説明

調湿材料及びその製造方法

【課題】高価な装置を使用することなく、常温常圧下で製造可能なセメント系の調湿材料及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】セメントに対する水の割合である水セメント比が5以上のセメントスラリーを得、このセメントスラリーを水セメント比が5以上の状態で4時間以上保持し、その後、炭酸化処理して調湿材料する。セメントスラリーとしてはコンクリート製造工程で発生するコンクリートスラッジを使用でき、この場合、コンクリートスラッジを回転式篩い2に通して砕石と砂を除去し、攪拌槽3及び沈殿槽4を経た後にフィルタープレス5を通してスラッジケーキを得る。このスラッジケーキをスラッジ乾燥場6で大気乾燥させて炭酸化処理する。その後、乾燥させたスラッジケーキを破砕装置7に通し、さらに振動篩い8にかけ、15mm以下に分級したものを製品としてストックヤード9に保管する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の室内あるいは収納箱などの空間の湿度を調節する機能、すなわち吸放湿性を有する調湿材料及びその製造方法に関し、とくにセメントを原料としたセメント系の調湿材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】

セメント系の調湿材料としては、軽量気泡コンクリート(ALC)がよく知られている。これは、ケイ酸質原料粉末に石灰質原料粉末、さらにはセメントなどを混ぜ合わせ成形した後、オートクレーブを使用し、高温高圧にて水蒸気養生を行い製造するもので、オートクレーブ反応により得られたトバモライトを利用したものである。
【0003】

この軽量気泡コンクリートを利用した調湿材料に関し、特許文献1及び2では、トバモライトを主成分とする軽量気泡コンクリートの粉体を水の存在下で炭酸化処理することによって調湿性を向上させることが提案されている。また、特許文献3には、使用する軽量気泡コンクリート原料として、軽量気泡コンクリートの製造工程で発生した不良品や建築中に発生する端材を粉砕したものを利用することによって材料費を抑えることが提案されている。
【0004】

しかし、このような軽量気泡コンクリートを利用した調湿材料では、原料となる軽量気泡コンクリートを製造する際にオートクレーブを使用するため、設備費や運転費が非常に高くなりコスト高になるという問題がある。
【0005】

一方、特許文献4には、軽量気泡コンクリート以外のセメント系硬化物の粉粒体を水と混合し、加圧成形、炭酸ガス養生して調湿材料を製造する方法が提案されている。ただしこの方法では、使用する材料の幅が増え、材料コストが抑えられる反面、セメント系硬化物を粉粒体とし、水と混合後に加圧成形し炭酸ガス養生するために、粉砕装置、造粒装置、加圧成形装置、炭酸ガス養生装置等が必要となり、設備費が高価になるとともに既に設備を導入しているところでないと参入が難しいという問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開平10−33979号公報
【特許文献2】特開2001−177823号公報
【特許文献3】特開平6−99063号公報
【特許文献4】特開平7−284628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】

本発明が解決しようとする課題は、高価な装置を使用することなく、常温常圧下で製造可能なセメント系の調湿材料及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】

本発明は、セメントに対する水の割合である水セメント比が5以上のセメントスラリーを得、このセメントスラリーを水セメント比が5以上の状態で4時間以上保持し、必要に応じて六価クロムの低減処理を行い、その後、炭酸化処理することによってセメント系の調湿材料を得るものである。
【0009】

炭酸化処理して得られるセメント系の調湿材料において、その調湿機能に大きく影響を及ぼすのは調湿材料中の炭酸カルシウムの結晶構造であり、微細な結晶構造であるバテライト形の炭酸カルシウムが多いほど表面積が増え、調湿能力が高まると言われている。
【0010】

本発明では、この微細な結晶構造のバテライト型の炭酸カルシウムを、水セメント比(水/セメント)を5以上と大きくすることにより効率的に生成する。
【0011】

具体的に本発明を説明すると、まず、セメントの主要成分であるケイ酸三カルシウムは水と接触すると、半分はケイ酸カルシウム水和物に残り半分は水酸化カルシウムになり、最近の研究では、ケイ酸三カルシウムの水和反応は、水和後6時間から24時間の間に著しく進行し、初めはケイ酸カルシウム水和物が多いものの、時間と共に水酸化カルシウムの量が増えていくことが報告されている。ここで、水セメント比を変えることにより、大きく影響を受けるが水酸化カルシウムであり、水セメント比によって水酸化カルシウム結晶構造が変化する。すなわち、水セメント比が小さいと水酸化カルシウムは柱状に発達し、その結晶は水セメント比が小さいほど大きくなり、逆に、水セメント比が大きいと水酸化カルシウムは最も美しい姿である六角板状の結晶になり、大きさも小さくなる。(例えば、鹿島出版社 わかりやすいセメントとコンクリートの知識 P64〜65参照)
【0012】

本発明は、この水セメント比の大きさによる水酸化カルシウムの結晶構造の違いを利用するもので、水セメント比を5以上と大きくすることで、水酸化カルシウムの結晶構造を微細にし、この微細な水酸化カルシウムを炭酸化処理することにより、微細な結晶構造であるバテライト形の炭酸カルシウムを得る。なお、コンクリート製品製造の際のコンクリート配合では、コンクリートの強度を高めるため、水セメント比をスランプ等に影響が出ない範囲で小さくしており、通常、水セメント比は0.5程度であり、本発明のように水セメント比を5以上にすることはない。
【0013】

ここで、上述のとおり、ケイ酸三カルシウムの水和反応(水酸化カルシウムの生成)は、セメントに水を加えてから約6時間以上経過すると急速に進行し約24時間経過すると徐々に衰える。したがって、微細な水酸化カルシウムを十分に生成させるには、セメントに水を加えて水セメント比を5以上としたセメントスラリーを、水セメント比が5以上の状態で少なくとも4時間以上、好ましくは6時間以上保持する。ただし、24時間を超えて保持しても水酸化カルシウムの生成はあまり増加しないので、セメントスラリーの保持時間は、セメントに水を加えてから6時間以上24時間以下であることが好ましい。
【0014】

セメントスラリーには、六価クロムが含まれているため、必要に応じて上記の所定時間保持する間に六価クロムの低減処理を施す。
【0015】

セメントスラリーを上記の所定時間保持した後に行う炭酸化処理では、ケイ酸三カルシウム等の水和反応により生成した水酸化カルシウムに二酸化炭素を吸収させ、微細な結晶構造であるバテライト形の炭酸カルシウムに改質する。この炭酸化処理は、効率面からは炭酸ガス雰囲気下で養生する装置を利用して行うのが好ましいが、燃焼排ガスの利用や大気中の二酸化炭素を吸収させて炭酸化を行う大気乾燥でもよい。大気乾燥では、気温や湿度等により炭酸化のスピードが変わり、できた調湿材料の調湿能力にも影響が生じるが、1週間程度、時間をかけて炭酸化を進めていけば炭やゼオライト程度の調湿能力を有する調湿材料を得ることができる。この大気乾燥では、炭酸化処理のために特別な装置を必要としないので、コスト面からは好ましい。
【0016】

このように、本発明により得られた調湿材料は、市販されている炭やゼオライトと同等の調湿能力を持っており、床下用の調湿材や調湿建材の材料として利用できる。とくに床下用の調湿材として使用する場合、材料中の水酸化カルシウムと水が反応してpH値が11〜12程度の強アルカリ性水溶液となるため、カビや白アリの発生を抑える防虫機能も発揮する。また、この調湿材料は、調湿能力と併せて消臭能力も持っているため、消臭材の材料としても利用できる。
【0017】

また、本発明により得られた調湿材料を破砕装置、篩にかけ、更に炭酸化を進め、pH値で9程度(8.5〜9.5)の弱アルカリに落としたものは、新たな利用法が出てくる。例えば、乳用牛の乳房炎予防対策として、敷料の代わりに使用する畜産用資材に利用できる。この炭酸化は、多少期間を要するため、炭酸化装置等を活用してもよい。低コストで行う手段としては5mmの篩を通した調湿材料を、厚さ2〜10cm以下に敷き詰め、散水と大気乾燥を繰り返し行うことで1〜2ヶ月もあれば所定のpH値まで下げられる。
【0018】

本発明において調湿材料の製造のために使用するセメントとしては、早強、超早強、中庸熱、低熱、白色などのポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント及びそれらの混合物を使用することができる。これらのセメントを水と配合して新規にセメントスラリーを作製してもよいが、本発明では、セメントスラリーとしてコンクリート製造過程で発生するコンクリートスラッジを使用することができる。コンクリートスラッジは、コンクリート製造過程で製造装置等に付着したコンクリートを水で洗浄したものであり、その水セメント比はとくに調整しなくても常に5を上回っているので、本発明の調湿材料の原料となるセメントスラリーとして利用可能である。
【0019】

コンクリートスラッジは、廃棄物処理法で汚泥の範疇に属し、最終処分する場合は、中間処理を施さない限り管理型の埋め立て処分場に持ち込むことが義務づけられている。このコンクリートスラッジの有効利用方法として路盤材等への利用が考えられるが、主成分の水酸化カルシウムが水と反応し、pH11〜12程度の強アルカリ性水溶液となり、環境への影響が懸念される等の理由もあり、大半が最終処分場で埋立処理されているが現状である。このように従来廃棄処分されていたコンクリートスラッジを本発明では調湿材料の原料として有効利用することができ、調湿材料を低コストで製造できると共に、コンクリートスラッジの廃棄処分費用を削減することができる。また、最終処分場の延命化に繋がり、地球環境保全にも貢献できる。
【0020】

さらには、調湿材料の製造にあたりコンクリートスラッジの炭酸化処理を大気乾燥によって行い、調湿材として利用すれば、大気中のCOを固定することができ、例えばコンクリートスラッジ中の水酸化カルシウム含有量を30質量%とすると、炭酸化によるCO固定量は、コンクリートスラッジ1トンあたり、約0.2トンとなり、この点からも地球環境保全にも貢献できる。すなわち、従来、コンクリートスラッジは、最終処分場で埋立処理され、大気と接触する表面のみでCOを固定するにとどまり、CO固定手段としての有効利用はされていなかったが、本発明によって利用を拡大することにより、莫大なCO固定化が実現できる。なお、新規にコンクリートと水を配合したセメントスラリーを調湿材料の原料とする場合も、COを固定することができる。
【0021】

本発明においてコンクリートスラッジを調湿材料の原料とする場合、コンクリートスラッジにはコンクリート原料の砕石や砂が含まれているので、品質管理面から砕石や砂を篩い等で除去し、スラッジのみを分離した方がよい。この除去処理は、コンクリートスラッジを上記の所定時間保持した後に行ってもよいが、この処理によって水セメント比が5未満にならないのであれば、上記の所定時間の保持中に行ってもよい。また、炭酸化処理にあたっては、二酸化炭素との接触面を確保する意味から事前に脱水処理を行うことが好ましい。この脱水処理では、作業性の観点からみるとスラッジの含水率を1〜1.5程度にすることが好ましい。これは、新規にセメントと水を配合して水セメント比が5以上のセメントスラリーを使用する場合も同様である。
【発明の効果】
【0022】

本発明によれば、従来のようにオートクレーブ等の高価な装置を使用することなく、常温常圧下でセメント系の調湿材料を得ることができる。したがって、規模の小さい生コン業者やコンクリート製品業者の既存設備で製造可能である。
【0023】

また、本発明では、セメントスラリーの水セメント比を5以上にして4時間以上保持した後に炭酸化処理することで、バテライトの結晶構造を多く含む炭酸カルシウムを効率的に生成させることができ、調湿機能を向上させることができるので、市販されている炭やゼオライトと同等の調湿能力を有する調湿材料を安価に得ることができる。
【0024】

さらに、本発明では、調湿材料の原料となるセメントスラリーとして、コンクリート製造工程で発生するコンクリートスラッジを利用することで、従来、廃棄処分されていたコンクリートスラッジの有効利用を図ることができると共に、廃棄処分費用を削減することができる。また、調湿材料の原料費が実質的にゼロになるので、調湿材料の低コスト化を図ることができる。
【0025】

加えて、本発明では、調湿材料の製造にあたりセメントスラリー(コンクリートスラッジ)の炭酸化処理を大気乾燥によって行うようにすれば、特別な炭酸化処理装置が不要になると共に、大気中のCOを固定することができ、地球環境保全にも貢献できる。
【0026】

また、調湿材料のpH値を9程度に落とした畜産用資材は、乳用牛の乳房炎予防対策として、敷料の代わりに使用するもので、吸水性や保水性が非常に高く、弱アルカリ性による除菌効果に加え、消臭効果を持っているため、衛生的な肥育環境を提供する。更に、調湿材料の多孔質性から牛糞堆肥化で発酵促進効果も期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、実施例に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0028】

この実施例は、セメントスラリーの水セメント比が、得られた調湿材料の調湿能力に及ぼす影響を調査したものである。
【0029】

この実施例では、普通ポルトランドセメント20質量部及び珪砂80質量部に対して、それぞれ水を13質量部(水セメント比:0.65)、40質量部(水セメント比:2)、100質量部(水セメント比:5)、200質量部(水セメント比:10)、400質量部(水セメント比:20)、800質量部(水セメント比:40)混合したセメントスラリーを作製した。そして、これらのセメントスラリーを温度25度で1昼夜保持し、水分の多いものは上澄水を捨て、1週間程度大気乾燥させて調湿材料を得た。
【0030】

得られた調湿材料を3mmの篩いにかけ、内径86mmのシャーレに充填し、表面積をほぼ同一にして恒温恒湿器に入れ、吸放湿性試験を行った。吸放湿性試験は、JIS A6909(建築用仕上塗材)7.32吸放湿性試験に基づき実施し、吸放湿量(g/m)を算出した。図1が水セメント比と吸放湿量の関係である。図1より、水セメント比を大きくすると調湿材料の吸放湿量が増加する傾向が確認できる。本発明では、この試験結果等からセメントスラリーの水セメント比を5以上とした。水セメント比は好ましくは10以上であり、さらに好ましくは40程度(40〜50)である。
【実施例2】
【0031】

この実施例は、本発明における炭酸化処理の条件が、得られた調湿材料の調湿能力に及ぼす影響を調査したものである。
【0032】

この実施例では、セメントスラリーとしてコンクリート製造工程で発生するコンクリートスラッジ(水セメント比10〜13)を使用し、このコンクリートスラッジを篩いに通して砕石と砂を除去し、フィルタープレスにかけて脱水処理を行い、スラッジケーキを得た。このスラッジケーキの含水率は1.3〜1.4であった。なお、コンクリートスラッジの発生から脱水処理の直前までは6〜20時間、脱水処理終了までは6〜20時間かかった。
【0033】

得られたスラッジケーキを以下の5つの条件で炭酸化処理した。

条件1:大気雰囲気の乾燥機を使用し3時間程度で乾燥
条件2:1週間の大気乾燥
条件3:1週間の大気乾燥で途中1回注水
条件4:1週間の大気乾燥で2日に1回程度注水
条件5:大気乾燥によりpH9程度まで乾燥
【0034】

これらの条件で炭酸化処理して得られたそれぞれの調湿材料を3mmの篩いにかけ、内径86mmのシャーレに充填し、表面積をほぼ同一にして恒温恒湿器に入れ、実施例1と同様の試験手順で吸放湿量を算出した。結果を図2に示す。
【0035】

図2より、大気乾燥による炭酸化処理では、大気中の二酸化炭素を吸収させるため、十分な時間が必要なこと、また、炭酸化処理ではスラッジケーキ中の主成分である水酸化カルシウムが炭酸カルシウムに改質されるが、水の存在下でその改質反応が促進されることがわかる。
【0036】

また、大気乾燥による炭酸化処理は、気温や湿度の影響を受け、スラッジケーキをほぐしながら含水率40〜50%程度まで乾燥させる場合、夏場で1日、冬場で2〜3日、梅雨時期で1週間程度の期間が必要である。通常、この実施例のようなスラッジケーキから得られる調湿材料の吸放湿量をゼオライト等の市販の調湿材料と同等(200g/m程度)とするためには、1週間程度の期間をかけて、乾燥し過ぎないように散水を行いながらじっくり乾燥させればよい。
【0037】

本発明において大気乾燥により炭酸化処理した調湿材料は、pH値が10〜12程度であり、完全に炭酸化処理が終わったものではない。調湿材として使用することにより、大気中の二酸化炭素を吸収し、長い期間を経て中性化していくが、この過程を示したものが、条件5でpH値を9以下に落としたものである。本発明者が行った試験によれば、pH値の低下に伴い、吸放湿量は増加・安定化する傾向にあり、長期間の使用ができる。
【実施例3】
【0038】

この実施例は、本発明の調湿材料の製造プロセス例を示す。図3はその製造プロセスを示す図である。
【0039】

コンクリート製品製造工程で発生したスラッジ水は、原水ピット1に集められる。原水ピット1に集められたコンクリートスラッジは回転式篩い2に通され、砕石と砂が除去される。その後、コンクリートスラッジは攪拌槽3に送られ十分に攪拌された後に沈殿槽4に送られる。この沈殿槽4では、上澄水が除去されコンクリートスラッジは濃縮される(水セメント比10〜15)。次に濃縮されたコンクリートスラッジはフィルタープレス5に送られ、脱水処理が行われる。これによって、スラッジケーキが得られる。このスラッジケーキの含水率は1.3〜1.4であった。なお、コンクリートスラッジの発生から脱水処理の直前までは6〜20時間、脱水処理終了までは6〜20時間かかった。
【0040】

次に、得られたスラッジケーキをスラッジ乾燥場6で大気乾燥させる。このスラッジ乾燥場6ではスラッジケーキをほぐして含水率40〜50%程度まで乾燥させる。この乾燥では、スラッジケーキの炭酸化処理を同時に行うため、炭酸化させる期間がポイントとなる。スラッジケーキをほぐして含水率40〜50%程度に乾燥させるには、実施例2でも説明したとおり、夏場で1日、冬場で2〜3日、梅雨時期で1週間程度必要となるが、平均的には大気乾燥の期間は1週間程度が好ましい。また、炭酸化には適度な水分が必要なため、急激に乾燥し過ぎないように散水を行い乾燥させることが必要となる。
【0041】

乾燥させたスラッジケーキは破砕装置7を通し、さらに振動篩い8にかけ、15mm以下に分級したものをストックヤード9に保管する。この15mm以下に分級したものを製品(調湿材料)とする。
【0042】

このようにして製造した本発明の調湿材料について、市販されている調湿材料(ゼオライト、炭)と調湿能力を比較した。各々の調湿材料を縦180mm×と横180mm×深さ15mmの容器に充填し、恒温恒湿器に入れ、吸放湿性試験を行った。吸放湿性試験は実施例1と同様の手順で実施し、吸放湿量(g/m)を算出した。図4が湿度応答法による測定結果であり、市販品と比較しても十分な調湿能力を持っていることがわかる。
【0043】

また、本発明の調湿材料について消臭能力評価の試験を行った。この試験は、供試材10gを湿度約30%の恒温恒湿器で1週間以上乾燥させたものを試験材として、試験材をテトラバッグに入れて真空にした後、規定濃度となるよう空気と試験ガスを入れ、規定経過時間後、検知管によりガス濃度を測定した。
【0044】

その結果を図5に示す。本発明の調湿材料は消臭能力も持っており、消臭材の材料としても利用できることがわかる。
【実施例4】
【0045】

この実施例は、調湿材料のpH値を9程度に落としたもの(以下、スラッジ)を牛舎の敷料として使用した場合、牛糞の堆肥化に与える影響並びに出来た肥料の植物への影響を調査したものである。
【0046】

実験用堆肥は少量のため、攪拌式発酵方式を用い、スラッジの含有量を0%、10%、20%、30%と調整した4種類の堆肥を製造した。各々のケース(100L)に元肥7kg、米ぬか3kg、一次発酵済み牛糞20kgをいれ、さらに試験区に応じて畜産用資材を0kg、3kg、6kg、9kgを投入し、よく撹拌した。フタをして放置し、翌日撹拌する前に任意5カ所の温度を測定し記録する方法で堆肥をつくった。図6が堆肥発酵温度の推移である。図のとおり試験3日目で添加区が全て無添加区の温度を上回っていたこと、積算温度で10,20%添加区が無添加区を明らかに超えていることから発酵促進効果が確認できた。
【0047】

出来た実験堆肥を使用して肥効試験を行った。発芽調査において供試肥料区は、どの試験区も発芽及び発芽率ともに同等の成績を示し、生体重もスラッジ0%試験区(堆肥100%)を基準として評価すると、スラッジ含有率が上がるほど同等かそれ以上の成績を示している。このことからスラッジ配合の影響と考えられる植物の育成上の異常症状は見られなかった。図7は、播種21日後の生育状況の写真である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】セメントスラリーの水セメント比が、得られた調湿材料の調湿能力に及ぼす影響を示す。
【図2】炭酸化処理の条件が、得られた調湿材料の調湿能力に及ぼす影響を示す。
【図3】本発明の調湿材料の製造プロセス例を示す。
【図4】本発明の調湿材料の調湿能力を示す。
【図5】本発明の調湿材料の消臭能力を示す。
【図6】本発明の畜産用資材による牛糞堆肥化での発酵促進効果を示す。
【図7】本発明の畜産用資材による牛糞堆肥を用いた肥効試験結果を示す。
【符号の説明】
【0049】
1 原水ピット
2 回転式篩い
3 攪拌槽
4 沈殿槽
5 フィルタープレス(脱水処理装置)
6 スラッジ乾燥場
7 破砕装置
8 振動篩い
9 ストックヤード

【特許請求の範囲】
【請求項1】

セメントに対する水の割合である水セメント比が5以上のセメントスラリーを得、このセメントスラリーを水セメント比が5以上の状態で4時間以上保持し、クロム処理を施し、その後、炭酸化処理することにより得られた調湿材料。
【請求項2】

請求項1の調湿材料で炭酸化処理等によりpH値を9程度まで落とした弱アルカリ性の資材
【請求項3】

セメントに対する水の割合である水セメント比が5以上のセメントスラリーを得、このセメントスラリーを水セメント比が5以上の状態で4時間以上保持し、クロム処理を施し、その後、炭酸化処理する調湿材料等の製造方法。
【請求項4】

請求項1又は2記載の調湿材料であって、前記セメントスラリーがポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント及びそれらの構成物、混合物と水を錬り込んだもの、更に砂を加え練りこんだものであることを特徴とする調湿材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−76976(P2010−76976A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247631(P2008−247631)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(308030204)
【出願人】(591005280)九州高圧コンクリート工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】