説明

記録装置

【課題】熱源の熱によって液体記録手段が温められることを抑制することが可能な記録装置を提供する。
【解決手段】インクジェット式プリンター11は、上流側から下流側に向かって搬送されるシートの搬送経路の途中位置に配置され、シートの表面にインクを付着させて表面印刷処理を施す液体記録ヘッドと、搬送経路において液体記録ヘッドと間隔を置いて配置された乾燥装置17と、乾燥装置17の熱が液体記録ヘッドに伝わることを抑制するための空気流を液体記録ヘッドと乾燥装置17との間に発生させる排気ファン72とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェット式プリンターなどの記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液体記録手段によってターゲットに液体を付着させて液体記録処理を施す記録装置として、インクジェット式プリンターが広く知られている。このようなプリンターとしては、従来、特許文献1に示すものが知られている。
【0003】
この特許文献1のプリンターでは、上流側から下流側に向かって搬送される用紙(ターゲット)に対して、プリントヘッド(液体記録手段)のノズルからインク(液体)を噴射して印刷を行い、さらにこの用紙における印刷された面(記録面)と反対側の面に裏面印字ユニットによって印字を行った後、下流側で乾燥装置(熱源)によって乾燥風(温風)を吹き付けて乾燥させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−179415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のプリンターでは、用紙の搬送経路におけるプリントヘッドと乾燥装置との間に、裏面印字ユニットが配置されているものの、乾燥風を遮るものがないため、乾燥装置から吹き出された乾燥風(温風)が用紙の搬送経路に沿ってプリントヘッドへ流れてしまう。この結果、プリントヘッドが乾燥風によって温められるため、ノズルから噴射されるインクの噴射状態が変わってしまい、ターゲットの印刷品質が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、熱源の熱によって液体記録手段が温められることを抑制することが可能な記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の記録装置は、上流側から下流側に向かって搬送されるターゲットの搬送経路の途中位置に配置され、前記ターゲットに液体を付着させて液体記録処理を施す液体記録手段と、前記搬送経路において前記液体記録手段と間隔を置いて配置された熱源と、前記熱源の熱が前記液体記録手段に伝わることを抑制するための空気流を前記液体記録手段と前記熱源との間に発生させる空気流発生手段とを備えた。
【0008】
この発明によれば、空気流発生手段により、熱源の熱が液体記録手段に伝わることを抑制するための空気流を、液体記録手段と熱源との間に発生させることで、液体記録手段が熱源の熱によって温められることを抑制することが可能となる。
【0009】
本発明の記録装置において、前記空気流発生手段は、前記ターゲットの搬送方向と直交する方向における前記搬送経路の外側に配置されて前記搬送経路における前記液体記録手段と前記熱源との間の空気を前記搬送経路外へ排出する排出手段である。
【0010】
この発明によれば、搬送経路における液体記録手段と熱源との間にあって熱源によって温められて搬送経路に沿って液体記録手段へ流れる空気を、排出手段によって搬送経路外へ排出することが可能となる。
【0011】
本発明の記録装置において、前記搬送経路における前記熱源と前記液体記録手段との間には、前記ターゲットにおける前記液体記録処理が施される面である記録面を保持するとともに、前記記録面と反対側の面に対して衝打による衝打記録処理を施す場合に該衝打の衝撃を前記ターゲット越しに受ける被衝打面を有する保持部材と、前記保持部材を覆うとともに前記ターゲットの搬送方向における前記熱源側に第1開口部を有するカバー部材とが設けられ、前記カバー部材における前記ターゲットの搬送方向と直交する方向の両端部における少なくとも前記排出手段と対応する側の端部には、第2開口部が設けられている。
【0012】
この発明によれば、熱源によって温められた空気は、第1開口部からカバー部材内に流れ込んで保持部材を温めた後、第2開口部からカバー部材外へ流れ出て、排出手段によって排出される。このため、熱源によって温められた空気によって保持部材を温めることができるととともに、該温められた空気が液体記録手段へ流れることを抑制することが可能となる。
【0013】
本発明の記録装置は、前記排出手段によって前記搬送経路外へ排出される空気を外部へ導く排気ダクトを備え、前記排気ダクトは、前記排出手段から前記液体記録手段に対して遠ざかる方向に延びている。
【0014】
この発明によれば、排気ダクトにより、熱源によって温められた空気を液体記録手段に対して確実に遠ざけることが可能となる。
本発明の記録装置において、前記熱源は、前記液体記録手段による液体記録処理が施された前記ターゲットに加熱した空気を吹き付けて乾燥させる乾燥手段であり、前記排気ダクトは、前記ターゲットの搬送方向と直交する方向において、前記乾燥手段と隣り合うように配置されている。
【0015】
この発明によれば、乾燥手段によって温められた空気が排気ダクト内を流れることで、排気ダクトが温められるとともに、この温められた排気ダクトの熱の一部が乾燥手段に戻るため、乾燥手段の乾燥効率を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態におけるインクジェット式プリンターを示す側面模式図。
【図2】同プリンターにおける保持ユニットとその周辺を示す後側からの斜視図。
【図3】同プリンターにおける乾燥装置を省略したときの保持ユニットとその周辺を示す前側からの斜視図。
【図4】同保持ユニットの正面図。
【図5】図2の要部拡大斜視図。
【図6】同プリンターにおける保持ユニットとその周辺を示す側面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の記録装置をインクジェット式プリンターに具体化した一実施形態について、図面に従って説明する。また、以下の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は各図中に矢印で示す前後方向、左右方向、上下方向をそれぞれ示すものとする。なお、図面中の上方向、右方向及び前方向を示す矢印において、「○」の中に「・」が記載されたもの(矢の先端を前から見た図)は紙面の裏から表に向かう矢印を意味するものとする。
【0018】
図1に示すように、記録装置としてのインクジェット式プリンター11は、略直方体状をなす本体ケース12を備えている。本体ケース12の前壁には、本体ケース12の内外を連通する排紙口12aと、排紙口12aから排出された印刷処理後のシートCSを載置可能な略水平板状の排紙部12bとが設けられている。本体ケース12内の後端下部には、長尺状のシートST(例えば、連続紙)がロール状に巻回されてなるロール体RSが取着される給紙部13が設けられている。
【0019】
また、本体ケース12内には、給紙部13から排紙部12bに向かって延びる搬送経路に沿ってシートSTを搬送する搬送機構14が備えられている。また、本体ケース12内には、搬送経路の途中でシートSTの表面に対して液体としてのインクを噴射して付着させる液体記録処理としての表面印刷処理を施す表面記録部15と、表面印刷処理後のシートSTを所定長さのカットシートCS(単票紙)に切断するカッター16とが設けられている。
【0020】
シートSTの搬送経路におけるカッター16の下流側には、カットシートCSにおける表面印刷処理が施された面である記録面(表面)と反対側の面(裏面)に、衝打によって印字する衝打記録処理としての裏面印刷処理を施す裏面記録部20が設けられている。また、シートSTの搬送経路における裏面記録部20の下流側には、カットシートCSにおける表面印刷処理が施された面である記録面(表面)に温風(加熱した空気)を吹き付けてインクを乾燥させる乾燥手段(熱源)としての乾燥装置17が、搬送経路に沿って裏面記録部20と隣り合うように設けられている。すなわち、乾燥装置17は、シートCSの搬送経路において表面記録部15と間隔を置いて配置されている。
【0021】
さらに、シートSTの搬送経路における乾燥装置17の下流側には、カットシートCSのカール(巻きぐせ)を矯正するカール矯正機構18が設けられている。このカール矯正機構18は、カール矯正機能の他に搬送機能も備えるとともに、搬送機構14の一部を構成している。なお、本実施形態では、シートSTとカットシートCSとによりターゲットが構成されている。
【0022】
図1に示すように、給紙部13は、ロール体RSを回転可能に支持する回転軸19と、回転軸19を回転させる給送モーター(図示略)とを備えている。そして、給送モーターの駆動に伴って回転軸19が図1における反時計方向に回転することにより、ロール体RSからシートSTがシートSTの搬送経路の下流側に向かって繰り出される。
【0023】
搬送機構14は、シートST,CSを搬送経路の上流側から下流側に向かって搬送する回転駆動可能な複数の搬送ローラー21〜28と、搬送ローラー21〜28を回転駆動させるための駆動源となる搬送モーター(図示略)と、各搬送ローラー21〜27との間でシートST,CSを挟持可能な従動ローラー31〜37とをそれぞれ備えている。
【0024】
そして、搬送モーター(図示略)による各搬送ローラー21〜27の回転駆動に伴って各従動ローラー31〜37が従動回転することにより、シートST,CSが搬送経路の上流側から下流側に向かって搬送される。なお、搬送ローラー26と対応する位置には、搬送経路の一部を構成するとともに、シートST,CSを支持可能な略平板状の搬送経路形成部材41が配置されている。
【0025】
搬送機構14の一部を構成するカール矯正機構18は、大径の搬送ローラー28と、搬送ローラー28に対して搬送経路の下流側に配置された小径の搬送ローラー27と従動ローラー37とからなるデカールローラー対DRとを備えている。そして、カール矯正機構18は、印刷中において、デカールローラー対DRを構成する従動ローラー37を、カールの向きと逆向きに湾曲させる矯正力をシートCSに付与する矯正位置に移動させることにより、シートCSにカール矯正処理を施す。
【0026】
なお、以下の説明において、互いに対をなす、搬送ローラー23と従動ローラー33を搬送ローラー対R1、搬送ローラー24と従動ローラー34を搬送ローラー対R2、搬送ローラー25と従動ローラー35を搬送ローラー対R3、搬送ローラー26と従動ローラー36を搬送ローラー対R4という。
【0027】
表面記録部15は、本体ケース12内における搬送経路の上側に、シートST,CSの搬送方向(前方向)と直交する幅方向(左右方向)に沿って水平に延びる状態で架設されたガイド軸45と、ガイド軸45の長手方向(幅方向)に沿って移動可能な状態でガイド軸45に支持されたキャリッジ46とを備えている。
【0028】
キャリッジ46には、搬送経路に対向する状態で液体記録手段としての液体記録ヘッド47が取り付けられている。液体記録ヘッド47には、インクを噴射する複数のノズル47aが設けられている。したがって、キャリッジ46がガイド軸45に案内されつつ走査方向(左右方向)に沿って往復移動することにより、キャリッジ46とともに液体記録ヘッド47が走査方向(シートCSの幅方向)に往復移動する。
【0029】
また、表面記録部15は、液体記録ヘッド47と搬送経路を挟んで対向する位置に配置された支持台48を備えている。支持台48は、その上面に開口する複数の吸引孔(図示略)を通じてシートSTを吸着する吸引機構49を内蔵している。そして、支持台48に支持されたシートSTの表面(図1では上面)に、液体記録ヘッド47のノズル47aからインクが噴射されることで、シートSTにインクを付着させる表面印刷処理が施される。
【0030】
詳しくは、インクジェット式プリンター11は、ホスト装置(図示略)から印刷ジョブデータを受信する。そして、インクジェット式プリンター11が備える制御装置100は、印刷ジョブデータを入力すると、その中に含まれる印刷データを、液体記録ヘッド47の1走査分に相当する記録データごとに分割する。
【0031】
キャリッジ46が1走査する途中において液体記録ヘッド47は記録データに基づき選択されたノズル47aからインクを噴射する表面印刷処理を行う。そして、1走査毎の表面印刷処理の合間に、シートSTが次の表面印刷処理位置まで搬送される。
【0032】
すなわち、表面記録部15では、幅方向が長手方向となる帯状の画像の形成と、シートSTの間欠的な搬送とが交互に繰り返されることにより、シートST上に印刷ジョブに基づく画像が形成される。なお、表面記録部15からカール矯正機構18に至る搬送経路において、支持台48の上面と搬送経路形成部材41の上面とを含む仮想平面が、印刷中のシートST,CSを搬送する搬送面となる。
【0033】
また、カッター16によるシートSTの切断は、搬送機構14によるシートSTの搬送を停止させた状態で行われる。カッター16は、搬送ローラー対R1,R2に両側を挟持されたシート部分の略中央を幅方向(左右方向)に作動して切断し、シートSTからカットシートCSを切り離す。なお、本実施形態では、表面印刷処理の過程でシートSTの搬送を停止したタイミングで、シートSTの切断を行う。
【0034】
乾燥装置17は、搬送方向において搬送ローラー対R3,R4の間に挟まれた領域の上方位置に配置されている。乾燥装置17は、搬送経路形成部材41の上面に支持されたシートCSの表面(記録面)に対して、下面に形成された吹出口17aから温風を吹き付けることで、シートCSのインクを乾燥させる乾燥処理を施す。
【0035】
この場合、乾燥装置17は幅方向(左右方向)にシートCSの最大幅に対応する長さを有するとともに、吹出口17aは乾燥装置17の長手方向(幅方向)に沿ってシートCSの幅方向全域にわたる長さで延びる略矩形状に開口している。したがって、乾燥装置17は、シートCSの幅方向の全域に吹出口17aから温風を吹き付けることが可能となっている。そして、乾燥装置17は、インクジェット式プリンター11の稼働状態を統括制御する制御装置100によって温度制御及び送風制御が行われる。
【0036】
次に、裏面記録部20の構成について詳述する。
図1に示すように、裏面記録部20は、搬送経路におけるカッター16と乾燥装置17との間に位置している。裏面記録部20は、搬送経路の上側に配置されてシートCSの表面を保持する保持ユニット50と、搬送経路を挟んで保持ユニット50と対向するように配置された衝打記録ヘッド51とを備えている。
【0037】
衝打記録ヘッド51は、シートCSの裏面(下面)にインクリボン(図示略)を押し付けながら衝打してインクドットを形成する裏面印刷処理を施す所謂ドットインパクト方式のヘッドとして構成されている。
【0038】
図2〜図4に示すように、保持ユニット50は、左右方向に延びるように架設された平板状の梁部材60と、梁部材60における左右方向の中央部に取着された2つの円柱状をなす金属製の保持部材61と、梁部材60及び各保持部材61を上側から覆う合成樹脂製のカバー部材62とを備えている。
【0039】
梁部材60の左右の両端部は、それぞれ上方に向かって直角に屈曲された後、さらに左右方向における外側に向かってそれぞれ直角に屈曲されている。梁部材60の前端縁部における各保持部材61よりも左右方向の外側には、左右に対をなすようにガイドローラー63が回転可能に支持されている。すなわち、各ガイドローラー63は、梁部材60の前端縁部に設けられた軸受部60aに回転可能に支持された回転軸63aと、回転軸63aに等間隔で回転可能に支持された4つのコロ63bとをそれぞれ備えている。
【0040】
そして、各ガイドローラー63は、搬送されるシートCSとの接触によって回転することで、裏面印刷処理後のシートCSとの間に発生する摩擦力を低減してシートCSを保護するとともに、該シートCSの上側への反りを抑えながら該シートCSを搬送ローラー対R3へ精度よく導く。
【0041】
図4及び図6に示すように、各保持部材61は、梁部材60に対して左右方向に並ぶとともに前後方向に若干ずれるように配置されている。この場合、各保持部材61は、下端部が梁部材60の下面よりも下側に突出するように、梁部材60に形成された貫通孔(図示略)にそれぞれ挿通されている。
【0042】
さらに、梁部材60上には、各保持部材61が挿通されるとともに各保持部材61の高さ位置(上下方向の位置)を調節可能な円環状の調節部材64がそれぞれ固着されている。各調節部材64の周壁には、左右方向に延びるねじ孔65が形成されている。ねじ孔65には、ねじ66が螺合されている。
【0043】
そして、ねじ66を締めることで調節部材64が保持部材61の上下方向の移動を規制する一方、ねじ66を緩めることで調節部材64が保持部材61の上下方向の移動を許容する。すなわち、各調節部材64は、各保持部材61を所望の高さに調節可能にそれぞれ支持している。
【0044】
各保持部材61の下面は、シートCSの表面を保持した状態でシートCSの裏面に対して衝打記録ヘッド51による裏面印刷処理を施す場合に、衝打記録ヘッド51の衝打の衝撃をシートCS越しに受ける被衝打面61aとされている。
【0045】
梁部材60の下面における各保持部材61と対応する位置には、搬送経路に沿って搬送されるシートCSを被衝打面61aに案内するガイドフレーム67が各保持部材61の下端部を囲うようにそれぞれ設けられている。各ガイドフレーム67には、各保持部材61の被衝打面61aを下側に露出させるための円形の貫通孔(図示略)がそれぞれ形成されている。
【0046】
カバー部材62は、梁部材60の上側全体を覆うとともに、梁部材60と対応する形状をなしている。そして、カバー部材62が梁部材60の上側全体を覆った状態では、カバー部材62と梁部材60との間に、左右方向に延びる通路Tが形成される。また、カバー部材62における各保持部材61と対応する左右方向の中央部には、各保持部材61を収容するための収容部69が設けられている。
【0047】
収容部69は、下側(梁部材60側)が開口する略四角箱状をなすとともに、カバー部材62における収容部69以外の部位に比べて盛り上がるように形成されている。収容部69の内部空間は、通路Tと連通している。収容部69の前壁69a及び後壁69bは前後方向において上側に向かうほど互いに近づくようにそれぞれ傾斜するとともに、収容部69の上壁69cはほぼ水平になっている。
【0048】
カバー部材62の収容部69における乾燥装置17側の位置には、収容部69の内外を連通するとともに左右方向に互いに等間隔で並ぶ複数(本実施形態では4つ)の第1開口部70が形成されている。各第1開口部70は、前後方向において各保持部材61と対応するように配置されている。各第1開口部70は、収容部69の前壁69aにおける上下方向の中央部から上壁69cの前端部にかけて延びる略矩形状をなしている。さらに、各第1開口部70は、上方に向かうほど左右方向の幅が徐々に大きくなっている。
【0049】
図2、図5及び図6に示すように、カバー部材62の左右両端部には、前後一対の第2開口部71がそれぞれ形成されている。すなわち、カバー部材62の左右両端部には、上側に開口する第2開口部71が2つずつ形成されている。各第2開口部71は、通路Tと連通している。
【0050】
図2、図3及び図5に示すように、本体ケース12内において、左右方向におけるカバー部材62の両外側には、回転軸が左右方向に延びる排出手段(空気流発生手段)としての軸流式の排気ファン72がそれぞれ配置されている。各排気ファン72は、カバー部材62よりも少し高い位置であって、対応する各第2開口部71の近傍にそれぞれ配置されている。左右方向における各排気ファン72の外側には、前後方向に延びる略直方体状の排気ダクト73がそれぞれ配置されている。
【0051】
各排気ファン72は、対応する各排気ダクト73の後端部における内側面に形成された上流側開口部(図示略)にそれぞれ取着されている。各排気ダクト73は、各排気ファン72から液体記録ヘッド47(図1参照)に対して遠ざかる方向である前方に向かって真っ直ぐに延びるとともに、その前端の下流側開口部(図示略)は本体ケース12の前壁に当接している。
【0052】
この場合、各排気ダクト73は、左右方向において乾燥装置17と隣り合うように延びている。また、本体ケース12の前壁における各排気ダクト73の前端の下流側開口部(図示略)と対応する位置には、略矩形状に配列された多数のスリット74が形成されている。
【0053】
そして、各排気ファン72が駆動されると、カバー部材62上の領域では、左右方向の中央部から左右両端部側である各排気ファン72に向かって流れる空気流が発生する。このため、シートCS(図1参照)の搬送経路における乾燥装置17と液体記録ヘッド47(図1参照)との間の空気が、各排気ファン72によって吸引されて搬送経路外へ排出される。そして、各排気ファン72によって吸引されて搬送経路上から搬送経路外へ排出された空気は、各排気ダクト73内を流れて本体ケース12の前壁の各スリット74から本体ケース12の外部へと排出される。
【0054】
次に、インクジェット式プリンター11の作用について説明する。
さて、給紙部13のロール体RSから搬送経路の下流側に向かって繰り出されたシートST(連続紙)は、支持台48上で液体記録ヘッド47により表面印刷処理が施される。表面印刷処理後のシートSTは、搬送ローラー対R1によって搬送経路の下流側に搬送され、カッター16によって順次シートCS(単票紙)に切断される。切断後のシートCSは、搬送ローラー対R2によって裏面記録部20へ搬送される。
【0055】
裏面記録部20へ搬送されたシートCSは、表面(記録面)が各保持部材61の被衝打面61aによって保持されるとともに、裏面に衝打記録ヘッド51による衝打によって裏面印刷処理が施される。このとき、衝打記録ヘッド51による衝打の衝撃は、各保持部材61の被衝打面61aによってシートCS越しに受け止められる。そして、裏面印刷処理後のシートCSは、搬送ローラー対R3によって乾燥装置17の下側の領域である乾燥領域へ搬送される。
【0056】
この乾燥領域へ搬送されたシートCSは、搬送経路形成部材41の上面上で乾燥装置17の吹出口17aから吹き出される温風を受けて乾燥される。乾燥されたシートCSは、搬送ローラー対R4によって搬送経路の下流側に搬送され、カール矯正機構18によってカールが矯正された後、排紙口12aから排紙部12b上に排出される。
【0057】
このとき、乾燥装置17の吹出口17aから吹き出される温風の一部がシートCSの搬送経路に沿って上流側である後側に向かって流れる。そして、この温風は、図6に矢印で示すように、カバー部材62上へ流れてから各排気ファン72へ流れたり、各第1開口部70からカバー部材62の収容部69内に流れ込んだり、カバー部材62と梁部材60との隙間から通路Tへ流れ込んだり、梁部材60の下面とシートCSとの隙間からカバー部材62の後側へ回り込んでから各排気ファン72へ流れたりする。
【0058】
そして、各第1開口部70からカバー部材62の収容部69内に流れ込んだ温風及びカバー部材62と梁部材60との隙間から通路Tへ流れ込んだ温風は、通路T内を左右に流れて左右の各第2開口部71から左右の各排気ファン72へと流れる。このとき、各第1開口部70から収容部69内に流れ込んだ温風の熱によって各保持部材61が温められるため、結果として被衝打面61aが温められて該被衝打面61aの温度が上昇する。
【0059】
そして、被衝打面61aが温められると、表面記録部15で表面印刷処理がなされて表面がインクで湿った状態のシートCSが、裏面記録部20において各保持部材61の被衝打面61aの熱によって乾きやすくなる。すると、被衝打面61aとシートCSの表面との摩擦力が低減されるため、裏面記録部20においてシートCSが円滑に搬送される。
【0060】
引き続き、各排気ファン72へ流れた温風は、左右の各排気ダクト73内をそれぞれ流れて本体ケース12の前壁の各スリット74からそれぞれ本体ケース12の外部へと排出される。このとき、各排気ダクト73は、温風が該各排気ダクト73内を流れることで、温められる。そして、この温められた排気ダクト73の熱の一部が乾燥装置17に戻るため、乾燥装置17による乾燥効率が向上する。
【0061】
このように、乾燥装置17の吹出口17aから吹き出される温風の一部がシートCSの搬送経路に沿って上流側である後側に向かって流れた場合でも、こうした温風は、各排気ファン72へと流れるため、液体記録ヘッド47まで流れることが抑制される。このため、液体記録ヘッド47が温風によって温められることが抑制されるので、温風の熱による液体記録ヘッド47内のインクの粘性などへの影響も抑制される。したがって、液体記録ヘッド47のノズル47aからのインクの噴射条件が維持されるので、シートSTの表面に対する表面印刷処理の品質が確保される。
【0062】
因みに、液体記録ヘッド47が温風によって温められると、液体記録ヘッド47内のインクの粘性などに影響がでてしまい、ノズル47aからのインクの噴射条件が変化する。この結果、シートSTの表面に対する表面印刷処理の品質が低下してしまうこととなる。
【0063】
以上、詳述した実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)各排気ファン72により、乾燥装置17の熱が液体記録ヘッド47に伝わることを抑制するための空気流を液体記録ヘッド47と乾燥装置17との間に発生させることができる。すなわち、各排気ファン72により、搬送経路における液体記録ヘッド47と乾燥装置17との間にあって乾燥装置17の吹出口17aから搬送経路に沿って液体記録ヘッド47へ流れる空気(温風)を搬送経路外へ排出することができる。このため、液体記録ヘッド47が乾燥装置17の吹出口17aから吹き出される温風の熱によって温められることを抑制することができる。この結果、液体記録ヘッド47のノズル47aからのインクの噴射条件を維持することができるので、シートSTの表面に対する表面印刷処理の品質を確保することができる。
【0064】
(2)カバー部材62は、各第1開口部70及び各第2開口部71を有している。このため、乾燥装置17の吹出口17aから吹き出された温風の一部は、各第1開口部70からカバー部材62内に流れ込んで各保持部材61を温めた後、各第2開口部71からカバー部材62外へ流れ出て、各排気ファン72によって排出される。したがって、乾燥装置17の吹出口17aから吹き出された温風によって各保持部材61を温めることができるととともに、該温風が液体記録ヘッド47へ流れることを抑制することができる。
【0065】
なお、各保持部材61を温めると、表面記録部15で表面印刷処理がなされてインクで湿った状態のシートCSの表面(記録面)が各保持部材61によって保持された際に該各保持部材61の熱によって乾き易くなるため、該シートCSの表面と各保持部材61の被衝打面61aとの間に発生する摩擦力を低減することができる。このため、表面記録部15で表面印刷処理が施されたシートCSを裏面記録部20において円滑に搬送することができる。
【0066】
(3)各排気ダクト73は、各排気ファン72から液体記録ヘッド47に対して遠ざかる方向である前方に向かって延びているため、各排気ファン72によって排出される温風を液体記録ヘッド47に対して確実に遠ざけることができる。
【0067】
(4)各排気ダクト73は、シートCSの搬送方向と直交する方向である左右方向において、乾燥装置17と隣り合うように配置されている。このため、乾燥装置17の吹出口17aから吹き出された温風が各排気ダクト73内を流れることで、該各排気ダクト73が温められるとともに、この温められた排気ダクト73の熱の一部が乾燥装置17に戻るため、乾燥装置17の乾燥効率を向上することができる。
【0068】
(5)各保持部材61は、シートCSの表面(記録面)を保持した状態でシートCSの裏面に対して衝打による裏面印刷処理を施す場合に、該衝打の衝撃をシートCS越しに受ける被衝打面61aを備えている。このため、シートCSに裏面印刷処理を施す際の衝打記録ヘッド51による衝打の衝撃を各保持部材61の被衝打面61aで受けることができる。したがって、シートCSの裏面に対して衝打による裏面印刷処理を好適に行うことができる。
(変更例)
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
【0069】
・各排気ダクト73は、必ずしもシートCSの搬送方向と直交する方向において、乾燥装置17と隣り合うように配置する必要はない。
・各排気ダクト73は省略してもよい。この場合、搬送経路における液体記録ヘッド47と乾燥装置17との間にあって乾燥装置17の吹出口17aから搬送経路に沿って液体記録ヘッド47へ流れる空気(温風)が、各排気ファン72によって直接本体ケース12外へ排出されるように構成する必要がある。
【0070】
・各排気ダクト73は、各排気ファン72から必ずしも液体記録ヘッド47に対して遠ざかる方向に向かって延びている必要はない。
・2つの排気ファン72のうちいずれか一方を省略してもよい。
【0071】
・カバー部材62の左右両側の第2開口部71のうち、いずれか一方側の第2開口部71を省略してもよい。
・裏面記録部20は、省略してもよい。
【0072】
・各排気ファン72の代わりに、搬送経路における液体記録ヘッド47と乾燥装置17との間にあって乾燥装置17の吹出口17aから搬送経路に沿って液体記録ヘッド47へ流れる空気(温風)が搬送経路外へ排出される空気流を発生させる送風機を、空気流発生手段として用いてもよい。この場合、乾燥装置17の吹出口17aから搬送経路に沿って液体記録ヘッド47へ流れようとする温風に、送風機で発生させた空気流をぶつけることで、温風が液体記録ヘッド47へ流れることを阻止する。
【0073】
・各排気ファン72の代わりに、乾燥装置17からの温風が液体記録ヘッド47へ流れることを抑制(規制)するように設けられたエアーカーテンを空気流発生手段として用いてもよい。この場合、乾燥装置17と液体記録ヘッド47とがエアーカーテンによって隔絶される。
【0074】
・乾燥装置17は、温風でシートCSを乾燥させるタイプのものでなく、ヒーターの輻射熱でシートCSを乾燥させるタイプのものであってもよい。
・乾燥装置17以外のものを熱源として用いてもよい。すなわち、インクジェット式プリンター11に紫外線硬化型インクを用いた場合には、乾燥装置17の代わりに、紫外線照射装置が用いられる。この場合、紫外線照射装置は高温になる高圧紫外線ランプ(例えば、高圧水銀紫外線ランプやメタルハライド紫外線ランプ)を備えるため、該高圧紫外線ランプが熱源として機能する。
【0075】
・各保持部材61は、必ずしも被衝打面61aを備える必要はない。すなわち、各保持部材61は、例えば、搬送されるシートCSの表面(記録面)側をガイドするガイド部材であってもよい。
【0076】
・ターゲットを構成するシートST及びカットシートCSは、プラスチックフィルムや金属箔などであってもよい。
・上記実施形態では、記録装置をインクジェット式プリンター11に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置を採用してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
11…記録装置としてのインクジェット式プリンター、17…乾燥手段(熱源)としての乾燥装置、47…液体記録手段としての液体記録ヘッド、61…保持部材、61a…被衝打面、62…カバー部材、70…第1開口部、71…第2開口部、72…排出手段(空気流発生手段)としての排気ファン、73…排気ダクト、ST…ターゲットとしてのシート、CS…ターゲットとしてのカットシート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側から下流側に向かって搬送されるターゲットの搬送経路の途中位置に配置され、前記ターゲットに液体を付着させて液体記録処理を施す液体記録手段と、
前記搬送経路において前記液体記録手段と間隔を置いて配置された熱源と、
前記熱源の熱が前記液体記録手段に伝わることを抑制するための空気流を前記液体記録手段と前記熱源との間に発生させる空気流発生手段と
を備えたことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記空気流発生手段は、前記ターゲットの搬送方向と直交する方向における前記搬送経路の外側に配置されて前記搬送経路における前記液体記録手段と前記熱源との間の空気を前記搬送経路外へ排出する排出手段であることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記搬送経路における前記熱源と前記液体記録手段との間には、
前記ターゲットにおける前記液体記録処理が施される面である記録面を保持するとともに、前記記録面と反対側の面に対して衝打による衝打記録処理を施す場合に該衝打の衝撃を前記ターゲット越しに受ける被衝打面を有する保持部材と、
前記保持部材を覆うとともに前記ターゲットの搬送方向における前記熱源側に第1開口部を有するカバー部材と
が設けられ、
前記カバー部材における前記ターゲットの搬送方向と直交する方向の両端部における少なくとも前記排出手段と対応する側の端部には、第2開口部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記排出手段によって前記搬送経路外へ排出される空気を外部へ導く排気ダクトを備え、
前記排気ダクトは、前記排出手段から前記液体記録手段に対して遠ざかる方向に延びていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記熱源は、前記液体記録手段による液体記録処理が施された前記ターゲットに加熱した空気を吹き付けて乾燥させる乾燥手段であり、
前記排気ダクトは、前記ターゲットの搬送方向と直交する方向において、前記乾燥手段と隣り合うように配置されていることを特徴とする請求項4に記載の記録装置。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図2】
image rotate