説明

誤り訂正処理装置及び誤り訂正処理方法

【課題】この発明は、デジタル情報系列及びそれに付加する誤り訂正用のパリティビット系列に対して、記録再生系の要求に応じた形態への変換処理を容易に行なうことができ、しかも記録するデータ長も短くし得る誤り訂正処理装置及び誤り訂正処理方法を提供することを目的としている。
【解決手段】記録再生系の要求に応じた形態に変換するための変調処理が施されたデジタル情報系列に所定パターンのダミーシンボルを付加したデータ系列に対して、誤り訂正用のパリティビット系列を生成する。このパリティビット系列が記録再生系の要求に応じた形態に対応している場合、ダミーシンボルを除く変調処理後のデジタル情報系列とパリティビット系列とを対応させて出力する。また、このパリティビット系列が記録再生系の要求に応じた形態に対応していない場合、変調処理後のデジタル情報系列に他のパターンのダミーシンボルを付加して、新たな誤り訂正用のパリティビット系列を生成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、デジタル情報系列に誤り訂正用の符号化処理を施す誤り訂正処理装置及び誤り訂正処理方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、例えば映像及び音声等に対応したデジタル情報系列を、ディスクやテープ等の情報記録媒体に記録再生するシステムでは、記録するデジタル情報系列にECC(error correcting code)パリティを付加し、その後、記録再生系の要求に応じるための変調処理、例えばゼロが一定長以上続かないようにする処理を施すようにしている。
【0003】
これに対し、近年では、記録するデジタル情報系列に記録再生系の要求に応じるための第1の変調処理を施してECCパリティを付加し、その後、付加したECCパリティに対して記録再生系の要求に応じるための第2の変調処理を施す符号化手段(リバースECCと称される場合がある)が開発されている。
【0004】
しかしながら、このような符号化手段では、本来のデジタル情報系列に対する第1の変調処理と、そのECCパリティに対する第2の変調処理との2回の変調処理を行なう必要があるため、構成が複雑化するとともに、記録するデータのビット数も多くなるという不都合を有している。
【0005】
特許文献1には、記録再生系の要求に応じるための変調処理を施したデジタル情報系列にダミービットを付加して誤り訂正用のパリティビット系列を生成し、生成したパリティビット系列が記録再生系の要求に対応しない場合には、ダミービットの値を変更し新たなパリティビット系列を生成して置き換えるようにすることが開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、誤り訂正符号としてRS(reed solomon)符号を用いる場合、変調テーブルによってデータを変換する代わりにガロア体の元を乗算することで、変調回路において誤り訂正回路を1個持つだけでも、本来のデータと同様な誤り訂正能力を、乗算ガロア体情報にも持たせるようにすることが開示されている。
【0007】
さらに、特許文献3には、多重化情報により多重化されたデータストリームに対して多重化情報を含む同期コードワードの挿入及び変調を行ない、それぞれの変調されたデータストリームのうちDC成分の最も小さなデータストリームを選択させるようにすることが示されている。
【特許文献1】特開2007−141341号公報
【特許文献2】特許第3167638号公報
【特許文献3】特許第3827678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明は上記事情を考慮してなされたもので、デジタル情報系列及びそれに付加する誤り訂正用のパリティビット系列に対して、記録再生系の要求に応じた形態への変換処理を容易に行なうことができ、しかも記録するデータ長も短くし得る誤り訂正処理装置及び誤り訂正処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る誤り訂正処理装置は、入力されたデジタル情報系列に対して、記録再生系の要求に応じた形態に変換するための変調処理を施す変調手段と、変調手段で変調処理の施されたデジタル情報系列の所定位置に、予め定められたパターンのダミーシンボルを付加する付加手段と、付加手段でダミーシンボルの付加された変調処理後のデジタル情報系列に対して、誤り訂正用のパリティビット系列を生成する符号化手段と、符号化手段で生成されたパリティビット系列が記録再生系の要求に応じた形態に対応しているか否かを判別する判別手段と、判別手段でパリティビット系列が記録再生系の要求に応じた形態に対応していると判断された場合、ダミーシンボルを除く変調処理後のデジタル情報系列とパリティビット系列とを対応させて出力し、判別手段でパリティビット系列が記録再生系の要求に応じた形態に対応していないと判断された場合、変調処理後のデジタル情報系列に対して予め定められた他のパターンのダミーシンボルを付加して、新たな誤り訂正用のパリティビット系列を生成させる制御手段とを備えるようにしたものである。
【0010】
また、この発明に係る誤り訂正処理方法は、入力されたデジタル情報系列に対して、記録再生系の要求に応じた形態に変換するための変調処理を施す第1の工程と、第1の工程で変調処理の施されたデジタル情報系列の所定位置に、予め定められたパターンのダミーシンボルを付加する第2の工程と、第2の工程でダミーシンボルの付加された変調処理後のデジタル情報系列に対して、誤り訂正用のパリティビット系列を生成する第3の工程と、第3の工程で生成されたパリティビット系列が記録再生系の要求に応じた形態に対応しているか否かを判別する第4の工程と、第4の工程でパリティビット系列が記録再生系の要求に応じた形態に対応していると判断された場合、ダミーシンボルを除く変調処理後のデジタル情報系列とパリティビット系列とを対応させて出力する第5の工程と、第4の工程でパリティビット系列が記録再生系の要求に応じた形態に対応していないと判断された場合、変調処理後のデジタル情報系列に対して予め定められた他のパターンのダミーシンボルを付加して、新たな誤り訂正用のパリティビット系列を生成させる第6の工程とを備えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0011】
上記した発明によれば、記録再生系の要求に応じた形態に変換するための変調処理が施されたデジタル情報系列にダミーシンボルを付加したデータ系列に対して、誤り訂正用のパリティビット系列を生成し、そのパリティビット系列が記録再生系の要求に応じた形態に対応している場合、ダミーシンボルを除く変調処理後のデジタル情報系列とパリティビット系列とを対応させて出力し、パリティビット系列が記録再生系の要求に応じた形態に対応していない場合、変調処理後のデジタル情報系列に対して他のパターンのダミーシンボルを付加して、新たな誤り訂正用のパリティビット系列を生成させるようにしている。このため、デジタル情報系列及びそれに付加する誤り訂正用のパリティビット系列に対して、記録再生系の要求に応じた形態への変換処理を容易に行なうことができ、しかも記録するデータ長も短くすることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、この実施の形態で説明する情報記録再生装置であるHDD(hard disk drive)11の概略を示している。すなわち、このHDD11は、外部のホスト装置12との間で情報の授受を行なうためのホストI/F(interface)13を備えている。
【0013】
このホスト装置12としては、例えばPC(personal computer)等である。このホスト装置12は、例えば所定のアプリケーションソフトウエアを実行する際に、HDD11を利用して情報の書き込み及び読み出しを実行するとともに、最終的に得られた情報の保存先としてもHDD11を利用することができる。
【0014】
この場合、ホスト装置12は、HDD11に対して情報の書き込みや情報の読み出しを要求するコマンドを発生している。これらのコマンドは、ホストI/F13を介して主制御部14に供給され解析される。この主制御部14は、CPU(central processing unit)を内蔵し、HDD11が実行する各種の動作を統括的に制御している。
【0015】
例えば、ホスト装置12から書き込み要求コマンドが供給された場合、その書き込み要求コマンドは、ホストI/F13を介して主制御部14に供給され解析される。これにより、主制御部14は、記録用処理部15を駆動するとともに、ディスクI/F16を介してハードディスク17を書き込み状態に制御する。
【0016】
また、書き込むべきデジタル情報系列は、ホストI/F13を介して記録用処理部15に供給される。この記録用処理部15は、入力されたデジタル情報系列に対して、例えばランレングス変調処理のような、このHDD11における記録再生系の要求に応じた形態の変調処理(例えばゼロが一定長以上続かないようにする変調処理)を施した後、例えばRS符号に基づいたECCパリティビット系列を算出して付加している。
【0017】
そして、この記録用処理部15により、上記した記録のための必要な処理が施されたデジタル情報系列は、ディスクI/F16を介してハードディスク17に書き込まれ、ここに、ホスト装置12からの書き込み要求に基づいた、ハードディスク17へのデジタル情報系列の書き込み処理が実行される。
【0018】
一方、ホスト装置12から読み出し要求コマンドが供給された場合、その読み出し要求コマンドは、ホストI/F13を介して主制御部14に供給され解析される。このため、主制御部14は、再生用処理部18を駆動するとともに、ディスクI/F16を介してハードディスク17を読み出し状態に制御する。
【0019】
また、ハードディスク17から読み出されたデジタル情報系列は、ディスクI/F16を介して再生用処理部18に供給される。この再生用処理部18は、入力されたデジタル情報系列に対して、それに付加されているECCパリティビット系列に対応した誤り訂正処理を施した後、例えばランレングス変調処理のような変調に対する復調処理を施すことにより、元のデジタル情報系列を復元している。
【0020】
そして、この再生用処理部18により、上記した再生のための必要な処理が施されたデジタル情報系列は、ホストI/F13を介してホスト装置12に出力され、ここに、ホスト装置12からの読み出し要求に基づいた、ハードディスク17からのデジタル情報系列の読み出し処理が実行されることになる。
【0021】
ここで、この実施の形態の主要部を説明するに先立ち、前述したリバースECCの、現在、一般的に行なわれている手法について簡単に説明する。すなわち、このリバースECCでは、まず、情報記録媒体に記録するデジタル情報系列に対して、例えばランレングス変調処理のような、記録再生系の要求に応じた形態に変換するための第1の変調処理(例えばゼロが一定長以上続かないようにするラン長制限処理)を施している。
【0022】
その後、第1の変調処理が施されたデジタル情報系列に対して誤り訂正のためのECCパリティビット系列を生成し、その生成したECCパリティビット系列に対して、記録再生系の要求に応じた形態に変換するための第2の変調処理を施している。そして、第1の変調処理が施されたデジタル情報系列と、第2の変調処理が施されたECCパリティビット系列とが、対応して情報記録媒体に記録されるようになっている。
【0023】
具体的に言えば、今、情報記録媒体に記録するデジタル情報系列として、図2(a)に示すように、4096ビットのユーザデータを考える。なお、このデジタル情報系列は、8ビットを1バイトとすると512バイトとなり、10ビットを1シンボルとすると410シンボルとなる。
【0024】
そして、この図2(a)に示した4096ビットのデジタル情報系列は、ランレングス変調処理のような、記録再生系の要求に応じた形態に変換するための第1の変調処理(例えばゼロが一定長以上続かないようにするラン長制限処理)が施されることによって、図2(b)に示すように、4120ビット(515バイト)にデータ量が増加する。
【0025】
その後、この図2(b)に示した第1の変調処理後の4120ビットのデジタル情報系列に対して、図2(c)に示すように、誤り訂正のためのECCパリティビット系列を生成する。この場合、生成されたECCパリティビット系列が400ビットを有するとすると、この400ビットのECCパリティビット系列は、記録再生系の要求に応じた形態に変換するための第2の変調処理が施されることにより、図2(d)に示すように、420ビットにデータ量が増加する。
【0026】
すなわち、一般的なリバースECCによる符号化手段では、図2(a)に示した4096ビットのデジタル情報系列を情報記録媒体に記録する場合に、第1の変調処理と第2の変調処理との2回の変調処理が必要であるため処理が煩雑になる。また、第1の変調処理後の4120ビットのデジタル情報系列と、第2の変調処理後の420ビットのECCパリティビット系列とを合計した、4540ビットのデータを記録することになるため、記録するデータ長が長くなっている。
【0027】
そこで、この実施の形態では、以下に述べる構成及び方法により、記録再生系の要求に応じた形態への変換処理が1回で済み、しかも、記録するデータ長も短くすることができるようにしている。
【0028】
すなわち、図3は、上記した記録用処理部15の一例を示している。まず、情報の記録時に、ホスト装置12からホストI/F13を介して供給されるデジタル情報系列(ユーザデータ)は、入力端子19を介して変調処理部20に供給される。この変調処理部20に入力されるデジタル情報系列は、図4(a)に示すように、4096ビット(=512バイト)となっているものとする。
【0029】
この変調処理部20は、入力されたデジタル情報系列に対して、例えばランレングス符号化処理のような、このHDD11における記録再生系の要求に応じた形態の変調処理、例えばゼロが一定長以上続かないようにするラン長制限処理を施している。このラン長制限後のデジタル情報系列は、図4(b)に示すように、4120ビット(515バイト)になる。
【0030】
そして、この変調処理部20でラン長制限処理の施されたデジタル情報系列は、ダミーシンボル付加部21に供給される。このダミーシンボル付加部21は、図4(c)に示すように、入力されたラン長制限後のデジタル情報系列の先頭に、例えば1シンボル(=10ビット)のダミーシンボルを付加する。この場合、ダミーシンボルとしては、予め複数のパターンA,B,C,……のものが用意されており、最初は、図4(c)に示すように、パターンAのダミーシンボルが付加されるように予め順序が設定されている。
【0031】
その後、上記ダミーシンボル付加部21によりパターンAのダミーシンボルが付加されたデジタル情報系列は、符号化処理部22に供給される。この符号化処理部22は、入力されたパターンAのダミーシンボルを含むデジタル情報系列に対して、図4(d)に示すように、例えばRS符号に基づいた400ビットのECCパリティビット系列を算出して付加する。
【0032】
なお、ラン長制限処理後のデジタル情報系列に対して、ダミーシンボルを付加する位置は、図4(c)に示したように、デジタル情報系列の先頭に限らず、途中であっても、後尾であっても、その付加する位置が予め決められていて、後述する復号化時に分かるようになっていればよいものである。
【0033】
より具体的に言えば、最初に付加するパターンAのダミーシンボルがオールゼロに設定される場合、そのダミーシンボルは、ECC符号語であるデジタル情報系列(ユーザデータ)の最高次以上の次数の部分、または、デジタル情報系列の所定のシンボルに排他的論理和演算された状態で、既に付加されているとみなすことができる。
【0034】
このため、最初のパターンAのダミーシンボルがオールゼロである場合、ダミーシンボル付加部21では、特にダミーシンボルの付加処理を行なわず、次の、符号化処理部22が、オールゼロのダミーシンボルが上記したように付加されているものとしてECCパリティビット系列を算出することができる。
【0035】
ただし、最初に付加するパターンAのダミーシンボルがオールゼロに設定される場合であっても、デジタル情報系列を2つに分け、その間にダミーシンボルを介在させる場合や、デジタル情報系列の末尾に付加する場合には、ダミーシンボル付加部21によるダミーシンボルの付加処理が必要になる。
【0036】
そして、上記符号化処理部22から出力されるデータ系列(パターンAのダミーシンボル+ラン長制限後のデジタル情報系列+ECCパリティビット系列)は、判別制御部23に供給される。この判別制御部23は、入力されたデータ系列に含まれるECCパリティビット系列が、このHDD11における記録再生系の要求に応じた形態、例えばゼロが一定長以上続かない形態となっているか否かを判別する。
【0037】
そして、この判別制御部23は、ECCパリティビット系列がこのHDD11における記録再生系の要求に応じた形態となっていると判断した場合、図4(e)に示すように、符号化処理部22から供給されたデータ系列からダミーシンボルを除いた、ラン長制限後のデジタル情報系列+ECCパリティビット系列を出力端子24から出力させ、前記ハードディスク17への記録に供させる。
【0038】
また、上記判別制御部23は、ECCパリティビット系列がこのHDD11における記録再生系の要求に応じた形態となっていないと判断した場合、ダミーシンボル付加部21に対してダミーシンボルのパターンの変更を要求する。これにより、ダミーシンボル付加部21は、図4(f)に示すように、先に入力されたラン長制限後のデジタル情報系列の先頭に、次の順番に対応するパターンBのダミーシンボルを付加する。
【0039】
その後、上記ダミーシンボル付加部21によりパターンBのダミーシンボルが付加されたデジタル情報系列は、符号化処理部22に供給される。この符号化処理部22は、入力されたパターンBのダミーシンボルを含むデジタル情報系列に対して、図4(g)に示すように、例えばRS符号に基づいた400ビットのECCパリティビット系列を算出して付加する。
【0040】
そして、上記符号化処理部22から出力されるデータ系列(パターンBのダミーシンボル+ラン長制限後のデジタル情報系列+ECCパリティビット系列)は、判別制御部23に供給される。この判別制御部23は、入力されたデータ系列に含まれるECCパリティビット系列が、このHDD11における記録再生系の要求に応じた形態、例えばゼロが一定長以上続かない形態となっているか否かを判別する。
【0041】
そして、この判別制御部23は、ECCパリティビット系列がこのHDD11における記録再生系の要求に応じた形態となっていると判断した場合、符号化処理部22から供給されたデータ系列からダミーシンボルを除いた、ラン長制限後のデジタル情報系列+ECCパリティビット系列を出力端子24から出力させ、前記ハードディスク17への記録に供させる。
【0042】
また、上記判別制御部23は、ECCパリティビット系列がこのHDD11における記録再生系の要求に応じた形態となっていないと判断した場合、ダミーシンボル付加部21に対してダミーシンボルのパターンの変更を要求する。これにより、ダミーシンボル付加部21は、入力されたラン長制限後のデジタル情報系列の先頭に、次の順番に対応するパターンCのダミーシンボルを付加し、以下、判別制御部23によりECCパリティビット系列がこのHDD11における記録再生系の要求に応じた形態になっていると判断されるまで、ダミーシンボルのパターンを変えて同様な動作が繰り返される。
【0043】
上記した記録用処理部15によれば、ホスト装置12から供給される4096ビットのデジタル情報系列(ユーザデータ)に対して、例えばランレングス符号化処理のような、このHDD11における記録再生系の要求に応じた形態の変調処理(例えばゼロが一定長以上続かないようにするラン長制限処理)を施し、ECCパリティビット系列に対してはラン長制限のための変調処理を施さないようにしているので、変調処理を容易化することができる。
【0044】
また、ダミーシンボルを除く、ラン長制限後の4120ビットのデジタル情報系列と、ラン長制限処理を行なわない400ビットのECCパリティビット系列とでなる4520ビットのデータ系列をハードディスク17に記録するようにしたので、先に図2(d)に示した4540ビットのデータを記録することに比べて、記録するデータ長を20ビット短くすることができる。
【0045】
ここで、上記符号化処理部22によって、最初のパターンAのダミーシンボル+ラン長制限後のデジタル情報系列に対して算出されたECCパリティビット系列が、このHDD11における記録再生系の要求に応じた形態となっていない確率は、実際上非常に小さい(0.02%)ものである。
【0046】
このため、判別制御部23で、最初のパターンAのダミーシンボル+ラン長制限後のデジタル情報系列に対して算出されたECCパリティビット系列が、このHDD11における記録再生系の要求に応じた形態となっていない場合に、次のパターンBのダミーシンボル+ラン長制限後のデジタル情報系列に対して新たに算出されたECCパリティビット系列も、このHDD11における記録再生系の要求に応じた形態となっていない可能性は、極めて低くなる(0.0004%)。
【0047】
つまり、ダミーシンボルのパターンを変更してECCパリティビット系列を算出し、そのECCパリティビット系列が記録再生系の要求に応じた形態となっているか否かを判別する処理は、現実的に見て3回以上繰り返されることはまずないといってよく、このような点でも、処理の容易化を図ることが可能である。
【0048】
また、記録するデータ長が短くなった分だけ、ECCパリティビット系列のデータ長を増やすことにより、ECCの訂正能力を、書き込みの記録密度を変化させることなく向上させることができる。例えば、ECCパリティビット系列が10ビット増加する毎に、1ビットの誤り訂正能力が備わるとすると、図4(e)に示した例のように、図2(d)に示した4540ビットのデータに比べて、記録するデータ長を20ビット短くすることができる場合には、ECCパリティビット系列を20ビット増やすことにより、リバースECCで現在一般的に行なわれている符号化手法で符号化されたデータ系列と同じデータ長で、誤り訂正能力を2ビット分高めることができるようになる。
【0049】
なお、最初のパターンAのダミーシンボル+ラン長制限後のデジタル情報系列に対してECCパリティビット系列が算出されれば、次のパターンBのダミーシンボル+ラン長制限後のデジタル情報系列に対するECCパリティビット系列は、次に述べるようにして容易に算出することができる。
【0050】
すなわち、図5(a)に示すように、パターンAのダミーシンボルと、ラン長制限後のデジタル情報系列(ユーザデータ)と、そのダミーシンボルとラン長制限後のデジタル情報系列とに対して算出されたECCパリティビット系列[1]とからなるデータ系列が存在するとする。
【0051】
この場合、図5(b)に示すように、パターンAのダミーシンボルと次のパターンBのダミーシンボルとを排他的論理和演算したパターンA+Bのダミーシンボルと、ラン長制限後のデジタル情報系列と同じビット長を有するオールゼロのデジタル情報系列と、パターンA+Bのダミーシンボルとオールゼロのデジタル情報系列とに対して算出されたECCパリティビット系列[2]とからなるデータ系列を生成する。
【0052】
そして、図5(a)に示したデータ系列と図5(b)に示したデータ系列とを排他的論理和演算することにより、図5(c)に示すように、パターンBのダミーシンボルと、ラン長制限後のデジタル情報系列(ユーザデータ)と、そのダミーシンボルとラン長制限後のデジタル情報系列とに対して算出されたECCパリティビット系列[1]+[2]とからなるデータ系列が生成される。つまり、パターンAの次のパターンBのダミーシンボル+ラン長制限後のデジタル情報系列に対するECCパリティビット系列[1]+[2]が容易に生成される。
【0053】
ここで、ダミーシンボルのパターンA,Bは予め設定されているので、パターンA+Bのダミーシンボルとオールゼロのデジタル情報系列とに対するECCパリティビット系列[2]を予め算出しておけば、パターンAのダミーシンボルを用いたときのECCパリティビット系列が記録再生系の要求に応じた形態となっていないと判断された場合に、容易にパターンBのダミーシンボルに変更することが可能となる。
【0054】
図6は、上記した記録用処理部15の主要な処理動作をまとめたフローチャートを示している。この処理動作は、上記変調処理部20に図4(a)に示したようなユーザデータであるデジタル情報系列が供給されることにより開始(ステップS1)される。すると、この変調処理部20は、ステップS2で、入力されたデジタル情報系列に対して、図4(b)に示したように、このHDD11における記録再生系の要求に応じた形態とするための変調処理、例えばゼロが一定長以上続かないようにするラン長制限処理を実行する。
【0055】
その後、上記ダミーシンボル付加部21は、ステップS3で、ラン長制限後のデジタル情報系列に対して、図4(c)に示したように、最初のパターンAのダミーシンボルを付加する。そして、上記符号化処理部22は、ステップS4で、ダミーシンボルの付加されたラン長制限後のデジタル情報系列に対して、図4(d)に示したように、例えばRS符号に基づいたECCパリティビット系列を算出し付加する。
【0056】
その後、上記判別制御部23は、ステップS5で、付加されたECCパリティビット系列が、HDD11における記録再生系の要求に応じた形態、例えばゼロが一定長以上続かない形態となっているか否かを判別する。そして、ECCパリティビット系列がこのHDD11における記録再生系の要求に応じた形態となっていないと判断された場合(NO)、判別制御部23は、ステップS6で、ダミーシンボルを次の候補のダミーシンボルに変更してステップS4の処理に戻される。
【0057】
また、上記ステップS5でECCパリティビット系列がHDD11における記録再生系の要求に応じた形態となっていると判断された場合(YES)、判別制御部23は、ステップS7で、図4(e)に示したように、符号化処理部22から供給されたデータ系列からダミーシンボルを除いた、ラン長制限後のデジタル情報系列+ECCパリティビット系列を出力端子24から出力させて、処理を終了(ステップS8)する。
【0058】
次に、図7は、上記した再生用処理部18の一例を示している。すなわち、情報の再生時に、ハードディスク17から読み出されディスクI/F16を介して供給されるデータ系列(ラン長制限後のデジタル情報系列+ECCパリティビット系列)は、入力端子25を介してダミーシンボル付加部26に供給される。このダミーシンボル付加部26は、入力されたデータ系列の予め設定された位置に、最初のパターンAのダミーシンボルを付加する。
【0059】
そして、上記ダミーシンボル付加部26から出力されるデータ系列(パターンAのダミーシンボル+ラン長制限後のデジタル情報系列+ECCパリティビット系列)は、復号化処理部27に供給される。この復号化処理部27は、入力されたデータ系列に含まれるECCパリティビット系列に基づいて、パターンAのダミーシンボル+ラン長制限後のデジタル情報系列に対して誤り訂正処理を施している。
【0060】
その後、この復号化処理部27から出力された誤り訂正処理後のパターンAのダミーシンボル+ラン長制限後のデジタル情報系列は、判別制御部28に出力される。この判別制御部28は、入力された誤り訂正処理後のパターンAのダミーシンボル+ラン長制限後のデジタル情報系列から、復号化処理部27における誤り訂正処理が正しく行なわれたか否かを判別する。
【0061】
そして、この判別制御部28は、復号化処理部27における誤り訂正処理が正しく行なわれたと判断した場合、復号化処理部27から供給されたデータ系列からダミーシンボルを除いた、ラン長制限後のデジタル情報系列を復調処理部29に出力する。この復調処理部29は、入力されたラン長制限後のデジタル情報系列に復調処理を施し、ラン長制限前の元のデジタル情報系列に復元して出力端子30から出力させ、上記ホスト装置12による使用に供させる。
【0062】
また、上記判別制御部28は、復号化処理部27における誤り訂正処理が正しく行なわれなかったと判断した場合、上記ダミーシンボル付加部26で付加したダミーシンボルのパターンが違っていたと判断し、ダミーシンボル付加部26に対してダミーシンボルのパターンの変更を要求する。これにより、ダミーシンボル付加部26は、入力されたデータ系列に次の順番に対応するパターンBのダミーシンボルを付加し、以下、判別制御部28により誤り訂正処理が正しく行なわれたと判断されるまで、ダミーシンボルのパターンを変えて同様な動作が繰り返される。
【0063】
図8は、上記した再生用処理部18の主要な処理動作をまとめたフローチャートを示している。この処理動作は、上記ダミーシンボル付加部26に、図4(e)に示すようなデータ系列(ラン長制限後のデジタル情報系列+ECCパリティビット系列)が供給されることにより開始(ステップS9)される。すると、このダミーシンボル付加部26は、ステップS10で、図4(d)に示すように、入力されたデータ系列の予め設定された位置に、最初のパターンAのダミーシンボルを付加する。
【0064】
その後、上記復号化処理部27は、ステップS11で、入力されたデータ系列(パターンAのダミーシンボル+ラン長制限後のデジタル情報系列+ECCパリティビット系列)に含まれるECCパリティビット系列に基づいて、パターンAのダミーシンボル+ラン長制限後のデジタル情報系列に対して誤り訂正処理を施し、図4(c)に示すような、誤り訂正処理後のデータ系列(パターンAのダミーシンボル+ラン長制限後のデジタル情報系列)を出力する。
【0065】
次に、上記判別制御部28は、ステップS12で、入力された誤り訂正処理後のデータ系列(パターンAのダミーシンボル+ラン長制限後のデジタル情報系列)から、復号化処理部27における誤り訂正処理が正しく行なわれたか否かを判別する。そして、誤り訂正処理が正しく行なわれなかったと判断された場合(NO)、判別制御部28は、上記ダミーシンボル付加部26で付加したダミーシンボルのパターンが違っていたと判断し、ステップS13で、ダミーシンボル付加部26に対してダミーシンボルのパターンの変更を要求する。これにより、ダミーシンボル付加部26では、図4(g)に示すように、入力されたデータ系列(ラン長制限後のデジタル情報系列+ECCパリティビット系列)に次の順番に対応するパターンBのダミーシンボルを付加し、ステップS11の処理に戻される。
【0066】
また、上記ステップS12で誤り訂正処理が正しく行なわれたと判断された場合(YES)、判別制御部28は、ステップS14で、図4(b)に示すような、復号化処理部27から供給されたデータ系列からダミーシンボルを除いた、ラン長制限後のデジタル情報系列を上記復調処理部29に出力する。すると、復調処理部29は、入力されたラン長制限後のデジタル情報系列に復調処理を施し、ラン長制限前の元のデジタル情報系列に復元して出力端子30から出力させ、処理が終了(ステップS15)される。
【0067】
なお、この発明は上記した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を種々変形して具体化することができる。また、上記した実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜に組み合わせることにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良いものである。さらに、異なる実施の形態に係る構成要素を適宜組み合わせても良いものである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】この発明の実施の形態を示すもので、HDDの概略を説明するために示すブロック構成図。
【図2】現在、一般的に行なわれているリバースECCによる符号化手法について具体的に説明するために示す図。
【図3】同実施の形態におけるHDDに内蔵された記録用処理部の一例を説明するために示すブロック構成図。
【図4】同実施の形態におけるHDDに内蔵された記録用処理部での処理動作を具体的に説明するために示す図。
【図5】同実施の形態におけるHDDに内蔵された記録用処理部での処理動作を容易化する手段を具体的に説明するために示す図。
【図6】同実施の形態におけるHDDに内蔵された記録用処理部での処理動作を説明するために示すフローチャート。
【図7】同実施の形態におけるHDDに内蔵された再生用処理部の一例を説明するために示すブロック構成図。
【図8】同実施の形態におけるHDDに内蔵された再生用処理部での処理動作を説明するために示すフローチャート。
【符号の説明】
【0069】
11…HDD、12…ホスト装置、13…ホストI/F、14…主制御部、15…記録用処理部、16…ディスクI/F、17…ハードディスク、18…再生用処理部、19…入力端子、20…変調処理部、21…ダミーシンボル付加部、22…符号化処理部、23…判別制御部、24…出力端子、25…入力端子、26…ダミーシンボル付加部、27…復号化処理部、28…判別制御部、29…復調処理部、30…出力端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたデジタル情報系列に対して、記録再生系の要求に応じた形態に変換するための変調処理を施す変調手段と、
前記変調手段で変調処理の施されたデジタル情報系列の所定位置に、予め定められたパターンのダミーシンボルを付加する付加手段と、
前記付加手段でダミーシンボルの付加された変調処理後のデジタル情報系列に対して、誤り訂正用のパリティビット系列を生成する符号化手段と、
前記符号化手段で生成されたパリティビット系列が前記記録再生系の要求に応じた形態に対応しているか否かを判別する判別手段と、
前記判別手段で前記パリティビット系列が前記記録再生系の要求に応じた形態に対応していると判断された場合、前記ダミーシンボルを除く前記変調処理後のデジタル情報系列とパリティビット系列とを対応させて出力し、前記判別手段で前記パリティビット系列が前記記録再生系の要求に応じた形態に対応していないと判断された場合、前記変調処理後のデジタル情報系列に対して予め定められた他のパターンのダミーシンボルを付加して、新たな誤り訂正用のパリティビット系列を生成させる制御手段とを具備することを特徴とする誤り訂正処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記符号化手段で生成されるパリティビット系列が前記記録再生系の要求に応じた形態に対応するまで、前記変調処理後のデジタル情報系列に付加するダミーシンボルのパターンを、予め設定された順序で変更していくことを特徴とする請求項1記載の誤り訂正処理装置。
【請求項3】
前記制御手段は、第1のパターンのダミーシンボルを前記変調処理後のデジタル情報系列に付加して生成された第1のパリティビット系列と、前記第1のパターンとは異なる第2のパターンのダミーシンボルを、前記変調処理後のデジタル情報系列に対応するビット数を有し各ビットがオールゼロに設定されたデジタル情報系列に付加して生成された第2のパリティビット系列とを排他的論理和演算することにより、前記第2のパターンのダミーシンボルを前記変調処理後のデジタル情報系列に付加したときのパリティビット系列を生成することを特徴とする請求項1記載の誤り訂正処理装置。
【請求項4】
前記ダミーシンボルは、前記変調手段で変調処理の施されたデジタル情報系列の先頭、途中、後尾のいずれかの位置に付加されることを特徴とする請求項1記載の誤り訂正処理装置。
【請求項5】
前記制御手段から出力された前記変調処理後のデジタル情報系列とパリティビット系列とを、情報記録媒体に対して記録再生する記録再生手段を具備することを特徴とする請求項1記載の誤り訂正処理装置。
【請求項6】
記録再生系の要求に応じた形態に変換するための変調処理が施されたデジタル情報系列とそれに対応する誤り訂正用のパリティビット系列とが入力される入力手段と、
前記入力手段に入力された変調処理後のデジタル情報系列の所定位置に、予め定められたパターンのダミーシンボルを付加する付加手段と、
前記付加手段でダミーシンボルの付加された変調処理後のデジタル情報系列に対して、前記入力手段に入力されたパリティビット系列に基づいた誤り訂正処理を施す復号化手段と、
前記復号化手段で誤り訂正処理が正しく行なわれたか否かを判別する判別手段と、
前記判別手段で誤り訂正処理が正しく行なわれたと判断された場合、前記変調処理後のデジタル情報系列に復調処理を施して元のデジタル情報系列を復元する復調手段と、
前記判別手段で誤り訂正処理が正しく行なわれなかったと判断された場合、前記変調処理後のデジタル情報系列に予め定められた他のパターンのダミーシンボルを付加し、該他のパターンのダミーシンボルの付加された変調処理後のデジタル情報系列に対して、前記パリティビット系列に基づいた誤り訂正処理を施させる制御手段とを具備することを特徴とする誤り訂正処理装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記復号化手段における誤り訂正処理が正しく行なわれるまで、前記変調処理後のデジタル情報系列に付加するダミーシンボルのパターンを、予め設定された順序で変更していくことを特徴とする請求項6記載の誤り訂正処理装置。
【請求項8】
入力されたデジタル情報系列に対して、記録再生系の要求に応じた形態に変換するための変調処理を施す第1の工程と、
前記第1の工程で変調処理の施されたデジタル情報系列の所定位置に、予め定められたパターンのダミーシンボルを付加する第2の工程と、
前記第2の工程でダミーシンボルの付加された変調処理後のデジタル情報系列に対して、誤り訂正用のパリティビット系列を生成する第3の工程と、
前記第3の工程で生成されたパリティビット系列が前記記録再生系の要求に応じた形態に対応しているか否かを判別する第4の工程と、
前記第4の工程で前記パリティビット系列が前記記録再生系の要求に応じた形態に対応していると判断された場合、前記ダミーシンボルを除く前記変調処理後のデジタル情報系列とパリティビット系列とを対応させて出力する第5の工程と、
前記第4の工程で前記パリティビット系列が前記記録再生系の要求に応じた形態に対応していないと判断された場合、前記変調処理後のデジタル情報系列に対して予め定められた他のパターンのダミーシンボルを付加して、新たな誤り訂正用のパリティビット系列を生成させる第6の工程とを具備することを特徴とする誤り訂正処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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