説明

診断装置

【課題】メーカーとユーザの双方に過大な負担をかけずに基準波形の設定変更を容易に行うことができる診断装置を提供する
【解決手段】音響診断装置6は、基準波形と制御信号とを対応付けるテーブル65aを有する。音響診断装置6は、テーブル65aに基づいて基準波形を設定変更するので、テーブル65aの記載内容を変更するだけで基準波形の設定変更を容易に行うことが可能となる。また、テーブル65aは、メーカー独自のプログラム言語ではなく、表計算ソフトウェアで用いられている言語で記述されることになる。したがって、ユーザは、テーブル65aの記載内容を容易に設定変更することができるので、結果として、基準波形の設定変更を容易に行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器の発する音、振動または光等に由来する信号の波形に基づき、その機器の診断を行う診断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、発電プラントや化学プラント等の大規模プラントでは、ポンプ、モータ、弁等の可動部を有する機器から発する音をマイクロホンで検出し、この検出した信号波形(以下、観測波形という)と予め設定した基準波形とを比較することにより、機器の異常を診断している(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような音響診断の対象となる機器は、運転状況がいつも一定であるとは限らない。例えば、発電プラントの場合、昼夜または季節によって発電出力の負荷変動が行われることがある。また、石油や化学プラントにおいても、処理量に応じて機器の負荷の変更が行われることある。このように、音響診断の対象となる機器は、負荷や回転数が変更される場合がある。また、診断対象となる機器自身は変動しないが、その機器の周辺に設置されている機器が、要求されるチャージ量に応じて負荷変動したり運転が停止したりすることがある。音響診断装置では、計測法や診断アルゴリズムの工夫において、少々の負荷変動があっても負荷変動の影響を受けないような手法を用いているが、大幅に負荷変動が発生した場合は、その影響を受けることがある。
【0004】
このため、上述したような環境の下で診断を行う音響診断装置では、負荷、回転数、または弁の開度など機器の運転モード毎に基準波形を設け、運転モードに応じて基準波形を切り替えている。例えば、音響診断装置は、機器の運転を制御する制御装置から運転モードの情報を受信し、この運転モードの情報に基づいて基準波形を設定変更し、設定した基準波形とマイクロホンから検出される観測波形とを比較することにより、運転モードに応じた機器の異常診断が可能となっている。
【特許文献1】特開2002−182736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、新規プラントでは、運転が開始されて初めてその運転条件に応じた基準波形がわかるため、現場での基準波形の観測・設定が欠かせない。また、観測波形は、運転モードのみならず、季節や時間の変化に伴って変化することがあるので、適正な診断を行うためには、季節や時間の変化に応じた基準波形の変更を行わなければならない。さらに、音響診断装置の診断精度を向上させるには、より詳細な条件で基準波形の設定変更を行う必要がある。
ところが、従来の音響診断装置では、以下に述べる理由から、基準波形の変更が困難であった。
【0006】
すなわち、通常、音響診断装置のプログラムは、音響診断装置の製造メーカー独自のプログラム言語により作成されており、基準波形の変更は、音響診断装置のプログラムの変更を伴う。したがって、基準波形の設定変更等を行うには、メーカーの技術者が変更を行う度にプラントまで出向いて音響診断装置のプログラムを変更するか、音響診断装置を導入したユーザの技術者がそのプログラム言語を習得しなければならない。
【0007】
メーカーの技術者がプラントに出向く場合は、メーカーの技術者は、変更を要する毎にプラントに出向いてプログラムの変更をしなければならず、手間がかかるとともに、ユーザには、メーカーの技術者の派遣を依頼する度に費用負担が発生していた。
また、ユーザの技術者がプログラム言語を習得する場合は、独自のプログラム言語を習得するまでに時間がかかる。
したがって、従来の音響診断装置を使用するには、メーカーおよびユーザ双方に過大な負担を強いることがあった。
【0008】
本願発明は、上述したような課題を解決するためになされたものであり、メーカーとユーザの双方に過大な負担をかけずに基準波形の設定変更を容易に行うことができる診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述したような課題を解決するために、本発明にかかる診断装置は、診断対象から観測される観測波形を受信する観測波受信手段と、診断対象に関するパラメータを受信するパラメータ受信手段と、複数の基準波形を記憶した記憶手段と、パラメータと基準波形とを対応付けるテーブルと、このテーブルに基づいて、信号受信手段が受信したパラメータに対応する基準波形を設定する設定手段と、この設定手段により設定された基準波形と観測波形とを比較して診断を行う診断手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
上記診断装置において、テーブルは、各基準波形に対し当該基準波形を選択すべき条件を含むようにしてもよい。
また、上記診断装置において、テーブルを外部装置との間で入出力する入出力手段をさらに備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基準波形とパラメータとを対応付けるテーブルを設けることにより、このテーブルに基づいて基準波形を設定変更されるため、テーブルの記載内容を変更するだけで基準波形の設定変更を容易に行うことが可能となる。また、テーブルを設けることにより、より詳細な条件で基準波形の設定変更を行うことが可能となるので、診断装置の診断精度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は、本実施の形態にかかる音響診断システムの構成を示す模式図である。
本実施の形態にかかる音響診断システム1は、マイクロホン2と、このマイクロホン2が検出した音信号を変換する変換器3と、診断対象となるプラント機器4と、このプラント機器4の動作を制御する制御装置5と、変換器3および制御装置5に接続された音響診断装置6とから構成される。
【0013】
マイクロホン2は、診断対象となるプラント機器4から発する音を信号として検出する公知のマイクロホンから構成される。このようなマイクロホン2は、音響診断システム1が設けられたプラント内において、診断対象となるプラント機器4から発する音を検出することが可能な箇所に配設される。なお、マイクロホン2の数量は、診断対象となるプラント機器4の数量に対応して適宜自由に設定することができる。
【0014】
変換器3は、マイクロホン2が検出した音信号の波形をアナログ波形からデジタル波形に変換する公知の変換器である。変換器3は、インターネット、Ethernet(登録商標)等のLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の公知の通信回線を介して音響診断装置6に接続されている。このような変換器3は、各マイクロホン2毎に設けられており、AD変換した音信号を音響診断装置6に送出する。
【0015】
プラント機器4は、音響診断システム1の診断対象となる機器であり、例えばポンプ、モータ、ファン、コンプレッサー、スーツブロアー、バルブ等のプラント内に配設された可動部を有する機器である。このようなプラント機器4は、上述したような公知の通信回線を介して制御装置5に接続されている。なお、プラント機器4の数量は、適宜自由に設定することができる。
【0016】
制御装置5は、音響診断システム1が設けられたプラントに含まれる機器等の動作を制御するとともに、温度、湿度、季節、時間等のプラントの状態について監視を行う。このような制御装置5は、上述したような公知の通信回線により音響診断装置6と接続されており、診断対象となるプラント機器4に関するパラメータ(以下、パラメータという)を、音響診断装置6に送出する。
ここで、パラメータとは、駆動機器の回転数、弁の開閉、機器の動作の有無、バルブの開度等のプラント機器4の状態を表す量、または、温度、湿度、季節、時間等のプラント機器4の環境を表す量の少なくとも一方を意味する。プラント機器4の状態を表す量については、例えば、制御装置5がプラント機器4の動作制御を行うのに用いる制御信号から検出することができる。また、プラント機器4の環境を表す量については、例えば、プラント機器4やプラント機器4が配設されたプラントに設けたセンサ等から検出することができる。なお、パラメータは、プラント機器4の状態を表す量とプラント機器4の環境を表す量とを組合せたものから構成されるようにしてもよい。
【0017】
図2は、音響診断装置6の構成を示すブロック図である。
音響診断装置6は、観測波受信部61と、パラメータ受信部62と、基準波形設定部63と、診断部64と、テーブルDB65と、入出力部67とを有する。
【0018】
観測波受信部61は、変換器3からデジタル波形に変換された音信号を受信し、診断部64に入力する。
パラメータ受信部62は、制御装置5からパラメータを受信し、基準波形設定部63に入力する。
基準波形設定部63は、パラメータ受信部62が受信したパラメータおよびテーブルDB65に格納された後述するテーブル65aに基づいて、診断部64がそのプラント機器4の診断に用いる基準波形の設定変更を行う。
【0019】
診断部64は、各プラント機器4毎に対応する複数の基準波形を格納した記憶部64aを有しており、観測波受信部61が受信した音信号の波形(観測波形)と、基準波形設定部63により設定された基準波形との間でパターンマッチング手法を用いて、プラント機器4の診断を行う。
例えば、診断部64は、観測波形と、基準波形とを比較して残差信号を算出し、この残差信号に基づいて異常の有無を判断する。このような異常の検出方法は、引用文献1に記載されている。
記憶部64aには、各プラント機器4毎に季節、時間、運転モード等の属性が異なる複数の基準波形が登録されている。本実施の形態においては、これら基準波形は、例えばプラント機器4が正常な状態にある時にマイクロホン2により検出された音信号を、特許文献1に記載されている公知の方法で逆フィルタの形態に変換したものである。
【0020】
テーブルDB65は、パラメータと、基準波形との対応付けを表形式(テーブル65a)で記憶したデータベース(DB)である。テーブル65aの一例を図3に示す。
図3に示すテーブル65aは、「プラント機器No」、「マイクNo.」、「設定」、「基準波形No.」および「条件」の属性について、対応する基準波形毎にレコードを設けたものである。
【0021】
「プラント機器No.」のフィールドには、プラント機器4の識別番号が設定される。
「マイクNo.」のフィールドには、マイクロホン2の識別番号が設定される。「マイクNo.」のフィールドに設定される識別番号のマイクロホン2は、同じレコードの「プラント機器No.」のフィールドに設定されたプラント機器4の音を検出していることを示す。
【0022】
「基準波形No.」のフィールドには、基準波形の識別番号が設定される。この基準波形は、同じレコードの「マイクNo.」のフィールドに設定されたマイクロホン2が検出した音信号に基づく観測波形の診断に用いられる。したがって、「基準波形No.」のフィールドは、識別番号が同じマイクロホン2毎に、それぞれ異なる識別番号が設定される。
【0023】
「設定」のフィールドは、基準波形設定部63により設定された基準波形を示す。例えば、「設定」のフィールドには、同じレコードの「基準波形No.」のフィールドに設定された基準波形が、基準波形設定部63により設定された基準波形の場合は「TRUE」が、基準波形設定部63により設定されていない基準波形の場合は「FALSE」が設定される。したがって、通常、「TRUE」は、マイクロホン2の識別番号が同じであるレコードのうち、1つのレコードの「設定」のフィールドのみに設定される。
【0024】
「条件」のフィールドには、パラメータ受信部62が制御装置から受信するパラメータの条件が記述されている。この条件は、マイクロホン2の識別番号が同じであるレコード毎に、任意の程度で階層的に異なる内容が記述される。したがって、基準波形毎に異なる条件を任意に設定することが可能となるので、パラメータに対応する基準波形の設定を詳細に行うことができる。
このような条件は、複数のパラメータの条件の組合せから構成されるようにしてもよい。このような「条件」のフィールドは、例えば図3に示すようにテキストで記述するようにしてもよい。
また、「条件」のフィールドには、このフィールドに記述された条件と受信するパラメータとの対応関係を示す条件式が、テーブルDB65に記憶される。条件式は、メーカー独自のプログラム言語で記述されたものではなく、公知のテーブル計算ソフトウェア等で用いられる言語で記述するようにしてもよい。このような条件式は、「条件」のフィールドに記述された条件の内容から自動生成されるようにしてもよい。
「条件」のフィールドに記述する条件および条件式は、メーカー独自のプログラム言語ではなく、上述したようにテキストや公知のテーブル計算ソフトウェア等で用いられる言語で記述されるので、ユーザにより適宜自由に設定することができる。したがって、ユーザは、「基準波形No.」のフィールドに設定された基準波形毎に、パラメータに対応する条件および条件式を適宜自由に設定する。
【0025】
例えば、図3に示すテーブル65aにおいて、識別番号が「1」のプラント機器4は、識別番号が「1」のマイクロホン2が音信号を検出し、識別番号が「0」〜「4」の4種類の基準波形と、それぞれに対応する条件が設定されている。
ここで、「設定」のフィールドが「TRUE」と設定されているレコードは、「基準波形No.」フィールドが「2」と設定されている。したがって、診断部64は、識別番号が「2」の基準波形により識別番号が「1」のプラント機器4の診断を行っていることを意味する。
また、「基準波形No.」フィールドが「2」と設定されているレコードは、「条件」のフィールドが「速度(2400(30%)〜4000(50%)rpm)」と記述されている。したがって、制御装置5は、速度が2400〜4000rpmまたは出力が30〜50%の範囲内と設定されたパラメータにより、識別番号が「1」のプラント機器4の動作制御を行っている。
【0026】
なお、テーブル65aは、公知のコンピュータで実行可能な公知のテーブル計算ソフトウェアで展開できるようにしてもよい。この場合、テーブル65aは、公知のテーブル計算プログラムで用いられる言語で記述される。これにより、テーブル65aは、メーカー独自のプログラム言語ではなく、テーブル計算ソフトウェア等で用いられる言語で記述されるので、ユーザは、テーブル65aの設定変更が容易に行うことが可能となる。
【0027】
入出力部67は、ユーザの操作入力を検出し、テーブルDB65に記憶されたテーブル65aの設定変更を行う。
また、入出力部67は、テーブルDB65に記憶されているテーブル65aを公知のコンピュータ等からなる外部装置に出力したり、外部装置により生成されたテーブル65aをテーブルDB65に入力することもできる。この場合、テーブル65aは、公知の通信回線を介して、または磁気記録媒体等に記憶することにより、外部装置との間で入出力が行われる。これにより、ユーザとメーカー間でのテーブル65aの受け渡しを容易に行うことが可能となるため、ユーザとメーカー双方の負担を減らすことができる。
【0028】
このような音響診断装置6は、CPU等の演算装置、メモリ、HDD等の記憶装置、有線または無線を介して変換器3および制御装置5と情報の送受を行うI/F装置、キーボード、マウス等の入力装置、CRT(Cathode Ray Tube)、LCD(Liquid Crystal Display)、FED(Field Emission Display)または有機EL(Electro Luminescence)等の表示装置などを備えたコンピュータと、このコンピュータにインストールされたプログラムとからそれぞれ構成されており、上記ハードウェア装置がプログラムによって制御されることによって、すなわちハードウェア資源とソフトウェアが協働することによって、上述した観測波受信部61、パラメータ受信部62、基準波形設定部63、診断部64、テーブルDB65および入出力部67を実現する。
【0029】
次に、図4を参照して音響診断装置6の動作について説明する。図4は、音響診断装置6の動作を示すフローチャートである。
まず、音響診断装置6は、ユーザにより設定されたテーブル65aをテーブルDB65に記憶する(ステップS401)。上述したように、テーブル65aは、プラント機器4の識別番号、マイクロホン2の識別番号、基準波形の識別番号および基準波形を設定するための条件等の属性を有し、メーカー独自のプログラム言語ではなくテキストまたは公知のテーブル計算ソフトウェア等で用いられる言語で記述されるので、ユーザにより適宜自由に設定することが可能である。
【0030】
任意のプラント機器4からマイクロホン2が検出した音信号に基づく観測波形を受信し(ステップS402)、制御装置5からその任意のプラント機器4のパラメータを受信すると(ステップS403)、音響診断装置6は、その任意のプラント機器4の診断に用いる基準波形を変更するか否かを判断する(ステップS404)。
この基準波形の変更の判断は、音響診断装置6の基準波形設定部63により行われる。基準波形設定部63は、テーブルDB65に格納されているテーブル65aを参照し、受信したパラメータを、テーブル65aの任意のプラント機器4に対応するレコードの「条件」のフィールドに対応付けられている条件式に当てはめる。
【0031】
条件式に当てはめた結果、現在設定されている基準波形と異なる基準波形の条件に受信したパラメータが該当した場合(ステップS404:NO)、基準波形設定部63は、基準波形の設定を変更する(ステップS405)。この変更を行うと、テーブル65aには、新たに設定された基準波形に対応するレコードの「設定」のフィールドには「TRUE」、過去に設定されていた基準波形に対応するレコードの「設定」のフィールドには「FALSE」が記述される。なお、このテーブル65aの「設定」のフィールドは、基準波形設定部63により記述される。
条件式に当てはめた結果、現在設定されている基準波形の条件に受信したパラメータが該当した場合(ステップS404:YES)、基準波形設定部63は、基準波形の設定を変更しない。
【0032】
基準波形が設定されると、音響診断装置6は、任意のプラント機器4の診断を行う(ステップS406)。この診断は、音響診断装置6の診断部64により行われる。診断部64は、ステップS402で取得した観測波形と、ステップS403で取得したパラメータに基づく基準波形設定部63により設定された基準波形とに基づいて、異常の有無を検出する。
異常が検出されない場合(ステップS407:NO)、音響診断装置6は、ステップS402の処理に戻る。
異常が検出された場合(ステップS407:YES)、音響診断装置6は、表示装置に異常を検出した旨のメッセージを表示する、スピーカから異常を検出したことを示す警報音を出力させる等の警報の発信する(ステップS408)。
【0033】
警報の発信後、異常が検出された観測波形がプラント機器4の負荷変動等によりテーブル65aに登録された基準波形で対応できない新たな観測波形であると認定されると(ステップS409:YES)、音響診断装置6は、テーブル65aの設定を変更する旨の指示を出す(ステップS410)。
警報の発振後、異常が検出された観測波形が新たな観測波形であると認定されない場合(ステップS409:NO)、音響診断装置6は、診断を中止する。
【0034】
新たな観測波形の検出は、例えば、診断部64が算出した残差信号が任意に設定したしきい値を超えたか否か等により行うようにしてもよい。この検出動作は、診断部64により行われる。
テーブル65aの設定変更の指示は、例えば、音響診断装置6の表示装置に設定変更を指示する旨のメッセージを表示する等により行うようにしてもよい。
【0035】
テーブル65aの設定変更は、ユーザによる操作入力を入出力部66が検出することにより行われる。上述したように、テーブル65aは、メーカー独自のプログラム言語ではなく、テキストや公知のテーブル計算ソフトウェア等で用いられる言語で記述されるので、ユーザにより適宜自由に設定の変更をすることが可能である。
新たな観測波形と認定された波形は、診断部64により、新たな基準波形として診断部64の記憶部64aに登録される。この動作とともに、テーブル65aに新たな観測波形を検出した任意のプラント機器4に対応するレコードを追加し、このレコードの「基準波形No.」のフィールドに記憶部64aに登録した新たな基準波形の識別番号を追加登録する。また、この基準波形の追加登録に伴って、その新たな基準波形の識別番号に対応する「条件」のフィールドおよびこのフィールドに記述する条件に対応する条件式も新たにテーブル65aに追加登録する。
【0036】
このように、本実施の形態によれば、基準波形とパラメータとを対応付けるテーブル65aを設けることにより、このテーブル65aに基づいて基準波形を設定変更されるので、テーブル65aの記載内容を変更するだけで基準波形の設定変更を容易に行うことが可能となる。
また、本実施の形態によれば、テーブル65aはテーブル計算ソフトウェア上に展開することができる。このため、テーブル65aは、メーカー独自のプログラム言語ではなく、テーブル計算ソフトウェアで用いられている言語で記述されることになる。したがって、ユーザは、テーブル65aの記載内容を容易に設定変更することができるので、結果として、基準波形の設定変更を容易に行うことが可能となる。
さらに、本実施の形態によれば、テーブル65aの設定変更を適宜自由に行うことができるので、例えば、基準波形を切り換える条件をより詳細に設定することが可能となる。これにより、小さい異常の予兆信号を捉えることが可能となるので、結果として診断精度が向上する。
【0037】
なお、ステップS402に示す観測波形の受信処理は、ステップS403またはステップS405の後などステップS406の音響診断装置6による診断処理の前であるならば、その順番を適宜自由に変更することができる。
また、ステップS402に示す観測波形の受信処理およびステップS403の受信処理は、例えば10秒間隔など所定の間隔毎に行うようにしてもよい。
【0038】
なお、本実施の形態では、音響診断装置6は、プラント機器4から発せられる音に基づいて診断を行うようにしているが、基準波形と観測波形とを比較してプラント機器の異常を診断するのであれば診断に用いる波形は音に由来するものに限定されず、例えば、振動や光などの波形信号を適宜自由に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施の形態にかかる音響診断システムの構成を示す模式図である。
【図2】音響診断装置6の構成を示すブロック図である。
【図3】テーブル65aの模式図である。
【図4】音響診断装置6の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0040】
1…音響診断システム、2…マイクロホン、3…変換器、4…プラント機器、5…制御装置、6…音響診断装置、61…観測波受信部、62…パラメータ受信部、63…基準波形設定部、64…診断部、65…テーブルDB、65a…テーブル、66…入出力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断対象から観測される観測波形を受信する観測波受信手段と、
前記診断対象に関するパラメータを受信するパラメータ受信手段と、
複数の基準波形を記憶した記憶手段と、
前記パラメータと前記基準波形とを対応付けるテーブルと、
このテーブルに基づいて、前記信号受信手段が受信したパラメータに対応する基準波形を設定する設定手段と、
この設定手段により設定された基準波形と前記観測波形とを比較して診断を行う診断手段と
を備えたことを特徴とする診断装置。
【請求項2】
前記テーブルは、各基準波形に対し当該基準波形を選択すべき条件を含む
ことを特徴とする請求項1記載の診断装置。
【請求項3】
前記テーブルを外部装置との間で入出力する入出力手段
をさらに備えることを特徴とする請求項1または2記載の診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−164490(P2008−164490A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−355699(P2006−355699)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2006年8月1日 株式会社 神戸製鋼所発行の「神戸製鋼技報 第55巻・第2号(通巻第213号)」に発表
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】