説明

記録装置

【課題】搬送媒体の搬送不良を抑制することができ、信頼性の高い記録装置を提供すること。
【解決手段】搬送媒体に対して記録を行う記録部と、前記記録が行われた前記搬送媒体を所定の搬送方向に搬送する第二ローラーと、前記第二ローラーに対して前記搬送方向の下流側に配置され、前記搬送媒体を前記所定方向に搬送する第一ローラーと、前記第一ローラーとの間で前記搬送媒体を挟持可能に設けられ、前記搬送媒体の湾曲を矯正する矯正ローラーとを備え、前記第一ローラーの径は、前記第二ローラーの径よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
記録装置の一種である印刷装置には、ロール紙(搬送媒体)を搬送する搬送機構(搬送部)と、ロール紙に対して記録処理を施す記録ヘッド(記録部)と、ロール紙の湾曲(巻きぐせ)を矯正するためのデカール機構(矯正部)とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のデカール機構は、ロール紙を送る第一ローラーと、当該第一ローラーとの間でロール紙を挟持する矯正ローラーと、ロール紙の搬送方向において搬送ローラーの上流側に配置され、搬送されるロール紙の動きに連動して回転する第二ローラーとを有している。ロール紙は、第一ローラーと矯正ローラーとの間に挟持された状態で、その被挟持箇所と第二ローラーに係合された箇所との間で屈曲されることで、巻きぐせが矯正されるようになっている。
【0004】
上記の印刷装置においては、第二ローラーの上流側にロール紙を搬送する搬送ローラーが設けられている。この搬送ローラーによってロール紙が第二ローラーの外周面上に搬送されると、第二ローラーがロール紙の移動に伴って回転し、ロール紙は下流側の第一ローラーへと搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−179416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記構成においては、ロール紙が第二ローラーと第一ローラーとの間に入り込んでしまい、搬送不良が生じてしまう場合があった。このような搬送不良が発生すると、記録装置の信頼性が低下してしまう。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明は、搬送媒体の搬送不良を抑制することができ、信頼性の高い記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る記録装置は、搬送媒体を所定の搬送方向に搬送する搬送部と、前記搬送媒体に対して記録を行う記録部と、前記記録が行われた前記搬送媒体を矯正する矯正部とを備え、前記矯正部は、前記搬送媒体を前記搬送方向に送る第一ローラーと、前記第一ローラーとの間に間隔を空けるように前記第一ローラーに対して前記搬送方向の上流側に設けられ、前記搬送媒体を前記搬送方向に送る第二ローラーと、前記搬送媒体が前記第一ローラーと前記第二ローラーとの前記間隔へ押圧されて湾曲されるように前記第一ローラーとの間で前記搬送媒体を挟持する矯正ローラーとを有し、前記第一ローラーの径は、前記第二ローラーの径よりも小さいことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、搬送方向の下流側に配置される第一ローラーの径が、当該第一ローラーの上流側に配置された第二ローラーの径よりも小さいため、第一ローラーと第二ローラーとの間の隙間を小さくすることができる。搬送媒体が当該隙間に入り込むのを抑えることができる。これにより、搬送媒体の搬送不良を抑制することができ、信頼性の高い記録装置を得ることができる。
【0010】
加えて、本発明によれば、第二ローラーの径が第一ローラーの径よりも大きいため、搬送媒体が第二ローラーに押圧される場合において搬送媒体の表面(第二ローラーに押圧される面とは反対側の面)に作用する応力を極力抑えることができる。これにより、搬送媒体が損傷するのを抑制することができる。
【0011】
上記の記録装置は、前記矯正ローラーは、前記搬送媒体を挟持する挟持位置と、前記搬送媒体から離れた離間位置との間を移動可能に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、搬送媒体を挟持する挟持位置と、搬送媒体から離れた離間位置との間で矯正ローラーが移動可能に設けられているため、搬送媒体の搬送状況に応じて搬送媒体の矯正動作のオンオフを切り替えることができる。これにより、搬送媒体を効率的に搬送することができる。
【0012】
上記の記録装置は、前記矯正ローラーの径は、前記第一ローラーの径よりも小さいことを特徴とする。
本発明によれば、矯正ローラーの径が第一ローラーの径よりも小さいため、挟持位置と離間位置との間を長く確保することができる。これにより、矯正ローラーの可動範囲が広くなるため、矯正ローラーによる矯正力の調整範囲が広くなる。これにより、搬送媒体の矯正精度を向上させることができる。
【0013】
上記の記録装置は、前記挟持位置は、前記第一ローラーよりも前記搬送方向の上流側に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、挟持位置が第一ローラーよりも搬送方向の上流側に設けられているため、第一ローラーよりも搬送方向の上流側から搬送媒体に当接することになる。これにより、搬送媒体を第一ローラーと第二ローラーとの間へ湾曲させやすい構成とすることができる。
【0014】
上記の記録装置は、前記矯正部は、前記第一ローラーと前記第二ローラーとの間で前記搬送媒体を案内する案内部を有することを特徴とする。
本発明によれば、第二ローラーと第一ローラーとの間で搬送媒体を案内する案内部を有するため、搬送媒体が第二ローラーと第一ローラーとの間に形成される隙間に入り込むのを防ぐことができる。
【0015】
上記の記録装置は、前記矯正部に対して前記搬送方向の下流側に設けられ、前記搬送媒体を排出する排出部を更に備え、前記搬送部は、前記搬送媒体を前記排出部に送る排出ローラーを有し、前記第一ローラー及び前記矯正ローラーは、前記排出ローラーを兼ねていることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、矯正部に対して搬送方向の下流側に設けられ搬送媒体を排出する排出部を更に備え、搬送部が搬送媒体を排出部に送る排出ローラーを有し、第一ローラー及び矯正ローラーが当該排出ローラーを兼ねているため、矯正された搬送媒体を他のローラーなどを介することなくそのまま排出することができる。
【0017】
上記の記録装置は、前記記録部は、前記搬送媒体に対して液体を噴射する液体噴射ヘッドを有することを特徴とする。
本発明によれば、液体噴射ヘッドによって液体が噴射された搬送媒体の搬送不良を抑制し、記録精度を高めることができる。
【0018】
上記の記録装置は、前記記録部と前記矯正部との間に設けられ、前記液体を乾燥させる乾燥部を更に備えることを特徴とする。
本発明によれば、搬送方向において記録部と矯正部との間に設けられ搬送媒体を乾燥させる乾燥部を更に備えるため、搬送媒体が矯正部に至る前に、当該搬送媒体に噴射された液体を乾燥させることができる。これにより、矯正部に設けられた第一ローラー、第二ローラー又は矯正ローラーに液体が付着するのを防ぐことができる。
【0019】
上記の記録装置は、前記乾燥部は、前記搬送媒体を加熱する加熱部を有することを特徴とする。
本発明によれば、乾燥部が搬送媒体を加熱する加熱部を有するため、加熱によって液体を短時間で乾燥させることができる。
【0020】
上記の記録装置は、前記搬送媒体は、記録が行われる記録層と、前記記録層を支持する基材層とを有することを特徴とする。
本発明によれば、搬送媒体の表面(第二ローラーに支持される面とは反対側の面)に作用する応力を極力抑えることができる構成であるため、記録層が損傷するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係る印刷装置の概略構成を示す図。
【図2】本実施形態に係る矯正部の構成を示す図。
【図3】本実施形態に係る矯正部の構成を示す図。
【図4】本実施形態に係るカットシート(又はシート)の構成を示す図。
【図5】本実施形態に係る印刷装置の電気的構成を示すブロック図。
【図6】本実施形態に係る印刷装置によるカール矯正処理を説明するフローチャート。
【図7】本実施形態に係る印刷装置によるカール矯正処理の様子を示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る印刷装置(記録装置)の構成を示す概略図である。
図1に示すように、本実施形態の印刷装置PRTは、帯状に形成されたシート(搬送媒体)STを搬送させながら当該シートSTに対して印刷処理を行う装置である。印刷装置PRTは、本体ケースBDを有している。本体ケースBDには、シート供給部SP、搬送部CV、記録部IJ、切断部CT、裏面記録部IP、乾燥部DR、矯正部DC、シート排出部EX及び制御部CONTがそれぞれ設けられている。
【0023】
シート供給部SPは、印刷対象となるシートSTを供給する部分である。シート供給部SPは、軸部SFを有している。軸部SFには、シートSTがロール状に巻かれた状態で取り付けられている。軸部SFは、回転モーターMT1によって周方向に回転可能に設けられている。軸部SFが回転することにより、シートSTが送り出されるようになっている。ロール状に巻かれたシートSTとして、例えば円筒状の芯部にシートSTが巻かれており、芯部ごと軸部SFに着脱可能な構成であっても構わない。また、軸部SFが取り外し可能な構成であっても構わない。
【0024】
搬送部CVは、シート供給部SPから送り出されたシートSTを搬送経路RTに沿って搬送する。搬送経路RTは、シート供給部SPからシート排出部EXに亘って設定されている。したがって、本実施形態では、搬送経路RTに沿ってシート供給部SPからシート排出部EXに向かう方向が搬送方向(X方向)である。また、搬送部CVは、当該搬送経路RTに沿って配置された搬送ローラー21〜28を有している。
【0025】
搬送ローラー21〜28のうち、搬送ローラー21及び搬送ローラー25は、搬送経路RTを挟んで配置されている。同様に、搬送ローラー22及び搬送ローラー26、搬送ローラー23及び搬送ローラー27は、搬送ローラー24及び搬送ローラー28は、搬送経路RTを挟んで配置されている。このうち、搬送ローラー21、23、25、27は、搬送モーターMT2(図5参照)によって回転可能に設けられている。また、搬送ローラー22、24、26、28は、シートSTの移動に伴って回転可能に設けられている。
【0026】
記録部IJは、搬送されるシートSTの表面S1に対して記録処理を行う部分である。記録部IJは、ヘッドH、キャリッジCA、ガイド軸31、シート支持部32を有している。ヘッドHは、シート支持部32の支持面32aに対向して設けられている。シート支持部32の当該支持面32aは、搬送経路RT上に沿って配置されている。搬送経路RT上を搬送されるシートSTは、支持面32aによって支持されるようになっている。支持面32aには、シートSTを吸引する不図示の吸引口が複数設けられている。
【0027】
ヘッドHのうち支持面32aに対向する噴射面Haには、複数のノズルNZが設けられている。当該ノズルNZは、インク(液体)が噴射されるようになっている。ノズルNZから噴射されたインクが、搬送経路RT上のシートSTに付着することにより、シートSTに画像や文字が記録されるようになっている。
【0028】
キャリッジCAは、ヘッドHの噴射面Haを支持面32aに対向させた状態でヘッドHを保持する。キャリッジCAは、ガイド軸31に沿って移動可能に設けられている。ガイド軸31は、シートSTの搬送方向に直交する方向(Y方向)に沿って設けられている。したがって、当該キャリッジCAの移動に伴い、ヘッドHがY方向に移動するようになっている。
【0029】
切断部CTは、記録部IJに対して搬送方向の下流側に配置されており、記録処理が行われたシートSTを切断する部分である。切断部CTは、回転刃などによって構成されるカッター41と、当該カッター41を受けるカッター受部42とを有している。切断部CTでは、例えば記録部IJにおいて記録された画像に対応する記録領域毎にシートSTを切断可能である。切断されたシートSTは、カットシートCSとして搬送方向に搬送されるようになっている。
【0030】
裏面記録部IPは、切断部CTに対して搬送方向の下流側に配置されており、カットシートCSの裏面S2に対して記録を行う部分である。裏面記録部IPは、記録ユニット51及び支持台52を有している。記録ユニット51は、不図示のインクリボン及びインパクト機構を有する、いわゆるインパクトドット方式の印刷ユニットである。
【0031】
裏面記録部IPでは、支持台52にカットシートCSの表面S1を支持させた状態で、当該カットシートCSの裏面S2に対してインクリボンを押し付け、インパクト機構を打ち付けることにより、カットシートCSの裏面S2にドット状の画像が形成されるようになっている。なお、記録ユニット51として、インパクトドット方式の印刷ユニット以外に、例えば熱転写型の印刷ユニットを採用することもできる。
【0032】
乾燥部DRは、裏面記録部IPに対して搬送方向の下流側に配置されており、カットシートCSを乾燥させる部分である。乾燥部DRは、カットシートCSを加熱する加熱部HTを有している。加熱部HTがカットシートCSを加熱することにより、カットシートCSの表面S1上に噴射されたインクが乾燥するようになっている。
【0033】
矯正部DCは、乾燥部DRに対して搬送方向の下流側に配置されており、カットシートCSの巻きぐせを矯正する部分である。矯正部DCは、第一ローラー71、第二ローラー72、矯正ローラー73及びセンサー90を有している。第一ローラー71は、カットシートCSを搬送方向に送るように回転可能に設けられている。第一ローラー71には、搬送モーターMT2(図5参照)が接続されている。
【0034】
第二ローラー72は、第一ローラー71に対して搬送方向の上流側に配置されている。第二ローラー72は、カットシートCSを搬送方向に送るように回転可能に設けられている。第二ローラー72は、回転モーターに接続された駆動ローラーであっても構わないし、カットシートCSの搬送に応じて回転可能な従動ローラーであっても構わない。矯正ローラー73は、第一ローラー71に対して搬送経路RTを挟む位置に設けられ、第一ローラー71との間でカットシートCSを挟持可能に設けられている。
【0035】
センサー90は、制御部CONTに電気的に接続された反射型の光学式センサーである。センサー90は、図示しない光源部と受光部とを有している。センサー90は、例えば搬送経路RTの下方(シートSTあるいはカットシートCSの裏面S2側)に配置されている。センサー90は、光源部から搬送経路RTに向けて光が射出されるようになっている。この光は、シートSTあるいはカットシートCSの裏面S2で反射され、反射光を受光部が受光するようになっている。受光部では反射光の強さに応じた電気信号が生成され、当該電気信号は制御部CONTに送信されるようになっている。
【0036】
例えば、センサー90は、シートSTあるいはカットシートCSが反射対象となったときに所定の閾値よりも大きいON値を出力する一方、シートSTあるいはカットシートCSが反射対象となっていないときに前記閾値以下となるOFF値を出力する。したがって、センサー90の出力値がOFF値からON値に変化することで、搬送方向におけるシートSTあるいはカットシートCSの先端が検出されるようになっている。
【0037】
シート排出部EXは、矯正部DCに対して搬送方向の下流側に配置されている。シート排出部EXは、カットシートCSが排出される部分であり、搬送部CVによる搬送経路RTの終点である。シート排出部EXは、開口部81及び排出トレイ82を有している。開口部81は、本体ケースBDの内外を貫通して設けられている。開口部81には、第一ローラー71及び矯正ローラー73によって送られたカットシートCSが通過するようになっている。このため、第一ローラー71及び矯正ローラー73は、搬送部CVからシート排出部EXへカットシートCSを排出する排出ローラーERを兼ねていることになる。なお、搬送部CVが排出ローラーERを別途有する構成であっても構わない。排出トレイ82は、本体ケースBDの外部に設けられており、開口部81を通過したシートSTを配置させておく部分である。
【0038】
このように構成された印刷装置PRTにおいては、シート供給部SPから供給されるシートSTが搬送部CVによって搬送され、記録部IJによって当該シートSTの表面S1に対して印刷処理が行われ、印刷処理の後に、切断部CTによってシートSTが切断されるようになっている。切断されたカットシートCSは、裏面記録部IPによって裏面S2に記録処理が行われ、乾燥部DRにおいて乾燥処理が施されるようになっている。乾燥処理が施されたカットシートCSには、矯正部DCにおいて湾曲が矯正され、シート排出部EXから排出されるようになっている。
【0039】
なお、印刷装置PRTでは、1つの印刷ジョブに含まれる印刷データを複数に分割し、分割された各印刷データに基づく印刷処理をキャリッジCAの走査毎に行うとともに、各印刷処理の合間に、シートSTの印刷が施された部分が間欠的に搬送されるようになっている。すなわち、記録部IJでは、Y方向が長手方向となる帯状の画像の形成とX方向への紙送りとが交互に繰り返されることで、1つの印刷ジョブに基づく画像が形成されるようになっている。
【0040】
次に、本実施形態における特徴的構成要素を含む矯正部DCの構成を説明する。
図2及び図3は、矯正部DCの構成を示す図である。
図2及び図3に示すように、矯正部DCは、第一ローラー71と、第二ローラー72と、矯正ローラー73とを構成要素の一部としている。また、矯正部DCは、センサー90(図1参照)と、ガイド部材G1,G2と、カムモーターM3(図5参照)と、カム機構60とを備えている。第一ローラー71、第二ローラー72及び矯正ローラー73は、それぞれY方向に延びる軸部71a,72a,73aに支持されている。
【0041】
矯正ローラー73は、カットシートCSを挟持する挟持位置P1(図3に示す位置)と、カットシートCSから離れた離間位置P2(図2に示す位置)との間で移動可能に設けられている。矯正ローラー73は、第一ローラー71との間にシートSTを挟持したときに、シートSTの搬送に伴って従動回転するようになっている。矯正ローラー73の挟持位置P1は第一ローラー71よりも搬送方向の上流側に設けられている。このように矯正ローラー73は、第一ローラー71よりも搬送方向の上流側からカットシートCSに当接する構成となっている。このため、第一ローラー71と矯正ローラー73とでカットシートCSを挟持した場合、カットシートCSの上流側が図中下側へ撓みやすくなり、第一ローラー71と第二ローラー72との間の隙間74へ湾曲されやすくなる。
【0042】
このように、矯正ローラー73は、挟持位置P1において、カットシートCSが第一ローラー71と第二ローラー72との間の隙間74へ押圧され湾曲されるように当該カットシートCSを挟持する構成となっている。矯正ローラー73は、第二ローラー72との間でカットシートCSを屈曲させることで、カットシートCSのカール(巻きぐせ)を矯正する(デカールする)構成となっている。なお、第二ローラー72は、搬送方向において第一ローラー71の上流側に配置されて第一ローラー71に向けてシートSTを搬送するとともに、カットシートCSが屈曲されるときに、その屈曲部分の上流側を支持する支持部として機能する。
【0043】
ガイド部材G1は第二ローラー72によって搬送されるカットシートCSの裏面S2側をガイドする。ガイド部材G2は第二ローラー72によって搬送されるシートSTの表面S1側をガイドするようになっている。ガイド部材G1及びG2は、第一ローラー71に向けてカットシートCSを案内するために、搬送方向において第一ローラー71の上流側に配置されている。ガイド部材G1は、搬送方向の上流側に設けられた基端部G1aと、基端部G1aから搬送方向の下流側に向けて延設される櫛歯状の案内部G1bとを有している。
【0044】
カム機構60は、本体ケースBDに支持されたカム軸62と、カム軸62の回転に伴って回転するカム部材63,64と、カム部材63,64の回転にそれぞれ従動するレバー65,66とを備えている。レバー65は、搬送方向においてカム軸62の上流側に配置されたレバー軸67を中心に回転可能となっている。また、レバー66は、搬送方向においてカム軸62の下流側に配置されたレバー軸68を中心に回転可能となっている。
【0045】
ガイド部材G1は、レバー軸67から搬送方向の下流側に向けて延びる支持部65aに固定されている。カム部材63は、支持部65aから搬送方向の下流側に向けて斜め下方向に延びる係合部65bに係合されている。レバー65は、図示しない付勢部材(例えば、ねじりコイルばね)によって図2における反時計回り方向に付勢されている。
【0046】
カム部材64は、レバー軸68から下方に延びる係合部66aに係合されている。レバー軸68から上方に延びる支持部66bの先端側には、矯正ローラー73の軸部73aが回転自在に支持されている。また、レバー66の支持部66bには、ガイド部材G2が固定されている。レバー65は、図示しない付勢部材(例えば、ねじりコイルばね)の付勢力によって図2における反時計回り方向に付勢されている。
【0047】
カム軸62は、カムモーターM3の駆動に伴って回転するようになっている。カム軸62が図2に示す状態から略180°回転すると、カム軸62とともにカム部材63,64が図3に示す位置まで回転する。カム部材63の回転に従ってレバー65が図2における反時計回り方向に回転するとともに、カム部材64の回転に従ってレバー66が図2における時計回り方向に回転する。
【0048】
また、カムモーターM3の駆動に伴ってカム軸62が図3に示す状態から略180度回転すると、カム軸62とともにカム部材63,64が回転して図2に示す位置に戻る。また、カム部材63の回転に従ってレバー65が図3における時計回り方向に回転して図2に示す位置に戻るとともに、カム部材64の回転に従ってレバー66が図3における反時計回り方向に回転して図2に示す位置に戻る。
【0049】
ガイド部材G1は、レバー65の回転に伴って基端部G1a側を中心に揺動することで、案内部G1bが搬送経路を形成する案内位置(図2に示す位置)と、案内部G1bが搬送経路から離間する退避位置(図3に示す位置)との間で変位する。ガイド部材G1は、案内位置においては、案内部G1bのうち屈曲部G1cよりも先端側の上面が搬送経路RTと略面一となってカットシートCSの支持面を構成するようになっている。
【0050】
矯正ローラー73は、レバー66の回転に伴って、離間位置P2(図2に示す位置)と、挟持位置P1(図3に示す位置)との間を移動する。なお、挟持位置P1において、矯正ローラー73は第一ローラー71との離間距離がシートSTの厚さよりも短くなる位置に配置される。また、離間位置P2において、矯正ローラー73は第一ローラー71との離間距離がシートSTの厚さよりも長くなるように配置される。したがって、矯正ローラー73が離間位置P2にあるときには、シートSTは矯正ローラー73に挟持されることなく、第一ローラー71によって図3に二点鎖線で示す搬送経路に沿って下流側に搬送される。
【0051】
図2に示すように、ガイド部材G1は、搬送方向における長さが第二ローラー72の直径より長くなっているとともに、案内部G1bはその先端が第一ローラー71に至る位置まで延設されている。すなわち、ガイド部材G1の案内部G1bは、搬送方向における下流端が第一ローラー71の周面の上流端よりも下流側に配置されている。また、矯正ローラー73は、図3に示すように、挟持位置P1においてその周面が同図に二点鎖線で示す搬送経路と交差する態様となる。そのため、挟持位置P1にある矯正ローラー73の周面と案内位置にあるガイド部材G1の案内部G1bとは互いに干渉することになる。
【0052】
ガイド部材G1と矯正ローラー73との干渉を回避するために、本実施形態では、矯正ローラー73が挟持位置P1に向けて下方に移動する場合、ガイド部材G1は矯正ローラー73における挟持位置P1から離間位置P2への移動経路から下方に離間した退避位置に移動可能となっている。
【0053】
また、カム軸62が回転すると、ガイド部材G1はカム部材63の回転に伴って移動するとともに、矯正ローラー73はカム部材64の回転に伴って移動する。そのため、ガイド部材G1の案内部G1bは、矯正ローラー73が離間位置P2から挟持位置P1に向けて下方に移動するタイミングで、案内位置から退避位置に向けて下方に移動することになる。
【0054】
本実施形態では、図2に示すように、第一ローラー71の径R1は、第二ローラー72の径R2よりも小さくなるように形成されている。また、矯正ローラー73の径R3は、第一ローラー71の径R1よりも小さくなるように形成されている。したがって、第一ローラー71の径R1、第二ローラー72の径R2及び矯正ローラー73の径R3は、R3<R1<R2の関係を満たす値に設定されている。具体的には、第一ローラー71の径R1として例えば18mm程度に設定することができ、第二ローラー72の径R2として例えば32mm程度に設定することができ、矯正ローラー73の径R3として例えば11.25mm程度に設定することができる。
【0055】
第一ローラー71の径R1と第二ローラー72の径R2との間がR1<R2となっていることにより、第一ローラー71と第二ローラー72とを等しい径とした場合に比べて、第一ローラー71と第二ローラー72との間の隙間74が小さくなる。このため、カットシートCSの先端が隙間74に入り込むのが抑制される構成となっている。
【0056】
図4は、本実施形態のカットシートCSの構成を示す断面図である。なお、シートSTについても、同様の構成となっているが、説明を省略する。
図4に示すように、カットシートCSは、表面S1に設けられた記録層C1と、裏面S2に設けられた基材層C2とを有している。
【0057】
記録層C1は、上記記録部IJのヘッドHから噴射されるインクが定着しやすい構成となっている。基材層C2は、記録層C1を支持している。より具体的には、基材層C2の表面に記録層C1が形成された構成となっている。基材層C2の厚さに比べて、記録層C1の厚さは極めて小さい厚さとなっている。
【0058】
次に、印刷装置PRTの電気的構成を説明する。
図5に示すように、制御部CONTは、制御手段としてのコンピューター101と、ヘッド駆動回路102と、モーター駆動回路103、104、105とを備えている。コンピューター101は、バス108を介してヘッド駆動回路102及びモーター駆動回路103、104、105に電気的に接続されている。
【0059】
コンピューター101は、ASIC109(Application Specific IC(特定用途向けIC))、CPU110、ROM111、RAM112、不揮発性メモリー113を備えている。ROM111には、各種制御プログラム及び各種データなどが記憶されている。不揮発性メモリー113には、ファームウェアプログラムを始めとする各種プログラム及び印刷処理に必要な各種データなどが記憶されている。RAM112には、CPU110によって実行されるプログラムデータや、CPU110による演算結果及び処理結果である各種データ、並びにASIC109で処理された各種データなどが一時記憶される。
【0060】
コンピューター101は、CPU110がROM111等に記憶されたプログラムを実行することで、各種の制御を行う。例えば、コンピューター101は、ヘッド駆動回路102を介してヘッドHを制御するとともに、モーター駆動回路103,104,105を介してそれぞれ回転モーターMT1、搬送モーターMT2及びカムモーターMT3を制御する。なお、コンピューター101は、ロータリーエンコーダーECからの検出信号に基づいて搬送モーターMT2を制御する。また、コンピューター101は、センサー90の検出結果等に基づいてカムモーターMT3を制御する。
【0061】
搬送モーターMT2の出力軸には、該出力軸の回転速度、回転位置及び回転方向を検出するためのロータリーエンコーダーECと、動力伝達切換装置SWとが設けられている。動力伝達切換装置SWは、シートSTの搬送工程に応じて、搬送モーターMT2と搬送ローラー21〜28、第一ローラー71及び第二ローラー72との間で動力の伝達先を切り換えるようになっている。
【0062】
次に、印刷装置PRTにおける矯正処理について説明する。
印刷装置PRTにおいては、記録部IJにおける記録処理が終了して切断されたカットシートCSに対して矯正処理が施される。なお、カットシートCSの搬送方向における長さが長い場合には、切断される前のシートSTの先端側が矯正部DCに到達していても、記録部IJに配置されたシートSTの後端側において記録処理が実行されている場合もある。
【0063】
このため、常時は、矯正ローラー73が離間位置P2に配置されるとともにガイド部材G1が案内位置に配置された状態で、シートSTに対してカールの矯正を行うことなく、シートSTの搬送が行われる。そして、シートSTの切断が完了してカットシートCSの連続的な搬送が開始された後に、コンピューター101の制御によって矯正ローラー73が離間位置P2から挟持位置P1に移動されて、シートSTのカール矯正処理が開始される。
【0064】
カットシートCSの搬送方向における長さが短い場合には、切断を行ったときにカットシートCSの先端側が矯正部DCに到達していないことがある。こうした場合にも、矯正ローラー73と第一ローラー71との間にカットシートCSの先端を確実に挿通させるために、コンピューター101は、離間位置P2にある矯正ローラー73と第一ローラー71との間にシートSTが挿通された状態で、矯正ローラー73を離間位置P2から挟持位置P1に移動させるようになっている。
【0065】
次に、シートSTの切断が終了したときにコンピューター101が実行するカール矯正処理ルーチンについて、図6に基づいて説明する。以下の説明のいては、カットシートCSに対してカール矯正処理を行う場合を例に挙げて説明するが、シートSTの状態でカール矯正処理を行う場合についても同様の説明が可能である。
【0066】
まず、ステップS11では、コンピューター101がカットシートCSの搬送方向における長さLを取得して、ステップS12に進む。
【0067】
ステップS12では、コンピューター101が取得したカットシートCSの長さLに基づいて、カール矯正動作を開始するタイミングを決めるカール矯正動作開始カウント値Ns及びカール矯正動作を終了するタイミングを決めるカール矯正動作終了カウント値Neを決定して、ステップS13に進む。
【0068】
ステップS13では、コンピューター101がカットシートCSの長さLが予め規定された閾値La未満であるか否かを判定する。そして、コンピューター101は、カットシートCSの長さLが閾値La未満であった場合にはステップS14に進む一方、カットシートCSの長さLが閾値La以上であった場合にはステップS15に進む。なお、閾値Laは、カットシートCSの長さを判定する値として予め規定し、不揮発性メモリー113などに記憶させておくことができる。例えば、搬送方向において、シートSTの切断を行う位置とセンサー90がシートSTの先端を検出する位置との距離をLbとすると、La≦Lbとすることができる。
【0069】
ステップS14では、センサー90がカットシートCSの先端を検出したか否かをコンピューター101が判定する。そして、コンピューター101は、センサー90がカットシートCSの先端を検出した場合にはステップS16に進む一方、センサー90がカットシートCSの先端を検出していなかった場合には所定のタイミングで同判定を繰り返す。
【0070】
ステップS15では、コンピューター101がカットシートCSの先端側が排出ローラーERにニップ(挟持)されたか否かを判定する。そして、コンピューター101は、カットシートCSが排出ローラーERにニップされた場合にはステップS16に進む一方、カットシートCSが排出ローラーERにニップされていなかった場合には所定のタイミングで同判定を繰り返す。
【0071】
なお、カットシートCSの先端側が排出ローラーERにニップされたか否かは、カットシートCSの長さLとシートSTを切断してからのカットシートCSの搬送量とから判断することもできる。あるいは、搬送方向において排出ローラーERの下流側に先端検出センサーを設ければ、該先端検出センサーの検出結果に基づいてカットシートCSの先端側が排出ローラーERにニップされたか否かを判断することもできる。
【0072】
ステップS16では、コンピューター101がカウントを開始して、ステップS17に進む。
【0073】
ステップS17では、コンピューター101がカウント値Nがカール矯正動作開始カウント値Ns以上になったか否かを判定する。そして、コンピューター101は、カウント値Nがカール矯正動作開始カウント値Ns以上になった場合にはステップS18に進む一方、カウント値Nがカール矯正動作開始カウント値Ns未満であった場合には所定のタイミングで同判定を繰り返す。
【0074】
ステップS18では、コンピューター101がカムモーターMT3を駆動させることで、カール矯正動作を開始させて、ステップS19に進む。具体的には、カムモーターMT3の駆動によってカム軸62を略180度回転させることで、矯正ローラー73を離間位置P2から挟持位置P1に移動させるとともに、ガイド部材G1を案内位置から退避位置に移動させる。これにより、ガイド部材G1によって第一ローラー71と矯正ローラー73との間に先端側が挿通されたカットシートCSは、第二ローラー72との間でカールの巻き方向と逆方向に屈曲され、カールが矯正される。
【0075】
図7は、カットシートCSが矯正される様子を示す図である。図7に示すように、カットシートCSは、第二ローラー72に押圧されて湾曲された状態になっている。この場合、カットシートCSが厚みtを有しているため、湾曲部分CSa(又はSTa)の裏面S2側は第二ローラー72の外周面に沿って湾曲されるのに対して、湾曲部分CSaの表面S1側は、直径が(R2+2t)である仮想の円筒面に沿って湾曲されることになる。
【0076】
したがって、湾曲部分CSaの表面S1側の長さと裏面S2側の長さの比(伸び率)は以下の(1)式で示すようになる。
(R2+2t)/R2…(1)
=1+2t/R2 …(2)
このように、カットシートCSは厚みを有しているため、カットシートCSの表面S1は裏面S2に比べて伸び率が大きくなる。よって、その分、表面S1側に働く張力は裏面S2側に働く張力よりも大きくなる。
【0077】
一方、(2)式により、カットシートCSの厚みが一定であれば、第二ローラー72の径が大きいほど、伸び率が小さくなり、表面S1に働く張力は小さい値となることがわかる。本実施形態では、第二ローラー72の径R2が第一ローラー71の径R1よりも大きいため、第二ローラー72の径R2を第一ローラー71の径R1と等しくした場合よりも、表面S1に働く張力が小さくなる。このため、カットシートCSの表面側に配置された記録層C1の割れなどの損傷が抑制されることになる。
【0078】
ステップS19では、コンピューター101がカウント値Nがカール矯正動作終了カウント値Ne以上になったか否かを判定する。そして、コンピューター101は、カウント値Nがカール矯正動作終了カウント値Ne以上になった場合にはステップS20に進む一方、カウント値Nがカール矯正動作終了カウント値Ne未満であった場合には所定のタイミングで同判定を繰り返す。
【0079】
ステップS20では、コンピューター101がカムモーターMT3を駆動させることで、カール矯正動作を終了させて、処理を終了する。具体的には、カムモーターMT3の駆動によってカム軸62を略180度回転させることで、矯正ローラー73を挟持位置P1から離間位置P2に移動させるとともに、ガイド部材G1を退避位置から案内位置に移動させる。すなわち、ガイド部材G1は、矯正ローラー73の挟持位置P1から離間位置P2への移動に伴って、退避位置からシートSTを搬送経路に沿って第一ローラー71まで案内する案内位置へ移動する。なお、カールが矯正されたカットシートCSは、開口部81から排出トレイ82へと排出される。
【0080】
カットシートCSが開口部81から排出される過程で、その先端側が図1に二点鎖線で示すように自重でカールしてしまうことがある。そして、カールが矯正されたカットシートCSの先端側のみがこのようにカールしてしまうとバランスの悪い形状になってしまうので、このような場合には、カットシートCSの後端側にのみカール矯正処理を施すようにしてもよい。これにより、同図の排出トレイ82上に図示されたカットシートCSのように、先端側と後端側とがそれぞれ逆方向にカールしたバランスの良い形状にすることができる。
【0081】
以上のように、本実施形態によれば、第一ローラー71の径R1が、当該第一ローラー71の上流側に配置された第二ローラー72の径R2よりも小さいため、第一ローラー71と第二ローラー72との間の隙間74を小さくすることができる。このため、カットシートCSの先端が当該隙間74に入り込むのを抑えることができる。これにより、カットシートCSあるいはシートSTの搬送不良を抑制することができ、信頼性の高い印刷装置PRTを得ることができる。
【0082】
加えて、本実施形態によれば、第二ローラー72の径R2が第一ローラー71の径R1よりも大きいため、カットシートCSが第二ローラー72に押圧される場合においてカットシートCSの表面S1に作用する応力を極力抑えることができる。これにより、カットシートCS(例えば、表面S1の記録層C1など)が損傷するのを抑制することができる。
【0083】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、矯正部DCにガイド部材G1を備えない構成としてもよい。この場合には、矯正部DCの構成を簡素化することができる。
【0084】
また、矯正ローラー73を移動しない構成としてもよい。この場合にも、例えば矯正ローラー73を第一ローラー71に近接する方向に付勢する付勢部材を設け、シートSTの先端が第一ローラー71と矯正ローラー73との間に挿通されるときに、付勢部材の付勢力が弱くなるようにすることで、シートSTを確実に挟持することができる。
【0085】
また、矯正ローラー73は、例えばシートSTの厚さに応じて複数の挟持位置P1や離間位置P2に移動可能な構成としてもよい。また、例えば、センサー90は光学式センサーに限らず、接触式センサーなど、任意の方式のセンサーに変更することができる。
【0086】
また、上記実施形態では、シートSTはその先端側が搬送経路RTから下方に離間するようにカールする状態で搬送されているが、シートSTの先端側がその他の方向(例えば上方や側方)にカールする状態で搬送されるようにしてもよい。そして、この場合には、搬送経路RTを挟んでシートSTの先端側がカールする側に第一ローラー71、第二ローラー72及びガイド部材G1を配置する一方、第一ローラー71と対向する位置に矯正ローラー73を配置すればよい。
【0087】
また、シートSTは、用紙に限らず、樹脂製フィルムや金属製フィルムなど、ロール状に巻き重ねられた状態で保持されることで巻きぐせがつく任意のシート状媒体に適用することができる。
【0088】
記録処理は、印刷や印字を行うものに限らず、例えばシート状媒体にシールを付したり、箔を転写したり、孔をあけたり、切り目を入れたりする各種処理としてもよい。そして、これら各処理を行う処理装置に本発明の搬送装置を備え、これら処理を行う前にカールを矯正するようにしてもよいし、処理が施された後にカールを矯正するようにしてもよい。
【0089】
上記実施形態では、記録方式としてインクジェット方式を採用した記録装置について記載したが、電子写真方式や熱転写方式など、任意の記録方式の記録装置に変更することもできる。また、記録装置はプリンターに限らず、FAX装置、コピー装置、あるいはこれら複数機能を備えた複合機等であってもよい。さらに、記録装置として、インク以外の他の液体の微小量の液滴を噴射したり吐出したりする液体噴射ヘッド等を備える液体噴射装置を採用してもよい。
【0090】
なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。
【0091】
ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置等であってもよい。
【実施例】
【0092】
次に、本発明の実施例を説明する。
本実施例では、上記実施形態における印刷装置PRTのうち矯正部DCの第二ローラー72の径R2を変化させた場合において、矯正部DCの矯正動作によりカットシートCS(記録用紙)の記録層C1に損傷が発生するかどうかを評価した。
【0093】
今回の評価では、第一ローラー71の径R1を18mm(一定値)とし、矯正ローラー73の径R3を11.25mm(一定値)とした。また、第二ローラー72の径R2については、18mm、24mm、32mm及び40mmと段階的に変化させて行った。
【0094】
記録用紙としては、紙厚0.27mm(誤差±0.1mm)の写真用紙(セイコーエプソン製:光沢有)を用いた。この記録用紙は、記録層C1が数nm〜数百nm程度に形成されており、基材層C2に対して極めて薄く形成されているといえる。
【0095】
また、矯正部DCによる矯正動作を行う前に、乾燥部DRにおいて乾燥動作を行うようにした。乾燥動作の条件として、84±5℃程度の温度で記録用紙を加熱しつつ、毎秒0.6インチの搬送速度で記録用紙を搬送しながら乾燥動作を行った。
【0096】
このような条件で評価を行うと、表1に示すような結果が得られた。
【0097】
【表1】

【0098】
表1に示すように、第二ローラー72の径R2が18mm、24mmとしたときには記録用紙の記録層C1に損傷が発生した。径R2が18mmのときの記録用紙の表面S1側(記録層C1)の伸び率は1.03であり、径R2が24mmのときの記録用紙の表面S1側(記録層C1)の伸び率は1.0225であった。
【0099】
また、第二ローラー72の径R2が32mm、40mmとしたときには記録用紙の記録層C1には損傷の発生が見られなかった。径R2が32mmのときの記録用紙の表面S1側(記録層C1)の伸び率は1.016875であり、径R2が40mmのときの記録用紙の表面S1側(記録層C1)の伸び率は1.0135であった。
【0100】
この結果から、第二ローラー72の径R2が24mmより大きく32mmより小さい所定の閾値を超える場合には、記録用紙の記録層C1に損傷が発生しないことが判断できる。上記実施形態では、第二ローラー72の径R2が32mmである例を挙げて説明していたが、本実施例の結果に照合させると、記録層C1に損傷が発生するのを抑制する効果を十分に奏するものであると判断できる。
【0101】
また、第二ローラー72の径R2を上記の4種類の値に変化させたときの記録層C1の伸び率に着目すると、当該記録層C1に損傷が発生した場合においては、伸び率が1.0225以上となっている。これに対して、記録層C1に損傷が発生していない場合には、伸び率が1.016875以下となっている。このため、伸び率の閾値がこの2つの値の間の所定値を超える場合、記録用紙の記録層C1に損傷が発生しないことが判断できる。
【符号の説明】
【0102】
PRT…印刷装置 ST…シート S1…表面 S2…裏面 CS…カットシート CSa(STa)…湾曲部分 C1…記録層 C2…基材層 BD…本体ケース SP…シート供給部 CV…搬送部 IJ…記録部 CT…切断部 IP…裏面記録部 DR…乾燥部 DC…矯正部 EX…シート排出部 CONT…制御部 RT…搬送経路 H…ヘッド HT…加熱部 ER…排出ローラー P1…挟持位置 P2…離間位置 G1、G2…ガイド部材 71…第一ローラー 72…第二ローラー 73…矯正ローラー 74…隙間 90…センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送媒体を所定の搬送方向に搬送する搬送部と、
前記搬送媒体に対して記録を行う記録部と、
前記記録が行われた前記搬送媒体を矯正する矯正部と
を備え、
前記矯正部は、
前記搬送媒体を前記搬送方向に送る第一ローラーと、
前記第一ローラーとの間に間隔を空けるように前記第一ローラーに対して前記搬送方向の上流側に設けられ、前記搬送媒体を前記搬送方向に送る第二ローラーと、
前記搬送媒体が前記第一ローラーと前記第二ローラーとの前記間隔へ押圧されて湾曲されるように前記第一ローラーとの間で前記搬送媒体を挟持する矯正ローラーと
を有し、
前記第一ローラーの径は、前記第二ローラーの径よりも小さい
記録装置。
【請求項2】
前記矯正ローラーは、前記搬送媒体を挟持する挟持位置と、前記搬送媒体から離れた離間位置との間を移動可能に設けられている
請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記矯正ローラーの径は、前記第一ローラーの径よりも小さい
請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記挟持位置は、前記第一ローラーよりも前記搬送方向の上流側に設けられている
請求項2又は請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記矯正部は、前記第一ローラーと前記第二ローラーとの間で前記搬送媒体を案内する案内部を有する
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記矯正部に対して前記搬送方向の下流側に設けられ、前記搬送媒体を排出する排出部を更に備え、
前記搬送部は、前記搬送媒体を前記排出部に送る排出ローラーを有し、
前記第一ローラー及び前記矯正ローラーは、前記排出ローラーを兼ねている
請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記記録部は、前記搬送媒体に対して液体を噴射する液体噴射ヘッドを有する
請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項8】
前記記録部と前記矯正部との間に設けられ、前記液体を乾燥させる乾燥部を更に備える
請求項7に記載の記録装置。
【請求項9】
前記乾燥部は、前記搬送媒体を加熱する加熱部を有する
請求項8に記載の記録装置。
【請求項10】
前記搬送媒体は、記録が行われる記録層と、前記記録層を支持する基材層とを有する
請求項1から請求項9のうちいずれか一項に記載の記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−62177(P2012−62177A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209084(P2010−209084)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】