記録装置における記録方法及び記録装置
【課題】検出手段が記録媒体の後端を検知したその搬送終了時点における記録媒体の位置で記録続行可能か否かを判定する判定結果が遅れることに起因して記録続行不可能な判定であるにも拘わらずプラテン印字などの不適切な印字動作が行われてしまうことをより確実に防止する。
【解決手段】CR起動指令要求を受け付けると、CR−PF重ね合わせ演算(CR起動タイミング計算)を行う(S2)。今回の紙送り中に紙検出センサが用紙の後端を検知して紙なしと判断すると(S4でYES)、紙送り残量が初期オーバライド量を超えるか否かを判断する(S5)。紙送り残量>初期オーバライド量が成立した場合は、「紙なし」状態とされる(S7)。CR起動指令要求受信後に「紙なし」状態と判断された場合(S3,S10)は、印字が中止される(S11)。後端検知より後にCR起動信号の出力(S13)が行われる場合、印字中止の指令は、キャリッジ起動前に早期に行われる。
【解決手段】CR起動指令要求を受け付けると、CR−PF重ね合わせ演算(CR起動タイミング計算)を行う(S2)。今回の紙送り中に紙検出センサが用紙の後端を検知して紙なしと判断すると(S4でYES)、紙送り残量が初期オーバライド量を超えるか否かを判断する(S5)。紙送り残量>初期オーバライド量が成立した場合は、「紙なし」状態とされる(S7)。CR起動指令要求受信後に「紙なし」状態と判断された場合(S3,S10)は、印字が中止される(S11)。後端検知より後にCR起動信号の出力(S13)が行われる場合、印字中止の指令は、キャリッジ起動前に早期に行われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばシリアルプリンタ等の記録装置において、記録媒体の搬送動作の停止前に記録手段の移動動作を開始させて、記録媒体の搬送動作と記録手段の移動動作とを重ね合わせる制御が行われる記録装置における記録方法及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シリアルプリンタなどの記録装置では、印刷処理時間短縮のため、紙送り動作とキャリッジ動作とを重ね合わせる、重ね合わせ処理が行われていた(例えば特許文献1、2等)。重ね合わせ処理は、まず、1パス分の印字処理が終了すると紙送りモータ(PFモータ)を起動させて紙送りを行う。その後、PFモータの駆動が終了する前に所定のタイミングでキャリッジモータ(CRモータ)を起動させてキャリッジを移動させる。これにより、紙送り終了とほぼ同時に印字動作を開始することができる。従って、紙送り終了後にCRモータを起動させてキャリッジの移動を開始させる構成に比べ、印刷処理時間の短縮を図ることができる。
【0003】
ところで、用紙搬送方向長さが設定より短い用紙が間違って給紙された場合は、紙送り後に記録ヘッドの記録対象位置に用紙の少なくとも一部が存在しなくなり、そのまま印字動作が行われると、プラテンに印字されてしまいプラテン上を摺動する用紙がインクで汚れるという問題がある。この問題を解決するため、例えば特許文献1には、キャリッジが起動してから印刷を開始するまでの時間として、紙検出センサから記録ヘッドまでの距離に基づく時間分は確保されており、紙送り終了前の時点でキャリッジを起動して印字を実行してしまっても、プラテン印字をすることがない構成が開示されている。しかし、紙検出センサから記録ヘッドまでの距離に基づく時間分は確保する必要があり、印刷処理時間を犠牲にしてプラテン印字を防止していた。
【0004】
これに対し、例えば特許文献2には、用紙搬送方向長さが設定より短い用紙が給紙された場合、紙送り終了時に用紙の後端が記録ヘッドの記録位置から搬送方向下流側へ逸脱するか否かを判定し、逸脱すると判定された場合にはそのとき既にキャリッジが起動されていても、印字不許可指令をして印字動作を中止させる記録装置が開示されている。すなわち、用紙の後端が紙検出センサを通過してから起動されるオーバライドカウンタのカウント値に基づいて、オーバライド領域(印字可能範囲)の残量を求めるとともに、PFモータの紙送り残量を求め、紙送り残量がオーバライド領域の残量以上であると判定された場合に、印字不許可指令を発生させる構成となっていた。このため、用紙の後端が記録ヘッドの記録位置を通り過ぎた場合は、印字不許可指令により印字動作が中止されるので、印刷処理時間を犠牲にせずプラテン印字が防止される。また、プラテン印字を防止するための上記判定のための演算処理は、オーバライドカウンタがON(つまり用紙後端検知)し、かつCRモータの起動信号を受信したときをトリガとして開始されるようになっていた。
【特許文献1】特開2006−212923号公報(例えば明細書段落[0030]〜[0042]、図4〜図11)
【特許文献2】特開2001−232882号公報(例えば明細書段落[0070]〜[0077]、図5及び図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2では、プラテン印字を防止できるが、オーバライドカウンタがONし、かつCRモータの起動信号を受信したときをトリガとして、判定処理を開始する構成であった。つまり、判定処理の開始のためにCRモータの起動信号の受信が必須条件であった。このため、判定処理は、キャリッジの起動とほぼ同時に開始されることになり、印字不許可指令は常にキャリッジ起動後に発せられていた。例えばキャリッジ起動時から印字開始位置までの移動時間が短い場合は、印字不許可判定の判定結果が遅れて、印字動作が開始されてしまう虞があった。また、判定処理はCRモータの起動以後に行われ、印字不許可指令はキャリッジが必ず移動した後に行われるので、印字不許可の場合は常にキャリッジが印字動作なしで空走することになっていた。このようなキャリッジの空走動作は、プリンタの不自然な動作であるうえ、CRモータが無駄に駆動されて消費電力やモータ寿命の観点からも好ましくないので、減らすことが好ましいが、特許文献2の判定処理方法(記録方法)によれば、キャリッジの空走動作を減らす方法を採る余地もなかった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、検出手段が記録媒体の後端を検知したその搬送終了時点における記録媒体の位置で記録続行可能か否かを判定する判定結果が遅れることに起因して記録続行不可能な判定であるにも拘わらずプラテン印字などの不適切な印字動作が行われてしまうことをより確実に防止できる記録装置における記録方法及び記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、記録媒体を搬送するために駆動される第1駆動源と、記録媒体に記録を施す記録手段を移動させるために駆動される第2駆動源と、前記第1駆動源と第2駆動源とを前記搬送と記録とが交互に行われるように制御するとともに、該制御に際して前記第1駆動源の駆動停止前に前記第2駆動源を起動させる記録装置における記録方法であって、前記記録手段の記録位置より搬送方向上流側位置で検出手段により前記記録媒体の後端を検知する検出ステップと、前記検出手段が前記後端を検知すると、前記後端の検知時点における記録媒体の残り搬送量に基づいて今回の搬送終了時点における記録媒体の位置で記録続行可能か否かを判断する判断ステップと、前記判断ステップで記録続行不可能であると判断された場合、前記後端の検知時点より前に前記第2駆動源の起動タイミングが訪れていたら、前記第2駆動源の起動後に前記記録手段による記録の中止処理を行い、一方、前記後端の検知時点より後に前記第2駆動源の起動タイミングが訪れるなら、該第2駆動源の起動を中止させる、もしくは前記記録手段による記録を中止させるものの該第2駆動源は起動させる制御ステップとを備えたことを要旨とする。
【0008】
これによれば、検出ステップにおいて、記録手段の記録位置より搬送方向上流側位置で検出手段により記録媒体の後端が検知されると、判断ステップにおいて、後端検知時点における記録媒体の残り搬送量に基づいて今回の搬送終了時点における記録媒体の位置で記録続行可能か否かが判断される。そして、前記判断ステップで記録続行不可能と判断された場合、制御ステップにおいて、後端検知時点より前に第2駆動源の起動タイミングが訪れていたら、第2駆動源の起動後に記録手段による記録の中止処理が行われる。一方、前記後端検知時点より後に前記第2駆動源の起動タイミングが訪れるなら、第2駆動源の起動を中止させる、もしくは記録手段による記録を中止させるものの第2駆動源の起動は行われる。但し、記録手段による記録を中止するものの第2駆動源の起動は行われる場合、記録の中止は第2駆動源の起動前に確定している。よって、後端検知時点より後に第2駆動源の起動タイミングが訪れる場合は、記録手段による記録の中止処理は第2駆動源の起動前に早期に行われる。例えば記録を中止すべきであるにも拘わらずその中止処理が間に合わず記録が開始されてしまう不都合をより確実に回避しやすくなる。
【0009】
本発明の記録方法においては、前記制御ステップでは、前記判断ステップで記録続行不可能であると判断された場合、前記後端の検知時点より前に前記第2駆動源の起動タイミングが訪れていたら、前記第2駆動源の起動後に前記記録手段による記録の中止処理を行い、一方、前記後端の検知時点より後に前記第2駆動源の起動タイミングが訪れるなら前記第2駆動源の起動及び前記記録手段による記録を共に中止することが好ましい。
【0010】
これによれば、制御ステップでは、判断ステップで記録続行不可能と判断された場合、後端検知時点より前に第2駆動源の起動タイミングが訪れていたら、第2駆動源の起動後、つまり記録手段の移動開始後に記録手段による記録の中止処理が行われる。このため、記録手段は移動するものの記録は行われない。一方、後端検知時点より後に第2駆動源の起動タイミングが訪れるなら、第2駆動源の起動及び記録手段による記録が共に中止される。このため、記録手段の記録が行われないだけでなく記録手段の記録を伴わない移動(空走)も回避できる。
【0011】
本発明の記録方法においては、前記制御ステップでは、前記判断ステップで記録続行不可能であると判断された場合、前記後端の検知時点より前に前記第2駆動源の起動タイミングが訪れていたら、前記第2駆動源の起動後に前記記録手段による記録の中止処理を行い、一方、前記後端の検知時点より後に前記第2駆動源の起動タイミングが訪れるなら、前記記録手段による記録の中止処理を前記第2駆動源の起動前に行い、その後に前記起動タイミングに訪れたときに前記第2駆動源を起動させることが好ましい。
【0012】
これによれば、判断ステップで記録続行不可能と判断された場合、後端の検知時点より前に第2駆動源の起動タイミングが訪れていたら、制御ステップにおいて、第2駆動源の起動後に記録手段による記録の中止処理が行われる。一方、後端の検知時点より後に第2駆動源の起動タイミングが訪れるなら、制御ステップにおいて、記録手段による記録の中止処理を第2駆動源の起動前に行い、その後、起動タイミングが訪れると、第2駆動源が起動される。このため、記録が中止されるときは、常に記録手段は空走することになるものの、プラテン印字に影響しない記録手段の移動を中止させるための余分な制御を必要としない。
【0013】
本発明の記録方法においては、前記記録手段は移動過程における加速途中から記録を開始することが可能な構成であることが好ましい。
これによれば、記録手段は移動過程における加速途中から記録を開始するときでも、第2駆動源の起動タイミングが後端検知時点より後に訪れる場合は、記録の中止処理が記録手段の移動開始前に早期に行われ、早期に行われる中止処理の頻度が増す。このため、記録の中止処理が間に合わず記録が開始されてしまう不都合をより防止し易く、特に記録手段の移動開始から記録開始位置までの移動時間が短い加速中印字の行われる構成で有効である。
【0014】
本発明の記録方法においては、前記記録手段は前記記録媒体の搬送方向と異なる方向へ移動可能な移動体に設けられ、前記第2駆動源の起動により前記移動体の移動が開始されるように構成されるとともに、前記移動体の移動経路上の所定位置に移動した該移動体によって操作されかつ記録媒体の供給時の搬送を行う供給手段と前記第2駆動源とを動力伝達可能に接続するクラッチ手段を更に備え、前記記録続行不可能と判断された場合において記録のための前記第2駆動源の起動を中止したときには、前記クラッチ手段を接続状態にさせるべく前記第2駆動源を起動させて前記移動体を前記所定位置に移動させることが好ましい。
【0015】
これによれば、記録続行不可能と判断されて第2駆動源の起動(つまり移動体の起動)を中止したときには、次に供給されるべき記録媒体があれば、その記録媒体を供給させるべく移動体を所定位置に移動させるように第2駆動源が起動される。このため、記録続行不可能な場合は、移動体が無駄に空走することなく、所定位置への移動を直ちに開始できるので、次の記録媒体の供給を早期に開始できる。この結果、次の記録媒体への印字動作を早期に開始できるためスループット向上に寄与する。
【0016】
本発明の記録方法において、前記判断ステップにおける前記記録続行可能か否かの判断は、前記記録媒体の後端が前記検知時の位置から前記記録手段による記録が可能な限界位置まで搬送される搬送距離に相当する初期オーバライド量と、該後端の検知時における記録媒体の残り搬送量とを比較して行われることが好ましい。
【0017】
これによれば、判断ステップでは、記録媒体の後端が検知時の位置から記録手段による記録が可能な限界位置まで搬送される搬送距離に相当する初期オーバライド量と、後端検知時における記録媒体の残り搬送量とを比較して記録続行可能か否かが判断される。
【0018】
本発明の記録方法においては、前記検出手段が前記後端を検知した際の前記搬送の終了後、前記後端が前記検知時の位置から前記限界位置までのオーバライド領域内に位置する状態で行われた記録の後、該オーバライド領域内に後端が位置する状態から開始される次回以降の搬送においては、前記判断ステップに替えて、当該次回以降のうち今回の搬送の終了時点における記録媒体の位置で記録続行可能か否かを判断する第2判断ステップを備え、該第2判断ステップでは、前記記録手段を記録のために移動させるべき要求を受け付けると、前記オーバライド領域内に位置する搬送開始時の前記後端が前記限界位置まで搬送される搬送距離に相当するオーバライド量と、記録媒体の搬送量とを比較して、当該今回の搬送終了時点における記録媒体の位置で記録続行可能か否かを判断することが好ましい。
【0019】
これによれば、検出手段が後端を検知した際の搬送の終了後、後端が検知時の位置から限界位置までのオーバライド領域内に位置する状態で行われた記録の後、オーバライド領域内に後端が位置する状態から開始される次回以降の搬送においては、前記判断ステップに替えて、第2判断ステップにより、前記次回以降のうち一の回(今回)の搬送の終了時点における記録媒体の位置で記録続行可能か否かが判断される。第2判断ステップにおいては、記録手段を記録のために移動させるべき要求を受け付けると、オーバライド領域内に位置する搬送開始時の後端が限界位置まで搬送される搬送距離に相当するオーバライド量と、記録媒体の今回の搬送量とを比較して、今回の搬送終了時点における記録媒体の位置で記録続行可能か否かが判断される。よって、記録手段を記録のために移動させるべき要求を受け付けたことをトリガとして上記判断が開始されるので、記録続行可能であるか否かの判断結果を第2駆動源の起動前(つまり記録手段の移動開始前)に得ることが可能になる。
【0020】
本発明は、記録媒体を搬送する搬送手段の駆動源である第1駆動源と、記録媒体に記録を施す記録手段を移動させる移動手段の駆動源である第2駆動源と、前記第1駆動源と第2駆動源とを前記搬送と記録とが交互に行われるように制御するとともに、該制御に際して前記第1駆動源の駆動停止前に前記第2駆動源を起動させる制御手段とを備えた記録装置において、前記記録手段の記録位置より搬送方向上流側位置で前記記録媒体の後端を検出する検出手段と、前記記録媒体の後端が前記検出手段により検知されると、該後端の検知時点の位置から前記記録手段による記録媒体への記録が可能な限界位置までの搬送距離に相当する初期オーバライド量と、該後端検知時における記録媒体の残り搬送量とを比較して記録続行可能か否かを判断する判断手段とを備え、前記制御手段は、前記判断手段が記録続行不可能と判断した場合、前記後端の検知時点より前に前記第2駆動源の起動タイミングが訪れていたら、前記記録手段による記録の中止処理を行い、一方、前記後端の検知時点より後に前記第2駆動源の起動タイミングが訪れるなら、該第2駆動源の起動を中止させる、もしくは前記記録手段による記録を中止させるものの該第2駆動源は起動させることを要旨とする。これによれば、上記記録方法の発明と同様の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を記録装置としてのプリンタに適用した一実施形態を、図1〜図11に従って説明する。図1は、プリンタの概略斜視図である。但し、プリンタの外装ケースは取り外された状態で示している。
【0022】
図1に示すように、記録装置としてのプリンタ10は、外装ケース(図示省略)内に本体ケース10aを備えている。本体ケース10aには、ガイド軸11に案内されて主走査方向(同図におけるX方向)に往復移動可能なキャリッジ12が設けられている。キャリッジ12はキャリッジモータ(以下、CRモータ13という)が駆動されることにより回転駆動される無端状のタイミングベルト14の一部に固定されており、CRモータ13が正逆転駆動されることによりキャリッジ12は主走査方向Xに往復移動するようになっている。本実施形態では、CRモータ13として、DCモータが使用されているが、ステッピングモータを使用することもできる。
【0023】
キャリッジ12の下部には、記録手段としてインクジェット方式の記録ヘッド15が設けられている。キャリッジ12の上部には記録ヘッド15にインクを供給するためのブラック用のインクカートリッジ16と、カラー用のインクカートリッジ17とが着脱可能に装填されている。記録ヘッド15の下面はインク色毎に複数のノズルが形成されたノズル形成面となっている。
【0024】
記録ヘッド15はノズル1つにつき1個の圧電振動子(図示せず)を内蔵している。インク滴の噴射対象となるノズルに対応する圧電振動子が、パルス電圧の印加に基づく電歪作用により振動し、記録ヘッド15内にノズル毎に設けられたインク室が膨張及び圧縮することで、各ノズルからインク滴が噴射(吐出)される。
【0025】
キャリッジ12がガイド軸11に沿って主走査方向Xに往復移動するその移動範囲の両端域は、キャリッジ12が移動方向の反転のために減速したり、反転後に加速したりするキャリッジ12の加減速域となっている。本実施形態では、キャリッジ12が定速走行域に至る手前の加速途中から記録ヘッド15による記録(印字)を開始する加速中印字も行われ、また減速の途中まで印字を継続する減速中印字も行われる。もちろん、定速走行域においてのみ印字を行う構成も採用できる。なお、本実施形態では、記録手段である記録ヘッド15を移動させるために設けられた、ガイド軸11、キャリッジ12及びタイミングベルト14等により、移動手段が構成される。
【0026】
キャリッジ12の下方には、記録ヘッド15と用紙18との間隔(ギャップ)を規定する例えば平型のプラテン19がその長手方向をガイド軸11の軸方向に一致させた状態で配置されている。図1においてキャリッジ12の主走査方向移動範囲における右端部位置がキャリッジ12のホームポジションに設定されている。このホームポジションに相当する位置には、キャリッジ12がホームポジション側へ移動した状態で、記録ヘッド15のクリーニング等を行うメンテナンス装置20が配設されている。また、プラテン19の下側にはメンテナンス装置20から排出された廃液が収容される廃液タンク21が配置されている。
【0027】
本体ケース10aの図1における右端下部には紙送りモータ(以下、PFモータ22という)が配設されている。用紙18は、PFモータ22の駆動力がクラッチ手段を介して伝達される給紙ローラ(いずれも図示せず)の回転により給紙され、同じくPFモータ22により駆動される搬送ローラ24(図2参照)に挟持された状態で副走査方向Yへ搬送(紙送り)されるようになっている。キャリッジ12の主走査方向Xへの移動中に記録ヘッド15からインク滴を噴射させながら行われる印字動作(記録動作)と、用紙18の副走査方向Yへの紙送り動作とが交互に行われることにより、用紙18に印刷がなされる。またプリンタ10には、ガイド軸11に沿ってリニアエンコーダ23が設けられている。リニアエンコーダ23はキャリッジ12の移動距離に比例する数のパルスを出力し、その出力パルスを用いて求められるキャリッジ12の移動位置、移動速度及び移動方向に基づいて、キャリッジ12の速度制御及び位置制御が行われる。
【0028】
図2は、記録ヘッド及び搬送機構を示す模式側面図である。図2に示すように、記録ヘッド15の下方には、用紙18の搬送方向において記録ヘッド15の記録位置(又はプラテン19)を挟んだ前後の位置に、搬送手段を構成する搬送ローラ24(紙送りローラ)及び排紙ローラ25がそれぞれ回転可能な状態で配置されている。搬送ローラ24は、駆動ローラ24Aと従動ローラ24Bからなる一対で構成され、排紙ローラ25は、駆動ローラ25Aと従動ローラ25Bからなる一対で構成されている。用紙18は、両ローラ24A,24B、及び両ローラ25A,25Bのうち少なくとも一方に挟持された状態で、PFモータ22(図1参照)の駆動力が伝達されて両駆動ローラ24A,25Aが回転駆動されることにより、図2における左方向(副走査方向Y)へ搬送される。なお、搬送ローラ24よりも用紙搬送方向上流側の位置に設けられた図示しない給紙ローラには、例えばキャリッジ12が移動経路上における所定位置に移動することで接続状態に切り換え操作される図示しないクラッチ手段を介してPFモータ22の駆動力が伝達される。
【0029】
また、搬送ローラ24のやや用紙搬送方向上流側の位置には紙検出センサ26が設けられている。紙検出センサ26は、例えば接触式センサ(スイッチ式センサ)からなり、その接触式の検知部(例えば検知レバー)が搬送経路上の用紙18と干渉可能な状態に配置されている。紙検出センサ26は、給紙された用紙18の先端が検知部に当たってこれを変位させることでオンし、用紙18の後端が検知部を通過してその検知部が元の位置(待機位置)に復帰したときにオフするように構成されている。もちろん、紙検出センサ26は、用紙18を検知できれば他の方式のセンサを代用することができ、例えば光学式センサ(フォトセンサ)を採用してもよい。
【0030】
用紙18の後端が紙検出センサ26の検知部を切って紙なしの検出状態になった後、印字可能な紙送り方向(搬送方向)の範囲としてオーバライド領域ORが設定されている。本実施形態では、例えば紙検出センサ26の検出位置(検出部の位置)から、記録ヘッド15に形成された複数のノズルのうち搬送方向最上流のノズル位置(最上流ノズル位置)までの範囲をオーバライド領域ORとして設定している。例えば用紙搬送方向長さが設定(印刷条件設定)より短い用紙18が給紙されていた場合、紙送り終了後の用紙18の後端がオーバライド領域ORより搬送方向下流側へ逸脱する場合が起こりうる。この場合、紙送り後にそのまま記録ヘッド15による印字が開始されると、プラテン19に印字(インク滴噴射)され、その後、プラテン19上を摺動する用紙18を汚す原因になる。このようなプラテン印字を防止するため、用紙18の後端がオーバライド領域OR内に侵入した後も、用紙18の位置(用紙状態)を管理している。その管理方法の詳細は後述する。
【0031】
図3は、リニアエンコーダの要部を示し、(a)は平断面図、(b),(c)は出力信号を示す。図3(a)に示すように、リニアエンコーダ23は、例えば1インチ(25.4mm)の間に180個のスリット27aが等間隔に形成されたテープ状の符号板27と、センサ28とからなる。符号板27は、図1、図5に示すように、キャリッジ12の走行域背面側において主走査方向(キャリッジ走行方向)と平行となるように張設されている。
【0032】
図3に示すセンサ28は、符号板27を間に挟んで対向する状態に配置された発光素子29と受光素子30とからなる。発光素子29は一対の発光部29a,29aを有しており、受光素子30は主走査方向Xに各発光部29a,29aの間隔と等しい間隔を開けて配置された一対の受光部30a,30aを有している。各発光部29a,29aと各受光部30a,30aはそれぞれ対向して位置すると共に、一対の受光部30a,30aのスリット配列方向(符号板長手方向)における間隔は、各受光部30a,30aからそれぞれ出力される図3(b),(c)に示す各パルスES1(A相),ES2(B相)の位相が90度ずれる値に設定されている。リニアエンコーダ23は、キャリッジ12の走査に従って、各スリット27aを通過する光の断続数に応じた数のパルスを出力する。
【0033】
CRモータ13が正転すなわちキャリッジ12が主走査方向に往動しているときは図3(b)に示すようにパルスES1はパルスES2よりも90度だけ位相が進み、CRモータ13が逆転すなわちキャリッジ12が主走査方向に復動しているときは図3(c)に示すようにパルスES1はパルスES2よりも90度だけ位相が遅れる。そして、パルスES1,ES2の1周期Tは、符号板27のスリット間隔(例えば1/180インチ(=1/180×2.54cm))に対応し、キャリッジ12がスリット間隔を移動する時間に等しい。
【0034】
また、プリンタ10には、PFモータ22の回転位置及び回転速度等を検出するためにロータリ式のエンコーダ42(図5参照)が設けられている。エンコーダ42は、リニアエンコーダ23における符号板27がPFモータ22の回転に応じて回転する回転円板である以外はリニアエンコーダ23と同様の構成であり、2つの出力パルスES3,ES4を出力する。エンコーダ42の符号板(回転円板)は、例えば搬送ローラ24の駆動軸に一体回転可能に設けられている。なお、プリンタ10においては、PFモータ22用のエンコーダ42の符号板に設けられている複数のスリットのスリット間隔は、1/180インチ(=1/180×2.54cm)であり、PFモータ22が1スリット間隔だけ回転すると、1/1440インチ(=1/1440×2.54cm)だけ紙送りされる構成となっている。
【0035】
図5は、プリンタ10の電気的な構成を示す概略構成図である。プリンタ10はCPU31、ASIC32(Application Specific Integrated Circuit)(特定用途向け集積回路)、DCユニット33、PROM34、RAM35、EEPROM36、I/F37(インターフェイス)を備えている。ASIC32はI/F37を介してホストコンピュータ(例えばパソコン等)38との間で各種データ(印刷データ等)の授受を実行する。そして、ASIC32はホストコンピュータ38から送信される印刷データに基づき、印刷解像度や記録ヘッド15の駆動波形等を制御している。
【0036】
また、CPU31はプリンタ10の装置全体を制御し、ホストコンピュータ38からI/F37及びASIC32を介して取り込んだ印刷データに基づき、CRモータ13やPFモータ22の起動及び走行スケジュール(駆動スケジュール)、記録ヘッド15の印刷スケジュールを各々設定する。そして、CPU31は設定した印刷スケジュールに従い、ヘッド駆動回路39を介して記録ヘッド15を駆動制御する。さらに、CPU31はこれら起動及び走行スケジュールに基づく指令信号をDCユニット33に出力する。
【0037】
DCユニット33は指令信号に基づきCRモータ駆動回路40を介してCRモータ13を、PFモータ駆動回路41を介してPFモータ22をそれぞれ駆動制御する。DCユニット33はキャリッジ駆動時、リニアエンコーダ23からパルス信号ES1,ES2を入力し、キャリッジ12の移動速度、移動方向、位置を算出する。また、DCユニット33は紙送り時、エンコーダ42からパルス信号ES3,ES4を入力し、PFモータ22の駆動位置、駆動速度(紙送り位置、紙送り速度)等を算出する。
【0038】
CPU31は、紙送りが終了した直後に記録ヘッド15の印字動作が開始されるように、キャリッジ動作と紙送り動作とを重ね合わせる制御(CR−PF重ね合わせ制御)を行い、この重ね合わせ制御条件を満たすようにCRモータ13及びPFモータ22の起動及び走行スケジュールを作成する。この重ね合わせ制御を行う場合、用紙搬送方向長さが設定長さより短い用紙18が給紙された場合に、紙送り終了前にキャリッジ動作が開始されるため、キャリッジ12が印刷開始位置に達して印字動作を開始する際に記録ヘッド15の印字対象位置に用紙18の少なくとも一部が存在しなくなる場合が起こりうる。この場合、そのまま印字動作を行うとプラテン19に印字することになるので、用紙18の汚れを誘発するプラテン印字を回避すべく、本実施形態では、印字対象位置に用紙があるかないかを判断し、用紙が一部でもなければ印字動作を中止する制御(プラテン印字防止処理)を行う。
【0039】
PROM34には、CRモータ13及びPFモータ22を速度制御するために参照されるキャリッジ速度制御用と紙送り速度制御用の各速度テーブル(加速テーブルと減速テーブル)(図示省略)がそれぞれ記憶されている。速度テーブルは、位置と、位置に応じた目標値(本例ではエンコーダパルス周期)との関係を示すテーブルである。本実施形態では、キャリッジ速度制御は、キャリッジ位置に応じた目標値を速度テーブルの参照により取得して、実測値(検出周期)を目標値(目標周期)に近づけるフィードバック制御で行われる。また、紙送り速度制御も、紙送り位置に応じた目標値を速度テーブルの参照により取得して、同様に実測値を目標値に近づけるフィードバック制御で行われる。もちろん、速度制御として、フィードフォワード制御も採用可能である。
【0040】
また、CPU31にはタイマIC43が接続されており、CPU31はタイマIC43から所定時間(例えば数10〜数100μsec.の範囲内の値)毎にタイマ信号を入力する。CPU31はタイマ信号を入力する度にタイマ割り込み処理を実行する。
【0041】
RAM35には、CPU31が実行するプログラムデータ及びCPU31による演算結果及び処理結果である各種データ、さらにASIC32で処理された各種データ等が一時記憶される。また、RAM35には、印刷データ及びその処理途中、処理後のデータを格納するバッファとして機能とする所定記憶領域が設けられている。また、EEPROM36には、ファームウェアプログラム等が記憶されている。
【0042】
図6はプラテン印字防止装置を示すブロック図である。CPU31がファームウェアプログラム等を実行することにより制御部50が構築されている。制御部50は、シーケンス制御部51、PFモータドライバ52、CRモータドライバ53、ヘッドドライバ54を備える。シーケンス制御部51は、給紙動作、印字動作・紙送り動作、排紙動作を行わせるべく、シーケンスに従ってPFモータドライバ52、CRモータドライバ53、ヘッドドライバ54に指示(要求)を出す。
【0043】
PFモータドライバ52は、給紙・紙送り・排紙のために駆動されるPFモータ22の速度制御(例えばPID制御)及び停止位置制御等を含む駆動制御などを行うために必要な各種演算処理を行う。CRモータドライバ53は、キャリッジ12の移動させるために駆動されるCRモータ13の速度制御及び停止位置制御等を含む駆動制御などを行うために必要な各種演算処理を行う。ヘッドドライバ54は、記録ヘッドから液滴を噴射(ファイア)する噴射時期などを決めるために必要な各種演算処理を行う。
【0044】
PFモータドライバ52は演算部55を備え、演算部55には重ね合わせ演算部55A及び監視部55Bを備える。重ね合わせ演算部55Aは、本実施形態において特徴部分の一つである、PFモータ22の駆動停止前にCRモータ13を起動させて紙送り動作とキャリッジ駆動動作とを重ね合わせる際のCRモータ13の起動時期を演算するCR−PF重ね合わせ演算を行う。また、監視部55Bは、実際の用紙18の搬送方向長さ(例えばA5判)が設定長さ(例えばA4判)より短く、紙送り終了時点で用紙18の後端が記録ヘッド15の基準位置(例えば最上流ノズル位置)を通過した場合に、そのままインク滴が噴射(ファイア)されてプラテン19を汚すことがないように監視する。すなわち、監視部55Bは、紙検出センサ26が「紙あり」から「紙なし」の検出状態に切り替わって用紙18の後端が検知されると、この後端検知時点において初期オーバライド量SORintと紙送り残量SRpfとの大小を比較する。そして、紙送り残量SRpfが初期オーバライド量SORintより大きければ(SRpf>SORint)、紙送り終了時に用紙18の後端がオーバライド領域から逸脱して、記録ヘッド15の記録位置に用紙18の少なくとも一部が存在しなくなる「紙なし状態」と判定する。「紙なし状態」と判定した場合、監視部55Bは記録ヘッド15からのインク滴の噴射(ファイア)を中止させる。
【0045】
監視部55Bは、この「紙なし状態」を含む用紙18の3つの状態を管理する。すなわち、用紙18が紙検出センサ26により検知されている「紙あり」、用紙18の後端が紙検出センサ26により検知された後、その後端が記録ヘッド15による印字可能なオーバライド領域OR内にある「オーバライド」、用紙18の後端がオーバライド領域ORから搬送方向下流側に逸脱して用紙18に印字されない部分が少なくとも一部発生する「紙なし」の3つの用紙の状態である。そして、その管理する用紙状態が「紙なし」の状態であれば、印字の実行を中止させる印字中止指令をヘッドドライバ54に出力する。本実施形態では、この印字中止指令の出力タイミングは、キャリッジ12の起動前の場合と起動後の場合とがある。
【0046】
DCユニット33に内蔵されたモータコントロール部44は、PFモータドライバ52からの指示に基づく指令信号をPFモータ駆動回路41に出力するとともに、CRモータドライバ53からの指示に基づく指令信号をCRモータ駆動回路40に出力する。また、モータコントロール部44は、PFカウンタ56とオーバライドカウンタ57(ORカウンタ)とCRカウンタ58を備える。PFカウンタ56は、PFモータ22の駆動開始時にリセットされて、エンコーダ42の出力パルスに基づきインクリメント処理することで、紙送り開始から現時点までの紙送り量Spfを計数する。また、オーバライドカウンタ57は、紙検出センサ26が用紙18の後端を検知した時点に初期オーバライド量SORintがセットされ、エンコーダ42の出力パルスに基づきデクリメント処理することで、用紙18の後端がオーバライド領域ORの搬送方向末端位置(限界位置)に達するまでの残量(オーバライド量)を計数する。
【0047】
また、CRカウンタ58は、リニアエンコーダ23の出力パルスに基づき計数処理を行う2種類のカウンタを有し、それぞれキャリッジ12の移動開始位置からの相対位置、および移動経路上の原点からの位置をそれぞれ計数する。CRカウンタ58のうち一のカウンタは、キャリッジ往動時に計数値をインクリメント、キャリッジ復動時に計数値をデクリメントし、その得られたカウント値に基づきキャリッジ12の原点位置(例えばホームポジション)からの位置が把握可能である。このとき、キャリッジ12の移動方向は、CPU31がリニアエンコーダ23の出力パルスに含まれるA相(SE1)とB相(SE2)の位相の進み方の違いに基づき把握される。詳しくは図3(b)に示すように、A相の立ち上がりエッジを検出したときにB相のパルスがLレベルであれば、正転方向(往動)、図3(c)に示すようにA相の立ち上がりエッジを検出したときにB相のパルスがHレベルであれば、逆転方向(復動)であると認識する。CRカウンタ58のうち他の一のカウンタの計数値として得られるキャリッジ12の移動開始位置からの相対位置は、キャリッジ速度制御の際に速度データ(図示せず)を参照して目標値を取得するために用いられ、またキャリッジ12を所定位置に停止させる停止位置制御等に用いられる。
【0048】
また、図6に示すモータコントロール部44は、リニアエンコーダ23からの入力パルスのエッジ間の時間を計時してその周期を計測する。この計測周期はキャリッジ12を速度制御するフィードバック制御における実測値(検出周期)として使用される。
【0049】
また、印字コントロール部45は、ヘッドドライバ54からの指示に基づく指令信号をヘッド駆動回路39に出力する。印字コントロール部45はカウンタ59を備える。カウンタ59は、リニアエンコーダ23の出力パルス(詳しくは出力パルスの周期を逓倍した周期のパルス)に基づき計数処理を行って、キャリッジ12(つまり記録ヘッド15)の移動開始位置からの相対位置を計数する。ヘッドドライバ54は、印刷データに基づきキャリッジ12の移動開始位置からの距離として印刷開始位置を求め、その印字開始位置と共に印字コントロール部45に印字を指示する。印字コントロール部45は、キャリッジ12の起動後、カウンタ59の計数値が印刷開始位置に達すると、ヘッド駆動回路39を介して記録ヘッド15にインク滴の噴射(ファイア)を開始させる。また、印字コントロール部45は、リニアエンコーダ23の出力パルスに基づき該出力パルスの周期に比例した(周期を逓倍した)周期の噴射タイミング信号(パルス)を生成し、この噴射タイミング信号に基づきインク滴の噴射タイミングが決められることにより、加速中印字及び減速中印字が一定の印字ピッチ(ドットピッチ)で行われる。なお、各ドライバ52,53は、それぞれ対応する各カウンタ56〜58の計数値をDCユニット33から取得可能であり、速度制御(例えばPID制御)等の指令値を算出する各種演算処理に用いる。
【0050】
次にPFモータドライバ52における重ね合わせ演算部55Aの演算内容について、図4を用いて説明する。図4は、PFモータ22の速度波形とCRモータ13の速度波形を模式的に示した図である。同図のグラフでは、横軸が時間、縦軸が速度で示されている。重ね合わせ演算部55Aは重ね合わせ最適化演算処理として、加速時間計測処理、距離演算処理、移動時間演算処理、及び紙送り量演算処理を行う。そして、この重ね合わせ最適化演算処理によって、PFモータ22とCRモータ13との動作が重なる期間を最適化するCR起動タイミングが、紙送り終了までの紙送り量STpfとして求められる。
【0051】
加速時間計測処理では、CRモータ13の起動指令を受けたときにリニアエンコーダ23の出力および速度演算部の出力に基づいてCRモータ13の起動時の加速時間を計測し、この計測結果をEEPROM36に記憶させる。この加速時間は、CRモータ13が起動してから定速走行領域に到達するまでの時間であり、図4に示す時間Taccである。そして、この記憶された加速時間Taccは、CRモータ13の次の起動を行う際の演算に用いられる。また、距離演算処理では、リニアエンコーダ23の出力とCPU31から送られてくる印字情報とに基づいて、停止しているキャリッジ12の現在位置と次の印字開始位置との距離Lcを演算する。
【0052】
移動時間演算処理では、停止位置から印字開始位置までキャリッジ12が移動するのに要する移動時間Tcrを演算する(図4参照)。この移動時間Tcrは、キャリッジ12が定速Veで走行する定速走行域に到達してから印字開始するまでの時間をTuvとすると、EEPROM36に記憶されているCRモータ13の前回の起動時の加速時間Taccを用いて、次式で表される。
Tcr=Tacc+Tuv … (1)
なお、電源投入時や、キャリッジ12のクリーニング時等のその前後でキャリッジ12の重量が急激に変化する場合には、上記演算で用いる加速時間Taccは、想定される加速時間の最小値とする。
【0053】
一方、上記演算で用いられる時間Tuvは、キャリッジ12が加速時間Taccの間に進む距離をLtとすると、上記距離演算処理で求められたキャリッジ12の停止位置(現在位置)から次の印字開始位置までの距離Lcを用いて、次式で示される。
Tuv=(Lc−Lt)/Ve … (2)
そして、キャリッジ12が上記加速時間Taccの間に進む距離Ltは、次式で表される。
Lt=Ve・Tacc/2 … (3)
速度Veは予め決定される所定値である。上記(1),(2),(3)式から移動時間Tcrが求まる。なお、加速時間Taccは、計測して取得する方法に替え、PROM34に記憶された速度データから演算で求めてもよいし、その演算結果がデータとして予めEEPROM36等に記憶されたものを読み出して使用する方法でもよい。
【0054】
紙送り量演算処理では、移動時間演算処理によって演算された移動時間Tcrに基づいて、PFモータ22が所定の速度Vepで定速走行域を進んでいて停止するまでに上記移動時間Tcrと同じ時間かかると仮定した場合に上記時間Tcrの間にPFモータ22によって紙送りされる紙送り量STpfを演算する。
【0055】
この紙送り量STpfは、次のようにして求められる。PFモータ22の減速時間Tpd、すなわちPFモータ22が上記所定の速度Vepから停止するまでの時間Tpdは、上記所定の速度Vepに応じて決まる一定の値となっている。PFモータ22が単位距離進む間(例えば1回転する間)に紙送りされる紙送り量をαとすると、紙送り量STpfは、次式で与えられる。
STpf=α・(Vep・(Tcr−Tpd)+Vep・Tpd/2) … (4)
CRモータドライバ53は、シーケンス制御部51から次回の印字駆動要求を受け付けると、PFモータドライバ52にCR起動指令要求を送り、このCR起動指令要求を受け付けたPFモータドライバ52は重ね合わせ演算部55Aに紙送り量STpfを求める上記演算を開始させる。また、PFモータドライバ52は、PFカウンタ56が計数する実際の紙送り量Spfをモータコントロール部44から取得し、今回の紙送り量SApf(総紙送り量)から現時点までの紙送り量Spfを差し引いて紙送り残量SRpfを算出する。そして、重ね合わせ演算部55Aが算出した紙送り量STpfと、紙送り残量SRpfとを比較し、紙送り残量SRpfが紙送り量STpf以下となったときに、CRモータ13の起動を指令するCR起動信号をCRモータドライバ53に出力する。さらにPFモータドライバ52は、監視部55Bが、用紙18の後端がオーバライド領域ORを搬送方向下流側へ逸脱した「紙なし」状態であると判断した場合は、噴射(ファイア)を中止させる印字中止指令をヘッドドライバ54へ出力する。
【0056】
次に、プリンタ10の動作を図7、図8を参照して説明する。図7は、プラテン印字防止処理(タイマ割り込み処理)を示すフローチャートであり、図8は、プリンタにおいて通常動作時とプラテン印字防止処理時の印刷処理動作を示すトランザクション図である。図8において上から下へ向かう時系列方向において前半(上半分)が通常動作時、後半(下半分)がプラテン印字防止処理時をそれぞれ示す。まず図8を用いて、通常動作時とプラテン印字防止処理時との処理の流れについて説明する。
【0057】
まず通常動作時から説明する。シーケンス制御部51は、ホストコンピュータ38から受信した印刷データに含まれるコマンドに従って給紙・紙送り・印字・排紙の各シーケンスを実行する。印刷中におけるシーケンス処理では、図8に示すように「紙送り」と「印字」のシーケンスが交互に繰り返される。紙送りシーケンスにおいて、シーケンス制御部51から紙送り要求を受信すると、PFモータドライバ52はPFモータ22を起動させて、その要求で指示された紙送り量SApfの紙送り駆動を行う。紙送りを開始すると、PFモータ22はシーケンス制御部51へ紙送り開始の旨を応答する。
【0058】
シーケンス制御部51は紙送り開始の応答を受信すると、次の印字シーケンスに移行し、CRモータドライバ53及びヘッドドライバ54に印字駆動要求を送る。印字駆動要求を受信したCRモータドライバ53は、CR−PF重ね合わせ制御のためにCRモータ13の起動タイミングを指示するCR起動信号の指令を要求するCR起動指令要求をPFモータドライバ52に送る。一方、ヘッドドライバ54は印字駆動要求を受信すると、内部で印字処理を進めるとともにキャリッジ12が起動して印字開始位置に達するまで待機する。
【0059】
PFモータドライバ52は、紙送り駆動中に図7に示すプログラムをタイマ割り込みで実行する。その割り込み処理中で紙送り速度制御のフィードバック演算(本例ではPID制御演算)を行って指令値を求め、その求めた指令値を割り込み周期毎にモータコントロール部44に出力して紙送り制御を行う。また、CRモータドライバ53からCR起動指令要求を受け付けると、タイマ割り込み処理中の一処理として重ね合わせ演算部55Aが起動され、CR起動タイミングを決める紙送り量STpfを演算する。そして、PFカウンタ56の計数値(=Spf)を今回の紙送り量SApfから差し引いて実際の紙送り残量SRpfを求め、紙送り残量SRpfが紙送り量STpf以下になると、CRモータドライバ53へCR起動信号を出力する。通常動作時においては、監視部55Bが管理している用紙状態が、紙検出センサ26が用紙18を検知している「紙あり」状態であるため、印字は許可される。印字許可の場合は、特にヘッドドライバ54に特別な指示は与えられない。
【0060】
CRモータドライバ53はCR起動信号を受け付けると、CRモータ13を起動させ、キャリッジ12をその停止位置から速度データにより規定される所定の速度プロファイルに従う速度で今回の走査終了時の停止位置まで移動させる。この移動過程においてキャリッジ12が印字開始位置に到達すると、ヘッドドライバ54が印字指令を印字コントロール部45に出力し、記録ヘッド15による印字動作が開始される。印字動作が終了すると、ヘッドドライバ54はシーケンス制御部51へ印字終了の旨を送信する。印字終了の旨を受信したシーケンス制御部51は、次の紙送りシーケンスへ移行する。
【0061】
次にプラテン印字防止処理時の動作について説明する。ここで、用紙搬送方向長さが設定より短い用紙18が給紙されていたとする。また、次の紙送りを行うと、その紙送り途中で用紙18の後端が紙検出センサ26の検出部を通り過ぎ、かつ紙送り終了時点において用紙18の後端がオーバライド領域OR(図2参照)を搬送方向下流側へ逸脱するものとする。
【0062】
紙送りシーケンスに移行すると、紙送り要求に応じて紙送り駆動が開始される。次の印字シーケンスに移行すると、先と同様の手順で、PFモータドライバ52がCRモータドライバ53からCR起動指令要求を受信すると、重ね合わせ演算部55A及び監視部55Bが起動される。このとき、監視部55Bは、紙検出センサ26が用紙18の後端を検知すると、用紙状態を「オーバライド」状態に移行させるとともにプラテン印字防止のための判定演算を開始する。判定演算では、後端検知時点における紙送り残量SRpfを演算し、紙送り残量SRpfが初期オーバライド量SORintより大きい(SRpf>SORint)か否かを判定する。現在の紙送り終了時点における位置で用紙18の端部がオーバライド領域ORから搬送方向下流側に逸脱することを示す、SRpf>SORintが成立すると判定すると、ヘッドドライバ54へ印字中止指令を出力する。
【0063】
このプラテン印字防止処理時においても、実際の紙送り残量SRpfが、重ね合わせ演算部55Aが求めた紙送り量STpf以下になると、CR起動信号がCRモータドライバ53へ出力される。CRモータドライバ53はCR起動信号を受信すると、CRモータ13を起動させ、キャリッジ12を今回の走査終了時の停止位置まで移動させる。そして、この移動過程においてキャリッジ12が印字開始位置に到達しても、ヘッドドライバ54は先に受け付けた印字中止指令に基づき既に印字の中止処理をしているので、印字コントロール部45への印字指令の出力は行わない(強制印字終了)。このため、印字動作(インク滴噴射)なしでキャリッジ12だけが移動(空走)することになる。このため、用紙18の後端がオーバライド領域ORを搬送方向下流側へ逸脱した状態での印字は行われず、この結果、プラテン19への印字が回避される。ヘッドドライバ54は強制印字終了すると、印字終了の旨をシーケンス制御部51へ送信する。シーケンス制御部51は印字終了の旨を受信すると、PFモータドライバ52に問合せをし、その応答として強制印字終了の旨を知らされると、印字中断処理を行う。
【0064】
次にPFモータドライバ52内で実行されるタイマ割り込み処理を、図7に示すフローチャートに従って詳細に説明する。図7に示すプログラムをCPU31が実行することで、PFモータドライバ52の演算部55が構築される。このため、重ね合わせ演算部55Aと監視部55Bの各演算も、図7に示すフローチャートの処理の中で行われる。つまり、タイマ割り込み処理の中で、重ね合わせ演算処理及びプラテン印字防止処理が合わせて行われる。
【0065】
PFモータドライバ52の処理として、CPU31は図7にフローチャートで示されるプログラムを、所定時間毎のタイマ割り込み処理で実行する。ここで、ステップS1及びS2が、重ね合わせ演算部55Aの処理に相当し、ステップS3〜S11が監視部55Bの処理に相当する。また、ステップS12及びS13が、今回の紙送り量SApfからPFカウンタ56の計数値(=Spf)を差し引いて取得される実際の紙送り残量SRpfが、重ね合わせ演算部55Aが求めた紙送り量STpf以下になったときにCR起動信号を出力する処理に相当する。さらにステップS14及びS15が、紙送り速度制御(例えばPID制御)の処理に相当する。
【0066】
まずステップS1では、CR起動指令要求があったか否かを判断する。CR起動指令要求があった場合はステップS2へ進み、CR起動指令要求がなかった場合はステップS3へ進む。
【0067】
ステップS2では、CR−PF重ね合わせ演算(CR起動タイミング計算)を行う。すなわち、重ね合わせ演算部55Aが、前記(4)式を用いて紙送り量STpfを算出する。なお、この演算は、今回のパスの印字データが送られてきておらず印字開始位置が確定しないうちは行うことができない。このため、印字開始位置が確定する前にCR起動指令要求を受け付けた場合は、その後、印字開始位置が確定した時点で演算を行う。また、この演算は、毎回の紙送りにおいてCR起動指令要求を受け付けた際に1回のみ行う。
【0068】
ステップS3〜S11の処理では、「紙あり」「オーバライド」「紙なし」の3つの用紙状態の管理(S3〜S9)と、CR起動指令要求(つまり次回印字予定あり)があるときに、用紙18の後端がオーバライド領域ORを搬送方向下流側へ逸脱した「紙なし」状態であれば印字中止指令を行う処理(S10,S11)が行われる。これら各ステップS3〜S11の処理内容については後述する。
【0069】
ステップS12では、CR起動タイミングになったか否かを判断する。すなわち、ステップS2で先に算出された紙送り量STpfと、今回の紙送り量SApfからPFカウンタ56の計数値(現在位置までの紙送り量)を差し引いて求めた紙送り残量SRpfとを比較して、実際の紙送り残量SRpfが紙送り量STpf以下となったことをもってCR起動タイミングに達したと判断する。CR起動タイミングに達した場合はステップS13に進み、CR起動タイミングに達しない場合は、ステップS14に進む。
【0070】
ステップS13では、CR起動信号をCRモータドライバ53に出力する。この結果、CR起動信号を受け付けたCRモータドライバ53が、CRモータ13の起動を指令し、キャリッジ12が現在位置(停止位置)からの移動を開始する。
【0071】
ステップS14では、紙送り制御のためのPID計算(PID制御演算)を行う。すなわち、CPU31は、PFカウンタ56の計数値である現在の紙送り位置に対応する速度制御上の目標値を紙送り用の速度テーブルを参照して取得し、実測値を目標値に近づけるPID演算を行って今回のPF指令値を算出する。そして、ステップS15において、今回のPF指令値を、モータコントロール部44を介してPFモータ駆動回路41へ出力する。このPID演算で求められたPF指令値が割り込みサイクルタイム毎に指令されることにより、所定速度プロファイルに沿った速度で紙送りが行われる。なお、速度データは紙送り量の違いに応じて複数用意され、紙送り量が多いほど最高速度(定速度)が高速となる速度データが選択される。
【0072】
次に用紙状態管理及びプラテン印字防止処理を行うステップS3〜S11の処理について詳述する。監視部55Bが管理する用紙状態は、紙送りの進行に伴って順番に変化する。監視部55Bは、例えばEEPROM36の所定記憶領域にデータを記憶することで用紙状態を管理する。例えば「紙あり」を「00」、「オーバライド」を「01」、「紙なし」を「10」で管理する。まずステップS3において、用紙状態が「紙あり」と判断された場合は、次に紙検出センサ26が「紙あり」から「紙なし」に切り換わったか否かを判断する(S4)。つまり、用紙18の後端が検知されたか否かを判断する。なお、ここでの「紙なし」は、紙検出センサ26の検知状態を指すもので、用紙状態の「紙なし」とは異なる。
【0073】
そして、紙検出センサ26が「紙あり」から「紙なし」に切り換わると、紙送り残量SRpfが初期オーバライド量SORintより大きい(SRpf>SORint)か否かを判断する(S5)。SRpf>SORintが不成立の場合は、用紙状態を「オーバライド」状態に設定する(S6)。一方、SRpf>SORintが成立した場合は、用紙状態を「紙なし」状態に設定する(S7)。例えば用紙搬送方向長さが設定より短い用紙18が給紙されており、かつ初期オーバライド量SORintより長い搬送距離で紙送りがなされた場合は、用紙18の端部がオーバライド領域ORから搬送方向下流側へ逸脱する場合がある。このような場合は、用紙状態が「紙なし」に設定される。
【0074】
用紙状態が「紙なし」である場合、次回のタイマ割り込み処理実行時において、用紙状態が「紙なし」であると判断され(S3)、CR起動指令要求を既に受け付けた状態にあれば(S10でYES)、ヘッドドライバ54へ印字中止指令を出力する(S11)。この結果、PFモータドライバ52は印字中止処理を行い、記録ヘッド15による印字動作(インク滴噴射)は行われない。なお、本実施形態では、ステップS5の判断処理を行うCPU31により判断手段が構成される。また、ステップS10,S11の処理を実行するCPU31により制御手段が構成される。
【0075】
図9〜図11は、プラテン印字防止処理時におけるPFモータ22とCRモータ13の速度波形をそれぞれ示すグラフである。紙検出センサ26の後端検知タイミングは、紙送り過程のどのタイミングで発生するかはその時々で異なるので、後端検知タイミングとCR起動信号出力タイミングはどちらが先になるかは特定できない。図9は、紙検出センサ26が後端検知をした後にCR起動信号が出力された例である。図9(a)は、紙送り終了時点に用紙の後端がオーバライド領域OR内にある場合、同図(b)は、紙送り終了時点に用紙の後端がオーバライド領域ORから搬送方向下流側へ逸脱する場合の例である。
【0076】
プラテン印字防止処理では、紙送り中に紙検出センサ26が用紙18の後端を検知したこと(S4でYES)をトリガとして判定演算(S5〜S7,S10,S11)が開始される。判定演算では、紙送り終了時点に用紙18の後端がオーバライド領域OR内にあるか、オーバライド領域ORから搬送方向下流側へ逸脱するかを判定する演算処理が行われる。例えば図9(a),(b)に示すように、紙検出センサ26が後端検知をした後にCR起動信号が出力された場合、後端検知時に判定演算が実行される。このため、CR起動信号出力前のタイミングで、印字の可否を判定できる。
【0077】
例えば図9(a)に示すように紙送り終了時点に後端位置Pendがオーバライド領域OR内にある「オーバライド」判定の場合は、CR起動信号の出力とほぼ同時にCRモータ13が起動され、キャリッジ12が定速走行域に達した後、さらに印字開始位置に達するとインク滴噴射が開始される(ファイア開始)。一方、図9(b)に示すように紙送り終了時点に後端位置Pendがオーバライド領域ORから逸脱する「紙なし」判定の場合は、印字中止指令が出力されてヘッドドライバ54が印字中止処理を行う。このため、その後、CR起動信号の出力とほぼ同時にCRモータ13が起動されるものの、キャリッジ12が印字開始位置に達してもインク滴噴射は中止により行われない(ファイア禁止)。このため、キャリッジ12は空走することになる。
【0078】
また、図10(a),(b)に示すように、紙検出センサ26が後端検知をする前にCR起動信号が出力された場合、判定演算は紙検出センサ26が後端を検知した時点に開始される。この演算開始タイミングはCR起動信号出力かつ後端検知(つまりオーバライドカウンタON)の条件を満たす時なので、特許文献1と同様のタイミングとなる。例えば図10(a)に示すように紙送り終了時点に後端位置Pendがオーバライド領域OR内にある「オーバライド」判定の場合は、CR起動信号の出力とほぼ同時にCRモータ13が起動され、キャリッジ12が印字開始位置に達するとインク滴噴射が開始される(ファイア開始)。一方、図10(b)に示すように紙送り終了時点に後端位置Pendがオーバライド領域ORから逸脱する「紙なし」判定の場合は、CR起動信号の出力とほぼ同時にCRモータ13が起動されるものの、キャリッジ12が印字開始位置に達してもインク滴噴射は中止により行われない(ファイア禁止)。このため、キャリッジ12は空走する。
【0079】
また、図11は、前回の紙送り中に紙検出センサ26の用紙後端検知後、今回の紙送りを後端がオーバライド領域OR内に位置する状態で開始する例である。なお、図11は、図9及び図10のグラフに比べ搬送方向に拡大したスケールでオーバライド領域ORが広く描かれている。
【0080】
図11(a),(b)に示すように、CR起動指令要求の受信時(S1)に、用紙18の後端がオーバライド領域OR内に位置する「オーバライド状態」(S3)にあるので、CR起動指令要求受信をトリガとして判定演算(S8〜S11)が開始される。CR起動指令要求はCR起動信号出力タイミングより当然ながら先に受信されるので、CR起動信号出力タイミングより前のタイミングで判定演算は行われる。但し、CR起動指令要求受信時点で今回のパスの印字データが送られてきておらず印字開始位置を確定できない場合に限り、CR起動指令要求受信時に少し遅れて判定演算は開始される。
【0081】
判定演算では、紙送り終了時点に用紙18の後端がオーバライド領域OR内にあるか、オーバライド領域ORから搬送方向下流側へ逸脱するかを判定する判定処理を含む演算処理(S8〜S11)が行われる。すなわち、紙送り残量SRpfがオーバライド量SORを超えた(SRpf>SOR)か否かを判断する(S8)。ここで、オーバライド量SORとは、オーバライドカウンタ57の計数値、すなわち初期オーバライド量SORintから後端検知以後の紙送り量を減算した値である。この判定演算によって、CR起動信号s出力前のタイミングで、印字の可否を判定できる。
【0082】
例えば図11(a)に示すように紙送り終了時点に後端位置Pendがオーバライド領域OR内にある「紙あり」判定の場合は、CR起動信号の出力とほぼ同時にCRモータ13が起動され、キャリッジ12が印字開始位置に達するとインク滴噴射が開始される(ファイア開始)。一方、図11(b)に示すように紙送り終了時点に後端位置Pendがオーバライド領域ORから逸脱する「紙なし」判定の場合は、CR起動信号の出力とほぼ同時にCRモータ13が起動されるものの、キャリッジ12が印字開始位置に達してもインク滴噴射は中止により行われない(ファイア禁止)。このため、キャリッジ12は空走する。
【0083】
特許文献2に記載された従来装置では、後端がオーバライド領域内に位置する状態から紙送りを開始するときも、オーバライドカウンタのON(つまり紙検出センサ26の後端検知以後)かつCR起動信号受信をもって印字不許可すべきか否かを判定する判定演算を行っていたので、これに比べ本実施形態の方法は余裕をもって判定できる。
【0084】
以上、本実施形態では、印字中止時にもCR起動信号を出力してキャリッジ12を起動させる構成としたが、CR起動信号の出力を中止する構成も採用できる。すなわち、CR起動信号出力前に印字中止の旨の判定が出れば、印字中止指令を出力すると共にCR起動信号の出力を中止する。この方法によれば、図9(b)においてCR起動信号が出力されなくなるので、プラテン19への印字の回避に加え、キャリッジ12の空走も回避できる。また、図11(b)に示す後端検知後の次回以降の紙送りにおいても、CR起動信号が出力されなくなるので、プラテン19への印字の回避と、キャリッジ12の空走の回避を実現できる。特に特許文献2の従来装置においては、CR起動信号受信が判定演算開始のトリガを決める条件の一つに含まれているので、判定演算は必ずCR起動信号受信後に開始される。このため、判定結果が出るときには常にCRモータが既に起動された後となる。このため、印字不許可指令が発せられて印字動作をしなくても、キャリッジは必ず空走することになる。これに対して、上記構成を採用した本実施形態の場合、判定結果がCR起動信号出力前に出る場合がかなりあるので、印字中止指令の際にキャリッジ12が空走する頻度を減らすことができる。
【0085】
なお、印字中止指令を出力した場合、シーケンス制御部51は中断処理として給紙シーケンスへ移行する。このため、印字中止指令が出力されると、直ちに給紙処理に移行し、次頁の用紙18の給紙が開始される。すなわち、本実施形態のプリンタ10では、キャリッジ12がその移動経路上の所定位置に移動してレバー操作を行ってクラッチ手段を接続状態とし、PFモータ22の動力を給紙ローラ(図示せず)に伝達可能とする。この結果、用紙18の後端がオーバライド領域を逸脱した時点で印字中止指令が出力されるとともに印字動作のためのCR起動信号の出力が中止され、これに替わってキャリッジ12を所定位置へ移動させるCR起動信号を出力する。
【0086】
例えば、キャリッジ12が空走する構成であると、その回の印字のための走行が終了してから、所定位置へ移動することになるが、キャリッジ12の空走を回避できる本例の構成によれば、キャリッジ12の所定位置への到達を早め、その分、次頁の給紙開始時期を早められる。
【0087】
また、CR起動信号を常に出力してキャリッジ12を空走させる構成の場合も含め、本実施形態のプリンタ10では加速中印字を行うので、以下のメリットも得られる。すなわち、加速過程での印字(加速中印字)が行われるパス(一回のキャリッジ移動)のときは、CRモータ13の起動からキャリッジ12が印字開始位置に達するまでにあまり時間的な余裕がない。このような加速中印字を特許文献2に記載の従来装置で行う場合、CRモータの起動とほぼ同時に開始された判定演算の結果、印字不許可を指令しても印字動作が中止される時点に既に印字開始タイミングに達した後になることが可能性として起こり得る。これは、高速化の要求のために特に加速中印字の印字開始タイミングが早まるほど顕著となる。この場合、プラテン印字を確実に防止するために判定演算結果が出るまでキャリッジの起動時期を遅らせたり、印字開始位置までの移動時間が十分確保される場合に限りキャリッジを起動させたりするなどの特別な処理が必要になる。これに対し、本実施形態のプリンタ10によれば、CR起動信号の出力前に判定結果が出る場合、キャリッジ12の起動前に印字中止指令(印字不許可指令)を出力できるので、加速中印字時にキャリッジ12の起動時期を遅らせる特別な処理の実施頻度を低減することができる。
【0088】
以上、詳述したように本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)紙検出センサ26が用紙18の後端を検知したことをトリガとして、紙送り終了後に用紙18の後端がオーバライド領域ORを搬送方向下流側へ逸脱するかどうかを判定する判定演算を開始する。このため、CR起動信号の出力前に紙検出センサ26が後端検知した場合は、CR起動信号の出力前に事前に印字動作を中止すべきか否かを早めに把握できる。よって、印字を中止すべき判定が遅れたために印字が開始されてしまう不都合を回避し易くなり、これにより従来装置に比べ一層確実にプラテン印字を防止できる。
【0089】
(2)プリンタ10は、キャリッジ12の加速途中から印字動作を開始する加速中印字を行う構成であるので、キャリッジ起動時から印字動作開始までの時間が非常に短い。このような加速中印字が行われる走査時においても、キャリッジ起動前に余裕をもって判定結果が得られる頻度が増えるので、判定遅れに起因して誤ってプラテン印字される事態をより確実に防止できる。また、後端検知時にプラテン印字を確実に防止するために判定結果が出るまでCRモータ13の起動を待たせる待ち時間を設けた場合、判定結果が早めに分かる分だけ、待ち時間をなるべく短く済ませられるので、待ち時間によるスループットの低下を少なく抑えることができる。
【0090】
(3)さらに、CR起動信号の出力前に紙検出センサ26が用紙18の後端を検知して、判定結果がCR起動信号出力条件成立前に出た場合にCR起動信号の出力を中止する構成の採用も可能となる。この構成を採用した場合、CR起動信号の出力を中止することにより、印字動作だけでなくキャリッジ12の空走をも無くすことができる。キャリッジ12の空走が無くなれば、印字動作がないのにキャリッジ12が走行する不自然な動きを減らせるうえ、無駄な空走動作が減る分だけ消費電力の節約やCRモータ13の長寿を延ばすことに寄与する。
【0091】
(4)印字中止判定の場合、印字中止指令を出力するとともにCR起動信号の出力を中止する構成では、CR起動信号の出力中止に替えてキャリッジ12を所定位置まで移動させるCR起動信号を出力し、給紙を直ちに開始させる。よって、PFモータ22と給紙ローラとの間に介在するクラッチ手段が直ちに接続され、次の給紙を早期に開始させることができる。
【0092】
(5)用紙後端検知時以後の次回以降の紙送りでは、CR起動指令要求の受信をトリガとして判定演算を開始し、その時の紙送り残量SRpfとオーバライド量SORとを比較し、SRpf>SORが成立するか否かを判断して、印刷続行可能か否かを判断する(第2判断ステップ)。このため、印刷続行可能であるか否かの判定を、CR起動指定要求受信後、直ちに開始できる。つまり、印字を中止すべきか否かの判定を、常にキャリッジ12(つまり記録ヘッド15)の移動開始前に行うことが可能になる。
【0093】
(6)給紙・紙送り・排紙を管理するPFモータドライバ52がCR−PF重ね合わせ演算及びプラテン印字防止処理(判定演算を含む)を行うので、各ドライバ52〜54間で演算や判定に必要なデータを遣り取りする回数が少なく済む。このため、その分、必要な指令(CR起動信号・印字中止指令)を早期に出力することが可能になる。つまり、演算や判定に必要なデータを管理するPFモータドライバ52が、前記演算及び判定を行うので、データの遣り取り回数が少なく済み、必要な指令を早期に出力できる。
【0094】
(7)印字動作が中止されるときは、常にキャリッジ12(記録ヘッド15)が空走する構成では、プラテン印字に影響しないキャリッジ12(記録ヘッド15)の移動を中止させるための余分な制御を必要としない。よって、プラテン印字防止処理の制御内容が簡素で済む。
【0095】
(8)用紙搬送方向長さが設定より短い用紙18が給紙されて、給紙途中で紙検出センサ26が後端を検知する場合にも、紙送り残量SRpfが初期オーバライド量を超える場合は印字動作を中止できるので、給紙時にもキャリッジ動作を重ね合わせることができる。よって、一層スループット向上に寄与する。
【0096】
尚、実施の形態は、上記に限定されるものではなく、以下のように変更してもよい。
(変形例1)前記実施形態では、PFモータドライバ52にプラテン印字防止処理を行わせたが、CRモータドライバ53やDCユニット33に行わせても構わない。つまり、プラテン印字防止処理の実行主体は特に限定されない。
【0097】
(変形例2)図7に示すプログラムでは、用紙状態として「紙なし」状態を設定した場合(S7,S9)、次回のタイマ割り込み処理時において印字中止指令(S11)を行う構成であったが、同じ割り込み処理内で印字中止指令を行う構成も採用できる。
【0098】
(変形例3)前記実施形態では、クラッチ手段を設けてPFモータ22の動力を給紙ローラへ伝達する構成を採用したが、給紙ローラを駆動させる専用の給紙モータを設けた構成としてもよい。
【0099】
(変形例4)重ね合わせ処理において紙送り量STpfを求める演算内容は、適宜変更できる。例えばキャリッジが曲線状の加速プロファイルで加速する構成である場合は、その曲線状のプロファイルに沿った加速時間Taccのデータを予めメモリに記憶しておき、それを読み出して演算に使用する構成でもよい。また、演算に用いるデータが計測値でない場合、プリンタ10が管理するインク残量のデータを用いてキャリッジ重量の変化を考慮した補正をデータに加えて演算を行う構成も採用できる。
【0100】
(変形例5)初期オーバライド量は、紙検出センサ26の位置から記録ヘッド15の最上流ノズル位置までの距離に相当する値として設定したが、これに限定されない。例えば記録ヘッド15のノズルのうち用紙18が一部存在しなくなった部分に対応するノズルのインク滴噴射を禁止してプラテン印字を防止する構成も採用できる。この場合は、初期オーバライド量は、紙検出センサ26の位置から記録ヘッド15の最下流ノズル位置までの距離に設定してもよい。また、初期オーバライド量はこの種の固定値(一定値)に限定されず、可変の値であってもよい。例えば印刷条件に応じて決まる可変値とすることができる。例えば「縁なし印刷」と「縁あり印刷」の違いに応じて初期オーバライド量を異なる値に設定する。すなわち、「縁なし印刷」と「縁あり印刷」とでは搬送方向において用紙に印刷可能な限界位置が異なるので、それぞれの限界位置を反映させた初期オーバライド量に設定する。つまり、「縁あり印刷」の場合は、印刷条件として設定された余白領域に印字されないように初期オーバライド量を設定し、「縁なし印刷」の場合は、用紙の外側へ所定量はみ出した領域まで印字されるように初期オーバライド量を設定する。
【0101】
(変形例6)前記実施形態では、記録装置としてのインクジェット式のプリンタに具体化したが、この限りではない。インク以外の他の液体(機能材料の粒子が分散されている液状体を含む)を噴射して記録媒体に記録する記録装置(液体噴射装置)に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。この場合、記録媒体は、基板などその用途に応じた液滴噴射対象の媒体となる。そして、これらのうちいずれか一種の記録装置(液体噴射装置)に、本発明を適用してもよい。
【0102】
以下、前記実施形態および各変形例から把握される技術的思想を記載する。
(1)請求項1乃至7のいずれか一項に記載の記録方法において、前記記録手段は、前記記録媒体の搬送方向と交差する方向に移動可能な移動体に設けられ、前記第2駆動源が起動されることにより前記移動体の移動が開始されることを特徴とする記録方法。
【0103】
(2)請求項1乃至7及び前記技術的思想(1)のいずれか一項に記載の記録方法において、前記第2駆動源の起動タイミングを演算する演算ステップを更に備えたことを特徴とする記録方法。
【0104】
(3)前記制御手段は、前記搬送と記録の動作をシーケンスで制御するシーケンス制御部(51)と、該シーケンス制御部からの要求に応じた制御をそれぞれ行う第1駆動源制御部(52)、第2駆動源制御部(53)及び記録制御部(54)とを備え、前記第2駆動源制御部は、前記シーケンス制御部から要求を受け付けると、前記第2駆動源を起動させる起動指令を前記第1駆動源制御部に要求し、前記第1駆動源制御部は前記第2駆動源制御部からの前記要求に基づいて前記第1駆動源の駆動停止前に該第2駆動源を起動させる起動タイミングを決める演算を行い、該演算で決まった起動タイミングに達すると起動指令を前記第2駆動源制御部に出力するとともに、前記印刷続行可能か否かの判断を行い、印刷続行可能でないと判断した場合に前記記録制御部に記録中止の旨を指令することを特徴とする請求項8に記載の記録装置。これによれば、搬送を管理する第1駆動源制御部が前記演算及び前記判断を行うので、各制御部間で情報を遣り取りする回数が少なく済み、必要な指令を早期に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】一実施形態におけるプリンタの概略斜視図。
【図2】記録ヘッド及び搬送機構を示す模式側面図。
【図3】(a)はリニアエンコーダの平面図、(b),(c)は出力信号図。
【図4】PFモータとCRモータの重ね合わせ演算を説明するグラフ。
【図5】プリンタの電気的構成を示すブロック図。
【図6】プラテン印字防止装置を示すブロック図。
【図7】タイマ割り込み処理を示すフローチャート。
【図8】通常動作処理とプラテン印字防止処理を説明するトランザクション図。
【図9】(a)(b)PFモータとCRモータの速度波形を示すグラフ。
【図10】(a)(b)PFモータとCRモータの速度波形を示すグラフ。
【図11】(a)(b)PFモータとCRモータの速度波形を示すグラフ。
【符号の説明】
【0106】
10…記録装置(液体噴射装置)としてのプリンタ、11…移動手段を構成するガイド軸、12…移動手段を構成するとともに移動体としてのキャリッジ、13…第2駆動源としてのCRモータ(キャリッジモータ)、14…移動手段を構成するタイミングベルト、15…記録手段としての記録ヘッド、19…プラテン、22…第1駆動源としてのPFモータ(紙送りモータ)、23…リニアエンコーダ、24…搬送手段を構成する搬送ローラ、25…搬送手段を構成する排紙ローラ、31…判断手段及び制御手段を構成するCPU、32…ASIC、33…DCユニット、34…PROM、35…RAM、36…EEPROM、38…ホストコンピュータ、39…CRモータ駆動回路、40…ヘッド駆動回路、41…PFモータ駆動回路、42…エンコーダ、43…タイマIC、44…モータコントロール部、45…印字コントロール部、50…制御部、51…シーケンス制御部、52…PFモータドライバ、53…CRモータドライバ、54…ヘッドドライバ、56…PFカウンタ、57…オーバライドカウンタ、58…CRカウンタ、59…カウンタ、OR…オーバライド領域。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばシリアルプリンタ等の記録装置において、記録媒体の搬送動作の停止前に記録手段の移動動作を開始させて、記録媒体の搬送動作と記録手段の移動動作とを重ね合わせる制御が行われる記録装置における記録方法及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シリアルプリンタなどの記録装置では、印刷処理時間短縮のため、紙送り動作とキャリッジ動作とを重ね合わせる、重ね合わせ処理が行われていた(例えば特許文献1、2等)。重ね合わせ処理は、まず、1パス分の印字処理が終了すると紙送りモータ(PFモータ)を起動させて紙送りを行う。その後、PFモータの駆動が終了する前に所定のタイミングでキャリッジモータ(CRモータ)を起動させてキャリッジを移動させる。これにより、紙送り終了とほぼ同時に印字動作を開始することができる。従って、紙送り終了後にCRモータを起動させてキャリッジの移動を開始させる構成に比べ、印刷処理時間の短縮を図ることができる。
【0003】
ところで、用紙搬送方向長さが設定より短い用紙が間違って給紙された場合は、紙送り後に記録ヘッドの記録対象位置に用紙の少なくとも一部が存在しなくなり、そのまま印字動作が行われると、プラテンに印字されてしまいプラテン上を摺動する用紙がインクで汚れるという問題がある。この問題を解決するため、例えば特許文献1には、キャリッジが起動してから印刷を開始するまでの時間として、紙検出センサから記録ヘッドまでの距離に基づく時間分は確保されており、紙送り終了前の時点でキャリッジを起動して印字を実行してしまっても、プラテン印字をすることがない構成が開示されている。しかし、紙検出センサから記録ヘッドまでの距離に基づく時間分は確保する必要があり、印刷処理時間を犠牲にしてプラテン印字を防止していた。
【0004】
これに対し、例えば特許文献2には、用紙搬送方向長さが設定より短い用紙が給紙された場合、紙送り終了時に用紙の後端が記録ヘッドの記録位置から搬送方向下流側へ逸脱するか否かを判定し、逸脱すると判定された場合にはそのとき既にキャリッジが起動されていても、印字不許可指令をして印字動作を中止させる記録装置が開示されている。すなわち、用紙の後端が紙検出センサを通過してから起動されるオーバライドカウンタのカウント値に基づいて、オーバライド領域(印字可能範囲)の残量を求めるとともに、PFモータの紙送り残量を求め、紙送り残量がオーバライド領域の残量以上であると判定された場合に、印字不許可指令を発生させる構成となっていた。このため、用紙の後端が記録ヘッドの記録位置を通り過ぎた場合は、印字不許可指令により印字動作が中止されるので、印刷処理時間を犠牲にせずプラテン印字が防止される。また、プラテン印字を防止するための上記判定のための演算処理は、オーバライドカウンタがON(つまり用紙後端検知)し、かつCRモータの起動信号を受信したときをトリガとして開始されるようになっていた。
【特許文献1】特開2006−212923号公報(例えば明細書段落[0030]〜[0042]、図4〜図11)
【特許文献2】特開2001−232882号公報(例えば明細書段落[0070]〜[0077]、図5及び図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2では、プラテン印字を防止できるが、オーバライドカウンタがONし、かつCRモータの起動信号を受信したときをトリガとして、判定処理を開始する構成であった。つまり、判定処理の開始のためにCRモータの起動信号の受信が必須条件であった。このため、判定処理は、キャリッジの起動とほぼ同時に開始されることになり、印字不許可指令は常にキャリッジ起動後に発せられていた。例えばキャリッジ起動時から印字開始位置までの移動時間が短い場合は、印字不許可判定の判定結果が遅れて、印字動作が開始されてしまう虞があった。また、判定処理はCRモータの起動以後に行われ、印字不許可指令はキャリッジが必ず移動した後に行われるので、印字不許可の場合は常にキャリッジが印字動作なしで空走することになっていた。このようなキャリッジの空走動作は、プリンタの不自然な動作であるうえ、CRモータが無駄に駆動されて消費電力やモータ寿命の観点からも好ましくないので、減らすことが好ましいが、特許文献2の判定処理方法(記録方法)によれば、キャリッジの空走動作を減らす方法を採る余地もなかった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、検出手段が記録媒体の後端を検知したその搬送終了時点における記録媒体の位置で記録続行可能か否かを判定する判定結果が遅れることに起因して記録続行不可能な判定であるにも拘わらずプラテン印字などの不適切な印字動作が行われてしまうことをより確実に防止できる記録装置における記録方法及び記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、記録媒体を搬送するために駆動される第1駆動源と、記録媒体に記録を施す記録手段を移動させるために駆動される第2駆動源と、前記第1駆動源と第2駆動源とを前記搬送と記録とが交互に行われるように制御するとともに、該制御に際して前記第1駆動源の駆動停止前に前記第2駆動源を起動させる記録装置における記録方法であって、前記記録手段の記録位置より搬送方向上流側位置で検出手段により前記記録媒体の後端を検知する検出ステップと、前記検出手段が前記後端を検知すると、前記後端の検知時点における記録媒体の残り搬送量に基づいて今回の搬送終了時点における記録媒体の位置で記録続行可能か否かを判断する判断ステップと、前記判断ステップで記録続行不可能であると判断された場合、前記後端の検知時点より前に前記第2駆動源の起動タイミングが訪れていたら、前記第2駆動源の起動後に前記記録手段による記録の中止処理を行い、一方、前記後端の検知時点より後に前記第2駆動源の起動タイミングが訪れるなら、該第2駆動源の起動を中止させる、もしくは前記記録手段による記録を中止させるものの該第2駆動源は起動させる制御ステップとを備えたことを要旨とする。
【0008】
これによれば、検出ステップにおいて、記録手段の記録位置より搬送方向上流側位置で検出手段により記録媒体の後端が検知されると、判断ステップにおいて、後端検知時点における記録媒体の残り搬送量に基づいて今回の搬送終了時点における記録媒体の位置で記録続行可能か否かが判断される。そして、前記判断ステップで記録続行不可能と判断された場合、制御ステップにおいて、後端検知時点より前に第2駆動源の起動タイミングが訪れていたら、第2駆動源の起動後に記録手段による記録の中止処理が行われる。一方、前記後端検知時点より後に前記第2駆動源の起動タイミングが訪れるなら、第2駆動源の起動を中止させる、もしくは記録手段による記録を中止させるものの第2駆動源の起動は行われる。但し、記録手段による記録を中止するものの第2駆動源の起動は行われる場合、記録の中止は第2駆動源の起動前に確定している。よって、後端検知時点より後に第2駆動源の起動タイミングが訪れる場合は、記録手段による記録の中止処理は第2駆動源の起動前に早期に行われる。例えば記録を中止すべきであるにも拘わらずその中止処理が間に合わず記録が開始されてしまう不都合をより確実に回避しやすくなる。
【0009】
本発明の記録方法においては、前記制御ステップでは、前記判断ステップで記録続行不可能であると判断された場合、前記後端の検知時点より前に前記第2駆動源の起動タイミングが訪れていたら、前記第2駆動源の起動後に前記記録手段による記録の中止処理を行い、一方、前記後端の検知時点より後に前記第2駆動源の起動タイミングが訪れるなら前記第2駆動源の起動及び前記記録手段による記録を共に中止することが好ましい。
【0010】
これによれば、制御ステップでは、判断ステップで記録続行不可能と判断された場合、後端検知時点より前に第2駆動源の起動タイミングが訪れていたら、第2駆動源の起動後、つまり記録手段の移動開始後に記録手段による記録の中止処理が行われる。このため、記録手段は移動するものの記録は行われない。一方、後端検知時点より後に第2駆動源の起動タイミングが訪れるなら、第2駆動源の起動及び記録手段による記録が共に中止される。このため、記録手段の記録が行われないだけでなく記録手段の記録を伴わない移動(空走)も回避できる。
【0011】
本発明の記録方法においては、前記制御ステップでは、前記判断ステップで記録続行不可能であると判断された場合、前記後端の検知時点より前に前記第2駆動源の起動タイミングが訪れていたら、前記第2駆動源の起動後に前記記録手段による記録の中止処理を行い、一方、前記後端の検知時点より後に前記第2駆動源の起動タイミングが訪れるなら、前記記録手段による記録の中止処理を前記第2駆動源の起動前に行い、その後に前記起動タイミングに訪れたときに前記第2駆動源を起動させることが好ましい。
【0012】
これによれば、判断ステップで記録続行不可能と判断された場合、後端の検知時点より前に第2駆動源の起動タイミングが訪れていたら、制御ステップにおいて、第2駆動源の起動後に記録手段による記録の中止処理が行われる。一方、後端の検知時点より後に第2駆動源の起動タイミングが訪れるなら、制御ステップにおいて、記録手段による記録の中止処理を第2駆動源の起動前に行い、その後、起動タイミングが訪れると、第2駆動源が起動される。このため、記録が中止されるときは、常に記録手段は空走することになるものの、プラテン印字に影響しない記録手段の移動を中止させるための余分な制御を必要としない。
【0013】
本発明の記録方法においては、前記記録手段は移動過程における加速途中から記録を開始することが可能な構成であることが好ましい。
これによれば、記録手段は移動過程における加速途中から記録を開始するときでも、第2駆動源の起動タイミングが後端検知時点より後に訪れる場合は、記録の中止処理が記録手段の移動開始前に早期に行われ、早期に行われる中止処理の頻度が増す。このため、記録の中止処理が間に合わず記録が開始されてしまう不都合をより防止し易く、特に記録手段の移動開始から記録開始位置までの移動時間が短い加速中印字の行われる構成で有効である。
【0014】
本発明の記録方法においては、前記記録手段は前記記録媒体の搬送方向と異なる方向へ移動可能な移動体に設けられ、前記第2駆動源の起動により前記移動体の移動が開始されるように構成されるとともに、前記移動体の移動経路上の所定位置に移動した該移動体によって操作されかつ記録媒体の供給時の搬送を行う供給手段と前記第2駆動源とを動力伝達可能に接続するクラッチ手段を更に備え、前記記録続行不可能と判断された場合において記録のための前記第2駆動源の起動を中止したときには、前記クラッチ手段を接続状態にさせるべく前記第2駆動源を起動させて前記移動体を前記所定位置に移動させることが好ましい。
【0015】
これによれば、記録続行不可能と判断されて第2駆動源の起動(つまり移動体の起動)を中止したときには、次に供給されるべき記録媒体があれば、その記録媒体を供給させるべく移動体を所定位置に移動させるように第2駆動源が起動される。このため、記録続行不可能な場合は、移動体が無駄に空走することなく、所定位置への移動を直ちに開始できるので、次の記録媒体の供給を早期に開始できる。この結果、次の記録媒体への印字動作を早期に開始できるためスループット向上に寄与する。
【0016】
本発明の記録方法において、前記判断ステップにおける前記記録続行可能か否かの判断は、前記記録媒体の後端が前記検知時の位置から前記記録手段による記録が可能な限界位置まで搬送される搬送距離に相当する初期オーバライド量と、該後端の検知時における記録媒体の残り搬送量とを比較して行われることが好ましい。
【0017】
これによれば、判断ステップでは、記録媒体の後端が検知時の位置から記録手段による記録が可能な限界位置まで搬送される搬送距離に相当する初期オーバライド量と、後端検知時における記録媒体の残り搬送量とを比較して記録続行可能か否かが判断される。
【0018】
本発明の記録方法においては、前記検出手段が前記後端を検知した際の前記搬送の終了後、前記後端が前記検知時の位置から前記限界位置までのオーバライド領域内に位置する状態で行われた記録の後、該オーバライド領域内に後端が位置する状態から開始される次回以降の搬送においては、前記判断ステップに替えて、当該次回以降のうち今回の搬送の終了時点における記録媒体の位置で記録続行可能か否かを判断する第2判断ステップを備え、該第2判断ステップでは、前記記録手段を記録のために移動させるべき要求を受け付けると、前記オーバライド領域内に位置する搬送開始時の前記後端が前記限界位置まで搬送される搬送距離に相当するオーバライド量と、記録媒体の搬送量とを比較して、当該今回の搬送終了時点における記録媒体の位置で記録続行可能か否かを判断することが好ましい。
【0019】
これによれば、検出手段が後端を検知した際の搬送の終了後、後端が検知時の位置から限界位置までのオーバライド領域内に位置する状態で行われた記録の後、オーバライド領域内に後端が位置する状態から開始される次回以降の搬送においては、前記判断ステップに替えて、第2判断ステップにより、前記次回以降のうち一の回(今回)の搬送の終了時点における記録媒体の位置で記録続行可能か否かが判断される。第2判断ステップにおいては、記録手段を記録のために移動させるべき要求を受け付けると、オーバライド領域内に位置する搬送開始時の後端が限界位置まで搬送される搬送距離に相当するオーバライド量と、記録媒体の今回の搬送量とを比較して、今回の搬送終了時点における記録媒体の位置で記録続行可能か否かが判断される。よって、記録手段を記録のために移動させるべき要求を受け付けたことをトリガとして上記判断が開始されるので、記録続行可能であるか否かの判断結果を第2駆動源の起動前(つまり記録手段の移動開始前)に得ることが可能になる。
【0020】
本発明は、記録媒体を搬送する搬送手段の駆動源である第1駆動源と、記録媒体に記録を施す記録手段を移動させる移動手段の駆動源である第2駆動源と、前記第1駆動源と第2駆動源とを前記搬送と記録とが交互に行われるように制御するとともに、該制御に際して前記第1駆動源の駆動停止前に前記第2駆動源を起動させる制御手段とを備えた記録装置において、前記記録手段の記録位置より搬送方向上流側位置で前記記録媒体の後端を検出する検出手段と、前記記録媒体の後端が前記検出手段により検知されると、該後端の検知時点の位置から前記記録手段による記録媒体への記録が可能な限界位置までの搬送距離に相当する初期オーバライド量と、該後端検知時における記録媒体の残り搬送量とを比較して記録続行可能か否かを判断する判断手段とを備え、前記制御手段は、前記判断手段が記録続行不可能と判断した場合、前記後端の検知時点より前に前記第2駆動源の起動タイミングが訪れていたら、前記記録手段による記録の中止処理を行い、一方、前記後端の検知時点より後に前記第2駆動源の起動タイミングが訪れるなら、該第2駆動源の起動を中止させる、もしくは前記記録手段による記録を中止させるものの該第2駆動源は起動させることを要旨とする。これによれば、上記記録方法の発明と同様の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を記録装置としてのプリンタに適用した一実施形態を、図1〜図11に従って説明する。図1は、プリンタの概略斜視図である。但し、プリンタの外装ケースは取り外された状態で示している。
【0022】
図1に示すように、記録装置としてのプリンタ10は、外装ケース(図示省略)内に本体ケース10aを備えている。本体ケース10aには、ガイド軸11に案内されて主走査方向(同図におけるX方向)に往復移動可能なキャリッジ12が設けられている。キャリッジ12はキャリッジモータ(以下、CRモータ13という)が駆動されることにより回転駆動される無端状のタイミングベルト14の一部に固定されており、CRモータ13が正逆転駆動されることによりキャリッジ12は主走査方向Xに往復移動するようになっている。本実施形態では、CRモータ13として、DCモータが使用されているが、ステッピングモータを使用することもできる。
【0023】
キャリッジ12の下部には、記録手段としてインクジェット方式の記録ヘッド15が設けられている。キャリッジ12の上部には記録ヘッド15にインクを供給するためのブラック用のインクカートリッジ16と、カラー用のインクカートリッジ17とが着脱可能に装填されている。記録ヘッド15の下面はインク色毎に複数のノズルが形成されたノズル形成面となっている。
【0024】
記録ヘッド15はノズル1つにつき1個の圧電振動子(図示せず)を内蔵している。インク滴の噴射対象となるノズルに対応する圧電振動子が、パルス電圧の印加に基づく電歪作用により振動し、記録ヘッド15内にノズル毎に設けられたインク室が膨張及び圧縮することで、各ノズルからインク滴が噴射(吐出)される。
【0025】
キャリッジ12がガイド軸11に沿って主走査方向Xに往復移動するその移動範囲の両端域は、キャリッジ12が移動方向の反転のために減速したり、反転後に加速したりするキャリッジ12の加減速域となっている。本実施形態では、キャリッジ12が定速走行域に至る手前の加速途中から記録ヘッド15による記録(印字)を開始する加速中印字も行われ、また減速の途中まで印字を継続する減速中印字も行われる。もちろん、定速走行域においてのみ印字を行う構成も採用できる。なお、本実施形態では、記録手段である記録ヘッド15を移動させるために設けられた、ガイド軸11、キャリッジ12及びタイミングベルト14等により、移動手段が構成される。
【0026】
キャリッジ12の下方には、記録ヘッド15と用紙18との間隔(ギャップ)を規定する例えば平型のプラテン19がその長手方向をガイド軸11の軸方向に一致させた状態で配置されている。図1においてキャリッジ12の主走査方向移動範囲における右端部位置がキャリッジ12のホームポジションに設定されている。このホームポジションに相当する位置には、キャリッジ12がホームポジション側へ移動した状態で、記録ヘッド15のクリーニング等を行うメンテナンス装置20が配設されている。また、プラテン19の下側にはメンテナンス装置20から排出された廃液が収容される廃液タンク21が配置されている。
【0027】
本体ケース10aの図1における右端下部には紙送りモータ(以下、PFモータ22という)が配設されている。用紙18は、PFモータ22の駆動力がクラッチ手段を介して伝達される給紙ローラ(いずれも図示せず)の回転により給紙され、同じくPFモータ22により駆動される搬送ローラ24(図2参照)に挟持された状態で副走査方向Yへ搬送(紙送り)されるようになっている。キャリッジ12の主走査方向Xへの移動中に記録ヘッド15からインク滴を噴射させながら行われる印字動作(記録動作)と、用紙18の副走査方向Yへの紙送り動作とが交互に行われることにより、用紙18に印刷がなされる。またプリンタ10には、ガイド軸11に沿ってリニアエンコーダ23が設けられている。リニアエンコーダ23はキャリッジ12の移動距離に比例する数のパルスを出力し、その出力パルスを用いて求められるキャリッジ12の移動位置、移動速度及び移動方向に基づいて、キャリッジ12の速度制御及び位置制御が行われる。
【0028】
図2は、記録ヘッド及び搬送機構を示す模式側面図である。図2に示すように、記録ヘッド15の下方には、用紙18の搬送方向において記録ヘッド15の記録位置(又はプラテン19)を挟んだ前後の位置に、搬送手段を構成する搬送ローラ24(紙送りローラ)及び排紙ローラ25がそれぞれ回転可能な状態で配置されている。搬送ローラ24は、駆動ローラ24Aと従動ローラ24Bからなる一対で構成され、排紙ローラ25は、駆動ローラ25Aと従動ローラ25Bからなる一対で構成されている。用紙18は、両ローラ24A,24B、及び両ローラ25A,25Bのうち少なくとも一方に挟持された状態で、PFモータ22(図1参照)の駆動力が伝達されて両駆動ローラ24A,25Aが回転駆動されることにより、図2における左方向(副走査方向Y)へ搬送される。なお、搬送ローラ24よりも用紙搬送方向上流側の位置に設けられた図示しない給紙ローラには、例えばキャリッジ12が移動経路上における所定位置に移動することで接続状態に切り換え操作される図示しないクラッチ手段を介してPFモータ22の駆動力が伝達される。
【0029】
また、搬送ローラ24のやや用紙搬送方向上流側の位置には紙検出センサ26が設けられている。紙検出センサ26は、例えば接触式センサ(スイッチ式センサ)からなり、その接触式の検知部(例えば検知レバー)が搬送経路上の用紙18と干渉可能な状態に配置されている。紙検出センサ26は、給紙された用紙18の先端が検知部に当たってこれを変位させることでオンし、用紙18の後端が検知部を通過してその検知部が元の位置(待機位置)に復帰したときにオフするように構成されている。もちろん、紙検出センサ26は、用紙18を検知できれば他の方式のセンサを代用することができ、例えば光学式センサ(フォトセンサ)を採用してもよい。
【0030】
用紙18の後端が紙検出センサ26の検知部を切って紙なしの検出状態になった後、印字可能な紙送り方向(搬送方向)の範囲としてオーバライド領域ORが設定されている。本実施形態では、例えば紙検出センサ26の検出位置(検出部の位置)から、記録ヘッド15に形成された複数のノズルのうち搬送方向最上流のノズル位置(最上流ノズル位置)までの範囲をオーバライド領域ORとして設定している。例えば用紙搬送方向長さが設定(印刷条件設定)より短い用紙18が給紙されていた場合、紙送り終了後の用紙18の後端がオーバライド領域ORより搬送方向下流側へ逸脱する場合が起こりうる。この場合、紙送り後にそのまま記録ヘッド15による印字が開始されると、プラテン19に印字(インク滴噴射)され、その後、プラテン19上を摺動する用紙18を汚す原因になる。このようなプラテン印字を防止するため、用紙18の後端がオーバライド領域OR内に侵入した後も、用紙18の位置(用紙状態)を管理している。その管理方法の詳細は後述する。
【0031】
図3は、リニアエンコーダの要部を示し、(a)は平断面図、(b),(c)は出力信号を示す。図3(a)に示すように、リニアエンコーダ23は、例えば1インチ(25.4mm)の間に180個のスリット27aが等間隔に形成されたテープ状の符号板27と、センサ28とからなる。符号板27は、図1、図5に示すように、キャリッジ12の走行域背面側において主走査方向(キャリッジ走行方向)と平行となるように張設されている。
【0032】
図3に示すセンサ28は、符号板27を間に挟んで対向する状態に配置された発光素子29と受光素子30とからなる。発光素子29は一対の発光部29a,29aを有しており、受光素子30は主走査方向Xに各発光部29a,29aの間隔と等しい間隔を開けて配置された一対の受光部30a,30aを有している。各発光部29a,29aと各受光部30a,30aはそれぞれ対向して位置すると共に、一対の受光部30a,30aのスリット配列方向(符号板長手方向)における間隔は、各受光部30a,30aからそれぞれ出力される図3(b),(c)に示す各パルスES1(A相),ES2(B相)の位相が90度ずれる値に設定されている。リニアエンコーダ23は、キャリッジ12の走査に従って、各スリット27aを通過する光の断続数に応じた数のパルスを出力する。
【0033】
CRモータ13が正転すなわちキャリッジ12が主走査方向に往動しているときは図3(b)に示すようにパルスES1はパルスES2よりも90度だけ位相が進み、CRモータ13が逆転すなわちキャリッジ12が主走査方向に復動しているときは図3(c)に示すようにパルスES1はパルスES2よりも90度だけ位相が遅れる。そして、パルスES1,ES2の1周期Tは、符号板27のスリット間隔(例えば1/180インチ(=1/180×2.54cm))に対応し、キャリッジ12がスリット間隔を移動する時間に等しい。
【0034】
また、プリンタ10には、PFモータ22の回転位置及び回転速度等を検出するためにロータリ式のエンコーダ42(図5参照)が設けられている。エンコーダ42は、リニアエンコーダ23における符号板27がPFモータ22の回転に応じて回転する回転円板である以外はリニアエンコーダ23と同様の構成であり、2つの出力パルスES3,ES4を出力する。エンコーダ42の符号板(回転円板)は、例えば搬送ローラ24の駆動軸に一体回転可能に設けられている。なお、プリンタ10においては、PFモータ22用のエンコーダ42の符号板に設けられている複数のスリットのスリット間隔は、1/180インチ(=1/180×2.54cm)であり、PFモータ22が1スリット間隔だけ回転すると、1/1440インチ(=1/1440×2.54cm)だけ紙送りされる構成となっている。
【0035】
図5は、プリンタ10の電気的な構成を示す概略構成図である。プリンタ10はCPU31、ASIC32(Application Specific Integrated Circuit)(特定用途向け集積回路)、DCユニット33、PROM34、RAM35、EEPROM36、I/F37(インターフェイス)を備えている。ASIC32はI/F37を介してホストコンピュータ(例えばパソコン等)38との間で各種データ(印刷データ等)の授受を実行する。そして、ASIC32はホストコンピュータ38から送信される印刷データに基づき、印刷解像度や記録ヘッド15の駆動波形等を制御している。
【0036】
また、CPU31はプリンタ10の装置全体を制御し、ホストコンピュータ38からI/F37及びASIC32を介して取り込んだ印刷データに基づき、CRモータ13やPFモータ22の起動及び走行スケジュール(駆動スケジュール)、記録ヘッド15の印刷スケジュールを各々設定する。そして、CPU31は設定した印刷スケジュールに従い、ヘッド駆動回路39を介して記録ヘッド15を駆動制御する。さらに、CPU31はこれら起動及び走行スケジュールに基づく指令信号をDCユニット33に出力する。
【0037】
DCユニット33は指令信号に基づきCRモータ駆動回路40を介してCRモータ13を、PFモータ駆動回路41を介してPFモータ22をそれぞれ駆動制御する。DCユニット33はキャリッジ駆動時、リニアエンコーダ23からパルス信号ES1,ES2を入力し、キャリッジ12の移動速度、移動方向、位置を算出する。また、DCユニット33は紙送り時、エンコーダ42からパルス信号ES3,ES4を入力し、PFモータ22の駆動位置、駆動速度(紙送り位置、紙送り速度)等を算出する。
【0038】
CPU31は、紙送りが終了した直後に記録ヘッド15の印字動作が開始されるように、キャリッジ動作と紙送り動作とを重ね合わせる制御(CR−PF重ね合わせ制御)を行い、この重ね合わせ制御条件を満たすようにCRモータ13及びPFモータ22の起動及び走行スケジュールを作成する。この重ね合わせ制御を行う場合、用紙搬送方向長さが設定長さより短い用紙18が給紙された場合に、紙送り終了前にキャリッジ動作が開始されるため、キャリッジ12が印刷開始位置に達して印字動作を開始する際に記録ヘッド15の印字対象位置に用紙18の少なくとも一部が存在しなくなる場合が起こりうる。この場合、そのまま印字動作を行うとプラテン19に印字することになるので、用紙18の汚れを誘発するプラテン印字を回避すべく、本実施形態では、印字対象位置に用紙があるかないかを判断し、用紙が一部でもなければ印字動作を中止する制御(プラテン印字防止処理)を行う。
【0039】
PROM34には、CRモータ13及びPFモータ22を速度制御するために参照されるキャリッジ速度制御用と紙送り速度制御用の各速度テーブル(加速テーブルと減速テーブル)(図示省略)がそれぞれ記憶されている。速度テーブルは、位置と、位置に応じた目標値(本例ではエンコーダパルス周期)との関係を示すテーブルである。本実施形態では、キャリッジ速度制御は、キャリッジ位置に応じた目標値を速度テーブルの参照により取得して、実測値(検出周期)を目標値(目標周期)に近づけるフィードバック制御で行われる。また、紙送り速度制御も、紙送り位置に応じた目標値を速度テーブルの参照により取得して、同様に実測値を目標値に近づけるフィードバック制御で行われる。もちろん、速度制御として、フィードフォワード制御も採用可能である。
【0040】
また、CPU31にはタイマIC43が接続されており、CPU31はタイマIC43から所定時間(例えば数10〜数100μsec.の範囲内の値)毎にタイマ信号を入力する。CPU31はタイマ信号を入力する度にタイマ割り込み処理を実行する。
【0041】
RAM35には、CPU31が実行するプログラムデータ及びCPU31による演算結果及び処理結果である各種データ、さらにASIC32で処理された各種データ等が一時記憶される。また、RAM35には、印刷データ及びその処理途中、処理後のデータを格納するバッファとして機能とする所定記憶領域が設けられている。また、EEPROM36には、ファームウェアプログラム等が記憶されている。
【0042】
図6はプラテン印字防止装置を示すブロック図である。CPU31がファームウェアプログラム等を実行することにより制御部50が構築されている。制御部50は、シーケンス制御部51、PFモータドライバ52、CRモータドライバ53、ヘッドドライバ54を備える。シーケンス制御部51は、給紙動作、印字動作・紙送り動作、排紙動作を行わせるべく、シーケンスに従ってPFモータドライバ52、CRモータドライバ53、ヘッドドライバ54に指示(要求)を出す。
【0043】
PFモータドライバ52は、給紙・紙送り・排紙のために駆動されるPFモータ22の速度制御(例えばPID制御)及び停止位置制御等を含む駆動制御などを行うために必要な各種演算処理を行う。CRモータドライバ53は、キャリッジ12の移動させるために駆動されるCRモータ13の速度制御及び停止位置制御等を含む駆動制御などを行うために必要な各種演算処理を行う。ヘッドドライバ54は、記録ヘッドから液滴を噴射(ファイア)する噴射時期などを決めるために必要な各種演算処理を行う。
【0044】
PFモータドライバ52は演算部55を備え、演算部55には重ね合わせ演算部55A及び監視部55Bを備える。重ね合わせ演算部55Aは、本実施形態において特徴部分の一つである、PFモータ22の駆動停止前にCRモータ13を起動させて紙送り動作とキャリッジ駆動動作とを重ね合わせる際のCRモータ13の起動時期を演算するCR−PF重ね合わせ演算を行う。また、監視部55Bは、実際の用紙18の搬送方向長さ(例えばA5判)が設定長さ(例えばA4判)より短く、紙送り終了時点で用紙18の後端が記録ヘッド15の基準位置(例えば最上流ノズル位置)を通過した場合に、そのままインク滴が噴射(ファイア)されてプラテン19を汚すことがないように監視する。すなわち、監視部55Bは、紙検出センサ26が「紙あり」から「紙なし」の検出状態に切り替わって用紙18の後端が検知されると、この後端検知時点において初期オーバライド量SORintと紙送り残量SRpfとの大小を比較する。そして、紙送り残量SRpfが初期オーバライド量SORintより大きければ(SRpf>SORint)、紙送り終了時に用紙18の後端がオーバライド領域から逸脱して、記録ヘッド15の記録位置に用紙18の少なくとも一部が存在しなくなる「紙なし状態」と判定する。「紙なし状態」と判定した場合、監視部55Bは記録ヘッド15からのインク滴の噴射(ファイア)を中止させる。
【0045】
監視部55Bは、この「紙なし状態」を含む用紙18の3つの状態を管理する。すなわち、用紙18が紙検出センサ26により検知されている「紙あり」、用紙18の後端が紙検出センサ26により検知された後、その後端が記録ヘッド15による印字可能なオーバライド領域OR内にある「オーバライド」、用紙18の後端がオーバライド領域ORから搬送方向下流側に逸脱して用紙18に印字されない部分が少なくとも一部発生する「紙なし」の3つの用紙の状態である。そして、その管理する用紙状態が「紙なし」の状態であれば、印字の実行を中止させる印字中止指令をヘッドドライバ54に出力する。本実施形態では、この印字中止指令の出力タイミングは、キャリッジ12の起動前の場合と起動後の場合とがある。
【0046】
DCユニット33に内蔵されたモータコントロール部44は、PFモータドライバ52からの指示に基づく指令信号をPFモータ駆動回路41に出力するとともに、CRモータドライバ53からの指示に基づく指令信号をCRモータ駆動回路40に出力する。また、モータコントロール部44は、PFカウンタ56とオーバライドカウンタ57(ORカウンタ)とCRカウンタ58を備える。PFカウンタ56は、PFモータ22の駆動開始時にリセットされて、エンコーダ42の出力パルスに基づきインクリメント処理することで、紙送り開始から現時点までの紙送り量Spfを計数する。また、オーバライドカウンタ57は、紙検出センサ26が用紙18の後端を検知した時点に初期オーバライド量SORintがセットされ、エンコーダ42の出力パルスに基づきデクリメント処理することで、用紙18の後端がオーバライド領域ORの搬送方向末端位置(限界位置)に達するまでの残量(オーバライド量)を計数する。
【0047】
また、CRカウンタ58は、リニアエンコーダ23の出力パルスに基づき計数処理を行う2種類のカウンタを有し、それぞれキャリッジ12の移動開始位置からの相対位置、および移動経路上の原点からの位置をそれぞれ計数する。CRカウンタ58のうち一のカウンタは、キャリッジ往動時に計数値をインクリメント、キャリッジ復動時に計数値をデクリメントし、その得られたカウント値に基づきキャリッジ12の原点位置(例えばホームポジション)からの位置が把握可能である。このとき、キャリッジ12の移動方向は、CPU31がリニアエンコーダ23の出力パルスに含まれるA相(SE1)とB相(SE2)の位相の進み方の違いに基づき把握される。詳しくは図3(b)に示すように、A相の立ち上がりエッジを検出したときにB相のパルスがLレベルであれば、正転方向(往動)、図3(c)に示すようにA相の立ち上がりエッジを検出したときにB相のパルスがHレベルであれば、逆転方向(復動)であると認識する。CRカウンタ58のうち他の一のカウンタの計数値として得られるキャリッジ12の移動開始位置からの相対位置は、キャリッジ速度制御の際に速度データ(図示せず)を参照して目標値を取得するために用いられ、またキャリッジ12を所定位置に停止させる停止位置制御等に用いられる。
【0048】
また、図6に示すモータコントロール部44は、リニアエンコーダ23からの入力パルスのエッジ間の時間を計時してその周期を計測する。この計測周期はキャリッジ12を速度制御するフィードバック制御における実測値(検出周期)として使用される。
【0049】
また、印字コントロール部45は、ヘッドドライバ54からの指示に基づく指令信号をヘッド駆動回路39に出力する。印字コントロール部45はカウンタ59を備える。カウンタ59は、リニアエンコーダ23の出力パルス(詳しくは出力パルスの周期を逓倍した周期のパルス)に基づき計数処理を行って、キャリッジ12(つまり記録ヘッド15)の移動開始位置からの相対位置を計数する。ヘッドドライバ54は、印刷データに基づきキャリッジ12の移動開始位置からの距離として印刷開始位置を求め、その印字開始位置と共に印字コントロール部45に印字を指示する。印字コントロール部45は、キャリッジ12の起動後、カウンタ59の計数値が印刷開始位置に達すると、ヘッド駆動回路39を介して記録ヘッド15にインク滴の噴射(ファイア)を開始させる。また、印字コントロール部45は、リニアエンコーダ23の出力パルスに基づき該出力パルスの周期に比例した(周期を逓倍した)周期の噴射タイミング信号(パルス)を生成し、この噴射タイミング信号に基づきインク滴の噴射タイミングが決められることにより、加速中印字及び減速中印字が一定の印字ピッチ(ドットピッチ)で行われる。なお、各ドライバ52,53は、それぞれ対応する各カウンタ56〜58の計数値をDCユニット33から取得可能であり、速度制御(例えばPID制御)等の指令値を算出する各種演算処理に用いる。
【0050】
次にPFモータドライバ52における重ね合わせ演算部55Aの演算内容について、図4を用いて説明する。図4は、PFモータ22の速度波形とCRモータ13の速度波形を模式的に示した図である。同図のグラフでは、横軸が時間、縦軸が速度で示されている。重ね合わせ演算部55Aは重ね合わせ最適化演算処理として、加速時間計測処理、距離演算処理、移動時間演算処理、及び紙送り量演算処理を行う。そして、この重ね合わせ最適化演算処理によって、PFモータ22とCRモータ13との動作が重なる期間を最適化するCR起動タイミングが、紙送り終了までの紙送り量STpfとして求められる。
【0051】
加速時間計測処理では、CRモータ13の起動指令を受けたときにリニアエンコーダ23の出力および速度演算部の出力に基づいてCRモータ13の起動時の加速時間を計測し、この計測結果をEEPROM36に記憶させる。この加速時間は、CRモータ13が起動してから定速走行領域に到達するまでの時間であり、図4に示す時間Taccである。そして、この記憶された加速時間Taccは、CRモータ13の次の起動を行う際の演算に用いられる。また、距離演算処理では、リニアエンコーダ23の出力とCPU31から送られてくる印字情報とに基づいて、停止しているキャリッジ12の現在位置と次の印字開始位置との距離Lcを演算する。
【0052】
移動時間演算処理では、停止位置から印字開始位置までキャリッジ12が移動するのに要する移動時間Tcrを演算する(図4参照)。この移動時間Tcrは、キャリッジ12が定速Veで走行する定速走行域に到達してから印字開始するまでの時間をTuvとすると、EEPROM36に記憶されているCRモータ13の前回の起動時の加速時間Taccを用いて、次式で表される。
Tcr=Tacc+Tuv … (1)
なお、電源投入時や、キャリッジ12のクリーニング時等のその前後でキャリッジ12の重量が急激に変化する場合には、上記演算で用いる加速時間Taccは、想定される加速時間の最小値とする。
【0053】
一方、上記演算で用いられる時間Tuvは、キャリッジ12が加速時間Taccの間に進む距離をLtとすると、上記距離演算処理で求められたキャリッジ12の停止位置(現在位置)から次の印字開始位置までの距離Lcを用いて、次式で示される。
Tuv=(Lc−Lt)/Ve … (2)
そして、キャリッジ12が上記加速時間Taccの間に進む距離Ltは、次式で表される。
Lt=Ve・Tacc/2 … (3)
速度Veは予め決定される所定値である。上記(1),(2),(3)式から移動時間Tcrが求まる。なお、加速時間Taccは、計測して取得する方法に替え、PROM34に記憶された速度データから演算で求めてもよいし、その演算結果がデータとして予めEEPROM36等に記憶されたものを読み出して使用する方法でもよい。
【0054】
紙送り量演算処理では、移動時間演算処理によって演算された移動時間Tcrに基づいて、PFモータ22が所定の速度Vepで定速走行域を進んでいて停止するまでに上記移動時間Tcrと同じ時間かかると仮定した場合に上記時間Tcrの間にPFモータ22によって紙送りされる紙送り量STpfを演算する。
【0055】
この紙送り量STpfは、次のようにして求められる。PFモータ22の減速時間Tpd、すなわちPFモータ22が上記所定の速度Vepから停止するまでの時間Tpdは、上記所定の速度Vepに応じて決まる一定の値となっている。PFモータ22が単位距離進む間(例えば1回転する間)に紙送りされる紙送り量をαとすると、紙送り量STpfは、次式で与えられる。
STpf=α・(Vep・(Tcr−Tpd)+Vep・Tpd/2) … (4)
CRモータドライバ53は、シーケンス制御部51から次回の印字駆動要求を受け付けると、PFモータドライバ52にCR起動指令要求を送り、このCR起動指令要求を受け付けたPFモータドライバ52は重ね合わせ演算部55Aに紙送り量STpfを求める上記演算を開始させる。また、PFモータドライバ52は、PFカウンタ56が計数する実際の紙送り量Spfをモータコントロール部44から取得し、今回の紙送り量SApf(総紙送り量)から現時点までの紙送り量Spfを差し引いて紙送り残量SRpfを算出する。そして、重ね合わせ演算部55Aが算出した紙送り量STpfと、紙送り残量SRpfとを比較し、紙送り残量SRpfが紙送り量STpf以下となったときに、CRモータ13の起動を指令するCR起動信号をCRモータドライバ53に出力する。さらにPFモータドライバ52は、監視部55Bが、用紙18の後端がオーバライド領域ORを搬送方向下流側へ逸脱した「紙なし」状態であると判断した場合は、噴射(ファイア)を中止させる印字中止指令をヘッドドライバ54へ出力する。
【0056】
次に、プリンタ10の動作を図7、図8を参照して説明する。図7は、プラテン印字防止処理(タイマ割り込み処理)を示すフローチャートであり、図8は、プリンタにおいて通常動作時とプラテン印字防止処理時の印刷処理動作を示すトランザクション図である。図8において上から下へ向かう時系列方向において前半(上半分)が通常動作時、後半(下半分)がプラテン印字防止処理時をそれぞれ示す。まず図8を用いて、通常動作時とプラテン印字防止処理時との処理の流れについて説明する。
【0057】
まず通常動作時から説明する。シーケンス制御部51は、ホストコンピュータ38から受信した印刷データに含まれるコマンドに従って給紙・紙送り・印字・排紙の各シーケンスを実行する。印刷中におけるシーケンス処理では、図8に示すように「紙送り」と「印字」のシーケンスが交互に繰り返される。紙送りシーケンスにおいて、シーケンス制御部51から紙送り要求を受信すると、PFモータドライバ52はPFモータ22を起動させて、その要求で指示された紙送り量SApfの紙送り駆動を行う。紙送りを開始すると、PFモータ22はシーケンス制御部51へ紙送り開始の旨を応答する。
【0058】
シーケンス制御部51は紙送り開始の応答を受信すると、次の印字シーケンスに移行し、CRモータドライバ53及びヘッドドライバ54に印字駆動要求を送る。印字駆動要求を受信したCRモータドライバ53は、CR−PF重ね合わせ制御のためにCRモータ13の起動タイミングを指示するCR起動信号の指令を要求するCR起動指令要求をPFモータドライバ52に送る。一方、ヘッドドライバ54は印字駆動要求を受信すると、内部で印字処理を進めるとともにキャリッジ12が起動して印字開始位置に達するまで待機する。
【0059】
PFモータドライバ52は、紙送り駆動中に図7に示すプログラムをタイマ割り込みで実行する。その割り込み処理中で紙送り速度制御のフィードバック演算(本例ではPID制御演算)を行って指令値を求め、その求めた指令値を割り込み周期毎にモータコントロール部44に出力して紙送り制御を行う。また、CRモータドライバ53からCR起動指令要求を受け付けると、タイマ割り込み処理中の一処理として重ね合わせ演算部55Aが起動され、CR起動タイミングを決める紙送り量STpfを演算する。そして、PFカウンタ56の計数値(=Spf)を今回の紙送り量SApfから差し引いて実際の紙送り残量SRpfを求め、紙送り残量SRpfが紙送り量STpf以下になると、CRモータドライバ53へCR起動信号を出力する。通常動作時においては、監視部55Bが管理している用紙状態が、紙検出センサ26が用紙18を検知している「紙あり」状態であるため、印字は許可される。印字許可の場合は、特にヘッドドライバ54に特別な指示は与えられない。
【0060】
CRモータドライバ53はCR起動信号を受け付けると、CRモータ13を起動させ、キャリッジ12をその停止位置から速度データにより規定される所定の速度プロファイルに従う速度で今回の走査終了時の停止位置まで移動させる。この移動過程においてキャリッジ12が印字開始位置に到達すると、ヘッドドライバ54が印字指令を印字コントロール部45に出力し、記録ヘッド15による印字動作が開始される。印字動作が終了すると、ヘッドドライバ54はシーケンス制御部51へ印字終了の旨を送信する。印字終了の旨を受信したシーケンス制御部51は、次の紙送りシーケンスへ移行する。
【0061】
次にプラテン印字防止処理時の動作について説明する。ここで、用紙搬送方向長さが設定より短い用紙18が給紙されていたとする。また、次の紙送りを行うと、その紙送り途中で用紙18の後端が紙検出センサ26の検出部を通り過ぎ、かつ紙送り終了時点において用紙18の後端がオーバライド領域OR(図2参照)を搬送方向下流側へ逸脱するものとする。
【0062】
紙送りシーケンスに移行すると、紙送り要求に応じて紙送り駆動が開始される。次の印字シーケンスに移行すると、先と同様の手順で、PFモータドライバ52がCRモータドライバ53からCR起動指令要求を受信すると、重ね合わせ演算部55A及び監視部55Bが起動される。このとき、監視部55Bは、紙検出センサ26が用紙18の後端を検知すると、用紙状態を「オーバライド」状態に移行させるとともにプラテン印字防止のための判定演算を開始する。判定演算では、後端検知時点における紙送り残量SRpfを演算し、紙送り残量SRpfが初期オーバライド量SORintより大きい(SRpf>SORint)か否かを判定する。現在の紙送り終了時点における位置で用紙18の端部がオーバライド領域ORから搬送方向下流側に逸脱することを示す、SRpf>SORintが成立すると判定すると、ヘッドドライバ54へ印字中止指令を出力する。
【0063】
このプラテン印字防止処理時においても、実際の紙送り残量SRpfが、重ね合わせ演算部55Aが求めた紙送り量STpf以下になると、CR起動信号がCRモータドライバ53へ出力される。CRモータドライバ53はCR起動信号を受信すると、CRモータ13を起動させ、キャリッジ12を今回の走査終了時の停止位置まで移動させる。そして、この移動過程においてキャリッジ12が印字開始位置に到達しても、ヘッドドライバ54は先に受け付けた印字中止指令に基づき既に印字の中止処理をしているので、印字コントロール部45への印字指令の出力は行わない(強制印字終了)。このため、印字動作(インク滴噴射)なしでキャリッジ12だけが移動(空走)することになる。このため、用紙18の後端がオーバライド領域ORを搬送方向下流側へ逸脱した状態での印字は行われず、この結果、プラテン19への印字が回避される。ヘッドドライバ54は強制印字終了すると、印字終了の旨をシーケンス制御部51へ送信する。シーケンス制御部51は印字終了の旨を受信すると、PFモータドライバ52に問合せをし、その応答として強制印字終了の旨を知らされると、印字中断処理を行う。
【0064】
次にPFモータドライバ52内で実行されるタイマ割り込み処理を、図7に示すフローチャートに従って詳細に説明する。図7に示すプログラムをCPU31が実行することで、PFモータドライバ52の演算部55が構築される。このため、重ね合わせ演算部55Aと監視部55Bの各演算も、図7に示すフローチャートの処理の中で行われる。つまり、タイマ割り込み処理の中で、重ね合わせ演算処理及びプラテン印字防止処理が合わせて行われる。
【0065】
PFモータドライバ52の処理として、CPU31は図7にフローチャートで示されるプログラムを、所定時間毎のタイマ割り込み処理で実行する。ここで、ステップS1及びS2が、重ね合わせ演算部55Aの処理に相当し、ステップS3〜S11が監視部55Bの処理に相当する。また、ステップS12及びS13が、今回の紙送り量SApfからPFカウンタ56の計数値(=Spf)を差し引いて取得される実際の紙送り残量SRpfが、重ね合わせ演算部55Aが求めた紙送り量STpf以下になったときにCR起動信号を出力する処理に相当する。さらにステップS14及びS15が、紙送り速度制御(例えばPID制御)の処理に相当する。
【0066】
まずステップS1では、CR起動指令要求があったか否かを判断する。CR起動指令要求があった場合はステップS2へ進み、CR起動指令要求がなかった場合はステップS3へ進む。
【0067】
ステップS2では、CR−PF重ね合わせ演算(CR起動タイミング計算)を行う。すなわち、重ね合わせ演算部55Aが、前記(4)式を用いて紙送り量STpfを算出する。なお、この演算は、今回のパスの印字データが送られてきておらず印字開始位置が確定しないうちは行うことができない。このため、印字開始位置が確定する前にCR起動指令要求を受け付けた場合は、その後、印字開始位置が確定した時点で演算を行う。また、この演算は、毎回の紙送りにおいてCR起動指令要求を受け付けた際に1回のみ行う。
【0068】
ステップS3〜S11の処理では、「紙あり」「オーバライド」「紙なし」の3つの用紙状態の管理(S3〜S9)と、CR起動指令要求(つまり次回印字予定あり)があるときに、用紙18の後端がオーバライド領域ORを搬送方向下流側へ逸脱した「紙なし」状態であれば印字中止指令を行う処理(S10,S11)が行われる。これら各ステップS3〜S11の処理内容については後述する。
【0069】
ステップS12では、CR起動タイミングになったか否かを判断する。すなわち、ステップS2で先に算出された紙送り量STpfと、今回の紙送り量SApfからPFカウンタ56の計数値(現在位置までの紙送り量)を差し引いて求めた紙送り残量SRpfとを比較して、実際の紙送り残量SRpfが紙送り量STpf以下となったことをもってCR起動タイミングに達したと判断する。CR起動タイミングに達した場合はステップS13に進み、CR起動タイミングに達しない場合は、ステップS14に進む。
【0070】
ステップS13では、CR起動信号をCRモータドライバ53に出力する。この結果、CR起動信号を受け付けたCRモータドライバ53が、CRモータ13の起動を指令し、キャリッジ12が現在位置(停止位置)からの移動を開始する。
【0071】
ステップS14では、紙送り制御のためのPID計算(PID制御演算)を行う。すなわち、CPU31は、PFカウンタ56の計数値である現在の紙送り位置に対応する速度制御上の目標値を紙送り用の速度テーブルを参照して取得し、実測値を目標値に近づけるPID演算を行って今回のPF指令値を算出する。そして、ステップS15において、今回のPF指令値を、モータコントロール部44を介してPFモータ駆動回路41へ出力する。このPID演算で求められたPF指令値が割り込みサイクルタイム毎に指令されることにより、所定速度プロファイルに沿った速度で紙送りが行われる。なお、速度データは紙送り量の違いに応じて複数用意され、紙送り量が多いほど最高速度(定速度)が高速となる速度データが選択される。
【0072】
次に用紙状態管理及びプラテン印字防止処理を行うステップS3〜S11の処理について詳述する。監視部55Bが管理する用紙状態は、紙送りの進行に伴って順番に変化する。監視部55Bは、例えばEEPROM36の所定記憶領域にデータを記憶することで用紙状態を管理する。例えば「紙あり」を「00」、「オーバライド」を「01」、「紙なし」を「10」で管理する。まずステップS3において、用紙状態が「紙あり」と判断された場合は、次に紙検出センサ26が「紙あり」から「紙なし」に切り換わったか否かを判断する(S4)。つまり、用紙18の後端が検知されたか否かを判断する。なお、ここでの「紙なし」は、紙検出センサ26の検知状態を指すもので、用紙状態の「紙なし」とは異なる。
【0073】
そして、紙検出センサ26が「紙あり」から「紙なし」に切り換わると、紙送り残量SRpfが初期オーバライド量SORintより大きい(SRpf>SORint)か否かを判断する(S5)。SRpf>SORintが不成立の場合は、用紙状態を「オーバライド」状態に設定する(S6)。一方、SRpf>SORintが成立した場合は、用紙状態を「紙なし」状態に設定する(S7)。例えば用紙搬送方向長さが設定より短い用紙18が給紙されており、かつ初期オーバライド量SORintより長い搬送距離で紙送りがなされた場合は、用紙18の端部がオーバライド領域ORから搬送方向下流側へ逸脱する場合がある。このような場合は、用紙状態が「紙なし」に設定される。
【0074】
用紙状態が「紙なし」である場合、次回のタイマ割り込み処理実行時において、用紙状態が「紙なし」であると判断され(S3)、CR起動指令要求を既に受け付けた状態にあれば(S10でYES)、ヘッドドライバ54へ印字中止指令を出力する(S11)。この結果、PFモータドライバ52は印字中止処理を行い、記録ヘッド15による印字動作(インク滴噴射)は行われない。なお、本実施形態では、ステップS5の判断処理を行うCPU31により判断手段が構成される。また、ステップS10,S11の処理を実行するCPU31により制御手段が構成される。
【0075】
図9〜図11は、プラテン印字防止処理時におけるPFモータ22とCRモータ13の速度波形をそれぞれ示すグラフである。紙検出センサ26の後端検知タイミングは、紙送り過程のどのタイミングで発生するかはその時々で異なるので、後端検知タイミングとCR起動信号出力タイミングはどちらが先になるかは特定できない。図9は、紙検出センサ26が後端検知をした後にCR起動信号が出力された例である。図9(a)は、紙送り終了時点に用紙の後端がオーバライド領域OR内にある場合、同図(b)は、紙送り終了時点に用紙の後端がオーバライド領域ORから搬送方向下流側へ逸脱する場合の例である。
【0076】
プラテン印字防止処理では、紙送り中に紙検出センサ26が用紙18の後端を検知したこと(S4でYES)をトリガとして判定演算(S5〜S7,S10,S11)が開始される。判定演算では、紙送り終了時点に用紙18の後端がオーバライド領域OR内にあるか、オーバライド領域ORから搬送方向下流側へ逸脱するかを判定する演算処理が行われる。例えば図9(a),(b)に示すように、紙検出センサ26が後端検知をした後にCR起動信号が出力された場合、後端検知時に判定演算が実行される。このため、CR起動信号出力前のタイミングで、印字の可否を判定できる。
【0077】
例えば図9(a)に示すように紙送り終了時点に後端位置Pendがオーバライド領域OR内にある「オーバライド」判定の場合は、CR起動信号の出力とほぼ同時にCRモータ13が起動され、キャリッジ12が定速走行域に達した後、さらに印字開始位置に達するとインク滴噴射が開始される(ファイア開始)。一方、図9(b)に示すように紙送り終了時点に後端位置Pendがオーバライド領域ORから逸脱する「紙なし」判定の場合は、印字中止指令が出力されてヘッドドライバ54が印字中止処理を行う。このため、その後、CR起動信号の出力とほぼ同時にCRモータ13が起動されるものの、キャリッジ12が印字開始位置に達してもインク滴噴射は中止により行われない(ファイア禁止)。このため、キャリッジ12は空走することになる。
【0078】
また、図10(a),(b)に示すように、紙検出センサ26が後端検知をする前にCR起動信号が出力された場合、判定演算は紙検出センサ26が後端を検知した時点に開始される。この演算開始タイミングはCR起動信号出力かつ後端検知(つまりオーバライドカウンタON)の条件を満たす時なので、特許文献1と同様のタイミングとなる。例えば図10(a)に示すように紙送り終了時点に後端位置Pendがオーバライド領域OR内にある「オーバライド」判定の場合は、CR起動信号の出力とほぼ同時にCRモータ13が起動され、キャリッジ12が印字開始位置に達するとインク滴噴射が開始される(ファイア開始)。一方、図10(b)に示すように紙送り終了時点に後端位置Pendがオーバライド領域ORから逸脱する「紙なし」判定の場合は、CR起動信号の出力とほぼ同時にCRモータ13が起動されるものの、キャリッジ12が印字開始位置に達してもインク滴噴射は中止により行われない(ファイア禁止)。このため、キャリッジ12は空走する。
【0079】
また、図11は、前回の紙送り中に紙検出センサ26の用紙後端検知後、今回の紙送りを後端がオーバライド領域OR内に位置する状態で開始する例である。なお、図11は、図9及び図10のグラフに比べ搬送方向に拡大したスケールでオーバライド領域ORが広く描かれている。
【0080】
図11(a),(b)に示すように、CR起動指令要求の受信時(S1)に、用紙18の後端がオーバライド領域OR内に位置する「オーバライド状態」(S3)にあるので、CR起動指令要求受信をトリガとして判定演算(S8〜S11)が開始される。CR起動指令要求はCR起動信号出力タイミングより当然ながら先に受信されるので、CR起動信号出力タイミングより前のタイミングで判定演算は行われる。但し、CR起動指令要求受信時点で今回のパスの印字データが送られてきておらず印字開始位置を確定できない場合に限り、CR起動指令要求受信時に少し遅れて判定演算は開始される。
【0081】
判定演算では、紙送り終了時点に用紙18の後端がオーバライド領域OR内にあるか、オーバライド領域ORから搬送方向下流側へ逸脱するかを判定する判定処理を含む演算処理(S8〜S11)が行われる。すなわち、紙送り残量SRpfがオーバライド量SORを超えた(SRpf>SOR)か否かを判断する(S8)。ここで、オーバライド量SORとは、オーバライドカウンタ57の計数値、すなわち初期オーバライド量SORintから後端検知以後の紙送り量を減算した値である。この判定演算によって、CR起動信号s出力前のタイミングで、印字の可否を判定できる。
【0082】
例えば図11(a)に示すように紙送り終了時点に後端位置Pendがオーバライド領域OR内にある「紙あり」判定の場合は、CR起動信号の出力とほぼ同時にCRモータ13が起動され、キャリッジ12が印字開始位置に達するとインク滴噴射が開始される(ファイア開始)。一方、図11(b)に示すように紙送り終了時点に後端位置Pendがオーバライド領域ORから逸脱する「紙なし」判定の場合は、CR起動信号の出力とほぼ同時にCRモータ13が起動されるものの、キャリッジ12が印字開始位置に達してもインク滴噴射は中止により行われない(ファイア禁止)。このため、キャリッジ12は空走する。
【0083】
特許文献2に記載された従来装置では、後端がオーバライド領域内に位置する状態から紙送りを開始するときも、オーバライドカウンタのON(つまり紙検出センサ26の後端検知以後)かつCR起動信号受信をもって印字不許可すべきか否かを判定する判定演算を行っていたので、これに比べ本実施形態の方法は余裕をもって判定できる。
【0084】
以上、本実施形態では、印字中止時にもCR起動信号を出力してキャリッジ12を起動させる構成としたが、CR起動信号の出力を中止する構成も採用できる。すなわち、CR起動信号出力前に印字中止の旨の判定が出れば、印字中止指令を出力すると共にCR起動信号の出力を中止する。この方法によれば、図9(b)においてCR起動信号が出力されなくなるので、プラテン19への印字の回避に加え、キャリッジ12の空走も回避できる。また、図11(b)に示す後端検知後の次回以降の紙送りにおいても、CR起動信号が出力されなくなるので、プラテン19への印字の回避と、キャリッジ12の空走の回避を実現できる。特に特許文献2の従来装置においては、CR起動信号受信が判定演算開始のトリガを決める条件の一つに含まれているので、判定演算は必ずCR起動信号受信後に開始される。このため、判定結果が出るときには常にCRモータが既に起動された後となる。このため、印字不許可指令が発せられて印字動作をしなくても、キャリッジは必ず空走することになる。これに対して、上記構成を採用した本実施形態の場合、判定結果がCR起動信号出力前に出る場合がかなりあるので、印字中止指令の際にキャリッジ12が空走する頻度を減らすことができる。
【0085】
なお、印字中止指令を出力した場合、シーケンス制御部51は中断処理として給紙シーケンスへ移行する。このため、印字中止指令が出力されると、直ちに給紙処理に移行し、次頁の用紙18の給紙が開始される。すなわち、本実施形態のプリンタ10では、キャリッジ12がその移動経路上の所定位置に移動してレバー操作を行ってクラッチ手段を接続状態とし、PFモータ22の動力を給紙ローラ(図示せず)に伝達可能とする。この結果、用紙18の後端がオーバライド領域を逸脱した時点で印字中止指令が出力されるとともに印字動作のためのCR起動信号の出力が中止され、これに替わってキャリッジ12を所定位置へ移動させるCR起動信号を出力する。
【0086】
例えば、キャリッジ12が空走する構成であると、その回の印字のための走行が終了してから、所定位置へ移動することになるが、キャリッジ12の空走を回避できる本例の構成によれば、キャリッジ12の所定位置への到達を早め、その分、次頁の給紙開始時期を早められる。
【0087】
また、CR起動信号を常に出力してキャリッジ12を空走させる構成の場合も含め、本実施形態のプリンタ10では加速中印字を行うので、以下のメリットも得られる。すなわち、加速過程での印字(加速中印字)が行われるパス(一回のキャリッジ移動)のときは、CRモータ13の起動からキャリッジ12が印字開始位置に達するまでにあまり時間的な余裕がない。このような加速中印字を特許文献2に記載の従来装置で行う場合、CRモータの起動とほぼ同時に開始された判定演算の結果、印字不許可を指令しても印字動作が中止される時点に既に印字開始タイミングに達した後になることが可能性として起こり得る。これは、高速化の要求のために特に加速中印字の印字開始タイミングが早まるほど顕著となる。この場合、プラテン印字を確実に防止するために判定演算結果が出るまでキャリッジの起動時期を遅らせたり、印字開始位置までの移動時間が十分確保される場合に限りキャリッジを起動させたりするなどの特別な処理が必要になる。これに対し、本実施形態のプリンタ10によれば、CR起動信号の出力前に判定結果が出る場合、キャリッジ12の起動前に印字中止指令(印字不許可指令)を出力できるので、加速中印字時にキャリッジ12の起動時期を遅らせる特別な処理の実施頻度を低減することができる。
【0088】
以上、詳述したように本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)紙検出センサ26が用紙18の後端を検知したことをトリガとして、紙送り終了後に用紙18の後端がオーバライド領域ORを搬送方向下流側へ逸脱するかどうかを判定する判定演算を開始する。このため、CR起動信号の出力前に紙検出センサ26が後端検知した場合は、CR起動信号の出力前に事前に印字動作を中止すべきか否かを早めに把握できる。よって、印字を中止すべき判定が遅れたために印字が開始されてしまう不都合を回避し易くなり、これにより従来装置に比べ一層確実にプラテン印字を防止できる。
【0089】
(2)プリンタ10は、キャリッジ12の加速途中から印字動作を開始する加速中印字を行う構成であるので、キャリッジ起動時から印字動作開始までの時間が非常に短い。このような加速中印字が行われる走査時においても、キャリッジ起動前に余裕をもって判定結果が得られる頻度が増えるので、判定遅れに起因して誤ってプラテン印字される事態をより確実に防止できる。また、後端検知時にプラテン印字を確実に防止するために判定結果が出るまでCRモータ13の起動を待たせる待ち時間を設けた場合、判定結果が早めに分かる分だけ、待ち時間をなるべく短く済ませられるので、待ち時間によるスループットの低下を少なく抑えることができる。
【0090】
(3)さらに、CR起動信号の出力前に紙検出センサ26が用紙18の後端を検知して、判定結果がCR起動信号出力条件成立前に出た場合にCR起動信号の出力を中止する構成の採用も可能となる。この構成を採用した場合、CR起動信号の出力を中止することにより、印字動作だけでなくキャリッジ12の空走をも無くすことができる。キャリッジ12の空走が無くなれば、印字動作がないのにキャリッジ12が走行する不自然な動きを減らせるうえ、無駄な空走動作が減る分だけ消費電力の節約やCRモータ13の長寿を延ばすことに寄与する。
【0091】
(4)印字中止判定の場合、印字中止指令を出力するとともにCR起動信号の出力を中止する構成では、CR起動信号の出力中止に替えてキャリッジ12を所定位置まで移動させるCR起動信号を出力し、給紙を直ちに開始させる。よって、PFモータ22と給紙ローラとの間に介在するクラッチ手段が直ちに接続され、次の給紙を早期に開始させることができる。
【0092】
(5)用紙後端検知時以後の次回以降の紙送りでは、CR起動指令要求の受信をトリガとして判定演算を開始し、その時の紙送り残量SRpfとオーバライド量SORとを比較し、SRpf>SORが成立するか否かを判断して、印刷続行可能か否かを判断する(第2判断ステップ)。このため、印刷続行可能であるか否かの判定を、CR起動指定要求受信後、直ちに開始できる。つまり、印字を中止すべきか否かの判定を、常にキャリッジ12(つまり記録ヘッド15)の移動開始前に行うことが可能になる。
【0093】
(6)給紙・紙送り・排紙を管理するPFモータドライバ52がCR−PF重ね合わせ演算及びプラテン印字防止処理(判定演算を含む)を行うので、各ドライバ52〜54間で演算や判定に必要なデータを遣り取りする回数が少なく済む。このため、その分、必要な指令(CR起動信号・印字中止指令)を早期に出力することが可能になる。つまり、演算や判定に必要なデータを管理するPFモータドライバ52が、前記演算及び判定を行うので、データの遣り取り回数が少なく済み、必要な指令を早期に出力できる。
【0094】
(7)印字動作が中止されるときは、常にキャリッジ12(記録ヘッド15)が空走する構成では、プラテン印字に影響しないキャリッジ12(記録ヘッド15)の移動を中止させるための余分な制御を必要としない。よって、プラテン印字防止処理の制御内容が簡素で済む。
【0095】
(8)用紙搬送方向長さが設定より短い用紙18が給紙されて、給紙途中で紙検出センサ26が後端を検知する場合にも、紙送り残量SRpfが初期オーバライド量を超える場合は印字動作を中止できるので、給紙時にもキャリッジ動作を重ね合わせることができる。よって、一層スループット向上に寄与する。
【0096】
尚、実施の形態は、上記に限定されるものではなく、以下のように変更してもよい。
(変形例1)前記実施形態では、PFモータドライバ52にプラテン印字防止処理を行わせたが、CRモータドライバ53やDCユニット33に行わせても構わない。つまり、プラテン印字防止処理の実行主体は特に限定されない。
【0097】
(変形例2)図7に示すプログラムでは、用紙状態として「紙なし」状態を設定した場合(S7,S9)、次回のタイマ割り込み処理時において印字中止指令(S11)を行う構成であったが、同じ割り込み処理内で印字中止指令を行う構成も採用できる。
【0098】
(変形例3)前記実施形態では、クラッチ手段を設けてPFモータ22の動力を給紙ローラへ伝達する構成を採用したが、給紙ローラを駆動させる専用の給紙モータを設けた構成としてもよい。
【0099】
(変形例4)重ね合わせ処理において紙送り量STpfを求める演算内容は、適宜変更できる。例えばキャリッジが曲線状の加速プロファイルで加速する構成である場合は、その曲線状のプロファイルに沿った加速時間Taccのデータを予めメモリに記憶しておき、それを読み出して演算に使用する構成でもよい。また、演算に用いるデータが計測値でない場合、プリンタ10が管理するインク残量のデータを用いてキャリッジ重量の変化を考慮した補正をデータに加えて演算を行う構成も採用できる。
【0100】
(変形例5)初期オーバライド量は、紙検出センサ26の位置から記録ヘッド15の最上流ノズル位置までの距離に相当する値として設定したが、これに限定されない。例えば記録ヘッド15のノズルのうち用紙18が一部存在しなくなった部分に対応するノズルのインク滴噴射を禁止してプラテン印字を防止する構成も採用できる。この場合は、初期オーバライド量は、紙検出センサ26の位置から記録ヘッド15の最下流ノズル位置までの距離に設定してもよい。また、初期オーバライド量はこの種の固定値(一定値)に限定されず、可変の値であってもよい。例えば印刷条件に応じて決まる可変値とすることができる。例えば「縁なし印刷」と「縁あり印刷」の違いに応じて初期オーバライド量を異なる値に設定する。すなわち、「縁なし印刷」と「縁あり印刷」とでは搬送方向において用紙に印刷可能な限界位置が異なるので、それぞれの限界位置を反映させた初期オーバライド量に設定する。つまり、「縁あり印刷」の場合は、印刷条件として設定された余白領域に印字されないように初期オーバライド量を設定し、「縁なし印刷」の場合は、用紙の外側へ所定量はみ出した領域まで印字されるように初期オーバライド量を設定する。
【0101】
(変形例6)前記実施形態では、記録装置としてのインクジェット式のプリンタに具体化したが、この限りではない。インク以外の他の液体(機能材料の粒子が分散されている液状体を含む)を噴射して記録媒体に記録する記録装置(液体噴射装置)に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。この場合、記録媒体は、基板などその用途に応じた液滴噴射対象の媒体となる。そして、これらのうちいずれか一種の記録装置(液体噴射装置)に、本発明を適用してもよい。
【0102】
以下、前記実施形態および各変形例から把握される技術的思想を記載する。
(1)請求項1乃至7のいずれか一項に記載の記録方法において、前記記録手段は、前記記録媒体の搬送方向と交差する方向に移動可能な移動体に設けられ、前記第2駆動源が起動されることにより前記移動体の移動が開始されることを特徴とする記録方法。
【0103】
(2)請求項1乃至7及び前記技術的思想(1)のいずれか一項に記載の記録方法において、前記第2駆動源の起動タイミングを演算する演算ステップを更に備えたことを特徴とする記録方法。
【0104】
(3)前記制御手段は、前記搬送と記録の動作をシーケンスで制御するシーケンス制御部(51)と、該シーケンス制御部からの要求に応じた制御をそれぞれ行う第1駆動源制御部(52)、第2駆動源制御部(53)及び記録制御部(54)とを備え、前記第2駆動源制御部は、前記シーケンス制御部から要求を受け付けると、前記第2駆動源を起動させる起動指令を前記第1駆動源制御部に要求し、前記第1駆動源制御部は前記第2駆動源制御部からの前記要求に基づいて前記第1駆動源の駆動停止前に該第2駆動源を起動させる起動タイミングを決める演算を行い、該演算で決まった起動タイミングに達すると起動指令を前記第2駆動源制御部に出力するとともに、前記印刷続行可能か否かの判断を行い、印刷続行可能でないと判断した場合に前記記録制御部に記録中止の旨を指令することを特徴とする請求項8に記載の記録装置。これによれば、搬送を管理する第1駆動源制御部が前記演算及び前記判断を行うので、各制御部間で情報を遣り取りする回数が少なく済み、必要な指令を早期に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】一実施形態におけるプリンタの概略斜視図。
【図2】記録ヘッド及び搬送機構を示す模式側面図。
【図3】(a)はリニアエンコーダの平面図、(b),(c)は出力信号図。
【図4】PFモータとCRモータの重ね合わせ演算を説明するグラフ。
【図5】プリンタの電気的構成を示すブロック図。
【図6】プラテン印字防止装置を示すブロック図。
【図7】タイマ割り込み処理を示すフローチャート。
【図8】通常動作処理とプラテン印字防止処理を説明するトランザクション図。
【図9】(a)(b)PFモータとCRモータの速度波形を示すグラフ。
【図10】(a)(b)PFモータとCRモータの速度波形を示すグラフ。
【図11】(a)(b)PFモータとCRモータの速度波形を示すグラフ。
【符号の説明】
【0106】
10…記録装置(液体噴射装置)としてのプリンタ、11…移動手段を構成するガイド軸、12…移動手段を構成するとともに移動体としてのキャリッジ、13…第2駆動源としてのCRモータ(キャリッジモータ)、14…移動手段を構成するタイミングベルト、15…記録手段としての記録ヘッド、19…プラテン、22…第1駆動源としてのPFモータ(紙送りモータ)、23…リニアエンコーダ、24…搬送手段を構成する搬送ローラ、25…搬送手段を構成する排紙ローラ、31…判断手段及び制御手段を構成するCPU、32…ASIC、33…DCユニット、34…PROM、35…RAM、36…EEPROM、38…ホストコンピュータ、39…CRモータ駆動回路、40…ヘッド駆動回路、41…PFモータ駆動回路、42…エンコーダ、43…タイマIC、44…モータコントロール部、45…印字コントロール部、50…制御部、51…シーケンス制御部、52…PFモータドライバ、53…CRモータドライバ、54…ヘッドドライバ、56…PFカウンタ、57…オーバライドカウンタ、58…CRカウンタ、59…カウンタ、OR…オーバライド領域。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送するために駆動される第1駆動源と、記録媒体に記録を施す記録手段を移動させるために駆動される第2駆動源と、前記第1駆動源と第2駆動源とを前記搬送と記録とが交互に行われるように制御するとともに、該制御に際して前記第1駆動源の駆動停止前に前記第2駆動源を起動させる記録装置における記録方法であって、
前記記録手段の記録位置より搬送方向上流側位置で検出手段により前記記録媒体の後端を検知する検出ステップと、
前記検出手段が前記後端を検知すると、前記後端の検知時点における記録媒体の残り搬送量に基づいて今回の搬送終了時点における記録媒体の位置で記録続行可能か否かを判断する判断ステップと、
前記判断ステップで記録続行不可能であると判断された場合、前記後端の検知時点より前に前記第2駆動源の起動タイミングが訪れていたら、前記第2駆動源の起動後に前記記録手段による記録の中止処理を行い、一方、前記後端の検知時点より後に前記第2駆動源の起動タイミングが訪れるなら、該第2駆動源の起動を中止させる、もしくは前記記録手段による記録を中止させるものの該第2駆動源は起動させる制御ステップと
を備えたことを特徴とする記録装置における記録方法。
【請求項2】
前記制御ステップでは、前記判断ステップで記録続行不可能であると判断された場合、前記後端の検知時点より前に前記第2駆動源の起動タイミングが訪れていたら、前記第2駆動源の起動後に前記記録手段による記録の中止処理を行い、一方、前記後端の検知時点より後に前記第2駆動源の起動タイミングが訪れるなら前記第2駆動源の起動及び前記記録手段による記録を共に中止することを特徴とする請求項1に記載の記録装置における記録方法。
【請求項3】
前記制御ステップでは、前記判断ステップで記録続行不可能であると判断された場合、前記後端の検知時点より前に前記第2駆動源の起動タイミングが訪れていたら、前記第2駆動源の起動後に前記記録手段による記録の中止処理を行い、一方、前記後端の検知時点より後に前記第2駆動源の起動タイミングが訪れるなら、前記記録手段による記録の中止処理を前記第2駆動源の起動前に行い、その後に前記起動タイミングが訪れたときに前記第2駆動源を起動させることを特徴とする請求項1に記載の記録装置における記録方法。
【請求項4】
前記記録手段は移動過程における加速途中から記録を開始することが可能な構成であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の記録装置における記録方法。
【請求項5】
前記記録手段は前記記録媒体の搬送方向と異なる方向へ移動可能な移動体に設けられ、前記第2駆動源の起動により前記移動体の移動が開始されるように構成されるとともに、前記移動体の移動経路上の所定位置に移動した該移動体によって操作されかつ記録媒体の供給時の搬送を行う供給手段と前記第2駆動源とを動力伝達可能に接続するクラッチ手段を更に備え、
前記記録続行不可能と判断された場合において記録のための前記第2駆動源の起動を中止したときには、前記クラッチ手段を接続状態にさせるべく前記第2駆動源を起動させて前記移動体を前記所定位置に移動させることを特徴とする請求項1、2、4のいずれか一項に記載の記録装置における記録方法。
【請求項6】
前記判断ステップにおける前記記録続行可能か否かの判断は、前記記録媒体の後端が前記検知時の位置から前記記録手段による記録が可能な限界位置まで搬送される搬送距離に相当する初期オーバライド量と、該後端の検知時における記録媒体の残り搬送量とを比較して行われることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の記録装置における記録方法。
【請求項7】
前記検出手段が前記後端を検知した際の前記搬送の終了後、前記後端が前記検知時の位置から前記限界位置までのオーバライド領域内に位置する状態で行われた記録の後、該オーバライド領域内に後端が位置する状態から開始される次回以降の搬送においては、前記判断ステップに替えて、当該次回以降のうち今回の搬送の終了時点における記録媒体の位置で記録続行可能か否かを判断する第2判断ステップを備え、該第2判断ステップでは、前記記録手段を記録のために移動させるべき要求を受け付けると、前記オーバライド領域内に位置する搬送開始時の前記後端が前記限界位置まで搬送される搬送距離に相当するオーバライド量と、記録媒体の搬送量とを比較して、当該今回の搬送終了時点における記録媒体の位置で記録続行可能か否かを判断することを特徴とする請求項6に記載の記録装置における記録方法。
【請求項8】
記録媒体を搬送する搬送手段の駆動源である第1駆動源と、記録媒体に記録を施す記録手段を移動させる移動手段の駆動源である第2駆動源と、前記第1駆動源と第2駆動源とを前記搬送と記録とが交互に行われるように制御するとともに、該制御に際して前記第1駆動源の駆動停止前に前記第2駆動源を起動させる制御手段とを備えた記録装置において、
前記記録手段の記録位置より搬送方向上流側位置で前記記録媒体の後端を検出する検出手段と、
前記記録媒体の後端が前記検出手段により検知されると、前記後端の検知時点における記録媒体の残り搬送量に基づいて今回の搬送終了時点における記録媒体の位置で記録続行可能か否かを判断する判断手段とを備え、
前記制御手段は、前記判断手段が記録続行不可能と判断した場合、前記後端の検知時点より前に前記第2駆動源の起動タイミングが訪れていたら、前記記録手段による記録の中止処理を行い、一方、前記後端の検知時点より後に前記第2駆動源の起動タイミングが訪れるなら、該第2駆動源の起動を中止させる、もしくは前記記録手段による記録を中止させるものの該第2駆動源は起動させることを特徴とする記録装置。
【請求項1】
記録媒体を搬送するために駆動される第1駆動源と、記録媒体に記録を施す記録手段を移動させるために駆動される第2駆動源と、前記第1駆動源と第2駆動源とを前記搬送と記録とが交互に行われるように制御するとともに、該制御に際して前記第1駆動源の駆動停止前に前記第2駆動源を起動させる記録装置における記録方法であって、
前記記録手段の記録位置より搬送方向上流側位置で検出手段により前記記録媒体の後端を検知する検出ステップと、
前記検出手段が前記後端を検知すると、前記後端の検知時点における記録媒体の残り搬送量に基づいて今回の搬送終了時点における記録媒体の位置で記録続行可能か否かを判断する判断ステップと、
前記判断ステップで記録続行不可能であると判断された場合、前記後端の検知時点より前に前記第2駆動源の起動タイミングが訪れていたら、前記第2駆動源の起動後に前記記録手段による記録の中止処理を行い、一方、前記後端の検知時点より後に前記第2駆動源の起動タイミングが訪れるなら、該第2駆動源の起動を中止させる、もしくは前記記録手段による記録を中止させるものの該第2駆動源は起動させる制御ステップと
を備えたことを特徴とする記録装置における記録方法。
【請求項2】
前記制御ステップでは、前記判断ステップで記録続行不可能であると判断された場合、前記後端の検知時点より前に前記第2駆動源の起動タイミングが訪れていたら、前記第2駆動源の起動後に前記記録手段による記録の中止処理を行い、一方、前記後端の検知時点より後に前記第2駆動源の起動タイミングが訪れるなら前記第2駆動源の起動及び前記記録手段による記録を共に中止することを特徴とする請求項1に記載の記録装置における記録方法。
【請求項3】
前記制御ステップでは、前記判断ステップで記録続行不可能であると判断された場合、前記後端の検知時点より前に前記第2駆動源の起動タイミングが訪れていたら、前記第2駆動源の起動後に前記記録手段による記録の中止処理を行い、一方、前記後端の検知時点より後に前記第2駆動源の起動タイミングが訪れるなら、前記記録手段による記録の中止処理を前記第2駆動源の起動前に行い、その後に前記起動タイミングが訪れたときに前記第2駆動源を起動させることを特徴とする請求項1に記載の記録装置における記録方法。
【請求項4】
前記記録手段は移動過程における加速途中から記録を開始することが可能な構成であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の記録装置における記録方法。
【請求項5】
前記記録手段は前記記録媒体の搬送方向と異なる方向へ移動可能な移動体に設けられ、前記第2駆動源の起動により前記移動体の移動が開始されるように構成されるとともに、前記移動体の移動経路上の所定位置に移動した該移動体によって操作されかつ記録媒体の供給時の搬送を行う供給手段と前記第2駆動源とを動力伝達可能に接続するクラッチ手段を更に備え、
前記記録続行不可能と判断された場合において記録のための前記第2駆動源の起動を中止したときには、前記クラッチ手段を接続状態にさせるべく前記第2駆動源を起動させて前記移動体を前記所定位置に移動させることを特徴とする請求項1、2、4のいずれか一項に記載の記録装置における記録方法。
【請求項6】
前記判断ステップにおける前記記録続行可能か否かの判断は、前記記録媒体の後端が前記検知時の位置から前記記録手段による記録が可能な限界位置まで搬送される搬送距離に相当する初期オーバライド量と、該後端の検知時における記録媒体の残り搬送量とを比較して行われることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の記録装置における記録方法。
【請求項7】
前記検出手段が前記後端を検知した際の前記搬送の終了後、前記後端が前記検知時の位置から前記限界位置までのオーバライド領域内に位置する状態で行われた記録の後、該オーバライド領域内に後端が位置する状態から開始される次回以降の搬送においては、前記判断ステップに替えて、当該次回以降のうち今回の搬送の終了時点における記録媒体の位置で記録続行可能か否かを判断する第2判断ステップを備え、該第2判断ステップでは、前記記録手段を記録のために移動させるべき要求を受け付けると、前記オーバライド領域内に位置する搬送開始時の前記後端が前記限界位置まで搬送される搬送距離に相当するオーバライド量と、記録媒体の搬送量とを比較して、当該今回の搬送終了時点における記録媒体の位置で記録続行可能か否かを判断することを特徴とする請求項6に記載の記録装置における記録方法。
【請求項8】
記録媒体を搬送する搬送手段の駆動源である第1駆動源と、記録媒体に記録を施す記録手段を移動させる移動手段の駆動源である第2駆動源と、前記第1駆動源と第2駆動源とを前記搬送と記録とが交互に行われるように制御するとともに、該制御に際して前記第1駆動源の駆動停止前に前記第2駆動源を起動させる制御手段とを備えた記録装置において、
前記記録手段の記録位置より搬送方向上流側位置で前記記録媒体の後端を検出する検出手段と、
前記記録媒体の後端が前記検出手段により検知されると、前記後端の検知時点における記録媒体の残り搬送量に基づいて今回の搬送終了時点における記録媒体の位置で記録続行可能か否かを判断する判断手段とを備え、
前記制御手段は、前記判断手段が記録続行不可能と判断した場合、前記後端の検知時点より前に前記第2駆動源の起動タイミングが訪れていたら、前記記録手段による記録の中止処理を行い、一方、前記後端の検知時点より後に前記第2駆動源の起動タイミングが訪れるなら、該第2駆動源の起動を中止させる、もしくは前記記録手段による記録を中止させるものの該第2駆動源は起動させることを特徴とする記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−142991(P2008−142991A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−331802(P2006−331802)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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