説明

記録装置

【課題】ロール紙等を利用することのメリットの一つである利便性を損なうことなく、ロール紙等の記録面にローラーの押圧痕が付いてしまう虞を低減させる。
【解決手段】インクジェットプリンター1は、給送駆動ローラー23と給送従動ローラー24とでロール紙RPを挟持した状態で、その給送駆動ローラー23を回転させることによりロール紙RPが給送されるロール紙給送装置20(搬送装置)を備えている。給送駆動ローラー23に対する給送従動ローラー24の押圧荷重は、偏心カムを回転させることによって、棒バネを介して給送従動ローラー24を軸支する給送従動ローラーホルダー31が揺動し、それによって第1押圧荷重又は第1押圧荷重より低い第2押圧荷重のいずれかに切り換えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録材を記録実行領域へ搬送する搬送装置を備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被記録材を記録実行領域へ搬送する搬送装置を備えた記録装置としては、例えばロール紙等、軸体に巻かれた長尺な被記録材(以下、単に「ロール紙等」という。)に記録を実行可能なものが公知である。このような記録装置においては、ロール紙等に記録を実行するための準備作業として、記録装置のロール紙ホルダー等にロール紙等をセットする作業をユーザーが手作業で行う必要がある。より具体的には、まずロール紙等が巻かれた軸体をロール紙ホルダー等に軸支させる作業と、つづいてそのロール紙等の先端近傍を搬送装置のローラー対に挟持させる作業とをユーザーが手作業で行う必要がある。しかし一旦ロール紙ホルダー等にロール紙等をセットした後は、そのロール紙等が搬送装置のローラー対に挟持されている状態を維持する限り、ロール紙等を最後まで使い切るまでユーザーの手作業は不要であり、このような点がロール紙等を利用するメリットの一つであると言える。
【0003】
しかし、搬送装置のローラー対にロール紙等が挟持された状態で長期間放置すると、ロール紙等の記録面のローラーが接している部分に、変色が生じたり押圧痕が付いたりすることがある。このロール紙等の記録面の変色は、その記録面に接するローラーがゴムローラーである場合に、そのゴムローラーに含まれる微量の薬品や油分等がロール紙等の記録面に付着することによって生ずる。またロール紙等の記録面の押圧痕は、ローラー対の押圧荷重がロール紙等に長期間作用し続けることによって、そのローラー対に挟持されている部分が徐々に変形して生ずる。そして、このような変色や押圧痕は、ロール紙等に記録を実行する上で、記録画質が低下してしまう要因となり得る。
【0004】
このような課題を解決することを目的とした従来技術の一例としては、ロール紙等の記録面に接するゴムローラーの外周面を樹脂膜で被覆した記録装置が公知である(例えば特許文献1を参照)。当該従来技術は、ゴムローラーの外周面に被覆されている樹脂膜がロール紙等の記録面に接するので、ゴムローラーに含まれる薬品や油分等がロール紙等の記録面に付着することを防止でき、それによってロール紙等の変色を防止できる、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−162470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ローラー対でロール紙等を挟持し、そのローラー対の回転によりロール紙等を記録実行領域へ搬送する搬送装置において、スリップ等が生じない安定的な搬送を実現するには、やはりローラー対の押圧荷重を一定以上にする必要があることに変わりはない。つまり、ロール紙等の記録面に接するゴムローラーの外周面に樹脂膜を被覆してもしなくても、ロール紙等に対する当該ゴムローラーの接触面積はほとんど変わらないのであるから、必要な押圧荷重もほとんど変わらないはずである。そのため上記特許文献1に開示されている従来技術によれば、ロール紙等に変色が生ずることを防止することは可能であっても、ロール紙等に押圧痕が付いてしまう虞は依然として生ずることになる。
【0007】
また例えば、長期間ロール紙等に記録を実行しないときには、ロール紙ホルダー等からロール紙等を取り外す操作をユーザーに行わせることにより、ロール紙等に押圧痕が付いてしまうことを回避することも可能である。しかしユーザーが失念してロール紙ホルダー等にロール紙等をセットしたまま放置してしまうことがあり得る。そして、ロール紙ホルダー等からロール紙等を取り外す操作を頻繁に行わなければならないとすれば、ロール紙等を利用することのメリットの一つである利便性が損なわれることになってしまう。
【0008】
また例えば、搬送装置のローラー対のローラー同士を離間させることが可能なレリース機構等を設け、長期間ロール紙等に記録を実行しないときには、搬送装置のローラー対によるロール紙等の挟持を解除することによって、ロール紙等に押圧痕が付いてしまうことを回避することも可能である。しかしローラー対によるロール紙等の挟持を解除してしまうと、ロール紙等の先端近傍が自由に移動可能な状態となるため、ロール紙等の巻癖や弾性復帰力等によって、ローラー対で再び挟持可能な範囲からロール紙等の先端近傍が離脱してしまう虞が生ずる。つまり、結局ロール紙等をセットする操作を再度ユーザーが行わなければならない状態となる虞が生ずることになる。そのため、やはりロール紙等を利用することのメリットの一つである利便性が損なわれることになってしまう。
【0009】
このような状況に鑑み本発明は成されたものであり、本発明の目的は、ロール紙等を利用することのメリットの一つである利便性を損なうことなく、ロール紙等の記録面にローラーの押圧痕が付いてしまう虞を低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、被記録材を記録実行領域へ搬送する搬送装置を備えた記録装置であって、前記搬送装置は、ローラー対と、前記ローラー対のいずれか一方のローラーを他方のローラーへ押圧する押圧装置と、を含み、少なくとも前記ローラー対のいずれか一方のローラーを回転させることにより前記ローラー対に挟持されている被記録材が搬送される構成であり、前記押圧装置は、第1押圧荷重又は前記第1押圧荷重より低い第2押圧荷重のいずれかに、前記ローラー対の押圧荷重を切換可能な押圧荷重切換機構を有する、ことを特徴とした記録装置である。
【0011】
ロール紙等を記録実行領域へ搬送するときには、搬送装置のローラー対の押圧荷重を第1押圧荷重に設定することにより、スリップ等が生じない安定的な搬送を実現するのに充分な押圧荷重でロール紙等をローラー対で挟持することができる。他方、長期間ロール紙等に記録を実行しないときには、搬送装置のローラー対の押圧荷重を第1押圧荷重より低い第2押圧荷重に設定することにより、ロール紙等をローラー対で挟持した状態を維持しつつ、そのロール紙等の記録面に押圧痕が付いてしまう虞を低減させることができる。
【0012】
これにより本発明の第1の態様によれば、ロール紙等を利用することのメリットの一つである利便性を損なうことなく、ロール紙等の記録面にローラーの押圧痕が付いてしまう虞を低減させることができるという作用効果が得られる。
【0013】
本発明の第2の態様は、前述した第1の態様に記載の記録装置において、軸体に巻かれている長尺な被記録材が前記ローラー対に挟持された状態で当該被記録材の先端が前記ローラー対と前記記録実行領域との間にあるときに、当該被記録材の前記ローラー対と前記記録実行手段との間にある部分を、当該被記録材の巻癖が保持される姿勢で待機させることが可能な空間が設けられている、ことを特徴とした記録装置である。
【0014】
一般的にロール紙等は、軸体に巻かれた状態であることによって、巻癖が自然に付与されることになる。より具体的にはロール紙等は、通常は記録面が外周面に露出するように巻かれており、それによって記録面が凸面状に湾曲する巻癖が付与される。ロール紙等に記録を実行可能な記録装置は、それを前提に設計されており、一般的に記録面が凸面状に湾曲する巻癖に対しては所謂ヘッド擦れや紙ジャム等が生じにくい構造になっている。したがって、仮に記録面が凹面状に湾曲する反りや変形等が記録実行前のロール紙等に生じていると、それによって所謂ヘッド擦れや紙ジャム等が生じやすくなってしまう虞がある。
【0015】
「巻癖が保持される」は、上記説明したような記録面が凹面状に湾曲する反りや変形等が記録実行前のロール紙等に生ずることに起因した所謂ヘッド擦れや紙ジャム等を未然に防止する趣旨に基づくものである。すなわち「巻癖が保持される」とは、そのロール紙等が軸体に巻かれた状態であることによって自然に付与される巻癖、つまり記録面が凸面状に湾曲する巻癖が保持されれば、それをもって足り、その巻癖の程度に多少の変化が生ずるような態様も含まれる。記録実行前のロール紙等において記録面が凸面状に湾曲する巻癖が保持される限り、その巻癖の程度に多少の変化が生じても、所謂ヘッド擦れや紙ジャム等はほとんど生じないからである。換言すれば「巻癖が保持される」とは、そのロール紙等が軸体に巻かれた状態であることによって自然に付与される巻癖と相反する方向の変形がロール紙等に生じない状態が保持されることを意味し、より具体的には、記録面が凸面状に湾曲する巻癖が付与されているロール紙等に、記録面が凹面状に湾曲する反りや変形等が生じるような力が作用しない状態が保持されることを意味する。
【0016】
本発明の第2の態様は、ロール紙等をローラー対で挟持した状態を維持する際に、その巻癖が保持される姿勢でロール紙等を待機させることができる空間が、ローラー対と記録実行領域との間に設けられている。このような空間が設けられていることによって、ローラー対で挟持された状態で待機しているロール紙等に、例えば記録面が凹面状に湾曲する反りや変形等が生ずるような力が作用することを回避することができる。したがって本発明の第2の態様によれば、ロール紙等をローラー対で挟持した状態を長期間維持するときに、そのロール紙等に押圧痕が付いてしまう虞を低減できることに加えて、さらに、ロール紙等に記録を実行する際に、そのロール紙等の反りや変形等に起因して所謂ヘッド擦れや紙ジャム等が生ずる虞を低減させることができる。
【0017】
本発明の第3の態様は、前述した第1の態様又は第2の態様に記載の記録装置において、前記搬送装置及び前記押圧装置を制御する制御装置を備え、前記制御装置は、少なくとも軸体に巻かれている長尺な被記録材を前記記録実行領域へ搬送するときには、前記ローラー対の押圧荷重を前記第1押圧荷重とし、軸体に巻かれている長尺な被記録材に記録を実行しないときには、前記ローラー対の押圧荷重を前記第2押圧荷重とする、ことを特徴とした記録装置である。
【0018】
例えば、搬送装置におけるローラー対の押圧荷重をユーザーが手動操作で切り換えるような態様においては、ローラー対の押圧荷重の誤設定等がなされる虞が生ずる。具体的には、搬送装置でロール紙等を搬送する際に、ローラー対の押圧荷重が本来設定されるべき第1押圧荷重ではなく第2押圧荷重に設定されていると、ロール紙等の搬送を正常に行うことができない虞が生ずる。他方、長期間ロール紙等に記録を実行しないときには、ローラー対の押圧荷重が本来設定されるべき第2押圧荷重ではなく第1押圧荷重に設定されていると、ロール紙等の記録面にローラーの押圧痕が付いてしまう虞が生ずる。
【0019】
それに対して本発明の第3の態様は、記録装置の使用状態等に応じて、搬送装置におけるローラー対の押圧荷重が制御装置により自動的に設定される。したがって本発明の第3の態様によれば、搬送装置におけるローラー対の押圧荷重の誤設定等を未然に防止することができる。
【0020】
本発明の第4の態様は、前述した第3の態様に記載の記録装置において、前記制御装置は、軸体に巻かれている長尺な被記録材に記録を実行しないときには、前記記録装置の電源OFF操作が行われたことを条件に、又は前記記録装置の動作モードが省電力モードに切り換わったことを条件に、前記ローラー対の押圧荷重を前記第2押圧荷重とする、ことを特徴とした記録装置である。
このような特徴によれば、記録装置が電源OFF又は省電力モードで動作している状態、つまりロール紙等をローラー対で挟持した状態で長期間放置される可能性が高い状態において、ロール紙等の記録面にローラーの押圧痕が付いてしまう虞を確実に低減させることができる。
【0021】
本発明の第5の態様は、前述した第1〜第4の態様のいずれかに記載の記録装置において、前記押圧装置は、前記ローラー対のいずれか一方のローラーと他方のローラーとを相対的に離間させる離間機構を含む、ことを特徴とした記録装置である。
このような特徴によれば、ロール紙等を記録装置にセットする操作、及び記録装置からロール紙等を取り出す操作をユーザーが行う際の操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】インクジェットプリンターの要部側面図。
【図2】ロール紙給送装置の押圧装置が配設されている部分を拡大図示した斜視図。
【図3】ロール紙給送装置の押圧装置が配設されている部分を拡大図示した側面図。
【図4】押圧装置の偏心カムの側面図。
【図5】ロール紙給送装置の要部を模式的に図示した側面図(第1押圧荷重を設定)。
【図6】ロール紙給送装置の要部を模式的に図示した側面図(第2押圧荷重を設定)。
【図7】ロール紙給送装置の要部を模式的に図示した側面図(ローラー対を離間)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
<インクジェットプリンター1の概略構成>
インクジェットプリンター1の概略構成について、図1を参照しながら説明する。
図1は、インクジェットプリンター1の要部側面図である。
「記録装置」としてのインクジェットプリンター1は、「被記録材」としての単票紙P又はロール紙RPに記録を実行する手段として、搬送駆動ローラー11、搬送従動ローラー12、記録紙支持部材13、排出駆動ローラー14、排出従動ローラー15、キャリッジ16及び記録ヘッド17を備えている。
【0025】
搬送駆動ローラー11は、金属軸体の外周面に高摩擦被膜が施されて形成されており、図示していないモーターの回転駆動力が伝達されて回転する。搬送従動ローラー12は、搬送駆動ローラー11に当接する方向へ付勢された状態で従動回転可能に軸支されている。記録紙支持部材13は、記録実行領域(記録ヘッド17によりインクが噴射される領域)で単票紙P又はロール紙RPを支持する部材である。記録紙支持部材13と排出駆動ローラー14との間には、記録紙支持部材13を通過した単票紙P又はロール紙RPを支持して排出駆動ローラー14へ案内する補助支持部材131が配設されている。排出駆動ローラー14は、図示していないモーターの回転駆動力が伝達されて回転する。排出従動ローラー15は、従動回転可能に軸支されるとともに、排出駆動ローラー14に当接する方向へ付勢されている。
【0026】
キャリッジ16は、キャリッジガイド軸18及びキャリッジ支持フレーム19によって、主走査方向へ往復動可能に支持されている。この主走査方向は、記録紙支持部材13に支持された状態の単票紙P又はロール紙RPの記録面(記録が実行される面。以下同じ。)に沿って副走査方向Y(単票紙P又はロール紙RPの搬送方向)と交差する方向である。キャリッジガイド軸18及びキャリッジ支持フレーム19は、主走査方向に沿って配設されている。キャリッジ16は、図示していないモーターの回転駆動力で双方向回転する無端ベルト(図示せず)が連結されている。当該無端ベルトは、そのモーターの駆動プーリーと従動プーリー(図示せず)に掛架され、キャリッジガイド軸18及びキャリッジ支持フレーム19に対して略平行に配設されている。キャリッジ16は、モーターの駆動力で当該無端ベルトを双方向回転させることによって主走査方向へ往復動させることができる。
【0027】
キャリッジ16には、記録ヘッド17が搭載されている。記録ヘッド17は、記録紙支持部材13に支持された状態の単票紙P又はロール紙RPの記録面にヘッド面が対面するようにキャリッジ16に搭載されている。記録ヘッド17は、単票紙P又はロール紙RPの記録面にインクを噴射してドットを形成するための多数の噴射ノズルがヘッド面に設けられている(図示せず)。記録ヘッド17へのインクの供給は、インクジェットプリンター1の本体に設けられたインクタンク(図示せず)からインクチューブ(図示せず)を介して行われる。
【0028】
さらにインクジェットプリンター1は、単票紙Pを搬送駆動ローラー11へ搬送する公知の自動給送装置(図示せず)、及びロール紙RPを搬送駆動ローラー11へ搬送する「搬送装置」としてのロール紙給送装置20を備えている。ロール紙RPは符号Aで示した経路で搬送され、単票紙Pは符号Bで示した経路で搬送される。ロール紙給送装置20は、ロール紙支持軸21、第1案内部材22、給送駆動ローラー23、給送従動ローラー24、第2案内部材25、フラップ26、2つのロール紙案内ローラー27及び第3案内部材28を有している。
【0029】
ロール紙支持軸21は、ロール紙RPが巻かれた軸体RSを支持するとともに、図示していないモーターの回転駆動力が伝達されて回転する。第1案内部材22はロール紙RPを給送駆動ローラー23へ案内する部材である。給送駆動ローラー23と給送従動ローラー24は、ロール紙RPを挟持する「ローラー対」を構成する。給送駆動ローラー23は、図示していないモーターの回転駆動力が伝達されて回転する。給送従動ローラー24は、給送従動ローラーホルダー31に従動回転可能に軸支されている。第2案内部材25はロール紙RPをフラップ26へ案内する部材である。フラップ26は、揺動可能に支持されており、図示していない揺動機構によって揺動する。このフラップ26は、ロール紙RPの搬送経路Aと単票紙Pの搬送経路Bとを選択的に切り換える部材である。2つのロール紙案内ローラー27は、従動回転可能に支持されており、ロール紙RPに接して従動回転する。第3案内部材28はロール紙RPを搬送駆動ローラー11へ案内する部材である。ロール紙支持軸21に支持されたロール紙RPは、ロール紙支持軸21及び給送駆動ローラー23の回転によって搬送駆動ローラー11へ給送される。
【0030】
以上説明した構成のインクジェットプリンター1において、給送された単票紙P又はロール紙RPは、記録紙支持部材13に支持され、主走査方向へ往復動する記録ヘッド17のヘッド面からインクが噴射されて記録面にドットが形成される動作と、搬送駆動ローラー11及び排出駆動ローラー14の回転により所定の搬送量で副走査方向Yへ搬送される動作とが交互に繰り返されることによって、記録面に記録が実行される。これらの一連の記録制御、並びに前記の自動給送装置及びロール紙給送装置20の制御は、公知のマイコン制御回路を有する制御装置100により実行される。
【0031】
<押圧装置30の構成>
押圧装置30の構成について、図2〜図4を参照しながら説明する。
図2は、ロール紙給送装置20の押圧装置30が配設されている部分を拡大図示した斜視図であり、図3は、その側面図である。図4は、押圧装置30の偏心カム32の側面図である。
【0032】
押圧装置30は、給送従動ローラー24を給送駆動ローラー23へ押圧する装置であり、前述した給送従動ローラーホルダー31、偏心カム32、ねじりコイルバネ33及び棒バネ34を有している。
【0033】
給送駆動ローラー23は、軸部231を回転軸として回転可能に、インクジェットプリンター1の筐体の一部を構成する左サイドフレーム2及び右サイドフレーム(図示せず)に支持されている。給送従動ローラー24は、給送従動ローラーホルダー31に設けられた棒バネ34に軸支されている。給送従動ローラーホルダー31は、軸部311を揺動軸として符号Cで示した揺動方向へ揺動可能に、左サイドフレーム2及び右サイドフレームに支持されている。
【0034】
「押圧荷重切換機構」及び「離間機構」を構成する偏心カム32は、軸部321を回転軸として回転可能に左サイドフレーム2に支持されており、図示していないモーターの回転駆動力が伝達されて回転する。偏心カム32のカムプロフィールは、軸部321の中心点からカム面までの距離がL1となる領域32a、軸部321の中心点からカム面までの距離がL1より長いL2となる領域32b、及び軸部321の中心点からカム面までの距離がL2より長いL3となる領域32cを有している(図4)。この偏心カム32の回転制御は、制御装置100(図1)により実行される。
【0035】
ねじりコイルバネ33は、左サイドフレーム2の突起部3に支持されている。ねじりコイルバネ33の一端部331は、左サイドフレーム2のバネ係止部4に係止されており、ねじりコイルバネ33の他端部332は、給送従動ローラーホルダー31のバネ係合部313に係合している。すなわち給送従動ローラーホルダー31は、ねじりコイルバネ33のバネ力によって、カム当接部312が偏心カム32に当接する揺動方向へ付勢されている。
【0036】
<押圧装置30の動作>
押圧装置30の動作について、図5〜図7を参照しながら説明する。図5〜図7は、ロール紙給送装置20の要部を模式的に図示した側面図である。
【0037】
図5は、偏心カム32のカム面の領域32aが給送従動ローラーホルダー31のカム当接部312に当接している状態を図示したものである。
この状態においては、棒バネ34のバネ力によって、給送従動ローラー24が給送駆動ローラー23に押圧される。このときの給送駆動ローラー23に対する給送従動ローラー24の押圧荷重は、給送駆動ローラー23と給送従動ローラー24とでロール紙RPを挟持し、給送駆動ローラー23の回転によりロール紙RPを搬送する際に、給送駆動ローラー23とロール紙RPとの接触面にスリップ等が生じない安定的な搬送を実現するのに充分な押圧荷重に設定されている(第1押圧荷重)。具体的には、当該実施例において第1押圧荷重は、約1.5kgfに設定されている。
【0038】
図6は、偏心カム32のカム面の領域32bが給送従動ローラーホルダー31のカム当接部312に当接している状態を図示したものである。
【0039】
例えばインクジェットプリンター1の電源OFF時や消費電力を抑えた省電力モードでインクジェットプリンター1が動作している場合等、長期間ロール紙RPに記録を実行しない場合がある。このような場合に制御装置100は、インクジェットプリンター1の電源OFF操作が行われたことを条件に、又はインクジェットプリンター1の動作モードが省電力モードに切り換わったことを条件に、記録実行領域からロール紙RPを退避させる。
【0040】
より具体的には、まず図5に図示した状態からロール紙RPを逆送方向Dへ搬送し、記録実行領域からロール紙RPを退避させ、そのロール紙RPの先端が、給送駆動ローラー23及び給送従動ローラー24と記録実行領域との間にある状態(図6に図示した状態)とする。このような状態でロール紙RPを待機させておくことによって、次にロール紙RPへの記録を行う際に、再度ロール紙RPをセットする手間が不要となり、すぐにロール紙RPへの記録を実行することが可能になる。
【0041】
つづいて、その状態から偏心カム32を符号Eで示した回転方向へ回転させて、偏心カム32のカム面の領域32bが給送従動ローラーホルダー31のカム当接部312に当接している状態とする。それによって給送従動ローラーホルダー31は、給送駆動ローラー23から離間する揺動方向C1へ一定量(L1とL2との差に相当する量)だけ揺動した状態となる。
【0042】
この状態においては、給送従動ローラー24を軸支している棒バネ34のバネ力(弾性復帰力)により符号Fで示した方向へ給送従動ローラー24が変位して、棒バネ34のバネ力により給送従動ローラー24が給送駆動ローラー23に押圧される状態が維持される。つまり、給送駆動ローラー23と給送従動ローラー24とでロール紙RPの先端近傍を挟持した状態は維持される。そして、このときの給送駆動ローラー23に対する給送従動ローラー24の押圧荷重は、給送駆動ローラー23から離間する揺動方向C1へ給送従動ローラーホルダー31が揺動した分だけ、前記の第1押圧荷重より低い押圧荷重となる(第2押圧荷重)。具体的には、当該実施例において第2押圧荷重は、第1押圧荷重の約1/3となる約0.5kgfに設定されている。それによって、長期間ロール紙RPに記録を実行しない待機状態において、ロール紙RPの記録面に給送従動ローラー24の押圧痕が付いてしまう虞を低減させることができる。
【0043】
尚、第2押圧荷重は、給送駆動ローラー23と給送従動ローラー24とでロール紙RPを挟持した状態を維持できる範囲で、可能な限り低い荷重に設定するのが好ましい。また偏心カム32の回転による押圧荷重の切り換えは、押圧荷重の誤設定等を未然に防止する上では、当該実施例のように制御装置100によるモーター制御によって自動的に行われるようにするのが好ましいが、例えばユーザーが手動操作で偏心カム32を回転させて押圧荷重を切換可能な機構を設けても良い。
【0044】
またロール紙給送装置20は、給送駆動ローラー23の下流側に第2案内部材25により空間251が形成されている。この空間251は、給送駆動ローラー23と給送従動ローラー24とで挟持された状態のロール紙RPの先端近傍を、そのロール紙RPの巻癖が保持される姿勢で待機させることが可能である。この空間251は本発明に必須の構成要素ではないが、このような空間251を設けることによって、給送駆動ローラー23と給送従動ローラー24とで挟持された状態で待機しているロール紙RPの巻癖が保持される。すなわち、給送駆動ローラー23と給送従動ローラー24とで挟持された状態で待機しているロール紙RPに、記録面が凹面状に湾曲する反りや変形等が生ずるような力が作用することを回避することができる。それによって、給送駆動ローラー23と給送従動ローラー24とでロール紙RPを挟持した状態を長期間維持するときに、例えば記録面が凹面状に湾曲する反りや変形等がロール紙RPに生ずることを回避できる。したがって、その後にロール紙RPに記録を実行する際に、そのロール紙RPの反りや変形等に起因して所謂ヘッド擦れや紙ジャム等が生ずる虞を低減させることができる。
【0045】
図7は、偏心カム32のカム面の領域32cが給送従動ローラーホルダー31のカム当接部312に当接している状態を図示したものである。
図6に図示した状態から、偏心カム32を符号Eで示した回転方向へさらに回転させて、偏心カム32のカム面の領域32cが給送従動ローラーホルダー31のカム当接部312に当接している状態とする。それによって給送従動ローラーホルダー31は、給送駆動ローラー23から離間する揺動方向C1へ一定量(L2とL3との差に相当する量)だけ揺動した状態(図7に図示した状態)となる。この状態においては、給送駆動ローラー23から給送従動ローラー24が離間した状態となり、ロール紙給送装置20にロール紙RPをセットする操作、及びロール紙給送装置20からロール紙RPを取り出す操作をユーザーが容易に行うことができる。
【0046】
以上説明したように本発明によれば、ロール紙RP等を利用することのメリットの一つである利便性を損なうことなく、ロール紙RP等の記録面に給送従動ローラー24の押圧痕が付いてしまう虞を低減させることができる。
【0047】
<他の実施例、変形例>
本発明は、上記説明した実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
例えば、給送駆動ローラー23及び給送従動ローラー24が設けられておらず、その機能を搬送駆動ローラー11及び搬送従動ローラー12が兼務する構成のインクジェットプリンター1においては、その搬送駆動ローラー11及び搬送従動ローラー12に本発明を適用することも可能であり、そのような態様においても本発明による作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 インクジェットプリンター、2 左サイドフレーム、3 突起部、4 バネ係止部、20 ロール紙給送装置、23 給送駆動ローラー、24 給送従動ローラー、25 第2案内部材、30 押圧装置、31 給送従動ローラーホルダー、32 偏心カム、33 ねじりコイルバネ、34 棒バネ、100 制御装置、P 単票紙、RP ロール紙、RS 軸体、Y 副走査方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録材を記録実行領域へ搬送する搬送装置を備えた記録装置であって、
前記搬送装置は、ローラー対と、前記ローラー対のいずれか一方のローラーを他方のローラーへ押圧する押圧装置と、を含み、少なくとも前記ローラー対のいずれか一方のローラーを回転させることにより前記ローラー対に挟持されている被記録材が搬送される構成であり、
前記押圧装置は、第1押圧荷重又は前記第1押圧荷重より低い第2押圧荷重のいずれかに、前記ローラー対の押圧荷重を切換可能な押圧荷重切換機構を有する、ことを特徴とした記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、軸体に巻かれている長尺な被記録材が前記ローラー対に挟持された状態で当該被記録材の先端が前記ローラー対と前記記録実行領域との間にあるときに、当該被記録材の前記ローラー対と前記記録実行手段との間にある部分を、当該被記録材の巻癖が保持される姿勢で待機させることが可能な空間が設けられている、ことを特徴とした記録装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の記録装置において、前記搬送装置及び前記押圧装置を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、少なくとも軸体に巻かれている長尺な被記録材を前記記録実行領域へ搬送するときには、前記ローラー対の押圧荷重を前記第1押圧荷重とし、軸体に巻かれている長尺な被記録材に記録を実行しないときには、前記ローラー対の押圧荷重を前記第2押圧荷重とする、ことを特徴とした記録装置。
【請求項4】
請求項3に記載の記録装置において、前記制御装置は、軸体に巻かれている長尺な被記録材に記録を実行しないときには、前記記録装置の電源OFF操作が行われたことを条件に、又は前記記録装置の動作モードが省電力モードに切り換わったことを条件に、前記ローラー対の押圧荷重を前記第2押圧荷重とする、ことを特徴とした記録装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の記録装置において、前記押圧装置は、前記ローラー対のいずれか一方のローラーと他方のローラーとを相対的に離間させる離間機構を含む、ことを特徴とした記録装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−190030(P2011−190030A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57142(P2010−57142)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】