説明

記録/再生装置およびその駆動方法ならびにディスクカートリッジ

【課題】平板状の安定化板の安定化効果を確実に引き出し、低速回転域から高速回転域までの広い速度範囲において、可撓性を有する記録ディスク全面の安定化を可能にする。
【解決手段】光ディスク1の面振れを空気力学的に抑制する平面状の安定化板30と、スピンドルモータ3が固定され、上下動することによってスピンドル3aのディスク回転軸方向の位置を調整するための移動ステージ40とを具備し、移動ステージ40により、スピンドル3aと安定化板30とのディスク回転軸方向の相対距離を調整し、安定化板30を光ディスク1に対して適正に作用させて、光ディスク1の面振れを安定化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性を有する記録ディスクに対して記録および/または再生処理を行う記録/再生装置とその駆動方法、および記録ディスクを収納するディスクカートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビ放送のデジタル化が始まるなど、大容量のデジタルデータを記録することが情報記録媒体に求められている。例えば、光ディスクの分野においては、記録/再生のために光ディスクに集光される光スポット径を小さくすることが、高密度化のための基本的な方法の一つに挙げられる(以下、光ディスクを代表として説明するが、本発明が対象とする記録/再生装置に用いられる記録ディスクは、相変化メモリ,光磁気メモリ,ホログラムメモリなどのディスク状の記録ディスクで活用するものすべてを対象にし、特に光ディスクに限定するものではない)。
【0003】
このため、光ディスクの高密度化においては、記録/再生のために用いられる光の波長を短く、かつ対物レンズの開口数NAを大きくすることが有効である。光の波長についてはCD(compact disk)では近赤外光の780nm、DVD(digital versatile disk)では赤色光の650nm近傍の波長が用いられている。最近、青紫光の半導体レーザが開発され、今後は400nm近傍のレーザ光が使用されると予想される。
【0004】
また、対物レンズについては、CD用はNA0.5未満であったが、DVD用はNA0.6程度である。今後、さらに開口数(NA)を大きくしてNA0.7以上とすることが求められる。しかし、対物レンズのNAを大きくすること、および光の波長を短くすることは、光を絞るときに収差の影響が大きくなることでもある。したがって、光ディスクのチルトに対するマージンが減ることになる。また、NAを大きくすることによって焦点深度が小さくなるため、フォーカスサーボ精度を上げなくてはならない。
【0005】
さらに、高NAの対物レンズを使用することによって、対物レンズと光ディスクの記録面との距離が小さくなってしまうため、光ディスクの面ぶれを小さくしておかないと、始動時のフォーカスサーボを引き込む直前、対物レンズと光ディスクとが衝突することがあり、ピックアップの故障の原因となる。このように、ディスク面振れが大きいと、高密度記録における大きな障害となる。これは、光ディスクに限らず、ディスク媒体を回転させて記録再生を行う記録媒体において共通の課題である。
【0006】
この対策のため、特許文献1あるいは非特許文献1には、空気力学的作用力を利用して光ディスクにおける面ぶれを安定化させるため、安定化部材に対向させて可撓性を有する光ディスクを回転させる構成の記録/再生装置、あるいは可撓性を有する光ディスクの構成などについての記載がある。
【特許文献1】特開平10−308059号公報
【非特許文献1】「オプティカル・リードアウト・オブ・ビデオディスク」 アイイーイーイー・トランザクション・オン・コンシューマー・エレクトロニクス(“OPTICAL READOUT OF VIDEODISC”,IEEE TRANSACTION ON CONSUMER ELECTRONICS),1976年11月、P.304−308
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記課題を解決するための方法として、例えば、特許文献1に記載されているように、安定化板をディスク面に対向させて安定化する方法が提案されている。しかしながら、特許文献1に記載の方法において、ディスク面を安定化するための要件は、平面状の安定化板をディスクに対して略平行な位置に配置することに限られ、その他の動作条件の記述は一切ない。この構成のみではディスク面を全面に渡って確実に安定化することは不可能である。
【0008】
例えば、後で詳述するが、平面状の安定化板を用いてディスク全面を安定化させるためには、「ディスクと安定化板間の距離」と「ディスク回転数」の関係が最も重要であることを本発明者らは見出したが、このことに付いては特許文献1には何ら記載がない。
【0009】
また、非特許文献1にあるように、サドルプレートと呼ぶ安定化板を用いて、ディスク回転時に発生する負圧力によってディスクを湾曲させ、かつ、U-shaped stabilizerなる2つの安定化部材から構成される部材により形成した狭いギャップにディスクを挟むようにして回転させることにより、U-shaped stabilizerで挟んだ特定領域のディスク面振れを選択的に安定化する方法がある。
【0010】
しかしながら、この方法においては、ディスク回転数が高速なるとサドルプレートによって発生する負圧がディスク回転の遠心力による張力に負けて、ディスクを所望の湾曲形状にすることができなくなり、U-shaped stabilizerで挟んだ領域におけるディスク面振れも増大してしまう。
【0011】
本発明の目的は、前記課題を解決し、平板状の安定化板の安定化効果を確実に引き出し、低速回転域から高速回転域までの広い速度範囲において、可撓性を有する記録ディスク全面を安定化できる構成の記録/再生装置およびその駆動方法、ならびにディスクカートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、可撓性を有する記録ディスクをスピンドルに固定して回転させ、空気力学的な力を作用させる安定化板により、前記可撓性を有する記録ディスクのディスク面振れを抑制して安定化させ、記録/再生ヘッドの走査により前記記録ディスクに情報の記録および/または再生を行う記録/再生装置において、前記安定化板を少なくとも前記記録ディスクの記録領域を覆う平板状とし、前記スピンドルと前記安定化板間のディスク回転軸方向における相対距離を調整する位置調整手段を備えたことを特徴とし、この構成によって、平板状の安定化板による記録ディスクの安定化において最も重要な条件の一つである「ディスクと安定化板間の距離」を制御することにより、ディスク全面を安定化するための条件設定を行うことが実現でき、平板状の安定化板による記録ディスクの安定化を行うことが可能となる。特に、位置調整手段によって、ディスク回転数を変えた場合にも常に適正な安定化条件を選択できるようになり、低速から高速までの広い回転速度域においてディスク面の安定化を実現することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の記録/再生装置において、スピンドルに、位置調整手段を設けたことを特徴とし、この構成によって、記録ディスクを固定するスピンドルの位置を調整することにより「ディスクと安定化板間の距離」を適正に設定することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載の記録/再生装置において、安定化板に、位置調整手段を設けたことを特徴とし、この構成によって、安定化板の位置を調整することにより「ディスクと安定化板間の距離」を直接的かつ適正に設定することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3いずれか1項記載の記録/再生装置において、記録ディスク外周部のディスク半径方向のチルト角を検出するチルト検出手段を備えたことを特徴とし、平板状の安定化板を用いた記録ディスクの安定化構造では、適正な安定化条件でチルト角が零近傍となり、また適正な範囲を外れると増大する。この関係から前記チルト角を検出することにより記録ディスクの安定化状態を判断することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4いずれか1項記載の記録/再生装置に用いられる駆動方法であって、ディスク回転数に対するスピンドルと安定化板間のディスク回転軸方向における相対位置の調整パターンを記憶し、記録および/または再生時のディスク回転数に応じて、前記相対位置を調整することを特徴とし、この方法によって、ディスク回転数を変えた場合にも、「ディスクと安定化板間の距離」を常に適正な位置に保つことが可能となる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項5記載の記録/再生装置の駆動方法において、記録ディスクの構成を変化させた場合の調整パターンを複数記憶し、使用される記録ディスクの構成に応じて前記調整パターンを選択することを特徴とし、この方法によって、例えばディスク基材を変えた場合、または記録膜等の形成層の仕様を変えた場合、あるいは保護膜の仕様を変えた場合など、ディスクの機械特性に関わる仕様変更を行った場合にも、「ディスクと安定化板間の距離」を適正な値に設定することが可能となる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項5記載の記録/再生装置の駆動方法において、記録ディスク外周部のディスク半径方向のチルト角を検出するチルト検出手段を備え、検出されたチルト角が零近傍となるように相対位置を調整することを特徴とし、この方法によって、平板状の安定化板による記録ディスクの安定化条件を適正値に調整することができる。特に、この調整方法を用いれば、事前に「ディスクと安定化板間の距離」に関する基準を設定して、その値を数値管理せずとも、安定化板によるディスクの適正な安定化を実現することができる。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項7記載の記録/再生装置の駆動方法において、チルト角の最大値を−0.1deg以上+0.1deg以下に調整することを特徴とし、この方法によって、ディスク全面のディスク面振れを20μm以下に調整することが実現する。
【0020】
請求項9に記載の発明は、可撓性を有する記録ディスクをスピンドルに固定して回転させ、空気力学的な力を作用させる安定化板により、前記可撓性を有する記録ディスクのディスク面振れを抑制して安定化させ、記録/再生ヘッドの走査により前記記録ディスクに情報の記録および/または再生を行い、前記スピンドルと前記安定化板間のディスク回転軸方向における相対距離を調整する位置調整手段を備えた記録/再生装置に装填され、前記記録ディスクを収納するディスクカートリッジであって、前記安定化板を、少なくとも前記記録ディスクの記録領域を覆う平板状とし、カートリッジ内壁に設置したことを特徴とし、この構成によって、記録/再生装置においてディスクカートリッジを用いて記録/再生を行う場合においても、前記の平板状の安定化板による記録ディスクの安定化効果を奏することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明に係る記録/再生装置、その駆動方法、およびディスクカートリッジによれば、低速回転域から高速回転域までの広い速度範囲において、平板状の安定化板による安定化効果を確実に引き出し、可撓性を有する記録ディスク全面の安定化を実現できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0023】
図1は本発明に係る記録/再生装置の実施形態1を説明するための要部の概略図であって、(a)は非動作時の状態を示し、(b)は動作時の状態を示している。
【0024】
図1において、1は可撓性を有する記録ディスクである光ディスク、2は光ディスク1の回転中心(中央)部分に装着された光ディスク1を回転させるために保持する一方の保持部材であるハブ、3は光ディスク1を回転駆動するスピンドルモータ、3aはスピンドルモータ3の回転出力軸であるスピンドル、4は、光ディスク1の半径方向に移動して光ディスク1に対して光ビームを集光させて、情報の記録および/または再生処理を行うため光ディスク1に対して光走査を行う記録/再生手段である光ピックアップ、5は光ディスク1をスピンドル3aに対して固定するためのスピンドルチャック、10は装置本体の筐体である。
【0025】
また、30はディスク面振れを抑制するための平面状の安定化板、40は、スピンドルモータ3が固定され、上下動することによってスピンドル3aのディスク回転軸方向の位置を調整するための移動ステージ、42は、安定化板30を装置内に固定し、ディスク回転軸方向の安定化板30の位置を設定する支持部材である。
【0026】
なお、例えばピックアップの走査機構などの本発明に直接関わらない記録/再生装置の要素に関しては図示していない。
【0027】
図1(a)に示す非動作状態において、スピンドルモータ3を始動させてスピンドル3aを回転させることによって、中心部がスピンドル3aに固定されている光ディスク1が回転する。光ディスク1の回転により生じる光ディスク1と安定化板30間の空気力学的作用力により、光ディスク1が、図1(b)に示すように、安定化板30側に引かれるようになり、光ディスク1における主要面が半径方向において概略直線状となると共に、同部位でのディスク面振れが低減する。よって、光ディスク1における少なくとも光ピックアップ4による記録/再生位置付近の光ディスクの面ぶれが抑制され、良好な記録/再生が行われることになる。
【0028】
さらに、実施形態1では、スピンドルモータ3にディスク回転軸方向の位置制御手段である移動ステージ40を設けて、スピンドル3aと安定化板30とのディスク回転軸方向の相対距離を調整し、安定化板30を光ディスク1に対して適正に作用させて、光ディスク1の面振れを安定化(面振れの抑制)させるようにしている。
【0029】
図2は本発明に係る記録/再生装置の実施形態2を説明するための要部の概略図であって、(a)は非動作時の状態を示し、(b)は動作時の状態を示している。なお、以下の説明において、既に説明した部材に対応する部材には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0030】
図2において、43は、安定化板30が固定され、上下動することによって安定化板30のディスク回転軸方向の位置を調整するための移動ステージ、45は、スピンドルモータ3を装置内に固定し、ディスク回転軸方向のスピンドル3aの位置を固定的に設定している支持部材である。
【0031】
実施形態2では、安定化板30におけるディスク回転軸方向の位置制御手段である移動ステージ43を設けて、スピンドル3aと安定化板30とのディスク回転軸方向の相対距離を調整し、安定化板30を光ディスク1に対して適正に作用させて、実施形態1と同様に光ディスク1の面振れを安定化させるようにしている。
【0032】
図3は本発明に係る記録/再生装置の実施形態3を説明するための要部の概略図であって、(a)は非動作時の状態を示し、(b)は動作時の状態を示している。
【0033】
図3において、20は光ディスク1を収納するディスクカートリッジ、21は光ディスク1のディスクカートリッジ20内における位置が略中心にあるように導くためのガイド部材、22は光ピックアップ4をディスクカートリッジ20内に対して出入りすることを可能にするスロット部、23は光ディスク1の面振れを安定化させるための安定化板としての安定化平面(本例ではカートリッジ内底面)、46は、ディスクカートリッジ20を装置内に保持固定し、ディスクカートリッジ20におけるディスク回転軸方向の位置を設定することにより、安定化平面23のディスク回転軸方向の位置を設定する支持部材である。
【0034】
実施形態3では、安定化平面23をディスクカートリッジ20内に具備する構成であり、スピンドルモータ3にディスク回転軸方向の位置制御手段である移動ステージ40を設けて、スピンドル3aと安定化平面23とのディスク回転軸方向の相対距離を調整し、安定化平面23を光ディスク1に対して適正に作用させて、実施形態1,2と同様に光ディスク1の面振れを安定化させるようにしている。
【0035】
図4は本発明に係る記録/再生装置の実施形態3を説明するための要部の概略図であって、(a)は非動作時の状態を示し、(b)は動作時の状態を示している。
【0036】
図4において、47は、ディスクカートリッジ20を保持固定し、ディスクカートリッジ20におけるディスク回転軸方向の位置を調整することにより、安定化平面23のディスク回転軸方向位置を調整するための位置制御手段としての移動ステージである。
【0037】
実施形態4では、安定化平面23をディスクカートリッジ20内に具備する構成であり、ディスクカートリッジ20におけるディスク回転軸方向の位置の制御により、安定化平面23におけるディスク回転軸方向の位置を調整して、スピンドル3aと安定化平面23とのディスク回転軸方向の相対距離を調整し、安定化板23を光ディスクに対して適正に作用させて、実施形態1〜3と同様に光ディスク1の面振れを安定化させるようにしている。
【0038】
次に、各実施形態の動作について説明する。
【0039】
前記各実施形態における基本動作である、回転する記録ディスクに対して平面上の安定化板(安定化平面)により空気力学的な力を作用させた場合の現象に関して、各種実験を行い考察を行ったところ、「ディスクと安定化板の距離」および「ディスク回転数」と、ディスク面の安定性とには特定の関係があり、この関係を適正に調整することがディスクの空気安定化において非常に重要であることを見出した。
【0040】
なお、既述した「ディスクと安定化板の距離」とは、図5のディスク中心周辺の概略図に示すように、安定化板30側の光ディスク1表面の位置(ハブにより挟んでディスクを固定した場合にはハブとディスクの接触面の位置、またハブを使用せずスピンドルチャックにディスクを直接固定した場合にはスピンドルとディスクの接触面の位置)と、安定化板30の表面位置間の隙間Cbdのことである。
【0041】
以下、「ディスクと安定化板の距離Cbd」と「ディスク回転数Sr」の関係を適正に調整することの重要性に関して、鋭意検討した実験データに基づいて説明する。
【0042】
発明者らが鋭意検討したことにより見出した重要なポイントの一つは、ディスクの安定化を図るための「ディスクと安定化板間の距離Cbd」が特定の範囲に限られる点である。この結果の一例を図6に示す。図6は「ディスクと安定化板間の距離Cbd」を変えた場合のディスク半径方向に渡る面振れ安定性の変化を示したものである。
【0043】
面振れ安定性は「ディスクと安定化板間の距離Cbd」が0.4mm付近を境に著しく変化しており、0.5mmにおいてはディスク外周部での面振れが100μmを超える値となっている。これは特定回転数(6000rpm)における一例であるが、「ディスクと安定化板間の距離Cbd」に面振れ安定性が極端に変化する変曲点が存在するのは、ディスク回転数を変えた場合にも略共通であった。
【0044】
図6を見ると分るが、この変曲点を超えた場合に面振れ安定性の劣化はディスク外周部から始まっている。安定化板から離れるほど安定化板によってディスクに作用する吸引力が小さくなることは、物理現象として容易に予想されることであり、「ディスクと安定化板の距離Cbd」を大きくした場合に、面振れ安定性が悪くなる現象は、安定化板の作用力範囲に限界があることにより説明することができる。しかしながら、発明者らが鋭意検討した結果、見出した最も重要な点は、この現象が特定の「ディスクと安定化板間の距離Cbd」を境に極端に変化することである。
【0045】
さらに、発明者らが見出した二つ目のポイントについて、以下に説明する。
【0046】
面振れ安定性が急激に変化する「ディスクと安定化板間の距離Cbd」の値(以下、Cbdmaxと記す)は特定のカーブを描いた。具体的には、ディスク回転数により変化し、低回転域ではディスク回転数の増大に伴って増大する現象、高回転域ではディスク回転数の増大に伴って減少する現象を示した。
【0047】
前記カーブの概略を図7に示す。図7は横軸にディスク回転数、縦軸に「ディスクと安定化板間の距離Cbd」をとり、安定化板によりディスクを安定化できる「ディスクと安定化板間の距離Cbd」の範囲を示したものである。
【0048】
低速回転域でCbdmaxが増大する現象は、ディスク回転数の増大に伴ってディスク表面近傍に発生する気流の流速が増大することにより、安定化板による作用力が増大しているためと考えられる。また、高速回転域においてCbdmaxが減少する現象は、ディスク回転数の増大に伴ってディスク面のディスク回転軸方向の振動が増大し、これを抑制するために、より大きな安定化板の作用力が必要になることから「ディスクと安定化板間の距離Cbd」を狭くして安定化板の作用力を大きくしなければ、ディスク面振れを十分に抑制できなくなるための生じているものと推察される。
【0049】
発明者らが鋭意検討して見出した二つ目のポイントは、前述した「Cbdmaxがディスク回転数低回転域と高回転域とで異なる挙動を示し、ディスク回転数に対して特定のプロファイルを示す」ことにある。
【0050】
発明者らは、前記Cbdmaxが、低速回転域においてはCbdmax=0.00015Sr+β、高速回転域においてはCbdmax=A/Sr+αで表されることを見出した。
【0051】
なお、低速回転域における現象は複雑で、ディスクチャック時の微妙なディスク歪みなどの影響を受けてCbdmaxはばらついたが、前記の式はこのばらつきを考慮したものであり、この式で表されるCbdmax以下であれば、ディスク面を適正に安定化することができた。
【0052】
ここで、A,α、およびβは任意定数である。Aは主にディスク基材によって決定される定数であって、略(1E3)台の値を取り、ヤング率の大きなディスク基材に対しては小さな値を取る傾向があった。例えば、ヤング率が略2.5GPaのポリカーボネイトではAの値は3500前後の値となり、またヤング率が略5.5GPaのポリエチレンテレフタレートでは2500前後の値となった。
【0053】
また、αは主にディスク基材の膜厚によって決定される定数であって、略(1E−1)台の値を取り、膜厚が厚いほど大きい値となる傾向があった。例えば、ディスク基材にポリカーボネイトを用いた場合には、αは−0.1前後の値となり、ディスク膜厚により変化した。
【0054】
また、βは主に記録ディスクの平坦性に関連した定数であって、略(1E−1)台の値を取り、ディスクの歪みが大きくなると小さくなる傾向があった。例えば、ディスク基材にポリカーボネイトを用いた場合には、βは+0.3前後の値を取り、ディスクの歪みが大きくなるほど小さくなった。
【0055】
一方、図7にも示すように、「ディスクと安定化板間の距離Cbd」を小さくする側にもディスク面の安定化を図るための下限値Cbdminが存在した。この下限値Cbdminは、ディスクと安定化板が接触・摺動現象により制限された。「ディスクと安定化板間の距離Cbd」を小さくし過ぎるとディスクと安定化板が接触・摺動して、記録/再生装置の駆動に適さなくなることは容易に予想されることであるが、重要なことは、CbdminもCbdmaxと同様にディスク回転数により変化する点であった。Cbdminは低速回転域ではディスク回転数が増大すると減少し、その後、一定値となった。この「Cbdminがディスク回転数に対して特定のプロファイルを示す」ことが発明者らが鋭意検討した結果、見出した三つ目のポイントである。
【0056】
さらに、発明者らは、このCbdminが低速回転域においてはCbdmin=γexp(−0.0004Sr)、高速回転域においてはCbdmin=ηで表されることを見出した。γは前記βと同様に、主に記録ディスクの平坦性に関連した定数である。γは略(1E−1)台の値を取り、ディスクの歪みが大きくなると大きくなる傾向があった。例えば、ディスク基材にポリカーボネイトを用いた場合には、γは+0.25前後の値を取り、ディスクの歪みが大きくなるほど大きくなった。
【0057】
ηもβ,γと同様に、主に記録ディスクの平坦性に関連した定数であり、記録ディスクの歪みが大きくなると大きくなった。なお、現実的には、よほど平坦性の損なわれた歪みの大きな記録ディスクでない限り、ηは略+0.05近傍の固定値をとり、実用的にはこの値がηの代表値であった。ηが大きな、すなわちディスク歪みが大きな記録ディスクは、平板状の安定化板によるディスク安定化には供せず、実用的には、歪みの小さいディスクを使用することが肝要であった。
【0058】
前述した3つのポイントにより、平板状の安定板によりディスクを安定化するための特定の条件域が決定され、この限定範囲内に条件を調整することによりディスクの安定化が実現できた。その範囲は、前述の関係から、Cbd≦A/Sr+α,Cbd≦0.00015Sr+β,Cbd≧γexp(−0.0004Sr),Cbd≧ηで表される不等式により特定された。前述したようにA,α,β,γ,ηはディスク基材,厚み、および歪みなどのディスク仕様により決定される任意定数である。
【0059】
なお、ディスク回転数の上限値は、基本的に前記不等式により限定されるが、実用的には、スピンドルモータ3の回転数限界Srmaxによって決められるSr≦Srmaxの制限範囲も考慮する必要があり、ディスク仕様によっては、この範囲が安定化条件の制限範囲となる場合があった。図7では、ディスク回転数上限がスピンドルモータ3の限界回転数により制限される場合を示した。
【0060】
以上説明したように、平板状の安定板によりディスクを安定化するためには、図7に示す特定の条件域が非常に重要である。これらの点を考慮し、この特定条件域でディスク安定化を行うための装置構成,駆動方法、およびディスクカートリッジの構成について考察した。
【0061】
そして、前記特定条件域で記録/再生駆動するための装置構成を具体化したのが、実施形態1〜4である。これら全ての実施形態は、光ディスク1を保持するスピンドル3aと安定化板30(23)とにおけるディスク回転軸方向の相対位置調整を行うものであるが、実効的には、「ディスクと安定化板間の距離Cbd」をCbdminからCbdmaxの範囲に調整することを目的としている。
【0062】
平板状の安定化板によりディスクを安定化するためには、図7に示す特定条件範囲に「ディスクと安定化板間の距離Cbd」を調整することが肝要である。この実現のためには、前記実施形態の記録/再生装置を用いて、ディスク回転数に対する前記相対位置の調整パターンを記憶し、記録および/または再生時のディスク回転数に応じて、前記相対位置(距離)を調整する駆動方法が考えられる。
【0063】
調整パターンとしては、図8に示すように、例えば、ディスク回転数に対して「ディスクと安定化板間の距離Cbd」を連続的に変化させる調整パターン1、あるいは段階的に変化させる調整パターン2のようなパターンが考えられ、どちらを用いても効果を十分に奏することができる。
【0064】
また、ディスクの構成を変化させた場合の前記調整パターンを複数記憶させ、ディスクの構成に応じて前記調整パターンを選択するような方法を実行することも可能であり、これによりディスク仕様の変化に対しても迅速かつ容易に対応することができる。
【0065】
さらに、各種実験を行ったところ、安定化板30(23)によってディスクが適正に安定化された状態においては、ディスク外周部のディスク半径方向のチルト角が零近傍となる、すなわち、ディスク面が水平となることが明らかとなった。
【0066】
図9にディスク面の安定化が適正に行われた場合とそうでない場合のディスク半径方向のディスク形状を示す。ディスク外周部の半径方向の傾きが小さい方が、適正な安定化が行われた場合の結果であり、他方が適正な安定化が行われなかった場合の結果である。ここでいうチルト角は、水平面(ディスク回転軸に垂直な面)を基準にした場合のディスク半径方向のディスク面の傾きであって、正負の方向は図示する方向とした。
【0067】
この結果に基づき、チルト角検出機構を具備させた記録/再生装置と、その駆動方法について考察した。例えば、前記チルト角を−0.1〜+0.1degの特定の範囲に調整すれば、図10に示すようにディスク全面における面振れ安定性を20μm以下とすることができる。
【0068】
図10は2つの異なるディスク仕様の光ディスクについて、図11に示すチルト角検出センサ6により検出したディスク外周50mm位置におけるチルト角と、面振れ安定性の関係を示したものである(図10における黒丸印と黒四角印とが異なるディスク仕様の検出データ値)。
【0069】
図12は実施形態3,4において用いるディスクカートリッジの構成例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は横断面図である。
【0070】
図12において、図3,図4にて説明した部材には同一符号を付して説明は省略するが、24は、ディスクカートリッジ20内の光ディスク1にスピンドル3aを取り付けるために、スピンドル3aを挿入させるための開口部である。
【0071】
なお、本実施形態に係る装置の動作において、安定化板の平面精度、安定化板の装置本体の筐体への取り付け精度、スピンドルの筐体への取り付け精度、ディスク中心ハブの形状精度他、「ディスクと安定化板間の距離Cbd」を精度良く設定する上で、精度を確保する部分が多々ある。部位にもよるが、この部品形状精度および組み付けの交差は略±0.01mmの範囲に収まっていることが望ましい。
【0072】
実効的には、ディスクをスピンドルに取り付けた状態における安定化板側のディスク面(ハブで挟んでディスクを固定した場合にはハブとディスクの接触面、またハブを使用せずスピンドルチャックにディスクを直接固定した場合にはスピンドルとディスクの接触面)と安定化板表面の傾きの最大値が0.1deg以下で、かつ、そのディスク回転軸方向の相対位置の調整誤差が±0.02mm以下となっていることが望ましい。
【0073】
また、本実施形態においては、ディスク表面を流れる空気の挙動を妨げない工夫が必要であった。光ディスク1を収納したディスクカートリッジ20を例として、この点を以下説明する。
【0074】
図13はディスクカートリッジ内で安定化平面によりディスクを安定化させた状態を示す概略断面図であって、25は吸気口、26は排気口、31は空気流である。
【0075】
図13において、光ディスク1を回転させた場合には、基本的に内周から外周に向かう空気流31がディスク両面において発生し、安定化平面23による光ディスク1の安定化においても、この空気流31が重要な役目を担っている。このディスク内周から外周に向かう空気流31を妨げないようにするため、例えば図12のディスクカートリッジ20においては、中心部に吸気口25を形成してディスクカートリッジ20内に外部から空気を導入し、また、ディスク内周から外周に流れた空気が、ディスク外周部でスムーズにディスクカートリッジ20の外に排気されるように排気口26を形成した。また、光ディスク1をスピンドル3aに固定するための開口部24は吸気口25と逆側の空気導入口として機能した。
【0076】
このように、光ディスク1の両面において、内周が外周に向かう空気流31がスムーズに流動するようにした。ここで示すディスクカートリッジ20においては、円周を16分割した外周位置に16個の排気口26を形成した。ここで、少なくともディスクカートリッジ20の吸気口25および開口部24には、外部からごみ,埃などがディスクカートリッジ20内に入ってくることを防ぐためのフィルタを具備させる必要があり、また、排気口26にも同様のフィルタを具備させるのが望ましい。また、この空気流31の制御の考え方は、ディスクカートリッジ20に限るものではなく、実施形態1,2のような構成においても、同様の配慮をすることが必要である。
【0077】
図14は本実施形態に係る記録/再生装置における制御系の構成を示すブロック図であり、各部はCPU(中央演算処理ユニット部)50にてコントロールされている。
【0078】
図14において、51はCPU50からの制御データによりスピンドルモータ3を駆動/制御するスピンドルモータ駆動/制御部、52は同様に制御データを受けて光ピックアップ4のシーク動作,記録/再生動作,フォーカス/トラッキング制御などを駆動制御する光ピックアップ駆動/制御部、53は制御データを受けて移動ステージ40(43,47)を駆動/制御する移動ステージ駆動/制御部、54は装置全体の所定の動作,制御プログラムが格納されているメモリのROM、55は各種設定プログラムが格納されているメモリのRAMである。
【0079】
実施形態1〜4の記録/再生装置における光ディスクの安定化板によるディスク安定化動作から記録/再生動作までの流れの概略を、図15のフローチャートを参照して説明する。
【0080】
まず、ハブ2を介して光ディスク1をスピンドルチャック5にセットして、スピンドル3aに保持させ(S1)、スタートスイッチのオンにより、CPU50はスピンドルモータ駆動/制御部51に駆動信号を出力して、スピンドルモータ3を始動させ、所望の回転数で光ディスク1を回転させる(S2)。
【0081】
その後、ステップ(S3)にて、スピンドルモータ3の回転数に対応する「ディスクと安定化板間の距離Cbd」を所定の値にセットする(図1〜図4において上図(a)の状態から下図(b)の状態にする操作を行う。スピンドルモータ3の回転数と「ディスクと安定化板間の距離Cbd」との関連は、使用される光ディスク1の仕様,構成ごとにあらかじめ試験などして設定されており、この関連データをデータテーブルとしてRAM55などに記憶しておき、CPU50がRAM55からデータを適宜読み出すことにより、距離Cbdのセット制御駆動を行う。
【0082】
具体的には、移動ステージ駆動/制御部53から前記データに基づく制御信号を出力することによって、実施形態1,3では、スピンドル3aのディスク回転軸方向位置を移動ステージ40により制御し、位置出し機構41により最終位置を決定する。実施形態2では、安定化板30のディスク回転軸方向位置を移動ステージ43により制御し、位置出し機構44により最終位置を決定する。実施形態4では、ディスクカートリッジ20におけるディスク回転軸方向の位置を移動ステージ47により制御し、位置出し機構47により最終位置を決定する。
【0083】
ステップ(S3)の設定が終了した後、チルト角検出センサ6にて光ディスク1のチルト角を検出し、検出データを受けたCPU50が移動ステージ駆動/制御部53を介して移動ステージ43,47を駆動させて、光ディスク1のチルト角が零、あるいは所定の許容範囲に入るようにする(S4)。
【0084】
その後、光ピックアップ4を光ディスク1における記録/再生を行う半径位置まで移動させ、光ピックアップ4におけるディスク回転軸位置を調整してフォーカスサーボ動作を行い、焦点位置が光ディスク1の記録/再生を行う層に合うように制御する。光ピックアップ4にトラッキングサーボをかけ、光ディスク1上の目標の溝あるいはピット上に光ピックアップ4を追従させる(S5)。この状態で所定の記録あるいは再生動作を実行する(S6)。
【0085】
なお、図示するように、ステップS3とS4の両方の動作により、Cbdを調整することが望ましいが、基本的には、どちらか一方の動作だけでもCbdを調整することが可能であり、例えば、チルト角検出機構を省いて、ドライブ要素の簡略化を図ることもでき、この場合においても、本発明の効果を奏することは十分可能である。
【0086】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいてより具体的に説明する。
【0087】
(実施例1)
実施例1においては、図1に示す実施形態1の記録/再生装置を用いた。
【0088】
また、実施例1では、ディスク基板として直径120mm,厚さ75μmのポリカーボネイト製シートを用いた。ディスクを準備するにあたっては、まず、前記シートに、熱転写でスタンパのピッチ0.6μm、幅0.3μmのグルーブを転写し、その後、スパッタリングでシート/Ag反射層 120nm/(ZrO−Y)−SiO 7nm/AgInSbTeGe 10nm/ZnS−SiO 25nm/Si 10nmの順番に成膜した。情報記録領域は内周直径40mmから外周直径118mmまで(半径20mm〜58mm)の範囲に設定した。その後、UV樹脂をスピンコートし、紫外線照射で硬化させて厚さ10μmの透明保護膜を形成した。また、逆側の面には10μm厚のハードコートを施した。なお、このディスク中心部には外形直径30mm,内径直径15mm,厚み0.3mmのハブ2を取り付けた。この光ディスク1の仕上がり状態は、ほぼ平坦であった。
【0089】
前記光ディスク1を1000〜12000rpmの範囲で回転させて、図16に示す調整パターンに従ってスピンドル3aのディスク回転軸方向の位置を調整することにより、「光ディスク1と安定化板30の距離Cbd」を調整し、この際のディスク半径25〜55mmの位置におけるディスク面振れを、光ピックアップ4に代えて配置したレーザ変位計により評価した。
【0090】
(実施例2)
実施例2においても、図1に示す実施形態1の記録/再生装置を用いた。
【0091】
また、実施例2では、ディスク基板として直径120mm,厚さ75μmのポリカーボネイト製シートを用いた。ディスクを準備するにあたっては、まず、前記シートに、熱転写でスタンパのピッチ0.6μm、幅0.3μmのグルーブを転写し、その後、スパッタリングでシート/Ag反射層 120nm/(ZrO−Y)−SiO 7nm/AgInSbTeGe 10nm/ZnS−SiO 25nm/Si 10nmの順番に成膜した。情報記録領域は内周直径40mmから外周直径118mmまで(半径20mm〜58mm)の範囲に設定した。その後、UV樹脂をスピンコートし、紫外線照射で硬化させて厚さ5μmの透明保護膜を形成した。また、逆側の面には10μm厚のハードコートを施した。なお、このディスク中心部には外形直径30mm,内径直径15mm,厚み0.3mmのハブ2を取り付けた。このディスクの仕上がり状態はハードコート側に僅かに反った形状となった。
【0092】
前記光ディスク1を1000〜14000rpmの範囲で回転させて、図17に示す調整パターンに従ってスピンドル3aのディスク回転軸方向位置を調整することにより、「光ディスク1と安定化平面23の距離Cbd」を調整し、この際のディスク半径25〜55mmの位置におけるディスク面振れを、光ピックアップ4に代えて配置したレーザ変位計により評価した。
【0093】
(実施例3)
実施例3においては、図4に示す実施形態4の記録/再生装置を用いた。また、光ディスク1には実施例1と同様の構成のものを用いた。
【0094】
そして、光ディスク1を1000〜12000rpmの範囲で回転させて、図16に示す調整パターンに従ってディスクカートリッジ20のディスク回転軸方向位置を移動ステージ47で調整することにより、「光ディスク1と安定化平面23の距離Cbd」を調整し、この際のディスク半径25〜55mmの位置におけるディスク面振れを、光ピックアップ4に代えて配置したレーザ変位計により評価した。
【0095】
(実施例4)
実施例4においては、図2に示す実施形態2の記録/再生装置を用いた。また、光ディスク1には実施例1と同様の構成のものを用いた。さらに、図11に示すチルト角検出センサ6を採用した。チルト角検出センサ6は、ディスク外周から半径50mmの位置におけるディスク面の半径方向のチルト角を検出できるように配置した。
【0096】
そして、光ディスク1を1000〜12000rpmの範囲で回転させて、安定化板30のディスク回転軸方向位置を移動ステージ43で調整することにより、「光ディスク1と安定化板30の距離Cbd」を調整し、この際のディスク半径25〜55mmの位置におけるディスク面振れを、光ピックアップ4に代えて配置したレーザ変位計により評価した。この調整においては、チルト角検出機構によって検出されたチルト角の値が−0.1deg以上となるようにした。
【0097】
(比較例1)
比較例1においては、図19に示すように、移動ステージと支持部材を具備しない記録/再生装置を用いた。また、光ディスク1は実施例1と同様のものを用いた。
【0098】
そして、光ディスク1を1000〜12000rpmの範囲で回転させて、ディスク半径25〜55mmの位置におけるディスク面振れを、光ピックアップ4に代えて配置したレーザ変位計により評価した。「ディスクと安定化板の距離Cbd」は0.5mmに固定した。
【0099】
(比較例2)
比較例2においても、図19に示す記録/再生装置を用いた。また、光ディスク1は実施例2と同様の構成のものを用いた。
【0100】
そして、光ディスク1を1000〜12000rpmの範囲で回転させて、ディスク半径25〜55mmの位置におけるディスク面振れを、光ピックアップ4に代えて配置したレーザ変位計により評価した。「ディスクと安定化板の距離Cbd」は0.5mmに固定した。
【0101】
本実施例と比較例において、平板状の安定化板により安定化した光ディスク1の面振れ特性は、図18に示す通りとなった。この結果に示すように、本実施例では、広範囲のディスク回転数で良好なディスク面振れ特性が得られた。なお、実施例4の回転数が2000rpm以下の範囲においては、チルト角検出によるCbdの制御が収束しなかったため、ディスクの安定化を図ることができなかったが、4000rpm以上の回転数域においては良好な安定性を得ることができた。
【0102】
本実施例では比較例と比べると、効果の差は歴然としており、本発明における効果が絶大であることが理解できた。比較例においては、Cbd調整を実施せずにCbdを0.5mmに固定した場合について検証した。比較例1と比較例2では仕様の異なる光ディスクの安定化を試みたが、いずれの光ディスクについてもディスクを安定化できるディスク回転数範囲は狭く、実用に供しないレベルであった。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、可撓性を有する記録ディスクに対して記録および/または再生処理を行う記録/再生装置、およびその記録ディスクを収納するディスクカートリッジに適用され、本発明が対象とする記録ディスクは、相変化メモリ,光磁気メモリ,ホログラムメモリなどのディスク状の記録ディスクとして用いられるすべてを対象とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明に係る記録/再生装置の実施形態1を説明するための要部の概略図
【図2】本発明に係る記録/再生装置の実施形態2を説明するための要部の概略図
【図3】本発明に係る記録/再生装置の実施形態3を説明するための要部の概略図
【図4】本発明に係る記録/再生装置の実施形態4を説明するための要部の概略図
【図5】本実施形態を説明するためのディスク中心周辺の概略図
【図6】本実施形態に係る「ディスクと安定化板間の距離」を変えた場合のディスク半径方向に渡る面振れ安定性の変化を示す図
【図7】本実施形態に係る面振れ安定性が急激に変化する「ディスクと安定化板間の距離Cbd」の値Cbdmaxの特定カーブを示す図
【図8】本実施形態に係る安定化条件範囲内の特定領域において、極めて小さなディスク面振れ特性がディスク面全面で得られる条件(調整パターン)を示す図
【図9】ディスク面の安定化が適正に行われた場合とそうでない場合のディスク半径方向のディスク形状についての説明図
【図10】2つの異なるディスク仕様の光ディスクにおけるチルト角と面振れ安定性との関係を示す図
【図11】本実施形態におけるチルト角検出センサの設置例を示す概略図
【図12】実施形態3,4において用いるディスクカートリッジの構成例を示す図
【図13】本実施形態に係るディスクカートリッジ内で安定化平面によりディスクを安定化させた状態を示す概略断面図
【図14】本実施形態に係る記録/再生装置における制御系の構成を示すブロック図
【図15】本実施形態におけるディスク安定化動作から記録/再生動作に係るフローチャート
【図16】本実施例にて採用されるCbd調整値の例を示す図
【図17】本実施例にて採用されるCbd調整値の例を示す図
【図18】本実施例と比較例とにおけるディスク面振れ特性の試験結果を示す図
【図19】比較例の構成の概略図
【符号の説明】
【0105】
1 光ディスク
2 ハブ
3 スピンドルモータ
3a スピンドル
4 光ピックアップ
5 スピンドルチャック
6 チルト角検出センサ
10 装置本体筐体
20 ディスクカートリッジ
21 ガイド部材
23 安定化平面
30 安定化板
40,43,47 移動ステージ
42,45,46 支持部材
Cbd 光ディスク下面と安定化板表面との間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する記録ディスクをスピンドルに固定して回転させ、空気力学的な力を作用させる安定化板により、前記可撓性を有する記録ディスクのディスク面振れを抑制して安定化させ、記録/再生ヘッドの走査により前記記録ディスクに情報の記録および/または再生を行う記録/再生装置において、
前記安定化板を少なくとも前記記録ディスクの記録領域を覆う平板状とし、
前記スピンドルと前記安定化板間のディスク回転軸方向における相対距離を調整する位置調整手段を備えたことを特徴とする記録/再生装置。
【請求項2】
前記スピンドルに、前記位置調整手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の記録/再生装置。
【請求項3】
前記安定化板に、前記位置調整手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の記録/再生装置。
【請求項4】
前記記録ディスク外周部のディスク半径方向のチルト角を検出するチルト検出手段を備えたことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の記録/再生装置。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項記載の記録/再生装置に用いられる駆動方法であって、
ディスク回転数に対するスピンドルと安定化板間のディスク回転軸方向における相対位置の調整パターンを記憶し、記録および/または再生時のディスク回転数に応じて、前記相対位置を調整することを特徴とする記録/再生装置の駆動方法。
【請求項6】
前記記録ディスクの構成を変化させた場合の前記調整パターンを複数記憶し、使用される記録ディスクの構成に応じて前記調整パターンを選択することを特徴とする請求項5記載の記録/再生装置の駆動方法。
【請求項7】
前記記録ディスク外周部のディスク半径方向のチルト角を検出するチルト検出手段を備え、検出されたチルト角が零近傍となるように前記相対位置を調整することを特徴とする請求項5記載の記録/再生装置の駆動方法。
【請求項8】
前記チルト角の最大値を−0.1deg以上+0.1deg以下に調整することを特徴とする請求項7記載の記録/再生装置の駆動方法。
【請求項9】
可撓性を有する記録ディスクをスピンドルに固定して回転させ、空気力学的な力を作用させる安定化板により、前記可撓性を有する記録ディスクのディスク面振れを抑制して安定化させ、記録/再生ヘッドの走査により前記記録ディスクに情報の記録および/または再生を行い、前記スピンドルと前記安定化板間のディスク回転軸方向における相対距離を調整する位置調整手段を備えた記録/再生装置に装填され、前記記録ディスクを収納するディスクカートリッジであって、
前記安定化板を、少なくとも前記記録ディスクの記録領域を覆う平板状とし、カートリッジ内壁に設置したことを特徴とするディスクカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−107699(P2006−107699A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176327(P2005−176327)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【出願人】(503391577)長太郎エンジニアリング株式会社 (16)