説明

設計支援システム

【課題】
機械部品などの設計手順テンプレート及びテンプレートに関する信頼性の高い知見を効率的に入手し、設計効率を向上する。
【解決手段】
コンピュータを利用して、設計手順に知見情報を関連付けて記述したテンプレートに従い、設計業務を案内する設計支援システムにおいて、ユーザ情報及びメールアドレスを記憶したユーザ管理データベース2と、知見情報と関連付けられたテンプレートを記憶したテンプレートデータベース3と、を備え、テンプレートに設定された公開範囲を示す情報と共に、ユーザが利用可能なテンプレートの一覧を画面表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械・建築分野などの設計者が使用する、設計業務を合理化するための支援システムに関し、特に、設計が不明である事項を有識者に問合わせるときに好適である。
【背景技術】
【0002】
製品や建築物の設計業務では、構造強度,振動,熱流体などの設計計算や様々な設計検討が行われており、設計計算に用いる計算ツールや材料データと供に、加工・成形,表面処理,腐食などの設計に関る多くの知識が必要になる。このような設計業務を支援するために、計算ツール,材料データ,ノウハウなどの知見情報を設計業務の手順に関連付けてテンプレートとして登録し、設計業務を適切に案内する設計支援システムが知られており、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
また、インターネット上の掲示板などを用いて、設計などに関する技術的な不明点を問合わせできるサイトがあり、有識者の知見を入手することが可能である。
【0004】
【特許文献1】特開2004−110704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術においては、製品や建築物の設計業務の手順および知見は企業秘密であることが多く、設計支援システムを導入した企業自らが設計業務のテンプレートを作成し、企業内に限定して利用することが多い。このように、特殊な技術・技能を扱う場合や企業内で蓄積したノウハウを扱う場合は、企業内でテンプレートを作成するのが望ましい。
【0006】
しかし、テンプレートを作成しても、テンプレートに記述されている知見以上の情報を得ることができない。また、インターネットの問合わせ掲示板においても、知見を有している人が掲示板を見なければ回答をもらうことができない。そのため、知見を得るには時間がかかる場合があり、迅速さを求められる設計業務には適していない。
【0007】
さらに、このような掲示板では、知見を提示した相手が誰なのかわからないことが多く、情報の信憑性については利用する側で判断する必要がある。
【0008】
また、実際の設計業務では、軸,ねじ・ボルト,溶接継手などの機械要素に関する設計業務も多い。このような設計業務の設計手順や知見は、市販の設計関連の書籍に記載されていることが大半であり、企業独自の特別なノウハウが含まれている場合を除き、企業秘密とはならない情報である。このような情報は、特に経験の浅い設計者にとって有用であり、これらのテンプレートを多くの機械要素について手軽に入手することが可能であれば、設計の見落としを防ぎ、設計効率を大幅に向上する効果が見込める。
【0009】
本発明の目的は、機械部品などの設計手順テンプレート及びテンプレートに関する信頼性の高い知見を効率的に入手し、設計効率を大幅に向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために、コンピュータを利用して、設計手順に知見情報を関連付けて記述したテンプレートに従い、設計業務を案内する設計支援システムにおいて、ユーザ情報及びメールアドレスを記憶したユーザ管理データベースと、知見情報と関連付けられた前記テンプレートを記憶したテンプレートデータベースと、を備え、前記テンプレートに設定された公開範囲を示す情報と共に、前記ユーザが利用可能な前記テンプレートの一覧を画面表示するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、テンプレートに設定された公開範囲を示す情報と共に、ユーザが利用可能な知見と関連付けられたテンプレートの一覧を画面表示するので、ユーザ相互に利用できる設計手順及びそれに関連した知見が明確になり、利用が可能となり、テンプレート作成の労力を大幅に減少でき、設計効率を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る設計支援システムの一実施例を、図面を用いて説明する。本実施例は、設計支援システムを所有する運営会社が、複数の企業ユーザに対して、設計支援システムの利用サービスを提供している例である。
【0013】
図1は、本実施形態のシステム全体構成を示す構成図である。設計支援システム1は、ユーザ管理データベース2,テンプレートデータベース3,画面処理部4で構成されている。ユーザ管理データベース2は、設計支援システム1を利用するユーザの情報を蓄積するデータベースである。テンプレートデータベース3は、設計業務の手順を記述したテンプレート、およびテンプレートに関連付けられた知見情報を蓄積するデータベースである。画面処理部4は、ユーザの処理に従って設計支援システム1の画面を表示する機能を有する。
【0014】
設計支援システム1は、Web形式のシステムであり、インターネット5に接続された運営会社のサーバ7で動作している。設計支援システム1のユーザは、ユーザ端末6a,6bのWebブラウザを用いて、インターネット5経由で設計支援システム1を利用する。なお、設計支援システム1は、社内LANなどのイントラネットに接続されたサーバ7で動作させ、社内に限定して使用しても良い。
【0015】
図2は、設計支援システム1のテンプレート一覧画面20である。設計支援システム1の利用登録をしたユーザが、設計支援システム1にログインすると、この画面が表示される。テンプレートの分類には、ルートテンプレート21、およびカスタムテンプレート22の2種類がある。ルートテンプレート21とは、新規に登録されたテンプレートであり、カスタムテンプレート22は、ルートテンプレート21をカスタマイズして再登録されたテンプレートである。
【0016】
公開範囲フラグ23は、テンプレートの公開範囲を示しており、「一般公開」「企業内」「個人」の3種類がある。「一般公開」は、設計支援システム1を利用する全てのユーザが利用でき、「企業内」はテンプレートを登録したユーザの企業内でのみで利用でき、「個人」は登録した本人のみが利用できる。公開範囲フラグ23は、テンプレートを登録する際に「一般公開」「企業内」「個人」のいずれかを選択できる。カスタマイズ内容24には、カスタムテンプレート22をカスタマイズした内容が記載されている。テンプレート一覧画面20の「選択」ボタンを選択すると、対応するテンプレートの設計手順の画面が表示される。
【0017】
設計手順と知見を関連付けるテンプレートの構造を説明する。図3に、テンプレート構造図30を示す。テンプレートは、1つのテンプレート名称31,1つ以上の手順名称32で構成されている。手順名称32は、1つ以上の項目名称33で構成されている。さらに、項目名称33は、1つ以上の知見名称34で構成されている。知見名称34には、1つの知見情報35が関連付けられている。
【0018】
図4は、設計支援システム1の設計手順画面40を示している。この画面は、図2のテンプレート一覧画面20の「選択」ボタンを選択すると表示される。設計手順は画面左の「Start」から始まり、画面右の「End」で終了する。設計手順に従いフローの枝葉に関連付けられた知見を順次参照することにより、経験の浅いユーザでも見落としなく設計業務を進めることができる。テンプレート名称31,手順名称32,項目名称33は、図3のテンプレート構造図30の各名称に対応している。項目名称33の「選択」ボタンを選択すると、図5の知見一覧画面50が表示される。
【0019】
図5の知見一覧画面50では、知見名称34の「選択」ボタンを選択すると関連付けられている知見情報35が表示される。知見情報35とは、設計ノウハウが記載された文書ファイル,関連した計算を行う計算ツール,関連した材料データベース,関連情報WebサイトのURLなどの設計技術情報である。
【0020】
図6は、ユーザ管理データベース2、およびテンプレートデータベース3の構成図である。
【0021】
ユーザ管理データベース2は、「ユーザ名」「企業ID」「企業名」「氏名」「メールアドレス」のフィールドで構成されている。図6に示したユーザ管理データベース2には、「aaaaa」「bbbbb」「ccccc」という3名のユーザが登録されており、企業IDが同じ「aaaaa」「bbbbb」は同一企業のユーザであることを示している。ユーザの登録は、設計支援システム1の運営会社に登録申請することで、本データベースにデータが追加される。
【0022】
テンプレートデータベース3は、登録管理テーブル60,利用管理テーブル61,テンプレート保存領域62で構成されている。
【0023】
登録管理テーブル60は、「ユーザ名」「ルートテンプレート」「カスタマイズ内容」「テンプレートID」「公開範囲」のフィールドで構成されており、設計支援システム1にテンプレートが登録されると、本テーブルにデータが追加される。「ユーザ名」が「system」になっているのは、設計支援システム1の運営会社が登録したテンプレートである。その他は、ユーザが登録したテンプレートである。「公開範囲」フィールドには、公開範囲フラグ23が格納されている。
【0024】
利用管理テーブル61は、「ユーザ名」「テンプレートID」「知見問合わせグループ」のフィールドで構成されており、ユーザからテンプレートの利用要求があると、本テーブルにデータが追加される。テンプレート保存領域62には、テンプレート、および知見情報35の実体が「テンプレートID」と関連付けられて保存されている。
【0025】
テンプレートの利用手順の例を、図7(a)のフローチャートに従って説明する。
【0026】
ステップS100で、図2のテンプレート一覧画面20を用いて、利用したいテンプレートを選択する。テンプレート一覧画面20に表示されるのは、ユーザが利用できるテンプレートのみである。例えば、図6の登録管理テーブル60を用いて説明すると、ユーザ「aaaaa」のテンプレート一覧画面20に表示されるのは、「一般公開」のテンプレートであるテンプレートID「1」「2」「5」「6」、同一企業ユーザ「bbbbb」が「企業内」で登録したテンプレートID「7」、および「aaaaa」自身が「個人」で登録したテンプレートID「8」のテンプレートである。
【0027】
ステップS101で、このテンプレートの知見問合わせグループに参加するか否かの選択が促されるので、どちらかを選択する。知見問合わせグループに参加すると、このテンプレートの登録ユーザ、およびこのテンプレートの知見問合わせグループに属している、他のユーザに知見を問合わせすることや、他のユーザからの問合わせに回答する権利を得ることができる。
【0028】
ステップS102で、利用管理テーブル61に、自分のユーザ名,利用選択したテンプレートID,知見問合わせグループへの参加可否の情報が登録される。
【0029】
ステップS103で、利用選択したテンプレートの設計手順画面40が表示され、テンプレートが利用できるようになる。
【0030】
次に、カスタムテンプレートの登録手順の例を、図7(b)のフローチャートに従って説明する。
【0031】
ステップS200で、設計支援システム1のテンプレートカスタマイズ画面(図示は省略する)を用いて、手順名称32,項目名称33,知見名称34,知見情報35の追加・削除・変更などを行い、カスタムテンプレート22を作成する。
【0032】
ステップS201において、公開範囲の選択が促されるので、公開範囲フラグ23の「一般公開」「企業内」「個人」のいずれかを選択する。
【0033】
ステップS202で、登録管理テーブル60に、自分のユーザ名,カスタマイズの基となったルートテンプレート21,カスタマイズ内容24,テンプレートに割当てられたテンプレートID,公開範囲フラグ23が登録される。作成されたカスタムテンプレート22および知見情報35の実体は、テンプレート保存領域62に、テンプレートIDと関連付けられて保存される。
【0034】
一方、ルートテンプレート21の登録手順は、設計支援システム1のテンプレート作成画面(図示は省略する)を用いてルートテンプレート21を作成し、ステップS201以降同様の手順である。
【0035】
次に、ユーザ「aaaaa」が知見の問合わせをする手順の例を、図7(c)のフローチャートに従って説明する。
【0036】
ステップS300で、「aaaaa」が問合わせグループに参加しているテンプレートの一覧画面(図示は省略する)を表示する。ここで、図6の利用管理テーブル61を見ると、「aaaaa」が問合わせグループに参加しているのは、テンプレートID「1」だけである。そのため、登録管理テーブル60のテンプレートIDが「1」である、「ねじ締結体の設計」がテンプレートの一覧画面に表示されることになる。本手順例では、「ねじ締結体の設計」を選択した場合について説明する。
【0037】
ステップS301で、問合わせ内容の入力を促されるので、問合わせ内容を入力する。
【0038】
ステップS302で、設計支援システム1は、テンプレートID「1」の知見問合わせグループに参加している「bbbbb」「ccccc」のメールアドレスに質問内容と回答用ページのURLを記載したメールを送信する。
【0039】
ステップS303で、知見問合わせグループの参加者からの回答があった場合は、ステップS304に進み、設計支援システム1は、知見問合わせグループの参加者全員に回答内容をメールで送信する。
【0040】
問合わせや回答の際に、知見問合わせグループの参加者に通知されるのはユーザ名のみであり、企業名やメールアドレスなどの個人を特定する情報は知らされないため匿名性は確保されている。
【0041】
なお、回答された知見は、形式知を共有化する目的で、テンプレートと関連付けられて保存されている。テンプレートの利用者は、この情報を必要に応じて参照することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明による一実施形態のシステム全体構成を示す構成図。
【図2】一実施形態におけるテンプレート一覧画面を示す図。
【図3】一実施形態におけるテンプレートの構造を示す図。
【図4】一実施形態における設計手順画面を示す図。
【図5】一実施形態における知見一覧画面を示す図。
【図6】一実施形態におけるユーザ管理データベースおよびテンプレートデータベースの構成を示す図。
【図7】一実施形態におけるシステムの処理手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0043】
1 設計支援システム
2 ユーザ管理データベース
3 テンプレートデータベース
4 画面処理部
5 インターネット
6a,6b ユーザ端末
7 運営会社のサーバ
20 テンプレート一覧画面
21 ルートテンプレート
22 カスタムテンプレート
23 公開範囲フラグ
24 カスタマイズ内容
30 テンプレート構造図
31 テンプレート名称
32 手順名称
33 項目名称
34 知見名称
35 知見情報
40 設計手順画面
50 知見一覧画面
60 登録管理テーブル
61 利用管理テーブル
62 テンプレート保存領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを利用して、設計手順に知見情報を関連付けて記述したテンプレートに従い、設計業務を案内する設計支援システムにおいて、
ユーザ情報及びメールアドレスを記憶したユーザ管理データベースと、
知見情報と関連付けられた前記テンプレートを記憶したテンプレートデータベースと、
を備え、前記テンプレートに設定された公開範囲を示す情報と共に、前記ユーザが利用可能な前記テンプレートの一覧を画面表示することを特徴とする設計支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載のものにおいて、前記ユーザ管理データベース及び前記テンプレートデータベースはネットワークに接続され、前記画面表示はWebブラウザを用いて行われることを特徴とする設計支援システム。
【請求項3】
請求項1に記載のものにおいて、前記公開範囲は、少なくとも一般公開,企業内,個人とされたことを特徴とする設計支援システム。
【請求項4】
請求項1に記載のものにおいて、前記画面表示で個々の前記テンプレートを選択する際に、知見問合せグループへの参加可否を選択可能とし、前記知見問合せグループへの参加可が選択された場合、選択した前記ユーザを前記知見問合せグループとして登録し、登録されている他のユーザへ問合わせ、あるいは回答を可能とすることを特徴とする設計支援システム。
【請求項5】
請求項1に記載のものにおいて、前記画面表示で前記テンプレートが選択された場合、ユーザ名,選択したテンプレートID,知見問合せグループへの参加可否の情報を前記ユーザ管理データベースへ登録することを特徴とする設計支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−140374(P2009−140374A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317833(P2007−317833)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】