説明

試料管の支持具

【課題】試料管底面より大径の留め部に係止可能な貫通孔を板部材に設けて試料管と板部材との隙間を確保し、板部材を所定の板厚に形成して、試料管の起立状態で支持する。
【解決手段】接地底面4aで自立可能で且つ接地底面4aより大径な留め部4bを高さ方向の中途部に備えた断面円形の試料管4を支持する。板部材2に試料管4の起立姿勢を支持する円形の貫通孔3が所定間隔ごとに複数穿設され、貫通孔3に接地底面4a側から挿入された試料管4の留め部4bを貫通孔3の内周部で係止し、板部材2は、貫通孔3内で試料管4が接地底面4a縁を支点Oとして傾いた場合にこの支点Oとは反対側の試料管4の接地底面4a縁が持ち上がって貫通孔3の内周壁に当接可能な板厚Wに形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品試料の検査で検体を入れる試験管、バイアル、チューブ等の試料管を支持する試料管の支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試験管などの薬用瓶を立てた状態で保持させる薬用瓶立てが知られている。
この薬用瓶立ては、包装箱の上面の保持板に薬用瓶を嵌合して起立状態に保持する嵌込孔を備え、この嵌込孔には保持板を放射状に切り込んだ切り込み片が設けられている。薬用瓶を嵌込孔に嵌め込むと、前記切り込み片がそれぞれ内側へ湾曲して瓶を外周から保持し、薬用瓶は、箱の底面との間で起立状態に保持される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭62−59135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の薬用瓶立ては、嵌込孔に嵌め込んだ薬用瓶と切り込み片との間に隙間がなく、嵌込孔から引き抜かれる薬用瓶には切り込み片から大きな抵抗がかかり、一方の手で薬用瓶を抜きながら他方の手で包装箱を押さえる必要があるなど、薬用瓶のスムースな抜取りができない。
本発明は、このような点に鑑みて、試料管の底面より大径な留め部に係止する貫通孔を板部材に穿設することで、試料管底部と板部材との隙間を確保して試料管の抜取りを容易にすると同時に、板部材を所定の板厚に形成して、貫通孔内で試料管が底面接地した姿勢から傾いても、試料管の底面縁が貫通孔内に当接して引っかかり、起立状態を保持できる試料管の支持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明における課題解決のための具体的手段は、次の通りである。
第1に、接地底面4aで自立可能で且つこの接地底面4aより大径な留め部4bを高さ方向の中途部に備えた断面円形の試料管4を支持する試料管の支持具であって、
板部材2に前記試料管4の起立姿勢を支持する円形の貫通孔3が所定間隔ごとに複数穿設されていて、この貫通孔3に接地底面4a側から挿入された試料管4の留め部4bを貫通孔3の内周部で係止し、
前記板部材2は、前記貫通孔3内で試料管4が接地底面4a縁を支点Oとして傾いた場合にこの支点Oとは反対側の試料管4の接地底面4a縁が持ち上がって貫通孔3の内周壁に当接可能な板厚Wに形成されていることを特徴とする。
【0006】
第2に、前記板部材2は、ウォーターバス5内で水浴可能な形状に且つ水に浮く素材で形成されていることを特徴とする。
第3に、前記貫通孔3は、前記板部材2の表面2a側に露出した孔径S1と裏面2b側に露出した孔径S2とが同じ又は異なるように形成されていることを特徴とする。
第4に、前記板部材2は、前記試料管4の内底面4cを斜め上方から視認可能な板厚Wに形成されていることを特徴とする。
【0007】
これらの特徴により、試料管4の底面4aより大径な留め部4bに係止する貫通孔3を板部材2に設けることで、貫通孔3の孔径Sは底面4aより大径で且つ留め部4bより小径となって、試料管4底部と板部材2との隙間dを確保でき、片手での試料管4の引抜きが可能となるなど試料管4の抜取り容易化を図ると同時に、板部材2の板厚Wを、貫通孔3内の試料管4が底面4a縁を支点Oに傾くと支点O反対側の試料管4の底面4a縁が持ち上がって貫通孔3の内周壁に当接して引っかかり可能に形成することで、底面4aで接地した姿勢(底面接地姿勢T)の試料管4が、斜めに傾いても起立状態を保持できる。
【0008】
さらに、円形の貫通孔3を所定間隔で複数穿設することで、断面円形の試料管4は傾いた起立姿勢(傾斜起立姿勢K)を維持したまま貫通孔3の周縁上を転がり(鉛直軸J回り
に首振り状に回転し)、試料管4に対し貫通孔3の周方向に沿って力がかかっても、この力を試料管4が首振り回転して逃がすことができ、ある試料管4が傾いて隣接する試料管4に当たっても、当てられた試料管4自体も首振り回転が可能であるため、各試料管4の起立状態(底面接地姿勢T及び傾斜起立姿勢K)が確実に保たれる。
【0009】
好ましくは、板部材2をウォーターバス5内で水浴可能な形状に且つ水に浮く発泡プラスチック等の素材で形成してもよく、ウォーターバス5内の水面に浮かべた板部材2の貫通孔3に試料管4を留め部4bまで挿入して、水面上に試料管4を所定長さ露出させた状態を保持しながら、水面下を所定温度に保温できる。
さらには、貫通孔3の孔径Sを表裏面2a、2bで同じにすれば、製造の容易化が図られ、板部材2の表裏面2a、2bで孔径Sが異なる貫通孔3を穿設すれば、試料管4を板部材2の表面2aから挿入した場合と、裏面2bから挿入した場合とで、貫通孔3の内周部と留め部4bとの係止位置が変わり、テーパ状の試料管4の場合には挿入深さを変えることができ、例えば、ウォーターバス5内の水浴時に水面上に露出する所定長さ等を選択可能となる。なお、貫通孔3の内周部とは、貫通孔3の内周壁及び表裏面2a、2b側の内周縁を合わせた部分をいう。
【0010】
また、板部材2の板厚Wを、試料管4の内底面4cを斜め上方から視認可能に形成することも好適であって、起立状態の試料管4内の検体の量や色チェック等の状態確認ができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る試料管の支持具によれば、試料管の底面より大径の留め部に係止可能な貫通孔が形成された板部材を、所定の板厚に形成することで、試料管の底部と貫通孔との隙間を形成できると同時に、試料管が傾いても底面縁が貫通孔内に引っかかって起立状態を保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る試料管の支持具を示す要部側面図である。
【図2】起立状態の試料管を支持する支持具を示す一部断面側面図である。
【図3】首振り回転をする試料管を支持する支持具を示す平面図である。
【図4】ウォーターバスにおける支持具の使用状態を示す斜視図である。
【図5】水面上に所定長さ露出した試料管を支持する支持具を示す側面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る試料管の支持具における貫通孔の変形例を示す要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜3には、本発明の第1実施形態に係る試料管の支持具1が示されている。
この支持具1は、接地底面4aで自立する試料管4を支持する略矩形状の板部材2であって、この板部材2に、前記試料管4の起立状態を支持する貫通孔3が設けられている。
図2、4に示す如く、前記試料管4は、接地底面4aを有した断面円形の管状の試験管であって、接地底面4aから上方に向かって大径となるテーパ状に形成されている。試験管4は、上端が開口しており、この開口を塞ぐキャップ4dが試験管4の上端部に着脱自在に螺合している。
【0014】
図2の一部断面図に示すように、試験管4は、内底面4cを上面とする丸底部分4eを有し、この丸底部分4eから下方に起立壁4fが延出して上げ底状に形成されている。この起立壁4fの下端面4aは、断面円環状の一様な面に形成されていて、上述した接地底面4aを構成している。
試験管4は、接地底面4aの直径(底径)Lが約16.3mmで、接地底面4aから高さ約88mmの位置の直径が約18mmである。つまり、試験管4の外周面は、上方にいくほど大径となるテーパ面であり、外周面のテーパ角βは、tanβ=1.7/88を解いて、βは約1.1度となる。
【0015】
試験管4のテーパ面部分の上縁(底面4aから高さ約88mmの位置)には、外方へ張り出すフランジを有しており、このフランジより上方の外周面に上述の螺合部分が形成さ
れている。
なお、試験管4の底径Lや、高さ、テーパ角β等は、上述した値に限らず、自立可能な接地底面4aを有しているならば、テーパ状の試験管4でも、テーパのない試験管4の中途部にリブ(後述する留め部4b)を設けたものでもよく、キャップ4dも螺合式でなく、ゴム栓、アルミキャップなどであってもよい。
【0016】
また、試験管4は、内容量を表す目盛りが1cc刻みで記されている(図4参照)が、必須ではない。
図2、3に示すように、前記板部材2は、平面視で長方形で発泡スチロール製の板であって、縦約200mm、横約110mm、板厚W10mmに形成されている。
板部材2には、上述の貫通孔3が複数(本実施形態では縦5×横3=15個)穿設され、貫通孔3の直径(孔径)Sは、約17.5mmであって、上述の試験管4の高さ方向の中途部(接地底面4aから約60mm)と同径に形成されている。
【0017】
貫通孔3の穿設方向は板部材2の厚み方向に沿っていて、厚み方向の切削や型抜きだけで、板部材2の表面2a側に露出した孔径S1と、裏面2b側に露出した孔径S2とが同径となるように形成可能であるため、製造が容易となる。また、各貫通孔3は、所定間隔(中心間の距離が約30mm)ごとに設けられており、縦横に隣接する貫通孔3間の距離は約12.5mmである。
【0018】
なお、板部材2の一端部(一端縁から約60mmの部分)は、貫通孔3が形成されておらず、この部分を把持部としたり、板部材2の表面2aに記入スペース11を設けてもよい。また、板部材2の形状、貫通孔3の孔径Sや間隔は、上述した値に限定されず、支持する試験管4に応じて、適宜変更可能である。
特に、板部材2の板厚Wは、試験管4の底径Lや重心Gの位置によって、約10mmに限らない(以下、図1及び使用態様参照)。
【0019】
図1〜5に示した支持具1の使用態様を説明する。
図1(a)に示す如く、地面に置いた板部材2の貫通孔3内で試験管4を自立させる(底面4aで接地した姿勢であり、以下、底面接地姿勢Tとする)と、孔径S>底径Lであるため、試験管4の底部と貫通孔3の内周壁との間で、隙間d(約0.6mm)が確保できる。
【0020】
この隙間dがあるため、起立した試験管4を抜き取る際には、片手で上方へ引き抜くだけでよく、抜取り作業が非常にスムースとなる。
図2中の仮想線で示すように、貫通孔3内の試験管4に対し、手の接触や揺れなど横方向の力が加わると、試験管4は、底面接地姿勢Tから底面4a縁を支点Oとして傾いていく。この傾きにつれて、底面接地姿勢T時には接地底面4aの中心の略鉛直上方にある重心Gも、試験管4が傾く側へ移動していく。
【0021】
しかし、試験管4が傾けば、支点Oとなった底面4a縁とは反対側の底面4a縁が持ち上がることとなり、その反対側の底面4a縁は貫通孔3の内周壁に当接して(ここを当接点Aとする)引っかかる(図1(b)参照)。
よって、板部材2の板厚Wを、貫通孔3内で試験管4が傾いた場合に持ち上がる底面4a縁が貫通孔3の内周壁に当接可能に形成すれば、板部材2は、貫通孔3内で試験管4が傾いても起立状態を支持できる。
【0022】
なお、傾いて起立した姿勢(傾斜起立姿勢K)をとった試験管4は、支点Oと、当接点Aと、支持点B(試験管4の外周面と貫通孔3の内周上縁との接触点)の3点で支持されている。
一方、板厚Wが薄すぎても、底面4a縁は貫通孔3へ引っかかることができないため、板部材2は、所定の板厚Wが必要である。
【0023】
すなわち、試験管4が貫通孔3内で任意の角度θで傾いたとしても、支点O反対側の試験管4の底面4a縁が、板部材2の上面と同じ高さ又は低い位置にくれば、底面4a縁の貫通孔3への引っかかりは確保されることとなる。
なお図1(c)は、試験管4の底部角を側面視で直角に近似し、且つ貫通孔3の内周壁を側面視で鉛直面に近似した場合において、底径Lの試験管4が、孔径Sの貫通孔3の中
で最も傾いた(つまり、支点O反対側の試験管4の底面4a縁が最も持ち上がった)状態を示しており、このときの板厚Wは、L√(S2−L2)/Sの値と等しくなる(三角形の相似関係より)。
【0024】
よってこの場合には、板部材2の板厚Wを、L√(S2−L2)/Sよりも厚く形成すれば、底面4a縁の貫通孔3への引っかかりが確保され、貫通孔3内で試験管4は、底面接地姿勢Tから傾斜起立姿勢Kへ姿勢変更可能となる。
図2中の矢印Xで示す如く、隣接する試験管4同士が同じ向きに傾けば、傾斜起立姿勢Kでの傾きは略等しいため、互いに接触することはない。
【0025】
また、図2中の矢印Yのように、試験管4の断面形状、貫通孔3はそれぞれ円形であるため、試験管4は傾斜起立姿勢Kを維持したまま貫通孔3の周縁上を転がって、側面視で鉛直軸J回りに首振り状に回転可能となっている(図3中矢印Yも参照)。
したがって、試験管4に対し貫通孔3の周方向に沿って力がかかっても、この力を試験管4が首振り回転して逃がすことができる。
【0026】
また、図3中の矢印Zで示すように、ある試験管4が傾いて隣接する試験管4に当たっても、当てられた試験管4自体も鉛直軸J回りの首振り回転ができるため、各試験管4は、互いに当たった衝撃を逃がすように動けて、各試験管4の起立状態は、底面接地姿勢T及び傾斜起立姿勢Kのいずれかで確実に保たれる。
なお、各貫通孔3同士は、中心間の距離が約30mmとなる間隔で設けられていたが、試験管4の抜取り等に支障がない範囲で、さらに間隔を狭めて貫通孔3を板部材2に設けることも可能である。
【0027】
貫通孔3内で試験管4を起立させた状態で、板部材2の前記一端部を把持して片手で持ち上げるだけで、試験管4は中途部(高さ方向の略中央部、又はその中央部より若干上側)までが貫通孔3に嵌る(このとき、前記隙間dはなくなる)こととなり、複数の試験管4を同時に簡単に持ち運ぶことができる。
なお、試験管4は、テーパ状の外周面が貫通孔3の内周部(厳密には、板部材2表面2a側の内周縁)に係止(当接)することで、高さ方向中途位置で留まっているといえ、この貫通孔3の内周部に係止した部分を、試験管4の留め部4bとする。
【0028】
逆にいえば、このような留め部4bによって、貫通孔3に接地底面4a側から挿入された試料管4を係止するためには、貫通孔3の孔径Sは、接地底面4aより大径で且つ留め部4bより小径でなくてはならない。なお、貫通孔3の孔径Sを接地底面4aより大径となるように形成すれば、試験管4の底部と貫通孔3と間には隙間dができる。
図4に示す如く、複数の試験管4を所定温度で長時間保温する場合には、持ち運び状態の試験管の支持具1を、そのままウォーターバス5の容器5a内に入れれば、発泡スチロール製の板部材2が水面に浮くこととなり、簡単に保温作業に移れる。
【0029】
しかも、板部材2の貫通孔3に試験管4が中途部まで挿通していることから、試験管4のうち板部材2の表面2a(上面)から上の部分だけが、水面上から露出することとなり、試験管4上端と水面との距離を常に所定長さに保ち、水面等から試験管4内への雑菌混入を防止できる。
さらに、ウォーターバス5におけるサーモスタット5bの長時間使用によって、水Mが蒸発して容器5a内の水面が下がっても、図5に示す如く、容器5a内にあらかじめ十分な水量を入れておくことによって、水位が変化しても、水面上の露出距離は常に一定に保たれ、且つ水面下の試験管4底部と、容器5aの内底面との距離が十分に確保されるため、随時水位を監視し、必要に応じて水Mを足す等の手間がかからず、保温作業の負担が非常に軽減される。
【0030】
なお、ウォーターバス5の容器5aの開口面に収まるように(つまり、ウォーターバス5内で水浴可能に)、板部材2の形状、大きさが構成されている。
図6は、本発明の第2実施形態に係る試料管の支持具1を示している。
第2実施形態と第1実施形態との相違点は、貫通孔3の孔径Sが板部材2の表面2a側に露出した孔径(表孔径)S1と、裏面2b側に露出した孔径(裏孔径)S2とが異なるように形成されていることであり、以下に貫通孔3の変形例を2つ示す。
【0031】
図6(a)には、貫通孔3の変形例1が示されている。この貫通孔3は、板部材2の表面2aから裏面2bに向かって小径となるテーパ状(貫通孔3の内周面がテーパ面)に形成されており、表孔径S1は裏孔径S2より大径となっている。
このテーパ状貫通孔3に、これと同じテーパ角βを有した上述のような試験管4を挿入すると、互いのテーパ面同士が面接触するため、持ち運び時や保温作業中などには、試験管4が板部材2にしっかり保持される。
【0032】
この場合、留め部4bは、試験管4における貫通孔3と面接触する部分となる。
なお、テーパ状貫通孔3及び試験管4のテーパ角βが異なる場合には、試験管4のテーパ面において、板部材2の貫通孔3における表面2a側の内周縁、又は裏面2b側の内周縁のいずれか係止(当接)した部分が、試験管4の留め部4bとなる。
また図6(a)中の仮想線に示す如く、接地させた板部材2の貫通孔3内の試験管4は、底面接地姿勢Tをとったときには、貫通孔3の内周壁との間に隙間dが形成され、変形例1のテーパ状貫通孔3であっても、片手で試験管4を抜き取れる。
【0033】
図6(b)にて示された変形例2の貫通孔3は、軸方向の中途部で裏面2b側が小径となる段部3aを備えており、この場合も同様に、表孔径S1>裏孔径S2となる。
なお図6(b)に示された試験管4は、テーパ面によって留め部4bを構成するのではなく、直管(ストレート管)の高さ方向中途部に、フランジ状の膨出部4gが外周面にわたって突出形成させている。この膨出部4gは、貫通孔3の孔径S(S1及びS2)より大径に形成されていた場合には、貫通孔3の内周部(厳密には、板部材2表面2a側の内周縁)に係止する。よって、この膨出部4gが留め部4bとなる。
【0034】
この膨出部4gが、上述した段部3a付き貫通孔3(変形例2)内に挿入可能な直径に形成された際には、側面視において試験管4は貫通孔3の内周部(内周壁の孔軸方向の中途部)と上下2段で接触する(接触点Pをもつ)こととなる(図6(b)中の仮想線参照)。このように上下に接触点Pをもつことで、接触点Pが1段の場合よりも斜めに倒れにくく、持ち運び時等に試験管4がより安定する。
【0035】
図6(c)に示す如く、試験管4は、高さ方向の中途部から上部に向けて大径となる段部4hを備えていてもよく、大径部分が表孔径S1より大径の場合、段部4hは、板部材2の表面2a(貫通孔3の内周上縁周辺)に係止(面接触)する。よって、この段部4hが、貫通孔3の内周部に係止する留め部4bといえる。なお、図6(c)では、変形例1であるテーパ状貫通孔3を用いている。
【0036】
さらには、テーパ状試験管4を、表孔径S1>裏孔径S2である貫通孔3へ板部材2の裏面2b側から挿入した場合には、表面2a側から挿入した場合よりも挿入深さが浅くなる。
また、図6(b)中の仮想線で示すように、表面2a側から挿入した試験管4の留め部4bが貫通孔3内周の中途部で係止する場合には、裏面2b側から挿入すると、貫通孔3の内周下縁で係止するため、挿入深さに違いがでる。
【0037】
この挿入深さの違いを利用すれば、ウォーターバス5内の水浴時に水面上に露出する所定長さ等を選択可能となる。なお、板部材2の表裏は、記入スペース11の有無で判断できる。なお、貫通孔3の孔径Sは、表孔径S1<裏孔径S2であってもよい。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
また、その他の実施形態として、板部材2の板厚Wを、試験管4の内底面4cを、例えば斜め約45度上方(図2中の矢印E参照)から視認可能となるように形成してもよい。
【0038】
つまり、支持具1で起立した状態の試験管4内の検体を確認する場合、試験管4上部のキャップ4dをかわすために、試験管4の内底を斜め上方からのぞき込む必要がある。
斜め上方から内底面4cを視認可能な板厚Wの板部材2であれば、試験管4が貫通孔3内で起立状態であっても、試験管4の底部(もしくは下半分)が隠れることはなく、斜め上方から試験管4の内底面4cをのぞき込んで、検体の分量、有無や色チェック等の状態確認ができる。
【0039】
なお、視認角度は約45度で十分といえるが、45度より小さい角度で視認する場合は、視認角度45度における板厚Wより、さらに薄くすればよい。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
なお、本発明は前記実施形態における各部材の形状は、図1〜6に示すように構成することが最良である。しかし、前記実施形態に限定されるものではなく、部材、構成を種々変形したり、組み合わせを変更したりすることもできる。
【0040】
試料管4は、液状の検体を入れる試験管に限らず、バイアルや、チューブ等であってもよい。
板部材2は、発泡スチロール製でなくとも、発泡状又は多孔質状に成形されたポリウレタン、ポリオレフィン等の合成樹脂(プラスチック)等であればよく、さらには、木製など、水(保温作業で水浴時に用いる液体を含む)に浮く素材であればよい。
【符号の説明】
【0041】
1 試料管の支持具
2 板部材
2a 板部材の表面
2b 板部材の裏面
3 貫通孔
4 試料管(試験管)
4a 接地底面
4b 留め部
4c 内底面
5 ウォーターバス
O 支点
W 板部材の板厚
S1 板部材表面の貫通孔の孔径(表孔径)
S2 板部材裏面の貫通孔の孔径(裏孔径)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地底面(4a)で自立可能で且つこの接地底面(4a)より大径な留め部(4b)を高さ方向の中途部に備えた断面円形の試料管(4)を支持する試料管の支持具であって、
板部材(2)に前記試料管(4)の起立姿勢を支持する円形の貫通孔(3)が所定間隔ごとに複数穿設されていて、この貫通孔(3)に接地底面(4a)側から挿入された試料管(4)の留め部(4b)を貫通孔(3)の内周部で係止し、
前記板部材(2)は、前記貫通孔(3)内で試料管(4)が接地底面(4a)縁を支点(O)として傾いた場合にこの支点(O)とは反対側の試料管(4)の接地底面(4a)縁が持ち上がって貫通孔(3)の内周壁に当接可能な板厚(W)に形成されていることを特徴とする試料管の支持具。
【請求項2】
前記板部材(2)は、ウォーターバス(5)内で水浴可能な形状に且つ水に浮く素材で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の試料管の支持具。
【請求項3】
前記貫通孔(3)は、前記板部材(2)の表面(2a)側に露出した孔径(S1)と裏面(2b)側に露出した孔径(S2)とが同じ又は異なるように形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の試料管の支持具。
【請求項4】
前記板部材(2)は、前記試料管(4)の内底面(4c)を斜め上方から視認可能な板厚(W)に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の試料管の支持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−230096(P2011−230096A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105353(P2010−105353)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(503174969)株式会社アテクト (14)
【Fターム(参考)】