説明

診断的アッセイ

1つ以上の連鎖球菌抗原を使用して、生体サンプルにおける抗連鎖球菌抗体を検出するためのアッセイを本明細書に記載する。アッセイには、抗原のさまざまな組合せを使用して差し支えない。例えば、Ply、PhtD、PhtE、LytBおよびPcpAのうち1つ以上が利用されうる。追加の連鎖球菌抗原も使用して構わない。本アッセイはまた、連鎖球菌の核酸を検出するアッセイと組み合わせて使用してもよい。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2008年2月1日出願の米国仮特許出願第61/063,376号の優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
細菌感染を診断するための試薬および方法について記載する。
【背景技術】
【0003】
市中肺炎(CAP)は最も一般的な小児感染の1つであり、先進工業国における疾病率の主な原因であり、5歳未満の子供における世界的な死亡率の一番の原因である(非特許文献1〜2)。CAPは、病原因子単独で、または、呼吸器系ウイルス、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、クラミジアおよび肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)を含む組合せによって発症する(非特許文献3〜5)。病因の診断は、血液培養が通常は陰性のままであり、気管支分泌物にはめったに到達できず、頻繁な鼻咽頭保菌は微生物の検出の実用性を制限することから、特に幼児においては困難である。それにもかかわらず、病原体検出のためのアッセイの数の増加に伴い、病原の特定の可能性は高まり(非特許文献6〜7)、現代の診断的ツールを用いる最近の研究は、一次医療および病院において、CAPの一番の原因として、たびたび肺炎連鎖球菌を同定している(非特許文献8〜9)。
【0004】
肺炎球菌の感染に対する防御には、本質的に、オプソニン化貪食作用を促進する抗体が介在する。このような抗体は、肺炎球菌の多糖(PPS)または肺炎球菌表面タンパク質(PSP)に対するものでありうる。肺炎球菌の予防接種をしない場合、これらの抗体は、肺炎球菌の曝露、コロニー形成、および/または感染によって誘発される。したがって、肺炎球菌感染症に対する乳児および幼児の弱さの根底には、肺炎球菌の抗原に対する防御抗体の欠如がある。肺炎球菌感染の血清学的診断には、優れた特異性および陽性適中率を有する、特定のPSPが用いられてきたが、これらの研究は、子どもにおける感受性の低さによって頻繁に制限されてきた。この原因は主に、血清分析に干渉する、コロニーを形成する有病数の高さにあった(非特許文献10)。
【0005】
肺炎球菌性肺炎の病因の診断は、特に幼児においては、未だに課題である。血液培養またはDNAの増幅に基づく微生物の診断は高い特異性を有するが、ほとんどが菌血症ではない子どもにおいては、感受性が低い。対照的に、鼻咽頭のコロニー形成率の高さは、鼻咽頭または尿サンプル中の細菌および/またはそれらの断片を検出するアッセイの感受性を制限する(非特許文献11)。肺炎球菌性肺炎の血清学的診断のロバストな方法論の探求は、多くの困難に阻まれている(非特許文献12〜13)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Mulholland K, Lancet 2007;370 (9583):285-9
【非特許文献2】Pio A, BWHO; 2003; 81(4):298-300
【非特許文献3】Yin CC Respirology, 2003;8 (1) :83-9
【非特許文献4】Chiang WC Respirology 2007;12 (2) :254-61
【非特許文献5】Juven T PIDJ 2000;19 (4):293-8
【非特許文献6】Wang Pediatr Pulmonol 2008 feb 43 (2) 150-9
【非特許文献7】Nakayama E J Infect Chemother 2007, 13 (5):305-13
【非特許文献8】Juven T PIDJ 2000;19 (4) :293-8
【非特許文献9】Michelow IC;Pediatrics 2004;113 (4) :701-7
【非特許文献10】Scott, et al. Clin. Diagn. Lab. Immunol. 2005
【非特許文献11】Dowell, S. F., Clin. Infect. Dis. 2000 32:824-825
【非特許文献12】Kanclerski, J Clin Microbiol 1988
【非特許文献13】Korppi M, Eur J Clin Microbiol Infect Dis 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の実験室的手法を通じた市中肺炎(CAP)の診断は、特に幼児においては困難である。本技術分野では、特に幼児において、正確かつ迅速なCAPの診断に有用な試薬および方法が必要とされている。この必要性は、無用の抗生物質投与を防ぐための高い感受性および陰性適中率を伴った迅速な結果を提供するアッセイを必要とする個別の診断、ならびに、高い特異性および最適な症例定義のための陽性適中率、および病気の負担を正確に評価するための適正な感受性を有するアッセイが必要とされる疫学研究の両方に関連している。正確かつ迅速にCAPを診断するための試薬および方法が本明細書に記載される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つ以上の連鎖球菌抗原を使用する、生体サンプルにおける抗連鎖球菌抗体を検出するためのアッセイが本明細書に記載される。さまざまな抗原を単独で、または抗原を組み合わせて、これらのアッセイに使用して差し支えない。例えば、Plyおよび、PhtD、PhtE、LytBおよびPcpAのうち1つ以上;PhtDおよび、Ply、PhtE、LytBおよびPcpAのうち1つ以上;PhtEおよび、Ply、PhtD、LytBおよびPcpAのうち1つ以上;LytBおよび、Ply、PhtD、PhtE、およびPcpAのうち1つ以上;および/または、PcpAおよび、Ply、PhtD、PhtE、およびLytBのうち1つ以上に対して免疫反応性の抗体を検出するためのアッセイを行ってもよい。本明細書に記載されるアッセイはまた、他の連鎖球菌抗原を互いに組み合わせて、および/または、Ply、PhtD、PhtE、LytBおよび/またはPcpAのうち1つ以上と併せて使用して差し支えない。このようにして、アッセイの感受性が増大し、陰性適中率が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】入院時における抗PSP血清IgG抗体。
【図2】肺炎球菌または非肺炎球菌のCAPを有する子供における抗PhtD IgG抗体の分布。
【図3】肺炎球菌または非肺炎球菌のCAPを有する子供における抗PhtE IgG抗体の分布。
【図4】肺炎球菌または非肺炎球菌のCAPを有する子供における抗Ply IgG抗体の分布。
【図5】肺炎球菌または非肺炎球菌のCAPを有する子供における抗PcpA IgG抗体の分布。
【発明を実施するための形態】
【0010】
市中肺炎(CAP)を正確かつ迅速に診断するための試薬および方法が本明細書に記載される。本明細書に記載されるアッセイは、1種類または幾つかの免疫原性の肺炎球菌の抗原の従来の用途に起因して、子どもにおける肺炎球菌の表面タンパク質(PSP)系のイムノアッセイの感受性の低さを克服する。患者の血清または他の生体液における細菌抗原の組合せに対する抗体を検出することにより、CAP診断を行って差し支えない。本明細書に示すように、CAPで入院している幼児における過去の曝露および急性の肺炎球菌感染によって誘発される体液性免疫のパターンを評価するための免疫学的試験として、複数のPSPを用いた。1つの実施の形態では、抗原は、肺炎球菌溶血素(Ply)、PhtD、PhtE、LytB、および/またはPcpAから選択されうる。これら5種類の肺炎球菌表面タンパク質の配列は、肺炎球菌株全体に幅広く保存されており(>95〜98%)、肺炎連鎖球菌への曝露のマーカーならびにワクチン候補として使用することができる。
【0011】
肺炎球菌溶血素(Ply)は、拍動の阻害および上皮細胞間の密着結合の崩壊を含めた、肺炎球菌の発症の複数の段階にかかわる、細胞溶解を活性化する毒素である(Hirst et al. Clinical and Experimental Immunology (2004))。幾つかの肺炎球菌溶血素が知られており、本明細書に記載されるアッセイを実施するのに適しているであろう。肺炎球菌溶血素としては、例えば、とりわけジェンバンクアクセッション番号:Q04IN8、P0C2J9、Q7ZAK5、およびABO21381が挙げられる。1つの実施の形態では、Plyは、配列番号:1に示すアミノ酸配列を有する。
【0012】
本明細書に記載されるアッセイを実施するのに適したPhtDポリペプチドとしては、例えば、とりわけ、ジェンバンクアクセッション番号:AAK06760、YP816370、およびNP358501のものが挙げられる。1つの実施の形態では、PhtDは、配列番号:2に示すアミノ酸配列を有する。
【0013】
本明細書に記載されるアッセイを実施するのに適したPhtEポリペプチドとしては、例えば、とりわけ、ジェンバンクアクセッション番号:AAK06761,YP816371およびNP358502のものが挙げられる。1つの実施の形態では、PhtEは配列番号:3に示すアミノ酸配列を有する。
【0014】
本明細書に記載されるアッセイを実施するのに適したLytBポリペプチドとしては、例えば、とりわけ、ジェンバンクアクセッション番号:CAA09078、YP816335、ABJ55408、AAK19156、NP358461、およびAAK75086のものが挙げられる。1つの実施の形態では、LytBは、配列番号:4、5または8に示されるアミノ酸配列を有する。
【0015】
PcpAは、最初に、推定の接着の役割を有するコリン結合タンパク質として、1998年にクローン化され、特性化された(Sanchez-Beato A FEMS Microbiology Letters 164 (1998) 207-214)。本明細書に記載されるアッセイを実施するのに適したPcpAポリペプチドとしては、例えば、とりわけ、ジェンバンクアクセッション番号:CAB04758、YP817353、AAK76194、NP359536、ZP01835022、およびZP01833419のものが挙げられる。1つの実施の形態では、PcpAは、配列番号:6または7に示すアミノ酸配列を有する。
【0016】
抗原は、単独で、または互いに組み合わせて、本明細書に記載されるアッセイに使用して差し支えない。単一の抗原または抗原の任意の組合せの使用は、アッセイが所望の感受性および陰性適中率を実証することを条件に、本明細書に記載されるアッセイにおける使用に好適でありうる。特定の実施の形態では、抗原の組合せの使用は、約0.80、0.85、0.90、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、または1.0の陰性適中率と同時に、およそ0.80、0.85、0.90、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、または1.0の感受性を生じうる。一部の実施の形態では、値は有意である。利用可能な統計分析ツールのいずれかを、単独で、または互いに組み合わせて使用して比較検討を行い、有意性を決定してもよく、例えば、スチューデントのt検定、カイ二乗検定、フィッシャーの正確確率検定、分散分析(ANOVA)、単変量統計解析、補正オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出するためのロジスティック回帰分析が挙げられる。交絡因子(性別など)として機能するであろう任意の統計的に有意な人口統計学的変数のための対照もまた、利用して差し支えない。数値間の差異は、典型的には、例えばp<0.05またはp<0.01で、有意とみなされる。他の統計分析ツールも使用して差し支えない。
【0017】
例えば、本アッセイは、任意の他の抗原に対して反応性の抗体のアッセイをすることなく、Ply、PhtD、PhtE、LytB、またはPcpAのうちの1つのみと免疫反応性の抗体を検出するために、行ってもよい。あるいは、本アッセイは、Ply、PhtD、PhtE、LytB、および/またはPcpAのうち1つ以上に対して免疫反応性の抗体を検出するために行ってもよい。例として、本アッセイは、Plyおよび、PhtD、PhtE、LytBおよびPcpAのうち1つ以上;PhtDおよび、Ply、PhtE、LytBおよびPcpAのうち1つ以上;PhtEおよびPly、PhtD、LytBおよびPcpAのうち1つ以上;LytBおよびPly、PhtD、PhtE、およびPcpAのうち1つ以上;および/または、PcpAおよび、Ply、PhtD、PhtE、およびLytBのうち1つ以上、に対して免疫反応性の抗体を検出するために行われうる。本アッセイはまた、PcpAおよびPly;PcpAおよびPhtD;PcpAおよびPhtE;PcpAおよびLytB;PcpA、Ply、およびPhtD;PcpA、Ply、PhtD、およびPhtE;Ply、PhtD、PhtE、およびLytB;PcpA、PhtD、およびPhtE;PcpA、PhtD、PhtE、およびLytB;PcpA、PhtE、およびLytB;PcpA、Ply、PhtE、およびLytB;PcpA、PhtD、およびLytB;PcpA、Ply、およびLytB;PcpA、Ply、PhtD、およびLytB;PcpA、Ply、およびPhtE;および/または、PcpA、PhtD、およびPhtEなどの抗原の組合せに対して免疫反応性の抗体を識別するために行ってもよい。他の組合せは、本開示を考慮すれば当業者には明白であろう。本明細書に記載されるアッセイはまた、他の連鎖球菌抗原を、互いに、および/または、Ply、PhtD、PhtE、LytB、および/またはPcpAのうち1つ以上と組み合わせて、使用して差し支えない。
【0018】
特定の実施の形態では、単離および精製したPcpAタンパク質またはそれらの免疫反応性の断片は、単離および精製したPcpA抗原(例えば、タンパク質またはそれらの免疫反応性の断片)に対する、被験体から得られるサンプルにおける抗体の結合を検出することにより、被験体における肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)による過去の感染または活動中の感染の検出に使用されうる。他の実施の形態では、単離および精製したPcpA抗原は、少なくとも1つの追加の抗原(例えばPhtD、PhtE、LytB、および/またはPlyタンパク質またはそれらの免疫反応性の断片)と共に使用してもよい。従って、被験体における肺炎連鎖球菌による肺炎または感染の存在を検出する方法および/または診断する方法であって、1つ以上のPcpA、PhtD、PhtE、LytB、および/またはPly抗原に対する被験体から得られる生体サンプルにおいて、抗体を検出する工程を有してなり、ここで、抗原に結合する抗体の存在が感染の指標となる、方法が提供される。特定の実施の形態では、本方法は、肺炎連鎖球菌の被験体に由来する生体サンプルを、所定の時間および抗原−抗体複合体を形成するのに十分な条件下で、単離または精製したPcpA、PhtD、PhtE、LytB、および/またはPly抗原と接触させ、次に、複合体における抗原−抗体複合体の形成を検出する、各工程を有してなる。特定の実施の形態では、抗体の検出は、所定の時間および複合体において第2の抗体がヒト免疫グロブリンに結合するのに十分な条件下で、ヒト免疫グロブリン(例えば、抗ヒト免疫グロブリン抗体)に免疫反応性の抗原−抗体複合体を、「第2の」抗体と接触させ、次いで、結合した抗ヒト免疫グロブリンを検出することによって達成して差し支えない。第2の抗体は、検出可能なマーカーまたはレポーター分子で標識されることが好ましい。
【0019】
治療化合物で治療すべき肺炎または肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)による感染を有する被験体の応答を判定する方法も提供する。本方法は、治療後に被験体の生体サンプルにおけるPcpA抗原に対する抗体を検出することを包含し、ここで、検出される抗体の量は、治療前に得られる被験体の生体サンプルにおける検出可能な抗体の量、あるいは正常または健康な被験体のものと比較して、増加、不変、または減少する。1つの実施の形態では、治療後の抗体の不変または減少量は、被験体が治療に応答していないことを示唆しうる。別の実施の形態では、治療後の抗体の不変または減少量は、被験体が治療に応答していることを示唆しうる。別の実施の形態では、治療後の抗体の増加量は、被験体が治療に応答していないことを示唆しうる。別の実施の形態では、治療後の抗体の増加量は、被験体が治療に応答していることを示唆しうる。よって、それに応じて治療計画を調整して差し支えない。
【0020】
抗原は、完全長ポリペプチドとして、これらのアッセイに使用してもよい。しかしながら、抗原は、例えば、生体サンプルに見られる抗体に対する反応性を保持する、断片、変異体(例えば、対立遺伝子多型、スプライス変異体)、相同体、同族体、および誘導体(例えば、ペプチド、融合物)など、関連のある抗原でありうる。断片、変異体、または誘導体は、被験体の配列と比較して、配列の置換、欠失、および/または付加のうち1つ以上を有しうる。断片または変異体は、天然または人工的に構築されうる。1つの実施の形態では、これらの関連する抗原は、対応する核酸分子から調製して差し支えない。好ましい実施の形態では、関連する抗原は、1〜3、または1〜5、または1〜10、または1〜15、または1〜20、または1〜25、または1〜30、または1〜40、または1〜50、または50より多いアミノ酸の置換、挿入、付加、および/または欠失を有しうる。関連する抗原は、典型的には、それが由来するポリペプチドの少なくとも一部に対応する配列を有する一連の連続的なアミノ酸残基である、ペプチドを含みうる。好ましい実施の形態では、ペプチドは、約5〜10、10〜15、15〜20、30〜20、または30〜50のアミノ酸を含みうる。
【0021】
置換は、同類置換、または非同類置換、またはそれらの任意の組合せであって差し支えない。抗原の配列への保守的なアミノ酸修飾(および/またはコードするヌクレオチドに対応する修飾)は、親抗原のものに似た官能および化学特性を有する関連する抗原を生じうる。例えば、「アミノ酸の同類(保守的)置換」は、その位置におけるアミノ酸残基の大きさ、極性、電荷、疎水性、または親水性には、ほとんどまたはまったく影響しないように、特に、抗原の機能が変化しない(例えば、生体サンプルにおいて抗体との免疫原性または反応性の現象を生じない)ように、天然のアミノ酸残基を非天然の残基に置換することを含みうる。適切な、例となるアミノ酸の同類置換を以下に示す:

断片は、削除された特定の領域またはドメインを有する抗体を含んでいてもよい。例えば、それらの領域またはドメインの存在が本明細書に記載されるアッセイにおける断片の使用に干渉する場合には、これらの領域またはドメインを削除することは有益である。例えば、PcpA、Ply、PhtD、PhtEまたはLytBを使用する場合、コリン作用性の結合領域を削除して差し支えない。PcpAタンパク質の例となる断片を配列番号:7に示す。
【0022】
他の実施の形態では、抗原は、抗原の精製および/または検出の助けとなる1つ以上の融合ポリペプチドセグメントを含みうる。融合は、抗原のアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかで行うことができる。融合は、リンカーまたはアダプター分子の不存在下で直接的に行われるか、あるいはリンカーまたはアダプター分子を通じて行ってもよい。リンカーまたはアダプター分子は、1つ以上のアミノ酸残基、典型的には約20〜約50のアミノ酸残基でありうる。リンカーまたはアダプター分子はまた、DNA制限エンドヌクレアーゼまたはプロテアーゼの開裂部位が融合部分を分離できるように設計して差し支えない。ひとたび構築されると、当技術分野で既知のように、または本発明に記載される方法に従って、融合部分に、誘導体化または別の操作を行ってよいことが認識されよう。適切な融合セグメントとしては、とりわけ、金属結合ドメイン(例えば、ポリ−ヒスチジンセグメント)、免疫グロブリン結合ドメイン(例えば、タンパク質A、タンパク質G、T細胞、B細胞、Fc受容体、または補体タンパク質抗体−結合ドメイン)、糖結合ドメイン(例えば、マルトース結合ドメイン)、および/または「タグ」ドメイン(例えば、α−ガラクトシダーゼ、strepタグペプチド、T7タグペプチド、FLAGペプチド、または、モノクローナル抗体など、ドメインに結合する化合物を使用して精製可能な他のドメインの少なくとも一部)が挙げられる。このタグは、典型的には、ポリペプチドの発現の際にポリペプチドに融合され、宿主細胞から生じる対象ポリペプチドの配列の親和性精製のための手段としての役割を果たすことができる。親和性精製は、例えば、アフィニティマトリクスとしてのタグに対する抗体を使用して、カラム・クロマトグラフィーによって達成することができる。随意的に、タグは、その後、開裂のための特定のぺプチダーゼを使用するさまざまな手段によって、対象ポリペプチドの精製配列から除去することができる。
【0023】
特定の実施の形態では、抗原は、検出可能な方法で、直接または間接的に(例えば抗体を使用して)標識化またはタグ化されうる。抗原自体に標識を取り付けることによって抗原を直接標識化して差し支えない。抗原は、標識を、抗体または他の部分など、抗原に結合する試薬に付着させることによって、間接的に標識化してもよい。適切な標識としては、例えば、フルオレセイン、ローダミン、フィコエリトリン、ユウロピウムおよびTexas Redなどの蛍光色素;ジアミノベンジジン、放射性同位体などの色原体染料;有色の、磁性または常磁性のラテックスビーズなどの巨大分子コロイド粒子または粒子状物質;ビオチンおよびジゴキシゲニンなどの結合剤;および、視覚的に観察される、電子的に検出される、または別に記録される検出可能な信号を、直接的にまたは間接的に生じうる、生物学的にまたは化学的に活性な薬剤、例えばFACS、ELISA、ウエスタンブロット法、TRFIA、免疫組織化学、エバネッセンス、Luminexビーズアレイ、ディップスティック、または他のラテラルフローアッセイ形式などが挙げられる。これらの方法における使用のための適切な抗体結合分子には、例えば、抗ヒト抗体などの免疫グロブリン結合抗体(例えば、Igアイソタイプまたはサブクラスに特異的な抗ヒト抗体(例えば、IgG)、またはブドウ球菌タンパク質AまたはGに特異的な抗ヒト抗体)が含まれうる。
【0024】
好ましい蛍光性のタグタンパク質としては、緑色蛍光タンパク質(GFP)として知られるクラゲタンパク質から生じるものが挙げられる。GFPおよび他のフルオロフォアについての詳しい情報は、次の文献に記載されている:Tsien R Y, "The Green Fluorescent Protein" Annual Reviews of Biochemistry 1998; 67: 509-544 Verkhusha, V and Lukyanov, K. "The Molecular Properties and Applications of Anthoza Fluorescent Proteins and Chromophores" Nature Biotechnology 2004; 22: 289- 296。幅広い蛍光性のタグタンパク質をコードするプラスミドベクターは、Clontech Laboratories,inc.社から市販される「Living Colours 8482;Fluorescent Proteins」のアレイを含め、さまざまな供給業者から市販されている。同様のベクターは、Invitrogen and Amersham Biosciences社を含めた他の供給業者からも入手することができる。GFPから生じる適切な蛍光性のタンパク質は、レッドシフトした変異体EGFP、シアンシフトした変異体ECFP、およびイエローシフトした変異体EYFPである。EGFPは、標的抗原の抗原特性における最小効果と組み合わさって明るい蛍光を与えることから、蛍光性のマーカーとして好ましい。別の蛍光性のマーカータンパク質は市販されている。生物学的または化学的に活性な薬剤には、例えば、色を顕在化または変化させる反応、または電気特性に変化を生じる反応を触媒する酵素が挙げられ、これも利用して差し支えない。それらは、エネルギー状態間の電子遷移が、特徴的なスペクトルの吸収または放射を生じるように、分子的に励起可能であってもよい。それらは、バイオセンサーとの結合に用いられる化学物質を含みうる。ビオチン/アビジンまたはビオチン/ストレプトアビジンおよびアルカリホスファターゼ検出システムを使用して構わない。さらなる例としては、西洋ワサビペルオキシダーゼおよび化学発光試薬が挙げられる。一部の実施の形態では、非固定化抗体結合分子またはポリペプチドは、固定化されていない抗体結合分子またはポリペプチドに結合する抗体を使用して検出されうる。適切な検出用抗体は、蛍光手段によって標識化してもよい。一部の実施の形態では、標識は、標的抗原を直接標識化し、抗原および蛍光性のマーカーが融合タンパク質を形成するために用いられる、蛍光性のマーカー(タグ)でありうる。
【0025】
標的抗原に対する抗体が生体サンプルに存在する場合、抗原または抗体はタグで標識化されて差し支えなく、形成される抗原−抗体複合体は、例えば免疫沈降によって検出されうる。その後、タンパク質が沈降したことを判断する(定性的測定)、または沈降したタンパク質の量を決定する(定量的測定)ために、タグに関連する蛍光を利用して差し支えない。例えば、蛍光−タグ化抗原の可溶性抽出物は、抗体を抗原に結合させるために、4℃で一晩など、適切な時間、患者の血清と共にインキュベーションして構わない(典型的には、300〜500μl以下の抽出物に対し10〜15μlの血清)。非特異的結合を遮断するために、低濃度のIgGウシ胎仔血清(Sigma社製)と共に予備的にインキュベーションしたタンパク質Aまたはタンパク質Gセファロースビーズを、タグ化抗原/抗体複合体を含む抽出物/血清混合物に加え、室温において、穏やかな回転で1〜2時間混合した。タグ化抗原に特異的に結合するものを含めた血清内の抗体を、タンパク質A/Gビーズで結合させる。次に、タンパク質A/Gセファロースビーズを、適切な緩衝液(典型的には、10mMのTris−HCl pH7.4,100mM NaCl/1mM EDTA/1%Triton X−100)で洗浄し、非結合のタグ化抗原を除去する。これは、複数(例えば、2、3、4、または5)回の遠心分離、上清の除去、および緩衝液への再懸濁によって達成されうる。付着したタグ化抗原を伴うビーズを回収し、例えばMolecular Devices,inc.社から市販されるSpectra Max Gemini XSプレートリーダーなどの蛍光リーダー内に設置する。次に、サンプル中の抗体の存在を定量して差し支えない。GFPの事例では、検出は、472nmの波長における励起および512nmにおける放射を使用して達成されうる。蛍光励起は、フルオロフォア/用いるタグに応じて決まるが、幾つかの異なるタグ化タンパク質を同時に組み合わせることも可能であろう。例えば、Ply、PhtD、PhtE、LytB、および/またはPcpAのうち1つ以上を別々にタグ化し、別々に、または同時にアッセイして差し支えない。本方法の感受性は検出装置に応じて決まり、さらに感受性の検出装置を使用することによって大幅に向上させることができる。これらの方法のさまざまな改変もまた利用されうる。他の標識も当技術分野で利用可能であり、本明細書に記載されるアッセイの使用にとって適切でありうる。
【0026】
連鎖球菌抗原との抗体免疫反応性を検出するための本明細書に記載されるアッセイは、連鎖球菌の感染の検出に有用な他のアッセイと組み合わせてもよい。例えば、これらのアッセイ(すなわち、ELISA法)は、生体サンプル中の連鎖球菌の核酸を検出するためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アッセイと組み合わせて差し支えない。あるいは、ELISAアッセイは、免疫沈降アッセイと組み合わせてもよい。あるいは、PCR系のアッセイを免疫沈降アッセイと組み合わせることもできる。本明細書に記載されるさまざまなアッセイの組合せは、検出感度を増大させ、データの陰性適中率を低下させる役割も果たしうる。
【0027】
患者の生体サンプル中の抗体または核酸を検出することにより、患者における連鎖球菌感染の存在を検出するためのキットもまた提供される。1つの実施の形態では、1つ以上の肺炎球菌の抗原(すなわち、Ply、PhtD、PhtE、LytB、および/またはPcpA)は、生体サンプルにおける抗連鎖球菌抗体を検出または診断するためのキットの一部を形成しうる。抗原は、内容物が外部環境から保護される、バイアルなどの適切な容器内に提供されうる。従って、サンプルにおける抗連鎖球菌抗体を検出するためのキットには、抗原(すなわち、Ply、PhtD、PhtE、LytB、および/またはPcpA)が、サンプル中の1つ以上の抗体の抗原への結合を決定するための1つ以上の検出試薬と共に含まれうる。キットは、(i)単離および精製した、肺炎連鎖球菌のPcpA、PhtD、PhtE、LytBおよび/またはPcpAタンパク質、またはそれらの免疫反応性の断片のうちの1つ以上;および(ii)随意的に使用説明書と共に包装された、抗原−抗体複合体の形成を検出する手段を含むことが好ましい。
【0028】
抗原は溶液中で遊離していてもよく、または磁性のビーズ、管、マイクロプレートウェル、またはチップなどの固体担体上に固定化されていてもよい。特定の実施の形態では、単離および精製したPcpA、PhtD、PhtE、LytB,および/またはPcpAタンパク質またはそれらの免疫反応性の断片または融合タンパク質またはそこに吸着されるタンパク質凝集体を含めた固体マトリクスが提供される。一部の実施の形態では、キットはさらに、抗体結合分子を検出試薬として含みうる。抗体結合分子は捕捉または検出試薬であって差し支えなく、溶液中で遊離していてもよく、または磁性のビーズ、管、マイクロプレートウェル、またはチップなどの固体担体上に固定化されてもよい。抗体結合分子またはポリペプチドは、検出可能な標識、例えば、蛍光標識または発色標識、またはビオチンなどの結合部分で標識化されうる。適切な標識は上にさらに詳細に記載されている。キットはさらに、例えば、発色、蛍光、または化学発光基質など、標識と反応する基質、または標識に結合して信号を生じる酵素複合体などの分子の検出試薬、および/または免疫沈降のための試薬(すなわち、タンパク質Aまたはタンパク質G試薬)を含みうる。検出試薬はさらに、緩衝溶液、洗浄溶液、および他の有用な試薬を含みうる。キットは、個人から得られたサンプルを取り扱い、および/または保管するための装置、および個人からのサンプルを入手するための装置(すなわち、針、ランセット、および採取管または容器)のうち、1つまたは両方を含みうる。キットはまた、例えば、本明細書に記載するような試験サンプル中の抗連鎖球菌抗体を検出するための方法における、抗原の使用説明書も含みうる。本アッセイをPCRなどの別のタイプのアッセイと組み合わせる場合には、これらのアッセイに必要な試薬(すなわち、プライマー、緩衝液など)を、随意的に、それらの使用説明書と共に含めてもよい。
【0029】
本発明およびその多くの利点は、例証の目的で示す次の実施例からよく理解されよう。
【実施例】
【0030】
実施例1
材料および方法
2ヶ月〜6歳の年齢の99名の子どもは、2003年3月から2005年12月の間に、CAPのためにUniversity Hospitals of Lausanne and Geneva(スイス国所在)の小児病棟に入院したときに前向きコホート研究に登録された。子どもは、WHOの分類(ref)に従い、肺炎の臨床的徴候を呈する場合に適格者とし、喘息、慢性疾患、または基礎疾患、免疫抑制を積極的に治療した子ども、または喘鳴(細気管支炎の疑い)を呈する子どもは除外した。2003〜2005年におけるスイス国の勧告に従って肺炎連鎖球菌の予防接種を受けた子どもはいなかった。両機関の倫理委員会に承認されるように、親が内容について署名した後、彼らを登録した。
【0031】
血液、尿および鼻咽頭のサンプルを、入院8時間以内に培養し、ウイルスまたは細菌の存在を評価した。13種類のウイルス、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)、およびクラミジア肺炎菌を含め、鼻咽頭のサンプルについて、PCR分析したのに対し、血液サンプルはPly特異性のPCRで評価した。入院時に行ったすべての胸部X線検査は、臨床および実験室の研究結果を伏せて、年長の放射線技師が目を通した。回復期の血清サンプルは、肺炎連鎖球菌に対してあらかじめ予防接種を受けていない、75/99名の子どもについて、3週間後に入手した。これら75名の子どもを、CAPに関連した抗肺炎球菌の応答についての本研究に含めた。
【0032】
この研究に用いたPhtD、PhtE、PcpAおよびLytBタンパク質は、大腸菌に発現させた組換えタンパク質である。使用するPhtDおよびPhtEは完全長タンパク質であり、使用するPcpAおよびLytBはコリン−結合ドメインが除去された切断した形態のものである。4種類のタンパク質すべてが、可溶性のタンパク質として大腸菌に発現され、イオン交換クロマトグラフィーの組合せによって精製される。すべてのタンパク質は、精製後、SDS−PAGEおよびRP−HPLCで分析して、≧90%の純度を有する。
【0033】
対をなす、急性期および回復期の血清サンプルを、分析するまでの間、−20℃で保管した。実験室への輸送前にサンプルを符号化し、盲目的に、実験室の個人的に無意識の臨床データによって、Ply、PhtD、PhtE、PcpAおよびLytBに対するIgG抗体を測定した。Immulon(Thermo Labsystem社製)プレートをコーティングするため、精製タンパク質を使用し、間接ELISA法によって、対をなす血清サンプルを、同一の手順で試験した。抗体力価の定量化を可能にするため、各血清サンプルの8連続希釈を行った。37℃で60分後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(Cappel社製)に共役した抗IgG抗体を加えた後、基質としてABTSを加えた。各血清のELISA力価を、各アッセイに使用する基準ヒトAB血清に対する比較によって定義し、ELISAの単位は、OD=1.0における希釈の逆数を取ることによって適宜割り当てられた。結果をEU/mlで表した。5EU/mlのアッセイのカットオフ未満の力価を有する血清には、2.5EU/mlの力価を与えた。抗体力価を、平均幾何学濃度(GMC)を比較できるように対数変換した。抗体力価における著しい上昇は、急性期および回復期のサンプル間の最小値の2倍(100%)の増加として、あらかじめ定義した。
【0034】
参加者の社会人口統計学的特性は、標準的な記述統計学(頻度、平均、幾何学的平均、および標準偏差)を使用して記載される。スチューデントのt検定を用いて、異なる血清の比較検討を行ったのに対し、カテゴリーデータは、適切な場合には、カイ二乗検定またはフィッシャーの正確確率検定を使用して比較した。分散分析(ANOVA)を使用して、グループ間の血清学を比較した。症例患者であるか症例患者ではないかという従属変数に対する各変数の関係を決定するために、単変量統計解析を行った。補正オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出するために、ロジスティック回帰分析を使用し、交絡因子(性別など)としての関数であるかもしれない統計的に有意な人口統計学的変数を調整した。すべての統計的検定において、差異が、p<.05のとき、または95%CIが1.0を含まなかった場合に、有意差ありとみなした。解析には、SPSS(バージョン15.0)統計ソフトウェアプログラムを使用した。
【0035】
実施例2
実験結果
A.CAPを有する子どもにおける急性の肺炎球菌感染の痕跡
75名のあらかじめ健康な子ども(平均年齢33.7ヶ月、中央値35.4ヶ月、範囲2.6〜66ヶ月、女性50%)が入院時に登録され、CAPに関連した抗肺炎球菌の免疫の前向き研究のための急性期および回復期の血清を提供した。1名の子供だけが陽性の血液培養を有していたのに対し、15/75名(20%)の患者は、血中に肺炎球菌溶血素DNA(Ply+−PCR)を有していた。血清IgGのPlyに対する血清応答(急性期と回復期の血清間に2倍の増加)を使用して、16/75名(21%)の子どもにおける急性の肺炎球菌感染の痕跡を確認した(表1)。割合は、Ply+−PCRおよび/または抗Ply血清応答を組み合わせると、最近の報告と一致して、31%(23/75)まで増大した(Korppi M, Eur J Clin Microbiol Infect Dis 2007)。
【0036】
子どもの急性の肺炎球菌感染の痕跡をさらに確認するため、我々は、75対の急性期および回復期の血清サンプルにおける抗体力価を定量するため、4種類の追加のPSP(PhtD、PhtE、LytB、およびPcpA)を免疫学的試験に使用した。LytBに対する応答は稀であった(表1)。対照的に、CAPを患い入院している21〜32%の子どもには、有意な(≧2倍)IgG応答が見られた(表1)。要するに、34/75名(45%)の子どもが、肺炎連鎖球菌に対する急性応答の痕跡を有した。血清IgG抗体における平均倍率変化は、抗PhtD(4.22)、抗PhtE(6.88)、および抗PcpA(5.62)で著しく、抗Ply(2.15)では穏やかであり、抗LytB(1.51)では弱かった。年齢は血清抗PSP抗体の倍率変化に影響を与えなかった(各PSPについてR2<0.162)ことから、年少乳児であっても、急性の肺炎球菌感染に対する抗PSP応答は上昇しうることを示唆している。これは、PhtD、PhtE、およびPcpAに対し、顕著な血清応答を有する月齢8〜10ヶ月の3名の乳児の観察によって確認された(平均2.88〜6.82の倍率変化)。最後に、血清応答は、幾つかのPSPに対して頻繁に示され(≧2PSP:30%、≧3PSP:25%、≧4PSP:14%、≧5種類のPSP:1%)、最近の肺炎球菌の曝露の強い痕跡を示した。
【0037】
≧1PSPに対する急性の血清応答を有する34/75名(45%)の子どもは、86%(13/15名)のPly+−PCR患者を含んでいた。わずかに2名のPly+−PCRの子どもにのみ、抗PSP応答が無かった:2.6ヶ月の男児は、恐らくは、感染誘発型のB細胞応答の急速な上昇には若齢過ぎ、43ヶ月の女児は、17日間に及ぶ咳と7日間の発熱を伴って入院しており、最終的に大葉性肺炎を患って入院したときには、5種類のPSPに対してすでに高い急性の血清力価を有していた。従って、5種類のPSPのパネルに対するPly+−PCRと血清応答の組合せにより、急性の肺炎球菌感染(P−CAP)の強い痕跡を有する、CAPで入院している36/75名(48%)の子どもを確認した。
【0038】
B.幼児における肺炎球菌のCAPの診断のための免疫試験
最近の肺炎球菌の曝露の痕跡を有しない(Ply PCR陰性およびいずれかのPSPに対するIgG力価の≧2倍の上昇なし(NP−CAP))31名の子どもに対し、急性の肺炎球菌(≧2倍の上昇)および/または感染(Ply+−PCR)(P−CAP)の応答の痕跡を有する36名のCAPの子どもについて調査した。高い抗PSPは最近の曝露または感染を反映しうることから、≧3PSPに対する非常に高い入院血清力価(>300EU/ml)を有する8名の子どもを、帰属の誤りを防ぐために、これらの分析から除外すると同時に、≧2倍の応答の可能性を制限した。応答者は、定義により、対照群には含まれないので、これらのアプローチはアッセイの特異性および1.00の陽性適中率を設定する。しかしながらそれは、よく吟味された試験群におけるアッセイ感受性および陰性適中率の比較を可能にする。Ply+−PCRのみに依存して肺炎球菌のCAPを診断すると、肺炎球菌性肺炎がほとんど菌血症性ではないという事実と一致する、19/36名(53%)の患者を見逃してしまっていたであろう。抗Ply IgG応答のみの使用は、以前の報告と一致する、0.44の感受性および0.61の陰性適中率を生じる、17/36名(47%)の子どもを見逃してしまっていたであろう(表1)。高い数値は、抗PhtEまたは抗PcpAのいずれかの単独使用で生じた(表1)。仮定されるように、幾つかのPSPの組合せは、アッセイの感受性をさらに増強した(表2)。抗PcpAと抗PhtEの応答の組合せは、0.92の感受性と0.91の陰性適中率を生じさせた。これらの値は、抗Plyの応答を加えることによってさらに増大し、抗PcpA、PhtEおよびPlyの応答の組合せは、感受性と陰性適中率の両方にとって0.94の最適な結果を生じた。重要なことに、PcpAを含まないPSPの任意の組合せの最大値の感受性は、依然として0.68未満である。これは、抗原の数を増加させるとCAPの病原の同定の可能性を高め、特定の免疫試験が他のものよりも小児肺炎球菌のCAPの診断にさらに大いに貢献することを裏付けるものである。
【0039】
C.肺炎球菌または非肺炎球菌のCAPを患う子どもの臨床特性
次に、急性の肺炎球菌感染の強い痕跡を有する子ども(P−CAP,n=36)が、最近の肺炎球菌の曝露の痕跡の無い子ども(n=31,NP−CAP)と、人口統計特性または臨床特性の点で異なるか否かを判断することを目的とした。単変量解析は、年齢(33.5ヶ月対32.7ヶ月)、性別(50%対48%の女性)、肺炎の臨床重症度(WHOスコアI:5対1,II:23対21,III:7対9)、咳の持続期間(7日間対4日間)、発熱期間(4.2日間対3.2日間)または入院の30日間の抗生物質の使用(9名対8名の子ども)について、P−CAPまたはNP−CAPで入院している子どもの群間で異ならないことを示唆した。これは、臨床パターン単独では肺炎球菌に由来するCAPを有する子どもを確実に特定し得ないことを裏付けている。
【0040】
D.肺炎球菌または非肺炎球菌のCAPで入院した子供における明確な肺炎球菌の免疫
肺炎連鎖球菌の感染に対する防御において、以前から存在する抗肺炎球菌の抗体の重要性を考慮して、我々は、通常の基準血清を使用して、入院時におけるPSP特異性の免疫を比較し、場合により、P−CAPおよびNP−CAPの子どもにおける差異を識別する。75名の患者のすべてが、少なくとも1種類のタンパク質、ほとんどの人は幾つかのPSPに対し、検出可能な血清抗体を有していた(≧2PSP:96%,≧3PSP:92%,≧4PSP:89%,≧5種類のPSP:86%)。PcpA、PlyおよびPhtEに対して最も高いGMTを示したが、抗LytB抗体は著しく低かった(表3)。入院時における抗体力価は著しく異なっていた。肺炎球菌の曝露およびB細胞応答能の両方が年齢と共に上昇することから、我々は、年齢(月齢)とPSP特異性のGMTの相関について調べた(log10EU/ml)。これらの相関関係は強く、Ply(R2=0.63434)、PhtD(R2=0.63297)およびPhtE(R2=0.59359)であり、LytB(R2=0.45824)およびPcpA(R2=0.31625)では有意ではあったが弱かった。4つの同年齢の群(≦17、18〜35、36〜49および≧50ヶ月)に分けた子どもにおける曝露誘発型の抗PSP抗体の評価は、抗PcpA抗体が、<18ヶ月の子どもにおいて、すでに高い力価で存在し(図1)、それらの年齢に伴う増大は有意であるが(p=0.022)、他のPSP(p<0.001)よりも顕著さは少ないことを示唆した。抗PcpAおよび抗PhtE抗体は、恐らくは母親の抗体の受身伝達を反映して、月齢2.6ヶ月の最も若年齢の乳児にもすでに存在していた。
【0041】
本研究に用いた5種類のPSPは、肺炎球菌株のなかでも良好に保存されている(>95〜98%)。抗PSP IgG抗体が肺炎球菌性肺炎に対する防御の役割を担っているならば、肺炎球菌または非肺炎球菌のCAPを有する子供の肺炎球菌の免疫における差異を見出すことが期待される。入院時において、PhtD、PhtEおよびLytBに対する抗体は、P−CAPおよびNP−CAPの子どもにおいて同様であり(表4および図2)、肺炎連鎖球菌への同様の過去の曝露およびB細胞応答能を示唆した。抗Plyは、入院時において、NP−CAP(169EU/ml、p=0.03)の子どもよりも、P−CAP(446EU/ml)で有意に高かった。この差は、本質的に、入院時に、高い抗Ply抗体(>200EU/ml;図2)を有するP−CAPの子どもの割合が高いことを反映していた。非常に対照的に、抗PcpA抗体は、入院時において、P−CAPで入院している子どもにおいては、>10EU/mlの値の抗PcpA力価を有するNP−CAPの子どもの割合が高いことが影響して(図2)、NP−CAPの子どもよりも3倍低かった(233対716EU/ml、p=0.001)。したがって、以前から存在する抗肺炎球菌の免疫は、肺炎球菌および非肺炎球菌系のCAPで入院している子どもで、有意に異なっていた。
【0042】
次に、P−CAPまたはNP−CAPで入院後3週間採取した、回復期の抗体力価を比較した。Ply、PhtD、PhtEおよびLyt−Bに対する回復期の抗体力価は、年齢の影響を受けて、依然として有意であり(p<0.01)、対照的に、抗PcpAの回復期の力価には影響を与えなかった。抗LytB抗体は、回復期の血清においてデータIIを増加させず、この抗原の感染誘発型の免疫原性が低いことを示唆した(表4;図2)。4つの他のPSPに対する回復期の抗体力価は、NP−CAPの患者よりもP−CAPの患者の方が高かった。これらの差異は、抗Ply抗体でのみ統計的有意性に達した(表2)。逆累積度数分布曲線は、P−CAPの子どもにおける中程度または高い抗PhtDおよび抗PhtE力価の割合が高いことを明確に示唆していることから(図2)、これは、本質的に、比較的小さい試験群における血清応答の顕著な異質性を反映しやすい。大変興味深いことに、入院時におけるP−CAPの子どもにおいて3倍低かった抗PcpA抗体は、肺炎の1つの症状の後、わずか3週間で、NP−CAPの子どものみの場合と同様の力価に達した。
【0043】
多変量解析は、年齢および臨床スコアにかかわらず、入院している子どもにおける、非肺炎球菌性肺炎に対する肺炎球菌の唯一の判断材料として、入院時における高いPly抗体(p=0.014)および低いPcpA抗体(p=0.004)を裏付けた。
【0044】
E.データ解析
データは、免疫原性のPSPのパネルの利用が、世界保健機構(WHO)によって定義されるような肺炎の臨床的徴候を有する幼児における肺炎球菌感染の診断を飛躍的に向上させることを実証している。WHOは、抗PcpA抗体を、肺炎球菌のCAPの重要な診断マーカーとして認定している。これらの抗体は、非肺炎球菌性肺炎よりは肺炎球菌を有する子どもにおいて、急性期の間に、非常に低いレベルで検出可能である。
【0045】
この研究では、我々は、PSPに基づくアッセイの感受性は、最も免疫原性のタンパク質の使用、および/またはそれらの組合せによって改善できる可能性があると仮定した。PSP免疫原性の重要性は、主として、LytBでは0.14、Plyで0.44、PhtDで0.56、およびPhtEまたはPcpAタンパク質のいずれかで0.64の範囲の感受性の実証によって確認された。年齢とは概ね無関係である、抗体応答の平均倍率(LytB(1.51)、Ply(2.15)、PhtD(4.22)、PcpA(5.62)およびPhtE(6.88))の同様の勾配によって証明されるように、この順位は、PSPの相対的な免疫原性を直接、反映する。さらに感心させられることには、幾つかのPSPの組合せが、アッセイの感受性を著しく上昇させ、抗PcpAおよび抗PhtEの応答の組合せがCAPで入院している子どもにおける最近の肺炎球菌の曝露/感染の診断で0.92の感受性に達し、これは、抗Ply応答の追加によって0.94まで上昇した。これらの感受性およびそれらの関連する陰性適中率の改善の理由の1つは、過去のコロニー形成または感染が、通常、すべてのPSPに対する抗体を励起せず、したがって、1つのPSPに対し、前から存在する高い抗体力価が、他の抗原に対する応答を妨げないようにしうることである。別の理由は、肺炎球菌のCAPの鍵となる診断マーカーとしてのタンパク質の同定である:その存在なしでは、試験したPSPの組合せにかかわらず、アッセイの感受性は、0.92ではなく、0.67になる(表2)。
【0046】
免疫試験としての5種類のPSPのパネルの使用は、急性の肺炎球菌の応答の痕跡を有する34/75名(45%)のCAPの子どもを確認した。これは、2名を除いて、血液中に肺炎球菌のDNAを有するすべての患者(Ply+−PCR)を包含した:4日間に及ぶ発熱および咳の後に入院した3ヶ月未満の乳児では、抗PSP応答が依然として陰性であった。これは、血清診断が、免疫が未熟な時点で肺炎連鎖球菌への最初の曝露を経験する非常に年少の乳児においては依然として困難でありうることを示唆している。本研究には年少乳児はほとんど登録されなかったことから、この問題はその後の研究で対処する必要があろう。抗PSP応答を欠く他のPly+−PCRの子どもは、CAPでの入院前に長期にわたる咳(17日間)および発熱(7日間)を有する未就学児であった。彼女の抗体力価は、入院時においてすでに非常に高く(抗Ply:952EU/ml、抗PhtD:192EU/ml、抗PhtE:277EU/ml、抗PcpA:462EU/ml)、入院前のそれらの活性化を示唆していた。注意すべきは、この患者の血清診断が、厳しい研究基準ではなく、むしろ抗体力価の倍率の排他的利用により、陽性とみなされるべきだったことであろう。8名の他の子ども(平均年齢44.5ヶ月,範囲22〜66)は、入院時において≧3PSPに対し、以前から存在する高い免疫を有しており(抗Ply>380EU/ml、抗PhtD>111EU/ml、抗PhtE>393EU/mlおよび抗PcpA>266EU/ml)、帰属の誤りを防ぐために、P−CAPまたはNP−CAPのいずれの患者とも見なさなかった。呼吸器系ウイルス(RSV、hMPV、パラインフルエンザ、ライノウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルス)は、肺炎マイコプラズマ感染の痕跡を有する1名を除き、全員について確認され、すべてのPly−PCRは陰性のままであった。これら8名の患者をNP−CAP群に含めれば、各抗PSPアッセイの陰性適中率はさらに増大するであろう。
【0047】
一部の抗PSP応答は、鼻咽頭保菌が原因で生じたとは結論付けることはできない。入院時において、肺炎連鎖球菌は、鼻咽頭の獲得が肺炎球菌感染症に先行するという事実と一致して、鼻咽頭のP−CAP患者のほうがNP−CAP患者よりもさらに頻繁に確認された(44%対22%,p=0.06)。例えば、新規の肺炎球菌株の獲得が、Ply、PhtBおよびPhtEなどの特定のPSPに対する抗体の発現を誘発することが知られている(Holmlund E, PIDJ 2007)。対照的に、肺炎球菌の保菌単独では、急性の血清応答との関連性はなかった。保菌者の最近の獲得を確認するために、CAPで入院する前に鼻咽頭をサンプリングすることはできず、抗PcpA抗体が鼻咽頭保菌獲得によって容易に誘発されないと考えられる理由が存在する(下記参照)。AOMは、3名のNP−CAPおよび4名のP−CAP患者(NS)において、入院時に、30日以内の抗生物質の処方が診断され、両方の群で同様であった。CAPの病因についての以前の前向き研究は、健康な子どもの正式な対照群または他の病気を患う患者の対照群を含めなかった。大変興味深いことに、月齢24〜60ヶ月の38名のCAP患者の入院抗体力価(平均年齢43.1ヶ月、P−CAP:18、NP−CAP:18、不明:2)は、別の研究で以前に軽度の気道感染の既往がない対照として選択された58名の健康な子ども(平均年齢43.6ヶ月)のものよりも、著しく低かった(それぞれ、Ply:460対745EU/ml、PhtD:150対300EU/ml、PhtE:382対679EU/ml、PcpA:580対1440EU/ml)。従って、前向きコホート研究におけるPhtD、PhtEおよびPcpA免疫についての保菌の獲得の影響、AOM、および呼吸器感染の低さを評価することは興味深いであろう。
【0048】
本明細書に提示する病因のデータは、他の研究者の研究結果をよく裏付けている。肺炎連鎖球菌の原因となる役割は、実際、同様の設計、治験対象母集団および広範囲に及ぶ診断的な検査を用いた米国の研究において、44%の事例で文書化されていた(Michelow 2004)。それは、7価の肺炎球菌の複合ワクチンの20〜30%の予防効果とも一致している。これらのPSPに基づいた免疫試験の高い感受性および特異性を他の設定においても確認したならば、この試験が小児肺炎球菌感染症の負荷の評価に大いに有用であることを、証明するであろう。実際、肺炎球菌の病因は、本明細書で確認されたように、単に臨床症状から生じるわけではない。CAPの肺炎球菌の診断の感受性の増大はまた、さまざまな国設定における肺炎球菌のワクチンの有効性を実証するのに必要とされる研究規模を大幅に低減するであろう。
【0049】
入院時における抗肺炎球菌の免疫が、肺炎球菌と非肺炎球菌のCAPで入院した子供において有意に異なることも観察された。すべての子どもにおいて、年齢および過去の曝露を反映する幅広い濃度範囲にわたり、PSP特異性の抗体が見られた。PhtD、PhtEおよびLyt−Bに対する入院抗体レベルは、両方の群で類似しており、これらの子どもが、その抗体が母体由来であるかもしれない最も年少の乳児を除いて、肺炎連鎖球菌にあらかじめ曝露された、そうでなければ健康な子どもであったという主張を支持した。 入院時における、抗Ply IgG抗体は、P−CAPの子どものものよりも≧2倍高かった。この有意差は、本質的に、入院時にすでに高い抗Ply抗体(>200EU/ml;図2)を有するP−CAPの子どもの割合が多いことを反映していた。従って、Ply特異性の応答は、他のPSPに対する応答よりも、P−CAPを有する子供において、より急速に誘発された。抗Ply免疫がこれらの患者においてあらかじめ誘発されており、肺炎球菌感染の時点での急速な既往反応を可能にすると仮定したくなる。より高い入院時抗Ply抗体の観察は、他の研究結果と一致し、肺炎球菌のCAPの血清診断的な基準における「高い」抗Ply力価の包含を支持する。
【0050】
非常に対照的に、抗PcpA抗体は、肺炎球菌のCAPで入院した子どもでは3倍低く、この差は非常に有意であった(p=0.001)。これは、Mn2+ののレベルが1,000倍も低い(20nM)肺または血流に肺炎球菌が侵入するまで、PcpA発現が抑制されるように、唾液がMn2+の最も高いインビボ濃度(36μM)を有することによる。PcpAは鼻咽頭のコロニー形成の間には発現されないことから、抗PcpA応答はコロニー形成よりも肺炎球菌感染症を反映する。これは、鼻咽頭誘発性の応答との混同を防ぐ、PcpAに基づくアッセイの独特の感受性の一因でありうる(表3)。このPcpA発現パターンは、別の意味合いも有する:以前から存在する抗PcpA免疫を有する子どもは、肺炎球菌感染症が以前に生じた子どもである。反対に、CAPの入院時における低い抗PcpA抗体力価は、子どもが肺炎球菌感染症の最初の発現を経験している可能性があることを示唆し、これは、呼吸器疾患の罹患率が低いと、感染症の危険性が高いことと関係しうる。PcpA抗体は、既往症によって高められた防御免疫のマーカーでありうる。いずれにしても、PcpAは肺炎球菌性肺炎の定着における重要な役割を担っているように思われ、したがって、潜在的なワクチンまたは診断的要素としてさらに評価する必要がある。
【0051】
要約すると、5種類の肺炎球菌の表面タンパク質(PSP)のパネルを使用して、CAPを患って入院している75名の幼児(平均年齢33.7ヶ月)の前向き研究において、肺炎球菌感染を確定した。23名(31%)の患者は、陽性の肺炎球菌溶血素(Ply)血液PCR(20%)、または抗Ply抗体の≧2倍増加(21%)のいずれかを有していた。急性の肺炎球菌感染(P−CAP)を有する36/75名(45%)の患者を確認する免疫学的試験として、PhtD、PhtE、LytBおよびPcpAを加えると診断の感受性が0.44(Ply単独)から0.94に上昇した。年齢、性別、臨床重症度のWHOスコア、咳/発熱または抗生物質使用前の期間のいずれも、これら36名の患者を最近の肺炎球菌の曝露(NP−CAP)の形跡のない31名の子どもと識別することができなかった。入院時に、PhtD、PhtEおよびLyt−Bに対する抗体は、両方の群で同様であったのに対し、抗Ply抗体はP−CAP患者において、NP−CAP患者よりも非常に高かった(それぞれ446対169EU/ml;p=0.031)。対照的に、P−CAPの子どもは、3倍低い抗PcpA抗体を有していた(233対716EU/ml;p=0.001)。多変量解析により、幼児におけるP−CAPの最も重要な判断材料(p=0.004)として、入院時点における低いPcpA抗体を確認した。これは、鼻咽頭よりも、肺などのMn2+が低い部位におけるPcpAの選択発現と一致していた。
【0052】
本明細書に引用されたすべての参考文献は、参照することにより、それら全体を本開示に援用する。本発明は、好ましい実施の形態の観点から記載されているが、変更および修飾が生じるであろうことは当業者に理解されよう。したがって、添付の特許請求の範囲は特許請求の範囲に記載する本発明の範囲内にある、これら等価のバリエーションのすべてに及ぶことが意図されている。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体における、過去の感染または活性な肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)による感染を検出するためのPcpA抗原の使用方法であって、
ここで、前記感染が、被験体から得られたサンプルにおける、抗体の前記PcpA抗原への結合によって決定される、使用方法。
【請求項2】
PcpA抗原および、PhtD、PhtE、LytBおよびPlyからなる群より選択される少なくとも1つの追加の抗原の使用方法。
【請求項3】
抗原の組合せが、PcpAおよびPly;PcpAおよびPhtD;PcpAおよびPhtE;PcpAおよびLytB;PcpA、Ply、およびPhtD;PcpA、Ply、PhtD、およびPhtE;Ply、PhtD、PhtE、およびLytB;PcpA、PhtD、およびPhtE;PcpA、PhtD、PhtE、およびLytB;PcpA、PhtE、およびLytB;PcpA、Ply、PhtE、およびLytB;PcpA、PhtD、およびLytB;PcpA、Ply、およびLytB;PcpA、Ply、PhtD、およびLytB;PcpA、Ply、およびPhtE;ならびにPcpA、PhtD、およびPhtEからなる群より選択されることを特徴とする請求項2記載の使用方法。
【請求項4】
被験体における、肺炎または肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)による感染を診断する方法であって、
前記被験体に由来する生体サンプルにおいて、PcpA抗原に対する抗体を検出する工程を有してなり、
ここで、前記サンプルにおける前記抗体の存在が感染の指標となる、方法。
【請求項5】
PhtD、PhtE、LytBおよびPlyからなる群より選択される少なくとも1つの追加の抗原、またはそれらの1つ以上の免疫反応性の断片に対する抗体を検出する工程をさらに含むことを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記抗原が、PcpAおよびPly;PcpAおよびPhtD;PcpAおよびPhtE;PcpAおよびLytB;PcpA、Ply、およびPhtD;PcpA、Ply、PhtD、およびPhtE;Ply、PhtD、PhtE、およびLytB;PcpA、PhtD、およびPhtE;PcpA、PhtD、PhtE、およびLytB;PcpA、PhtE、およびLytB;PcpA、Ply、PhtE、およびLytB;PcpA、PhtD、およびLytB;PcpA、Ply、およびLytB;PcpA、Ply、PhtD、およびLytB;PcpA、Ply、およびPhtE;ならびに、PcpA、PhtD、およびPhtEからなる群より選択されることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
所定の時間および抗原−抗体複合体を形成するのに十分な条件下で、前記被験体に由来する生体サンプルを前記抗原と接触させ、次いで、前記抗原−抗体複合体の形成を検出する、各工程を有してなることを特徴とする請求項4〜6いずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記抗原−抗体複合体の形成を検出する工程が、前記抗原−抗体複合体におけるヒト免疫グロブリンを検出することを含むことを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記ヒト免疫グロブリンを検出する工程が、所定の時間および第2の抗体を前記ヒト免疫グロブリンに結合するのに十分な条件下で、前記抗原−抗体複合体を、前記複合体においてヒト免疫グロブリンに結合する前記第2の抗体と接触させ、次いで、前記結合した抗ヒト免疫グロブリンを検出することを含むことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記第2の抗体が、検出可能なマーカーまたはレポーター分子で標識されることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記肺炎または感染のための治療化合物で治療すべき肺炎または肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)による感染を有する被験体の応答を判定するための方法であって、前記方法が、
治療後に前記被験体の生体サンプルにおけるPcpA抗原に対する抗体を検出する工程を有してなり、
検出される抗体の量が、治療前に得られる前記被験体の生体サンプル、あるいは正常または健康な被験体の生体サンプルにおいて検出可能な抗体の量と比較して、増加、不変、または減少し、
治療後の抗体の不変または減少した量が、前記被験体が治療に応答していないことを示す、
方法。
【請求項12】
PhtD、PhtE、LytBおよびPlyからなる群より選択される少なくとも1種類の抗原に免疫反応性の抗体を検出する工程を有してなる請求項11記載の方法。
【請求項13】
所定の時間および抗原−抗体複合体を形成するのに十分な条件下で、前記生体サンプルを前記抗原と接触させ、
次に、前記抗原−抗体複合体の形成を検出する、
各工程を有してなることを特徴とする請求項11または12記載の方法。
【請求項14】
前記抗原−抗体複合体の形成の検出が、前記抗原−抗体複合体におけるヒト免疫グロブリンを検出することを含むことを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
ヒト免疫グロブリンを検出する工程が、所定の時間および第2の抗体が複合体における前記ヒト免疫グロブリンに結合するのに十分な条件下で、前記抗原−抗体複合体を、ヒト免疫グロブリンと結合する第2の抗体と接触させ、その後、前記結合した抗ヒト免疫グロブリンを検出することを含むことを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記第2の抗体が、検出可能なマーカーまたはレポーター分子で標識されることを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項17】
酵素免疫吸着法(ELISA)を行うことを特徴とする請求項7または13記載の方法。
【請求項18】
前記ELISAが、捕捉抗体および検出用抗体を使用するサンドイッチELISAであることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】
生体サンプル中の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)感染を検出するためのキットであって、前記キットが、
(i)単離および精製したPcpA抗原;および、
(ii)抗原−抗体複合体の形成を検出するための試薬
を含むキット。
【請求項20】
使用説明書をさらに含むことを特徴とする請求項19記載のキット。
【請求項21】
生体サンプル中の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)の核酸を検出する工程をさらに含むことを特徴とする請求項4〜18いずれか1項記載の方法。
【請求項22】
前記核酸が、前記PcpAタンパク質をコードする核酸に対応することを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項23】
PcpA、Ply、PhtD、PhtE、およびLytBからなる群より選択される吸着された抗原を含む、固体マトリクス。
【請求項24】
吸着された、単離および精製した抗原の組合せを含む固体マトリクスであって、前記組合せが、PcpAおよびPly;PcpAおよびPhtD;PcpAおよびPhtE;PcpAおよびLytB;PcpA、Ply、およびPhtD;PcpA、Ply、PhtD、およびPhtE;Ply、PhtD、PhtE、およびLytB;PcpA、PhtD、およびPhtE;PcpA、PhtD、PhtE、およびLytB;PcpA、PhtE、およびLytB;PcpA、Ply、PhtE、およびLytB;PcpA、PhtD、およびLytB;PcpA、Ply、およびLytB;PcpA、Ply、PhtD、およびLytB;PcpA、Ply、およびPhtE;ならびに、PcpA、PhtD、およびPhtEからなる群より選択される、固体マトリクス。
【請求項25】
前記固体マトリクスが、マイクロタイタープレートまたはマイクロアレイからなる群より選択されることを特徴とする請求項23または24記載の固体マトリクス。
【請求項26】
肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)による感染を診断する方法であって、
生体サンプルを、請求項23〜25いずれか1項記載の固体マトリクスと、そこに結合する抗原の1つ以上に反応性の抗体に適した条件下で接触させ、
前記抗体の、前記抗原の少なくとも1つへの結合の有無を検出する、
各工程を有してなる方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2011−511275(P2011−511275A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544547(P2010−544547)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【国際出願番号】PCT/CA2009/000119
【国際公開番号】WO2009/094779
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(506076695)サノフィ パストゥール リミテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】SANOFI PASTEUR LIMITED
【Fターム(参考)】