説明

試料の採取/注入器具用案内装置を有する化学分析用自動サンプリング装置

本発明は、分析用のサンプルの採取/注入用の器具を備えた作業ステーション1と、ロボット制御指揮アーム100とを含む、器具を使用する化学分析用の自動式サンプリング装置。アーム100が、器具を保持するヘッド12と、前記ヘッドから延びる、前記器具の案内装置14,15とを備えている。該案内装置は、少なくとも1対の同一平面上に配置されたジョー17,18を含み、該ジョーが、その結合位置では、器具に対する滑り案内として役立つ開放端管状シート26を形成する。該ジョーは、ヘッド12に一体取り付けされた支持部材13に旋回可能に結合され、結合位置にジョーを維持するように設計された弾性部材28を含んでいる。作業ステーション1は、ジョーの旋回を作動させる手段11を含み、作業ステーション方向へのヘッドの移動の間、弾性部材に抗して行われるこの旋回により、ジョーが拡開され、開放端管状シートが開かれ、器具がシートに係合できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、特にガス・クロマトグラフィ技術を用いて行う化学分析用の器具分野に関するものである。より詳しく言えば、本発明は、自動サンプリング装置と、特に該サンプリング装置に取り付けられた試料の採取/注入器具を案内する機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動サンプラーが、ロボット制御アームを備えた装置であることは公知であり、該制御アームによって、被検体の抽出(採取)処置及びガス・クロマトグラフへの注入処置の自動化が可能である。また、−分析及び器具の種類にもよるが−例えばシリンジ、固相微小抽出(SPME)ファイバ、希釈チップ(dilution tips)等の種々の器具や、その他バイアル、注入器具、洗浄ステーション、容器等、挿入時に案内を要する器具を用いて処理できる作業の自動化も可能になる。
自動サンプラーは、分析を行う器具の支持ヘッドで終わっている。例えばSPMEファイバを用いて行う分析では、アームのヘッドは、SPMEプローブの挿入に適した容器(又はホールダ)を備えている。該プローブは、コーティングされた溶融シリカ・ファイバから成り、該ファイバは、一端がコネクタに接続され、かつ保護針内に滑り挿入されるが、他端は露出可能である。コネクタは、ホールダのピストンに取り外し可能に取り付けられ、該ピストンはスライドして、ファイバの幾分延びた部分を針の内部から伸長させるか又は内部へ引き込む。
【0003】
従来の自動サンプラーの場合、操作員は、試料の採取及び/又は注入、及び/又は類似の操作に使用する器具の交換が必要な場合、その都度、手で作業しなければならなかった。特に、SPMEプローブを使用する場合、ホールダに手で着脱せねばならない。同じ出願人によるPCT特許出願番号WO 2007/032039に開示されたSPMEを使用する自動サンプリング装置では、SPMEファイバも自動交換される。図1は前記特許出願に基づく装置を示している。
自動サンプラーのアーム上のヘッドは、器具上での針の移動を案内する装置を含み、概して、軸線の整合する1つ以上の環状部材を含む下方部分を有している。環状部材は、バイアル、又はガス・クロマトグラフの注入器具へ圧力下で針が挿入されるさい、針の曲がりを防止する。SPMEプローブを使用する自動サンプラーに係わる前記特許出願では、針案内として役立つ環状部材が前部にスリットを有し、プローブを扱う段階の間に、針が該スリットを通過する。
【0004】
しかし、案内装置のこの構成は、例えばファイバ・アダプタの不精密な組み立て等の様々な理由でファイバが曲がった場合、ファイバを損傷することがある。その場合、ファイバは、分析作業時、又は撹拌を要するバイアル内への挿入時、又は野外の不都合な条件下でのサンプリング時には、器具上の注入器の穴と整合しなくなる。そのような場合、実際には、針の軸線が案内の中心と整合しないため、針が開放側から現れ、前部スリットを通過し、プローブの修復不可能な損傷又は破断を生じさせる。同じ問題は、従来式の針案内が、細い針を取り付けたシリンジと共に使用された場合にも生じる。その場合、針がバイアルや注入器の穴あけ可能なカバーを貫通することが、より困難になる。この場合にも、針は、曲がりがちであり、スリットが形成されている側から突出することさえある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、自動サンプラーのロボット制御アームのヘッドに取付けられる案内装置、それも、公知案内装置の既述の機能的な欠点が克服された案内装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、本発明による自動サンプラー用の案内装置により達せられた。その重要な特徴は、請求項1に記載されている。他の重要な特徴は、従属請求項に記載されている。
本発明による自動サンプラー用の案内装置の特徴及び利点は、添付図面に示す一実施例についての以下の説明で明らかとなろう。該実施例は、一例に過ぎず、本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】WO 2007/032039による自動サンプラー装置の斜視全体図。
【図2】本発明による自動サンプラー装置内の、SPMEプローブを備えた作業ステーションの斜視図。
【図3】図2に示した作業ステーションへの接近段階での、本発明による案内装置の側面図。
【図4】図3に示した状態での斜視図。
【図5】本発明による案内装置の拡大斜視図。
【図6】図5に示した案内装置の部分断面図。
【図7】作業ステーションに案内装置を位置決めする順序を連続的な3段階で示す体面図。
【図8】作業ステーションに案内装置を位置決めする順序を連続的な3段階で示す体面図。
【図9】作業ステーションに案内装置を位置決めする順序を連続的な3段階で示す体面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
先ず第一に、この説明では、既に引用したPCT特許出願WO 2007/032039に開示した自動サンプリング装置の構成を参照しようと思う。本発明が、類似の機能上の要求を有する他の自動サンプリング装置にも適用可能なことが理解されよう。装置組立体は、図1に示されており、ガス・クロマトグラフによって支持されたロボット制御式自動サンプリング・アーム100を含んでいる。ガス・クロマトグラフ上には、1つ以上のプレート102が、SPMEファイバを内包するプローブ2の整然とした配列を担持するように配置されている。プレート102の横には、以下では一般的に作業ステーションと呼ぶことにするプローブ移送支持体1が配置され、プローブ2は、注入ポート103を介してガス・クロマトグラフへ注入する段階の前と後とに、自動サンプラー・アーム100によって該支持体上に配置される。自動サンプラー・アーム100は、SPMEプローブ用のホールダ(図示せず)を担持するヘッド12で終わっている。
【0009】
図2、図3、図4を参照すると、作業ステーション1上に配置されたSPMEプローブ2はシリカ・ファイバ(図示せず)で構成され、該シリカ・ファイバは、剛性の針4内に滑り収納され、コネクタ5で終わっている。コネクタ5は、自動サンプラー・アーム100のヘッド12に備わるホールダ内の作動装置へのプローブの接続用である。ホールダ及び作動装置については、公知の種類であり、既述の特許出願で既に説明済みなので、これ以上詳しくは説明しない。該特許出願は、ここに引用することで本明細書に取り入れられるものとする。ヘッド12は、図3に符号Aで示した方向で作業ステーションに対して接近又は離間する。
【0010】
作業ステーション1は、底部6と直立プレート7とから成り、該直立プレートが、前記底部から上方へ延び、前方へ延びる支持部9を有しており、この支持部上には、コネクタ5に固定されたフランジ10が設けられている。フランジ10とコネクタ5との間には鋼製の保護管8が配置され、運ばれる間のファイバを振動から保護し、それによりシステム全体の強度及び信頼性が高められている。支持部9の下方には、直立プレート7の両側から前方へ2つの平行で平らなウイング又はアーム11が延びている。
ロボット制御式アームのヘッド12の下部には、針4の案内装置が備えられており、ヘッド12から延びる1対の平行な支柱13を含んでおり、該支柱13は、間隔をおいて上下に配置された1対の案内部材14,15を有し、該案内部材は、ねじ(図示せず)によって前記支柱に取り付けられている。
【0011】
図5及び図6には、案内部材14,15の構造が、より詳しく示されている。
案内部材14(この説明は、等しい案内部材15にも同様に適用される)は、支柱13に直角に取り付けられた基部16を含み、該基部が、1対の等しい、同一平面上のジョー17,18を保持している。基部16は2つの付加部16aを含み、該付加部は、事実上U字形であり、平行かつ間隔をおいて位置し、支柱13に対し直角方向に延びている。ジョー17,18は、U字形付加部16aに係合し、支柱と平行な各スピンドル19,20と、各ロックピン21,22とを介して付加部に結合されている。該ロックピンは、U字形付加部16aに一体取り付けされ、ジョー17,18に設けられたスロット(図6に1つのスロットのみが、符号23で示されている)に係合する。スロット23の長さは、スピンドル19,20を中心とする2つのジョー17,18の角変位の幅、つまり2つのジョーが並列する第1結合位置と、2つのスロット23の長さが許容する最大角変位に対応する角度に2つのジョーが拡開する第2位置との間の振幅、を決定する。
【0012】
ジョー17,18からは、スピンドル19,20と平行に各半管状付加部25a,25bが延び、該付加部が、第1位置では、結合して単一の開放端管状シート26を形成する。つまり、付加部は、結合位置では閉状態となり、第1位置から第2位置への移動につれて漸次開かれる。作業ステーション1の底部側の、管状シート26の端部は、図6に示すように、針4を内包するのに十分な、また針の軸方向スライドの間に針を精密に案内するのに十分な直径の小さい断面部26aを有している。
【0013】
2つのジョー17,18には、ジョーの結合平面に関して対称的に切欠き27が設けられ、これによって、2つのジョーが閉じ位置にある場合、切欠きは、作業ステーション1のアーム11の間隔より狭い相互間隔を有しており、その入口区域には、ホッパ状の輪郭部27aが設けられ、これにより、案内装置が作業ステーション1内へ進入するにつれて、アーム11が切欠き27に係合することができる。実際には、図7、図8、図9に順次に示したように、自動サンプラー・アーム(これに案内装置は一体に組み付けられる)のヘッドが作業ステーション1の方向へ移動するにつれて、アーム11の自由端部が、切欠き27のホッパ状輪郭部27aと接触する。ヘッドが更に近づくと、アーム端部がホッパ状輪郭部27aに沿ってスライドすることで、ジョー27が、各スピンドル19,20を中心として旋回させられ、最後に、図9に示されているように、アーム11が完全に切欠き27に係合すると、ジョー27は可能なだけ拡開される。
【0014】
特に、切欠き27は、ジョー17,18の最大角変位に事実上等しい角度で前送り方向に傾斜する側部を有しており、このため、アーム11が完全に切欠き27に係合すると、切欠きは事実上アーム11と整合し、互いに平行となる。
1.図7に示した(ジョー17,18が第1位置にある)状態から図9に示した(ジョー17,18が第2位置にある)状態への移動は、ばね28により弾性抵抗を受ける。ばね28の両端は、ジョー17,18の−前送り方向に対して−後端に、つまり、切欠き27の、スピンドル19,20とは反対の側に形成された対向シート29(図6に一方のシートだけを示す)に支えられている。したがって、ばね28の作用により、ジョー17,18は、結合状態にとどまろうとし、アーム11が切欠き27から外されると直ちに、前記結合位置に戻ろうとする。
【0015】
本発明の前述の実施例による案内装置は、互いに上下に位置する2つの同軸案内部材14,15から成るが、本発明の効果を得るには、十分な長さがあれば、単一の案内部材でも十分であることを理解されたい。しかし、2つの案内部材による既述の解決策が好ましいのは、針の曲げ応力を軸方向に、より適切に分配できるからである。
本発明の前述の実施例による作業ステーション1は、SPMEプローブと共に作業するように設計されているが、他の分析用器具と共に作業できるような形状に変更することもできる。他の分析器具には、例えばシリンジ、又は他の後続処置で使用される、案内を要する器具等が含まれる。作業ステーションは、どんな場合でも、2つのジョー17,18の旋回を作動させ手段を、特に、ジョーを開くのに要する長手方向のスラストに耐えられるアーム対11を備える必要がある。
【0016】
開放端部を有する管状シート26の形状も、使用される分析器具や、分析器具の、案内を要する構成部材(針その他の部材)の形状に応じて変更できる。
本発明による自動サンプラー用の案内装置には、特許請求の範囲に記載された本発明の枠を逸脱することなしに、変化形及び/又は変更態様が可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
器具を用いる化学分析用の自動サンプリング装置であって、分析される試料の採取/注入用の器具を保持するための少なくとも1つの作業ステーション(1)と、ロボット制御式アーム(100)とを含身、該アームが、器具を保持するためのヘッド(12)と、該ヘッドから延びる器具を案内する装置(14,15)と有する形式のものにおいて、
前記案内装置が、少なくとも1対の同一平面上のジョー(17,18)を含み、該ジョーが、その結合位置では、前記器具用の滑り案内として役立つ開放端管状シート(26)を形成し、前記ジョーが、前記ヘッド(12)に一体取り付けされた支持部材(13)に旋回可能に結合され、かつ前記結合位置にジョーを拘束するための弾性部材(28)を含み、前記作業ステーション(1)が前記ジョーの旋回を作動させる手段(11)を含み、該作動手段が、前記ジョーを開くために前記ヘッドを前記作業ステーション方向へ変位させる間に前記弾性部材の作用に抗してジョーを旋回させることにより、前記開放端の管状シートが開かれ、それにより前記器具がシートに係合することを特徴とする、自動式サンプリング装置。
【請求項2】
対応する半管状の付加部(25a,25b)が、前記ジョーから延び、かつ前記ジョーが前記結合位置に変位すると、一緒になって前記開放端の管状シートを形成する、請求項1記載の自動式サンプリング装置。
【請求項3】
前記ジョーが対称的な各切欠き(27)を有するように形成され、前記作業ステーション(1)の前記作動手段が、作業ステーションから前方へ延びる互いに間隔をおいた2つの平行なアーム(11)を含み、前記切欠きの開口が、前記アームの間隔より狭く取られ、ホッパ状の輪郭部(27a)を有しており、前記ヘッド(12)が前記作業ステーションに近づく運動時に、前記アーム(11)が前記輪郭部に沿ってスライドすることで、前記ジョーが漸次拡開される、請求項1又は請求項2記載の自動式サンプリング装置。
【請求項4】
前記切欠き(27)が、各ジョーの最大変位角度に事実上等しい傾斜角度で、前送り方向に対称的に傾斜する側部を有している、請求項3記載の自動式サンプリング装置。
【請求項5】
前記ジョーが、底部(16)に取り付けられ、前記ヘッド(12)から延びる支持部材(13)に対し直角に固定されており、また前記ジョーが、ジョーに形成されたスロット(23)に係合する各スピンドル(19,20)とロックピン(21,22)とにより前記底部に結合されており、それによって、前記ジョーが前記スピンドルを中心として、前記スロットの長さに対応する振幅にわたって、前記結合位置と前記開位置との間で旋回する、請求項1から請求項4までのいずれか1項記載の自動式サンプリング装置。
【請求項6】
前記弾性部材が、前記ジョー(17,18)の間に、それも前記切欠きの、前記スピンドル(19,20)とは反対の側に、ばね(28)を含む、請求項1から請求項5までのいずれか1項記載の自動式サンプリング装置。
【請求項7】
前記開放端を有する管状シート(26)が、小さい断面を有する部分(26a)を含む、請求項1から請求項6までのいずれか1項記載の自動式サンプリング装置。
【請求項8】
前記案内装置が互いに上下に間隔をおいて配置された2対の平行な、同一平面上のジョーを含む、請求項1から請求項7までのいずれか1項記載の自動式サンプリング装置。
【請求項9】
前記アームが2つの平らなプレートによって形成されている、請求項1から請求項8までのいずれか1項記載の自動式サンプリング装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−513916(P2010−513916A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542387(P2009−542387)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【国際出願番号】PCT/IB2007/055277
【国際公開番号】WO2008/078304
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(508080355)
【出願人】(508080344)
【Fターム(参考)】