説明

誘電体磁器組成物

【目的】 1000℃以下の低温で焼成できる誘電体磁器組成物を得る。
【構成】 Ca,Nb,Tiの酸化物よりなる材料100重量%に対して、ガラスを5〜30重量%、CuOを1〜15重量%混合し、焼結した誘電体磁器組成物である。ここで、Ca,Nb,Tiは、それぞれ、CaTiO3 ,Nb2 5 ,TiO2 に換算して、CaTiO3 が50.0〜99.3モル%、Nb2 5 が0.53〜11.5モル%、TiO2 が0.17〜38.5モル%の組成からなる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は誘電体磁器組成物に関し、特にたとえば、磁器コンデンサなどに用いられる誘電体磁器組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】電子機器の小型化にともなって、電子部品のチップ化が進み、磁器コンデンサにおいても、チップコンデンサが広く使用されている。このようなチップコンデンサを製造する場合、誘電体材料と内部電極になる金属材料とを同時に一体焼成することによって作製される。また、従来より、低容量型の磁器コンデンサの磁器材料として、低誘電率を有する酸化チタン系の材料が広く使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、このような酸化チタン系の誘電体磁器材料では、その焼成温度が1200〜1400℃という高温であるため、内部電極用材料としては、このような高温でも安定なPt,Pdなどの高価な材料を使用する必要があった。そのため、電極用材料費や焼成のための電力費などのコストが多くなっていた。
【0004】それゆえに、この発明の主たる目的は、低温で焼成することができ、電極用材料として安価な金属を使用することができる誘電体磁器組成物を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】この発明は、Ca,NbおよびTiの酸化物よりなる材料100重量%に対して、ガラスを5〜30重量%、CuOを1〜15重量%混合し焼結した、誘電体磁器組成物である。ここで、Ca,NbおよびTiの酸化物は、それぞれ、CaTiO3 ,Nb2 5 ,TiO2 に換算して、CaTiO3 が50.0〜99.3モル%、Nb2 5 が0.53〜11.5モル%、TiO2 が0.17〜38.5モル%の組成よりなることが望ましい。
【0006】
【作用】Nb2 3 およびTiO2 が、仮焼成において、素原料の合成を促進する。また、CuOは低温焼結を促進する。さらに、ガラスは焼結助剤として、低温焼結を促進する。
【0007】
【発明の効果】この発明によれば、材料の焼結温度を1000℃以下に低温化することができる。そのため、焼成のための電力費を低減することができる。また、材料の焼結温度を低温化することができるため、電極用材料として、Agなどの安価な材料を使用することができる。
【0008】この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【0009】
【実施例】まず、原料として、炭酸カルシウム,酸化チタン,酸化ニオブを準備した。これらの原料を、表1および表2に示す組成が得られるように秤量し、16時間ボールミルで混合して、蒸発乾燥して混合物を得た。
【0010】
【表1】


【表2】


【0011】この混合物を大気中において1000℃で1時間仮焼し、ガラス粉末と酸化銅とを加えて、再びボールミルで16時間混合粉砕を繰り返し、有機バインダを加えてシート状に成形した。得られたシート上に、Agを主成分とする導体ペーストを、スクリーン印刷で所定の形状に印刷した。そして、導体ペーストを印刷したシートおよび導体ペーストを印刷していないシートを複数積層し、1ton/cm2 の圧力で圧着し、所定の大きさにカットして積層物を得た。この積層物を、大気中において950℃で2時間焼成したのち、その両端部にAgペーストをディップ付けし、800℃で焼き付け外部電極を形成し、チップコンデンサ10を得た。したがって、チップコンデンサ10は、図1に示すように、誘電体磁器12の内部に内部電極14が形成され、さらに誘電体磁器12の両端面に内部電極14と接続される外部電極16が形成された構造になっている。得られたチップコンデンサについて、比誘電率ε,誘電損失tanδ,比抵抗ρおよび線収縮率Shを測定し、その結果を表3および表4に示した。なお、比抵抗については、その対数値logρを示した。
【0012】
【表3】


【表4】


【0013】次に、誘電体磁器組成物の組成を限定した理由について説明する。Nb2 3 の含有量が0.53モル%より少ないと、仮焼成において素原料の合成が進まない。また、試料番号46,47,48,49,50のように、Nb2 3 の含有量が11.5モル%より多いと、誘電損失tanδが大きく、かつ比抵抗logρが低くなる。TiO2 の含有量が0.17モル%より少ないと、仮焼成において素原料の合成が進まない。また、試料番号41,42,43,44,45のように、TiO2 の含有量が38.5モル%より多いと、比誘電率εが小さくなり、かつ、tanδが大きくなる。試料番号2,6,12,16,22,26,32,36,42,46のように、CuOの添加量が1.0重量%未満では、焼成温度が高くなる。また、試料番号5,9,15,19,25,29,35,39,45,49のように、CuOの添加量が15.0重量%を超えると、誘電損失tanδが大きくなり、かつ比抵抗logρが低くなる。試料番号1,11,21,31,41のように、ガラスの添加量が5.0重量%未満では、低温焼結できない。また、試料番号10,20,30,40のように、ガラスの添加量が30重量%を超えると、収縮が進行しにくくなる。
【0014】それに対して、この発明の範囲内の誘電体磁器組成物では、1000℃以下の低温で焼結できるため、焼成のための電力費を低減することができる。また、低温で焼成できるため、チップコンデンサの内部電極用材料としてAgなどの比較的安価な材料を使用することができる。しかも、チップコンデンサとしても、従来のものと変わらない特性のものが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】誘電体磁器組成物を用いたチップコンデンサの断面図である。
【符号の説明】
10 チップコンデンサ
12 誘電体磁器
14 内部電極
16 外部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】 Ca,NbおよびTiの酸化物よりなる材料100重量%に対して、ガラスを5〜30重量%、CuOを1〜15重量%混合し焼結した、誘電体磁器組成物。
【請求項2】 前記Ca,NbおよびTiの酸化物は、それぞれ、CaTiO3 ,Nb2 5 ,TiO2 に換算して、CaTiO3 50.0〜99.3モル%Nb2 5 0.53〜11.5モル%TiO2 0.17〜38.5モル%の組成よりなる、請求項1の誘電体磁器組成物。

【図1】
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