説明

設計支援システムおよび設計支援プログラム

【課題】測定点に含まれるノイズに起因するうねりおよび段差が解消された高品質の曲面を作成することができるシステム等を提供する。
【解決手段】本発明の設計支援処理システム100によれば、測定点に基づく基準曲面の曲率の変化率が制御されながら、基準曲面と測定点との間隔および基準曲面の曲率の両方に鑑みて最適な形態で基準曲面が補正された結果としての出力曲面が作成される。具体的には、設計者が意図した形状と、ノイズ(=設計者が意図していない形状)とが、第1制約条件により区分される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮想的な3次元空間において対象物の設計を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
スタイリングデザインの領域では、クレイ等の現物を用いたモデリング、または、実機に近いモデルの作成およびその評価といった形で現物を介した開発が行われている。しかし、ここから設計および量産へと開発が移行した際、コンピュータにおいて制御できるCADデータが生成される必要がある。このため、実物が測定されることによりCADデータが測定される。3次元測定器で計測された被測定物の曲面の3次元座標の実測点群データから、曲面データを得る曲面変換方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−044688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来手法である最小二乗法によれば、点群データに含まれる実物上の誤差または測定誤差などが十分に除去されないため、出力結果としての曲面にはうねりまたは段差などのノイズが含まれてしまう可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、測定点に含まれるノイズに起因するうねりおよび段差が解消されながらも、設計者が意図した形状が維持されている高品質の曲面を作成することができるシステム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明の設計支援システムは、実空間における複数の測定点に基づき、仮想空間において複数の制御点のそれぞれの座標値を係数とする基底関数の線型結合により定義される基準曲面を作成するように構成されている第1演算処理要素と、前記基準曲面の曲率変化率が指定範囲に収まるという第1制約条件下で、前記複数の制御点の座標値により定義される、前記複数の測定点のそれぞれと出力曲面との間隔の広狭、および、前記出力曲面の曲率の高低を表わす評価指数の値が最小になるという最適化条件を満たす前記複数の制御点の座標値を最適座標値として求めた上で、前記複数の制御点のそれぞれの座標値を係数とする前記基底関数の線型和により定義される前記出力曲面を作成した上で出力するように構成されている第2演算処理要素とを備えていることを特徴とする(第1発明)。
【0007】
本発明の設計支援処理システムによれば、測定点に基づく基準曲面の曲率の変化率が制御されながら、基準曲面と測定点との間隔および基準曲面の曲率の両方に鑑みて最適な形態で基準曲面が補正された結果としての出力曲面が作成される。具体的には、設計者が意図した形状と、ノイズ(=設計者が意図していない形状)とが、第1制約条件により区分されることで、測定点に含まれるノイズに起因する基準曲面のうねりおよび段差が解消され、曲率が最適化条件を定義する指定範囲に応じた滑らかさで変化する高品質の出力曲面が作成される。ここで、設計者が意図した形状とノイズとの区別の基準は、第1制約条件の調節により調節されうる。
【0008】
第1発明の設計支援システムにおいて、前記第2演算処理要素が、前記第1制約条件に加えて、複数の前記出力曲面が連続性を有するという第2制約条件下で、前記最適化条件を満たす前記複数の制御点の座標値を最適座標値として求めた上で、前記複数の制御点のそれぞれの座標値を係数とする前記基底関数の線型結合により定義される新たな複数の出力曲面または当該複数の出力曲面により構成される一の出力曲面を作成した上で出力するように構成されていてもよい(第2発明)。
【0009】
当該構成の設計支援処理システムによれば、前記のように複数の基準曲面のそれぞれのうねりおよび段差が解消されるとともに、出力曲面間の連続性が担保されるように複数の出力曲面が作成されうる。
【0010】
前記課題を解決するための本発明の設計支援プログラムは、前記基準曲面を定義するための指示が入力される入力装置と、前記基準曲面および前記新たな曲面のそれぞれを表示する出力装置とを備えているコンピュータを、第1または第2発明の設計支援システムとして機能させることを特徴とする(第3発明)。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の設計支援システムの構成図。
【図2】本発明の設計支援システムの機能に関する説明図。
【図3】基準曲面の画定方法に関する説明図。
【図4】曲率変化率(G3)の指定範囲に関する説明図。
【図5】出力曲面と測定点群との間隔に関する説明図。
【図6】出力曲面の曲率(G2)に関する説明図。
【図7】連続性を有する曲面の作成方法に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本発明の設計支援システムの構成)
本発明の一実施形態としての設計支援システムの構成について説明する。
【0013】
図1に示されている設計支援システム100は、図形要素を表示する出力装置220および図形要素の変形指示を検知する入力装置210を備えているコンピュータにより構成されている。
【0014】
入力装置210は、たとえば、ペンと、接触状態のペン先の軌跡を時系列的な2次元座標値として検知するパネルとにより構成されている。このパネルは出力装置220と一体的に構成されてもよい。この場合、ペン先が出力装置220を構成するディスプレイ装置の画面に接触する位置または位置軌道が入力装置210により検知される。操作ボタンおよびマウスポインティング装置などが入力装置210の構成要素として採用されてもよい。
【0015】
設計支援システム100は、第1演算処理要素110と、第2演算処理要素120とを備えている。
【0016】
第1演算処理要素110は、実空間における複数の測定点に基づき、仮想空間において複数の制御点のそれぞれの座標値を係数とする基底関数の線型和により定義される基準曲面を作成するように構成されている。
【0017】
第2演算処理要素120は、制約条件(後述)の下で、複数の測定点のそれぞれと出力曲面との間隔の広狭、および、出力曲面の曲率の高低を表わす評価指数の値が最小になるという最適化条件が満たされるような当該出力曲面を作成した上で出力装置220に出力するように構成されている。
【0018】
なお、本発明を構成する「要素」は物理的にはメモリ(ROM,RAM)、および、このメモリから「設計支援プログラム」を読み出して担当する演算処理を実行する演算処理装置(CPU)により構成されている。このプログラムはCDやDVD等のソフトウェア記録媒体を通じてコンピュータにインストールされてもよいが、コンピュータからサーバに要求信号が送信されたことに応じて当該サーバによってネットワークや人工衛星を介して当該コンピュータにダウンロードされてもよい。
【0019】
(本発明の設計支援システムの機能)
前記構成の設計支援システムの機能について説明する。
【0020】
まず、第1演算処理要素110によって、実空間における対象物の外形を表わす測定点に基づき、基準曲面S(u,v)が作成される(図2/STEP010)。
【0021】
具体的には、まず、設計支援システム100に対して実空間における対象物の外形を表わす3次元測定点の座標値が入力される。入力方式は、有線、無線および記録媒体経由の別を問わない。これに応じて、第1演算処理要素110により、実空間における対象物の3次元測定点が、出力装置220に表示されている仮想空間における測定点Pj=(Xj,Yj,Zj)(j=0,1,‥,m)として認識される。この際、必要に応じて実空間のスケールと仮想空間のスケールとの整合処理が実行される。たとえば、図3に示されているように、測定点群により形状および姿勢が表わされる対象物が出力装置220に表示される。図3において、縞模様は、対象物に対する光の映りこみまたはハイライトを表わしている。
【0022】
この状況において、ユーザによる入力装置210の操作によって当該対象物の上に定義される境界線が入力される。たとえば、図3に破線で示されているような境界線が入力される。これに応じて、まず、当該境界線の方向に応じてu−v空間が定義され、等間隔に制御点ai=(xi,yi,zi)(i=0,1,‥,n)が決定される。
【0023】
そして、式(02)で表現されるように、制御点(の座標値)aiを係数とする、パラメータ空間(u,v)における基底関数Bi(u,v)の線型結合により定義されるNURBS曲面(式(02)参照)が基準曲面S(u,v)として作成される。基底関数B(u,v)は、パラメータ空間(u,v)と、当該空間の節目(Knot)とに基づいて一意に定まる。「T」は転置を意味する。
【0024】
S(u,v)=[B][a], ([B]=(B0(u,v), B1(u,v), .., Bn(u,v)), [a]=(a0, a1, .., an)T) ..(02)
【0025】
続いて、第2演算処理要素120により、第1制約条件下で最適化条件を満たす複数の制御点の座標値aiを最適座標値ai’として求めた上で、出力曲面が作成される。
【0026】
「最適化条件」は、式(04)にしたがって、第1評価指数C1および第2評価指数C2の線型結合により表わされる「評価指数C」の値を最小にするという条件である。
【0027】
C=λ1C1+λ2C2 (λ1>0, λ2>0)..(04)
【0028】
「第1評価指数C1」は、複数の測定点Pjのそれぞれと出力曲面S_bar(u,v)との間隔の広狭を表わす指数である。点群データPiに対して、基準曲面S(u,v)において最も近いパラメータ地点(ui,vi)が決定される。そして、測定点PjとNURBS曲面S(uj,vj)との距離の二乗(式(06)参照)、または、当該距離の二乗のうち、制御点aiに応じて変動する部分の比例値(式(08)参照)が第1評価指数C1として定義される。
【0029】
C1=[P] T[P]−2[P][B]T[a]+[a] T[B] T[B][a],
[P]=(P0, P1, .., Pm)T..(06)
C1=[f] T[a]+(1/2)[a] T[H][a],
[f]=−[B] T[P](線形成分1×n), [H]=[B] T[B](2次成分n×n) ..(08)
fおよびHの要素数は測定点データの個数「m」には依存せず、制御点の個数「n」にのみ依存している。このため、一度初期条件が計算されれば、最適計算に際して膨大な量のデータが用いられる必要はなくなるので、計算量の低減が図られる。
【0030】
「第2評価指数C2」は、出力曲面S_bar(u,v)の曲率変化率(G3)の高低を表わす指数である。前記のように基底関数B(u,v)は、パラメータ空間(u,v)と、当該空間の節目とに基づいて一意に定まるため、基準曲面S(u,v)のu,v方向の微分は、制御点aiとは独立に実施される。この性質にしたがって決定されるu方向k階の微分行列[Duk]およびv方向k階の微分行列[Dvk]に基づき、式(10)にしたがって第2評価指数C2が定義される。
【0031】
C2=ε13S/∂u3+ε23S/∂u2∂v+ε33S/∂u∂v2+ε43S/∂v3
=ε1[Du3][Du2][Du1][B][a] +ε2[Du2][Du1][Dv1][B][a]
+ε3[Du1][Dv2][Dv1][B][a]+ε4[Dv3][Dv2][Dv1][B][a](εq>0(q=1〜4))..(10)
【0032】
「第1制約条件」は、曲面S(u,v)の曲率変化率(G3)が指定範囲に収まるという条件であり、式(12)により表現される。
【0033】
bLu3<∂3S/∂u3<bHu3, bLv3<∂3S/∂v3<bHv3,
bLu2v1<∂3S/∂u2∂v<bHu2v1, bLu1v2<∂3S/∂u∂v2<bHu1v2
すなわち
bLu3<[Du3][Du2][Du1][B][a]<bHu3, bLv3<[Dv3][Dv2][Dv1][B][a]<bHv3,
bLu2v1<[Du2][Du1][Dv1][B][a]<bHu2v1, bLu1v2<[Du1][Dv2][Dv1][B][a]<bHu1v2..(12)
【0034】
ここで「bLu3」「bHu3」「bLv3」「bHv3」「bLu2v1」「bHu2v1」「bLu1v2」「bHu1v2」は、u,v空間でのG3に対する制約値(指定範囲の下限値および上限値)であり、たとえば、ユーザによる入力装置210の操作により設定される「しなり」のスケールにより変動する。「所定半径の球に対して、制御点ごとにフィッティングが行われた結果よりそれぞれの当該制御点におけるG3値」が、しなりの基準値であると定義される。そして、制約値は、当該G3値または所定の因子(しなりの硬軟を表わす係数値など)に鑑みて当該G3値が補正された値が制約値として用いられる。所定半径は、設計対象物の素材の曲げ特性等に鑑みて適当な値(たとえば10[m])が採用される。これにより、実空間(x,y,z)におけるG3値がパラメータ空間(u,v)におけるG3値に置換される。ユーザにより、その制約値または前記所定の因子が指定される。
【0035】
具体的には、図4に示されているように、基準曲面Sに対してその中心において接する平面および所定半径が定義される。この上で、基準曲面の制御点(●参照)が平面に投影され、さらに円に投影された点(○参照)を通る曲面が作成される。そして、当該曲面の各点におけるG3値が、もっとも硬い設定のときの指定範囲の上限値として設定される。
【0036】
条件付き線形行列の収束演算には「2次計画法(Quadratic Programming)」が用いられる。2次計画法を解くアルゴリズムとしてはOOQP(Object Oriented Quadratic Programming)という手法が用いられる。
【0037】
評価指数Cおよび第1制約条件Aのそれぞれは、一般系として式(14)および(16)のそれぞれにより表現される。
【0038】
C=(1/2)[a]T[H][a]+[f]T[a] ..(14)
【0039】
[A][a]>[b] ..(16)
【0040】
[a]は解を意味する。[H]は目的関数の2次成分である。[f]は目的関数の線形成分を意味する。
【0041】
ここで、G2接続条件(後述)などを考慮して、等号の制約条件が式(18)により定義されている。
【0042】
[D][a]=[d]([D]:制約条件計算式。[d]:制約条件値)..(18)
【0043】
条件(14)および(16)を満たし、式(18)の値を最小化する解aが求められる。制約条件がない場合、最適解[a_bar]において式(20)が成立する。
【0044】
D[C]/d[a_bar]=0 すなわち [H][a_bar]=−[f] ..(20)
【0045】
しかるに、制約条件がある場合には式(20)が常に成立するとは限らない。そこで、それぞれの制約条件に対応した新たな未知数「y」「z」「s」に関する式(22)で表現される関数「L」が導入される。ここで「s」および「z」は不等号を成立させるための正の値である。
【0046】
L=(1/2)[a]T[H][a]+[f]T[a]−[y]([D][a]−[d])−[z]([A][a]-[s]-[b])..(22)
【0047】
式(22)右辺第1項および第2項は評価指数Cを表わしている。式(22)右辺第3項は等号の制約条件を表わしている(式(18)参照)。式(22)右辺第4項は不等号の制約条件を表わしている(式(16)参照)。
【0048】
最適解a’においては式(24)〜(30)により表わされる最適化条件が満たされる。
【0049】
d[L]/d[a’]=[0] すなわち [H][a’]−[D]T[y]−[A]T[z]=−[f] ..(24)
【0050】
d[L]/d[y]=[0] すなわち [A]T[a’]=[b] ..(26)
【0051】
d[L]/d[z]=[0] すなわち [C]T[z]−[s]=[d] ..(28)
【0052】
d[L]/d[s]=[0] すなわち [s][z]=[0] ..(30)
【0053】
これらの式(24)〜(30)がNewton法にしたがって解かれることにより、制御点おそれぞれの最適座標値ai’が算出される。そして、制御点の最適座標値ai’を係数とする基底関数Bi(u,v)の線型結合により定義されるNURBS曲面(式(02)参照)が出力曲面S_bar(u,v)として作成される。
【0054】
曲面のしなりが比較的軟らかく設定された場合、すなわち、指定範囲の制約値の絶対値が比較的大きく設定された場合、図5(a)および図6(a)に形状特性が示されている曲面が作成される(第1実施例)。曲面のしなりが比較的硬く設定された場合、すなわち、指定範囲の制約値の絶対値が比較的小さく設定された場合、図5(b)および図6(b)に形状特性が示されている曲面が作成される(第2実施例)。比較のため、従来法にしたがって作成された曲面の形状特性が、図5(c)および図6(c)に示されている(比較例)。
【0055】
図5(a)〜図5(c)においては、出力曲面と測定点との間隔の長短が明度の高低(明るいほど間隔が短い。)によって表わされている。図6(a)〜図6(c)においては、出力曲面のある平面との交線に沿った出力曲面の曲率の高低が下方に(曲率半径の中心に向かって)延びる線分の長短(曲率が高いほど線分が長い。この線分を「ひげ」という。)により表わされている。
【0056】
複数の曲面から構成されている曲面が作成される場合、しなりに関する第1制約条件(式(12)参照)に加えて、当該複数の曲面間に位置(G0)、接線(G1)および曲率(G2)のそれぞれが連続性を有するという第2制約条件が満たされる必要がある。
【0057】
ここで、たとえば、第1基準曲面S1の制御点a1〜anおよび第2基準曲面S2の制御点b1〜bnについて評価指数Cの値が同時に計算される場合を考える。図7(a)に示されている第1基準曲面S1および第2基準曲面S2の境界線にはu方向に沿ったひげの輪郭に段差があり、当該境界線において曲率(G2)が不連続となっている。この場合、第1基準曲面S1を基礎とする第1出力曲面S1_barの(u1,v1)で定義される点と、第2基準曲面S2を基礎とする第2出力曲面S2_barの(u2,v2)で定義される点とのu方向のG2連続性を持たせるには、式(32)で表わされる「第2制約条件」が満たされればよい。
【0058】
2S1_bar /∂u12−∂2S2_bar /∂u22=0 ..(32)
【0059】
そこで、第1制約条件(式(12)参照)に加えて、第2制約条件(式(32)参照)の下で、制御点の座標値a1〜anおよびb1〜bnを未知数として第1評価指数C1が定義され(式(08)参照)、最適化条件を満たすような制御点の最適座標値a1’〜an‘およびb1’〜bn’が決定される。
【0060】
そして、制御点の最適座標値a1’〜an’を係数とする基底関数B11(u1,v1)〜B1n(u1,v1)の線型結合および制御点の最適座標値b1’〜bn’を係数とする基底関数B21(u2,v2)〜B2n(u2,v2)の線型結合により、u方向にG2連続性を有する2つの曲面S1’およびS2’が作成される。これにより、たとえば、図7(b)に示されているように、境界線においてu方向に沿ったひげの輪郭が滑らかであり、曲率(G2)が連続性を有する出力曲面S1’およびS2’が出力装置220のディスプレイ装置に表示される。
【0061】
(本発明の設計支援システムの作用効果)
本発明の設計支援システム100によれば、測定点に基づく基準曲面Sの曲率(G2)の変化率(G3)が制御されながら、基準曲面Sと測定点Piとの間隔および基準曲面の曲率の両方に鑑みて最適な形態で基準曲面Sが補正された結果としての出力曲面S_barが作成される。これにより、測定点Piに含まれるノイズに起因する基準曲面Sのうねりおよび段差が解消され、曲率が最適化条件を定義する指定範囲に応じた滑らかさで変化する高品質の曲面S_barが作成されうる。
【0062】
図5(a)〜図5(c)から明らかなように、第1実施例および第2実施例の曲面は、比較例の曲面と比較して明度が若干低く、測定点群の再現性は若干低い。その一方、図6(a)〜図6(c)から明らかなように、第1実施例および第2実施例の曲面は、比較例の曲面と比較してひげの輪郭が滑らかであり、曲率が滑らかに変化し、うねりや段差が見られないという観点からは品質が著しく高い。よって、本発明の手法によれば、従来法と比較して、総合的に品質の高い曲面が作成されうる。
【0063】
また、図6(a)および図(b)から明らかなように、しなりの硬軟の相違により、出力曲面のひげの輪郭、すなわち、曲率の変化態様が調節されうる。
【0064】
さらに、第1制約条件に加えて、複数の出力曲面Sk_bar(k=1,2,..)が連続性を有するという第2制約条件下で、最適化条件を満たすように新たな複数の曲面Sk’または当該複数の曲面Sk’により構成される新たな一の曲面S_barが作成される。これにより、前記のように複数の基準曲面Skのそれぞれのうねりおよび段差が解消されるともに、曲面間の連続性が担保されるように複数の曲面Sk’が作成されうる(図7参照)。
【符号の説明】
【0065】
100‥設計支援システム、110‥第1演算処理要素、120‥第2演算処理要素、210‥入力装置、220‥出力装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実空間における複数の測定点に基づき、仮想空間において複数の制御点のそれぞれの座標値を係数とする基底関数の線型結合により定義される基準曲面を作成するように構成されている第1演算処理要素と、
前記基準曲面の曲率変化率が指定範囲に収まるという第1制約条件下で、前記複数の制御点の座標値により定義される、前記複数の測定点のそれぞれと出力曲面との間隔の広狭、および、前記出力曲面の曲率の高低を表わす評価指数の値が最小になるという最適化条件を満たす前記複数の制御点の座標値を最適座標値として求めた上で、前記複数の制御点のそれぞれの座標値を係数とする前記基底関数の線型和により定義される前記出力曲面を作成した上で出力するように構成されている第2演算処理要素とを備えていることを特徴とする設計支援システム。
【請求項2】
請求項1記載の設計支援システムにおいて、
前記第2演算処理要素が、前記第1制約条件に加えて、複数の前記出力曲面が連続性を有するという第2制約条件下で、前記最適化条件を満たす前記複数の制御点の座標値を最適座標値として求めた上で、前記複数の制御点のそれぞれの座標値を係数とする前記基底関数の線型結合により定義される新たな複数の出力曲面または当該複数の出力曲面により構成される一の出力曲面を作成した上で出力するように構成されていることを特徴とする設計支援システム。
【請求項3】
前記基準曲面を定義するための指示が入力される入力装置と、前記基準曲面および前記新たな曲面のそれぞれを表示する出力装置とを備えているコンピュータを、請求項1または2記載の設計支援システムとして機能させることを特徴とする設計支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−150484(P2011−150484A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10396(P2010−10396)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】