説明

誘電体材料の電荷を変更するための装置及び方法

誘電体材料の電荷を変更する方法は、少なくとも微弱な導電性液体を、誘電体材料の少なくとも一部分に塗布する工程を含む。次に、この液体を誘電体材料から少なくとも部分的に除去し、実質的に均一な帯電を誘電体材料の少なくとも一部分上に残す。いくつかの方法は、正味で中性かつ完全に中性の誘電体材料を提供する。他の方法は、後続の処理工程に使用する電荷パターンを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリマーウェブなどの誘電体材料の電荷を中性化する又は変更するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
中性化
ウェブ(例、ポリマーウェブ)上の帯電は、ウェブが様々なローラー、バー、及び他のウェブ処理機器の上及び周囲を移動するウェブ処理工程において頻繁に発生する。ウェブ上の帯電が多くの原因から生じることがあり、様々なロール及び機器とウェブとの接触及び遊離、フィルムのロールの巻き出し/巻取り、電子ビーム又はコロナ処理(交流又は直流)へのウェブの曝露が挙げられる。ウェブ内/ウェブ上の電荷は、キャスト成形中のフィルムの静電ピン止め処理のような先行する工程からも存在する場合がある。ウェブ上の帯電は、精密なコーティングの領域では有害となる恐れがあるが、それはスパーク着火の危険性のためだけではなく、これらの帯電が、続いてコーティングされる液体層の崩壊を引き起こして、望ましくないパターンを形成する場合があるためである。(例えば、「Coating & Drying Defects」,Gutoff and Cohen,Wiley,NY,1995を参照)。不均一な電荷パターンばかりでなく、均一な電荷も、コーティング欠陥を発生させる場合がある。
【0003】
例えば写真業界では、ランダムに帯電したウェブに写真コーティング材料が塗布されると、その写真コーティング材料の厚さ分布に顕著な不均一性が頻繁に生じる。写真フィルムにはポリエステル系材料などのような、表面抵抗率が高い高誘電体材料が使用されるため、様々な強度及び極性の比較的高い帯電が、互いに近接してウェブ領域を占有することは、かなり一般的である。例えば、写真ポジ又はネガの構成要素としてそのようなコーティング材料を使用すると、ウェブ全体に少なくとも必要最低限の厚さのコーティングを供給することにより、そのような不均一な厚さ分布を補正するためには、比較的厚いコーティングの使用がしばしば必要とされ、これは必然的に、有効なコーティング厚さを作り出すために、比較的高価な写真コーティング材料の使用量が増加する結果となる。写真の斑点模様のような視覚的影響も、不均一に帯電したウェブに写真コーティング材料をコーティングした結果である。過去の実践例では、この不均一な電荷分布及びその不利益を容認するか、又は写真コーティング材料を塗布する前に、ランダムに帯電したウェブをできる限り中性化しようと試みるかのいずれかであった。
【0004】
帯電したウェブを中性化する様々な技法が知られている。
【0005】
米国特許第2,952,559号に記載されている1つの技法には、帯電したウェブを1対の対向する接地した加圧ローラー間に通過させ、拘束型又は分極型の帯電を中性化する目的のために、これらの圧力ローラーにより対向するウェブ表面に対してばね力バイアスをかけ、次にそのウェブの表面上にイオン化した空気を吹き付けて、まず表面電荷を中性化してから、同表面のコーティングに先立って、特定のウェブ表面電荷レベルに設定する、という工程が含まれる。結果として得られたこの表面電荷レベルは、実際のコーティング工程中に、ウェブの表面電荷の極性と逆の極性を有する電圧をコーティングアプリケータに印加することにより相殺される。
【0006】
別の技法としては米国特許第3,730,753号に記載されているものがあり、これは第1極性の帯電粒子でウェブ表面を「あふれさせる(flooding)」ことにより、その表面全体を均一に帯電させ、その後、そのウェブ表面に付与された電荷を除去することにより、その表面を全般に電荷のない状態にするという方法が含まれる。ウェブ表面に付加される電荷の量及び/又はウェブ表面から除去される電荷の量を制御して、その表面上の電荷の偏差及び正味の電荷を、許容可能なレベルまで下げることができる。
【0007】
上述の方法に加えて、
市販の中性化システム、例えば、イオン化した空気の源を供給する空気イオン化装置もある。空気は本来、イオンを含んでいる。しかしながらこのイオンの量は、静電気に敏感な機器を保護するために急速に帯電を中性化するには、多くの場合十分ではない。更に、クリーンルームにおいては空気中のイオンはHEPA及びULPAフィルタで除去されている。
【0008】
電気式静電気除去装置は、1つ以上の電極及び高圧電源からなる。電気式静電気除去装置により、高電圧電極周囲の空気中でイオンが生成される。これらのイオンはその後、材料上の静電荷に引き付けられて、その結果中性化が行われる。電気式静電気除去装置は、例えばMKS Ion Systems及びSimco(Illinois Tool Worksの子会社)など、様々な会社から市販されている。
【0009】
誘導式静電気除去装置は、材料上の静電荷に起因する電界に反応して、中性化イオンが生成される受動装置である。一般的な誘導式静電気除去装置の例として、STATIC STRING(商標)、ティンセル、針棒、及びブラシが挙げられる。
【0010】
核式静電気除去装置は、空気分子の放射線照射によりイオンを生成する。多くのモデルでは、イオン対を生成するのにアルファ粒子を放出する放射性同位元素を用いて、帯電の中性化が行われる。これはしばしば核部材とも呼ばれる。
【0011】
これら市販の中性化システムはそれぞれ、正味で中性化された(即ち、当初にかなり帯電していたとすると、一般的な静電気測定器によって計測された電界の強度が、その当初よりもかなり低くなっている)ウェブを得る手段を提供する。しかしながら、正味で中性化されたこのウェブは、依然としてかなりの電荷を有することがある。
【0012】
誘電体上の静電荷を中性化する液体の使用についても言及されてきた。誘電体材料を、接地経路を備えた少なくとも微弱な導電性流体に曝露して電荷を中性化する基本理念は、既存の論文において言及されてきた(例えば、J.Lowell and A.C.Rose−Innes,Advances in Physics,1980,Vol.29,No.6,947〜1023の956頁を参照)。例えば、米国特許第6,176,245(B1)号では、前側スロットで洗浄溶液を除去し、後側スロットからアンダーコートを供給するウェブ洗浄及び除電装置が記載されている。アンダーコートは、特に前側スロットでの洗浄溶液の掻き取りによって生成した帯電を除去するために塗布される。米国特許第6,176,245(B1)号では、除電アンダーコートの電気的導電性についての明示的な要求はなされていないが、米国特許第6,176,245(B1)号における実施例では、弱導電性溶液であるメチルエチルケトンを88%含む溶液が記載されていた。また、米国特許第6,176,245(B1)号では、この液体が接地経路を備えなければならないことは明示的に述べられていないが、実験で使用したスロット付ウェブ洗浄及び除電装置が、金属のような導電材料で作製されていた可能性がある。この装置で処理されるのは、ウェブの洗浄溶液が除去される面と同じ面に限られる。この装置を使用して修復される電荷分布の型に関する考察はなされていない。
【0013】
米国特許第6,231,679(B1)号では、同第6,176,245(B1)号に記載された装置と類似の装置を用いた工程が記載されている。米国特許第6,176,245(B1)号と同様に、流体の導電性又は接地経路の要件についての論考はない。この装置を使用して修復される電荷分布の型に関する考察はなされていない。
【0014】
更に前の米国特許第2,967,119号では、超音波処理工程及び装置が記載されており、これは連続するフィルムを超音波洗浄し、非蒸発性乾燥(例えば、残存流体をナイフで削り落とす)するために使用することができる。米国特許第2,967,119号の目的はフィルムの洗浄であるが、同第2,967,119号は、この乾燥機作業の更なる特徴として、フィルムが帯電することなく乾燥機から離脱する点を教示している。この帯電防止効果は、いくつかの請求項に加えられており、常に非蒸発性乾燥工程と関連付けられている。米国特許第2,967,119号では、流体の導電性の必要レベルについての洞察はなく、除電が超音波槽内ではなく、むしろ実際には乾燥機内で起こることを確認できるデータも示されていない。更に、米国特許第2,967,119号では、それらの工程及び装置で対処される電荷分布の型については特定されていない。
【0015】
米国特許第6,176,245(B1)号、同第6,231,679(B1)号、及び同第2,967,119号では、中性化を達成するための液体の使用について記載されているが、両面又は二極性の電荷分布を対象とするものではない。
【0016】
無視できない静電荷分布を除去するための市販の方法。これらの電荷分布は最終製品に重大な欠陥をもたらす場合がある。
【0017】
誘電体表面上の一定パターンの電荷分布の生成。
【0018】
基材上の電荷パターンは、電荷パターンへの材料の付着を制御するために使用可能である。「ゼロックス」方式は、このプロセスのよく知られている例である。ゼロックス方式では、光導電シリンダーが均一に帯電している。次に、光を使用し、この光導電体の面を一定の静電荷パターンを残して放電させる。次に、トナー粒子がこの光導電体上の帯電領域に優先的に引き付けられ、光導電シリンダー上にトナーのパターンが作り出される。このトナーパターンは、次に別の基材(紙など)に転写され、融着して完成品上に像が定着する。このゼロックス方式には様々な変更態様があり、コピー機及びレーザープリンターに応用されてきた。しかしながら、これら従来のゼログラフィーは、電荷拡散(線のぼやけ)及び電荷減衰が生じ易く、マイクロメートル以下の長さスケールでは堅牢な電荷パターンが形成することができない光導電体に依存している。
【0019】
光導電体の限界を克服しようと試みる中で、マイクロ及びナノ電荷パターンを基材に直接生成する方法が開発されてきた。こうした微細な電荷パターンは、粒子の付着を誘導してマイクロ又はナノスケールの形状を基材上に生成するために引き続き使用できる。例えば、University of MinnesotaのHeiko Jacobらのグループは、その一連の刊行物(C.R.Barry,J.Gu,and H.O.Jacobs,Nano Letters5(10)(2005)2078、H.O.Jacobs and C.Barry、特許出願第US20050123687(A1)号)の中で、「ナノゼログラフィー」を使用し、エレクトレット基材上に銀のナノ粒子を付着させて微細な電荷パターンを作り出している。その研究では、帯電した器具を直接接触させることで、そのような電荷パターンを実現している。この器具は、リソグラフィを使用してシリコン上に作り出され、金メッキにより導電性になっていた。執筆者らは、シリコンスタンプ形状は10nmの小ささまで作り出すことができ、それにより100ミクロン以下の単位のパターン形成能力が見込まれるであろうと主張している。
【0020】
「マイクロゼログラフィー」及び「ナノゼログラフィー」を含むすべてのゼログラフィー方式は、制御された電荷パターンを基材上に生成する能力に依存している。直接接触帯電処理を通じてマイクロ及びナノスケールで電荷パターンを生成する、報告されている方法としては、原子間力顕微鏡プローブの使用(P.Mesquida,A.Stemmer,Adv.Mater.13(18)(2001)1395;N.Naujoks,A.Stemmer,Microelectronic Engineering 78〜79(2005)331)、ステンレス鋼針の使用(T.J.Krinke et al,App.Phys.Letters78(2001)3708)、又はナノスタンプの使用(C.R.Barry,N.Z.Lwin,W.Zheng,and H.O.Jacobs,App.Phys.Letters,83(26)(2003)5527)が挙げられる。これらの直接接触方法に加えて、マイクロ及びナノスケールの電荷パターンは、集束イオン及び電子ビームを使用することでも生成されてきた(H.Fudouzi et al,Langmuir 18(2002)7648)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上述の制御された電荷パターンの生成方法は、光導電体材料の帯電及び放電に依存する、標準的なゼログラフィー技法の形状寸法の限界について対処可能であった。しかしながら、これら上述の方法は、文献に示された微細で鮮明な形状を得るためには、一般に極めて長い時間、及び/又は特別な基材(例、エレクトレット)の使用を必要とする。
【0022】
ナノ及びマイクロゼログラフィーの分野における別の課題は、最終的なパターンの基材への接着性である。上述の背景技術は、誘電体(又はエレクトレット)基材上に電荷パターンを配置する方法を提供し、これは次いで第2材料の付着を誘導するために使用し得る。一旦、第2材料(即ち、ナノ粒子)が付着すれば、接着性の問題に対処しなければならない。例えば、これは熱及び/又は圧力によってなされてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本開示は、誘電体材料上の電荷分布を除去又は修正する装置及び方法を目的とする。いくつかの実施形態では、本開示の装置及び方法は、誘電体材料上の電荷分布を、少なくとも微弱な導電性で規定の電位に保たれた液体に、その誘電体(例、ウェブ)の表面の少なくとも一部分又は表面を接触させることにより修正する。
【0024】
1つの態様では、誘電体材料上の電荷を修正する方法であり、この方法は、実質的に不均一な帯電分布を表面上に有する誘電体材料を得る工程であって、この帯電分布は接地電位に対して測定されている工程と、誘電体材料の表面に少なくとも微弱な導電性液体を塗布する工程と、その少なくとも微弱な導電性液体を表面から少なくとも部分的に除去し、実質的に均一な帯電を表面上に残す工程と、を含む。
【0025】
別の態様は、誘電体材料上に帯電パターンを生成する方法であり、この方法は、第1帯電電位を有する誘電体材料を得る工程と、少なくとも微弱な導電性液体を誘電体材料の第1部分に塗布する工程であって、この少なくとも微弱な導電性液体は第2帯電電位を有する、工程と、この液体を誘電体材料の第1部分から少なくとも部分的に除去し、実質的に均一な帯電を誘電体材料の第1部分上に残す工程と、を含む。
【0026】
更に別の態様は、誘電体材料の細長いウェブを中性化する方法であり、この方法は、少なくとも微弱な導電性液体を接地電位と電気的に結合させる工程と、接地電位と完全には実質的に等しくはない帯電電位を有する誘電体材料を得る工程と、この連続ウェブの一部分を液体に浸漬し、細長いウェブのその部分を完全に覆って、細長いウェブ上の電荷を中性化する工程と、連続ウェブの部分を液体から取り出す工程と、浸漬後に連続ウェブから液体を少なくとも部分的に乾燥させる工程と、を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、液体は、誘電体ウェブの両方の面に同時に均一に接触している間は接地電位に保たれている一般的な溶媒である。次にこの溶媒は、非蒸発及び/又は蒸発の手段を用いてウェブの2つの面から対称的に除去される。これらの実施形態では、最終的なウェブは、正味で中性であるだけではなく、通常は両面が中性でもある。
【0028】
いくつかの実施形態では、液体は、効果的に接地している少なくとも微弱な導電性の第2面を有する誘電体ウェブの第1面に均一に接触している間は、接地電位に保たれている一般的な溶媒である。次にこの溶媒は、非蒸発及び/又は蒸発の手段を用いてウェブの第1面から対称的に除去される。これらの実施形態では、最終的なウェブは、正味で中性であるだけではなく、通常は両面も中性である。
【0029】
いくつかの実施形態では、液体は、誘電体ウェブの両方の面に同時に均一に接触している間は非ゼロ電位に保たれている一般的な溶媒である。次にこの溶媒は、非蒸発及び/又は蒸発の手段を用いてウェブの2つの面から対称的に除去される。これらの実施形態では、最終的なウェブの両方の面が全般的に均一に帯電している。
【0030】
いくつかの実施形態では、液体は、誘電体ウェブの第1面に均一に接触している間は非ゼロ電位に保たれている一般的な溶媒であり、このウェブの第2面は少なくとも微弱な導電性で、効果的に接地している。次にこの溶媒は、非蒸発及び/又は蒸発の手段を用いてウェブの第1面から対称的に除去される。これらの実施形態では、最終的なウェブの第1面は全般的に均一に帯電している。
【0031】
いくつかの実施形態では、第1電位に保たれた第1液体は誘電体ウェブの第1面に均一に接触させられ、一方、誘電体ウェブの第2面は、例えば第2電位に保たれた第2液体との接触により、第2電位に保たれる。次にこの溶媒は、非蒸発及び/又は蒸発の手段を用いてウェブの両方の面から対称的に除去される。これらの実施形態では、最終的なウェブは、正味で帯電しているだけではなく、通常は両面が帯電している。
【0032】
いくつかの実施形態では、第1電位に保たれた第1液体は誘電体ウェブの第1面に均一に接触させられ、一方、誘電体ウェブの第2面は、例えば導電性の物体との接触により、第2電位に保たれる。これらの実施形態では、最終的なウェブは、正味で帯電しているだけではなく、通常は両面が帯電している。
【0033】
いくつかの実施形態では、第1電位に保たれた第1液体は誘電体ウェブの第1面に不均一に接触させられ(例えば、パターン形成された器具の使用により)、一方、誘電体ウェブの第2面は、例えば第2電位に保たれた第2液体との接触により、第2電位に保たれる。次にこの溶媒は、非蒸発及び/又は蒸発の手段を用いてウェブの2つの面から除去される。これらの実施形態では、最終的なウェブは、正味の電荷パターンを有するだけではなく、通常は両面の電荷パターンも有する。
【0034】
いくつかの実施形態では、第1電位に保たれた第1液体は誘電体ウェブの第1面に不均一に接触させられ(例えば、パターン形成された器具の使用により)、一方、誘電体ウェブの第2面は、例えば導電性の物体との接触により、第2電位に保たれる。次にこの溶媒は、非蒸発及び/又は蒸発の手段を用いてウェブの第1面から除去される。これらの実施形態では、最終的なウェブは、正味の電荷パターンを有するだけではなく、通常は両面の電荷パターンも有する。
【0035】
いくつかの実施形態では、液体は、効果的に接地している少なくとも微弱な導電性の第2面を有する誘電体ウェブの第1面に不均一に接触している間は(例えば、パターン形成された器具の使用により)、接地電位に保たれている一般的な溶媒である。次にこの溶媒は、非蒸発及び/又は蒸発の手段を用いてウェブの第1面から除去される。これらの実施形態では、最終的なウェブは、通常、パターン形成された電荷分布をウェブの第1面上に有する。
【0036】
いくつかの実施形態では、液体は硬化性(例、アクリレート溶液)であり、除去されるのではなく所定の場所で硬化する。これらの実施形態では、最終的なウェブは、均一な電荷分布又はパターン形成された電荷分布のいずれかを一般に有するだけではなく、固化した材料が残留している。
【0037】
いくつかの実施形態では、本開示は、移動するウェブ上で電荷分布を除去又は修正する装置及び方法を目的とする。多くの実施形態では、本開示の装置及び方法は、正味で中性のウェブを提供する。これらの実施形態では、ウェブは正味で中性であるだけではなく、通常は両面が中性でもある。
【0038】
本開示により、本発明の装置及び方法は、中性化されるウェブを、少なくともある程度導電性の液体溶媒と接触させる。溶媒という言葉は、ウェブを湿潤させる液体を指すために使用され、必ずしもいずれか特定化学種の溶媒和を示すものではない。溶媒は、ウェブの両方の面に、普通は同時に接触させられる。溶媒は、浸漬(例えば、プール又は漕に浸す)、両方の面への同時コーティング、含浸させたウィック又は布をウェブの両方の面に同時に適用する方法、吸収/吸着又はウェブ表面上への蒸気の凝結、などの任意の好適な手段により塗布されてよい。次にこの溶媒は、蒸発及び/又は非蒸発手段を用いて、除去及び/又は乾燥される。非蒸発の手段としては、例えばウィック、エアナイフ、スキージなどの、少なくとも溶媒の一部を除去するための物理的装置の使用が挙げられる。加えて又はそれに代えて、溶媒の少なくとも一部は、蒸発によりウェブから除去されてよく、この蒸発は空気対流、加熱、その他の方法により促進されてよい。結果として得られる好適なウェブは、以下に定義するように、正味で中性化されていると共に両面が中性化されている。
【0039】
特定の一実施例では、本開示はウェブ上に中性の電荷を提供する方法を目的とする。この方法は、少なくともある程度導電性の液体溶媒を、ウェブの両方の面に塗布する工程を含む。ウェブは、移動ウェブであってよい。
【0040】
特定の別の実施形態では、本開示はウェブ上に中性の電荷を提供する装置を目的とする。この装置は、ローラー、ニップなどのようなウェブ処理機器、及び少なくともある程度導電性の液体溶媒の供給源を含む電荷修正ステーションを含む。この電荷修正ステーション、及びその使用方法は、既存のウェブ処理工程に容易に追加するのに特に適している。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1面上に接地した導電性裏材を有し、反対の面上に表面電荷を有する、ウェブの模式図。
【図2】導電性構成要素がなく、一方の面上に表面電荷を有する、ウェブの模式図。
【図3】一方の面上に、接地した導電性裏材を有し、反対の面上に表面電荷を有し、この反対の面は、接地した導電性要素に近接している、ウェブの模式図。
【図4】接地した表面及び、平均ゼロの正弦波形状の電荷分布を有する、0.05mm/約0.0508mm(0.002インチ)のウェブに関する、下側プレートにおける電界を表わしたグラフであるここでrms値は10C/m、及び1.3cm/0.5インチの位置周期であり、ウェブとプレートとの間の距離は約0.5cm/0.2インチ。
【図5】接地した表面、及び平均ゼロの正弦波形状の電荷分布を有する、0.05mm/0.002インチのウェブに関する、下側プレートにおける電界を、ウェブとプレートとのギャップの関数として表わしたグラフである。ここでrms値は10C/m、及び1.3cm(0.5インチ)の位置周期。
【図6】接地した表面、及び平均ゼロの正弦波形状の電荷分布を有する、0.05mm/0.002インチのウェブ上に対する垂直力を表わしたグラフである。ここでrms値は10C/m、及び1.3cm/0.5インチの位置周期であり、ウェブとプレートとの距離は0.025mm(0.001インチ)。
【図7】接地した表面、及び平均ゼロの正弦波形状の電荷分布を有する、0.05mm/0.002インチのウェブに関する垂直力を、ウェブとプレートギャップの関数として表わしたグラフである。ここでrms値は10C/m、及び1.3cm/0.5インチの位置周期。
【図8】この開示による電荷修正システムを含むウェブ処理装置の概略図。
【図9】この開示に記載される実施例で使用するウェブ処理装置の概略図。
【図10】中性化を実行していない実施例からの、粉体コーティングしたウェブの顕微鏡写真。
【図11】従来の核部材及び従来の石英灯の下を通過してきた実施例からの、粉体コーティングしたウェブの顕微鏡写真。
【図12】スタティックストリング、窒素エアナイフ、及び赤外線ランプの下を通過してきた実施例からの、粉体コーティングしたウェブの顕微鏡写真。
【図13】本開示による、イソプロピルアルコールで中性化した実施例からの粉体コーティングしたウェブの顕微鏡写真。
【図14】中性化を実行していない実施例からの、ウェブ上の電荷のグラフ表示。
【図15】スタティックストリング及び窒素エアナイフの下を通過し、次にイソプロピルアルコールで湿潤させた実施例からの、ウェブ上の電荷のグラフ表示。
【図16】窒素エアナイフ、及び赤外線ヒーターを作動させて核部材の下を通過させ、アセトンに浸漬した実施例からの、ウェブ上の電荷のグラフ表示。
【図17】窒素エアナイフ、及び赤外線ヒーターを作動させて核部材の下を通過させ、アセトンに浸漬した実施例からの、ウェブ上の電荷のグラフ表示。
【図18】核部材の下を通過させ、アセトンで拭った実施例からの、ウェブ上の電荷のグラフ表示。
【図19】窒素エアナイフ、及び赤外線ヒーターを作動させて核部材の下を通過させ、ヘプタンに浸漬した実施例からの、ウェブ上の電荷のグラフ表示。
【図20】窒素エアナイフ、及び赤外線ヒーターを作動させて核部材の下を通過させ、水道水に浸漬した実施例からの、ウェブ上の電荷のグラフ表示。
【図21】窒素エアナイフ、及び赤外線ヒーターを作動させて核部材の下を通過させ、トルエンに浸漬した実施例からの、ウェブ上の電荷のグラフ表示。
【図22】窒素エアナイフ、及び赤外線ヒーターを作動させて核部材の下を通過させ、脱イオン水に浸漬した実施例からの、ウェブ上の電荷のグラフ表示。
【図23】窒素エアナイフ、及び赤外線ヒーターを作動させて核部材の下を通過させ、脱イオン水に浸漬してイソプロピルアルコールを2度飛沫させた実施例からの、ウェブ上の電荷のグラフ表示。
【図24】窒素エアナイフ、及び赤外線ヒーターを作動させて核部材の下を通過させ、塩水(食卓塩を添加した水道水)に浸漬した実施例からの、ウェブ上の電荷のグラフ表示。
【図25】窒素エアナイフ、及び赤外線ヒーターを作動させて核部材の下を通過させ、フッ化炭素添加剤を加えた脱イオン水に浸漬した実施例からの、ウェブ上の電荷のグラフ表示。
【図26】窒素エアナイフ、及び赤外線ヒーターを作動させて核部材の下を通過させ、エタノールに浸漬した実施例からの、ウェブ上の電荷のグラフ表示。
【図27】この開示に記載される実施例で使用する第2のウェブ処理装置の概略図。
【図28】誘電体材料に帯電パターンを生成する方法を示すフローチャート。
【図29】パターン形成器具に液体を塗布する方法の第1作業工程を示す概略斜視図。
【図30】パターン形成器具に液体を塗布する方法の第2作業工程を示す概略斜視図。
【図31】図30の第2作業工程を更に示す概略斜視図。
【図32】パターン形成器具から誘電体材料に液体を塗布する方法を示す概略斜視図。
【図33】パターン形成器具から誘電体材料に液体を塗布する方法を更に示す概略斜視図。
【図34】実施した試験で測定した、誘電体材料の帯電電位のプロット。
【図35】図34に示した誘電体材料を中性化した後の帯電電位のプロット。
【図36】図35に示した誘電体材料を再帯電させた後の帯電電位のプロット。
【図37】液体コーティングしたパターン形成器具でスタンプした後の誘電体材料の帯電電位のプロット図。
【図38】電荷パターンを生成する方法の第1作業工程を示す概略側面ブロック図。
【図39】電荷パターンを生成する方法の第2作業工程を示す概略側面ブロック図。
【図40】電荷パターンを生成する方法の第3作業工程を示す概略側面ブロック図。
【図41】実施した試験のいくつかで使用したパターン形成器具のスタンプ表面の画像。
【図42】試験中にトナー粒子に近接して配置した後の誘電体材料の写真。
【図43】別の試験(text)中にトナー粒子に近接して配置した後の誘電体材料の写真。
【図44】図43に示した誘電体材料の別の部分の写真。
【図45】図44に示した誘電体材料の高倍率での写真。
【図46】別の試験中にトナー粒子に近接して配置した後の誘電体材料の写真。
【図47】図46に示した誘電体材料の単一のトナー線の高倍率での写真。
【図48】第1の厚さを有する誘電体材料の帯電液体から放射される電界を示す概略側面ブロック図。
【図49】第2の厚さを有する誘電体材料の帯電液体から放射される電界を示す概略側面ブロック図。
【図50】第3の厚さを有する誘電体材料上の帯電液体から放射される電界を示す概略側面ブロック図。
【0042】
本開示の装置及び方法を特徴付けるこれらの及び様々な他の特徴は、添付の請求の範囲内で詳細に指摘される。本開示の装置及び方法、それらの利点、それらの使用及びそれらの使用によって得られる目的をよりく理解するために、図面及び添付の明細書が参照されるべきであり、ここでは本開示による好ましい実施形態が図示され、説明されている。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本開示は、両面中性又は二極性中性(単なる正味の中性ではなく)である対象物及び、更に好ましくは、両方の表面が中性である対象物を提供する方法に関する。本開示によって中性化される対象物の材料の例としては、誘電体材料(例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン)、布類(例、ナイロン)、紙類、ラミネート類、ガラス、及び同類のものが挙げられる。対象物は、導電性層又は帯電防止層を含むことができる。中性化される表面は、絶縁性、帯電防止性及び/又は導電性の領域を有してもよく、これらの領域は意図されたものであってもそうでなくともよい。本開示の装置及び方法は特に、誘電体材料を含む対象物に適している。いくつかの実施例において、この対象物はウェブである。本明細書において、使用される用語「ウェブ」は、ウェブのシート紙料のことを意味し、長い長さ(例えば1mを超え、通常は10mを超え、しばしば100mを超える)と、幅(例えば0.25m〜5mの間)及び厚さ(例えば3〜1500マイクロメートル、例えば3000マイクロメートル以下)を有する。他の実施形態において、対象物は、延在する長さではなく、別個又は個別の対象物である。例えば、1シート又は1ページの材料は、例えば長さ0.5メートル、幅0.5メートルを有する場合がある。個別の対象物は全体として平面であってもよく、又は三次元トポグラフィーを有してもよい。
【0044】
正味で中性化された(即ち、当初にかなり帯電していたとすると、一般的な静電気測定器によって測定された電界の強度が、その当初よりもかなり低くなっている)ウェブを得る手段を提供するものとして、市販の中性化システムが知られている。しかしながら、正味で中性化されたこのウェブは、依然としてかなりの電荷を有することがある。
【0045】
例えば、平均ゼロの正弦波形状の表面電荷分布のフリースパン(free span)における、振幅A、位置周期Xのウェブは、表面電荷分布から生じるウェブの上方又は下の電界(急速に減衰する)を有し、このウェブから複数の位置周期(X)離れた位置にある静電気測定器によって計測すると、このウェブは中性に見える。このウェブは、実際の表面電荷のrms値がかなり大きい場合であっても、中性に見える。
【0046】
標準の静電気センサーで測定したときにウェブは中性に見えても、実はかなりの電荷分布が有するような場合は、他にも数多くある。このような電荷分布は、コーティングや乾燥などのウェブベースのプロセスにおいて欠陥を引き起こすことがあり、欠陥が低減される又は排除されるレベルにこれらの電荷分布を中性化するための方法が必要となる。これらの電荷分布が中性化されなければならない標的レベルは、工程(例えば、ライン速度、コーティング及び乾燥方法)、材料(例えば、コーティング溶液、フィルムの組成、構造及び厚さ)及び問題になっている具体的な欠陥の関数である。例えば、アーク欠陥を排除するには市販の中性化装置で十分であるが、一部のコーティング欠陥及び乾燥欠陥を排除するには不十分である。本開示の方法論は、電荷分布の除去又は修正による、コーティング及び/若しくは乾燥欠陥の低減、並びに/又はウェブの清浄性の向上を目標としている。更に、対象物上の望ましくない電荷分布を中性化することによって、狭いクリアランスを含む下流の機器を用いることが容易になり得る。例えば、そのような中性化された対象物は、例えばギャップ乾燥器においてタッチダウンが生じにくくなっている。
【0047】
本記載において、誘電体ウェブ上の電荷分布について述べる際に、「正味の電荷」又は「極性電荷」並びに「片面の電荷」又は「二極性電荷」という言葉を用いる。正味の電荷は、誘電体ウェブ上の単位面積当たりの見かけ電荷として定義され、フリースパンにおいて(他の物体から離れて)そのウェブの電界を測定するのに電界計が用いられていることを意味している。電界計とウェブとのギャップは、典型的には約1.27cm〜5cm(0.5〜2インチ)である。よって、このようにして得られる静電気測定値は、測定プローブのスポット寸法に対する電荷分布の関数であり、このスポット寸法は典型的にはセンチメートル(インチ)単位の直径の面積となる。このようにして測定された電荷は、極性電荷とも呼ばれる。「正味での中性化」は、ウェブ上の正味の電荷又は極性電荷の強度の低減を意味する。正味の電荷測定値が低いことは、スポット寸法面積に対する電荷分布がどの場所でも低いことを意味するものではなく、そのスポット寸法面積の電荷分布の、ある平均が低いことを意味する。前述の正弦波形状の電荷分布は、その分布の位置周期がスポット寸法直径よりはるかに短い場合、正味の電荷又は極性電荷が低いものとして表われることになる。
【0048】
「片面の電荷」とは、ウェブの一方の表面の上方の電界、又は表面の電位を測定するために、接地した導電体にウェブの他方の面が隣接又は好ましくは接触した状態で、電界計又は電圧計を用いることから推定される単位面積当たりの見かけの電荷である。電界計又は電圧計とウェブ表面との間のギャップは通常、0.5〜5.0ミリメートルである。このようにして得られる静電気測定値は、測定プローブのスポット寸法に対する電荷分布の関数であり、このスポット寸法は典型的にはミリメートル単位の直径の面積となる。大きな正味の電荷をもたらすことはないが、片面の電荷が大きくなるような電荷分布は、時により「二極性電荷分布」と呼ばれる。「片面の中性化」又は「二極性電荷中性化」とは、ウェブ上の片面の電荷又は二極性電荷の強度の低減を意味する。片面の電荷測定値が低いことは、スポット寸法面積の電荷分布がどの場所でも低いことを意味するものではなく、そのスポット寸法面積の電荷分布の何らかの平均が低いことを意味する。前述の正弦波形状の電荷分布は、その分布の位置周期が、測定装置のスポット寸法直径よりはるかに短い場合、片面の電荷又は二極性電荷が低いものとして表われることになる。
【0049】
二極性電荷の単純な別の例として、一方の面上に均一な電荷分布qを有し、反対側の面上に均一な電荷分布−qを有する誘電体ウェブを考える。フリースパンでは、この正味の電荷又は極性電荷の測定値はゼロになり得る(上面と下面の電荷の和がゼロであるため)。片面の電荷測定値は、どちらの面を接地した物体上に置くかによって、−q又は+qのいずれかが得られる。このウェブは既に正味で中性であるため、市販の中性化装置では、この二極性電荷に対する影響はほとんどない。
【0050】
二極性電荷分布の別の例として、一方の面上に平均がゼロでない正弦波形状の電荷分布p(x)=Asin(2πx/X)+qを有し、反対側の面上に電荷分布−p(x)を有するウェブを考える。フリースパンでの正味の電荷測定を、Xの数倍よりも大きい直径のスポット寸法で実施した場合、このウェブには実質的な正味の電荷はないように見える。Xの数倍よりも大きい直径のスポット寸法を用いて実施された片面の電荷測定スキャンでは、どちらの表面を接地した物体に対して置くかによって、+q又は−qのいずれかが得られる。片面の測定スキャンが、Xよりもはるかに小さいスポット寸法直径を用いて実施された場合、片面の電荷の正弦波形状の状態が明らかになる。
【0051】
二極性電荷分布の更に別の例として、一方の面上にランダムな電荷分布R(x)、もう一方の面上に−R(x)を有するウェブを考える。スポット寸法X全体を総和した場合、R(x)の第1モーメント及び第2モーメントはそれぞれ、+q及びAに収束する。フリースパンでの正味の電荷測定を、Xよりもはるかに大きい直径のスポット寸法で実施した場合、このウェブには実質的な正味の電荷はないように見える。Xよりもはるかに大きい直径のスポット寸法を用いて片面の電荷測定スキャンを実施した場合、どちらの面を接地した物体上に置くかによって、片面の電荷の一定の値、+q又は−qのいずれかが得られる。片面の測定スキャンが、Xよりもはるかに小さいスポット寸法直径を用いて実施された場合、片面の電荷のランダムな本質が明らかになる。
【0052】
あらかじめ帯電した誘電性ウェブは、この正味の電荷又は極性電荷並びにこの片面の電荷又は二極性電荷の両方が、望ましいレベルにまで低下した場合に、「両面が中性化された」と見なされる。用語「正味の電荷」及び「片面の電荷」は、静電気測定値により定義されるものであって、実際の電荷分布の特定の配置又は強度についての情報を意味するものでも、また必要とするものでもないことに注意されたい。電荷分布は、その誘電体の表面上若しくは誘電体の内部又はその双方に存在し得る。目的とする感度によっては、前述のものよりも高感度の(前述のものよりもスポット寸法が小さい)静電気検出プローブ(例、原子間力顕微鏡プローブ)を使用して、正味の電荷又は極性電荷並びに片面の電荷又は二極性電荷を、より微細なスケールで推定することができる。
【0053】
本文書に記述される方法は、少なくとも前述の長さスケールにおいてウェブ上の極性電荷及び二極性電荷の両方の低減をもたらすが、標準の静電気測定装置を用いても容易には検知できない場合がある短い長さスケールも対象として含んでいる。用語「中性化」は、すべての電荷を完全に除去することを意味するものではなく、例えば、存在し得る残留電荷が生成する外部電界が弱すぎて欠陥を生じることがない、又は例えば、二重の層が形成されることにより、生じる欠陥を許容範囲に抑えるレベルにまで外部電界が本質的に弱められる、又は例えば、残留している二極性電荷分布の長さスケールが十分に小さいため、元の二極性電荷分布による欠陥が低減される若しくは排除されることを意味する。
【0054】
図1は、一方に接地した面及びもう一方の面上に均一な表面電荷qを有する、絶縁されたウェブの図である。図1のウェブ5は、第1面6及び対向する第2面8を有し、それらの間の厚さはbである。面6は、例えば面6に十分近接又は接して位置決めできる任意の適切な要素により、接地している。多くの工程では、面6は、ロールのような接地しているウェブ処理工程の機器との接触を通じて接地している。いくつかの実施形態では、面6は、ウェブ自体の導電性コーティング又は層により接地可能となっている。ウェブ5の面8における電位は次の式で求められる。
【0055】
【数1】

【0056】
ここでεは自由空間の誘電率、εはウェブの比誘電率である。絶縁されたウェブ5について、ウェブ5の外部の電界はゼロであり、一方、ウェブ内部の電界は次の式で表わされる。
【0057】
【数2】

【0058】
一例として、表面電荷q=C/m、ε=5及び約0.051mm(b=0.002インチ)の場合について、フリースパンでの面8における電位はφ=11.5Vであり、ウェブ5内の電界はE=226kV/mである。電界計を用いて約25mm(1インチ)のギャップで測定したウェブ5の電圧は11.5ボルトである。この絶縁されたウェブの外側の電界はどの場所でもゼロであるため、標準的な中性化装置は、この表面電荷に対しては非常にわずかな影響しかもたらさない。
【0059】
図1及びこれに関連する上記の議論は、市販のイオン化装置使用では容易に中性化できない二極性電荷分布の、非常に単純な一例である。図1に示す絶縁されたウェブ5は、面6で接地しているため、ウェブ5の外部に電界線を有していない。背景技術で検討したような市販のイオン化中性化装置は、中性化のためのイオンの導入を、帯電しているウェブから放射される電界又は帯電しているウェブで終結する電界に依存している。図1に示す絶縁されたウェブ5の外部には電界が存在しないため、市販のイオン化中性化装置は、ウェブ5上の実質的な電荷であり得るものを低減するには効果的ではない。更に、市販のイオン化装置を用いて容易に中性化できない二極性電荷分布は、他にも数多くの形態がある。本開示に記載されている方法は、市販の又は既知の中性化装置を用いても中性化できない、問題のある多くの二極性電荷分布を中性化するために用いることができる。
【0060】
上記の状況を、接地した面をもたないウェブの図2と比較する。図2において、ウェブ10は、第1面12及びその反対側にある第2面14を有し、それらの間の厚さがbである。例として、q=10−5C/mの場合、絶縁されたウェブ10の外側の電界の強度はどの場所でも565kV/mであり、約25mm(1インチ)のギャップにおいて、電界計で測定したウェブ10の電圧は28.7kVである。この状況において、ウェブ10の外側の電界は非常に強く、このウェブのかなりの正味を中性化するのに市販の中性化装置を用いることができる。
【0061】
同じ表面電荷であっても、導電性の面を有する(例えば図1のように)厚さ約0.051mm(0.002インチ)のウェブの表面電位(電圧)は、導電性の面がない(例えば図3のように)約0.051cm(0.002インチ)のウェブの場合よりも、3桁超小さくなることに注意されたい。これは、両方のウェブがかなりの電荷分布を有しているにもかかわらず、事実である。
【0062】
ここで図3を参照すると、接地した面を有するウェブが、導電性プレートなどの接地した要素の上方に一定距離を置いて配置されている例が提示されている。使用中、このウェブ上の電荷は接地した2つの要素に分割される。図3において、接地した第1面16、その反対側の第2面18及びそれらの間の距離bを有するウェブ15が示されている。第2面18は、接地した要素20の上方、距離aにある。ウェブ15下方のギャップ(即ち、面18とプレート20との間)における電界は、次の式で表される。
【0063】
【数3】

【0064】
そして、ウェブ15上の単位面積当たりの電気力は、次の式で表わされる。
【0065】
【数4】

【0066】
式4は、ウェブ15が、接地したプレート20に引き付けられ、ギャップが減少すると、この「電気的圧力」が増加することを示している。ギャップaがウェブ厚さbに比べて大きくなると、この引き付ける力はゼロに近づく。ギャップaがウェブ厚さbよりも小さくなると、単位面積当たりの力は、導電性裏材のないウェブの場合の値、
【0067】
【数5】

【0068】
に近づく。図1及び2の議論における上記のパラメータを用いると、このウェブ15の電圧はわずか11.5Vとなる。しかしながら、下側プレート20に引き付ける制限力(「ピン止め力」とも呼ばれる)は、5.65N/mである。更に、ウェブ15の電圧測定値は表面電荷とともに一次関数的に増加するが、この引き付ける力は二次関数的に増加する。これは、名目上「中性の」ウェブ(約25.4mm(1インチ)のギャップにおいて電界計で測定した場合)が、実質的な電荷を有する場合がある数多くの状況の一例にすぎない。いくつかの状況において、この電荷による電界はコーティング、乾燥、ウェブ処理及び清浄さにおいて問題を引き起こす場合がある。例えば、これらの電気力は、接地した物体に近接してウェブが位置決めされるオーブン内における、ウェブ15の不必要な指向性を生じさせる場合がある。また、電界の作用により、液体界面が大きく妨害される場合があり、この妨害により材質コーティングに製品欠陥が生じ得ることがよく知られている。例えば、J.R.Melcher and G.I.Taylor,「Annual Review of Fluid Mechanics」,1969の111〜146、D.A.Saville,「Annual Review of Fluid Mechanics」,January 1997,Vol.29の27〜64、及び「Coating & Drying Defects」,Gutoff and Cohen,Wiley,NY,1995を参照されたい。
【0069】
二極性電荷分布には、市販の中性化装置又はイオン化装置を使用しても容易に中性化されない他の多くの形態が存在する。例えば、一方の面上に接地した裏材を有し、もう一方の面上に、平均ゼロ、rms値qの正弦波形状の二極性電荷分布
【0070】
【数6】

【0071】
を有する、絶縁されたウェブを考える。ほぼX程度又はこれより大きいウェブ厚さについては、絶縁されたウェブの下側の電界は、ほぼXの距離において急速に消滅する。ウェブ厚さがX未満まで減少すると、ウェブ外側の電界は更に急速に消滅する。絶縁されたウェブがXよりも2桁少ない厚さの場合、電界は主にウェブ内に閉じ込められ、ウェブの外側の電界は非常に弱い。ここで、接地した導電性プレートが、ウェブの誘電性面から距離g離れた場所に設置されている状況を考える。ギャップ=0.05インチ、ウェブ厚さ=0.005インチ、及び位置周期Xs=0.5インチの場合について、下側プレートでの電界の垂直成分を図4に示す。ギャップとウェブ厚さとの比率がこれほど大きくとも、ギャップの電界はkV/mの範囲に収まる。図4〜図7では、電荷分布のrms値は10^5C/mであると解釈され、ウェブの誘電率はギャップ中の空気の5倍と見なされた。空気の誘電率は真空の誘電率と見なされた。
【0072】
図5は、接地した要素における電界の垂直成分のrms値を、ウェブ厚さ=0.005インチ及び位置周期X=0.5インチの場合のギャップ距離の関数として示している。図5からは、ウェブ厚さよりも1桁超大きいギャップでは非常に大きな電界が得られることが認められる。図4のrms値は、
【0073】
【数7】

【0074】
を掛けることによりピーク値へ変換できる。
【0075】
図1に関して議論した表面電荷一定の場合と同様、この正弦波形状の電荷分布も、コーティング、ウェブ処理、乾燥及び清浄性において好ましくない影響をもたらし得る。例えば、図6には、ギャップが、ウェブ厚さよりも1桁小さく、かつ電荷分布の位置周期より4桁小さい場合の、ウェブ上の単位面積当たりの垂直力(電気応力テンソルの垂直成分)特性を示す。図7は、ウェブ上の電気応力の平均垂直成分の大きさを、ウェブ厚さ=0.005インチ及び位置周期X=0.5インチの場合のギャップの関数として示している。
【0076】
計算を単純にしておくために、上記の理論的例は、一方の面上に接地した裏材を、もう一方の面上に表面電荷分布を有する場合である。実際は、この二極性電荷分布は、誘電体材料の一方若しくは両方の表面上又は内部に存在し得る。
【0077】
本開示に従い、ウェブの電荷の修正は、ウェブの両方の面を普通は同時に液体溶媒に接触させ、その後その溶媒を除去及び/又は乾燥させることにより達成することができる。
【0078】
液体は、任意の好適な手段によりウェブに塗布されてよく、その手段としては、浸漬(例えば、プール又は漕に浸す)、コーティング(例、ダイコーティング、ナイフコーティング)、又は噴霧、含浸させたウィック若しくは布をウェブの両方の面に適用する方法、吸収/吸着、又はウェブ表面への蒸気の凝結、などがある。表面全体、好ましくは両側の表面とも、完全に連続的に液体により覆われることが望ましい。
【0079】
塗布された後、この液体は引き続き、非蒸発及び/又は蒸発の手段を用いて、除去及び/又は乾燥される。非蒸発の手段としては、例えばウィック、エアナイフ、スキージなどの、少なくとも溶媒の一部を除去するための物理的装置の使用が挙げられる。加えて又はそれに代えて、溶媒の少なくとも一部は、蒸発によりウェブから除去されてよく、この蒸発は空気対流、加熱、その他の方法により促進されてよい。結果として得られる好適なウェブは、上に定義されたように、正味で中性化されていると共に両面が中性化されている。
【0080】
いくつかの実施形態では、例えば液体の1つ以上の構成成分を除去する一方で、1つ以上の構成成分をウェブ上に残しておくことにより、液体は部分的にのみ除去される。例えば、いくつかの実施形態では、液体は溶媒及びアクリレートを含む。必要であれば、アクリレートを残留させて誘電体材料の表面上に電荷を保持しつつ、溶媒を除去することもできる。液体溶媒を除去する前又は後に、電子ビーム照射を使用してこのアクリレートを固化させることもできる。別の実施形態では、液体は2つ以上の混和性液体の混合液である。第1の液体の蒸気圧は比較的高く、一方、第2の液体は蒸気圧が比較的低い。第1の液体は蒸発により除去され、第2の液体が後に残される。必要であれば、第2の液体は、引き続き硬化処理され固体となる。第1の液体の一例はトルエンであり、第2の液体の一例は変圧器油である。
【0081】
いくつかの実施形態では、本開示によるウェブ電荷の修正に適する液体は、一般に有機溶媒又はアルコールのいずれかであり、その導電率は少なくとも約1×10pS/m)及び約1×10pS/m以下である。材料の導電率とは、電荷がその材料を通ってどれだけ良好に流れるかを示すものである。一般に、水(即ち、蒸留水、水道水、塩水など)の導電率の値は所望の範囲内又は近似しているが、水がこれらの装置及び方法に適した一次溶媒ではないということが判明した。
【0082】
本開示によるウェブ電荷の修正に適する溶媒は、普通、誘電率が少なくとも約10かつ40以下である。いくつかの実施例では、適切な溶媒の誘電率は、約15〜約35である。誘電率は、物質(例、液体)が電界に反応して分極し、それにより材料の電界を減衰させる能力に関連する。誘電率は、材料の静電容量(即ち、その材料がどれだけ良好に電荷を蓄積するか)に関連する。空気の誘電率は、わずか約1である。しかしながら、誘電率が高すぎると(おそらくその液体の他の特性との関連で)、その液体のウェブを効果的に中性化する能力を低下させる傾向があったことが本研究者らにより明らかになった。即ち、高すぎる誘電率は、本開示の装置及び方法にとっては望ましいものではない。
【0083】
中性化に適した溶媒の例として、イソプロピルアルコール又はイソプロパノール、メタノール、エタノール、メチルエチルケトン(MEK)、及びアセトンが挙げられる。溶媒という言葉は、本明細書ではウェブを湿潤させる液体を指すために使用し、必ずしも任意の特定科学種の溶媒和を示すものではないことを再度認識されたい。この溶媒は、「溶媒」として周知の液体である。2つ以上の溶媒の混合液を使用することもできる。
【0084】
図8は、本開示による電荷修正システムを含むウェブ処理装置の概略図である。図8は、ウェブ21(第1面21a及び第2面21bを有する)のためのウェブ源22、電荷修正ステーション24、及びコーティングステーション26を有するウェブ処理工程20を示す。このウェブは、ウェブ源22から、電荷修正ステーション24、コーティングステーション26に至る、様々なローラー28、ニップ29、テンダー、及び他の公知のウェブ処理機器を有する経路をたどる。
【0085】
ウェブ源22は、ロールとして巻かれた長いウェブ21であってもよく、このロールは芯を有しても、又は芯がなくてもよい。あるいは、ウェブ源22は、ウェブ処理工程20の直前にウェブ21を形成する、押出成形工程であってもよい。しかし、ほとんどの実施形態では、また図8で示すように、ウェブ源22はウェブ材料のロールである。ウェブ21は、ウェブ源22のロールが展開される際に、両面21a、21bが帯電する。この現象は周知である。
【0086】
この実施形態では、ウェブ源22からのウェブ21は一連のロール28を介して送り出されるが、これは公知である。各ロール28において、ウェブ21は、各ロール28との接触及び解離によって帯電する。典型的には、ウェブ21の、ロール28に接触する面が帯電する。
【0087】
ウェブ21は、ロール28から駆動ニップ29、その後アイドラーロール31へと移動する。アイドラーロール31から、ウェブ21は電荷修正ステーション24へと進行する。
【0088】
コーティングウェブは、先行段階での多くの要因により帯電した状態で電荷修正ステーション24に入る。これらの帯電の要因としては、ウェブ21の製造、ウェブ源22を得るための処理、巻かれたロールへのウェブの巻き上げ及びそのロールの処理、巻かれたロールからの巻き出し、様々なウェブ処理要素との接触及び離脱、他のウェブ静電気中性化又は帯電処理装置からの帯電などが挙げられる。
【0089】
ウェブ処理工程20における様々なテンショナーロール28、駆動ニップ29、及びアイドラーロール31は、存在する可能性のある他のロールと同様に、従来の周知のウェブ処理機器である。電荷が連続的に蓄積するのを防ぐため、プロセス中のウェブ21との接触点(即ちローラー、ニップ、バーなど)の数を制限することが、一般的に周知である。
【0090】
本開示に従い、ウェブ処理工程20は、蓄積した電荷をウェブ21から除去し、両面若しくは二極性の中性化ウェブ、又は少なくとも本質的に両面若しくは二極性の中性化ウェブを提供する電荷修正ステーション24を含む。多くの及び好適な実施例では、面21a及び21bは両方とも、電荷修正ステーション24から出て来たときには両面又は二極性で中性化されている。
【0091】
図8に例示した実施形態では、電荷修正ステーション24は、溶媒を貯めて保持するための容器25を含む。容器25は、容器25内に保持された導電性溶媒にウェブ21の全幅を浸漬できるように、十分に大きく(広く)深い。好適な実施例では、面21a、21bは両方とも導電性溶媒に完全に浸漬される。
【0092】
容器25は接地している。
【0093】
電荷修正ステーション24は、容器25にウェブ21を対称的に(即ち、21a、21bの両方の面を)曝露することが好ましい。ウェブ21の溶媒内での滞留時間は、面21a、21b上に溶媒が連続的にコーティングされ、好ましくは溶媒により湿潤されていない領域が表面からなくなるのに十分な任意の時間であってよい。
【0094】
容器25の下流は、溶媒の液体成分をウェブ21から除去する乾燥装置30である。乾燥装置30は、ウェブの両方の面から溶媒を除去するための、ウィック、スキージ、ダム、ナイフ、及び空気流(例、エアナイフ)のような非蒸発の手段を採用してもよい。加えて又はそれに代えて、乾燥装置30は、ウェブ21からの溶媒の蒸発を促進する受動装置を含んでもよい。そのような装置の例として、対流式オーブン、送風機、放射線(例、赤外線ランプ)などが挙げられる。乾燥機30は、ウェブ21の面21a及び21bを対称的に乾燥させることが好ましい。
【0095】
必要に応じて、本質的に正味で中性のウェブを電荷修正ステーション24に提供するために、1つ以上の従来の中性化システム37が電荷修正ステーション24に先立つウェブ経路に備えられてもよい。市販の中性化システム37の例として、イオン化装置、MKS Ion Systems及びSimco(Illinois Tool Worksの子会社)製のシステムのような電気式静電気除去装置、誘導式静電気除去装置(例、スタティックストリング、ティンセル、針棒、及びブラシ)、及び核式静電気除去装置などが挙げられる。
【0096】
本研究者らにも完全には確認されていない仕組みにより結果的に得られる乾燥ウェブ21は、両面若しくは二極性で中性又は少なくとも本質的に両面若しくは二極性で中性である。面21a、21bの両方を、溶媒で完全に湿潤させ、乾燥させた場合には、両面若しくは二極性で中性又は少なくとも本質的に両面若しくは二極性で中性である。
【0097】
上で規定したように、少なくとも微弱な導電性液体の誘電率は、約10〜約40である。脱イオン水、塩水、及び界面活性剤/水の溶液は、少なくとも微弱な導電性であるという基準を満たしているものの、おそらくはこれら溶液の高い誘電率が要因となり、結果的に好ましい中性化がもたらされないということが本研究者らにより明らかになっている。
【0098】
図8に戻ると、ウェブ21はこの時点で、両面若しくは二極性で中性又は少なくとも本質的に両面若しくは二極性で中性となって、面21bにコーティング32を塗布するコーティングステーション26に進行する。コーティング32は、例えば、光学ディスプレイ用コーティング、図形、保護層、画像形成層、写真層、電子層、接着剤、研磨剤、などの任意のコーティングであってよい。
【0099】
ウェブ21は、コーティングステーション26から乾燥機27へ進行し、例えばコーティング32から任意の溶媒を除去するように、コーティング32が乾燥させられる。この実施例では、乾燥機27はギャップ乾燥機である。
【0100】
本質的に両面又は二極性で中性ではないウェブにコーティングを提供する従前の工程において、乾燥パターン(例、渦流、渦巻、斑点など)が頻繁に生じることが周知である。コーティングされた面(面21b)又はコーティングされた面の対向面(21a)のいずれかに帯電を有することが、この乾燥パターンを促進させると考えられる。本開示に従い、ウェブを中性化することにより乾燥パターンが阻止される。
【0101】
電荷修正ステーション24、及びその変更形態は、両面又は二極性で中性のウェブにより恩恵を受ける様々な用途に特に適している。様々な実施例を上に述べてきた。電荷修正ステーション24、及びその変更形態はまた、帯電ウェブの利用が可能な用途にも適している。例えば、そのようなウェブは、両面メニスカスコーティング工程(両方のダイが接地している)で使用できる。このような工程で、電荷修正ステーションは、コーティングロールに先立って溶媒を乾燥させる時間を見込めるように、コーティングロールにフリースパンで先立って存在してもよい。そうした場合、ウェブは、上面及び下面が帯電ゼロの状態でコーティングステーションに入るはずであり、コーティングロールから離れるウェブの摩擦帯電のみが問題とされるはずである。裏面の残留溶媒和がこの摩擦帯電効果を多少誘発している可能性がある。
【0102】
加えて、ウェブ処理工程20は、工程中、及びコーティング塗布(例えば、コーティングステーション26での)又は塗布されたコーティングの乾燥若しくは硬化(例えば、乾燥機27での)のような重要な工程に先立つウェブ経路のいずれの地点においても、アイドラーロール及び他のロールのような要素とウェブ21との接触を最小限に抑えるべく設計されている。
【0103】
実施例、図9〜27
下記の非制限的な実施例は、本開示の様々な実施形態を示すものである。
【0104】
以下の実施例では、Scotchpak(TM)フィルム(3M Companyから市販の0.35mm(1.4ミル)のポリエステル、860140型)のロール状ウェブをフィルム供給源として使用した。周知のように、ウェブの展開の際、フィルムの両方の面がこの展開に付随する電荷を有した。以下に記載する図9の静電気中性化装置を用いてウェブ上の電荷を中性化した。フィルム供給源は、図9の参照番号40で図示される。フィルムは、第1面40a及び第2面40bを露出して、フィルム供給源40から巻き出された。
【0105】
ブレッドボードアイドラーモジュールを使用して、ウェブ40上の正味の電荷を中性化するための従来の核部材42、本開示による中性化組立体50、エアナイフ52、乾燥装置54(この構成では、赤外線ランプ)、並びに静電荷測定センサー56及び57を含むウェブ経路を作り出した。エアナイフには、安全上の予防措置及び典型的な室内圧縮空気によるシステムの汚染(油など)を阻止するためにも、清浄室内窒素を供給した。
【0106】
核部材42は、NUCLEOSTAT P−2001型静電気除去装置であり、従来のウェブ中性化システムにより得られる代表的な、かなり正味で中性のウェブを作り出すために使用した。いくつかの試験では、以下で特定するように、核部材42をスタティックストリング43に交換した。
【0107】
中性化組立体50は、アルミニウム製のキャセロールパン55及びアイドラーロール組立体51から構成された。アイドラー組立体51は、ウェブ40の、溶媒のプールを通る(両方の面が湿潤する)約0.254メートル(10インチ)の水平移動を引き起こした。ウェブ40は、溶媒のプールから垂直方向に抜け出て、他の2つのアイドラー53により、Nが供給されたエアナイフ52(Exair Corporationから入手)へと移送された。エアナイフへの供給圧は約80PSIの窒素であった。ウェブ40は、一対の500ワット赤外線ランプ54(Cooper Lightingから入手のW0500型)の間を垂直に移動した。
【0108】
ウェブの電圧を以下のように測定した。
【0109】
正味のウェブ電圧を、赤外線ランプの後に作られたフリースパンにおいて3M Model 718静電気測定器57を用いて測定した。
【0110】
上面(面40b)のウェブ電圧を、接地したアイドラー58の上からMonroe Electronics Isoprobe静電電圧計279型をModel 1034ELプローブと共に使用して測定した。いくつかの試験では、上面の電圧測定値は、正味の電圧測定値よりも数桁分小さかった。これは以下の理論によるものであった。例えば、ウェブが一方の面上に電荷q、及び他方の面上にゼロ電荷を有する場合、718静電気測定器による正味の電圧測定値は、qa/εεであり、ここでa=1インチである。ウェブの非帯電面を接地したアイドラーに対して配置した場合は、Monroe電圧計を使用した上面の電圧測定値は、qd/eであり、ここでdはウェブの厚さである。正味の電圧に対する上面の電圧の比は、それゆえ∝d/aとなる。上面の電荷がqの0.02mm(1ミル)のウェブであれば、上面の電圧測定値は正味の電圧測定値の1000分の1になるであろう。
【0111】
正味及び上面の電圧のデータは、Tektronix TDS 3034Bオシロスコープに収集した。このスコープを、時間間隔20秒で収集データポイント500に設定した。
【0112】
乾燥後、試料の一部は、電荷の有無、及び帯電している場合は、どのようなパターンが試料上に存在しているかが視覚化できるように二極性静電粉体でコーティングした。使用した方法は、Harry H.Hull,「A method for studying the distribution and sign of static charges on solid materials」,Journal of Applied Physics,volume 20,December 1949,p.1157〜1159に記載されている。図10〜13は、中性のウェブと対比させた帯電ウェブに粉体コーティングした場合の可視的な結果を示す。図10は、中性化を実行していない実施例からの、粉体コーティングしたウェブの顕微鏡写真である。図11は、従来の核部材及び従来の石英灯の下を通過してきた実施例からの、粉体コーティングしたウェブの顕微鏡写真である。図12は、スタティックストリング、窒素エアナイフ、及び赤外線ランプの下を通過してきた実施例からの、粉体コーティングしたウェブの顕微鏡写真である。図13は、本開示による、イソプロピルアルコールで中性化した実施例からの粉体コーティングしたウェブの顕微鏡写真である。
【0113】
以下の溶媒を使用して試験を行なった。
【0114】
メタノール、HPLC Grade
エタノール、Pharmco Brand,200 Proof
イソプロパノール、研究室供給のバルク品より
メチルエチルケトン、研究室供給のバルク品より
アセトン、研究室供給のバルク品より
ヘプタン、研究室供給のバルク品より
トルエン、研究室供給のバルク品より
脱イオン水、研究室建造物へ供給される脱イオン水より
水道水、近郊の水処理センター(Woodbury市街、MN)より
食卓塩、Morton食卓塩、食堂供給品より
3M Fluorad FC−171、0.01重量%、推定22ダイン/cmの表面張力
図9の装置を、それぞれメタノール、エタノール、イソプロパノール(IPA)、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ヘプタン、トルエン、脱イオン水、水道水、塩水、及びFluorad FC−171を、中性化組立体50内に存在する溶媒として使用し、操作した。
【0115】
最小限の処置で最も効果を発揮した溶媒は、メタノール、エタノール、MEK、及びIPAであった。
【0116】
試験を行なった溶媒(メタノール、エタノール、MEK、又はIPAの1つであるかどうかには関わらず)から、ウェブを中性化する好ましい方法に関する種々の詳細事項が明らかになった。例えば、アセトンは当初、好適な溶媒の1つではなかったが、それらの試験により、溶媒のウェブ両端間にわたる均一な(面と面との)脱湿潤及び乾燥を提供することが重要であると立証された。ウェブの両方の面を均一/対称的に乾燥させる結果をもたらす側のエアナイフを調節し、溶媒浸漬後の、アイドラー53を備えた好ましくない非対称のウェブ経路を補正することで、静電気中性化は正味の中性化及び両面又は二極性の中性化のいずれにも有効となることが明らかになった。適切に調節することで、20m/分を超えるウェブ速度であっても、良好な両面又は二極性の中性化を達成した。
【0117】
図14〜27は、種々の実施例でのウェブ上に存在する電荷のグラフ表示である。特に指定がない限り、すべての試験で、ウェブ速度は4m/分であった。プローブはそれぞれ、収集したデータが特定の交差ウェブ位置の電圧を表わすように、固定された交差ウェブ位置に設置した。これらの図の時間軸は、ライン速度を乗じることで距離に変換可能である。
【0118】
図14は、従来の核部材の下を通過した後のウェブ上に存在する電荷を示す。これは基本ケースの一例と称してもよく、市販の中性化装置を使用して得られるものに類似している。ウェブ上の実際の電荷の偏差は、その材料の生成から測定までの特定の経緯に応じて、ロール間及び単一のロール内でも変化するであろう。図14の目的は、市販の中性化方法をこの特定の市販の未処理のウェブに対して用いた後にも電荷の偏差が存在するという概念を提示することにある。図15は、本開示による、イソプロピルアルコールにウェブを浸漬する前及び浸漬した後に、ウェブ上に存在する電荷を示す。図16は、本開示による、アセトンにウェブを浸漬した後に、ウェブ上に存在する電荷を示す。正味の電荷が誘起したのは、ウェブの2つの対向面が不均一に湿潤していたためである。図17は、本開示による、アセトンにウェブを均一に浸漬し、対称的に乾燥させた後に、ウェブ上に存在する電荷を示す。これは、工程中での溶媒の対称的な湿潤及び乾燥の重要性を示している。
【0119】
図18は、本開示によるいくつかの方法で、ウィック又は布類を使用できることを示す。この実施例では、本開示により、溶媒としてアセトンを再び使用した。先行実施例のように浸漬パンではなく、アセトンで湿らせて接地したワイピングクロス(「Wypall」のような)を移動ウェブの両方の面に同時に保持した。図18は、アセトン塗布の際の、正味及び上面の電荷を優れて中性化させる布拭きの前後を示している。
【0120】
しかしながら、上述のように、実行した実験に関して、すべての溶媒が有効であったわけではない。IPA及びアセトンについて用いたものと同じウェブ速度及び浸漬時間の場合、ヘプタン(図19)、水道水(図20)、及びトルエン(図21)は、ウェブの上面を中性化しなかったばかりではなく、非ゼロの正味の電荷をフィルム上に作り出した(従来の中性化装置のみの基本ケースである図14を参照)。
【0121】
図22は、中性化における脱イオン水の結果を示す。水及び脱イオン水での中性化を改善する試みでは、IPAの飛沫を追加した。2度のイソプロピルアルコールの飛沫を脱イオン水に加えた結果を図23に示す。IPAの含有量が増加するにつれ、そのシステムは、すべてがIPAであるシステムの良好な処理能力に接近していった(図14を参照)。
【0122】
別の一連の試験では、水の導電性の影響を調査した。脱イオン水(導電性が最小)を水道水(ある程度のイオン性汚染)及び塩水(水道水に食卓塩を添加)と比較した。図22を図24と比較して参照。水のイオン導電性を高水準にすること自体が、ウェブの中性化の有効性につながるわけではないことが明らかになった。
【0123】
更に別の一連の試験では、静電気中性化に対する表面張力の影響を調査した。脱イオン水(最大72ダイン/cmの表面張力)(図22)をFC−171フルオロ界面活性剤を0.01%含む脱イオン水(約21ダイン/cmの表面張力)(図25)と比較した。この場合も、界面活性剤は、水によるウェブの中性化を可能にする効果はなかった。
【0124】
様々な溶媒の特性を以下に示す。
【0125】
【表1】

【0126】
上述の実施例の工程時間は、ウェブが溶媒に湿潤する地点から溶媒が完全にウェブより乾燥させられる地点までのウェブ経路距離を、ウェブ速度で除算したものの近似とした。これらの実施例では、工程時間は約0.5分であった。適切な両面中性化のために必要ではあるが十分ではない条件とは、流体の電気的緩和時間の桁(絶対誘電率を導電率で除算)が、工程時間の桁よりも小さいことである可能性がある。溶媒の特性と本研究者の限定的な試験結果を比較することで、この必須条件が検証されるであろう。例えば、本開示により、ヘプタン及びトルエンは良好に作用せず、実際に、それらの緩和時間は概算工程時間よりも少なくとも1桁大きい。
【0127】
水は、電気的緩和時間に関しては必須条件を満たしているが、本開示によって水は良好な性能を発揮しないことが明らかになった。塩を添加した水は極めて高い導電性及び少ない緩和時間を有するものではあるが、好適な溶媒に比べて有効性に欠ける。良好な性能を発揮するすべての溶媒は、表面張力が25ダイン/cm未満であり、特定の使用基材に関する水の湿潤/脱湿潤特性が重要な役割を果たしている場合もある。しかしながら、同様の表面張力を得るべく水にフルオロ界面活性剤を添加しても、所望の良好な中性化の結果はもたらされなかった。
【0128】
界面活性剤又は塩のような溶質は、中性化されたウェブ上に不要な残留物を残す恐れがあるため、中性化液体に含有させないことが望ましいと考えられる。この例外は、中性化の工程を一種のコーティング工程と組み合わせる趣旨において、そのような残留物を残しておくことが望ましい状況となる場合であろう。
【0129】
他の溶媒、即ち3M Novec HFE−7100、7200、及び7500(最高沸点)を研究室ベンチスケールで試験した。この場合には、フィルムウェブ(Scotchpakフィルム)の試料を、以下を含む様々な溶媒に浸漬した。
【0130】
(1)ウェブライン試験での結果が良好であった、アセトン、IPA、メタノールなど、
(2)ウェブライン試験での結果が不良であった、脱イオン水、ヘプタン、トルエンなど、及び
(3)3M Novec HFE−7100、7200、及び7500(最高沸点)のような未試験の溶媒。
【0131】
これらの試験では、フィルムの試料(長さ約2フィート)をロールから巻き出した。この全長の約半分を、接地したアルミニウム製キャセロールパン(図9のウェブライン試験で使用したものと類似)に収容した溶媒に浸漬した。試料を約30秒間パン内に放置した後、取り出し、無風状態の研究室内に吊るして乾燥させた。空気乾燥するには最大数分かかったであろう。乾燥後、なんらかの電荷パターンが試料上に存在するかどうかを視覚化するため、試料を二極性静電粉体でコーティングした。使用した方法は、Harry H.Hull,「A method for studying the distribution and sign of static charges on solid materials」,Journal of Applied Physics,volume 20,December 1949,p.1157〜1159に記載されている。
【0132】
この試験の結果は、すべての溶媒が、不必要な電荷パターン(浸漬した部分)を除去すると共に、試料の浸漬しなかった半分には静電荷パターンが明白に見られることを示した。言い換えれば、緩和時間と比較して工程時間を十分に長く取りつつ、両面の対称的な処理を組み合わせた場合、ヘプタン、トルエン、及び水のような液体であっても、ウェブ試料を完全に中性化する働きをした。静電粉体方法により、絶対的な静電気の値が与えられるのではなく、総体的な静電パターンが視覚化されたということに留意されたい。また、静電粉体方法は、ウェブ表面への帯電微粒子の付着を伴うため、必然的に侵襲的となる。
【0133】
また、本開示の方法が、溶媒を使用してウェブ上に正味の電荷を提供、あるいは電荷を修正するためにも使用可能であることを示すためにも試験を行なった。以下に説明する図27の装置を使用してウェブ上の電荷を修正した。
【0134】
ダイ82を、シリンジポンプ80に取り付けたシリンジに流体連通させ、ダイを地面から絶縁するためにTeflonプレート上に設置した。チューブ及びシリンジは、流体を確実に電気的に絶縁するために、絶縁材料で作製されていた。ウェブ材料84(0.05mm(2ミル)のPETのウェブ)のロールを準備し、接地したコーティングロール86へ送り出した。従来のスタティックストリングを使用し、コーティングロール86より多少手前でウェブを中性化した。ダイ82がウェブ上にイソプロピルアルコール(IPA)を連続的にコーティングし、次にこのウェブは、乾燥のため従来の対流式オーブン88内へと送られた。
【0135】
手持ち式測定器(3M Corporation,Model 709静電気センサー)を使用して、図27に示す位置90、92、及び94で電圧を測定した。位置90では、下面がほぼ接地した状態の上面の電荷を測定した。位置92及び94では、全ウェブ電荷を測定した。
【0136】
ウェブは、ダイ82により前面、裏面、又はダイ82により両方の面をIPAで湿潤させた。位置92では、IPAを使用した場合、ウェブは全般的に湿潤状態のままだった。位置94では、ウェブは指触乾燥状態に見えた。
【0137】
システムの電気的保全性を、ダイ82への電圧(V)を(0.50mm(20ミル)のギャップで)アーク放電が発生するまで増加させて試験した。電圧降下が<4000ボルトの場合でも、電流リークは発生しないことが判明した。本明細書に提示した試験の実行は、ダイの電圧(V)を1kVとして行なった。
【0138】
6回の試験を実行した結果をここに報告する。
【0139】
(1)対照−予行試験IPA無し、帯電無し。
【0140】
(2)IPA裏(V=0)−IPAをコーティングロール直前でウェブの裏面に噴出した。ダイでのIPAコーティング無し、帯電無し。
【0141】
(3)IPA前(V=0)−IPAをダイから上面にコーティング。帯電無し、裏面IPA無し。
【0142】
(4)IPA前/裏(V=0)−IPAを上面にコーティング、裏面に噴霧。帯電無し。
【0143】
(5)IPA前(V=1000V)−IPAを1000Vで上面にコーティング。裏面にIPA無し。
【0144】
(6)IPA前/裏(V=1000)−IPAを1000Vで上面にコーティング、裏面にIPAを噴霧。
【0145】
IPAの流量が1.5mL/分で、ギャップを0.50mm(20ミル)に設定した。これらの試験の実行による電圧測定値を以下の表に示す。
【0146】
【表2】

【0147】
これらの結果より、裏面上をIPAで湿潤したとすれば(この場合は接地電位で)、ウェブは、IPAをコーティングされるダイで印加される電位と等しい電位で「コーティングされ」得ることが認められる。最終的に乾燥したウェブは、極めて均一で堅牢な電荷分布を有した。裏面上のIPAの役割は、安定した静電気の基準値(この場合は接地電位の)を提供することである。
【0148】
乾燥後、ウェブは一定の帯電電位で本質的にコーティングされている。本開示は、指定の均一な帯電電位をウェブに提供する方法及び装置について説明する中性化の場合は、指定の均一な帯電電位は、ゼロ、又は接地電位である。ウェブ帯電処理の場合は、指定の均一な帯電電位は、非ゼロである。中性化の実施例では、採用したコーティング方法は、公知の方法である浸漬コーティングであった。帯電処理の実施例では、採用したコーティング方法は、公知のコーティング方法であるスロットダイコーティングであった。
【0149】
上述の帯電処理の実施例では、最終的な電荷は、時間内では外観的に安定しており(流出が見られなかった)、追加的なコーティングをこの「電荷コーティング」の上に施してもよいことを示唆している。
【0150】
実行4及び6では、電圧の時間的変化が3つのすべての位置(「乾燥」位置94を含む)でほとんどなかったが、他の場合(少なくともウェブの一方の面がIPAで湿潤していない)では、電圧測定値の時間変動が顕著なものであったことを指摘しておく。ウェブの両方の面は、堅牢であるための方法としては、定常電位に保たれるべきであると考えられる。このことは、両方の面に溶液をコーティングすることにより、又は一方の面を、例えば処理工程中は接地した物体に接触させ続けるか、若しくは、導電性の裏材を貼り付けるかなどによって指定の電位に確実に保ち続けることにより、なされ得る。
【0151】
いくつかの実施適用例は、以下のものを含む。コーティングロールに先立つフリースパンでのウェブの両面メニスカスコーティング(両方のダイが接地している)では、IPAがコーティングロールより前で乾燥するための時間を見込むことができる。この場合、ウェブは、上面及び下面がゼロ電荷の状態でコーティングステーションに入るはずであり、コーティングロールから離れるウェブの摩擦帯電のみが問題とされるはずである。裏面上の残留IPAがこの摩擦帯電効果を多少誘発している可能性がある。
【0152】
あるいは、2つのメニスカスダイの間の電圧降下を用いて電荷を予めコーティングすることも可能であろう。これは、入ってくるウェブをコロナ帯電させて得られるであろうものより、はるかに均一な「電荷コーティング」をもたらし得る。この「電荷コーティング」の技法は、絶縁流体内の埋没電荷の効果を誘発するのにも役立つであろう。
【0153】
図28は、誘電体材料に帯電パターンを生成する方法100を説明するフローチャートである。方法100は、作業工程102、104、106、及び108を含む。作業工程102では、第1帯電電位を有する誘電体材料を得る。いくつかの実施形態では、この第1帯電電位を、例えばスコロトロンを使用して誘電体材料に印加する。他の実施形態では、誘電体材料に電荷はほとんど又はまったく存在しないため、第1帯電電位は実質的に接地電位に等しい。作業工程102は、作業工程104より前に行われるとして図示されているが、方法100の別の実施形態では、作業工程102を作業工程104の後に実施している。
【0154】
作業工程104は、第2帯電電位を有するパターン形成器具に液体を塗布するために次に実施される。この器具は、例えばスタンプ又はシリンダーであり、三次元プロファイルを有する表面を含む。例えば、いくつかの器具は、凹部により隔てられた複数個の凸条部を含む。凸条部は、所望のパターンを画定するスタンプ表面を含む。凸条部は、スタンプ表面を区切り、所望のパターンのスペースを画定する。液体をスタンプ表面に塗布する。一実施形態では、この器具を液体に押圧、又は浸漬する。別の実施形態では、液体をスタンプ表面に噴霧、あるいは他の方法で塗布する。
【0155】
液体は、典型的には少なくとも微弱な導電性である。いくつかの実施形態では、例えばこの液体は、未硬化のアクリレートモノマーを含む。いくつかの実施形態では、この液体は、工程時間よりも短い静電緩和時間を有する。他の実施形態では、液体は、メタノール、エタノール、メチルエチルケトン、イソプロパノール、又はアセトンの1つである。
【0156】
この器具は、典型的には少なくとも微弱な導電性で、いくつかの実施形態では、金属を含む。この器具は、第1帯電電位とは異なる第2帯電電位を有する。いくつかの実施形態では、この器具及び関連する液体は、ほとんど又はまったく電荷を有さず、そのため帯電電位は実質的に接地電位に等しい。他の実施形態では、第2帯電電位は第1帯電電位よりも大きい。更に他の実施形態では、第2帯電電位は第1帯電電位よりも小さい。
【0157】
作業工程106は、このパターン形成器具を用いて誘電体材料に液体を塗布し、誘電体材料の表面上に帯電パターンを生成するために次に実施される。例えば、この器具及び塗布する液体を、誘電体材料の表面に押圧し、少なくとも一部の液体をスタンプ表面から誘電体材料に転写する。誘電体材料に液体が塗布されると、接触箇所で帯電が変更される。
【0158】
いくつかの実施形態では、この器具及び液体は、接地接続されている。その結果、この器具及び液体は、接触箇所で部分的又は完全に電位を中性化する。器具及び液体が接触していない領域では、帯電の有意な変更は認められない。
【0159】
他の実施形態では、この器具及び液体は帯電している。その結果、接触箇所で誘電体材料に電荷が移動する一方で、誘電体材料の残存領域では、帯電の有意な変更は認められない。
【0160】
誘電体材料と液体及び器具との接触の結果、誘電体材料の表面上に電荷パターンが生成される。
【0161】
作業工程108が次に実施され、その間に電荷パターンが以降の処理工程のために使用される。例えば、電荷パターンは、トナー粒子を帯電領域に引き付けるために使用される。
【0162】
図29〜33は、帯電した誘電体材料に電荷パターンを生成する方法の一例を示す。より具体的には、図29〜31は、図28で示す作業工程104中におけるような、パターン形成器具に液体を塗布する方法を示す。図32〜33は、電荷パターンを生成するための図28で示す作業工程106中などの、誘電体材料に液体を塗布する方法を示す。
【0163】
図29は、パターン形成器具に液体を塗布する方法の第1作業工程を示す概略斜視図である。この作業工程は、シート112、容器114、及び液体116を含む。シート112は、ガラスシート、金属プレート、又は別の材料のシートのような、材料のシートである。液体116は容器114内に収容される。容器114は、液体116の収容に適した任意の容器である。この第1作業工程では、シート112を槽114内に浸漬し、次に取り出す。一旦取り出されると、液体116の薄膜層がシート112上に残留する。
【0164】
図30及び31は、パターン形成器具に液体を塗布する方法の第2作業工程を示す概略斜視図である。この作業工程は、プレート112、液体116、及びパターン形成器具120を含む。パターン形成器具120は、スタンプ表面122を含む。
【0165】
液体をプレートに塗布した後(例、図29に示す)、この液体は次にパターン形成器具120のスタンプ表面122に転写される。これは、パターン形成器具120のスタンプ表面122を、シート112上の液体116に押圧することによりなされる。パターン形成器具120を、次にシート112から分離する。少なくとも一部の液体116が、スタンプ表面122上に転写される。この実施形態では、パターン形成器具120は、電気的に接地電位と結合している。
【0166】
図32〜33は、パターン形成器具から誘電体材料に液体を塗布する方法を示す概略斜視図である。この方法は、パターン形成器具120のスタンプ表面122に液体を塗布した後(例えば、図29〜31を参照して説明したように)に行われる。
【0167】
この実施形態では、誘電体材料132は帯電しており、次に接地したプレート130上に配置されるか、又は接地したプレート130上において帯電する。例えば、スコロトロンを使用して、誘電体材料132に実質的に均一な電荷を印加する。必要な場合、他の電荷変更装置を使用して所望の電荷を得る。材料132の本来的な誘電性が起因となり、接地したプレート130の存在にもかかわらず、誘電体材料132の表面上に電荷を残存させる。
【0168】
パターン形成器具120のスタンプ表面122を誘電体材料132の表面に押圧する。少なくともスタンプ表面122上の一部の液体116が、誘電体材料132上に転写される。その際、誘電体材料116上に存在する電荷は、スタンプ表面122からの液体116により中性化される。しかしながら、誘電体材料116上に存在し、液体116及びスタンプ表面122に接触しない電荷は、中性化されない。帯電パターンが、パターン形成器具120のスタンプ表面122の形状及びパターンに対応して、誘電体材料132上に形成される。
【0169】
他の実施形態は、パターン形成器具及び液体を使用するような、誘電体材料への電荷の印加に有用である。そのような実施形態では、パターン形成器具及び関連する液体を、誘電体材料の帯電電位よりも大きな帯電電位に(例えば、高電圧電源に電気的に結合させることにより)帯電させる。いくつかの実施形態では、誘電体材料は帯電していない。帯電した液体が誘電体材料に塗布されると、電荷はその液体と共に移動する。液体が乾燥した後であっても、電荷は接触領域に残存する。
【0170】
いくつかの実施形態は、マイクロフレキソ印刷工程に匹敵する速度でのミクロン規模の電荷パターン形成を可能とし、基材の界面エネルギーが、付着する液体に適合するならば、実質的にいかなる誘電性基材上にも電荷パターンを形成するために使用することができる。本開示によるいくつかの実施形態は、例えば、第2材料(例、ナノ粒子)を誘導して付着させた後に、所定の位置で硬化可能な未硬化のアクリレートの帯電パターンの付着を含む。基材への接着力は、任意の硬化材料の接着力と同質である。様々なモノマー、架橋剤、開始剤、及び機能成分を使用してもよい。液体の導電性は高い必要はない。本明細書で示すように、帯電防止方法における導電性は、液体パターンの適切な帯電を可能とするのに十分である。本開示によるいくつかの実施例は、例えばイソプロピルアルコール又はメチルエチルケトンのような一般的な溶媒の帯電パターンの付着も含む。溶媒はその後、誘導体の表面上に帯電パターンを残して表面から蒸発してもよい。誘電体表面に付与された電荷分布は、電荷を付着させるために使用した液体の種類とは無関係、及び液体が所定の場所に残るか又は蒸発するかとは無関係に、均一又はパターン形成されていてよい。
【0171】
実施例、図34〜50
下記の非制限的な実施例は、本開示の様々な実施形態を示すものである。
【0172】
図34〜37は、実施した試験で測定した、誘電体材料の帯電電位を示す。この実施例は、接地した導電性器具から帯電した誘電体材料に未硬化アクリレートモノマーを付着させることにより電荷パターンの生成が可能であることを示す。
【0173】
誘電電位の測定値を、Trek Model 400静電電圧計を手動操作xyステージに取り付けたTrek Model 401P−E高速プローブと共に使用してマップした。プローブから試料までのギャップは約1mmを用いた。
【0174】
図34は、誘電体材料を帯電処理した後の誘電体材料の帯電電位のプロット図である。帯電処理は、注文制作10”スコロトロンを使用して実施した。スコロトロンのスクリーンを、2MOhm抵抗器を通じて接地した。コロナ放射電極(金メッキのこぎり歯ブレード)をGlassman+10kV、30mA高圧直流電源を使用して指定電圧に保持した。2MOhm抵抗器により、スコロトロンのブレードに印加される電圧の関数である一定の電位に、スコロトロンのスクリーンが維持される。誘電体材料を、接地したアルミニウムプレートの上面にテープ留めし、スコロトロン装置の下を通過させた。約1mmのギャップが、スコロトロンと誘電体材料との間にあった。これが、スコロトロンのスクリーンの電位に近似した、誘電体材料の上面の帯電を引き起こした。
【0175】
この工程で、スコロトロン帯電装置を+7kVのブレード電位に帯電させた。図34に示すように、結果として帯電した誘電体材料の表面電位は、約900ボルトあたりであった。
【0176】
図35は、誘電体材料から電荷を除去した後の帯電電位のプロット図である。図34に示すように誘電体材料を帯電処理した後、電荷を実質的に誘電体材料から除去した。図35に示すように、結果としての誘電体材料の帯電電位は、約ゼロボルトであった。
【0177】
図36は、誘電体材料を再帯電処理した後の、帯電電位のプロット図である。この工程で、スコロトロン帯電装置を再び使用したが、今回は+8kVのブレード電位とした。図36に示すように、結果としての帯電した誘電体材料の表面電位は、約1400ボルトあたりであった。
【0178】
図37は、液体コーティングしたパターン形成器具によるスタンプ後の、誘電体材料の帯電電位のプロット図である。パターン形成器具は、導電性材料から作製され、約5mmの間隔を置いた2つのリブを有していた。この器具を、電気的に接地電位と結合させた。
【0179】
アクリレートモノマーの薄いコーティングを、図29〜31に示した工程によりパターン形成器具のスタンプ表面に塗布した。アクリレートモノマーの導電率は、おおよそ10−10S/mであった。次にパターン形成器具のスタンプ表面を、帯電した導電性材料に押圧して、取り外した。
【0180】
結果としての帯電電位を図37に示す。結果としての帯電電位は、帯電領域及びより低い帯電領域からなるパターンを含んでいる。帯電領域(例、xが約1〜2mm及び9〜12mm)が、約1400ボルトの帯電電位を有する一方、より低い帯電領域(例、xが0mm及び約6mm)の帯電電位は、約300ボルトである。したがって、パターン形成器具及びアクリレートモノマーに接触した領域は、パターン形成器具及びアクリレートモノマーに接触しなかった領域よりも、電荷が減少する。
【0181】
図38〜50は、実施した試験で測定した、誘電体材料の帯電電位を示す。これらの実施例は、帯電したパターン形成器具から、比較的帯電していない誘電体材料に未硬化のアクリレートモノマーを付着させることにより、電荷パターンの生成が可能となることを示す。帯電したアクリレートモノマーを使用して、次にトナー粒子を引き付けることができる。
【0182】
図38〜40は、誘電体材料160上に、トナー粒子を引き付けることが可能な電荷パターンを生成する方法を示す。これらの試験では、パターン形成器具150を使用した。このパターン形成器具は、幅が約100マイクロメートルの平坦な形状を備えた、グラビアロール材料の一片であった。この器具の一部分を図41に示す。
【0183】
図38は、電荷パターンを生成する方法の第1作業工程を示す概略側面ブロック図である。この作業工程は、スタンプ表面152を有するパターン形成器具150、液体154、誘電体材料シート156、及びプレート158を含んでいた。
【0184】
誘電体材料シート156をプレート158の上面に配置した。液体154を誘電体材料シート156の上面に配置した。この実施例では、液体154はアクリレートモノマーであった。パターン形成器具150を、+10kV、30mA高圧直流電源である電圧供給源と電気的に結合した。パターン形成器具150を液体154に押圧し、スタンプ表面152を液体154でコーティングした。パターン形成器具150を、次に液体154から取り外した。
【0185】
図39は、電荷パターンを生成する方法の第2作業工程を示す概略側面ブロック図である。この作業工程は、パターン形成器具150、液体154、誘電体材料160、パッド162、及びプレート164を含んでいた。プレート164は、電気的に接地電位と結合している金属プレートであった。パッド162を、ゴムパッド162上に設置した。誘電体材料160を、ゴムパッド162上に設置した。パターン形成器具150は、上述のように、液体154のコーティングを有するスタンプ表面152を含んでいた。
【0186】
スタンプ表面152をパターン形成器具150に押圧し、誘電体材料160の表面に液体154を塗布した。パターン形成器具150を、次に誘電体材料160から取り外した。液体154の一部が、誘電体材料160の表面上に残留した。
【0187】
図39では、パッド162の使用が示されているが、いくつかの試験は、パッド162を使用せずに実施した。以下に述べるように、パッド162を使用すると、帯電液体からの電界の鮮明さが低減する傾向がある。したがって、パッド162は、必須ではない。
【0188】
図40は、電荷パターンを生成する方法の第3作業工程を示す概略側面ブロック図である。この作業工程は、パターン形成された液体154を上面に有する誘電体材料160、パッド162、及びプレート164を含んでいた。加えて、トナー170及びプレート172を使用した。
【0189】
プレート172は、電気的に接地電位と結合している金属プレートであった。トナー170を、プレート172の上面に配置した。
【0190】
プレート164、パッド162、及び誘電体材料160を裏返し、トナー170に近接して配置した。プレート172及びトナー170を振り動かし、トナー170の誘電体材料160への移動を促した。
【0191】
誘電体材料160をトナー170に近接して配置した場合、誘電体材料160上のパターン形成された帯電液体154により生成する電界が、トナー粒子170を帯電液体154に引き付けて付着させる原因となった。
【0192】
図41は、いくつかの試験で使用したパターン形成器具150の一部分である。パターン形成器具150は、幅約100マイクロメートルの形状を含む。ギャップ部が、隣接する形状を離隔させている。
【0193】
図42〜47は、図41に示したパターン形成器具を使用し、図38〜40に関する説明と同様に実施した、3つの別個の試験結果を示す。第1の試験の結果を図42に示す。第2の試験の結果を図43〜45に示す。第3の試験の結果を図46〜47に示す。
【0194】
図42は、第1の試験中にトナー粒子に近接して配置した後の誘電体材料の写真である。第1の試験では、ゴムパッド162を含む、図38〜40の配置構成を使用した。パターン形成器具150と電気的に結合する直流電源を+2kVに設定した。使用した液体(例、図38)は、メチルエチルケトン(MEK)中の25重量%のAccentrumアクリレートを厚さ約0.127mm(0.005インチ)でコーティングした。
【0195】
誘電体材料をトナーに近接して配置した場合、トナー粒子は帯電液体のパターンに引き付けられた。結果として得られたトナー線の写真を示す。Olympus SZK12顕微鏡を使用して写真を撮影した。
【0196】
図43〜45は、第2の試験中にトナー粒子に近接して配置した後の誘電体材料の写真である。第2の試験では、図38〜40の配置構成を使用したが、誘電体材料160とプレート164との間にゴムパッド162を使用しなかった。パターン形成器具150と電気的に結合する直流電源を+1kVに設定した。液体は、MEK中の5重量%のAccentrumアクリレートを厚さ約0.127mm(0.005インチ)でコーティングした。図43及び44は、トナー線を含む誘電体材料160の、2つの異なる領域の写真である。図45は、誘電体材料160上の単一のトナー線の高倍率の像である。
【0197】
図46〜47は、第3の試験中にトナー粒子に近接して配置した後の誘電体材料の写真である。第3の試験では、図38〜40の配置構成を使用した。パターン形成器具150と電気的に結合する直流電源を+1kVに設定した。液体は、MEK中の5重量%のAccentrumアクリレートを厚さ約0.127mm(0.005インチ)でコーティングした。図46は、この試験で得た、誘電体材料のトナー線の写真である。図47は、この試験で得た、単一のトナー線の拡大画像である。
【0198】
図48〜50は、誘電体材料188上の帯電液体184から放射される電界への、誘電体材料の厚さの影響を示す。実験の設定は、図40で示したシステムに倣って設計したが、トナー170を除き、誘電体材料160及びパッド162を単一の誘電体層に統合した。
【0199】
図48〜50は、パッドの厚さの電界への影響を定性的に示す。この実施例では、誘電体材料を導電性プレート180に取り付けた。導電性プレートを電気的に接地電位と結合させた。帯電してパターン形成された液体184を誘電体材料182に塗布した。第2導電性プレート188を誘電体材料及びパターン形成された液体から間隔を置いて配置した。第2導電性プレート188も、電気的に接地電位と結合した。誘電体材料182と第2導電性プレート188との間の空隙における電界を、図48〜50に示すように測定した。これらの結果は、厚い誘電体材料(図48)の場合よりも薄い誘電体材料(図50)の場合に、電界がより鮮明かつより集束することを示している。これは、より鮮明な像は、より薄い誘電体材料の場合に生じることを示唆している。
【0200】
同様に、これらの試験は、より鮮明かつより焦点の合った像は、隣接するゴムパッド(例えば、図39及び40に示す162)を省いた薄い誘電性パッドにより結果的に生じることを示唆しているが、このことは具体的には試験されなかった。
【0201】
上記明細書及び実施例は、特定の実施形態の製造及び使用を完全に記載すると考えられる。多くの実施形態は、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく行なうことができるため、本開示の真の範囲及び趣旨は、以下に添付する請求の範囲の広義に属するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体材料上の電荷を修正する方法であって、前記方法は、
実質的に不均一な帯電分布を表面上に有する誘電体材料を得る工程であって、前記帯電分布は接地電位に対して測定されている工程と、
前記誘電体材料の前記表面に、少なくとも微弱な導電性液体を塗布する工程と、
前記少なくとも微弱な導電性液体を前記表面から少なくとも部分的に除去し、実質的に均一な帯電を前記表面上に残す工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも微弱な導電性液体が、約マイナス10,000ボルト〜約プラス10,000ボルトの範囲の電位を有して塗布される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも微弱な導電性液体が、前記接地電位と実質的に等しい電圧を有して塗布される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記液体が、メタノール、エタノール、メチルエチルケトン、イソプロパノール、アセトン、又はアクリレートの1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記液体が約10〜約40の範囲の誘電率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記液体が工程所要時間よりも短い静電緩和時間を有し、前記静電緩和時間が約3×10−5秒未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記微弱な導電性液体がパターンで塗布され、前記表面上の前記均一な帯電が前記パターンに配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
誘電体材料上に帯電パターンを生成する方法であって、前記方法は、
第1帯電電位を有する誘電体材料を得る工程と、
少なくとも微弱な導電性液体を前記誘電体材料の第1部分に塗布する工程であって、前記少なくとも微弱な導電性液体が第2帯電電位を有する、工程と、
前記液体を前記誘電体材料の前記第1部分から少なくとも部分的に除去し、実質的に均一な帯電を前記誘電体材料の前記第1部分上に残す工程と、を含む、方法。
【請求項9】
前記誘電体材料がウェブを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記誘電体材料が少なくとも3メートルの長さを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第1帯電電位を有する誘電体材料を得る工程は、
不均一な帯電電位を有する前記誘電体材料を得る工程と、
前記誘電体材料の平均帯電電位が約ゼロボルトとなるように、前記誘電体材料上の電荷を実質的に中性化する工程と、を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記電荷を実質的に中性化する工程が、空気イオン化装置、電気式静電気除去装置、誘導式静電気除去装置、及び核式静電気除去装置からなる群から選択される、中性化システムによって実施される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記誘電体材料に前記液体を塗布している間、前記誘電体材料が移動している、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記均一な帯電により生成される電界がトナー粒子を引き付けるように、前記誘電体材料を前記トナー粒子に近接して配置する工程を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記誘電体材料上に前記トナー粒子を硬化させる工程を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記誘電体材料上に第2材料を配置して、前記トナー粒子を前記第2材料へ移動させる工程と、前記第2材料を前記誘電体材料から除去する工程と、を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記液体を前記第1部分に塗布する工程が、
前記液体をパターン形成器具に塗布する工程であって、前記第2パターン形成器具が第2帯電電位である工程と、
前記液体を前記パターン形成器具から前記誘電体材料に塗布する工程と、を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
前記液体をパターン形成器具に塗布する工程が、
材料のシートを得る工程と、
前記材料のシートを前記液体に浸漬する工程と、
前記液体のコーティングが前記シートの表面上に残留するように、前記材料のシートを前記液体から取り出す工程と、
前記液体の前記コーティングの一部分を前記パターン形成器具上に移動させるために、前記パターン形成器具から前記液体のコーティングに接触させる工程と、を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記液体を前記第1部分から除去する工程が、蒸発、ヒーター、赤外線ヒーター、対流式オーブン、ウィック、ワイパー、スキージ、エアナイフ、マイクロ波、空気対流システム、の1つを使用して前記液体を除去する工程を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項20】
前記液体がアクリレートを含み、前記液体を前記第1部分から除去する工程が、前記誘電体表面上で前記アクリレートを乾燥させる工程を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項21】
誘電体材料の細長いウェブを中性化する方法であって、前記方法は、
少なくとも微弱な導電性液体を接地電位と電気的に結合する工程と、
前記接地電位と完全には実質的に等しくない帯電電位を有する誘電体材料を得る工程と、
前記連続ウェブの一部分を前記液体に浸漬し、前記細長いウェブの前記部分を完全に覆って、前記細長いウェブ上の電荷を中性化する工程と、
前記連続ウェブの前記部分を前記液体から取り出す工程と、
前記浸漬後に前記連続ウェブから前記液体を少なくとも部分的に乾燥させる工程と、を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【公表番号】特表2011−509501(P2011−509501A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539702(P2010−539702)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/086982
【国際公開番号】WO2009/085751
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】