説明

記録装置

【課題】手差し用開口部から記録媒体を内部に差し込んだ場合の感触を良好に把握可能であること、記録媒体の傾きの補正を行えること、のうち、少なくとも1つを達成することが可能な記録装置を提供する。
【解決手段】手差し用開口部91から差し込む際に、その差し込みをガイドすることが可能な第1給紙経路98と、第1給紙経路98よりも記録媒体Pの搬送方向における下流側に設けられると共に、搬送駆動手段の駆動によって駆動させられる用紙搬送機構40と、用紙搬送機構40よりも搬送方向における上流側に設けられると共に、第1給紙経路98を介して供給される記録媒体Pの下流側の先端部を受け止めて当該記録媒体Pの下流側への進行を阻止する阻止状態と、阻止状態を解除した解除状態とを切り替えることが可能な可動部材110と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録装置の中には、たとえば特許文献1に示すようなタイプが存在する。かかる特許文
献1に示す記録装置では、その背面に手差し用開口部が形成されていて、さらにその手差
し用開口部へ記録用紙をガイドするための手差しトレイが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−46497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の構成によれば、ユーザーは、手で把持している記録用紙を、手差し
トレイでガイドされつつ、記録装置の背面に形成されている手差し用開口部から記録装置
の内部に押し込んでいる。この場合、搬送ローラーのニップ位置まで、記録用紙を押し込
む必要がある。しかしながら、搬送ローラーのニップ位置まで正しく記録用紙を押し込ま
れたか否かの感触は、ユーザーにとって分かり難い、という問題がある。
【0005】
また、特許文献1の構成においては、手差しトレイを介して記録用紙を記録装置の内部
にガイドする場合には、記録用紙の傾きを補正することが困難となっている。そのため、
ユーザーは、記録用紙に傾きが生じることなく記録装置の内部に押し込むことが要求され
るが、そのような記録用紙の押し込みは、非常に困難である。そのため、記録用紙が傾い
た状態で記録位置まで送り込まれ、記録用紙に対して記録画像が相対的に傾いた状態で記
録されてしまう場合がある。
【0006】
なお、たとえばオフィス等のように、多人数で記録装置を使用する環境下においては、
あるユーザーが手差しトレイに記録用紙をセットしても、その記録用紙を差し込んだユー
ザー以外の他のユーザーが記録を実行する場合がある。すると、手差しトレイにセットさ
れた記録用紙が、他のユーザーの記録に供されてしまうという事態が生じる。そのような
場合には、手差しトレイに再度記録用紙をセットし直し、記録をやり直す等、時間とコス
ト等の面で無駄が生じてしまう。
【0007】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、その目的とするところは、手差し用開
口部から記録媒体を内部に差し込んだ場合の感触を良好に把握可能であること、記録媒体
の傾きの補正を行えること、のうち、少なくとも1つを達成することが可能な記録装置を
提供しよう、とするものである。
また、本発明においては、手差し用開口部から差し込まれる記録媒体に意図しない記録
が行われるのを防ぐことが可能な記録装置を提供することが、好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の記録装置は、手差し用開口部から記録媒体を差し
込む際に、その差し込みをガイドすることが可能な第1給紙経路と、第1給紙経路よりも
記録媒体の搬送方向における下流側に設けられると共に、搬送駆動手段の駆動によって駆
動させられる搬送手段と、搬送手段よりも搬送方向における上流側に設けられると共に、
第1給紙経路を介して供給される記録媒体の下流側の先端部を受け止めて当該記録媒体の
下流側への進行を阻止する阻止状態と、阻止状態を解除した解除状態とを切り替えること
が可能な可動部材と、を具備するものである。
【0009】
このように構成する場合には、可動部材が阻止状態となると、手差し用開口部から記録
媒体を差し込むと、その記録媒体の先端が可動部材によって受け止められる。それにより
、手差し用開口部から記録媒体を内部に差し込んだ場合の感触を良好に把握可能となる。
そして、阻止状態が解除された解除状態になると、記録媒体が良好に搬送手段に自重で送
られてニップされる。
【0010】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、搬送手段は、搬送駆動手段によって
駆動させられる搬送駆動ローラーと、この搬送駆動ローラーに対して圧接し搬送駆動ロー
ラーの駆動に従動させられる搬送従動ローラーとを有すると共に、可動部材には、搬送駆
動ローラーの回転軸に対して平行に配置される当接部が設けられていて、阻止状態では記
録媒体の下流側の先端が当接部によって受け止められる、ことが好ましい。
【0011】
このように構成する場合には、可動部材が阻止状態となると、記録媒体の先端が可動部
材の当接部に当接する。ここで、当接部は搬送駆動ローラーの回転軸に対して平行に設け
られているため、記録媒体の傾きを補正することが可能となる。
【0012】
さらに、本発明の他の側面は、上述の発明において、第1給紙経路よりも下方側から可
動部材を通って搬送手段へ記録媒体を供給する第2給紙経路を備え、第1給紙経路と第2
給紙経路とが合流する箇所に可動部材が設けられている、ことが好ましい。
【0013】
このように構成する場合には、第1給紙経路と第2給紙経路とは、共に、可動部材で記
録媒体の傾きを補正することが可能となる。
【0014】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、可動部材は、可動部材駆動手段の駆
動によって阻止状態と解除状態とが切り替えられ、可動部材駆動手段の駆動を制御する制
御部を備え、制御部は、第2給紙経路から記録媒体が供給される場合には、可動部材が解
除状態となるように可動部材駆動手段を制御する、ことが好ましい。
【0015】
このように構成する場合には、第2給紙経路から記録媒体を供給する場合においても、
可動部材を解除状態に切り替えれば、可動部材を通過させて、記録媒体を下流側の搬送手
段に供給することが可能となる。すなわち、可動部材の存在が、第2給紙経路を介しての
記録媒体の供給の妨げとなることがなく、第2給紙経路からの良好な記録媒体の供給が可
能となる。
【0016】
さらに、本発明の他の側面は、上述の発明において、第1給紙経路よりも下方側から可
動部材を通って搬送手段へ記録媒体を供給する第2給紙経路を備え、可動部材は、可動部
材駆動手段の駆動によって阻止状態と解除状態とが切り替えられ、可動部材は、第2給紙
経路よりも上方側に位置し、かつ第1給紙経路のうち搬送方向における下流側に設けられ
、可動部材駆動手段の駆動を制御する制御部を備える、ことが好ましい。
【0017】
このように構成する場合には、可動部材は、第2給紙経路よりも上方側に位置し、かつ
第1給紙経路のうち搬送方向における下流側に設けられているため、第1給紙経路に記録
媒体が存在する状態でも、可動部材を阻止状態としておけば、第2給紙経路から記録媒体
を供給して、記録を実行することが可能となる。それにより、第1給紙経路を介して記録
媒体への記録と、第2給紙経路を介しての記録媒体への記録とを区別することが可能とな
り、手差し用開口部から第1給紙経路を介して差し込まれる記録媒体に意図しない記録が
行われるのを防ぐことが可能となる。また、可動部材を阻止状態としておくことで、記録
媒体を長時間置いておくことも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施の形態の記録装置内部の搬送経路を示す側断面図である。
【図2】図1の可動部材の阻止状態と解除状態とを示す図である。
【図3】記録装置の概略的な構成を示す図である。
【図4】第2の実施の形態の記録装置内部の搬送経路を示す側断面図である。
【図5】図2の可動部材の阻止状態と解除状態とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態に係る記録装置10について、図面を参照しながら説明す
る。
【0020】
(第1の実施の形態)
<記録装置10の構成について>
図1は、本発明の記録装置10のうち、記録用紙Pを搬送する経路を示す側断面図であ
る。なお、記録用紙Pは、記録媒体の一例に対応するが、たとえばフィルム状部材のよう
な記録用紙P以外の記録対象物を記録媒体としても良い。また、本明細書における「記録
」には、印刷が含まれるものとする。
【0021】
また、以下の説明においては、図1に示すように、XYZ直交座標系を設定して説明す
る場合があるものの、その中で記録用紙Pの搬送方向のうち、記録装置10の設置面に平
行な成分をX方向とし、設置面から離間する方向をZ方向とし、それらX方向およびZ方
向に直交する方向をY方向とする。また、図1の記録ヘッド50から見て中間ローラー3
2が位置する側を背面側とし、それとは逆に中間ローラー32から見て記録ヘッド50が
位置する側を正面側とする。また、記録装置10の設置面から見て記録装置10が設置さ
れる側を上方側とし、それとは逆に記録装置10から上述の設置面側を下方側とする。
【0022】
なお、記録装置10は、たとえばインクジェット式のプリンターであるが、インクジェ
ット式のプリンター以外に本発明を適用するようにしても良い。また、インクジェット式
のプリンターとしては、インクを噴射して記録可能な装置であれば、いかなる噴射方法を
採用した装置でも良い。
【0023】
また、図1においては、記録用紙Pの搬送経路上に配置されるローラーを図示するもの
の、それらは記録装置10の幅方向(Y方向)において、同じ位置に存在するとは限らな
い。
【0024】
記録装置10は、フロント給紙機構20を備えており、そのフロント給紙機構20から
記録用紙Pを、記録ヘッド50に向けて搬送し、その記録ヘッド50での記録後、記録用
紙Pを下流側に排出する。フロント給紙機構20は、用紙カセット21と、ピックアップ
ローラー22とを備えている。用紙カセット21は、その内部に複数枚の記録用紙Pを積
層した状態で収容可能となっている。また、ピックアップローラー22は、不図示のモー
ターによって回転駆動されるが、このピックアップローラー22は、アーム部材24に取
り付けられている。アーム部材24は、揺動軸25を中心に揺動可能に設けられている。
上述のピックアップローラー22は、用紙カセット21に収容されている記録用紙Pと接
して回転することにより、最上位に位置している記録用紙Pを、用紙カセット21から後
述する分離部材26に向けて送り出す。
【0025】
また、記録装置10のうち、用紙カセット21よりも背面側かつ上方側には、分離部材
26が設けられている。分離部材26は、ピックアップローラー22によって送り出され
た最上位の記録用紙Pの先端を当接させて、背面側かつ上方側に進行させる。そして、こ
の当接によって、最上位の記録用紙Pと、次位以降の記録用紙Pとが分離される。
【0026】
また、フロント給紙機構20によって供給される記録用紙Pは、ガイドローラーユニッ
ト30に送られる。ガイドローラーユニット30は、アシストローラー31と、中間ロー
ラー32と、アシストローラー33とを備えている。アシストローラー31と中間ローラ
ー32とは、複数の記録用紙Pから、最上位の記録用紙Pを分離する機能を有する。すな
わち、複数の記録用紙Pが、アシストローラー31と中間ローラー32との間に差し掛か
った場合、記録用紙Pの間の摩擦力よりも大きく設定されたアシストローラー31の回転
抵抗を利用して、最上位の記録用紙Pと、それ以外の記録用紙Pとが分離される。なお、
アシストローラー31を分離ローラーとすることも可能である。
【0027】
また、アシストローラー31よりも搬送方向における下流側には、アシストローラー3
3が設けられている。アシストローラー33は、中間ローラー32によって従動回転させ
られつつも、当該中間ローラー32との間で記録用紙Pを挟み込んで、記録用紙Pを搬送
方向の下流側にガイドする。
【0028】
また、ガイドローラーユニット30よりも、記録用紙Pの搬送方向における下流側には
、用紙搬送機構40と、用紙排出機構60とが設けられている。用紙搬送機構40は、搬
送駆動手段としての搬送モーター41(図3参照)と、搬送手段としての搬送駆動ローラ
ー42と、搬送支持部材43と、搬送手段としての搬送従動ローラー44とを備えている
。搬送駆動ローラー42は、搬送モーター41によって駆動させられる。また、搬送従動
ローラー44は、搬送支持部材43によって軸支されつつ搬送駆動ローラー42に圧接さ
れ、その搬送駆動ローラー42により搬送従動ローラー44は従動回転させられる。この
ような構成により、記録用紙Pは、記録ヘッド50側に搬送される。
【0029】
なお、搬送駆動手段は、搬送モーター41には限られず、たとえばたとえばソレノイド
等の直線運動を行うアクチュエーターと直線運動を回転運動へと変換する機構の組み合わ
せ、手動によって搬送駆動ローラー42を回転させる機構等を、搬送駆動手段としても良
い。また、搬送手段としては、記録用紙Pを載置しつつも移動するベルト等を、搬送手段
としても良い。
【0030】
また、用紙搬送機構40より上流側の搬送支持部材43には、紙端検出センサーS1が
設けられる。紙端検出センサーS1は、記録用紙Pの先端及び後端の位置を検出可能とす
るものである。
【0031】
また、用紙搬送機構40よりも記録用紙Pの搬送方向における下流側には、記録用紙P
の上方側に記録ヘッド50が位置可能となっている。記録ヘッド50は、キャリッジ51
の下方に取り付けられている。キャリッジ51は、記録装置10の幅方向(主走査方向;
Y方向)に延伸するキャリッジ軸52にガイドされて、キャリッジモーター53(図3参
照)の駆動により主走査方向に往復動させられる。なお、図3に示すように、キャリッジ
51には、例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の
各色のインクを貯留するカートリッジ54が搭載されていて、このカートリッジ54から
記録ヘッド50にインクが供給されて、記録ヘッド50からインクを噴射可能となってい
る。
【0032】
記録ヘッド50よりも記録用紙Pの搬送方向における下流側には、用紙排出機構60が
設けられている。用紙排出機構60は、不図示の排出モーターと、排出駆動ローラー61
と、排出従動ローラー62とを備えており、排出モーターの駆動によって排出駆動ローラ
ー61が回転駆動させられ、その排出駆動ローラー61に圧接している排出従動ローラー
62が従動回転させられる。なお、用紙排出機構60をさらに下流側に搬送される記録用
紙Pは、不図示の用紙受け部へと排出される。
【0033】
なお、本実施の形態における記録装置10は、両面印刷に対応したものとなっている。
この点を図1に基づいて説明すると、中間ローラー32よりも正面側には用紙ガイド部材
71が設けられている。用紙ガイド部材71は、中間ローラー32の上下方向(Z方向)
における所定の高さ位置から正面側に向かうにつれて下方に進行するような搬送面71a
を有している。なお、この搬送面71aは、第2給紙経路としてのフロント搬送経路70
を構成している。
【0034】
一方、用紙ガイド部材71よりも下方側には、フレーム部材81が設けられている。フ
レーム部材81は、用紙ガイド部材71に対して、記録用紙Pが通過することが十分に可
能な隙間を有して設けられている。そして、このフレーム部材81の背面側の端部は、中
間ローラー32の下端の近傍まで延伸していて、そのフレーム部材81には、回り込み部
材82が対向して設けられている。上述のフレーム部材81の上面と、回り込み部材82
の上面は、記録用紙Pを正面側から背面側へと送り込む反転用搬送経路80を構成してい
て、この反転用搬送経路80によってガイドされた記録用紙Pは、中間ローラー32とア
シストローラー31との対向部位へと送り込まれる。
【0035】
ここで、フロント搬送経路70により記録用紙Pが記録ヘッド50の下方位置まで搬送
され、記録用紙Pへの記録(印刷)が行われた後に、その記録用紙Pが背面側に戻される
と、その記録用紙Pは反転用搬送経路80を進行するように構成されている。そして、記
録用紙Pが反転用搬送経路80を進行した後に、ガイドローラーユニット30を通過する
ことにより、記録用紙Pは、最初にガイドローラーユニット30を通過したときと反転し
た状態となる。以上のように反転させられた記録用紙Pが、フロント搬送経路70を経て
再び記録ヘッド50の下方へと搬送されることにより、記録用紙Pへの両面印刷が実行さ
れる。
【0036】
<手差しガイド機構90について>
続いて、手差しガイド機構90について説明する。手差しガイド機構90は、記録装置
10の背面側において、手差しによって記録用紙Pを差し込んで、当該差し込まれた記録
用紙Pを記録装置10の内部にガイドするための部分である。
【0037】
手差しガイド機構90は、記録装置10の背面側に存在する手差し用開口部91から、
記録用紙Pを差し込む際に、その差し込みをガイドするものである。この手差しガイド機
構90は、手差しトレイ体92と、開閉カバー95と、上方ガイド部材96と、を有して
いる。これらのうち手差しトレイ体92は、トレイ基部93と、開閉トレイ94とを有し
ている。トレイ基部93は、上述の中間ローラー32の上方に位置していて、背面側から
正面側に向かうにつれて上方から下方に向かうような傾斜部93aを有している。なお、
本実施の形態では、用紙ガイド部材71の上方側の端部と、トレイ基部93の正面側の端
部とは、X方向において同程度の位置に設けられている。しかしながら、これらの端部は
、必ずしもX方向において同程度の位置に設けられる必要はない。
【0038】
また、トレイ基部93の上方側の端部93bには、開閉トレイ94の正面側の端部(当
接端部94b)が当接可能に設けられている。この開閉トレイ94の側方には、回動軸9
4cが設けられていて、その回動軸94cは図示を省略する側方支持部によって回動可能
に設けられている。また、開閉トレイ94には、記録用紙Pの送り込みをガイドするガイ
ド部94aが、図1における上面側に設けられている。そして、この当接端部94bの上
部がトレイ基部93の端部93bに当接している状態では、開閉トレイ94のガイド部9
4aと、トレイ基部93の傾斜部93aとが連なって、記録用紙Pを良好にガイド可能と
している。
【0039】
なお、開閉トレイ94のガイド部94aの側方側には、記録用紙Pの幅に応じて当該記
録用紙Pの搬送における傾きを抑えるためのサポート部材97が設けられている。サポー
ト部材97は一対設けられていて、ガイド部94aの幅方向において互いに近接する、ま
たは互いに離間するように、対称に移動するように設けられている。また、ガイド部94
aの傾斜角度と、傾斜部93aの傾斜角度は、同程度であることが好ましいが、記録用紙
Pを良好にガイド可能であれば、必ずしも同程度でなくても良い。
【0040】
また、開閉カバー95は、トレイ基部93および開閉トレイ94の上方側に位置し、そ
れらトレイ基部93および開閉トレイ94に対して間隔を有する状態で設けられている。
この開閉カバー95の側方には、回動軸95aが設けられていて、その回動軸95aが図
示を省略する支持部によって回動可能に支持されることで、開閉カバー95は回動可能と
している。この開閉カバー95は、記録装置10の内部への異物の入り込みを防止するも
のである。なお、開閉トレイ94が閉じ状態となるように起立させられるときには、開閉
カバー95も回動して起立させられる。
【0041】
ここで、記録用紙Pの先端側が、傾斜部93aよりも正面側に位置する場合、その記録
用紙Pは、内部空間ISへと導かれる。内部空間ISは、記録用紙Pのうち傾斜部93a
の正面側端部よりも正面側に飛び出した部分が自重によって垂れ下がるのを許容する空間
部分である。この内部空間ISの下方側には、上述した用紙ガイド部材71が位置してい
る。この用紙ガイド部材71に未だ用紙ガイド部材71に到達していない記録用紙Pが、
さらに記録装置10の内部に送り込まれて垂れ下がることにより、記録用紙Pの搬送方向
における先端側は用紙ガイド部材71に到達する。
【0042】
また、用紙ガイド部材71の上方側には、上方ガイド部材96が設けられている。上方
ガイド部材96は、記録用紙Pを上方側から内部に導くための部材である。この上方ガイ
ド部材96のうち、記録用紙Pをガイドする下側ガイド部96aは、背面側から正面側に
向かうにつれて上方から下方に向かうような傾斜角度に形成されている。本実施の形態で
は、上方ガイド部材96は、記録用紙Pを後述する可動部材110へ導くために、下側ガ
イド部96aの設置面に対する傾斜角度は、上述の傾斜部93aの設置面に対する傾斜角
度よりも大きく設けられている。
【0043】
なお、図1では、下側ガイド部96aに沿う直線と、トレイ基部93の傾斜部93aに
沿う直線とは、傾斜部93aよりも正面側において交差するものの、傾斜部93aよりも
背面側においては交差しない。それにより、上方ガイド部材96は、記録用紙Pの記録装
置10内への進行を妨げない配置となっている。
【0044】
ここで、上述の開閉トレイ94のガイド部94a、トレイ基部93の傾斜部93a、開
閉カバー95の下面部(図示省略)、上方ガイド部材96の下側ガイド部96aは、第1
給紙経路としての手差しガイド経路98を構成している。手差しガイド経路98によって
ガイドされた記録用紙Pがさらに搬送方向における下流側に進行すると、記録用紙Pは、
搬送駆動ローラー42と、搬送従動ローラー44との間でニップされる(挟み込まれる)

【0045】
<用紙ストック機構100について>
続いて、用紙ストック機構100について説明する。用紙ストック機構100は、手差
しガイド経路98を経て記録装置10の内部に差し込まれた記録用紙Pの先端を受け止め
ることにより、記録用紙Pを一旦ストックするための機構である。この用紙ストック機構
100は、可動部材110と、駆動機構120とを備えている。
【0046】
可動部材110には、図2に示すように、第1板状部111、第2板状部112および
第3板状部113が設けられていて、それらが第1板状部111、第2板状部112およ
び第3板状部113の順で、用紙ガイド部材71から正面側に向かって連なっている。第
1板状部111と第2板状部112、および第2板状部112と第3板状部113とは、
それぞれヒンジ114a,114bを介して接続されている。ここで、用紙ガイド部材7
1と第1板状部111とは接続されていないが、用紙ガイド部材71と第1板状部111
とは山折り可能に接続されている。また、第1板状部111と第2板状部112とは、ヒ
ンジ114aを介して谷折り可能に接続されている。さらに、第2板状部112と第3板
状部113とは、ヒンジ114bを介して山折り可能に接続されている。
【0047】
そして、可動部材110がこのような連結構成に設けられることで、可動部材110は
図2(A)に示すような阻止状態と、図2(B)に示すような解除状態と、の間を切り替
え可能となっている。詳述すると、可動部材110の解除状態では、記録用紙Pは、フロ
ント搬送経路70を介して下流側に良好に搬送される。一方、この解除状態では、手差し
ガイド経路98を介して送り込まれる記録用紙Pの先端側は、解除状態の可動部材110
に当接する。ここで、可動部材110の解除状態では、各板状部111〜113の上面か
ら構成される搬送面115は、各板状部111〜113の上面を略面一に設けるか、また
は記録用紙Pを送り込みを妨げない角度に設けられている。このとき、図2(B)では、
搬送面115は、背面側から正面側に向かうにつれて、上方側から緩やかな角度で下方に
向かう状態に設けられている。そのため、記録用紙Pの先端側が搬送面115に接触して
も、その搬送面115で記録用紙Pは係止されずに、そのまま下流側へとガイドされる。
【0048】
一方、図2(A)に示すような可動部材110の阻止状態では、当接部としての第2板
状部112の板面(以下、当接部112aとする)が、記録用紙Pの先端側が下流側へガ
イドされるのを妨げる角度となるように起立させられる。この第2板状部112の起立状
態における、設置面に対する傾斜角度は、記録用紙Pの下流側への進行を阻止するもので
あれば、どのような角度であっても良い。図2(A)では、第2板状部112は、その当
接部112aが手差しガイド経路98に対峙する角度配置となっていて、記録用紙Pの先
端側が第2板状部112の当接部112aに受け止められた場合に、摩擦力の作用によっ
て搬送方向の下流側に記録用紙Pが進行しないようになっている。
【0049】
なお、本実施の形態では、第1板状部111〜第3板状部113は、記録用紙Pの傾斜
の補正(スキュー解消)のために、その板面が搬送駆動ローラー42の回転軸(図示省略
)に対して、平行に設けられている。しかしながら、第1板状部111〜第3板状部11
3の全ての板面が、搬送駆動ローラー42の回転軸に対して平行に設けられる必要はなく
、少なくとも第2板状部112の板面(当接部112a)が、搬送駆動ローラー42の回
転軸に対して平行に設けられていれば良い。
【0050】
また、可動部材110の幅方向の端部側には、複数の支持軸(第1支持軸111s〜第
3支持軸113s)が設けられている。第1支持軸111sは、第1板状部111の側面
のうち用紙ガイド部材71側の部位に設けられている。また、第2支持軸112sは、第
2板状部112の側面のうち用紙ガイド部材71側の部位に設けられている。さらに、第
3支持軸113sは、第3板状部113のうち側面の中途部分に設けられている。第1支
持軸111sは、不図示の側方支持部材の孔部に挿入され、この第1支持軸111sを中
心として第1板状部111は円弧運動を可能としている。また、第2支持軸112sは、
カム部材121のガイド部分121aに摺接し、そのカム部材121の回転に伴って第2
支持軸112sは上下方向に移動する。また、第3支持軸113sは、不図示の側方支持
部材に存在する長孔に挿入されている。長孔の延伸方向を上下方向成分と前後方向成分と
に分ける場合、長孔の前後方向成分は、上下方向成分よりも大きく設けられている。
【0051】
このような第1〜第3支持軸111s〜113sが可動部材110の側面側に設けられ
ることにより、可動部材110の解除状態と阻止状態とを良好に切り替えることを可能と
している。
【0052】
また、図2および図3に示すように、駆動機構120は、カム部材121と、駆動モー
ター122と、駆動伝達手段123とを有している。カム部材121は、駆動モーター1
22の駆動力が駆動伝達手段123を介して伝えられることにより、回転させられる部材
である。このカム部材121には、ガイド部分121aが設けられている。ガイド部分1
21aは、その周方向に移動するにつれてカム部材121の回転中心121bに対する距
離が異なるように設定されている。それにより、カム部材121が回転する場合に、第2
支持軸112sを上下方向に移動させることが可能となっている。また、駆動モーター1
22は、駆動伝達手段123に駆動力を与えるものである。また、駆動伝達手段123は
、たとえばギヤやベルト等のような駆動力を伝達する部材によって構成される部分であり
、この駆動伝達手段を介して駆動モーター122の駆動力がカム部材121に伝達される

【0053】
ここで、専用の駆動モーター122を用いずに、搬送モーター41を用いて、カム部材
121を回転させるようにしても良い。この場合、搬送モーター41の駆動が、カム部材
121に伝達される駆動伝達状態と駆動が伝達されない駆動非伝達状態とを切り替えるト
リガー部を設けるようにしても良い。この場合、トリガー部が駆動伝達状態となる場合に
は、搬送モーター41の作動によってカム部材121が回転させられ、可動部材110を
阻止状態から解除状態に切り替えることが可能となる。なお、解除状態から阻止状態に切
り替える場合も、搬送モーター41の駆動を利用しても良いが、かかる解除状態から阻止
状態への切り替えは、バネ機構を利用して、バネ機構が備えるバネの付勢力を解除する等
によって可動部材110が阻止状態となるようにしても良い。逆に、解除状態から阻止状
態に切り替える場合に搬送モーター41の駆動を利用し、阻止状態から解除状態に切り替
える場合にバネ機構を利用しても良い。
【0054】
なお、図3に示すように、記録装置10は、上記の構成以外に、制御部130を有して
いる。制御部130は、上述した記録ヘッド50、搬送モーター41、キャリッジモータ
ー53、駆動モーター122等の駆動を司る。制御部130は、通信インターフェース1
31を備えていて、この通信インターフェース131を介して、コンピューターPSとの
間で通信を行うことを可能としている。
【0055】
<動作について>
以上のような構成を有する記録装置10のうち、手差しガイド経路98に記録用紙Pを
差し込む場合の動作について、以下に説明する。記録装置10の使用前の状態において、
手差し用開口部91が開閉トレイ94および開閉カバー95で覆われている状態(閉じ状
態)である場合、ユーザーは開閉トレイ94および開閉カバー95を回動させて、手差し
用開口部91が開閉トレイ94および開閉カバー95で覆われていない状態(開き状態)
へと切り替える。そして、手差し用開口部91を介して記録用紙Pを記録装置10の内部
に差し込み可能な状態とする。
【0056】
次に、開閉トレイ94のサポート部材97を記録用紙Pの幅に対応させて最適な位置に
セットした後に、記録用紙Pの先端を手差し用開口部91から差し込みつつ、その記録用
紙Pのうちガイド部94aに差し掛かる部分を、当該ガイド部94aに位置させる。その
後に、ユーザーが把持している記録用紙Pを、徐々に記録装置10の内部に差し込んでい
く。
【0057】
すると、記録用紙Pの先端は、トレイ基部93の上側を通り、さらには上方に位置する
上方ガイド部材96の下側を通って、さらに内部へ進行する。そして、記録用紙Pの先端
が、用紙ガイド部材71か、または可動部材110に到達する。なお、用紙ガイド部材7
1に記録用紙Pの先端が到達した場合には、その記録用紙Pの先端は、用紙ガイド部材7
1に従って下流側に移動する。それにより、記録用紙Pの先端は、可動部材110に到達
する。
【0058】
ここで、記録用紙Pの先端が可動部材110に到達する場合、その到達に先立って、可
動部材110は折り曲げられて、阻止状態となっている。阻止状態とするためには、上述
の開閉トレイ94および/または開閉カバー95を開き状態へと回動させたときに、その
回動を不図示のセンサーによって検出し、制御部130が駆動モーター122を駆動させ
て、可動部材110を阻止状態とするようにしても良い。また、不図示のセンサーによっ
て手差しガイド経路98における記録用紙Pの差し込みを検出し、制御部130が駆動モ
ーター122を駆動させて、可動部材110を阻止状態とするようにしても良い。
【0059】
そして、可動部材110の阻止状態において、記録用紙Pの先端は、第2板状部112
の当接部112aに衝突し、記録用紙Pの差し込みが阻止される。そのため、記録用紙P
を把持しているユーザーが、記録用紙Pを記録装置10の内部に押し込んでも、記録用紙
Pが内部に進行しなくなる。また、記録用紙Pの先端が当接部112aに衝突したときの
感触は、記録用紙Pを介してユーザーの手にも伝わる。
【0060】
以上のようにして、記録用紙Pが第2板状部112(当接部112a)によって受け止
められて、ユーザーが記録用紙Pから手を離しても、記録用紙Pの先端が第2板状部11
2(当接部112a)に受け止められる状態を継続可能となる。また、記録用紙Pが斜め
に(傾いて)差し込まれて、記録用紙Pの幅方向で記録用紙Pの先端の第2板状部112
(当接部112a)への到達タイミングが異なっていても、記録用紙Pの差し込みを継続
すると、記録用紙Pの先端では、その幅方向の全体が第2板状部112(当接部112a
)に当接する。それにより、記録用紙Pの傾きが補正される。
【0061】
そして、記録用紙Pが可動部材110によってストックされた状態において、その記録
用紙Pに対する記録が実際に実行される段階となると、駆動モーター122は、駆動伝達
手段123を介してカム部材121を回転させ、可動部材110を、その阻止状態から解
除状態へと切り替える。それにより、記録用紙Pの阻止状態が解除され、記録用紙Pは、
その先端側から搬送支持部材43に沿って下流側に進行する。そして、記録用紙Pは、搬
送駆動ローラー42と搬送従動ローラー44との圧接位置に到達し、記録用紙Pは、その
先端側から搬送駆動ローラー42と搬送従動ローラー44との間に挟み込まれる。以後は
、搬送駆動ローラー42の駆動によって記録用紙Pが下流側に送り込まれ、記録用紙Pに
対する記録が実行される。
【0062】
<効果>
以上のような構成の記録装置10によると、可動部材110が阻止状態となる場合、手
差し用開口部91から記録用紙Pを差し込むと、その記録用紙Pの先端が可動部材110
によって受け止められる。それにより、手差し用開口部91から記録用紙Pを内部に差し
込んだ場合の感触を良好に把握可能となる。
【0063】
また、本実施の形態では、可動部材110が阻止状態となると、記録用紙Pの先端が可
動部材110の当接部112aに当接する。ここで、当接部112aは搬送駆動ローラー
42の回転軸に対して平行に設けられているため、記録用紙Pの傾きを補正することが可
能となる。
【0064】
また、本実施の形態では、手差しガイド経路98とフロント搬送経路70とが合流する
箇所に可動部材110が設けられている。そのため、手差し搬送経路98とフロント搬送
経路70とでは、共に、可動部材110で記録用紙Pの傾きを補正することが可能となる

【0065】
さらに、本実施の形態では、フロント搬送経路70から記録用紙Pを供給する場合にお
いても、可動部材110を解除状態に切り替えれば、可動部材110を通過させて、記録
用紙Pを下流側の搬送手段に供給することが可能となる。すなわち、可動部材110の存
在が、フロント搬送経路70を介しての記録用紙Pの供給の妨げとなることがなく、フロ
ント搬送経路70からの良好な記録用紙Pの供給が可能となる。
【0066】
(第2の実施の形態)
以下、本発明の第2の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、本実施の
形態では、上述の第1の実施の形態と同様の構成については、その説明は省略する。
【0067】
<構成について>
図4に示すように、本実施の形態においては、手差しガイド機構90Aの構成が、上述
した第1の実施の形態における手差しガイド機構90の構成とは異なっている。以下、本
実施の形態における手差しガイド機構90Aに関する構成について、順次説明する。
【0068】
本実施の形態における手差しガイド機構90Aは、第1の実施の形態における上方ガイ
ド部材96に代えて、上方延伸部材901を有している。上方延伸部材901の背面側の
端部は、上述の上方ガイド部材96の背面側の端部と同様の位置に存在している。しかし
ながら、上方延伸部材901の正面側の端部は、上方ガイド部材96の正面側の端部より
も、搬送従動ローラー44に近接する部位に設けられている。
【0069】
また、上方延伸部材901には、用紙支持部材902が対向して設けられている。用紙
支持部材902は、上方延伸部材901の下方側に位置していて、トレイ基部93を通過
した記録用紙Pの記録装置10の内部への差し込みを、その下方側からガイドするもので
ある。この用紙支持部材902の背面側の端部は、トレイ基部93に近接する部位に設け
られている。ただし、トレイ基部93を通過した記録用紙Pは、用紙支持部材902に良
好に受け渡される必要がある。そのため、用紙支持部材902の背面側の端部は、トレイ
基部93を通過した記録用紙Pの先端が若干垂れ下がった場合でも当該記録用紙Pを受け
止めることが可能な位置に設けられている。
【0070】
また、用紙支持部材902の正面側の端部は、搬送従動ローラー44に近接している。
ここで、用紙支持部材902の正面側の端部には、後述する可動部材110Aが配置され
る。そのため、用紙支持部材902の正面側の端部は、搬送従動ローラー44に対して、
可動部材110Aが位置することが可能な隙間を有して設けられている。また、用紙支持
部材902の正面側の端部は、搬送支持部材43に対して間隔を有する状態で上方に位置
している。このため、用紙ガイド部材71から搬送支持部材43へと向かう記録用紙Pの
進行は、用紙支持部材902によって妨げられることはない。
【0071】
また、図4に示すように、用紙支持部材902の正面側の端部には、当接部としての可
動部材110Aが設けられている。可動部材110Aは、上述した第1の実施の形態にけ
る可動部材110と同様の機能を有する部材である。可動部材110Aには、記録用紙P
を受け止める板状部分(当接部116とする)が存在する。また、図5に示すように、こ
の可動部材110Aの側方側にはフランジ部117が設けられ、このフランジ部117の
うち用紙支持部材902側の部位には、回動軸118が設けられていて、この回動軸11
8を中心に可動部材110Aが回動可能に設けられている。また、回動軸118は、図示
を省略する側方支持部によって回動可能に設けられている。
【0072】
また、フランジ部117のうち用紙支持部材902から離間する側には、ガイドピン1
19が設けられている。ガイドピン119は、不図示の側方支持部に存在するガイド孔に
差し込まれる部分である。ガイド孔は、回動軸118を中心とする円弧状等の孔であり、
ガイドピン119はこのガイド孔に沿って移動する。なお、このガイドピン119は、回
動軸118よりも長く設けられていて、ガイド孔のうちフランジ部117が位置する側と
は反対側から突出するように設けられている。そして、このガイドピン119のうちガイ
ド孔から突出する部分は、カム部材121のガイド部分121aに摺接する。そのため、
カム部材121が回転すると、その回転に伴ってガイドピン119はガイド孔によってガ
イドされつつ上下方向に移動し、それにより可動部材110Aの阻止状態(図5(A)と
解除状態(図5(B)とが切り替えられる。
【0073】
なお、可動部材110Aを駆動させるための機構は、上述の第1の実施の形態における
ものと同様(駆動機構120)である。ここでは、ガイドピン119がカム部材121の
ガイド部分121aに摺接し、それによって可動部材110Aが可動させられる。
【0074】
ここで、図5(A)に示す可動部材110Aの阻止状態では、記録用紙Pの下流側への
進行を阻止する傾斜角度および配置に可動部材110Aが設けられる。本実施の形態では
、可動部材110Aの阻止状態では、可動部材110Aは解除状態から起立させられて、
記録用紙Pの先端側が可動部材110Aで受け止められる。それにより、記録用紙Pが搬
送方向の下流側に進行するのが阻止される。
【0075】
一方、上述の解除状態では、図5(B)に示すように、記録用紙Pが自重によって用紙
搬送機構40側に移動するのを妨げない傾斜角度に可動部材110Aが設けられる。図5
(B)に示すように、可動部材110Aの解除状態では、可動部材110Aの阻止状態と
比較して、設置面に対する傾斜角度は小さくなっている。これと共に、解除状態における
可動部材110Aは、阻止状態における可動部材110Aよりも下方に位置する状態とな
っている。そのため、解除状態では、仮に記録用紙Pの先端側が可動部材110Aに接触
しても、記録用紙Pは可動部材110Aでは係止されずに、そのまま下流側の用紙搬送機
構40へとガイドされる。
【0076】
<動作について>
以上のような手差しガイド機構90Aを有する記録装置10の動作について、以下に説
明する。なお、本実施の形態における動作に関しては、上述の第1の実施の形態における
ものと共通する部分については、適宜、その説明を省略する。
【0077】
記録用紙Pの先端が、トレイ基部93の上側を通った後には、記録用紙Pの先端側は、
用紙支持部材902の上方に位置しつつも上方延伸部材901の下側に位置する状態で、
用紙支持部材902の傾斜部902aに従って、下流側へと進行する。ここで、上述の第
1の実施の形態における場合と同様に、記録用紙Pの先端が可動部材110Aに到達する
場合、その到達に先立って、可動部材110Aは阻止状態となっている。このような阻止
状態とするために、上述の開閉トレイ94および/または開閉カバー95を開き状態へと
回動させたときにその回動を検出する不図示のセンサー、または手差しガイド経路98に
おける記録用紙Pの差し込みを検出する不図示のセンサーを用いて、制御部130が駆動
モーター122を駆動させて、可動部材110Aを阻止状態とするようにしても良い。
【0078】
そして、可動部材110Aの阻止状態においては、記録用紙Pの先端は、可動部材11
0Aに衝突し、記録用紙Pの差し込みが阻止される。そのため、記録用紙Pを把持してい
るユーザーが、記録用紙Pを記録装置10の内部に押し込んでも、記録用紙Pが内部に進
行しなくなる。また、記録用紙Pの先端が可動部材110Aに衝突したときの感触は、記
録用紙Pを介してユーザーの手にも伝わる。
【0079】
以上のようにして、記録用紙Pが可動部材110Aによって受け止められて、ユーザー
が記録用紙Pから手を離しても、記録用紙Pの先端が可動部材110Aに受け止められて
いる状態を継続可能となる。また、記録用紙Pが斜めに(傾いて)差し込まれて、記録用
紙Pの幅方向で記録用紙Pの先端の可動部材110A(当接部116)への到達タイミン
グが異なっていても、記録用紙Pの差し込みを継続すると、記録用紙Pの先端は、その幅
方向の全体が可動部材110A(当接部116)に当接する。それにより、記録用紙Pの
傾きが補正される。
【0080】
そして、記録用紙Pが可動部材110Aによってストックされた状態において、その記
録用紙Pに対する記録が実際に実行される段階となると、駆動モーター122は、駆動伝
達手段を介してカム部材121を回転させ、可動部材110Aを、阻止状態から解除状態
へと切り替える。それにより、記録用紙Pの阻止状態が解除され、記録用紙Pの先端側は
、用紙搬送機構40へ到達する。すると、記録用紙Pは、その先端側から搬送駆動ローラ
ー42と搬送従動ローラー44との間に挟み込まれる。以後は、搬送駆動ローラー42の
駆動によって記録用紙Pが下流側に送り込まれ、記録用紙Pに対する記録が実行される。
【0081】
<効果>
以上のような構成の記録装置10によると、手差し用開口部91から記録用紙Pを内部
に差し込んだ場合の感触を良好に把握可能となり、また記録用紙Pの傾きを補正すること
が可能となる、という第1の実施の形態の記録装置10の効果に加えて、以下のような効
果を有する。
【0082】
すなわち、可動部材110Aは、フロント搬送経路70よりも上方側に位置し、かつ手
差しガイド経路98のうち搬送方向における下流側に設けられているため、手差しガイド
経路98に記録用紙P媒体が存在する状態でも、可動部材110Aを阻止状態としておけ
ば、フロント搬送経路70から記録用紙Pを供給して、記録を実行することが可能となる
。それにより、手差しガイド経路98を介して記録用紙Pへの記録と、フロント搬送経路
70を介しての記録用紙Pへの記録とを区別することが可能となり、手差し用開口部91
から手差しガイド経路98を介して差し込まれる記録用紙Pに意図しない記録が行われる
のを防ぐことが可能となる。
【0083】
また、記録用紙Pへの意図しない記録を防ぐことにより、ユーザーは記録用紙Pへの記
録のやり直しをするリスクがなくなり、時間のロスを抑えると共に、記録用紙Pが無駄に
なるのを防ぐことで、余分なコストを削減可能となる。また、可動部材110Aを阻止状
態としておくことで、記録媒体を長時間置いておくことも可能となる。
【0084】
<5.変形例>
以上、本発明の一実施の形態について述べたが、本発明は、種々変形可能である。以下
、それについて述べる。
【0085】
(5−1)変形例その1
上述の各実施の形態においては、可動部材110,110Aは、板状の当接部112a
,116で記録用紙Pの先端を受け止めて、記録用紙Pの傾きを補正している。しかしな
がら、可動部材の当接部は板状でなくても良い。たとえば、記録装置10の幅方向に沿っ
て間欠的に配置される複数の突起の頂面にて記録用紙Pを受け止める構成としても、記録
用紙Pの傾きを良好に補正することができる。
【0086】
(5−2)変形例その2
また、上述の各実施の形態においては、可動部材110,110Aの代わりに、上述し
た可動部材110,110Aの阻止状態と同程度の角度配置で配置されるシャッター部材
を可動部材として用いるようにしても良い。この場合、シャッター部材が記録用紙Pを受
け止める位置と、その位置から完全に退避して記録用紙Pの進行を許容する位置との間で
出入するようにすれば、上述した可動部材110,110Aの機能を果たすことは勿論可
能である。
【0087】
(5−3)変形例その3
また、上述の各実施の形態における可動部材110,110Aの代わりに、用紙ガイド
部材71や用紙支持部材902に、記録用紙Pを吸引保持する吸引機構を設け、この吸引
機構を可動部材として用いるようにしても良い。この場合、吸引機構の吸引力を切り替え
るだけで、記録用紙Pの阻止状態と解除状態とを切り替えることが可能となる。
【0088】
(5−4)変形例その4
また、上述の各実施の形態では、カム部材121を用いて、可動部材110,110A
の阻止状態と解除状態との切り替えを行っている。しかしながら、たとえば第2の実施の
形態で説明したガイド孔を有する側方支持部材を用いると共に、このガイド孔の一端側(
たとえば上端側)にバネ等の付勢手段で付勢されつつも第2支持軸112sまたはガイド
ピン119が差し込まれる構成としても良い。この場合、アクチュエーターの駆動によっ
てバネの付勢力が作用する状態と作用しない状態とに切り替えれば、可動部材110,1
10Aの姿勢を容易に変更する構成とすることができる。
【0089】
(5−6)変形例その6
上述の実施の形態では、記録ヘッド50は、キャリッジ軸56に沿って移動するキャリ
ッジ51に設けられている。しかしながら、記録ヘッドは、たとえば記録用紙Pの幅方向
に沿って長手に設けられるラインヘッドであっても良い。
【0090】
(5−7)変形例その7
また、上述の実施の形態において、記録装置10の概念には、上述したインクジェット
式のプリンター以外に、レーザープリンターを含めることも可能である。すなわち、レー
ザープリンターに対しても、本発明を適用可能である。記録装置10の概念には、インク
以外の他の液体(液体そのものや、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状
体、ゲルのような流動性を有する材質を含む)を噴射したり噴射したりする流体噴射装置
を含むようにすることもでき、そのような流体噴射装置に対しても本発明を適用可能であ
る。そのようなものとしては、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)デ
ィスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)な
どの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ
製造に用いられる生体有機物を噴射する流体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料
となる液体を噴射する流体噴射装置等がある。
【0091】
(5−8)変形例その8
さらに、本発明の記録装置10の概念に含まれるものとしては、時計やカメラ等の精密
機械にピンポイントで潤滑油を噴射する流体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半
球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に
噴射する流体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング
液を噴射する流体噴射装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射
装置等がある。
【符号の説明】
【0092】
10…記録装置、20…フロント給紙機構、21…用紙カセット、22…ピックアップ
ローラー、24…アーム部材、25…揺動軸、26…分離部材、30…ガイドローラーユ
ニット、31…アシストローラー、32…中間ローラー、33…アシストローラー、40
…用紙搬送機構、41…搬送モーター(搬送駆動手段の一例に対応)、42…搬送駆動ロ
ーラー(搬送手段の一部の一例に対応)、43…搬送支持部材、44…搬送従動ローラー
(搬送手段の一部の一例に対応)、50…記録ヘッド、51…キャリッジ、52…キャリ
ッジ軸、53…キャリッジモーター、54…カートリッジ、60…用紙排出機構、61…
排出駆動ローラー、62…排出従動ローラー、70…フロント搬送経路(第2給紙経路の
一例に対応)、71a…搬送面、71…用紙ガイド部材、80…反転用搬送経路、81…
フレーム部材、82…回り込み部材、90,90A…手差しガイド機構、91…手差し用
開口部、92…手差しトレイ体、93…トレイ基部、93a…傾斜部、93b…端部、9
4…開閉トレイ、94a…ガイド部、94c…回動軸、95…開閉カバー、95a…回動
軸、96…上方ガイド部材、96a…下側ガイド部、97…サポート部材、98…手差し
ガイド経路(第1給紙経路の一例に対応)、100…用紙ストック機構、110,110
A…可動部材、111〜113…第1〜第3板状部、111s〜113s…第1〜第3支
持軸、112a,116…当接部、114a,114b…ヒンジ、115…搬送面、11
7…フランジ部、118…回動軸、119…ガイドピン、120…駆動機構、121…カ
ム部材、121a…ガイド部分、121b…回転中心、122…駆動モーター、123…
駆動伝達手段、130…制御部、131…通信インターフェース、901…上方延伸部材
、902…用紙支持部材、902a…傾斜部、131…通信I/F、IS…内部空間、P
…記録用紙(記録媒体の一例に対応)、PS…コンピューター、S1…紙端検出センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手差し用開口部から前記記録媒体を差し込む際に、その差し込みをガイドすることが可
能な第1給紙経路と、
前記第1給紙経路よりも前記記録媒体の搬送方向における下流側に設けられると共に、
搬送駆動手段の駆動によって駆動させられる搬送手段と、
前記搬送手段よりも前記搬送方向における上流側に設けられると共に、前記第1給紙経
路を介して供給される前記記録媒体の下流側の先端部を受け止めて当該記録媒体の下流側
への進行を阻止する阻止状態と、前記阻止状態を解除した解除状態とを切り替えることが
可能な可動部材と、
を具備することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項1記載の記録装置であって、
前記搬送手段は、前記搬送駆動手段によって駆動させられる搬送駆動ローラーと、この
搬送駆動ローラーに対して圧接し前記搬送駆動ローラーの駆動に従動させられる搬送従動
ローラーとを有すると共に、
前記可動部材には、前記搬送駆動ローラーの回転軸に対して平行に配置される当接部が
設けられていて、前記阻止状態では前記記録媒体の下流側の先端が前記当接部によって受
け止められる、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の記録装置であって、
前記第1給紙経路よりも下方側から前記可動部材を通って前記搬送手段へ前記記録媒体
を供給する第2給紙経路を備え、
前記第1給紙経路と前記第2給紙経路とが合流する箇所に可動部材が設けられているこ
とを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項3記載の記録装置であって、
前記可動部材は、可動部材駆動手段の駆動によって前記阻止状態と前記解除状態とが切
り替えられ、
前記可動部材駆動手段の駆動を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記第2給紙経路から前記記録媒体が供給される場合には、前記可動部
材が前記解除状態となるように前記可動部材駆動手段を制御する、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項1または2記載の記録装置であって、
前記第1給紙経路よりも下方側から前記可動部材を通って前記搬送手段へ前記記録媒体
を供給する第2給紙経路を備え、
前記可動部材は、可動部材駆動手段の駆動によって前記阻止状態と前記解除状態とが切
り替えられ、
前記可動部材は、前記第2給紙経路よりも上方側に位置し、かつ前記第1給紙経路のう
ち前記搬送方向における下流側に設けられ、
前記可動部材駆動手段の駆動を制御する制御部を備える、
ことを特徴とする記録装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−103827(P2013−103827A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250387(P2011−250387)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】