説明

診断用RNAの直接検出方法

【課題】 RNA単離または精製の追加的ステップなしで、診断用RNA種に基づいた迅速な細菌同定プロセスの提供。
【解決手段】 RNA単離またはサンプルの精製を必要としないRNA検出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断用微生物学の分野に関する。より具体的には、RNA精製または単離の必要性なしに、サンプルからの診断用標的RNAの迅速で感度の良い検出を可能にする方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
様々な臨床、食品、環境、またはその他の実験的サンプル中の細菌の存在をアッセイして、汚染物または病原体を同定することが望ましいことが多い。典型的にリボソームRNA(rRNA)または場合によってはメッセンジャーRNA(mRNA)である細菌RNAをアッセイして、細菌種の存在または不在を評価してもよい。いくつかの重要な細菌種では、細菌種に属する特定のRNA分子を検出できることにより、その他の細菌種の存在下でさえその検出を可能にする特異的プローブが開発されている。プローブをRT−PCRアッセイ法においてプライマーとして使用して、そのDNAへの逆転写と、それに続くポリメラーゼ連鎖反応を使用したそのコピーDNA増幅を通じて、特異的RNA分子を検出してもよい。細菌検出プロセス全体は、概して細菌の生育および細菌RNAの抽出と、それに続くRT−PCR反応および生成物検出を伴う。細菌の生育およびRNA調製ステップには時間がかかる。全体的な細菌検出プロセスを短縮して簡素化する試みがなされている。
【0003】
細菌検出プロセスは、(非特許文献1)によって、多数の非標的細菌の存在下で標的細菌種の検出を可能にする高度に特異的なプローブの使用を通じて改善された。RT−PCRアッセイにおいて、各菌種からの異なるmRNAに特異的なプローブを使用して、有機廃棄物サンプル中にサルモネラ(Salmonella)種、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)が検出された。検出は抽出RNA種の存在について高度に感度が良く、信頼できると述べられた。この報告では、細菌検出の改善は、RT−PCRアッセイの高感度および特異性のために、細胞播種と単離コロニーのさらなる識別が必要ないことである。しかしRNA調製プロセスの単純化はなされていない。リゾチーム処理、キット提供緩衝液中でのボルテックス、遠心分離、上清のカラムへの適用、および溶出をはじめとする複数ステップを伴うキアジェン(Qiagen)からのRNイージーミニキット(RNeasy−Mini kit)を使用して、細菌RNAが抽出された。
【0004】
(非特許文献2)でも高感度のRT−PCRアッセイが使用されて、細菌性魚類病原体が検出された。この報告において細菌検出になされた改善は、単一チューブRT−PCR−酵素ハイブリダイゼーション・アッセイを伴う高速大量処理システムの開発であった。RNA調製プロセスの単純化はなされていない。この報告でアッセイされた細菌RNAは、アンビオン(Ambion)からのRNAqueousTM−PCR抽出キット、またはこれもガラス繊維フィルターへの結合を伴う別の手順を使用して抽出され精製された。
【0005】
RT−PCRを使用して、環境サンプルから直接溶解によって回収されたrRNAおよびmRNAを増幅する方法が、(非特許文献3)で使用された。この報告では「直接溶解」とは、RNA精製に先だって環境サンプルから細菌を単離し生育させるのとは対照的に、環境サンプルからのRNAの直接精製を指す。ここでも溶解、フェノール/クロロホルム−イソアミルアルコール抽出、遠心分離、クロロホルム抽出、沈殿、乾燥、および再懸濁ステップを伴うRNA調製方法の単純化はなされなかった。
【0006】
上述の方法はRNA種の検出のために有用であるが、なおも分析に先だってRNA種を精製し単離するための多段階プロセスの必要性に悩まされる。このようなプロセスは、分析に経費と時間を上乗せする。RNA単離または精製の追加的ステップなしで、診断用RNA種に基づいた迅速な細菌同定プロセスに対する必要性がなおも残る。出願人らは、RNA単離またはサンプルの精製を必要としないRNA検出方法を提供することで、既述の問題を解決した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ブルチャー(Burtscher)およびヴェルツ(Wuertz)、Applied and Environmental Microbiology 2003年、69:4618〜4627頁
【非特許文献2】ウィルソン(Wilson)およびカールソン(Carson)、Diseases of Aquatic Organisms、2003年、54:127〜134頁
【非特許文献3】S.セレンスカ−ポーベル(Selenska−Pobell)「分子微生物生態学マニュアル(Molecular Microbial Ecology Manual)」、1995年、2.7.5/1〜2.7.5/14、アカーマンズ,アントン(Akkermans,Antoon)D.L.、ヴァン・エリアス,ヤン・ディルク(Van Elsas,Jan Dirk)、デ・ブリュイン,フランス(De Bruijn,Frans)J.編、出版社Kluwer,Dordrecht,Neth.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、細菌細胞サンプルから診断用標的RNAを直接検出する方法を提供する。細菌細胞サンプルとRT−PCR反応組成物とを直接接触させ、次にそれを増幅された診断用標的DNA生成物の生成および検出のために、サーモサイクリングに曝す。別の態様では、細菌細胞サンプルとRT反応組成物とを直接接触させ、インキュベートしてcDNA生成物を生成し、次にPCR組成物との接触が続き、次にそれを増幅された診断用標的DNA生成物の生成および検出のために、サーモサイクリングに曝す。異なる態様では、RT−PCRまたはRT組成物との接触に先だって、細菌細胞サンプルを溶菌剤で処理する。さらに異なる態様では、PCR増幅とのカップリングなしに、RT反応生成物それ自体を検出する。別の態様では、RT−PCRまたはRT組成物との接触に先だって、少なくとも1つのRNアーゼ阻害物質を細菌細胞サンプルに添加する。全ての態様において、本発明はいかなるRNA精製ステップもなしに実施される。
【0009】
場合により、細菌細胞を含有するサンプルを熱、酵素、溶菌性緩衝液および/または物理的剪断などの作用因子で前処理して、RNAの利用可能性を増強する。さらに別の態様では、作用因子がウィルス性エンドリシンであってもよい。本方法を食品加工状況において使用して、食品加工で使用される、または食品がそれと接触する表面の細菌を検出してもよい。
【0010】
本方法について述べる説明書と、診断用標的RNAからのcDNA生成物が直接検出されるか、または増幅されるかどうかによって、RTまたはRT−PCR組成物のいずれかとを含む、細菌から診断用標的RNAを直接検出するためのキットもまた提供される。RT−PCRまたはRT組成物は、次の要素のいずれかを含んでもよい。診断用標的RNAと相補的な少なくとも1つのプライマー、熱活性化された熱安定性ポリメラーゼ、逆転写酵素、dNTP、適切な緩衝液、RNアーゼ阻害物質。
【0011】
配列説明
本願明細書の一部を形成する以下の詳細な説明および付随する配列説明から、本発明をより完全に理解できるであろう。
【0012】
以下の配列は、37C.F.R.1.821〜1.825(「ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列開示を含む特許出願の要件−配列規則」)を満たし、世界知的所有権機関(WIPO)標準ST.25(1998)およびEPOおよびPCTの配列表要件(規則5.2および49.5(aの2)、および実施細則第208号および附属書C)に一致する。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列データのために使用される記号および型式は、37C.F.R.§1.822で述べられる規則に従う。
配列番号:1は、Lis−Fプライマーの配列である。
配列番号:2は、Lis−Rプライマーの配列である。
配列番号:3は、16S−373Fプライマーの配列である。
配列番号:4は、16S−436−Rプライマーの配列である。
配列番号:5は、16S−394Tタグの配列である。
配列番号:6は、16S−2455Fプライマーの配列である。
配列番号:7は、16S−2523Rプライマーの配列である。
配列番号:8は、16S−2479Tプライマーの配列である。
配列番号:9は、16S−1108Fプライマーの配列である。
配列番号:10は、16S−1169Rプライマーの配列である。
配列番号:11は、16S−1125Tプライマーの配列である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】細菌細胞サンプルからのRT−PCRおよびPCR生成物のゲル電気泳動法分析を示す。
【図1B】細菌細胞サンプルからのRT−PCRおよびPCR生成物のゲル電気泳動法分析を示す。
【図2】細菌細胞サンプルを使用した、3つの異なるRT−PCR反応セットのCT値の比較を示す。
【図3】細菌細胞サンプルを使用した、3つの異なるPCR反応セットのCT値の比較を示す。
【図4】細菌細胞サンプルを使用した、3つの異なるRT−PCR反応セットの導関数ピーク値の比較を示す。
【図5】細菌細胞サンプルを使用した、3つの異なるPCR反応セットの導関数ピーク値の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、RNA精製プロセスを省略して、細菌サンプル中の診断用標的RNAを直接検出することで、サンプル中に存在する細菌タイプを同定してもよい方法について述べる。方法は、細胞の混合群を含有するサンプルからの診断用RNA種の迅速な検出が必要な多様な用途において有用である。このような技術の特定の商業用途としては、医学および獣医学診断用分野ならびに食品媒介細菌病原体検出の分野が挙げられる。
【0015】
特許請求の範囲および明細書の解釈のために、次の略語および定義を使用する。
【0016】
【表1】

【0017】
定義
ここでの用法では、「細菌細胞」という用語は、分析または検出に適したRNAを有するあらゆる原核生物細胞を意味する。本発明の細菌細胞は、生きていても、死んでいても、または破損していても、すなわち細胞壁または細胞膜に中断があってもよい。細菌は、そのあらゆる生活環形態、例えば栄養、静止、または胞子形態にあることができる。
【0018】
ここでの用法では、「コロニー形成単位」または「cfu」という用語は、寒天プレート上にコロニーを生じるサンプル中の細胞数を指す。cfuはまた、同様のアッセイ・サンプルとの比較で、サンプル中に期待されるコロニーを生じる細胞数を指してもよい。これは単にcfuまたは細胞と称されるcfu相当数である。同様に細胞またはcfuは、処理または溶解に先だってサンプル中に存在するcfu相当数も指す。
【0019】
ここでの用法では「RNA」という用語は、DNA中に見られるデオキシリボース糖とは対照的にリボース糖を含んでなる核酸分子を指す。ここでの用法ではRNAとは、メッセンジャーRNA(mRNA)、リボソームRNA(rRNA)、転移RNA(tRNA)ならびに調節機能を有する小型RNA種をはじめとする、全種のRNA指す。「小型RNA種」は特定の意味を有し、細菌においてハウスキーピングまたは調節役割がある非翻訳RNAを指す。「小型RNA種」はrRNAでもtRNAでもない。
【0020】
ここでの用法では、「RNアーゼ阻害物質」という用語は、ほとんどの細菌細胞によって生成される内在性RNアーゼなどのRNアーゼの作用を妨げる能力を有する化学物質またはその他の作用因子を指す。RNアーゼは、RNA中のヌクレオチドの開裂を触媒する酵素であるリボヌクレアーゼである。
【0021】
ここでの用法では、「診断用標的RNA」という用語は、特定の細菌の診断となるRNA分子または断片を指す。
【0022】
ここでの用法では、「診断用標的DNA生成物」という用語は、診断用標的RNAから転写された、または診断用標的RNAの転写DNAコピーをテンプレートとして使用して合成される、DNA分子または断片を指す。
【0023】
ここでの用法では、「逆転写とそれに続くポリメラーゼ連鎖反応」または「RT−PCR」という用語は、RNA配列のコピーである配列によって、DNA分子を合成し増幅する技術を指す。RT−PCRは、遺伝子発現の定量分析におけるようにRNA種を検出するのに有用であり、ならびにクローニング、cDNAライブラリー構築、プローブ合成、および原位置(in situ)ハイブリダイゼーションにおけるシグナル増幅で使用するためのRNAのDNAコピーを製造するのに有用である。技術は、逆転写(RT)によるRNAからのcDNA合成、およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による特定のcDNA増幅の2つの部分からなる。逆転写酵素は、RNA:DNAハイブリッド中のテンプレートRNAまたはRNA分子を使用してヌクレオチドの重合を触媒する、RNA依存DNAポリメラーゼである。
【0024】
ここでの用法では、「プライマー」という用語は、相補鎖合成がポリメラーゼによって触媒される条件下に置かれると、テンプレート鎖に沿った核酸合成または複製開始点として作用できる合成または自然発生オリゴヌクレオチドを指す。逆転写の文脈で、プライマーは核酸から構成され、RNAテンプレートを刺激する。PCRの文脈で、プライマーは核酸から構成され、DNAテンプレートを刺激する。
【0025】
ここでの用法では、「RT−PCR反応組成物」という用語は、診断用標的RNA配列に対する特異性を有するプライマー、熱活性化された熱安定性ポリメラーゼ、逆転写酵素、dNTP、および適切な緩衝液をはじめとするが、これに限定されるものではない、逆転写−ポリメラーゼ連鎖反応を実施するのに要する全ての要素を有する組成物を意味する。場合によりこれらの組成物は、ここで定義されるようなRNアーゼ阻害物質を含んでもよい。
【0026】
ここでの用法では、「RT反応組成物」という用語は、逆転写酵素、標的RNAに相補的な核酸プライマー、dNTP、および適切な緩衝液をはじめとするが、これに限定されるものではない、RNAテンプレートからDNA生成物を合成するのに要する全ての要素を有する組成物を意味し、検出染料またはプローブを含有してもよい。場合によりこれらの組成物は、ここで定義されるようなRNアーゼ阻害物質を含んでもよい。
【0027】
ここでの用法では、「PCR反応組成物」という用語は、核酸プライマー、熱安定性ポリメラーゼ、dNTP、および適切な緩衝液をはじめとするが、これに限定されるものではない、DNAテンプレートを増幅するのに要する全ての要素を有する組成物を意味し、検出染料またはプローブを含有してもよい。場合によりこれらの組成物は、ここで定義されるようなRNアーゼ阻害物質を含んでもよい。
【0028】
ここでの用法では、「増幅生成物」という用語は、プライマー誘導増幅反応中に生成される核酸断片を指す。プライマー誘導増幅の典型的な方法としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、RT−PCR、リガーゼ連鎖反応(LCR)またはストランド置換増幅(SDA)が挙げられる。
【0029】
ここでの用法では、「RNA精製」という用語は、その他の細胞構成要素からRNAを単離するようにデザインされたプロセスを指し、これはまたRNA抽出とも称される。フェノール−クロロホルム抽出、カラムまたはフィルターへの結合、および沈殿などのステップを含んでもよい、いくつかの異なるRNA精製プロセスがある。
【0030】
ここでの用法では、「溶解」という用語は、細胞RNAまたはDNAへのアクセスまたはその放出を容易にする細胞壁の撹乱または変質を意味する。細胞壁の完全な中断または破損のいずれも溶解の概念の本質的要件でない。
【0031】
ここでの用法では、「溶菌剤」という用語は、細菌細胞溶解に適した、あらゆる作用因子または条件、または作用因子または条件の組合わせを意味する。溶菌剤としては、酵素(リゾチーム、またはバクテリオファージ溶解酵素など)または化学薬品(クロロホルムなど)、中性洗剤、溶菌性緩衝液、熱が挙げられ、超音波処理、ビーズミル、フレンチプレスの使用などの物理的剪断手段を伴ってもよい。溶菌剤は、当該技術分野でよく知られている。
【0032】
ここでの用法では、「サーモサイクリング」という用語は、RT−PCRまたはPCRアッセイ中に使用される温度変化パターン全体を指す。このプロセスは一般的であり、当該技術分野でよく知られている。例えば前出のサムブルック(Sambrook)、およびマリス(Mullis)らに付与された米国特許第4,683,202号明細書およびマリス(Mullis)らに付与された米国特許第4,683,195号明細書を参照されたい。一般にPCRサーモサイクリングは、高温での初期変性ステップ、続いてテンプレート変性と、プライマーアニーリングと、ポリメラーゼによるアニールされたプライマーの延長とを可能にするようにデザインされた温度サイクルの反復シリーズを含む。概してサンプルを最初に2〜5分加熱して、二本鎖DNAを変性させる。次に各サイクルのはじめに使用するサンプルおよび装置タイプ次第で、サンプルを20〜60秒変性させる。変性後、プライマーを約40℃〜約2℃の低温で約20〜60秒、標的DNAにアニールさせる。ポリメラーゼによるプライマーの延長は、約65℃〜約72℃の範囲の温度で実施されることが多い。延長にかかる時間は、単位複製配列サイズと増幅に使用する酵素タイプに左右される。現行の大体の目安は、増幅する1kbのDNAあたり1分である。さらにアニーリングと延長ステップを組合わせて、二段階サイクリングをもたらすことができる。RT−PCRサーモサイクリング反応は、逆転写反応のために、約30℃〜70℃の範囲で約10〜15分の初期インキュベーションを含む。サーモサイクリングは、RT−PCRおよびPCRアッセイで使用される追加的温度シフトを含んでもよい。
【0033】
ここでの用法では、「CT」、「サイクル閾値」、「Ct」、または「閾値サイクル」という用語は、その中で生成物形成に起因する蛍光の増大が背景シグナルを越える顕著なレベルに達する、サーモサイクリング中のサイクルを指す。
【0034】
ここでの用法では、「Der」または「導関数」という用語は、RT−PCRまたはPCR生成物の解離における温度に対する蛍光の変化率の導関数を指し、それはまた導関数ピーク値とも称される。
【0035】
ここでの用法では、「直接検出」という用語は、標的細菌からのRNAの事前精製がない、診断用標的RNA存在のアッセイを指す。
【0036】
ここでの用法では、「食品加工状況」という用語は、そこで食品単独またはその他の材料との組合わせが操作されて、摂取可能な生成物または副産物のいずれかをもたらす形態にされる、現場内、中、上またはそのそばのあらゆる表面、ならびに現場それ自体を指す。このような状況としては、工業および施設食品加工工場が挙げられるが、これに限定されるものではない。摂取可能とは体内に取り込めることを意味し、摂食プロセスに限定されない。
【0037】
ここでの用法では、「医学的状況」という用語は、病院、回復療養所、診断試験室、造影センター、および病棟をはじめとするがこれに限定されるものではない、そこで医療従事者が業務遂行する、現場内、中、上またはそのそばのあらゆる表面、ならびに現場それ自体を指す。
【0038】
ここでの用法では、食品加工状況から採取されたサンプルおよび医学的状況から採取されたサンプルは、上述のようにこれらの状況から細菌を得るあらゆる方法を使用して、ランダムまたは非ランダムサンプリングのあらゆる方法によって得られた細菌内容物のあらゆる部分を指す。
【0039】
細菌細胞供給源
本発明は、多様なサンプルに適用してもよい、細菌細胞検出のための改善された方法およびキットを提供する。細菌細胞は、生物学的、実験的、医療、農業、工業、環境、食品、または食品前駆物質起源のタイプのサンプル中に検出されてもよい。この一覧は例示的であり網羅的ではない。特に本発明は、疾患の原因物質であるまたはそれであることもある汚染物質または病原体の検出に応用してもよい。食品供給における細菌病原体の拡散および汚染の特別の懸念であることから、食品の加工、取り扱い、および調製領域サンプルが好ましい。
【0040】
サンプルから検出アッセイのために細菌細胞を得ることは、液体サンプルの収集、固体または半固体サンプルの抽出、表面の拭き取り、またはさらに別の技術を手段としてもよい。既存の濃度がRT−PCR反応のための標的RNAを適切に提供するならば、細菌細胞を直接アッセイしてもよい。代案としては、遠心分離、免疫吸着またはその他の相互作用を通じた表面への結合、または濾過などの方法によって、細菌細胞を濃縮してもよい。さらに濃縮または直接アッセイに先だって、培養プレート上または液体培地中で細胞を生育させ、細菌細胞数を増大させてもよい。
【0041】
本発明の文脈で適切な典型的な細菌は、リステリア(Listeria)、エシェリキア(Escherichia)、サルモネラ(Salmonella)、カンピロバクター(Campylobacter)、クロストリジウム(Clostridium)、ヘリコバクター(Helicobacter)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、ブドウ球菌(Staphylococcus)、カンプロバクター(Camplobacter)、腸球菌(Enterococcus)、バシラス(Bacillus)、ナイセリア(Neisseria)、赤痢菌(Shigella)、連鎖球菌(Streptococcus)、ビブリオ(Vibrio)、エルシニア(Yersinia)、ボルデテラ(Bordetella)、ボレリア(Borrelia)、およびシュードモナス(Pseudomonas)をはじめとするが、これに限定されるものではないグラム陰性およびグラム陽性細菌である。
【0042】
本方法および本キットは、食品源、食品加工状況または環境または医学的状況における細菌を検出するのに特に有用である。本方法実施のために最も関心がある食品源としては、調理済みか否かに関わらず肉、魚、家禽などの生鮮食品、乳製品、果物およびこれらの混合物が挙げられる。さらに本方法は、食品が調製される、調製された、調製されるであろう表面の細菌を検出するのに有用である。さらに本方法は、特に医療機関内で疾患の原因を同定し最小化するため、病院、医療センター、回復および養護施設などにおいて、様々な表面の細菌を検出するために有用である。したがって本方法を通じて細菌を検出する
ためのサンプル源としては、食品が調製される、調製された、調製されるであろう表面に接触した物質、および上に列挙した供給源を得るための拭き取りまたはその他の方法などによって医学的状況で表面に接触した物質が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0043】
標的RNA
診断用標的RNAとしてアッセイされてもよいRNAタイプとしては、細菌細胞のrRNA、mRNA、転移−RNA(tRNA)、またはその他のRNAポリヌクレオチドが挙げられる。rRNA種としては、一群の関連細菌に特徴的な1つもしくはそれ以上の部分配列を含有してもよい5S、16S、および23Sポリヌクレオチドが挙げられる。特徴的な部分配列の存在はサンプル中の関心のある細菌タイプを同定し、すなわち検出する。特徴的配列の検出能は変化し、アッセイで検出される細菌の関連性のレベルに左右される。例えばサンプル中のあらゆるリステリア(Listeria)種の検出は、その部分配列がリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)のみを検出するのに必要な程度の微細な検出能を有さない、特徴的な部分配列に依存することもある。したがって特徴的な部分配列は、サンプル中の細菌全含有物に対してどの細菌が検出されるかで変化する同定能を有してもよい。このため本方法は広い適応性を有し、診断用標的RNAのための特定の同定能、または標的として使用されるあらゆるタイプのRNAに限定されない。
【0044】
所望の関連性のレベルで細菌を適切に区別するユニークな部分配列を含有するならば、その他のRNAポリヌクレオチドを診断用標的RNAとして使用してもよい。例は、tRNAおよびmRNA種から、ならびに1つもしくはそれ以上の特徴的な部分配列を含む細菌細胞中で生成されるあらゆるRNAから同定できる。
【0045】
プライマーは、当業者によってデザインされ、逆転写反応中のテンプレートとして標的RNAを使用したコピーDNAの合成を刺激してもよい。当業者はまた、PCR中のテンプレートとしてコピーDNAを使用した標的RNAのユニークな部分配列の増幅のために、プライマー対をいかにデザインするかを理解する。PCRで同時に使用されるプライマーは、同様のハイブリダイゼーション融解温度を有すべきであることが、当該技術分野でよく知られている。
【0046】
細菌細胞内の診断用標的RNAには、RTまたはRT−PCR反応組成物がアクセスできるようにしなくてはならない。本発明の一態様では、標的RNAは、RTまたはRT−PCR反応条件それ自体を通じてアクセスできるようになる。収集された後、細菌細胞サンプルを反応組成物に直接添加してもよく、次にそれにサーモサイクリングを施す。
【0047】
代案としては、RNA精製なしに、細胞を変性する多様な作用因子または手段でそれらを前処理してもよい。細胞を例えば熱、様々な化学薬品、酵素、中性洗剤および穏やかな物理的剪断への曝露によって前処理してもよい。この前処理は細胞溶解をもたらすことができる。
【0048】
一態様では、RTまたはRT−PCR反応組成物への接触に先だって、細菌細胞に溶菌剤を添加してもよい。細菌細胞のための溶菌剤の使用は、当業者によく知られている。溶菌剤としては、化学薬品、酵素、物理的剪断、浸透圧剤、および高温が挙げられるが、これに限定されるものではない。「溶菌性緩衝液」という用語は、少なくとも1つの溶菌剤を含有する緩衝液を意味する。
【0049】
典型的な酵素的溶菌剤としては、リゾチーム、グルコラーゼ、ザイモロース、リチカーゼ、プロテイナーゼK、プロテイナーゼE、およびウィルス性エンドリシンとエクソリシンが挙げられるが、これに限定されるものではない。ウィルス性エンドリシンおよびエクソリシンは、バクテリオファージまたはプロファージ細菌およびこれらの組合わせからのものである。
【0050】
典型的なウィルス性エンドリシンとしては、リステリア(Listeria)バクテリオファージ(A118およびPLY118)からのエンドリシン、バクテリオファージPM2からのエンドリシン、枯草菌(B.subtilis)バクテリオファージPBSXからのエンドリシン、乳酸桿菌(Lacto Bacillus)プロファージLj928、Lj965、およびバクテリオファージピアダ(Phiadh)からのエンドリシン、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)バクテリオファージCp−1からのエンドリシン(Cpl−1)、およびストレプトコッカス・アガラクティー(Streptococcus agalactiae)バクテリオファージB30の二官能性ペプチドグリカンリシンが挙げられるが、これに限定されるものではない。これらの最後の2つは、異なる細菌種特異性を有する。二成分、すなわちホリン−エンドリシン、スタフィロコッカス・ワーネリー(Staphylococcus warneri)MファージvarphiWMYの細胞溶解遺伝子holWMYおよびlysWMYについてもまた考察される。これらのエンドリシンの組合わせについてもまた考察される。ウィルス性溶解の考察については、特に、参照によって本願明細書に引用したレースナー(Loessner),MJら、(1995年)Applied Environmental Microbiology、l 61:1150〜1152頁を参照されたい。
【0051】
物理的剪断を達成する典型的な溶菌剤としては、ジルコニア−シリカビーズ、超音波処理またはフレンチプレスが挙げられる。クロロホルムなどの化学薬品存在下におけるボルテックスなどの物理的剪断の組合わせが、細菌細胞を溶解するさらに別の溶解手段である。さらに上述のように、細胞の溶解において高温もまた効果的である。熱処理に加えた溶菌性緩衝液もまた溶解を改善することもある。
【0052】
上の作用因子の多くは、サンプル中のどの細胞が溶解されるかに関して非選択的な傾向がある。その結果処理中に、試験サンプル中の混入生物体および天然細菌叢、ならびに検出標的細胞が溶解されることもある。この非特異性は媒質中に放出される細胞RNアーゼの量を増大させ、検出する標的RNAの安定性および品質を大きく低下させることができる。
【0053】
対照的に、標的細胞のみを特異的に溶解するウィルス性溶解活性を提供するウィルス性溶菌剤および人工材料は、特定の溶解を遂行する。これはこれらの溶菌剤を使用することで、サンプル中のRNアーゼ活性が最小化され、検出するRNA標的の残存および検出可能性が増強されることを意味する。重要なことには、特定の溶解が所望される応用において、エンドリシン活性を提供するウィルス性エンドリシンおよび人工材料は特に有用である。例えばサンプル内の特定の細菌細胞を溶解することが所望される場合、特定のウィルス性エンドリシンを使用してもよい。特定の細菌細胞を溶解するためのウィルス性エンドリシンの使用は、当該技術分野でよく知られている。細菌細胞の溶解におけるウィルス性エンドリシンの使用は、λエンドリシンを発現する遺伝子の誘導によって容易に溶解され、カリフォルニア州オレンジのザイモ・リサーチ(Zymo Research(Orange,CA))からの市販品である、大腸菌(E.coli)のXJa AutolysisTM株によって例示される。
【0054】
本発明では、用いられる特定の細胞溶菌剤は限定されない。細菌細胞サンプルと共に溶菌剤を使用する場合、RT−PCR検出のためにそのサンプル全体または一部を使用してもよい。サンプルの一部は、細菌細胞1個未満からの標的を含んでもよい。
【0055】
ウィルス性エンドリシンを使用するほかに、熱による前処理もまた特に有用な場合もある。約50℃から約100℃未満の温度範囲におけるサンプルのインキュベーションが、RTまたはRT−PCRのテンプレートとしての細菌RNAのアクセス可能性を改善することもある。この加熱前処理は、インキュベーション温度次第で、約1分〜約60分の範囲の時間であってもよく、1〜20分の処理が典型的である。熱処理は、異なる温度における複数のインキュベーションを含んでもよい。熱処理は、下で述べるように、RNアーゼ阻害物質の存在下または不在下であってもよい。特に有用な処理は、約50℃においてRNアーゼ阻害物質の存在下で約5〜20分、および約95℃においてRNアーゼ阻害物質なしで約1〜5分またはRNアーゼ阻害物質ありで約1〜10分である。
【0056】
少なくとも1つのRNアーゼ阻害物質を細菌細胞に添加してもよい。典型的に、阻害物質およびそれらの濃度は、いかなるプライマー誘導増幅プロセスおよび構成要素も妨げないように選択される。RNアーゼ阻害物質は当業者に知られており、イソチオシアン酸グアニジニウムおよびピロ炭酸ジエチルなどの化学薬品と、アンビオン(Ambion)からのスペラセルン(SuperaseIn)TM、ストラタジーン(Stratagene)からのRNアーゼブロック、ヒト胎盤リボヌクレアーゼ阻害物質、およびタカラ・ミラス・バイオ(Takara Mirus Bio)からのブタ肝臓RNアーゼ阻害物質などのタンパク質阻害物質と、ノバジェン(Novagen)からの抗−RNアーゼおよびパンベラ(PanVera)からのリボヌクレアーゼインヒブ(Inhib)IIIなどの抗−ヌクレアーゼ抗体と、アンビオン(Ambion)からのRNAレーター(RNAlater)TMおよびキアゲン(Qiagen)からのRNA保護細菌試薬などの試薬が挙げられる。
【0057】
アッセイ法
本方法では、逆転写単独によって、または逆転写およびポリメラーゼ連鎖反応によって、細菌細胞の診断用標的RNAの存在が試験される。共に使用される場合、逆転写およびポリメラーゼ連鎖反応は、二段階で逐次に、または全反応組成物試薬を細菌細胞サンプルに添加して一段階で共に実施してもよい。
【0058】
逆転写反応組成物中の細菌細胞サンプルのインキュベーションは、標的RNAからのコピーDNAの合成を可能にする。RT組成物は、標的RNAにハイブリダイズしてコピーDNA合成を刺激するプライマーを含む。さらにRT組成物は、dNTP、MgCl、逆転写酵素、および逆転写酵素緩衝液を含む。1つを超える標的RNAからDNAコピーを作成することが所望ならば、1つを超えるプライマーが含まれてもよい。さらにRT組成物は、ここで述べられるように場合によりRNアーゼ阻害物質を含有してもよい。
【0059】
逆転写反応の生成物は直接検出してもよく、または逆転写されたテンプレートからの所望のDNAセグメントの合成を開始する一対のプライマーを含むPCR組成物を含有する別の分析管に、この反応のサンプルを移してもよい。さらにPCR組成物は、dNTP、Taqポリメラーゼなどの熱安定性DNAポリメラーゼ、およびポリメラーゼ緩衝液を含有する。複数セグメントのDNA合成が所望されるならば、1対を超えるプライマーが含まれてもよい。また第2のプライマー対として、元のRT−PCRプライマート共にDNAセグメントを増幅する単一の新しいプライマーが添加されてもよい。
【0060】
使用される追加的逆転写酵素としては、アンビオン(Ambion)からのHIV逆転写酵素、ロシュ(Roche)からのトランスクリプター逆転写酵素、インビトロジェン(Invitrogen)からのサーモスクリプト(Thermoscript)逆転写酵素が挙げられるが、これに限定されるものではない。使用してもよい追加的DNAポリメラーゼとしては、Pfu、Vent、およびエピセンター(EPICENTRE)からのセキサーム(Sequitherm)DNAポリメラーゼが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0061】
RT−PCRを二段階または一段階で実施するかどうかにかかわらず、RTステップは最初に実施され、典型的に約37℃〜約70℃の温度での単一温度インキュベーションからなる。当業者には知られているように、異なるRt酵素および異なるプライマーでは、異なる温度が適切である。引き続くPCR反応は、典型的に約94℃〜約96℃で約6〜約15分の初期インキュベーションからなる。このステップはcDNAを変性させ、また熱活性化Taqポリメラーゼ酵素を活性化させるために使用される。次にこれにcDNA標的増幅の複数サイクルが続く。
【0062】
各サイクル中に、標的変性、プライマーアニーリング、およびプライマー延長の3つの操作が実施される。標的変性は、典型的に約90℃を超える温度で起きる。プライマーアニーリング温度は、反応で使用される特定のプライマーの融解温度によって定まり、プライマー延長は、使用される熱安定性ポリメラーゼ次第で約60℃〜約72℃の範囲の温度で実施される。プライマーアニーリングおよび延長が同一温度で実施される場合、これは3つの各ステップが異なる温度で起きる3温度PCRに対して、2温度のPCRである。増幅相が完了した後、全ての増幅生成物の合成を確実にするよう最終延長時間が典型的に追加される。
【0063】
本発明はまた、本直接検出法を利用するキットも提供する。キットはRT−PCR組成物またはRT−組成物を使用して本方法を実施し、それぞれRT−PCRまたはRT反応生成物のいずれかを得て生成物を増幅するための説明書を含む。代案としては、説明書は、そのさらなる増幅なしのRT−生成物の直接検出に関わる。さらにキットは、サンプルとの接触時にそれぞれRT−PCRまたはRT反応混合物をもたらす、RT−PCR組成物またはRT組成物のいずれかを含有してもよい。
【0064】
RTおよびRT−PCR生成物の検出
本発明は検出法に関して限定されず、RTまたはRT−PCR反応の生成物を検出するあらゆる方法によって使用されてもよい。
【0065】
RT生成物検出
RT反応のcDNA生成物を直接に検出する方法は、当業者によく知られており、cDNA生成物に組み込むか、または付着する標識を利用する。使用してもよいシグナル発生標識は当該技術分野でよく知られており、例えば蛍光部分、化学発光部分、粒子、酵素、放射性タグ、または発光部分または分子が挙げられる。
【0066】
蛍光部分、特に核酸に付着して蛍光シグナルを放出できる蛍光染料が特に有用である。フルオレセイン、テキサスレッド、およびローダミンなどの多様な染料が当該技術分野で知られている。特に有用なのは、例えばどちらもイリノイ州アーリントンハイツのアマーシャム・ファルマシア・バイオテック(Amersham Pharmacia Biotech(Arlington Heights,IL))から市販される単反応性染料Cy3およびCy5である。標識DNAを特異的に検出するより感度の良い方法は、ナイロン膜またはガラススライドなどのマトリックス中に固定化された標的DNA配列分子に、生成物をハイブリダイズすることである。次にハイブリダイゼーション後のシグナルを適切なフィルター付きのレーザースキャナーでスキャンして、使用した特定染料を検出できる。これは当該技術分野、特にDNAマイクロアレイ技術で良く知られている。
【0067】
RT反応におけるその合成中に標識をcDNAに組み込んでもよく、またはそれをcDNA生成物の合成後に付着してもよい。例えばRT反応を標識プライマーと共に実施できる。1つのタイプの標識プライマーは、多数のシグナル発生分子を有する付着粒子を有する。染料−標識UTPおよび/またはCTPなどの標識ヌクレオチドを使用した逆転写は、転写された核酸中に標識を組み込む。代案としては合成後カップリング反応を使用して、cDNA生成物を検出できる。
【0068】
核酸に標識を付着することは当業者によく知られており、例えばニックトランスレーションによって、または例えば標識RNAでの末端標識によって、またはキナーゼでの核酸の処理と、それに続く例えばフルオロフォアなどの標識にサンプル核酸を連結する核酸リンカー付着によって行われてもよい。別の標識方法では、RT反応からのDNA生成物は、生体外(in vitro)転写反応へのカップリングによって増幅される。例えばT7プロモーター領域は、RT反応に使用されるプライマー中に組み込まれる。次にT7生体外(in vitro)転写キットを使用して大量のRNAを発生させ、検出感度を増大できる。T7生体外(in vitro)転写キットは、テキサス州オースティン2130ウッドワードのアンビオン(Ambion(2130 Woodward,Austin,TX))またはその他の販売元から購入できる。
【0069】
RT−PCR検出
RT−PCR生成物検出の方法は、ゲル電気泳動分離および臭化エチジウム染色、または生成物中の組み込まれた蛍光標識または放射標識の検出を含む。増幅生成物の検出に先だって分離ステップを必要としない方法もまた、使用してもよい。これらの方法は一般に、リアルタイムPCRまたは均質な検出と称される。ほとんどのリアルタイム法は、サーモサイクリング中に蛍光変化をモニタリングして、増幅生成物の形成を検出する。これらの方法としては、カリフォルニア州フォスターシティ94404のアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems(Foster City,CA 94404))からのタクマン(TaqMan)(登録商標)二重標識プローブ、ティヤギ(Tyagi)Sおよびクレイマー(Kramer)FR(1996年)著、Nat Biotechnol 14:303〜308頁の分子ビーコン、およびオレゴン州ユージーン97402−0469のモレキュラー・プローブ(Molecular Probes,Inc(Eugene,OR 97402−0469))からのSYBR(登録商標)グリーン染料が挙げられるが、これに限定されるものではない。これらの該均一法のいくつかは、増幅生成物の終点検出にも使用できる。このタイプの方法の例は、SYBR(登録商標)グリーン染料解離曲線分析である。解離曲線分析では、蛍光モニタリングと組合わせた、概して約60℃〜90℃の温度での最後の緩慢な傾斜から、融点、ひいては増幅生成物の存在を検出できる(リリー(Ririe)ら(1997年)Anal.Biochem.245:154〜60)。
【実施例】
【0070】
続く実施例で、本発明をさらに定義する。これらの実施例は、本発明の好ましい実施態様を示しながら、例証のためにのみ提供されるものとする。上の考察およびこれらの実施例から、当業者は本発明の本質的特性を見極められ、その精神と範囲を逸脱することなく、様々な用途および条件に適合するように本発明の様々な変更および修正ができる。
【0071】
一般方法:
実施例で使用される標準リコンビナントDNAおよび分子クローン化技術は当該技術分野で良く知られており、Jサムブルック(Sambrook)、EFフリッチュ(Fritsch)、およびTマニアティス(Maniatis)「分子クローン化:実験室マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」;Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor,NY、1989年、TJシルハビー(Silhavy)、MLベンナン(Bennan)およびLWエンクイスト(Enquist)「遺伝子融合実験(Experiments with Gene Fusions)」Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor,NY、1984年、およびFMオースベル(Ausubel)ら「分子生物学現代プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」グリーン Publishing Assoc.and Wiley−Interscience、NY、1987年で述べられている。細菌培養の維持および生育に適した材料および方法もまた、当該技術分野で良く知られている。以下の実施例で使用するのに適した技術は、以下で述べられる。「一般微生物学方法マニュアル(Manual of Methods for General Bacteriology」、Pゲアハルト(Gerhardt)、RGEマレー(Murray)、RNコスティロウ(Costilow)、EWネスター(Nester)、WAウッド(Wood)、NRクリーグ(Krieg)、およびGBフィリップス(Phillips)編、米国微生物学会、Washington,D.C.、1994年、またはTDブロック(Brock)著「バイオテクノロジー:工業微生物学テキストブック(Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology)」第2版、Sinauer Associates,Inc.、Sunderland,MA、1989年。
【0072】
細菌細胞の生育および維持のために使用した全ての試薬、制限酵素、および材料は、特に断りのない限り、ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals(Milwaukee,WI))、メリーランド州スパークスのBDダイアグノスティック・システムズ(BD Diagnostic Systems(Sparks,MD))、メリーランド州ロックビルのライフ・テクノロジーズ(Life Technologies(Rockville,MD))、またはミズーリ州セントスイスのシグマ・ケミカル社(Sigma Chemical Company(St.Louis,MO))から得た。
【0073】
本願明細書で使用した略語の意味は次の通り。「min」は分を意味し、「h」は時間を意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「L」はリットルを意味し、「nm」はナノメートルを意味し、「mm」はミリメートルを意味し、「cm」はセンチメートルを意味し、「μm」はマイクロメートルを意味し、「mM」はミリモル濃度を意味し、「M」はモル濃度を意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「μmol」はマイクロモルを意味し、「g」はグラムを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「mg」はミリグラムを意味し、「g」は重力定数を意味し、「rpm」は毎分回転数を意味し、「kb」はキロベースを意味し、「bp」は塩基対を意味し、「g」は重力定数を意味し、「mU」はミリ単位を意味し、「U」は単位を意味し、「nm」はナノメートルを意味する。「OD650」は、650nmで測定した光学濃度を意味し、「OD260/OD280」は260nmで測定した光学濃度と280nmで測定した光学濃度との比率を意味する。
【0074】
次の酵素および試薬は、次の供給メーカーから購入した。
カリフォルニア州フォスター・シティのアプライド・バイオシステムズ(ABI)(Applied Biosystems(Foster City,CA)):マルチスクライブ(Multiscribe)逆転写酵素(カタログ番号4311235)、RNアーゼ阻害物質(20U/μL)(カタログ番号N808−0119)、ジーンアンプ(GeneAmp10× PCR緩衝液II(100mMトリス−HCl pH8.3、500mM KCl)(カタログ番号N808−0190)、25mM MgCl(カタログ番号N808−0190)。
インディアナ州インディアナポリスのロシュ・アプライド・サイエンス(Roche Applied Science(Indianapolis,IN)):ファストスタ
ート(FastStart)Taq DNAポリメラーゼ(カタログ番号2032937)、25mM MgCl(カタログ番号2032937)。
テキサス中ウッドランドのシグマ・ジェノシス(Sigma Genosys(The Woodlands,TX)):オリゴヌクレオチド。
カリフォルニア州カールスバッドのインビトロジェン・ライフ・テクノロジーズ(Invitrogen Life Technologies(Carlsbad,CA)):2%二重CombアガロースE−ゲル(Cat#G6018−02)、2%単一CombアガロースE−ゲル(カタログ番号G5018−02)、E−ゲル低量範囲定量的DNAラダー(カタログ番号12373−031)。
カリフォルニア州バレンシアのキアゲン(Qiagen(Valencia,CA)):RNアーゼ−フリーDNA分解酵素セット(カタログ番号79254)。
ミズーリ州セントルイスのシグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich(St.Louis,MO):ウシ血清アルブミン(BSA)(カタログ番号A3294)、ジメチルスルホキシド(DMSO)(カタログ番号D8418)、カーボワックス(Carbowax)(カタログ番号P5413)、トレハロース(カタログ番号T9531)。
ニュージャージー州フランクリン・レイクスのベクトン・ディキンソン(Becton Dickinson(Franklin Lakes,NJ)):トリプチケースソイ寒天(TSA)(カタログ番号221293)、トリプチケースソイブロス(TSB)(カタログ番号297811)、リン酸緩衝液(カタログ番号292786)、脳心臓浸出物培地(BHI)(カタログ番号220837)、ディフコ(Difco)TMフレーザー・ブロス・ベース(カタログ番号211767)、ディフコ(Difco)TMUVM変性リステリア(Listeria)増菌ブロス(カタログ番号222330)、ディフコ(Difco)TMパルカム(PALCAM)培地ベース(カタログ番号263620)、ディフコ(Difco)TMオックスフォード培地ベース(カタログ番号222530)、ディフコ(Difco)TMフレーザー・ブロス・サプリメント(カタログ番号211742)、ディフコ(Difco)TMオックスフォード抗菌剤サプリメント(カタログ番号211763)、ディフコ(Difco)TMD/E中和ブロス(カタログ番号B01256)。
ニューヨーク州のオグデンズバーグのオキソイド(Oxoid(Ogdensburg,NY)):パルカム(PALCAM)プラス・ブロス。
【0075】
次の試験キットおよび試薬は、次の供給メーカーから購入した。カリフォルニア州バレンシアのキアゲン(Qiagen(Valencia,CA)からのキアゲン(Qiagen)RNイージー(RNeasy)ミニキット(カタログ番号74106)、メリーランド州ハノーバーのフェルメンタス(Fermentas(Hanover,MD))からのDEPC(ピロ炭酸ジエチル)処理水(カタログ番号R0601)。
【0076】
全てのオリゴヌクレオチドプライマーは、テキサス中ウッドランドのシグマ・ジェノシス社(Sigma Genosys(The Woodlands,TX))によって合成された。ポリメラーゼ連鎖反応および逆転写ポリメラーゼ連鎖反応は、カリフォルニア州フォスター・シティのアプライド・バイオシステムズからの(Applied Biosystems(Foster City,CA))ABI PRISM 7000配列検出システム、およびマサチューセッツ州ウォルサムのMJリサーチ(MJ Research(Waltham,MA))からのPTC−255ペルチェ・サーマル・サイクラーを使用して実施した。
【0077】
遺伝的配列は、メリーランド州フレデリックのインフォマックス(InforMax(Frederick,MD))からのベクターNTIアドバンス9で分析した。配列はメリーランド州ベセズダの国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)からダウンロードした。プライマー配列は、ベクターNTIソフトウェアを使用して、ダウンロードした配列に対して位置合わせした。
【0078】
実施例1
リステリア・イノキュア(Listeria innocua)細胞培養物およびcfu判定
リステリア・イノキュア(Listeria innocua)(菌株CLIP 11262)(ATCC#BAA−680、)はバージニア州マナッサスの米国微生物系統保存機関から得た。リステリア・イノキュア(Listeria innocua)をBHI培地で水分補給した。リステリア・イノキュア(Listeria innocua)の培養物をTSA上に播種して35℃で生育させ、次に4℃で保存した。
【0079】
TSAプレートからリステリア・イノキュア(Listeria innocua)のコロニーを取り出して、TSBに入れた。ニュージャージー州エディソンのニューブ・ランズウィック・サイエンティフィック(New Brunswick Scientific(Edison,NJ))からの培養振盪機(モデルG24)に、TSBを含有する試験管を31℃で18時間入れた。細胞数推定のために、この培養物1mLを取り出して、カリフォルニア州フラートンのベックマン・コールター(Beckman Coulter(Fullerton,CA))からのベックマン(Beckman)DU−7500分光光度計に入れた。吸光度を使用して細胞濃度を近似し、600nmで読み取った。参照として1.0の吸光度を使用し、約1.0×10細胞/mLが示唆された。
【0080】
原液中の細胞数を判定するため、1:10希釈のために別の1mLの培養物を9mLのリン酸緩衝液に移して、希釈細胞サンプルを調製した。これを8回繰り返して、連続希釈物を得た。1:100000、1:1000000、および1:10000000希釈物からそれぞれ100μLをTSA上に播種して、原液毎mLあたりのコロニー形成単位(cfu)を得た。イリノイ州シカゴのプレシジョン・サイエンティフィック・グループ(Precision Scientific Group(Chicago,IL)からの重力対流培養器にTSAプレートを35℃で48時間入れた。30〜300cfuを含有するプレートを使用し、cfu数に希釈率を乗じて0.1で除して、プレートに入れた100μLを計上し、原液濃度を判定した。得られた値はcfu/mLを表す。
【0081】
実施例2
リアルタイムRT−PCRを使用したリステリア・イノキュア(Listeria innocua)ホールセルサンプル中の16S rRNA標的の直接検出
この実施例では、細菌細胞上で前溶解ステップなしに、リステリア・イノキュア(Listeria innocua)16S rRNA標的配列の単一ステップRT−PCRアッセイを実施した。
【0082】
実施例1に示すように、リステリア・イノキュア(Listeria innocua)細胞(3.6×10cfus/mL)の一晩培養物を調製して希釈した。試験用細胞サンプルを調製するために、ニューヨーク州ウェストベリーのブリンクマン・エッペンドルフ(Brinkmann Eppendorf(Westbury,NY))からのエッペンドルフ・バイオピュア(Eppendorf Biopur)チューブ(カタログ番号2260004−4)に、1:1000〜1:1000000000希釈物からの1mLのアリコートを入れ、次にそれをニューヨーク州ウェストベリーのブリンクマン・エッペンドルフ(Brinkmann Eppendorf(Westbury,NY))からのエッペンドルフ(Eppendorf)5415D遠心分離器内で、高速(13,200rpm)で10分間遠心分離した。サンプルからリン酸緩衝液を除去した。
【0083】
5μLのRNアーゼ阻害物質(100U)を45μLのDEPC処理水に添加して、細胞希釈剤を調製した。この50μLの溶液をリステリア・イノキュア(Listeria innocua)細胞ペレットを含有する各バイオピュア(Biopur)チューブに添加した。各チューブをペンシルベニア州ウェストチェスターのVWRサイエンティフィック・プロダクツ(VWR Scientific Products(West Chester,PA))からのミニ・ボルテクサー(Mini Vortexer)上で高速(速度10)で15秒間ボルテックスした。希釈細菌細胞を含有するチューブを即座に氷にのせた。
【0084】
45μlを50μlの最終反応容積に添加すると次の最終濃度をもたらすように、RT−PCRのための原液反応ミックス(A)を調製した。
1)10mMトリス−HCl pH8.3、50mM KClのジーンアンプ(GeneAmp)1×PCR緩衝液II
2)2mM MgCl
3)200μMヌクレオチド
4)24μg BSA
5)DMSO(最終濃度1%)中のオレゴン州ユージーンのモレキュラー・プローブ(Molecular Probes,Inc(Eugene,OR))からのSYBRグリーン(10,000×、カタログ番号S7567)の1:10,000希釈物
6)600nMの順方向プライマーLis−F(5’AGCTTGCTCTTCCAAAGT3’、配列番号:1)および2μMの逆方向プライマーLis−R(5’AAGCAGTTACTCTTATCCT3’、配列番号:2)。プライマー配列はゾマー(Somer)およびカシ(Kashi)(2003年J.Food Prot.66:1658〜1665頁)からのもの。
7)2.5単位のファストスタート(FastStart)Taq DNAポリメラーゼおよび1.25単位のマルチスクライブ(Multiscribe)逆転写酵素(Rt)8)1.86mMのカーボワックス(Carbowax)
9)360.5mMのトレハロース
10)20単位のRNアーゼ阻害物質
PCR反応では、Rt酵素を添加しなかったこと以外はRT−PCRミックスと同様にして、第2の反応ミックス(B)を調製した。
【0085】
反応をカリフォルニア州フォスターシティのアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems(Foster City,CA))からのマイクロアンプ(MicroAmp)光学96−ウェル反応プレート(カタログ番号N801−0560)内で実施した。RT−PCRでは、45μLの反応ミックスAをウェルに添加して、RNAおよびDNA双方の存在を判定した。PCRでは、45μLの反応ミックスBをウェルに添加してDNAのみの存在を判定した。
【0086】
表1および2に列挙するように、各希釈細菌細胞サンプルの5μLサンプルを反応ミックスに添加した。全反応は各希釈物について3連で行った。
【0087】
キアジェン(Qiagen)のRNイージー(RNeasy)ミニ・キットを使用して、1.0×10cfuを含有するサンプルを抽出し、リステリア(Listeria)RNAの陽性対照サンプルを調製した。次にキット製造業者が述べるようにして抽出RNAをDNA分解酵素処理して、50μLのDEPC処理水の最終容積にした。デラウェア州ロックランドののナノドロップ(NanoDrop Technologies(Rockland,DE))からのナノドロップ(NanoDrop)分光光度計を使用して、RNA濃度(16ng RNA/μl)を判定した。次にこの濃縮RNAを希釈して、対照反応あたり80pg添加した。このRNA対照をRT−PCR反応の陽性対照として使用した。RNAはDNA分解酵素処理されたので、PCR反応の陰性対照としても使用された。さらに陰性標的なし対照として5μLのDEPC処理水を使用した。
【0088】
プレートをカリフォルニア州フォスターシティのアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems、(Foster City,CA))からのABIプリズム(PRISM)光学接着カバー(カタログ番号4311971)で密封し、それをニューヨーク州ウェストベリーのブリンクマン・エッペンドルフ(Brinkmann Eppendorf(Westbury,NY))からのエッペンドルフ(Eppendorf)遠心分離器5804内で遠心分離した。次の条件を使用して、ABIプリズム(PRISM)7000内で、サンプルをサーマルサイクルにかけた。
50℃で10分間(RTステップ)、
95℃で6分間(Taq活性化ステップ)、
95℃で30秒間(変性させるステップ)、
66℃で1分間(アニールおよび延長ステップ)、
変性およびアニールステップの反復34回、
66℃で5分間、
解離プロトコル(融解曲線)。
サーモサイクリング中に、反応生成物形成のCT値を判定した。反応に続いて、融解曲線分析およびアガロース・ゲル電気泳動法による分離の双方を使用して、生成物形成を分析した。ドイツ国のワットマン・バイオメトラ(Whatman Biometra(Germany))からの低電圧電源(モデル250EX)に接続され、60Vで20分作動する、カリフォルニア州カールスバッドのインビトロジェン・ライフ・テクノロジーズ(Invitrogen Life Technologies(Carlsbad,CA))からのE−ゲルベース中の2%単一CombアガロースE−ゲル(カタログ番号G5100−01)上で、サンプルを泳動した。ニューヨーク州ロチェスターのコダック・デジタル・サイエンス(Kodak Digital Science(Rochester,NY))からのコダック(Kodak)イメージ・ステーション440CF上でE−ゲル画像をキャプチャして、次に観察し正しいサイズのRT−PCR生成物(402bp)の存在または不在を判定した。
【0089】
低量範囲定量的DNAラダー(バンドは上から下に2000bp、800bp、400bp、200bp、および100bp)と並べて、細菌細胞サンプルのRT−PCRおよびPCR反応からの反応生成物を図1に示す。402bpの予測反応生成物は、細菌細胞サンプルからのRT−PCR(レーン2〜5に見られる)およびPCR(レーン12および13、そして非常に薄くレーン14に見られる)反応、精製されたRNA(レーン1)との対照RT−PCR反応の双方で増幅された。
【0090】
反応生成物形成はまた、ABIプリズム(PRISM)7000解離データでも見られた。解離プロトコルでは温度が上昇して増幅されたDNA鎖の分離が引き起こされ、変化する蛍光がもたらされる。DNA鎖が溶解分離する温度領域に対してピークを生じ、存在する増幅DNAの量に比例するこの蛍光変化率の導関数を取る。誘導体ピーク値を増幅生成物存在の定性的測定として使用する。300を超える導関数をRT−PCRまたはPCRの結果としての生成物形成の陽性指標と見なした。表1および2のサンプル2〜5、および12〜14の高い導関数値は、サンプル1の対象と同じく増幅されたDNA生成物が存在したことを示唆した。
【0091】
【表2】

【0092】
【表3】

【0093】
ABIプリズム(PRISM)7000からのサイクル閾値(CT)データは、標的の存在量に反比例する。細胞なしおよび水サンプルからは、32〜34のCT値が背景レベルであると判定された。表1および2のサンプル2〜5、12および13で示された27以下のCT値は、成功した増幅反応を示唆した。サンプル14の31.39のCT値もまた、背景よりやや下であった。生成物形成は、反応に添加された細胞数と正比例した。サンプル12対2および13対3を比較すると、PCR対RT−PCR反応中の同一細胞数について、およそ5のCT値の違いを示した。RT−PCR反応の検出下限値は3.6×10細胞であり、一方PCR反応の検出下限値は3.6×10細胞であった。これらの結果は、細菌細胞RNAがRNA精製または事前細胞溶解なしに、RT−PCR検出のために容易に利用できたことを実証する。
【0094】
実施例3
リアルタイムRT−PCRを使用したリステリア・イノキュア(Listeria innocua)のホールセルサンプルにおける16S rRNA標的検出の再現性
実施例1同様にリステリア・イノキュア(Listeria innocua)培養物を一晩生育させて処理した。細胞サンプルを実施例2と全く同じ条件下で、2つの追加的実験で(異なる日に)試験した。
【0095】
1、8、および13日目に実施した実験からのRT−PCRおよびPCR反応のCT値のプロットを図2および3に示す。実施した実験からの反応あたりの細胞数は、1日目に3.6×10〜3.6×10−1、8日目に3.2×10〜3.2×10−1、および13日目に7.5×10〜7.5×10−1の範囲に及んだ。プロットは、CT値が異なる実験間で接近して再現されたことを示す。同一反応の導関数ピークデータを図4および5に示す。これらのデータのプロットはまた、データが再現されたことを示した。双方のタイプのデータは、RNAがRNA抽出または事前細胞溶解なしにリステリア(Listeria)細菌細胞から直接検出できることを示唆した。
【0096】
実施例4
リアルタイムRT−PCRを使用したリステリア・イノキュア(Listeria innocua)ホールセルサンプル中の16S rRNA標的の直接検出のための前処理
実施例1と同様にリステリア・イノキュア(Listeria innocua)細胞を調製した。実施例2と同様に細胞サンプルを遠心分離して、RNアーゼ阻害物質を含有する水に再懸濁した。この実施例では、50μLあたり10〜10細胞の濃度範囲に及ぶ3組の細胞サンプルを調製した。1つの組は前処理なし対照として、試験に先だって氷上に保持した。第2のサンプルの組は、ペンシルベニア州ウェストチェスターのVWRサイエンティフィック・プロダクツ(VWR Scientific Products(West Chester,PA))からの50℃熱ブロックに5分間のせて、次に試験に先だって氷上に保持した。第3のサンプルの組は、95℃熱ブロックに1分間にのせて次に氷にのせた。この組を使用して細胞の高温熱処理の効果を評価した。実施例2と同様にRT−PCR試薬反応ミックス(Rtあり)およびPCR試薬反応ミックス(Rtなし)を調製した。各試験組からの5μLをRT−PCR試薬反応ミックスに添加して、各試験組からの追加的5μLをPCR試薬反応ミックスに添加した。RT−PCRおよびPCR反応を三連で実施した。次に実施例2と同様に、試験反応をABIプリズム(PRISM)7000内でサーマルサイクルにかけた。
【0097】
この実験び融解曲線導関数ピークデータを次の表3および4に列挙する。表3および4に示された結果は、細胞前処理がRT−PCRまたはPCRアッセイに悪影響を及ぼさなかったことを実証する。導関数ピーク値は前処理サンプルならびに対照中の生成物増幅を示した。実施例2と同様に、300を超える導関数ピーク値から生成物形成が推測された。RT−PCR反応中に2.52×10細胞があるサンプル中に生成物を検出した一方、PCR反応中に2.52×10細胞があるサンプル中に生成物が検出され、実施例2と同様に細菌細胞RNAがRT−PCR検出に容易に利用できることが示唆された。
【0098】
【表4】

【0099】
【表5】

【0100】
実施例5
RT−PCRにおける直接16S rRNA標的検出と単離RNA標的検出との比較
実施例1および2と同様にリステリア・イノキュア(Listeria innocua)細菌細胞を調製して希釈した。次にキアジェン(Qiagen)RNイージー(RNeasy)ミニ・キット(RNイージー(RNeasy)ミニ・ハンドブック、28頁、56〜60頁)RNA抽出キットを使用して、これらの細胞からのRNAを単離した。具体的には、ニューヨーク州ウェストベリーのブリンクマン・エッペンドルフ(Brinkmann Eppendorf(Westbury,NY))からのエッペンドルフ(Eppendorf)5415D遠心分離器内で、各細胞サンプル希釈物からの1mLを10分間遠心分離(13,200rpm)した。リン酸緩衝液を除去し、次にキアジェン(Qiagen)プロトコル(RNイージー(RNeasy)ミニ・ハンドブック)に従って細菌細胞を10分間溶解した。次に溶解サンプルをカラム内のキット・シリカ−ゲルベースの膜に添加して、RNAを結合させた。任意のDNA分解酵素処理は実施しなかった。50μLの水をカラムに添加して、RNAを膜から溶出した。溶出剤を再適用して膜から溶出し、溶液中のRNAを濃縮した。次にこの回収されたRNAを試験まで氷にのせた。
【0101】
比較のために、水およびRNアーゼ阻害物質中で希釈細菌細胞サンプルの2つの追加的シリーズを調製し、実施例4と同様に(50℃で5分間または95℃で1分間)前処理した。キアジェン(Qiagen)キットによって抽出された単離RNA、および熱処理細胞を実施例2で詳述するようにRT−PCRおよびPCR反応で分析した。
【0102】
CT値および融解曲線導関数値によって測定されたこれらの反応から得られたRT−PCRおよびPCR生成物をそれぞれ、表5、6、および7、8で報告する。RT−PCRまたはPCR応答(CTまたは融解曲線導関数値)のいずれにおいても直接細菌細胞検出法と比べて、精製RNAの利点は見られなかった。実際のところ、熱処理細菌細胞サンプルは、精製されたRNA、特に95℃で1分間加熱されたものよりもやや良い(より低い)RT−PCR CT値を有した。
【0103】
【表6】

【0104】
【表7】

【0105】
【表8】

【0106】
【表9】

【0107】
実施例6
直接標的RNA検出のための熱前処理細胞サンプルに対するRNアーゼ阻害物質の効果
実施例1と同様にリステリア・イノキュア(Listeria innocua)細胞を生育させ、リン酸緩衝液中で1:10000に希釈した。実施例2と同様に希釈細胞の1mLアリコート14個を取り出して調製し、サンプルの半数を45:5の水:RNアーゼ阻害物質(100U)ミックス50μLに再懸濁し、もう半数はRNアーゼ阻害物質添加なしの水50μLのみに再懸濁した。全サンプルをボルテックスした。
【0108】
RT−PCRアッセイに先だって、各サンプルの組(RNアーゼ阻害物質ありおよびRNアーゼ阻害物質なし)からの1本のチューブをゼロ時間陽性対照として氷上に保持した。実施例4と同様に残りのチューブを50℃熱ブロックにのせた。1分、2分、5分、10分、15分、および20分の各時点で、各処理条件からの1本のチューブを熱ブロックから取り去って氷上にのせた。
【0109】
実施例2で述べられるように、45μLのRT−PCR反応混合物のアリコートを96−ウェルプレートに入れた。各50℃熱処理サンプルおよび対照から5μLのサンプル3個を取り、45μLのRT−PCR反応混合物に添加して、実施例2で述べられるように反応をサーモサイクルにかけた。これらの反応のCT値を表9に、融解曲線導関数ピーク値を表10に示す。
【0110】
表9に示すように、50℃で5分間のインキュベーション後、RNアーゼ阻害物質ありのサンプルとRNアーゼ阻害物質なしのサンプルの間にCT値の相違が見られた。RNアーゼ阻害物質ありのサンプルのより小さいCT値は、RT−PCRにとって利用可能性がより高い標的RNAの在を示唆した。したがってRNアーゼ阻害物質存在での50℃で5分以上の処理は、RT−PCTアッセイにおける細菌細胞RNAの利用可能性を増大させる。
【0111】
【表10】

【0112】
【表11】

【0113】
上述のようなRNアーゼ阻害物質ありまたはなしの細菌細胞サンプルを95℃で同一時間加熱し、次に上記のようにRT−PCRでアッセイした。これらの処理のCT値および融解曲線導関数ピーク値のRT−PCR結果をそれぞれ表11および12に報告する。
【0114】
【表12】

【0115】
【表13】

【0116】
CT値は、RNアーゼ阻害物質なしの95℃で1〜5分の熱処理が、RT−PCRアッセイにおけるRNAテンプレート利用可能性を増大させることを示唆した(対照よりも低いCT値)。RNアーゼ阻害物質ありの95℃で1〜10分の処理は、RT−PCRアッセイにおけるRNAテンプレートの利用可能性を増大させた。
【0117】
50℃および95℃での処理の双方における経時的RT−PCR応答は、いくらかの経時的RNA分解を示唆したが、導関数応答によって示唆されるように、RNA増幅は、双方の処理条件下において試験した全時点で起きた。この結果は、RT−PCR直接細菌細胞検出にRNアーゼ阻害物質は必要でないが、RNアーゼ阻害物質が存在すれば、それは応答を増強できることを実証する。したがってRNアーゼ阻害物質ありまたはなしで、双方の熱処理下においてRNAが検出されたが、RNアーゼ阻害物質が存在するとより多くのRNAが利用できた。
【0118】
実施例7
リアルタイムRT−PCRを使用したリステリア・イノキュア(Listeria innocua)ホールセル溶解産物中の16S rRNA標的の直接検出
菌株および培地
ニューヨーク州オグデンズバーグのオキソイド(Oxoid,Ltd.(Ogdensburg,NY))からの0.3%グルコース添加デミ−フレーザー培地プラス(カタログ番号CM0153)中でリステリア・イノキュア(Listeria innocua)細胞を37℃で生育させた。カリフォルニア州ホリスターのテクノヴァ(Teknova,Inc.(Hollister,CA))からのBHI寒天プレート(カタログ番号B1010)上でプレートカウントを実施した。
【0119】
アンビオン(Ambion)溶解法によるホールセル溶解産物の調製
10mlの0.3%グルコース添加デミ−フレーザー培地にリステリア・イノキュア(Listeria innocua)を接種して、37℃で一晩インキュベートした。100μlの一晩培養物を新鮮な培地に移し、ニュージャージー州ピスカタウェイのファルマシア・バイオテック(Pharmacia Biotech(Piscataway,NJ))からのウルトラ・スペック(Ultra Spec)3000を使用してOD650を測定した。培養物をOD650が0.5(対数中期)に達するまで37℃でインキュベートして、33μlの培養物をテキサス州オースティンのアンビオン(Ambion、Inc.(Austin,TX))からの967μlの氷冷PBS(アンビオン・セル・トゥcDNA(Ambion Cell to cDNA)キット、カタログ番号1722)に移した。ノースカロライナ州アシュビルのケンドロ・ラボラトリー・プロダクツ(Kendro Laboratory Products(Asheville,NC))からのヘレウス・バイオフュージ・ピコ(Heraeus Biofuge Pico)内において、13,000rpmで1分の遠心分離によって細胞をペレット化して、次に100μlの氷冷PBSに再懸濁した。細胞を氷冷PBS中で1:10に希釈し、次にテキサス州オースティンのアンビオン(Ambion、Inc.(Austin,TX))からのアンビオン(Ambion)溶菌性緩衝液(アンビオン・セル・トゥcDNA(Ambion Cell to cDNA)キット、カタログ番号1722)中で最終濃度およそ10細胞/mlに連続1:10希釈を作成した。
【0120】
プレートカウントを実施するために、PBS中で最終濃度およそ10細胞/mlに別の連続1:10希釈の組を作成した。およそ10および10細胞/mlの希釈物から、100μlをBHI寒天プレート上に播種した。プレートを37℃で18時間インキュベートし、プレートあたりのコロニー数を計数して希釈物あたりのcfuを判定した。
【0121】
およそ10細胞/ml〜10細胞/mlを含有するアンビオン(Ambion)溶菌性緩衝液中の各希釈物から、90μlの希釈細胞を0.5ml薄肉PCRチューブに移した。カリフォルニア州フォスターシティのPEアプライド・バイオシステムズ(PE Applied Biosystems(Foster City,CA))からのジーンアンプ(GeneAmp)PCRシステム9700内において75℃で10分間、細胞をインキュベートした。下で述べられるように、得られた細胞サンプル溶解産物をRT−PCR反応で即座に使用した。
【0122】
BAX溶解法によるホールセル溶解産物調製
ペレット化した細胞を最初に1:10でなく1:5に希釈し、次に上のように最終濃度およそ2×10細胞/mlに1:10連続希釈したこと以外は、上述のように培養物を生育させ調製した。同一培養物を使用して双方の希釈物および溶解産物の組を調製したので、双方の溶解法で上のプレートカウントを使用した。0.5ml薄肉PCRチューブ内のデラウェア州ウィルミントンのデュポン・クアリコン(DuPont Qualicon(Wilmington,DE))からの100μlのBAX溶菌性緩衝液(リステリア(Listeria)属スクリーニング用BAXシステムPCRアッセイ、カタログ番号17710610)に、およそ2×10細胞/ml〜2×10細胞/mlを含有するPBS中の各希釈物から5μlの希釈細胞を添加した。カリフォルニア州フォスターシティのPEアプライド・バイオシステムズ(PE Applied Biosystems(Foster City,CA))からのジーンアンプ(GeneAmp)PCRシステム9700内で、細胞を55℃で1時間、次に95℃で10分間インキュベートした。得られた細胞サンプル溶解産物を下のRT−PCR反応で即座に使用した。
【0123】
RT−PCR
米国カリフォルニア州フォスターシティのアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems(Foster City,CA,USA)からの配列検出システム(SDS)装置(モデル7900)上、でリアルタイム逆転写−PCR(RT−PCR)を実施した。米国カリフォルニア州フォスターシティのアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems(Foster City,CA,USA)からのプライマー・エクスプレスv2.0ソフトウェアを使用して、標準設定を使用して、リアルタイムプライマーおよびプローブをデザインした。逆転写酵素ありまたはなし(+または−Rt)の双方で、次のように20μl反応をセットアップした。米国カリフォルニア州フォスターシティのアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems(Foster City,CA,USA))からの10μlのタクマン(TaqMan)ユニバーサルPCR 2×マスター・ミックス(#4324018、AmpliTaq Gold(登録商標)DNAポリメラーゼ含有)、米国カリフォルニア州フォスターシティのアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems(Foster City,CA,USA))からの0.4μlのRNアーゼ阻害物質(#N808−0119、20U/μl)、米国カリフォルニア州フォスターシティのアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems(Foster City,CA,USA))からの0.01μlのマルチスクライブ(Multiscribe)逆転写酵素(#4311235)、米国テキサス州ウッドランズのシグマ・ジェノシス(Sigma Genosys、Woodlands、Texas,USA))からの0.1μlの16S−373F 100μMプライマー(5’TCCGCAATGGACGAAAGTCT:配列番号:3)、米国テキサス州ウッドランズのシグマ・ジェノシス(Sigma Genosys、Woodlands、Texas,USA))からの0.2μlの16S−436R 100μMプライマー(5’TTACGATCCGAAAACCTTCTTCA:配列番号:4)、米国カリフォルニア州フォスターシティのアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems(Foster City,CA,USA))からの0.05μlの16S−394T 100μMタクマン(TaqMan)TAMRAプローブ(#450025、6FAM−ACGGAGCAACGCCGCGTG:配列番号:5)、ドイツ国ハンブルグのエッペンドルフAG(Eppendorf AG(Hamburg,Germany))からの7.24μlの分子生物学等級水#0032006.302)、および2μlのサンプル溶解産物。全反応を三連で実施した。Rtなしで反応を実施し、溶解産物中に存在する検出可能量のDNAを判定した。2つの最高濃度溶解産物のみをRtなしで使用した。
【0124】
反応を次のようなサーマルサイクルにかけた。50℃で10分、95℃で10分、続いて95℃で15秒+60℃で1分を40サイクル。サーモサイクリングに先だって、その近接性のため3’TAMRA染料によって、タクマン(TaqMan)(登録商標)プローブの5’末端上の6−FAMリポーター染料蛍光を効果的にクエンチする。サーモサイクリング中に、PCRプライマー結合部位の1つの上流の増幅生成物の1本の鎖に、プロ
ーブが結合した。アンプリタク・ゴールド(AmpliTaq Gold)(登録商標)によってPCRプライマーが延長するに連れて、それはその5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を通じてプローブを切断する。プローブの開裂はリポーターとクエンチャー染料を分離し、リポーター染料蛍光の増大をもたらす。リポーター染料蛍光をSDS装置によって捕集する。7900 SDS装置は、リポーター蛍光のほとんどがクエンチされる最初の少数のサーマルサイクルからの背景蛍光に対して、蛍光の増大を比較する。次にソフトウェアが全サンプルについて、背景蛍光を顕著に越える点でCT値を判定する。
【0125】
表13に示されるCT値は、精製標的RNAおよびDNA検出で予測されるパターンに従う。1:10希釈シリーズにわたり標的RNA量としてCTに用量反応または増大があり、またはDNAが減少した。この結果は、サンプルが希釈されると、リポーター蛍光が装置によって判定される閾値に達するのにより長い時間がかかることを意味する。したがって溶解リステリア・イノキュア(Listeria innocua)細菌細胞サンプルの直接アッセイは、精製された核酸サンプルから予期される検出と比較できるパターンで、RT−PCRによる標的RNAの検出を示した。
【0126】
アンビオン(Ambion)溶解データに見られるより低いCT値は、BAX溶解法と比較してこの溶解法が、増幅のためのRNAテンプレートを提供するのにより効率的であったことを示唆する。
【0127】
【表14】

【0128】
(+)Rt反応で観察される(−)Rt反応と比べてより低いCT値は、これらの反応において高いコピーRNA数が検出されたことを示唆した。増幅生成物の倍増はPCR反応の各サイクル中に起きるので、(+)と(−)Rt反応間のCT値の差またはΔCTは、式:2^−ΔCTによって相関できる(ΔCtはアプライド・バイオシステムズ(Ap
plied Biosystems)ユーザー広報#2、1997年12月による)。この式を使用して、(−)Rt反応におけるテンプレートDNAコピー数に対する、(+)Rt反応におけるテンプレートRNAコピー数の差を計算した。値を表14に示す。これらの計算値は、溶解細胞サンプル中のテンプレートDNAよりもおよそ100〜200倍より多くのテンプレートRNAコピーがあったことを示唆した。
【0129】
【表15】

【0130】
この実施例は、RNAまたはDNA精製を要求しないここで述べられる溶解手順が、RT−PCRによって検出可能な標的RNAレベルを発生させることを示す。
【0131】
実施例8
リアルタイムRT−PCRを使用したリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)のホールセル溶解産物中の16S rRNA標的の直接検出
菌株および培地
ニューヨーク州オグデンズバーグのオキソイド(Oxoid,Ltd.(Ogdensburg,NY))からの0.3%グルコース添加デミ−フレーザー培地プラス(カタログ番号CM0153)中でリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)株DD1288細胞を37℃で生育させた。DD1288はデラウェア州ウィルミントンのデュポン・クアリコン(DuPont Qualicon(Wilmington,DE))から得られた株であり、調理済み七面鳥から単離され、クック(Cook),L.V.著(「USDA/FSIS微生物学試験室ガイドブック(Microbiology Laboratory Guidebook)」)2002年、第3版、3次改訂、USDA/FSIS;http://www.fsis.usda.gov/Frame/FrameRedirect.asp?main=op/ophs
/ophshome.htm)で述べられるように、異なる寒天上でのその生育パターン、および生化学試験におけるその特性によってL.モノサイトゲネス(L.monocytogenes)株として同定された。この実施例で述べられるように、その他のL.モノサイトゲネス(L.monocytogenes)株を使用して、ホールセル溶解産物中の16S rRNA標的の直接検出を実証してもよい。カリフォルニア州ホリスターのテクノヴァ(Teknova,Inc.(Hollister,CA))からのBHI寒天プレート(カタログ番号B1010)上で、実施例1で述べられるようなプレートカウントを実施した。
【0132】
アンビオン(Ambion)溶解法によるホールセル溶解産物の調製
実施例7でアンビオン(Ambion)溶解法について述べたように、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)細胞を生育させ、収穫し、希釈して、プレートカウントを行った。およそ10細胞/ml〜10細胞/mlを含有するアンビオン(Ambion)溶菌性緩衝液中の各希釈物から、90μlの希釈細胞を0.5ml薄肉PCRチューブに移した。カリフォルニア州フォスターシティのPEアプライド・バイオシステムズ(PE Applied Biosystems(Foster City,CA))からのジーンアンプ(GeneAmp)PCRシステム9700内において75℃で10分間、細胞をインキュベートした。
【0133】
RT−PCR
反応あたり2μlのリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocy
togenes)細胞溶解産物サンプルを使用して、実施例7で述べられるようにしてリアルタイム逆転写−PCR(RT−PCR)を実施した。全反応を三連で実施した。
【0134】
実施例7と同様に反応をサーマルサイクルにかけ、CT値を表15に示す。実施例7と同様に、CT値は精製標的RNAおよびDNA検出で予測されるパターンに従ったので、溶解細胞の直接アッセイが効果的だったことが実証された。精製なしでは、16S rRNAおよび16S rDNAは、RT−PCRおよびPCRアッセイにおいてテンプレートとして機能するのに利用できた。データは、溶解産物希釈レベルが増大するに連れてCT値の特徴的な増大を示し、反応中により低いcfuを与えた。逆転写酵素を含む反応は、表16にある計算された2^−ΔCT値によって示されるように、PCRのテンプレートとしての役割を果たす16S配列の標的DNAコピーを顕著により多く含有した。
【0135】
【表16】

【0136】
【表17】

【0137】
実施例9
リアルタイムRT−PCRを使用した大腸菌(エシェリキア(Escherichia)
coli)ホールセル溶解産物中の16S rRNA標的の直接検出
菌株および培地
大腸菌(E.coli)ATCC25922はバージニア州マナッサスの米国微生物系統保存機関から得た。細胞をカリフォルニア州ホリスターのテクノヴァ(Teknova,Inc.(Hollister,CA))からのBHI培地(カタログ番号B9994)上で37℃で生育させた。カリフォルニア州ホリスターのテクノヴァ(Teknova,Inc.(Hollister,CA))からのBHI寒天プレート(カタログ番号B1010)上で、プレートカウントを実施した。
【0138】
水溶解法によるホールセル溶解産物の調製
10mlのBHIに大腸菌(E.coli)を接種し、37℃で一晩インキュベートした。推定開始濃度3×10細胞/mlに基づいて、BHI培地中で最終濃度およそ10細胞/mlに連続1:10希釈を作成した。
【0139】
およそ10および10細胞/mlの希釈物から100μlをBHI寒天プレート上に播種した。プレートを37℃で18時間インキュベートし、コロニー数を計数して希釈物あたりのcfuを判定した。
【0140】
0.5ml薄肉PCRチューブ内のカリフォルニア州フォスターシティのアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems(Foster City,CA))からの5μl 20U/μl RNアーゼ阻害物質(カタログ番号N808−0119)添加95μl蒸留脱イオン水に、およそ10細胞/ml〜10細胞/mlを含有する各希釈物から5μlの希釈細胞を移した。カリフォルニア州フォスターシティのPEアプライド・バイオシステムズ(PE Applied Biosystems(Foster City,CA))からのジーンアンプ(GeneAmp)PCRシステム9700内において75℃で15分間、細胞をインキュベートした。フォスターシティ(Foster City,CA))。得られた細胞サンプル溶解産物を氷上で冷却し、次に下のRT−PCR反応で即座に使用した。
【0141】
RT−PCR
米国カリフォルニア州フォスターシティのアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems(Foster City,CA,USA)からの配列検出システム(SDS)装置(モデル7900)上でリアルタイム逆転写−PCR(RT−PCR)を実施した。逆転写酵素ありまたはなし(+または−Rt)の双方で、次のように20μl反応をセットアップした。米国カリフォルニア州フォスターシティのアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems(Foster City,CA,USA))からの10μlのタクマン(TaqMan)ユニバーサルPCR 2×マスター・ミックス(#4324018)、米国カリフォルニア州フォスターシティのアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems(Foster City,CA,USA))からの0.4μlのRNアーゼ阻害物質(#N808−0119、20U/μl)、米国カリフォルニア州フォスターシティのアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems(Foster City,CA,USA))からの0.01μlのマルチスクライブ(Multiscribe)逆転写酵素(#4311235)、米国テキサス州ウッドランズのシグマ・ジェノシス(Sigma Genosys、Woodlands、Texas,USA))からの0.1μlの16S−2455F 100μMプライマー(5’GCTGATACCGCCCAAGAGTTC:配列番号:6)、米国テキサス州ウッドランズのシグマ・ジェノシス(Sigma Genosys、Woodlands、Texas,USA))からの0.2μlの16S−2523R 100μMプライマー(5’CAGGATGTGATGAGCCGACAT:配列番号:7)、米国カリフォルニア州フォスターシティのアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems(Foster City,CA,USA))からの0.05μlの16S−2479T 100μM タクマン(TaqMan) TAMRAプローブ(#450025、6FAM−TCGACGGCGGTGTTTGGCAC:配列番号:8)、ドイツ国ハンブルグのエッペンドルフAG(Eppendorf AG(Hamburg,Germany))からの7.24μlの分子生物学等級水#0032006.302)、および2μlのサンプル溶解産物。全反応を三連で実施した。
【0142】
次の条件で反応をサーマルサイクラー内で実施した。50℃で10分、95℃で10分、続いて95℃で15秒+60℃で1分を40サイクル。各サイクルからリアルタイム蛍光データを収集した。実施例7で述べられるようにして、タクマン(TaqMan)5’−3’エキソヌクレアーゼアッセイを実施した。
【0143】
表17に示されるCT値は、精製標的RNAおよびDNA検出で予測されるパターンに従う。1:10希釈シリーズにわたり標的RNA量としてCTに用量反応または増大があり、またはDNAが減少した。この結果は、サンプルが希釈されると、リポーター蛍光が、装置によって判定される閾値に達するのにより長い時間がかかることを意味する。したがって溶解大腸菌(E.coli)細菌細胞サンプルの直接アッセイは、精製された核酸サンプルから予期される検出と比較できるパターンで、RT−PCRによる標的RNAの検出を示した。
【0144】
各溶解産物濃度で(+)RTデータに、(−)RTデータと比べてより低いCT値が観察された。このより低いCT値は、(+)RT反応中により大量の標的が存在することの現れである。これは溶解産物中に、16S rDNAと比べて16Sr RNAのより多くのコピーが存在するという事実と良好に相関し、これらの反応中でRNAが検出されたことの確証である。この結果は、大腸菌(E.coli)中でRNA標的がいかなる精製ステップもなしに、細胞溶解産物から直接検出できることを示唆する。
【0145】
【表18】

【0146】
実施例10
リアルタイムRT−PCRを使用したメチロモナス(Methylomonas)種16Aのホールセル溶解産物中の16S rRNA標的の直接検出
菌株および培地
メチロモナス(Methylomonas)種16a ATCC PTA−240は、バージニア州マナッサスの米国微生物系統保存機関から得た。液体アンモニウム「BTZ」増殖培地中でメタンを炭素源として、細胞を30℃で生育させた(表18および19参照)。イリノイ州ウィートンのウィートン・サイエンティフィック(Wheaton Scientific(Wheaton,IL))からの共栓付きウィートン(Wheaton)ボトル内で、少なくとも8:1の気体/液体比を使用して(すなわち総容積80mLのウィートン(Wheaton)ボトル内に10mLの液体アンモニウム「BTZ」増殖培地)、血清中でメチロモナス(Methylomonas)種16aを生育させた。培養のための標準気相は、空気中に25%メタンを含有した。
【0147】
【表19】

【0148】
【表20】

【0149】
水溶解法によるホールセル溶解産物の調製
10mlのBTZ培地にメチロモナス(Methylomonas)種16Aを接種し、30℃で一晩インキュベートした。推定開始濃度3×10細胞/mlに基づいて、最
終濃度およそ10細胞/mlにBTZ培地中で一連の1:10希釈を作成した。
【0150】
0.5ml薄肉PCRチューブ内のカリフォルニア州フォスターシティのアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems(Foster City,CA))からの5μl 20U/μl RNアーゼ阻害物質(カタログ番号N808−0119)添加95μl蒸留脱イオン水に、およそ10細胞/ml〜10細胞/mlを含有する各希釈物から5μlの希釈細胞を移した。カリフォルニア州フォスターシティのPEアプライド・バイオシステムズ(PE Applied Biosystems(Foster City,CA))からのジーンアンプ(GeneAmp)PCRシステム9700内において75℃で15分間、細胞をインキュベートした。フォスターシティ(Foster City,CA))。得られた細胞サンプル溶解産物を氷上で冷却し、次に下のRT−PCR反応で即座に使用した。
【0151】
RT−PCR
米国カリフォルニア州フォスターシティのアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems(Foster City,CA,USA)からの配列検出システム(SDS)装置(モデル7900)上でリアルタイム逆転写−PCR(RT−PCR)を実施した。逆転写酵素ありまたはなし(+または−RT)の双方で、次のように20μl反応をセットアップした。米国カリフォルニア州フォスターシティのアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems(Foster City,CA,USA))からの10μlのタクマン(TaqMan)ユニバーサルPCR 2×マスター・ミックス(#4324018)、米国カリフォルニア州フォスターシティのアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems(Foster City,CA,USA))からの0.4μlのRNアーゼ阻害物質(#N808−0119、20U/μl)、米国カリフォルニア州フォスターシティのアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems(Foster City,CA,USA))からの0.01μlのマルチスクライブ(Multiscribe)逆転写酵素(#4311235)、米国テキサス州ウッドランズのシグマ・ジェノシス(Sigma Genosys、Woodlands、Texas,USA))からの0.1μlの16S−1108F 100μMプライマー(5’TTGCCAGCGCGTCATG:配列番号:9)、米国テキサス州ウッドランズのシグマ・ジェノシス(Sigma Genosys、Woodlands、Texas,USA))からの0.2μlの16S−1169R 100μMプライマー(5’CCACCTTCCTCCGGTTTATCA:配列番号:10)、米国カリフォルニア州フォスターシティのアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems(Foster City,CA,USA))からの0.05μlの16S−1125T 100μM タクマン(TaqMan) TAMRAプローブ(#450025、6FAM−CGGGAACTCTAGGGAGACTGCCG:配列番号:11)、ドイツ国ハンブルグのエッペンドルフAG(Eppendorf AG(Hamburg,Germany))からの7.24μlの分子生物学等級水#0032006.302)、および2μlのサンプル溶解産物。全反応を三連で実施した。
【0152】
次の条件で反応をサーマルサイクラー内で実施した。50℃で10分、95℃で10分、続いて95℃で15秒+60℃で1分を40サイクル。各サイクルからリアルタイム蛍光データを収集した。実施例7で述べられるようにして、タクマン(TaqMan)5’−3’エキソヌクレアーゼアッセイを実施した。
【0153】
表20に示されるCT値は、精製標的RNAおよびDNA検出で予測されるパターンに従う。1:10希釈シリーズにわたり標的RNA量としてCTに用量反応または増大があり、またはDNAが減少した。この結果は、サンプルが希釈されると、リポーター蛍光が装置によって判定される閾値に達するのにより長い時間がかかることを意味する。したがって溶解メチロモナス(Methylomonas)種16a細菌細胞サンプルの直接アッセイは、精製された核酸サンプルから予期される検出と比較できるパターンで、RT−PCRによる標的RNAの検出を示した。
【0154】
各溶解産物濃度で(+)RTデータに、(−)RTデータと比べてより低いCT値が観察された。このより低いCT値は、RNAテンプレートからのDNAの生成のために、(+)RT反応中により大量の標的が存在することの現れである。より低いCTは溶解産物中に、16S rDNAと比べて16S rRNAのより多くのコピーが存在するという事実と良好に相関し、これらの反応中でRNAが検出されたことの確証である。この結果は、別のグラム陰性細菌メチロモナス(Methylomonas)種16a株中でRNA標的がいかなる精製ステップもなしに、細胞溶解産物から直接検出できることを示唆する。
【0155】
【表21】

【0156】
実施例11
リアルタイムRT−PCRを使用したその他の細菌および牛挽肉存在下におけるリステリア・イノキュア(Listeria innocua)のホールセル溶解産物中の16S rRNA標的の直接検出
この実施例は、食品微小細菌叢およびマトリックス物質を含む、食品加工工場において遭遇する接触面をシミュレートする物質表面のリステリア・イノキュア(Listeria innocua)CLIP11262(ATCCBAA−680)の存在の検出を実証する。
【0157】
カレントテクノロジーズ(Current Technologies Inc(Crawfords,IN))からのハイプ−ワイプ(Hype−Wipe)ブリーチ入り消毒タオル(カタログ番号9103)で拭き、続いて滅菌水で洗浄して、120グリット316ステンレス鋼表面を滅菌した。表面にそれぞれ8個1インチ×1インチ正方形を含む2つの格子の印を付けた(レイアウトについては表21および表22参照)。
【0158】
【表22】

【0159】
【表23】

【0160】
リステリア・イノキュア(Listeria innocua)の単一コロニーをニュージャージー州フランクリン・レイクスのベクトン・ディキンソン(Becton Dickinson(Franklin Lakes,NJ))からの8ml BHIチューブ(カタログ番号220837)内に接種し、定常期に達するまで37℃で約17時間インキュベートした。次に培養物をBHI中で連続希釈して最終濃度7.3×10細胞/mlを得た。この希釈懸濁液50μlを塗布して、表面において1”×1”正方形内に3.65×10細胞の細胞最終濃度を得た。細胞懸濁液をピペットで塗布し、ピペット先端を使用して、C、D、G、およびHと標識された調製ステンレス鋼表面格子の各1インチ×1インチ正方形上に穏やかに播種した。表面を室温で一晩(18時間)乾燥させた。各格子中にA、B、EおよびFと標識された対照正方形には、L.イノキュラ(L.innocua)を塗布しなかった。
【0161】
ニューカロライナ州ウィルミントンのIKAワーク(IKA−Werke(Wilmington,NC))からのウルトラ・ツラックス(Ultra Turrax)T−25ベーシック・ホモジナイザーで、オレゴン州ウィルソンビルのPMLマイクロバイオロジカルズ(PML Microbiologicals(Wilsonville,Oregon))からの90mlのリン酸緩衝液(カタログ番号B8098)中で、4℃で保存されたおよそ10gの市販の10%脂肪赤味牛挽肉を均質化した。このホモジネートの100μlをピペットで表21(食品処理表面)の各正方形に塗布した。サンプル収集に先だって、食品ホモジェネートを1時間乾燥させた。実施例1で述べられるような連続希釈およびトリプチケースソイ寒天(TSA)上への播種によって、食品ホモジェネート調製物の総プレートカウントを測定した。TSAプレートを37℃で48時間インキュベートした。牛挽肉ホモジェネートからの微生物のカウントは、微生物が1×10細胞/gのレベルで牛挽肉中に存在したことを示唆した。したがって各正方形に塗布された100μlのサンプルは、およそ1×10個の微生物を含有した。
【0162】
食品ホモジェネートを1時間乾燥させた後、滅菌済みパッケージで納入されるメイン州ギルフォードのピューリタン(Puritan(Guilford,Maine))からの木製スティックに固着された綿棒(カタログ番号REF 25−806 1WC)を使用して、表面の拭き取りによってサンプルを収集した。綿棒を中和ブロス(D/E中和ブロス)で、あらかじめ湿らせた。1”×1”セクション(約5cm)の汚染面を精力的に拭き取って、サンプルを収集した(食品サンプルおよび対照の双方)。
【0163】
USDA−FSIS参照法およびRT−PCRの双方によって、綿棒を分析した。FSIS法では、各綿棒を10ml+/−0.5mlのUVMブロスと共にチューブに入れた。綿棒をチューブ内に入れたまま(キャップをするのに必要なら綿棒の末端を取り除く)ボルテックスして混合した。チューブを30℃+/−2℃で22+/−2時間インキュベートした。インキュベーションに続いて、100μl+/−2μlのUVM培養物を取り出して、10ml+/−0.5mlのフレーザーブロス(FB)に入れた。FBを37℃+/−2℃で26+/−2時間インキュベートした。インキュベーションに続いて、リステリア(Listeria)の存在を示す黒ずみについてFBを調べた。L.イノキュラ(L.innocua)処理格子正方形から収集した全ての綿棒サンプルは黒ずみを示し、表23のFSIS試験結果に「はい」と示され、L.イノキュラ(L.innocua)で処理しなかった全ての正方形は、黒ずみを示さず、陰性結果であった。
【0164】
【表24】

【0165】
RT−PCRアッセイでは、各綿棒を10ml+/−0.5mlのパルカム(Palcam)プラス・ブロスに入れた。綿棒をチューブ内に入れたまま(キャップをするのに必要なら綿棒の末端を取り除く)ボルテックスして混合した。チューブを37℃+/−2℃で48+/−2時間インキュベートした。24時間および48時間目に、1mlのアリコートを取り出して、RT−PCRによる試験のために培養物をサンプル採取した。75度で10分の熱処理によってアリコートを溶解した。実施例2で述べられるようにRT−PCRを使用して溶解産物を試験した。
【0166】
24および48時間RT−PCR結果をそれぞれ表24および25に示す。リステリア(Listeria)処理正方形から収集された全サンプルは、RT−PCRアッセイにおいて双方の時点で、そしてUSDA−FSIS参照法(表23)で陽性であった。リステリア(Listeria)処理のない正方形から収集された全サンプルは、RT−PCR、およびUSDA−FSIS法(表23)で陰性であった。したがって混入細菌を含む食品マトリックスの存在は、熱溶解RT−PCRアッセイの正確さに影響しなかった。
【0167】
【表25】

【0168】
【表26】

【0169】
実施例12
逆転写のみを使用した細菌のホールセル溶解産物中の16S rRNA標的の直接検出
PCRステップを施さずにRT反応生成物を検出した。
【0170】
菌株および培地
実施例2で述べられるL.イノキュラ(L.innocua)をこの目的で使用する。細胞をカリフォルニア州ホリスターのテクノヴァ(Teknova,Inc.(Hollister,CA))からのBHI培地(カタログ番号B9994)中で37℃で生育させる。カリフォルニア州ホリスターのテクノヴァ(Teknova,Inc.(Hollister,CA))からのBHI寒天プレート(カタログ番号B1010)上で、プレートカウントを実施する。
【0171】
水溶解法によるホールセル溶解産物の調製
10mlのBHIにL.イノキュラ(L.innocua)を接種して、37℃で一晩インキュベートする。推定開始濃度3×10細胞/mlに基づいて、BHI培地中で最終濃度およそ10細胞/mlに連続1:10希釈を作成する。
【0172】
およそ10および10細胞/mlの希釈物から、100μlをBHI寒天プレート上に播種する。プレートを37℃で18時間インキュベートし、コロニー数を計数して各希釈物あたりのcfuを判定する。
【0173】
0.5ml薄肉PCRチューブ内のカリフォルニア州フォスターシティのアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems(Foster City,CA))からの5μl 20U/μl RNアーゼ阻害物質(カタログ番号N808−0119)添加95μl蒸留脱イオン水に、およそ10細胞/ml〜10細胞/mlを含有する各希釈物から5μlの希釈細胞を移す。カリフォルニア州フォスターシティのPEアプライド・バイオシステムズ(PE Applied Biosystems(Foster City,CA))からのジーンアンプ(GeneAmp)PCRシステム9700内において75℃で15分間、細胞をインキュベートする。フォスターシティ(Foster City,CA))。得られた細胞サンプル溶解産物を氷上で冷却し、次に下の逆転写反応で即座に使用する。
【0174】
RT反応
逆転写を次の条件下で実施する。
1.RTのための特異的プライマー(1〜6μg)を細胞溶解産物に添加する(5〜20μl)。リステリア・イノキュア(Listeria innocua)16S rRNAの検出のためのプライマーとしてLis−Rプライマー(配列番号:2)を使用する。RNアーゼおよびDNA分解酵素を含まない水で容積を25μlに調節する。
2.14μlの標識混合物を添加する。この混合物は、8μlの5×酵素緩衝液、4μlのDTT(0.1M)、および2μlの20×染料混合物を含有する。染料混合物は、それぞれ2mMのdATP、dGTP、およびdTTP、ImMのdCTP、そして1mMのCy3−dCTPまたはCy5−dCTPを含有する。
3.混合物をアニーリングのために室温で10分間インキュベートする。
4.1または1.4μl(200〜300単位)の逆転写酵素を添加して、使用酵素に適した温度で反応をインキュベートする。例えばスーパースクリプト(Superscript)II酵素では、インキュベーション温度は42℃である。
5.DNA精製キットでcDNA精製を実施する。この目的のために、例えばキアジェン(Qiagen)PCRキットを使用してもよい。代案としては蛍光標識プライマーをRT反応で使用して、未標識のdCTPのみを添加する。
【0175】
cDNA生成物の検出
いくつかの方法の一つによって、蛍光染料で標識されたcDNART生成物を検出する。それは分光光度計で測定できる。例えばCy3標識DNA分子は、吸光係数150,000M−1で波長550nmで日常的に測定される一方、Cy5標識DNAは吸光係数250,000M−1で650nmで測定される。標識DNAを直接検出するより感度の良い方法は、ナイロン膜またはガラススライドなどのマトリックスに固定化された標的DNA配列分子に生成物をハイブリダイズすることである。次にハイブリダイゼーション後のシグナルは、レーザースキャナーで適切にフィルターリングしてスキャンし、使用した特定の染料を検出できる。この方法は、当該技術分野、特にDNAマイクロアレイ技術でよく知られている。
【0176】
cDNAを検出する別の感度の良い方法は、多数のシグナル発生分子がある粒子に結合したプライマーを使用することである。代案としてはRTから発生するcDNAをPCRでなく、生体外(in vitro)転写のカップリングによって増幅できる。例えばRT反応で使用されるプライマーに、T7プロモーター領域を組み込むことができる。次にT7生体外(in vitro)転写キットを使用して多量のRNAを発生させ、検出感度を増大できる。T7生体外(in vitro)転写キットは、テキサス州オースティン2130ウッドワードのアンビオン(Ambion(2130 Woodward,Austin,TX))またはその他の販売元から購入できる。述べられた方法によって、リステリア・イノキュア(Listeria innocua)細胞のRT反応のcDNA生成物が検出される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)診断用標的RNAを含んでなる少なくとも1つの細菌細胞の少なくとも一部を含んでなるサンプルを提供するステップと、
b)サンプルとRT−PCR組成物とを接触させてRT−PCR反応混合物を形成するステップと、
c)RT−PCR反応混合物をサーモサイクリングすることによって、診断用標的DNA生成物が増幅されるステップと、
d)(c)の増幅された診断用標的DNA生成物を検出するステップと
を含んでなるが、ただしいずれのステップもRNA精製を含まない、細菌から診断用標的RNAを直接検出するための方法。
【請求項2】
a)診断用標的RNAを含んでなる少なくとも1つの細菌細胞の少なくとも一部を含んでなるサンプルを提供するステップと、
b)診断用DNA生成物がRNAから転写される条件下で、サンプルとRT反応組成物とを接触させてRT反応混合物を形成するステップと、
c)診断用標的DNA生成物を検出するステップと
を含んでなるが、ただしいずれのステップもRNA精製を含まない、細菌から診断用標的RNAを直接検出するための方法。
【請求項3】
ステップ(b)の後に、
診断用DNA生成物とPCR組成物とを接触させてPCR反応混合物をもたらすステップと、
得られたPCR反応混合物をサーモサイクリングによって、診断用標的DNA生成物が増幅されるステップをさらに含んでなる請求項2に記載の方法。
【請求項4】
検出が、標識を診断用標的DNA生成物に組み込むか、または付着させることを含んでなる請求項2に記載の方法。
【請求項5】
標識が、蛍光部分、化学発光部分、粒子、酵素、放射性タグ、および発光部分よりなる群から選択される請求項3に記載の方法。
【請求項6】
サンプルと溶菌剤とを接触させるステップをさらに含んでなる請求項1、2または3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
溶菌剤が溶菌性緩衝液および高温よりなる群から選択される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
溶菌剤が、化学薬品、酵素、および物理的剪断よりなる群から選択される請求項6に記載の方法。
【請求項9】
酵素が、リゾチーム、グルコラーゼ、ザイモロース、リチカーゼ、プロテイナーゼK、プロテイナーゼE、およびウィルス性エンドリシンよりなる群から選択される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ウィルス性エンドリシンが、バクテリオファージまたはプロファージからのエンドリシン、およびこれらの組合わせよりなる群から選択される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ウィルス性エンドリシンが、リステリア(Listeria)バクテリオファージA118およびPLY118からのエンドリシン、バクテリオファージPM2からのエンドリシン、枯草菌(B.subtilis)バクテリオファージPBSXからのエンドリシン、乳酸桿菌(Lactobacillus)プロファージLj928、Lj965、およびバクテリオファージピアダ(Phiadh)からのエンドリシン、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)バクテリオファージCp−1からのエンドリシン(Cpl−1)、ストレプトコッカス・アガラクティー(Streptococcus agalactiae)バクテリオファージB30からの二官能性ペプチドグリカンリシン、スタフィロコッカス・ワーネリー(Staphylococcus warneri)MファージvarphiWMYの二成分細胞溶解遺伝子holWMYおよびlysWMY、およびこれらの組合わせよりなる群から選択される請求項9に記載の方法。
【請求項12】
物理的剪断がジルコニア−シリカビーズまたはフレンチプレスによって生じる請求項8に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つのRNアーゼ阻害物質をサンプルに添加するステップをさらに含んでなる請求項1、2または3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つのRNアーゼ阻害物質が、
(i)胎盤リコンビナント50kDタンパク質、
(ii)ブタリコンビナントタンパク質胎盤RNアーゼ、
(iii)ブタRNアーゼ、
(iv)抗RNアーゼ抗体、
(v)イソチオシアン酸グアニジニウム、
(vi)ピロ炭酸ジエチル、および
(vii)ヒト胎盤リボヌクレアーゼ阻害物質
の1つもしくはそれ以上を含んでなる請求項13に記載の方法。
【請求項15】
サンプルが約50℃〜約100℃未満の範囲の温度に加熱される請求項1、2または3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
診断用標的RNAが、mRNA、rRNA、tRNA、および小型RNA種よりなる群から選択される請求項1、2または3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
rRNAが、5S RNA、16S RNA、および23 SRNAよりなる群から選択される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つの細菌細胞が、リステリア(Listeria)、エシェリキア(Escherichia)、サルモネラ(Salmonella)、カンピロバクター(Campylobacter)、クロストリジウム(Clostridium)、ヘリコバクター(Helicobacter)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、ブドウ球菌(Staphylococcus)、カンプロバクター(Camplobacter)、腸球菌(Enterococcus)、バシラス(Bacillus)、ナイセリア(Neisseria)、赤痢菌(Shigella)、連鎖球菌(Streptococcus)、ビブリオ(Vibrio)、エルシニア(Yersinia)、ボルデテラ(Bordetella)、ボレリア(Borrelia)、およびシュードモナス(Pseudomonas)よりなる群から選択される属のメンバーである請求項1、2または3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
サンプルが、食品、肉、生鮮食品、乳製品、果物、牛挽肉およびこれらの組合わせよりなる群から選択される請求項1、2、3または4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
サンプルが、食品加工状況から採取されるサンプルおよび医学的状況から採取されるサンプルよりなる群から選択される請求項1、2、3または4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法を記述する説明書、およびRT−PCR組成物を含んでなり、
RT−PCR組成物が、診断用標的RNAと相補的な少なくとも1つのプライマー、熱活性化された熱安定性ポリメラーゼ、逆転写酵素、dNTP、適切な緩衝液、RNアーゼ阻害物質の要素の少なくとも1つを含んでなる細菌から診断用標的RNAを直接検出するためのキット。
【請求項22】
請求項2、3または4のいずれか一項に記載の方法を記述する説明書、およびRT反応組成物を含んでなり、
RT組成物が、診断用標的RNAと相補的な少なくとも1つの核酸プライマー、逆転写酵素、dNTP、適切な緩衝液、検出染料、検出プローブ、RNアーゼ阻害物質の要素の少なくとも1つを含んでなる細菌から診断用標的RNAを直接検出するためのキット。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−34705(P2012−34705A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247189(P2011−247189)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【分割の表示】特願2007−515420(P2007−515420)の分割
【原出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】