説明

設計型エキスパートシステム構築支援システム

【目的】扱うことが可能な問題の範囲を広げると共に、設計知識の記述を簡潔にすることを可能とする。
【構成】設計型ESを構築する際、インスタンス生成部20は、入出力装置10の表示画面上での指定に応じて、設計対象知識記憶部20に格納された設計対象知識をクラスとするインスタンスを生成する。属性値設定部26は、生成されたインスタンスの属性の属性値を指定に応じて設定する。また、設計過程知識として、インスタンス生成を指示する実行命令が記述されている場合、設計の実行中にインスタンス生成部22は、設計過程知識に応じて動的にインスタンスを生成し、属性値設定部26は、そのインスタンスの属性値を設定する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、設計の専門家の知識を組み込んだ設計型エキスパートシステムを構築するための設計型エキスパートシステム構築支援システムに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、設計の専門家の知識を組み込んだ設計型エキスパートシステム(以下、設計型ESと略称する)の開発により、設計効率を向上させる試みが各種分野で多く見られるようになっている。
【0003】この種、設計型ESを、設計に関する知識を計算機システム上へ置き換えて作成する方法としては、一般の計算機言語を用いて計算機上の記述言語を用いたプログラムとして作成する方法が考えられる。この方法では、定義可能な全ての設計問題をプログラムとして記述することにより、設計型ESを作成することができる。
【0004】しかしながら、この方式では、設計型ESが対象とする分野や仕様等に応じて、それぞれプログラムを作成しなければならないため、開発コストが非常に高くなる。また、設計に関する知識がプログラムによって記述されているため、保守等を容易に行なうことができない。このため、この方法は、実用的とはいえない。
【0005】このような方法に対して、ES構築支援システムを用いる方法がある。ES構築支援システムは、設計者に近い形式で設計対象及び設計過程の知識を記述することで、設計ESを構築しようとするものである。
【0006】設計者は、与えられた仕様から、決定された設計過程を経て設計結果を導出する。ES構築支援システムでは、与えられた仕様、この仕様から求められる中間結果、この中間結果から求められる設計結果を、設計者のある一時点の思考を示す設計対象として記述し、さらに仕様から中間結果を求める過程、中間結果から設計結果を求める過程を設計過程として記述する。これにより、設計型ESを構築することができる。
【0007】ES構築支援システムでの設計対象及び設計過程の内容は、視覚エディタを通じて表示画面上で表現される。このため、設計型ESの構築、保守を行なう際、表示画面中で設計対象及び設計過程の内容を編集することができるので、操作性が非常に良い。また、構築された設計型ESを用いて設計を行なう際に、表示画面において、与えられた仕様に対する設計結果を得ることができる。
【0008】ところで、従来のES構築支援システムでは、設計型ESの構築が、設計の全ての設計対象及び設計過程を記述することによって行なわれるため、設計対象及び設計過程が予め確定されていることが必要となっていた。
【0009】従って、構築された設計型ESは、記述された設計対象及び設計過程に限って、設計可能となっている。このため、記述された設計対象及び設計過程に合わない設計内容、例えば設計対象の構造が仕様に基づいて動的に決定されていくような問題や、不定個数の仕様が与えられそれらの間の相互作用を考慮しながらそれぞれを設計するような設計問題に対しては、設計型ES構築支援システムを利用した設計型ESの作成ができなかった。
【0010】また、設計の全ての設計対象及び設計過程を予め記述する必要があるため、例えば複数の設計対象に対して同じ設計過程知識を適用する場合であっても、それぞれについて記述する必要があり、記述量が多くなる場合があり扱いにくいという問題があった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】このように従来の設計型ES構築支援システムでは、動的に設計対象の構造が決定されるような問題や、不定個数の仕様が与えられる問題についての記述を行なうことができず、また設計対象及び設計過程の記述が冗長となり扱いにくい場合があった。
【0012】本発明は前記のような点に鑑みてなされたもので、扱うことが可能な問題の範囲を広げると共に、設計知識の記述を簡潔にすることが可能な設計型ES構築支援システムを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は、設計対象の記述から生成された設計対象知識に対するインスタンスを生成するインスタンス生成手段と、前記インスタンス生成手段によって生成されたインスタンスの属性値を設定するインスタンス属性値設定手段とを具備し、前記インスタンス属性値設定手段によって設定されたインスタンスの属性値を用いた設計が可能な設計型エキスパートシステムを構築することを特徴とする。
【0014】また、インスタンス生成手段、及びインスタンス属性値設定手段は、表示画面上で任意に記述された内容に基づいて、インスタンス生成、インスタンスの属性値の設定を行なうことを特徴とする。
【0015】また、インスタンス生成手段、及びインスタンス属性値設定手段は、設計過程に関する記述によって生成された設計過程知識の実行命令に応じて、設計の実行中にインスタンス生成、インスタンスの属性値の設定を行なうことを特徴とする。
【0016】
【作用】このような構成によれば、インスタンス生成手段、及びインスタンス属性値設定手段を設け、設計対象のインスタンスの生成と属性値の設定を可能にすることで、予め定められない不定個数の同型の設計対象を扱うような範囲の設計問題についても設計型ES構築支援システムで扱うことができるようになる。
【0017】また、表示画面上でインスタンスに関する記述(インスタンス生成、属性値の設定)ができるので、良好な操作性が得られ、設計型ESの構築を容易にする。また、設計過程知識の中にインスタンスの生成、属性値の設定の実行させる命令を記述することで、設計を実行する過程で動的に設計対象の構成が決定されるような設計問題に対しても対処することができる。
【0018】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明する。図1は同実施例に係わる設計型エキスパートシステム構築支援システム(以下、設計型ES構築支援システムと称する)の構成を示すブロック図である。
【0019】図1において、入出力装置10は、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ等によって構成される表示装置、及びキーボードやマウス等の入力装置を備えている。入出力装置10は、インターフェイス部12によって、表示画面の制御、及びコマンドや設計対象、設計過程に関する情報の入力制御が行なわれる。
【0020】インターフェイス部12は、入出力装置10のキーボードやマウスを用いて指示されたコマンドや、設計対象及び設計過程に関する情報等をコマンド制御部14に転送する。また、インターフェイス部12は、知識表示部16及びインスタンス情報表示部18からの指示に応じて入出力装置10の表示装置の画面の制御を行なう。具体的な表示画面例については後述する。
【0021】コマンド制御部14は、インターフェイス部12を介して入力された情報を解釈し、その内容に応じて各部に情報の転送や処理の実行を指示する。コマンド制御部14は、設計対象及び設計過程に関する情報を入力した際には、それぞれ設計対象知識記憶部20、設計過程知識記憶部22に転送して記憶させる。また、コマンド制御部14は、設計対象の属性に対して入力される属性値を入力した際には、属性値設定部26に転送する。
【0022】知識表示部16は、設計対象知識記憶部20に記憶された設計対象知識、及び設計過程知識記憶部22に記憶された設計過程知識に基づいて、インターフェイス部12を介して表示装置の画面中に、設計対象及び設計過程を示す表示を指示する。
【0023】インスタンス情報表示部18は、任意に指定された設計対象に対して生成されたインスタンスを、インスタンス情報記憶部28及び属性情報記憶部30に記憶された情報に基づいて、例えば設計対象及び設計過程に関する表示とは別個のウィンドウ上で表示させる。
【0024】設計対象知識記憶部20及び設計過程知識記憶部22は、それぞれ設計型ESを構築する際に入力された設計対象(設計仕様、中間結果、設計結果、及びそれぞれにおける属性を含む)、設計過程(前段の設計対象における属性とそれらの属性から求められる属性との関係等)を記憶するためのものである。
【0025】インスタンス生成部24は、設計対象知識記憶部20に記憶された設計対象知識をクラスとし、このクラスに対応するインスタンスを生成し、インスタンス情報記憶部28に記憶させるものである。また、インスタンス生成部24は、設計過程知識として記述されたインスタンス生成の指令に応じてインスタンスを生成することもできる。本発明では、1つの設計対象について、複数のインスタンスを入力し、それらの相互作用を考慮した設計を実行させることができる。
【0026】属性値設定部26は、設計対象中の属性に対する属性値を、属性情報記憶部30に記憶させるものである。属性値設定部26は、インスタンスに対する属性値についても設定を行なう。
【0027】インスタンス情報記憶部28は、インスタンス生成部24によって生成されたインスタンスに関する情報を記憶するためのものである。属性情報記憶部30は、属性値設定部26によって設定された属性値を記憶するためのものである。
【0028】同実施例における設計型ES構築支援システムは、図2に示すように、汎用ES構築システム上で機能するものとする。汎用ES構築システムは、推論を実行する設計ES実行モジュール32と、同モジュール32に参照されるルール型知識34及びフレーム型知識36が設けられている。また、設計ES実行モジュール32には、設計型ES構築支援システムとの通信を行なう通信機能を有している。
【0029】この場合、設計型ES構築支援システムには、図1に示す機能の他に、設計対象知識記憶部20、設計過程知識記憶部22、及びインスタンス情報記憶部24に記憶された情報を汎用ES構築システムにおける知識表現に変換する知識変換部38と、設計ES実行モジュール32との通信を行なう通信機能部40が必要となる。
【0030】同実施例における設計型ESは、設計型ES構築支援システムの機能として、設計に関する知識を、知識変換部38によって汎用ES構築システムにおいて実行可能な汎用の知識表現に変換し、汎用ES構築システムの推論機構を利用して実現する。具体的には、知識変換部38は、設計対象及びインスタンスに関する知識を汎用の知識表現であるフレーム型の知識構造に変換し、設計過程知識を状態毎に整理されたルール形式に変換する。
【0031】次に、同実施例の動作について説明する。同実施例の設計型ES構築支援システムには、設計型ESを構築するモードと、構築された設計型ESを利用して設計を行なうモードの2通りの実行モードを持っている。
【0032】まず、設計型ESの構築の手順について説明する。入出力装置10の表示装置には、機能選択(コマンド入力)を行なうための複数のボタンが表示され、マウスカーソル等によって任意に選択することができる。
【0033】複数のボタン中には、設計対象(フレーム)、設計対象中の属性(スロット)、及び設計過程(ルール)の記述(編集)を実行するコマンドが用意されている。例えば、これらのコマンドが選択された場合、記述用ウィンドウを画面に表示させ、そのウィンドウ中でそれぞれの内容が記述及び編集することができる。
【0034】設計対象知識としては、設計対象の名前、その設計対象に関する0個以上の属性の名前が記述される。属性が0個の設計対象については、この設計対象の下位にさらに設計対象(下位フレーム)を生成し、この下位の設計対象において属性名を生成することができる。設計を行なう際には、各属性に対する属性値が決定される。コマンド制御部14は、インターフェイス部12を介して入力された記述内容に基づいて、設計対象知識を設計対象知識記憶部20に記憶させる。
【0035】設計過程知識は、前の設計対象の状態における情報(属性値)を利用して後ろの設計対象における状態の情報を決定することを示す依存関係と、後ろの設計対象の属性値を決定するための具体的な手続き知識から成り立っている。
【0036】この依存関係は、例えば設計対象知識記憶部20に記憶された設計対象知識に基づいて表示されている設計対象から、隣り合った設計対象間で依存関係の対象となる属性をカーソルによって選択される。コマンド制御部14は、選択された属性の関係を設計過程知識記憶部22に記憶させる。さらに、依存関係が指定された属性が、どのような関係にあるか(手続き知識)、手続き知識記述用ウィンドウを表示し、このウィンドウ中で記述させる。コマンド制御部14は、インターフェイス部12を介して入力された記述内容に基づいて、設計過程知識記憶部22に記憶させる。また、設計過程知識として、設計対象知識に対応するインスタンスの生成を指示する実行命令を記述することができる(詳細については後述する)。
【0037】同実施例においては、設計対象知識記憶部20及び設計過程知識記憶部22に記憶された設計過程知識及び設計対象知識を、例えば図3に示すようにして、表示画面上で表現するものとする。
【0038】図3に示すように、設計対象知識は、それぞれ矩形枠によって表現され、矩形枠内には設計対象の名称と、その設計対象に関する属性名が表示される。また、設計過程知識は、表示画面上で隣り合った設計対象を結ぶ線によって表現される。設計過程知識の手続き知識は、通常、線によって表現されているが、所定のコマンドが入力されることにより手続き知識編集用のウィンドウが表示され、このウィンドウ中において具体的な内容が表示される。
【0039】図3においては、3つの矩形枠の表示が設計対象知識を示す表示である。例えば、左側の矩形枠において、「変速機仕様」が設計対象の名称、「変速比仕様」が属性の名前、「変速比仕様」の右側に表示された「12」が属性値である。
【0040】また、設計対象「変速機仕様」の「変速比仕様」から、設計対象「歯車機構(1)」の「変速比」を結ぶ線は、「変速比仕様」から「変速比」の値を求める設計過程知識の存在を示し、設計対象「変速機仕様」の「変速比仕様」から、設計対象「歯車機構(1)」を結ぶ線は、「変速比仕様」から「歯車機構(1)」のインスタンスを生成する設計過程知識の存在を示している。
【0041】次に、設計型ES構築支援システム上からのインスタンスの生成、属性の設定の手順について説明する。同実施例においては、設計対象のインスタンスの知識は、設計対象及び設計過程に関する表示の他に、図4R>4に示すように、別個のウィンドウ上で表形式によって表現し、このウィンドウ上で編集(インスタンスの新規生成や削除、属性値の設定、変更、削除)することができる。図4には、右側の設計対象「歯車機構(2)」についてのインスタンスの知識が表示された例を示している。
【0042】図4に示すインスタンス用のウィンドウでは、横方向に属性名を配置し、縦方向にインスタンスに関する情報を配置している。この例では、2つのインスタンス(整理記号1,2)の知識を表示している。なお、インスタンスの表形式による表示形態として、下位の設計対象(下位フレーム)に関するインスタンスの知識を表示させる際に、親の設計対象(上位フレーム)の知識を合わせて表示する方式もある。
【0043】このインスタンス編集用のウィンドウは、設計対象知識を示す矩形枠が指定されることにより表示する。すなわち、カーソルが矩形枠内に移動され所定のキーが押下されると、コマンド制御部14は、インスタンス編集用のウィンドウの表示が指示されたものと判別する。インスタンス情報表示部18は、カーソルによって指定された設計対象に関する知識(設計対象の名前、属性名、属性値)を、インスタンス情報記憶部28及び属性情報記憶部30等から求め、これに基づいてインスタンス編集用のウィンドウを作成し、インターフェイス部12を介して表示させる。
【0044】インスタンス編集用ウィンドウが画面上に表示されているとき、ウィンドウ中の枠がマウス等の操作によってカーソルで指定されると、コマンド制御部14は、属性値の入力対象が指定されたものと判別する。そして、指定された枠に対して属性値を入力する。
【0045】指定された枠に対応する属性値が既に属性情報記憶部30に記憶されている場合、属性値設定部26は、属性情報記憶部30に記憶された該当する属性値を新たに入力された属性値に設定しなおす(変更する)。
【0046】また、指定された枠に対応するインスタンスが存在しない場合、インスタンス生成部24は、インスタンス情報記憶部28に新たに記憶領域を確保する。さらに、属性値設定部26は、確保された記憶領域に入力された属性値を記憶させる。こうして設定されたインスタンスに関する情報は、インスタンス情報表示部18によって、インターフェイス部12を介して表示装置に表示される。
【0047】設計型ES構築支援システムにおいて設定された知識は、知識変換部38によって汎用ES構築システムにおける知識表現に変換し、コンパイル等により推論(設計)が可能な状態となる。
【0048】ここで、インスタンスの生成による不定個数表現の機能について説明する。まず、インスタンス生成の設計過程知識について説明する。例えば、図5(a)に示すような設計対象、及び設計過程が記述されるものとする。図5(a)では、設計対象仕様の項目1〜3の値をもとに、部品テンプレートA(図5において中間の設計対象)のインスタンスを生成する設計過程知識の存在を示している。図5(b)には、図5(a)に対応するインスタンス生成知識の記述例を示している。
【0049】このインスタンス生成知識の記述は、設計過程知識記述用のウィンドウ中において記述される。ここでは、C言語による形態で記述されている例を示している。記述内容は、仕様の項目1に設定された値となるまで(初期値i=1、iの値を+1しながらi<項目1の間)、部品テンプレートAの属性A,属性Bに所定の値をセットし、インスタンスを生成(create(attr); )する処理を繰り返すというものである。すなわち、部品テンプレートAに対応する複数のインスタンスの生成の実行を指示するものである。
【0050】なお、設計過程の記述は、C言語による形態に限るものではなく、特定の言語に関する知識を有しないものであっても記述可能となるように、一般の文書の形態で記述できるようにしても良い。
【0051】こうして記述されたインスタンス生成を行なう設計過程知識は、汎用ES構築システムの設計ルール型知識34として設計型ESに組み込まれている。この設計過程知識の手続き知識は、設計型ES構築支援システムを通信によって呼び出し、特定の関数に基づいてインスタンス生成部24によってインスタンスの生成を実行させると共に、設計型ES側(フレーム型知識36内)にも対応するフレームを生成させる。
【0052】まず、同じ構成要素内での詳細設計の例について説明する。同じ構成要素内での詳細設計は、図6に示すように、隣り合った状態間で同じ設計対象を結ぶ線として設計過程が表現される。設計対象がインスタンスを有する場合、属性値設定部26は、設計過程知識に基づいて、設計対象の各インスタンスに対する詳細化の設計を行ない、属性情報記憶部30に格納する。図6では、属性値設定部26は、Aフレームの各インスタンスに設定された属性Aと属性Bの属性値をもとに、設計過程の手続き知識(操作の記述)によって呼び出される関数fによって、Aフレームの属性Cの属性値を決定する。
【0053】次に、複数のインスタンスを利用した設計過程について説明する。例えば、図7に示すように、ある設計対象のインスタンスの値を決定するために、他の設計対象のインスタンスの情報を利用するような場合である。動作可能な設計過程のパターンは、インスタンスの数に応じた組合わせの数だけあるが、設計段階で実際に実行対象となるのは、ある特定の組合わせである場合が多い。組み合わせを制限し必要な情報のみを取り出すためには、設計過程の手続き知識の適用条件を、必要な情報のみを対象として記述することによって実現される。図7では、属性値設定部26は、Aフレームの属性AとBフレームの属性アの属性値が所定の条件を満たす場合に、Bフレームの属性イの属性値に基づいてAフレームの属性Cの属性値を決定する。
【0054】次に、設計型ES構築支援システムによって構築される設計型ESの動作の具体例について説明する。こうして構築された設計型ESでは、設計を行なうモードにおいて、前述したインスタンスの生成による不定個数表現の機能を用いて、広い範囲の問題を解決することができる。
【0055】ここでは、変速機を例にして説明する。図4R>4に示すように、設計対象、設計過程が記述された場合、変速比が仕様であり、仕様から歯車機構の段数を決め、各段毎に詳細化の設計を行ない、最終的に歯車レベルでの属性の情報を得る。段数の決定という設計過程は、設計対象の構造を決定する操作であり、各変速の段における情報を格納するための設計対象に対するインスタンスの生成操作として記述される。
【0056】変速機は、各段の歯車機構が2つの歯車から構成されるものとする。この歯車についての具体的な設計結果は、インスタンス生成部24によって生成されたインスタンス情報記憶部28中の歯車機構のインスタンスに格納されることになる。歯車の詳細設計の設計過程はクラスレベルで記述され、汎用ES構築システム内でルール型知識34として格納されている。
【0057】インスタンス生成部24は、変速機仕様の属性である変速比仕様の属性値をもとに次段の歯車機構(1)のインスタンスを生成する。属性値設定部26は、生成されたインスタンスに、変速比仕様の属性値をもとにして得られた属性変速比の属性値を設定する。さらに、属性値設定部26は、歯車機構(1)のインスタンスから必要な情報、すなわち変速比の属性値を検索して取り出し、次段の歯車機構(2)のインスタンスの属性(歯車A、B)の値を求める。
【0058】このような設計過程は、他のインスタンスから必要な情報を検索して利用する過程であり、インスタンスの組合わせを知識の適用条件として記述することで実現される。
【0059】このようにして、インスタンスを生成する機能を設けることにより、設計対象の構造が動的に決定されていくような問題や、不定個数の仕様が与えられそれらの間の相互作用を考慮しながらそれぞれを設計するような設計問題についても対応可能な設計ESを構築することができる。
【0060】また、クラスレベルで記述された設計過程を、設計対象に対応する複数のインスタンスに適用することができ、従来のようにそれぞれに対して設計過程を記述する必要がなく、全体の記述量を減少させることができる。
【0061】さらに、インスタンスに対する内容を含む設計対象及び設計過程は、表示装置の画面上で図的に作成し、その内容も専用のウィンドウ中で記述することにより、汎用ES構築システムでの知識表現に変換されて設計型ESが構築されるので作業が非常に容易となり、設計型ESの構築や保守等を効率良く行なうことができる。
【0062】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、表示画面上で記述された内容や、設計過程知識中の命令に基づいて、設計対象知識に対するインスタンスと、その属性値を設定し、設計型ESにおける設計に用いることができるので、設計型ES構築支援システムで扱うことが可能な問題の範囲を広げると共に、設計の記述を簡潔にすることが可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係わる設計型ES構築支援システムの構成を示すブロック図。
【図2】汎用ES構築システム及び設計型ES構築支援システムによって構成される設計型ESの構成を示すブロック図。
【図3】設計過程知識及び設計対象知識の表示画面における表現例を示す図。
【図4】インスタンス編集用のウィンドウの表示画面例を示す図。
【図5】インスタンス生成の設計過程知識について説明するための図。
【図6】同じ設計対象内での詳細設計の例について説明するための図。
【図7】複数のインスタンスを利用した設計過程の例について説明するための図。
【符号の説明】
10…入出力装置、12…インターフェイス部、14…コマンド制御部、16…知識表示部、18…インターフェイス情報表示部、20…設計対象知識記憶部、22…設計過程知識記憶部、24…インスタンス生成部、26…属性値設定部、28…インスタンス情報記憶部、30…属性情報記憶部、32…設計ESモジュール、34…ルール型知識、36…フレーム型知識、38…知識変換部、40…通信機能部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 表示画面上で記述された設計対象及び設計過程をもとに、属性を含む設計対象知識及び設計過程知識を生成することにより、設計型エキスパートシステムの構築を支援する設計型エキスパートシステム構築支援システムにおいて、前記設計対象知識に対するインスタンスを生成するインスタンス生成手段と、前記インスタンス生成手段によって生成されたインスタンスの属性値を設定するインスタンス属性値設定手段と、を具備し、前記インスタンス属性値設定手段によって設定されたインスタンスの属性値を用いた設計が可能な設計型エキスパートシステムを構築することを特徴とする設計型エキスパートシステム構築支援システム。
【請求項2】 前記インスタンス生成手段、及び前記インスタンス属性値設定手段は、表示画面上で任意に記述された内容に基づいて、インスタンス生成、インスタンスの属性値の設定を行なうことを特徴とする請求項1記載の設計型エキスパートシステム構築支援システム。
【請求項3】 前記インスタンス生成手段、及び前記インスタンス属性値設定手段は、設計過程に関する記述によって生成された設計過程知識の実行命令に応じて、設計の実行中にインスタンス生成、インスタンスの属性値の設定を行なうことを特徴とする請求項1記載の設計型エキスパートシステム構築支援システム。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【図7】
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【公開番号】特開平5−233295
【公開日】平成5年(1993)9月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−36404
【出願日】平成4年(1992)2月24日
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)