説明

誘導加熱装置

【目的】 この発明は、ストリップの突き合わせレーザビーム溶接部分を温度ムラがなく均一に加熱できる誘導加熱装置を得ることを目的とする。
【構成】 ストリップ1の突き合わせ溶接部分1aをインダクタ2と鉄心16でクランプしながら誘導加熱できるようにし、インダクタ2の前後にクランプ手段を配置した。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、誘導加熱装置に関し、もう少し詳しくいうと、ストリップの端部をレーザビームにより溶接した後、溶接部分を焼なましするための誘導加熱装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図2は、例えば、特開昭64−53770号公報に示された従来のストリップの端部を溶接した後、溶接部分を焼なましする誘導加熱装置の断面図であり、図において、1はレーザビームで溶接されたストリップ、1aはその溶接部分を示す。2は凹型鉄心を有するインダクタで、ストリップ1の溶接部分1aと同方向に配置されている。3は入側上部クランパで、シリンダ11により昇降される。シリンダ11は片側をフレーム13に固定されている。4は入側下部クランパである。5は出側上部クランパで、シリンダ12により昇降される。シリンダ12は片側をフレーム13に固定されている。6は出側下部クランパを示す。次にインダクタ2の内部は、凹型鉄心8内に埋設された銅管7に高周波電流を流し、銅管7の内部には冷却水を流している。絶縁物9を介して設けられた銅管10には銅管7の戻りの高周波電流を流している。
【0003】銅管7に高周波電流を流すと、凹型鉄心8とストリップ1との間をまわる磁束が発生し、ストリップ1は誘導加熱されるが、この磁束は、銅管7に近い磁束14aほど強く、遠ざかる磁束14bほど弱くなる。以上の構成により、レーザビーム突き合わせ溶接されたストリップ1の溶接部分1aのセンターに合わせて、凹型鉄心8を有するインダクタ2を配置し、入側上部クランパ3と入側下部クランパ4とでストリップ1をクランプし、同様に出側のクランパ5と出側下部クランパ6とでストリップ1をクランプした後、誘導加熱を行い、ストリップの溶接部分1aを焼なまししていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の誘導加熱装置は以上のように構成されているので、ストリップ材をクランプして誘導加熱した場合、加熱時にストリップ材の熱変形による波打ちが生じる。図3は加熱時に生じるストリップ1の波打ちを示した断面図である。このように、ストリップ材に波打ちが生じるとインダクタ2に近くなった部分は強い磁束側に近づくため、誘導加熱されやすく、高温となる。インダクタから遠くなった部分は、弱い磁束側になるため、誘導加熱されにくく、温度が低下する。こうして、ストリップの溶接部の加熱温度にムラが生じ、焼なましの品質が悪くなるという問題点があった。
【0005】この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、ストリップの突き合わせレーザビーム溶接部分を温度ムラがなく均一に加熱することができる誘導加熱装置を得ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明に係る誘導加熱装置は、ストリップの突き合わせレーザビーム溶接した後に、ストリップ幅よりも長い凹型鉄心を有するインダクタをストリップの溶接部分と同方向に配置し、上記インダクタと対向して鉄心を配置し、かつ、上記インダクタと上記鉄心とで、ストリップ溶接部分を絶縁物を介在してクランプしつつ誘導加熱できるようにし、さらに、上記インダクタの前後にストリップ曲がり矯正用のクランパ装置を配置したものである。
【0007】
【作用】この発明においては、ストリップの突き合わせ溶接部分をインダクタと鉄心とでクランプしながら誘導加熱できるようにしたため、加熱中にストリップが曲がったり、波打つことがなくなり、ストリップの突き合わせ溶接部分を均一に誘導加熱する。さらに、インダクタの前後にクランパを配置したため、ストリップの強固な曲がり癖も矯正する。
【0008】
【実施例】以下、この発明の一実施例を図1について説明する。図において、凹型鉄心を有するインダクタ2は絶縁物15を介してストリップ1の溶接部分1aと同方向に配置されている。16は鉄心で、絶縁物17を介してインダクタ2に対向して配置されている。鉄心16を昇降させるシリンダ18はフレーム13に片端を固定されている。その他、図2におけると同一符号は同一部分を示している。
【0009】次に動作について説明する。レーザビームによる突き合わせ溶接したストリップ1の溶接部分のセンターに合わせて、凹型鉄心を有するインダクタ2と、インダクタ2に対向して設けた鉄心16とで、ストリップ1をクランプして、高周波電流を銅管7,10に流し、ストリップ1の溶接部分1aを誘導加熱する。さらに、ストリップ1の板厚が厚くなると、ストリップ1の曲がり癖が強固なものとなり、インダクタ2と鉄心16のクランプだけではストリップ1の曲がり癖を矯正できない場合があるため、入側上部クランパ3と入側下部クランパ4とで、ストリップ1をクランプし、同様に、出側上部クランパ5と出側下部クランパ6とでストリップ1をクランプすることにより、板厚の厚いストリップの曲がり癖を矯正することができる。
【0010】
【発明の効果】以上のように、この発明によれば、ストリップの突き合わせ溶接部分をインダクタと鉄心でクランプしながら誘導加熱できるようにし、インダクタの前後にクランプ機構を配置したので、加熱中にストリップが曲がったり、波打つことがなくなり、ストリップの突き合わせ溶接部分を均一に誘導加熱することができ、精度の高い焼なまし効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例の正断面図である。
【図2】従来の誘導加熱装置の側断面図である。
【図3】作用説明のための図2の拡大断面図である。
【符号の説明】
1 ストリップ
2 インダクタ
3 入側上部クランパ
4 入側下部クランパ
5 出側上部クランパ
6 出側下部クランパ
16 鉄心

【特許請求の範囲】
【請求項1】 突き合わせレーザビーム溶接した後のストリップの溶接部分と同一方向に配置され前記ストリップの幅より長い凹型鉄心を有する誘導加熱用のインダクタと、このインダクタと対向して配置され前記インダクタとともに前記ストリップの溶接部分を絶縁物を介してクランプする鉄心と、前記インダクタの前後に配置され溶接された前記ストリップをクランプするクランプ手段とを備えてなる誘導加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開平6−210470
【公開日】平成6年(1994)8月2日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−239053
【出願日】平成3年(1991)9月19日
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)