説明

試験装置及び試験プログラム

【課題】使用する測定器に変更が生じたときのプログラム修正量を低減するようにした試験装置及び試験プログラムを提供する。
【解決手段】制御器で実行される試験プログラム(10)が、試験手順を記述すると共に当該試験手順に応じて第1の制御コマンドを生成する試験制御処理部(12)と、試験制御処理部(12)で生成された第1の制御コマンドに基づいて測定器に対応した第2の制御コマンドを生成する測定器群ドライバ(13-n)と、第2の制御コマンドに従って測定器の動作を制御する測定器ドライバ(13n-N)とを備えるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験装置及び試験プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
試験手順に従って測定器の動作を制御し、試験対象である電子機器の出力信号を測定する試験装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−292723号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
試験に使用する測定器は、廃盤などの理由により、同様な機能を有する他の測定器に変更される場合がある。変更前の測定器と変更後の測定器に互換性があれば変更前の測定器に対して使用していた試験プログラムを変更後の測定器に対してそのまま使用できるが、互換性のない場合は試験プログラムを作成し直す必要があり、作業量の増加とコストアップを招いていた。
【0004】
従って本発明の目的は上記した課題を解決し、使用する測定器に変更や追加が生じたときのプログラム修正量を低減するようにした試験装置及び試験プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するため、本発明に係る試験装置にあっては、試験対象である電子機器の出力信号を測定する測定器と、試験手順が記述された試験プログラムを実行して前記測定器の動作を制御する制御器と、を備える試験装置であって、前記試験プログラムは、前記試験手順を記述すると共に当該試験手順に応じて第1の制御コマンドを生成する試験制御処理部と、前記試験制御処理部で生成された第1の制御コマンドに基づいて前記測定器に対応した第2の制御コマンドを生成する測定器群ドライバと、前記第2の制御コマンドに従って前記測定器の動作を制御する測定器ドライバと、を備えるように構成した。
【0006】
また、上記した課題を解決するため、本発明に係る試験プログラムにあっては、記述された試験手順に従って測定器の動作を制御する制御器としてコンピュータを機能させる試験プログラムであって、前記試験手順を記述すると共に当該試験手順に応じて第1の制御コマンドを生成する試験制御処理部と、前記試験制御処理部で生成された第1の制御コマンドに基づいて前記測定器に対応した第2の制御コマンドを生成する測定器群ドライバと、前記第2の制御コマンドに従って前記測定器の動作を制御する測定器ドライバと、を備えるように構成した。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る試験装置にあっては、測定器の動作を制御する制御器で実行される試験プログラムが、試験手順を記述すると共に当該試験手順に応じて第1の制御コマンドを生成する試験制御処理部と、試験制御処理部で生成された第1の制御コマンドに基づいて測定器に対応した第2の制御コマンドを生成する測定器群ドライバと、第2の制御コマンドに従って測定器の動作を制御する測定器ドライバとを備えるように構成したので、測定器の変更が生じた場合であっても、試験手順を記述した試験制御処理部の修正は不要である。従って、使用する測定器に変更や追加が生じたときのプログラム修正量を低減することができる。
【0008】
また、本発明に係る試験プログラムにあっては、試験手順を記述すると共に当該試験手順に応じて第1の制御コマンドを生成する試験制御処理部と、試験制御処理部で生成された第1の制御コマンドに基づいて前記測定器に対応した第2の制御コマンドを生成する測定器群ドライバと、前記第2の制御コマンドに従って前記測定器の動作を制御する測定器ドライバとを備えるように構成したので、測定器の変更が生じた場合であっても、試験手順を記述した試験制御処理部の修正は不要である。従って、使用する測定器に変更や追加が生じたときのプログラム修正量を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る試験装置及び試験プログラムを実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本発明に係る試験装置の構成を示すブロック図である。図1において、符号1は試験装置を表す。試験装置1は、無線機等の被試験器(試験対象である電子機器)2について予め決められた試験手順で自動的に試験を行い、試験で得た測定値に基づいて被試験器2の動作が正常であるか否かを判定する。
【0011】
試験装置1は、装置全体の制御や測定値の良否判定等を行う制御器(コンピュータ)3と、被試験器2から出力される出力信号を測定する測定器4-n(nは自然数)と、被試験器2と測定器4-n間の測定経路の切替えを行う切替器5と、制御器3からの指示に従って被試験器2に対して測定条件等を設定する被試験用コントローラ(コンピュータ)6とを備えている。測定器4-nは、例えば基準信号を発生する基準信号発生器や信号の位相を検波する位相検波器など、被測定器の種別に関わらず広く使用される汎用測定器や、特定の被試験器に対してのみ使用する専用測定器からなる。
【0012】
制御器3は、CPU(Central Processing Unit)7と、記憶部8と、表示部9とを有する。記憶部8には被試験器2の試験手順が記述された試験プログラム等が記憶される。記憶部8に記憶された試験プログラムはCPU7に読み込まれて実行される。表示部9にはCPU7で実行される試験プログラムの処理に応じ、被試験器や試験項目、測定結果等の試験情報が表示される。
【0013】
続いて、試験装置1によって行われる被試験器2の試験動作について説明する。制御器3のCPU7にて試験プログラムが実行されると、表示部9に被試験器2や試験項目に関係する情報が表示される。試験装置1の操作者は、図示しないマウス等の入力装置を用い、実行する試験項目の選択や試験実行の指示を行う。制御器3は、操作者から入力された各種指示に従って試験プログラムを実行し、測定器4-n、切替器5、被試験用コントローラ6に対して制御信号を出力する。
【0014】
制御器3による各構成の制御について具体的に説明する。制御器3は、被試験用コントローラ6に対して被試験器2の測定条件等の設定指示を出力する。被試験用コントローラ6は、制御器3からの指示に従って被試験器2に対して設定信号を出力し、被試験器2を上記測定条件に対応した状態に設定する。また、制御器3は、試験手順に従って切替部5の動作を制御し、被試験器2に接続される測定器4-nの切替(経路切替)を行うと共に、測定器4-nの動作の制御(設定等)を行う。測定器4-nは、制御器3からの指示に従って被試験器2に対して試験信号を出力すると共に、被試験器2から出力された試験信号を測定する。測定器4-nで得られた測定値は制御器3に送られる。制御器3は、その測定値を閾値と比較することによって測定値の良否判定、即ち、被試験器2の動作が正常であるか否かの判定を行うと共に、測定値と判定結果を表示部9に表示する。以上の動作は試験プログラムに従って全て自動的に行われる。
【0015】
次いで、上記した試験プログラムの構造について説明する。図2は試験プログラムの構造を示すブロック図である。
【0016】
図2に示すように、試験プログラム10は操作表示部11と、試験制御処理部12と、測定器ドライバ部13とから構成される。操作表示部11は、表示部9に対する試験情報等の表示処理や、操作者によって入力された各種指示の受付処理を行う。操作表示部11は、受付けた各種指示に応じた処理指令を生成して試験制御処理部12に出力する。
【0017】
試験制御処理部12は、複数の被試験器別処理部12-n(nは自然数)を有する。各被試験器別処理部12-nには、被試験器2毎の試験手順が記述されている。ここで試験手順には、上記した経路切替、測定器4-nの動作制御、被試験器2の測定条件設定が含まれる。
【0018】
試験制御処理部12は、操作表示部11から出力された処理指令に従い、試験対象である被試験器2に対応する被試験器別処理部12-nの処理を実行する。被試験器別処理部12-nは、試験手順に応じた処理指令を生成する。ここで、被試験器別処理部12-nで生成された処理指令のうち、測定器4-nに対する処理指令を「第1の制御コマンド」と呼ぶ。
【0019】
第1の制御コマンドは、測定器ドライバ部13に出力される。測定器ドライバ部13は、測定器群ドライバ13-n(nは自然数)と、測定器ドライバ13n-N(n,Nは自然数)とを有する。測定器ドライバ13n-Nは、測定器毎に設けられた専用のドライバである。測定器群ドライバ13-nは、同様な機能を有する異なる測定器(測定器群)を制御するためのドライバであり、測定器ドライバ13n-Nの上位に位置する。
【0020】
上述した第1の制御コマンドは測定器群ドライバ13-nに入力される。測定器群ドライバ13-nは、入力した第1の制御コマンドに基づき、使用する測定器4-n(測定器ドライバ13n-N)に対応した第2の制御コマンドを生成する。測定器群ドライバ13-nで生成された第2の制御コマンドは測定器ドライバ13n-Nに出力される。測定器ドライバ13n-Nは、入力した第2の制御コマンドに従って測定器4-nの動作を制御する。
【0021】
ここで第1の制御コマンドは、使用する測定器に依存しない記述とされる一方、第2の制御コマンドは使用する測定器に対応する記述とされる。これについて図3を参照して説明する。図3は、被試験器別処理部12‐nから測定器ドライバ13n-Nまでの処理の流れを示すシーケンス図である。同図では、図2に示す被試験器別処理部12-1、測定器群ドライバ13-1、測定器ドライバ131-1,131-2を使用し、同様な機能を有する異なる測定器に対して同様な動作を行わせる場合の処理の一致点と相違点を例示している。図3では便宜上、測定器ドライバ131-1を用いる測定器を「変更前」とし、測定器ドライバ131-2を用いる測定器を「変更後」とする。
【0022】
図3に示すように、被試験器別処理部121は、記述された試験手順に従って処理指令として「レベル設定(0.5V)」を示す第1の制御コマンドを生成して出力したとする。前述のように、第1の制御コマンドは使用する測定器に依存しない記述とされるため、測定器ドライバ131-1を使用する場合も測定器ドライバ131-2を測定する場合も測定器群ドライバ13-1には同一の制御コマンドが入力される。
【0023】
「レベル設定(0.5V)」を示す第1の制御コマンドを入力した測定器群ドライバ13-1は、測定器ドライバ131-1を使用する場合は当該ドライバ(測定器)に対応した第2の制御コマンド「レベル0.5V設定」を生成し、当該コマンドを測定器ドライバ131-1に出力する。
【0024】
これに対し、測定器ドライバ131-2を使用する場合は、測定器群ドライバ13-1は当該ドライバ(測定器)に対応した第2の制御コマンド「レベル−6dBV設定」を生成し、当該コマンドを測定器ドライバ131-2に出力する。
【0025】
また、被試験器別処理部12-1から「測定結果要求」を示す第1の制御コマンドが出力されたとする。ここで、測定器ドライバ131-1が用いられる測定器は測定モードが一つなのに対し、測定器ドライバ131-2が用いられる測定器は測定モードが複数有るとする。測定ドライバ131-1を使用する場合、測定器群ドライバ13-1は「データ取得要求」を示す第2の制御コマンドを測定器ドライバ131-1に直ちに出力する。「データ取得要求」を示す第2の制御コマンドを入力した測定器ドライバ131-1は、測定器の動作を制御して測定値を取得する。取得した測定値を表すデータは、測定器ドライバ131-1から測定器群ドライバ13-1を経由して被試験器別処理部12-1に入力される。
【0026】
これに対し、測定器ドライバ131-2を使用する場合、測定器群ドライバ13-1は「データ取得要求」を示す第2の制御コマンドの出力に先立ち、「測定モード設定」を示す第2の制御コマンドを測定器ドライバ131-2に出力する。その後は測定器ドライバ131-1を使用する場合と同様の処理が実行される。
【0027】
このように、測定器が変更(または追加)されると、得たい測定データが同一であったとしても、制御器から測定器ドライバに与えるべき制御コマンドに相違が生じる場合がある。そこで本発明にあっては、上記の如く、制御器3で実行される試験プログラム10が、試験手順を記述すると共に当該試験手順に応じて第1の制御コマンドを生成する試験制御処理部12と、試験制御処理部12で生成された第1の制御コマンドに基づいて測定器4-nに対応した第2の制御コマンドを生成する測定器群ドライバ13-nと、第2の制御コマンドに従って測定器4-nの動作を制御する測定器ドライバ13n-Nとを備えるように構成した。
【0028】
これにより、測定器の変更が生じて測定器ドライバを追加する必要が生じた場合であっても(即ち変更前後の測定器に互換性がない場合であっても)、測定器群ドライバ13-nに変更後の測定器の分岐処理を付加することで変更前後の制御コマンドの差分(具体的には測定単位や測定手順等)を吸収でき、試験制御処理部12の変更は不要となる。従って、測定器の変更に伴う試験プログラムの修正量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る試験装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す装置で使用する試験プログラムの構造を表すブロック図である。
【図3】図2に示す被試験器別処理部から測定器ドライバまでの処理の流れを表すシーケンス図である。
【符号の説明】
【0030】
1:試験装置、2:被試験器、3:制御器(コンピュータ)、4‐n:測定器、10:試験プログラム、12:試験制御処理部、13-n:測定器群ドライバ、13n-N:測定器ドライバ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験対象である電子機器の出力信号を測定する測定器と、
試験手順が記述された試験プログラムを実行して前記測定器の動作を制御する制御器と、
を備える試験装置であって、
前記試験プログラムは、
前記試験手順を記述すると共に当該試験手順に応じて第1の制御コマンドを生成する試験制御処理部と、
前記試験制御処理部で生成された第1の制御コマンドに基づいて前記測定器に対応した第2の制御コマンドを生成する測定器群ドライバと、
前記第2の制御コマンドに従って前記測定器の動作を制御する測定器ドライバと、
を備えることを特徴とする試験装置。
【請求項2】
記述された試験手順に従って測定器の動作を制御する制御器としてコンピュータを機能させる試験プログラムであって、
前記試験手順を記述すると共に当該試験手順に応じて第1の制御コマンドを生成する試験制御処理部と、
前記試験制御処理部で生成された第1の制御コマンドに基づいて前記測定器に対応した第2の制御コマンドを生成する測定器群ドライバと、
前記第2の制御コマンドに従って前記測定器の動作を制御する測定器ドライバと、
を備えることを特徴とする試験プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−25590(P2010−25590A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184178(P2008−184178)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】