試料のプロファイリングのための化合物アレイ
本発明は試料のプロファイリングに使用するための化合物のアレイを提供する。アレイは、比較的低親和性で試料の構成成分に結合する化合物を含んでいる。試料の構成成分に結合する化合物の結合力は、試料(例えば抗体または細胞)の多価性の構成成分が化合物の2つ以上の分子と同時に結合することができるようにアレイを形成することにより、増大させることが可能である。試料がそのような条件下でアレイに適用されると、アレイの化合物は顕著に異なる結合力で試料の構成成分に結合し、試料のプロファイルの特徴を生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料のプロファイリングのための化合物アレイに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景技術
ELISA反応およびその他の簡単なイムノアッセイは、疾病の診断のためによく使用される。多くのアッセイは単一の分析物を検出するように構成されている。したがって、いくつかの異なる診断が可能である場合、いくつかの異なるそのようなアッセイが並行して行われることが多い。
【0003】
免疫応答を広く特徴解析するための既存の手法は、多重的な標準ELISA、多数回の選択を伴うライブラリ・パニングの使用、または、病原体に対する抗体もしくは自己抗体を検出するための、アレイ形式の病原体由来の既知タンパク質もしくは宿主タンパク質のプリンティングを含んでいる。T細胞およびB細胞も、組換え事象を配列決定するためにT細胞ゲノムおよびB細胞ゲノムの特定領域を単離およびクローニングすることにより、特徴解析されてきた。これらの処理過程はいずれも労働集約的であり、かつ時間を要する。該処理過程は、特異的結合試薬が提供されている特定の分析物がなければ標準的な臨床診断プロトコールまたは早期発見の助けにはならない。
【発明の概要】
【0004】
特許請求の範囲に記載の発明の概要
本発明は、試料を分析する方法であって:(a)試料を、アレイであってそのアレイの様々なエリアを固定化された様々な化合物が占めているアレイと接触させるステップであって、エリア内の同じ化合物の異なる分子は、同じエリア内の少なくとも2つの異なる分子と多価の結合パートナーとの間の多価結合のために、互いに十分に近接した間隔で配置されることを特徴とするステップと;(b)アレイ内の様々な化合物の、試料の構成成分への、例えば抗体への結合を検出するステップと、を含む方法を提供する。これにより、試料は、一価結合の条件下では試料への結合を相互に識別し、かつ非特異的結合と識別するのは困難であるが、試料の化合物への多価結合により、相互に、かつ非特異的結合とは著しく異なる結合を示し、その結果試料の結合プロファイルの特徴を生じる化合物の相対的結合から、特徴解析が可能である。
【0005】
いくつかの方法では、試料は、1mm〜1μMの会合定数で試料に結合する様々な化合物に結合する複数の試料の相対的結合から特徴解析される。いくつかの方法では、試料は、1mm〜1μMの会合定数で試料に結合する少なくとも10個または100個の化合物の相対的な結合から特徴解析される。いくつかの方法では、試料は、複数の化合物の相対的な結合を含む試料の結合プロファイルを参照結合プロファイルと比較することにより特徴解析される。いくつかの方法では、アレイのエリア内の化合物の分子間の平均間隔は、6nm未満である。
【0006】
任意選択で、該方法は様々な化合物に結合する試料の構成成分を同定するステップをさらに含む。任意選択で、該方法は、同定された構成成分を該構成成分に結合することが知られている結合パートナーを用いて検出するステップをさらに含む。任意選択で、同定された構成成分は、該構成成分に結合することが知られている複数の異なる結合パートナーを用いて検出される。任意選択で、結合パートナーは同定された構成成分に対する抗体である。任意選択で、結合パートナーは同定された構成成分に結合することが知られているペプチドである。任意選択で、結合パートナーはステップ(b)で検出された様々な化合物のうちの1つである。任意選択で、結合パートナーは合成抗体(synbody)である。任意選択で、結合パートナーは支持体に対して固定化されている。任意選択で、結合パートナーはアレイ中で支持体に対して固定化されている。任意選択で、該方法は第2のアレイを形成するステップをさらに含み、該第2のアレイは、アレイ中の様々な化合物全てではなく同定された構成成分に結合するアレイ中の様々な化合物のうち1つ以上を含有している。任意選択で、第2のアレイは、アレイ中の様々な化合物のうち5%未満を含有している。任意選択で、該方法は、試料に結合することが測定された化合物を含むがアレイ中の様々な化合物全ては含まないアレイまたは他のデバイスを形成するステップをさらに含む。
【0007】
いくつかの方法では、検出ステップは、試料中の1つまたは複数の抗体への様々な化合物の結合を検出する。いくつかの方法では、検出ステップは、外側表面から複数の同じタンパク質を提示している生物学的物質への様々な化合物の結合を検出する。いくつかの方法では、生物学的物質はその外側表面から複数の同じ受容体を提示している細胞である。いくつかの方法では、試料に対して最も強く結合する化合物は、その試料の構成成分に結合し、0.1μM〜1mMの結合力の最も強い結合親和性を有する。いくつかの方法では、化合物はペプチドまたは小分子である。いくつかの方法では、アレイは500〜50,000個のペプチドを有する。いくつかの方法では、ペプチドの長さは10〜30アミノ酸である。いくつかの方法では、ペプチドの配列は無作為に選択される。いくつかの方法では、固定化される様々な化合物は試料とは関係なく選択され、アレイは様々なタンパク質に結合することが知られている複数の化合物をさらに含み、該化合物も同じく該アレイの異なるエリアを占めている。いくつかの方法では、様々なタンパク質に結合することが知られている複数の化合物は、様々なヒトタンパク質のうち少なくとも25%、50または75%に結合することが知られている化合物を含む。いくつかの方法では、固定化される様々な化合物は、様々なヒトタンパク質のうち少なくとも25%、50%または75%に結合することが知られている複数の化合物、および500〜50,000個のランダムペプチドを含む。いくつかの方法では、ペプチドの配列は標的の既知の結合パートナーに対して90%未満の配列同一性を有する。いくつかの方法では、ペプチドの配列は既知タンパク質に対して90%未満の配列同一性を有する。いくつかの方法では、アレイのエリア内における化合物間の平均間隔は2〜4nmである。いくつかの方法では、アレイのエリア内における化合物間の平均間隔は3nmである。いくつかの方法では、試料をアレイと接触させるステップは、アレイへの試料の結合の潜在的競合物の存在下で行なわれる。いくつかの方法では、該競合物は、試料の被検構成成分の既知の結合パートナーである。
【0008】
いくつかの方法では、試料は患者の試料であり、競合物は該患者を侵している疾病に関係することが知られているタンパク質である。いくつかの方法では、試料は患者の試料である。いくつかの方法では、試料は複数の抗体を含有している。いくつかの方法では、患者は疾病に罹患していることが知られているかまたは罹患している疑いがある。いくつかの方法では、患者は疾病のリスクを有することが知られているが、該疾病の症状を示していない。一部においては、該疾病は、自己免疫性疾患、感染症、またはCNSの疾病である。いくつかの方法では、試料は血液、尿、またはCNSの試料である。いくつかの方法では、試料の構成成分は標識される。いくつかの方法では、試料の構成成分へのペプチドの結合は二次抗体を使用して検出される。いくつかの方法では、二次抗体はアイソタイプ特異的な抗体である。いくつかの方法では、試料の構成成分へのペプチドの結合はsprまたは質量分析法によって検出される。
【0009】
いくつかの方法は、試料に結合することが測定されたペプチドを使用して試料の構成成分を親和性精製するステップをさらに含む。いくつかの方法は、試料の非結合構成成分をアレイから洗浄するステップ、および結合構成成分をアレイから解離させるステップをさらに含む。いくつかの方法は、患者から抗体ライブラリを調製するステップ、および該ライブラリをスクリーニングするための親和性試薬として、試料中の抗体が結合するペプチドを使用するステップをさらに含む。いくつかの方法は、親和性精製された抗体の天然の結合パートナーを同定するステップをさらに含む。いくつかの方法は、試料の構成成分の天然の結合パートナーを同定するために、試料の構成成分に結合するペプチドの配列を天然の配列のデータベースと比較するステップをさらに含む。いくつかの方法は、疾病または疾病の病期のうちの1つを有するものとして患者を診断するために、試料に結合する様々な化合物のプロファイルを、様々な疾病または疾病の様々な病期に関連した様々な化合物のプロファイルと比較するステップをさらに含む。いくつかの方法は、疾病が存在するかどうかを測定するために、試料に結合する様々な化合物のプロファイルを、疾病の欠如に関連した様々な化合物のプロファイルと比較するステップをさらに含む。いくつかの方法は、同じ疾病に罹患している複数の患者由来の異なる試料について、該疾病の結合プロファイルの特徴を示すために、該方法を反復するステップをさらに含む。いくつかの方法は、様々な疾病の複数の結合プロファイルの特徴を示すために、様々な疾病に罹患している複数の患者由来の異なる試料について、該方法を反復するステップをさらに含む。
【0010】
本発明は、アレイであって該アレイの様々なエリアを固定化された様々な化合物が占めているアレイをさらに提供し、エリア内の同じ化合物の異なる分子は、同じエリア内の少なくとも2つの異なる分子と多価の結合パートナーとの間の多価結合のために互いに十分に近接した間隔で配置されていることを特徴とする。
【0011】
本発明は、試料を分析する方法をさらに提供し、該方法は:試料を、アレイであって固定化された様々なペプチドが該アレイの様々なエリアを占めているアレイと接触させるステップと;アレイ内の様々なペプチドの、試料の構成成分への結合を検出するステップと;試料について1mM〜1μMの見かけの解離定数を備えた複数のペプチドの相対的な結合から、該試料を特徴づけるステップと、を含む。任意選択で、試料は、1mM〜1μMの見かけの解離定数を備えた少なくとも10個のペプチドの相対的な結合から、特徴づけられる。
【0012】
本発明は、複数の様々な試料を特徴解析する方法をさらに提供し、該方法は、様々な試料を、同じアレイまたは複数の同じアレイであって該アレイの様々なエリアを固定化された様々なペプチドが占めているアレイと接触させるステップと;様々な試料への様々なペプチドの様々な結合プロファイルを検出するステップとを含み、試料はそれぞれの結合パターンから特徴解析されることを特徴とする。任意選択で、複数の様々な試料は、様々な症状を有する患者由来の試料を含む。任意選択で、複数の様々な試料は、疾病を呈する患者および疾病のない患者の試料を含む。
【0013】
本発明は、試料を分析する方法をさらに提供し、該方法は:該試料を、アレイであって該アレイの様々なエリアを固定化された様々な化合物が占めているアレイと接触させるステップと、エリア内の同じ化合物の異なる分子は、同じエリア内で平均距離4nm未満の間隔を置いて配置されていることと;アレイの様々な化合物の、試料の構成成分への結合を検出するステップと、を含む。
【0014】
本発明は、試料を分析する方法をさらに提供し、該方法は、(i)試料を、該試料の構成成分の既知の結合パートナーと接触させるステップと;(ii)該結合パートナーが試料に結合するかどうかを、該構成成分を欠く対照と比較して測定するステップと、を含み、既知の結合パートナーは、(a)初期試料を、アレイであって該アレイの様々なエリアを固定化された様々な化合物が占めているアレイと接触させるステップと、エリア内の同じ化合物の異なる分子は、同じエリア内の少なくとも2つの異なる分子と多価の結合パートナーとの間の多価結合のために互いに十分に近接した間隔で配置されていることと;(b)アレイ内の様々な化合物の、試料の構成成分への結合を検出するステップと;(c)様々な化合物に結合する試料の構成成分を同定するステップと;(d)ステップ(i)で使用するための、構成成分の既知の結合パートナーを同定するステップと、を含む手順によって同定されることを特徴とする。
【0015】
任意選択で、ステップ(i)の構成成分は、該構成成分に結合することが知られている複数の様々な結合パートナーを用いて検出される。任意選択で、結合パートナーは構成成分に対する抗体である。任意選択で、結合パートナーは構成成分に結合することが知られているペプチドである。任意選択で、結合パートナーはステップ(b)で検出された様々な化合物のうちの1つである。任意選択で、結合パートナーはステップ(i)においてアレイ中の支持体に固定化されている。
【0016】
本発明は、試料の構成成分の検出において使用されるデバイスを製造する方法をさらに提供し、該方法は:(a)試料を、アレイであって該アレイの様々なエリアを固定化された様々な化合物が占めているアレイと接触させるステップと、エリア内の同じ化合物の異なる分子は、同じエリア内の少なくとも2つの異なる分子と多価の結合パートナーとの間の多価結合のために互いに十分に近接した間隔で配置されていることと;(b)アレイ内の様々な化合物の、試料の構成成分への結合を検出するステップと;(c)ステップ(b)において様々な化合物の結合が検出された構成成分の、既知の結合パートナーを含むデバイスを形成するステップと、を含む。
【0017】
いくつかの方法は、様々な化合物に結合する試料の構成成分を同定するステップをさらに含む。いくつかの方法は、構成成分に結合することが知られている複数の異なる結合パートナーを含むデバイスを形成するステップをさらに含む。任意選択で、結合パートナーは構成成分に対する抗体である。任意選択で、結合パートナーは構成成分に結合することが知られているペプチドである。任意選択で、結合パートナーはステップ(b)で検出された様々な化合物のうちの1つである。任意選択で、結合パートナーは合成抗体である。任意選択で、結合パートナーは支持体に固定化される。任意選択で、結合パートナーはアレイ中の支持体に固定化される。任意選択で、ステップ(c)は第2のアレイを形成することを含み、該第2のアレイは、結合するアレイ内の様々な化合物のうち1つ以上を含有し、第2のアレイはアレイ内の様々な化合物の5%未満を含有している。
【0018】
本発明は、ワクチンを試験する方法をさらに提供し、該方法は、病原微生物に対するワクチンで免疫化された対象者の血液試料を、アレイであって該アレイの様々なエリアを固定化された様々な化合物が占めているアレイと接触させるステップと;アレイの様々な化合物への試料の結合パターンを検出するステップと;該結合パターンを、ウイルスによる感染を生き残った対象者由来の1つ以上の参照試料の結合パターンと比較するステップと、を含み、対象試料と参照試料との間の結合プロファイルの類似は、該ワクチンが該病原微生物に対して有効であることを示していることを特徴とする。任意選択で、対象者はウイルスへの曝露の前にワクチンで免疫化済みである。
【0019】
本発明は、アレイであって該アレイの様々なエリアを固定化された様々な化合物が占めているアレイをさらに提供し、様々な化合物は、既知のヒトタンパク質のうち少なくとも25、50または75%に結合することが知られている複数の化合物および500〜1,000,000個またはそれ以上のランダムペプチドを含むことと、エリア内の同じペプチドの異なる分子は、同じエリア内の少なくとも2つの異なる分子と多価の結合パートナーとの間の多価結合のために互いに十分に近接した間隔で配置されていることとを特徴とする。
【0020】
本発明は、試料を分析する方法をさらに提供し、該方法は、該試料を、アレイであって該アレイの様々なエリアを固定化された様々な化合物が占めているアレイと接触させるステップと;アレイ内の様々な化合物の、試料の構成成分への結合を検出するステップと;アレイ中の空エリアの結合強度の平均+3標準偏差より大きく、しかし3桁以内の、試料に対する結合強度を有する複数の化合物の相対的な結合から、試料を特徴解析するステップと、を含む。任意選択で、特徴解析ステップは、複数の化合物を含む試料の結合プロファイルを、複数の化合物を含む参照結合プロファイルと比較することを含む。任意選択で、試料は、アレイ中の空エリアの結合強度の平均+3標準偏差よりも3桁以内で大きい試料に対する結合強度を有する少なくとも10個または100個の化合物の相対的な結合から特徴解析される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】様々な抗体に対する800個のペプチドの結合およびこれらの抗体の分離度を示す図。
【図2】競合物の存在下または非存在下におけるモノクローナル抗体に結合するペプチド由来のシグナルを示す図。
【図3】競合物の存在下または非存在下において2つの異なるモノクローナル抗体の混合物を識別する、300個の最も情報量豊富なペプチドに対する結合強度を示す図。白から黒への様々なレベルは、抗体へのペプチドの結合の強さを示す。
【図4】表示の100個の情報量豊富なペプチドについての疾病特異的な特徴的結合パターンを表している、渓谷熱、インフルエンザのいずれかの患者、健康なボランティアのインフルエンザワクチン接種者の結合プロファイルを示す図。
【図5】喘息、渓谷熱(Cocci)、肉腫、乳癌、神経膠腫、膵臓癌、膵臓炎、および健康なボランティアを識別する、88個の情報量豊富なペプチドの結合プロファイルを示す図。下側のパネルは、同じペプチドについての主成分マップを示し、試料間の分離度(二次元)について表示している。
【図6】膵臓癌に罹患しているかまたは膵臓癌のリスクを有する患者の主成分分析を、その他の疾病(乳癌、肉腫、膵臓炎、神経膠腫)との関連において示す図。
【図7】健常なボランティア、乳癌患者、乳癌の初回寛解に続いて第2の異なる原発腫瘍を臨床的に有している乳癌のリスクを有する患者の結合プロファイルを比較する図。
【図8】感染マウス由来の抗血清にあらかじめ吸着された全ウイルス粒子を使用して阻止された、マウスにおけるインフルエンザのパターンを示す図。この同じパターンは無関係のウイルスによっては阻止されなかった。
【図9】イムノシグネチャリング・マイクロアレイ由来のペプチドを使用してプルダウンされた抗体は、インフルエンザ粒子を検出することができることを示す図。図9Aは、PR8粒子を検出するその抗体である。図9Bは、抗体がインフルエンザ粒子を検出している場合を示す陽性対照である。図9Cは、ビーズのみからプルダウンされた陰性対照である。
【図10A】様々な疾病を有する患者が疾病ごとに共通の結合パターンを示すことを表している、875個の異なる個別の試料および約2000個の異なるペプチドの階層的クラスタリングを示す図。
【図10B】同じペプチドの主成分マップを示し、かつ試料間の分離度について表示する図。
【図11】様々な数の抗体に結合する様々なペプチドの数の分析について示す図。
【図12】いくつかのモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体の、アレイ中の様々なペプチドへの結合プロファイルを比較する図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
特異的結合とは、標的(例えば試料の構成成分)への化合物の結合であって、検出可能な程度に規模が大きく、かつ少なくとも1つの無関係な標的に対して生じる非特異的結合とは識別可能な結合を指す。特異的結合は、特定の官能基の間の結合形成または特定の空間的嵌合(例えば鍵と鍵穴型)の結果でありうるのに対し、非特異的結合は通常はファンデルワールス力の結果である。しかしながら、特異的結合とは、化合物が唯一無二の標的に結合することを意味するものではない。したがって、化合物は、いくつかの異なる標的に対して異なる強さの特異的結合を、かつ他の標的には単なる非特異的結合を示すことが可能であり、またそうである場合が多い。好ましくは、程度の異なる特異的結合は、特異的結合を非特異的結合から識別可能であるように、互いに識別することができる。特異的結合は、103M−1以上の見かけの会合定数を伴う場合が多い。特異的結合は、追加として、または別例として、アレイ中の空の対照エリア(すなわち化合物が存在せず、いかなる結合も支持体への非特異的結合である場合)の平均結合強度で表わされるバックグラウンドよりも3標準偏差を超えて高い結合強度(例えば蛍光強度)として定義可能である。最も情報量豊富(informative)な化合物は、バックグラウンド強度の3標準偏差の1000倍以内の結合強度を有する。モノクローナル抗体または他の試料に特異的結合を示す化合物の親和性または結合力の範囲は、1〜4桁、多くの場合は2.5〜3.5桁にわたって変化する。見かけの会合定数は、存在する場合は結合効果(時には協同的結合としても知られている)を含む(言いかえれば、標的が同じ化合物の複数の分子に対して多価結合を示す場合、見かけの会合定数は、標的に対する同じ化合物の複数の分子の総計的な結合を反映する値である)。結合力の理論的最大値は、多数の個々の解離定数の積であるが、実際には、結合力は、通常は個々の結合の会合定数と理論的最大値との間の値である。モノクローナル抗体の無作為選択物と接触させると、情報量豊富な化合物のサブセット(例えば1〜20または5〜15%)は、少なくとも1個および場合によっては数個(例えば少なくとも2、5または10個)の異なる標的に対して103〜106M−1または2×103〜106M−1または104〜106M−1の範囲の会合定数を有する。すべてのペプチドまたはその他の化合物のサブセット(例えば少なくとも1%、少なくとも5%または10%、1〜75%、5〜60%、1〜20%または5〜15%は、通常は、少なくとも1つおよび通常は数個の標的(例えば少なくとも2、5または10個)に対して103〜106M−1の真の親和定数を示す。同じ範囲の会合定数が、複雑な試料中の同じ化合物に結合する複合標的に当てはまる。当然ながら、アレイ中の異なる化合物は試料の構成成分に対して程度の異なる結合強度を有し、いくつかの化合物は上記範囲より高いかまたは低い見かけの会合定数で結合する可能性がある。
【0023】
患者には、ヒト、家畜動物、例えばネコ、イヌ、ウマ、畜産動物、例えばニワトリ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ならびに実験動物、例えばげっ歯類、例えばマウスおよびラットが挙げられる。
【0024】
アレイの結合プロファイルとは、特定の試料に対するアレイの様々な化合物に結合した試料構成成分の量の尺度である。結合した構成成分の量は、試料中の構成成分の量のほかに該構成成分の化合物への結合強度も反映する。結合プロファイルは、例えばアレイ中の様々な化合物に対応する結合強度のマトリクスとして表わすことができる。結合プロファイルは、典型的には、複数の化合物の結合強度を含む(例えば、少なくとも2、10、50、1000または1000個が試料に対して1mM〜1μMの範囲の会合定数を有しているか、または空セルの平均強度より大きい範囲内であってただし3標準偏差の1000倍以内である)。
【0025】
結合強度は、会合定数、解離定数、解離速度、もしくは会合速度、またはこれらの尺度のうち1つ以上を含みうる粘着性の複合尺度によって計測可能である。固定化された化合物に結合した試料の標識された構成成分からのシグナルの強度は、一般的な粘着性に関する値を提供することができる。結合強度を定義するために使用される用語が「見かけの」と呼ばれる場合、意味されるのは多価結合を考慮しない計測値である。例えば、多価結合の条件下における会合定数の計測値は、いくつかある要因の中で特に一価結合に起因する複数の結果を含んでいる。別段の定めがない限り、結合強度とは、上記に引用された計測値のうち任意のものを指すことができる。
【0026】
用語「核酸」には、修飾された塩基、糖、および骨格を包含するあらゆる形態の代替核酸、例えばペプチド核酸およびアプタマーであって、任意選択でステムループ構造を備えたものが含まれる。
【0027】
用語「ポリペプチド」は「ペプチド」と互換的に使用され、その最も広い意味においては、サブユニットである天然アミノ酸、非天然アミノ酸を含むアミノ酸類似体の配列を指すために使用される。ペプチドは、式H2NCHRCOOHを有するアミノ酸および式HRNCH2COOHを有する類似体アミノ酸のうち少なくともいずれか一方のポリマーを含む。サブユニットは、注記のない限りはペプチド結合(すなわちアミド結合)によって連結されている。多くの場合、すべてのサブユニットがペプチド結合によって連結されている。ポリペプチドは、天然に存在するもの、天然に存在するポリペプチドが処理された形態のもの(酵素消化によるものなど)、化学合成されたもの、または組換え発現されたものであってよい。好ましくは、ポリペプチドは標準的技法を使用して化学合成される。ポリペプチドは、D‐アミノ酸(L‐アミノ酸特異的プロテアーゼ抵抗性である)、D‐アミノ酸およびL‐アミノ酸の組み合わせ、βアミノ酸、ならびに特別な属性を伝えるための様々な他の「デザイナー」アミノ酸(例えばβ‐メチルアミノ酸、Cα‐メチルアミノ酸、およびNα‐メチルアミノ酸)を含む。合成アミノ酸には、リジンについてはオルニチン、およびロイシンまたはイソロイシンについてはノルロイシンが挙げられる。何百もの異なるアミノ酸類似体が、例えば米国マサチューセッツ州所在のペプテックコーポレイション(PepTech Corp.)から市販されている。一般に、非天然アミノ酸は天然に存在するアミノ酸と同じ基本的化学構造、すなわち、1つの炭素が水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合しているもの、を有する。
【0028】
さらに、ポリペプチドは、非ペプチド結合、例えばN‐メチル化結合(‐N(CH3)‐CO‐)、エステル結合(‐C(R)H‐C‐O‐O‐C(R)‐N‐)、ケトメチレン結合(‐CO‐CH2‐)、アザ結合(‐NH‐N(R)‐CO‐)であって式中のRはアルキル、例えばメチルであるもの、カルバ結合(‐CH2‐NH‐)、ヒドロキシエチレン結合(‐CH(OH)‐CH2‐)、チオアミド結合(‐CS‐NH‐)、オレフィン二重結合(‐CH=CH‐)、逆アミド結合(‐NH‐CO‐)、ペプチド誘導体(‐N(R)‐CH2‐CO‐)であって式中のRは「正常な」側鎖であるもの、を有することが可能である。これらの修飾は、ペプチド鎖に沿った任意の結合において、同時に実に数箇所(2〜3箇所)において生じる可能性がある。例えば、ペプチドはエステル結合を含むことができる。ポリペプチドはさらに、還元型ペプチド結合、すなわちR1‐CH2‐NH‐R2であってR1およびR2がアミノ酸残基または配列であるものを組込むこともできる。還元型ペプチド結合は、ジペプチドサブユニットとして導入されてもよい。そのようなポリペプチドはプロテアーゼ活性に抵抗性となり、in vivoにおいて長い半減期を有することになろう。該化合物はさらに、側鎖が分子の主鎖に沿ってアミノ酸のようにα炭素ではなく窒素原子に付加されている、ペプトイド(N置換グリシン)であってもよい。
【0029】
用語「多糖類」は、サブユニットの単糖類、オリゴマーまたは修飾型単糖類で作られた任意のポリマー(ホモポリマーまたはヘテロポリマー)を意味する。糖の間の結合には、アセタール結合(グリコシド結合)、エステル結合(ホスホジエステル結合を含む)、アミド結合、およびエーテル結合を挙げることができる。
【0030】
詳細な説明
I.概略
本発明は、試料のプロファイリングにおいて使用するための化合物のアレイを提供する。該アレイは、比較的低い親和性で試料の構成成分に結合する化合物を含んでいる。本発明の実施はメカニズムの理解には左右されないが、一価結合の条件下では、程度の異なる特異的結合を相互に識別することおよび非特異的結合と識別することは難しいかもしれない。しかしながら、試料の構成成分に結合する化合物の結合力は、試料の構成成分(例えば抗体または細胞)が同時に化合物の2つ以上の分子に結合することができるようにアレイを形成することにより、増大させることができる。試料がそのような条件下でアレイに適用されると、アレイの化合物は顕著に異なる親和性で試料の構成成分に結合して、試料のプロファイルの特徴を生成する。そのようなプロファイルは通常、試料の構成成分に対して特異的結合性を持たないいくつかの化合物と、試料の構成成分に対して様々な程度の特異的結合を有する他の化合物とを含んでいる。そのような結合相互作用は、アレイの全体的な結合プロファイルが同じ試料の複製物については再現可能であり異なる試料間では識別可能であるという意味では特異的であるが、アレイ中の化合物が通常、試料のいくつかの異なる構成成分またはいくつかの異なる試料に対して程度が異なるとはいえ特異的結合を示すという点では必ずしも特有ではない。
【0031】
アレイ中の情報量豊富な化合物(すなわち特異的結合を示す化合物)の結合力は、モノクローナル抗体試料について計測することができる。無作為に選択されたモノクローナル抗体(例えば、実施例に記載のような商業的供給業者から購入)に対して計測された時、いくつかのアレイ中の情報量豊富な化合物は、多くの場合104〜109、106〜109、104〜107 104〜106M−1の範囲の見かけの親和性会合定数を示す。そのような情報量豊富な化合物の会合定数は、多くの場合103〜106M−1または104〜105M−1の範囲内にある。複雑な試料に対して計測された時、同様の範囲の見かけの会合定数または実際の会合定数が観察されるが、この場合、定数は、同じ化合物に結合する試料中の多数の異なる構成成分に関する値の複合物である。そのような親和性は非特異的相互作用とは区別することができる。情報量豊富な化合物(すなわち様々な標的の中で識別可能な結合を示す化合物)の割合はアレイおよび試料の組成に依存して変化し得るが、1〜75%、5〜60%、1〜20%、5〜15%、または7〜12%の範囲がある程度の指針を提供する。様々なモノクローナル抗体がそれ自身のシグネチャを有することを示す実施例1のデータが与えられたとき、血清中に108以上の異なる特異性の抗体を含有する可能性のある患者の試料を意味があるように解明することは不可能と思われたかもしれず、該アレイは分解能の無いものとなろう。アレイが患者由来のようなより複雑な試料に対してハイブリダイズされると、結合プロファイルは試料の複数の構成成分の総計の影響を表わす。驚くべきことに、試料の複雑さにもかかわらず、試料が異なれば関係する結合プロファイルも異なる。さらに驚くべきことに、結合プロファイルの強度は、多くの場合、疾病に罹患しているかまたは疾病のリスクを有する患者と健常な患者との間で異なっている。比較的多くの化合物が、疾病患者または疾病のリスクを有する患者について健常者と比較して情報量豊富であり、結合強度は健常な患者(強度はモノクローナル抗体の無作為選択物についての範囲の低い側の境界に向かって片寄っている)よりも比較的高い(例えば、モノクローナル抗体の無作為選択物についての範囲の高い側の境界に向かって片寄っている)。
【0032】
試料へのそのようなアレイの結合プロファイルは、試料を特徴解析するために使用することができる。例えば、該結合プロファイルを、異なる疾病もしくは疾病の病期または疾病の欠如に関係することが知られている結合プロファイルと比較することができる。別例として、または追加として、例えば、試料から抗体を親和性精製するために該試料の構成成分に比較的強く結合する化合物を使用することにより、または試料中のタンパク質を同定するために試料の構成成分に強く結合することが知られたアレイ中のペプチドの配列をタンパク質データベースと比較することにより、結合について分析することが可能である。著しい場合には、同じアレイが、異なる疾病状態、病期、疾病の欠如などを表わす多くの異なる試料とともに、様々かつ情報量豊富なプロファイルを生成することができる。さらに、疾病の典型的な分析的マーカーがELISAのような従来方式によって検出可能となる前に、疾病または非疾病状態からの逸脱のプロファイルの特徴を、疾病発症のごく初期に検出することができる。
【0033】
II.アレイに使用される化合物
様々な種類の化合物または様々な種類の化合物の組み合わせを本発明のアレイおよび方法に使用することができる。化合物の種類には、核酸およびその類似体、ポリペプチド(上記のように広義のもの)、多糖類、有機化合物、無機化合物、ポリマー、脂質、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。段階的な方式で合成可能な多種類の化合物についてコンビナトリアルライブラリが生産されてもよい。そのような化合物には、ポリペプチド、βターンミメティック、多糖類、リン脂質、ホルモン、プロスタグランジン、ステロイド、芳香族化合物、複素環式化合物、ベンゾジアゼピン、オリゴマーのN置換グリシンおよびオリゴカルバメートが挙げられる。化合物の大規模なコンビナトリアルライブラリは、アフィーマックス(Affymax)の国際公開第95/12608号、アフィーマックスの国際公開第93/06121号、コロンビア大学の国際公開第94/08051号、ファーマコペイア(Pharmacopeia)の国際公開第95/35503号およびスクリップス(Scripps)の国際公開第95/30642号(各々がすべての目的について参照により組み込まれる)に記載のコード化合成ライブラリ(ESL)法によって構築可能である。ファージディスプレイ法によってペプチドライブラリを生成させることもできる。例えばデブリン(Devlin)の国際公開第91/18980号を参照のこと。試験化合物は天然物であっても合成物であってもよい。試験化合物は、いくつかの結合または結合の組み合わせ(例えばアミド、エステル、エーテル、チオール、ラジカル付加、および金属配位)のうちいずれかに基づいた直鎖または分岐鎖のヘテロポリマー化合物、樹枝状構造、環状構造、空洞構造または他の構造であって特定の付加物が作られる足場としての役割を果たす複数の近隣結合部位を備えた構造を含むこともできるし、前記構造で構成されることもできる。化合物は天然に存在するものでもよいし、非天然のものでもよい。核酸以外の様々な種類の化合物を使用可能であるが、任意選択で化合物が核酸である場合、検出される試料の構成成分は核酸ではない。いくつかのアレイでは、試験化合物は500〜10,000Daの分子量を有し、任意選択で1000〜4000Daの分子量を有する。
【0034】
化合物の数は2つの要因の間のバランスである。化合物が多いほど、アレイは任意の対象標的に対する検出可能な親和性を有する化合物を含む可能性が高くなる。しかしながら、化合物が多数であると、アレイを合成かつ分析するコストも増大する。アレイは典型的には少なくとも100個の化合物を有する。500〜25000個の化合物を有するアレイは、任意の対象標的への検出可能な結合を備えた化合物を得る可能性と、合成および分析の容易性との間の好適な妥協点を提供する。例えば、100〜50,000個の化合物または500〜500,000個もしくは1000〜25,000個の化合物を有するアレイを使用することもできる。しかしながら、非常に多数、例えば102〜107個または1000〜5,000,000個または500,000〜2,000,000個の化合物を有するアレイを使用することもできる。そのようなアレイは、典型的には構造空間全体のごく一部のみ、例えばペプチドの場合には10−6、10−10、または10−15未満に相当する。配列空間は、所与の一組のモノマーの配列の順列の総数を意味する。例えば、20個の天然アミノ酸一組については、nをペプチドの長さとする20n個の順列が存在する。ペプチドエピトープ中の全てではないにしてもほとんどの残基が標的への結合に参加するものと広く見なされているが、10〜12量体のエピトープ中の2〜5個の残基が標的とのエネルギー的に好ましい相互作用に関係し、他の残基は、重要な残基の位置を調節し、かつ結合の阻害を防止するために単にそこに存在するという方がはるかに可能性が高い。したがって、比較的少数のペプチドは、配列空間全体の好適な表示を提供することが可能であり、多種多様な標的との低親和性ではあるが特異的な相互作用が可能なペプチドを含むことができる。例えば、500〜25,000個のランダムペプチドは、免疫系(ヒトでは107〜108個の抗体)の形状空間全体を平等にカバーすることができる。
【0035】
アレイ中の化合物が多いほど、複雑な試料中の化合物の多様性についてより高い分解能が可能となるはずである。例えば、化合物が100万個のアレイは、ある人の血清中の抗体の複雑性に迫りつつあり、したがって複雑な試料についてのより高い分解能が可能となるはずである。しかし、極めて少数の化合物を用いても、感染または免疫化に由来する新しい免疫応答を解明することが可能である。
【0036】
ポリマー化合物については、ポリマーの長さは結合親和性と合成の容易性との妥協点に相当する。ペプチドの長さと結合親和性との間には、長さが増大すると親和性が増大するという、ある程度の関連がある。しかしながら、ペプチドの長さが結合の可能性を増大させるにつれて、ペプチドの全長と相互作用する標的上の結合部位は減少する。長さの増大に伴って、不溶性の可能性が高まるので合成のコストも増大する。ペプチドアレイについては、8〜35個、12〜35個、15〜25個または9〜20個の残基を有するペプチドが好ましい。この範囲のモノマー長は他のポリマーにも使用することができるが、アプタマーの長さは通常はさらに長い(例えば最大100ヌクレオチド)。
【0037】
化合物(例えば全部または少なくとも80、90もしくは95%)は、典型的には特定の標的または該標的に対する天然リガンドの同一性を考慮せずに選択される。言いかえれば、アレイの組成は、典型的には、特定の化合物が特定の標的に結合する、または該標的もしくは該標的に対する既知のリガンドのうちいずれかとの有意な配列同一性を有するという演繹的な知見からは選択されない。ペプチドと天然の配列(例えば標的またはリガンド)との間の配列同一性は、下記に記載の初期設定パラメータとともにBLASTもしくはBLAST 2.0配列比較アルゴリズムを使用して計測して最大限アラインメントされたとき、または手作業のアラインメントおよび目視検査によって(例えば、NCBIウェブサイトncbi.nlm.nih.gov/BLASTなどを参照のこと)、ペプチド中の残基の少なくとも30%が天然の配列中の対応する残基と同一である場合に、有意であると考えられる。
【0038】
いくつかの化合物は、配列空間全体またはその一部(例えばある種のアミノ酸が存在しないかまたは圧倒的に少ないペプチド)から無作為に選択される。無作為選択は、いかなる化合物も配列空間から選択される均等な機会を有する完全無作為であってもよいし、選択は無作為な選択を伴うがアミノ酸のようなある種のモノマーに関して正もしくは負の偏りがある、部分的無作為であってもよい。ペプチドの無作為選択は、例えば擬似乱数的コンピュータアルゴリズムによって行うことができる。様々なアミノ酸が、得られるペプチド中で均等に表わされるように、または自然界において表れる比率で、もしくは任意の所望の比率で生じるように、無作為化手順が設計されうる。システイン残基は、支持体への付着点を提供する末端アミノ酸を予定される例外として、ライブラリの構成員から省略されることが多い。いくつかのライブラリでは、ある種のアミノ酸はすべてのペプチドにおいて一定に保持される。例えば、いくつかのライブラリでは、3つのC末端アミノ酸はグリシン、セリンおよびシステインであり、システインはC末端の最終アミノ酸である。一旦選択された、無作為選択によって選ばれたライブラリは、同一性が既知であり、初期の無作為選択手順を繰り返さずに再現させることができる。しかしながら、そのようなライブラリ中の化合物は、同じ無作為な相互関係を保持する。例えば、その後再現される無作為ライブラリのペプチドは、配列空間全体にわたってランダムな分布を保持する(システイン残基が省略される場合は、システイン残基を予定される例外とする)。配列空間にわたってランダムに分布するペプチドのような化合物の集合は、当初の無作為選択を繰り返さずに再現されたとしても、依然として無作為と考えられる。
【0039】
本方法においてアレイ用にペプチドおよび他の化合物を選択するための原則は、国際公開第2008/048970号および国際公開第2009/140039号にさらに記載されるように、合成抗体の生産において化合物の初期ライブラリを選択するための原則に類似している。
【0040】
III.アレイの作製
化合物は、あらかじめ合成されてアレイの表面上にスポッティングされてもよいし、アレイ表面上でin situ合成されてもよい(例えば、Cretich et al.,Biomol.Eng.2,77−88(2006);Min et al.,Current Opinion in Chemical Biology 8,554−558(2004)、Breitling,Mol. BioSyst,5,224−234(2009)、米国特許第5,143,854号明細書;欧州特許出願第476,014号明細書、Fodor et al.,1993,Nature 364,555−556;米国特許第5,571,639号明細書、米国特許第5,593,839号明細書、欧州特許出願第624,059号明細書、米国特許第6,620,584号明細書、欧州特許出願第728,520号明細書を参照のこと)。カスタマイズされたアレイも、インビトロジェン(Invitrogen)またはペプスキャン(Pepscan)のような供給業者から市販されている。その表面は通常、任意選択でリンカーを介して、化合物に付着する官能基で誘導体化される。化合物は、共有結合によって付着されてもよいし、非共有結合によって付着されてもよい。アレイ表面は、支持体の単一の連続的な表面であってよい。別例として、アレイは、ビーズのような異なる粒子状支持体上に異なる化合物をスポッティングまたは合成することにより形成されてもよい。ペプチドはアレイに対していずれかの配向(NまたはC)で付着されてもよい。一般に、異なる化合物は、連続的なアレイの異なるエリアまたは粒子状アレイの異なる粒子を占める。どの化合物がアレイのいずれのエリアまたはいずれの粒子を占めるかの同定は通常、合成手順の結果として分かるか、またはコード化手順の結果として判定可能であるかのうちいずれかである。コード化手順は一般にビーズについて使用される。連続的なアレイの異なるエリアは、そのようなアレイがin situ合成の結果である場合に生じうるように、直接隣接していてもよいし、多くの場合はスポッティングの結果である、分離状態であってもよい。
【0041】
アレイのエリアまたはセルは、個別のシグナルが検出可能な単位表面積である。いくつかのアレイでは、アレイの各エリアは、例えばアレイ中の欠陥に起因するあるエリアから別のエリアへの僅かな滲出のおそれを除けば、同じ化合物の分子によってのみ占められている。他のアレイでは、エリアのうち一部または全部が2つ以上の異なる化合物のプールを含有している。そのようなアレイでは、2つ以上の異なる化合物のプールを含有しているエリアからのシグナルは、該プールを構成する化合物からの分割されていない総計のシグナルである。
【0042】
そのようなアレイは典型的には、上記に議論されるように100〜5,000,000個の化合物(例えば100〜1,000,000、500、100,000または500〜25,000個の化合物)を含有している。これらの数の化合物は、ほぼ1〜5cm2程度の複合エリアであるアレイの異なる領域に容易に収容可能である。
【0043】
連続的なアレイの任意の1つのエリア内、または粒子アレイの任意の1つの粒子内に、同じ化合物の多数の異なる分子が存在する。化合物は通常は支持体または粒子の誘導体化された表面(例えばリンカーを担持している支持体または粒子)に付着されるので、アレイのエリア内または粒子内における分子の密度は、一部には誘導体化手順、例えば、誘導体化剤が使用される期間および濃度によって制御可能である。分子の密度は、化合物を支持体に付着させる付着手順またはin situ合成手順によっても制御可能である。カップリングサイクルの長さおよびカップリングに使用される化合物の濃度はいずれも化合物密度に影響しうる。
【0044】
アレイのエリア内または粒子上の化合物の異なる分子の密度は、化合物(またはプール式アレイの場合は複数化合物、の分子間の平均間隔を制御し、ひいては化合物が試料中の多価結合性のパートナーと多価結合を形成することができるかどうかを決定する。化合物またはプール式アレイの場合の複数化合物の2つの分子が互いに十分に近接している場合、両分子は同じ多価結合性のパートナーに(例えば抗体の2つのアームに)結合することができる。長さ15〜25残基のペプチドについては、0.1〜6nm、1〜4nm、2〜4nm未満、例えば1、2または3nmのアベレージ(平均)間隔は、例えば、同じ化合物の異なる領域がそのような多価結合を行うことを可能にするのに適している。6nmまたはそれ以上の間隔は同じ標的上の2つの部位の同時結合を可能としないので、アベレージ(例えば、平均)間隔は典型的には6nm未満である。例えば、長さ15〜25残基のペプチドについては、1つの抗体の2つの同一の結合部位は、一度に2つのペプチドと接触するために6nmを超えて広がることは不可能であった。多価性の相互作用のための最適な間隔は、使用される化合物および分析されている試料の構成成分に依存して変化しうる。
【0045】
多価結合の形成はいくつかの方法によって示すことができる。例えば、相互作用抗体(interact antibody)(すなわち2つの結合部位)へのアレイの結合が、結合部位を1つだけ有しているが他の点では同一の抗体フラグメント(例えばFabフラグメント)と比較されてもよい。抗体フラグメントよりも完全型抗体に強く結合すること(例えば見かけの会合定数が高いこと)は、多価結合を示している。多価結合は、固定化された化合物のアレイの、2つの結合部位を備えた完全型抗体に対する結合を、抗体が固定化されて化合物は溶液中にある逆の形式と比較することによって示すこともできる。固定化された抗体による溶液中の化合物に対する結合と比較して、固定化された化合物が溶液中の抗体に対してより強く結合すること(例えば見かけの会合定数が高いこと)は、固定化された化合物が抗体に対して多価結合を形成することができることを示している。アレイ中の化合物がそのようなやり方で多価結合を形成する能力を試験する場合、通常はそのような結合に関してアレイ由来の1つまたは少数の試料化合物を試験することで十分である。アレイ中の化合物が類似の種類のもの、例えば同じ長さのペプチドであり、かつ同じ条件下で堆積または合成されている場合、アレイ上の1つまたは少数の化合物(例えば1〜10%)が多価結合の能力を有していれば、他もそうであると推論することができる。作製されたすべてのアレイを試験することも必要ではない。抗体または他の試料が固定化され、かつ化合物が溶液中にある場合、化合物の会合(すなわち親和)定数は、SPR、ELISA、Luminexおよびその他の溶液相の結合のような技術(例えば経時的な結合シグナルの変化のモニタリング)を使用して従来の方法によって計測することができる。反対に、化合物が固定化され、かつ抗体または他の試料が溶液中である場合に、見かけの会合定数が計測されてもよい。多価結合の能力を有するアレイの達成のための適切な合成条件または堆積条件が確立されてしまえば、個別的な試験を伴わない同一条件下で他のアレイを作製可能である。
【0046】
通常、様々な化合物が同一条件下でアレイの異なるエリアにおいて堆積または合成されて、1つの化合物が多価結合できるような間隔で配置されていれば、大部分またはすべての化合物がそうであるようになっている。いくつかのアレイでは、アレイ中の化合物の少なくとも10%、50%、75%、90%または100%が、多価結合性のパートナーとの多価結合が可能となるような間隔で配置される。しかしながら、すべての化合物を、アレイのエリア内で分子の間隔を同じにして堆積または合成する必要はない。例えば、いくつかのアレイでは、一部の化合物は、多価結合を可能としないかまたはアレイ中の他の化合物と比較して低い多価結合のみを可能とするように、さらに離れた間隔で配置される。
【0047】
間隔は、蛍光標識された化合物を堆積させてアレイのエリアから放射された光子を計数することにより、所与の堆積条件下で実験的に計測可能である。光子の数は、そのエリアにおけるフルオレセインの分子数と、ひいては該標識を担持している化合物の分子数と関係付けることができる(例えば米国特許第5,143,854号明細書を参照のこと)。別例として、間隔は、アレイのエリア内に堆積された分子数、結合効率、および存在する場合は化合物が付着される官能基の最高密度、を考慮に入れた計算によって測定することができる。間隔は、アレイの電子顕微鏡検査によっても測定することができる。
【0048】
多価性の相互作用が可能ではないか、または上述の間隔と比較すると縮小規模で可能である、より大きな間隔を有するアレイはさらに、高親和性の相互作用の同定において適用される。この種の戦略は、例えば抗体応答を高めた本来のエピトープに構造的に非常に近い、ペプチドまたはその他の化合物を同定するために使用可能である。別例として、生活空間由来のペプチドのアレイについては、この間隔は真のエピトープの同定を促進する。
【0049】
化合物間の間隔は、間隔を置かれたアレイ、すなわち、アレイ中の化合物の間により均等な間隔をもたらすナノ構造物で被覆された表面上のアレイを使用して制御することも可能である。例えば、1nm2当たり0.05〜0.06の密度となるように3〜4nm間隔で配置された一級アミノ基で官能化された何兆個ものナノコーン(NanoCone)頂部で被覆されたNSBポステック社(NSB Postech)のアミンスライドを使用することができる。
【0050】
使用可能なアレイ形式には、マイクロアレイ、ビーズ、カラム、ディップスティック光ファイバー、ニトロセルロース、ナイロン、ガラス、石英、雲母、ジアゾ化メンブレン(紙またはナイロン)、シリコーン、ポリホルムアルデヒド、セルロース、酢酸セルロース、紙、セラミックス、金属、メタロイド、半導体材料、量子ドット、被膜ビーズ、他のクロマトグラフィー材料、磁気微粒子;プラスチックおよびその他の有機ポリマー、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、およびポリスチレン;導電性ポリマー、例えばポリピロールおよびポリインドール;マイクロ構造表面もしくはナノ構造表面、ナノチューブ、ナノワイヤ、もしくはナノ粒子で修飾された表面;または、多孔性表面もしくは多孔性ゲル、例えばメタクリラート、アクリルアミド、糖ポリマー、セルロース、シリカート、およびその他の繊維状ポリマーもしくは鎖状ポリマーが挙げられる。
【0051】
アレイ調製の典型的な方法は以下のとおりである。マイクロアレイは、アミノシラン官能化表面を有するスライドガラス上に別個のポリペプチドをロボット操作でスポッティングすることにより調製される。各ポリペプチドは、3つのC末端残基としてC末端グリシン‐セリン‐システインと、各位置においてシステイン以外の20個の各天然型アミノ酸が選択される確率が等しい擬似乱数的な計算手順によって決定された残りの(17個の)残基とを有している。ポリペプチドは、該ポリペプチドのC末端システインを、アミノシラン表面に共有結合しているマレイミド(スルホ‐SMCC、スルホスクシンイミジル4‐[N‐マレイミドメチル]シクロヘキサン‐1‐カルボキシラート、にチオール結合することによって、アミノシラン表面にコンジュゲートされる。ポリペプチドは化学合成され、約0.1mg/ml〜約2mg/mlの範囲の濃度でジメチルホルムアミドに溶解され、次いでリン酸緩衝生理食塩水で4:1に希釈された後にスポッティングされる。ペプチドまたはその他の化合物の濃度により、アレイの領域内におけるペプチド分子間の平均間隔が決まる。1mg/mlの濃度では、約0.5nmの平均間隔となる。間隔は、低濃度では希釈とともに非直線的に縮小する。プリントされたスライドは使用時までアルゴン雰囲気下で4℃にて保管した。
【0052】
間隔の典型的な計算は以下のとおりである:スポットサイズ:150μm、スポットエリア:17671μm2、ナノプリント堆積容量:200pL、ペプチド濃度:1mg/ml、堆積量:200pg、堆積させたペプチド数:1スポット当たり8×1010、8×1010ペプチド/17671μm2=4.5×106ペプチド/μm2、1つのペプチドに要したエリア2.2×10−7um2(4.6×10−4μm間隔)。
【0053】
化合物を無作為に、すなわち分析される試料を考慮せずに含むことのほかに、アレイは、試料中のタンパク質のような特定の標的に結合することが知られている他の化合物を含むことができる。これらの化合物は特に抗体、合成抗体またはペプチドであってよい。通常、そのような相互作用は高親和性である(例えば107、108または109M−1より高い)。そのような既知の結合パートナー化合物の数は多数であってよく、例えば、ヒトゲノムのような所与のゲノムによって発現される既知タンパク質の少なくとも25、50、75、もしくは90%またはほとんどすべてについての様々な化合物が存在していてもよい。異なる既知結合パートナー化合物は、無作為に選択された化合物と同様の方式でアレイの異なるエリアを占める。しかしながら、既知の結合パートナー化合物は概して高親和性相互作用することができるので、該化合物は試料との多価性の相互作用を可能にする分子間間隔の有無に関わらず使用することができる。無作為に、すなわち分析される試料を考慮せずに選択された化合物を含めることは、ゲノムにコードされたタンパク質の大部分またはすべてに対する既知の結合タンパク質を含めることを考えれば余分であろうと考えられるかもしれないが、診断に役立つ免疫応答の一部は体細胞突然変異または非タンパク質成分の結果であって、コードされたタンパク質に対する結合タンパク質によっては検出されないので、そのような考えは当てはまらない。
【0054】
IV.分析される試料および構成成分
本発明のアレイおよび方法は、対象とする分析物を含有しているかまたは含有している可能性のある任意の種類の試料を分析するために使用することができる。特に対象となるのは、ヒト患者もしくは患畜、または実験モデル動物に由来する試料である。そのような試料は、血液(全血、赤血球、血漿などを含む)、尿、糞便、唾液、CNS液、その他の体液、毛髪、皮膚、生検材料などであってよい。プロファイルは、少量の試料、例えば≦1μlから得ることができる。いくつかの試料は、疾病に罹患していることが既知であるかまたは罹患の疑いのある患者由来のものである。疾病が何であるかは既知であっても未知であってもよい。いくつかの試料は、疾病のリスクにさらされていることは既知であるが疾病の症状は未だ明白でない患者から得られる。該リスクは遺伝的なもの(例えば特定の遺伝子または家族歴)であってもよいし、経験的なもの(例えば有毒化学薬品または放射線への曝露)であってもよい。試料は、生じる免疫応答を分析するために、ワクチン接種を受けた患者から得られてもよい。
【0055】
患者由来の試料は、アレイによる潜在力分析の対象である種々様々の構成成分を含む可能性がある。最も検出しやすい構成成分はアレイ中の化合物に多価結合することができるものである。そのような構成成分には、抗体であってその重鎖および軽鎖の対によって多価結合を支持することができる抗体(すなわち1抗体当たり2つの結合部位)、ならびに細胞であってその外側表面から提示された複数の同じ受容体によって多重結合を形成することができる細胞が挙げられる。ウイルスも、その外側表面上の複数の異なる外殻タンパク質を通じて多価結合を形成することができる。患者由来の試料は、様々な抗体、様々な細胞およびその他の構成成分のうち少なくともいずれかを含むことができる。
【0056】
試料は、追加的な処理をほとんど伴わずに分析されてもよいし、試料の選択された構成成分(例えば抗体または細胞)のみがアレイで分析されるように追加的な処理に供されてもよい。
【0057】
V.検出方法
試料の構成成分とアレイとの間の結合相互作用は様々な形式で検出することが可能である。いくつかの形式では、試料の構成成分は標識される。標識は特にラジオアイソタイプ(radioisotype)または色素であってよい。標識は、患者に該標識を投与してから試料を得ることによって、または標識を試料もしくはその選択的構成成分に連結することよって、提供可能である。
【0058】
結合相互作用は、抗体のような二次検出試薬を使用して検出されてもよい。例えば、試料中の抗体のアレイへの結合は、抗体のアイソタイプ(例えばIgG(IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4のようなサブタイプのうちの任意のものを含む)、IgA、IgM)に特異的な二次抗体を使用して検出可能である。二次抗体は通常は標識され、分析される試料中の特定のアイソタイプの全抗体に結合することができる。様々なアイソタイプ特異性を有する様々な二次抗体を使用することができる。同じ試料中の異なるアイソタイプの抗体によって結合された化合物において実質的な重複があることが多いが、プロファイルにも違いが存在する。
【0059】
結合相互作用は、標識を用いない方法、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)および質量分析法を使用して検出されてもよい。SPRは、解離定数の尺度、および解離速度を提供することができる。例えば、A‐100バイオコア(Biocore)/GE計測器はこの種の分析に適している。FLEXchip(TM)を使用して、同じ支持体上の最大400個の結合反応を分析することができる。
【0060】
任意選択で、試料の構成成分とアレイとの間の結合相互作用は、競合形式で検出されてもよい。競合的結合阻害剤の存在下および不在下での試料に対するアレイの結合プロファイルの差は、試料を特徴解析するのに有用となりうる。競合的阻害剤は例えば、疾病状態に関連した既知タンパク質、例えば病原体または病原体に対する抗体であってよい。そのような競合物の存在下における試料へのアレイの構成員の結合の低下は、該病原体が存在するという兆候を提供する。
【0061】
ストリンジェンシーは、ライブラリの構成員が標的と接触せしめられるときの塩類、イオン強度、有機溶媒含量および温度を変えることにより調節可能である。
VI.適用
アレイは、臨床試料、獣医学的試料、法医学的試料、実験室試料およびその他の試料の分析または特徴解析において種々様々に適用される。従来の診断と同様に、アレイは試料内の特定の分析物、例えば特定の疾病に関連した分析物を同定するために使用可能である。しかしながら、該方法を使用して、試料を特徴づける様々な化合物の結合プロファイルを提供することもできる。該結合プロファイルは、試料中の様々な構成成分との化合物の総計の相互作用を表わし、かつ特定の疾病、疾病の病期または疾病の欠如の特徴を示すことができる。様々な構成成分は複雑であってよい(例えば少なくとも10、100、1000または1,000,000個の異なる抗体および異なる細胞のうち少なくともいずれかであってよい)。
【0062】
結合プロファイルは、典型的には、試料との相互作用が非特異的である化合物のほかに試料との相互作用が特異的であるが低親和性(すなわち見かけの解離定数または実際の解離定数が1mM〜1μM)の相互作用を反映している化合物を含んでいる。より高い親和性の相互作用(すなわち解離定数が1μM未満)の化合物は存在しても存在しなくてもよい。そのような高親和性の相互作用は、存在する場合、アレイ中の化合物が試料の構成成分の天然の結合パートナーのミメティックである結果として偶然生じる場合もあれば、化合物が試料の構成成分の既知の結合パートナーである対照を含んでいる結果として生じる場合もある。しかしながら、試料は通常は、試料との低親和性の相互作用を備えた化合物の結合プロファイルによって、任意選択で試料の構成成分への特異的結合を欠く化合物と組み合わせて、十分に特徴解析可能である。例えば、試料の構成成分に対して低親和性の特異的結合をなすことができる少なくとも2、5、10または50個の化合物の同一性および相対的結合が、試料を特徴解析するために使用されることが多い。そのような低親和性の作用は一部には、化合物が、同じ抗体が作られたエピトープ(例えば複雑な3D構造)に(不完全に)似ている直線状エピトープを提供するミメトープ(mimetope)としての役割を果たす結果である場合がある。
【0063】
1つの適用は、疾病に罹患していることが既知であるかまたは罹患の疑いがあるが、該患者を侵している具体的な疾病は未知である患者由来の試料の分析にある。従来の手法は、疑わしい疾病について個別のアッセイを行なうことであろう。対照的に、本方法では、患者の試料に由来する単一の結合プロファイルを使用して、多くの疾病、疾病の病期または疾病の欠如について患者を特徴解析することができる。結合プロファイルを使用して、自己免疫性疾患、癌、感染症、およびCNSの疾病を含む事実上あらゆる疾病について試料を特徴解析することができる。全てではないにせよほとんどの疾病は、患者の試料中の抗体、細胞またはその他の構成成分に何らかの変化を伴い、該変化は結合プロファイルに反映される。いくつかの典型的な感染症には、細菌性、真菌性およびウイルス性の疾病、例えば渓谷熱、Q熱、野兎病(Tularemia tularensis)、斑点熱リケッチア、HSVタイプIおよびタイプII、HVB、HVC、CMV、エプスタイン‐バーウイルス、JCウイルス、インフルエンザ、A、BまたはC、アデノウイルス、ならびにHIVが挙げられる。異なる感染は異なるプロファイルを示すので、多重感染している患者における異なる感染を同時に検出可能である。本発明の方法を使用して診断または予後診断することができるいくつかの典型的な癌には、グリア芽腫、乳癌、複数の独立した原発性癌および再発状態のうち少なくともいずれか、膵臓癌、肺癌、骨髄腫、卵巣癌および食道癌が挙げられる。正常細胞とは形態学的に識別可能であるが、未だ癌性ではない前癌状態の細胞も、本発明の方法を使用して検出可能である。神経系疾患、例えばアルツハイマー病は、一般には自己免疫性疾患であるとは考えられていないが、試料中に存在する抗体にある程度の変化をもたらす。慢性疾患、例えば喘息、慢性関節リウマチ、1型糖尿病、乾癬、多発性硬化症およびその他の場合も同じである。
【0064】
別の適用は、特定の疾病に罹患していることが既知であるかまたは罹患の疑いがあるが、その疾病の病期、重症度または予後は不明瞭である患者由来の試料の分析にある。この場合も、結合プロファイルは上記の要因のうちいずれかの指標を提供することができる。
【0065】
別の適用は、適切な防御免疫応答が生じているどうかを判断するためにワクチン接種を受けた患者由来の試料を分析することにある。ある患者における応答のパターンを、例えば該病原体に自然感染して生還した患者と比較することが可能であり、応答パターンの類似は該患者が生還する見込みであることを示し、相違は該患者が悪化するかまたは少なくとも代替治療がなければ死亡することを示す。別例として、新しいワクチンで(例えば臨床試験または前臨床試験において)免疫化された患者または動物モデルのプロファイルを、有効であることが分かっている既存のワクチンで免疫化された患者または対照動物のプロファイルと比較することができる。さらなる変法では、ワクチンの臨床試験のために集められている患者を、結合プロファイルについて事前選別することもできる。有効であることが分かっているワクチンで免疫化された患者または自然感染から生還した患者の結合プロファイルに類似の結合プロファイルを既に有している患者は、該患者を含めると誤解を招きやすいプラシーボ反応をもたらすおそれがあるので、治験から除くことができる。
【0066】
別の適用は、臓器移植(特に同種異系移植)を受けた患者由来の試料をスクリーニングすることにある。被試験患者のプロファイルを、移植後の拒絶を経験しているかまたは経験していない臓器移植患者のプロファイルと比較することができる。被試験患者と、以前に拒絶を経験した患者(またはそのような患者の集団の平均プロファイル)との間のプロファイルの類似は、該患者が拒絶のリスクを有するかまたは拒絶を起こしているかを示している。
【0067】
別の適用は、疾病のリスクを有することが既知であるが疾病の症状は未だ存在しない患者由来の試料を分析することにある。該リスクは、遺伝的なもの、例えば疾病に関連した遺伝子突然変異または該疾病の家族歴であってもよいし、経験の結果として、例えば有毒化学薬品への曝露、放射線、外傷性事故、ストレス、疲労、化学療法、無防備な性交渉、または接触感染症患者との接触の結果として発生するものであってもよい。そのような患者は、疾病に罹患している可能性および初期の治療的介入について当然関心を持っている。本方法は、多数の対象者がリスクに曝露した可能性のある危機的状況において特に有用である。従来の診断アッセイは、疾病を示すことが可能になる前にかなりの遅滞期を有することが多い。例えば、従来のウイルスアッセイは、検出可能な患者の抗体を生じるのに数か月かかる場合がある。自己免疫性疾患(例えば狼瘡、1型糖尿病、慢性関節リウマチ、多発性硬化症)は、特異的自己抗体または特異的自己抗原に対するT細胞応答を生じるのに数年かかる場合がある。対照的に、本方法は、リスク、または感染への曝露から数日(例えば10、5または3日未満)以内にプロファイルの変化を検出することができる。結合プロファイルの変化は、試料の様々な構成成分の濃度の微妙な変化を反映する可能性があるが、できるとしてもそのうちのごくわずかしか個々に検出できないであろう。しかしながら、全体としては、アレイ中の化合物の結合プロファイルの変化は、リスクが疾病の発症を開始した場合の変化を示す。
【0068】
別の適用は、試料、例えば犯罪現場から回収された試料または実父確定分析に関連する試料を法医学的に分析することにある。試験試料を起源の分かっている1つ以上の参照試料と比較することにより、該試験試料の供給源を指し示すことができる。
【0069】
結合プロファイルは、試料を特徴解析する際の様々な方法に使用することができる。いくつかの方法では、試料の結合プロファイルは同じ化合物の1つ以上の参照結合プロファイルと比較される。参照結合プロファイルは、特定の疾病、疾病の病期または疾病の欠如などを特徴づけるプロファイルである。参照プロファイルは、典型的には、各々が同じ疾病、疾病の病期または疾病の欠如について特徴解析された、いくつかの試料(例えば少なくとも2、20、50または100個)の結合プロファイルを平均化することにより決定される。
【0070】
参照結合プロファイルとの試料結合プロファイルの比較は、プロファイルの総類似度を表わす値を導き出すために、それぞれの試料に対するアレイ中の様々な化合物の様々な結合活性を比較することを伴うことができる。類似度の規模に関する類似度の尺度は、つまりは非類似度の逆の尺度であり、逆もまた同様である。したがって、総類似度を表わす値は、総相違度を表わす値を含んでいる。しかしながら、数学的には相違度マトリックスは類似度マトリックスとは別個に処理かつ分析することができる。分析されている試料由来の生データは、比較の前に当然標準化されて、試料構成成分を相対的に表すのではなく、試料の大きさ、処理、濃度などに起因するあらゆる相違を除去することができる。標準的な分散分析(ANOVA)法は、そのような厄介な要因が実験計画において明らかにされるのであれば、そのような要因を阻止することもできる。
【0071】
結合プロファイルおよび参照結合プロファイルの比較に基づいた値を導くために様々な技法を使用することができる。導かれた値は、結合プロファイルと参照プロファイルとの間の相違度を計測するために使用可能であり、かつユークリッド距離(ED)メトリックのような距離測度を使用して評価される。EDメトリックは、典型的には「n」元の2つのベクトルの間の距離を計測するために使用される。1つの実装によれば、x=(x1、x2、x3、・・・、xN)およびy=(y1、y2、y3、・・・、yN)がN次元ユークリッド空間における2点である場合、xおよびjの間のユークリッド距離は:
Dxj=平方根(総和((xi−yi)2))
として計算されうる。
【0072】
したがってEDメトリックは相関(0〜1)ではなく、相違度の計測値である。
結合プロファイル(N次元空間の各点についての結合の値により定義される。ここでNは実験上の点(条件)の数である)を参照結合プロファイルと比較するという状況においては、EDメトリックは、複雑さ、ペプチドの数、または患者の数にかかわらず決定することができる。比較されるプロファイルはそれぞれパターンとして見ることができる、すなわち:明確な一連の点を、あらゆる時間、あらゆる希釈度、あらゆる疾病状態、あらゆる症状などにわたって設定し、本明細書に記載の比較によりこの定義された一連の点を反映するデータを捜す。
【0073】
比較される結合プロファイルの間の違いを標準化するために、計算されたED計測値は、以下のように条件の数の平方根によって割ること:
距離=|a−b|/(Nの平方根)
により標準化されうる。これは条件の総数について標準化することにより前述の距離計算とは異なっている。これは、距離計算が大量の試料を前提としてあまりにも拡張しすぎるのを防ぐ。
【0074】
従って、2つのデータ点の間のユークリッド距離の計算は対応する値の間の違いの平方の合計の平方根を計算することを伴う。EDメトリックは相違度の尺度であるので、距離(d)は、必要であれば1/(1+d)として類似度の尺度に変換されてもよい。距離、類似度、および相違度はある程度までは互換的であるが、各々は適用される計算を前提として独自に有用である。距離がより大きくなるにつれて、類似度はより小さくなる。これは、元のデータを、偏りのない幾何学的な方法で差異を調査するのに有用な状態にする。計算は実験数の増加に伴って拡張可能である。実際、パターンの複雑さは、それが分母にあり、かつ平方根であるので、本質的に計算値に向けて小さくなる。
【0075】
使用することができる他の距離メトリックには、ユークリッド平方、ピアソン相関、ピアソン平方、スピアマンの信頼性または相関、およびその他の類似の技法が挙げられる。
結合プロファイルは、試料を特徴解析するための様々な分析法において使用することもできる。例えば、試料に対して(アレイ中の他の化合物と比較して)相対的に強い結合を示すアレイ中の化合物は、試料の構成成分の親和性精製に使用することができる。その後、構成成分は(例えば配列決定または免疫反応性によって)さらに特徴解析されてもよい。化合物の同定は、疾病状態(例えば、病原体、自己抗体または腫瘍関連抗原)の特徴を示す可能性がある。その構成成分が疾病状態の特徴を示すことがまだ知られていない場合、該構成成分は、疾病状態に対する治療または診断の開発の新しい標的として使用することができる。例えば、自己抗原またはそのペプチドを、自己免疫性疾患の寛容を誘導するのに使用することができる。別例として、結合していない細胞成分を洗い流した後、アレイに結合している細胞成分をアレイから分離し、分画化し、同様の方式で分析することができる。さらなる変法では、試料に対して比較的強い結合を示すアレイ中の化合物の同定を使用して、試料中で結合している構成成分のリガンド、および試料中の該構成成分を同定することができる。例えば、アレイの化合物がペプチドである場合、試料に比較的強い結合を示すペプチドの配列をタンパク質配列のデータベースと比較することができる。比較は、データベースの配列とアレイ中のペプチドとの間、またはデータベースの配列とアレイ中の複数のペプチドに由来するモチーフまたは共通配列との間でのペアワイズ比較であってよい。データベース中のタンパク質に対する配列類似性は、該タンパク質が、ペプチドが強い結合を示した試料中の構成要素のリガンドであるということを示唆する。リガンドの認識は次に、試料中の潜在的な分子についての、ひいてはそのような分子によって特徴が示される疾病状態についての少なくとも示唆を提供する。
【0076】
同じアレイを、上記に記載された適用のうち任意のものに、かつ事実上任意の疾病または疑わしい疾病状態に、使用することが可能である。同じアレイとは、文字通りに同じアレイを意味するか(その場合アレイは異なる試料の間で洗浄される)、または同じ組成のアレイの別のものを意味するかのうちいずれかである。分析される疾病またはその他の状態についてアレイ中のいずれの化合物が最も情報量豊富であるかの認識は、状況により変化する。したがって、特定の疾病について最も情報量豊富な化合物を同定して、この最も情報量豊富な化合物を含む、化合物数を減らした派生アレイまたはその他の検出デバイスおよびキットを作製することができる。派生アレイは、結合する化合物および場合によってはこれらの化合物によって結合された試料の構成成分の最初の同定において使用される一次アレイとは区別するために、二次アレイと呼ばれることもある。本方法のさらに有用な態様は、該方法が、疾病に罹患していない対象者(典型的にはヒト)を表わす対照試料に対する、試験試料中の細胞成分への化合物の結合の増大を検出できるだけでなく、減少も検出できることである。例えば、いくつかの試料構成成分(特に抗体)は、疾病試料もしくはワクチン接種試料または任意の他の上述の種類の試料のような試験試料において減少が検出されてもよいし、他の試料構成成分は増加が検出されてもよい。
【0077】
VI.派生的分析
上記に議論されるような試料の分析のためにそれ自体有用であるほかに、本方法は、派生的な化合物および検出デバイスを決定するためにも有用である。そのような方法の単純な形式では、派生的なデバイスまたは他のアレイは、所与の疾病、疾病に対する感受性またはその他上述の状態に関連することが知られている1つ以上の化合物を含有して構築され、かつその疾病、感受性またはその他の状態に関して情報量豊富ではないことが見出された他の化合物は一次アレイから省略される。いくつかのそのような方法では、一次アレイで使用された化合物のうちごく一部のみ(例えば、0.1%、1%または5%未満が保持される)。他の方法では、一次アレイ中の化合物のうちの一部が結合した試料の構成成分は、先のセクションで議論された手法のうちのいずれかによって同定される。試料の構成成分を同定してしまえば、該構成成分の1つ以上の既知の結合パートナーも同定される。既知の結合パートナーは、一次アレイ由来の化合物、構成成分に対する抗体または他の化合物、例えば該構成成分に結合することが知られている合成抗体であってよい。その後、この既知の結合パートナーを使用して、任意の他の従来の診断アッセイにより、存在することが分かっている試料の構成成分を検出することができる。例えば、既知の結合パートナーが抗体であれば、アッセイはELISA、免疫沈降法、ラジオイムノアッセイなどであってよい。複数の既知の結合パートナーが使用される場合、その既知の結合パートナーはアレイ形式に固定化されてもよい。既知の結合パートナーは、診断用キットまたは診断用デバイスに組み入れられてもよい(例えば、支持体に取り付けられる)。そのようなアレイ、診断用デバイスおよびキットは従来の手段によって製造可能である。当然ながら、構成成分の既知の結合パートナーが一度同定されてしまえば、その後そのようなアレイ、診断用デバイスおよびキットを製造するために一次アレイを用いた初期スクリーニングを繰り返す必要はない。
【0078】
本発明について現在好ましい実施形態に関して記載してきたが、本発明から逸脱することなく様々な改変形態をなすことができる。文脈からそうでないことが明白でないかぎり、本発明の任意のステップ、要素、実施形態、特徴または態様は任意の他のものと共に使用することができる。引用された全ての出版物(GenBank受入番号などを含む)、特許および特許出願は、その個々の出版物、特許および特許出願がそれぞれすべての目的に関して参照により全体が組み込まれることが具体的かつ個々に示されている場合と同じように、すべての目的に関して参照により全体が本願に組み込まれる。その時々において2つ以上の型の配列が受入番号に関係している場合、有効な出願申請時点において該受入番号に関連付けられた型が意図される。有効な申請時点とは、その関連する受入番号を開示している、優先権が主張される最も早い出願を意味する。
【0079】
実施例
実施例1 モノクローナル抗体に結合するアレイ
上述のようなアミノシランで官能化された表面を有するスライドガラス上に別個のポリペプチドをロボット操作でスポッティングすることにより作製された、10,000個の異なるランダムペプチドを有する3連の同じアレイを、個々の抗体への結合について試験し、100nM、37℃、8rpm、1時間でハイブリダイズさせ、5nMの二次抗体で検出した。試験した抗体には;(1)モノクローナル抗体、(2)ポリクローナル抗体、(3)エピトープ未知、(4)直線状エピトープを備えたモノクローナル抗体、(5)不連続エピトープを備えたモノクローナル抗体、(6)抗Fc抗体、(7)多反応性(polyreactive)抗体、(8)自己抗体、(9)混合されたモノクローナル抗体、および(10)多糖類に対する抗体、が含まれた。3連のアレイを数学的に平均化し、最も情報量豊富な800個のペプチドを、相対的差異を識別するために使用した。800個のペプチドに対する各抗体または抗体混合物の結合は、図1の右側に示されるような一連の有色のバンドによって表わすことができる。各バンドは、アレイ中の800個の情報量豊富なペプチドのうちの異なる1つへの結合を表す。様々な色を使用して様々な結合の強さを表すことが可能であり、例えば赤色が最も強く、青色が最も弱く、黄色が中間である。ほとんどの情報量豊富なペプチドの、試験した抗体への見かけの結合親和性は、約104M−1〜106M−1または強度単位で100(バックグラウンド、例えばペプチドを欠くアレイの空セル)〜65,500の範囲にある。図1の左側の部分は、図の右手部分に示されたパターンの主成分分析を示す。主成分分析は、二次元チャート上のスポットとして様々な抗体の結合プロファイルを表わし、スポット間の相対距離がパターンの関連性の尺度であるようになっている。該主成分分析は、各々の抗体が識別可能な結合プロファイルを有することを示している。該分析は、技術的な反復実施がアレイごと、およびペプチドごとに非常に再現性がよいことも示している。様々なモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体の特徴的な結合パターンは図12にも示されている。
【0080】
図11は、様々な数の抗体に対して結合する様々なペプチドの数の分析を示す。例えば、1103個のペプチドが、試験した抗体のうち1つだけに結合した。402個のペプチドが、試験した抗体のうちの2つに結合した。6個のペプチドが10個の異なる抗体に結合した、などである。したがって、様々なペプチドは、多重ターゲットへの結合において様々な程度の乱交雑性を有している。そのような乱交雑性の範囲は、特徴解析される複数サンプルに対してアレイを使用する際の助けとなりうる。
【0081】
20種類を超えるモノクローナル抗体のうち、各々がアレイ上に特徴的パターンを生じた。これらの差異は、ペプチドがどれに結合するか、および各々に対する相対的結合の両方を含んでいた。アレイ上のシグナルは、蛍光強度の3log以上にわたって変化した。結果が示すように、糖、非天然のタンパク質配列(例えば、フレームシフト・ペプチド、転座接合部、スプライスバリアント)、自己タンパク質、翻訳後修飾物(PTM)、複数種、および複数種類(IgG、IgA、IgM、IgE)に対する抗体が全て検出される。それぞれの抗体は特徴的な結合パターンを有するので、108種のレパートリーの血清抗体は異なる試料間で判別不能な単調なパターンを作成することになると予想されるかもしれない。確かに、30個のモノクローナル抗体の結合の数学的再構成は、特徴的パターンが失われ始めることを示す。驚くべきことに、後の実施例において示されるように、これは実際には当てはまらない。
【0082】
実施例2 希釈
単一のモノクローナル抗体(p53Ab1)を、競合するIgGの存在下でシグネチャすなわち結合プロファイルを判別する能力を試験するために使用した。前と同じように、100nMのp53Ab1を、そのシグネチャを検出するためにアレイにハイブリダイズさせた。本発明者らは競合物として1、10、および100倍のプールされたヒトIgGを加えたが、なおも元のシグナルを識別することができた。二色実験については、IgGを赤色発光体で、p53を緑色発光体で検出し、競合するスポットを多波長走査によって検出した。図2は、試験した様々な条件において最も情報量豊富なペプチドからのシグナルを示している。モノクローナル抗体由来のシグナルは、IgG血清の複雑なバックグラウンドを背景にして際立っている。これはイムノシグネチャリング(immunosignaturing)技法の重要かつ予想外の態様である。血清中で混合されたモノクローナル抗体のような、高親和性免疫応答は、通常の抗体よりもアレイ上において目立つ。
【0083】
p53に対して2つの抗体Ab1およびAb8を選択した。各々を他方へ滴定してシグネチャの勾配を生じさせた。図3は、最も情報量豊富なペプチドに対する結合強度を示しており、様々な結合強度を表わすために様々な色が使用されている。図に見られるように、最も強いパターン(Ab8)は、別の抗体の存在下および競合するIgGの存在下において見られる。合わせて混合された8つの抗体は、単調に応答する傾向を示している。100×IgGはまさしくこのことを示している。希釈は、p53Ab1のパターンが、より弱い抗体であるp53Ab8および過剰量のIgGよりも優位に立つことを示している。物理的にプールされた抗体および数学的に平均化された抗体シグナルは類似のパターンを示す。二次的なものおよび三次的なものは検出されなかった。
【0084】
実施例3:疾病の解明
本発明者らは健常な提供者の血清ならびに渓谷熱に感染した患者およびインフルエンザワクチン接種者由来の血清を集めた。渓谷熱患者は前もって力価についてCF抗原に対して分類した。図4は、様々な結合強度を表わす様々な色のバンドを用いて、最も情報量豊富な患者に対して異なる患者の結合プロファイルを示している。一般に、病気でない健常な患者は、低い強度パターンを示した。コクシジオイデス(cocci)に感染した患者は、コクシジオイデスの力価を検出することができない場合でさえ、極めて高い強度パターンを示した。インフルエンザワクチンを接種された患者は、免疫応答の強さに相当していると思われる様々なパターンを示した。これらのパターンは、健常な患者およびコクシジオイデス感染患者とは容易に識別可能であった。
【0085】
さらなる実験では、神経膠腫、肉腫および膵臓癌を含む様々な種類の癌を有している約200人の癌患者由来の試料を試験した。図5は、最も情報量豊富なペプチドの結合プロファイルをコクシジオイデス感染者および喘息患者と比較して示している。主成分分析から、これらの様々な疾病に罹患している患者のパターンが特徴的であること、かつ癌患者のパターンは癌の種類によるクラスタリングを示すことが確認される。
【0086】
さらなる実験では、膵臓癌のリスクを有し、かつ/または膵臓炎に罹患している患者由来の試料を、膵臓癌に罹患している患者、肉腫を有している患者または健常な患者と比較した。主成分分析(図6)は、膵臓癌のリスクを有する患者の一部が、癌に罹患している患者とともに結合プロファイルのクラスタリングを有することを示す。しかしながら、膵臓炎に罹患している患者は、膵臓癌に罹患している患者とは別々にクラスタリングしている。したがって、結合プロファイルは、リスクを有する患者における癌発症の予測因子として使用可能であり、また膵臓炎と癌とを区別するために使用可能である。
【0087】
図7は、健常な患者、乳癌患者、および乳癌のリスクを有する患者の結合プロファイルを比較している。該結合プロファイルは、乳癌患者を健常者から識別し、かつ腫瘍検出の数年前に乳癌のパターンを有するとして発症前の癌患者を分類する。発症前の試料の結合プロファイルはさらに、変動性(健常者の特徴)の欠如のため健常者とは異なっている。
【0088】
実施例4
ウイルス粒子1×104個の亜致死量のインフルエンザA/PR/8/34株への感染を使用して、BALB/cマウスにおけるその後の同ウイルス株の致死量抗原投与に対する防御を与えた。2〜5平均致死量のインフルエンザA/PR/8/34株を用いた致死量投与を35日目に行った。得られた免疫応答は、明白な感染の臨床的症状または体重減少が抗原投与後に観察されなかったことから、防御的であった。本実施例の一部は、本発明者らによりLugutki et al,Vaccine(May 5, 2010)PMID:20450869において報告済みである。
【0089】
生きているインフルエンザ免疫化マウス由来の血清をアレイに供した。14日目には、インフルエンザ特異的なIgG ELISA力価は1:102,400であり、ウイルス特異抗体が存在することを示していた。CIM10Kアレイへの抗体の結合の差が免疫化の14日後に検出できたことから、体液性免疫状態の変化を検出可能であることが確認された。生きているインフルエンザ免疫化マウスによって少なくとも2倍大きいことが認識された271個のペプチドの比較は、野兎病菌(F.tularensis)LVS株で29日前に免疫化した年齢を適合させたナイーブなマウスよりも少なくとも2倍大きいことが認識された542個のペプチドとは重なり合わなかった。したがって、10,000個のランダムペプチドのアレイはイムノシグネチャを生成するのに十分であり、2つの感染を識別することができる。
【0090】
マウスをインフルエンザに感染させ、21日目の抗血清をイムノシグネチャのパターンに関して試験した。本発明者らはマウスにおいて特異的なインフルエンザパターンを見出し、該パターンは感染マウス由来の抗血清にあらかじめ吸着処理した完全なウイルス粒子を使用して妨害することができたが、無関係のウイルス(M13)では妨害できなかった(図8)。ELISAにおける吸着処理血清の比較から、ウイルスについてのIgG反応が、吸着処理していない387個の血清の終末点力価512,000から、ウイルスを吸着させた血清の500未満へと低減したことが明らかとなった。標準的ELISAでは免疫化が低下した抗体反応性を決定する可能性のある反応性。
【0091】
これらのペプチド集団が最初の免疫化の結果であったかまたは免疫化と抗原投与との併用効果であったかを判断するために、これらのペプチド集団の認識を、免疫化のみを施したマウスと比較した。免疫化後118日目に、免疫化のみを施したマウスは283個の時間的に安定なペプチドについて0日目から5.18±3.57倍の平均増大率を有し、これと比較して免疫化および抗原投与されたマウスは免疫化後98日目において0日目から4.19±2.55倍の平均増大率を有していた。同じ時点において、抑制されたペプチドは、免疫化されたマウスにおいて0日目から0.39±0.29倍、および免疫化と抗原投与とを受けたマウスにおいて0.36±0.098倍の、類似の変化350を生じた。まとめると、これらの結果は、永続的かつ複雑なイムノシグネチャが初感染において生成され、これは感染性生物に特有であることを実証している。
【0092】
本発明者らは、CIM10Kにおけるイムノシグネチャが一時的であるか時間を経ても一貫しているかどうか、またウイルス特異的ELISAにおける抗体価と相関するかを測定するべく努めた。免疫化した動物を抗原投与後211日間経過観察し、CIM10Kアレイ上での血清中抗体によるペプチド認識レベルへの変化を観察した。ウイルス全体に対する標準的ELISAでは、IgG力価は抗原投与の日までに819,200まで上昇して高値を維持し、抗原投与後の観察期間の間不変であった。バルクIgG ELISA力価における変化を反映する「発現プロファイル」を、GeneSpring(登録商標)ソフトウェア・パッケージにおいて確立した。認識されたペプチドの相対的な蛍光強度を該プロファイルと比較して、その強度が時間を経ても0.9を越えるピアソンの相関係数で規定のプロファイルと一致するペプチドを同定した。プロファイル解析を同じく使用して、免疫化後に認識が増大したが抗原投与後に減少したペプチドのセット、および最初に0日目で認識されたが、免疫化後はもはや認識されなかったペプチドのセットを同定した。免疫化後118日目に、免疫化のみを施したマウスは283個の時間的に安定なペプチドについて0日目から5.18±3.57倍の平均増大率を有し、これと比較して免疫化および抗原投与されたマウスは免疫化後98日目において0日目から4.19±2.55倍の平均増大率を有していた。同じ時点において、抑制されたペプチドは、免疫化されたマウスにおいて0日目から0.39±0.29倍、および免疫化と抗原投与とを受けたマウスにおいて0.36±0.098倍の、類似の変化を生じた。まとめると、これらの結果は、永続的かつ複雑なイムノシグネチャが初感染において生成され、これは感染性生物に特有であることを実証している。
【0093】
本発明者らは、CIM10Kにおける抗体のイムノシグネチャがウイルスの免疫抗原量との相関を有するかどうかを測定するべく努めた。BALB/cマウスの群は、感染用量の増加との相関を有する体重減少の亢進および回復時間の長期化を示した。マウスを感染前の体重に回復させ、血清を感染後 日において集めた。ウイルスに対するバルクIgG終末点力価は、すべての群について102,400の終末点力価を備え、群間で判別不能であった。これは、最低の免疫抗原量で、ELISAにおいて最大の検出可能な応答に急速に到達したことを示唆している。CIM10Kイムノシグネチャのコンピュータ分析から、感染用量につれて概ね増加した516個のペプチドが明らかとなり、うち65個のサブセットは急激に上昇した。時間的に安定なペプチドを用量応答性のペプチドと比較すると、39個のペプチドの重複が示されたが、これは偶然として予想される場合の3倍である。これらの結果は、感染用量を識別するという点では、イムノシグネチャはウイルス全体のELISAよりも高い分解能を有することを実証している。
【0094】
感染またはワクチン接種に対する抗体応答について、応答するアイソタイプそれぞれについてELISAで計測することが可能である。本発明者らは、CIM10Kのランダムペプチドアレイ上の抗体反応性が抗体のアイソタイプの変化を検出可能であるかどうかを測定するべく努めた。IgM、IgA、IgG1、IgG2aおよびIgG3のイムノシグネチャを、0日目および28日目由来の血清試料を使用して測定した。バッファーのみが入っているアレイの特徴よりも高い相対蛍光強度で認識されたペプチドを分析した。異なるアイソタイプによって認識されたペプチドの集団を図5の修正ベン図として示す。同等サイズのリストについて偶然による重複として予想される場合より多くの構成員を含有している重複ペプチドセットは、ある重複領域に限定されており、IgMからのクラススイッチの可能性と、気道感染を含んでいる際に期待されるIgAへのスイッチを示すIgAとの重複が示唆される。免疫応答をウイルス感染にあてはめると、IgGサブタイプの応答は主にIgG2aであり、アレイのほぼ半分が28日目の血清により次第に2倍を超えて認識された。反対に、わずか144個のペプチドだけがIgG1抗体によって2倍を超えて認識された。このことは、原因作用物質の病原性を反映する抗体アイソタイプに基づいてイムノシグネチャを細分することができることを実証した。ELISAプロトコールとは対照的に、各アイソタイプ・アッセイはわずか0.5μlの血清しか必要としない。
【0095】
本発明者らは、イムノシグネチャが生物学的な反復実施の間で一貫しているかどうかを判断するべく努めた。BALB/cマウスの追加群をおよそ2か月空けて別々に入手し、免疫化に使用された亜致死量を用いて独立に感染させた。体重減少はすべての群について一貫しており、28日目に各群は19,200のバルクIgG力価を有していた。独立な感染を越えたイムノシグネチャの一貫性に取り組むために、3つの感染に由来する28日目の血清をCIM10Kアレイに結合させて蛍光強度を比較した。アレイ上のすべてのペプチドについて、ピアソンの相関は感染間で0.94であった。時間的に安定なペプチドは感染間で0.904、0.936および0.912のピアソンの相関を有していた。試験したすべてのナイーブのバイオインフォマティクス的平均と比較すると、3つの感染は、283個の時間的に安定なペプチドについて同倍程度の値上昇を示した(2.23±1.22、2.88±1.0、および1.93±0.97)。これらの結果は、イムノシグネチャが感染の生物学的な反復実施を越えて、かつ技術的な反復実施を越えて一貫していることを実証している。本物のウイルス抗原の代わりにランダムペプチドを使用する場合も、生物学的な反復実施の間に一貫性の損失はない。
【0096】
ナイーブな近交系マウスは、抗体レパートリーを発達させる比較的空きのあるカンバスを提供する。本発明者らは、一貫したイムノシグネチャが多様なヒト集団において識別可能であるかどうかを判断するべく努めた。2006〜2007年の季節性ヒトインフルエンザワクチンに対するイムノシグネチャを本発明者らのモデルとして評価した。7人のヒト提供者由来の個々の血清をアレイに結合させて、免疫前と21日目との間のペプチド認識の差について分析した。提供者らは、ELISAにおいて2006〜2007年の季節性ワクチンに対する血清中IgG抗体を有することが測定された。該ヒト提供者について、0日目の平均IgG力価は1:3200、および21日目の中間力価は1:12,800であった。分析から、21日目に免疫前または提供者のバックグラウンド値の少なくとも1.3倍に有意に上昇した(p<0.01)30個のペプチドが同定された。これらの30個のペプチドは、主成分分析を使用して免疫群および前免疫群を明確に識別するのに十分であった。4つの主成分が、それぞれ38%、23%、13%および9%の分散として同定された。ある患者は免疫試料および免疫前試料の両方についてX軸を横切って散らばり、低応答性の免疫系を示唆している可能性がある。この患者が分析から除外されても、残りの患者の試料はなおも群別により識別された。これらの結果は、血清中抗体のイムノシグネチャが情報量豊富であることを実証している。
【0097】
どの抗原から診断用抗体が生じたかを知ることは大きな利点であろう。本発明者らは、このアレイのペプチドから天然のタンパク質への「バックトラッキング」を可能にするプロトコールを開発した。基本的には、反応性のペプチドをTentagelビーズ上で再合成する。該ビーズを血清と反応させて抗体を親和性精製する。その後、抗体をビーズから解放させる。その後、この抗体を抽出物に対して使用してタンパク質を同定する。別の方法は、免疫応答を生じている個体から抗体のファージライブラリを作製し、対象とするペプチドに結合するファージ‐抗体を単離することである。
【0098】
インフルエンザに対して強い反応性を示したが正常なマウス血清には反応しなかったアレイペプチドを、インフルエンザに対する抗体を特異的にプルダウンする(取り出す)ために選択した。このプルダウンは、Tentagel(商標)ビーズに化学的に結合させた10ugのペプチドを使用して行った。抗体をpH2.0のグリシンで溶出させ、次いで直ちに中和した。PR8をニトロセルロース上に固定化し、プルダウンされた抗体をプローブとして調査した。図9A、BおよびCは、PR8粒子を検出するプルダウンされた抗体、ウイルス粒子を捕捉する陽性対照の抗PR8抗体、およびビーズのみからプルダウンされた陰性対照を示す。該データは、本発明者らが、PR8に感染したマウスに最も強い反応性を示したマイクロアレイ由来のペプチドを用いて適切な抗PR8抗体をプルダウンしたことを示している。
【0099】
イムノシグネチャを、免疫原に基づいてレシピエントを分類するために使用することができる。ネズミ科動物モデルにおけるインフルエンザ感染からの防御は、主として中和抗体の産生に基づいている。イムノシグネチャが防御抗体の応答を非防御抗体の応答から識別する能力を試験するために、アーカイブに保管された血清試料をCIM10Kアレイの探査に使用した。乱数発生器を使用して試料をセットAまたはセットBのいずれかに割り当て、各セットが4つのA/PR/8/34感染群、5つのKLH免疫化群および7つのナイーブ群を含むようにした。このように一方のセットを訓練用セットとして使用し、選択されたペプチドを、第2のセットの構成員を予測するために使用することも考えられる。Genespring(登録商標)7.3において連想アルゴリズムを使用して、CIM10Kからペプチドを選択した。セットAでの訓練については、2.32×10−7のメジアンp値を伴った515個のペプチドを同定した。Tサポートベクターマシンを使用して、この515個が用いられた免疫原を予測する能力を試験した。セットAをセットBの予測のための訓練に使用した場合、試料の81.3%が正確に予測された。セットBを、515個のペプチドを使用するセットAの予測のための訓練に使用した場合、試料の93.8%が正確に予測された。
【0100】
予測的なペプチドを選択する方法論の妥当性の試験として、連想アルゴリズムをセットBに適用し、セットBについて6.34×10−5およびセットAについて2.00×10−5のメジアンp値を伴った518個のペプチドを同定した。セットAを予測するためにセットBについて訓練されたサポートベクターマシンは、試料の81.3%を正確に同定し、またセットBを予測するためのセットAについての訓練は、試料の75%を正確に同定した。セットAおよびセットBからの同定された関連ペプチドのリストは、122個のペプチドが重複していたが、これは偶然による重複として予測されるよりも大きい。重複リストは、どちらのセットが訓練用セットまたは試験用セットであるかにかかわらず試料の81.3%を正確に予測した。
【0101】
同種ワクチンおよび異種ワクチンを用いた免疫化により、インフルエンザA/PR/8/34株を用いた抗原投与に対する様々な抗体応答および防御度が生じる。
本発明者らは次に、イムノシグネチャが類似の組成のワクチンを識別し、かつ効果に基づいて該ワクチンを階層化する能力を有するかどうかを判断するべく努めた。本発明者らのモデルワクチンとして、不活化A/PR/8/34株を同種の「良い」ワクチンとして、2006/2007および2007/2008のヒト季節性インフルエンザワクチンを異種の「悪い」ワクチンとして使用した。有効性を、インフルエンザA/PR/8/34株感染のネズミ科動物致死量抗原投与モデルにおいて測定した。40日目に、血清中IgG力価を計測した。モックで免疫化したマウスは、A/PR/8/34株ワクチンまたは季節性ワクチンのいずれについても反応を示さなかった。不活化ウイルスで免疫化したマウスは3つの抗原すべてについてIgG力価を有し、2007/2008季節性ワクチンの構成成分については低い力価であった。季節性ワクチンは互いに交差反応性を示し、A/PR/8/34ウイルスについては低反応性であった。季節性ワクチンの間の交差反応性は、両ワクチン組成物中にA/ウィスコンシン/67/2005およびB/マレーシア/2506/2004が含まれることに起因すると推測される。A/PR/8/34由来のヘマグルチニン配列およびノイラミニダーゼ配列は、A/ニューカレドニア/20/99およびA/ソロモン諸島/3/2006の配列に対してある程度の相同性を有しているが、ELISAにおいて一方向性の交差反応性を生じたように見える。
【0102】
プールした血清試料もCIM10Kを調べるために使用した。連関検定をアレイのデータに適用し、免疫原に関連した367個のペプチドを同定した。これらのペプチドは3.9×10−5の平均群間p値を伴って十分に群を識別する。これは、CIM10Kが体液性免疫応答に基づいて密接に関係した免疫原を相互に識別する分解能を有することを実証している。ELISAで観察されたヘテロサブタイプな交差反応性抗体について説明するために、3つの不活化ワクチンをモック免疫化に対して比較した。この比較からp<0.01の116個のペプチドがもたらされ、そのうち54個がワクチンにおいてモックを上回って増加した。54個のペプチドの相対強度レベルは群間では同程度であった。このペプチドリストを、A/PR/8/34およびKLHで免疫化したマウスを分離する能力に関してサポートベクターマシンで試験した。セットAおよびセットBの組み合わせについて、交差検定誤差は観察されなかったが、これはこのセットが恐らくインフルエンザ特異的な交差反応性抗体で構成されていることを示唆している。
【0103】
42日目の抗原投与において、不活性化A/PR/8/34株で免疫化されたマウスは疾病の臨床症状を伴わずに生き残った。季節性ワクチンで免疫化されたマウスは発病し、2006/2007年の季節性ワクチンの群では60%生存、2007/2008年の季節性ワクチンの群では70%生存であった。季節性ワクチンの群の生存マウスは抗原投与前の体重に回復した。これは、該ワクチンがA/PR/8/34株を用いた抗原投与において同等の防御性を持たないことを実証している。総合すると、これらのデータは、異なるワクチンは全ウイルスELISAおよびCIM10Kによって測定されるように特徴的な免疫応答を生成し、異なる防御効果を有することを実証している。
【0104】
実際の免疫化およびその後の抗原投与のイムノシグネチャは、不活化ワクチンの有効性を予測することができる。自然に獲得した感染およびその後の感染に対する耐性のイムノシグネチャが、不活化ワクチンまたはサブユニットワクチンの有効性を予測することができるかどうかを評価するために、本発明者らは、亜致死量のA/PR/8/34株に感染させ、その後35日後に致死量の同株を抗原投与したマウス由来のマイクロアレイデータを検討した。本発明者らは最初に、抗原投与時に免疫マウスに存在する血清抗体によって認識されたペプチドがワクチンの有効性を予測することができるかを調べた。50個のペプチドが0日目から28日目にかけて有意に(p<0.01で2倍増加)増加した。モデルワクチンの痕跡(trail)について試験するために免疫マウスおよびナイーブなマウス(28日目および0日目)について訓練されたサポートベクターマシンは群を識別することができず、防御性クローンの増幅が後の抗原投与における生存に必要であることが示唆された。
【0105】
この仮説を検証するために、本発明者らは、抗原投与前および抗原投与後の間に増加するペプチドが不活化ワクチンの有効性を予測することができるかどうかを調べた。分析により、抗原投与前から抗原投与後にかけて、0.05未満のp値を伴って2倍を超えて増加するものとして163個のペプチドが同定された。免疫試料およびナイーブ試料(28日目および0日目)について訓練されたサポートベクターマシンは、健康状態の不変により定義される成功(不活化A/PR/8/34)および疾病により定義される不成功(季節性ワクチンおよびモック)の点で、抗原投与の結果を予測することができた。これは、イムノシグネチャが第2の曝露に対する防御を担う抗体反応性を同定する能力により、サブユニットワクチンまたは不活化ワクチンの有効性を予測することができることを実証した。
【0106】
実施例5 多重疾病の分類器
感染症、自己免疫性疾患、癌、アルツハイマー病およびその他の疾病の患者由来の約875個の個別試料を、10,000ペプチドのアレイで独立に分析した。結合プロファイルを、他のプロファイルに関するヒートマップとして最初に表した(図10A)。様々な疾病についての結合プロファイルの主成分分析を図10Bに示す。各疾病が識別可能なプロファイルを有する。炎症は多数の疾病において主要な構成成分であるが、10%未満の分類器誤差で顕著に特徴的なままである該疾病の結合プロファイルの主要原因ではない。
【0107】
実施例6
次の表は、臨床試料についてのいくつかの試験の結果を概説している。FP(偽陽性、FN(偽陰性)、AUC(ROC曲線下の面積、診断の正確さの尺度)。
【0108】
【表1】
実施例7 エピトープマッピング
モチーフ発見アルゴリズムは、アラインメントされていない配列セット内の微妙なパターンを発見することができる。これらのアルゴリズムは、2つの主なカテゴリーすなわち決定論的アルゴリズムおよび最適化アルゴリズムに分類可能である。決定論的アルゴリズムは、十分に規定された基準に適合するモチーフを求めて配列セットを徹底的に探索する。決定論的なモチーフ発見アルゴリズムのいくつかの一般的な実装は、TEIRESIASまたはPRATTである(Rigoutsos,Bioinformatics.14,55−67(1998);Jonassen(1997)Comput.Appl.Biosci.13,509−22)。
【0109】
最適化アルゴリズムはモチーフを確率的に表わし、スコアリング関数を最大限に利用しようとする。最適化は、ギブス(Gibbs)のモチーフサンプリングの使用、またはMEMEに実装されるような期待値最大化によって確率的に予め決定しておく(preformed)ことができる(Bailey(2006)Nucleic Acids Res.1,W369−7316)。
【0110】
モチーフがどの基準を満たさなければならないかが分からない場合は、最適化手法が好ましい。ギブスのモチーフサンプリングアルゴリズムを実装したGLAM2は、ギャップを考慮することからここで使用されることになる(Frith(2008).PLOS Comput Biol.4,e1000071.17)。
【0111】
ペプチドの中からモチーフを発見する代替法は、ペプチドを抗原配列と1つずつ比較することである。RELIC MATCH 5プログラムに実装されたアルゴリズムは、各ペプチド配列を5アミノ酸のウィンドウで標的タンパク質配列と比較し、類似度について各ウィンドウをスコアリングする(18)。ペプチド全てについてのスコアを、潜在的な小分子結合部位を予測するためにタンパク質配列全体にわたって合計する。同様の手法は、ペプチドマイクロアレイ実験で選択された非類似ペプチド配列から抗体認識部位を予測するために使用することができる。
【0112】
典型的には、エピトープマッピングは抗体によって認識されるタンパク質標的の特異部分を同定するために実施される。同様の手法は、抗体の未知のタンパク質標的を同定するために使用することができる。この手法は、病原体の抗原タンパク質の同定、自己免疫性疾患における標的の同定、または未知の感染の原因の発見に使用することができる。
【0113】
既知のエピトープを備えた抗体をラブビジョン(Labvision)(米国カリフォルニア州フリーモント)およびアブカム(Abcam)(米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)から購入した。キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)が結合したペプチドでマウスを免疫化し、35日目に血清を得た。スライドを0.014%メルカプトヘキサノールで不動態化した後、PBS中3%BSA、0.05%Tween(登録商標)で抗体を100nMに希釈、または血清を1:500に希釈した。抗体をスライドとともに、アジレント(Agilent)のチャンバ中で回転しながら37℃で1時間インキュベーションした。スライドを、TBS、0.05%Tween(登録商標)で3回、diH2Oで3回洗浄した。このインキュベーションおよび洗浄の手順を、ビオチン化二次抗体(ベチル・ラボラトリーズ社(Bethyl Laboratoreis,Inc.)、米国テキサス州モントゴメリー)を用いて、次いでAlexa‐555で標識されたストレプトアビジン(Streptavadin)(インビトロジェン(Invitrogen)、米国カリフォルニア州カールスバード)を用いて繰り返した。
【0114】
【表2】
一次抗体またはナイーブマウスの血清を用いない陰性対照のアレイも比較のために実行した。少なくとも3連のアレイを各抗体について実行した。
【0115】
抗原特異的な抗体を、ニトロセルロース膜上に固定化されたKLHに結合させることにより血清から吸収した。1×6センチメートルのニトロセルロース膜を、2.0mlのPBS中1.0mg/mlのKLHが入った15ml容コニカルチューブに入れた。この膜をTBST中で3回洗浄し、TBST中1.0%BSAとともに少なくとも1時間、または使用時までインキュベーションした。TBST中で3回洗浄した後、膜を、3%BSA、0.05%Tween(登録商標)、PBSバッファーで1:500に希釈した2.0mlの血清中に入れた。KLHに対する血清の反応性をELISAで試験した。KLHに対する反応性が1:500希釈で検出されない場合、血清は吸収されたとみなした。
【0116】
副次的な結合の寄与を除去するために、陰性対照のシグナルを抗体シグナルから差し引いた。蛍光強度において上位500個のペプチドを、各抗体について選択した。上位500個のペプチドリストのうちの1つに各ペプチドが現われる回数を表にした。5つ以上のリストに現われるペプチドは、Fcに結合するものであるかまたは他の非特異的相互作用であると思われるため、削除した。アレイ由来のペプチドをエピトープ配列と比較し、配列の類似度を用いて同定した。該エピトープをGLAM2モチーフとして表し、システインの鎖に挿入されたアレイ由来のペプチドに対して、等アミノ酸頻度のアルファベットを用いて探索を行うためにGLAM2SCANに使用した。ペプチドを最高スコアのマッチによってソートし、最も良くマッチングするペプチドのリストを作成した。これらのリストを各ペプチドに最も強く結合するペプチドのリストと比較し、重複の比率を調べた。ヒトSwissprotから配列を無作為に選択し、次に、エピトープ配列と同じ長さの該配列のウィンドウを無作為に選択することにより、モノクローナル抗体のために試験データセットを生成させた。200個の陰性例を各モノクローナル抗体について生成させた。1000個のランダムペプチドを、等頻度の19アミノ酸(アレイのようにシステインは含めなかった)を用いたポリクローナル抗体についての陰性例として生成させた。これらの配列をすべて、17個のシステインの鎖の両側に挿入して、ペプチドが試験配列から突き出てアラインされるようにした。
【0117】
5アミノ酸の開始幅、改善を伴わない1,000,000回の反復(1,000,000 iterations without improvement)、実行10回(10 runs)、および等比率の20アミノ酸のアルファベット(an alphabet of equal proportions of the 20 amino acids)を用いて、GLAM2を使用してペプチドリストからモチーフを生成させた。GLAM2SCANを使用して、モノクローナル抗体について初期設定のタンパク質アルファベットとして、またはポリクローナル抗体については等アミノ酸頻度として、アルファベットセットとモチーフとがマッチングする配列を求めて、対応する試験セットを探索した。
【0118】
GLAM2SCANの出力は、モチーフが試験配列セットの中でマッチングする各場所のスコアである。試験配列を、各配列内の最高スコアのマッチングによってランク付けした。RELIC Fastaskanプログラムを使用して結合ペプチドを試験データセットに対してアラインした。
【0119】
上位500個の特異ペプチドを、親和性選択されたペプチドとしてアップロードし、対応する試験データセットをFASTAファイルとしてアップロードした。ランダムペプチドは差し引かなかった。Fastaskanは、試験配列の5つのそれぞれの5アミノ酸ウィンドウを、選択されたペプチド配列と比較し、閾値より高いアラインメントスコアを合計している。Fastaskanは、ペプチドとその配列との間の最大類似度のウィンドウに対応する各試験配列のスコアを出力する。
【0120】
GLAM2SCANおよびRELIC分析のいずれについても、真のエピトープのランクを、ROC分析を使用して試験配列と比較した。各々のスコアの切り捨てのための真陽性および偽陽性の比率を計算するMatlabスクリプトを、world wide web//theoval.cmp.uea.ac.uk/〜gcc/matlab/roc/から入手し、同点のスコアを平滑化するために修正した。ROC曲線下の面積も、同じウェブサイトのMatlabスクリプトを使用して計算した。この曲線下面積を使用して、所与のサイズのデータベースにおいてエピトープを見出す確率を予測する。本発明者らは、曲線下面積によって推定されるように陰性よりも陽性が選択される確率によって重み付けされた置換を伴わずに、固定サイズのデータベースから陽性例および陰性例が選択されることになると想定する。
【0121】
このペプチドマイクロアレイのプラットフォームを評価するため、既知エピトープの抗体の例が試験データセットを作製するために必要であった。既知の直線状エピトープを備えた5つのモノクローナル抗体、およびアレイから選択されたペプチドに対して作られた抗ペプチドポリクローナルマウス血清5例を、試験セットとして使用した。モノクローナル抗体は、スライド表面のバックグラウンドおよび副次的な対照単独を超えて、ランダムペプチドに対して中央値64.1%(37.6%〜74.9%の範囲)に結合することが分かった。ポリクローナル血清は、中央値を63.6%(54.0%〜68.6%の範囲)として同様のペプチド反応性を示した。複製スライドは、モノクローナル抗体について0.785およびポリクローナル血清について0.764の平均ピアソン相関を有していた。ヒートマップは、各抗体がアレイ上に特徴的な結合パターンを有することを示した。各抗体によって結合されたペプチドの間にある程度の重複が存在するが、各抗体によって認識される上位500個のペプチドの約22%は、試験された他の9つの抗体には認識されない。各抗体によって認識されるペプチドの独自性は、該ペプチド配列が抗体特異性に関する情報を包含している可能性を意味している。
【0122】
各ペプチド配列を、各タンパク質配列に対する類似度についてスコアリングした。抗体が結合したペプチドの大部分は、エピトープに対して強い配列類似度を示さなかった。しかしながら、結合したものの中の配列類似ペプチドについてはある程度の強化があった。結合されたペプチドの大部分は、エピトープに対して何らかの明白な類似度を有するというよりもむしろミモトープである。
【0123】
これらの配列の予測力を評価するために、エピトープに対するペプチドのアラインメントを、1セットの陰性例を用いたアラインメントと比較した。RELICアラインメントプログラムは、モノクローナル抗体のエピトープ全部に対して、また陰性例の62.7%に対して結合ペプチドをアラインメントすることができた。真のエピトープは平均スコア14.3を有していた一方、陰性例は平均スコア5.9を有していた。ROC分析から0.87の曲線下面積が見出されたが、これは真のエピトープが無作為に選択された陰性例より高いスコアを有する確率が87%であることを示す。ポリクローナル血清も全て、陽性のペプチドアラインメントスコアおよび86.5%の陽性例を有していた。真のエピトープは平均スコア14.7を有していた一方、陰性例はスコア15.2を有していた。ROC分析(図5)は、陽性例が曲線下面積に基づいて陰性例より高いスコアを有する確率が46%であることを示している。モノクローナルエピトープはこの方法によって十分に予測されたが、ポリクローナルの予測は偶然と同程度であった。微妙なパターンを検出することができるアルゴリズムは、これらのペプチド配列の予測力を修飾(garnish)することができるかもしれない。GLAM2を使用して全ての抗体について収束モチーフを同定した。モノクローナル抗体のモチーフの幅は3〜5アミノ酸の範囲であった。ポリクローナルのモチーフは幅4〜5アミノ酸であった。モノクローナルのモチーフは平均スコア3.5でエピトープ配列と一致したが、陰性例は平均スコア−3.7を有していた。ポリクローナルのモチーフは平均スコア3.8で免疫化用ペプチドと一致したが、陰性例は平均スコア3.7であった。ROC分析は、モノクローナルのエピトープが該モチーフ分析において対応する陰性例より高くスコアリングされる確率が89.8%である一方、ポリクローナルは陰性例より高くスコアリングされる確率が67.9%であることを実証している。該モチーフ発見手法から、両方のデータセットについて予測力が実証された。
【0124】
【表3】
2つの手法を組み合わせることにより予測能力を改善しうるかどうかを試験するために、RELIC分析およびGLAM2分析のスコアをそれぞれ最低スコア0および最高スコア1を有するように拡大縮小して平均化した。この平均化スコアについてROC分析を実施した。曲線下面積はモノクローナルについて0.92、ポリクローナルについて0.69であった。ROC分析から見積もられた確率に基づくと、100アミノ酸のタンパク質のうち上位10個のウィンドウにおいてモノクローナルのエピトープを見出す確率は約70%ある。可能な1000アミノ酸データベースのうちの上位100個のヒットの中で小さなウイルス中のポリクローナルのエピトープを正確に同定する確率は約21%であり、これは2倍の強化である。
【0125】
実施例9:一般的な材料および方法
ランダムペプチドマイクロアレイの調製。
ランダムCIM10,000fマイクロアレイは、C末端リンカーGly‐Ser‐Cys‐COOHを備えた無作為な配列の10,000個の20残基ペプチドで構成されている。各ペプチドは、本発明者らが提供したアミノ酸配列に基づいて英国バーミンガム所在のアルタバイオサイエンス(Alta Biosciences)により製造された。無作為配列は、特注ソフトウェア(ハンター(Hunter)、プレストン(Preston)およびウエムラ(Uemura)、ユウスケ(Yusuke)、バイオデザイン研究所(The Biodesign Institute))により提供された。19個のアミノ酸(システインは除外)を、カルボキシ末端リンカーとしてGSCを備えた最初の17位のそれぞれにおいて完全に無作為に選択した。合成スケールは、純度≧70%で総量2〜5mgであり、ペプチドの2%を質量分析法によって任意に試験した。乾燥ペプチドを100%のN,N’ジメチルホルムアミド中に入れて溶解させ、その後pH5.5の純水で1:1に希釈し、2mg/mlのマスター濃度とした。原型の深型96ウェルプレートをロボット操作により384ウェルのポッティング(potting)プレートに変え、ペプチドを、pH7.2のリン酸緩衝生理食塩水中で濃度1mg/mlの最終スポッティング濃度に希釈した。高品質で事前に清浄化済みのGold Seal顕微鏡スライドグラスを、フィッシャー(Fisher)(米国ニュージャージー州フェアローン、カタログ番号3010)から入手した。各スライドをアミノシランで処理し、スルホ‐SMCC(米国イリノイ州ロックフォード所在のピアス・バイオテクノロジー(Pierce Biotechnology))で活性化して、ペプチドの末端システインと反応するように設計された品質検査済みマレイミド活性化表面を作出した。スポッティング時には、本発明者らは48本のTelechemシリーズSMP2式946チタン製ピンを使用するTelechemNanoprint60を使用する。ピンはそれぞれ、1スポット当たりおよそ500pLの1mg/mlペプチドのスポッティングが可能であるが、これはピンの軌道、表面滞留時間、および各ピンが保持する液体の量を考慮に入れることにより見積もられている。スポッティング環境は、25℃、湿度55%である。各ペプチドは1アレイ当たり2回スポッティングされ;アレイはスポット密度を最大限にするためにオレンジ箱詰めパターン(orange−crate packing pattern)でスポッティングされる。蛍光基準点は、Alexa‐647、Alexa‐555、Alexa‐488およびAlexa‐350で標識されたペプチドを使用して非対称的に付与した。該基準点は、画像処理の際に各サブアレイを整列させるために使用する。プリントされたスライドは、使用時までアルゴン下で4℃にて保存される。品質管理は、レーザスキャナ(Perkin‐Elmer ProScanArrayHT、米国マサチューセッツ州ウェルズリー所在のパーキン・エルマー(Perkin Elmer))により647nmでアレイを画像化してスポットの形態を画像化することで構成される。バッチがこの試験に合格すれば、既知のタンパク質および抗体を用いた無作為に選択されたスライドのさらなる試験により、再現性のQCが可能となる。30%の全CVのアレイ間変動を満たさないアレイのバッチは廃棄される。データ抽出はGenePix Pro6.0(モレキュラー・デバイス社(Molecular Devices Inc.)、米国カリフォルニア州サニーヴェール)を使用して遂行される。
【0126】
血清中抗体を用いたランダムペプチドマイクロアレイの探査。
スライドを、抗体結合に適合したプロトコールを用いてTecan(登録商標)HS4800プロ・ハイブリダイゼーション・ステーショを使用して処理した。一般的な設定は11.0ml/分で30秒の洗浄期間とし、試料の撹拌は高値に設定した。1×PBS、3%BSA、0.05%Tween(登録商標)20、0.014%メルカプトヘキサノールを用いてアレイを23℃の室内で15分間ブロッキングした。アレイを、インキュベーションバッファー(3%BSA、1×PBS、0.05%Tween(登録商標)20)の中で1:500に希釈した血清170μlを用いて37℃で1時間探査した。合間にスライドをTBSTで洗浄した。結合したIgGを、ビオチン化抗マウスIgG(ベチル・ラボラトリーズ(Bethyl Laboratories)、米国テキサス州モントゴメリー)を使用して37℃で1時間検出した。抗α鎖二次抗体を、インキュベーションバッファー中5.0nMのAlexafluor(登録商標)649標識ストレプトアビジンを使用して、37℃で1時間検出した。TBST中および蒸留水中の最終洗浄を、残留塩を除去するために行った。スライドを、搭載(on−board)窒素フローで5.0分間乾燥させた。画像を、Agilent(登録商標)「C」型スキャナを使用して543nmおよび633nmの両方で記録した。
【0127】
ランダムペプチドマイクロアレイのデータの分析。
マイクロアレイデータの統計分析は、GenePix Pro6.0(アクソン・インスツルメンツ(Axon Instruments)、米国カリフォルニア州ユニオンシティー)から画像処理データをインポートすることにより、GeneSpring(登録商標)7.3.1(アジレント社(Agilent,Inc.)、米国カリフォルニア州パロアルト)を用いて行なった。GenePixで準備されたgprテキストファイルに基づいた計算を、1スポット当たりの中間シグナル強度について行った。目視検査で「不在」としてフラグを立てることにより、低品質のスポットを分析から除外した。分析に先立ち、アレイ間変動を排除するために各アレイを第50百分位数に標準化し、0.01未満のシグナル強度は0.01に設定した。三連のアレイからの値を平均して分析に使用した。情報量豊富なペプチドを、ペプチド対ペプチド規模で群間比較することにより決定した。500以上の相対蛍光強度およびp値<0.01を備えたペプチドを選択した。さらなる統計分析は、Microsoft(登録商標)Excel(登録商標)2003 SP3またはGraphPad Prismバージョン4.00ウィンドウズ(登録商標)用(グラフパッド・ソフトウェア(Graphpad Software)、米国カリフォルニア州サンディエゴ)で実施した。GeneSpring(登録商標)における主成分分析機能を使用して、選択された遺伝子リストに基づいて血清試料を識別した。PCAは平均センタリングおよびスケーリングを使用して実行した。サポートベクターマシン分析を、交差検定の誤差を生成し、かつ試験セットを予測するために、50個のペプチド、多項式点乗積オーダー1および対角スケーリング因子0に限定されたフィッシャーの直接法を使用してGeneSpring(登録商標)において実行した。
【0128】
アーカイブに保管されたネズミ科動物の血清試料の特徴解析。
防御が少数の中和抗体によって駆動されるとしても、イムノシグネチャがワクチンの有効性と関連するかどうかを試験するために、亜致死量のインフルエンザA/PR/8/34株感染をモデルの防御ワクチンとして使用し、KLH免疫化をモデルの非防御ワクチンとして使用した。KLHは、等しく頑健な体液性免疫応答を生じるその能力により選択した。A/PR/8/34株感染マウスにおけるウイルス全体に対する平均IgG力価は819,000であり、KLH免疫化マウスについては800であった。インフルエンザA/PR/8/34の2〜5平均致死量を使用する致死量抗原投与を35日目に行った。亜致死量の感染によって生成された免疫応答は、感染または体重減少の明白な臨床的症状が抗原投与後に観察されなかったので、防御的であった。KLH免疫化マウスには、ミョウバンで補助され、KLH単独または無関係なペプチド‐KLHコンジュゲートのいずれかが含められた。平均抗KLH IgG力価はKLH免疫化マウスにおいて819,000であり、A/PR/8/34免疫化マウスにおいて1,600であった。35日目の抗原投与の後、KLH免疫化はナイーブを上回る有益性を与えなかった。これは、モデルワクチンがELISA交差反応性をほとんど持たないそれぞれの免疫原について同程度に強い免疫応答を有し、KLHを用いた免疫化による防御はなかったことを示している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料のプロファイリングのための化合物アレイに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景技術
ELISA反応およびその他の簡単なイムノアッセイは、疾病の診断のためによく使用される。多くのアッセイは単一の分析物を検出するように構成されている。したがって、いくつかの異なる診断が可能である場合、いくつかの異なるそのようなアッセイが並行して行われることが多い。
【0003】
免疫応答を広く特徴解析するための既存の手法は、多重的な標準ELISA、多数回の選択を伴うライブラリ・パニングの使用、または、病原体に対する抗体もしくは自己抗体を検出するための、アレイ形式の病原体由来の既知タンパク質もしくは宿主タンパク質のプリンティングを含んでいる。T細胞およびB細胞も、組換え事象を配列決定するためにT細胞ゲノムおよびB細胞ゲノムの特定領域を単離およびクローニングすることにより、特徴解析されてきた。これらの処理過程はいずれも労働集約的であり、かつ時間を要する。該処理過程は、特異的結合試薬が提供されている特定の分析物がなければ標準的な臨床診断プロトコールまたは早期発見の助けにはならない。
【発明の概要】
【0004】
特許請求の範囲に記載の発明の概要
本発明は、試料を分析する方法であって:(a)試料を、アレイであってそのアレイの様々なエリアを固定化された様々な化合物が占めているアレイと接触させるステップであって、エリア内の同じ化合物の異なる分子は、同じエリア内の少なくとも2つの異なる分子と多価の結合パートナーとの間の多価結合のために、互いに十分に近接した間隔で配置されることを特徴とするステップと;(b)アレイ内の様々な化合物の、試料の構成成分への、例えば抗体への結合を検出するステップと、を含む方法を提供する。これにより、試料は、一価結合の条件下では試料への結合を相互に識別し、かつ非特異的結合と識別するのは困難であるが、試料の化合物への多価結合により、相互に、かつ非特異的結合とは著しく異なる結合を示し、その結果試料の結合プロファイルの特徴を生じる化合物の相対的結合から、特徴解析が可能である。
【0005】
いくつかの方法では、試料は、1mm〜1μMの会合定数で試料に結合する様々な化合物に結合する複数の試料の相対的結合から特徴解析される。いくつかの方法では、試料は、1mm〜1μMの会合定数で試料に結合する少なくとも10個または100個の化合物の相対的な結合から特徴解析される。いくつかの方法では、試料は、複数の化合物の相対的な結合を含む試料の結合プロファイルを参照結合プロファイルと比較することにより特徴解析される。いくつかの方法では、アレイのエリア内の化合物の分子間の平均間隔は、6nm未満である。
【0006】
任意選択で、該方法は様々な化合物に結合する試料の構成成分を同定するステップをさらに含む。任意選択で、該方法は、同定された構成成分を該構成成分に結合することが知られている結合パートナーを用いて検出するステップをさらに含む。任意選択で、同定された構成成分は、該構成成分に結合することが知られている複数の異なる結合パートナーを用いて検出される。任意選択で、結合パートナーは同定された構成成分に対する抗体である。任意選択で、結合パートナーは同定された構成成分に結合することが知られているペプチドである。任意選択で、結合パートナーはステップ(b)で検出された様々な化合物のうちの1つである。任意選択で、結合パートナーは合成抗体(synbody)である。任意選択で、結合パートナーは支持体に対して固定化されている。任意選択で、結合パートナーはアレイ中で支持体に対して固定化されている。任意選択で、該方法は第2のアレイを形成するステップをさらに含み、該第2のアレイは、アレイ中の様々な化合物全てではなく同定された構成成分に結合するアレイ中の様々な化合物のうち1つ以上を含有している。任意選択で、第2のアレイは、アレイ中の様々な化合物のうち5%未満を含有している。任意選択で、該方法は、試料に結合することが測定された化合物を含むがアレイ中の様々な化合物全ては含まないアレイまたは他のデバイスを形成するステップをさらに含む。
【0007】
いくつかの方法では、検出ステップは、試料中の1つまたは複数の抗体への様々な化合物の結合を検出する。いくつかの方法では、検出ステップは、外側表面から複数の同じタンパク質を提示している生物学的物質への様々な化合物の結合を検出する。いくつかの方法では、生物学的物質はその外側表面から複数の同じ受容体を提示している細胞である。いくつかの方法では、試料に対して最も強く結合する化合物は、その試料の構成成分に結合し、0.1μM〜1mMの結合力の最も強い結合親和性を有する。いくつかの方法では、化合物はペプチドまたは小分子である。いくつかの方法では、アレイは500〜50,000個のペプチドを有する。いくつかの方法では、ペプチドの長さは10〜30アミノ酸である。いくつかの方法では、ペプチドの配列は無作為に選択される。いくつかの方法では、固定化される様々な化合物は試料とは関係なく選択され、アレイは様々なタンパク質に結合することが知られている複数の化合物をさらに含み、該化合物も同じく該アレイの異なるエリアを占めている。いくつかの方法では、様々なタンパク質に結合することが知られている複数の化合物は、様々なヒトタンパク質のうち少なくとも25%、50または75%に結合することが知られている化合物を含む。いくつかの方法では、固定化される様々な化合物は、様々なヒトタンパク質のうち少なくとも25%、50%または75%に結合することが知られている複数の化合物、および500〜50,000個のランダムペプチドを含む。いくつかの方法では、ペプチドの配列は標的の既知の結合パートナーに対して90%未満の配列同一性を有する。いくつかの方法では、ペプチドの配列は既知タンパク質に対して90%未満の配列同一性を有する。いくつかの方法では、アレイのエリア内における化合物間の平均間隔は2〜4nmである。いくつかの方法では、アレイのエリア内における化合物間の平均間隔は3nmである。いくつかの方法では、試料をアレイと接触させるステップは、アレイへの試料の結合の潜在的競合物の存在下で行なわれる。いくつかの方法では、該競合物は、試料の被検構成成分の既知の結合パートナーである。
【0008】
いくつかの方法では、試料は患者の試料であり、競合物は該患者を侵している疾病に関係することが知られているタンパク質である。いくつかの方法では、試料は患者の試料である。いくつかの方法では、試料は複数の抗体を含有している。いくつかの方法では、患者は疾病に罹患していることが知られているかまたは罹患している疑いがある。いくつかの方法では、患者は疾病のリスクを有することが知られているが、該疾病の症状を示していない。一部においては、該疾病は、自己免疫性疾患、感染症、またはCNSの疾病である。いくつかの方法では、試料は血液、尿、またはCNSの試料である。いくつかの方法では、試料の構成成分は標識される。いくつかの方法では、試料の構成成分へのペプチドの結合は二次抗体を使用して検出される。いくつかの方法では、二次抗体はアイソタイプ特異的な抗体である。いくつかの方法では、試料の構成成分へのペプチドの結合はsprまたは質量分析法によって検出される。
【0009】
いくつかの方法は、試料に結合することが測定されたペプチドを使用して試料の構成成分を親和性精製するステップをさらに含む。いくつかの方法は、試料の非結合構成成分をアレイから洗浄するステップ、および結合構成成分をアレイから解離させるステップをさらに含む。いくつかの方法は、患者から抗体ライブラリを調製するステップ、および該ライブラリをスクリーニングするための親和性試薬として、試料中の抗体が結合するペプチドを使用するステップをさらに含む。いくつかの方法は、親和性精製された抗体の天然の結合パートナーを同定するステップをさらに含む。いくつかの方法は、試料の構成成分の天然の結合パートナーを同定するために、試料の構成成分に結合するペプチドの配列を天然の配列のデータベースと比較するステップをさらに含む。いくつかの方法は、疾病または疾病の病期のうちの1つを有するものとして患者を診断するために、試料に結合する様々な化合物のプロファイルを、様々な疾病または疾病の様々な病期に関連した様々な化合物のプロファイルと比較するステップをさらに含む。いくつかの方法は、疾病が存在するかどうかを測定するために、試料に結合する様々な化合物のプロファイルを、疾病の欠如に関連した様々な化合物のプロファイルと比較するステップをさらに含む。いくつかの方法は、同じ疾病に罹患している複数の患者由来の異なる試料について、該疾病の結合プロファイルの特徴を示すために、該方法を反復するステップをさらに含む。いくつかの方法は、様々な疾病の複数の結合プロファイルの特徴を示すために、様々な疾病に罹患している複数の患者由来の異なる試料について、該方法を反復するステップをさらに含む。
【0010】
本発明は、アレイであって該アレイの様々なエリアを固定化された様々な化合物が占めているアレイをさらに提供し、エリア内の同じ化合物の異なる分子は、同じエリア内の少なくとも2つの異なる分子と多価の結合パートナーとの間の多価結合のために互いに十分に近接した間隔で配置されていることを特徴とする。
【0011】
本発明は、試料を分析する方法をさらに提供し、該方法は:試料を、アレイであって固定化された様々なペプチドが該アレイの様々なエリアを占めているアレイと接触させるステップと;アレイ内の様々なペプチドの、試料の構成成分への結合を検出するステップと;試料について1mM〜1μMの見かけの解離定数を備えた複数のペプチドの相対的な結合から、該試料を特徴づけるステップと、を含む。任意選択で、試料は、1mM〜1μMの見かけの解離定数を備えた少なくとも10個のペプチドの相対的な結合から、特徴づけられる。
【0012】
本発明は、複数の様々な試料を特徴解析する方法をさらに提供し、該方法は、様々な試料を、同じアレイまたは複数の同じアレイであって該アレイの様々なエリアを固定化された様々なペプチドが占めているアレイと接触させるステップと;様々な試料への様々なペプチドの様々な結合プロファイルを検出するステップとを含み、試料はそれぞれの結合パターンから特徴解析されることを特徴とする。任意選択で、複数の様々な試料は、様々な症状を有する患者由来の試料を含む。任意選択で、複数の様々な試料は、疾病を呈する患者および疾病のない患者の試料を含む。
【0013】
本発明は、試料を分析する方法をさらに提供し、該方法は:該試料を、アレイであって該アレイの様々なエリアを固定化された様々な化合物が占めているアレイと接触させるステップと、エリア内の同じ化合物の異なる分子は、同じエリア内で平均距離4nm未満の間隔を置いて配置されていることと;アレイの様々な化合物の、試料の構成成分への結合を検出するステップと、を含む。
【0014】
本発明は、試料を分析する方法をさらに提供し、該方法は、(i)試料を、該試料の構成成分の既知の結合パートナーと接触させるステップと;(ii)該結合パートナーが試料に結合するかどうかを、該構成成分を欠く対照と比較して測定するステップと、を含み、既知の結合パートナーは、(a)初期試料を、アレイであって該アレイの様々なエリアを固定化された様々な化合物が占めているアレイと接触させるステップと、エリア内の同じ化合物の異なる分子は、同じエリア内の少なくとも2つの異なる分子と多価の結合パートナーとの間の多価結合のために互いに十分に近接した間隔で配置されていることと;(b)アレイ内の様々な化合物の、試料の構成成分への結合を検出するステップと;(c)様々な化合物に結合する試料の構成成分を同定するステップと;(d)ステップ(i)で使用するための、構成成分の既知の結合パートナーを同定するステップと、を含む手順によって同定されることを特徴とする。
【0015】
任意選択で、ステップ(i)の構成成分は、該構成成分に結合することが知られている複数の様々な結合パートナーを用いて検出される。任意選択で、結合パートナーは構成成分に対する抗体である。任意選択で、結合パートナーは構成成分に結合することが知られているペプチドである。任意選択で、結合パートナーはステップ(b)で検出された様々な化合物のうちの1つである。任意選択で、結合パートナーはステップ(i)においてアレイ中の支持体に固定化されている。
【0016】
本発明は、試料の構成成分の検出において使用されるデバイスを製造する方法をさらに提供し、該方法は:(a)試料を、アレイであって該アレイの様々なエリアを固定化された様々な化合物が占めているアレイと接触させるステップと、エリア内の同じ化合物の異なる分子は、同じエリア内の少なくとも2つの異なる分子と多価の結合パートナーとの間の多価結合のために互いに十分に近接した間隔で配置されていることと;(b)アレイ内の様々な化合物の、試料の構成成分への結合を検出するステップと;(c)ステップ(b)において様々な化合物の結合が検出された構成成分の、既知の結合パートナーを含むデバイスを形成するステップと、を含む。
【0017】
いくつかの方法は、様々な化合物に結合する試料の構成成分を同定するステップをさらに含む。いくつかの方法は、構成成分に結合することが知られている複数の異なる結合パートナーを含むデバイスを形成するステップをさらに含む。任意選択で、結合パートナーは構成成分に対する抗体である。任意選択で、結合パートナーは構成成分に結合することが知られているペプチドである。任意選択で、結合パートナーはステップ(b)で検出された様々な化合物のうちの1つである。任意選択で、結合パートナーは合成抗体である。任意選択で、結合パートナーは支持体に固定化される。任意選択で、結合パートナーはアレイ中の支持体に固定化される。任意選択で、ステップ(c)は第2のアレイを形成することを含み、該第2のアレイは、結合するアレイ内の様々な化合物のうち1つ以上を含有し、第2のアレイはアレイ内の様々な化合物の5%未満を含有している。
【0018】
本発明は、ワクチンを試験する方法をさらに提供し、該方法は、病原微生物に対するワクチンで免疫化された対象者の血液試料を、アレイであって該アレイの様々なエリアを固定化された様々な化合物が占めているアレイと接触させるステップと;アレイの様々な化合物への試料の結合パターンを検出するステップと;該結合パターンを、ウイルスによる感染を生き残った対象者由来の1つ以上の参照試料の結合パターンと比較するステップと、を含み、対象試料と参照試料との間の結合プロファイルの類似は、該ワクチンが該病原微生物に対して有効であることを示していることを特徴とする。任意選択で、対象者はウイルスへの曝露の前にワクチンで免疫化済みである。
【0019】
本発明は、アレイであって該アレイの様々なエリアを固定化された様々な化合物が占めているアレイをさらに提供し、様々な化合物は、既知のヒトタンパク質のうち少なくとも25、50または75%に結合することが知られている複数の化合物および500〜1,000,000個またはそれ以上のランダムペプチドを含むことと、エリア内の同じペプチドの異なる分子は、同じエリア内の少なくとも2つの異なる分子と多価の結合パートナーとの間の多価結合のために互いに十分に近接した間隔で配置されていることとを特徴とする。
【0020】
本発明は、試料を分析する方法をさらに提供し、該方法は、該試料を、アレイであって該アレイの様々なエリアを固定化された様々な化合物が占めているアレイと接触させるステップと;アレイ内の様々な化合物の、試料の構成成分への結合を検出するステップと;アレイ中の空エリアの結合強度の平均+3標準偏差より大きく、しかし3桁以内の、試料に対する結合強度を有する複数の化合物の相対的な結合から、試料を特徴解析するステップと、を含む。任意選択で、特徴解析ステップは、複数の化合物を含む試料の結合プロファイルを、複数の化合物を含む参照結合プロファイルと比較することを含む。任意選択で、試料は、アレイ中の空エリアの結合強度の平均+3標準偏差よりも3桁以内で大きい試料に対する結合強度を有する少なくとも10個または100個の化合物の相対的な結合から特徴解析される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】様々な抗体に対する800個のペプチドの結合およびこれらの抗体の分離度を示す図。
【図2】競合物の存在下または非存在下におけるモノクローナル抗体に結合するペプチド由来のシグナルを示す図。
【図3】競合物の存在下または非存在下において2つの異なるモノクローナル抗体の混合物を識別する、300個の最も情報量豊富なペプチドに対する結合強度を示す図。白から黒への様々なレベルは、抗体へのペプチドの結合の強さを示す。
【図4】表示の100個の情報量豊富なペプチドについての疾病特異的な特徴的結合パターンを表している、渓谷熱、インフルエンザのいずれかの患者、健康なボランティアのインフルエンザワクチン接種者の結合プロファイルを示す図。
【図5】喘息、渓谷熱(Cocci)、肉腫、乳癌、神経膠腫、膵臓癌、膵臓炎、および健康なボランティアを識別する、88個の情報量豊富なペプチドの結合プロファイルを示す図。下側のパネルは、同じペプチドについての主成分マップを示し、試料間の分離度(二次元)について表示している。
【図6】膵臓癌に罹患しているかまたは膵臓癌のリスクを有する患者の主成分分析を、その他の疾病(乳癌、肉腫、膵臓炎、神経膠腫)との関連において示す図。
【図7】健常なボランティア、乳癌患者、乳癌の初回寛解に続いて第2の異なる原発腫瘍を臨床的に有している乳癌のリスクを有する患者の結合プロファイルを比較する図。
【図8】感染マウス由来の抗血清にあらかじめ吸着された全ウイルス粒子を使用して阻止された、マウスにおけるインフルエンザのパターンを示す図。この同じパターンは無関係のウイルスによっては阻止されなかった。
【図9】イムノシグネチャリング・マイクロアレイ由来のペプチドを使用してプルダウンされた抗体は、インフルエンザ粒子を検出することができることを示す図。図9Aは、PR8粒子を検出するその抗体である。図9Bは、抗体がインフルエンザ粒子を検出している場合を示す陽性対照である。図9Cは、ビーズのみからプルダウンされた陰性対照である。
【図10A】様々な疾病を有する患者が疾病ごとに共通の結合パターンを示すことを表している、875個の異なる個別の試料および約2000個の異なるペプチドの階層的クラスタリングを示す図。
【図10B】同じペプチドの主成分マップを示し、かつ試料間の分離度について表示する図。
【図11】様々な数の抗体に結合する様々なペプチドの数の分析について示す図。
【図12】いくつかのモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体の、アレイ中の様々なペプチドへの結合プロファイルを比較する図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
特異的結合とは、標的(例えば試料の構成成分)への化合物の結合であって、検出可能な程度に規模が大きく、かつ少なくとも1つの無関係な標的に対して生じる非特異的結合とは識別可能な結合を指す。特異的結合は、特定の官能基の間の結合形成または特定の空間的嵌合(例えば鍵と鍵穴型)の結果でありうるのに対し、非特異的結合は通常はファンデルワールス力の結果である。しかしながら、特異的結合とは、化合物が唯一無二の標的に結合することを意味するものではない。したがって、化合物は、いくつかの異なる標的に対して異なる強さの特異的結合を、かつ他の標的には単なる非特異的結合を示すことが可能であり、またそうである場合が多い。好ましくは、程度の異なる特異的結合は、特異的結合を非特異的結合から識別可能であるように、互いに識別することができる。特異的結合は、103M−1以上の見かけの会合定数を伴う場合が多い。特異的結合は、追加として、または別例として、アレイ中の空の対照エリア(すなわち化合物が存在せず、いかなる結合も支持体への非特異的結合である場合)の平均結合強度で表わされるバックグラウンドよりも3標準偏差を超えて高い結合強度(例えば蛍光強度)として定義可能である。最も情報量豊富(informative)な化合物は、バックグラウンド強度の3標準偏差の1000倍以内の結合強度を有する。モノクローナル抗体または他の試料に特異的結合を示す化合物の親和性または結合力の範囲は、1〜4桁、多くの場合は2.5〜3.5桁にわたって変化する。見かけの会合定数は、存在する場合は結合効果(時には協同的結合としても知られている)を含む(言いかえれば、標的が同じ化合物の複数の分子に対して多価結合を示す場合、見かけの会合定数は、標的に対する同じ化合物の複数の分子の総計的な結合を反映する値である)。結合力の理論的最大値は、多数の個々の解離定数の積であるが、実際には、結合力は、通常は個々の結合の会合定数と理論的最大値との間の値である。モノクローナル抗体の無作為選択物と接触させると、情報量豊富な化合物のサブセット(例えば1〜20または5〜15%)は、少なくとも1個および場合によっては数個(例えば少なくとも2、5または10個)の異なる標的に対して103〜106M−1または2×103〜106M−1または104〜106M−1の範囲の会合定数を有する。すべてのペプチドまたはその他の化合物のサブセット(例えば少なくとも1%、少なくとも5%または10%、1〜75%、5〜60%、1〜20%または5〜15%は、通常は、少なくとも1つおよび通常は数個の標的(例えば少なくとも2、5または10個)に対して103〜106M−1の真の親和定数を示す。同じ範囲の会合定数が、複雑な試料中の同じ化合物に結合する複合標的に当てはまる。当然ながら、アレイ中の異なる化合物は試料の構成成分に対して程度の異なる結合強度を有し、いくつかの化合物は上記範囲より高いかまたは低い見かけの会合定数で結合する可能性がある。
【0023】
患者には、ヒト、家畜動物、例えばネコ、イヌ、ウマ、畜産動物、例えばニワトリ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ならびに実験動物、例えばげっ歯類、例えばマウスおよびラットが挙げられる。
【0024】
アレイの結合プロファイルとは、特定の試料に対するアレイの様々な化合物に結合した試料構成成分の量の尺度である。結合した構成成分の量は、試料中の構成成分の量のほかに該構成成分の化合物への結合強度も反映する。結合プロファイルは、例えばアレイ中の様々な化合物に対応する結合強度のマトリクスとして表わすことができる。結合プロファイルは、典型的には、複数の化合物の結合強度を含む(例えば、少なくとも2、10、50、1000または1000個が試料に対して1mM〜1μMの範囲の会合定数を有しているか、または空セルの平均強度より大きい範囲内であってただし3標準偏差の1000倍以内である)。
【0025】
結合強度は、会合定数、解離定数、解離速度、もしくは会合速度、またはこれらの尺度のうち1つ以上を含みうる粘着性の複合尺度によって計測可能である。固定化された化合物に結合した試料の標識された構成成分からのシグナルの強度は、一般的な粘着性に関する値を提供することができる。結合強度を定義するために使用される用語が「見かけの」と呼ばれる場合、意味されるのは多価結合を考慮しない計測値である。例えば、多価結合の条件下における会合定数の計測値は、いくつかある要因の中で特に一価結合に起因する複数の結果を含んでいる。別段の定めがない限り、結合強度とは、上記に引用された計測値のうち任意のものを指すことができる。
【0026】
用語「核酸」には、修飾された塩基、糖、および骨格を包含するあらゆる形態の代替核酸、例えばペプチド核酸およびアプタマーであって、任意選択でステムループ構造を備えたものが含まれる。
【0027】
用語「ポリペプチド」は「ペプチド」と互換的に使用され、その最も広い意味においては、サブユニットである天然アミノ酸、非天然アミノ酸を含むアミノ酸類似体の配列を指すために使用される。ペプチドは、式H2NCHRCOOHを有するアミノ酸および式HRNCH2COOHを有する類似体アミノ酸のうち少なくともいずれか一方のポリマーを含む。サブユニットは、注記のない限りはペプチド結合(すなわちアミド結合)によって連結されている。多くの場合、すべてのサブユニットがペプチド結合によって連結されている。ポリペプチドは、天然に存在するもの、天然に存在するポリペプチドが処理された形態のもの(酵素消化によるものなど)、化学合成されたもの、または組換え発現されたものであってよい。好ましくは、ポリペプチドは標準的技法を使用して化学合成される。ポリペプチドは、D‐アミノ酸(L‐アミノ酸特異的プロテアーゼ抵抗性である)、D‐アミノ酸およびL‐アミノ酸の組み合わせ、βアミノ酸、ならびに特別な属性を伝えるための様々な他の「デザイナー」アミノ酸(例えばβ‐メチルアミノ酸、Cα‐メチルアミノ酸、およびNα‐メチルアミノ酸)を含む。合成アミノ酸には、リジンについてはオルニチン、およびロイシンまたはイソロイシンについてはノルロイシンが挙げられる。何百もの異なるアミノ酸類似体が、例えば米国マサチューセッツ州所在のペプテックコーポレイション(PepTech Corp.)から市販されている。一般に、非天然アミノ酸は天然に存在するアミノ酸と同じ基本的化学構造、すなわち、1つの炭素が水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合しているもの、を有する。
【0028】
さらに、ポリペプチドは、非ペプチド結合、例えばN‐メチル化結合(‐N(CH3)‐CO‐)、エステル結合(‐C(R)H‐C‐O‐O‐C(R)‐N‐)、ケトメチレン結合(‐CO‐CH2‐)、アザ結合(‐NH‐N(R)‐CO‐)であって式中のRはアルキル、例えばメチルであるもの、カルバ結合(‐CH2‐NH‐)、ヒドロキシエチレン結合(‐CH(OH)‐CH2‐)、チオアミド結合(‐CS‐NH‐)、オレフィン二重結合(‐CH=CH‐)、逆アミド結合(‐NH‐CO‐)、ペプチド誘導体(‐N(R)‐CH2‐CO‐)であって式中のRは「正常な」側鎖であるもの、を有することが可能である。これらの修飾は、ペプチド鎖に沿った任意の結合において、同時に実に数箇所(2〜3箇所)において生じる可能性がある。例えば、ペプチドはエステル結合を含むことができる。ポリペプチドはさらに、還元型ペプチド結合、すなわちR1‐CH2‐NH‐R2であってR1およびR2がアミノ酸残基または配列であるものを組込むこともできる。還元型ペプチド結合は、ジペプチドサブユニットとして導入されてもよい。そのようなポリペプチドはプロテアーゼ活性に抵抗性となり、in vivoにおいて長い半減期を有することになろう。該化合物はさらに、側鎖が分子の主鎖に沿ってアミノ酸のようにα炭素ではなく窒素原子に付加されている、ペプトイド(N置換グリシン)であってもよい。
【0029】
用語「多糖類」は、サブユニットの単糖類、オリゴマーまたは修飾型単糖類で作られた任意のポリマー(ホモポリマーまたはヘテロポリマー)を意味する。糖の間の結合には、アセタール結合(グリコシド結合)、エステル結合(ホスホジエステル結合を含む)、アミド結合、およびエーテル結合を挙げることができる。
【0030】
詳細な説明
I.概略
本発明は、試料のプロファイリングにおいて使用するための化合物のアレイを提供する。該アレイは、比較的低い親和性で試料の構成成分に結合する化合物を含んでいる。本発明の実施はメカニズムの理解には左右されないが、一価結合の条件下では、程度の異なる特異的結合を相互に識別することおよび非特異的結合と識別することは難しいかもしれない。しかしながら、試料の構成成分に結合する化合物の結合力は、試料の構成成分(例えば抗体または細胞)が同時に化合物の2つ以上の分子に結合することができるようにアレイを形成することにより、増大させることができる。試料がそのような条件下でアレイに適用されると、アレイの化合物は顕著に異なる親和性で試料の構成成分に結合して、試料のプロファイルの特徴を生成する。そのようなプロファイルは通常、試料の構成成分に対して特異的結合性を持たないいくつかの化合物と、試料の構成成分に対して様々な程度の特異的結合を有する他の化合物とを含んでいる。そのような結合相互作用は、アレイの全体的な結合プロファイルが同じ試料の複製物については再現可能であり異なる試料間では識別可能であるという意味では特異的であるが、アレイ中の化合物が通常、試料のいくつかの異なる構成成分またはいくつかの異なる試料に対して程度が異なるとはいえ特異的結合を示すという点では必ずしも特有ではない。
【0031】
アレイ中の情報量豊富な化合物(すなわち特異的結合を示す化合物)の結合力は、モノクローナル抗体試料について計測することができる。無作為に選択されたモノクローナル抗体(例えば、実施例に記載のような商業的供給業者から購入)に対して計測された時、いくつかのアレイ中の情報量豊富な化合物は、多くの場合104〜109、106〜109、104〜107 104〜106M−1の範囲の見かけの親和性会合定数を示す。そのような情報量豊富な化合物の会合定数は、多くの場合103〜106M−1または104〜105M−1の範囲内にある。複雑な試料に対して計測された時、同様の範囲の見かけの会合定数または実際の会合定数が観察されるが、この場合、定数は、同じ化合物に結合する試料中の多数の異なる構成成分に関する値の複合物である。そのような親和性は非特異的相互作用とは区別することができる。情報量豊富な化合物(すなわち様々な標的の中で識別可能な結合を示す化合物)の割合はアレイおよび試料の組成に依存して変化し得るが、1〜75%、5〜60%、1〜20%、5〜15%、または7〜12%の範囲がある程度の指針を提供する。様々なモノクローナル抗体がそれ自身のシグネチャを有することを示す実施例1のデータが与えられたとき、血清中に108以上の異なる特異性の抗体を含有する可能性のある患者の試料を意味があるように解明することは不可能と思われたかもしれず、該アレイは分解能の無いものとなろう。アレイが患者由来のようなより複雑な試料に対してハイブリダイズされると、結合プロファイルは試料の複数の構成成分の総計の影響を表わす。驚くべきことに、試料の複雑さにもかかわらず、試料が異なれば関係する結合プロファイルも異なる。さらに驚くべきことに、結合プロファイルの強度は、多くの場合、疾病に罹患しているかまたは疾病のリスクを有する患者と健常な患者との間で異なっている。比較的多くの化合物が、疾病患者または疾病のリスクを有する患者について健常者と比較して情報量豊富であり、結合強度は健常な患者(強度はモノクローナル抗体の無作為選択物についての範囲の低い側の境界に向かって片寄っている)よりも比較的高い(例えば、モノクローナル抗体の無作為選択物についての範囲の高い側の境界に向かって片寄っている)。
【0032】
試料へのそのようなアレイの結合プロファイルは、試料を特徴解析するために使用することができる。例えば、該結合プロファイルを、異なる疾病もしくは疾病の病期または疾病の欠如に関係することが知られている結合プロファイルと比較することができる。別例として、または追加として、例えば、試料から抗体を親和性精製するために該試料の構成成分に比較的強く結合する化合物を使用することにより、または試料中のタンパク質を同定するために試料の構成成分に強く結合することが知られたアレイ中のペプチドの配列をタンパク質データベースと比較することにより、結合について分析することが可能である。著しい場合には、同じアレイが、異なる疾病状態、病期、疾病の欠如などを表わす多くの異なる試料とともに、様々かつ情報量豊富なプロファイルを生成することができる。さらに、疾病の典型的な分析的マーカーがELISAのような従来方式によって検出可能となる前に、疾病または非疾病状態からの逸脱のプロファイルの特徴を、疾病発症のごく初期に検出することができる。
【0033】
II.アレイに使用される化合物
様々な種類の化合物または様々な種類の化合物の組み合わせを本発明のアレイおよび方法に使用することができる。化合物の種類には、核酸およびその類似体、ポリペプチド(上記のように広義のもの)、多糖類、有機化合物、無機化合物、ポリマー、脂質、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。段階的な方式で合成可能な多種類の化合物についてコンビナトリアルライブラリが生産されてもよい。そのような化合物には、ポリペプチド、βターンミメティック、多糖類、リン脂質、ホルモン、プロスタグランジン、ステロイド、芳香族化合物、複素環式化合物、ベンゾジアゼピン、オリゴマーのN置換グリシンおよびオリゴカルバメートが挙げられる。化合物の大規模なコンビナトリアルライブラリは、アフィーマックス(Affymax)の国際公開第95/12608号、アフィーマックスの国際公開第93/06121号、コロンビア大学の国際公開第94/08051号、ファーマコペイア(Pharmacopeia)の国際公開第95/35503号およびスクリップス(Scripps)の国際公開第95/30642号(各々がすべての目的について参照により組み込まれる)に記載のコード化合成ライブラリ(ESL)法によって構築可能である。ファージディスプレイ法によってペプチドライブラリを生成させることもできる。例えばデブリン(Devlin)の国際公開第91/18980号を参照のこと。試験化合物は天然物であっても合成物であってもよい。試験化合物は、いくつかの結合または結合の組み合わせ(例えばアミド、エステル、エーテル、チオール、ラジカル付加、および金属配位)のうちいずれかに基づいた直鎖または分岐鎖のヘテロポリマー化合物、樹枝状構造、環状構造、空洞構造または他の構造であって特定の付加物が作られる足場としての役割を果たす複数の近隣結合部位を備えた構造を含むこともできるし、前記構造で構成されることもできる。化合物は天然に存在するものでもよいし、非天然のものでもよい。核酸以外の様々な種類の化合物を使用可能であるが、任意選択で化合物が核酸である場合、検出される試料の構成成分は核酸ではない。いくつかのアレイでは、試験化合物は500〜10,000Daの分子量を有し、任意選択で1000〜4000Daの分子量を有する。
【0034】
化合物の数は2つの要因の間のバランスである。化合物が多いほど、アレイは任意の対象標的に対する検出可能な親和性を有する化合物を含む可能性が高くなる。しかしながら、化合物が多数であると、アレイを合成かつ分析するコストも増大する。アレイは典型的には少なくとも100個の化合物を有する。500〜25000個の化合物を有するアレイは、任意の対象標的への検出可能な結合を備えた化合物を得る可能性と、合成および分析の容易性との間の好適な妥協点を提供する。例えば、100〜50,000個の化合物または500〜500,000個もしくは1000〜25,000個の化合物を有するアレイを使用することもできる。しかしながら、非常に多数、例えば102〜107個または1000〜5,000,000個または500,000〜2,000,000個の化合物を有するアレイを使用することもできる。そのようなアレイは、典型的には構造空間全体のごく一部のみ、例えばペプチドの場合には10−6、10−10、または10−15未満に相当する。配列空間は、所与の一組のモノマーの配列の順列の総数を意味する。例えば、20個の天然アミノ酸一組については、nをペプチドの長さとする20n個の順列が存在する。ペプチドエピトープ中の全てではないにしてもほとんどの残基が標的への結合に参加するものと広く見なされているが、10〜12量体のエピトープ中の2〜5個の残基が標的とのエネルギー的に好ましい相互作用に関係し、他の残基は、重要な残基の位置を調節し、かつ結合の阻害を防止するために単にそこに存在するという方がはるかに可能性が高い。したがって、比較的少数のペプチドは、配列空間全体の好適な表示を提供することが可能であり、多種多様な標的との低親和性ではあるが特異的な相互作用が可能なペプチドを含むことができる。例えば、500〜25,000個のランダムペプチドは、免疫系(ヒトでは107〜108個の抗体)の形状空間全体を平等にカバーすることができる。
【0035】
アレイ中の化合物が多いほど、複雑な試料中の化合物の多様性についてより高い分解能が可能となるはずである。例えば、化合物が100万個のアレイは、ある人の血清中の抗体の複雑性に迫りつつあり、したがって複雑な試料についてのより高い分解能が可能となるはずである。しかし、極めて少数の化合物を用いても、感染または免疫化に由来する新しい免疫応答を解明することが可能である。
【0036】
ポリマー化合物については、ポリマーの長さは結合親和性と合成の容易性との妥協点に相当する。ペプチドの長さと結合親和性との間には、長さが増大すると親和性が増大するという、ある程度の関連がある。しかしながら、ペプチドの長さが結合の可能性を増大させるにつれて、ペプチドの全長と相互作用する標的上の結合部位は減少する。長さの増大に伴って、不溶性の可能性が高まるので合成のコストも増大する。ペプチドアレイについては、8〜35個、12〜35個、15〜25個または9〜20個の残基を有するペプチドが好ましい。この範囲のモノマー長は他のポリマーにも使用することができるが、アプタマーの長さは通常はさらに長い(例えば最大100ヌクレオチド)。
【0037】
化合物(例えば全部または少なくとも80、90もしくは95%)は、典型的には特定の標的または該標的に対する天然リガンドの同一性を考慮せずに選択される。言いかえれば、アレイの組成は、典型的には、特定の化合物が特定の標的に結合する、または該標的もしくは該標的に対する既知のリガンドのうちいずれかとの有意な配列同一性を有するという演繹的な知見からは選択されない。ペプチドと天然の配列(例えば標的またはリガンド)との間の配列同一性は、下記に記載の初期設定パラメータとともにBLASTもしくはBLAST 2.0配列比較アルゴリズムを使用して計測して最大限アラインメントされたとき、または手作業のアラインメントおよび目視検査によって(例えば、NCBIウェブサイトncbi.nlm.nih.gov/BLASTなどを参照のこと)、ペプチド中の残基の少なくとも30%が天然の配列中の対応する残基と同一である場合に、有意であると考えられる。
【0038】
いくつかの化合物は、配列空間全体またはその一部(例えばある種のアミノ酸が存在しないかまたは圧倒的に少ないペプチド)から無作為に選択される。無作為選択は、いかなる化合物も配列空間から選択される均等な機会を有する完全無作為であってもよいし、選択は無作為な選択を伴うがアミノ酸のようなある種のモノマーに関して正もしくは負の偏りがある、部分的無作為であってもよい。ペプチドの無作為選択は、例えば擬似乱数的コンピュータアルゴリズムによって行うことができる。様々なアミノ酸が、得られるペプチド中で均等に表わされるように、または自然界において表れる比率で、もしくは任意の所望の比率で生じるように、無作為化手順が設計されうる。システイン残基は、支持体への付着点を提供する末端アミノ酸を予定される例外として、ライブラリの構成員から省略されることが多い。いくつかのライブラリでは、ある種のアミノ酸はすべてのペプチドにおいて一定に保持される。例えば、いくつかのライブラリでは、3つのC末端アミノ酸はグリシン、セリンおよびシステインであり、システインはC末端の最終アミノ酸である。一旦選択された、無作為選択によって選ばれたライブラリは、同一性が既知であり、初期の無作為選択手順を繰り返さずに再現させることができる。しかしながら、そのようなライブラリ中の化合物は、同じ無作為な相互関係を保持する。例えば、その後再現される無作為ライブラリのペプチドは、配列空間全体にわたってランダムな分布を保持する(システイン残基が省略される場合は、システイン残基を予定される例外とする)。配列空間にわたってランダムに分布するペプチドのような化合物の集合は、当初の無作為選択を繰り返さずに再現されたとしても、依然として無作為と考えられる。
【0039】
本方法においてアレイ用にペプチドおよび他の化合物を選択するための原則は、国際公開第2008/048970号および国際公開第2009/140039号にさらに記載されるように、合成抗体の生産において化合物の初期ライブラリを選択するための原則に類似している。
【0040】
III.アレイの作製
化合物は、あらかじめ合成されてアレイの表面上にスポッティングされてもよいし、アレイ表面上でin situ合成されてもよい(例えば、Cretich et al.,Biomol.Eng.2,77−88(2006);Min et al.,Current Opinion in Chemical Biology 8,554−558(2004)、Breitling,Mol. BioSyst,5,224−234(2009)、米国特許第5,143,854号明細書;欧州特許出願第476,014号明細書、Fodor et al.,1993,Nature 364,555−556;米国特許第5,571,639号明細書、米国特許第5,593,839号明細書、欧州特許出願第624,059号明細書、米国特許第6,620,584号明細書、欧州特許出願第728,520号明細書を参照のこと)。カスタマイズされたアレイも、インビトロジェン(Invitrogen)またはペプスキャン(Pepscan)のような供給業者から市販されている。その表面は通常、任意選択でリンカーを介して、化合物に付着する官能基で誘導体化される。化合物は、共有結合によって付着されてもよいし、非共有結合によって付着されてもよい。アレイ表面は、支持体の単一の連続的な表面であってよい。別例として、アレイは、ビーズのような異なる粒子状支持体上に異なる化合物をスポッティングまたは合成することにより形成されてもよい。ペプチドはアレイに対していずれかの配向(NまたはC)で付着されてもよい。一般に、異なる化合物は、連続的なアレイの異なるエリアまたは粒子状アレイの異なる粒子を占める。どの化合物がアレイのいずれのエリアまたはいずれの粒子を占めるかの同定は通常、合成手順の結果として分かるか、またはコード化手順の結果として判定可能であるかのうちいずれかである。コード化手順は一般にビーズについて使用される。連続的なアレイの異なるエリアは、そのようなアレイがin situ合成の結果である場合に生じうるように、直接隣接していてもよいし、多くの場合はスポッティングの結果である、分離状態であってもよい。
【0041】
アレイのエリアまたはセルは、個別のシグナルが検出可能な単位表面積である。いくつかのアレイでは、アレイの各エリアは、例えばアレイ中の欠陥に起因するあるエリアから別のエリアへの僅かな滲出のおそれを除けば、同じ化合物の分子によってのみ占められている。他のアレイでは、エリアのうち一部または全部が2つ以上の異なる化合物のプールを含有している。そのようなアレイでは、2つ以上の異なる化合物のプールを含有しているエリアからのシグナルは、該プールを構成する化合物からの分割されていない総計のシグナルである。
【0042】
そのようなアレイは典型的には、上記に議論されるように100〜5,000,000個の化合物(例えば100〜1,000,000、500、100,000または500〜25,000個の化合物)を含有している。これらの数の化合物は、ほぼ1〜5cm2程度の複合エリアであるアレイの異なる領域に容易に収容可能である。
【0043】
連続的なアレイの任意の1つのエリア内、または粒子アレイの任意の1つの粒子内に、同じ化合物の多数の異なる分子が存在する。化合物は通常は支持体または粒子の誘導体化された表面(例えばリンカーを担持している支持体または粒子)に付着されるので、アレイのエリア内または粒子内における分子の密度は、一部には誘導体化手順、例えば、誘導体化剤が使用される期間および濃度によって制御可能である。分子の密度は、化合物を支持体に付着させる付着手順またはin situ合成手順によっても制御可能である。カップリングサイクルの長さおよびカップリングに使用される化合物の濃度はいずれも化合物密度に影響しうる。
【0044】
アレイのエリア内または粒子上の化合物の異なる分子の密度は、化合物(またはプール式アレイの場合は複数化合物、の分子間の平均間隔を制御し、ひいては化合物が試料中の多価結合性のパートナーと多価結合を形成することができるかどうかを決定する。化合物またはプール式アレイの場合の複数化合物の2つの分子が互いに十分に近接している場合、両分子は同じ多価結合性のパートナーに(例えば抗体の2つのアームに)結合することができる。長さ15〜25残基のペプチドについては、0.1〜6nm、1〜4nm、2〜4nm未満、例えば1、2または3nmのアベレージ(平均)間隔は、例えば、同じ化合物の異なる領域がそのような多価結合を行うことを可能にするのに適している。6nmまたはそれ以上の間隔は同じ標的上の2つの部位の同時結合を可能としないので、アベレージ(例えば、平均)間隔は典型的には6nm未満である。例えば、長さ15〜25残基のペプチドについては、1つの抗体の2つの同一の結合部位は、一度に2つのペプチドと接触するために6nmを超えて広がることは不可能であった。多価性の相互作用のための最適な間隔は、使用される化合物および分析されている試料の構成成分に依存して変化しうる。
【0045】
多価結合の形成はいくつかの方法によって示すことができる。例えば、相互作用抗体(interact antibody)(すなわち2つの結合部位)へのアレイの結合が、結合部位を1つだけ有しているが他の点では同一の抗体フラグメント(例えばFabフラグメント)と比較されてもよい。抗体フラグメントよりも完全型抗体に強く結合すること(例えば見かけの会合定数が高いこと)は、多価結合を示している。多価結合は、固定化された化合物のアレイの、2つの結合部位を備えた完全型抗体に対する結合を、抗体が固定化されて化合物は溶液中にある逆の形式と比較することによって示すこともできる。固定化された抗体による溶液中の化合物に対する結合と比較して、固定化された化合物が溶液中の抗体に対してより強く結合すること(例えば見かけの会合定数が高いこと)は、固定化された化合物が抗体に対して多価結合を形成することができることを示している。アレイ中の化合物がそのようなやり方で多価結合を形成する能力を試験する場合、通常はそのような結合に関してアレイ由来の1つまたは少数の試料化合物を試験することで十分である。アレイ中の化合物が類似の種類のもの、例えば同じ長さのペプチドであり、かつ同じ条件下で堆積または合成されている場合、アレイ上の1つまたは少数の化合物(例えば1〜10%)が多価結合の能力を有していれば、他もそうであると推論することができる。作製されたすべてのアレイを試験することも必要ではない。抗体または他の試料が固定化され、かつ化合物が溶液中にある場合、化合物の会合(すなわち親和)定数は、SPR、ELISA、Luminexおよびその他の溶液相の結合のような技術(例えば経時的な結合シグナルの変化のモニタリング)を使用して従来の方法によって計測することができる。反対に、化合物が固定化され、かつ抗体または他の試料が溶液中である場合に、見かけの会合定数が計測されてもよい。多価結合の能力を有するアレイの達成のための適切な合成条件または堆積条件が確立されてしまえば、個別的な試験を伴わない同一条件下で他のアレイを作製可能である。
【0046】
通常、様々な化合物が同一条件下でアレイの異なるエリアにおいて堆積または合成されて、1つの化合物が多価結合できるような間隔で配置されていれば、大部分またはすべての化合物がそうであるようになっている。いくつかのアレイでは、アレイ中の化合物の少なくとも10%、50%、75%、90%または100%が、多価結合性のパートナーとの多価結合が可能となるような間隔で配置される。しかしながら、すべての化合物を、アレイのエリア内で分子の間隔を同じにして堆積または合成する必要はない。例えば、いくつかのアレイでは、一部の化合物は、多価結合を可能としないかまたはアレイ中の他の化合物と比較して低い多価結合のみを可能とするように、さらに離れた間隔で配置される。
【0047】
間隔は、蛍光標識された化合物を堆積させてアレイのエリアから放射された光子を計数することにより、所与の堆積条件下で実験的に計測可能である。光子の数は、そのエリアにおけるフルオレセインの分子数と、ひいては該標識を担持している化合物の分子数と関係付けることができる(例えば米国特許第5,143,854号明細書を参照のこと)。別例として、間隔は、アレイのエリア内に堆積された分子数、結合効率、および存在する場合は化合物が付着される官能基の最高密度、を考慮に入れた計算によって測定することができる。間隔は、アレイの電子顕微鏡検査によっても測定することができる。
【0048】
多価性の相互作用が可能ではないか、または上述の間隔と比較すると縮小規模で可能である、より大きな間隔を有するアレイはさらに、高親和性の相互作用の同定において適用される。この種の戦略は、例えば抗体応答を高めた本来のエピトープに構造的に非常に近い、ペプチドまたはその他の化合物を同定するために使用可能である。別例として、生活空間由来のペプチドのアレイについては、この間隔は真のエピトープの同定を促進する。
【0049】
化合物間の間隔は、間隔を置かれたアレイ、すなわち、アレイ中の化合物の間により均等な間隔をもたらすナノ構造物で被覆された表面上のアレイを使用して制御することも可能である。例えば、1nm2当たり0.05〜0.06の密度となるように3〜4nm間隔で配置された一級アミノ基で官能化された何兆個ものナノコーン(NanoCone)頂部で被覆されたNSBポステック社(NSB Postech)のアミンスライドを使用することができる。
【0050】
使用可能なアレイ形式には、マイクロアレイ、ビーズ、カラム、ディップスティック光ファイバー、ニトロセルロース、ナイロン、ガラス、石英、雲母、ジアゾ化メンブレン(紙またはナイロン)、シリコーン、ポリホルムアルデヒド、セルロース、酢酸セルロース、紙、セラミックス、金属、メタロイド、半導体材料、量子ドット、被膜ビーズ、他のクロマトグラフィー材料、磁気微粒子;プラスチックおよびその他の有機ポリマー、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、およびポリスチレン;導電性ポリマー、例えばポリピロールおよびポリインドール;マイクロ構造表面もしくはナノ構造表面、ナノチューブ、ナノワイヤ、もしくはナノ粒子で修飾された表面;または、多孔性表面もしくは多孔性ゲル、例えばメタクリラート、アクリルアミド、糖ポリマー、セルロース、シリカート、およびその他の繊維状ポリマーもしくは鎖状ポリマーが挙げられる。
【0051】
アレイ調製の典型的な方法は以下のとおりである。マイクロアレイは、アミノシラン官能化表面を有するスライドガラス上に別個のポリペプチドをロボット操作でスポッティングすることにより調製される。各ポリペプチドは、3つのC末端残基としてC末端グリシン‐セリン‐システインと、各位置においてシステイン以外の20個の各天然型アミノ酸が選択される確率が等しい擬似乱数的な計算手順によって決定された残りの(17個の)残基とを有している。ポリペプチドは、該ポリペプチドのC末端システインを、アミノシラン表面に共有結合しているマレイミド(スルホ‐SMCC、スルホスクシンイミジル4‐[N‐マレイミドメチル]シクロヘキサン‐1‐カルボキシラート、にチオール結合することによって、アミノシラン表面にコンジュゲートされる。ポリペプチドは化学合成され、約0.1mg/ml〜約2mg/mlの範囲の濃度でジメチルホルムアミドに溶解され、次いでリン酸緩衝生理食塩水で4:1に希釈された後にスポッティングされる。ペプチドまたはその他の化合物の濃度により、アレイの領域内におけるペプチド分子間の平均間隔が決まる。1mg/mlの濃度では、約0.5nmの平均間隔となる。間隔は、低濃度では希釈とともに非直線的に縮小する。プリントされたスライドは使用時までアルゴン雰囲気下で4℃にて保管した。
【0052】
間隔の典型的な計算は以下のとおりである:スポットサイズ:150μm、スポットエリア:17671μm2、ナノプリント堆積容量:200pL、ペプチド濃度:1mg/ml、堆積量:200pg、堆積させたペプチド数:1スポット当たり8×1010、8×1010ペプチド/17671μm2=4.5×106ペプチド/μm2、1つのペプチドに要したエリア2.2×10−7um2(4.6×10−4μm間隔)。
【0053】
化合物を無作為に、すなわち分析される試料を考慮せずに含むことのほかに、アレイは、試料中のタンパク質のような特定の標的に結合することが知られている他の化合物を含むことができる。これらの化合物は特に抗体、合成抗体またはペプチドであってよい。通常、そのような相互作用は高親和性である(例えば107、108または109M−1より高い)。そのような既知の結合パートナー化合物の数は多数であってよく、例えば、ヒトゲノムのような所与のゲノムによって発現される既知タンパク質の少なくとも25、50、75、もしくは90%またはほとんどすべてについての様々な化合物が存在していてもよい。異なる既知結合パートナー化合物は、無作為に選択された化合物と同様の方式でアレイの異なるエリアを占める。しかしながら、既知の結合パートナー化合物は概して高親和性相互作用することができるので、該化合物は試料との多価性の相互作用を可能にする分子間間隔の有無に関わらず使用することができる。無作為に、すなわち分析される試料を考慮せずに選択された化合物を含めることは、ゲノムにコードされたタンパク質の大部分またはすべてに対する既知の結合タンパク質を含めることを考えれば余分であろうと考えられるかもしれないが、診断に役立つ免疫応答の一部は体細胞突然変異または非タンパク質成分の結果であって、コードされたタンパク質に対する結合タンパク質によっては検出されないので、そのような考えは当てはまらない。
【0054】
IV.分析される試料および構成成分
本発明のアレイおよび方法は、対象とする分析物を含有しているかまたは含有している可能性のある任意の種類の試料を分析するために使用することができる。特に対象となるのは、ヒト患者もしくは患畜、または実験モデル動物に由来する試料である。そのような試料は、血液(全血、赤血球、血漿などを含む)、尿、糞便、唾液、CNS液、その他の体液、毛髪、皮膚、生検材料などであってよい。プロファイルは、少量の試料、例えば≦1μlから得ることができる。いくつかの試料は、疾病に罹患していることが既知であるかまたは罹患の疑いのある患者由来のものである。疾病が何であるかは既知であっても未知であってもよい。いくつかの試料は、疾病のリスクにさらされていることは既知であるが疾病の症状は未だ明白でない患者から得られる。該リスクは遺伝的なもの(例えば特定の遺伝子または家族歴)であってもよいし、経験的なもの(例えば有毒化学薬品または放射線への曝露)であってもよい。試料は、生じる免疫応答を分析するために、ワクチン接種を受けた患者から得られてもよい。
【0055】
患者由来の試料は、アレイによる潜在力分析の対象である種々様々の構成成分を含む可能性がある。最も検出しやすい構成成分はアレイ中の化合物に多価結合することができるものである。そのような構成成分には、抗体であってその重鎖および軽鎖の対によって多価結合を支持することができる抗体(すなわち1抗体当たり2つの結合部位)、ならびに細胞であってその外側表面から提示された複数の同じ受容体によって多重結合を形成することができる細胞が挙げられる。ウイルスも、その外側表面上の複数の異なる外殻タンパク質を通じて多価結合を形成することができる。患者由来の試料は、様々な抗体、様々な細胞およびその他の構成成分のうち少なくともいずれかを含むことができる。
【0056】
試料は、追加的な処理をほとんど伴わずに分析されてもよいし、試料の選択された構成成分(例えば抗体または細胞)のみがアレイで分析されるように追加的な処理に供されてもよい。
【0057】
V.検出方法
試料の構成成分とアレイとの間の結合相互作用は様々な形式で検出することが可能である。いくつかの形式では、試料の構成成分は標識される。標識は特にラジオアイソタイプ(radioisotype)または色素であってよい。標識は、患者に該標識を投与してから試料を得ることによって、または標識を試料もしくはその選択的構成成分に連結することよって、提供可能である。
【0058】
結合相互作用は、抗体のような二次検出試薬を使用して検出されてもよい。例えば、試料中の抗体のアレイへの結合は、抗体のアイソタイプ(例えばIgG(IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4のようなサブタイプのうちの任意のものを含む)、IgA、IgM)に特異的な二次抗体を使用して検出可能である。二次抗体は通常は標識され、分析される試料中の特定のアイソタイプの全抗体に結合することができる。様々なアイソタイプ特異性を有する様々な二次抗体を使用することができる。同じ試料中の異なるアイソタイプの抗体によって結合された化合物において実質的な重複があることが多いが、プロファイルにも違いが存在する。
【0059】
結合相互作用は、標識を用いない方法、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)および質量分析法を使用して検出されてもよい。SPRは、解離定数の尺度、および解離速度を提供することができる。例えば、A‐100バイオコア(Biocore)/GE計測器はこの種の分析に適している。FLEXchip(TM)を使用して、同じ支持体上の最大400個の結合反応を分析することができる。
【0060】
任意選択で、試料の構成成分とアレイとの間の結合相互作用は、競合形式で検出されてもよい。競合的結合阻害剤の存在下および不在下での試料に対するアレイの結合プロファイルの差は、試料を特徴解析するのに有用となりうる。競合的阻害剤は例えば、疾病状態に関連した既知タンパク質、例えば病原体または病原体に対する抗体であってよい。そのような競合物の存在下における試料へのアレイの構成員の結合の低下は、該病原体が存在するという兆候を提供する。
【0061】
ストリンジェンシーは、ライブラリの構成員が標的と接触せしめられるときの塩類、イオン強度、有機溶媒含量および温度を変えることにより調節可能である。
VI.適用
アレイは、臨床試料、獣医学的試料、法医学的試料、実験室試料およびその他の試料の分析または特徴解析において種々様々に適用される。従来の診断と同様に、アレイは試料内の特定の分析物、例えば特定の疾病に関連した分析物を同定するために使用可能である。しかしながら、該方法を使用して、試料を特徴づける様々な化合物の結合プロファイルを提供することもできる。該結合プロファイルは、試料中の様々な構成成分との化合物の総計の相互作用を表わし、かつ特定の疾病、疾病の病期または疾病の欠如の特徴を示すことができる。様々な構成成分は複雑であってよい(例えば少なくとも10、100、1000または1,000,000個の異なる抗体および異なる細胞のうち少なくともいずれかであってよい)。
【0062】
結合プロファイルは、典型的には、試料との相互作用が非特異的である化合物のほかに試料との相互作用が特異的であるが低親和性(すなわち見かけの解離定数または実際の解離定数が1mM〜1μM)の相互作用を反映している化合物を含んでいる。より高い親和性の相互作用(すなわち解離定数が1μM未満)の化合物は存在しても存在しなくてもよい。そのような高親和性の相互作用は、存在する場合、アレイ中の化合物が試料の構成成分の天然の結合パートナーのミメティックである結果として偶然生じる場合もあれば、化合物が試料の構成成分の既知の結合パートナーである対照を含んでいる結果として生じる場合もある。しかしながら、試料は通常は、試料との低親和性の相互作用を備えた化合物の結合プロファイルによって、任意選択で試料の構成成分への特異的結合を欠く化合物と組み合わせて、十分に特徴解析可能である。例えば、試料の構成成分に対して低親和性の特異的結合をなすことができる少なくとも2、5、10または50個の化合物の同一性および相対的結合が、試料を特徴解析するために使用されることが多い。そのような低親和性の作用は一部には、化合物が、同じ抗体が作られたエピトープ(例えば複雑な3D構造)に(不完全に)似ている直線状エピトープを提供するミメトープ(mimetope)としての役割を果たす結果である場合がある。
【0063】
1つの適用は、疾病に罹患していることが既知であるかまたは罹患の疑いがあるが、該患者を侵している具体的な疾病は未知である患者由来の試料の分析にある。従来の手法は、疑わしい疾病について個別のアッセイを行なうことであろう。対照的に、本方法では、患者の試料に由来する単一の結合プロファイルを使用して、多くの疾病、疾病の病期または疾病の欠如について患者を特徴解析することができる。結合プロファイルを使用して、自己免疫性疾患、癌、感染症、およびCNSの疾病を含む事実上あらゆる疾病について試料を特徴解析することができる。全てではないにせよほとんどの疾病は、患者の試料中の抗体、細胞またはその他の構成成分に何らかの変化を伴い、該変化は結合プロファイルに反映される。いくつかの典型的な感染症には、細菌性、真菌性およびウイルス性の疾病、例えば渓谷熱、Q熱、野兎病(Tularemia tularensis)、斑点熱リケッチア、HSVタイプIおよびタイプII、HVB、HVC、CMV、エプスタイン‐バーウイルス、JCウイルス、インフルエンザ、A、BまたはC、アデノウイルス、ならびにHIVが挙げられる。異なる感染は異なるプロファイルを示すので、多重感染している患者における異なる感染を同時に検出可能である。本発明の方法を使用して診断または予後診断することができるいくつかの典型的な癌には、グリア芽腫、乳癌、複数の独立した原発性癌および再発状態のうち少なくともいずれか、膵臓癌、肺癌、骨髄腫、卵巣癌および食道癌が挙げられる。正常細胞とは形態学的に識別可能であるが、未だ癌性ではない前癌状態の細胞も、本発明の方法を使用して検出可能である。神経系疾患、例えばアルツハイマー病は、一般には自己免疫性疾患であるとは考えられていないが、試料中に存在する抗体にある程度の変化をもたらす。慢性疾患、例えば喘息、慢性関節リウマチ、1型糖尿病、乾癬、多発性硬化症およびその他の場合も同じである。
【0064】
別の適用は、特定の疾病に罹患していることが既知であるかまたは罹患の疑いがあるが、その疾病の病期、重症度または予後は不明瞭である患者由来の試料の分析にある。この場合も、結合プロファイルは上記の要因のうちいずれかの指標を提供することができる。
【0065】
別の適用は、適切な防御免疫応答が生じているどうかを判断するためにワクチン接種を受けた患者由来の試料を分析することにある。ある患者における応答のパターンを、例えば該病原体に自然感染して生還した患者と比較することが可能であり、応答パターンの類似は該患者が生還する見込みであることを示し、相違は該患者が悪化するかまたは少なくとも代替治療がなければ死亡することを示す。別例として、新しいワクチンで(例えば臨床試験または前臨床試験において)免疫化された患者または動物モデルのプロファイルを、有効であることが分かっている既存のワクチンで免疫化された患者または対照動物のプロファイルと比較することができる。さらなる変法では、ワクチンの臨床試験のために集められている患者を、結合プロファイルについて事前選別することもできる。有効であることが分かっているワクチンで免疫化された患者または自然感染から生還した患者の結合プロファイルに類似の結合プロファイルを既に有している患者は、該患者を含めると誤解を招きやすいプラシーボ反応をもたらすおそれがあるので、治験から除くことができる。
【0066】
別の適用は、臓器移植(特に同種異系移植)を受けた患者由来の試料をスクリーニングすることにある。被試験患者のプロファイルを、移植後の拒絶を経験しているかまたは経験していない臓器移植患者のプロファイルと比較することができる。被試験患者と、以前に拒絶を経験した患者(またはそのような患者の集団の平均プロファイル)との間のプロファイルの類似は、該患者が拒絶のリスクを有するかまたは拒絶を起こしているかを示している。
【0067】
別の適用は、疾病のリスクを有することが既知であるが疾病の症状は未だ存在しない患者由来の試料を分析することにある。該リスクは、遺伝的なもの、例えば疾病に関連した遺伝子突然変異または該疾病の家族歴であってもよいし、経験の結果として、例えば有毒化学薬品への曝露、放射線、外傷性事故、ストレス、疲労、化学療法、無防備な性交渉、または接触感染症患者との接触の結果として発生するものであってもよい。そのような患者は、疾病に罹患している可能性および初期の治療的介入について当然関心を持っている。本方法は、多数の対象者がリスクに曝露した可能性のある危機的状況において特に有用である。従来の診断アッセイは、疾病を示すことが可能になる前にかなりの遅滞期を有することが多い。例えば、従来のウイルスアッセイは、検出可能な患者の抗体を生じるのに数か月かかる場合がある。自己免疫性疾患(例えば狼瘡、1型糖尿病、慢性関節リウマチ、多発性硬化症)は、特異的自己抗体または特異的自己抗原に対するT細胞応答を生じるのに数年かかる場合がある。対照的に、本方法は、リスク、または感染への曝露から数日(例えば10、5または3日未満)以内にプロファイルの変化を検出することができる。結合プロファイルの変化は、試料の様々な構成成分の濃度の微妙な変化を反映する可能性があるが、できるとしてもそのうちのごくわずかしか個々に検出できないであろう。しかしながら、全体としては、アレイ中の化合物の結合プロファイルの変化は、リスクが疾病の発症を開始した場合の変化を示す。
【0068】
別の適用は、試料、例えば犯罪現場から回収された試料または実父確定分析に関連する試料を法医学的に分析することにある。試験試料を起源の分かっている1つ以上の参照試料と比較することにより、該試験試料の供給源を指し示すことができる。
【0069】
結合プロファイルは、試料を特徴解析する際の様々な方法に使用することができる。いくつかの方法では、試料の結合プロファイルは同じ化合物の1つ以上の参照結合プロファイルと比較される。参照結合プロファイルは、特定の疾病、疾病の病期または疾病の欠如などを特徴づけるプロファイルである。参照プロファイルは、典型的には、各々が同じ疾病、疾病の病期または疾病の欠如について特徴解析された、いくつかの試料(例えば少なくとも2、20、50または100個)の結合プロファイルを平均化することにより決定される。
【0070】
参照結合プロファイルとの試料結合プロファイルの比較は、プロファイルの総類似度を表わす値を導き出すために、それぞれの試料に対するアレイ中の様々な化合物の様々な結合活性を比較することを伴うことができる。類似度の規模に関する類似度の尺度は、つまりは非類似度の逆の尺度であり、逆もまた同様である。したがって、総類似度を表わす値は、総相違度を表わす値を含んでいる。しかしながら、数学的には相違度マトリックスは類似度マトリックスとは別個に処理かつ分析することができる。分析されている試料由来の生データは、比較の前に当然標準化されて、試料構成成分を相対的に表すのではなく、試料の大きさ、処理、濃度などに起因するあらゆる相違を除去することができる。標準的な分散分析(ANOVA)法は、そのような厄介な要因が実験計画において明らかにされるのであれば、そのような要因を阻止することもできる。
【0071】
結合プロファイルおよび参照結合プロファイルの比較に基づいた値を導くために様々な技法を使用することができる。導かれた値は、結合プロファイルと参照プロファイルとの間の相違度を計測するために使用可能であり、かつユークリッド距離(ED)メトリックのような距離測度を使用して評価される。EDメトリックは、典型的には「n」元の2つのベクトルの間の距離を計測するために使用される。1つの実装によれば、x=(x1、x2、x3、・・・、xN)およびy=(y1、y2、y3、・・・、yN)がN次元ユークリッド空間における2点である場合、xおよびjの間のユークリッド距離は:
Dxj=平方根(総和((xi−yi)2))
として計算されうる。
【0072】
したがってEDメトリックは相関(0〜1)ではなく、相違度の計測値である。
結合プロファイル(N次元空間の各点についての結合の値により定義される。ここでNは実験上の点(条件)の数である)を参照結合プロファイルと比較するという状況においては、EDメトリックは、複雑さ、ペプチドの数、または患者の数にかかわらず決定することができる。比較されるプロファイルはそれぞれパターンとして見ることができる、すなわち:明確な一連の点を、あらゆる時間、あらゆる希釈度、あらゆる疾病状態、あらゆる症状などにわたって設定し、本明細書に記載の比較によりこの定義された一連の点を反映するデータを捜す。
【0073】
比較される結合プロファイルの間の違いを標準化するために、計算されたED計測値は、以下のように条件の数の平方根によって割ること:
距離=|a−b|/(Nの平方根)
により標準化されうる。これは条件の総数について標準化することにより前述の距離計算とは異なっている。これは、距離計算が大量の試料を前提としてあまりにも拡張しすぎるのを防ぐ。
【0074】
従って、2つのデータ点の間のユークリッド距離の計算は対応する値の間の違いの平方の合計の平方根を計算することを伴う。EDメトリックは相違度の尺度であるので、距離(d)は、必要であれば1/(1+d)として類似度の尺度に変換されてもよい。距離、類似度、および相違度はある程度までは互換的であるが、各々は適用される計算を前提として独自に有用である。距離がより大きくなるにつれて、類似度はより小さくなる。これは、元のデータを、偏りのない幾何学的な方法で差異を調査するのに有用な状態にする。計算は実験数の増加に伴って拡張可能である。実際、パターンの複雑さは、それが分母にあり、かつ平方根であるので、本質的に計算値に向けて小さくなる。
【0075】
使用することができる他の距離メトリックには、ユークリッド平方、ピアソン相関、ピアソン平方、スピアマンの信頼性または相関、およびその他の類似の技法が挙げられる。
結合プロファイルは、試料を特徴解析するための様々な分析法において使用することもできる。例えば、試料に対して(アレイ中の他の化合物と比較して)相対的に強い結合を示すアレイ中の化合物は、試料の構成成分の親和性精製に使用することができる。その後、構成成分は(例えば配列決定または免疫反応性によって)さらに特徴解析されてもよい。化合物の同定は、疾病状態(例えば、病原体、自己抗体または腫瘍関連抗原)の特徴を示す可能性がある。その構成成分が疾病状態の特徴を示すことがまだ知られていない場合、該構成成分は、疾病状態に対する治療または診断の開発の新しい標的として使用することができる。例えば、自己抗原またはそのペプチドを、自己免疫性疾患の寛容を誘導するのに使用することができる。別例として、結合していない細胞成分を洗い流した後、アレイに結合している細胞成分をアレイから分離し、分画化し、同様の方式で分析することができる。さらなる変法では、試料に対して比較的強い結合を示すアレイ中の化合物の同定を使用して、試料中で結合している構成成分のリガンド、および試料中の該構成成分を同定することができる。例えば、アレイの化合物がペプチドである場合、試料に比較的強い結合を示すペプチドの配列をタンパク質配列のデータベースと比較することができる。比較は、データベースの配列とアレイ中のペプチドとの間、またはデータベースの配列とアレイ中の複数のペプチドに由来するモチーフまたは共通配列との間でのペアワイズ比較であってよい。データベース中のタンパク質に対する配列類似性は、該タンパク質が、ペプチドが強い結合を示した試料中の構成要素のリガンドであるということを示唆する。リガンドの認識は次に、試料中の潜在的な分子についての、ひいてはそのような分子によって特徴が示される疾病状態についての少なくとも示唆を提供する。
【0076】
同じアレイを、上記に記載された適用のうち任意のものに、かつ事実上任意の疾病または疑わしい疾病状態に、使用することが可能である。同じアレイとは、文字通りに同じアレイを意味するか(その場合アレイは異なる試料の間で洗浄される)、または同じ組成のアレイの別のものを意味するかのうちいずれかである。分析される疾病またはその他の状態についてアレイ中のいずれの化合物が最も情報量豊富であるかの認識は、状況により変化する。したがって、特定の疾病について最も情報量豊富な化合物を同定して、この最も情報量豊富な化合物を含む、化合物数を減らした派生アレイまたはその他の検出デバイスおよびキットを作製することができる。派生アレイは、結合する化合物および場合によってはこれらの化合物によって結合された試料の構成成分の最初の同定において使用される一次アレイとは区別するために、二次アレイと呼ばれることもある。本方法のさらに有用な態様は、該方法が、疾病に罹患していない対象者(典型的にはヒト)を表わす対照試料に対する、試験試料中の細胞成分への化合物の結合の増大を検出できるだけでなく、減少も検出できることである。例えば、いくつかの試料構成成分(特に抗体)は、疾病試料もしくはワクチン接種試料または任意の他の上述の種類の試料のような試験試料において減少が検出されてもよいし、他の試料構成成分は増加が検出されてもよい。
【0077】
VI.派生的分析
上記に議論されるような試料の分析のためにそれ自体有用であるほかに、本方法は、派生的な化合物および検出デバイスを決定するためにも有用である。そのような方法の単純な形式では、派生的なデバイスまたは他のアレイは、所与の疾病、疾病に対する感受性またはその他上述の状態に関連することが知られている1つ以上の化合物を含有して構築され、かつその疾病、感受性またはその他の状態に関して情報量豊富ではないことが見出された他の化合物は一次アレイから省略される。いくつかのそのような方法では、一次アレイで使用された化合物のうちごく一部のみ(例えば、0.1%、1%または5%未満が保持される)。他の方法では、一次アレイ中の化合物のうちの一部が結合した試料の構成成分は、先のセクションで議論された手法のうちのいずれかによって同定される。試料の構成成分を同定してしまえば、該構成成分の1つ以上の既知の結合パートナーも同定される。既知の結合パートナーは、一次アレイ由来の化合物、構成成分に対する抗体または他の化合物、例えば該構成成分に結合することが知られている合成抗体であってよい。その後、この既知の結合パートナーを使用して、任意の他の従来の診断アッセイにより、存在することが分かっている試料の構成成分を検出することができる。例えば、既知の結合パートナーが抗体であれば、アッセイはELISA、免疫沈降法、ラジオイムノアッセイなどであってよい。複数の既知の結合パートナーが使用される場合、その既知の結合パートナーはアレイ形式に固定化されてもよい。既知の結合パートナーは、診断用キットまたは診断用デバイスに組み入れられてもよい(例えば、支持体に取り付けられる)。そのようなアレイ、診断用デバイスおよびキットは従来の手段によって製造可能である。当然ながら、構成成分の既知の結合パートナーが一度同定されてしまえば、その後そのようなアレイ、診断用デバイスおよびキットを製造するために一次アレイを用いた初期スクリーニングを繰り返す必要はない。
【0078】
本発明について現在好ましい実施形態に関して記載してきたが、本発明から逸脱することなく様々な改変形態をなすことができる。文脈からそうでないことが明白でないかぎり、本発明の任意のステップ、要素、実施形態、特徴または態様は任意の他のものと共に使用することができる。引用された全ての出版物(GenBank受入番号などを含む)、特許および特許出願は、その個々の出版物、特許および特許出願がそれぞれすべての目的に関して参照により全体が組み込まれることが具体的かつ個々に示されている場合と同じように、すべての目的に関して参照により全体が本願に組み込まれる。その時々において2つ以上の型の配列が受入番号に関係している場合、有効な出願申請時点において該受入番号に関連付けられた型が意図される。有効な申請時点とは、その関連する受入番号を開示している、優先権が主張される最も早い出願を意味する。
【0079】
実施例
実施例1 モノクローナル抗体に結合するアレイ
上述のようなアミノシランで官能化された表面を有するスライドガラス上に別個のポリペプチドをロボット操作でスポッティングすることにより作製された、10,000個の異なるランダムペプチドを有する3連の同じアレイを、個々の抗体への結合について試験し、100nM、37℃、8rpm、1時間でハイブリダイズさせ、5nMの二次抗体で検出した。試験した抗体には;(1)モノクローナル抗体、(2)ポリクローナル抗体、(3)エピトープ未知、(4)直線状エピトープを備えたモノクローナル抗体、(5)不連続エピトープを備えたモノクローナル抗体、(6)抗Fc抗体、(7)多反応性(polyreactive)抗体、(8)自己抗体、(9)混合されたモノクローナル抗体、および(10)多糖類に対する抗体、が含まれた。3連のアレイを数学的に平均化し、最も情報量豊富な800個のペプチドを、相対的差異を識別するために使用した。800個のペプチドに対する各抗体または抗体混合物の結合は、図1の右側に示されるような一連の有色のバンドによって表わすことができる。各バンドは、アレイ中の800個の情報量豊富なペプチドのうちの異なる1つへの結合を表す。様々な色を使用して様々な結合の強さを表すことが可能であり、例えば赤色が最も強く、青色が最も弱く、黄色が中間である。ほとんどの情報量豊富なペプチドの、試験した抗体への見かけの結合親和性は、約104M−1〜106M−1または強度単位で100(バックグラウンド、例えばペプチドを欠くアレイの空セル)〜65,500の範囲にある。図1の左側の部分は、図の右手部分に示されたパターンの主成分分析を示す。主成分分析は、二次元チャート上のスポットとして様々な抗体の結合プロファイルを表わし、スポット間の相対距離がパターンの関連性の尺度であるようになっている。該主成分分析は、各々の抗体が識別可能な結合プロファイルを有することを示している。該分析は、技術的な反復実施がアレイごと、およびペプチドごとに非常に再現性がよいことも示している。様々なモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体の特徴的な結合パターンは図12にも示されている。
【0080】
図11は、様々な数の抗体に対して結合する様々なペプチドの数の分析を示す。例えば、1103個のペプチドが、試験した抗体のうち1つだけに結合した。402個のペプチドが、試験した抗体のうちの2つに結合した。6個のペプチドが10個の異なる抗体に結合した、などである。したがって、様々なペプチドは、多重ターゲットへの結合において様々な程度の乱交雑性を有している。そのような乱交雑性の範囲は、特徴解析される複数サンプルに対してアレイを使用する際の助けとなりうる。
【0081】
20種類を超えるモノクローナル抗体のうち、各々がアレイ上に特徴的パターンを生じた。これらの差異は、ペプチドがどれに結合するか、および各々に対する相対的結合の両方を含んでいた。アレイ上のシグナルは、蛍光強度の3log以上にわたって変化した。結果が示すように、糖、非天然のタンパク質配列(例えば、フレームシフト・ペプチド、転座接合部、スプライスバリアント)、自己タンパク質、翻訳後修飾物(PTM)、複数種、および複数種類(IgG、IgA、IgM、IgE)に対する抗体が全て検出される。それぞれの抗体は特徴的な結合パターンを有するので、108種のレパートリーの血清抗体は異なる試料間で判別不能な単調なパターンを作成することになると予想されるかもしれない。確かに、30個のモノクローナル抗体の結合の数学的再構成は、特徴的パターンが失われ始めることを示す。驚くべきことに、後の実施例において示されるように、これは実際には当てはまらない。
【0082】
実施例2 希釈
単一のモノクローナル抗体(p53Ab1)を、競合するIgGの存在下でシグネチャすなわち結合プロファイルを判別する能力を試験するために使用した。前と同じように、100nMのp53Ab1を、そのシグネチャを検出するためにアレイにハイブリダイズさせた。本発明者らは競合物として1、10、および100倍のプールされたヒトIgGを加えたが、なおも元のシグナルを識別することができた。二色実験については、IgGを赤色発光体で、p53を緑色発光体で検出し、競合するスポットを多波長走査によって検出した。図2は、試験した様々な条件において最も情報量豊富なペプチドからのシグナルを示している。モノクローナル抗体由来のシグナルは、IgG血清の複雑なバックグラウンドを背景にして際立っている。これはイムノシグネチャリング(immunosignaturing)技法の重要かつ予想外の態様である。血清中で混合されたモノクローナル抗体のような、高親和性免疫応答は、通常の抗体よりもアレイ上において目立つ。
【0083】
p53に対して2つの抗体Ab1およびAb8を選択した。各々を他方へ滴定してシグネチャの勾配を生じさせた。図3は、最も情報量豊富なペプチドに対する結合強度を示しており、様々な結合強度を表わすために様々な色が使用されている。図に見られるように、最も強いパターン(Ab8)は、別の抗体の存在下および競合するIgGの存在下において見られる。合わせて混合された8つの抗体は、単調に応答する傾向を示している。100×IgGはまさしくこのことを示している。希釈は、p53Ab1のパターンが、より弱い抗体であるp53Ab8および過剰量のIgGよりも優位に立つことを示している。物理的にプールされた抗体および数学的に平均化された抗体シグナルは類似のパターンを示す。二次的なものおよび三次的なものは検出されなかった。
【0084】
実施例3:疾病の解明
本発明者らは健常な提供者の血清ならびに渓谷熱に感染した患者およびインフルエンザワクチン接種者由来の血清を集めた。渓谷熱患者は前もって力価についてCF抗原に対して分類した。図4は、様々な結合強度を表わす様々な色のバンドを用いて、最も情報量豊富な患者に対して異なる患者の結合プロファイルを示している。一般に、病気でない健常な患者は、低い強度パターンを示した。コクシジオイデス(cocci)に感染した患者は、コクシジオイデスの力価を検出することができない場合でさえ、極めて高い強度パターンを示した。インフルエンザワクチンを接種された患者は、免疫応答の強さに相当していると思われる様々なパターンを示した。これらのパターンは、健常な患者およびコクシジオイデス感染患者とは容易に識別可能であった。
【0085】
さらなる実験では、神経膠腫、肉腫および膵臓癌を含む様々な種類の癌を有している約200人の癌患者由来の試料を試験した。図5は、最も情報量豊富なペプチドの結合プロファイルをコクシジオイデス感染者および喘息患者と比較して示している。主成分分析から、これらの様々な疾病に罹患している患者のパターンが特徴的であること、かつ癌患者のパターンは癌の種類によるクラスタリングを示すことが確認される。
【0086】
さらなる実験では、膵臓癌のリスクを有し、かつ/または膵臓炎に罹患している患者由来の試料を、膵臓癌に罹患している患者、肉腫を有している患者または健常な患者と比較した。主成分分析(図6)は、膵臓癌のリスクを有する患者の一部が、癌に罹患している患者とともに結合プロファイルのクラスタリングを有することを示す。しかしながら、膵臓炎に罹患している患者は、膵臓癌に罹患している患者とは別々にクラスタリングしている。したがって、結合プロファイルは、リスクを有する患者における癌発症の予測因子として使用可能であり、また膵臓炎と癌とを区別するために使用可能である。
【0087】
図7は、健常な患者、乳癌患者、および乳癌のリスクを有する患者の結合プロファイルを比較している。該結合プロファイルは、乳癌患者を健常者から識別し、かつ腫瘍検出の数年前に乳癌のパターンを有するとして発症前の癌患者を分類する。発症前の試料の結合プロファイルはさらに、変動性(健常者の特徴)の欠如のため健常者とは異なっている。
【0088】
実施例4
ウイルス粒子1×104個の亜致死量のインフルエンザA/PR/8/34株への感染を使用して、BALB/cマウスにおけるその後の同ウイルス株の致死量抗原投与に対する防御を与えた。2〜5平均致死量のインフルエンザA/PR/8/34株を用いた致死量投与を35日目に行った。得られた免疫応答は、明白な感染の臨床的症状または体重減少が抗原投与後に観察されなかったことから、防御的であった。本実施例の一部は、本発明者らによりLugutki et al,Vaccine(May 5, 2010)PMID:20450869において報告済みである。
【0089】
生きているインフルエンザ免疫化マウス由来の血清をアレイに供した。14日目には、インフルエンザ特異的なIgG ELISA力価は1:102,400であり、ウイルス特異抗体が存在することを示していた。CIM10Kアレイへの抗体の結合の差が免疫化の14日後に検出できたことから、体液性免疫状態の変化を検出可能であることが確認された。生きているインフルエンザ免疫化マウスによって少なくとも2倍大きいことが認識された271個のペプチドの比較は、野兎病菌(F.tularensis)LVS株で29日前に免疫化した年齢を適合させたナイーブなマウスよりも少なくとも2倍大きいことが認識された542個のペプチドとは重なり合わなかった。したがって、10,000個のランダムペプチドのアレイはイムノシグネチャを生成するのに十分であり、2つの感染を識別することができる。
【0090】
マウスをインフルエンザに感染させ、21日目の抗血清をイムノシグネチャのパターンに関して試験した。本発明者らはマウスにおいて特異的なインフルエンザパターンを見出し、該パターンは感染マウス由来の抗血清にあらかじめ吸着処理した完全なウイルス粒子を使用して妨害することができたが、無関係のウイルス(M13)では妨害できなかった(図8)。ELISAにおける吸着処理血清の比較から、ウイルスについてのIgG反応が、吸着処理していない387個の血清の終末点力価512,000から、ウイルスを吸着させた血清の500未満へと低減したことが明らかとなった。標準的ELISAでは免疫化が低下した抗体反応性を決定する可能性のある反応性。
【0091】
これらのペプチド集団が最初の免疫化の結果であったかまたは免疫化と抗原投与との併用効果であったかを判断するために、これらのペプチド集団の認識を、免疫化のみを施したマウスと比較した。免疫化後118日目に、免疫化のみを施したマウスは283個の時間的に安定なペプチドについて0日目から5.18±3.57倍の平均増大率を有し、これと比較して免疫化および抗原投与されたマウスは免疫化後98日目において0日目から4.19±2.55倍の平均増大率を有していた。同じ時点において、抑制されたペプチドは、免疫化されたマウスにおいて0日目から0.39±0.29倍、および免疫化と抗原投与とを受けたマウスにおいて0.36±0.098倍の、類似の変化350を生じた。まとめると、これらの結果は、永続的かつ複雑なイムノシグネチャが初感染において生成され、これは感染性生物に特有であることを実証している。
【0092】
本発明者らは、CIM10Kにおけるイムノシグネチャが一時的であるか時間を経ても一貫しているかどうか、またウイルス特異的ELISAにおける抗体価と相関するかを測定するべく努めた。免疫化した動物を抗原投与後211日間経過観察し、CIM10Kアレイ上での血清中抗体によるペプチド認識レベルへの変化を観察した。ウイルス全体に対する標準的ELISAでは、IgG力価は抗原投与の日までに819,200まで上昇して高値を維持し、抗原投与後の観察期間の間不変であった。バルクIgG ELISA力価における変化を反映する「発現プロファイル」を、GeneSpring(登録商標)ソフトウェア・パッケージにおいて確立した。認識されたペプチドの相対的な蛍光強度を該プロファイルと比較して、その強度が時間を経ても0.9を越えるピアソンの相関係数で規定のプロファイルと一致するペプチドを同定した。プロファイル解析を同じく使用して、免疫化後に認識が増大したが抗原投与後に減少したペプチドのセット、および最初に0日目で認識されたが、免疫化後はもはや認識されなかったペプチドのセットを同定した。免疫化後118日目に、免疫化のみを施したマウスは283個の時間的に安定なペプチドについて0日目から5.18±3.57倍の平均増大率を有し、これと比較して免疫化および抗原投与されたマウスは免疫化後98日目において0日目から4.19±2.55倍の平均増大率を有していた。同じ時点において、抑制されたペプチドは、免疫化されたマウスにおいて0日目から0.39±0.29倍、および免疫化と抗原投与とを受けたマウスにおいて0.36±0.098倍の、類似の変化を生じた。まとめると、これらの結果は、永続的かつ複雑なイムノシグネチャが初感染において生成され、これは感染性生物に特有であることを実証している。
【0093】
本発明者らは、CIM10Kにおける抗体のイムノシグネチャがウイルスの免疫抗原量との相関を有するかどうかを測定するべく努めた。BALB/cマウスの群は、感染用量の増加との相関を有する体重減少の亢進および回復時間の長期化を示した。マウスを感染前の体重に回復させ、血清を感染後 日において集めた。ウイルスに対するバルクIgG終末点力価は、すべての群について102,400の終末点力価を備え、群間で判別不能であった。これは、最低の免疫抗原量で、ELISAにおいて最大の検出可能な応答に急速に到達したことを示唆している。CIM10Kイムノシグネチャのコンピュータ分析から、感染用量につれて概ね増加した516個のペプチドが明らかとなり、うち65個のサブセットは急激に上昇した。時間的に安定なペプチドを用量応答性のペプチドと比較すると、39個のペプチドの重複が示されたが、これは偶然として予想される場合の3倍である。これらの結果は、感染用量を識別するという点では、イムノシグネチャはウイルス全体のELISAよりも高い分解能を有することを実証している。
【0094】
感染またはワクチン接種に対する抗体応答について、応答するアイソタイプそれぞれについてELISAで計測することが可能である。本発明者らは、CIM10Kのランダムペプチドアレイ上の抗体反応性が抗体のアイソタイプの変化を検出可能であるかどうかを測定するべく努めた。IgM、IgA、IgG1、IgG2aおよびIgG3のイムノシグネチャを、0日目および28日目由来の血清試料を使用して測定した。バッファーのみが入っているアレイの特徴よりも高い相対蛍光強度で認識されたペプチドを分析した。異なるアイソタイプによって認識されたペプチドの集団を図5の修正ベン図として示す。同等サイズのリストについて偶然による重複として予想される場合より多くの構成員を含有している重複ペプチドセットは、ある重複領域に限定されており、IgMからのクラススイッチの可能性と、気道感染を含んでいる際に期待されるIgAへのスイッチを示すIgAとの重複が示唆される。免疫応答をウイルス感染にあてはめると、IgGサブタイプの応答は主にIgG2aであり、アレイのほぼ半分が28日目の血清により次第に2倍を超えて認識された。反対に、わずか144個のペプチドだけがIgG1抗体によって2倍を超えて認識された。このことは、原因作用物質の病原性を反映する抗体アイソタイプに基づいてイムノシグネチャを細分することができることを実証した。ELISAプロトコールとは対照的に、各アイソタイプ・アッセイはわずか0.5μlの血清しか必要としない。
【0095】
本発明者らは、イムノシグネチャが生物学的な反復実施の間で一貫しているかどうかを判断するべく努めた。BALB/cマウスの追加群をおよそ2か月空けて別々に入手し、免疫化に使用された亜致死量を用いて独立に感染させた。体重減少はすべての群について一貫しており、28日目に各群は19,200のバルクIgG力価を有していた。独立な感染を越えたイムノシグネチャの一貫性に取り組むために、3つの感染に由来する28日目の血清をCIM10Kアレイに結合させて蛍光強度を比較した。アレイ上のすべてのペプチドについて、ピアソンの相関は感染間で0.94であった。時間的に安定なペプチドは感染間で0.904、0.936および0.912のピアソンの相関を有していた。試験したすべてのナイーブのバイオインフォマティクス的平均と比較すると、3つの感染は、283個の時間的に安定なペプチドについて同倍程度の値上昇を示した(2.23±1.22、2.88±1.0、および1.93±0.97)。これらの結果は、イムノシグネチャが感染の生物学的な反復実施を越えて、かつ技術的な反復実施を越えて一貫していることを実証している。本物のウイルス抗原の代わりにランダムペプチドを使用する場合も、生物学的な反復実施の間に一貫性の損失はない。
【0096】
ナイーブな近交系マウスは、抗体レパートリーを発達させる比較的空きのあるカンバスを提供する。本発明者らは、一貫したイムノシグネチャが多様なヒト集団において識別可能であるかどうかを判断するべく努めた。2006〜2007年の季節性ヒトインフルエンザワクチンに対するイムノシグネチャを本発明者らのモデルとして評価した。7人のヒト提供者由来の個々の血清をアレイに結合させて、免疫前と21日目との間のペプチド認識の差について分析した。提供者らは、ELISAにおいて2006〜2007年の季節性ワクチンに対する血清中IgG抗体を有することが測定された。該ヒト提供者について、0日目の平均IgG力価は1:3200、および21日目の中間力価は1:12,800であった。分析から、21日目に免疫前または提供者のバックグラウンド値の少なくとも1.3倍に有意に上昇した(p<0.01)30個のペプチドが同定された。これらの30個のペプチドは、主成分分析を使用して免疫群および前免疫群を明確に識別するのに十分であった。4つの主成分が、それぞれ38%、23%、13%および9%の分散として同定された。ある患者は免疫試料および免疫前試料の両方についてX軸を横切って散らばり、低応答性の免疫系を示唆している可能性がある。この患者が分析から除外されても、残りの患者の試料はなおも群別により識別された。これらの結果は、血清中抗体のイムノシグネチャが情報量豊富であることを実証している。
【0097】
どの抗原から診断用抗体が生じたかを知ることは大きな利点であろう。本発明者らは、このアレイのペプチドから天然のタンパク質への「バックトラッキング」を可能にするプロトコールを開発した。基本的には、反応性のペプチドをTentagelビーズ上で再合成する。該ビーズを血清と反応させて抗体を親和性精製する。その後、抗体をビーズから解放させる。その後、この抗体を抽出物に対して使用してタンパク質を同定する。別の方法は、免疫応答を生じている個体から抗体のファージライブラリを作製し、対象とするペプチドに結合するファージ‐抗体を単離することである。
【0098】
インフルエンザに対して強い反応性を示したが正常なマウス血清には反応しなかったアレイペプチドを、インフルエンザに対する抗体を特異的にプルダウンする(取り出す)ために選択した。このプルダウンは、Tentagel(商標)ビーズに化学的に結合させた10ugのペプチドを使用して行った。抗体をpH2.0のグリシンで溶出させ、次いで直ちに中和した。PR8をニトロセルロース上に固定化し、プルダウンされた抗体をプローブとして調査した。図9A、BおよびCは、PR8粒子を検出するプルダウンされた抗体、ウイルス粒子を捕捉する陽性対照の抗PR8抗体、およびビーズのみからプルダウンされた陰性対照を示す。該データは、本発明者らが、PR8に感染したマウスに最も強い反応性を示したマイクロアレイ由来のペプチドを用いて適切な抗PR8抗体をプルダウンしたことを示している。
【0099】
イムノシグネチャを、免疫原に基づいてレシピエントを分類するために使用することができる。ネズミ科動物モデルにおけるインフルエンザ感染からの防御は、主として中和抗体の産生に基づいている。イムノシグネチャが防御抗体の応答を非防御抗体の応答から識別する能力を試験するために、アーカイブに保管された血清試料をCIM10Kアレイの探査に使用した。乱数発生器を使用して試料をセットAまたはセットBのいずれかに割り当て、各セットが4つのA/PR/8/34感染群、5つのKLH免疫化群および7つのナイーブ群を含むようにした。このように一方のセットを訓練用セットとして使用し、選択されたペプチドを、第2のセットの構成員を予測するために使用することも考えられる。Genespring(登録商標)7.3において連想アルゴリズムを使用して、CIM10Kからペプチドを選択した。セットAでの訓練については、2.32×10−7のメジアンp値を伴った515個のペプチドを同定した。Tサポートベクターマシンを使用して、この515個が用いられた免疫原を予測する能力を試験した。セットAをセットBの予測のための訓練に使用した場合、試料の81.3%が正確に予測された。セットBを、515個のペプチドを使用するセットAの予測のための訓練に使用した場合、試料の93.8%が正確に予測された。
【0100】
予測的なペプチドを選択する方法論の妥当性の試験として、連想アルゴリズムをセットBに適用し、セットBについて6.34×10−5およびセットAについて2.00×10−5のメジアンp値を伴った518個のペプチドを同定した。セットAを予測するためにセットBについて訓練されたサポートベクターマシンは、試料の81.3%を正確に同定し、またセットBを予測するためのセットAについての訓練は、試料の75%を正確に同定した。セットAおよびセットBからの同定された関連ペプチドのリストは、122個のペプチドが重複していたが、これは偶然による重複として予測されるよりも大きい。重複リストは、どちらのセットが訓練用セットまたは試験用セットであるかにかかわらず試料の81.3%を正確に予測した。
【0101】
同種ワクチンおよび異種ワクチンを用いた免疫化により、インフルエンザA/PR/8/34株を用いた抗原投与に対する様々な抗体応答および防御度が生じる。
本発明者らは次に、イムノシグネチャが類似の組成のワクチンを識別し、かつ効果に基づいて該ワクチンを階層化する能力を有するかどうかを判断するべく努めた。本発明者らのモデルワクチンとして、不活化A/PR/8/34株を同種の「良い」ワクチンとして、2006/2007および2007/2008のヒト季節性インフルエンザワクチンを異種の「悪い」ワクチンとして使用した。有効性を、インフルエンザA/PR/8/34株感染のネズミ科動物致死量抗原投与モデルにおいて測定した。40日目に、血清中IgG力価を計測した。モックで免疫化したマウスは、A/PR/8/34株ワクチンまたは季節性ワクチンのいずれについても反応を示さなかった。不活化ウイルスで免疫化したマウスは3つの抗原すべてについてIgG力価を有し、2007/2008季節性ワクチンの構成成分については低い力価であった。季節性ワクチンは互いに交差反応性を示し、A/PR/8/34ウイルスについては低反応性であった。季節性ワクチンの間の交差反応性は、両ワクチン組成物中にA/ウィスコンシン/67/2005およびB/マレーシア/2506/2004が含まれることに起因すると推測される。A/PR/8/34由来のヘマグルチニン配列およびノイラミニダーゼ配列は、A/ニューカレドニア/20/99およびA/ソロモン諸島/3/2006の配列に対してある程度の相同性を有しているが、ELISAにおいて一方向性の交差反応性を生じたように見える。
【0102】
プールした血清試料もCIM10Kを調べるために使用した。連関検定をアレイのデータに適用し、免疫原に関連した367個のペプチドを同定した。これらのペプチドは3.9×10−5の平均群間p値を伴って十分に群を識別する。これは、CIM10Kが体液性免疫応答に基づいて密接に関係した免疫原を相互に識別する分解能を有することを実証している。ELISAで観察されたヘテロサブタイプな交差反応性抗体について説明するために、3つの不活化ワクチンをモック免疫化に対して比較した。この比較からp<0.01の116個のペプチドがもたらされ、そのうち54個がワクチンにおいてモックを上回って増加した。54個のペプチドの相対強度レベルは群間では同程度であった。このペプチドリストを、A/PR/8/34およびKLHで免疫化したマウスを分離する能力に関してサポートベクターマシンで試験した。セットAおよびセットBの組み合わせについて、交差検定誤差は観察されなかったが、これはこのセットが恐らくインフルエンザ特異的な交差反応性抗体で構成されていることを示唆している。
【0103】
42日目の抗原投与において、不活性化A/PR/8/34株で免疫化されたマウスは疾病の臨床症状を伴わずに生き残った。季節性ワクチンで免疫化されたマウスは発病し、2006/2007年の季節性ワクチンの群では60%生存、2007/2008年の季節性ワクチンの群では70%生存であった。季節性ワクチンの群の生存マウスは抗原投与前の体重に回復した。これは、該ワクチンがA/PR/8/34株を用いた抗原投与において同等の防御性を持たないことを実証している。総合すると、これらのデータは、異なるワクチンは全ウイルスELISAおよびCIM10Kによって測定されるように特徴的な免疫応答を生成し、異なる防御効果を有することを実証している。
【0104】
実際の免疫化およびその後の抗原投与のイムノシグネチャは、不活化ワクチンの有効性を予測することができる。自然に獲得した感染およびその後の感染に対する耐性のイムノシグネチャが、不活化ワクチンまたはサブユニットワクチンの有効性を予測することができるかどうかを評価するために、本発明者らは、亜致死量のA/PR/8/34株に感染させ、その後35日後に致死量の同株を抗原投与したマウス由来のマイクロアレイデータを検討した。本発明者らは最初に、抗原投与時に免疫マウスに存在する血清抗体によって認識されたペプチドがワクチンの有効性を予測することができるかを調べた。50個のペプチドが0日目から28日目にかけて有意に(p<0.01で2倍増加)増加した。モデルワクチンの痕跡(trail)について試験するために免疫マウスおよびナイーブなマウス(28日目および0日目)について訓練されたサポートベクターマシンは群を識別することができず、防御性クローンの増幅が後の抗原投与における生存に必要であることが示唆された。
【0105】
この仮説を検証するために、本発明者らは、抗原投与前および抗原投与後の間に増加するペプチドが不活化ワクチンの有効性を予測することができるかどうかを調べた。分析により、抗原投与前から抗原投与後にかけて、0.05未満のp値を伴って2倍を超えて増加するものとして163個のペプチドが同定された。免疫試料およびナイーブ試料(28日目および0日目)について訓練されたサポートベクターマシンは、健康状態の不変により定義される成功(不活化A/PR/8/34)および疾病により定義される不成功(季節性ワクチンおよびモック)の点で、抗原投与の結果を予測することができた。これは、イムノシグネチャが第2の曝露に対する防御を担う抗体反応性を同定する能力により、サブユニットワクチンまたは不活化ワクチンの有効性を予測することができることを実証した。
【0106】
実施例5 多重疾病の分類器
感染症、自己免疫性疾患、癌、アルツハイマー病およびその他の疾病の患者由来の約875個の個別試料を、10,000ペプチドのアレイで独立に分析した。結合プロファイルを、他のプロファイルに関するヒートマップとして最初に表した(図10A)。様々な疾病についての結合プロファイルの主成分分析を図10Bに示す。各疾病が識別可能なプロファイルを有する。炎症は多数の疾病において主要な構成成分であるが、10%未満の分類器誤差で顕著に特徴的なままである該疾病の結合プロファイルの主要原因ではない。
【0107】
実施例6
次の表は、臨床試料についてのいくつかの試験の結果を概説している。FP(偽陽性、FN(偽陰性)、AUC(ROC曲線下の面積、診断の正確さの尺度)。
【0108】
【表1】
実施例7 エピトープマッピング
モチーフ発見アルゴリズムは、アラインメントされていない配列セット内の微妙なパターンを発見することができる。これらのアルゴリズムは、2つの主なカテゴリーすなわち決定論的アルゴリズムおよび最適化アルゴリズムに分類可能である。決定論的アルゴリズムは、十分に規定された基準に適合するモチーフを求めて配列セットを徹底的に探索する。決定論的なモチーフ発見アルゴリズムのいくつかの一般的な実装は、TEIRESIASまたはPRATTである(Rigoutsos,Bioinformatics.14,55−67(1998);Jonassen(1997)Comput.Appl.Biosci.13,509−22)。
【0109】
最適化アルゴリズムはモチーフを確率的に表わし、スコアリング関数を最大限に利用しようとする。最適化は、ギブス(Gibbs)のモチーフサンプリングの使用、またはMEMEに実装されるような期待値最大化によって確率的に予め決定しておく(preformed)ことができる(Bailey(2006)Nucleic Acids Res.1,W369−7316)。
【0110】
モチーフがどの基準を満たさなければならないかが分からない場合は、最適化手法が好ましい。ギブスのモチーフサンプリングアルゴリズムを実装したGLAM2は、ギャップを考慮することからここで使用されることになる(Frith(2008).PLOS Comput Biol.4,e1000071.17)。
【0111】
ペプチドの中からモチーフを発見する代替法は、ペプチドを抗原配列と1つずつ比較することである。RELIC MATCH 5プログラムに実装されたアルゴリズムは、各ペプチド配列を5アミノ酸のウィンドウで標的タンパク質配列と比較し、類似度について各ウィンドウをスコアリングする(18)。ペプチド全てについてのスコアを、潜在的な小分子結合部位を予測するためにタンパク質配列全体にわたって合計する。同様の手法は、ペプチドマイクロアレイ実験で選択された非類似ペプチド配列から抗体認識部位を予測するために使用することができる。
【0112】
典型的には、エピトープマッピングは抗体によって認識されるタンパク質標的の特異部分を同定するために実施される。同様の手法は、抗体の未知のタンパク質標的を同定するために使用することができる。この手法は、病原体の抗原タンパク質の同定、自己免疫性疾患における標的の同定、または未知の感染の原因の発見に使用することができる。
【0113】
既知のエピトープを備えた抗体をラブビジョン(Labvision)(米国カリフォルニア州フリーモント)およびアブカム(Abcam)(米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)から購入した。キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)が結合したペプチドでマウスを免疫化し、35日目に血清を得た。スライドを0.014%メルカプトヘキサノールで不動態化した後、PBS中3%BSA、0.05%Tween(登録商標)で抗体を100nMに希釈、または血清を1:500に希釈した。抗体をスライドとともに、アジレント(Agilent)のチャンバ中で回転しながら37℃で1時間インキュベーションした。スライドを、TBS、0.05%Tween(登録商標)で3回、diH2Oで3回洗浄した。このインキュベーションおよび洗浄の手順を、ビオチン化二次抗体(ベチル・ラボラトリーズ社(Bethyl Laboratoreis,Inc.)、米国テキサス州モントゴメリー)を用いて、次いでAlexa‐555で標識されたストレプトアビジン(Streptavadin)(インビトロジェン(Invitrogen)、米国カリフォルニア州カールスバード)を用いて繰り返した。
【0114】
【表2】
一次抗体またはナイーブマウスの血清を用いない陰性対照のアレイも比較のために実行した。少なくとも3連のアレイを各抗体について実行した。
【0115】
抗原特異的な抗体を、ニトロセルロース膜上に固定化されたKLHに結合させることにより血清から吸収した。1×6センチメートルのニトロセルロース膜を、2.0mlのPBS中1.0mg/mlのKLHが入った15ml容コニカルチューブに入れた。この膜をTBST中で3回洗浄し、TBST中1.0%BSAとともに少なくとも1時間、または使用時までインキュベーションした。TBST中で3回洗浄した後、膜を、3%BSA、0.05%Tween(登録商標)、PBSバッファーで1:500に希釈した2.0mlの血清中に入れた。KLHに対する血清の反応性をELISAで試験した。KLHに対する反応性が1:500希釈で検出されない場合、血清は吸収されたとみなした。
【0116】
副次的な結合の寄与を除去するために、陰性対照のシグナルを抗体シグナルから差し引いた。蛍光強度において上位500個のペプチドを、各抗体について選択した。上位500個のペプチドリストのうちの1つに各ペプチドが現われる回数を表にした。5つ以上のリストに現われるペプチドは、Fcに結合するものであるかまたは他の非特異的相互作用であると思われるため、削除した。アレイ由来のペプチドをエピトープ配列と比較し、配列の類似度を用いて同定した。該エピトープをGLAM2モチーフとして表し、システインの鎖に挿入されたアレイ由来のペプチドに対して、等アミノ酸頻度のアルファベットを用いて探索を行うためにGLAM2SCANに使用した。ペプチドを最高スコアのマッチによってソートし、最も良くマッチングするペプチドのリストを作成した。これらのリストを各ペプチドに最も強く結合するペプチドのリストと比較し、重複の比率を調べた。ヒトSwissprotから配列を無作為に選択し、次に、エピトープ配列と同じ長さの該配列のウィンドウを無作為に選択することにより、モノクローナル抗体のために試験データセットを生成させた。200個の陰性例を各モノクローナル抗体について生成させた。1000個のランダムペプチドを、等頻度の19アミノ酸(アレイのようにシステインは含めなかった)を用いたポリクローナル抗体についての陰性例として生成させた。これらの配列をすべて、17個のシステインの鎖の両側に挿入して、ペプチドが試験配列から突き出てアラインされるようにした。
【0117】
5アミノ酸の開始幅、改善を伴わない1,000,000回の反復(1,000,000 iterations without improvement)、実行10回(10 runs)、および等比率の20アミノ酸のアルファベット(an alphabet of equal proportions of the 20 amino acids)を用いて、GLAM2を使用してペプチドリストからモチーフを生成させた。GLAM2SCANを使用して、モノクローナル抗体について初期設定のタンパク質アルファベットとして、またはポリクローナル抗体については等アミノ酸頻度として、アルファベットセットとモチーフとがマッチングする配列を求めて、対応する試験セットを探索した。
【0118】
GLAM2SCANの出力は、モチーフが試験配列セットの中でマッチングする各場所のスコアである。試験配列を、各配列内の最高スコアのマッチングによってランク付けした。RELIC Fastaskanプログラムを使用して結合ペプチドを試験データセットに対してアラインした。
【0119】
上位500個の特異ペプチドを、親和性選択されたペプチドとしてアップロードし、対応する試験データセットをFASTAファイルとしてアップロードした。ランダムペプチドは差し引かなかった。Fastaskanは、試験配列の5つのそれぞれの5アミノ酸ウィンドウを、選択されたペプチド配列と比較し、閾値より高いアラインメントスコアを合計している。Fastaskanは、ペプチドとその配列との間の最大類似度のウィンドウに対応する各試験配列のスコアを出力する。
【0120】
GLAM2SCANおよびRELIC分析のいずれについても、真のエピトープのランクを、ROC分析を使用して試験配列と比較した。各々のスコアの切り捨てのための真陽性および偽陽性の比率を計算するMatlabスクリプトを、world wide web//theoval.cmp.uea.ac.uk/〜gcc/matlab/roc/から入手し、同点のスコアを平滑化するために修正した。ROC曲線下の面積も、同じウェブサイトのMatlabスクリプトを使用して計算した。この曲線下面積を使用して、所与のサイズのデータベースにおいてエピトープを見出す確率を予測する。本発明者らは、曲線下面積によって推定されるように陰性よりも陽性が選択される確率によって重み付けされた置換を伴わずに、固定サイズのデータベースから陽性例および陰性例が選択されることになると想定する。
【0121】
このペプチドマイクロアレイのプラットフォームを評価するため、既知エピトープの抗体の例が試験データセットを作製するために必要であった。既知の直線状エピトープを備えた5つのモノクローナル抗体、およびアレイから選択されたペプチドに対して作られた抗ペプチドポリクローナルマウス血清5例を、試験セットとして使用した。モノクローナル抗体は、スライド表面のバックグラウンドおよび副次的な対照単独を超えて、ランダムペプチドに対して中央値64.1%(37.6%〜74.9%の範囲)に結合することが分かった。ポリクローナル血清は、中央値を63.6%(54.0%〜68.6%の範囲)として同様のペプチド反応性を示した。複製スライドは、モノクローナル抗体について0.785およびポリクローナル血清について0.764の平均ピアソン相関を有していた。ヒートマップは、各抗体がアレイ上に特徴的な結合パターンを有することを示した。各抗体によって結合されたペプチドの間にある程度の重複が存在するが、各抗体によって認識される上位500個のペプチドの約22%は、試験された他の9つの抗体には認識されない。各抗体によって認識されるペプチドの独自性は、該ペプチド配列が抗体特異性に関する情報を包含している可能性を意味している。
【0122】
各ペプチド配列を、各タンパク質配列に対する類似度についてスコアリングした。抗体が結合したペプチドの大部分は、エピトープに対して強い配列類似度を示さなかった。しかしながら、結合したものの中の配列類似ペプチドについてはある程度の強化があった。結合されたペプチドの大部分は、エピトープに対して何らかの明白な類似度を有するというよりもむしろミモトープである。
【0123】
これらの配列の予測力を評価するために、エピトープに対するペプチドのアラインメントを、1セットの陰性例を用いたアラインメントと比較した。RELICアラインメントプログラムは、モノクローナル抗体のエピトープ全部に対して、また陰性例の62.7%に対して結合ペプチドをアラインメントすることができた。真のエピトープは平均スコア14.3を有していた一方、陰性例は平均スコア5.9を有していた。ROC分析から0.87の曲線下面積が見出されたが、これは真のエピトープが無作為に選択された陰性例より高いスコアを有する確率が87%であることを示す。ポリクローナル血清も全て、陽性のペプチドアラインメントスコアおよび86.5%の陽性例を有していた。真のエピトープは平均スコア14.7を有していた一方、陰性例はスコア15.2を有していた。ROC分析(図5)は、陽性例が曲線下面積に基づいて陰性例より高いスコアを有する確率が46%であることを示している。モノクローナルエピトープはこの方法によって十分に予測されたが、ポリクローナルの予測は偶然と同程度であった。微妙なパターンを検出することができるアルゴリズムは、これらのペプチド配列の予測力を修飾(garnish)することができるかもしれない。GLAM2を使用して全ての抗体について収束モチーフを同定した。モノクローナル抗体のモチーフの幅は3〜5アミノ酸の範囲であった。ポリクローナルのモチーフは幅4〜5アミノ酸であった。モノクローナルのモチーフは平均スコア3.5でエピトープ配列と一致したが、陰性例は平均スコア−3.7を有していた。ポリクローナルのモチーフは平均スコア3.8で免疫化用ペプチドと一致したが、陰性例は平均スコア3.7であった。ROC分析は、モノクローナルのエピトープが該モチーフ分析において対応する陰性例より高くスコアリングされる確率が89.8%である一方、ポリクローナルは陰性例より高くスコアリングされる確率が67.9%であることを実証している。該モチーフ発見手法から、両方のデータセットについて予測力が実証された。
【0124】
【表3】
2つの手法を組み合わせることにより予測能力を改善しうるかどうかを試験するために、RELIC分析およびGLAM2分析のスコアをそれぞれ最低スコア0および最高スコア1を有するように拡大縮小して平均化した。この平均化スコアについてROC分析を実施した。曲線下面積はモノクローナルについて0.92、ポリクローナルについて0.69であった。ROC分析から見積もられた確率に基づくと、100アミノ酸のタンパク質のうち上位10個のウィンドウにおいてモノクローナルのエピトープを見出す確率は約70%ある。可能な1000アミノ酸データベースのうちの上位100個のヒットの中で小さなウイルス中のポリクローナルのエピトープを正確に同定する確率は約21%であり、これは2倍の強化である。
【0125】
実施例9:一般的な材料および方法
ランダムペプチドマイクロアレイの調製。
ランダムCIM10,000fマイクロアレイは、C末端リンカーGly‐Ser‐Cys‐COOHを備えた無作為な配列の10,000個の20残基ペプチドで構成されている。各ペプチドは、本発明者らが提供したアミノ酸配列に基づいて英国バーミンガム所在のアルタバイオサイエンス(Alta Biosciences)により製造された。無作為配列は、特注ソフトウェア(ハンター(Hunter)、プレストン(Preston)およびウエムラ(Uemura)、ユウスケ(Yusuke)、バイオデザイン研究所(The Biodesign Institute))により提供された。19個のアミノ酸(システインは除外)を、カルボキシ末端リンカーとしてGSCを備えた最初の17位のそれぞれにおいて完全に無作為に選択した。合成スケールは、純度≧70%で総量2〜5mgであり、ペプチドの2%を質量分析法によって任意に試験した。乾燥ペプチドを100%のN,N’ジメチルホルムアミド中に入れて溶解させ、その後pH5.5の純水で1:1に希釈し、2mg/mlのマスター濃度とした。原型の深型96ウェルプレートをロボット操作により384ウェルのポッティング(potting)プレートに変え、ペプチドを、pH7.2のリン酸緩衝生理食塩水中で濃度1mg/mlの最終スポッティング濃度に希釈した。高品質で事前に清浄化済みのGold Seal顕微鏡スライドグラスを、フィッシャー(Fisher)(米国ニュージャージー州フェアローン、カタログ番号3010)から入手した。各スライドをアミノシランで処理し、スルホ‐SMCC(米国イリノイ州ロックフォード所在のピアス・バイオテクノロジー(Pierce Biotechnology))で活性化して、ペプチドの末端システインと反応するように設計された品質検査済みマレイミド活性化表面を作出した。スポッティング時には、本発明者らは48本のTelechemシリーズSMP2式946チタン製ピンを使用するTelechemNanoprint60を使用する。ピンはそれぞれ、1スポット当たりおよそ500pLの1mg/mlペプチドのスポッティングが可能であるが、これはピンの軌道、表面滞留時間、および各ピンが保持する液体の量を考慮に入れることにより見積もられている。スポッティング環境は、25℃、湿度55%である。各ペプチドは1アレイ当たり2回スポッティングされ;アレイはスポット密度を最大限にするためにオレンジ箱詰めパターン(orange−crate packing pattern)でスポッティングされる。蛍光基準点は、Alexa‐647、Alexa‐555、Alexa‐488およびAlexa‐350で標識されたペプチドを使用して非対称的に付与した。該基準点は、画像処理の際に各サブアレイを整列させるために使用する。プリントされたスライドは、使用時までアルゴン下で4℃にて保存される。品質管理は、レーザスキャナ(Perkin‐Elmer ProScanArrayHT、米国マサチューセッツ州ウェルズリー所在のパーキン・エルマー(Perkin Elmer))により647nmでアレイを画像化してスポットの形態を画像化することで構成される。バッチがこの試験に合格すれば、既知のタンパク質および抗体を用いた無作為に選択されたスライドのさらなる試験により、再現性のQCが可能となる。30%の全CVのアレイ間変動を満たさないアレイのバッチは廃棄される。データ抽出はGenePix Pro6.0(モレキュラー・デバイス社(Molecular Devices Inc.)、米国カリフォルニア州サニーヴェール)を使用して遂行される。
【0126】
血清中抗体を用いたランダムペプチドマイクロアレイの探査。
スライドを、抗体結合に適合したプロトコールを用いてTecan(登録商標)HS4800プロ・ハイブリダイゼーション・ステーショを使用して処理した。一般的な設定は11.0ml/分で30秒の洗浄期間とし、試料の撹拌は高値に設定した。1×PBS、3%BSA、0.05%Tween(登録商標)20、0.014%メルカプトヘキサノールを用いてアレイを23℃の室内で15分間ブロッキングした。アレイを、インキュベーションバッファー(3%BSA、1×PBS、0.05%Tween(登録商標)20)の中で1:500に希釈した血清170μlを用いて37℃で1時間探査した。合間にスライドをTBSTで洗浄した。結合したIgGを、ビオチン化抗マウスIgG(ベチル・ラボラトリーズ(Bethyl Laboratories)、米国テキサス州モントゴメリー)を使用して37℃で1時間検出した。抗α鎖二次抗体を、インキュベーションバッファー中5.0nMのAlexafluor(登録商標)649標識ストレプトアビジンを使用して、37℃で1時間検出した。TBST中および蒸留水中の最終洗浄を、残留塩を除去するために行った。スライドを、搭載(on−board)窒素フローで5.0分間乾燥させた。画像を、Agilent(登録商標)「C」型スキャナを使用して543nmおよび633nmの両方で記録した。
【0127】
ランダムペプチドマイクロアレイのデータの分析。
マイクロアレイデータの統計分析は、GenePix Pro6.0(アクソン・インスツルメンツ(Axon Instruments)、米国カリフォルニア州ユニオンシティー)から画像処理データをインポートすることにより、GeneSpring(登録商標)7.3.1(アジレント社(Agilent,Inc.)、米国カリフォルニア州パロアルト)を用いて行なった。GenePixで準備されたgprテキストファイルに基づいた計算を、1スポット当たりの中間シグナル強度について行った。目視検査で「不在」としてフラグを立てることにより、低品質のスポットを分析から除外した。分析に先立ち、アレイ間変動を排除するために各アレイを第50百分位数に標準化し、0.01未満のシグナル強度は0.01に設定した。三連のアレイからの値を平均して分析に使用した。情報量豊富なペプチドを、ペプチド対ペプチド規模で群間比較することにより決定した。500以上の相対蛍光強度およびp値<0.01を備えたペプチドを選択した。さらなる統計分析は、Microsoft(登録商標)Excel(登録商標)2003 SP3またはGraphPad Prismバージョン4.00ウィンドウズ(登録商標)用(グラフパッド・ソフトウェア(Graphpad Software)、米国カリフォルニア州サンディエゴ)で実施した。GeneSpring(登録商標)における主成分分析機能を使用して、選択された遺伝子リストに基づいて血清試料を識別した。PCAは平均センタリングおよびスケーリングを使用して実行した。サポートベクターマシン分析を、交差検定の誤差を生成し、かつ試験セットを予測するために、50個のペプチド、多項式点乗積オーダー1および対角スケーリング因子0に限定されたフィッシャーの直接法を使用してGeneSpring(登録商標)において実行した。
【0128】
アーカイブに保管されたネズミ科動物の血清試料の特徴解析。
防御が少数の中和抗体によって駆動されるとしても、イムノシグネチャがワクチンの有効性と関連するかどうかを試験するために、亜致死量のインフルエンザA/PR/8/34株感染をモデルの防御ワクチンとして使用し、KLH免疫化をモデルの非防御ワクチンとして使用した。KLHは、等しく頑健な体液性免疫応答を生じるその能力により選択した。A/PR/8/34株感染マウスにおけるウイルス全体に対する平均IgG力価は819,000であり、KLH免疫化マウスについては800であった。インフルエンザA/PR/8/34の2〜5平均致死量を使用する致死量抗原投与を35日目に行った。亜致死量の感染によって生成された免疫応答は、感染または体重減少の明白な臨床的症状が抗原投与後に観察されなかったので、防御的であった。KLH免疫化マウスには、ミョウバンで補助され、KLH単独または無関係なペプチド‐KLHコンジュゲートのいずれかが含められた。平均抗KLH IgG力価はKLH免疫化マウスにおいて819,000であり、A/PR/8/34免疫化マウスにおいて1,600であった。35日目の抗原投与の後、KLH免疫化はナイーブを上回る有益性を与えなかった。これは、モデルワクチンがELISA交差反応性をほとんど持たないそれぞれの免疫原について同程度に強い免疫応答を有し、KLHを用いた免疫化による防御はなかったことを示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を分析する方法であって、
(a)試料を、アレイであって前記アレイの様々なエリアを固定化された様々な化合物が占めているアレイと接触させるステップであって、エリア内の同じ化合物の異なる分子は、同じエリア内の少なくとも2つの異なる分子と多価の結合パートナーとの間の多価結合のために、互いに十分に近接した間隔で配置されることを特徴とするステップと、
(b)アレイ内の様々な化合物の、試料の構成成分への、例えば抗体への結合を検出するステップと
を含む方法。
【請求項2】
一価結合の条件下では試料への結合を相互に識別すること、および非特異的結合と識別することは困難であるが、試料の化合物への多価結合により、相互間で、および非特異的結合とは著しく異なる結合を示す結果、前記試料の結合プロファイルの特徴を生じる化合物の相対的結合から、試料を特徴解析するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アレイのエリア内の化合物の異なる分子間の平均間隔は6nm未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
1mm〜1μMの会合定数で試料に結合する複数の化合物の相対的結合から試料を特徴解析するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
複数の化合物は、1mm〜1μMの会合定数で試料に結合する少なくとも10個または100個の化合物を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
特徴解析するステップは、複数の化合物の相対的な結合を含む試料の結合プロファイルを参照結合プロファイルと比較することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
様々な化合物に結合する試料の構成成分を同定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
同定された構成成分を前記構成成分に結合することが知られている結合パートナーを用いて検出するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
同定された構成成分は、前記構成成分に結合することが知られている複数の異なる結合パートナーを用いて検出される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
結合パートナーは、同定された構成成分に対する抗体であるか、または同定された構成成分に結合することが知られているペプチドである、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
結合パートナーはステップ(b)で検出された様々な化合物のうちの1つである、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
結合パートナーは合成抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
結合パートナーは支持体に対して固定化されている、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
結合パートナーはアレイ中で支持体に対して固定化されている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
第2のアレイを形成するステップをさらに含み、前記第2のアレイは、アレイ中の様々な化合物全てではなく同定された構成成分に結合するアレイ中の様々な化合物のうち1つ以上を含有している、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第2のアレイは、アレイ中の様々な化合物のうち5%未満を含有している、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
試料に結合することが測定された化合物を含むがアレイ中の様々な化合物全ては含まない、アレイまたは他のデバイスを形成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
検出ステップは、試料中の1つまたは複数の抗体への様々な化合物の結合を検出する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
検出ステップは、外側表面から複数の同じタンパク質を提示している生物学的物質への様々な化合物の結合を検出する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
生物学的物質はその外側表面から複数の同じ受容体を提示している細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
試料に対して最も強く結合する化合物は、1mM〜1μMの解離定数を伴って試料に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
化合物はペプチドまたは小分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
アレイは500〜50,000個のペプチドを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
ペプチドの長さは10〜30アミノ酸である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ペプチドの配列は無作為に選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
固定化される様々な化合物は試料とは関係なく選択され、アレイは様々なタンパク質に結合することが知られている複数の化合物をさらに含み、前記化合物も同じく前記アレイの異なるエリアを占めている、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
様々なタンパク質に結合することが知られている複数の化合物は、様々なヒトタンパク質のうち少なくとも25%、50または75%に結合することが知られている化合物を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
固定化される様々な化合物は、様々なヒトタンパク質のうち少なくとも25%、50%または75%に結合することが知られている複数の化合物、および500〜50,000個のランダムペプチドを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
ペプチドの配列は標的の既知の結合パートナーに対して90%未満の配列同一性を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
ペプチドの配列は既知タンパク質に対して90%未満の配列同一性を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
試料をアレイと接触させるステップは、アレイへの試料の結合の潜在的競合物の存在下で行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記競合物は、試料の被検構成成分の既知の結合パートナーである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
試料は患者の試料であり、競合物は前記患者を侵している疾病に関係することが知られているタンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
試料は患者の試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
試料は複数の抗体を含有している、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
患者は疾病に罹患していることが知られているかまたは罹患している疑いがある、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
患者は疾病のリスクを有することが知られているが、前記疾病の症状を示していない、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記疾病は自己免疫性疾患である、請求項36または37に記載の方法。
【請求項39】
前記疾病は感染症である、請求項36または37に記載の方法。
【請求項40】
前記疾病はCNSの疾病である、請求項36または37に記載の方法。
【請求項41】
試料は血液、尿、またはCNSの試料である、請求項33に記載の方法。
【請求項42】
試料の構成成分は標識される、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
試料の構成成分へのペプチドの結合は二次抗体を使用して検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項44】
二次抗体はアイソタイプ特異的な抗体である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
試料の構成成分へのペプチドの結合はsprまたは質量分析法によって検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項46】
試料に結合することが測定されたペプチドを使用して試料の構成成分を親和性精製するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項47】
試料の非結合構成成分をアレイから洗浄するステップ、および結合構成成分をアレイから解離させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項48】
患者から抗体ライブラリを調製するステップ、および前記ライブラリをスクリーニングするための親和性試薬として、試料中の抗体が結合するペプチドを使用するステップをさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
親和性精製された抗体の天然の結合パートナーを同定するステップをさらに含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
試料の構成成分の天然の結合パートナーを同定するために、試料の構成成分に結合するペプチドの配列を天然の配列のデータベースと比較するステップをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項51】
疾病または疾病の病期のうちの1つを有するものとして患者を診断するために、試料に結合する様々な化合物のプロファイルを、様々な疾病または疾病の様々な病期に関連した様々な化合物のプロファイルと比較するステップをさらに含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
疾病が存在するかどうかを測定するために、試料に結合する様々な化合物のプロファイルを、疾病の欠如に関連した様々な化合物のプロファイルと比較するステップをさらに含む、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
同じ疾病に罹患している複数の患者由来の異なる試料について、前記疾病の結合プロファイルの特徴を示すために、前記方法を反復するステップをさらに含む、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
様々な疾病の複数の結合プロファイルの特徴を示すために、様々な疾病に罹患している複数の患者由来の異なる試料について、前記方法を反復するステップをさらに含む、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
アレイであって、前記アレイの様々なエリアを固定化された様々な化合物が占めており、エリア内の同じ化合物の異なる分子は、同じエリア内の少なくとも2つの異なる分子と多価の結合パートナーとの間の多価結合のために互いに十分に近接した間隔で配置されていることを特徴とする、アレイ。
【請求項56】
試料を分析する方法であって、
試料を、アレイであって固定化された様々なペプチドが前記アレイの様々なエリアを占めているアレイと接触させるステップと、
アレイ内の様々なペプチドの、試料の構成成分への結合を検出するステップと、
試料について1mM〜1μMの解離定数を備えた複数のペプチドの相対的な結合から、前記試料を特徴解析するステップと
を含む方法。
【請求項57】
試料は、1mM〜1μMの解離定数を備えた少なくとも10個のペプチドの相対的な結合から分析される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
試料を分析する方法であって、
前記試料を、アレイであって前記アレイの様々なエリアを固定化された様々な化合物が占めているアレイと接触させるステップと、
アレイ内の様々な化合物の、試料の構成成分への結合を検出するステップと、
アレイ中の空エリアの結合強度の平均+3標準偏差より大きく、しかし3桁以内の、試料に対する結合強度を有する複数の化合物の相対的な結合から、試料を特徴解析するステップと
を含む方法。
【請求項59】
特徴解析するステップは、複数の化合物を含む試料の結合プロファイルを、複数の化合物を含む参照結合プロファイルと比較することを含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
試料は、アレイ中の空エリアの結合強度の平均+3標準偏差よりも3桁以内で大きい試料に対する結合強度を有する少なくとも10個または100個の化合物の相対的な結合から特徴解析される、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
複数の様々な試料を特徴解析する方法であって、
様々な試料を、同じアレイまたは複数の同じアレイであって前記アレイの様々なエリアを固定化された様々なペプチドが占めているアレイと接触させるステップと、
様々な試料への様々なペプチドの様々な結合プロファイルを検出するステップと
を含み、試料はそれぞれの結合パターンから特徴解析されることを特徴とする方法。
【請求項62】
複数の様々な試料は、様々な病徴を有する患者由来の試料を含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
複数の様々な試料は、疾病を呈する患者および疾病のない患者の試料を含む、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
試料を分析する方法であって、
前記試料を、アレイであって前記アレイの様々なエリアを固定化された様々な化合物が占めているアレイと接触させるステップと、エリア内の同じ化合物の異なる分子は、同じエリア内で平均距離4nm未満の間隔を置いて配置されていることと、
アレイの様々な化合物の、試料の構成成分への結合を検出するステップと
を含む方法。
【請求項65】
試料を分析する方法であって、
(i)試料を、前記試料の構成成分の既知の結合パートナーと接触させるステップと、
(ii)前記結合パートナーが試料に結合するかどうかを、前記構成成分を欠く対照と比較して測定するステップと
を含み、既知の結合パートナーは、
(a)初期試料を、アレイであって前記アレイの様々なエリアを固定化された様々な化合物が占めているアレイと接触させるステップと、エリア内の同じ化合物の異なる分子は、同じエリア内の少なくとも2つの異なる分子と多価の結合パートナーとの間の多価結合のために互いに十分に近接した間隔で配置されていることと、
(b)アレイ内の様々な化合物の、試料の構成成分への結合を検出するステップと、
(c)様々な化合物に結合する試料の構成成分を同定するステップと、
(d)ステップ(i)で使用するための、構成成分の既知の結合パートナーを同定するステップと
を含む手順によって同定されることを特徴とする、方法。
【請求項66】
ステップ(i)の構成成分は、前記構成成分に結合することが知られている複数の様々な結合パートナーを用いて検出される、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
結合パートナーは構成成分に対する抗体である、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
結合パートナーは構成成分に結合することが知られているペプチドである、請求項65に記載の方法。
【請求項69】
結合パートナーはステップ(b)で検出された様々な化合物のうちの1つである、請求項65に記載の方法。
【請求項70】
結合パートナーは合成抗体である、請求項65に記載の方法。
【請求項71】
結合パートナーはステップ(i)において支持体に固定化されている、請求項65に記載の方法。
【請求項72】
結合パートナーはステップ(i)においてアレイ中の支持体に固定化されている、請求項65に記載の方法。
【請求項73】
試料の構成成分の検出において使用されるデバイスを製造する方法であって、
(a)試料を、アレイであって前記アレイの様々なエリアを固定化された様々な化合物が占めているアレイと接触させるステップと、エリア内の同じ化合物の異なる分子は、同じエリア内の少なくとも2つの異なる分子と多価の結合パートナーとの間の多価結合のために互いに十分に近接した間隔で配置されていることと、
(b)アレイ内の様々な化合物の、試料の構成成分への結合を検出するステップと、
(c)ステップ(b)において様々な化合物の結合が検出された構成成分の、既知の結合パートナーを含むデバイスを形成するステップと
を含む方法。
【請求項74】
様々な化合物に結合する試料の構成成分を同定するステップをさらに含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
ステップ(c)は、構成成分に結合することが知られている複数の異なる結合パートナーを含むデバイスを形成することを含む、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
結合パートナーは構成成分に対する抗体である、請求項73に記載の方法。
【請求項77】
結合パートナーは構成成分に結合することが知られているペプチドである、請求項73に記載の方法。
【請求項78】
結合パートナーはステップ(b)で検出された様々な化合物のうちの1つである、請求項73に記載の方法。
【請求項79】
結合パートナーは合成抗体である、請求項73に記載の方法。
【請求項80】
結合パートナーは支持体に固定化される、請求項73に記載の方法。
【請求項81】
結合パートナーはアレイ中の支持体に固定化される、請求項73に記載の方法。
【請求項82】
ステップ(c)は第2のアレイを形成することを含み、前記第2のアレイは、試料の構成成分に結合するアレイ内の様々な化合物のうち1つ以上を含有するが、アレイ中の様々な化合物全ては含有しない、請求項73に記載の方法。
【請求項83】
第2のアレイはアレイ内の様々な化合物の5%未満を含有している、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
アレイであって、前記アレイの様々なエリアを固定化された様々な化合物が占めており、様々な化合物は、既知のヒトタンパク質のうち少なくとも25、50または75%に結合することが知られている複数の化合物および500〜50,000個のランダムペプチドを含むことと、エリア内の同じペプチドの異なる分子は、同じエリア内の少なくとも2つの異なる分子と多価の結合パートナーとの間の多価結合のために互いに十分に近接した間隔で配置されていることとを特徴とする、アレイ。
【請求項85】
ワクチンを試験する方法であって、
病原微生物に対するワクチンで免疫化された対象者の血液試料を、アレイであって前記アレイの様々なエリアを固定化された様々な化合物が占めているアレイと接触させるステップと、
アレイの様々な化合物への試料の結合パターンを検出するステップと、
前記結合パターンを、ウイルスによる感染を生き残った対象者由来の1つ以上の参照試料の結合パターンと比較するステップと
を含み、対象試料と参照試料との間の結合プロファイルの類似は、前記ワクチンが前記病原微生物に対して有効であることを示していることを特徴とする、方法。
【請求項86】
対象者はウイルスへの曝露の前にワクチンで免疫化済みである、請求項85に記載の方法。
【請求項1】
試料を分析する方法であって、
(a)試料を、アレイであって前記アレイの様々なエリアを固定化された様々な化合物が占めているアレイと接触させるステップであって、エリア内の同じ化合物の異なる分子は、同じエリア内の少なくとも2つの異なる分子と多価の結合パートナーとの間の多価結合のために、互いに十分に近接した間隔で配置されることを特徴とするステップと、
(b)アレイ内の様々な化合物の、試料の構成成分への、例えば抗体への結合を検出するステップと
を含む方法。
【請求項2】
一価結合の条件下では試料への結合を相互に識別すること、および非特異的結合と識別することは困難であるが、試料の化合物への多価結合により、相互間で、および非特異的結合とは著しく異なる結合を示す結果、前記試料の結合プロファイルの特徴を生じる化合物の相対的結合から、試料を特徴解析するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アレイのエリア内の化合物の異なる分子間の平均間隔は6nm未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
1mm〜1μMの会合定数で試料に結合する複数の化合物の相対的結合から試料を特徴解析するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
複数の化合物は、1mm〜1μMの会合定数で試料に結合する少なくとも10個または100個の化合物を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
特徴解析するステップは、複数の化合物の相対的な結合を含む試料の結合プロファイルを参照結合プロファイルと比較することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
様々な化合物に結合する試料の構成成分を同定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
同定された構成成分を前記構成成分に結合することが知られている結合パートナーを用いて検出するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
同定された構成成分は、前記構成成分に結合することが知られている複数の異なる結合パートナーを用いて検出される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
結合パートナーは、同定された構成成分に対する抗体であるか、または同定された構成成分に結合することが知られているペプチドである、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
結合パートナーはステップ(b)で検出された様々な化合物のうちの1つである、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
結合パートナーは合成抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
結合パートナーは支持体に対して固定化されている、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
結合パートナーはアレイ中で支持体に対して固定化されている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
第2のアレイを形成するステップをさらに含み、前記第2のアレイは、アレイ中の様々な化合物全てではなく同定された構成成分に結合するアレイ中の様々な化合物のうち1つ以上を含有している、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第2のアレイは、アレイ中の様々な化合物のうち5%未満を含有している、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
試料に結合することが測定された化合物を含むがアレイ中の様々な化合物全ては含まない、アレイまたは他のデバイスを形成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
検出ステップは、試料中の1つまたは複数の抗体への様々な化合物の結合を検出する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
検出ステップは、外側表面から複数の同じタンパク質を提示している生物学的物質への様々な化合物の結合を検出する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
生物学的物質はその外側表面から複数の同じ受容体を提示している細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
試料に対して最も強く結合する化合物は、1mM〜1μMの解離定数を伴って試料に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
化合物はペプチドまたは小分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
アレイは500〜50,000個のペプチドを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
ペプチドの長さは10〜30アミノ酸である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ペプチドの配列は無作為に選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
固定化される様々な化合物は試料とは関係なく選択され、アレイは様々なタンパク質に結合することが知られている複数の化合物をさらに含み、前記化合物も同じく前記アレイの異なるエリアを占めている、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
様々なタンパク質に結合することが知られている複数の化合物は、様々なヒトタンパク質のうち少なくとも25%、50または75%に結合することが知られている化合物を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
固定化される様々な化合物は、様々なヒトタンパク質のうち少なくとも25%、50%または75%に結合することが知られている複数の化合物、および500〜50,000個のランダムペプチドを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
ペプチドの配列は標的の既知の結合パートナーに対して90%未満の配列同一性を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
ペプチドの配列は既知タンパク質に対して90%未満の配列同一性を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
試料をアレイと接触させるステップは、アレイへの試料の結合の潜在的競合物の存在下で行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記競合物は、試料の被検構成成分の既知の結合パートナーである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
試料は患者の試料であり、競合物は前記患者を侵している疾病に関係することが知られているタンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
試料は患者の試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
試料は複数の抗体を含有している、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
患者は疾病に罹患していることが知られているかまたは罹患している疑いがある、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
患者は疾病のリスクを有することが知られているが、前記疾病の症状を示していない、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記疾病は自己免疫性疾患である、請求項36または37に記載の方法。
【請求項39】
前記疾病は感染症である、請求項36または37に記載の方法。
【請求項40】
前記疾病はCNSの疾病である、請求項36または37に記載の方法。
【請求項41】
試料は血液、尿、またはCNSの試料である、請求項33に記載の方法。
【請求項42】
試料の構成成分は標識される、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
試料の構成成分へのペプチドの結合は二次抗体を使用して検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項44】
二次抗体はアイソタイプ特異的な抗体である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
試料の構成成分へのペプチドの結合はsprまたは質量分析法によって検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項46】
試料に結合することが測定されたペプチドを使用して試料の構成成分を親和性精製するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項47】
試料の非結合構成成分をアレイから洗浄するステップ、および結合構成成分をアレイから解離させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項48】
患者から抗体ライブラリを調製するステップ、および前記ライブラリをスクリーニングするための親和性試薬として、試料中の抗体が結合するペプチドを使用するステップをさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
親和性精製された抗体の天然の結合パートナーを同定するステップをさらに含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
試料の構成成分の天然の結合パートナーを同定するために、試料の構成成分に結合するペプチドの配列を天然の配列のデータベースと比較するステップをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項51】
疾病または疾病の病期のうちの1つを有するものとして患者を診断するために、試料に結合する様々な化合物のプロファイルを、様々な疾病または疾病の様々な病期に関連した様々な化合物のプロファイルと比較するステップをさらに含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
疾病が存在するかどうかを測定するために、試料に結合する様々な化合物のプロファイルを、疾病の欠如に関連した様々な化合物のプロファイルと比較するステップをさらに含む、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
同じ疾病に罹患している複数の患者由来の異なる試料について、前記疾病の結合プロファイルの特徴を示すために、前記方法を反復するステップをさらに含む、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
様々な疾病の複数の結合プロファイルの特徴を示すために、様々な疾病に罹患している複数の患者由来の異なる試料について、前記方法を反復するステップをさらに含む、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
アレイであって、前記アレイの様々なエリアを固定化された様々な化合物が占めており、エリア内の同じ化合物の異なる分子は、同じエリア内の少なくとも2つの異なる分子と多価の結合パートナーとの間の多価結合のために互いに十分に近接した間隔で配置されていることを特徴とする、アレイ。
【請求項56】
試料を分析する方法であって、
試料を、アレイであって固定化された様々なペプチドが前記アレイの様々なエリアを占めているアレイと接触させるステップと、
アレイ内の様々なペプチドの、試料の構成成分への結合を検出するステップと、
試料について1mM〜1μMの解離定数を備えた複数のペプチドの相対的な結合から、前記試料を特徴解析するステップと
を含む方法。
【請求項57】
試料は、1mM〜1μMの解離定数を備えた少なくとも10個のペプチドの相対的な結合から分析される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
試料を分析する方法であって、
前記試料を、アレイであって前記アレイの様々なエリアを固定化された様々な化合物が占めているアレイと接触させるステップと、
アレイ内の様々な化合物の、試料の構成成分への結合を検出するステップと、
アレイ中の空エリアの結合強度の平均+3標準偏差より大きく、しかし3桁以内の、試料に対する結合強度を有する複数の化合物の相対的な結合から、試料を特徴解析するステップと
を含む方法。
【請求項59】
特徴解析するステップは、複数の化合物を含む試料の結合プロファイルを、複数の化合物を含む参照結合プロファイルと比較することを含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
試料は、アレイ中の空エリアの結合強度の平均+3標準偏差よりも3桁以内で大きい試料に対する結合強度を有する少なくとも10個または100個の化合物の相対的な結合から特徴解析される、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
複数の様々な試料を特徴解析する方法であって、
様々な試料を、同じアレイまたは複数の同じアレイであって前記アレイの様々なエリアを固定化された様々なペプチドが占めているアレイと接触させるステップと、
様々な試料への様々なペプチドの様々な結合プロファイルを検出するステップと
を含み、試料はそれぞれの結合パターンから特徴解析されることを特徴とする方法。
【請求項62】
複数の様々な試料は、様々な病徴を有する患者由来の試料を含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
複数の様々な試料は、疾病を呈する患者および疾病のない患者の試料を含む、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
試料を分析する方法であって、
前記試料を、アレイであって前記アレイの様々なエリアを固定化された様々な化合物が占めているアレイと接触させるステップと、エリア内の同じ化合物の異なる分子は、同じエリア内で平均距離4nm未満の間隔を置いて配置されていることと、
アレイの様々な化合物の、試料の構成成分への結合を検出するステップと
を含む方法。
【請求項65】
試料を分析する方法であって、
(i)試料を、前記試料の構成成分の既知の結合パートナーと接触させるステップと、
(ii)前記結合パートナーが試料に結合するかどうかを、前記構成成分を欠く対照と比較して測定するステップと
を含み、既知の結合パートナーは、
(a)初期試料を、アレイであって前記アレイの様々なエリアを固定化された様々な化合物が占めているアレイと接触させるステップと、エリア内の同じ化合物の異なる分子は、同じエリア内の少なくとも2つの異なる分子と多価の結合パートナーとの間の多価結合のために互いに十分に近接した間隔で配置されていることと、
(b)アレイ内の様々な化合物の、試料の構成成分への結合を検出するステップと、
(c)様々な化合物に結合する試料の構成成分を同定するステップと、
(d)ステップ(i)で使用するための、構成成分の既知の結合パートナーを同定するステップと
を含む手順によって同定されることを特徴とする、方法。
【請求項66】
ステップ(i)の構成成分は、前記構成成分に結合することが知られている複数の様々な結合パートナーを用いて検出される、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
結合パートナーは構成成分に対する抗体である、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
結合パートナーは構成成分に結合することが知られているペプチドである、請求項65に記載の方法。
【請求項69】
結合パートナーはステップ(b)で検出された様々な化合物のうちの1つである、請求項65に記載の方法。
【請求項70】
結合パートナーは合成抗体である、請求項65に記載の方法。
【請求項71】
結合パートナーはステップ(i)において支持体に固定化されている、請求項65に記載の方法。
【請求項72】
結合パートナーはステップ(i)においてアレイ中の支持体に固定化されている、請求項65に記載の方法。
【請求項73】
試料の構成成分の検出において使用されるデバイスを製造する方法であって、
(a)試料を、アレイであって前記アレイの様々なエリアを固定化された様々な化合物が占めているアレイと接触させるステップと、エリア内の同じ化合物の異なる分子は、同じエリア内の少なくとも2つの異なる分子と多価の結合パートナーとの間の多価結合のために互いに十分に近接した間隔で配置されていることと、
(b)アレイ内の様々な化合物の、試料の構成成分への結合を検出するステップと、
(c)ステップ(b)において様々な化合物の結合が検出された構成成分の、既知の結合パートナーを含むデバイスを形成するステップと
を含む方法。
【請求項74】
様々な化合物に結合する試料の構成成分を同定するステップをさらに含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
ステップ(c)は、構成成分に結合することが知られている複数の異なる結合パートナーを含むデバイスを形成することを含む、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
結合パートナーは構成成分に対する抗体である、請求項73に記載の方法。
【請求項77】
結合パートナーは構成成分に結合することが知られているペプチドである、請求項73に記載の方法。
【請求項78】
結合パートナーはステップ(b)で検出された様々な化合物のうちの1つである、請求項73に記載の方法。
【請求項79】
結合パートナーは合成抗体である、請求項73に記載の方法。
【請求項80】
結合パートナーは支持体に固定化される、請求項73に記載の方法。
【請求項81】
結合パートナーはアレイ中の支持体に固定化される、請求項73に記載の方法。
【請求項82】
ステップ(c)は第2のアレイを形成することを含み、前記第2のアレイは、試料の構成成分に結合するアレイ内の様々な化合物のうち1つ以上を含有するが、アレイ中の様々な化合物全ては含有しない、請求項73に記載の方法。
【請求項83】
第2のアレイはアレイ内の様々な化合物の5%未満を含有している、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
アレイであって、前記アレイの様々なエリアを固定化された様々な化合物が占めており、様々な化合物は、既知のヒトタンパク質のうち少なくとも25、50または75%に結合することが知られている複数の化合物および500〜50,000個のランダムペプチドを含むことと、エリア内の同じペプチドの異なる分子は、同じエリア内の少なくとも2つの異なる分子と多価の結合パートナーとの間の多価結合のために互いに十分に近接した間隔で配置されていることとを特徴とする、アレイ。
【請求項85】
ワクチンを試験する方法であって、
病原微生物に対するワクチンで免疫化された対象者の血液試料を、アレイであって前記アレイの様々なエリアを固定化された様々な化合物が占めているアレイと接触させるステップと、
アレイの様々な化合物への試料の結合パターンを検出するステップと、
前記結合パターンを、ウイルスによる感染を生き残った対象者由来の1つ以上の参照試料の結合パターンと比較するステップと
を含み、対象試料と参照試料との間の結合プロファイルの類似は、前記ワクチンが前記病原微生物に対して有効であることを示していることを特徴とする、方法。
【請求項86】
対象者はウイルスへの曝露の前にワクチンで免疫化済みである、請求項85に記載の方法。
【図9】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2012−530906(P2012−530906A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516358(P2012−516358)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/039269
【国際公開番号】WO2010/148365
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(507080994)アリゾナ ボード オブ リージェンツ ア ボディー コーポレート アクティング オン ビハーフ オブ アリゾナ ステイト ユニバーシティ (17)
【氏名又は名称原語表記】ARIZONA BOARD OF REGENTS,a body corporate acting on behalf of ARIZONA STATE UNIVERSITY
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/039269
【国際公開番号】WO2010/148365
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(507080994)アリゾナ ボード オブ リージェンツ ア ボディー コーポレート アクティング オン ビハーフ オブ アリゾナ ステイト ユニバーシティ (17)
【氏名又は名称原語表記】ARIZONA BOARD OF REGENTS,a body corporate acting on behalf of ARIZONA STATE UNIVERSITY
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