診断アッセイ
【課題】本発明は、従来技術に関する問題、特に同種抗体および自己抗体を検出するための既存の方法に関する問題を克服しようとする。
【解決手段】本発明は、血液型抗原のミモトープ、血液型抗原のミモトープを同定するための方法、および前記ミモトープを用いる血液型抗原に対する抗体を同定するための方法に関する。本発明のさらなる態様によれば、試料中の血液型抗原に対する抗体を検出するための方法が提供される。その方法は、前記血液型抗原のミモトープと、試験される試料とを反応させる工程、試料とミモトープとの間のいずれかの反応を検出する工程を含み、ここで、試料とミモトープとの間の反応は、血液型抗原に対する抗体の存在を示す。
【解決手段】本発明は、血液型抗原のミモトープ、血液型抗原のミモトープを同定するための方法、および前記ミモトープを用いる血液型抗原に対する抗体を同定するための方法に関する。本発明のさらなる態様によれば、試料中の血液型抗原に対する抗体を検出するための方法が提供される。その方法は、前記血液型抗原のミモトープと、試験される試料とを反応させる工程、試料とミモトープとの間のいずれかの反応を検出する工程を含み、ここで、試料とミモトープとの間の反応は、血液型抗原に対する抗体の存在を示す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液型抗原のミモトープ、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
血液型抗原は、赤血球表面の膜タンパク質に存在する。29の血液型系(Rhesus、Kell、Duffy、Kidd、ABO、MNS、P、Lutheran、Lewis、Diego、Yt、Xg、Scianna、Dombrock、Colton、Landsteiner−Wiener、Chido−Rodgers、Hh、Kx、Gerbich、Cromer、Knops、Indian、Ok、Raph、JMH、I、GlobosideおよびGIL)のうち1つを除いて全てをコードする遺伝子は、クローニングされ、配列決定され、アミノ酸配列が推定され、膜構造が予測される。
【0003】
Rhesus、Kell、DuffyおよびKidd血液系などのうち、Rhesus抗原は最も複雑であり、2つの高い相同遺伝子である、RHDおよびRHCEの生成物である。抗原は、抗体結合に利用できる6個の細胞外ループを有すると予測される。
【0004】
Rhesus抗原のうち、最も一般に発現される、RhDポリペプチドは、その最も近い等価物であるRhCcEeポリペプチドと36アミノ酸異なる。両方は、Rhesus関連糖タンパク質(RAG)ポリペプチドと同時に発現される。
【0005】
RHCE遺伝子産物は4つの対立形質に存在し、各々の対立遺伝子は、組み合わせて、すなわち、Ce、ce、cEまたはCEの2つの抗原の発現を決定する。RhC抗原は、ループ2における1つのアミノ酸がRhcとは異なり(Ser103Pro)、そしてE/eに関して、単一の外表面アミノ酸の相違はループ4に予測される(Pro226Ala)。
【0006】
Kellタンパク質は、単一の膜を通り抜ける構造であり、K/k対立遺伝子は、細胞外領域に単一のアミノ酸変化(Met193Thr)を生じる一塩基変異多型(SNP)の結果である。
【0007】
Duffyタンパク質は、N末端が細胞外である3つの細胞外ループを有すると予測され、Fya/Fyb対立遺伝子は、N末端領域にアミノ酸置換(Asp42Gly)を引き起こすSNPの結果である。
【0008】
Kidd糖タンパク質は、細胞内N末端およびC末端を有する10個の膜貫通ドメインを有すると予測される。Jka/Jkb多型は、第4の細胞外ループにおいて単一のアミノ酸置換(Asp280Asn)を引き起こすSNPによる。
【0009】
抗体に結合する抗原上の免疫学的決定基は、B細胞エピトープと定義される。なぜなら、それらは、Bリンパ球の表面膜免疫グロブリン受容体によって認識されるからである。これらのエピトープは、直線状、すなわち、タンパク質配列由来のアミノ酸の連続的な伸長または立体構造であってもよく、隣接しないアミノ酸の空間的に並んだ位置に依存する。血液型抗原のB細胞エピトープ構造の研究は、ほとんどがRhD抗原に限定され、今まで、30を越えるエピトープが血清学的に同定されている。
【0010】
単一アミノ酸置換は、関与する予測されたループが直線状の配列においていくらか離れていても、1つより多いエピトープに影響を与え得、RhD B細胞エピトープが立体構造であるという結論が出される。
【0011】
C/cおよびE/e上のB細胞エピトープは、少数であると推定されるが、立体構造であるように思われる。なぜなら、抗原性はRAGポリペプチドの同時発現を必要とするからである。
【0012】
K/k多型は、K対立遺伝子の抗原性の原因となり得る糖タンパク質部位を破壊すると推定され、エピトープ決定基も立体構造であると予想される。
【0013】
血液型抗原は、輸血された赤血球の破壊を引き起こし得る同種抗体の生成物を含み得る。従って、輸血された血液に対する反応は、輸血された赤血球の受容者が、それらの破壊を生じるこれらの赤血球に対する抗体を有する場合に生じ得る。熱、低血圧、吐き気および嘔吐、ならびに腰痛および胸の痛みを含む、即時反応が生じ得、反応の重篤度は関与する抗体のクラスおよび量に依存する。
【0014】
血液型抗原に対する同種抗体はまた、妊婦の胎盤を通過し、新生児溶血性疾患(HDNB)を生じ得る。新生児溶血性疾患(HDNB)は、母が幼児の赤血球上の抗原に対して感受性のある場合に生じ得、これらの抗原に対するIgG抗体を作製する。これらの抗体は胎盤を通過し、胎児の赤血球と反応して、それらの破壊を生じ得る。RhDは最も一般的に関与する抗原である。
【0015】
血液型抗原はまた、自己免疫性溶血性貧血などの自己免疫疾患に関与する自己抗体の生成物を含み得る。この自己免疫疾患に対する誘因はまだ知られておらず、従って、いかなる時にも生じる場合があり、自分の身体の赤血球細胞を攻撃する特異性のある広範なRh群の身体産生自己抗体を生じる。
【0016】
同種抗体産生に関連する最も重要な血液型は、Rhesus、Kell、Duffy、およびKiddである。
【0017】
輸血された赤血球を破壊し得るか、またはHDNBを引き起こすために胎盤を通過し得る同種抗体を検出するため、あるいは自己抗体を検出するための現在の方法は、供血者の赤血球試薬に頼っている。それらは、有効期間が短く、供血者間の抗原発現においてかなり変化する。ヒトの血液製剤の使用はまた、安全性の関与、例えば、ウイルス感染の潜在的な移入に関することを導く。ヒトの試薬を使用する場合に必要とされる厳密な試験およびスクリーニングは、試料間の不整合性とともに、同種抗体を検出するための試薬の利用可能性を遅らせ、そして、適した試薬を得る費用を増加させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従って、本発明は、従来技術に関する問題、特に同種抗体および自己抗体を検出するための既存の方法に関する問題を克服しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の態様によれば、血液型抗原のミモトープを提供する。
【0020】
用語「ミモトープ」とは、天然ペプチドのエピトープを模倣できるペプチドをいう。通常、このようなペプチドは合成ペプチドである。これに関して、「合成ペプチド」は、生物系において天然に発現されるよりむしろ、合成される任意のペプチドを含む。合成は、ファージディスプレイ、F−moc化学あるいは生物系もしくは非生物系または環境における外来ペプチドを発現または合成するための任意の他の手段などの組み換え技術によってなされてもよい。
【0021】
従って、本発明は、血液型抗原に対して引き起こされる抗体に結合できる新規のペプチドを提供する。これらのペプチドは、必ずしもヒトの血液などの天然源由来ではなく、従って、健康上のリスク、保存の問題およびそれらの関連する変動性をもたらさない。
【0022】
簡便には、血液型抗原は、Rhesus、Kell、Duffy、Kidd、ABO、MNS、P、Lutheran、Lewis、Diego、Yt、Xg、Scianna、Dombrock、Colton、Landsteiner−Wiener、Chido−Rodgers、Hh、Kx、Gerbich、Cromer、Knops、Indian、Ok、Raph、JMH、I、GlobosideまたはGILから選択される。
【0023】
ミモトープの推定アミノ酸構造は、それが模倣する抗原のアミノ酸構造に必ずしも対応していなくてもよい。実際に、本研究において、同定された多数の血液型ミモトープは、それらが模倣する天然抗原のアミノ酸配列とは広範に異なるアミノ酸配列を有することが発見された。
【0024】
多くの血液型抗原のエピトープは構造が複雑であると考えられているため、イムノパニングによって本発明において同定された合成ペプチドが、特定の様式で天然抗原に対して引き起こされた抗体に結合できることは驚くべきことである。この発見は、合成血液型ミモトープが、それらの対応する抗原に対して引き起こされた抗体に特異的に結合することを可能にする三次構造を担い、維持することを示唆する。
【0025】
簡便には、ミモトープは合成される。これにより、ヒトの血液試薬を用いることに関連する問題、例えば、汚染の潜在的リスク、および感染、保存に関する困難性、ドナーの識別、変動性およびスクリーニングが取り除かれる。費用に関連するこれらの問題も、合成ミモトープの使用により減少されるだろう。合成ミモトープの使用はまた、使用するために利用可能である試薬に対するより程度の高い制御を提供し、不足が決して起こらないことを確実にし、試薬についての不必要な待機を回避できる。
【0026】
本研究を通して、多数の血液型抗原のミモトープが同定された。血液型ミモトープとして簡便に同定されたペプチドのいくつかは、表2〜5に同定され、ペプチド断片、免疫反応性類似体またはそれらの誘導体を含む。
【0027】
本発明のさらなる態様によれば、血液型抗原のミモトープを同定するための方法が提供され、その方法は、ランダムファージディスプレイライブラリーと、血液型抗原に対する抗体とを接触させること、およびファージディスプレイライブラリーにおけるペプチドに対する抗体の結合を検出することを含み、ここで、ペプチドに対する抗体の結合は、ペプチドが血液型抗原のミモトープであることを示す。
【0028】
好ましくは、血液型抗原は、Rhesus、Kell、Duffy、Kidd、ABO、MNS、P、Lutheran、Lewis、Diego、Yt、Xg、Scianna、Dombrock、Colton、Landsteiner−Wiener、Chido−Rodgers、Hh、Kx、Gerbich、Cromer、Knops、Indian、Ok、Raph、JMH、I、GlobosideまたはGILである。これらは、同種抗体および自己抗体の産生に関連する血液型抗原である。
【0029】
ミモトープが結合する抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の調製物であってもよい。モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を産生するための方法は、当該分野において周知である。
【0030】
7量体、12量体、および15量体のペプチドを含むランダムファージディスプレイライブラリーが、天然血液型抗原に対して引き起こされる抗体に結合できるペプチドを同定するために使用された。抗体に結合されたペプチドの同定および配列決定により、潜在的な血液型抗原ミモトープの同定が可能になった。その後のELISAによるこれらのペプチドの解析、続く、SPOTによるこれらのペプチドの合成および膜に結合したSPOTの解析により、ペプチド抗体結合の強度および特異性を確認した。これにより、模倣される天然抗原とは構造的に異なる合成ペプチドが首尾よく、天然の血液型抗原に対して引き起こされる抗体に特異的に結合できることが確認され、それにより、問題となる血液型抗原の有効なミモトープが示される。例えば、ミクロスフェアビーズまたは超常磁性ビーズ上でのミモトープの固定化は、天然の血液型抗原に対して引き起こされる抗体に特異的に結合するミモトープの能力に影響を与えなかった。従って、記載される方法は、臨床環境、例えば、同種抗体または自己抗体の産生に関連する疾患の診断において使用され得る血液型抗原の合成ミモトープを同定するための効果的および有効な方法を示す。
【0031】
ファージ−ペプチドに対する抗体の結合は、任意の適切な手段によって検出され得、そのような手段は当業者に公知である。使用され得る結合の型の例は、実施例に記載される。
【0032】
本発明のさらなる態様によれば、試料中の血液型抗原に対する抗体を検出するための方法が提供される。その方法は、前記血液型抗原のミモトープと、試験される試料とを反応させる工程、試料とミモトープとの間のいずれかの反応を検出する工程を含み、ここで、試料とミモトープとの間の反応は、血液型抗原に対する抗体の存在を示す。
【0033】
簡便には、上記の特定された方法を実施する前に、ミモトープは、固体支持体に固定化される。ミクロスフェアビーズまたは超常磁性ビーズなどの固体支持体上のミモトープの固定化は、ミモトープが天然の血液型に対して引き起こされる抗体に特異的に結合する能力に影響を与えなかった。これに関して、その方法は、固体支持体上に血液型抗原のミモトープを固定すること、固定されたミモトープと、試験される試料とを接触させること、ミモトープに対する試料の結合を検出することを含み、ここで、ミモトープに対する試料の結合は、ミモトープによって模倣された血液型抗原に対する抗体の存在を示す。
【0034】
簡便には、血液型抗原は、Rhesus、Kell、Duffy、Kidd、ABO、MNS、P、Lutheran、Lewis、Diego、Yt、Xg、Scianna、Dombrock、Colton、Landsteiner−Wiener、Chido−Rodgers、Hh、Kx、Gerbich、Cromer、Knops、Indian、Ok、Raph、JMH、I、Globoside、またはGILである。
【0035】
これに関して、多くの天然の血液型抗原のエピトープが、高次構造であると考えられるならば、本明細書に同定される合成ミモトープは、固体支持体に結合される場合でさえ、天然の血液型抗原に対して引き起こされる抗体に特異的に結合する三次構造を示すことができることは驚くべきことである。固体支持体は、目的のための任意の適切な支持体を含んでもよいが、簡便には、膜、スライドガラスまたはビーズ(ガラス、ポリスチレンなど)を含む。支持体への結合は、例えば、ポリスチレンミクロスフェアビーズの表面に結合されるNi−NTA基を用いること、または超常磁性ポリスチレンビーズを用いることなどの任意の適切な手段によってなされてもよい。ポリヒスチジンタグが、支持体への結合を促進するためにミモトープのC末端またはN末端に導入されてもよい。より小さいバックグランドを有し、首尾よく剥がれ、再びプローブできる膜、例えば、INTAVIS AG膜が好ましい。
【0036】
従って、本発明は、血液型抗原に対して引き起こされる、生物学的試料における抗体を効果的に同定する方法を提供する。合成ミモトープの使用は、ヒト試薬の使用に関して確認されている問題を取り除く。これにより、抗体検出における一貫性が向上し、血液型抗原に対して引き起こされる抗体をスクリーニングするための既存の技術と比べて、ほとんど費用をかけないか、または余分な費用をかけずに、より稀少な抗体の検出を可能にする。ヒトの血液製剤の使用を回避することもまた、安全性を高め、ヒトの血液製剤を使用する場合に必要とされる厳密な試験を回避し、使用のために利用可能な試薬の一貫性を向上する。これにより、使用のために試薬を調達し、清浄する費用が減少する。従って、記載される方法は、既存の検出方法より信頼性があり、安全かつ都合が良く、生物学的試料における血液型抗原に対する抗体の検出を、より迅速に、より安く、かつより実施しやすくする。
【0037】
検出される抗体は、血液型抗原に対する同種抗体または自己抗体であってもよい。従って、記載される方法は、同種抗体または自己抗体の産生に関与する血液製剤に対する疾患または反応を検出および診断する改良された方法を提供する。そのような疾患としては、赤血球輸血(HTR)に対する溶血反応、新生児溶血性疾患および自己免疫性溶血性貧血が挙げられる。
【0038】
簡便には、抗体は同種抗体であり、これはHTRまたは新生児溶血性疾患の危険性の信頼性があり、かつ安全な診断を可能にする。
【0039】
本発明の別の態様によれば、試料中の血液型抗原に対する抗体の存在を検出するための装置が提供される。固体支持体(膜、スライドガラス、マイクロアレイチップ、またはビーズ(複数も含む)など)を含む装置は、その支持体に固定される血液型抗原のミモトープの配列を有するか、または各々の固体支持体上に1つのミモトープを有し、複数の固体支持体が提供される。
【0040】
配列は、単一のRhesus、Kell、Duffy、Kidd、ABO、MNS、P、Lutheran、Lewis、Diego、Yt、Xg、Scianna、Dombrock、Colton、Landsteiner−Wiener、Chido−Rodgers、Hh、Kx、Gerbich、Cromer、Knops、Indian、Ok、Raph、JMH、I、Globoside、またはGIL抗原ミモトープを含んで構築されてもよい。あるいは、配列は、同じ診断配列で配置される複数の血液型由来のミモトープを有する、血液型ミモトープの任意の組み合わせを含んで開発されてもよい。配列の構成および設計は、装置の意図される目的に依存してもよく、必要とされる場合、オーダーメイドの配列が開発されてもよい。特定の目的のために必要とされる配列は、試薬の利用可能性を考慮する必要もなく、迅速に、信頼性があり、かつ費用効果的に構築され得る。
【0041】
配列の構築に関して、固体膜支持体に結合するペプチドのための異なる種類および長さのスペーサーが使用されてもよい。例えば、アミノ−PEGスペーサーまたは限定された数のアミノ酸残基が、固体支持体に対してミモトープペプチド配列を結合するために使用されてもよい。
【0042】
簡便には、抗体は同種抗体である。従って、装置は、ヒトの血液型試薬の使用を必要とせずに、血液型抗原に対して同種抗体を産生する疑いのある患者から得られる血液の試料中の同種抗体を検出するために使用され得る。血液型試薬の必要性の除去は、簡便には、血液型試料中の抗体の検出のための試薬の利用可能性を増加する。
【0043】
本明細書に記載される抗原捕捉系はまた、抗体検出の感受性および正確性を増加でき、従って、血液型の検出についての既存の方法より改良された方法を提供する。
【0044】
バイオパニングによって選択されるファージ−ペプチドは、最初に抗体を同定するために使用される抗体に特異的に結合することを示すことによって、本明細書に記載される実験により、診断試薬として選択されたファージ−ペプチドの潜在的価値が確認される。
【0045】
本研究において同定されたミモトープは、適切な固相に結合する場合、血液型抗原に対する抗体を検出するためのスクリーニング試薬として使用され得る。
【0046】
これに関して、ミモトープは、同種抗体または自己抗体の産生に関連する疾患などの血液型抗原に関連する疾患を診断するために使用され得る。
【0047】
本明細書において同定され、記載されるミモトープのさらなる潜在的使用は、そのミモトープと一緒に形成される配列の使用とともに当業者にとって明らかであろう。
【0048】
ここで、本発明は、添付の図面を参照して、例示のみとして記載される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】アッセイした20個のFybファージ−ペプチドのうち14個に対する抗Fyb抗体(LM447)の結合を確認する、ファージELISAの結果を示す。
【図2】SPOTハイブリダイゼーション実験の結果を示す。20個のFybペプチドミモトープを複製して合成した。結合実験により、膜支持体で合成した場合、Fybペプチドミモトープが、抗Fyb抗体を認識し、結合する能力を確認した。
【図3】アッセイした19個のFyaファージ−ペプチドのうち16個に対する抗Fya抗体(LM487)の結合を確認する、ファージELISAの結果を示す。
【図4】SPOTハイブリダイゼーション実験の結果を示す。一連の37個のFyaペプチドミモトープを膜で合成し、抗Fya抗体(LM487)に結合するそれらの能力を試験した。
【図5】抗Fyaおよび抗Fybモノクローナル抗体、LM447およびLM487とのFyaペプチドミモトープの相互ハイブリダイゼーションの結果を示す。一連のFyaおよびペプチドミモトープを複製して合成し、2つのモノクローナルとの膜のハイブリダイゼーションにより、抗体特異的および交差反応性ペプチドミモトープを同定した。
【図6】アミノ酸置換実験の結果を示す。一連の16個の合成ペプチドをSPOTにより複製して合成した。これらの配列は、FybコンセンサスI配列に由来し、アミノ酸置換により生成した。合成ペプチドミモトープを、抗Fyaおよび抗Fybモノクローナル抗体に結合するそれらの能力について試験した。
【図7】抗RhD抗体により選択されたペプチドミモトープのサブセットとモノクローナル抗体T10とのハイブリダイゼーション後の結果を示す。40個のペプチド(RhD41−RhD80)を合成して、陽性信号を11個のスポット(スポット1−3、8、17、27、28、31、37、39および40;ペプチド配列についての表を参照のこと)で観測した。
【図8】SPOTハイブリダイゼーション実験の結果を示す。一連の28個のRhDペプチドミモトープをSPOTにより合成して、ポリクローナル抗RhD抗血清調製物との膜のハイブリダイゼーションにより、抗体反応性ペプチドを同定した。
【図9】SPOTハイブリダイゼーション実験の結果を示す。一連の36個のRhEペプチドミモトープをSPOTにより合成した。モノクローナル抗体E0002との膜のハイブリダイゼーションにより、抗体特異的ペプチドミモトープを同定した。
【図10】SPOTハイブリダイゼーション実験の結果を示す。一連の16個のRheペプチドミモトープをSPOTにより合成した。モノクローナル抗体e0002との膜のハイブリダイゼーションにより、抗体特異的ペプチドミモトープを同定した。
【図11】ポリスチレンLiquiChip Ni−NTAミクロスフェアビーズに固定されたペプチドミモトープFyb16に結合する抗Fybモノクローナル抗体(LM447)の特異的結合を示す。信号強度は、固定されたペプチドミモトープに対して結合されたモノクローナル抗体の量と一致する。
【図12】ポリスチレンLiquiChip Ni−NTAミクロスフェアビーズに固定されたペプチドミモトープRhD12に結合している抗RhDモノクローナル抗体(T27)の特異的結合を示す。信号強度は、固定されたペプチドミモトープに結合されたモノクローナル抗体の量と一致する。
【図13】改変されたゲル凝集アッセイにおいて超常磁性ポリスチレンビーズに固定されたペプチドミモトープRhD12に対する抗RhDモノクローナル抗体(T27)の特異的結合を示す。チャンバ1:ビーズ+His−標識されたペプチドミモトープRhD12のみ;チャンバ2:ビーズ+His−標識されたRhD12+抗Fybモノクローナル抗体(LM447);チャンバ3:ビーズ+His−標識されたRhD12+抗RhDモノクローナル抗体(T27)。
【図14】改変されたゲル凝集アッセイにおいて超常磁性ポリスチレンビーズに固定されたペプチドミモトープFyb16に対する抗Fybモノクローナル抗体(LM447)の特異的結合を示す。チャンバ1:ビーズ+His−標識されたペプチドミモトープFyb16のみ;チャンバ2:ビーズ+His−標識されたFyb16+抗Fybモノクローナル抗体(LM447);チャンバ3:ビーズ+His−標識されたFyb16+抗RhDモノクローナル抗体(T27)。
【発明を実施するための形態】
【0050】
(方法論)
血液型抗原のミモトープの同定を、一連の血液型抗原特異的モノクローナル抗体(3×抗RhD、3×RhE、2×Rhe、1×Fya、1×Fyb)およびRhDポリクローナル調製物を有する4つのファージ−ペプチドライブラリーのバイオパニングを用いて開始した。合計で、490個のファージを選択して、DNA塩基配列決定およびELISAによって最初に特徴付けた。DNA塩基配列解析により、295個の固有のファージ−ペプチド配列を同定し、それをSPOT技術によって膜で合成した。ペプチド/抗体反応の特異性を、ELISAおよびSPOTアッセイによって試験し、特定のRhD、RhE、Rhe、FyaおよびFyb抗体を検出できる84個のペプチドを同定した。
【0051】
(バイオパニング)
New England Biolabs.から供給される3つの異なるファージライブラリー(Ph.D.7およびPh.D.12は、それぞれ、直線状の7量体および12量体のペプチドを示し、Ph.D.C7Cは、それらの末端でジスルフィド架橋を強いられる7量体のペプチドを示す)および直線状の15量体のライブラリー(親切にもProf.George P.Smith,University of Missouriによって提供された)を、10個の異なるモノクローナル抗体およびポリクローナル調製物を用いてバイオパニング実験に使用した(表1)。
【0052】
表1:バイオパニングにおいて使用した抗体
【0053】
【表1】
【0054】
記載した全てのモノクローナル抗体を、培養上清から精製した。ポリクローナル抗RhD調製物を、Scottish National Blood Transfusion Serviceから得た。
【0055】
各標的抗体/ライブラリーの組み合わせに関して、96ウェルImmulon4平底ELISAプレート(Thermo Labsystems)の個別のウェルを、150μlのELISAコーティングバッファー(15mMのNa2CO3、35mMのNaHCO3、pH9.6)中の5μgの抗体でコーティングした。プレートを密閉して、4℃で一晩インキュベートした。結合していない抗体を捨てて、350μlのブロッキングバッファー(0.1MのNaHCO3/3%の脱脂粉乳)を各ウェルに加えた。プレートを密閉して、4℃で1時間インキュベートした。ブロッキングバッファーを除去して、ウェルを300μlのTBS/0.1%のTween20で6回洗浄した。100μlのTBS/0.1%のTween20中の約2×1011のプラーク形成単位(pfu)を各ウェルに加え、プレートを室温で1時間インキュベートした。ウェルを300μlのTBS/0.1%のTween20で10回洗浄した。結合したファージを、100μlの0.2Mのグリシン−HCl/BSA、pH2.2(1mg/ml)で10分間インキュベートすることによって溶出し、次いで15μlの1MのTris−HCl(pH9.1)で中和した。ラウンド1の溶出液のアリコートを除去し、滴定した。溶出したファージの残りを、37℃で4.5時間、E.coli ER2538細胞の感染によって増幅させた。培養液を、4℃で10,000rpmにて10分間、遠心分離した。上清を回収し、1/6容量のPEG/NaCl(20%のポリエチレングリコール8000;2.5MのNaCl)を加え、次いで4℃で一晩インキュベートした。PEG沈殿したファージを、4℃で10,000rpmにて15分間、遠心分離した。上清を除去し、ファージペレットを200μlのTBSに再懸濁した。パニングの2つのさらなるラウンドを開始し、約2×1011pfuのラウンド2またはラウンド3の増幅させた溶出液を注入ファージとして使用した。ラウンド3の溶出液を滴定したが、増幅しなかった。個々のプラークを増幅させ、DNA配列解析の前にPCR増幅に供した。続いて、ペプチド抗体結合の特異性を、ファージELISAおよびSPOT技術の両方を用いて決定した。
【0056】
(ファージ培養)
個々のファージクローンを、ラウンド3の滴定プレートからランダムに選択し、1ml容積の1:100希釈の、L−Brothで増殖するE.coli ER2538の一晩培養液中で増幅させた。培養液を37℃で4.5時間インキュベートし、次いで13000rpmで1分間遠心分離した。ファージ上清を、PCR増幅、DNA塩基配列決定およびファージELISAによるさらなる解析のために回収した。
【0057】
(PCR増幅)
選択されたファージクローンの各々において示されるペプチド配列を決定するために、ペプチド配列をコードするDNA挿入物をPCRによって得た。PCR増幅を、1倍のバッファー(Bioline)、400μMのdNTP、1.5mMのMgCl2、1単位のTaqDNAポリメラーゼ(Bioline)、1μlのファージ培養液上清ならびに各々0.5μMの適切なフォワードおよびリバースプライマーを含む25μlの最終溶液で実施した。プライマー12MER1For:5−CGCAATTCCTTTAGTGGTAC−3および12MER2Rev:5−CCCTCATAGTTAGCGTAACG−3を、C7C、直線状の7量体および12量体のファージ/ペプチドの増幅について使用した。プライマーFuse5For1:5’−ACCGATACAATTAAAGGCTC−3’およびFuse5Rev1:5’−TGAATTTTCTGTATGAGG−3’を、15量体のファージ/ペプチドの増幅について使用した。PCRを、以下の条件:1分間95℃で変性;1分間55℃でアニーリング;および3分間72℃で伸長の下で熱サイクラー(Techgene、モデルFTGene2D;Techne,Cambridge,UK)で実施した。30サイクル後、伸長を72℃でさらに9分間続けた。PCR産物を、配列解析のためにQIAquick PCR精製キット(Qiagen)を用いて回収した。
【0058】
(配列解析)
ファージペプチドのヌクレオチド配列を、BigDye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction KitおよびABI Prism 377 DNA Sequencer(Applied Biosystems)を用いて得た。プライマー12MER2Revを、C7C、直線状の7量体および12量体のPCR産物のランダムペプチド配列を決定するために使用した。プライマーFuse5Rev1を、15量体のPCR産物のために使用した。アミノ酸配列を、Lasergeneソフトウェア(DNASTAR Inc.,Wisconsin,USA)を用いてヌクレオチド配列から推定した。
【0059】
(ファージELISA)
回収したファージ−ペプチドが、それらの選択において使用された抗体と反応する能力を、捕捉ELISAによって確認した。適切なモノクローナル抗体の10μg/mlのストックを、ELISAコーティングバッファー中で調製して、150μlのアリコートを、Immulon4ELISAプレートのウェルに加え、次いで4℃で一晩インキュベートした。結合していない抗体を捨てて、ウェルを、4℃で1時間、350μlのブロッキングバッファー(0.1MのNaHCO3/3%の脱脂粉乳)でブロックした。ウェルを300μlのTBS/0.5%のTween20で3回洗浄し、100μlの選択されたファージ培養液上清を、室温で1時間、適切なウェルに加えた。結合していないファージを除去し、ウェルを300μlのTBS/0.5%のTween20で6回洗浄した。抗M13に結合した西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)の1:5000希釈である、二次抗体を、ブロッキングバッファー中で調製して、100μlのアリコートを各ウェルに加えた。室温で1時間のインキュベートの後、ウェルを300μlのTBS/0.5%のTween20で6回洗浄した。反応を起こすために、o−フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD)基質(Sigma)の200μlのアリコートを各ウェルに加えた。室温で1時間のインキュベートの後、マイクロプレートELISAリーダーによって450nmでの吸光度を測定した。0.1より大きいOD450信号を陽性とみなした。
【0060】
(SPOT合成)
ペプチドミモトープを、F−moc化学を用いてSPOT法(Frank;1992)により合成した。ペプチドをアミノ−PEG誘導体化セルロース膜(Intavis AG)に固定し、別個のスポットとして合成した。合成を、Sigma Genosysプロトコルに従って、それぞれのアミノ酸の手動でのピペット操作により、C末端からN末端までのペプチド鎖の段階的な伸長により行った。Intavis AG膜を用いた場合、インキュベート時間を変更した。最後のアミノ酸の添加後、ペプチドの末端残基および側鎖を脱保護して、膜をメタノールで洗浄し、空気乾燥し、次いで使用前に−20℃で保存した。
【0061】
(SPOT膜のスクリーニング)
膜を50mlのファルコンチューブに入れ、TBS/0.25%のTween20/5%の脱脂粉乳中で穏やかに攪拌しながら4℃で一晩ブロックした。一次(1°)抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)の2μg/mlの希釈を、TBS/0.25%のTween20/5%の脱脂粉乳中で調製し、その後、スパイラルローターで、室温で1時間、膜とともにインキュベートした。20mlのTBS/0.25%のTween20を用いて各々5分間の4回の洗浄後、膜を、室温で1時間、TBS/0.25%のTween20/5%の脱脂粉乳中で調製した1/5000希釈の二次(2°)抗体とともにインキュベートした。ペルオキシダーゼ標識したラビット抗マウスIgG(Sigma)を、マウス抗Fya(LM487)および抗Fyb(LM447)1°抗体の検出のために使用し、ペルオキシダーゼ標識したヤギ抗ヒトIgG(Pharmacia)を、ヒト1°抗体の検出のために使用した。20mlのTBS/0.25%のTween20を用いて各々5分間の4回の洗浄後、膜をブロットして過剰な流体を取り除いた。結合した抗体を化学発光によって検出した。ECL検出試薬(Amersham Biosciences)を混合して、2分間膜上で重ね合わせた。化学発光基質を除去し、膜をブロットして過剰な流体を取り除いた。Hyperfilm ECL(Amersham Biosciences)への曝露後、連続した短いインキュベート時間(5秒〜10分)の間、陽性スポットを視覚化した。
【実施例】
【0062】
(実施例1)
(Duffy抗原エピトープを模倣するファージ−ペプチドの同定)
抗Fya(LM487)および抗Fyb(LM447)特異的モノクローナル抗体を、Duffy糖タンパク質(Colliganら、1998)上のエピトープ由来の抗原性ペプチドを用いて開発した。これらの抗体を、天然Duffy抗原を模倣したペプチドについてのファージラブラリーをパニング(pan)するために使用した。各々のパニング実験の最後の3ラウンドからのクローンを、増幅およびDNA配列決定のためにランダムに選択した。ファージ−ペプチドによってコードされたアミノ酸配列を、DNA配列データから推定した。
【0063】
4つのファージ−ペプチドライブラリーの各々のバイオパニングを、抗Fybモノクローナル抗体(LM447)を用いて行い、各々のライブラリーからの特定の配列の複数のコピーの同定を得た。合計で、100の固有のFybペプチドミモトープを同定した(表2/ペプチドFyb1−71およびFyb88−116を参照のこと)。同定された配列のどれも、LM447抗体の開発に使用した14量体の免疫ペプチド(PDGDYDANLEAAAP;CPep75)に似ていなかった。しかしながら、これらの「Fyb」ペプチドミモトープのアミノ酸配列の解析により、2つのコンセンサス配列:
コンセンサス1:M(F/Y)QPD(N/P)(P/L)(T/P)T(K/L)(N/Q)(P/V/A/S)
コンセンサス2:D(H/M/V)HYT(S/N)NTDPL(H/N/R)(A/P/V)P
を同定した。
【0064】
各々のコンセンサス配列内の特定の位置は、限定した数のアミノ酸を有した(括弧に示される)。これらは、選択されたFybペプチドミモトープの全集団内で同程度で生じた。
【0065】
表2:Fybペプチド
【0066】
【表2−1】
【表2−2】
【表2−3】
【表2−4】
【表2−5】
【0067】
抗Fyaモノクローナルである、LM487を用いるバイオパニングにより、合計で37の固有のペプチド配列を同定した(表3/FyaペプチドFya1−37を参照のこと)。Fya多型と同一の配列を含む、少数の「Fya」ファージ−ペプチドは、オリジナルの14量体の免疫ペプチド(PDGDYGANLEAAAP;CPep118)内に存在し、これによって、血液型抗原模倣物を同定するためのアプローチとしてファージディスプレイの使用が立証された。これらの「Fya」ペプチドミモトープのアミノ酸配列の配列解析により、2つの推定コンセンサス配列:
コンセンサスI:YNYQSYPNPFPV
コンセンサスII:GI(A/S)(E/D)(D/G)DYGALSW
も同定した。
【0068】
しかしながら、「Fyb」の結果と対照的に、これらの「Fya」ペプチドミモトープ配列の多くは、上記の同定したコンセンサス配列のいずれとも一致しなかった。
【0069】
表3:Fyaペプチド
【0070】
【表3−1】
【表3−2】
【0071】
このデータは、ファージ−ペプチドが、その模倣したDuffy抗原エピトープを同定したことを示す。Fya多型と同一の配列を含むファージ−ペプチド(ペプチドFya15およびFya20)に結合した抗Fya抗体および抗Fyb抗体が、ペプチドミモトープを選択したことにより、血液型抗原模倣物を同定する有効な手段としてファージディスプレイの使用を確認した。
【0072】
(実施例2)
(複合体RhD抗原エピトープを模倣するファージ−ペプチドの同定)
RhD抗原エプトープを模倣するファージ−ペプチドを、3つのモノクローナル抗Ds(T10、T22およびT27)を用いて同定した。この限定した数のモノクローナル抗体を有する4つのファージ−ペプチドライブラリーのバイオパニングにより、80個のRhDペプチドミモトープを選択した(表4/ペプチドRhD1−80を参照のこと)。さらに、ポリクローナル抗RhD調製物を用いるバイオパニングにより、さらなる25個のRhDペプチドミモトープを同定した(表4/ペプチドRhD81−105を参照のこと)。ペプチドRhD52を、T10およびポリクローナル抗RhD調製物の両方を用いて選択した。
【0073】
表4:RhDペプチド
【0074】
【表4−1】
【表4−2】
【表4−3】
【表4−4】
【表4−5】
【0075】
(実施例3)
(RhEe抗原エピトープを模倣するファージ−ペプチドの同定)
3つの抗RhEモノクローナル抗体(1×IgG、2×IgM;表1を参照のこと)を用いてバイオパニングを行い、4つのファージ−ペプチドライブラリーの各々からの多くの配列の複数のコピーの同定を得た。配列相同性もまた、異なるライブラリーから選択したファージ−ペプチドの間で確認した。ペプチドRhE18およびRhE24を、抗体E0002およびE0003を用いて選択し、ペプチドRhE19を、抗体E0001およびE0002を用いて選択した。これらの結果は、クラスに関わらず、同じエピトープに対して引き起こされる抗体が、同一のペプチド配列を有するいくつかのファージを同定することを示す。合計で36の固有のRhEペプチドミモトープを同定した(表5;ペプチドRhE1−36を参照のこと)。2つの抗Rheモノクローナル抗体(2×IgM;表1を参照のこと)を用いるバイオパニングにより、17の固有のRheペプチドミモトープを同定した(表5;ペプチドRhe1−17を参照のこと)。
【0076】
表5:RhE/e
【0077】
【表5−1】
【表5−2】
【表5−3】
【0078】
(実施例4)
(オリジナルのDuffyモノクローナル抗体に対する合成ペプチドの特異的結合)
バイオパニングによって選択されたファージ−ペプチドの関連性を免疫学的研究において試験した。最初に、20の「Fyb」ファージ(ペプチドFyb1−13、Fyb20−21、Fyb24−28;配列の詳細について表2を参照のこと)を、ファージELISAおよびSPOT解析の両方による調査のために選択して、合成ペプチドがオリジナルのモノクローナル抗体に特異的に結合できることを確認した。
【0079】
ファージELISAの結果により、抗Fybモノクローナル、LM447の結合を確認した。このモノクローナル抗体の10μg/mlストックを、ELISA含有バッファーにおいて調製し、150μlのアリコートをImmulon4ELISAプレートのウェルに加え、次いで、4℃で一晩インキュベートした。結合していない抗体を捨てて、ウェルを4℃で1時間、350μlのブロッキングバッファーでブロックした。ウェルを300μlのTBS/0.5%のTween20で3回洗浄し、100μlの選択したファージ培養液上清を、室温で1時間、適切なウェルに加えた。結合していないファージを除去し、ウェルを300μlのTBS/0.5%のTween20で6回洗浄した。抗M13に結合した西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)の1:5000希釈である、二次抗体を、ブロッキングバッファー中で調製して、100μlのアリコートを各ウェルに加えた。室温で1時間のインキュベートの後、ウェルを300μlのTBS/0.5%のTween20で6回洗浄した。反応を起こすために、o−フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD)基質(Sigma)の200μlのアリコートを各ウェルに加えた。室温で1時間のインキュベートの後、450nmでの吸光度を測定した。450nmでの吸光度値により、アッセイした20のファージのうち14(ペプチドFyb1、Fyb2、Fyb4−5、Fyb7−13、Fyb25、27および28)の結合を確認した(図1を参照のこと)。
【0080】
20のFybペプチドミモトープを、SPOTにより複製して合成した。抗Fyb抗体(LM447)を用いる結合実験により、抗体が、試験した20のペプチド配列のうち2つ(ペプチドFyb12およびFyb13)に首尾よく結合したことが示された(図2)。結合は、ペプチドCPep75を用いたスポット21にも観察された(アッセイについての陽性コントロール)。ペプチドFyb1、Fyb7、Fyb9およびFyb11は、ペプチドFyb12およびFyb13と等しい強さのファージELISA信号を生成するにもかかわらず、これらの4つのペプチドは、SPOTとして合成した場合、抗Fyb抗体(LM447)と反応しなかった。
【0081】
19の「Fya」ファージ−ペプチドクローン(ペプチドFya1−18およびFya25;配列の詳細について表3を参照のこと)のファージELISA解析により、LM487抗体のFyaファージ−ペプチドに対する特異的結合を確認した。図3は、19のうち3つのみ(ペプチドFya2、Fya14およびFya18)が抗体に結合しなかったことを示す。これらの19のペプチドは、SPOTとして合成した37(ペプチドFya1−37)の中のものであり、膜と抗Fya抗体とのハイブリダイゼーション後、強い陽性信号をペプチドFya15(スポット15)のみで観察した(図4)。
【0082】
これらの結果は、ファージELISAおよびSPOTの両方により並行して試験した場合のFybファージ−ペプチドについて得た観察を反映した。陽性ファージELISA信号は、対応するペプチドミモトープが合成されて、SPOTハイブリダイゼーションにより試験された場合に陽性信号を自動的に保証しなかった。さらに、配列解析により、陽性または陰性ペプチドのいずれの間にも明らかな配列相同性は確認されなかった。
【0083】
FyaおよびFybファージELISAおよびSPOTアッセイの両方から得られた結果により、ペプチドの存在状態が抗体結合において重要であることが示唆される。ファージコート中で融合タンパク質の一部を形成するペプチドは、SPOTにより膜で合成された場合、異なる構造を取り得る。取り囲むタンパク質がなければ、抗体認識はその後に影響を与え得る。従って、SPOTによって解析するためのファージ−ペプチドクローンを選択するために単純にELISAを用いることよりむしろ、それらの選択において最初に使用されるモノクローナル抗体を用いるSPOT解析の前に、潜在的な診断ペプチドを見落とさないことを確実にするために、バイオパニングによって選択された全てのファージ−ペプチド(Fyb、Fya、RhDおよびRhEe)を、DNA配列解析によって特徴付けた。
【0084】
(交差反応性ペプチドを同定するための相互ハイブリダイゼーション)
一連の44個のペプチドを複製して合成した(図5)。スポット1−37はFyaペプチドミモトープ(Fya1−37)であり、スポット38−40はそれぞれペプチドFya17、Fya25およびFya35の写しであり、スポット41−44はコントロールペプチドであった(スポット41は、抗Fyb抗体を生成するために使用した免疫ペプチド[Cpep75]であり;スポット42は、無関係の12量体[Cpep76]であり;スポット43は、抗Fya抗体を生成するために使用した免疫ペプチド[CPep118]であり、スポット44は、Fybペプチドミモトープ[Fyb1]であった)。抗Fyaおよび抗Fybモノクローナル抗体との並行した膜のハイブリダイゼーションにより、多くのペプチド(ペプチドスポット15、20および43)のFya特異性を確認したが、抗Fyb抗体に結合できるペプチド(スポット36および41)および両方の抗体との交差反応性を示すさらなるペプチド(スポット3)も同定した。スポット43および41で観測した信号は、これらの2つのペプチドがそれぞれ抗Fyaおよび抗Fybモノクローナル抗体についての陽性コントロールとして含まれるため、予想外ということではなかった。
【0085】
(アミノ酸置換によるコンセンサス配列由来合成Fybペプチドミモトープの生成)
100の固有の「Fyb」ペプチドミモトープ(Fyb1−71およびFyb88−116)の配列解析により、2つのコンセンサス配列を同定した。コンセンサス1:M(F/Y)QPD(N/P)(P/L)(T/P)T(K/L)(N/Q)(P/V/A/S)は、同程度で生じる限定した数の残基を有する一連の位置(アミノ酸2、6、7、8、10、11および12)を含む。一連の16のペプチドミモトープ(ペプチドFyb72−87;表2を参照のこと)を、2、6、8および12位でのアミノ酸置換を用いてSPOTにより合成した。試験時に、これらのコンセンサス配列由来のペプチドミモトープのうち2つ(ペプチドFyb84;スポット13およびペプチドFyb85;スポット14)は、抗Fyb抗体LM447に結合できることを証明した(図6を参照のこと)。これら2つの合成したペプチドミモトープ配列の解析により、12位で単一のアミノ酸の相違を確認した。しかしながら、これら2つの配列について観測された信号強度は、このアッセイについて使用した陽性コントロールである、ペプチドCPep75(スポット17)を用いて達成されたものより著しく低かった。この結果により、ペプチドミモトープもまた、単純にバイオパニングによってではなく、アミノ酸置換実験によって人工的に生成され得ることが示された。
【0086】
(実施例5)
(SPOTにより決定された合成Rhペプチドに対する抗体の特異的結合)
RhD、RhEおよびRheペプチドミモトープ(表4および5を参照のこと)を、SPOTにより合成して、膜のハイブリダイゼーションを適切な抗体を用いて行った(表1)。図7〜10は、ペプチドミモトープの選択に最初に使用される抗体と特異的に反応するペプチドミモトープの例を示す。
【0087】
図7は、抗RhD抗体の選択されたペプチドミモトープのサブセットと、モノクローナル抗体T10とのハイブリダイゼーション後の結果を示す。40のペプチド(RhD41−RhD80)を合成し、陽性信号を11のスポット(スポット1−3、8、17、27、28、31、37、39および40;ペプチド配列について表を参照のこと)において観察した。
【0088】
さらなる28のRhDペプチドミモトープをSPOTにより合成した。ペプチドミモトープRhD81−105(スポット1−25)を、ポリクローナル抗RhD調製物を用いて最初に選択し、ペプチドRhD68、RhD71およびRhD79(スポット26−28)を、抗RhD抗体T10を用いるバイオパニングによって同定した。ペプチドCPep75(スポット29)およびCPep76(スポット30)を、陰性コントロールとしてアッセイに含んだ。図8により、ポリクローナル抗RhDによって認識された一連の11のペプチド(スポット3、5、6、12、14、16、24、26−28および30;ペプチド配列について表を参照のこと)を確認した。この一連のペプチドは、T10を用いて最初に選択した3つのペプチド(スポット26−28)を含む。この結果により、個々のモノクローナル抗体(例えばT10)を用いて同定されたペプチドは、ポリクローナル抗体が引き起こされる抗原のエピトープを模倣することが強く示唆された。
【0089】
図9は、36のRhEペプチドミモトープと抗RhEモノクローナル抗体E0002とのハイブリダイゼーション後の結果を示す。ペプチドCPep75(スポット37)およびCPep76(スポット38)を、陰性コントロールとしてアッセイに含んだ。抗体の特異的結合を、4つのスポット(スポット18:ペプチドミモトープRhE18;スポット19:RhE19;スポット24:RhE24およびスポット25:RhE25)を用いて達成した。
【0090】
図10は、16のRheペプチドミモトープと抗Rheモノクローナル抗体e0002とのハイブリダイゼーション後の結果を示す。ペプチドCPep75(スポット17)およびCPep76(スポット18)を、陰性コントロールとしてアッセイに含んだ。強い陽性信号を2つのスポット(スポット10および13;ペプチド配列について表を参照のこと)で観察した。さらに3つの弱い、陽性スポットもまた記録した(スポット8、11および16)が、これらの信号は、陰性コントロールとしてアッセイに含んだコントロールペプチドCPep76(スポット18)で達成したものと同じ強さのみであった。
【0091】
全体的に、Rhペプチドミモトープで達成した結果は、FyaおよびFybペプチドならびにFyaおよびFybモノクローナル抗体を用いて得られたものに匹敵した。SPOT解析により、Rhペプチドの認識抗体と特異的に反応するRhペプチドを同定した。
【0092】
(実施例6)
(ミクロスフェアビーズに結合された合成ペプチドミモトープに対する抗体の特異的結合)
ペプチドミモトープが、天然の血液型抗原に対して引き起こされた抗体に特異的に結合できるというさらなる確認を、ポリスチレンLiquiChip Ni−NTAミクロスフェアビーズ(Qiagen)上のペプチドミモトープの固定化後に行った。
【0093】
ペプチドミモトープ(例えばFyb16;RhD12)を、6個のヒスチジンアミノ酸からなるC末端標識で合成した。6×Hisの標識化ペプチドミモトープのストック溶液(4μg/ml)をPBS/0.1%のBSA中で調製した。ペプチドを、以下のようにビーズの表面に付着させたNi−NTA基を用いてビーズ上に固定化した。50μl容量の4μg/mlペプチドストック(Fyb16またはRhD12)を、等量のLiquiChip Ni−NTAビーズ(それぞれ、ビーズ50またはビーズ52)と混合した。4℃で一晩、混合しながらインキュベートした後、ビーズ/ペプチド混合物を900μlのPBS/0.1%BSAで希釈した。ビーズ/ペプチド混合物を2分間ボルテックスし、次いで10μl容量を96ウェル、丸底ELISAプレート(Nunc)のウェルにアリコートした。10μl容量の試験モノクローナル抗体(LM447:抗FybまたはT27:抗RhD)をELISAプレートのウェルに加え、反応容量をPBS/1%BSAで60μlまで埋め合わせた。プレートを暗所において90分間室温でインキュベートし、次いで10μl容量(200ng)のヒツジ抗マウスIgGに結合したフィコエリトリン(LM447:抗Fybモノクローナル抗体を含むウェルに加えた)またはヤギ抗ヒトIgMに結合したフィコエリトリン(T27:抗RhDモノクローナル抗体を含むウェルに加えた)をウェルに加えた。プレートを暗所においてさらに90分間室温でインキュベートした。プレートを簡単にボルテックスし、次いでLuminex100アナライザー(Luminex)にかけた。結合したモノクローナル抗体の確認を、フィコエリトリン蛍光色素信号の検出により測定した。信号強度は、固定化したペプチドミモトープに結合されたモノクローナル抗体の量と一致する。
【0094】
結果を図11および12に記載し、ペプチドミモトープFyb16に対する抗Fybモノクローナル抗体(LM447)の特異的結合およびペプチドミモトープRhD12に対する抗RhDモノクローナル抗体(T27)の特異的結合を示す。
【0095】
(実施例7)
(超常磁性ビーズに結合された合成ペプチドミモトープに対する抗体の特異的結合)
ペプチドミモトープが抗体に特異的に結合する能力を、改変されたゲル凝集アッセイにおいて、超常磁性ポリスチレンビーズ(TALON Dynabeads;Invitrogen)を用いてさらに試験した。
【0096】
50μl容量の磁性ビーズを700μlのTBS(50mMのTris−HCl pH7.5;150mMのNaCl)に加えた。室温で5分間混合後、磁性ビーズをMagnetic Particle Concentrator(Invitrogen)を用いて分離した。上清を捨てて、ビーズを700μlのTBS中で5分間洗浄した。ビーズを、MPCマグネットを用いてバッファーから再び分離し、次いで700μlのTBSに再懸濁した。ペプチドミモトープ(例えばFyb16;RhD12)を、6個のヒスチジンアミノ酸からなるC末端標識を用いて合成した。6×Hisの標識化ペプチドミモトープのストック溶液(100μg/ml)をPBS中で調製した。
【0097】
50μl容量の希釈したTALONビーズを、50μl容量の希釈したHis標識化ペプチドミモトープ(例えばRhD12)および100μlの試験ヒトモノクローナル抗体(例えばT27:抗RhD)と一緒に、NaClゲルカード(ID Microtyping System;Diamed)の反応チャンバに置いた。ゲルカードを、Incubator−ID(DiaMed)において1時間、37℃でインキュベートした。インキュベートの後、カードを、ID Centrifuge24S(DiaMed)において10分間遠心分離した。抗体陽性反応を、ゲルマトリクスの表面上のビーズの層により視覚化した。陰性反応において、凝集していないビーズをゲルマトリクスに通し、ペレットを形成させた。
【0098】
マウスモノクローナル抗体(例えば、LM447:抗Fybモノクローナル抗体)の結合を試験するために、1μl容量のヒツジ抗マウスIgGを、NaClゲルカードの反応チャンバに最初に加え、室温で10分間、ゲルマトリクスで平衡化させ、その後、50μl容量の希釈したTALONビーズ、50μl容量の希釈したHis標識化ペプチドミモトープ(例えばFyb16)および100μlの試験マウスモノクローナル抗体(例えばLM447:抗Fyb)を加えた。ゲルカードを、ID Incubator(DiaMed)において1時間、37℃でインキュベートした。インキュベート後、カードを、ID centrifuge(DiaMed)において10分間遠心分離した。再び、反応を視覚的に計測した。
【0099】
これらの実施例により、合成ペプチドミモトープが、固体支持体に結合した場合でさえ、天然血液型抗原に対して引き起こされる抗体に特異的に結合できることが示される。これらの実施例において、使用した固体支持体はポリスチレンNi−NTAミクロスフェアビーズまたは超常磁性ポリスチレンビーズであるが、合成ペプチドミモトープが、任意の適切な支持体に固定される場合に、天然血液型抗原に対して引き起こされる抗体に特異的に結合できることも推測される。
【0100】
この結果は図13および14に確認され、それにより、ペプチドミモトープRhD12に対する抗RhDモノクローナル抗体(T27)の特異的結合およびペプチドミモトープFyb16に対する抗Fybモノクローナル抗体(LM447)の特異的結合が示される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液型抗原のミモトープ、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
血液型抗原は、赤血球表面の膜タンパク質に存在する。29の血液型系(Rhesus、Kell、Duffy、Kidd、ABO、MNS、P、Lutheran、Lewis、Diego、Yt、Xg、Scianna、Dombrock、Colton、Landsteiner−Wiener、Chido−Rodgers、Hh、Kx、Gerbich、Cromer、Knops、Indian、Ok、Raph、JMH、I、GlobosideおよびGIL)のうち1つを除いて全てをコードする遺伝子は、クローニングされ、配列決定され、アミノ酸配列が推定され、膜構造が予測される。
【0003】
Rhesus、Kell、DuffyおよびKidd血液系などのうち、Rhesus抗原は最も複雑であり、2つの高い相同遺伝子である、RHDおよびRHCEの生成物である。抗原は、抗体結合に利用できる6個の細胞外ループを有すると予測される。
【0004】
Rhesus抗原のうち、最も一般に発現される、RhDポリペプチドは、その最も近い等価物であるRhCcEeポリペプチドと36アミノ酸異なる。両方は、Rhesus関連糖タンパク質(RAG)ポリペプチドと同時に発現される。
【0005】
RHCE遺伝子産物は4つの対立形質に存在し、各々の対立遺伝子は、組み合わせて、すなわち、Ce、ce、cEまたはCEの2つの抗原の発現を決定する。RhC抗原は、ループ2における1つのアミノ酸がRhcとは異なり(Ser103Pro)、そしてE/eに関して、単一の外表面アミノ酸の相違はループ4に予測される(Pro226Ala)。
【0006】
Kellタンパク質は、単一の膜を通り抜ける構造であり、K/k対立遺伝子は、細胞外領域に単一のアミノ酸変化(Met193Thr)を生じる一塩基変異多型(SNP)の結果である。
【0007】
Duffyタンパク質は、N末端が細胞外である3つの細胞外ループを有すると予測され、Fya/Fyb対立遺伝子は、N末端領域にアミノ酸置換(Asp42Gly)を引き起こすSNPの結果である。
【0008】
Kidd糖タンパク質は、細胞内N末端およびC末端を有する10個の膜貫通ドメインを有すると予測される。Jka/Jkb多型は、第4の細胞外ループにおいて単一のアミノ酸置換(Asp280Asn)を引き起こすSNPによる。
【0009】
抗体に結合する抗原上の免疫学的決定基は、B細胞エピトープと定義される。なぜなら、それらは、Bリンパ球の表面膜免疫グロブリン受容体によって認識されるからである。これらのエピトープは、直線状、すなわち、タンパク質配列由来のアミノ酸の連続的な伸長または立体構造であってもよく、隣接しないアミノ酸の空間的に並んだ位置に依存する。血液型抗原のB細胞エピトープ構造の研究は、ほとんどがRhD抗原に限定され、今まで、30を越えるエピトープが血清学的に同定されている。
【0010】
単一アミノ酸置換は、関与する予測されたループが直線状の配列においていくらか離れていても、1つより多いエピトープに影響を与え得、RhD B細胞エピトープが立体構造であるという結論が出される。
【0011】
C/cおよびE/e上のB細胞エピトープは、少数であると推定されるが、立体構造であるように思われる。なぜなら、抗原性はRAGポリペプチドの同時発現を必要とするからである。
【0012】
K/k多型は、K対立遺伝子の抗原性の原因となり得る糖タンパク質部位を破壊すると推定され、エピトープ決定基も立体構造であると予想される。
【0013】
血液型抗原は、輸血された赤血球の破壊を引き起こし得る同種抗体の生成物を含み得る。従って、輸血された血液に対する反応は、輸血された赤血球の受容者が、それらの破壊を生じるこれらの赤血球に対する抗体を有する場合に生じ得る。熱、低血圧、吐き気および嘔吐、ならびに腰痛および胸の痛みを含む、即時反応が生じ得、反応の重篤度は関与する抗体のクラスおよび量に依存する。
【0014】
血液型抗原に対する同種抗体はまた、妊婦の胎盤を通過し、新生児溶血性疾患(HDNB)を生じ得る。新生児溶血性疾患(HDNB)は、母が幼児の赤血球上の抗原に対して感受性のある場合に生じ得、これらの抗原に対するIgG抗体を作製する。これらの抗体は胎盤を通過し、胎児の赤血球と反応して、それらの破壊を生じ得る。RhDは最も一般的に関与する抗原である。
【0015】
血液型抗原はまた、自己免疫性溶血性貧血などの自己免疫疾患に関与する自己抗体の生成物を含み得る。この自己免疫疾患に対する誘因はまだ知られておらず、従って、いかなる時にも生じる場合があり、自分の身体の赤血球細胞を攻撃する特異性のある広範なRh群の身体産生自己抗体を生じる。
【0016】
同種抗体産生に関連する最も重要な血液型は、Rhesus、Kell、Duffy、およびKiddである。
【0017】
輸血された赤血球を破壊し得るか、またはHDNBを引き起こすために胎盤を通過し得る同種抗体を検出するため、あるいは自己抗体を検出するための現在の方法は、供血者の赤血球試薬に頼っている。それらは、有効期間が短く、供血者間の抗原発現においてかなり変化する。ヒトの血液製剤の使用はまた、安全性の関与、例えば、ウイルス感染の潜在的な移入に関することを導く。ヒトの試薬を使用する場合に必要とされる厳密な試験およびスクリーニングは、試料間の不整合性とともに、同種抗体を検出するための試薬の利用可能性を遅らせ、そして、適した試薬を得る費用を増加させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従って、本発明は、従来技術に関する問題、特に同種抗体および自己抗体を検出するための既存の方法に関する問題を克服しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の態様によれば、血液型抗原のミモトープを提供する。
【0020】
用語「ミモトープ」とは、天然ペプチドのエピトープを模倣できるペプチドをいう。通常、このようなペプチドは合成ペプチドである。これに関して、「合成ペプチド」は、生物系において天然に発現されるよりむしろ、合成される任意のペプチドを含む。合成は、ファージディスプレイ、F−moc化学あるいは生物系もしくは非生物系または環境における外来ペプチドを発現または合成するための任意の他の手段などの組み換え技術によってなされてもよい。
【0021】
従って、本発明は、血液型抗原に対して引き起こされる抗体に結合できる新規のペプチドを提供する。これらのペプチドは、必ずしもヒトの血液などの天然源由来ではなく、従って、健康上のリスク、保存の問題およびそれらの関連する変動性をもたらさない。
【0022】
簡便には、血液型抗原は、Rhesus、Kell、Duffy、Kidd、ABO、MNS、P、Lutheran、Lewis、Diego、Yt、Xg、Scianna、Dombrock、Colton、Landsteiner−Wiener、Chido−Rodgers、Hh、Kx、Gerbich、Cromer、Knops、Indian、Ok、Raph、JMH、I、GlobosideまたはGILから選択される。
【0023】
ミモトープの推定アミノ酸構造は、それが模倣する抗原のアミノ酸構造に必ずしも対応していなくてもよい。実際に、本研究において、同定された多数の血液型ミモトープは、それらが模倣する天然抗原のアミノ酸配列とは広範に異なるアミノ酸配列を有することが発見された。
【0024】
多くの血液型抗原のエピトープは構造が複雑であると考えられているため、イムノパニングによって本発明において同定された合成ペプチドが、特定の様式で天然抗原に対して引き起こされた抗体に結合できることは驚くべきことである。この発見は、合成血液型ミモトープが、それらの対応する抗原に対して引き起こされた抗体に特異的に結合することを可能にする三次構造を担い、維持することを示唆する。
【0025】
簡便には、ミモトープは合成される。これにより、ヒトの血液試薬を用いることに関連する問題、例えば、汚染の潜在的リスク、および感染、保存に関する困難性、ドナーの識別、変動性およびスクリーニングが取り除かれる。費用に関連するこれらの問題も、合成ミモトープの使用により減少されるだろう。合成ミモトープの使用はまた、使用するために利用可能である試薬に対するより程度の高い制御を提供し、不足が決して起こらないことを確実にし、試薬についての不必要な待機を回避できる。
【0026】
本研究を通して、多数の血液型抗原のミモトープが同定された。血液型ミモトープとして簡便に同定されたペプチドのいくつかは、表2〜5に同定され、ペプチド断片、免疫反応性類似体またはそれらの誘導体を含む。
【0027】
本発明のさらなる態様によれば、血液型抗原のミモトープを同定するための方法が提供され、その方法は、ランダムファージディスプレイライブラリーと、血液型抗原に対する抗体とを接触させること、およびファージディスプレイライブラリーにおけるペプチドに対する抗体の結合を検出することを含み、ここで、ペプチドに対する抗体の結合は、ペプチドが血液型抗原のミモトープであることを示す。
【0028】
好ましくは、血液型抗原は、Rhesus、Kell、Duffy、Kidd、ABO、MNS、P、Lutheran、Lewis、Diego、Yt、Xg、Scianna、Dombrock、Colton、Landsteiner−Wiener、Chido−Rodgers、Hh、Kx、Gerbich、Cromer、Knops、Indian、Ok、Raph、JMH、I、GlobosideまたはGILである。これらは、同種抗体および自己抗体の産生に関連する血液型抗原である。
【0029】
ミモトープが結合する抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の調製物であってもよい。モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を産生するための方法は、当該分野において周知である。
【0030】
7量体、12量体、および15量体のペプチドを含むランダムファージディスプレイライブラリーが、天然血液型抗原に対して引き起こされる抗体に結合できるペプチドを同定するために使用された。抗体に結合されたペプチドの同定および配列決定により、潜在的な血液型抗原ミモトープの同定が可能になった。その後のELISAによるこれらのペプチドの解析、続く、SPOTによるこれらのペプチドの合成および膜に結合したSPOTの解析により、ペプチド抗体結合の強度および特異性を確認した。これにより、模倣される天然抗原とは構造的に異なる合成ペプチドが首尾よく、天然の血液型抗原に対して引き起こされる抗体に特異的に結合できることが確認され、それにより、問題となる血液型抗原の有効なミモトープが示される。例えば、ミクロスフェアビーズまたは超常磁性ビーズ上でのミモトープの固定化は、天然の血液型抗原に対して引き起こされる抗体に特異的に結合するミモトープの能力に影響を与えなかった。従って、記載される方法は、臨床環境、例えば、同種抗体または自己抗体の産生に関連する疾患の診断において使用され得る血液型抗原の合成ミモトープを同定するための効果的および有効な方法を示す。
【0031】
ファージ−ペプチドに対する抗体の結合は、任意の適切な手段によって検出され得、そのような手段は当業者に公知である。使用され得る結合の型の例は、実施例に記載される。
【0032】
本発明のさらなる態様によれば、試料中の血液型抗原に対する抗体を検出するための方法が提供される。その方法は、前記血液型抗原のミモトープと、試験される試料とを反応させる工程、試料とミモトープとの間のいずれかの反応を検出する工程を含み、ここで、試料とミモトープとの間の反応は、血液型抗原に対する抗体の存在を示す。
【0033】
簡便には、上記の特定された方法を実施する前に、ミモトープは、固体支持体に固定化される。ミクロスフェアビーズまたは超常磁性ビーズなどの固体支持体上のミモトープの固定化は、ミモトープが天然の血液型に対して引き起こされる抗体に特異的に結合する能力に影響を与えなかった。これに関して、その方法は、固体支持体上に血液型抗原のミモトープを固定すること、固定されたミモトープと、試験される試料とを接触させること、ミモトープに対する試料の結合を検出することを含み、ここで、ミモトープに対する試料の結合は、ミモトープによって模倣された血液型抗原に対する抗体の存在を示す。
【0034】
簡便には、血液型抗原は、Rhesus、Kell、Duffy、Kidd、ABO、MNS、P、Lutheran、Lewis、Diego、Yt、Xg、Scianna、Dombrock、Colton、Landsteiner−Wiener、Chido−Rodgers、Hh、Kx、Gerbich、Cromer、Knops、Indian、Ok、Raph、JMH、I、Globoside、またはGILである。
【0035】
これに関して、多くの天然の血液型抗原のエピトープが、高次構造であると考えられるならば、本明細書に同定される合成ミモトープは、固体支持体に結合される場合でさえ、天然の血液型抗原に対して引き起こされる抗体に特異的に結合する三次構造を示すことができることは驚くべきことである。固体支持体は、目的のための任意の適切な支持体を含んでもよいが、簡便には、膜、スライドガラスまたはビーズ(ガラス、ポリスチレンなど)を含む。支持体への結合は、例えば、ポリスチレンミクロスフェアビーズの表面に結合されるNi−NTA基を用いること、または超常磁性ポリスチレンビーズを用いることなどの任意の適切な手段によってなされてもよい。ポリヒスチジンタグが、支持体への結合を促進するためにミモトープのC末端またはN末端に導入されてもよい。より小さいバックグランドを有し、首尾よく剥がれ、再びプローブできる膜、例えば、INTAVIS AG膜が好ましい。
【0036】
従って、本発明は、血液型抗原に対して引き起こされる、生物学的試料における抗体を効果的に同定する方法を提供する。合成ミモトープの使用は、ヒト試薬の使用に関して確認されている問題を取り除く。これにより、抗体検出における一貫性が向上し、血液型抗原に対して引き起こされる抗体をスクリーニングするための既存の技術と比べて、ほとんど費用をかけないか、または余分な費用をかけずに、より稀少な抗体の検出を可能にする。ヒトの血液製剤の使用を回避することもまた、安全性を高め、ヒトの血液製剤を使用する場合に必要とされる厳密な試験を回避し、使用のために利用可能な試薬の一貫性を向上する。これにより、使用のために試薬を調達し、清浄する費用が減少する。従って、記載される方法は、既存の検出方法より信頼性があり、安全かつ都合が良く、生物学的試料における血液型抗原に対する抗体の検出を、より迅速に、より安く、かつより実施しやすくする。
【0037】
検出される抗体は、血液型抗原に対する同種抗体または自己抗体であってもよい。従って、記載される方法は、同種抗体または自己抗体の産生に関与する血液製剤に対する疾患または反応を検出および診断する改良された方法を提供する。そのような疾患としては、赤血球輸血(HTR)に対する溶血反応、新生児溶血性疾患および自己免疫性溶血性貧血が挙げられる。
【0038】
簡便には、抗体は同種抗体であり、これはHTRまたは新生児溶血性疾患の危険性の信頼性があり、かつ安全な診断を可能にする。
【0039】
本発明の別の態様によれば、試料中の血液型抗原に対する抗体の存在を検出するための装置が提供される。固体支持体(膜、スライドガラス、マイクロアレイチップ、またはビーズ(複数も含む)など)を含む装置は、その支持体に固定される血液型抗原のミモトープの配列を有するか、または各々の固体支持体上に1つのミモトープを有し、複数の固体支持体が提供される。
【0040】
配列は、単一のRhesus、Kell、Duffy、Kidd、ABO、MNS、P、Lutheran、Lewis、Diego、Yt、Xg、Scianna、Dombrock、Colton、Landsteiner−Wiener、Chido−Rodgers、Hh、Kx、Gerbich、Cromer、Knops、Indian、Ok、Raph、JMH、I、Globoside、またはGIL抗原ミモトープを含んで構築されてもよい。あるいは、配列は、同じ診断配列で配置される複数の血液型由来のミモトープを有する、血液型ミモトープの任意の組み合わせを含んで開発されてもよい。配列の構成および設計は、装置の意図される目的に依存してもよく、必要とされる場合、オーダーメイドの配列が開発されてもよい。特定の目的のために必要とされる配列は、試薬の利用可能性を考慮する必要もなく、迅速に、信頼性があり、かつ費用効果的に構築され得る。
【0041】
配列の構築に関して、固体膜支持体に結合するペプチドのための異なる種類および長さのスペーサーが使用されてもよい。例えば、アミノ−PEGスペーサーまたは限定された数のアミノ酸残基が、固体支持体に対してミモトープペプチド配列を結合するために使用されてもよい。
【0042】
簡便には、抗体は同種抗体である。従って、装置は、ヒトの血液型試薬の使用を必要とせずに、血液型抗原に対して同種抗体を産生する疑いのある患者から得られる血液の試料中の同種抗体を検出するために使用され得る。血液型試薬の必要性の除去は、簡便には、血液型試料中の抗体の検出のための試薬の利用可能性を増加する。
【0043】
本明細書に記載される抗原捕捉系はまた、抗体検出の感受性および正確性を増加でき、従って、血液型の検出についての既存の方法より改良された方法を提供する。
【0044】
バイオパニングによって選択されるファージ−ペプチドは、最初に抗体を同定するために使用される抗体に特異的に結合することを示すことによって、本明細書に記載される実験により、診断試薬として選択されたファージ−ペプチドの潜在的価値が確認される。
【0045】
本研究において同定されたミモトープは、適切な固相に結合する場合、血液型抗原に対する抗体を検出するためのスクリーニング試薬として使用され得る。
【0046】
これに関して、ミモトープは、同種抗体または自己抗体の産生に関連する疾患などの血液型抗原に関連する疾患を診断するために使用され得る。
【0047】
本明細書において同定され、記載されるミモトープのさらなる潜在的使用は、そのミモトープと一緒に形成される配列の使用とともに当業者にとって明らかであろう。
【0048】
ここで、本発明は、添付の図面を参照して、例示のみとして記載される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】アッセイした20個のFybファージ−ペプチドのうち14個に対する抗Fyb抗体(LM447)の結合を確認する、ファージELISAの結果を示す。
【図2】SPOTハイブリダイゼーション実験の結果を示す。20個のFybペプチドミモトープを複製して合成した。結合実験により、膜支持体で合成した場合、Fybペプチドミモトープが、抗Fyb抗体を認識し、結合する能力を確認した。
【図3】アッセイした19個のFyaファージ−ペプチドのうち16個に対する抗Fya抗体(LM487)の結合を確認する、ファージELISAの結果を示す。
【図4】SPOTハイブリダイゼーション実験の結果を示す。一連の37個のFyaペプチドミモトープを膜で合成し、抗Fya抗体(LM487)に結合するそれらの能力を試験した。
【図5】抗Fyaおよび抗Fybモノクローナル抗体、LM447およびLM487とのFyaペプチドミモトープの相互ハイブリダイゼーションの結果を示す。一連のFyaおよびペプチドミモトープを複製して合成し、2つのモノクローナルとの膜のハイブリダイゼーションにより、抗体特異的および交差反応性ペプチドミモトープを同定した。
【図6】アミノ酸置換実験の結果を示す。一連の16個の合成ペプチドをSPOTにより複製して合成した。これらの配列は、FybコンセンサスI配列に由来し、アミノ酸置換により生成した。合成ペプチドミモトープを、抗Fyaおよび抗Fybモノクローナル抗体に結合するそれらの能力について試験した。
【図7】抗RhD抗体により選択されたペプチドミモトープのサブセットとモノクローナル抗体T10とのハイブリダイゼーション後の結果を示す。40個のペプチド(RhD41−RhD80)を合成して、陽性信号を11個のスポット(スポット1−3、8、17、27、28、31、37、39および40;ペプチド配列についての表を参照のこと)で観測した。
【図8】SPOTハイブリダイゼーション実験の結果を示す。一連の28個のRhDペプチドミモトープをSPOTにより合成して、ポリクローナル抗RhD抗血清調製物との膜のハイブリダイゼーションにより、抗体反応性ペプチドを同定した。
【図9】SPOTハイブリダイゼーション実験の結果を示す。一連の36個のRhEペプチドミモトープをSPOTにより合成した。モノクローナル抗体E0002との膜のハイブリダイゼーションにより、抗体特異的ペプチドミモトープを同定した。
【図10】SPOTハイブリダイゼーション実験の結果を示す。一連の16個のRheペプチドミモトープをSPOTにより合成した。モノクローナル抗体e0002との膜のハイブリダイゼーションにより、抗体特異的ペプチドミモトープを同定した。
【図11】ポリスチレンLiquiChip Ni−NTAミクロスフェアビーズに固定されたペプチドミモトープFyb16に結合する抗Fybモノクローナル抗体(LM447)の特異的結合を示す。信号強度は、固定されたペプチドミモトープに対して結合されたモノクローナル抗体の量と一致する。
【図12】ポリスチレンLiquiChip Ni−NTAミクロスフェアビーズに固定されたペプチドミモトープRhD12に結合している抗RhDモノクローナル抗体(T27)の特異的結合を示す。信号強度は、固定されたペプチドミモトープに結合されたモノクローナル抗体の量と一致する。
【図13】改変されたゲル凝集アッセイにおいて超常磁性ポリスチレンビーズに固定されたペプチドミモトープRhD12に対する抗RhDモノクローナル抗体(T27)の特異的結合を示す。チャンバ1:ビーズ+His−標識されたペプチドミモトープRhD12のみ;チャンバ2:ビーズ+His−標識されたRhD12+抗Fybモノクローナル抗体(LM447);チャンバ3:ビーズ+His−標識されたRhD12+抗RhDモノクローナル抗体(T27)。
【図14】改変されたゲル凝集アッセイにおいて超常磁性ポリスチレンビーズに固定されたペプチドミモトープFyb16に対する抗Fybモノクローナル抗体(LM447)の特異的結合を示す。チャンバ1:ビーズ+His−標識されたペプチドミモトープFyb16のみ;チャンバ2:ビーズ+His−標識されたFyb16+抗Fybモノクローナル抗体(LM447);チャンバ3:ビーズ+His−標識されたFyb16+抗RhDモノクローナル抗体(T27)。
【発明を実施するための形態】
【0050】
(方法論)
血液型抗原のミモトープの同定を、一連の血液型抗原特異的モノクローナル抗体(3×抗RhD、3×RhE、2×Rhe、1×Fya、1×Fyb)およびRhDポリクローナル調製物を有する4つのファージ−ペプチドライブラリーのバイオパニングを用いて開始した。合計で、490個のファージを選択して、DNA塩基配列決定およびELISAによって最初に特徴付けた。DNA塩基配列解析により、295個の固有のファージ−ペプチド配列を同定し、それをSPOT技術によって膜で合成した。ペプチド/抗体反応の特異性を、ELISAおよびSPOTアッセイによって試験し、特定のRhD、RhE、Rhe、FyaおよびFyb抗体を検出できる84個のペプチドを同定した。
【0051】
(バイオパニング)
New England Biolabs.から供給される3つの異なるファージライブラリー(Ph.D.7およびPh.D.12は、それぞれ、直線状の7量体および12量体のペプチドを示し、Ph.D.C7Cは、それらの末端でジスルフィド架橋を強いられる7量体のペプチドを示す)および直線状の15量体のライブラリー(親切にもProf.George P.Smith,University of Missouriによって提供された)を、10個の異なるモノクローナル抗体およびポリクローナル調製物を用いてバイオパニング実験に使用した(表1)。
【0052】
表1:バイオパニングにおいて使用した抗体
【0053】
【表1】
【0054】
記載した全てのモノクローナル抗体を、培養上清から精製した。ポリクローナル抗RhD調製物を、Scottish National Blood Transfusion Serviceから得た。
【0055】
各標的抗体/ライブラリーの組み合わせに関して、96ウェルImmulon4平底ELISAプレート(Thermo Labsystems)の個別のウェルを、150μlのELISAコーティングバッファー(15mMのNa2CO3、35mMのNaHCO3、pH9.6)中の5μgの抗体でコーティングした。プレートを密閉して、4℃で一晩インキュベートした。結合していない抗体を捨てて、350μlのブロッキングバッファー(0.1MのNaHCO3/3%の脱脂粉乳)を各ウェルに加えた。プレートを密閉して、4℃で1時間インキュベートした。ブロッキングバッファーを除去して、ウェルを300μlのTBS/0.1%のTween20で6回洗浄した。100μlのTBS/0.1%のTween20中の約2×1011のプラーク形成単位(pfu)を各ウェルに加え、プレートを室温で1時間インキュベートした。ウェルを300μlのTBS/0.1%のTween20で10回洗浄した。結合したファージを、100μlの0.2Mのグリシン−HCl/BSA、pH2.2(1mg/ml)で10分間インキュベートすることによって溶出し、次いで15μlの1MのTris−HCl(pH9.1)で中和した。ラウンド1の溶出液のアリコートを除去し、滴定した。溶出したファージの残りを、37℃で4.5時間、E.coli ER2538細胞の感染によって増幅させた。培養液を、4℃で10,000rpmにて10分間、遠心分離した。上清を回収し、1/6容量のPEG/NaCl(20%のポリエチレングリコール8000;2.5MのNaCl)を加え、次いで4℃で一晩インキュベートした。PEG沈殿したファージを、4℃で10,000rpmにて15分間、遠心分離した。上清を除去し、ファージペレットを200μlのTBSに再懸濁した。パニングの2つのさらなるラウンドを開始し、約2×1011pfuのラウンド2またはラウンド3の増幅させた溶出液を注入ファージとして使用した。ラウンド3の溶出液を滴定したが、増幅しなかった。個々のプラークを増幅させ、DNA配列解析の前にPCR増幅に供した。続いて、ペプチド抗体結合の特異性を、ファージELISAおよびSPOT技術の両方を用いて決定した。
【0056】
(ファージ培養)
個々のファージクローンを、ラウンド3の滴定プレートからランダムに選択し、1ml容積の1:100希釈の、L−Brothで増殖するE.coli ER2538の一晩培養液中で増幅させた。培養液を37℃で4.5時間インキュベートし、次いで13000rpmで1分間遠心分離した。ファージ上清を、PCR増幅、DNA塩基配列決定およびファージELISAによるさらなる解析のために回収した。
【0057】
(PCR増幅)
選択されたファージクローンの各々において示されるペプチド配列を決定するために、ペプチド配列をコードするDNA挿入物をPCRによって得た。PCR増幅を、1倍のバッファー(Bioline)、400μMのdNTP、1.5mMのMgCl2、1単位のTaqDNAポリメラーゼ(Bioline)、1μlのファージ培養液上清ならびに各々0.5μMの適切なフォワードおよびリバースプライマーを含む25μlの最終溶液で実施した。プライマー12MER1For:5−CGCAATTCCTTTAGTGGTAC−3および12MER2Rev:5−CCCTCATAGTTAGCGTAACG−3を、C7C、直線状の7量体および12量体のファージ/ペプチドの増幅について使用した。プライマーFuse5For1:5’−ACCGATACAATTAAAGGCTC−3’およびFuse5Rev1:5’−TGAATTTTCTGTATGAGG−3’を、15量体のファージ/ペプチドの増幅について使用した。PCRを、以下の条件:1分間95℃で変性;1分間55℃でアニーリング;および3分間72℃で伸長の下で熱サイクラー(Techgene、モデルFTGene2D;Techne,Cambridge,UK)で実施した。30サイクル後、伸長を72℃でさらに9分間続けた。PCR産物を、配列解析のためにQIAquick PCR精製キット(Qiagen)を用いて回収した。
【0058】
(配列解析)
ファージペプチドのヌクレオチド配列を、BigDye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction KitおよびABI Prism 377 DNA Sequencer(Applied Biosystems)を用いて得た。プライマー12MER2Revを、C7C、直線状の7量体および12量体のPCR産物のランダムペプチド配列を決定するために使用した。プライマーFuse5Rev1を、15量体のPCR産物のために使用した。アミノ酸配列を、Lasergeneソフトウェア(DNASTAR Inc.,Wisconsin,USA)を用いてヌクレオチド配列から推定した。
【0059】
(ファージELISA)
回収したファージ−ペプチドが、それらの選択において使用された抗体と反応する能力を、捕捉ELISAによって確認した。適切なモノクローナル抗体の10μg/mlのストックを、ELISAコーティングバッファー中で調製して、150μlのアリコートを、Immulon4ELISAプレートのウェルに加え、次いで4℃で一晩インキュベートした。結合していない抗体を捨てて、ウェルを、4℃で1時間、350μlのブロッキングバッファー(0.1MのNaHCO3/3%の脱脂粉乳)でブロックした。ウェルを300μlのTBS/0.5%のTween20で3回洗浄し、100μlの選択されたファージ培養液上清を、室温で1時間、適切なウェルに加えた。結合していないファージを除去し、ウェルを300μlのTBS/0.5%のTween20で6回洗浄した。抗M13に結合した西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)の1:5000希釈である、二次抗体を、ブロッキングバッファー中で調製して、100μlのアリコートを各ウェルに加えた。室温で1時間のインキュベートの後、ウェルを300μlのTBS/0.5%のTween20で6回洗浄した。反応を起こすために、o−フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD)基質(Sigma)の200μlのアリコートを各ウェルに加えた。室温で1時間のインキュベートの後、マイクロプレートELISAリーダーによって450nmでの吸光度を測定した。0.1より大きいOD450信号を陽性とみなした。
【0060】
(SPOT合成)
ペプチドミモトープを、F−moc化学を用いてSPOT法(Frank;1992)により合成した。ペプチドをアミノ−PEG誘導体化セルロース膜(Intavis AG)に固定し、別個のスポットとして合成した。合成を、Sigma Genosysプロトコルに従って、それぞれのアミノ酸の手動でのピペット操作により、C末端からN末端までのペプチド鎖の段階的な伸長により行った。Intavis AG膜を用いた場合、インキュベート時間を変更した。最後のアミノ酸の添加後、ペプチドの末端残基および側鎖を脱保護して、膜をメタノールで洗浄し、空気乾燥し、次いで使用前に−20℃で保存した。
【0061】
(SPOT膜のスクリーニング)
膜を50mlのファルコンチューブに入れ、TBS/0.25%のTween20/5%の脱脂粉乳中で穏やかに攪拌しながら4℃で一晩ブロックした。一次(1°)抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)の2μg/mlの希釈を、TBS/0.25%のTween20/5%の脱脂粉乳中で調製し、その後、スパイラルローターで、室温で1時間、膜とともにインキュベートした。20mlのTBS/0.25%のTween20を用いて各々5分間の4回の洗浄後、膜を、室温で1時間、TBS/0.25%のTween20/5%の脱脂粉乳中で調製した1/5000希釈の二次(2°)抗体とともにインキュベートした。ペルオキシダーゼ標識したラビット抗マウスIgG(Sigma)を、マウス抗Fya(LM487)および抗Fyb(LM447)1°抗体の検出のために使用し、ペルオキシダーゼ標識したヤギ抗ヒトIgG(Pharmacia)を、ヒト1°抗体の検出のために使用した。20mlのTBS/0.25%のTween20を用いて各々5分間の4回の洗浄後、膜をブロットして過剰な流体を取り除いた。結合した抗体を化学発光によって検出した。ECL検出試薬(Amersham Biosciences)を混合して、2分間膜上で重ね合わせた。化学発光基質を除去し、膜をブロットして過剰な流体を取り除いた。Hyperfilm ECL(Amersham Biosciences)への曝露後、連続した短いインキュベート時間(5秒〜10分)の間、陽性スポットを視覚化した。
【実施例】
【0062】
(実施例1)
(Duffy抗原エピトープを模倣するファージ−ペプチドの同定)
抗Fya(LM487)および抗Fyb(LM447)特異的モノクローナル抗体を、Duffy糖タンパク質(Colliganら、1998)上のエピトープ由来の抗原性ペプチドを用いて開発した。これらの抗体を、天然Duffy抗原を模倣したペプチドについてのファージラブラリーをパニング(pan)するために使用した。各々のパニング実験の最後の3ラウンドからのクローンを、増幅およびDNA配列決定のためにランダムに選択した。ファージ−ペプチドによってコードされたアミノ酸配列を、DNA配列データから推定した。
【0063】
4つのファージ−ペプチドライブラリーの各々のバイオパニングを、抗Fybモノクローナル抗体(LM447)を用いて行い、各々のライブラリーからの特定の配列の複数のコピーの同定を得た。合計で、100の固有のFybペプチドミモトープを同定した(表2/ペプチドFyb1−71およびFyb88−116を参照のこと)。同定された配列のどれも、LM447抗体の開発に使用した14量体の免疫ペプチド(PDGDYDANLEAAAP;CPep75)に似ていなかった。しかしながら、これらの「Fyb」ペプチドミモトープのアミノ酸配列の解析により、2つのコンセンサス配列:
コンセンサス1:M(F/Y)QPD(N/P)(P/L)(T/P)T(K/L)(N/Q)(P/V/A/S)
コンセンサス2:D(H/M/V)HYT(S/N)NTDPL(H/N/R)(A/P/V)P
を同定した。
【0064】
各々のコンセンサス配列内の特定の位置は、限定した数のアミノ酸を有した(括弧に示される)。これらは、選択されたFybペプチドミモトープの全集団内で同程度で生じた。
【0065】
表2:Fybペプチド
【0066】
【表2−1】
【表2−2】
【表2−3】
【表2−4】
【表2−5】
【0067】
抗Fyaモノクローナルである、LM487を用いるバイオパニングにより、合計で37の固有のペプチド配列を同定した(表3/FyaペプチドFya1−37を参照のこと)。Fya多型と同一の配列を含む、少数の「Fya」ファージ−ペプチドは、オリジナルの14量体の免疫ペプチド(PDGDYGANLEAAAP;CPep118)内に存在し、これによって、血液型抗原模倣物を同定するためのアプローチとしてファージディスプレイの使用が立証された。これらの「Fya」ペプチドミモトープのアミノ酸配列の配列解析により、2つの推定コンセンサス配列:
コンセンサスI:YNYQSYPNPFPV
コンセンサスII:GI(A/S)(E/D)(D/G)DYGALSW
も同定した。
【0068】
しかしながら、「Fyb」の結果と対照的に、これらの「Fya」ペプチドミモトープ配列の多くは、上記の同定したコンセンサス配列のいずれとも一致しなかった。
【0069】
表3:Fyaペプチド
【0070】
【表3−1】
【表3−2】
【0071】
このデータは、ファージ−ペプチドが、その模倣したDuffy抗原エピトープを同定したことを示す。Fya多型と同一の配列を含むファージ−ペプチド(ペプチドFya15およびFya20)に結合した抗Fya抗体および抗Fyb抗体が、ペプチドミモトープを選択したことにより、血液型抗原模倣物を同定する有効な手段としてファージディスプレイの使用を確認した。
【0072】
(実施例2)
(複合体RhD抗原エピトープを模倣するファージ−ペプチドの同定)
RhD抗原エプトープを模倣するファージ−ペプチドを、3つのモノクローナル抗Ds(T10、T22およびT27)を用いて同定した。この限定した数のモノクローナル抗体を有する4つのファージ−ペプチドライブラリーのバイオパニングにより、80個のRhDペプチドミモトープを選択した(表4/ペプチドRhD1−80を参照のこと)。さらに、ポリクローナル抗RhD調製物を用いるバイオパニングにより、さらなる25個のRhDペプチドミモトープを同定した(表4/ペプチドRhD81−105を参照のこと)。ペプチドRhD52を、T10およびポリクローナル抗RhD調製物の両方を用いて選択した。
【0073】
表4:RhDペプチド
【0074】
【表4−1】
【表4−2】
【表4−3】
【表4−4】
【表4−5】
【0075】
(実施例3)
(RhEe抗原エピトープを模倣するファージ−ペプチドの同定)
3つの抗RhEモノクローナル抗体(1×IgG、2×IgM;表1を参照のこと)を用いてバイオパニングを行い、4つのファージ−ペプチドライブラリーの各々からの多くの配列の複数のコピーの同定を得た。配列相同性もまた、異なるライブラリーから選択したファージ−ペプチドの間で確認した。ペプチドRhE18およびRhE24を、抗体E0002およびE0003を用いて選択し、ペプチドRhE19を、抗体E0001およびE0002を用いて選択した。これらの結果は、クラスに関わらず、同じエピトープに対して引き起こされる抗体が、同一のペプチド配列を有するいくつかのファージを同定することを示す。合計で36の固有のRhEペプチドミモトープを同定した(表5;ペプチドRhE1−36を参照のこと)。2つの抗Rheモノクローナル抗体(2×IgM;表1を参照のこと)を用いるバイオパニングにより、17の固有のRheペプチドミモトープを同定した(表5;ペプチドRhe1−17を参照のこと)。
【0076】
表5:RhE/e
【0077】
【表5−1】
【表5−2】
【表5−3】
【0078】
(実施例4)
(オリジナルのDuffyモノクローナル抗体に対する合成ペプチドの特異的結合)
バイオパニングによって選択されたファージ−ペプチドの関連性を免疫学的研究において試験した。最初に、20の「Fyb」ファージ(ペプチドFyb1−13、Fyb20−21、Fyb24−28;配列の詳細について表2を参照のこと)を、ファージELISAおよびSPOT解析の両方による調査のために選択して、合成ペプチドがオリジナルのモノクローナル抗体に特異的に結合できることを確認した。
【0079】
ファージELISAの結果により、抗Fybモノクローナル、LM447の結合を確認した。このモノクローナル抗体の10μg/mlストックを、ELISA含有バッファーにおいて調製し、150μlのアリコートをImmulon4ELISAプレートのウェルに加え、次いで、4℃で一晩インキュベートした。結合していない抗体を捨てて、ウェルを4℃で1時間、350μlのブロッキングバッファーでブロックした。ウェルを300μlのTBS/0.5%のTween20で3回洗浄し、100μlの選択したファージ培養液上清を、室温で1時間、適切なウェルに加えた。結合していないファージを除去し、ウェルを300μlのTBS/0.5%のTween20で6回洗浄した。抗M13に結合した西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)の1:5000希釈である、二次抗体を、ブロッキングバッファー中で調製して、100μlのアリコートを各ウェルに加えた。室温で1時間のインキュベートの後、ウェルを300μlのTBS/0.5%のTween20で6回洗浄した。反応を起こすために、o−フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD)基質(Sigma)の200μlのアリコートを各ウェルに加えた。室温で1時間のインキュベートの後、450nmでの吸光度を測定した。450nmでの吸光度値により、アッセイした20のファージのうち14(ペプチドFyb1、Fyb2、Fyb4−5、Fyb7−13、Fyb25、27および28)の結合を確認した(図1を参照のこと)。
【0080】
20のFybペプチドミモトープを、SPOTにより複製して合成した。抗Fyb抗体(LM447)を用いる結合実験により、抗体が、試験した20のペプチド配列のうち2つ(ペプチドFyb12およびFyb13)に首尾よく結合したことが示された(図2)。結合は、ペプチドCPep75を用いたスポット21にも観察された(アッセイについての陽性コントロール)。ペプチドFyb1、Fyb7、Fyb9およびFyb11は、ペプチドFyb12およびFyb13と等しい強さのファージELISA信号を生成するにもかかわらず、これらの4つのペプチドは、SPOTとして合成した場合、抗Fyb抗体(LM447)と反応しなかった。
【0081】
19の「Fya」ファージ−ペプチドクローン(ペプチドFya1−18およびFya25;配列の詳細について表3を参照のこと)のファージELISA解析により、LM487抗体のFyaファージ−ペプチドに対する特異的結合を確認した。図3は、19のうち3つのみ(ペプチドFya2、Fya14およびFya18)が抗体に結合しなかったことを示す。これらの19のペプチドは、SPOTとして合成した37(ペプチドFya1−37)の中のものであり、膜と抗Fya抗体とのハイブリダイゼーション後、強い陽性信号をペプチドFya15(スポット15)のみで観察した(図4)。
【0082】
これらの結果は、ファージELISAおよびSPOTの両方により並行して試験した場合のFybファージ−ペプチドについて得た観察を反映した。陽性ファージELISA信号は、対応するペプチドミモトープが合成されて、SPOTハイブリダイゼーションにより試験された場合に陽性信号を自動的に保証しなかった。さらに、配列解析により、陽性または陰性ペプチドのいずれの間にも明らかな配列相同性は確認されなかった。
【0083】
FyaおよびFybファージELISAおよびSPOTアッセイの両方から得られた結果により、ペプチドの存在状態が抗体結合において重要であることが示唆される。ファージコート中で融合タンパク質の一部を形成するペプチドは、SPOTにより膜で合成された場合、異なる構造を取り得る。取り囲むタンパク質がなければ、抗体認識はその後に影響を与え得る。従って、SPOTによって解析するためのファージ−ペプチドクローンを選択するために単純にELISAを用いることよりむしろ、それらの選択において最初に使用されるモノクローナル抗体を用いるSPOT解析の前に、潜在的な診断ペプチドを見落とさないことを確実にするために、バイオパニングによって選択された全てのファージ−ペプチド(Fyb、Fya、RhDおよびRhEe)を、DNA配列解析によって特徴付けた。
【0084】
(交差反応性ペプチドを同定するための相互ハイブリダイゼーション)
一連の44個のペプチドを複製して合成した(図5)。スポット1−37はFyaペプチドミモトープ(Fya1−37)であり、スポット38−40はそれぞれペプチドFya17、Fya25およびFya35の写しであり、スポット41−44はコントロールペプチドであった(スポット41は、抗Fyb抗体を生成するために使用した免疫ペプチド[Cpep75]であり;スポット42は、無関係の12量体[Cpep76]であり;スポット43は、抗Fya抗体を生成するために使用した免疫ペプチド[CPep118]であり、スポット44は、Fybペプチドミモトープ[Fyb1]であった)。抗Fyaおよび抗Fybモノクローナル抗体との並行した膜のハイブリダイゼーションにより、多くのペプチド(ペプチドスポット15、20および43)のFya特異性を確認したが、抗Fyb抗体に結合できるペプチド(スポット36および41)および両方の抗体との交差反応性を示すさらなるペプチド(スポット3)も同定した。スポット43および41で観測した信号は、これらの2つのペプチドがそれぞれ抗Fyaおよび抗Fybモノクローナル抗体についての陽性コントロールとして含まれるため、予想外ということではなかった。
【0085】
(アミノ酸置換によるコンセンサス配列由来合成Fybペプチドミモトープの生成)
100の固有の「Fyb」ペプチドミモトープ(Fyb1−71およびFyb88−116)の配列解析により、2つのコンセンサス配列を同定した。コンセンサス1:M(F/Y)QPD(N/P)(P/L)(T/P)T(K/L)(N/Q)(P/V/A/S)は、同程度で生じる限定した数の残基を有する一連の位置(アミノ酸2、6、7、8、10、11および12)を含む。一連の16のペプチドミモトープ(ペプチドFyb72−87;表2を参照のこと)を、2、6、8および12位でのアミノ酸置換を用いてSPOTにより合成した。試験時に、これらのコンセンサス配列由来のペプチドミモトープのうち2つ(ペプチドFyb84;スポット13およびペプチドFyb85;スポット14)は、抗Fyb抗体LM447に結合できることを証明した(図6を参照のこと)。これら2つの合成したペプチドミモトープ配列の解析により、12位で単一のアミノ酸の相違を確認した。しかしながら、これら2つの配列について観測された信号強度は、このアッセイについて使用した陽性コントロールである、ペプチドCPep75(スポット17)を用いて達成されたものより著しく低かった。この結果により、ペプチドミモトープもまた、単純にバイオパニングによってではなく、アミノ酸置換実験によって人工的に生成され得ることが示された。
【0086】
(実施例5)
(SPOTにより決定された合成Rhペプチドに対する抗体の特異的結合)
RhD、RhEおよびRheペプチドミモトープ(表4および5を参照のこと)を、SPOTにより合成して、膜のハイブリダイゼーションを適切な抗体を用いて行った(表1)。図7〜10は、ペプチドミモトープの選択に最初に使用される抗体と特異的に反応するペプチドミモトープの例を示す。
【0087】
図7は、抗RhD抗体の選択されたペプチドミモトープのサブセットと、モノクローナル抗体T10とのハイブリダイゼーション後の結果を示す。40のペプチド(RhD41−RhD80)を合成し、陽性信号を11のスポット(スポット1−3、8、17、27、28、31、37、39および40;ペプチド配列について表を参照のこと)において観察した。
【0088】
さらなる28のRhDペプチドミモトープをSPOTにより合成した。ペプチドミモトープRhD81−105(スポット1−25)を、ポリクローナル抗RhD調製物を用いて最初に選択し、ペプチドRhD68、RhD71およびRhD79(スポット26−28)を、抗RhD抗体T10を用いるバイオパニングによって同定した。ペプチドCPep75(スポット29)およびCPep76(スポット30)を、陰性コントロールとしてアッセイに含んだ。図8により、ポリクローナル抗RhDによって認識された一連の11のペプチド(スポット3、5、6、12、14、16、24、26−28および30;ペプチド配列について表を参照のこと)を確認した。この一連のペプチドは、T10を用いて最初に選択した3つのペプチド(スポット26−28)を含む。この結果により、個々のモノクローナル抗体(例えばT10)を用いて同定されたペプチドは、ポリクローナル抗体が引き起こされる抗原のエピトープを模倣することが強く示唆された。
【0089】
図9は、36のRhEペプチドミモトープと抗RhEモノクローナル抗体E0002とのハイブリダイゼーション後の結果を示す。ペプチドCPep75(スポット37)およびCPep76(スポット38)を、陰性コントロールとしてアッセイに含んだ。抗体の特異的結合を、4つのスポット(スポット18:ペプチドミモトープRhE18;スポット19:RhE19;スポット24:RhE24およびスポット25:RhE25)を用いて達成した。
【0090】
図10は、16のRheペプチドミモトープと抗Rheモノクローナル抗体e0002とのハイブリダイゼーション後の結果を示す。ペプチドCPep75(スポット17)およびCPep76(スポット18)を、陰性コントロールとしてアッセイに含んだ。強い陽性信号を2つのスポット(スポット10および13;ペプチド配列について表を参照のこと)で観察した。さらに3つの弱い、陽性スポットもまた記録した(スポット8、11および16)が、これらの信号は、陰性コントロールとしてアッセイに含んだコントロールペプチドCPep76(スポット18)で達成したものと同じ強さのみであった。
【0091】
全体的に、Rhペプチドミモトープで達成した結果は、FyaおよびFybペプチドならびにFyaおよびFybモノクローナル抗体を用いて得られたものに匹敵した。SPOT解析により、Rhペプチドの認識抗体と特異的に反応するRhペプチドを同定した。
【0092】
(実施例6)
(ミクロスフェアビーズに結合された合成ペプチドミモトープに対する抗体の特異的結合)
ペプチドミモトープが、天然の血液型抗原に対して引き起こされた抗体に特異的に結合できるというさらなる確認を、ポリスチレンLiquiChip Ni−NTAミクロスフェアビーズ(Qiagen)上のペプチドミモトープの固定化後に行った。
【0093】
ペプチドミモトープ(例えばFyb16;RhD12)を、6個のヒスチジンアミノ酸からなるC末端標識で合成した。6×Hisの標識化ペプチドミモトープのストック溶液(4μg/ml)をPBS/0.1%のBSA中で調製した。ペプチドを、以下のようにビーズの表面に付着させたNi−NTA基を用いてビーズ上に固定化した。50μl容量の4μg/mlペプチドストック(Fyb16またはRhD12)を、等量のLiquiChip Ni−NTAビーズ(それぞれ、ビーズ50またはビーズ52)と混合した。4℃で一晩、混合しながらインキュベートした後、ビーズ/ペプチド混合物を900μlのPBS/0.1%BSAで希釈した。ビーズ/ペプチド混合物を2分間ボルテックスし、次いで10μl容量を96ウェル、丸底ELISAプレート(Nunc)のウェルにアリコートした。10μl容量の試験モノクローナル抗体(LM447:抗FybまたはT27:抗RhD)をELISAプレートのウェルに加え、反応容量をPBS/1%BSAで60μlまで埋め合わせた。プレートを暗所において90分間室温でインキュベートし、次いで10μl容量(200ng)のヒツジ抗マウスIgGに結合したフィコエリトリン(LM447:抗Fybモノクローナル抗体を含むウェルに加えた)またはヤギ抗ヒトIgMに結合したフィコエリトリン(T27:抗RhDモノクローナル抗体を含むウェルに加えた)をウェルに加えた。プレートを暗所においてさらに90分間室温でインキュベートした。プレートを簡単にボルテックスし、次いでLuminex100アナライザー(Luminex)にかけた。結合したモノクローナル抗体の確認を、フィコエリトリン蛍光色素信号の検出により測定した。信号強度は、固定化したペプチドミモトープに結合されたモノクローナル抗体の量と一致する。
【0094】
結果を図11および12に記載し、ペプチドミモトープFyb16に対する抗Fybモノクローナル抗体(LM447)の特異的結合およびペプチドミモトープRhD12に対する抗RhDモノクローナル抗体(T27)の特異的結合を示す。
【0095】
(実施例7)
(超常磁性ビーズに結合された合成ペプチドミモトープに対する抗体の特異的結合)
ペプチドミモトープが抗体に特異的に結合する能力を、改変されたゲル凝集アッセイにおいて、超常磁性ポリスチレンビーズ(TALON Dynabeads;Invitrogen)を用いてさらに試験した。
【0096】
50μl容量の磁性ビーズを700μlのTBS(50mMのTris−HCl pH7.5;150mMのNaCl)に加えた。室温で5分間混合後、磁性ビーズをMagnetic Particle Concentrator(Invitrogen)を用いて分離した。上清を捨てて、ビーズを700μlのTBS中で5分間洗浄した。ビーズを、MPCマグネットを用いてバッファーから再び分離し、次いで700μlのTBSに再懸濁した。ペプチドミモトープ(例えばFyb16;RhD12)を、6個のヒスチジンアミノ酸からなるC末端標識を用いて合成した。6×Hisの標識化ペプチドミモトープのストック溶液(100μg/ml)をPBS中で調製した。
【0097】
50μl容量の希釈したTALONビーズを、50μl容量の希釈したHis標識化ペプチドミモトープ(例えばRhD12)および100μlの試験ヒトモノクローナル抗体(例えばT27:抗RhD)と一緒に、NaClゲルカード(ID Microtyping System;Diamed)の反応チャンバに置いた。ゲルカードを、Incubator−ID(DiaMed)において1時間、37℃でインキュベートした。インキュベートの後、カードを、ID Centrifuge24S(DiaMed)において10分間遠心分離した。抗体陽性反応を、ゲルマトリクスの表面上のビーズの層により視覚化した。陰性反応において、凝集していないビーズをゲルマトリクスに通し、ペレットを形成させた。
【0098】
マウスモノクローナル抗体(例えば、LM447:抗Fybモノクローナル抗体)の結合を試験するために、1μl容量のヒツジ抗マウスIgGを、NaClゲルカードの反応チャンバに最初に加え、室温で10分間、ゲルマトリクスで平衡化させ、その後、50μl容量の希釈したTALONビーズ、50μl容量の希釈したHis標識化ペプチドミモトープ(例えばFyb16)および100μlの試験マウスモノクローナル抗体(例えばLM447:抗Fyb)を加えた。ゲルカードを、ID Incubator(DiaMed)において1時間、37℃でインキュベートした。インキュベート後、カードを、ID centrifuge(DiaMed)において10分間遠心分離した。再び、反応を視覚的に計測した。
【0099】
これらの実施例により、合成ペプチドミモトープが、固体支持体に結合した場合でさえ、天然血液型抗原に対して引き起こされる抗体に特異的に結合できることが示される。これらの実施例において、使用した固体支持体はポリスチレンNi−NTAミクロスフェアビーズまたは超常磁性ポリスチレンビーズであるが、合成ペプチドミモトープが、任意の適切な支持体に固定される場合に、天然血液型抗原に対して引き起こされる抗体に特異的に結合できることも推測される。
【0100】
この結果は図13および14に確認され、それにより、ペプチドミモトープRhD12に対する抗RhDモノクローナル抗体(T27)の特異的結合およびペプチドミモトープFyb16に対する抗Fybモノクローナル抗体(LM447)の特異的結合が示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1〜311のうちの少なくとも1つあるいはそれらのペプチド断片、それらの免疫反応性類似体もしくは誘導体、またはそれらの交差反応性配列から選択されるミモトープ。
【請求項2】
試料中の血液型抗原に対する抗体を検出するための方法であって、
a)前記血液型抗原のミモトープと、試験される前記試料とを反応させる工程と、
b)前記試料と前記ミモトープとの間のいずれかの反応を検出する工程と、
を含み、
c)前記試料と前記ミモトープとの間の反応は、前記血液型抗原に対する抗体の存在を示す、方法。
【請求項3】
工程a)の前に前記ミモトープが、固体支持体に固定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記固体支持体は、膜、スライドガラスまたはビーズから選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体は同種抗体である、請求項2〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
同種抗体または自己抗体の産生に関与する血液製剤に対する疾患または反応を診断する方法であって、前記方法は、血液型抗原のミモトープを使用して、前記疾患に関連する抗体を同定することを含む、方法。
【請求項7】
前記疾患は、HTR、新生児溶血性疾患または自己免疫性溶血性貧血である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記診断する方法は、請求項2〜5のいずれかに記載の請求項6または7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記血液型抗原は、Rhesus、Kell、Duffy、Kidd、ABO、MNS、P、Lutheran、Lewis、Diego、Yt、Xg、Scianna、Dombrock、Colton、Landsteiner−Wiener、Chido−Rodgers、Hh、Kx、Gerbich、Cromer、Knops、Indian、Ok、Raph、JMH、I、Globoside、またはGIL抗原ミモトープから選択される、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
試料中の血液型抗原に対する抗体の存在を検出するための装置であって、前記装置は、血液型抗原のミモトープの配列を含む、装置。
【請求項11】
前記ミモトープは、固体支持体に固定される、請求項10に記載の装置。
【請求項1】
配列番号1〜311のうちの少なくとも1つあるいはそれらのペプチド断片、それらの免疫反応性類似体もしくは誘導体、またはそれらの交差反応性配列から選択されるミモトープ。
【請求項2】
試料中の血液型抗原に対する抗体を検出するための方法であって、
a)前記血液型抗原のミモトープと、試験される前記試料とを反応させる工程と、
b)前記試料と前記ミモトープとの間のいずれかの反応を検出する工程と、
を含み、
c)前記試料と前記ミモトープとの間の反応は、前記血液型抗原に対する抗体の存在を示す、方法。
【請求項3】
工程a)の前に前記ミモトープが、固体支持体に固定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記固体支持体は、膜、スライドガラスまたはビーズから選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体は同種抗体である、請求項2〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
同種抗体または自己抗体の産生に関与する血液製剤に対する疾患または反応を診断する方法であって、前記方法は、血液型抗原のミモトープを使用して、前記疾患に関連する抗体を同定することを含む、方法。
【請求項7】
前記疾患は、HTR、新生児溶血性疾患または自己免疫性溶血性貧血である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記診断する方法は、請求項2〜5のいずれかに記載の請求項6または7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記血液型抗原は、Rhesus、Kell、Duffy、Kidd、ABO、MNS、P、Lutheran、Lewis、Diego、Yt、Xg、Scianna、Dombrock、Colton、Landsteiner−Wiener、Chido−Rodgers、Hh、Kx、Gerbich、Cromer、Knops、Indian、Ok、Raph、JMH、I、Globoside、またはGIL抗原ミモトープから選択される、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
試料中の血液型抗原に対する抗体の存在を検出するための装置であって、前記装置は、血液型抗原のミモトープの配列を含む、装置。
【請求項11】
前記ミモトープは、固体支持体に固定される、請求項10に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2010−523963(P2010−523963A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501593(P2010−501593)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際出願番号】PCT/GB2008/001200
【国際公開番号】WO2008/120006
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(509273558)ザ コモン サービシズ エージェンシー フォー ザ スコティッシュ ヘルス サービス (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際出願番号】PCT/GB2008/001200
【国際公開番号】WO2008/120006
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(509273558)ザ コモン サービシズ エージェンシー フォー ザ スコティッシュ ヘルス サービス (1)
【Fターム(参考)】
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