調温調湿装置
【課題】加湿水収容部のメンテナンスにかかる作業負担を軽減することが可能な調温調湿装置を提供する。
【解決手段】この調温調湿装置では、加湿部6は、空調室2b内に着脱可能に配置され、加湿水を溜める加湿皿12と、処理室2aから空調室2bへ流れ込んだ空気が接触する位置で加湿皿12の内外に跨るように設けられ、内部に封入された作動流体が加湿皿12の外部に配置された部分の内部で蒸発するとともにその蒸発した作動流体が加湿皿12の内部に配置された部分の内部で凝縮するヒートパイプ現象を生じるように構成された熱交換促進部16とを有する。
【解決手段】この調温調湿装置では、加湿部6は、空調室2b内に着脱可能に配置され、加湿水を溜める加湿皿12と、処理室2aから空調室2bへ流れ込んだ空気が接触する位置で加湿皿12の内外に跨るように設けられ、内部に封入された作動流体が加湿皿12の外部に配置された部分の内部で蒸発するとともにその蒸発した作動流体が加湿皿12の内部に配置された部分の内部で凝縮するヒートパイプ現象を生じるように構成された熱交換促進部16とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調温調湿装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、処理対象物を収容する室内の温湿度を目標の温湿度に調整することが可能な調温調湿装置が知られており、このような調温調湿装置の一例が下記特許文献1に開示されている。
【0003】
この特許文献1に開示された調温調湿装置では、試験槽内に処理対象物を収容する試験室と、空気の温湿度を目標の温湿度に調整するための空調室とが設けられており、その空調室内において空気の温湿度を加湿部と吸熱部と加熱器とによって調整するとともに、その空気をファンによって空調室と試験室との間で循環させることで試験室内の温湿度を調整するようになっている。そして、この調温調湿装置において、前記加湿部は、試験槽内の空調室の床面に形成された凹部からなる加湿水収容部と、その加湿水収容部に収容された加湿水を加熱するヒータとによって構成されており、ヒータで加湿水を蒸発させることによって空気の加湿を行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−203211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の構成では、加湿水収容部が試験槽の床面に一体的に形成されているため、その加湿水収容部の清掃等のメンテナンスを試験槽内で行わざるを得ず、そのメンテナンス作業が煩雑になるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、加湿水収容部のメンテナンスにかかる作業負担を軽減することが可能な調温調湿装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の調温調湿装置は、処理対象物が収められる処理室と、前記処理室内の空気の温湿度を目標の温湿度に調整するための空調室とを有する処理槽と、前記処理室と前記空調室との間で空気を循環させる送風部と、前記空調室内の空気を加湿するための加湿部と、前記処理槽内の空間の空気を調温するための調温部とを備えた調温調湿装置であって、前記加湿部は、前記空調室内に着脱可能に配置され、加湿水を溜める容器からなる加湿水収容部と、前記処理室から前記空調室へ流れ込んだ空気が接触する位置で前記加湿水収容部の内外に跨るように設けられ、内部に封入された作動流体が前記加湿水収容部の外部に配置された側と前記加湿水収容部の内部に配置された側とのうち一方側の内部で蒸発するとともにその蒸発した作動流体が他方側の内部で凝縮するヒートパイプ現象を生じさせ得るように構成された熱交換促進部とを有する。
【0008】
この調温調湿装置では、加湿部の加湿水収容部が空調室内に着脱可能に配置される容器からなるため、空調室から処理槽の外部へ加湿水収容部を取り出してそのメンテナンスを行うことができる。このため、従来のように加湿水収容部が試験槽の床面に一体的に形成されていて試験槽内でその加湿水収容部のメンテナンスを行わなければならない場合に比べて、加湿水収容部のメンテナンスにかかる作業負担を軽減することができる。
【0009】
ところで、従来のように試験槽の床面の一部を凹ませることによって加湿水収容部が形成される場合には、空気が加湿水収容部内の水面上を流れやすいことから、例えば、槽内を高温高湿条件に調整する場合、すなわち槽内の温度を加湿水の温度よりも高温に設定した場合に槽内を循環する空気の加湿が促進される。これに対し、加湿水収容部を、その外面に処理室から空調室へ流れ込んだ空気が接触する位置で空調室内に配置した場合には、空調室へ流れ込んだ空気が加湿水収容部の外面に沿う方向に流れるため、加湿水と空気の流れとが接触しにくく、空気の加湿が促進されにくい。しかしながら、本発明では、作動流体が内部に封入されるとともにヒートパイプ現象を生じさせ得るように構成された熱交換促進部が、処理室から空調室へ流れ込んだ空気が接触する位置で加湿水収容部の内外に跨るように設けられているため、処理室内から空調室に流れ込む空気が加湿水収容部に溜められた加湿水よりも昇温されると熱交換促進部にヒートパイプ現象が生じ、空調室に流れ込んだ空気の熱が熱交換促進部により加湿水へ搬送されて加湿水の蒸発が促進される。この熱交換促進部の熱搬送による加湿水の蒸発の促進によって、空気の加湿が促進され、その結果、上記した空気が加湿水収容部の外面に沿う方向に流れることに起因する空気の加湿しにくさをカバーすることができる。
【0010】
さらに、本願発明者は、鋭意検討した結果、ヒートパイプ現象を生じ得る熱交換促進部を温度差のある2つの空間に跨って配置すると、熱交換促進部のうち高温側の空間に配置された部分の内部で作動流体が蒸発し、その作動流体が蒸発する箇所の温度がその高温側の空間の露点に略等しくなることを見出した。従って、本発明では、処理室内の温度を上げる過程で処理室から空調室に流れ込む空気の温度が上昇して熱交換促進部にヒートパイプ現象が発生すると、熱交換促進部のうち加湿水収容部の外部に配置された部分で作動流体が蒸発し、この作動流体が蒸発する箇所の温度が処理室の空気の露点に略等しくなる。その後、この熱交換促進部により加湿水収容部に溜められた加湿水へ熱が搬送されてその加湿水の温度が処理室内の空気の露点付近まで上昇すると、熱交換促進部にヒートパイプ現象が生じなくなり、熱の搬送が停止される。すなわち、本発明では、加湿水収容部に溜められた加湿水の温度を処理室内の空気の露点付近に保持して、加湿水を蒸発可能な状態に保つことができる。
【0011】
なお、熱交換促進部が設けられていない場合には、処理室から空調室に流れ込んだ空気と加湿水との加湿水収容部の壁部を介した熱交換により、それらの温度がいずれ平衡状態となるが、本発明のような熱交換促進部が設けられていることによって、処理室から空調室に流れ込んだ空気と加湿水との熱交換が素早く行われるため、加湿水の温度をより早く処理室の空気の露点付近にして加湿水をより早く蒸発可能な状態にすることができる。
【0012】
また、低温の加湿水の温度を処理室の空気の露点まで上昇させて空気の加湿を開始する場合、もしくは、処理室を高温高湿状態に維持するために加湿水の温度低下に抗してその加湿水の温度を処理室の露点付近に維持しようとする場合には、ヒータで加湿水を加熱することも考えられる。これに対して、本発明では処理室から空調室に流れ込んだ空気の熱を熱交換促進部によって加湿水に供給することができるため、そのようなヒータによる加熱を行うことなく、もしくは、ヒータによる加熱量を低減して、上記空気の加湿の開始もしくは加湿水の温度を処理室の露点付近に維持することができる。このため、本発明では、ヒータによる加湿水の加熱にかかるエネルギー及びそのコストを削減することができる。
【0013】
上記調温調湿装置において、前記熱交換促進部のうち前記加湿水収容部の外部に配置された側の端部は、前記加湿水収容部の内部に配置された側の端部よりも低い位置に配置されていてもよい。
【0014】
熱交換促進部のうち加湿水収容部の外部に配置された側の端部と加湿水収容部の内部に配置された側の端部とが同じ高さに配置されている場合でも、処理室内の空気を加湿水よりも昇温させた場合に、熱交換促進部のうち加湿水収容部の外部に配置された部分で作動流体が蒸発するとともにその作動流体の蒸気が熱交換促進部のうち加湿水収容部の内部に配置された部分で凝縮してヒートパイプ現象が生じるが、本構成のように熱交換促進部のうち加湿水収容部の外部に配置された側の端部を加湿水収容部の内部に配置された側の端部よりも低い位置に配置すれば、熱交換促進部の内部での作動流体の蒸発と凝縮の循環をより効率よく行わせることができ、当該熱交換促進部による加湿水への熱搬送の効率を向上させることができる。その結果、より素早く加湿水を加熱して空気の加湿を行うことができる。
【0015】
上記調温調湿装置において、前記熱交換促進部は、前記加湿水収容部に複数設けられ、この各熱交換促進部のうち前記加湿水収容部の外部に配置された部分は、それぞれ板状に形成されているとともに互いに平行かつ所定間隔で並んで配置されていてもよい。
【0016】
この構成のように、加湿水収容部に熱交換促進部が複数設けられていれば、熱交換促進部が1つしか設けられていない場合に比べて、加湿水収容部に溜められた加湿水全体をより早く昇温させることができる。ところで、このように熱交換促進部を複数設ける構成としては、複数の棒状の熱交換促進部を加湿水収容部の所定の壁部から突出するように設ける構成も考えられる。しかし、この場合には、加湿水収容部の壁部に接触する空気の流れは乱流の状態であり、その乱流の状態の空気から各熱交換促進部のうち加湿水収容部の外部に配置された部分へ付与される熱量はそれぞれ異なってしまう。これに対して、本構成のように、各熱交換促進部のうち加湿水収容部の外部に配置された部分がそれぞれ板状に形成されているとともに互いに平行かつ所定間隔で並んで配置されていれば、処理室から空調室に流れ込んで加湿水収容部の外面に接触する空気がこれら熱交換促進部によって整流され、その整流された空気から各熱交換促進部に付与される熱量が均一化される。その結果、各熱交換促進部によって加湿水へ搬送される熱量が均一化されるため、加湿水収容部に溜められた加湿水全体をより均一に昇温させることができる。従って、この構成では、加湿水収容部に溜められた加湿水全体をより早くかつより均一に昇温させることができる。
【0017】
上記調温調湿装置において、前記熱交換促進部は、前記加湿水収容部の壁部を貫通して設けられ、この熱交換促進部が設けられた前記壁部は、断熱材を備えていることが好ましい。
【0018】
この構成のように、熱交換促進部が貫通して設けられた加湿水収容部の壁部が断熱材を備えていれば、その壁部を挟んで加湿水収容部の内外で温度差を確実に保持することができ、その壁部を貫通する熱交換促進部に確実にヒートパイプ現象を生じさせることができる。
【0019】
上記調温調湿装置において、前記熱交換促進部のうち前記加湿水収容部の外部に配置された側の端部と前記加湿水収容部の内部に配置された側の端部とは、同じ高さに配置されていてもよい。
【0020】
この構成のように、熱交換促進部のうち加湿水収容部の外部に配置された側の端部と加湿水収容部の内部に配置された側の端部とが同じ高さに配置されている場合でも、処理室内の空気の温度を加湿水よりも上昇させる過程において熱交換促進部のうち加湿水収容部の外部に配置された部分で作動流体が蒸発するとともにその蒸発した作動流体が熱交換促進部のうち加湿水収容部の内部に配置された部分で凝縮するヒートパイプ現象が生じ、この熱交換促進部によって処理室から空調室に流れ込んだ空気から加湿水へ熱が搬送されて、加湿水の昇温が促進される。さらに、この構成では、処理室内の温度を加湿水よりも降下させる場合には、熱交換促進部のうち加湿水収容部の内部に配置された部分で作動流体が蒸発するとともにその蒸発した作動流体が熱交換促進部のうち加湿水収容部の外部に配置された部分で凝縮するヒートパイプ現象が生じ、この熱交換促進部によって加湿水収容部に溜められた加湿水から加湿水収容部の外部へ熱が搬送されて、加湿水の降温が促進される。従って、この構成では、処理室の温度と湿度を共に上昇させる場合に、処理室の空気の昇温を利用して加湿水を素早く昇温させ、加湿部による空気の加湿をより早く行わせることができるとともに、処理室の温度と湿度を共に降下させる場合に、処理室の空気の降温を利用して加湿水を素早く降温させ、加湿部による空気の加湿をより早く低減させることができる。
【0021】
また、本発明による調温調湿装置は、処理対象物が収められる処理室と、前記処理室内の空気の温湿度を目標の温湿度に調整するための空調室とを有する処理槽と、前記処理室と前記空調室との間で空気を循環させる送風部と、前記空調室内の空気を加湿するための加湿部と、前記処理槽内の空間の空気を調温するための調温部とを備えた調温調湿装置であって、前記加湿部は、前記空調室内に着脱可能に配置され、加湿水を溜める容器からなる加湿水収容部を有し、前記加湿水収容部は、作動流体が封入された構成であり、かつ、前記封入された作動流体が当該加湿水収容部のうち前記処理室から前記空調室へ流れ込んだ空気が接触する外面寄りの領域と当該加湿水収容部の内面寄りの領域とのいずれか一方の領域で蒸発するとともにその蒸発した作動流体が他方の領域で凝縮するヒートパイプ現象を生じ得るように構成されている。
【0022】
この調温調湿装置では、加湿部の加湿水収容部が空調室内に着脱可能に配置されているので、上記した調温調湿装置と同様の作用により加湿水収容部のメンテナンスにかかる作業負担を軽減することができる。また、この調温調湿装置では、加湿水収容部が、その内部に封入された作動流体が当該加湿水収容部のうち処理室から空調室へ流れ込んだ空気が接触する外面寄りの領域と当該加湿水収容部の内面寄りの領域とのいずれか一方の領域で蒸発するとともにその蒸発した作動流体が他方の領域で凝縮するヒートパイプ現象を生じ得るように構成されているため、処理室内から空調室に流れ込む空気が加湿水収容部に溜められた加湿水よりも昇温されると加湿水収容部においてヒートパイプ現象が生じ、空調室に流れ込んだ空気の熱が加湿水収容部の外面側から内面側へ搬送されて加湿水の蒸発が促進される。これにより、空気の加湿が促進され、その結果、空気が加湿水収容部の外面に沿う方向に流れることに起因する空気の加湿しにくさをカバーすることができる。
【0023】
また、この構成では、上記した調温調湿装置の熱交換促進部と同様の原理により、加湿水収容部のうち作動流体が蒸発する箇所の温度が処理室の空気の露点に略等しくなる。このため、加湿水収容部による熱搬送によって加湿水の温度が処理室の空気の露点付近まで上昇すると、加湿水収容部においてヒートパイプ現象が生じなくなって熱搬送が停止され、その結果、加湿水収容部に溜められた加湿水の温度を処理室内の空気の露点付近に保持して、加湿水を蒸発可能な状態に保つことができる。
【0024】
また、加湿水収容部がヒートパイプ現象を生じ得るように構成されていることによって、処理室から空調室に流れ込んだ空気と加湿水との熱交換が素早く行われるため、加湿水の温度をより早く処理室の空気の露点付近にして加湿水をより早く蒸発可能な状態にすることができる。また、ヒートパイプ現象が生じる加湿水収容部による熱搬送によって、処理室から空調室に流れ込んだ空気の熱を利用して加湿水を昇温させることが可能であるため、加湿部においてヒータによる加湿水の加熱にかかるエネルギー及びそのコストを削減することができる。
【0025】
上記調温調湿装置において、前記加湿水収容部は、その底面と前記空調室内の床面との間に間隙が形成される位置に配置され、当該加湿水収容部の底壁が前記ヒートパイプ現象を生じ得るように構成されていてもよい。
【0026】
また、上記調温調湿装置において、前記加湿水収容部の側壁が前記ヒートパイプ現象を生じ得るように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明によれば、加湿水収容部のメンテナンスにかかる作業負担を軽減することができる。また、本発明によれば、ヒータによる加湿水の加熱にかかるエネルギー及びそのコストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態による調温調湿装置の処理槽内の構造を示す図である。
【図2】図1に示した調温調湿装置に用いる加湿部の縦断面図である。
【図3】ヒートパイプ現象が生じているヒートパイプにおいて作動流体が蒸発している箇所の外面温度がどのような温度となるかを実験した結果を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態による調温調湿装置の加湿部近傍の構造を示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態の第1変形例による調温調湿装置の加湿部の縦断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態の第2変形例による調温調湿装置の加湿部を処理室側から見た図である。
【図7】図6に示した加湿部のVII−VII線に沿った断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態の第3変形例による調温調湿装置の加湿部近傍の構造を示す図である。
【図9】本発明の第1実施形態の第4変形例による調温調湿装置の加湿部近傍の構造を示す図である。
【図10】本発明の第2実施形態の第1変形例による調温調湿装置の加湿皿の縦断面図である。
【図11】本発明の第2実施形態の第2変形例による調温調湿装置の加湿皿の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0030】
(第1実施形態)
まず、図1及び図2を参照して、本発明の第1実施形態による調温調湿装置の構成について説明する。
【0031】
この第1実施形態による調温調湿装置は、後述する処理室2a内の温湿度を所定の温湿度に設定してその処理室2a内に収容した処理対象物をその所定の温湿度環境下に置くために用いられるものであり、このような調温調湿装置としては環境試験装置や恒温恒湿槽等が挙げられる。この調温調湿装置は、図1に示すように、処理槽2と、送風部4と、加湿部6と、調温部8とを備えている。
【0032】
処理槽2は、その内部の空間を密閉可能に構成された箱状に形成されており、当該処理槽2は、その内部に処理室2aと空調室2bとを有している。この処理室2aと空調室2bとは仕切壁2cによって仕切られており、この仕切壁2cの上側には、処理室2aと空調室2bとを連通させる上側連通部2dが設けられ、仕切壁2cの下側には、処理室2aと空調室2bとを連通させる下側連通部2eが設けられている。
【0033】
処理室2aは、処理対象物が収められる空間であり、この処理室2a内の温湿度が目標の温湿度に調整される。この処理室2a内には、空気の温度を検出する図略の空気温度検出部が設けられている。
【0034】
空調室2bは、処理室2a内の空気の温湿度を目標の温湿度に調整するために設けられており、この空調室2b内に送風部4、加湿部6及び調温部8が設置されている。
【0035】
送風部4は、空調室2bの上部に設けられている。この送風部4は、空気を送風するファンからなり、処理室2aと空調室2bとの間で空気を循環させる。送風部4によって送風された空気は、空調室2bから上側連通部2dを通じて処理室2aへ流れる。これに伴い処理室2aの空気は、処理室2aから下側連通部2eを通じて空調室2b内に流れ込む。このようにして処理室2aと空調室2bとの間で空気が循環する。
【0036】
加湿部6は、空調室2bの下部に設けられており、空調室2b内の空気を加湿する。
【0037】
具体的には、この加湿部6は、図2に示すように、加湿皿12と、ヒータ14と、熱交換促進部16と、加湿水温度検出部18とを有する。
【0038】
加湿皿12は、加湿水を溜める容器であり、本発明の加湿水収容部の概念に含まれる。この加湿皿12は、空調室2b内に着脱可能に配置されている。具体的には、この加湿皿12は、空調室2b内の床面2g上に載置されており、その空調室2bから処理槽2の外部へ取り出せるようになっている。そして、加湿皿12は、空調室2bの床面2g上に配設される底壁12aと、その底壁12aの周縁部からそれぞれ立ち上げられる側壁12bとを有する。加湿皿12は、処理室2aから空調室2bに流れ込んだ空気がその各側壁12bのうちの1つの側壁12cに接触する位置に配置されている。この側壁12cは、本発明の壁部の概念に含まれるものである。この第1実施形態では、側壁12cが下側連通部2eに面するように配置されており、下側連通部2eを通って処理室2aから空調室2bへ流れ込んだ空気が側壁12cの外面に略垂直に当たるようになっている。加湿皿12の各側壁12b(12c)は、断熱材を備えた断熱壁からなる。また、加湿皿12は、その上部に開口12dを有しており、この開口12dを通じて、加湿皿12に溜められた加湿水が蒸発可能となっている。そして、加湿部6では、この加湿水を蒸発させることによって空気を加湿する。
【0039】
ヒータ14は、加湿皿12に溜められた加湿水を加熱して蒸発させるためのものであり、その一部が加湿水中に漬かるように加湿皿12内に配設されている。
【0040】
熱交換促進部16は、処理室2aから空調室2bへ流入する空気と加湿皿12に溜められた加湿水との熱交換を促進させるものである。この熱交換促進部16は、直棒状のヒートパイプからなり、処理室2aから空調室2bに流れ込んだ空気が接触する位置で加湿皿12の前記側壁12cを貫通して当該加湿皿12の内外に跨って設けられている。
【0041】
具体的には、加湿皿12の前記側壁12cに貫通孔12fが形成されており、熱交換促進部16のヒートパイプは、この貫通孔12fに挿通された状態で側壁12cに固定されている。そして、貫通孔12fは、側壁12cの外面側に位置する部分が内面側に位置する部分よりも低くなるように傾斜した孔に形成されており、この貫通孔12fに挿通された熱交換促進部16は、加湿皿12の外部に配置された側の端部が加湿皿12の内部に配置された側の端部よりも低い位置に位置するように傾斜した姿勢で配置されている。そして、熱交換促進部16のうち加湿皿12内に配置された部分は、加湿水中に漬かっている。また、貫通孔12fに挿通された熱交換促進部16とその貫通孔12fの内面との間の隙間は、図略のシール材によって塞がれて加湿水が漏出しないようになっている。
【0042】
熱交換促進部16のヒートパイプの内部には、純水からなる作動流体が封入されている。この熱交換促進部16のヒートパイプは、空調室2bに流れ込んだ処理室2aの空気の温度が加湿皿12に溜められた加湿水の温度よりも高い場合に、加湿皿12の外部に配置された側の端部近傍の内部で作動流体が蒸発するとともにその蒸発した作動流体の蒸気が加湿皿12内に配置された側の端部近傍の内部で凝縮するヒートパイプ現象を生じるように構成されている。
【0043】
加湿水温度検出部18は、加湿皿12内に設けられており、加湿皿12に溜められた加湿水の温度を検出するものである。
【0044】
調温部8は、空調室2b内に設けられており、その空調室2bの空気の温度を調整する。この調温部8は、加熱部8aと、冷却部8bとによって構成されている。
【0045】
加熱部8aは、空気を加熱するものであり、空調室2b内において送風部4の下側に設けられている。冷却部8bは、空気を冷却するものであり、例えば蒸気圧縮式の冷凍機によって構成されている。この冷却部8bは、空調室2b内において加熱部8aの下側でかつ加湿部6の上側に設けられている。そして、この調温部8では、前記空気温度検出部による検出結果に基づいて加熱部8aの加熱能力と冷却部8bの冷却能力とをそれぞれ調整することによって空気の温度を調整するようになっている。また、冷却部8bは、除湿機を兼ねており、この冷却部8bの除湿能力と前記加湿部6の加湿能力とをそれぞれ調整することによって空気の湿度を調整するようになっている。
【0046】
次に、本発明の第1実施形態による調温調湿装置の動作について説明する。
【0047】
この第1実施形態による調温調湿装置では、前記空気温度検出部により検出される処理室2a内の空気の温度と前記加湿水温度検出部18により検出される加湿水の温度とに基づいて処理室2a内の空気の温度と加湿水の温度との高低が判断される。
【0048】
そして、処理室2a内の空気の温度が加湿水の温度よりも低く、その処理室2a内を加湿水よりも高温に設定するとともにその処理室2a内を加湿する場合、例えば処理室2aを高温高湿条件に調整する場合には、まず、空調室2b内で加熱部8aによって空気が加熱され、その加熱された空気が送風部4によって処理室2aへ送られることにより処理室2a内の温度が加湿水の温度よりも上げられる。そして、加湿水よりも温度が上昇した処理室2a内の空気は、空調室2b内に流れ込んで加湿皿12の側壁12cに当たり、その後、側壁12cに沿って空調室2b内を上方へ流れる。
【0049】
この際、前記側壁12cを挟んで加湿皿12の内外で温度差が生じ、それに伴って、熱交換促進部16にヒートパイプ現象が生じる。具体的には、熱交換促進部16のうち加湿皿12の外部に配置された側の端部近傍の内部で作動流体が蒸発するとともに、その蒸発した作動流体が熱交換促進部16のうち加湿皿12内に配置された側の端部近傍の内部で凝縮し、この作動流体の蒸発と凝縮の循環が熱交換促進部16の内部で生じる。このヒートパイプ現象が生じることによって、処理室2aの空気の熱が熱交換促進部16を介して加湿皿12に溜められた加湿水に供給されて加湿水が加熱される。これにより、加湿水の蒸発が促進されて空気が加湿される。
【0050】
そして、ヒートパイプ現象が生じている熱交換促進部16では、加湿皿12の外部に配置された部分において作動流体が蒸発している箇所の外面温度が処理室2aから空調室2bに流れ込んだ空気の露点、すなわち処理室2a内の空気の露点に略等しくなる。この現象は、本願発明者が行ったヒートパイプの作動流体が蒸発している箇所の温度を実測する実験の結果から判明したものである。この実験は、恒温恒湿槽において、ヒートパイプを断熱壁で仕切られた槽内の空間と槽外の空間とに跨るようにその断熱壁を貫通させて設置し、槽内の空間を槽外の空間よりも高温にしてヒートパイプに完全にヒートパイプ現象が生じている条件で行った。この実験において、ヒートパイプのうち槽内に配置された部分で作動流体が蒸発する箇所の外面温度を温度センサによって実測するとともに、恒温恒湿槽の装置側で槽内の温度及び相対湿度を測定し、さらに、この測定した槽内の温度及び相対湿度から槽内の空気の露点を算出した。これらの測定結果及び算出結果の経時変化が図3に示されている。この図3に示す結果から、ヒートパイプ現象が生じているヒートパイプにおいて作動流体が蒸発する部分の外面温度は、槽内の空気の露点、すなわち高温側の空間の露点に略等しくなることが判る。
【0051】
このように熱交換促進部16のうち作動流体が蒸発する箇所の外面温度が処理室2aの空気の露点に略等しくなった後、上記のように熱交換促進部16により加湿皿12に溜められた加湿水へ熱が搬送されてその加湿水の温度が処理室2a内の空気の露点に略等しい温度まで上昇すると、熱交換促進部16にヒートパイプ現象が生じなくなり、熱の搬送が停止される。すなわち、加湿水の温度は、熱交換促進部16の機能により処理室2a内の空気の露点付近に保持され、蒸発可能な状態に保たれる。
【0052】
なお、空気の加湿を急ぐ場合、すなわち処理室2aの湿度を急速に上昇させる場合には、上記熱交換促進部16による熱搬送に加えてヒータ14により加湿水を加熱し、加湿水の蒸発をより促進させる。
【0053】
また、処理室2a内を高温低湿条件に調整する場合、すなわち処理室2a内を加湿水よりも高温に設定するとともに低湿状態にする場合には、上記と同様にして加熱部8aによって空気が加熱されて処理室2a内が加湿水よりも高い温度まで昇温され、このことが前記空気温度検出部による検出温度と前記加湿水温度検出部18による検出温度とから判断される。このように処理室2a内が加湿水よりも高い温度まで昇温されると、上記と同様に熱交換促進部16にヒートパイプ現象が生じ、その熱交換促進部16による熱搬送によって加湿水の蒸発が促進されて空気が加湿されるが、冷却部8bによってその空気が除湿され、空調室2bから処理室2aへ送風される空気は低湿状態とされる。このときヒータ14は稼働されない。
【0054】
また、処理室2aを低温高湿条件に調整する場合、すなわち処理室2a内を加湿水よりも低温に設定するとともにその処理室2a内を高湿状態にする場合には、冷却部8bによって空気が冷却されて処理室2a内が加湿水よりも低い温度まで降温され、このことが前記空気温度検出部による検出温度と前記加湿水温度検出部18による検出温度とから判断される。そして、このように処理室2a内の空気の温度が加湿水の温度よりも低い温度にまで下げられた場合には、熱交換促進部16にヒートパイプ現象は生じず、ヒータ14が稼働されてそのヒータ14により加湿水が加熱される。これにより、加湿水の蒸発が促進されて空調室2bから処理室2aへ送風される空気が加湿され、処理室2aが高湿状態にされる。
【0055】
また、処理室2aを低温低湿条件に調整する場合、すなわち処理室2a内を加湿水よりも低温に設定するとともにその処理室2a内を低湿状態にする場合には、前記低温高湿条件の場合と同様にして冷却部8bにより空気が冷却されて処理室2a内が加湿水よりも低い温度まで降温され、このことが前記空気温度検出部による検出温度と前記加湿水温度検出部18による検出温度とから判断される。そして、このように処理室2a内の空気の温度が加湿水の温度よりも低い温度にまで下げられた場合には、熱交換促進部16にヒートパイプ現象は生じない。また、ヒータ14は稼働されず、加湿水は空気によって冷やされて蒸発が抑制されるため、空調室2bから処理室2aへ送風される空気は低湿状態とされる。
【0056】
以上説明したように、第1実施形態では、加湿部6の加湿皿12が空調室2b内に着脱可能に配置されるため、空調室2bから処理槽2の外部へ加湿皿12を取り出してそのメンテナンスを行うことができる。このため、従来のように加湿水収容部が試験槽の床面に一体的に形成されていて試験槽内でその加湿水収容部のメンテナンスを行わなければならない場合に比べて、加湿皿12のメンテナンスにかかる作業負担を軽減することができる。
【0057】
また、従来のように試験槽の床面の一部を凹ませることによって加湿水収容部が形成される場合には、空気が加湿皿12内の水面上を流れやすいことから、例えば、槽内を高温高湿条件に調整する場合、すなわち槽内の温度を加湿水の温度よりも高温に設定した場合に、槽内を循環する空気の加湿が促進される。これに対し、加湿皿12を、その側壁12cの外面に処理室2aから空調室2bへ流れ込んだ空気が接触する位置で空調室2b内に配置した場合には、空調室2bへ流れ込んだ空気が加湿皿12の側壁12cの外面に沿う方向に流れるため、加湿水と空気の流れとが接触しにくく、空気の加湿が促進されにくい。しかしながら、第1実施形態では、熱交換促進部16が、処理室2aから空調室2bへ流れ込んだ空気が接触する位置で加湿皿12の内外に跨るように設けられているため、処理室2aから空調室2bに流れ込む空気が加湿皿12に溜められた加湿水よりも昇温されると熱交換促進部16にヒートパイプ現象が生じ、空調室2bに流れ込んだ空気の熱が熱交換促進部16により加湿水へ搬送されて加湿水の蒸発が促進される。これにより、空気の加湿が促進され、その結果、空気が加湿皿12の側壁12cの外面に沿う方向に流れることに起因する空気の加湿しにくさをカバーすることができる。
【0058】
また、第1実施形態では、ヒートパイプ現象が生じている熱交換促進部16のうち加湿皿12の外部に配置された部分において作動流体が蒸発する箇所の外面温度が処理室2aの空気の露点に略等しくなるため、この熱交換促進部16により加湿皿12に溜められた加湿水へ熱が搬送されてその加湿水の温度が処理室2a内の空気の露点付近まで上昇すると、熱交換促進部16にヒートパイプ現象が生じなくなり、熱の搬送が停止される。従って、第1実施形態では、加湿皿12に溜められた加湿水の温度を処理室2a内の空気の露点付近に保持して、加湿水を蒸発可能な状態に保つことができる。
【0059】
また、第1実施形態のような熱交換促進部16が設けられていることによって、処理室2aの空気と加湿水との熱交換が素早く行われるため、熱交換促進部16が設けられていない場合に比べて、加湿水の温度をより早く処理室2a内の空気の露点付近にして加湿水をより早く蒸発可能な状態にすることができる。
【0060】
また、第1実施形態では、処理室2aの空気の熱を熱交換促進部16によって加湿水に供給して加湿水を加熱することができるため、ヒータ14による加熱量を低減もしくはヒータ14による加熱を停止させても空気の加湿を開始することができるとともに加湿水の温度を処理室2aの露点付近に維持することができる。このため、第1実施形態では、ヒータ14による加湿水の加熱にかかるエネルギー及びそのコストを削減することができる。
【0061】
また、第1実施形態では、熱交換促進部16のうち加湿皿12の外部に配置された側の端部が加湿皿12の内部に配置された側の端部よりも低い位置に配置されているため、熱交換促進部16のうち加湿皿12の外部に配置された側の端部と加湿皿12の内部に配置された側の端部とが同じ高さに配置されている場合に比べて、熱交換促進部16の内部での作動流体の蒸発と凝縮の循環をより効率よく行わせることができる。その結果、熱交換促進部16による加湿水への熱搬送の効率を向上させることができ、より素早く加湿水を加熱して空気の加湿を行うことができる。
【0062】
また、第1実施形態では、熱交換促進部16が貫通するように設けられた加湿皿12の側壁12cが断熱材を備えた断熱壁からなるので、その側壁12cを挟んで加湿皿12の内外で温度差を確実に保持することができ、熱交換促進部16に確実にヒートパイプ現象を生じさせることができる。
【0063】
(第2実施形態)
次に、図4を参照して、本発明の第2実施形態による調温調湿装置について説明する。
【0064】
この第2実施形態による調温調湿装置では、上記第1実施形態と異なり、加湿部6が前記熱交換促進部16を備えておらず、加湿皿12自体がヒートパイプ現象を生じ得るように構成されている。
【0065】
具体的には、この第2実施形態による加湿部6の加湿皿12は、図4に示すように、その底壁12a及び側壁12bが中空に形成されており、その内部に作動流体が封入されている。そして、この加湿皿12は、空調室2b内に着脱可能に配置されており、空調室2b内の床面2g上に設置された支持部材30上に載置されている。この加湿皿12は、支持部材30によって支持されて空調室2b内の床面2gから上方に離間した位置で水平に配置されている。
【0066】
支持部材30は、載置部30aと、脚部30bとを有している。載置部30aは、その上に加湿皿12が載置される部分であり、水平に配置されている。この載置部30aは、多孔板や網目状の部材からなり、上下に貫通する多数の孔部30cが設けられている。この載置部30aの各孔部30cを通じて上下に通気可能となっている。脚部30bは、載置部30aを空調室2b内の床面2gから上方に離間させた状態で支えるものであり、載置部30aのうち互いに離間し、かつ、その載置部30aの端縁近傍に位置する4箇所にそれぞれ取り付けられてその載置部30aを床面2g上で水平に支えている。
【0067】
この第2実施形態による調温調湿装置の上記以外の構成は、上記第1実施形態による調温調湿装置の構成と同様である。
【0068】
そして、この第2実施形態の調温調湿装置において、処理室2a内の空気の温度が加湿皿12に溜められた加湿水の温度よりも低く、その処理室2a内を加湿水よりも高温に設定するとともにその処理室2a内を加湿する場合には、加湿水よりも温度の高い空気が処理室2aから空調室2bへ流れ込み、その空気は、加湿皿12と仕切壁2cとの間を通って上方へ流れる一方、支持部材30の脚部30bの間を通って載置部30aの下方の空間にも流れる。
【0069】
この載置部30aの下方の空間に流れ込んだ空気の一部は、載置部30aに設けられた多数の孔部30cを通って加湿皿12の底面に接触する。それによって、加湿皿12にヒートパイプ現象が生じ、加湿皿12のうち特に底壁12aの内部において、当該加湿皿12の外面(底面)寄りの領域で作動流体が蒸発するとともに、その蒸発した作動流体が当該加湿皿12の内面(加湿水と接触する面)寄りの領域で凝縮し、この作動流体の蒸発と凝縮の循環が加湿皿12の内部で生じる。このヒートパイプ現象が生じることによって、処理室2aから空調室2bに流れ込んだ空気の熱が加湿皿12によりその加湿皿12に溜められた加湿水へ搬送されて加湿水が加熱される。これにより、加湿水の蒸発が促進されて空調室2bの空気が加湿される。
【0070】
この第2実施形態の調温調湿装置において処理室2aの温湿度を調整する際の上記以外の動作は、上記第1実施形態の調温調湿装置において前記熱交換促進部16でのヒートパイプ現象を加湿皿12でのヒートパイプ現象に置き換えた場合の動作と同様である。
【0071】
以上説明したように、この第2実施形態では、加湿皿12が空調室2b内に着脱可能に配置されているため、上記第1実施形態と同様、加湿皿12のメンテナンスにかかる作業負担を軽減することができる。
【0072】
そして、この第2実施形態では、上記第1実施形態における前記熱交換促進部16のヒートパイプ現象の代わりに加湿皿12におけるヒートパイプ現象が同様に作用し、そのヒートパイプ現象に起因する上記第1実施形態の効果と同様の効果を得ることができる。
【0073】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0074】
例えば、図5に示す上記第1実施形態の第1変形例のように、熱交換促進部16は、水平に延びる姿勢で配置されていてもよい。すなわち、熱交換促進部16のうち加湿皿12の外部に配置された側の端部と加湿皿12の内部に配置された側の端部とは、同じ高さに配置されていてもよい。
【0075】
この第1変形例のような構成であっても、処理室2aの空気の温度を加湿水の温度よりも高い温度に設定した場合には、熱交換促進部16のうち加湿皿12の外部に配置された側の部分の内部で作動流体が蒸発するとともにその蒸発した作動流体が熱交換促進部16のうち加湿皿12の内部に配置された部分の内部で凝縮するヒートパイプ現象が生じ、この熱交換促進部16によって処理室2aから空調室2bへ流れる空気から加湿水へ熱が搬送されて、加湿水の昇温が促進される。
【0076】
さらに、この第1変形例では、処理室2a内の温度を降下させる場合に、処理室2aの空気の温度を加湿水の温度よりも低い温度に設定すると、熱交換促進部16のうち加湿皿12の内部に配置された部分で作動流体が蒸発するとともにその蒸発した作動流体が熱交換促進部16のうち加湿皿12の外部に配置された部分で凝縮するヒートパイプ現象が生じ、この熱交換促進部16によって加湿皿12に溜められた加湿水から外部へ熱が搬送されて、加湿水の降温が促進される。従って、この第1変形例では、処理室2aの温度と湿度を共に上昇させる場合に、処理室2aの空気の昇温を利用して加湿水を素早く昇温させ、加湿部6による空気の加湿をより早く行わせることができるとともに、処理室2aの温度と湿度を共に降下させる場合に、処理室2aの空気の降温を利用して加湿水を素早く降温させ、加湿部6による空気の加湿をより早く低減させることができる。
【0077】
また、図6及び図7に示す上記第1実施形態の第2変形例のように、板状に形成された複数の熱交換促進部20が加湿皿12の側壁12cに設けられていてもよい。
【0078】
具体的には、この第2変形例による熱交換促進部20は、中空の平板状に形成されたヒートレーンからなり、その内部に作動流体が封入されている。処理室2aから空調室2bに流れ込んだ空気が接触する加湿皿12の側壁12cには、上下方向に延びるとともに加湿皿12の内外を貫通する細長い貫通孔12hが水平方向に所定間隔で複数形成されており、この各貫通孔12hに熱交換促進部20のヒートレーンがそれぞれ挿通されて加湿皿12の内外に跨るように設けられている。これにより、各熱交換促進部20のうち加湿皿12の外部に配置された部分及び加湿皿12内に配置された部分は、立てられた姿勢で配置されているとともに、互いに平行かつ所定間隔で水平方向に並んで配置されている。
【0079】
この第2変形例のように、熱交換促進部20が、処理室2aから空調室2bに流れ込んだ空気が接触する加湿皿12の側壁12cに複数設けられていれば、熱交換促進部が1つしか設けられていない場合に比べて、加湿皿12に溜められた加湿水全体をより早く昇温させることができる。
【0080】
ところで、熱交換促進部を複数設ける構成としては、上記第1実施形態のような直棒状の熱交換促進部16を加湿皿12の側壁12cから突出するように複数設けてもよい。しかし、この場合には、加湿皿12の側壁12cに接触する空気の流れは乱流の状態であり、その乱流の状態の空気から各熱交換促進部16のうち加湿皿12の外部に配置された部分へ付与される熱量はそれぞれ異なってしまう。
【0081】
これに対して、この第2変形例のように各熱交換促進部20のうち加湿皿12の外部に配置された部分がそれぞれ板状に形成されているとともに互いに平行かつ所定間隔で並んで配置されていれば、処理室2aから空調室2bに流れ込んで加湿皿12の側壁12cに接触する空気がこれらの熱交換促進部20によって整流され、その整流された空気から各熱交換促進部20に付与される熱量が均一化される。その結果、各熱交換促進部20によって加湿水へ搬送される熱量が均一化されるため、加湿皿12に溜められた加湿水全体をより均一に昇温させることができる。従って、この第2変形例では、加湿皿12に溜められた加湿水全体をより早くかつより均一に昇温させることができる。
【0082】
また、加湿皿12を載置する面は、空調室2b内の床面2gに限られない。例えば、図8に示す上記第1実施形態の第3変形例のように、空調室2b内に支持部材40が設置されていてその支持部材40の上面に加湿皿12が載置されていてもよい。従って、加湿皿12は、空調室2bの床面2gから持ち上げられた状態で下側連通部2eから上側にずれた位置に配置されていてもよい。なお、加湿皿12を床面2gから持ち上げた位置で載置するための載置面を形成する支持部材としては、床面2g上に設置する台状のものに限らず、空調室2bを囲む処理槽2の内壁面に固定された棚状のものであってもよい。
【0083】
また、図9に示す上記第1実施形態の第4変形例のように、熱交換促進部16は、加湿皿12の底壁12aを貫通して当該加湿皿12の内外に跨って設けられていてもよい。なお、この第4変形例における底壁12aは、本発明の壁部の概念に含まれるものである。
【0084】
具体的には、この第4変形例では、空調室2b内の床面2g上に設置された支持部材30上に加湿皿12が載置されることにより、床面2gから上方に離間した位置に加湿皿12が配置されている。加湿皿12の底壁12aには、上下に貫通する複数の貫通孔12jがそれぞれ離間した位置に設けられており、その各貫通孔12jにヒートパイプからなる熱交換促進部16が上下方向に延びる状態でそれぞれ挿嵌されて固定されている。
【0085】
支持部材30は、脚部30bと、載置部30eとを有している。脚部30bは、上記第2実施形態の支持部材30の脚部30bと同様のものであり、載置部30eを空調室2b内の床面2gから上方に離間させた状態で水平に支えている。載置部30eは、平板状に形成されており、その上に加湿皿12が載置される。この載置部30eのうち加湿皿12の底壁12aから下方に突出する各熱交換促進部16に対応する位置に上下に貫通する挿通孔30fがそれぞれ設けられている。
【0086】
そして、載置部30eの各挿通孔30fに各熱交換促進部16のうち加湿皿12の外部に位置する部分が挿通されている。すなわち、各熱交換促進部16のうち加湿皿12の外部に位置する部分は、載置部30eの挿通孔30fを通って載置部30eの下方の空間に突出している。この第4変形例では、処理室2a内の空気が加湿皿12に溜められた加湿水よりも昇温されて、その空気が空調室2bに流れ込むと、この空気の一部は、支持部材30の脚部30bの間を通って載置部30eの下方の空間にも流れ、その載置部30eの下方の空間に突出した各熱交換促進部16に接触する。それによって、各熱交換促進部16にヒートパイプ現象が生じ、各熱交換促進部16のうち加湿皿12の底壁12aから下方に突出した部分の内部で作動流体が蒸発するとともに、その蒸発した作動流体が各熱交換促進部16のうち加湿皿12内に位置する部分の内部で凝縮する。なお、この第4変形例の場合、各熱交換促進部16に確実にヒートパイプ現象を生じさせるために加湿皿12の底壁12aは断熱材を備えた断熱壁であることが好ましい。また、載置部30eは、網状等に形成されたものであってもよい。
【0087】
また、加湿水を溜める加湿水収容部は、上記した平型の加湿皿12以外の形状のものであってもよい。例えば、内部に加湿水を収容するタンクのようなものであって加湿水が蒸発してそのタンクの外部に放散可能な開口が設けられているようなものを加湿水収容部として用いてもよい。
【0088】
また、加湿皿12の側壁12c(12b)及び/又は底壁12aは、断熱材を備えていなくてもよい。
【0089】
また、図10に示す上記第2実施形態の第1変形例のように、加湿皿12の中空状に形成された底壁12aが、その上面側から加湿水を溜める空間に突出してその内部の空間が当該底壁12a内の空間と繋がっている内側凸部12mを備えていてもよい。これにより、加湿皿12において上記第2実施形態で示したヒートパイプ現象が生じたときにその内側凸部12m内でも作動流体の凝縮が生じ、加湿皿12に溜められた加湿水に対する加湿皿12の伝熱面積を増やすことができるので、加湿水への伝熱効率を向上することができる。さらに、図11に示す上記第2実施形態の第2変形例のように、加湿皿12の中空状の底壁12aが、前記内側凸部12mに加えて、その下面側から下方に突出してその内部の空間が当該底壁12a内の空間と繋がっている外側凸部12nを備えていてもよい。この外側凸部12nにより、処理室2aから空調室2bに流れ込んだ空気の熱をより効率的に加湿皿12の底壁12aに与えることができる。また、加湿皿12の中空状の底壁12aが、内側凸部12mを備えておらず、外側凸部12nのみを備えていてもよい。
【0090】
また、加湿皿12をヒートパイプ現象が生じ得るように構成する場合において、加湿皿の一部のみをヒートパイプ現象が生じ得るように構成してもよい。例えば、加湿皿の底壁のみを中空にしてその内部に作動流体を封入したり、加湿皿の側壁のみを中空にしてその内部に作動流体を封入したりしてもよい。
【0091】
また、加湿皿12をヒートパイプ現象が生じ得るように構成する場合において、熱交換を促進するためのフィンを加湿皿12から外側へ突出するように設けてもよく、また、熱交換を促進するためのフィンを加湿皿12から内側の加湿水を溜める空間へ突出するように設けてもよい。
【0092】
また、上記第2実施形態において、支持部材30の載置部30aの下方に上向きに送風するファンを設置して、載置部30aの下方に流れ込んだ空気をこのファンで上向きに送風することにより、その空気が加湿皿12の底面に良好に当たるようにしてもよい。
【0093】
また、処理槽のうち処理室が設けられた部分と空調室が設けられた部分とが別体に構成されているとともに、その処理室と空調室とがダクトで接続されており、処理室と空調室との間でダクトを通じて空気が流通可能となっていてもよい。
【0094】
また、上記作動流体は、純水以外の液体であってもよい。
【符号の説明】
【0095】
2 処理槽
2a 処理室
2b 空調室
2g 床面(所定の面)
4 送風部
6 加湿部
8 調温部
12 加湿皿(加湿水収容部)
12a 底壁(壁部)
12b 側壁
12c 側壁(壁部)
16、20 熱交換促進部
【技術分野】
【0001】
本発明は、調温調湿装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、処理対象物を収容する室内の温湿度を目標の温湿度に調整することが可能な調温調湿装置が知られており、このような調温調湿装置の一例が下記特許文献1に開示されている。
【0003】
この特許文献1に開示された調温調湿装置では、試験槽内に処理対象物を収容する試験室と、空気の温湿度を目標の温湿度に調整するための空調室とが設けられており、その空調室内において空気の温湿度を加湿部と吸熱部と加熱器とによって調整するとともに、その空気をファンによって空調室と試験室との間で循環させることで試験室内の温湿度を調整するようになっている。そして、この調温調湿装置において、前記加湿部は、試験槽内の空調室の床面に形成された凹部からなる加湿水収容部と、その加湿水収容部に収容された加湿水を加熱するヒータとによって構成されており、ヒータで加湿水を蒸発させることによって空気の加湿を行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−203211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の構成では、加湿水収容部が試験槽の床面に一体的に形成されているため、その加湿水収容部の清掃等のメンテナンスを試験槽内で行わざるを得ず、そのメンテナンス作業が煩雑になるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、加湿水収容部のメンテナンスにかかる作業負担を軽減することが可能な調温調湿装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の調温調湿装置は、処理対象物が収められる処理室と、前記処理室内の空気の温湿度を目標の温湿度に調整するための空調室とを有する処理槽と、前記処理室と前記空調室との間で空気を循環させる送風部と、前記空調室内の空気を加湿するための加湿部と、前記処理槽内の空間の空気を調温するための調温部とを備えた調温調湿装置であって、前記加湿部は、前記空調室内に着脱可能に配置され、加湿水を溜める容器からなる加湿水収容部と、前記処理室から前記空調室へ流れ込んだ空気が接触する位置で前記加湿水収容部の内外に跨るように設けられ、内部に封入された作動流体が前記加湿水収容部の外部に配置された側と前記加湿水収容部の内部に配置された側とのうち一方側の内部で蒸発するとともにその蒸発した作動流体が他方側の内部で凝縮するヒートパイプ現象を生じさせ得るように構成された熱交換促進部とを有する。
【0008】
この調温調湿装置では、加湿部の加湿水収容部が空調室内に着脱可能に配置される容器からなるため、空調室から処理槽の外部へ加湿水収容部を取り出してそのメンテナンスを行うことができる。このため、従来のように加湿水収容部が試験槽の床面に一体的に形成されていて試験槽内でその加湿水収容部のメンテナンスを行わなければならない場合に比べて、加湿水収容部のメンテナンスにかかる作業負担を軽減することができる。
【0009】
ところで、従来のように試験槽の床面の一部を凹ませることによって加湿水収容部が形成される場合には、空気が加湿水収容部内の水面上を流れやすいことから、例えば、槽内を高温高湿条件に調整する場合、すなわち槽内の温度を加湿水の温度よりも高温に設定した場合に槽内を循環する空気の加湿が促進される。これに対し、加湿水収容部を、その外面に処理室から空調室へ流れ込んだ空気が接触する位置で空調室内に配置した場合には、空調室へ流れ込んだ空気が加湿水収容部の外面に沿う方向に流れるため、加湿水と空気の流れとが接触しにくく、空気の加湿が促進されにくい。しかしながら、本発明では、作動流体が内部に封入されるとともにヒートパイプ現象を生じさせ得るように構成された熱交換促進部が、処理室から空調室へ流れ込んだ空気が接触する位置で加湿水収容部の内外に跨るように設けられているため、処理室内から空調室に流れ込む空気が加湿水収容部に溜められた加湿水よりも昇温されると熱交換促進部にヒートパイプ現象が生じ、空調室に流れ込んだ空気の熱が熱交換促進部により加湿水へ搬送されて加湿水の蒸発が促進される。この熱交換促進部の熱搬送による加湿水の蒸発の促進によって、空気の加湿が促進され、その結果、上記した空気が加湿水収容部の外面に沿う方向に流れることに起因する空気の加湿しにくさをカバーすることができる。
【0010】
さらに、本願発明者は、鋭意検討した結果、ヒートパイプ現象を生じ得る熱交換促進部を温度差のある2つの空間に跨って配置すると、熱交換促進部のうち高温側の空間に配置された部分の内部で作動流体が蒸発し、その作動流体が蒸発する箇所の温度がその高温側の空間の露点に略等しくなることを見出した。従って、本発明では、処理室内の温度を上げる過程で処理室から空調室に流れ込む空気の温度が上昇して熱交換促進部にヒートパイプ現象が発生すると、熱交換促進部のうち加湿水収容部の外部に配置された部分で作動流体が蒸発し、この作動流体が蒸発する箇所の温度が処理室の空気の露点に略等しくなる。その後、この熱交換促進部により加湿水収容部に溜められた加湿水へ熱が搬送されてその加湿水の温度が処理室内の空気の露点付近まで上昇すると、熱交換促進部にヒートパイプ現象が生じなくなり、熱の搬送が停止される。すなわち、本発明では、加湿水収容部に溜められた加湿水の温度を処理室内の空気の露点付近に保持して、加湿水を蒸発可能な状態に保つことができる。
【0011】
なお、熱交換促進部が設けられていない場合には、処理室から空調室に流れ込んだ空気と加湿水との加湿水収容部の壁部を介した熱交換により、それらの温度がいずれ平衡状態となるが、本発明のような熱交換促進部が設けられていることによって、処理室から空調室に流れ込んだ空気と加湿水との熱交換が素早く行われるため、加湿水の温度をより早く処理室の空気の露点付近にして加湿水をより早く蒸発可能な状態にすることができる。
【0012】
また、低温の加湿水の温度を処理室の空気の露点まで上昇させて空気の加湿を開始する場合、もしくは、処理室を高温高湿状態に維持するために加湿水の温度低下に抗してその加湿水の温度を処理室の露点付近に維持しようとする場合には、ヒータで加湿水を加熱することも考えられる。これに対して、本発明では処理室から空調室に流れ込んだ空気の熱を熱交換促進部によって加湿水に供給することができるため、そのようなヒータによる加熱を行うことなく、もしくは、ヒータによる加熱量を低減して、上記空気の加湿の開始もしくは加湿水の温度を処理室の露点付近に維持することができる。このため、本発明では、ヒータによる加湿水の加熱にかかるエネルギー及びそのコストを削減することができる。
【0013】
上記調温調湿装置において、前記熱交換促進部のうち前記加湿水収容部の外部に配置された側の端部は、前記加湿水収容部の内部に配置された側の端部よりも低い位置に配置されていてもよい。
【0014】
熱交換促進部のうち加湿水収容部の外部に配置された側の端部と加湿水収容部の内部に配置された側の端部とが同じ高さに配置されている場合でも、処理室内の空気を加湿水よりも昇温させた場合に、熱交換促進部のうち加湿水収容部の外部に配置された部分で作動流体が蒸発するとともにその作動流体の蒸気が熱交換促進部のうち加湿水収容部の内部に配置された部分で凝縮してヒートパイプ現象が生じるが、本構成のように熱交換促進部のうち加湿水収容部の外部に配置された側の端部を加湿水収容部の内部に配置された側の端部よりも低い位置に配置すれば、熱交換促進部の内部での作動流体の蒸発と凝縮の循環をより効率よく行わせることができ、当該熱交換促進部による加湿水への熱搬送の効率を向上させることができる。その結果、より素早く加湿水を加熱して空気の加湿を行うことができる。
【0015】
上記調温調湿装置において、前記熱交換促進部は、前記加湿水収容部に複数設けられ、この各熱交換促進部のうち前記加湿水収容部の外部に配置された部分は、それぞれ板状に形成されているとともに互いに平行かつ所定間隔で並んで配置されていてもよい。
【0016】
この構成のように、加湿水収容部に熱交換促進部が複数設けられていれば、熱交換促進部が1つしか設けられていない場合に比べて、加湿水収容部に溜められた加湿水全体をより早く昇温させることができる。ところで、このように熱交換促進部を複数設ける構成としては、複数の棒状の熱交換促進部を加湿水収容部の所定の壁部から突出するように設ける構成も考えられる。しかし、この場合には、加湿水収容部の壁部に接触する空気の流れは乱流の状態であり、その乱流の状態の空気から各熱交換促進部のうち加湿水収容部の外部に配置された部分へ付与される熱量はそれぞれ異なってしまう。これに対して、本構成のように、各熱交換促進部のうち加湿水収容部の外部に配置された部分がそれぞれ板状に形成されているとともに互いに平行かつ所定間隔で並んで配置されていれば、処理室から空調室に流れ込んで加湿水収容部の外面に接触する空気がこれら熱交換促進部によって整流され、その整流された空気から各熱交換促進部に付与される熱量が均一化される。その結果、各熱交換促進部によって加湿水へ搬送される熱量が均一化されるため、加湿水収容部に溜められた加湿水全体をより均一に昇温させることができる。従って、この構成では、加湿水収容部に溜められた加湿水全体をより早くかつより均一に昇温させることができる。
【0017】
上記調温調湿装置において、前記熱交換促進部は、前記加湿水収容部の壁部を貫通して設けられ、この熱交換促進部が設けられた前記壁部は、断熱材を備えていることが好ましい。
【0018】
この構成のように、熱交換促進部が貫通して設けられた加湿水収容部の壁部が断熱材を備えていれば、その壁部を挟んで加湿水収容部の内外で温度差を確実に保持することができ、その壁部を貫通する熱交換促進部に確実にヒートパイプ現象を生じさせることができる。
【0019】
上記調温調湿装置において、前記熱交換促進部のうち前記加湿水収容部の外部に配置された側の端部と前記加湿水収容部の内部に配置された側の端部とは、同じ高さに配置されていてもよい。
【0020】
この構成のように、熱交換促進部のうち加湿水収容部の外部に配置された側の端部と加湿水収容部の内部に配置された側の端部とが同じ高さに配置されている場合でも、処理室内の空気の温度を加湿水よりも上昇させる過程において熱交換促進部のうち加湿水収容部の外部に配置された部分で作動流体が蒸発するとともにその蒸発した作動流体が熱交換促進部のうち加湿水収容部の内部に配置された部分で凝縮するヒートパイプ現象が生じ、この熱交換促進部によって処理室から空調室に流れ込んだ空気から加湿水へ熱が搬送されて、加湿水の昇温が促進される。さらに、この構成では、処理室内の温度を加湿水よりも降下させる場合には、熱交換促進部のうち加湿水収容部の内部に配置された部分で作動流体が蒸発するとともにその蒸発した作動流体が熱交換促進部のうち加湿水収容部の外部に配置された部分で凝縮するヒートパイプ現象が生じ、この熱交換促進部によって加湿水収容部に溜められた加湿水から加湿水収容部の外部へ熱が搬送されて、加湿水の降温が促進される。従って、この構成では、処理室の温度と湿度を共に上昇させる場合に、処理室の空気の昇温を利用して加湿水を素早く昇温させ、加湿部による空気の加湿をより早く行わせることができるとともに、処理室の温度と湿度を共に降下させる場合に、処理室の空気の降温を利用して加湿水を素早く降温させ、加湿部による空気の加湿をより早く低減させることができる。
【0021】
また、本発明による調温調湿装置は、処理対象物が収められる処理室と、前記処理室内の空気の温湿度を目標の温湿度に調整するための空調室とを有する処理槽と、前記処理室と前記空調室との間で空気を循環させる送風部と、前記空調室内の空気を加湿するための加湿部と、前記処理槽内の空間の空気を調温するための調温部とを備えた調温調湿装置であって、前記加湿部は、前記空調室内に着脱可能に配置され、加湿水を溜める容器からなる加湿水収容部を有し、前記加湿水収容部は、作動流体が封入された構成であり、かつ、前記封入された作動流体が当該加湿水収容部のうち前記処理室から前記空調室へ流れ込んだ空気が接触する外面寄りの領域と当該加湿水収容部の内面寄りの領域とのいずれか一方の領域で蒸発するとともにその蒸発した作動流体が他方の領域で凝縮するヒートパイプ現象を生じ得るように構成されている。
【0022】
この調温調湿装置では、加湿部の加湿水収容部が空調室内に着脱可能に配置されているので、上記した調温調湿装置と同様の作用により加湿水収容部のメンテナンスにかかる作業負担を軽減することができる。また、この調温調湿装置では、加湿水収容部が、その内部に封入された作動流体が当該加湿水収容部のうち処理室から空調室へ流れ込んだ空気が接触する外面寄りの領域と当該加湿水収容部の内面寄りの領域とのいずれか一方の領域で蒸発するとともにその蒸発した作動流体が他方の領域で凝縮するヒートパイプ現象を生じ得るように構成されているため、処理室内から空調室に流れ込む空気が加湿水収容部に溜められた加湿水よりも昇温されると加湿水収容部においてヒートパイプ現象が生じ、空調室に流れ込んだ空気の熱が加湿水収容部の外面側から内面側へ搬送されて加湿水の蒸発が促進される。これにより、空気の加湿が促進され、その結果、空気が加湿水収容部の外面に沿う方向に流れることに起因する空気の加湿しにくさをカバーすることができる。
【0023】
また、この構成では、上記した調温調湿装置の熱交換促進部と同様の原理により、加湿水収容部のうち作動流体が蒸発する箇所の温度が処理室の空気の露点に略等しくなる。このため、加湿水収容部による熱搬送によって加湿水の温度が処理室の空気の露点付近まで上昇すると、加湿水収容部においてヒートパイプ現象が生じなくなって熱搬送が停止され、その結果、加湿水収容部に溜められた加湿水の温度を処理室内の空気の露点付近に保持して、加湿水を蒸発可能な状態に保つことができる。
【0024】
また、加湿水収容部がヒートパイプ現象を生じ得るように構成されていることによって、処理室から空調室に流れ込んだ空気と加湿水との熱交換が素早く行われるため、加湿水の温度をより早く処理室の空気の露点付近にして加湿水をより早く蒸発可能な状態にすることができる。また、ヒートパイプ現象が生じる加湿水収容部による熱搬送によって、処理室から空調室に流れ込んだ空気の熱を利用して加湿水を昇温させることが可能であるため、加湿部においてヒータによる加湿水の加熱にかかるエネルギー及びそのコストを削減することができる。
【0025】
上記調温調湿装置において、前記加湿水収容部は、その底面と前記空調室内の床面との間に間隙が形成される位置に配置され、当該加湿水収容部の底壁が前記ヒートパイプ現象を生じ得るように構成されていてもよい。
【0026】
また、上記調温調湿装置において、前記加湿水収容部の側壁が前記ヒートパイプ現象を生じ得るように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明によれば、加湿水収容部のメンテナンスにかかる作業負担を軽減することができる。また、本発明によれば、ヒータによる加湿水の加熱にかかるエネルギー及びそのコストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態による調温調湿装置の処理槽内の構造を示す図である。
【図2】図1に示した調温調湿装置に用いる加湿部の縦断面図である。
【図3】ヒートパイプ現象が生じているヒートパイプにおいて作動流体が蒸発している箇所の外面温度がどのような温度となるかを実験した結果を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態による調温調湿装置の加湿部近傍の構造を示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態の第1変形例による調温調湿装置の加湿部の縦断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態の第2変形例による調温調湿装置の加湿部を処理室側から見た図である。
【図7】図6に示した加湿部のVII−VII線に沿った断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態の第3変形例による調温調湿装置の加湿部近傍の構造を示す図である。
【図9】本発明の第1実施形態の第4変形例による調温調湿装置の加湿部近傍の構造を示す図である。
【図10】本発明の第2実施形態の第1変形例による調温調湿装置の加湿皿の縦断面図である。
【図11】本発明の第2実施形態の第2変形例による調温調湿装置の加湿皿の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0030】
(第1実施形態)
まず、図1及び図2を参照して、本発明の第1実施形態による調温調湿装置の構成について説明する。
【0031】
この第1実施形態による調温調湿装置は、後述する処理室2a内の温湿度を所定の温湿度に設定してその処理室2a内に収容した処理対象物をその所定の温湿度環境下に置くために用いられるものであり、このような調温調湿装置としては環境試験装置や恒温恒湿槽等が挙げられる。この調温調湿装置は、図1に示すように、処理槽2と、送風部4と、加湿部6と、調温部8とを備えている。
【0032】
処理槽2は、その内部の空間を密閉可能に構成された箱状に形成されており、当該処理槽2は、その内部に処理室2aと空調室2bとを有している。この処理室2aと空調室2bとは仕切壁2cによって仕切られており、この仕切壁2cの上側には、処理室2aと空調室2bとを連通させる上側連通部2dが設けられ、仕切壁2cの下側には、処理室2aと空調室2bとを連通させる下側連通部2eが設けられている。
【0033】
処理室2aは、処理対象物が収められる空間であり、この処理室2a内の温湿度が目標の温湿度に調整される。この処理室2a内には、空気の温度を検出する図略の空気温度検出部が設けられている。
【0034】
空調室2bは、処理室2a内の空気の温湿度を目標の温湿度に調整するために設けられており、この空調室2b内に送風部4、加湿部6及び調温部8が設置されている。
【0035】
送風部4は、空調室2bの上部に設けられている。この送風部4は、空気を送風するファンからなり、処理室2aと空調室2bとの間で空気を循環させる。送風部4によって送風された空気は、空調室2bから上側連通部2dを通じて処理室2aへ流れる。これに伴い処理室2aの空気は、処理室2aから下側連通部2eを通じて空調室2b内に流れ込む。このようにして処理室2aと空調室2bとの間で空気が循環する。
【0036】
加湿部6は、空調室2bの下部に設けられており、空調室2b内の空気を加湿する。
【0037】
具体的には、この加湿部6は、図2に示すように、加湿皿12と、ヒータ14と、熱交換促進部16と、加湿水温度検出部18とを有する。
【0038】
加湿皿12は、加湿水を溜める容器であり、本発明の加湿水収容部の概念に含まれる。この加湿皿12は、空調室2b内に着脱可能に配置されている。具体的には、この加湿皿12は、空調室2b内の床面2g上に載置されており、その空調室2bから処理槽2の外部へ取り出せるようになっている。そして、加湿皿12は、空調室2bの床面2g上に配設される底壁12aと、その底壁12aの周縁部からそれぞれ立ち上げられる側壁12bとを有する。加湿皿12は、処理室2aから空調室2bに流れ込んだ空気がその各側壁12bのうちの1つの側壁12cに接触する位置に配置されている。この側壁12cは、本発明の壁部の概念に含まれるものである。この第1実施形態では、側壁12cが下側連通部2eに面するように配置されており、下側連通部2eを通って処理室2aから空調室2bへ流れ込んだ空気が側壁12cの外面に略垂直に当たるようになっている。加湿皿12の各側壁12b(12c)は、断熱材を備えた断熱壁からなる。また、加湿皿12は、その上部に開口12dを有しており、この開口12dを通じて、加湿皿12に溜められた加湿水が蒸発可能となっている。そして、加湿部6では、この加湿水を蒸発させることによって空気を加湿する。
【0039】
ヒータ14は、加湿皿12に溜められた加湿水を加熱して蒸発させるためのものであり、その一部が加湿水中に漬かるように加湿皿12内に配設されている。
【0040】
熱交換促進部16は、処理室2aから空調室2bへ流入する空気と加湿皿12に溜められた加湿水との熱交換を促進させるものである。この熱交換促進部16は、直棒状のヒートパイプからなり、処理室2aから空調室2bに流れ込んだ空気が接触する位置で加湿皿12の前記側壁12cを貫通して当該加湿皿12の内外に跨って設けられている。
【0041】
具体的には、加湿皿12の前記側壁12cに貫通孔12fが形成されており、熱交換促進部16のヒートパイプは、この貫通孔12fに挿通された状態で側壁12cに固定されている。そして、貫通孔12fは、側壁12cの外面側に位置する部分が内面側に位置する部分よりも低くなるように傾斜した孔に形成されており、この貫通孔12fに挿通された熱交換促進部16は、加湿皿12の外部に配置された側の端部が加湿皿12の内部に配置された側の端部よりも低い位置に位置するように傾斜した姿勢で配置されている。そして、熱交換促進部16のうち加湿皿12内に配置された部分は、加湿水中に漬かっている。また、貫通孔12fに挿通された熱交換促進部16とその貫通孔12fの内面との間の隙間は、図略のシール材によって塞がれて加湿水が漏出しないようになっている。
【0042】
熱交換促進部16のヒートパイプの内部には、純水からなる作動流体が封入されている。この熱交換促進部16のヒートパイプは、空調室2bに流れ込んだ処理室2aの空気の温度が加湿皿12に溜められた加湿水の温度よりも高い場合に、加湿皿12の外部に配置された側の端部近傍の内部で作動流体が蒸発するとともにその蒸発した作動流体の蒸気が加湿皿12内に配置された側の端部近傍の内部で凝縮するヒートパイプ現象を生じるように構成されている。
【0043】
加湿水温度検出部18は、加湿皿12内に設けられており、加湿皿12に溜められた加湿水の温度を検出するものである。
【0044】
調温部8は、空調室2b内に設けられており、その空調室2bの空気の温度を調整する。この調温部8は、加熱部8aと、冷却部8bとによって構成されている。
【0045】
加熱部8aは、空気を加熱するものであり、空調室2b内において送風部4の下側に設けられている。冷却部8bは、空気を冷却するものであり、例えば蒸気圧縮式の冷凍機によって構成されている。この冷却部8bは、空調室2b内において加熱部8aの下側でかつ加湿部6の上側に設けられている。そして、この調温部8では、前記空気温度検出部による検出結果に基づいて加熱部8aの加熱能力と冷却部8bの冷却能力とをそれぞれ調整することによって空気の温度を調整するようになっている。また、冷却部8bは、除湿機を兼ねており、この冷却部8bの除湿能力と前記加湿部6の加湿能力とをそれぞれ調整することによって空気の湿度を調整するようになっている。
【0046】
次に、本発明の第1実施形態による調温調湿装置の動作について説明する。
【0047】
この第1実施形態による調温調湿装置では、前記空気温度検出部により検出される処理室2a内の空気の温度と前記加湿水温度検出部18により検出される加湿水の温度とに基づいて処理室2a内の空気の温度と加湿水の温度との高低が判断される。
【0048】
そして、処理室2a内の空気の温度が加湿水の温度よりも低く、その処理室2a内を加湿水よりも高温に設定するとともにその処理室2a内を加湿する場合、例えば処理室2aを高温高湿条件に調整する場合には、まず、空調室2b内で加熱部8aによって空気が加熱され、その加熱された空気が送風部4によって処理室2aへ送られることにより処理室2a内の温度が加湿水の温度よりも上げられる。そして、加湿水よりも温度が上昇した処理室2a内の空気は、空調室2b内に流れ込んで加湿皿12の側壁12cに当たり、その後、側壁12cに沿って空調室2b内を上方へ流れる。
【0049】
この際、前記側壁12cを挟んで加湿皿12の内外で温度差が生じ、それに伴って、熱交換促進部16にヒートパイプ現象が生じる。具体的には、熱交換促進部16のうち加湿皿12の外部に配置された側の端部近傍の内部で作動流体が蒸発するとともに、その蒸発した作動流体が熱交換促進部16のうち加湿皿12内に配置された側の端部近傍の内部で凝縮し、この作動流体の蒸発と凝縮の循環が熱交換促進部16の内部で生じる。このヒートパイプ現象が生じることによって、処理室2aの空気の熱が熱交換促進部16を介して加湿皿12に溜められた加湿水に供給されて加湿水が加熱される。これにより、加湿水の蒸発が促進されて空気が加湿される。
【0050】
そして、ヒートパイプ現象が生じている熱交換促進部16では、加湿皿12の外部に配置された部分において作動流体が蒸発している箇所の外面温度が処理室2aから空調室2bに流れ込んだ空気の露点、すなわち処理室2a内の空気の露点に略等しくなる。この現象は、本願発明者が行ったヒートパイプの作動流体が蒸発している箇所の温度を実測する実験の結果から判明したものである。この実験は、恒温恒湿槽において、ヒートパイプを断熱壁で仕切られた槽内の空間と槽外の空間とに跨るようにその断熱壁を貫通させて設置し、槽内の空間を槽外の空間よりも高温にしてヒートパイプに完全にヒートパイプ現象が生じている条件で行った。この実験において、ヒートパイプのうち槽内に配置された部分で作動流体が蒸発する箇所の外面温度を温度センサによって実測するとともに、恒温恒湿槽の装置側で槽内の温度及び相対湿度を測定し、さらに、この測定した槽内の温度及び相対湿度から槽内の空気の露点を算出した。これらの測定結果及び算出結果の経時変化が図3に示されている。この図3に示す結果から、ヒートパイプ現象が生じているヒートパイプにおいて作動流体が蒸発する部分の外面温度は、槽内の空気の露点、すなわち高温側の空間の露点に略等しくなることが判る。
【0051】
このように熱交換促進部16のうち作動流体が蒸発する箇所の外面温度が処理室2aの空気の露点に略等しくなった後、上記のように熱交換促進部16により加湿皿12に溜められた加湿水へ熱が搬送されてその加湿水の温度が処理室2a内の空気の露点に略等しい温度まで上昇すると、熱交換促進部16にヒートパイプ現象が生じなくなり、熱の搬送が停止される。すなわち、加湿水の温度は、熱交換促進部16の機能により処理室2a内の空気の露点付近に保持され、蒸発可能な状態に保たれる。
【0052】
なお、空気の加湿を急ぐ場合、すなわち処理室2aの湿度を急速に上昇させる場合には、上記熱交換促進部16による熱搬送に加えてヒータ14により加湿水を加熱し、加湿水の蒸発をより促進させる。
【0053】
また、処理室2a内を高温低湿条件に調整する場合、すなわち処理室2a内を加湿水よりも高温に設定するとともに低湿状態にする場合には、上記と同様にして加熱部8aによって空気が加熱されて処理室2a内が加湿水よりも高い温度まで昇温され、このことが前記空気温度検出部による検出温度と前記加湿水温度検出部18による検出温度とから判断される。このように処理室2a内が加湿水よりも高い温度まで昇温されると、上記と同様に熱交換促進部16にヒートパイプ現象が生じ、その熱交換促進部16による熱搬送によって加湿水の蒸発が促進されて空気が加湿されるが、冷却部8bによってその空気が除湿され、空調室2bから処理室2aへ送風される空気は低湿状態とされる。このときヒータ14は稼働されない。
【0054】
また、処理室2aを低温高湿条件に調整する場合、すなわち処理室2a内を加湿水よりも低温に設定するとともにその処理室2a内を高湿状態にする場合には、冷却部8bによって空気が冷却されて処理室2a内が加湿水よりも低い温度まで降温され、このことが前記空気温度検出部による検出温度と前記加湿水温度検出部18による検出温度とから判断される。そして、このように処理室2a内の空気の温度が加湿水の温度よりも低い温度にまで下げられた場合には、熱交換促進部16にヒートパイプ現象は生じず、ヒータ14が稼働されてそのヒータ14により加湿水が加熱される。これにより、加湿水の蒸発が促進されて空調室2bから処理室2aへ送風される空気が加湿され、処理室2aが高湿状態にされる。
【0055】
また、処理室2aを低温低湿条件に調整する場合、すなわち処理室2a内を加湿水よりも低温に設定するとともにその処理室2a内を低湿状態にする場合には、前記低温高湿条件の場合と同様にして冷却部8bにより空気が冷却されて処理室2a内が加湿水よりも低い温度まで降温され、このことが前記空気温度検出部による検出温度と前記加湿水温度検出部18による検出温度とから判断される。そして、このように処理室2a内の空気の温度が加湿水の温度よりも低い温度にまで下げられた場合には、熱交換促進部16にヒートパイプ現象は生じない。また、ヒータ14は稼働されず、加湿水は空気によって冷やされて蒸発が抑制されるため、空調室2bから処理室2aへ送風される空気は低湿状態とされる。
【0056】
以上説明したように、第1実施形態では、加湿部6の加湿皿12が空調室2b内に着脱可能に配置されるため、空調室2bから処理槽2の外部へ加湿皿12を取り出してそのメンテナンスを行うことができる。このため、従来のように加湿水収容部が試験槽の床面に一体的に形成されていて試験槽内でその加湿水収容部のメンテナンスを行わなければならない場合に比べて、加湿皿12のメンテナンスにかかる作業負担を軽減することができる。
【0057】
また、従来のように試験槽の床面の一部を凹ませることによって加湿水収容部が形成される場合には、空気が加湿皿12内の水面上を流れやすいことから、例えば、槽内を高温高湿条件に調整する場合、すなわち槽内の温度を加湿水の温度よりも高温に設定した場合に、槽内を循環する空気の加湿が促進される。これに対し、加湿皿12を、その側壁12cの外面に処理室2aから空調室2bへ流れ込んだ空気が接触する位置で空調室2b内に配置した場合には、空調室2bへ流れ込んだ空気が加湿皿12の側壁12cの外面に沿う方向に流れるため、加湿水と空気の流れとが接触しにくく、空気の加湿が促進されにくい。しかしながら、第1実施形態では、熱交換促進部16が、処理室2aから空調室2bへ流れ込んだ空気が接触する位置で加湿皿12の内外に跨るように設けられているため、処理室2aから空調室2bに流れ込む空気が加湿皿12に溜められた加湿水よりも昇温されると熱交換促進部16にヒートパイプ現象が生じ、空調室2bに流れ込んだ空気の熱が熱交換促進部16により加湿水へ搬送されて加湿水の蒸発が促進される。これにより、空気の加湿が促進され、その結果、空気が加湿皿12の側壁12cの外面に沿う方向に流れることに起因する空気の加湿しにくさをカバーすることができる。
【0058】
また、第1実施形態では、ヒートパイプ現象が生じている熱交換促進部16のうち加湿皿12の外部に配置された部分において作動流体が蒸発する箇所の外面温度が処理室2aの空気の露点に略等しくなるため、この熱交換促進部16により加湿皿12に溜められた加湿水へ熱が搬送されてその加湿水の温度が処理室2a内の空気の露点付近まで上昇すると、熱交換促進部16にヒートパイプ現象が生じなくなり、熱の搬送が停止される。従って、第1実施形態では、加湿皿12に溜められた加湿水の温度を処理室2a内の空気の露点付近に保持して、加湿水を蒸発可能な状態に保つことができる。
【0059】
また、第1実施形態のような熱交換促進部16が設けられていることによって、処理室2aの空気と加湿水との熱交換が素早く行われるため、熱交換促進部16が設けられていない場合に比べて、加湿水の温度をより早く処理室2a内の空気の露点付近にして加湿水をより早く蒸発可能な状態にすることができる。
【0060】
また、第1実施形態では、処理室2aの空気の熱を熱交換促進部16によって加湿水に供給して加湿水を加熱することができるため、ヒータ14による加熱量を低減もしくはヒータ14による加熱を停止させても空気の加湿を開始することができるとともに加湿水の温度を処理室2aの露点付近に維持することができる。このため、第1実施形態では、ヒータ14による加湿水の加熱にかかるエネルギー及びそのコストを削減することができる。
【0061】
また、第1実施形態では、熱交換促進部16のうち加湿皿12の外部に配置された側の端部が加湿皿12の内部に配置された側の端部よりも低い位置に配置されているため、熱交換促進部16のうち加湿皿12の外部に配置された側の端部と加湿皿12の内部に配置された側の端部とが同じ高さに配置されている場合に比べて、熱交換促進部16の内部での作動流体の蒸発と凝縮の循環をより効率よく行わせることができる。その結果、熱交換促進部16による加湿水への熱搬送の効率を向上させることができ、より素早く加湿水を加熱して空気の加湿を行うことができる。
【0062】
また、第1実施形態では、熱交換促進部16が貫通するように設けられた加湿皿12の側壁12cが断熱材を備えた断熱壁からなるので、その側壁12cを挟んで加湿皿12の内外で温度差を確実に保持することができ、熱交換促進部16に確実にヒートパイプ現象を生じさせることができる。
【0063】
(第2実施形態)
次に、図4を参照して、本発明の第2実施形態による調温調湿装置について説明する。
【0064】
この第2実施形態による調温調湿装置では、上記第1実施形態と異なり、加湿部6が前記熱交換促進部16を備えておらず、加湿皿12自体がヒートパイプ現象を生じ得るように構成されている。
【0065】
具体的には、この第2実施形態による加湿部6の加湿皿12は、図4に示すように、その底壁12a及び側壁12bが中空に形成されており、その内部に作動流体が封入されている。そして、この加湿皿12は、空調室2b内に着脱可能に配置されており、空調室2b内の床面2g上に設置された支持部材30上に載置されている。この加湿皿12は、支持部材30によって支持されて空調室2b内の床面2gから上方に離間した位置で水平に配置されている。
【0066】
支持部材30は、載置部30aと、脚部30bとを有している。載置部30aは、その上に加湿皿12が載置される部分であり、水平に配置されている。この載置部30aは、多孔板や網目状の部材からなり、上下に貫通する多数の孔部30cが設けられている。この載置部30aの各孔部30cを通じて上下に通気可能となっている。脚部30bは、載置部30aを空調室2b内の床面2gから上方に離間させた状態で支えるものであり、載置部30aのうち互いに離間し、かつ、その載置部30aの端縁近傍に位置する4箇所にそれぞれ取り付けられてその載置部30aを床面2g上で水平に支えている。
【0067】
この第2実施形態による調温調湿装置の上記以外の構成は、上記第1実施形態による調温調湿装置の構成と同様である。
【0068】
そして、この第2実施形態の調温調湿装置において、処理室2a内の空気の温度が加湿皿12に溜められた加湿水の温度よりも低く、その処理室2a内を加湿水よりも高温に設定するとともにその処理室2a内を加湿する場合には、加湿水よりも温度の高い空気が処理室2aから空調室2bへ流れ込み、その空気は、加湿皿12と仕切壁2cとの間を通って上方へ流れる一方、支持部材30の脚部30bの間を通って載置部30aの下方の空間にも流れる。
【0069】
この載置部30aの下方の空間に流れ込んだ空気の一部は、載置部30aに設けられた多数の孔部30cを通って加湿皿12の底面に接触する。それによって、加湿皿12にヒートパイプ現象が生じ、加湿皿12のうち特に底壁12aの内部において、当該加湿皿12の外面(底面)寄りの領域で作動流体が蒸発するとともに、その蒸発した作動流体が当該加湿皿12の内面(加湿水と接触する面)寄りの領域で凝縮し、この作動流体の蒸発と凝縮の循環が加湿皿12の内部で生じる。このヒートパイプ現象が生じることによって、処理室2aから空調室2bに流れ込んだ空気の熱が加湿皿12によりその加湿皿12に溜められた加湿水へ搬送されて加湿水が加熱される。これにより、加湿水の蒸発が促進されて空調室2bの空気が加湿される。
【0070】
この第2実施形態の調温調湿装置において処理室2aの温湿度を調整する際の上記以外の動作は、上記第1実施形態の調温調湿装置において前記熱交換促進部16でのヒートパイプ現象を加湿皿12でのヒートパイプ現象に置き換えた場合の動作と同様である。
【0071】
以上説明したように、この第2実施形態では、加湿皿12が空調室2b内に着脱可能に配置されているため、上記第1実施形態と同様、加湿皿12のメンテナンスにかかる作業負担を軽減することができる。
【0072】
そして、この第2実施形態では、上記第1実施形態における前記熱交換促進部16のヒートパイプ現象の代わりに加湿皿12におけるヒートパイプ現象が同様に作用し、そのヒートパイプ現象に起因する上記第1実施形態の効果と同様の効果を得ることができる。
【0073】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0074】
例えば、図5に示す上記第1実施形態の第1変形例のように、熱交換促進部16は、水平に延びる姿勢で配置されていてもよい。すなわち、熱交換促進部16のうち加湿皿12の外部に配置された側の端部と加湿皿12の内部に配置された側の端部とは、同じ高さに配置されていてもよい。
【0075】
この第1変形例のような構成であっても、処理室2aの空気の温度を加湿水の温度よりも高い温度に設定した場合には、熱交換促進部16のうち加湿皿12の外部に配置された側の部分の内部で作動流体が蒸発するとともにその蒸発した作動流体が熱交換促進部16のうち加湿皿12の内部に配置された部分の内部で凝縮するヒートパイプ現象が生じ、この熱交換促進部16によって処理室2aから空調室2bへ流れる空気から加湿水へ熱が搬送されて、加湿水の昇温が促進される。
【0076】
さらに、この第1変形例では、処理室2a内の温度を降下させる場合に、処理室2aの空気の温度を加湿水の温度よりも低い温度に設定すると、熱交換促進部16のうち加湿皿12の内部に配置された部分で作動流体が蒸発するとともにその蒸発した作動流体が熱交換促進部16のうち加湿皿12の外部に配置された部分で凝縮するヒートパイプ現象が生じ、この熱交換促進部16によって加湿皿12に溜められた加湿水から外部へ熱が搬送されて、加湿水の降温が促進される。従って、この第1変形例では、処理室2aの温度と湿度を共に上昇させる場合に、処理室2aの空気の昇温を利用して加湿水を素早く昇温させ、加湿部6による空気の加湿をより早く行わせることができるとともに、処理室2aの温度と湿度を共に降下させる場合に、処理室2aの空気の降温を利用して加湿水を素早く降温させ、加湿部6による空気の加湿をより早く低減させることができる。
【0077】
また、図6及び図7に示す上記第1実施形態の第2変形例のように、板状に形成された複数の熱交換促進部20が加湿皿12の側壁12cに設けられていてもよい。
【0078】
具体的には、この第2変形例による熱交換促進部20は、中空の平板状に形成されたヒートレーンからなり、その内部に作動流体が封入されている。処理室2aから空調室2bに流れ込んだ空気が接触する加湿皿12の側壁12cには、上下方向に延びるとともに加湿皿12の内外を貫通する細長い貫通孔12hが水平方向に所定間隔で複数形成されており、この各貫通孔12hに熱交換促進部20のヒートレーンがそれぞれ挿通されて加湿皿12の内外に跨るように設けられている。これにより、各熱交換促進部20のうち加湿皿12の外部に配置された部分及び加湿皿12内に配置された部分は、立てられた姿勢で配置されているとともに、互いに平行かつ所定間隔で水平方向に並んで配置されている。
【0079】
この第2変形例のように、熱交換促進部20が、処理室2aから空調室2bに流れ込んだ空気が接触する加湿皿12の側壁12cに複数設けられていれば、熱交換促進部が1つしか設けられていない場合に比べて、加湿皿12に溜められた加湿水全体をより早く昇温させることができる。
【0080】
ところで、熱交換促進部を複数設ける構成としては、上記第1実施形態のような直棒状の熱交換促進部16を加湿皿12の側壁12cから突出するように複数設けてもよい。しかし、この場合には、加湿皿12の側壁12cに接触する空気の流れは乱流の状態であり、その乱流の状態の空気から各熱交換促進部16のうち加湿皿12の外部に配置された部分へ付与される熱量はそれぞれ異なってしまう。
【0081】
これに対して、この第2変形例のように各熱交換促進部20のうち加湿皿12の外部に配置された部分がそれぞれ板状に形成されているとともに互いに平行かつ所定間隔で並んで配置されていれば、処理室2aから空調室2bに流れ込んで加湿皿12の側壁12cに接触する空気がこれらの熱交換促進部20によって整流され、その整流された空気から各熱交換促進部20に付与される熱量が均一化される。その結果、各熱交換促進部20によって加湿水へ搬送される熱量が均一化されるため、加湿皿12に溜められた加湿水全体をより均一に昇温させることができる。従って、この第2変形例では、加湿皿12に溜められた加湿水全体をより早くかつより均一に昇温させることができる。
【0082】
また、加湿皿12を載置する面は、空調室2b内の床面2gに限られない。例えば、図8に示す上記第1実施形態の第3変形例のように、空調室2b内に支持部材40が設置されていてその支持部材40の上面に加湿皿12が載置されていてもよい。従って、加湿皿12は、空調室2bの床面2gから持ち上げられた状態で下側連通部2eから上側にずれた位置に配置されていてもよい。なお、加湿皿12を床面2gから持ち上げた位置で載置するための載置面を形成する支持部材としては、床面2g上に設置する台状のものに限らず、空調室2bを囲む処理槽2の内壁面に固定された棚状のものであってもよい。
【0083】
また、図9に示す上記第1実施形態の第4変形例のように、熱交換促進部16は、加湿皿12の底壁12aを貫通して当該加湿皿12の内外に跨って設けられていてもよい。なお、この第4変形例における底壁12aは、本発明の壁部の概念に含まれるものである。
【0084】
具体的には、この第4変形例では、空調室2b内の床面2g上に設置された支持部材30上に加湿皿12が載置されることにより、床面2gから上方に離間した位置に加湿皿12が配置されている。加湿皿12の底壁12aには、上下に貫通する複数の貫通孔12jがそれぞれ離間した位置に設けられており、その各貫通孔12jにヒートパイプからなる熱交換促進部16が上下方向に延びる状態でそれぞれ挿嵌されて固定されている。
【0085】
支持部材30は、脚部30bと、載置部30eとを有している。脚部30bは、上記第2実施形態の支持部材30の脚部30bと同様のものであり、載置部30eを空調室2b内の床面2gから上方に離間させた状態で水平に支えている。載置部30eは、平板状に形成されており、その上に加湿皿12が載置される。この載置部30eのうち加湿皿12の底壁12aから下方に突出する各熱交換促進部16に対応する位置に上下に貫通する挿通孔30fがそれぞれ設けられている。
【0086】
そして、載置部30eの各挿通孔30fに各熱交換促進部16のうち加湿皿12の外部に位置する部分が挿通されている。すなわち、各熱交換促進部16のうち加湿皿12の外部に位置する部分は、載置部30eの挿通孔30fを通って載置部30eの下方の空間に突出している。この第4変形例では、処理室2a内の空気が加湿皿12に溜められた加湿水よりも昇温されて、その空気が空調室2bに流れ込むと、この空気の一部は、支持部材30の脚部30bの間を通って載置部30eの下方の空間にも流れ、その載置部30eの下方の空間に突出した各熱交換促進部16に接触する。それによって、各熱交換促進部16にヒートパイプ現象が生じ、各熱交換促進部16のうち加湿皿12の底壁12aから下方に突出した部分の内部で作動流体が蒸発するとともに、その蒸発した作動流体が各熱交換促進部16のうち加湿皿12内に位置する部分の内部で凝縮する。なお、この第4変形例の場合、各熱交換促進部16に確実にヒートパイプ現象を生じさせるために加湿皿12の底壁12aは断熱材を備えた断熱壁であることが好ましい。また、載置部30eは、網状等に形成されたものであってもよい。
【0087】
また、加湿水を溜める加湿水収容部は、上記した平型の加湿皿12以外の形状のものであってもよい。例えば、内部に加湿水を収容するタンクのようなものであって加湿水が蒸発してそのタンクの外部に放散可能な開口が設けられているようなものを加湿水収容部として用いてもよい。
【0088】
また、加湿皿12の側壁12c(12b)及び/又は底壁12aは、断熱材を備えていなくてもよい。
【0089】
また、図10に示す上記第2実施形態の第1変形例のように、加湿皿12の中空状に形成された底壁12aが、その上面側から加湿水を溜める空間に突出してその内部の空間が当該底壁12a内の空間と繋がっている内側凸部12mを備えていてもよい。これにより、加湿皿12において上記第2実施形態で示したヒートパイプ現象が生じたときにその内側凸部12m内でも作動流体の凝縮が生じ、加湿皿12に溜められた加湿水に対する加湿皿12の伝熱面積を増やすことができるので、加湿水への伝熱効率を向上することができる。さらに、図11に示す上記第2実施形態の第2変形例のように、加湿皿12の中空状の底壁12aが、前記内側凸部12mに加えて、その下面側から下方に突出してその内部の空間が当該底壁12a内の空間と繋がっている外側凸部12nを備えていてもよい。この外側凸部12nにより、処理室2aから空調室2bに流れ込んだ空気の熱をより効率的に加湿皿12の底壁12aに与えることができる。また、加湿皿12の中空状の底壁12aが、内側凸部12mを備えておらず、外側凸部12nのみを備えていてもよい。
【0090】
また、加湿皿12をヒートパイプ現象が生じ得るように構成する場合において、加湿皿の一部のみをヒートパイプ現象が生じ得るように構成してもよい。例えば、加湿皿の底壁のみを中空にしてその内部に作動流体を封入したり、加湿皿の側壁のみを中空にしてその内部に作動流体を封入したりしてもよい。
【0091】
また、加湿皿12をヒートパイプ現象が生じ得るように構成する場合において、熱交換を促進するためのフィンを加湿皿12から外側へ突出するように設けてもよく、また、熱交換を促進するためのフィンを加湿皿12から内側の加湿水を溜める空間へ突出するように設けてもよい。
【0092】
また、上記第2実施形態において、支持部材30の載置部30aの下方に上向きに送風するファンを設置して、載置部30aの下方に流れ込んだ空気をこのファンで上向きに送風することにより、その空気が加湿皿12の底面に良好に当たるようにしてもよい。
【0093】
また、処理槽のうち処理室が設けられた部分と空調室が設けられた部分とが別体に構成されているとともに、その処理室と空調室とがダクトで接続されており、処理室と空調室との間でダクトを通じて空気が流通可能となっていてもよい。
【0094】
また、上記作動流体は、純水以外の液体であってもよい。
【符号の説明】
【0095】
2 処理槽
2a 処理室
2b 空調室
2g 床面(所定の面)
4 送風部
6 加湿部
8 調温部
12 加湿皿(加湿水収容部)
12a 底壁(壁部)
12b 側壁
12c 側壁(壁部)
16、20 熱交換促進部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象物が収められる処理室と、前記処理室内の空気の温湿度を目標の温湿度に調整するための空調室とを有する処理槽と、前記処理室と前記空調室との間で空気を循環させる送風部と、前記空調室内の空気を加湿するための加湿部と、前記処理槽内の空間の空気を調温するための調温部とを備えた調温調湿装置であって、
前記加湿部は、前記空調室内に着脱可能に配置され、加湿水を溜める容器からなる加湿水収容部と、前記処理室から前記空調室へ流れ込んだ空気が接触する位置で前記加湿水収容部の内外に跨るように設けられ、内部に封入された作動流体が前記加湿水収容部の外部に配置された側と前記加湿水収容部の内部に配置された側とのうち一方側の内部で蒸発するとともにその蒸発した作動流体が他方側の内部で凝縮するヒートパイプ現象を生じさせ得るように構成された熱交換促進部とを有する、調温調湿装置。
【請求項2】
前記熱交換促進部のうち前記加湿水収容部の外部に配置された側の端部は、前記加湿水収容部の内部に配置された側の端部よりも低い位置に配置されている、請求項1に記載の調温調湿装置。
【請求項3】
前記熱交換促進部は、前記加湿水収容部に複数設けられ、この各熱交換促進部のうち前記加湿水収容部の外部に配置された部分は、それぞれ板状に形成されているとともに互いに平行かつ所定間隔で並んで配置されている、請求項1又は2に記載の調温調湿装置。
【請求項4】
前記熱交換促進部は、前記加湿水収容部の壁部を貫通して設けられ、この熱交換促進部が設けられた前記壁部は、断熱材を備えている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の調温調湿装置。
【請求項5】
前記熱交換促進部のうち前記加湿水収容部の外部に配置された側の端部と前記加湿水収容部の内部に配置された側の端部とは、同じ高さに配置されている、請求項1に記載の調温調湿装置。
【請求項6】
処理対象物が収められる処理室と、前記処理室内の空気の温湿度を目標の温湿度に調整するための空調室とを内部に有する処理槽と、前記処理室と前記空調室との間で空気を循環させる送風部と、前記空調室内の空気を加湿するための加湿部と、前記処理槽内の空間の空気を調温するための調温部とを備えた調温調湿装置であって、
前記加湿部は、前記空調室内に着脱可能に配置され、加湿水を溜める容器からなる加湿水収容部を有し、
前記加湿水収容部は、作動流体が封入された構成であり、かつ、前記封入された作動流体が当該加湿水収容部のうち前記処理室から前記空調室へ流れ込んだ空気が接触する外面寄りの領域と当該加湿水収容部の内面寄りの領域とのいずれか一方の領域で蒸発するとともにその蒸発した作動流体が他方の領域で凝縮するヒートパイプ現象を生じ得るように構成されている、調温調湿装置。
【請求項7】
前記加湿水収容部は、その底面と前記空調室内の床面との間に間隙が形成される位置に配置され、当該加湿水収容部の底壁が前記ヒートパイプ現象を生じ得るように構成されている、請求項6に記載の調温調湿装置。
【請求項8】
前記加湿水収容部の側壁が前記ヒートパイプ現象を生じ得るように構成されている、請求項6に記載の調温調湿装置。
【請求項1】
処理対象物が収められる処理室と、前記処理室内の空気の温湿度を目標の温湿度に調整するための空調室とを有する処理槽と、前記処理室と前記空調室との間で空気を循環させる送風部と、前記空調室内の空気を加湿するための加湿部と、前記処理槽内の空間の空気を調温するための調温部とを備えた調温調湿装置であって、
前記加湿部は、前記空調室内に着脱可能に配置され、加湿水を溜める容器からなる加湿水収容部と、前記処理室から前記空調室へ流れ込んだ空気が接触する位置で前記加湿水収容部の内外に跨るように設けられ、内部に封入された作動流体が前記加湿水収容部の外部に配置された側と前記加湿水収容部の内部に配置された側とのうち一方側の内部で蒸発するとともにその蒸発した作動流体が他方側の内部で凝縮するヒートパイプ現象を生じさせ得るように構成された熱交換促進部とを有する、調温調湿装置。
【請求項2】
前記熱交換促進部のうち前記加湿水収容部の外部に配置された側の端部は、前記加湿水収容部の内部に配置された側の端部よりも低い位置に配置されている、請求項1に記載の調温調湿装置。
【請求項3】
前記熱交換促進部は、前記加湿水収容部に複数設けられ、この各熱交換促進部のうち前記加湿水収容部の外部に配置された部分は、それぞれ板状に形成されているとともに互いに平行かつ所定間隔で並んで配置されている、請求項1又は2に記載の調温調湿装置。
【請求項4】
前記熱交換促進部は、前記加湿水収容部の壁部を貫通して設けられ、この熱交換促進部が設けられた前記壁部は、断熱材を備えている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の調温調湿装置。
【請求項5】
前記熱交換促進部のうち前記加湿水収容部の外部に配置された側の端部と前記加湿水収容部の内部に配置された側の端部とは、同じ高さに配置されている、請求項1に記載の調温調湿装置。
【請求項6】
処理対象物が収められる処理室と、前記処理室内の空気の温湿度を目標の温湿度に調整するための空調室とを内部に有する処理槽と、前記処理室と前記空調室との間で空気を循環させる送風部と、前記空調室内の空気を加湿するための加湿部と、前記処理槽内の空間の空気を調温するための調温部とを備えた調温調湿装置であって、
前記加湿部は、前記空調室内に着脱可能に配置され、加湿水を溜める容器からなる加湿水収容部を有し、
前記加湿水収容部は、作動流体が封入された構成であり、かつ、前記封入された作動流体が当該加湿水収容部のうち前記処理室から前記空調室へ流れ込んだ空気が接触する外面寄りの領域と当該加湿水収容部の内面寄りの領域とのいずれか一方の領域で蒸発するとともにその蒸発した作動流体が他方の領域で凝縮するヒートパイプ現象を生じ得るように構成されている、調温調湿装置。
【請求項7】
前記加湿水収容部は、その底面と前記空調室内の床面との間に間隙が形成される位置に配置され、当該加湿水収容部の底壁が前記ヒートパイプ現象を生じ得るように構成されている、請求項6に記載の調温調湿装置。
【請求項8】
前記加湿水収容部の側壁が前記ヒートパイプ現象を生じ得るように構成されている、請求項6に記載の調温調湿装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−210172(P2010−210172A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57879(P2009−57879)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】
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