説明

記録装置

【課題】印刷動作中の静音性を担保し、さらに、被記録媒体の種類を問わず、排出後の形状を変えることのない記録装置を提供する。
【解決手段】搬送中の被記録媒体に対して印字動作を実行する記録部を有する装置本体と、装置本体における記録部の下流側に形成された開口部とを備える記録装置であって、記録装置は、閉鎖状態において開口部を閉塞する開閉蓋と、開閉蓋に設けられ、記録部を通過して下流側に搬送された被記録媒体を開閉蓋が閉鎖した状態で保持する保持手段とを備えるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に関し、より詳細には記録装置の動作中に生じる騒音を低減させる構造を有する記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターやレーザープリンター、ファクシミリ等の記録装置は、一般に記録対象である紙やフィルム等の被記録媒体を記録機構内に供給する供給口と、記録後の被記録媒体を排出する排出口とが開口した状態にあるため、搬送機構や記録機構の動作音が供給口や排出口から外部に漏れ、印刷動作中の騒音を生じさせる要因のひとつとなっている。
そこで、記録装置の被記録媒体の供給口や排出口の開口を開閉する遮音プレートを設け、被記録媒体の供給や排出に連動して遮音プレートを開閉させることにより音漏れを抑制する装置が開示されている。
しかしながら、当該記録装置は、記録機構の動作中に供給口や排出口の閉口を可能とするため、記録動作の前に被記録媒体を必要以上に撓ませ、湾曲させた状態で収容する空間と、記録後の被記録媒体を排出する前に湾曲させた状態で収容する空間とを設ける必要があるため、記録装置が大型化してしまう。また、空間を小さくすると収容される被記録媒体の湾曲する曲率が小さくなるため、被記録媒体の厚さ、素材によっては排出後の被記録媒体に巻きグセや折れ曲がりが付くことが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−147319号公報
【特許文献2】特開平3−112682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記課題を解決すべく、印刷動作中の静音性を担保し、さらに、被記録媒体の種類を問わず、排出後の形状を変えることのない記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための構成として、搬送中の被記録媒体に対して印字動作を実行する記録部を有する装置本体と、装置本体における記録部の下流側に形成された開口部とを備える記録装置であって、閉鎖状態において開口部を閉塞する開閉蓋と、開閉蓋に設けられ、記録部を通過して下流側に搬送された被記録媒体を開閉蓋が閉鎖した状態で保持する保持手段とを備える構成とした。
本構成によれば、記録部の下流側に形成された開口部が閉鎖状態の開閉蓋により閉塞された状態で保持手段が記録部を通過して下流側に搬送された被記録媒体を保持することにより、被記録媒体への印字動作及び搬送動作により生じる騒音が、装置本体の外部に漏れることがなく、印刷動作中に生じる騒音を確実に防止することができる。
また、他の構成として、保持手段が、記録部を通過して下流側に搬送された被記録媒体を複数収容する収容部を有し、被記録媒体を複数保持する構成とした。
本構成によれば、保持手段が被記録媒体を複数保持することにより、開口部を閉塞する開閉蓋の厚さが実質的に厚くなるため、印刷動作中に生じる騒音防止効果をより向上させることができる。
また、他の構成として、保持手段は、被記録媒体を垂直な姿勢で保持するガイド部を有する構成とした。
本構成によれば、前記構成から生じる効果に加え、ガイド部は、印字が完了した被記録媒体を垂直姿勢で保持することから、被記録媒体を保持している間に被記録媒体に湾曲や屈曲等の変形が生じることを確実に防止することができる。
また、他の構成として、記録装置が開閉蓋を搬送方向下流側に開放する開閉機構を備え、保持手段が被記録媒体を、印字面が搬送方向上流側に向いた状態で保持し、開閉機構により開放された開閉蓋の下端部側から排出する構成とした。
本構成によれば、前記構成から生じる効果に加え、保持手段が被記録媒体を、印字面が搬送方向上流側に向いた状態で保持し、開閉機構により開放された開閉蓋の下端部側から排出することから、排出後の被記録媒体の配列が印字順序と対応することとなり、ユーザーが被記録媒体の順序を並べ替える手間を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】記録装置の概略図。
【図2】排出機構の斜視図。
【図3】排出機構の動作を示す側面図。
【図4】排出機構の他の形態を側断面視したときの概略構成図。
【0007】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組合せのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施形態1
図1は、本発明に係る記録装置1を側断面視したときの概略図である。
図1に示す記録装置1は、記録装置の一例としての液体噴射装置である。以下、図1を用いて記録装置1について説明する。
同図において記録装置1は、装置本体2の底部に設けられ、被記録媒体の一例としての用紙10を収容する収容室3を備える。
また、記録装置1は、収容室3に収容された用紙10を下流側に送り出す送出手段4と、送出手段4により送り出された用紙10を記録部6側に搬送する搬送ローラー5を有する供給機構を備える。収容室3内に収容された用紙10は、送出手段4及び搬送ローラー5により矢印で示す搬送経路に沿って下流側に位置する記録部6まで搬送され、表面に文字や図形などが印字される。なお、本明細書においては、収容室3内に収容された用紙10が搬送される方向を下流側とし、下流側と反対方向を上流側として説明する。
【0009】
以下、被記録媒体の搬送経路に沿って記録装置1の詳細について説明する。
収容室3は、例えば上方開放の箱型のカセット11により構成される。カセット11は、装置本体2の一方側に設けられた挿入空間内に装着可能であって、用紙10を単一又は重畳した状態で収容する。カセット11は、挿入空間内に設けられた図外のガイドにより所定の位置において保持される。カセット11を取り出す際には、図外のガイドに沿って上流側に引き抜くことにより装置本体2から取り出すことができる。
また、カセット11は、収容される用紙10の周囲を取り囲む壁部を有し、下流側に位置する一方の壁部が分離斜面13として形成される。分離斜面13は、カセット底面11Aから上方に向かうに従って、下流側に傾斜する斜面である。分離斜面13は、収容室3内に収容された複数の用紙10同士が重なった状態で下流側に搬送されることを防ぐ。
【0010】
具体的には、図1に示すように、最上位に位置する用紙10の端部10Aは、送出ローラー41の一方向への回転駆動によって、分離斜面13に摺接しつつ上方に立ち上がった状態となる。また、最上位に位置する用紙10の下流側への搬送に伴って、これに重なって送り出されようとする下位の用紙10は、分離斜面13に突き当たり、上位の用紙10と分離される。つまり、分離斜面13は、重送を防止する斜面である。
【0011】
次に、送出手段4について説明する。
送出手段4は、カセット11内に収容された用紙10を下流側のガイド通路70側に送り出す機構である。送出手段4は、カセット11に収容された最上位の用紙10の表面に当接する送出ローラー41を有する揺動体42と、揺動体42を下方に存在する用紙10の方向に付勢する附勢手段43、及び送出ローラー41を回転させる回転軸55を備える。揺動体42は、用紙10の搬送方向と直交する方向に延長する円筒状の回転軸48と接続される。回転軸48は、装置本体2における図外のフレームに設けられた軸受けにより支持される。つまり、揺動体42は、回転軸48を中心として上下方向に回転可能である。
【0012】
また、揺動体42の内部には、長手方向に沿って配置される複数の歯車により歯車輪列50が設けられる。歯車輪列50は、揺動体42の側面に開設された複数の孔54に挿通される軸によって支承され、回転軸55の回転力を送出ローラー41に伝達する。
【0013】
回転軸55は、回転軸48の内部において独立して回転する軸体である。回転軸55は、回転軸48の延長長さよりも長く、回転軸48から露出する一端部には、図外の駆動モーターからの回転力が入力される。回転軸55の他端部は、揺動体42の側面を貫通しており、揺動体42内において歯車63と接続される。よって、図外の駆動モーターから歯車63に入力された回転力は、歯車輪列50、及び、歯車輪列50を構成する末列の歯車と噛み合う歯車57に伝達され、揺動体42の下端部に設けられた送出ローラー41を一方向に回転させる。
【0014】
送出ローラー41は、ピックアップローラーとも呼ばれるローラーであって、例えば表面がゴム等の滑り止め部材により覆われた回転体である。また、送出ローラー41は、一体に回転する歯車57の外径よりも大径な円筒体である。送出ローラーの中心軸は孔54によって支承されており、歯車57の回転に伴って回転する。送出ローラー41は、揺動体42がコイル状の捻れバネ等の附勢手段43により用紙10方向に付勢された状態において、カセット11内に収容された用紙10の上面と当接する。そして、送出ローラー41が用紙10の上面と当接した状態で回転することにより、送出ローラー41と当接する用紙10が下流側に送り出される。
【0015】
図1に示すように、送出ローラー41の回転によりカセット11から送り出される用紙10は、分離斜面13を経ることにより端部10Aが持ち上げられ、装置本体2内に設けられたガイド通路70に進入する。ガイド通路70は、カセット11内に収容された用紙10を装置本体2内取り込むための供給通路であって、上方に向かうに従って、上流側から下流側に緩やかに湾曲する。
分離斜面13を経て端部10Aが持ち上げられた用紙10は、ガイド通路70のカセット11側に設けられた供給口15から進入し、表裏が反転しながら装置本体2内に徐々に取り込まれる。
ガイド通路70は、装置本体2内に設けられたガイド部77;78との間に形成された間隙である。ガイド部77;78は、搬送方向と直交する方向に延在する部材であって、装置本体2の図外のフレーム間に架設される。よって、ガイド通路70は、用紙10の桁方向(幅方向)全域を取り込み可能である。
また、装置本体2における用紙10の取り込み口に相当する開口部15の下方は、挿入空間内に装着されるカセット11により閉塞された状態であるため、開口部15から漏れ出る印字動作や搬送動作中における騒音が記録装置1の外部に放出されることを確実に防止できる。
【0016】
ガイド通路70内の経路内には、搬送ローラー5が設けられる。搬送ローラー5は、中間ローラーとも呼ばれるローラー群であって、例えば駆動ローラー75と従動ローラー76との一対のローラーにより構成される。
駆動ローラー75及び従動ローラー76は、例えば円筒状のゴムローラーにより構成され、図外のフレーム間に架設される回転軸により支持される。駆動ローラー75及び従動ローラー76は、外表面が互いに接触するように配置される。駆動ローラー75は、例えば、送出ローラー41を回転させる図外のモーターを駆動源として複数の歯車を経由して回転する。よって、ガイド通路70内に進入した用紙10の端部10Aが搬送ローラー5に到達すると、駆動ローラー75及び従動ローラー76間に挟み込まれるように引き上げられながらガイド通路70内を通過する。
【0017】
ガイド通路70を経て表裏が反転した用紙10は、図外のリブや補助ローラー79A,79B、80A,80Bを有する搬送面82に沿って略水平を保ったまま記録部6に向かって搬送される。
記録部6は、搬送される用紙10上において桁方向に移動可能に配置される記録ヘッド81と、桁方向の一側部に配置され、記録ヘッド81と上下に対向するキャッピング機構85とを備える。
記録ヘッド81は、図外のフレーム間に掛け渡されるガイド軸83に沿って摺動するキャリッジ84の下面に設けられる。
キャリッジ84は、内部に形成された液体収容室内に例えば、シアン、マゼンダ、イエロー、ブラック等の色の液体が封入されたインクカートリッジを備える。キャリッジ84は、図外のタイミングベルトと接続されており、図外の駆動モーターの駆動によりタイミングベルトが桁方向に動作することにより、用紙10の桁方向に沿って往復動作する。
インクカートリッジ内のインクは、キャリッジ84及び記録ヘッド81内に形成されたインク流路を経由し、所定の制御により記録ヘッド81の下端面に形成されたノズル面から噴射される。
なお、本実施形態においては、インクカートリッジをキャリッジ84内に搭載した例を示したが、インクカートリッジをキャリッジ84とは別の収容部に収容し、インクをインク供給チューブを介して記録ヘッド81に供給するいわゆるオフキャリッジの構成を採用してもよい。キャッピング機構85は、記録ヘッド81の下端面に形成されたノズル面を封止するキャップを有し、ノズル面及びインク流路を湿潤状態に保つ機構である。記録部6の記録ヘッド81が搬送中の用紙10上を往復動作しながら液体を噴射することにより、用紙10には所望の文字や形状が徐々に印字される。
【0018】
記録部6を通過した用紙10は、排出ローラー86A,86Bの駆動により徐々に下流側に搬送され、記録部6よりも下流側に設けられた排出機構誘導通路16を経て排出機構20内に保持される。以下、排出機構誘導通路16及び排出機構20の詳細について説明する。
排出機構誘導通路16は、ガイド部18及びガイド部19により形成される。ガイド部18及びガイド部19は、前述のガイド部77及びガイド部78と同様に搬送方向と直交する方向に延在する部材であって、装置本体2の図外のフレーム間に架設される。よって、排出機構誘導通路16は、印字が完了した用紙10の桁方向の全域を取り込み可能である。
ガイド部18は、略水平に搬送される用紙10の搬送方向を上向きに転換させる傾斜面18Aを有する。ガイド部19は、断面扇状であって、傾斜面18Aと対向する孤面19Aを有する。そして、用紙10は、傾斜面18A及び孤面19Aの間を通過することにより徐々に垂直方向に立ち上げられながら、徐々に排出機構20側へと誘導される。
【0019】
図2は、排出機構20を示す斜視図である。
以下、図1及び図2を参照して排出機構20の詳細を説明する。排出機構20は、装置本体2において下流側に開口する開口部2Aを閉塞する開閉蓋21と、印字完了後の用紙10を保持する保持手段22とを有する。
開閉蓋21は、記録装置1が印刷可能な大きさの用紙10よりも大きな矩形の平板であって、閉鎖状態において開閉蓋21と略同形に形成された開口部2Aの全域を閉塞する。
開閉蓋21は、装置本体2に対して開閉蓋21の下方が開放するように装置本体2に対して設けられる。具体的には、図2に示すように開閉蓋21の上部に搬送方向と直交する方向に突出する凸部21Aが形成され、当該凸部21Aが装置本体2に開設された図外の係合孔に嵌め込まれることにより、開閉蓋21が凸部21Aを回転中心として開閉動作する。
【0020】
図2に示すように、開閉蓋21の側部にはモーター25とリンク機構26を含む開閉機構が接続される。モーター25は、装置本体2を構成する図外のフレームの一方に配置され、装置本体2に搭載された制御装置から出力される制御信号に基づいて駆動する。
モーター25は、リンク機構26に駆動力を伝達するための歯車27を有し、一方のリンク機構26を構成するリンク片28の歯車30と噛み合う。一方のリンク機構26は、一端部に歯車30を有し、他端部に摺動片29を有するリンク片28を有する。歯車30は、図外の回転軸よって支承され、リンク片28と一体に回転する。摺動片29は、開閉蓋21の側部において垂直方向に延在する溝21B内に内挿され、溝21B内において上下方向に摺動可能である。リンク片28と摺動片29とは、回転軸を介して回転可能に接続される。なお、他方のリンク機構26は、歯車30を有さない点でのみ一方のリンク機構26と異なるため、説明を省略するが、リンク片28の一端部は、図外の回転軸により支承されている。
【0021】
図3は、開閉蓋21の開閉動作を示す側面図である。
図3(a)に示すように、開閉蓋21が垂直方向に立ち上がった状態、即ち、開閉蓋21が開口部2Aを閉じた状態において開閉蓋21に接続された開閉機構のモーター25が一方向に回転すると、歯車30を介してリンク片28が上方に向かって回転する。リンク片28が上方に向かって回転を開始すると、摺動片29が溝21B内において摺動しつつ開閉蓋21を下流側に押し上げ、開閉蓋21の下端部が装置本体2の開口部2Aから離間し、装置本体2の開口部2Aと開閉蓋21との間に排出口が形成される。
一方、モーター25が逆方向に回転すると、歯車30を介してリンク片28が下方に向かって回転する。リンク片28が下方に向かって回転を開始すると、摺動片29が溝21B内において摺動しつつ開閉蓋21を上流側に押し下げ、開閉蓋21の下端部が装置本体2の開口部2Aを再び閉塞する。即ち、開閉蓋21は、装置本体2の下流側に形成された開口部2Aを閉塞又は開放するように開閉動作する部材であって、開口部2Aを開放する際に下開きする部材である。
【0022】
次に、図1及び図2を参照して、開閉蓋21の上流側面に設けられた保持手段22について説明する。保持手段22は、上流側から搬送される用紙10の面積と略等しい大きさの矩形板31と、矩形板31の両側部に形成されたガイド部32、及び、用紙10をガイド部32に沿って引き上げるローラー34とを備える。ガイド部32は、矩形板31の側部から直角方向に立ち上がるガイド片32Aと、当該ガイド片32Aから直角方向に屈曲するガイド片32Bからなる断面L字状であり、用紙10の桁方向側部を取り囲むようにガイドする。
また、図1に示すように、開閉蓋21が閉じられた状態において、矩形板31と当該矩形板31と対向するガイド片32Bとの間隔は、前述したガイド部18;19間の間隔と略等しい間隔である。よって、排出機構誘導通路16の出口を通過した用紙10は、スムーズにガイド部32内に進入する。
【0023】
ローラー34は、例えば外周面がゴム等により形成され、ガイド片32A間に架設される回転軸により回転可能に支持される。ローラー34は、矩形板31の下端側に配置され、ガイド部18;19を経てガイド部32内に進入した用紙10をガイド片32Aの延長方向に沿って引き上げる。より詳細には、図1に示すようにローラー34は、外周面が矩形板31の表面と僅かに接触又は微小に離間するように配置されている。ガイド部32内に進入した用紙10は、ローラー34と矩形板31とにより挟み込まれながら垂直方向に徐々に引き上げられ、用紙10の後端部がガイド部32内に完全に取り込まれた状態において、印字面を搬送方向上流側に向け、垂直姿勢を保ったまま保持される。即ち、開閉蓋21に設けられた保持手段22は、印字完了後の用紙10を折り曲げ、屈曲等、変形させることなく保持可能な機構である。また、開閉蓋21は、記録ヘッド81による印字動作、保持手段22への搬送動作中において開口部2Aを閉塞した状態であるため、印字動作及び搬送動作中において発生する騒音が開口部2Aから外部に放出されることを確実に防ぐことができる。
【0024】
図3(a),(c)を参照して、排出機構20によって保持された用紙10を装置本体2の外部に排出する動作について説明する。
ローラー34の駆動によりガイド部32内に進入した用紙10を所定位置まで引き上げ、ガイド部32による用紙10の保持動作が完了すると、モーター25の駆動により開閉蓋21が開放され、図3(c)に示す状態となる。
そして、開閉蓋21を開放した状態においてローラー34を引き上げ方向と逆方向に駆動すると、ガイド部32内において保持されていた用紙10は、ガイド部32の下端部から送り出されて印字面が下向きの状態で射出されるように装置本体2から排出される。
このとき、装置本体2から排出された用紙10は、印字面が下向きの状態で図外のトレー等の用紙受け上に載置される。用紙10の排出完了後には、モーター25が逆回転することにより再び開閉蓋21が閉じられ、給紙、印字、排出までの記録装置1における一回の印刷動作が完了する。また、印刷対象が複数枚の用紙10に渡るときには、上記の印刷動作が繰り返される。
【0025】
上述の実施形態に係る記録装置1によれば、カセット11から装置本体2への用紙10の搬送動作中、記録ヘッド81の印字動作中、さらには排出機構20への搬送動作中に生じる騒音が外部に漏れ出さない構成であるため、用紙10に対する印刷動作を極めて静粛に行うことが可能となる。より詳細には、印刷動作を、騒音放出の寄与度が高い開口部2Aを開閉蓋21により閉塞した状態で実行するため、印刷動作に伴って発生する騒音が外部に漏れ出すことを効果的に防止することができる。また、印字が完了した用紙10が保持手段22によって略垂直姿勢を保った状態で保持されるため、用紙10に変形を生じさせることなく、外部に排出することが可能となる。即ち、本実施形態に係る記録装置1は、印刷動作中の静音性を担保したまま、被記録媒体の種類を問わず、排出後の形状を変えることがないという極めて顕著な効果を奏するものである。
さらに、開口部2Aを閉塞する開閉蓋21は、上方に位置する凸部21Aを回転中心として下開きし、開閉蓋21に設けられた保持手段22が保持した用紙10を下端部側から排出する構成であるため、排出された用紙10は、印字面が下向きの状態となる。よって、複数ページに渡るデータ等を印刷するような場合にあっては、最初のページが印刷された用紙10が最も下方に位置し、次ページ以降が印刷された用紙10が順次積層されるため、全てのデータについての印刷が完了すると、先頭の用紙10がデータにおける最初のページと対応し、以降の用紙10が次ページと対応するというように、複数の用紙10をデータにおけるページ順序と対応させることができる。つまり、印刷完了後に用紙10の順序を並べ替える手間を省くことができる。
【0026】
なお、上述の実施形態においては、垂直姿勢を保った状態で用紙10を保持するために開閉蓋21及び保持手段22の高さを用紙10の搬送方向長さと対応する高さに設定したが、開閉蓋21及び保持手段22の高さはこれに限定されるものではない。
例えば、開閉蓋21及び保持手段22の高さを実施形態における開閉蓋21及び保持手段22の高さの半分程度に設定し、保持手段22により保持された用紙10の上側半部を上流側に湾曲した状態で保持するようにしてもよい。本態様によれば、用紙10の湾曲を許容することとなるものの、記録装置1の高さを低く抑えることができるので好適である。一方で、被記録媒体の種類が、いわゆるコシの強い(曲げ剛性が強い)材質である場合には、排出後の変形を防止するために、垂直姿勢を保ったまま保持するのが好ましい。
また、上述の実施形態においては、開閉蓋21を下開きさせる構成としたが開閉蓋21の上方側を開放させる上開きとしてもよい。開閉蓋21を上開きとした場合、用紙10の排出時にローラー34を駆動させる必要がなくなるので排出に要する時間を短縮することができる。この場合、ユーザーが保持手段22に保持された用紙10を引き抜けばよい。
【0027】
実施形態2
図4(a),(b)は、排出機構20の他の形態を側断面視したときの概略構成図である。
上述の実施形態では、印字が完了した用紙10を保持手段22に保持させて、1枚ごとに開閉蓋21を開放して用紙10を排出する形態を説明したが、本実施形態に係る排出機構20は、複数の用紙10を収容させておくことが可能な点で異なる。
【0028】
以下、他の形態に係る排出機構20の構成について説明する。なお、前述の実施形態と同一の構成については同一符号を用い、その説明を省略する。
他の形態に係る排出機構20は、保持手段40を備える。保持手段40は、搬送される用紙10の面積と略等しい大きさの矩形板35が開閉蓋21に対して固着されることにより、開閉蓋21と一体化される。保持手段40は、矩形板35の側部から直角方向に立ち上がる側板36と、矩形板35と対向して側板36;36間に連接される矩形板37を有する上下開口の箱型であって、矩形板35;37の間に複数の用紙10を保持しておくことが可能である。
また、図4(a)に示すように、開閉蓋21が閉じられた状態において、矩形板35;37の間隔は、ガイド部18;19間の間隔と略等しい間隔である。よって、排出機構誘導通路16の出口を通過した用紙10は、スムーズに保持手段40内に進入する。
【0029】
箱型に構成された保持手段40の下側の開口40Aは、開閉底38により開閉する。開閉底38は、矩形板37の下端部に図外の回転軸を介して回転可能に係止され、開閉蓋21が開口部2Aを閉塞した状態において、ガイド部19と接触し、保持手段40の開口40Aの一部を塞ぐ。
開閉底38が閉じた状態における先端部側には、ローラー39が設けられる。
ローラー39は、例えば外周面がゴム等により形成され、開閉底38の先端部と対応する位置において、側板36;36間に架設される回転軸により支持される。
ローラー39の外周面は、開閉底38の先端部と僅かに接触又は微小に離間するように配置されており、排出機構誘導通路16を通過した用紙10は、ローラー39と開閉底38の先端部とにより挟み込まれながら垂直方向に徐々に引き上げられる。
【0030】
ローラー39の上方には、用紙押圧バネ44が取付けられる。用紙押圧バネ44は、矩形板35の表面に形成された係止孔を介して係止されており、矩形板37方向を頂点として屈曲して設けられる。また、用紙押圧バネ44は、搬送方向と直交する方向に複数配置され、用紙10を桁方向に沿って均一に押圧する。
用紙押圧バネ44が設けられたことにより、ローラー39と開閉底38の先端部との間を通過した用紙10は、用紙押圧バネ44の屈曲方向、即ち、矩形板37の方向に位置寄せされながら垂直方向に引き上げられる。そして、所定期間継続するローラー39による引き上げ動作が完了すると、用紙10は、閉鎖した開閉底38、側板36、矩形板35;37に取り込まれた状態で垂直姿勢を維持したまま保持される。
【0031】
上述のとおり、保持手段40による用紙10の一枚分の保持が完了すると、印字が完了した後続の用紙10が順次保持手段40内に搬送され、保持手段40は複数の用紙10を収容した状態で用紙10を保持する。また、このとき保持手段40内に収容された複数の用紙10は、印字面が上流側を向いた状態、かつ、用紙押圧バネ44の作用により先に収容された用紙10が上流側に位置した状態となる。
【0032】
保持手段40内に所定数の用紙10を収容した後には、開閉蓋21を開放することによる用紙10の排出が実行される。開閉蓋21の開放動作については、前述の実施形態と同様であるからその説明を省略するが、開閉蓋21が開放すると開閉底38とガイド部19との接触が解除され、開閉底38が収容された複数の用紙10の自重により開放される。そして、開閉底38が開放した状態において、収容された複数の用紙10は、開閉蓋21の傾斜に沿って下方に射出されるように排出される。また、排出された複数の用紙10は、前述の実施形態と同様に印字面が下向きの状態であり、かつ、複数の用紙10がデータにおけるページ順序と対応しているため、印刷完了後に用紙10の順序を並べ替える手間を省くことができる。
【0033】
以上のとおり、他の形態に係る排出機構20を備える記録装置1によれば、保持手段40が開閉底38及び用紙押圧バネ44を有することにより、順次搬送される複数の用紙10を内部に収容でき、上述の実施形態と比較して、用紙10の排出頻度を減少させることが可能となり、印刷完了までに掛かる時間を効果的に短縮することが可能となる。
また、複数の用紙10を保持手段40内に収容できるため、実質的に開閉蓋21の厚みを増大させることによる防音効果と同様の効果を得ることができ、より静音性に優れた印刷動作を行うことが可能となる。
【0034】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0035】
また、記録装置1を液体噴射装置として説明したが、本実施形態における排出機構は、レーザープリンター、ファクシミリ等の記録装置にも同様に適用できる。また、液体噴射装置は液体を噴射する記録ヘッドを備えていればよく、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルター等の製造に採用される電極材や色材を分散又は溶解した状態で噴射する装置をも含む。また、被記録媒体は、所謂普通紙のみでなく、感熱紙、フィルム等、記録部に対して搬送可能なものであれば、特に限定されない。
【符号の説明】
【0036】
1 記録装置、2 装置本体、3 収容室、4 送出手段、5 搬送ローラー、
11 カセット、13 分離斜面、15 供給口、20 排出機構、21 開閉蓋、
22 保持手段、32 ガイド部、34 ローラー、
39 ローラー、40 保持手段、44 用紙押圧バネ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送中の被記録媒体に対して印字動作を実行する記録部を有する装置本体と、
前記装置本体における前記記録部の下流側に形成された開口部とを備える記録装置であって、
前記記録装置は、閉鎖状態において前記開口部を閉塞する開閉蓋と、
前記開閉蓋に設けられ、前記記録部を通過して下流側に搬送された被記録媒体を前記開閉蓋が閉鎖した状態で保持する保持手段とを備えることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記保持手段は、前記記録部を通過して下流側に搬送された被記録媒体を複数収容する収容部を有し、前記被記録媒体を複数保持することを特徴とする請求項1記載の記録装置。
【請求項3】
前記保持手段は、前記被記録媒体を垂直な姿勢で保持するガイド部を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記記録装置は、前記開閉蓋を搬送方向下流側に開放する開閉機構をさらに備え、
前記保持手段は、前記被記録媒体を、印字面が搬送方向上流側に向いた状態で保持し、前記開閉機構により開放された開閉蓋の下端部側から排出することを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれかに記載の記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−161919(P2012−161919A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21454(P2011−21454)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】