説明

診断・観察装置

【課題】
被検者と検査者の視線を一致させることが可能な状況で診断・観察行為を行うことを可能とし、被検者と検査者との間で、非言語的コミュニケーションとして重要視されている好適な位置関係を保ったまま、診断・観察を行うことができる診断・観察装置を提供する。
【解決手段】
診断・観察装置10は、被検者1に向けて画像を表示するディスプレイ11と、被検者1の顔部に向けて赤外照明を照射するIR照明12と、被検者1の顔部を可視光領域で撮影するビデオカメラ13と、被検者1の顔部を赤外領域で撮影するIRビデオカメラ14と、検査者2に向けて画像を表示するディスプレイ15と、検査者2の顔部を撮影するビデオカメラ16と、被検者1とディスプレイ11との間に設置されるハーフミラー17と、検査者2とディスプレイ15との間に設置されるハーフミラー18とを備え、ディスプレイ11とディスプレイ15はその表示面のなす角が略90°となるように設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査者(医師や精神保健福祉士など)が被検者(患者など)に問診やカウンセリング等を行いながら、被検者の顔部の画像を撮影し、その撮影された画像データをもって、被検者の病状や心理状況などを診断ないし観察するための診断・観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
精神疾患の診察や心理状況の観察では、診断基準の問題や専門家不在の問題などがあり、その診断ないし観察が難しい状況にある。とりわけ、診断基準の問題でいえば、専門家の間でもその基準が確立されているとは言い難く、画一的な観察により的確に診断できることが要請されている。
【0003】
特許文献1では、会話者相互の視線一致を図ることを目的として、表示装置の上部に小型ミラーまたは小型ハーフミラーを取り付け、このミラーに光軸が向いた小型カメラで対話者を撮像する構成の撮像装置が開示されている。この装置構成においては、ミラーで反射された対話者像が、該対話者が見る表示装置の表示画面を避けた位置に配置された小型カメラに撮影される。よって、会話者の視線の仰角は垂直方向における視線一致の許容範囲である10degree以内に抑えられ、会話者相互の視線一致が図られている。
【0004】
また、特許文献2では、同じ目的として、第1対話者のいる第1地点に設置された第1端末装置と、該第1地点から相当距離離れた地点であって第2対話者のいる第2地点に設置された第2端末装置と、該第1端末装置と該第2端末装置の間において、少なくとも該第1対話者及び第2対話者の画像・音声データを有する伝送情報の双方向通信を可能にするための伝送手段を備えた双方向対話型システムが開示されている。このシステムにおいて、少なくとも第1端末装置は、(a)伝送手段を介して受信した、第2対話者の像をモニタ上に表示する表示部であって、人物像の頭頂部近傍であって、撮像部が実際に設置されている位置に対応した人物像の一部分を検出し、検出された人物像の一部分を固定した状態で、人物像全体の拡大あるいは縮小を行うとともに、モニタ上の人物像が表示されている第1の領域以外の第2の領域に、第2の端末装置にも同時に表示される文字および図形の少なくともいずれかを表示し、モニタ上の第1の領域または第2の領域以外の第3の領域に、第2の端末装置には表示されない文字および図形の少なくともいずれかを表示する表示制御部を備える表示部と、(b)表示部のモニタ画面に対し、第1対話者の位置を規定する位置規定手段と、(c)伝送手段を介して第2端末装置に、第1対話者の像の送信を可能にする装置であって、第1対話者を直接撮像する撮像部と、撮像部の撮像方向を直接第1対話者に向けた状態で、第1対話者とモニタとの間の所定位置に撮像部を設定させるための支持機構とを有する撮像装置とを備え、撮像部は、位置規定手段によって特定された第1対話者からモニタまでの距離と、および、第1対話者の視線と第2対話者のモニタ像の視線とが一致したと判断される所定の視差角、とによって定義される所定領域内に設置されている。
【0005】
【特許文献1】特開平4−097663号公報(3ページ、第1図)
【特許文献2】特開平9−327006号公報(明細書段落番号0015、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
精神疾患の診察や心理状況の観察では、被検者にリラックス感を与えるなどといった、臨床上の工夫が求められる。とりわけ、医師や精神保健福祉士などは、会話などによる言語的なコミュニケーションをとることのみならず、その両者の位置関係からくる非言語的コミュニケーションの観点等を考慮したうえで診察ないし観察を行うことが重要とされる。しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載された技術では、それぞれ離れた被検者と検査者との間で視線一致を実現することのみを目的としており、映像面を介した視線一致の状態が継続することで、かえって、被検者にプレッシャーを与えることとなり、所望の観察結果が得られなくなるといった問題がある。そして、そういったプレッシャーにより、診察ないしカウンセリングを受けることに対し、被検者が萎縮してしまうといった問題もある。
さらに、検査者は被検者が診断を受けている間の状況について、カメラに映った映像以外の方法では観察することができず、観察中の被検者の手足の動きや、体全体の動揺などを観察できないといった問題がある。また、こういった装置を用いて画像処理を行うためには、外光等の影響が少ない、鮮明な画像で行うことが望ましい。
【0007】
そこで、本発明では、被検者と検査者の視線を一致させることが可能な状況で、さまざまな診断ないし観察行為を行うことを可能とし、かつ、被検者と検査者との間で、非言語的コミュニケーションとして重要視されている好適な位置関係を保ったまま、診断ないし観察行為を行うことができる診断・観察装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決するため、本発明第1の構成による診断・観察装置は、被検者に向けて画像を表示する第1ディスプレイと、前記被検者の顔部に向けて赤外照明を照射するIR照明と、前記被検者の顔部を可視光領域で撮影する第1ビデオカメラと、前記被検者の顔部を赤外領域で撮影するIRビデオカメラと、検査者に向けて画像を表示する第2ディスプレイと、前記検査者の顔部を撮影する第2ビデオカメラと、前記被検者と前記第1ディスプレイとの間で、前記第1ディスプレイの表示面と前記第1ビデオカメラの撮影面および前記IRビデオカメラの撮影面が略対向するように設置される第1ハーフミラーと、前記検査者と前記第2ディスプレイとの間で、前記第2ディスプレイの表示面と前記第2ビデオカメラの撮影面が略対向するように設置される第2ハーフミラーと、を備え、前記第1ディスプレイと前記第2ディスプレイは、その両者の表示面のなす角が略90degreeとなるように設置されることを特徴としている。
【0009】
また、本発明第2の構成による診断・観察装置は、第1の発明の構成に加え、前記第1ディスプレイ、IR照明、第1ビデオカメラ、IRビデオカメラ、第2ディスプレイ、第2ビデオカメラ、第1ハーフミラー、ならびに、第2ハーフミラーは、筐体の中に一体的に構成されていることを特徴としている。
【0010】
また、本発明第3の構成による診断・診察装置は、第2の発明の構成に加え、前記第1ディスプレイ、第1ビデオカメラ、IRビデオカメラ、ならびに、第1ハーフミラーを一体として、一定の範囲で回転自在とする第1角度調整機構、または、前記第2ディスプレイ、第2ビデオカメラ、ならびに、第2ハーフミラーを一体として、一定の範囲で回転自在とする第2角度調整機構、のいずれかを、前記筐体のなかにさらに備えることを特徴としている。
【0011】
また、本発明第4の構成による診断・診察装置は、第3の発明の構成に加え、前記第1角度調整機構または前記第2角度調整機構は、所定の角度で静止させることのできる固定機構をさらに備えることを特徴としている。
【0012】
また、本発明第5の構成による診断・観察装置は、第1ないし第4の発明の構成に加え、前記検査者が、前記第1ビデオカメラ、前記IRビデオカメラあるいは前記第2ビデオカメラについて、パン・チルト・ズーム・フォーカス・アイリスなどといったカメラ制御をおこなうためのカメラ制御部をさらに備えたことを特徴としている。
【0013】
また、本発明第6の構成による診断・観察装置は、第1ないし第5の発明の構成に加え、前記IR照明は、特定領域の波長の赤外光のみを通過させる第1IRフィルタを備え、前記IRビデオカメラは、前記特定領域の波長の赤外光のみを通過させる第2IRフィルタを備えたことを特徴としている。
【0014】
また、本発明第7の構成による診断・観察装置は、第1ないし第6の発明の構成に加え、前記IR照明と前記被検者との間の距離を測定する距離測定部と、前記測定された距離が閾値以下となったときに前記IR照明を消灯ないし減光制御するIR照明制御部を備えたことを特徴としている。
【0015】
また、本発明第8の構成による診断・観察装置は、第1ないし第7の発明の構成に加え、さらに、前記検査者に向けて画像を表示する第3ディスプレイを備え、前記第2ディスプレイは前記第1ビデオカメラまたは前記IRビデオカメラで撮影された画像を表示するとともに、前記第3ディスプレイは、前記第1ディスプレイで表示した画像と同じ画像、前記検査者が作成・編集した診察結果、もしくは、前記被検者を撮影したビデオ映像などを別途表示することを特徴としている。
【0016】
また、本発明第9の構成による診断・観察装置は、第1ないし第8の発明の構成に加え、さらに、前記第1ビデオカメラまたは前記IRビデオカメラで撮影された画像を画像データとして保存する記憶装置を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明第1の構成による診断・観察装置によれば、被検者に第1ハーフミラーを通過または反射する第1ディスプレイの映像を表示させ、被検者の顔部の像が第1ハーフミラーを反射または通過して第1ビデオカメラおよびIRビデオカメラで撮影されるため、被検者が第1ディスプレイを注視しているときの顔部画像を第1ビデオカメラおよびIRビデオカメラにより撮影することができ、同様に検査者が第2ディスプレイを注視している時の顔部画像を第2ビデオカメラにより撮影することができることから、両者の視線を一致させることが可能な状況で、さまざまな診断ないし観察行為を行うことが可能となる。
また、第1ディスプレイと第2ディスプレイが略90degreeの角度をなすように設置されているため、被検者が診断を受けている間の状況を検査者が直接目視することが可能となるほか、被検者と検査者の位置関係もおのずと、略90degreeの角度が形成されることから、非言語的コミュニケーションとして重要視されている患者と医師との間の位置関係が良好に保たれる。
さらに、赤外照明を被検者に向けて照射し、その反射光をIRビデオカメラにて撮影させるため、被検者の瞳に映るプルキンエ像を取得することが可能となる。
【0018】
また、本発明第2の構成による診断・観察装置によれば、ディスプレイ、照明、カメラ、ハーフミラーを筐体の中で一体的に構成させることで、装置を簡単に設置することができる。
【0019】
また、本発明第3の構成による診断・診察装置によれば、被検者側のディスプレイ、カメラ、ハーフミラー等を一体として回転自在とする第1角度調整機構により、被検者側のディスプレイ等の向きを変えることができ、また、検査者側のディスプレイ、カメラ、ハーフミラー等を一体として回転自在とする第2角度調整機構により、検査者側のディスプレイ等の向きを変えることができるため、必要に応じて、検査者側に表示されるディスプレイを被検者側に見せないように、あるいは、見せられるようにすることができるほか、被検者と検査者の位置関係を微細に調整することができる。
【0020】
また、本発明第4の構成による診断・診察装置によれば、第1角度調整機構や第2角度調整機構に、所定の角度で静止させることのできる固定機構を備えたことにより、角度調整された状態を維持することができる。
【0021】
また、本発明第5の構成による診断・観察装置によれば、検査者が第1ビデオカメラ、IRビデオカメラあるいは第2ビデオカメラのパン・チルト・ズーム・フォーカス・アイリスなどといったカメラ制御をおこなうことができるため、前述した効果に加えて、検査者が取得したいと思う被検者の顔部の画像を拡大・縮小等させることが容易となる。
【0022】
また、本発明第6の構成による診断・観察装置によれば、IRビデオカメラが、特定領域の波長の赤外光で照射された被検者の顔部の画像を撮影することができるため、前述した効果に加えて、外光(白熱電灯、自然光等のほか、第1ハーフミラーで反射した第1ディスプレイの光)の影響や、設置環境の影響を受けない赤外反射により画像処理を行うことができる。
【0023】
また、本発明第7の構成による診断・観察装置によれば、IR照明と被検者との距離が一定の閾値以下となったときに、IR照明を消灯ないし減光制御することができるため、前述した効果に加えて、赤外線照射による被検者への悪影響を低減させることができる。
【0024】
また、本発明第8の構成による診断・観察装置によれば、第2ディスプレイが第1ビデオカメラまたはIRビデオカメラで撮影された画像を表示するとともに、第3ディスプレイが第1ディスプレイで表示した画像と同じ画像、検査者が作成・編集した診察結果、もしくは、被検者を撮影したビデオ映像などを別途表示することができるため、前述した効果に加えて、被検者の撮影状況と診察結果を同時に観察することができる。
【0025】
また、本発明第9の構成による診断・観察装置によれば、記憶装置に、第1ビデオカメラまたはIRビデオカメラで撮影された画像が画像データとして保存されるため、前述した効果に加えて、被検者の撮影を終えた後での検証を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の実施形態を実施例1および実施例2にて説明する。
【実施例1】
【0027】
本発明の実施例1を図1〜図3に基づいて説明する。
図1は、本発明にかかる診断・観察装置の外観を示す説明図である。
図1において、診断・観察装置10は、被検者1に向けて画像を表示する第1ディスプレイ11と、被検者1の顔部に向けて赤外照明を照射するIR照明12と、被検者1の顔部を可視光領域で撮影する第1ビデオカメラ13と、被検者1の顔部を赤外領域で撮影するIRビデオカメラ13と、検査者2に向けて画像を表示する第2ディスプレイ15と、検査者2の顔部を撮影する第2ビデオカメラ16と、被検者1と第1ディスプレイ11との間で、第1ディスプレイ11の表示面と第1ビデオカメラ13の撮影面およびIRビデオカメラ14の撮影面が略対向するように設置される第1ハーフミラー17と、検査者2と第2ディスプレイ15との間で、第2ディスプレイ15の表示面と第2ビデオカメラ16の撮影面が略対向するように設置される第2ハーフミラー18と、を備え、第1ディスプレイ11と第2ディスプレイ15は、その両者の表示面のなす角が略90degreeとなるように設置される。
【0028】
図1のように、第1ディスプレイ11の表示面と、第1ビデオカメラ13およびIRビデオカメラ14の撮影面が略垂直にある場合には、第1ハーフミラー17が水平面と略45degreeの角度なすように設置すると、被検者1は第1ハーフミラー17を透過して第1ディスプレイ11の表示面を視認できるとともに、第1ビデオカメラ13およびIRビデオカメラ14は、第1ハーフミラー17で反射した被検者1の像を取得できる。同様に、第2ディスプレイ15の表示面と、第2ビデオカメラ16の撮影面が略垂直にある場合には、第2ハーフミラー18が水平面と保護45degreeの角度をなすように設置すると、検査者2は第2ハーフミラー18を透過して第2ディスプレイ15の表示面を視認できると共に、第2ビデオカメラ16は、第2ハーフミラー18で反射した検査者2の像を取得できる。なお、ハーフミラー、カメラ、ディスプレイの位置関係は図1のような構成に拘束されることはなく、ディスプレイを水平に設置して映像を反転表示させ、ハーフミラーでその映像を反射させるようにするとともに、カメラはハーフミラーを透過して画像取得するように構成させてもよい。また、第1ビデオカメラ13とIRビデオカメラ14は、図1に示すように第1ディスプレイ11の表示面と垂直にさせる必要はなく、多少、傾いて設置されていても支障ない。
【0029】
このように、被検者に第1ハーフミラーを通過または反射する第1ディスプレイの映像を表示させ、被検者の顔部の像が第1ハーフミラーを反射または通過して第1ビデオカメラおよびIRビデオカメラで撮影されるため、被検者が第1ディスプレイを注視しているときの顔部画像を第1ビデオカメラおよびIRビデオカメラにより撮影することができ、同様に検査者が第2ディスプレイを注視している時の顔部画像を第2ビデオカメラにより撮影することができることから、両者の視線を一致させることが可能な状況で、さまざまな診断ないし観察行為を行うことが可能となる。
また、第1ディスプレイと第2ディスプレイが略90degreeの角度をなすように設置されているため、被検者が診断を受けている間の状況を検査者が直接目視することが可能となるほか、被検者と検査者の位置関係もおのずと、略90degreeの角度が形成されることから、非言語的コミュニケーションとして重要視されている患者と医師との間の位置関係が良好に保たれる。
さらに、赤外照明を被検者に向けて照射し、その反射光をIRビデオカメラにて撮影させるため、被検者の瞳に映るプルキンエ像を取得することが可能となる。
【0030】
なお、診断・観察装置10は、図1に示すように、第1ディスプレイ11、IR照明12、第1ビデオカメラ13、IRビデオカメラ14、第2ディスプレイ15、第2ビデオカメラ16、第1ハーフミラー13、ならびに、第2ハーフミラー18を一体として筺体内に収める構成とすることが好ましい。このように、ディスプレイ、照明、カメラ、ハーフミラーを筐体の中で一体的に構成させることで、装置を簡単に設置することができる。
【0031】
図2は、診断・観察装置10のシステム構成を示す説明図である。
図2において、診断・観察装置10は、図1で説明した構成のほか、各カメラで撮影された画像を取得・編集するための検査者用計算機21a、結果保存用計算機22aを備え、それぞれ、第1ビデオカメラ13およびIRビデオカメラ14で撮影された画像を、キャプチャ-ボード21b、22bを介して取得する。検査者用計算機21aは、検査者2が被検者1を診断・観察する際に使用するものであり、診断・観察装置10の外部装置として、第3ディスプレイ21cと、キーボード21d、マウス21eなどといった入出力装置を備え、診断・観察装置10を操作する。具体的には、IR照明12の照明電源23bを制御し、IRビデオカメラ14の電動レンズ23cでパン・チルド・ズーム・アイリスなどといったカメラ制御をおこなうインタフェース回路23aを設置し、キャプチャ-ボード21bを介して電動レンズ23cをコントロールするようにしている。このほか、図示による説明は省略するが、インタフェース回路23aが、第1ビデオカメラ13や第2ビデオカメラ16について、パン・チルト・ズーム・フォーカス・アイリスなどといったカメラ制御をおこなうようにしてもさしつかえない。
第3ディスプレイ21cは、検査者2に向けて画像を表示するものであり、第2ディスプレイ15は、第1ビデオカメラ13で撮影された画像(図示による説明は省略するがIRビデオカメラ14で撮影された画像でもよい)を表示するとともに、第3ディスプレイ21cは、第1ディスプレイ11で表示した画像と同じ画像、検査者2が作成・編集した診察結果、もしくは、被検者1を撮影したビデオ映像などを別途表示するようにしておくとよい。
結果保存用計算機22aは、被検者1を撮影した画像データ(すなわち、第1ビデオカメラ13やIRビデオカメラ14で撮影された画像)、マイク22cを介して取得した音声データ、LANを介して検査者用計算機21aから取得した検査者2からの情報等を収集する。図示による説明は省略するが、結果保存用計算機22aには、ハードディスクなどの記憶装置を備えており、これらの収集された診断・観察の結果が記録されるようになっている。
【0032】
なお、第1ディスプレイ11は、第2ビデオカメラ16の映像または結果保存用計算機22aで取得した第1ビデオカメラ11またはIRビデオカメラ14の画像を切り替え表示できるように、切替器25と接続されており、カメラの映像はUSC(アップスキャンコンバータ)24a、24bによって、VGA信号とNTSC信号の相互変換がおこなわれている。また、結果保存用計算機22aは、検査者2の操作に応じて診断・観察のために用いる画像(コンテンツ)を、第1ディスプレイ11に表示させるような機能を備える。
【0033】
このように、検査者が第1ビデオカメラ、IRビデオカメラあるいは第2ビデオカメラのパン・チルト・ズーム・フォーカス・アイリスなどといったカメラ制御をおこなうことができるため、前述した効果に加えて、検査者が取得したいと思う被検者の顔部の画像を拡大・縮小等させることが容易となる。
また、第2ディスプレイが第1ビデオカメラまたはIRビデオカメラで撮影された画像を表示するとともに、第3ディスプレイが第1ディスプレイで表示した画像と同じ画像、検査者が作成・編集した診察結果、被検者を撮影したビデオ映像などを別途表示することができるため、前述した効果に加えて、被検者の撮影状況と診察結果を同時に観察することができる。
また、記憶装置に、第1ビデオカメラまたはIRビデオカメラで撮影された画像が画像データとして保存されるため、前述した効果に加えて、被検者の撮影を終えた後での検証を行うことができる。
【0034】
なお、IR照明12には、特定領域の波長の赤外光のみを通過させる第1IRフィルタ26aを備え、IRビデオカメラ14は、特定領域の波長の赤外光のみを通過させる第2IRフィルタ26bを備える。すなわち、IR照明12から出力される赤外光を第1IRフィルタ26aでフィルタリングし、第2IRフィルタ26bでフィルタリングした赤外光のみをIRビデオカメラ14で撮影することが好ましい。
具体的には、本実施例では、IR照明12が出力した赤外光を、760nm以下の波長の光をカットする第1IRフィルタ26aでフィルタリングする。そして、第2IRフィルタ26bで、850nm以上の波長の赤外光のみを透過させるようして、IRビデオカメラ14による撮影を行うようにしており、可視光線等といった外光の影響を受けることなしに被検者1を撮影することができる。
このように、IRビデオカメラが、特定領域の波長の赤外光で照射された被検者の顔部の画像を撮影することができるため、前述した効果に加えて、外光(白熱電灯、自然光等のほか、第1ハーフミラーで反射した第1ディスプレイの光)の影響や、設置環境の影響を受けない赤外反射により画像処理を行うことができる。
【0035】
この診断・観察装置10は、たとえば被検者1の眼球震盪を検出するために用いる。検査者2はキーボード21dやマウス21eといった入力装置により検査者用計算機21aを操作して、検査者1の顔画像を第1ビデオカメラ13やIRビデオカメラ14で撮影する。
検査者1を撮影するIRビデオカメラ14では、はじめに、図3(a)に示すように、被検者1の両眼の位置を校正用枠31に合わせるため、検査者2は、電動レンズ23cを制御しながら、IRビデオカメラ14のパン・チルト・ズーム・フォーカス・アイリスなどいった操作をおこなう。図3(b)に示すように、被検者1の両目の位置が校正用枠31にほぼ収まった後は、その後取り込まれるIRビデオカメラ14の映像を画像処理しながら被検者の両目の位置を推定して、その位置に応じて電動レンズ23cを自動的に制御して、自動追従させるようにしておくとよい。この自動追従では、眼の特徴部分を抽出する形で眼の位置を追従させるといった方法などが考えられる。つまり、被検者1の両眼についてそれぞれ瞳の中心位置を検出し、その中心位置が校正用枠31に合うように、IRビデオカメラ14をパン・チルト・ズーム制御するとよい。
【0036】
こういった被検者1に対する自動追従の機能等を用いると、被検者1とIR照明12との間の距離を推定することが可能である。強力な赤外線の照射は、被検者1の眼の水晶体やその周辺などに影響し、白内障や視力低下のおそれがあり、あるいは、被検者の気分が悪くなるといった影響が認められるが、この距離推定機能を用いることで、赤外線の照射による被検者1への悪影響を軽減させることが可能である。すなわち、検査者用計算機21aには、IR照明12と被検者1との間の距離を推定する距離測定部と、測定された距離が閾値以下となったときにIR照明12を消灯ないし減光制御させるIR照明制御部を備えるようにすると好ましい。具体的には、IRビデオカメラ14のズーム量によって、IR照明12と被検者1との間の距離を推定し、その推定された距離に応じて、IR照明12を消灯ないし減光制御するために、インタフェース回路23aがIR照明電源23bに照明制御信号を出力させる方法などが考えられる。
このように、IR照明と被検者との距離が一定の閾値以下となったときに、IR照明を消灯ないし減光制御することができるため、前述した効果に加えて、赤外線照射による被検者への悪影響を低減させることができる。
【実施例2】
【0037】
本発明の実施例2を図4〜図5に基づいて説明する。
実施例2において、診断・検査装置10は、被検者側にある第1ディスプレイ11、第1ビデオカメラ13、IRビデオカメラ14、ならびに、第1ハーフミラー17が、これらを一体として、一定の範囲で回転自在とする第1角度調整機構41を備えるとともに、検査者側にある第2ディスプレイ15、第2ビデオカメラ16、ならびに、第2ハーフミラー18が、これらを一体として、一定の範囲で回転自在とする第2角度調整機構を備え、第1角度調整機構と、第2角度調整機構が、筐体のなかに設置されるように構成される。
【0038】
図4は被検者側に備えられた第1角度調整機構の構成を示す説明図、図5は診断・観察装置における第1角度調整機構と第2角度調整機構の回転範囲を示す説明図である。
図4において、第1ディスプレイ11、第1ビデオカメラ13、IRビデオカメラ14、ならびに、第1ハーフミラー17は、これらを一体として、一定の範囲で回転自在とする第1角度調整機構41を備え、第1角度調整機構41は、回転軸42を軸として回転自在に支持された角度調整リング43を備えており、診断・検査装置10の筺体に、角度調整リング43を介して設置される。図示による説明を省略するが、第2角度調整機構は、第1角度調整機構41と同様な構成であって、診断・検査装置10の筺体に、角度調整リングを介して設置される。また、図5に示すように、第1角度調整機構41および第2角度調整機構51の回転範囲は±20degree程度であって、ディスプレイを含めた被検者側の機構や、検査者側の機構を一体として回転させることができる。
【0039】
このように、被検者側のディスプレイ、カメラ、ハーフミラー等を一体として回転自在とする第1角度調整機構により、被検者側のディスプレイ等の向きを変えることができ、また、検査者側のディスプレイ、カメラ、ハーフミラー等を一体として回転自在とする第2角度調整機構により、検査者側のディスプレイ等の向きを変えることができるため、必要に応じて、検査者側に表示されるディスプレイを被検者側に見せないように、あるいは、見せられるようにすることができるほか、被検者と検査者の位置関係を微細に調整することができる。
【0040】
なお、第1角度調整機構41または第2角度調整機構51には、さらに、所定の角度で静止させることのできる固定機構を備えるようにしておくと、より好ましい。
具体的には、診断・観察装置10の筐体側に、回転軸42を中心とする回転範囲に対応した段付き溝を形成させるとともに、第1角度調整機構41には、その段付き溝に噛み合う弾性係止ばねを設け、弾性係止ばねのばね力で、第1角度調整機構41を回転不能に支持するようにするとよい。すなわち、ディスプレイ等の向きを変えたい場合には、弾性係止ばねを変形させるだけの力を加えながら、回転軸42を中心に、第1角度調整機構41を回転させればよいこととなる。
このように、第1角度調整機構や第2角度調整機構に、所定の角度で静止させることのできる固定機構を備えたことにより、角度調整された状態を維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、検査者(医師や精神保健福祉士など)が被検者(患者など)に問診やカウンセリング等を行いながら、被検者の顔部の画像を撮影し、その撮影された画像データをもって、被検者の病状や心理状況などを診断ないし観察するための診断・観察装置であって、被検者の眼球震盪や、被検者の表情の変化などを観察するために用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明にかかる診断・観察装置の外観を示す説明図
【図2】診断・観察装置のシステム構成を示す説明図
【図3】被検者の両眼の位置を校正する方法を示す説明図
【図4】被検者側に備えられた第1角度調整機構の構成を示す説明図
【図5】診断・観察装置における第1角度調整機構と第2角度調整機構の回転範囲を示す説明図
【符号の説明】
【0043】
1 被検者
2 検査者
10 診断・観察装置
11 第1ディスプレイ
12 IR照明
13 第1ビデオカメラ
14 IRビデオカメラ
15 第2ディスプレイ
16 第2ビデオカメラ
17 第1ハーフミラー
18 第2ハーフミラー
21a 検査者用計算機
21b キャプチャ−ボード
21c 第3ディスプレイ
21d キーボード
21e マウス
22a 結果保存用計算機
22b キャプチャ−ボード
22c マイク
23a インタフェース回路
23b IR照明電源
23c 電動レンズ
24a、24b USC
25 切替器
26a 第1IRフィルタ
26b 第2IRフィルタ
31 校正用枠
41 第1角度調整機構
42 回転軸
43 角度調整リング
51 第2角度調整機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者に向けて画像を表示する第1ディスプレイと、
前記被検者の顔部に向けて赤外照明を照射するIR照明と、
前記被検者の顔部を可視光領域で撮影する第1ビデオカメラと、
前記被検者の顔部を赤外領域で撮影するIRビデオカメラと、
検査者に向けて画像を表示する第2ディスプレイと、
前記検査者の顔部を撮影する第2ビデオカメラと、
前記被検者と前記第1ディスプレイとの間で、前記第1ディスプレイの表示面と前記第1ビデオカメラの撮影面および前記IRビデオカメラの撮影面が略対向するように設置される第1ハーフミラーと、
前記検査者と前記第2ディスプレイとの間で、前記第2ディスプレイの表示面と前記第2ビデオカメラの撮影面が略対向するように設置される第2ハーフミラーと、
を備え、前記第1ディスプレイと前記第2ディスプレイは、その両者の表示面のなす角が略90degreeとなるように設置されることを特徴とする診断・観察装置。
【請求項2】
前記第1ディスプレイ、IR照明、第1ビデオカメラ、IRビデオカメラ、第2ディスプレイ、第2ビデオカメラ、第1ハーフミラー、ならびに、第2ハーフミラーは、筐体の中に一体的に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の診断・観察装置。
【請求項3】
前記第1ディスプレイ、第1ビデオカメラ、IRビデオカメラ、ならびに、第1ハーフミラーを一体として、一定の範囲で回転自在とする第1角度調整機構、
または、
前記第2ディスプレイ、第2ビデオカメラ、ならびに、第2ハーフミラーを一体として、一定の範囲で回転自在とする第2角度調整機構、
のいずれかを、前記筐体のなかにさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の診断・観察装置。
【請求項4】
前記第1角度調整機構または前記第2角度調整機構は、所定の角度で静止させることのできる固定機構をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の診断・診察装置。
【請求項5】
前記検査者が、前記第1ビデオカメラ、前記IRビデオカメラあるいは前記第2ビデオカメラについて、パン・チルト・ズーム・フォーカス・アイリスなどといったカメラ制御をおこなうためのカメラ制御部をさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の診断・観察装置。
【請求項6】
前記IR照明は、特定領域の波長の赤外光のみを通過させる第1IRフィルタを備え、前記IRビデオカメラは、前記特定領域の波長の赤外光のみを通過させる第2IRフィルタを備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の診断・観察装置。
【請求項7】
前記IR照明と前記被検者との間の距離を測定する距離測定部と、前記測定された距離が閾値以下となったときに前記IR照明を消灯ないし減光制御するIR照明制御部を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の診断・観察装置。
【請求項8】
さらに、前記検査者に向けて画像を表示する第3ディスプレイを備え、前記第2ディスプレイは前記第1ビデオカメラまたは前記IRビデオカメラで撮影された画像を表示するとともに、前記第3ディスプレイは、前記第1ディスプレイで表示した画像と同じ画像、前記検査者が作成・編集した診察結果、もしくは、前記被検者を撮影したビデオ映像などを別途表示することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の診断装置。
【請求項9】
さらに、前記第1ビデオカメラまたは前記IRビデオカメラで撮影された画像を画像データとして保存する記憶装置を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の診断・観察装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−254498(P2009−254498A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−105550(P2008−105550)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(399076312)安川情報システム株式会社 (77)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】