説明

調光装置、顕微鏡装置

【課題】所望の明るさまで素早く、かつ正確に調光できる調光装置と、これを有する顕微鏡を提供すること。
【解決手段】観察標本を照明するLED照明5の光量を制御する制御手段14と、複数の対物レンズを光路中に択一的に挿入する対物レンズ切換手段2と、複数の前記対物レンズの照明制御情報を記憶する記憶手段15とを有し、前記制御手段は、光路中に挿入された前記対物レンズの情報に基き、前記記憶手段から当該対物レンズに対応する照明制御情報を取得して前記LED照明の光量を調整することを特徴とする調光装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡用の調光装置と、これを具備する顕微鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、顕微鏡の照明部はハロゲンランプからLED(Light Emitting Diode)に変わりつつある。LEDの特徴として、明るさを変えても色温度はほとんど変化しない、これまでのハロゲンランプにはなかった長寿命、低消費電力、発熱の低下などが挙げられる。そして、LEDの明るさを調整するために、可変抵抗を使用した調光(例えば、特許文献1参照)や、パルス幅を可変して調光することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−13503
【特許文献2】特開2005−250151
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の変調方法を用いた調光装置では、調光に可変抵抗を使用した場合、可変抵抗が径時変化して連続的に抵抗値を変化させることができなくなる(いわゆるガリオームとも言う)ことがあり、調光を連続的かつ高精度に行うことができなくなる、またパルス幅を可変して調光する際のパルス変更幅が最小可変パルス幅に限られているため、所望の明るさのLED照明を得る為には多くのパルス入力が必要になり時間がかかる、あるいは観察用の対物レンズの倍率を変えた場合や、明視野観察から位相差観察へと観察方法を変えた場合に所望の明るさのLED照明光を設定するのに時間がかかるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて行われ、所望の明るさまですばやく、かつ正確に調光できる調光装置と、これを有する顕微鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、観察標本を照明するLED照明の光量を制御する制御手段と、複数の対物レンズを光路中に択一的に挿入する対物レンズ切換手段と、複数の前記対物レンズの照明制御情報を記憶する記憶手段とを有し、前記制御手段は、光路中に挿入された前記対物レンズの情報に基き、前記記憶手段から当該対物レンズに対応する照明制御情報を取得して前記LED照明の光量を調整することを特徴とする調光装置を提供する。
【0007】
また、本発明は、前記調光装置を具備することを特徴とする顕微鏡装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、所望の明るさまで素早く、かつ正確に調光できる調光装置と、これを有する顕微鏡装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施形態にかかるLED調光装置を具備する顕微鏡装置の概略構成図。
【図2】第1実施形態にかかるLED調光装置を具備する顕微鏡装置の概略ブロック図。
【図3】第1実施形態にかかるLED調光装置の光量制御テーブルの一例を示し、(a)は対物レンズ情報テーブル、(b)LED照明光量制御テーブルの一例をそれぞれ示す。
【図4】LED照明の光量制御曲線の一例を示す。
【図5】第1実施形態にかかるLED調光装置の制御フローを示す。
【図6】第2実施形態にかかるLED調光装置を具備する顕微鏡装置の概略構成図。
【図7】第2実施形態にかかるLED調光装置を具備する顕微鏡装置の概略ブロック図。
【図8】第2実施形態にかかるLED調光装置の制御フローの一部を示す。
【図9】第2実施形態にかかるLED調光装置の制御フローの一部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願の実施形態にかかる調光装置を具備する顕微鏡装置について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態は、発明の理解を容易にするためのものに過ぎず、本願発明の技術的思想を逸脱しない範囲において当業者により実施可能な付加・置換等を施すことを排除することは意図していない。
【0011】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態にかかるLED調光装置を具備する顕微鏡装置について説明する。
【0012】
図1、図2において、顕微鏡装置100は、顕微鏡本体1に焦準ハンドル102で上下動するステージ103と、ステージ103に載置された標本104を透過照明するLED照明5と、標本104の光を集光する対物レンズ106と、集光した標本104からの光を不図示の接眼レンズを介して観察者に観察させる鏡筒107とから構成されている。
【0013】
また、対物レンズ106は、顕微鏡本体1のアーム部に配設されたレボルバ2に複数装着されている。またレボルバ2には、光路中に挿入された対物レンズの位置を検出するためのホール素子等を用いたアドレスセンサ4と所定位置に停止させるためのストップセンサ3が内蔵されている。
【0014】
また、顕微鏡本体1には、LED照明5の明るさや顕微鏡装置100の動作を制御する制御部(コントロール基板)10が内蔵され、LED照明5の明るさを調整するためのリモートコントローラ20が接続されている。このようにして、第1実施形態にかかる顕微鏡装置100が構成されている。
【0015】
なお、LED照明5は、顕微鏡本体1に内蔵でも外付けでも良い。また、制御部(コントロール基板)10は顕微鏡本体1の外部に別体として設けても良い。また、リモートコントローラ20は、顕微鏡本体1のベース部前面または側面に配置しても良い。
【0016】
図2に示すコントロール基板10は、ストップセンサ3とアドレスセンサ4からレボルバ2の位置を確定するレボルバ位置検出回路11、CPU14、CPU14からのデジタル出力をアナログ出力に変換する16ビットのD/Aコンバータ13、D/Aコンバータ13から出力されたアナログ電圧に基き出力電流を変化させ、LED照明5を図4に示すカーブで制御する(LED)ドライブ回路12、および図3に示す対物レンズ情報と該対物レンズに対応する照明制御テーブルを記録しておくメモリ15を備える。
【0017】
図2に示すリモートコントローラ20は、回転変位を、電気的なパルスに変換するロータリエンコーダ21、レボルバ2に保持されている1本目の対物レンズ(アドレス1)の情報をCPU14に設定するための対物レンズ情報設定ロータリスイッチ22、2本目の対物レンズ(アドレス2)の情報をCPU14に設定するための対物レンズ情報設定ロータリスイッチ23、3本目の対物レンズ(アドレス3)の情報をCPU14に設定するための対物レンズ情報設定ロータリスイッチ24を備える。
【0018】
対物レンズ情報設定ロータリスイッチ22、23、24はそれぞれのポジションに対応して予め対物レンズの情報が設定されており、CPU14はそのポジションを読み出すことでレボルバ2の各アドレスに保持されている対物レンズの情報を決定できる。
【0019】
レボルバ2は手動で回転させ、レボルバ位置検出回路11はクリックに入るとストップセンサ3からストップ状態を読み、その位置でのアドレスセンサ4を読むことで、観察光路内に挿入されているレボルバのアドレスを読み出し、CPU14に伝達する。例えば、1本目の対物レンズ(アドレス1)が観察光路内に挿入されているとすると、CPU14はレボルバ位置検出回路11からのアドレスと対物レンズ情報設定ロータリスイッチ22の番号設定により、CPU14がメモリ15から番号に対応した対物レンズの情報を読み出す。なお、レボルバ2の回転は、電動であっても良い。
【0020】
図3は、メモリ15に記録されている対物レンズ情報テーブル(図3(a))およびLED照明光量制御テーブル(図3(b))である。
【0021】
図3(a)は対物レンズ情報テーブルの一例を示しており、それぞれの対物レンズごとに倍率および開口数(NA)が記録されている。テーブルにおいて、番号とリモートコントローラ20の対物レンズ情報設定ロータリスイッチ22、23、24のポジションが対応している。
【0022】
図3(b)はLED照明光量制御テーブルを示しており、テーブルの番号は図3(a)の対物レンズ情報テーブルの番号に対応している。例えば、番号1は図3(a)の対物レンズ情報テーブルの番号1の倍率4倍、NA=0.1の対物レンズであり、この対物レンズの三つの照明光量制御デジタル出力値を記憶している。デジタル出力中間値は、その対物レンズにおける最適なLED照明5の明るさを、デジタル出力最小値、デジタル出力最大値はその対物レンズにおける照明の明るさが変えられる下限、上限をそれぞれ示している。
【0023】
CPU14は、コントローラ20の対物レンズ情報設定ロータリスイッチ22、23、24で設定されている番号とレボルバ2からのアドレス情報とに基き、メモリ15に記憶してある、図3に示す対物レンズ情報とLED照明光量制御テーブルを参照し、現在観察光路に挿入されている対物レンズ106のLED照明光量制御範囲(図3(b))を読み取る。さらに、CPU14はD/Aコンバータ13に対してデジタル出力中間値を出力し、D/Aコンバータ14はドライブ回路12にLED照明5に供給する電流値を与え、LED照明5の明るさを指定されたデジタル出力中間値に設定する。
【0024】
この結果、第1実施形態にかかる顕微鏡装置100では、対物レンズ106が交換された際、光路中に挿入された対物レンズ106に最適なLED照明5の明るさ(中間値)に素早く設定することができる。
【0025】
図4は、CPU14からのデジタル出力に対するD/Aコンバータ13とドライブ回路12を介してLED照明5への印加電流特性(Aカーブ)を示している。横軸は、CPU14からの積算パルス数を、縦軸はLED照明5への印加電流値を示す。LED照明5にこのようなカーブで示される印加電流を与えることで、人間の眼にはほぼ直線的に明るさが変化しているように感じられる。なお、印加電流特性カーブの形は、図4に示すような下に凸のAカーブに限らず、パルス入力に対して直線的に変化する印加特性であっても良い。印加電流特性は、光源の種類や特性によって適宜設計することができる。以後の説明では、図4に示す印加電流特性を代表として説明する。
【0026】
次に、第1実施形態にかかる顕微鏡装置100における調光装置の制御について図5のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0027】
(ステップS100)
CPU14は、現在の観察光路内に挿入されている対物レンズ106が装着されているレボルバ2のアドレスを読み出す。
【0028】
(ステップS101)
CPU14は、リモートコントローラ20の倍率設定ロータリスイッチ22、23、24を参照し、そのアドレスに対応する、現在観察光路内に挿入されている対物レンズ106(ここでは、番号1、倍率=4、NA=0.1とする)の情報(図3(a)参照)をメモリ15から読み出す。
【0029】
(ステップS102)
CPU14は、取得した対物レンズ情報の番号に対応するLED照明光量制御テーブル(図3(b)参照)をメモリ15から読み出す。
【0030】
(ステップS103)
CPU14は、LED照明5の光量を現在の観察光路内に挿入されている対物レンズ106に対応するLED照明光量制御テーブルのデジタル出力中間値(番号1、デジタルス出力中間値=300パルス)に設定する。ここで、デジタル出力中間値(=300パルス)は、対物レンズ106の最適な明るさである。なお、LED照明5への印加電圧は図4の印加電流特性カーブに従ってLED照明5に対して出力される。
【0031】
(ステップS104)
CPU14は、レボルバ2が回転され、レボルバアドレスが変更されたか否かを監視する。CPU14は、レボルバアドレスが変更されたことを検出した際はステップS100にジャンプし、変更されていない場合はステップS105を実行する。CPU14は、ステップS100〜ステップS103によりLED照明5を観察光路内に挿入されている対物レンズ106における最適な明るさに設定することができる。
【0032】
しかしながら、実際には様々な試料の光学特性によりに観察に最適な明るさは変化する。そのため、本調光装置ではCPU14が以下のステップを実行することで、ステップS102で読み出したLED照明光量制御テーブルのデジタル出力最小値からデジタル出力最大値までLED照明5の光量をロータリエンコーダ21の操作により制御可能としている。
【0033】
(ステップS105)
CPU14は、リモートコントローラ20のロータリエンコーダ21のパルス出力、すなわちLED照明5の光量アップ指令の有無を監視する。光量アップ指令は、ロータリエンコーダ21からCPU14にプラスのパルス出力が行われる。CPU14は、光量アップ指令を検出するとステップS106を実行し、それ以外の場合はステップS108にジャンプする。
【0034】
(ステップS106)
CPU14は、現在のLED照明5の光量であるデジタル出力とLED照明光量制御テーブルのデジタル出力最大値を比較して、現デジタル出力値がデジタル出力最大値より小さい場合はステップS107を実行し、それ以外の場合はステップS104にジャンプする。
【0035】
(ステップS107)
CPU14は、現デジタル出力値がデジタル出力最大値より小さいので、ロータリエンコーダ21からのパルスに従って、LED照明5の光量をアップする。CPU14は、ロータリエンコーダ21からのパルスが、例えば10パルス入力(プラス)された場合、現デジタル出力値(例えば、300パルス)に10パルスを加えたデジタル出力(310パルス)をD/Aコンバータ13に出力し、D/Aコンバータ13からの出力を受けてドライブ回路12は図4の印加電流特性カーブに従って電流を増加してLED照明5の光量をアップする。
【0036】
具体的には、ドライブ回路12は、図4の印加電流特性カーブの300パルスに相当する電流値から310パルスに相当する電流値まで電流を順次増加する。CPU14は、ロータリエンコーダ21からのパルス入力が終了後ステップS104にジャンプする。
【0037】
(ステップS108)
CPU14は、リモートコントローラ20のロータリエンコーダ21のパルス出力、すなわちLED照明5の光量ダウン指令の有無を監視する。光量ダウン指令は、ロータリエンコーダ21からCPU14にマイナスのパルス出力が行われる。CPU14は、光量ダウン指令を検出するとステップS109を実行し、それ以外の場合はステップS104にジャンプする。
【0038】
(ステップS109)
CPU14は、現在のLED照明5の光量であるデジタル出力とLED照明光量制御テーブルのデジタル出力最小値を比較して、現デジタル出力値がデジタル出力最小値より大きい場合はステップS110を実行し、それ以外の場合はステップS104にジャンプする。
【0039】
(ステップS110)
CPU14は、現デジタル出力値がデジタル出力最小値より大きいので、ロータリエンコーダ21からのパルスに従って、LED照明5の光量をダウンする。CPU14は、ロータリエンコーダ21からのパルスが、例えば10パルス入力(マイナス)された場合、現デジタル出力値(例えば、300パルス)から10パルスを減じたデジタル出力(290パルス)をD/Aコンバータ13に出力し、D/Aコンバータ13からの出力を受けてドライブ回路12は図4の印加電流特性カーブに従って電流を増加してLED照明5の光量をダウンする。
【0040】
具体的には、ドライブ回路12は、図4の印加電流特性カーブの300パルスに相当する電流値から290パルスに相当する電流値まで電流を順次減少する。CPU14は、ロータリエンコーダ21からのパルス入力が終了後ステップS104にジャンプする。
【0041】
以上の制御により、第1実施形態にかかる調光装置を有する顕微鏡装置100は、デジタル出力最小値からデジタル出力最大値の範囲でLED照明5の光量を可変制御できる。このようにCPU14は、対物レンズ106の交換によりレボルバアドレスが変化する都度、観察光路内に挿入されている対物レンズ106におけるLED照明光量制御範囲メモリ15からを読み出し、自動的にデジタル出力中間値に光量を設定する。この後、ユーザーは観察する試料の光学特性に合わせてLED照明5の光量をロータリエンコーダ21を操作して微調整するだけで良く、素早く観察する試料に最適な照明光量を設定することができる。
【0042】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態にかかるLED調光装置を具備する顕微鏡装置について説明する。第1実施形態と同様の構成には同じ符号を付して説明する。第2実施形態にかかる顕微鏡装置は、コンデンサレンズを切換えることによって、明視野観察と位相差観察に使用できる顕微鏡装置である。
【0043】
図6、図7において、顕微鏡装置100は、顕微鏡本体1に焦準ハンドル102で上下動するステージ103と、ステージ103に載置された標本104を透過照明するLED照明5と、標本104の光を集光する対物レンズ106と、集光した標本104からの光を不図示の接眼レンズを介して観察者に観察させる鏡筒107とから構成されている。
【0044】
また、対物レンズ106は、顕微鏡本体1のアーム部に配設されたレボルバ2に複数装着されている。またレボルバ2には、光路中に挿入された対物レンズの位置を検出するためのホール素子等を用いたアドレスセンサ4と所定位置に停止させるためのストップセンサ3が内蔵されている。
【0045】
また、ステージ103の下方には、コンデンサレンズを照明光路中に入れ換え可能にするコンデンサターレット6が配置されている。また、コンデンサターレット6がクリックに入っているか否かを検出するストップセンサ7、ホール素子等を利用して位置を検出するアドレスセンサ8を備えている。
【0046】
また、顕微鏡本体1には、LED照明5の明るさや顕微鏡装置100の動作を制御する制御部(コントロール基板)10が内蔵され、LED照明5の明るさを調整するためのリモートコントローラ20が接続されている。このようにして、実施形態にかかる顕微鏡装置100が構成されている。
【0047】
なお、LED照明5は、顕微鏡本体1に内蔵でも外付けでも良い。また、制御部(コントロール基板)10は顕微鏡本体1の外部に別体として設けても良い。また、リモートコントローラ20は、顕微鏡本体1のベース部前面または側面に配置しても良い。
【0048】
図2に示すコントロール基板10は、ストップセンサ3とアドレスセンサ4からレボルバ2の位置を確定するレボルバ位置検出回路11、ストップセンサ7とアドレスセンサ8からコンデンサターレット6の位置を確定するコンデンサ位置検出回路16、CPU14、CPU14からのデジタル出力をアナログ出力に変換する16ビットのD/Aコンバータ13、D/Aコンバータ13から出力されたアナログ電圧に基き電流を変化させ、LED照明5を図4に示すカーブで制御する(LED)ドライブ回路12、および図3に示す対物レンズ情報と該対物レンズに対応する照明制御テーブルを記録しておくメモリ15を備える。
【0049】
図7に示すリモートコントローラ20は、回転変位を、電気的なパルスに変換するロータリエンコーダ21、レボルバ2に保持されている1本目の対物レンズ(アドレス1)の情報をCPU14に設定するための対物レンズ情報設定ロータリスイッチ22、2本目の対物レンズ(アドレス2)の情報をCPU14に設定するための対物レンズ情報設定ロータリスイッチ23、3本目の対物レンズ(アドレス3)の情報をCPU14に設定するための対物レンズ情報設定ロータリスイッチ24を備える。
【0050】
対物レンズ情報設定ロータリスイッチ22、23、24はそれぞれのポジションに対応して予め対物レンズの情報が設定されており、CPU14はそのポジションを読み出すことでレボルバ2の各アドレスに保持されている対物レンズの情報を決定できる。
【0051】
レボルバ2は手動で回転させ、レボルバ位置検出回路11はクリックに入るとストップセンサ3からストップ状態を読み、その位置でのアドレスセンサ4を読むことで、観察光路内に挿入されているレボルバのアドレスを読み出し、CPU14に伝達する。例えば、1本目の対物レンズ(アドレス1)が観察光路内に挿入されているとすると、CPU14はレボルバ位置検出回路11からのアドレスと対物レンズ情報設定ロータリスイッチ22の番号設定により、CPU14がメモリ15から番号に対応した対物レンズの情報を読み出す。
【0052】
また、コンデンサターレット6は手動で回転させ、コンデンサ位置検出回路16はクリックに入るとストップセンサ7からストップ状態を読み、その位置でのアドレスセンサ8を読むことで、観察光路内に挿入されているコンデンサターレット6のアドレスを読み出せる。読み出したアドレスは、CPU14に伝達される。以下の説明では、コンデンサターレット6のアドレス1に明視野用コンデンサ(BF)、アドレス2に位相差用コンデンサ(Ph1)が保持されているとする。これにより、CPU14がコンデンサターレット6のアドレスを検出すれば、照明光学系に設定された観察方法を検出することができる。なお、レボルバ2、コンデンサターレット6の回転は、電動であっても良い。
【0053】
また、コントロール基板10のメモリ15には対物レンズの番号および用途(明視野用、位相差用)、倍率Mと、明視野用の場合はNA、位相差用の場合はコンデンサのリング絞りの外側のNAout、内側のNAin、対物レンズ内の位相板の透過率T等の対物レンズ情報が記録されている。また、図示していないがPC等でメモリ15に新たな対物レンズ情報を追加してもよい。
【0054】
また、各対物レンズにおける適切な光量を算出するための基準として、現在のLED照明5における明視野用対物レンズ1本のデジタル出力最小値、デジタル出力中間値、デジタル出力最大値、および明るさBをメモリ15に記録しておく。明るさBは以下の(1)式で求められる。図示していないが、LED照明5を変えた場合にはPC等でメモリ15に新たなデジタル出力値、明るさBを入力してもよい。
(1) B = (NA/M)
【0055】
また、第1実形態と同様に、リモートコントローラ20の対物レンズ情報設定ロータリスイッチ22、23、24はそれぞれのポジションに対応してメモリ15に記録されている対物レンズの情報が設定されており、CPU14はそのポジションを読み出すことでレボルバ2の各アドレスに保持されている対物レンズ106の情報を決定できる。
【0056】
次に、第2実施形態にかかる顕微鏡装置100における調光装置の制御について図8、図9のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0057】
(ステップS200)
CPU14は、現在の観察光路内に挿入されている対物レンズ106が装着されているレボルバ2のアドレスを読み出す。
【0058】
(ステップS201)
CPU14は、リモートコントローラ20の倍率設定ロータリスイッチ22、23、24を参照し、そのアドレスに対応する、現在観察光路内に挿入されている対物レンズ106の情報(図3(a)と同様の情報)をメモリ15から読み出す。
【0059】
(ステップS202)
CPU14は、現在の観察光路内に挿入されているコンデンサターレット6のアドレスを読み出す。このアドレスが1であれば観察方法は明視野観察であり、2であれば位相差観察である。
【0060】
(ステップS203)
CPU14は、取得した観察光路内の対物レンズ106の情報およびコンデンサターレット6のアドレス情報に基く観察方法からLED照明5の光量制御範囲を算出する。明視野観察であれば、この対物レンズにおける明るさは前記の(1)式で求められる明るさBが使用される。一方、位相差観察であれば、この対物レンズにおける明るさB’は以下の(2)式で求められる。
(2) B’=((NAout/M)−(NAin/M))×T
【0061】
CPU14は、この明るさB’とメモリ15に記録しておいた基準用対物レンズの明るさBとの相対比を算出して、メモリ15に記録しておいた基準用対物レンズのデジタル出力最小値、デジタル出力中間値、デジタル出力最大値に乗算することで、この対物レンズにおけるそれぞれのデジタル出力値を算出する。この算出したデジタル出力値が現在の観察光路内に挿入されている対物レンズにおける位相差観察でのLED照明光量制御範囲となる。CPU14は、この算出されたそれぞれのデジタル出力をメモリ15に記憶しておき、必要な時にメモリ15を参照して第2実施形態の調光装置の制御を行う。
【0062】
(ステップS204)
CPU14は、ステップS203で算出したLED照明光量制御範囲から、LED照明5の光量を現在観察光路内に挿入されている対物レンズにおける最適な明るさであるデジタル出力中間値に設定する。なお、CPU14はLED照明5に対して第1実施形態と同様の印加電圧特性カーブ(図4参照)に従って出力する。
【0063】
(ステップS205)
CPU14は、コンデンサターレット6が回転され、アドレスが変更されたか否かを監視する。CPU14は、コンデンサターレット6のアドレスが変更されたことを検出した際はステップS208にジャンプし、変更されていない場合はステップS206を実行する。
【0064】
(ステップS206)
CPU14は、レボルバ2が回転され、レボルバアドレスが変更されたか否かを監視する。CPU14は、レボルバアドレスが変更されたことを検出した際はステップS208にジャンプし、変更されていない場合はステップS207を実行する。
【0065】
(ステップS207)
CPU14は、光路中に挿入されている対物レンズと観察方法が一致しているか否かを判定し、一致していない時にはステップS205にジャンプしてステップS205からステップS208を繰り返し、一致している時にはステップS209を実行する。
【0066】
(ステップS208)
CPU14は、光路中に挿入されている対物レンズと観察方法が一致しているか否かを判定し、一致している時にはステップS200にジャンプしてステップS200以降を繰り返し、一致していない時にはステップS205にジャンプしてステップS205からステップS208を繰り返す。
【0067】
なお、ステップS207とS208において、CPU14は、対物レンズと観察方法が一致していない時には、観察者に対して一致してない旨を知らせるアラームを発することが望ましい。これにより観察者は、対物レンズと観察方法とを一致させる操作を行うことが出来る。
【0068】
CPU14は、ステップS200〜ステップS208によりLED照明5を観察光路内に挿入されている対物レンズ106における最適な明るさに設定することができる。しかしながら、実際には様々な試料の光学特性によりに観察に最適な明るさは変化する。そのため、本調光装置ではCPU14が以下のステップを実行することで、ステップS203で算出したLED照明光量制御テーブルのデジタル出力最小値からデジタル出力最大値までLED照明5の光量を制御可能としている。
【0069】
(ステップS209)
CPU14は、リモートコントローラ20のロータリエンコーダ21のパルス出力、すなわちLED照明5の光量アップ指令の有無を監視する。光量アップ指令は、ロータリエンコーダ21からCPU14にプラスのパルス出力が行われる。CPU14は、光量アップ指令を検出するとステップS210を実行し、それ以外の場合はステップS212にジャンプする。
【0070】
(ステップS210)
CPU14は、現在のLED照明5の光量であるデジタル出力と算出したLED照明光量制御テーブルのデジタル出力最大値を比較して、現デジタル出力値がデジタル出力最大値より小さい場合はステップS211を実行し、それ以外の時はステップS205にジャンプする。
【0071】
(ステップS211)
CPU14は、現デジタル出力値がデジタル出力最大値より小さいので、ロータリエンコーダ21からのパルスに従って、LED照明5の光量をアップする。CPU14は、ロータリエンコーダ21からのパルスが、例えば10パルス入力(プラス)された場合、現デジタル出力値(例えば、300パルス)に10パルスを加えたデジタル出力(310パルス)をD/Aコンバータ13に出力し、D/Aコンバータ13からの出力を受けてドライブ回路12は図4の印加電流特性カーブに従って電流を増加してLED照明5の光量をアップする。
【0072】
具体的には、ドライブ回路12は、図4の印加電流特性カーブの300パルスに相当する電流値から310パルスに相当する電流値まで電流を順次増加する。CPU14は、ロータリエンコーダ21からのパルス入力が終了後ステップS205にジャンプする。
【0073】
(ステップS212)
CPU14は、リモートコントローラ20のロータリエンコーダ21のパルス出力、すなわちLED照明5の光量ダウン指令の有無を監視する。光量ダウン指令は、ロータリエンコーダ21からCPU14にマイナスのパルス出力が行われる。CPU14は、光量ダウン指令を検出するとステップS213を実行し、それ以外の場合はステップS205にジャンプする。
【0074】
(ステップS213)
CPU14は、現在のLED照明5の光量であるデジタル出力と算出したLED照明光量制御テーブルのデジタル出力最小値を比較して、現デジタル出力値がデジタル出力最小値より大きい場合はステップS214を実行し、それ以外の時はステップS205にジャンプする。
【0075】
(ステップS214)
CPU14は、現デジタル出力値がデジタル出力最小値より大きいので、ロータリエンコーダ21からのパルスに従って、LED照明5の光量をダウンする。CPU14は、ロータリエンコーダ21からのパルスが、例えば10パルス入力(マイナス)された場合、現デジタル出力値(例えば、300パルス)から10パルスを減じたデジタル出力(290パルス)をD/Aコンバータ13に出力し、D/Aコンバータ13からの出力を受けてドライブ回路12は図4の印加電流特性カーブに従って電流を増加してLED照明5の光量をダウンする。
【0076】
具体的には、ドライブ回路12は、図4の印加電流特性カーブの300パルスに相当する電流値から290パルスに相当する電流値まで電流を順次減少する。CPU14は、ロータリエンコーダ21からのパルス入力が終了後ステップS205にジャンプする。
【0077】
以上の制御により、第2実施形態にかかる調光装置を有する顕微鏡装置100は、算出されたデジタル出力最小値からデジタル出力最大値の範囲でLED照明5の光量を可変制御できる。このようにCPU14は、対物レンズ106の交換によりレボルバアドレスが変化する、あるいはコンデンサターレットの回転によりアドレスが変化する都度、観察光路内に挿入されている対物レンズ106におけるLED照明光量制御範囲を算出して、自動的にデジタル出力中間値に光量を設定制御する。この後、ユーザーは観察したい試料の光学特性に合わせてLED照明5の光量をロータリエンコーダ21を操作して微調整するだけで良く、素早く最適な照明光量を設定することができる。
【0078】
また、第2実施形態に係る調光装置を有する顕微鏡装置100は、第1実施形態とは異なり、予めLED照明光量制御テーブルを記録しておくのではなく、LED照明光量制御範囲を計算にて算出することから、様々な対物レンズに対応できると共に、光源であるLED照明5を変えたとしても基準対物レンズの設定値を変えるだけで対応できるため、汎用性を向上させることができる。
【0079】
上述の実施形態では、LED照明の光量制御をリモートコントローラ20にて行ったが、コントロール基板10にRS232CやUSB等の通信機能を備えることによりPCからの通信コマンドによる制御命令等で制御することも可能である。また、コントローラ20にコンデンサターレット6のアドレスを設定するロータリスイッチを設けても良い。また、LED照明光量設定範囲を再計算させるためのリセットボタンを設けても良い。
【0080】
以上のように、第1実施形態にかかる調光装置を有する顕微鏡装置は、予め記録しておいた対物レンズ情報におけるLED照明制御テーブルを用いて、現在の観察対物レンズ情報及び観察方法からLED照明光量制御範囲を決定し、自動的に観察対物レンズの最適な明るさに光量を制御するため、ユーザーは観察したい試料に合わせて光量を微調整するだけで良く、素早く簡単に最適な明るさに調光できる操作性の高い顕微鏡を提供できる。
【0081】
また、第2実施形態にかかる調光装置を有する顕微鏡装置は、LED照明の光量制御範囲を計算にて算出すれば、ユーザーが使用したい対物レンズ、LED照明が、メーカーが意図しないものであったとしても対応可能となるため、汎用性の高い顕微鏡を提供できる。
【0082】
なお、上記実施形態では、顕微鏡本体が手動の場合について説明したが、顕微鏡本体が電動制御可能な顕微鏡であっても本実施形態を適用できる。電動顕微鏡では、所望の観察方法、対物レンズの選択をCPUに指示することで、自動的に最適なLED照明の光量に設定することができる。よってその後の微調を簡単に行うこともできる。
【符号の説明】
【0083】
1 顕微鏡本体
2 レボルバ
3 ストップセンサ
4 アドレスセンサ
5 LED照明
6 コンデンサターレット
7 ストップセンサ
8 アドレスセンサ
10 コントロール基板
11 レボルバ位置検出回路
12 ドライブ回路
13 D/Aコンバータ
14 CPU
15 メモリ
16 コンデンサ位置検出回路
20 リモートコントローラ
21 ロータリエンコーダ
22 対物レンズ情報設定ロータリスイッチ
23 対物レンズ情報設定ロータリスイッチ
24 対物レンズ情報設定ロータリスイッチ
100 顕微鏡装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察標本を照明するLED照明の光量を制御する制御手段と、
複数の対物レンズを光路中に択一的に挿入する対物レンズ切換手段と、
複数の前記対物レンズの照明制御情報を記憶する記憶手段とを有し、
前記制御手段は、光路中に挿入された前記対物レンズの情報に基き、前記記憶手段から当該対物レンズに対応する照明制御情報を取得して前記LED照明の光量を調整することを特徴とする調光装置。
【請求項2】
前記照明制御情報は、光路中に挿入された前記対物レンズの対応する前記LED照明の最小値、最適値、および最大値の光量に対応するデジタル出力値を有することを特徴とする請求項1に記載の調光装置。
【請求項3】
前記対物レンズ切換手段は、光路中に挿入された前記対物レンズの位置情報を検出する位置検出手段を有し、
前記制御手段は、前記位置情報に対応する前記対物レンズの情報に基き前記LED照明の光量を調整することを特徴とする請求項1または2に記載の調光装置。
【請求項4】
前記観察標本の観察方法を切換る観察方法切換手段と、
前記観察方法の切換を検出する観察方法検出手段を有し、
前記制御手段は、前記観察方法検出手段からの情報と光路中に挿入された前記対物レンズの情報に基き、前記記憶手段から当該対物レンズに対応する照明制御情報を取得して前記LED照明の光量を調整することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の調光装置。
【請求項5】
前記観察方法は、位相差観察を含むことを特徴とする請求項4に記載の調光装置。
【請求項6】
複数の前記対物レンズに対応する前記照明制御情報は、前記記憶手段に予め記憶されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の調光装置。
【請求項7】
複数の前記対物レンズに対応する前記照明制御情報は、光路中に挿入された前記対物レンズの情報および前記観察方法に基き、前記制御手段が前記LED照明の光量調整範囲を算出し、前記記憶手段に記憶することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の調光装置。
【請求項8】
前記位置検出手段により前記対物レンズが切換られた、または前記観察方法検出手段により前記観察方法が切換られたことを検出した際、前記制御手段は、前記LED照明の光量を前記最適値に設定することを特徴とする請求項2から7のいずれか一項に記載の調光装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記制御手段に接続されたパルス発生手段からのパルス入力に基き前記LED照明の光量調整を行うことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の調光装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の調光装置を具備することを特徴とする顕微鏡。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−57807(P2013−57807A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196079(P2011−196079)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】