説明

診療用インスツルメントホルダ、診療用ユニット及びアダプタ

【課題】外形形状が異なるコードレス診療用インスツルメントを保持し充電することができる診療用インスツルメントホルダ及び診療用ユニットを提供する。
【解決手段】診療用インスツルメントホルダ128は、ホルダ本体130とアダプタ132とを備える。ホルダ本体130には、収容孔134が形成される。収容孔134の内底面136には、充電位置に保持されたコードレス診療用インスツルメントを充電する電力を供給する供給経路となる充電端子138が設けられる。アダプタ132には、コードレス診療用インスツルメントを収容する収容孔144が形成される。収容孔144は、コードレス診療用インスツルメントの外形形状に適合する孔形状を有する。アダプタ132は、コードレス診療用インスツルメントを充電位置に保持する。アダプタ132は、ホルダ本体130の収容孔134の空間形状に適合する外形形状を有し、収容孔134に収容される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診療用インスツルメントホルダ、診療用ユニット及びアダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
医科又は歯科の診療に用いる診療用ユニットは、必要な診療用インスツルメントを診療用ユニットの本体とチューブで接続し、診療用ユニットの本体とチューブで接続された診療用インスツルメント(以下では、「チューブ接続診療用インスツルメント」という)を診療用インスツルメントホルダに保持するように構成されたものが多い。また、特許文献1は、診療用ユニットの本体とチューブで接続されない診療用インスツルメント(以下では、「コードレス診療用インスツルメント」という)を保持する専用の診療用インスツルメントホルダを診療用ユニットに設けることを提案している。
【0003】
特許文献2は、本願発明と関連する文献公知発明が記載された先行技術文献であり、診療用インスツルメントホルダに保持させるチューブ接続診療用インスツルメントにあわせてスペーサを交換することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−226053号公報
【特許文献2】特開2008−178504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、外形形状が異なるコードレス診療用インスツルメントを診療用インスツルメントホルダに保持させることができないという問題を生じる。又は、コードレス診療用インスツルメントの外形形状ごとに専用の診療用インスツルメントホルダを設ける必要を生じ、診療用ユニットの外部及び内部の構造が複雑になるという問題を生じる。また、特許文献2の技術では、インスツルメントホルダに保持されるのは従来どおりのチューブ接続診療用インスツルメントに限られ、コードレス診療用インスツルメントを保持したり、さらにはそれらコードレス診療用インスツルメントに設けた充電地に充電を行ったりすることはできない。
【0006】
本発明は、この問題を解決するためになされたもので、外形形状が異なるコードレス診療用インスツルメントを保持し充電することができる診療用インスツルメントホルダ及び診療用ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、診療用ユニットに備えられ、充電された電力により動作するコードレス診療用インスツルメントを保持する診療用インスツルメントホルダであって、第1の収容空間が形成され、充電位置に保持された前記コードレス診療用インスツルメントを充電する電力を供給する給電機構を備える収容空間形成体と、前記コードレス診療用インスツルメントの外形形状に適合する空間形状を有し前記コードレス診療用インスツルメントを収容する第2の収容空間が形成され、前記コードレス診療用インスツルメントを充電位置に保持し、前記第1の収容空間に適合する外形形状を有し前記第1の収容空間に収容されるアダプタと、を備える。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の診療用インスツルメントホルダにおいて、前記第1の収容空間は、前記診療用ユニットの本体とチューブで接続されるチューブ接続診療用インスツルメントを収容する。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の診療用インスツルメントホルダにおいて、前記収容空間形成体に対して前記アダプタが着脱自在である。
【0010】
請求項4の発明は、前記第2の収容空間は、請求項1ないし請求項3のいずれかの診療用インスツルメントホルダにおいて、前記コードレス診療用インスツルメントの複数の外形形状に適合する空間形状を有し、前記アダプタは、前記コードレス診療用インスツルメントの外形形状ごとに決まった充電位置に前記コードレス診療用インスツルメントを保持する。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかの診療用インスツルメントホルダにおいて、前記アダプタは、前記コードレス診療用インスツルメントの複数の外形形状の各々に適合する空間形状を有する前記第2の収容空間が形成された複数の部材を入れ子状に重ね合わせた重ね合わせ体であり、前記重ね合わせ体における前記複数の部材の重ね合わせが解消自在である。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかの診療用インスツルメントホルダにおいて、前記収容空間形成体は、充電条件の決定の基礎となる前記第2の収容空間に収容された前記コードレス診療用インスツルメントの種類を識別する識別機構、を備える。
【0013】
請求項7の発明は、請求項6の診療用インスツルメントホルダにおいて、前記識別機構は、前記アダプタの種類を識別することにより前記コードレス診療用アダプタの種類を識別する。
【0014】
請求項8の発明は、診療用ユニットであって、請求項1ないし請求項7のいずれかの診療用インスツルメントホルダと、前記給電機構に電力を供給する電源と、前記第2の収容空間に収容され、充電された電力により動作するコードレス診療用インスツルメントと、を備える。
【0015】
請求項9の発明は、請求項8の診療用ユニットにおいて、複数個の前記診療用インスツルメントホルダに保持された複数個の前記コードレス診療用インスツルメントから充電の対象を選択する選択回路、をさらに備える。
【0016】
請求項10の発明は、請求項9の診療用ユニットにおいて、前記コードレス診療用インスツルメントの充電残量を検出する充電残量検出回路、をさらに備え、前記選択回路は、前記充電残量検出回路により検出された充電残量が最も少ない前記コードレス診療用インスツルメントを充電の対象とする。
【0017】
請求項11の発明は、請求項8ないし請求項10のいずれかの診療用ユニットにおいて、前記コードレス診療用インスツルメントの充電の完了を検出する充電完了検出回路と、前記充電完了検出回路による充電の完了の検出に同期して充電の完了を報知する報知機構と、をさらに備える。
【0018】
請求項12の発明は、請求項8ないし請求項11のいずれかの診療用ユニットにおいて、前記コードレス診療用インスツルメントの充電の完了までの残り時間を検出する残り時間検出回路と、前記残り時間検出回路が検出した残り時間を表示する表示機構と、をさらに備える。
【0019】
請求項13の発明は、請求項8ないし請求項13のいずれかの診療用ユニットにおいて、昇降及び傾動して被術者を仰臥位で着座させる診療台と、診療用トレーと、を備え、前記診療用インスツルメントホルダが、前記診療台の背もたれ、前記診療台の頭部支え及び前記診療用トレーの少なくともいずれかに設けられる。
【0020】
請求項14の発明は、診療用ユニットに備えられ、充電された電力により動作するコードレス診療用インスツルメントを保持する診療用インスツルメントホルダであって、前記診療用ユニットの本体とチューブで接続されるチューブ接続診療用インスツルメントを収容する第1の収容空間が形成された収容空間形成体と、前記コードレス診療用インスツルメントの外形形状に適合する空間形状を有し前記コードレス診療用インスツルメントを収容する第2の収容空間が形成され、前記コードレス診療用インスツルメントを充電位置に保持し、前記診療用ユニットの本体に着脱される給電用チューブを経由して前記診療用ユニットの本体から電力の供給を受け充電位置に保持された前記コードレス診療用インスツルメントを充電する電力を供給する給電機構を備え、前記第1の収容空間に適合する外形形状を有し前記第1の収容空間に収容されるアダプタと、を備える。
【0021】
請求項15の発明は、第1の収容空間が形成された収容空間形成体に充電された電力により動作するコードレス診療用インスツルメントを保持させるためのアダプタであって、前記コードレス診療用インスツルメントの外形形状に適合する空間形状を有し前記コードレス診療用インスツルメントを収容する第2の収容空間が形成され、前記コードレス診療用インスツルメントを充電位置に保持し、前記第1の収容空間に適合する外形形状を有し前記第1の収容空間に収容される。
【発明の効果】
【0022】
請求項1ないし請求項15の発明によれば、外形形状が異なるコードレス診療用インスツルメントがひとつの診療用インスツルメントホルダに保持されるので、コードレス診療用インスツルメントに設けた充電池への充電が可能になる上、診療用ユニットの構造が簡素になる。
【0023】
請求項2の発明によれば、コードレス診療用インスツルメント専用の診療用インスツルメントホルダを設けることなくコードレス診療用インスツルメントを保持し充電することができるので、診療用ユニットの構造が簡素になる。
【0024】
請求項3の発明によれば、保持する診療用インスツルメントの種類の変更が容易になるので、診療用ユニットの利便性が向上する。
【0025】
請求項4の発明によれば、アダプタを交換することなく外形形状が異なるコードレス診療用インスツルメントを保持させることができるので、診療用ユニットの利便性が向上する。
【0026】
請求項5の発明によれば、複数の部材の重ね合わせを変更するだけで外形形状が異なるコードレス診療用インスツルメントを保持させることができるので、診療用ユニットの利便性が向上する。
【0027】
請求項6の発明によれば、コードレス診療用インスツルメントの種類に適した充電条件でコードレス診療用インスツルメントが充電されるので、診療用ユニットの利便性が向上する。
【0028】
請求項7の発明によれば、コードレス診療用インスツルメントに、自身の充電に係る情報を保有したり外部へ送信したりする機構を設ける必要がなくなるため、コードレス診療用インスツルメントが小型化及び簡素化する。
【0029】
請求項9の発明によれば、充電の必要性が高いコードレス診療用インスツルメントが優先的に充電されるため、使用者の便宜や診療状況に応じた充電が可能となる。
【0030】
請求項10の発明によれば、充電残量が最も少ないコードレス診療用インスツルメントが優先的に充電されるため、充電不足に起因する診療の停滞が回避される。
【0031】
請求項11の発明によれば、コードレス診療用インスツルメントの充電の完了が容易に認識されるので、診療用ユニットの利便性が向上する。
【0032】
請求項12の発明によれば、充電の完了までの残り時間を容易に知ることができるので、診療用ユニットの利便性が向上する。
【0033】
請求項13の発明によれば、診療用ユニットの各部でコードレス診療用インスツルメントが充電され、診療用ユニットの利便性が向上する。
【0034】
請求項14の発明によれば、コードレス診療用インスツルメントを充電するための機構が、チューブ接続診療用インスツルメントのチューブと置き換えられる給電用チューブとなり、従来の診療用ユニットに容易に装着しうるため、診療用ユニットの機能の拡張に資する。
【0035】
請求項15の発明によれば、インスツルメントホルダに充電機能を追加するアダプタが得られるため、インスツルメントホルダ並びに診療用ユニットの機能の拡張に資する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】第1実施形態の診療用ユニットの斜視図である。
【図2】トレーの斜視図である。
【図3】ホルダ本体にアダプタを取り付けた状態を示す斜視図である。
【図4】ホルダ本体からアダプタを取り外した状態を示す斜視図である。
【図5】診療用ユニットの内部のブロック図である。
【図6】第2実施形態のアダプタ及び当該アダプタの収容孔に収容されるコードレス診療用インスツルメントの斜視図である。
【図7】第3実施形態のアダプタの斜視図である。
【図8】第4実施形態の診療用インスツルメントホルダの斜視図である。
【図9】第5実施形態のホルダ本体の斜視図である。
【図10】残り時間表示機能を付加するために追加される構成物のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
<第1実施形態>
{診療用ユニット102の概略}
図1は、第1実施形態の診療用ユニット102の模式図である。図1は、診療用ユニット102の斜視図となっている。
【0038】
診療用ユニット102は、チェア108を備え歯科の診療に用いられる歯科用チェアユニットである。ただし、このことは、歯科用チェアユニット以外の診療用ユニット、例えば、耳鼻咽喉科等の他の診療科の診療に用いられる診療用ユニットやチェア108を備えない診療用ユニットに本発明を適用することを妨げない。診療用ユニット102は、床面に据え付けられた診療用ユニット102の本体(以下では、「ユニット本体」という)104の診療用インスツルメントホルダ128(図1には不図示、図2に図示)に必要な診療用インスツルメント106を保持させた状態で用いられる。
【0039】
図1に示すように、ユニット本体104は、昇降及び傾動して被術者を仰臥位で着座させる診療台であるチェア108と、載置場所を提供する診療用トレー110と、診療用トレー110を保持するトレーアーム112と、被術者の口腔内を照明するデンタルライト114と、デンタルライト114を保持するライトポール116と、うがい水を供給し被術者が吐き出したうがい水を回収するベースンユニット118と診療用インスツルメント106のうちユニット本体104とチューブで接続されるもの(以下では、「チューブ接続診療用インスツルメント」という)が接続される本体側接続部120とを備える。なお、これらの構成物の一部をユニット本体104から省略してもよいし、これらの構成物以外の構成物をユニット本体104に追加してもよい。
【0040】
{診療用トレー110}
図2は、診療用トレー110の模式図である。図2は、診療用トレー110の斜視図となっている。
【0041】
図2に示すように、診療用トレー110は、載置場所を提供するトレーテーブル124と、診療用インスツルメントホルダ128を固定するステー126と、診療用インスツルメント106を保持する診療用インスツルメントホルダ128とを備える。図2は、6個の診療用インスツルメントホルダ128が診療用トレー110に設けられる場合を示しているが、診療用インスツルメントホルダ128の数を増減しても良いし、診療用インスツルメントホルダ128を設ける場所を変更してもよい。例えば、診療用インスツルメントホルダ128を、診療用トレー110に代えて、又は、診療用トレー110に加えて、チェア108の背もたれ180及び頭部支え182(図1に図示)の両方又は片方に設けてもよい。
【0042】
{診療用インスツルメントホルダ128}
図3及び図4は、診療用インスツルメントホルダ128の模式図である。図3及び図4は、診療用インスツルメントホルダ128の斜視図となっている。図3は、診療用インスツルメントホルダ128の本体(以下では、「ホルダ本体」という)130にアダプタ132を取り付けた状態を示し、図4は、ホルダ本体130からアダプタ132を取り外した状態を示している。
【0043】
診療用インスツルメントホルダ128は、チューブ接続診療用インスツルメントを保持するホルダ本体130と、診療用インスツルメント106のうちユニット本体104とチューブで接続されず充電された電力により動作するもの(以下では、「コードレス診療用インスツルメント」という)をホルダ本体130に保持させるためのアダプタ132とを備える。診療用インスツルメントホルダ128は、チューブ接続診療用インスツルメント及びコードレス診療用インスツルメントのホルダを兼ねる。診療用インスツルメントホルダ128は、ホルダ本体130にアダプタ132を取り付けた状態においては、コードレス診療用インスツルメントを保持し、ホルダ本体130からアダプタ132を取り外した状態においては、チューブ接続診療用インスツルメントを保持する。これにより、コードレス診療用インスツルメント専用の診療用インスツルメントホルダを設けることなくコードレス診療用インスツルメントを保持し充電することができるので、診療用ユニット102が簡素になる。なお、全部の診療用インスツルメントホルダ128がチューブ接続診療用インスツルメント及びコードレス診療用インスツルメントのホルダを兼ねることは必須ではなく、一部の診療用インスツルメントホルダ128がチューブ接続診療用インスツルメント及びコードレス診療用インスツルメントのホルダを兼ねるだけであってもよい。
【0044】
{チューブ接続診療用インスツルメント}
チューブ接続診療用インスツルメントは、主に、診療用インスツルメントのうち、エア流、水流等の流体流で駆動されるもの、内蔵の充電池では供給が困難な比較的大きな電力で駆動されるもの等である。チューブ接続診療用インスツルメントには、例えば、エア流の供給を受けて切削工具を回転させるエアタービンハンドピース及びエアモータハンドピース、エア流の供給を受けてスケーラチップを振動させるエアスケーラ、電力の供給を受けて切削工具を回転させる電気モータハンドピースのうち駆動に必要な電力が比較的大きなもの、電力の供給を受けてスケーラチップを振動させる超音波スケーラのうち駆動に必要な電力が比較的大きなもの、エア流及び水流の供給を受けてエア及び水の両方又は片方を噴射するスリーウェイシリンジ等がある。
【0045】
{コードレス診療用インスツルメント}
コードレス診療用インスツルメントは、主に、診療用インスツルメントのうち、内蔵の充電池でも供給が容易な比較的小さな電力で駆動されるもの等である。コードレス診療用インスツルメントには、例えば、電力の供給を受けて光重合レジンを重合させる光を照射する光重合照射器、電力の供給を受けて口腔内を撮像する口腔内カメラ、電力の供給を受けて切削工具を回転させる電気モータハンドピースのうち駆動に必要な電力が比較的小さなもの、電力の供給を受けてスケーラチップを振動させる超音波スケーラのうち駆動に必要な電力が比較的小さなもの、根管に充填される充填材を加熱及び/又は押圧する根管充填器等がある。なお、ここで例示した診療用インスツルメント以外の診療用インスツルメントがコードレス診療用インスツルメントとなることもある。
【0046】
{ホルダ本体130}
図4に示すように、ホルダ本体130は、チューブ接続診療用インスツルメントを収容する空間となる収容孔134が形成された収容空間形成体である。収容孔134の内底面136には、充電位置に保持されたコードレス診療用インスツルメントを充電する電力(以下では、「充電電力」という)を供給する供給経路となる充電端子138が設けられる。なお、収容孔134の内底面136以外、例えば、収容孔134の内側面140に充電端子138を設けてもよい。充電端子138を備える有接点の給電機構158(図4には不図示、図5に図示)ではなく、無接点の給電機構を採用してもよい。無接点の給電機構を採用する場合、コイル等の電磁結合用の部品がホルダ本体130に埋め込まれる。
【0047】
ホルダ本体130には、ホルダ本体130をステー126に固定するネジが螺合されるネジ孔142が形成される。
【0048】
{アダプタ132}
アダプタ132には、コードレス診療用インスツルメントを収容する空間となる収容孔144が形成される。収容孔144は、コードレス診療用インスツルメントの外形形状に適合する孔形状(空間形状)を有する。これにより、アダプタ132は、コードレス診療用インスツルメントを充電位置に保持する。ここでいう「適合」は、コードレス診療用インスツルメントの外形形状と収容孔144の孔形状とが完全に同一であることを要求しない。したがって、コードレス診療用インスツルメントの外側面と収容孔144の内側面149との間には、コードレス診療用インスツルメントの挿抜を容易にするための隙間がある。この隙間は、収容孔144の中でコードレス診療用インスツルメントが動いてもコードレス診療用インスツルメントの充電が可能な充電位置に保持した状態が維持される程度の幅を有する。つまり、「充電位置」は、収容孔144の径方向に若干の広がりを有している。
【0049】
ひとつの診療用インスツルメントホルダ128に外形形状が異なる複数のコードレス診療用インスツルメントを保持させる場合、コードレス診療用インスツルメントの外形形状ごとに収容孔144の孔形状が異なるアダプタ132が準備され、診療用インスツルメントホルダ128に保持させるコードレス診療用インスツルメントを変更するときにはアダプタ132が交換される。これにより、外形形状が異なるコードレス診療用インスツルメントがひとつの診療用インスツルメントホルダに保持されるので、診療用ユニット102の構造が簡素になる。
【0050】
収容孔144の内底面146には、ホルダ本体130にアダプタ132を取り付けたときに充電端子138が挿通する貫通孔148が形成される。これにより、ホルダ本体130にアダプタ132を取り付けたときに、充電端子138が収容孔144の内底面146に露出し、収容孔144に収容されたコードレス診療用インスツルメントの底面に充電端子138が接触し、コードレス診療用インスツルメントが充電される。
【0051】
アダプタ132は、ホルダ本体130の収容孔134の空間形状に適合する外形形状を有する。これにより、アダプタ132は、収容孔134に収容される。ホルダ本体130に対してアダプタ132を着脱自在にするため、アダプタ132の外側面150と収容孔134の内側面140とは、摺動可能になっている。ホルダ本体130に対してアダプタ132が着脱自在になれば、保持する診療用インスツルメントの種類の変更が容易になるので、診療用ユニット102の利便性が向上する。ただし、コードレス診療用インスツルメントを診療用インスツルメントホルダ128から抜いたときにホルダ本体130からアダプタ132が脱落することを防止するため、コードレス診療用インスツルメントを診療用インスツルメントホルダ128から抜くときに加わる力に抗する摩擦力が収容孔134の内側面140とアダプタ132の外側面150との間に生じるようにするか、アダプタ132を着脱するとき以外は係止爪等によりアダプタ132をホルダ本体130に係止することが望ましい。
【0052】
{診療用ユニット102の内部}
図5は、診療用ユニット102の内部構成要素のブロック図である。
【0053】
図5に示すように、コードレス診療用インスツルメント152には、コードレス診療用インスツルメント152を動作させる電力を供給する充電池154が内蔵される。
【0054】
アダプタ132には、コードレス診療用インスツルメント152の種類を識別する情報源となる電気抵抗156が設けられる。
【0055】
ホルダ本体130には、コードレス診療用インスツルメント152を充電する電力を供給する給電機構158と、アダプタ132の収容孔144に収容されたコードレス診療用インスツルメント152の種類を識別する識別回路160とが設けられる。
【0056】
ユニット本体104には、給電機構158に充電電力を供給する電源162と、コードレス診療用インスツルメント152の充電を制御する充電制御回路164とが設けられる。
【0057】
充電制御回路164は、識別回路160によるコードレス診療用インスツルメント152の種類の識別結果に基づいて、コードレス診療用インスツルメント152に内蔵された充電池154の充電条件、例えば、充電電圧、充電電流、充電時間及び充電方式の全部又は一部を決定し、決定した充電条件で充電が行われるように電源162から充電池154への充電電力の供給を制御する。これにより、充電条件を手動で設定しなくても、コードレス診療用インスツルメント152の種類に適した充電条件でコードレス診療用インスツルメント152が充電されるので、診療用ユニット102の利便性が向上する。ここでいう「充電方式」の決定とは、例えば、充電池154がリチウムイオン電池であれば、定電流充電から定電圧充電へ切り替える第1の充電方式を採用し、充電池154がニッケル水素電池であれば、急速充電からトリクル充電へ切り替える第2の充電方式を採用するといった、充電電圧又は充電電流の切り替えの方式の決定を意味する。
【0058】
{充電の対象の選択}
図5に示すように、複数個の診療用インスツルメントホルダ128に保持された複数個のコードレス診療用インスツルメント152から充電の対象を選択する選択回路170をユニット本体104に設けることも望ましい。これにより、充電の必要性が高いコードレス診療用インスツルメント152が優先的に充電される。
【0059】
充電の対象は、コードレス診療用インスツルメント152の充電残量を検出する充電残量検出回路172をユニット本体104に設け、充電残量検出回路172により検出された充電残量が最も少ないコードレス診療用インスツルメント152とすることが望ましい。また例えば、コードレス診療用インスツルメント152内に充電残量検出回路(不図示)を設け、電流値と時間の積から消費電力を割り出し、電池の充電残量を検出し、ユニット本体104へ通信によって知らせるようにしてもよい。これにより、充電残量が最も少ないコードレス診療用インスツルメント152が優先的に充電される。
【0060】
{充電の完了の報知}
図5に示すように、充電の完了を報知する報知機構174と、コードレス診療用インスツルメント152の充電の完了を検出し、充電の完了の検出に同期して報知機構174を動作させる充電完了検出回路176をユニット本体104に設けることも望ましい。報知機構174は、発光ダイオード等のランプの点灯状態の変化、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示機構の表示状態の変化等により充電が完了したことを術者の視覚に訴える。又は、報知機構174は、ブザーを鳴らしたり、スピーカからメッセージを流したりして、充電が完了したことを術者の聴覚に訴える。これにより、コードレス診療用インスツルメント152の充電の完了が容易に認識されるので、診療用ユニット102の利便性が向上する。
【0061】
報知機構174は、トレーテーブル124の一角やトレーテーブル上に設けられたディスプレイ(不図示)などユニット本体104のどこに設けてもよいが、診療用インスツルメントホルダ128又はその近傍に設けると、コードレス診療用インスツルメント152と報知機構174とが同一視野内に入り易い等の理由により、これから使用するコードレス診療用インスツルメントの充電が完了しているか否かを認識しやすくなる。
【0062】
{コードレス診療用インスツルメント152の識別}
図5に示す診療用ユニット102では、アダプタ132に固有の抵抗値を有する、すなわち、アダプタ132ごとに抵抗値が異なる電気抵抗156をアダプタ132に設け、識別回路160により電気抵抗156の抵抗値を読み取り、電気抵抗156の抵抗値からアダプタ132の種類を識別し、その結果として、コードレス診療用インスツルメント152の種類を識別する。
【0063】
電気抵抗156の抵抗値からのアダプタ132の種類の識別は、どのように行ってもよいが、例えば、電気抵抗156に一定の電流を流し、電気抵抗156の両端の電圧が閾値を超えるか否かをコンパレータで検出することにより行う。当該電圧をA/Dコンバータでデジタル値に変換し、組み込みコンピュータによりアダプタ132の種類を識別してもよい。
【0064】
電気抵抗156の抵抗値からアダプタ132の種類を識別するのが、容易さの点から望ましいが、このことは、キャパシタのキャパシタンスやインダクタのインダクタンスからアダプタ132の種類を識別すること、より一般的には、素子のインピーダンスからアダプタ132の種類を識別することを妨げない。
【0065】
なお、コードレス診療用インスツルメント152の種類を識別する情報源をコードレス診療用インスツルメント152に設けることも考えられるが、情報源をコードレス診療用インスツルメント152に設けた場合、コードレス診療用インスツルメント152とユニット本体104との間で通信を行うための仕組み等が必要になり、コードレス診療用インスツルメント152が大型化及び複雑化する。このため、情報源をアダプタ132に設けることは、コードレス診療用インスツルメント152の小型化及び簡素化に寄与し、コードレス診療用インスツルメント152の操作性の向上及び低価格化に寄与する。
【0066】
アダプタ132の種類の識別は、他の方法で行ってもよい。例えば、アダプタ132の種類を識別する情報をデジタル信号として送信する送信回路をアダプタ132に設け、当該送信回路から送信されてきた情報に基づいてアダプタ132の種類を識別してもよい。又は、識別端子をアダプタ132に設け、識別端子の間の導通状態に基づいてアダプタ132の種類を識別してもよい。又は、識別符号を記憶保存し識別回路160に識別符号を読み取らせるRFID(Radio Frequency IDentification:電波による識別)タグをアダプタ132に設け、電気接点を設けることなく非接触でアダプタ132の種類を識別してもよい。
【0067】
電気的な機構によるアダプタ132の種類の識別も必須ではなく、電気的な機構と機械的な機構とが混在する識別機構による識別も許される。例えば、アダプタに識別爪を設け、識別爪の有無や位置等に基づいてアダプタ132の種類を識別してもよい。
【0068】
<第2実施形態>
第2実施形態は、第1実施形態のアダプタ132に代えて採用することができるアダプタ202に関する。図6は、第2実施形態のアダプタ202及びアダプタ202の収容孔208に収容されるコードレス診療用インスツルメント204,206の模式図である。図6は、アダプタ202及びコードレス診療用インスツルメント204,206の斜視図となっている。
【0069】
図6に示すように、アダプタ202にも、コードレス診療用インスツルメント204,206を収容する空間となる収容孔208が形成される。収容孔208の内底面210には、ホルダ本体130の給電機構158から充電位置に保持されたコードレス診療用インスツルメント204,206へ充電電力を中継する電力中継機構212が設けられる。
【0070】
収容孔208は、コードレス診療用インスツルメント204,206の複数の外形形状に適合する孔形状を有する。すなわち、収容孔208の内底面210寄りの細孔部214は、被保持部が細径のコードレス診療用インスツルメント(以下では、「細径コードレス診療用インスツルメント」という)204の外径に適合させるために内径が細くなっており、収容孔208の開口211寄りの太孔部216は、被保持部が太径のコードレス診療用インスツルメント(以下では、「太径コードレス診療用インスツルメント」という)206の外径に適合させるために内径が太くなっている。これにより、アダプタ202は、コードレス診療用インスツルメント204,206の外形形状ごとに決まった充電位置にコードレス診療用インスツルメント204,206を保持する。すなわち、アダプタ202は、収容孔208の細孔部214に収容され収容孔208の内底面210の近くまで挿入された状態となる第1の充電位置に細径コードレス診療用インスツルメント204を保持し、収容孔208の太孔部216に収容され細孔部214と太孔部216との境界にある段差まで挿入された状態となる第2の充電位置に太径コードレス診療用インスツルメント206を保持する。
【0071】
電力中継機構212は、充電電力の供給経路となる充電端子218と、充電端子218を保持する保持体220と、保持体220を開口へ向かって付勢するコイルバネ222とを備える。空気バネ等のコイルバネ以外の弾性部材によって保持体220を付勢してもよい。
【0072】
充電端子218は、保持体220の開口211を向く面に設けられる。コイルバネ222の一端は保持体220の内底面210を向く面に接続され、他端は内底面210に接続される。コードレス診療用インスツルメント204,206が充電端子218に接触していない自然状態においては、太孔部216と細孔部214との境界よりも開口211寄りに充電端子218の先端が位置している。このため、太径コードレス診療用インスツルメント206が太孔部216に収容されると、太径コードレス診療用インスツルメント206の底面に充電端子218が接触してコイルバネ222が弱く圧縮され、太孔部216と細孔部214との境界に充電端子218の先端が位置する状態となる。細径コードレス診療用インスツルメント204が細孔部214に収容されると、細径コードレス診療用インスツルメント204の底面に充電端子218が接触してコイルバネ222が強く圧縮され、アダプタ202の内底面210の近傍に充電端子218の先端が位置する状態となる。
【0073】
アダプタ202がホルダ本体130の収容孔134の空間形状に適合する外形形状を有すること、アダプタ202の外側面224と収容孔134の内側面140とは、摺動可能になっていること、コードレス診療用インスツルメント204,206を診療用インスツルメントホルダ128から抜くときに加わる力に抗する摩擦力がアダプタ202の外側面224と収容孔134の内側面140との間に生じるようにするか、アダプタ202を着脱するとき以外は係止爪等によりアダプタ202をホルダ本体130に係止することは、第1実施形態のアダプタ132と同様である。また、第1実施形態と同様、アダプタ202の内底面210に貫通孔を設け、電力中継機構212をアダプタ202の内底面210ではなく前記ホルダ本体130に設けることで、ホルダ本体130にアダプタ202を取り付けたときに、充電端子218が収容孔208内に露出するようにしてもよく、この場合、アダプタ202自体の構成をより簡素化することができる。
【0074】
第2実施形態のアダプタ202により、アダプタ202を交換することなく外形形状が異なる太径コードレス診療用インスツルメント206及び細径コードレス診療用インスツルメント204を保持させることができるので、診療用ユニット102の利便性が向上する。
【0075】
図6は、コードレス診療用インスツルメント204,206の2種類の外形形状に適合する孔形状を有する収容孔208が形成されたアダプタ202を示しているが、3種類以上の外形形状に適合する孔形状を有する収容孔を形成してもよい。
【0076】
<第3実施形態>
第3実施形態は、第1実施形態のアダプタ132に代えて採用することができるアダプタ302に関する。図7は、第3実施形態のアダプタ302の模式図である。図7は、第3実施形態のアダプタ302の斜視図となっている。
【0077】
図7に示すように、アダプタ302は、コードレス診療用インスツルメントの複数の外形形状の各々に適合する孔形状を有する収容孔310,312,314が形成された複数のアダプタ構成部材304,306,308を入れ子状に重ね合わせた重ね合わせ体である。すなわち、アダプタ構成部材304,306,308には、それぞれ、被保持部が細径、中径及び太径のコードレス診療用インスツルメントに適合する孔形状を有し被保持部が細径、中径及び太径のコードレス診療用インスツルメントが収容される収容孔310,312,314が形成される。
【0078】
アダプタ302においては、アダプタ構成部材304,306,308の重ね合わせは解消自在である。アダプタ構成部材304,306,308の重ね合わせを解消自在にするため、最も外側のアダプタ構成部材308以外のアダプタ構成部材304,306は、それぞれ、そのひとつ外側のアダプタ構成部材306,308の収容孔312,314の内径に適合する外径を有する。アダプタ構成部材304,306の外側面311,313と、そのひとつ外側のアダプタ構成部材306,308の内側面318,320とは、摺動可能になっている。ただし、コードレス診療用インスツルメントを診療用インスツルメントホルダ128から抜いたときにアダプタ302からアダプタ構成部材304,306が脱落することを防止するため、コードレス診療用インスツルメントを診療用インスツルメントホルダ128から抜くときに加わる力に抗する摩擦力がアダプタ構成部材304,306の外側面311,313とそのひとつ外側のアダプタ構成部材306,308の内側面318,320との間に生じるようにするか、アダプタ構成部材の304,306,308の重ね合わせを解消するとき以外は、係止爪等によりアダプタ構成部材304,306,308を係止することが望ましい。
【0079】
最も外側のアダプタ構成部材308の収容孔314の内底面340には、ホルダ本体130の給電機構158から充電位置に保持されたコードレス診療用インスツルメントへ充電電力を中継する電力中継機構324が設けられる。最も外側のアダプタ構成部材308以外のアダプタ構成部材304,306の収容孔310,312の内底面336,338には、アダプタ構成部材304,306,308を重ね合わせたときに充電端子330が挿通する貫通孔326,328が形成される。これにより、アダプタ構成部材308のみを用いるとき、アダプタ構成部材306,308を重ね合わせて用いるとき及びアダプタ構成部材304,306,308を重ね合わせて用いるときのいずれも、充電端子330が最も内側のアダプタ構成部材の内底面に露出し、最も内側のアダプタ構成部材の収容孔に収容されたコードレス診療用インスツルメントの底面に充電端子330が接触し、コードレス診療用インスツルメントが充電される。
【0080】
電力中継機構324は、充電電力の供給経路となる充電端子330と、充電端子330を保持する保持体332と、保持体332を開口317へ向かって付勢するコイルバネ334とを備える。空気バネ等のコイルバネ334以外の弾性部材によって保持体332を付勢してもよい。
【0081】
充電端子330は、保持体332の開口317を向く面に設けられる。コイルバネ334の一端は保持体332の内底面340に向く面に接続され、他端は最も外側のアダプタ構成部材308の内底面340に接続される。コードレス診療用インスツルメントが充電端子330に接触していない自然状態においては、全てのアダプタ構成部材304,306,308を重ね合わせたときの最も内側のアダプタ構成部材304の内底面336よりも開口316,317寄りに充電端子330の先端が位置している。このため、細径コードレス診療用インスツルメントがアダプタ構成部材304,306,308の重ね合わせ体の最も内側のアダプタ構成部材304の収容孔310に収容されると、細径コードレス診療用インスツルメントの底面に充電端子330が接触してコイルバネ334が弱く圧縮され、収容孔310の内底面336に充電端子330の先端が位置する状態となる。中径コードレス診療用インスツルメントがアダプタ構成部材306,308の重ね合わせ体の最も内側のアダプタ構成部材306の収容孔312に収容されると、中径コードレス診療用インスツルメントの底面に充電端子330が接触してコイルバネ334がより強く圧縮され、収容孔312の内底面338に充電端子330の先端が位置する状態となる。太径コードレス診療用インスツルメントがアダプタ構成部材308の収容孔314に収容されると、太径コードレス診療用インスツルメントの底面に充電端子330が接触してコイルバネ334がさらに強く圧縮され、収容孔314の内底面340又はその近傍に充電端子330の先端が位置する状態となる。
【0082】
アダプタ302(最も外側のアダプタ構成部材308)は、ホルダ本体130の収容孔134の空間形状に適合する外形形状を有すること、アダプタ302の外側面315と収容孔134の内側面140とは、摺動可能になっていること、コードレス診療用インスツルメントを診療用インスツルメントホルダ128から抜くときに加わる力に抗する摩擦力が収容孔134の内側面140とアダプタ302の外側面315(最も外側のアダプタ構成部材308の外側面315)との間に生じるようにするか、アダプタ302を着脱するとき以外は係止爪等によりアダプタ302をホルダ本体130に係止することは、第1実施形態のアダプタ132と同様である。
【0083】
第3実施形態のアダプタ302により、複数のアダプタ構成部材304,306,308の重ね合わせを変更するだけで複数種類のコードレス診療用インスツルメントを保持させることができるので、診療用ユニット102の利便性が向上する。例えば、太径コードレス診療用インスツルメントを診療用インスツルメントホルダ128に保持させる場合は、アダプタ構成部材308のみをホルダ本体130に取り付け、中径診療用インスツルメントを診療用インスツルメントホルダ128に保持させる場合は、アダプタ構成部材306,308の重ね合わせ体をホルダ本体130に取り付け、細径診療用インスツルメントを診療用インスツルメントホルダ128に保持させる場合は、アダプタ構成部材304,306,308の重ね合わせ体をホルダ本体130に取り付ける。
【0084】
図7は、コードレス診療用インスツルメントの3種類の外形形状の各々に適合する孔形状を有する収容孔が形成された3個のアダプタ構成部材304,306,308を入れ子状に重ね合わせた重ね合わせ体であるアダプタ302を示しているが、2種類又は4種類以上の外形形状の各々に適合する孔形状を有する収容孔が形成された2個又は4個以上のアダプタ構成部材を入れ子状に重ね合わせてもよい。
【0085】
また、収容孔の内径だけでなく収容孔の深さもアダプタ構成部材の重ね合わせによって調整するようにしてもよい。また、第1実施形態と同様の識別回路160を本第3実施形態において適用する場合、各アダプタ構成部材にアダプタ識別のための情報源を設け、通信回路や読み取り回路等アダプタ構成部材間で情報をやり取りする構造を採用すればよい。
【0086】
<第4実施形態>
第4実施形態は、第1実施形態の診療用インスツルメントホルダ128に代えて採用することができる診療用インスツルメントホルダ402に関する。図8は、診療用インスツルメントホルダ402の模式図である。図8は、診療用インスツルメントホルダ402の斜視図となっている。図8は、第1実施形態の図4に相当し、ホルダ本体404からアダプタ406を取り外した状態を示している。
【0087】
{診療用インスツルメントホルダ402}
図8に示すように、診療用インスツルメントホルダ402は、チューブ接続診療用インスツルメントを保持するホルダ本体404と、コードレス診療用インスツルメントをホルダ本体404に保持させるためのアダプタ406とを備える。診療用インスツルメントホルダ402は、チューブ接続診療用インスツルメント及びコードレス診療用インスツルメントのホルダを兼ねる。診療用インスツルメントホルダ402は、ホルダ本体404にアダプタ406を取り付けた状態においては、コードレス診療用インスツルメントを保持し、ホルダ本体404からアダプタ406を取り外した状態においては、チューブ接続診療用インスツルメントを保持する。これにより、コードレス診療用インスツルメント専用の診療用インスツルメントホルダを設けることなくコードレス診療用インスツルメントを保持し充電することができるので、診療用ユニット102の構造が簡素になる。
【0088】
{ホルダ本体404}
図8に示すように、ホルダ本体404は、チューブ接続診療用インスツルメントを収容する空間となる収容孔408が形成された収容空間形成体である。ただし、第1実施形態のホルダ本体104と異なり、第4実施形態のホルダ本体404には、給電機構は設けられていない。
【0089】
ホルダ本体404には、ホルダ本体404をステー126に固定するネジが螺合されるネジ孔410が形成される。
【0090】
{アダプタ406}
アダプタ406には、コードレス診療用インスツルメントを収容する空間となる収容孔412が形成されている。収容孔412は、コードレス診療用インスツルメントの外形形状に適合する孔形状(空間形状)を有する。これにより、アダプタ406は、コードレス診療用インスツルメントを充電位置に保持する。ここでいう「適合」は、コードレス診療用インスツルメントの外形形状(外径)と収容孔412の孔形状(内径)とが完全に同一であることを要求しない。したがって、コードレス診療用インスツルメントの外側面と収容孔412の内側面414との間には、コードレス診療用インスツルメントの挿抜を容易にするための隙間がある。この隙間は、収容孔412の中でコードレス診療用インスツルメントが動いてもコードレス診療用インスツルメントを充電が可能な充電位置に保持した状態が維持される程度の幅を有する。
【0091】
ひとつの診療用インスツルメントホルダ128に外形形状が異なる複数のコードレス診療用インスツルメントを保持させる場合、コードレス診療用インスツルメントの外形形状ごとにアダプタ406が準備され、診療用インスツルメントホルダ128に保持させるコードレス診療用インスツルメントを変更するときにはアダプタ406が交換される。
【0092】
収容孔412の内底面416には、充電位置に保持されたコードレス診療用インスツルメントを充電する電力(以下では、「充電電力」という)を供給する供給経路となる充電端子418が設けられる。なお、収容孔412の内底面416以外、例えば、収容孔412の内側面414に充電端子418を設けてもよい。充電端子418を備える有接点の給電機構420ではなく、無接点の給電機構を採用してもよい。無接点の給電機構を採用する場合、コイル等の電磁結合用の部品がアダプタ406に埋め込まれる。
【0093】
アダプタ406は、さらに、ユニット本体104から充電端子418へ充電電力を伝送する給電配線を内蔵し給電機構420を構成する給電用チューブ426を備える。給電用チューブ426の一端にはコネクタ428が設けられ、給電用チューブ426は、チューブ接続診療用インスツルメントとユニット本体104とを接続するチューブと同様にユニット本体104の本体側接続部120に着脱される。給電用チューブ426の他端において、給電用チューブ426に内蔵された給電配線は、充電端子418に接続される。これにより、給電機構420は、給電用チューブ426を経由してユニット本体104から電力の供給を受け、充電位置に保持されたコードレス診療用インスツルメントを充電する電力を供給する。
【0094】
アダプタ406がホルダ本体404の収容孔408の空間形状に適合する外形形状を有し収容孔408に収容されること、アダプタ406の外側面424と収容孔408の内側面422とは、摺動可能になっていること、コードレス診療用インスツルメントを診療用インスツルメントホルダ128から抜くときに加わる力に抗する摩擦力がアダプタ406の外側面424と収容孔408の内側面422との間に生じるようにするか、アダプタ406を着脱するとき以外は係止爪等によりアダプタ406をホルダ本体404に係止することは、第1実施形態のアダプタ132と同様である。
【0095】
<第5実施形態>
第5実施形態は、第1実施形態の診療用ユニット102に充電の完了までの残り時間を検出し表示する機能(以下では、「残り時間表示機能」という)を付加するための構成物に関する。図9及び図10は、残り時間表示機能を付加するために追加される構成物を説明する図である。図9は、ホルダ本体502の模式図である。図9は、ホルダ本体502の斜視図となっている。図10は、残り時間表示機能を付加するために追加される構成物のブロック図である。
【0096】
図9に示すように、ホルダ本体502には、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示機構504が設けられる。また、図10に示すように、残り時間表示機能を付加するために追加される構成物には、コードレス診療用インスツルメントの充電の完了までの残り時間を検出し、検出した残り時間を表示機構504に表示させる残り時間検出回路506がある。これにより、充電の完了までの残り時間を容易に知ることができるので、診療用ユニット102の利便性が向上する。
【0097】
なお、表示機構504をホルダ本体502に設けることは必ずしも必須ではなく、他の場所、例えば、トレーの診療用インスツルメントホルダの近傍に設けてもよい。また、表示機構504は、発光ダイオード等のランプの色や明るさの変化、点灯個数等により残り時間を表示してもよい。
【0098】
<その他>
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において例示であって、この発明はその例示に限定されない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得る。特に、第1実施形態から第5実施形態までに説明した技術を組み合わせることは当然に予定されている。
【符号の説明】
【0099】
102 診療用ユニット
110 診療用トレー
106 診療用インスツルメント
130,404 ホルダ本体
132,202,302,406 アダプタ
134,144,208 収容孔
138 充電端子
204,206 コードレス診療用インスツルメント
304,306,308 アダプタ構成部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
診療用ユニットに備えられ、充電された電力により動作するコードレス診療用インスツルメントを保持する診療用インスツルメントホルダであって、
第1の収容空間が形成され、充電位置に保持された前記コードレス診療用インスツルメントを充電する電力を供給する給電機構を備える収容空間形成体と、
前記コードレス診療用インスツルメントの外形形状に適合する空間形状を有し前記コードレス診療用インスツルメントを収容する第2の収容空間が形成され、前記コードレス診療用インスツルメントを充電位置に保持し、前記第1の収容空間に適合する外形形状を有し前記第1の収容空間に収容されるアダプタと、
を備える診療用インスツルメントホルダ。
【請求項2】
前記第1の収容空間は、前記診療用ユニットの本体とチューブで接続されるチューブ接続診療用インスツルメントを収容する請求項1の診療用インスツルメントホルダ。
【請求項3】
前記収容空間形成体に対して前記アダプタが着脱自在である請求項1又は請求項2の診療用インスツルメントホルダ。
【請求項4】
前記第2の収容空間は、前記コードレス診療用インスツルメントの複数の外形形状に適合する空間形状を有し、前記アダプタは、前記コードレス診療用インスツルメントの外形形状ごとに決まった充電位置に前記コードレス診療用インスツルメントを保持する請求項1ないし請求項3のいずれかの診療用インスツルメントホルダ。
【請求項5】
前記アダプタは、前記コードレス診療用インスツルメントの複数の外形形状の各々に適合する空間形状を有する前記第2の収容空間が形成された複数の部材を入れ子状に重ね合わせた重ね合わせ体であり、前記重ね合わせ体における前記複数の部材の重ね合わせが解消自在である請求項1ないし請求項3のいずれかの診療用インスツルメントホルダ。
【請求項6】
前記収容空間形成体は、
充電条件の決定の基礎となる前記第2の収容空間に収容された前記コードレス診療用インスツルメントの種類を識別する識別機構、
を備える請求項1ないし請求項5のいずれかの診療用インスツルメントホルダ。
【請求項7】
前記識別機構は、前記アダプタの種類を識別することにより前記コードレス診療用アダプタの種類を識別する請求項6の診療用インスツルメントホルダ。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかの診療用インスツルメントホルダと、
前記給電機構に電力を供給する電源と、
前記第2の収容空間に収容され、充電された電力により動作するコードレス診療用インスツルメントと、
を備える診療用ユニット。
【請求項9】
複数個の前記診療用インスツルメントホルダに保持された複数個の前記コードレス診療用インスツルメントから充電の対象を選択する選択回路、
をさらに備える請求項8の診療用ユニット。
【請求項10】
前記コードレス診療用インスツルメントの充電残量を検出する充電残量検出回路、
をさらに備え、
前記選択回路は、前記充電残量検出回路により検出された充電残量が最も少ない前記コードレス診療用インスツルメントを充電の対象とする請求項9の診療用ユニット。
【請求項11】
前記コードレス診療用インスツルメントの充電の完了を検出する充電完了検出回路と、
前記充電完了検出回路による充電の完了の検出に同期して充電の完了を報知する報知機構と、
をさらに備える請求項8ないし請求項10のいずれかの診療用ユニット。
【請求項12】
前記コードレス診療用インスツルメントの充電の完了までの残り時間を検出する残り時間検出回路と、
前記残り時間検出回路が検出した残り時間を表示する表示機構と、
をさらに備える請求項8ないし請求項11のいずれかの診療用ユニット。
【請求項13】
昇降及び傾動して被術者を仰臥位で着座させる診療台と、
診療用トレーと、
を備え、
前記診療用インスツルメントホルダが、前記診療台の背もたれ、前記診療台の頭部支え及び前記診療用トレーの少なくともいずれかに設けられる請求項8ないし請求項12のいずれかの診療用ユニット。
【請求項14】
診療用ユニットに備えられ、充電された電力により動作するコードレス診療用インスツルメントを保持する診療用インスツルメントホルダであって、
前記診療用ユニットの本体とチューブで接続されるチューブ接続診療用インスツルメントを収容する第1の収容空間が形成された収容空間形成体と、
前記コードレス診療用インスツルメントの外形形状に適合する空間形状を有し前記コードレス診療用インスツルメントを収容する第2の収容空間が形成され、前記コードレス診療用インスツルメントを充電位置に保持し、前記診療用ユニットの本体に着脱される給電用チューブを経由して前記診療用ユニットの本体から電力の供給を受け充電位置に保持された前記コードレス診療用インスツルメントを充電する電力を供給する給電機構を備え、前記第1の収容空間に適合する外形形状を有し前記第1の収容空間に収容されるアダプタと、
を備える診療用インスツルメントホルダ。
【請求項15】
第1の収容空間が形成された収容空間形成体に充電された電力により動作するコードレス診療用インスツルメントを保持させるためのアダプタであって、
前記コードレス診療用インスツルメントの外形形状に適合する空間形状を有し前記コードレス診療用インスツルメントを収容する第2の収容空間が形成され、前記コードレス診療用インスツルメントを充電位置に保持し、前記第1の収容空間に適合する外形形状を有し前記第1の収容空間に収容されるアダプタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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