ステップS7:オントラック部104)。
【0077】
サーボをOnにした後、CPU52は、サーボロックの可否を判定する(ステップS8)。CPU52は、サーボロック状態に異常があると判定した場合には(ステップS8のNo)、繰り返し回数N以内であることを条件に(ステップS9、ステップS10のYes)、ステップS2に戻り、処理を繰り返す。
【0078】
なお、CPU52は、繰り返し回数がNを超えた場合には(ステップS9、ステップS10のNo)、異常通知して処理を終了する。
【0079】
そして、CPU52は、サーボロック状態に異常がないと判定した場合には(ステップS8のYes)、処理を終了する。
【0080】
これにより、実施形態にかかるハードディスク駆動装置11においては、SSW(Self Servo Write)の際に、復調ゲートタイミングを順次変更しながら、SSWクロック制御およびサーボロックを試行錯誤的に繰り返すことにより、マルチスパイラルパターン55へのオントラックを実現することができる。
【0081】
このように、実施形態にかかるハードディスク駆動装置11によれば、マルチスパイラルパターン等のセルフサーボライト(SSW)用中間パターンに対しヘッド位置決めする際に、従来の補助サーボパターン(SSW開始位置にヘッド位置決めするための専用パターン)であるSEEDパターンを不要とすることができるので、サーボトラックライタ(STW)の使用時間の短縮、SSW用コントローラのCPU負荷軽減、SSW用コントローラのメモリ容量の制約、最終パターン書込スペースの拡大などの効果を奏することが可能になる。
【0082】
なお、図14中のパラメータ更新処理(ステップS16)および図15中のパラメータ更新処理(ステップS28)において、復調ゲート設定部103は、オントラック部104によって電磁変換素子40がSSW開始位置となるマルチスパイラルパターン55へ正常にオントラックした場合、正常にオントラックした場合の補正値を記憶しておき、SSW異常終了に起因する再オントラック時に、復調ゲート設定部103による復調ゲート間隔の調整の初期値として記憶された補正値を採用するようにしても良い。これにより、繰り返し処理を省略することができるので、SSW時間短縮を実現することができる。
【0083】
なお、本実施形態のハードディスク駆動装置11で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0084】
さらに、本実施形態のハードディスク駆動装置11で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態のハードディスク駆動装置11で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0085】
本実施形態のハードディスク駆動装置11で実行されるプログラムは、上述した各部(インナストッパ位置付け部101、開放部102、オントラック部104、SSWクロック生成部105)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)が上記ROMからプログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、インナストッパ位置付け部101、開放部102、オントラック部104、SSWクロック生成部105が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0086】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0087】
11 記録装置
14 記録媒体
19 アーム
23 ボイスコイルモーター
27 インナストッパ
40 電磁変換素子
55 セルフサーボライト用の中間パターン
101 インナストッパ位置付け部
102 開放部
103 復調ゲート設定部
104 オントラック部
105 SSWクロック生成部
106 位置付け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルフサーボライト用のマルチスパイラルパターンで形成される中間パターンを有して回転駆動される記録媒体と、
電磁変換素子を搭載し、ボイスコイルモーターに対するVCM電流によって回転し、前記電磁変換素子を前記記憶媒体上の所定位置に位置づけるアームと、
前記電磁変換素子が前記中間パターンの回転同期成分を検出する位置に前記アームを位置付ける位置付け部と、
前記検出された回転同期成分に基づいて、SSW(Self Servo Write)クロックを生成するSSWクロック生成部と、
前記生成されたSSWクロックに基づいて、前記電磁変換素子をSSW開始位置となる前記中間パターンへオントラックさせるオントラック部と、
を備え、
前記SSWクロック生成部は、前記オントラック部によるオントラックが正常に終了するまで、前記中間パターンに対応した復調ゲート間隔を回転同期成分に合わせて逐次変化させてスパイラル再生波形を捕捉する、記録装置。
【請求項2】
前記SSWクロック生成部は、前記中間パターンに対応した復調ゲート間隔を回転同期成分を含む補正値で逐次調整する復調ゲート設定部を備える、
請求項1記載の記録装置。
【請求項3】
前記復調ゲート設定部は、回転の低次同期成分の正弦波関数を補正値として用いる、
請求項2記載の記録装置。
【請求項4】
前記復調ゲート設定部は、正弦波関数の振幅、位相、周波数のいずれかをパラメータとする、
請求項3記載の記録装置。
【請求項5】
前記復調ゲート設定部は、前記オントラック部によって前記電磁変換素子がSSW開始位置となる前記中間パターンへ正常にオントラックした場合、正常にオントラックした場合の前記補正値を記憶する記憶部を更に備え、SSW異常終了に起因する再オントラック時に、復調ゲート間隔の調整の初期値として前記記憶部に記憶された補正値を採用する、
請求項2記載の記録装置。
【請求項6】
前記位置付け部は、
前記記録媒体のインナ方向に対する前記アームの移動可能な範囲を規制するインナストッパの位置に前記アームを移動させ、前記電磁変換素子の位置を位置付けるインナストッパ位置付け部と、
前記電磁変換素子を前記インナストッパの位置から開放状態に移行させ、回転同期成分を検出可能状態とする開放部と、
を備える請求項1記載の記録装置。
【請求項7】
セルフサーボライト用のマルチスパイラルパターンで形成される中間パターンを有する記録媒体と、ボイスコイルモーターに対するVCM電流による回転によって前記記録媒体上の所定位置に電磁変換素子を位置づけるアームと、を備える記録装置で実行される電磁変換素子の位置決め方法であって、
位置付け部が、前記電磁変換素子が前記中間パターンの回転同期成分を検出する位置に前記アームを位置付ける工程と、
SSWクロック生成部が、前記検出された回転同期成分に基づいて、SSW(Self Servo Write)クロックを生成する工程と、
オントラック部が、前記生成されたSSWクロックに基づいて、前記電磁変換素子をSSW開始位置となる前記中間パターンへオントラックさせる工程と、
を含み、
前記SSWクロック生成部は、前記オントラック部によるオントラックが正常に終了するまで、前記中間パターンに対応した復調ゲート間隔を回転同期成分に合わせて逐次変化させてスパイラル再生波形を捕捉する、電磁変換素子の位置決め方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−3822(P2012−3822A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139827(P2010−139827)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【特許番号】特許第4802291号(P4802291)
【特許公報発行日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】