説明

証拠金変動システム

【課題】証拠金取引に必要な証拠金の金額を時間帯に応じて変動させて、証拠金取引を少額証拠金から可能にする。
【解決手段】顧客端末2は、証拠金変動口座を開設した顧客の端末であれば、証拠金の減額時間中に限り、注文画面・余力情報画面等に減額中のステータスや減額適用終了日時を表示する。減額時の証拠金余力は、顧客端末2及び管理者端末3の画面から確認できる。管理者端末3は、減額時間及び銘柄ごとの減額証拠金額の設定画面を表示する。日々の減額の適用は、朝方のバッチ処理後の注文から行われる。減額時間の終了時刻の設定は、任意の値(n分)により取引終了時刻のn分前(例えば、15分前)としてもよいし、絶対時刻を指定してもよい。管理サーバ4は、通常時及び減額時の証拠金余力を計算し、減額時間中は、減額時の証拠金余力を用いて余力審査及び強制決済審査を行う。減額時間の終了時刻になると、通常時の証拠金余力を用いた審査に戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先物取引等証拠金取引において注文の発注や建玉の維持に必要な証拠金を、時間帯に応じて変動させるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、先物取引を行う際には、担保として証拠金を証券会社等に預けることが必要である。例として、その先物取引の1つである夜間先物取引では、米国のシカゴ先物市場(CME:Chicago Mercantile Exchange)に上場されている銘柄(例えば、日経225先物円建)が日本時間の夜間に売買される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−221331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
その夜間先物取引に必要な証拠金の金額が高いという顧客の声が寄せられており、何等かの対策を講じることが望まれている。
なお、証拠金取引における証拠金の減額に関する公知文献は見つかっていない。特許文献1には、信用取引又は先物・オプション取引における証券会社への委託証拠金を一定水準に維持することが可能なシステムについて開示されているが、取引に必要な証拠金の金額を減額するものではない。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、証拠金取引に必要な証拠金の金額を時間帯に応じて変動させて、証拠金取引を少額証拠金から可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、証拠金取引時間の時間帯に応じて必要な証拠金の金額を変動させるシステム(証拠金変動システム)であって、証拠金取引注文を行う顧客が用いる端末と、前記端末から前記証拠金取引注文を受け付けて発注処理を行うサーバと、を備え、前記サーバが、記憶部及び処理部を備え、前記記憶部が、前記証拠金取引注文を発注する際に必要な証拠金の金額である発注証拠金額を、2以上の前記時間帯のそれぞれについて特定するための発注証拠金情報と、各顧客に関して、当該顧客の発注を行う際の担保金額である発注余力金額を、2以上の前記時間帯のそれぞれについて特定するための顧客余力情報と、を記憶し、前記処理部が、前記端末から前記証拠金取引注文のメッセージを受信した場合に、前記発注証拠金情報に基づいて、現在時刻を含む時間帯の前記発注証拠金額を特定し、前記顧客余力情報に基づいて、現在時刻を含む時間帯の当該顧客の前記発注余力金額を特定し、特定した前記発注余力金額が前記発注証拠金額以上のときに、前記証拠金取引注文の発注処理を行い、特定した前記発注余力金額が前記発注証拠金額未満のときに、前記発注余力金額が不足している旨の余力不足メッセージを前記端末に送信し、前記端末が、前記サーバから前記余力不足メッセージを受信し、表示することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、サーバは、証拠金取引時間を2以上の時間帯に分け、各時間帯における、発注証拠金額及び顧客ごとの発注余力金額を記憶する。そして、端末から証拠金取引注文を受けたときに、現在時刻の発注証拠金額及び当該顧客の発注余力金額を特定し、発注余力金額が発注証拠金額以上であれば、発注処理を行い、発注余力金額が発注証拠金額未満であれば、余力不足のメッセージを端末へ返す。これによれば、顧客は、余力不足であれば、建玉の返済や入金により余力を増やすことができる。そして、発注証拠金額が安く、発注余力金額が十分にある時間帯に証拠金取引注文ができるので、証拠金取引が少額証拠金から可能になる。
【0008】
また、本発明の上記証拠金変動システムにおいて、前記処理部が、前記端末から前記発注証拠金額及び前記発注余力金額の取得を要求する旨のメッセージを受け付けた場合に、前記発注証拠金情報により特定される各時間帯の前記発注証拠金額と、前記顧客余力情報により特定される各時間帯の当該顧客の前記発注余力金額とを含む証拠金余力画面データを作成し、作成した前記証拠金余力画面データにおいて、現在時刻を含まない時間帯の前記発注証拠金額及び当該顧客の前記発注余力金額の欄をグレーに着色し、前記証拠金余力画面データを前記端末に送信し、前記端末が、前記サーバから前記証拠金余力画面データを受信し、表示することとしてもよい。
【0009】
この構成によれば、顧客は、端末の画面を見ることにより、グレー表示されていない現在時刻の発注証拠金額及び発注余力金額とともに、グレー表示されている現在時刻を含まない時間帯の発注証拠金額及び発注余力金額を知ることができる。これによれば、顧客は、その時点における発注証拠金額の多寡や発注余力金額の過不足に応じて、証拠金取引注文を行うか否かを判断することができる。また、発注証拠金額が高い時においても安い時の金額が分かるので、その時点では増やせないが、発注証拠金額が安くなれば増やせる建玉の枚数を事前に把握することができる。
【0010】
また、本発明の上記証拠金変動システムにおいて、前記記憶部が、前記証拠金取引注文の建玉を維持する際に必要な証拠金の金額である維持証拠金額を、2以上の前記時間帯のそれぞれについて特定するための維持証拠金情報と、各顧客の、保有建玉枚数及び未約定枚数の合計である建玉枚数と、各顧客の、前記維持証拠金額が当該金額を下回れば強制決済が行われる強制決済限度額と、をさらに記憶し、前記処理部が、所定時間ごとに、前記建玉枚数が1以上の各顧客に関して、前記維持証拠金情報に基づいて、現在時刻を含む時間帯の前記維持証拠金額を特定し、特定した前記維持証拠金額及び当該顧客の前記建玉枚数に基づいて、当該顧客の建玉を維持する際の担保金額である維持余力金額を計算し、計算した前記維持余力金額が前記強制決済限度額未満のときに、当該顧客の発注済注文を取り消す処理を行い、その結果に応じて当該顧客の前記建玉枚数を更新し、前記維持証拠金額及び当該顧客の前記建玉枚数に基づいて、当該顧客の前記維持余力金額を再度計算し、再度計算した前記維持余力金額が前記強制決済限度額未満のときに、当該顧客の建玉を強制決済する処理を行い、その結果に応じて当該顧客の前記建玉枚数を更新することとしてもよい。
【0011】
この構成によれば、維持余力金額は、現在時刻の維持証拠金額及び顧客の建玉枚数に応じて増減する。そこで、所定時間ごとの余力判定において、維持余力金額が強制決済限度額を下回ったときには、発注済注文を取り消すことにより、建玉枚数を減らして維持余力金額を増やす。それでも、維持余力金額が強制決済限度額を下回ったときには、当該顧客の建玉を強制決済する。これによれば、建玉の維持余力金額が足りないときに、まずは発注済注文を取り消すだけで、すぐには強制決済を行わないので、所望の建玉を極力維持することができる。そして、時間帯に応じた維持証拠金額に基づいて維持余力金額を計算するので、維持証拠金額が安ければ維持余力金額を高くすることができるため、顧客は、維持証拠金額が安い時間帯において建玉を維持することができる。また、維持証拠金額の変動により維持余力金額が高い時間帯から安くなる時間帯へ移行する前に、一部の建玉の返済や入金を行って維持余力金額を高くすることにより、所望の建玉を維持することができる。
【0012】
また、本発明の上記証拠金変動システムにおいて、前記記憶部が、各顧客の証拠金取引に使用可能な証拠金総額をさらに記憶し、前記処理部が、当該顧客の前記証拠金総額から、前記維持証拠金額と、当該顧客の前記建玉枚数との積を減算することにより、前記維持余力金額を算出することとしてもよい。
【0013】
その他、本願が開示する課題及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、証拠金取引に必要な証拠金の金額を時間帯に応じて変動させて、証拠金取引が少額証拠金から可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】先物証拠金変動システム1の構成を示す図である。
【図2】顧客端末2のハードウェア構成を示す図である。
【図3】管理者端末3のハードウェア構成を示す図である。
【図4】管理サーバ4のハードウェア構成を示す図である。
【図5】管理サーバ4の記憶部45に記憶されるデータの構成を示す図であり、(a)は基本情報45Aの構成を示し、(b)は顧客情報45Bの構成を示す。
【図6】管理サーバ4の記憶部45に記憶される余力情報の構成を示す図であり、(a)は使用可能証拠金額情報45Cの構成を示し、(b)は通常時証拠金余力情報45Dの構成を示し、(c)は減額時証拠金余力情報45Eの構成を示し、(d)は強制決済証拠金余力情報45Fの構成を示す。
【図7】新規顧客の証拠金変動口座を開設する処理を示すフローチャートである。
【図8】先物注文を発注する処理を示すフローチャートである。
【図9】建玉を強制決済する処理を示すフローチャートである。
【図10】顧客端末2における通常時の余力情報の表示画面を示す図である。
【図11】顧客端末2における減額時の余力情報の表示画面を示す図である。
【図12】実際の先物取引の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を説明する。本発明の実施の形態に係る先物証拠金変動システムは、先物取引において売買注文を発注し、建玉を維持する際に必要になる証拠金の金額を、所定の時間帯に減額することにより、先物取引を少額証拠金から可能にするものである。本システムは、例えば、米国のシカゴ先物市場の銘柄を日本時間の夜間に売買する取引(夜間先物取引)に適用される。夜間先物取引の時間帯は、夏時間の20:00〜翌日5:15、冬時間の20:00〜翌日の6:15である。そのうち、夏時間の5:00及び冬時間の6:00(減額時間終了時刻)の前が証拠金減額時間であり、その後が通常時間である。
【0017】
≪システムの構成と概要≫
図1は、先物証拠金変動システム1の構成を示す図である。先物証拠金変動システム1は、顧客端末2、管理者端末3及び管理サーバ4を備え、各装置がネットワーク5を介して通信可能に構成される。顧客端末2は、夜間先物取引を行う顧客が操作する端末であり、顧客の自宅等に設置されたPC(Personal Computer)等により実現される。管理者端末3は、本システムの管理者が操作する端末であり、証券会社等に設置されたPC等により実現される。管理サーバ4は、本システムを運用するために稼動するサーバであり、証券会社等に設置されたサーバ用コンピュータ等により実現される。ネットワーク5は、インターネットや証券会社内のLAN(Local Area Network)等により実現される。
【0018】
顧客端末2は、先物取引や資産管理の画面を表示し、その画面への顧客の入力による申し込み等を受け付けて、その申し込み等に応じた各種画面の表示を行う。証拠金減額の申し込み及び解約は、顧客端末2に表示される会員画面により受け付け、申し込み及び解約のメッセージを管理サーバ4に送信する。管理サーバ4は、顧客端末2から当該メッセージを受信し、朝方のバッチ処理により、証拠金減額の適用(証拠金変動口座の開設等)及びその解除をデータベースに反映させる。当該データベースへの反映内容は、翌日の夜間先物取引から有効になる。なお、証拠金減額は、顧客端末2を用いて申し込み及び解約が行われ、全顧客一律に適用するものではない。
【0019】
証拠金減額が適用された顧客の顧客端末2には、証拠金減額が実施される減額時間中に限り、注文画面や余力情報画面等に減額中のステータスや減額適用終了日時が表示される。また、減額時の証拠金余力は、顧客端末2の会員画面及び管理者端末3の画面から確認することができる。
【0020】
管理者端末3は、証拠金減額時間及び銘柄ごとの減額証拠金額の設定画面を表示し、証券会社の管理者等による設定を可能とする。日々の減額の適用は、朝方のバッチ処理後の注文から行われるものとする。減額時間の終了時刻の設定は、任意の値(n分)の指定により取引終了時刻のn分前(例えば、15分前)としてもよいし、絶対時刻の指定に従ってもよい。
【0021】
管理サーバ4は、通常時及び減額時の証拠金余力を計算し、減額時間中は、減額時の証拠金余力を用いて余力審査及び強制決済審査を行う。そして、減額時間の終了時刻になると、通常時の証拠金余力を用いた審査に戻す。これは、取引時間の終了時刻には、取引所(シカゴ先物市場)が求める証拠金以上の証拠金余力が十分あることが求められるからである。
【0022】
なお、朝方のバッチ処理は、〆バッチと呼ばれ、夏時間では5:15〜5:30頃に、冬時間では6:15〜6:30頃に、日替処理、値洗処理等の各種処理が行われる。
【0023】
≪装置の構成≫
図2は、顧客端末2のハードウェア構成を示す図である。顧客端末2は、通信部21、表示部22、入力部23、処理部24及び記憶部25を備え、各部がバス26を介してデータを送受信可能なように接続されている。通信部21は、ネットワーク5を介して管理サーバ4とIP(Internet Protocol)通信を行う部分であり、例えば、NIC(Network Interface Card)等によって実現される。表示部22は、処理部24からの指示によりデータを表示する部分であり、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)等によって実現される。入力部23は、夜間先物取引を行う顧客がデータ(例えば、証拠金減額の申し込みや注文の発注に関するデータ)を入力する部分であり、例えば、キーボードやマウス等によって実現される。処理部24は、所定のメモリを介して各部間のデータの受け渡しを行うととともに、顧客端末2全体の制御を行うものであり、CPU(Central Processing Unit)が所定のメモリに格納されたプログラムを実行することによって実現される。記憶部25は、処理部24からデータを記憶したり、記憶したデータを読み出したりするものであり、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の不揮発性記憶装置によって実現される。
【0024】
図3は、管理者端末3のハードウェア構成を示す図である。管理者端末3は、通信部31、表示部32、入力部33、処理部34及び記憶部35を備え、各部がバス36を介してデータを送受信可能なように接続されている。通信部31は、ネットワーク5を介して管理サーバ4とIP通信を行う部分であり、例えば、NIC等によって実現される。表示部32は、処理部34からの指示によりデータを表示する部分であり、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)等によって実現される。入力部33は、証券会社の管理者がデータ(例えば、証拠金減額時間の終了時刻のデータ)を入力する部分であり、例えば、キーボードやマウス等によって実現される。処理部34は、所定のメモリを介して各部間のデータの受け渡しを行うととともに、管理者端末3全体の制御を行うものであり、CPUが所定のメモリに格納されたプログラムを実行することによって実現される。記憶部35は、処理部34からデータを記憶したり、記憶したデータを読み出したりするものであり、例えば、HDDやSSD等の不揮発性記憶装置によって実現される。
【0025】
図4は、管理サーバ4のハードウェア構成を示す図である。管理サーバ4は、通信部41、表示部42、入力部43、処理部44及び記憶部45を備え、各部がバス46を介してデータを送受信可能なように接続されている。通信部41は、ネットワーク5を介して顧客端末2や管理者端末3とIP通信を行う部分であり、例えば、NIC等によって実現される。表示部42は、処理部44からの指示によりデータを表示する部分であり、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)等によって実現される。入力部43は、証券会社の運用担当者がデータ(例えば、イニシャル証拠金等のデータ)を入力する部分であり、例えば、キーボードやマウス等によって実現される。処理部44は、所定のメモリを介して各部間のデータの受け渡しを行うととともに、管理サーバ4全体の制御を行うものであり、CPUが所定のメモリに格納されたプログラムを実行することによって実現される。記憶部45は、処理部44からデータを記憶したり、記憶したデータを読み出したりするものであり、例えば、HDDやSSD等の不揮発性記憶装置によって実現される。
【0026】
≪データの構成≫
図5は、管理サーバ4の記憶部45に記憶されるデータの構成を示す図である。図5((a)は、基本情報45Aの構成を示す。基本情報45Aは、夜間先物取引に用いられる証拠金等に関する一律の情報であり、通常時イニシャル証拠金45A1、減額時イニシャル証拠金45A2、掛目45A3、通常時維持証拠金45A4、通常時発注証拠金45A5、減額時維持証拠金45A6、減額時発注証拠金45A7、最低証拠金45A8、夜間先物建手数料45A9及び減額時間帯45A10を含む。
【0027】
通常時イニシャル証拠金45A1は、取引所が定める通常時に建玉1枚あたりに必要な証拠金の金額である。減額時イニシャル証拠金45A2は、減額時間帯に適用される建玉1枚あたりに必要な証拠金の金額である。掛目45A3は、維持証拠金に対する発注証拠金の割合(例えば、110%)である。
【0028】
通常時維持証拠金45A4は、証券会社が定める、通常時に建玉を維持するのに必要な証拠金の金額であり、通常時イニシャル証拠金45A1と同額が設定される(自由に設定することもできる)。通常時発注証拠金45A5は、通常時に先物注文を発注するのに必要な証拠金の金額であり、[通常時維持証拠金45A4×掛目45A3]により算出され、設定される。減額時維持証拠金45A6は、証券会社が定める、減額時に建玉を維持するのに必要な証拠金の金額であり、減額時イニシャル証拠金45A2と同額が設定される(自由に設定することもできる)。減額時発注証拠金45A7は、減額時に先物注文を発注するのに必要な証拠金の金額であり、[減額時維持証拠金45A6×掛目45A3]により算出され、設定される。
【0029】
最低証拠金45A8は、必要最低限の証拠金の金額であり、未設定であれば、デフォルト値の0円になる。夜間先物建手数料45A9は、未決済建玉に係る新規建手数料である。減額時間帯45A10は、夜間取引時間のうち、証拠金として減額時維持証拠金45A6及び減額時発注証拠金45A7が適用される時間帯であり、例えば、20:00〜翌日5:00等が設定される。実際には、開始時刻は予め決まっており、終了時刻は、システムの管理者が管理者端末3から「夜間取引終了時刻のn分前」や絶対時刻を指定することにより設定される。
【0030】
図5(b)は、顧客情報45Bの構成を示す。顧客情報45Bは、顧客の口座や取引に関する情報であり、顧客ID45B1、現金残高45B2、入出金予定額45B3、夜間先物評価損益45B4、建玉枚数45B5及び強制決済限度額45B6を含む、顧客ごとのレコードからなる。顧客ID45B1は、証拠金変動口座を開設した顧客に固有のIDである。余力情報の参照や注文の発注の際に、顧客端末2から受信したメッセージに含まれる顧客IDが各顧客ID45B1と比較、照合され、当該顧客のレコードが特定される。なお、顧客ID45B1は、顧客端末2に固有のIDであってもよく、例えば、顧客端末2のIPアドレス等を用いてもよい。また、顧客端末2からのメッセージに含まれる顧客IDは、当該顧客の余力情報を特定する際にも用いられる。
【0031】
現金残高45B2は、当該顧客から証拠金として預けられている現金の当日残高である。入出金予定額45B3は、先物取引における未受渡の入出金の合計金額である。夜間先物評価損益45B4は、直近の営業日における清算値(終値)に基づく評価損益であり、営業日ごとに更新される。建玉枚数45B5は、当該顧客の保有建玉枚数及び未約定枚数の合計である。強制決済限度額45B6は、リアルタイムの維持証拠金余力が当該金額を下回ると強制決済が発動する限度額であり、顧客により任意に指定された金額が設定される。
【0032】
図6は、管理サーバ4の記憶部45に記憶される余力情報の構成を示す図である。余力情報は、顧客IDごとに記憶される情報であり、使用可能証拠金額情報45C、通常時証拠金余力情報45D、減額時証拠金余力情報45E及び強制決済証拠金余力情報45Fを含む。それらの各項目は、基本情報45A及び顧客情報45Bに基づいて計算され、設定され、余力情報画面のデータとして顧客端末2に送信され、表示される。
【0033】
図6(a)は、使用可能証拠金額情報45Cの構成を示す。使用可能証拠金額情報45Cは、使用可能な証拠金額及びその内訳に関する情報であり、受入証拠金総額45C1、現金残高45C2、入出金予定額45C3、夜間先物建手数料45C4、夜間先物評価損益45C5及び夜間先物評価拘束金45C6を含む。受入証拠金総額45C1は、当該顧客の証拠金として見込むべき担保の総額であり、[現金残高45B2+入出金予定額45B3+夜間先物評価損益45B4−夜間先物建手数料45A9]により算出され、設定される。現金残高45C2は、現金残高45B2がそのまま設定される。入出金予定額45C3は、入出金予定額45B3がそのまま設定される。夜間先物建手数料45C4は、夜間先物建手数料45A9がそのまま設定される。夜間先物評価損益45C5は、夜間先物評価損益45B4がそのまま設定される。夜間先物評価拘束金45C6は、顧客の証拠金として拘束すべき金額であり、[夜間先物評価損益45B4−夜間先物建手数料45A9]により算出され、設定される。
【0034】
図6(b)は、通常時証拠金余力情報45Dの構成を示す。通常時証拠金余力情報45Dは、通常時の証拠金余力に関する情報であり、発注証拠金額45D1、イニシャル証拠金総額×110%45D2、最低証拠金45D3、夜間先物証拠金余力45D4及び維持証拠金余力45D5を含む。発注証拠金額45D1は、既存の建玉及び未約定の新規建注文に対して必要な証拠金の総額であり、[通常時発注証拠金45A5×建玉枚数45B5]により算出され、設定される。イニシャル証拠金総額×110%45D2は、発注証拠金額45D1と同額が設定される。最低証拠金45D3は、最低証拠金45A8がそのまま設定される。夜間先物証拠金余力45D4は、[受入証拠金総額45C1−発注証拠金額45D1]により算出され、設定される。維持証拠金余力45D5は、[受入証拠金総額45C1−通常時維持証拠金45A4×建玉枚数45B5]により算出され、設定され、追加証拠金要否の判定に用いられる。
【0035】
図6(c)は、減額時証拠金余力情報45Eの構成を示す。減額時証拠金余力情報45Eは、減額時の証拠金余力に関する情報であり、発注証拠金額45E1、イニシャル証拠金総額×110%45E2、最低証拠金45E3、夜間先物証拠金余力45E4及び維持証拠金余力45E5を含む。発注証拠金額45E1は、先物注文を発注するのに必要な証拠金の総額であり、[減額時発注証拠金45A7×建玉枚数45B5]により算出され、設定される。イニシャル証拠金総額×110%45E2は、発注証拠金額45E1と同額が設定される。最低証拠金45E3は、最低証拠金45A8がそのまま設定される。夜間先物証拠金余力45E4は、[受入証拠金総額45C1−発注証拠金額45E1]により算出され、設定される。維持証拠金余力45E5は、[受入証拠金総額45C1−減額時維持証拠金45A6×建玉枚数45B5]により算出され、設定され、追加証拠金要否の判定に用いられる。
【0036】
図6(d)は、強制決済証拠金余力情報45Fの構成を示す。強制決済証拠金余力情報45Fは、強制決済を行うか否かの判断に用いられる情報であり、通常時リアルタイム維持証拠金余力45F1、減額時リアルタイム維持証拠金余力45F2及び強制決済限度額45F3を含む。通常時リアルタイム維持証拠金余力45F1は、リアルタイムの評価損益により計算した通常時の維持証拠金余力であり、[現金残高45B2+入出金予定額45B3+現時点の先物価格による評価損益−夜間先物建手数料45A9−通常時維持証拠金45A4×建玉枚数45B5]により算出され、設定される。減額時リアルタイム維持証拠金余力45F2は、リアルタイムの評価損益により計算した減額時の維持証拠金余力であり、[現金残高45B2+入出金予定額45B3+現時点の先物価格による評価損益−夜間先物建手数料45A9−減額時維持証拠金45A6×建玉枚数45B5]により算出され、設定される。強制決済限度額45F3は、強制決済限度額45B6がそのまま設定される。
【0037】
≪システムの処理≫
図7は、新規顧客の証拠金変動口座を開設する処理を示すフローチャートである。本処理は、顧客端末2及び管理サーバ4において、主として通信部がメッセージを送受信し、処理部が記憶部のデータを参照、更新しながら、顧客説明事項の提示及び顧客口座の開設を行うものである。
【0038】
夜間先物取引を行う際に証拠金減額のサービスを受けたい顧客は、まず、顧客端末2を用いて、証拠金変動口座の開設申込を行う。このとき、顧客端末2は、入力部23から口座開設申込のデータを取得し、そのデータをメッセージの形式にし、通信部21を通じて管理サーバ4に送信する(S701)。管理サーバ4は、顧客端末2から通信部41を通じて口座開設申込のメッセージを受信し、当該メッセージを所定のメモリ上に一旦保持する(S702)。そして、口座を開設する前に顧客が確認しておかなければならない顧客説明事項のデータを顧客端末2に送信する(S703)。
【0039】
顧客端末2は、管理サーバ4から顧客説明事項のデータを受信し、表示部22に表示する(S704)。その表示画面は、スクロール操作により顧客説明事項全体が参照可能であるとともに、顧客説明事項の内容を確認済か否かが指定可能なチェックボックスを表示する。入力部23から顧客確認済であることを取得したときには(S705のYES)、顧客確認済のメッセージを管理サーバ4に送信する(S706)。管理サーバ4は、顧客端末2から顧客確認済のメッセージを受信すると(S707)、S702でメモリ上に保持した口座開設申込のメッセージに基づいて、当該顧客用の証拠金変動口座を開設するための処理を行い、顧客IDを生成し、当該顧客ID45B1を含む顧客情報45Bのレコードを記憶部45に追加して記憶する(S708)。開設された口座は、次の営業日から利用可能になり、減額時間における証拠金減額が適用される。そして、口座開設完了の通知として顧客IDを顧客端末2に送信する(S709)。顧客端末2は、管理サーバ4から顧客IDを受信し、記憶部25に記憶する(S710)。このとき、口座開設完了の旨を表示部22に表示し、顧客に通知してもよい。なお、記憶した顧客IDは、余力情報の参照や先物注文の発注の際に、管理サーバ4に送信するメッセージに設定され、管理サーバ4において、当該顧客の顧客情報45Bや余力情報を特定するのに用いられる。
【0040】
顧客端末2は、S705で顧客が未確認であることを取得したときには(S705のNO)、顧客未確認のメッセージを管理サーバ4に送信する(S711)。管理サーバ4は、顧客端末2から顧客未確認のメッセージを受信すると(S712)、顧客が顧客説明事項を確認しておらず口座開設ができないため、顧客端末2に口座開設ができない旨のメッセージを送信する(S713)。顧客端末2は、管理サーバ4から口座開設不可のメッセージを受信し、表示部22に表示する(S714)。
【0041】
図8は、先物注文を発注する処理を示すフローチャートである。本処理は、顧客端末2及び管理サーバ4において、主として通信部がメッセージを送受信し、処理部が記憶部のデータを参照、更新しながら、余力情報の提示及び注文の発注を行うものである。
【0042】
夜間先物取引を行いたい顧客は、まず、顧客端末2を用いて、自分の証拠金変動口座に関する余力情報を要求する。このとき、顧客端末2は、入力部23から余力情報要求のデータを取得し、そのデータをメッセージの形式にし、通信部21を通じて管理サーバ4に送信する(S801)。管理サーバ4は、顧客端末2から通信部41を通じて余力情報要求のメッセージを受信し(S802)、現在時刻が記憶部45の減額時間帯45A10に含まれているか否かを判定する(S803)。そして、現在時刻が減額時間帯であれば(S803のYES)、減額を適用し、余力情報を作成し(S804)、一方、現在時刻が減額時間帯でなければ(S803のNO)、通常を適用し、余力情報を作成し(S805)、作成した余力情報を顧客端末2に送信する(S806)。余力情報(証拠金余力画面データ)の作成では、現在時刻には適用されていない項目の金額欄をグレーに着色する。なお、記憶部45の余力情報は、リアルタイムに更新されるものではなく、顧客端末2から取得や更新の要求を受けたときに、予め設定された基本情報45A及び随時更新されている顧客情報45Bに基づいて、図6の説明に記載した通りに最新状態に更新され、要求元の顧客端末2に送信される。
【0043】
顧客端末2は、管理サーバ4から余力情報を受信し、表示部22に表示する(S807)。図10は、顧客端末2における通常時の余力情報の表示画面を示す図である。本画面では、証拠金余力及び強制決済証拠金余力のうち、減額時の各項目がグレー表示されている。これによれば、顧客は、通常時の金額が明らかに分かるとともに、通常時であっても減額時の金額が分かるので、通常時には増やせないが、減額時には増やすことができる建玉の枚数を事前に把握することができる。
【0044】
図11は、顧客端末2における減額時の余力情報の表示画面を示す図である。本画面では、「減額適用中」及び減額終了時刻が表示され、証拠金余力及び強制決済証拠金余力のうち、通常時の各項目がグレー表示されている。これによれば、顧客は、減額時の金額が明らかに分かるとともに、減額時であっても通常時の金額が分かるので、減額時はリアルタイム余力が十分だが、通常時に戻った際にリアルタイム余力が足りずに強制決済を受けるか否かを判断でき、強制決済を受けると判断したときには、事前に建玉決済や入金等を行うことにより強制決済を回避することができる。
なお、証拠金変動口座を開設していない顧客の余力情報の表示画面では、常に、通常時の各項目が白く表示され、減額時の各項目がグレー表示される。
【0045】
顧客は、顧客端末2に表示された余力情報を見て、先物注文を行いたいと思えば、発注申込を行う。このとき、顧客端末2は、入力部23から発注枚数を含む発注申込のデータを取得し、そのデータをメッセージの形式にし、通信部21を通じて管理サーバ4に送信する(S808)。管理サーバ4は、顧客端末2から発注申込のメッセージを受信し(S809)、現在時刻が記憶部45の減額時間帯45A10に含まれているか否かを判定する(S810)。これは、余力情報要求の受信から発注申込の受信までに時間が空いており、現在時刻が減額時間帯か否かが変化している可能性があるので、S803とは別に再度現在時刻の判定を行うものである。
【0046】
現在時刻が減額時間帯であれば(S810のYES)、減額時の夜間先物証拠金余力45E4と、[減額時発注証拠金45A7×発注枚数]とを比較する(S811)。一方、現在時刻が減額時間帯でなければ(S810のNO)、通常時の夜間先物証拠金余力45D4と、[通常時発注証拠金45A5×発注枚数]とを比較する(S812)。なお、発注枚数は、受信した発注申込のメッセージから抽出する。そして、夜間先物証拠金余力が[発注証拠金×発注枚数]以上の場合(S813のYES)、余力が十分あるということなので、管理サーバ4は、建玉枚数45B5に発注枚数を加算し、それに伴って通常時及び減額時の発注証拠金額、夜間先物証拠金余力、維持証拠金余力及びリアルタイム維持証拠金余力を更新し(S814)、発注申込のメッセージに基づいて取引所へ先物注文を発注するための処理を行う(S815)。具体的には、取引所のサーバへ先物注文のメッセージを送信する。
【0047】
一方、夜間先物証拠金余力が[発注証拠金×発注枚数]未満の場合(S813のNO)、管理サーバ4は、余力が不足している旨を示す余力不足メッセージを顧客端末2に送信する(S816)。顧客端末2は、管理サーバ4から余力不足メッセージを受信し、表示部22の簡易画面に表示する(S817)。顧客は、顧客端末2の簡易画面に表示された余力不足のメッセージを見ることにより、証拠金余力の不足により先物注文の発注ができなかったことが分かるので、自分の証拠金変動口座に入金する等の対応をとることができる。
【0048】
図9は、建玉を強制決済する処理を示すフローチャートである。本処理は、管理サーバ4において、主として処理部44が記憶部45のデータを参照、更新しながら、所定時間(例えば、1分)ごとに、建玉枚数45B5が1以上である各顧客のリアルタイム余力の判定及び強制決済の実施を行うものである。強制決済は、顧客の先物建玉に応じたリアルタイム余力について所定額以上の損失が見込まれる時に、すべての建玉を決済することをいう。
【0049】
まず、管理サーバ4は、現在時刻が記憶部45の減額時間帯45A10に含まれるか否かを判定する(S901)。減額時間帯であれば(S901のYES)、減額時維持証拠金45A6及び建玉枚数45B5を用いて減額時リアルタイム維持証拠金余力45F2を計算する(S902)。一方、減額時間帯でなければ(S901のNO)、通常時維持証拠金45A4及び建玉枚数45B5を用いて通常時リアルタイム維持証拠金余力45F1を計算する(S903)。なお、S902及びS903の建玉枚数45B5には、当該顧客による先物注文の発注済分が含まれている。
【0050】
次に、管理サーバ4は、計算したリアルタイム維持証拠金余力が強制決済限度額45F3以上か否かを判定する(S904)。強制決済限度額45F3以上であれば(S904のYES)、建玉の継続保持が可能となり(S905)、所定時間後にS901に戻って処理を繰り返す。
【0051】
リアルタイム維持証拠金余力が強制決済限度額45F3未満であれば(S904のNO)、管理サーバ4は、取引所のサーバへ発注済注文の取消を要求するメッセージを送信し(S906)、その結果に応じて建玉枚数45B5を更新し、減額時又は通常時のリアルタイム維持証拠金余力を再計算する(S907)。発注済注文の取消によって、建玉枚数45B5が少なくなり、リアルタイム維持証拠金余力が増えることが期待でき、また、発注済の注文に約定が付くのを防ぎ、リアルタイム維持証拠金余力のさらなる低下を防止することができる。上記注文取消及び余力再計算の処理の後、再度リアルタイム維持証拠金余力が強制決済限度額45F3以上か否かを判定する(S908)。強制決済限度額45F3以上であれば(S908のYES)、建玉の継続保持が可能となり(S905)、所定時間後にS901に戻って処理を繰り返す。
【0052】
リアルタイム維持証拠金余力が強制決済限度額45F3未満であれば(S908のNO)、管理サーバ4は、取引所のサーバへ当該顧客の建玉の一括返済注文を発注するメッセージを送信し(S909)、その約定結果に応じて建玉枚数45B5を更新する(S910)。そして、所定時間後にS901に戻って処理を繰り返す。なお、建玉枚数45B5が0になった顧客については、強制決済処理を行わない。
【0053】
以上によれば、減額時間内では、減額時のリアルタイム余力が十分だったので、建玉の維持が可能だったとしても、減額時間が終了し、減額時より通常時のリアルタイム余力が減って、限度額に足りなければ、強制的に反対売買が行われ、残っている建玉が決済されることがある。
【0054】
≪実施例≫
図12は、実際の先物取引の例を示す図である。これは、通常時発注証拠金が66万円、通常時維持証拠金が60万円、減額時発注証拠金が16.5万円、減額時維持証拠金が15万円で取引を行う場合であり、手数料は無いものとし、当初の差入証拠金を250万円とする。なお、図示したステータスは、時刻が減額時間帯(20:00〜5:00)内にあるか否かに応じて証拠金が減額時又は通常時の金額になっていることを示す。以下、番号順に説明する。
【0055】
(1)20:25に新規建の注文を5枚発注する。このとき、発注証拠金額は、16.5×5=82.5[万円]になり、リアルタイム維持証拠金余力は、250−15×5=175[万円]になる。
(2)0:15に建玉を3枚返済し、+5万円の利益を取得し、既存建玉の損益は±0円だった。このとき、受入証拠金総額は、250+5=255[万円]になり、発注証拠金額は、16.5×(5−3)=33[万円]になり、リアルタイム維持証拠金余力は、255−15×2=225[万円]になる。
(3)3:30に新規建の注文をさらに6枚発注し、既存建玉の損益は±0円だった。このとき、受入証拠金総額は変わらず、発注証拠金額は、16.5×(2+6)=132[万円]になり、リアルタイム維持証拠金余力は、255−15×8=135[万円]になる。
(4)4:58に含み損が生じ、建玉の損益が−20万円になった。このとき、受入証拠金総額及び発注証拠金額は変わらず、リアルタイム維持証拠金余力は、135−20=115[万円]になる。
(5)4:58の状態で5:00になり、減額時間が終了した。そこで、通常時維持証拠金により強制決済の判定が行われる。このとき、発注証拠金額は、66×8=528[万円]になり、リアルタイム維持証拠金余力は、255−20−60×8=−245[万円]になる。
(6)5:01には、リアルタイム維持証拠金余力がマイナスになり、限度額を下回るので、強制反対売買(強制決済)が行われる。その結果、受入証拠金総額は、255−20=235[万円]になり、建玉がなくなるので、発注証拠金額及びリアルタイム維持証拠金余力は0になる。
【0056】
なお、上記実施の形態では、図1に示す先物証拠金変動システム1内の各装置を機能させるために、処理部(CPU)で実行されるプログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録し、その記録したプログラムをコンピュータに読み込ませ、実行させることにより、本発明の実施の形態に係る先物証拠金変動システム1が実現されるものとする。この場合、プログラムをインターネット等のネットワーク経由でコンピュータに提供してもよいし、プログラムが書き込まれた半導体チップ等をコンピュータに組み込んでもよい。
【0057】
以上説明した本発明の実施の形態によれば、先物取引を行う際には、証拠金減額が適用される減額時間内であれば、減額時発注証拠金45A7以上の余力があれば取引可能であり、減額時間が終了すると、通常時発注証拠金45A5以上の余力が必要になる。また、先物建玉がある際には、証拠金減額が適用される減額時間内であれば、減額時リアルタイム維持証拠金余力45F2が強制決済限度額45F3以上であれば建玉が維持可能であり、減額時間が終了すると、通常時リアルタイム維持証拠金余力45F1が強制決済限度額45F3以上であることが必要になる。
【0058】
≪その他の実施の形態≫
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記実施の形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。例えば、以下のような実施の形態が考えられる。
【0059】
(1)上記実施の形態では、先物取引における証拠金の減額について説明したが、証拠金の減額を他の証拠金取引に適用してもよい。例えば、時間帯に応じた証拠金の減額をFX(外国為替証拠金取引)、信用取引、オプション取引、差金決済取引(CFD:Contract for Difference)等に適用してもよい。
(2)証拠金減額時間の終了時刻の設定は、先物商品の銘柄ごとに行ってもよい。その場合、ある銘柄の終了時刻より遅い終了時刻の銘柄があっても、すべての銘柄の減額時間が一律に最初の終了時刻に終了することになる。
(3)上記実施の形態では、先物取引時間を減額時間終了時刻の前後に分けて、その終了時刻の前を減額時とし、その終了時刻の後を通常時としたが、先物取引時間を3以上の時間帯に分けてもよい。この場合、管理サーバ4は、時間帯ごとに維持証拠金及び発注証拠金を予め記憶するとともに、当該時間帯ごとに証拠金余力情報や強制決済証拠金余力情報を記憶し、顧客端末2から取得要求があったときに最新状態に更新する。
(4)上記実施の形態では、余力情報の表示画面において、その時点で適用されていない項目をグレー表示するように記載したが、適用されている項目の金額が明らかに分かり、適用されていない項目の金額も見えるようになっていればよい。例えば、適用されていない項目を反転表示するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 先物証拠金変動システム
2 顧客端末(端末)
4 管理サーバ(サーバ)
44 処理部
45 記憶部
45A 基本情報(発注証拠金情報、維持証拠金情報)
45A4 通常時維持証拠金(維持証拠金額)
45A5 通常時発注証拠金(発注証拠金額)
45A6 減額時維持証拠金(維持証拠金額)
45A7 減額時発注証拠金(発注証拠金額)
45A10 減額時間帯(時間帯)
45B5 建玉枚数
45C1 受入証拠金総額(証拠金総額)
45D 通常時証拠金余力情報(顧客余力情報)
45D4 夜間先物証拠金余力(発注余力金額)
45E 減額時証拠金余力情報(顧客余力情報)
45E4 夜間先物証拠金余力(発注余力金額)
45F1 通常時リアルタイム維持証拠金余力(維持余力金額)
45F2 減額時リアルタイム維持証拠金余力(維持余力金額)
45F3 強制決済限度額

【特許請求の範囲】
【請求項1】
証拠金取引時間の時間帯に応じて必要な証拠金の金額を変動させるシステムであって、
証拠金取引注文を行う顧客が用いる端末と、
前記端末から前記証拠金取引注文を受け付けて発注処理を行うサーバと、
を備え、
前記サーバは、
記憶部及び処理部を備え、
前記記憶部は、
前記証拠金取引注文を発注する際に必要な証拠金の金額である発注証拠金額を、2以上の前記時間帯のそれぞれについて特定するための発注証拠金情報と、
各顧客に関して、当該顧客の発注を行う際の担保金額である発注余力金額を、2以上の前記時間帯のそれぞれについて特定するための顧客余力情報と、
を記憶し、
前記処理部は、前記端末から前記証拠金取引注文のメッセージを受信した場合に、
前記発注証拠金情報に基づいて、現在時刻を含む時間帯の前記発注証拠金額を特定し、
前記顧客余力情報に基づいて、現在時刻を含む時間帯の当該顧客の前記発注余力金額を特定し、
特定した前記発注余力金額が前記発注証拠金額以上のときに、前記証拠金取引注文の発注処理を行い、
特定した前記発注余力金額が前記発注証拠金額未満のときに、前記発注余力金額が不足している旨の余力不足メッセージを前記端末に送信し、
前記端末は、
前記サーバから前記余力不足メッセージを受信し、表示する
ことを特徴とする証拠金変動システム。
【請求項2】
請求項1に記載の証拠金変動システムであって、
前記処理部は、前記端末から前記発注証拠金額及び前記発注余力金額の取得を要求する旨のメッセージを受け付けた場合に、
前記発注証拠金情報により特定される各時間帯の前記発注証拠金額と、前記顧客余力情報により特定される各時間帯の当該顧客の前記発注余力金額とを含む証拠金余力画面データを作成し、
作成した前記証拠金余力画面データにおいて、現在時刻を含まない時間帯の前記発注証拠金額及び当該顧客の前記発注余力金額の欄をグレーに着色し、
前記証拠金余力画面データを前記端末に送信し、
前記端末は、
前記サーバから前記証拠金余力画面データを受信し、表示する
ことを特徴とする証拠金変動システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の証拠金変動システムであって、
前記記憶部は、
前記証拠金取引注文の建玉を維持する際に必要な証拠金の金額である維持証拠金額を、2以上の前記時間帯のそれぞれについて特定するための維持証拠金情報と、
各顧客の、保有建玉枚数及び未約定枚数の合計である建玉枚数と、
各顧客の、前記維持証拠金額が当該金額を下回れば強制決済が行われる強制決済限度額と、
をさらに記憶し、
前記処理部は、所定時間ごとに、前記建玉枚数が1以上の各顧客に関して、
前記維持証拠金情報に基づいて、現在時刻を含む時間帯の前記維持証拠金額を特定し、
特定した前記維持証拠金額及び当該顧客の前記建玉枚数に基づいて、当該顧客の建玉を維持する際の担保金額である維持余力金額を計算し、
計算した前記維持余力金額が前記強制決済限度額未満のときに、当該顧客の発注済注文を取り消す処理を行い、その結果に応じて当該顧客の前記建玉枚数を更新し、前記維持証拠金額及び当該顧客の前記建玉枚数に基づいて、当該顧客の前記維持余力金額を再度計算し、
再度計算した前記維持余力金額が前記強制決済限度額未満のときに、当該顧客の建玉を強制決済する処理を行い、その結果に応じて当該顧客の前記建玉枚数を更新する
ことを特徴とする証拠金変動システム。
【請求項4】
請求項3に記載の証拠金変動システムであって、
前記記憶部は、
各顧客の証拠金取引に使用可能な証拠金総額をさらに記憶し、
前記処理部は、
当該顧客の前記証拠金総額から、前記維持証拠金額と、当該顧客の前記建玉枚数との積を減算することにより、前記維持余力金額を算出する
ことを特徴とする証拠金変動システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−221919(P2011−221919A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92442(P2010−92442)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(399101430)松井証券株式会社 (5)