説明

調湿装置

【課題】 エネルギーの利用効率を向上するとともに、吸湿性液体の微粒子の飛散を軽減する調湿装置を提供する。
【解決手段】 調湿空間の湿度を調整する調湿装置1は、空気を取り込む吸気口12および調湿処理後の空気を調湿空間に排出する排気口13を有する筐体11と、空気との間で水分の授受を行う吸湿性液体を供給する吸湿性液体供給部15と、吸湿性液体供給部15から供給された吸湿性液体に空気を通すために吸湿性液体を一時的に滞留させると共に、空気および吸湿性液体を加熱または冷却する熱交換コイル16と、吸湿性液体供給部15から供給されて熱交換コイル16を通った吸湿性液体を入れる液槽17と、熱交換コイル16に供給された後の吸湿性液体をいったん吸収し、滲み出した吸湿性液体が液槽17に落ちるように配置された吸収材27を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、塩化リチウム(LiCl)等の吸湿性液体を用いて調湿を行う調湿装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、塩化リチウム等の吸湿性液体を用いて調湿を行う調湿装置が知られていた。吸湿性液体は、溶液濃度が高いほど、また、温度が低いほど、その飽和蒸気圧が低くなり、水分を吸収しやすくなる。逆に、吸湿性液体は、溶液濃度が低いほど、また、温度が高いほど、その飽和蒸気圧が高くなり、水分が脱離しやすくなる。調湿装置は、この性質を利用して吸湿性液体の飽和蒸気圧を調節することにより、調湿処理を行う。
【0003】
特許文献1に記載された調湿装置は、調湿空間または外部から空気を取り込み、取り込んだ空気と吸湿性液体とを接触させることにより、取り込んだ空気の除湿または加湿を行って調湿空間に戻す処理を行う室内機を有している。室内機は、吸湿性液体を供給する管路上に熱交換器を有し、熱交換器にて吸湿性液体を加熱または冷却し、加熱または冷却された吸湿性液体を噴射ノズルから充填材に噴射していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−214595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような調湿装置においては、エネルギーの利用効率を高めることが求められている。ここで、エネルギーの利用効率とは、調湿装置に加えたエネルギーの総和に対して、除湿あるいは加湿することができた空気量の割合である。
【0006】
そこで、本出願人は、エネルギーの利用効率を高めた調湿装置を提案した(特願2008−145812号)。この調湿装置は、調湿空間の湿度を調整する調湿装置であって、空気を取り込む吸気口および調湿処理後の空気を調湿空間に排出する排気口を有する筐体と、空気との間で水分の授受を行う吸湿性液体を供給する吸湿性液体供給部と、前記吸湿性液体供給部から供給された吸湿性液体に空気を通すために吸湿性液体を一時的に滞留させると共に、空気および吸湿性液体を加熱または冷却する熱交換コイルとを備える。
【0007】
この構成により、吸湿性液体を熱交換コイルに一時的に滞留させ、熱交換コイルにて加熱または冷却をしながら、吸湿性液体に空気を通すことにより、吸湿性液体と空気との間の水分の授受を効率的に行い、エネルギー利用効率が高めることができる。これは、熱交換コイルによって、吸湿性液体だけでなく空気も加熱または冷却する構成により、空気の飽和水蒸気量が変化し、吸湿性液体との水分の授受が行なわれ易くなるためと考えられる。
【0008】
本発明者らは、この提案により、吸湿性液体を滞留させる部材を、従来の充填材から熱交換コイルに替えたことで、次の問題が生じることを発見した。すなわち、熱交換コイルには親水性がないため、吸湿性液体供給部から滴下された吸湿性液体は、充填材の場合と比較すると速い速度で、熱交換コイルを伝って流れ落ちていく。このため、吸湿性液体が液槽に溜まった吸湿性液体の表面に当たることで飛沫が発生し、吸湿性液体の微小な粒子が調湿装置の内部に飛散する。また、交換コイルの付近においてにも、吸湿性液体の微小な粒子が発生する。このような微小な粒子は、調湿された空気の流れに沿って、調湿装置の排気口から調湿空間(室内)に排出されてしまう。
【0009】
ここで、吸湿性液体の微粒子が調湿装置から調湿空間に排出されるのを防ぐために排気口にフィルタ等を設けて微粒子の排出を防ぐことが考えられる。しかしながら、微粒子の粒径が1μmより小さくなり、例えば0.5μm程度になると、微粒子はフィルタを通過してしまい、微粒子の調湿空間への排出を有効に防止できない。
【0010】
そこで、本発明は、吸湿性液体を一時的に滞留させると共に、空気および吸湿性液体を加熱または冷却する熱交換コイルを備えた調湿装置において、吸湿性液体の微粒子の飛散を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の調湿装置は、調湿空間の湿度を調整する調湿装置であって、空気を取り込む吸気口および調湿処理後の空気を調湿空間に排出する排気口を有する筐体と、空気との間で水分の授受を行う吸湿性液体を供給する吸湿性液体供給部と、前記吸湿性液体供給部から供給された吸湿性液体を空気と接触させるために吸湿性液体を一時的に滞留させると共に、空気および吸湿性液体を加熱または冷却する熱交換コイルと、前記吸湿性液体供給部から供給されて前記熱交換コイルを通った吸湿性液体を入れる液槽と、前記熱交換コイルに供給された後の吸湿性液体をいったん吸収し、滲み出した吸湿性液体が液槽に落ちるように配置された吸収材を備える。
【0012】
この構成により、吸収材に吸収されることで吸湿性液体はその落下速度が低下させられた状態で液槽に入るので、液槽に入る吸湿性液体が液槽に溜まった吸湿性液体の液面に衝突する際に飛沫が生じるのを軽減して、飛沫の発生による吸湿性液体の微小粒子の飛散を軽減できる。
【0013】
また、上記の調湿装置において、前記吸収材は、前記熱交換コイルにおける空気の通気面に対応して設けられる。
【0014】
この構成により、熱交換コイルにおける空気の通気面で発生した吸湿性液体の微粒子が空気によって運ばれることを軽減でき、または熱交換コイルにおける空気の通気面で吸湿性液体の飛沫が発生することを軽減できる。また、吸湿性液体を用いた調湿装置は気液の接触による除塵効果を有し、さらに調湿剤として塩化リチウム等の除菌能力を有するものを使用する場合には除菌効果も併せ持つが、空気の通気面に吸収材を配置することで、これらの除塵効果及び除菌効果を高める作用も得られる。
【0015】
また、上記の調湿装置において、前記吸収材は、前記熱交換コイルの下方に設けられ、前記熱交換コイルから落ちた吸湿性液体は、前記吸収材を通った後に、前記液槽に入る。
【0016】
この構成により、熱交換コイルの中を速い速度で流れた吸湿性液体がそのまま液槽に入ることを防止できる。吸湿性液体は、液槽に入る前に吸収材に吸収されることで、液槽に入る前にその速度が弱められて液槽に入るので、液槽に溜まった吸湿性液体の液面での飛沫の発生を軽減できる。
【0017】
また、上記の調湿装置において、前記吸収材と前記熱交換コイルは密着している。この構成により、熱交換コイルから落ちた吸湿性液体が、吸収材の表面で、吸収材に染み込んだ吸湿性液体と衝突して生じる飛沫を軽減できる。
【0018】
また、上記の調湿装置において、前記吸湿性液体供給部は、前記吸湿性液体を前記熱交換コイルの上方から供給し、前記吸気口は、前記吸収材と前記液槽との間の前記筐体の側面に設けられ、前記吸収材は、通気性を有し、前記吸気口を通じて取り込んだ空気を、前記吸収材を通して前記熱交換コイルの下方から供給する。
【0019】
この構成により、除湿または加湿すべき空気を吸湿性液体の流れる方向とは逆の方向(カウンタ方向)に流すので、空気と吸湿性液体との接触が多くなり、除湿または加湿の効果が向上する。
【0020】
また、上記の調湿装置において、前記吸湿性液体供給部は、前記吸湿性液体を前記熱交換コイルの上方から供給し、前記吸気口は、前記熱交換コイルの側方に設けられ、前記吸収材は、前記吸気口とは反対の前記熱交換コイルの側方に設けられ、前記吸気口を通じて取り込んだ空気を、前記熱交換コイルの側方から供給する。
【0021】
この構成により、除湿または加湿すべき空気を吸湿性液体の流れる方向と交わる方向(クロス方向)に流す際に、空気の風力によって横方向に吹き飛ばされた吸湿性液体を吸収材で吸収するので、吹き飛ばされた吸湿性液体によって生じる飛沫及び吹き飛ばされた吸湿性液体が液槽に溜められた吸湿性液体の液面に直接落下することで生じる飛沫を軽減できる。
【0022】
上記の調湿装置において、前記吸収材と前記熱交換コイルは密着している。この構成によれば、熱交換コイルの側方から飛び出した吸湿性液体を確実に吸収材で受けて吸収でき、熱交換コイルの側面から飛び出すことで生じる飛沫をなくすことができる。
【0023】
上記の調湿装置において、前記吸収材は、通気性を有し、前記熱交換コイルと前記吸気口との間にも設けられ、前記吸気口を通じて取り込んだ空気を、前記熱交換コイルと前記吸気口との間の前記吸収材を通して前記熱交換コイルの側方から供給する。この構成によれば、より確実に熱交換コイルの側面から飛び出て直接液槽に落下する吸湿性液体を軽減できる。
【0024】
上記の調湿装置において、前記吸収材の厚さは、1〜300mmである。吸収材が1mm以上であれば、吸収材による十分な吸湿性液体保持機能が確保できるとともに、緩衝材としての作用も得られる。吸収材が300mm以下であれば、圧力損失が抑えられる。
【0025】
上記の調湿装置において、前記吸収材は、前記熱交換コイルの内部に設けられ、前記吸湿性液体供給部から供給された吸湿性液体は、前記吸収材に吸収されることで、前記熱コイル内に一時的に滞留する。
【0026】
この構成により、熱交換コイル内を流れる吸湿性液体の速度を弱めることができる。これにより、液槽に入る吸湿性液体の速度を遅くして、飛沫の発生を軽減できる。また、吸湿性液体の熱交換コイル内での滞留時間を長くでき、エネルギー利用効率を上げることができる。
【0027】
また、上記の調湿装置において、前記吸収材は、多孔質スポンジまたは織布である。この構成により、吸収材は、十分に吸湿性液体を吸収できるとともに、吸収材が緩衝材として作用し、吸湿性液体が吸収材に衝突することにより発生する飛沫を軽減できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、吸湿性液体を熱交換コイルに一時的に滞留させ、熱交換コイルにて加熱または冷却をしながら、吸湿性液体と空気とを接触させるとともに、吸収材によって吸湿性液体の落下速度を低下させるので、エネルギー利用効率を向上できるとともに、吸湿性液体の飛散を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施の形態の調湿装置の構成を示す図である。
【図2】(a)熱交換コイルおよび吸収材の構成を示す斜視図である。 (b)熱交換コイルおよび吸収材の構成を示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態の変形例に係る調湿装置の構成を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態の調湿装置の構成を示す図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態の熱交換コイルの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態の調湿装置について図面を参照しながら説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態の調湿装置1の構成を示す図である。調湿装置1は、調湿空間(室内)の空気を取り込んで、取り込んだ空気を吸湿性液体Lと接触させることにより調湿を行う処理機10と、処理機10での調湿処理に用いた吸湿性液体Lの再生を行う再生機30とを有する。ここで、吸湿性液体Lの再生とは、調湿を行うことによって濃度の変化した吸湿性液体Lの濃度を、調湿に用いる前の状態に戻すことをいう。例えば、除湿の場合には、溶液濃度の高い吸湿性液体Lを冷却し、冷却した吸湿性液体Lと空気を接触させることにより、吸湿性液体Lによって空気中の水分を吸収する。この処理によって吸湿性液体Lに水分が吸収されるので、吸湿性液体Lの溶液濃度は低くなる。溶液濃度が低い吸湿性液体Lでは十分な除湿を行えないので、吸湿性液体Lから水分を脱離することによって、溶液濃度の高い吸湿性液体Lに戻す。なお、加湿の場合は、逆に、吸湿性液体Lの溶液濃度が高くなるので、吸湿性液体Lに水分を吸収させることによって溶液濃度の低い吸湿性液体Lに戻す。
【0031】
本実施の形態では、吸湿性液体Lとして、塩化リチウム(LiCl)を用いる。なお、吸湿性液体としては、塩化リチウムに限らず、食塩水などの潮解性を有する塩の溶液や、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの吸湿性の高い多価アルコール、その他の吸湿性を有する安価な液体を用いてもよい。
【0032】
処理機10は、室内の空気の調湿を行う室内機であり、再生機30は外気との間で水分の授受を行うことにより吸湿性液体Lを再生する室外機である。図1では、一の処理機10に対して一の再生機30が接続された例を示しているが、複数の処理機10に対して一の再生機30を接続する構成としてもよい。例えば、集合住宅や大型スーパー等に調湿装置1を設置する場合には、各部屋あるいは各フロアに処理機10を設置し、各処理機10と接続された一の再生機30を外部に設置する態様とすることもできる。
【0033】
処理機10と再生機30は、第1の吸湿液管路50および第2の吸湿液管路51によって接続されている。第1の吸湿液管路50は、処理機10から再生機30へ吸湿性液体Lを送るための管路であり、第2の吸湿液管路51は、再生機30から処理機10へ吸湿性液体Lを送るための管路である。第1の吸湿液管路50、第2の吸湿液管路51を用いて、処理機10と再生機30との間で吸湿性液体Lを循環させることにより、処理機10にて用いた吸湿性液体Lを再生機30にて再生し、処理機10に戻すことができる。
【0034】
次に、処理機10の構成について説明する。処理機10は、吸気口12と排気口13とを有する筐体11を備えている。排気口13は、排気用のファン14を有しており、筐体11内の空気を強制的に排気する。また、筐体11内から空気を排出することにより、筐体11内が外部に対して負圧となり、筐体11の外部の空気が吸気口12を通じて筐体11内に取り込まれる。
【0035】
筐体11内には、吸湿性液体供給部15と、熱交換コイル16と、液槽17とを有する。吸湿性液体供給部15は、吸湿性液体Lを滴下する複数のノズルを有している。複数のノズルから吸湿性液体Lを滴下することにより、吸湿性液体Lを供給する。
【0036】
熱交換コイル16は、吸湿性液体供給部15から供給された吸湿性液体Lを一時的に滞留させる。熱交換コイル16には、吸気口12から取り込まれた空気が下方から供給される(図1において、矢印は、空気の流れを示す)。これにより、上方から供給される吸湿性液体Lと下方から供給される空気とが熱交換コイル16において接触し、吸湿性液体Lと空気との間で水分の授受が行なわれる。熱交換コイル16の表面には、耐腐食性コーティングが施されている。これにより、吸湿性液体Lによる熱交換コイル16の腐食を防止して、吸湿性液体Lを滞留させることが可能となる。
【0037】
熱交換コイル16は、ヒートポンプ21の熱交換器を構成している。ここでヒートポンプ21の構成について説明する。ヒートポンプ21は、熱交換コイル16と、熱交換コイル36と、圧縮機22と、膨張弁23と、これらをつなぐ冷媒管24とを備えている。ヒートポンプ21は、冷媒の流れを逆転させることにより、熱交換コイル16を蒸発器、あるいは、凝縮器として機能させることができる。熱交換コイル36は、熱交換コイル16とは逆の処理を行う。
【0038】
熱交換コイル16は、吸湿性液体供給部15から供給された吸湿性液体Lを一時的に滞留させると共に、一時的に滞留された吸湿性液体Lと熱交換コイル16を通る空気を加熱または冷却する。吸湿性液体Lを加熱するか冷却するかは、処理機10によって加湿するか除湿するかによる。すなわち、処理機10が加湿を行う場合には、吸湿性液体Lに含まれた水分を脱離させ、空気中に含ませるために吸湿性液体Lおよび空気を加熱する。逆に、処理機10が除湿を行う場合には、空気中の水分を吸湿性液体Lに吸収させやすくするために吸湿性液体Lおよび空気を冷却する。
【0039】
熱変換コイル16の下方であって、液槽17の上方の位置に、吸収材27が設けられる。吸収材27は、親水性および通気性を有している。吸収材27は、例えば多孔質スポンジまたは織布である。
【0040】
図2(a)は、熱交換コイル16および吸収材27の構成を示す斜視図である。図2(b)は、熱交換コイル16の内部と吸収材27の構成を説明するための断面図であり、熱交換コイル16が有する伝熱管を示す。図2(a)と図2(b)の関係は、図2(a)に示す方向D1と図2(b)に示す方向D1とが対応している。また、図2(b)において、紙面奥行き方向が図2(a)のD2方向に対応する。
【0041】
図2(a)に示すように、熱交換コイル16は、互いに平行に配置された複数のプレートフィン61を有する。プレートフィン61の間を吸湿性液体Lおよび空気が通過することにより、吸湿性液体Lおよび空気とプレートフィン61との間で熱交換が行われる。プレートフィン61の間隔は、狭すぎると、吸湿性液体Lの表面張力により、吸湿性液体Lが詰まってしまう。プレートフィン61の間隔は、広すぎると、吸湿性液体Lと空気との接触面積が小さくなってしまう。従って、これらの要素を考慮して、プレートフィン61の間隔は決定される。プレートフィン61の間隔は、3〜10mmが好ましく、さらに好ましくは4〜8mmであり、最も好ましくは5〜6mmである。
【0042】
熱交換コイル16は、圧縮機22または膨張弁23から流れてきた冷媒を流す伝熱管62を有している。図2(b)に示すように、伝熱管62は、プレートフィン61を貫通して延びている。伝熱管62を流れる冷媒の温度がプレートフィン61に移動する。伝熱管62は、プレートフィン61に対して垂直な複数の直管部分62aを有し、複数の直管部分62aがプレートフィン61の外側で接続されて1つの流路を構成している。図2(b)では、一の伝熱管62しか描かれていないが、実際には、紙面の奥行き方向(図2(a)では紙面の左右方向D2)に複数段の伝熱管62を有する。
【0043】
熱交換コイル16は、ヒートポンプ21の冷媒管24に接続されたヘッダ63,64を有する。ヘッダ63,64には、伝熱管62の流路の端部のそれぞれが接続される。冷媒管24からヘッダ63に供給された冷媒は、伝熱管62を流れた後、ヘッダ64に戻り、ヘッダ64から冷媒管24に戻る。ヒートポンプ21は、冷媒の流れを逆転させることができるが、その場合には、ヘッダ64に冷媒が供給され、ヘッダ63から冷媒管24に戻ることになる。
【0044】
吸収材27は、熱交換コイル16の底面全体を覆う大きさおよび形状を有している。吸収材のこのような形状および配置によって、吸湿性液体供給部15から供給されて熱交換コイル16を通った吸湿性液体Lは、液槽17に入る前に吸収材27に吸収される。このとき、吸収材27は、吸湿性液体Lを吸収して、その速度を弱める緩衝材として機能する。吸収材27は、液槽17の上方に配置されており、吸収材27から滲み出た吸湿性液体Lは液槽17に落下する。
【0045】
吸収材27は、吸気口12の上方に設けられる。具体的には、吸収材27は、その上面が吸気口12の上端よりも上になるように配置される。吸収材27をこのように配置することで、吸気口12から取り入れられた空気は、吸収材27を通過して熱交換コイル16に供給される。このように、吸収材27を熱交換コイル16の通気面に対応して配置することで、吸収材27は除塵フィルタとしての機能も有することになる。
【0046】
吸収材27と熱交換コイル16との間の距離L1は、長すぎると、熱交換コイル16から高速で落下した吸湿性液体Lが吸収材27の表面に衝突して、吸収材27に保持された吸湿性液体Lをはじいて飛沫が発生することがある。また、熱交換コイル16と吸収材27との間で吸収性液体Lの飛沫が発生することがある。従って、吸収材27と熱交換コイル16との間の距離L1は短いほどよい。具体的には、吸収材27と熱交換コイル16との間の距離L1は、0〜10mmが好ましく、さらに好ましくは0〜5mmであり、最も好ましいのは吸収材27と熱交換コイル16とが密着していることである。
【0047】
吸収材27の厚さL2は、薄すぎると、吸収材27の緩衝材としての機能が低下し、熱交換コイル16から落下してくる吸湿性液体Lを受けたときに十分に液滴の速度を弱めることができなくなり、吸湿性液体Lが吸収材27に衝突した際に、飛沫が発生してしまうおそれがある。また、吸収材27の厚さL2が薄すぎると、空気の流れの下流側の表面である上表面に泡が発生する可能性がある。一方、吸収材27が厚すぎると、圧力損失が高くなる。従って、これらの要素を考慮して、吸収材27の厚さは決定される。吸収材27の厚さは、1〜300mmが好ましく、さらに好ましくは50〜100mmである。
【0048】
再び図1を参照して、処理機10の構成について説明する。液槽17には、吸収材27から滲み出た吸収性液体Lが落下して溜められる。処理機10は、液槽17内の吸湿性液体Lを吸湿性液体供給部12に供給するための管18を有している。管18にはポンプ19が取り付けられており、液槽17内の吸湿性液体Lを吸い上げる。
【0049】
液槽17内の吸湿性液体Lを再生機30に送るための第1の吸湿液管路50は、液槽17から吸湿性液体Lを吸い上げるための管18に三方バルブ20を介して接続されている。三方バルブ20は、処理機10の吸湿性液体供給部15に送る吸湿性液体Lの量と第1の吸湿液管路50を通じて再生機30に送る吸湿性液体Lの量を制御する。即ち、液槽17に溜められた吸湿性液体Lは、一部がポンプ19によってくみ上げられて管18に流れて再利用され、一部はポンプ52によって第1の吸湿液管路50に流れて再生される。
【0050】
次に、再生機30について説明する。再生機30は、吸気口32と排気口33とを有する筐体31を備えている。再生機30は、排気用のファン34を有しており、筐体31内の空気を強制的に排気する。また、筐体31内から空気を排気することにより、外気が吸気口32を通じて筐体31内に取り込まれる。
【0051】
筐体31内には、吸湿性液体Lを供給する吸湿性液体供給部35と、吸湿性液体Lを一時的に滞留させる熱交換コイル36と、熱交換コイル36を通った吸収性液体Lを入れる液槽37とを有する。吸湿性液体供給部35は、処理機10から送られてきた吸湿性液体Lを供給する第1の供給部35aと、液槽37内の吸湿性液体Lを供給する第2の供給部35bとを有している。第1の供給部35a、第2の供給部35bはいずれも、吸湿性液体Lを滴下する複数のノズルを有している。熱交換コイル36は、処理機10が有する熱交換コイル16と同じ構成を有している。熱交換コイル36は、前述のとおり、ヒートポンプ21の熱交換器を構成している。
【0052】
熱交換コイル36の下方には、吸収材47が設けられている。吸収材47は、処理機10が有する吸収材27と同じ構成を有しており、熱交換コイル36を通った吸湿性液体Lはいったん吸収材47に吸収される。吸収材47は、そこから滲み出た吸湿性液体Lが液槽37に滴下されるように、液槽37の上方に配置されている。
【0053】
再生機30は、液槽37内の吸湿性液体Lを第2の供給部35bに供給するための管38を有している。管38にはポンプ39が取り付けられており、液槽37内の吸湿性液体Lを吸い上げる。また、この管38には、加熱源40が取り付けられており、液槽37から吸い上げた吸湿性液体Lを加熱する。第2の供給部35bは、液槽37から吸い上げられた吸湿性液体Lを滴下し、熱交換コイル36において吸湿性液体Lに空気を通すことにより再生処理を行う。このように管38を用いて液槽37内の吸湿性液体Lを循環させることにより、再生機30は、吸湿性液体Lの再生処理を繰り返し行う。
【0054】
また、再生機30は、液槽37に給水を行う給水管41を有する。給水管41上には、バルブ42が設けられており、バルブ42によって給水の制御を行う。
【0055】
液槽37には、第2の吸湿液管路51が接続されている。液槽37の吸湿性液体Lは、第2の吸湿液管路51を通じて処理機10に戻る。再生機30から処理機10に戻る吸湿性液体Lの量は、バルブ53によって調整される。本実施の形態では、バルブ53は、液槽37内の吸湿性液体Lの液面の高さが一定になるように、処理機10へ戻す吸湿性液体Lの量を制御する。再生機30のその他の構成は、処理機10と同じである。
【0056】
調湿装置1は、第1の吸湿液管路50と第2の吸湿液管路51との間で熱交換を行う熱交換器54を有している。この熱交換器54は、処理機10における再冷却の負荷および再生機30における再加熱の負荷の軽減に寄与する。
【0057】
次に、本実施の形態の調湿装置1の動作について説明する。最初に、調湿装置1の動作の概要について述べる。本実施の形態の調湿装置1は、処理機10が調湿空間の空気又は外気を取り込み、取り込んだ空気を吸湿性液体Lに通すことにより、空気と吸湿性液体Lとの間で水分の授受を行なって、空気の湿度を調整し、調湿された空気を調湿空間に排出する。処理機10において湿度調整に用いられた吸湿性液体Lは再生機30に送られ、再生機30にて元の溶液濃度に再生される。
【0058】
以下、除湿処理を例として、調湿装置1の動作を詳しく説明する。調湿装置1にて除湿を行う場合には、ヒートポンプ21は、熱交換コイル16を蒸発器、熱交換コイル36を凝縮器として機能させる。処理機10の液槽17には、溶液濃度の高い吸湿性液体Lを入れておく。
【0059】
処理機10は、液槽17から溶液濃度の高い吸湿性液体Lを吸い上げて、吸湿性液体供給部15に供給する。吸湿性液体供給部15では、吸湿性液体Lを複数のノズルから滴下する。滴下された吸湿性液体Lは、熱交換コイル16に一時的に滞留する。
【0060】
処理機10は、上記の動作と同時に、ファン14を作動させることにより、吸気口12から空気を取り込み、取り込んだ空気を熱交換コイル16に下方から供給する。熱交換コイル16に滞留した溶液濃度の高い吸湿性液体Lと空気とが接触し、空気中の水分が吸湿性液体Lに吸収される。また、熱交換コイル16は、蒸発器として機能しているので、熱交換コイル16によって吸湿性液体Lおよび空気が冷却される。吸湿性液体Lは冷却されることにより、空気中の水分を吸収しやすくなる。また、空気が冷却されると、空気の飽和水蒸気量が減少するので、空気中の水分は吸湿性液体にいっそう吸収されやすくなる。
【0061】
吸湿性液体供給部15から滴下された吸湿性液体Lは、熱交換コイル16のプレートフィン61に付着した後、自重の作用により、プレートフィン61を伝って下方に流れる。プレートフィン61上を流れた吸湿性液体Lは、プレートフィン61の下端でプレートフィン61を離れて落下する。このとき、プレートフィン61から離れる際の吸湿性液体Lは、既にプレートフィン61を伝って流れてきた際の速度を初速度として有している。従って、プレートフィン61の親水性が小さい(即ち、吸湿性液体Lの流れに対する抵抗が小さい)ほど、吸湿性液体Lはプレートフィン61から高速度で落下することになる。プレートフィン61から落下した吸湿性液体Lは、吸収材27に衝突して、吸収材27によって吸収される。吸収材27の吸収容量を超える量の吸湿性液体Lが吸収材27に与えられると、吸収材27に吸収されていた吸湿性液体Lは、吸収材27の下面から滲み出して、液滴となって自由落下する(初速度0で落下する)。
【0062】
このように、吸収材27は、熱交換コイル16のプレートフィン61から初速度をもって落下した吸湿性液体Lを受け止めて吸収することで、熱交換コイル16のプレートフィン61から落下した吸湿性液体Lが液槽17に溜まった吸湿性液体Lの液面に直接当たって飛沫が発生することを防止している。吸収材27から滲み出た吸湿性液体Lは液滴となって自由落下して、液槽17に溜まった吸湿性液体Lの液面に衝突することになるが、その際の落下の初速度は0であるため、衝突時の速度は大きくない。しかも液滴の自由落下が始まる吸収材27の下面は、熱交換コイル16のプレートフィン61の下端よりも低い位置になっているため、プレートフィン61から落下する場合と比較して、落下の際の加速時間が短くなり、衝突時の速度は大きくならない。よって、自由落下した吸湿性液体Lが液槽17に溜まった吸湿性液体Lの液面に衝突しても飛沫は発生しない。
【0063】
処理機10は、上述のようにして、熱交換コイル16を通った吸湿性液体Lを、吸収材27を介して液槽17にて回収する。処理機10は、液槽17の吸湿性液体Lを管18によって吸い上げ、吸湿性液体供給部15から再び吸湿性液体Lを供給する。このように液槽17に入れられた吸湿性液体Lを循環させることにより、吸湿性液体Lを効率的に利用して調湿を行うことができる。
【0064】
処理機10が除湿動作を継続して行うと、吸湿性液体Lは希釈されて、空気中の水分を吸収しにくくなるので、吸湿性液体Lを再生機30によって再生する。調湿装置1は、処理機10の液槽17から吸い出した吸湿性液体Lのうちの一部を第1の吸湿液管路50を通じて再生機30に送る。再生機30に送る吸湿性液体Lの量は、三方バルブ20によって調節する。
【0065】
再生機30は、第1の吸湿液管路50から供給される溶液濃度の低くなった吸湿性液体Lを再生処理する。具体的には、再生機30は、第1の吸湿液管路50を通じて供給された吸湿性液体Lを第1の供給部35aから滴下する。滴下された吸湿性液体Lは、熱交換器36に一時的に滞留される。
【0066】
再生機30は、上記の動作と同時に、ファン34を作動させることにより、外気を取り込み、取り込んだ外気を熱交換コイル36に下方から供給する。熱交換コイル36に滞留した溶液濃度の低い吸湿性液体Lと空気とが接触するため、吸湿性液体Lの水分が空気中に逃げる。また、熱交換コイル36は、凝縮器として機能しているので、熱交換コイル36によって吸湿性液体Lおよび空気が加熱される。吸湿性液体Lは加熱されることにより、吸湿性液体L中の水分が空気中に脱離しやすくなる。また、空気が加熱されると、空気の飽和水蒸気量が増加するので、吸湿性液体L中の水分はいっそう脱離しやすくなる。
【0067】
再生機30は、熱交換コイル36を通った吸湿性液体Lを、吸収材47を介して液槽37にて回収する。再生機30においても、初速度を持って熱交換コイル36から落下した吸湿性液体Lを吸収材47で受け止めて吸収する。吸収材47に吸収された吸湿性液体Lは、吸収材47の下面から滲み出して、液滴となって液槽37に自由落下する。
【0068】
再生機30は、液槽37に入った吸湿性液体Lを管38によって吸い上げる。管38を通じて吸い上げられる吸湿性液体Lは、加熱源40によって加熱される。再生機30は、加熱された吸湿性液体Lを吸湿性液体供給部35bから供給する。このように加熱源40によって加熱されることにより、吸湿性液体Lは、水分がさらに脱離しやすい状態となり、効率的に吸湿性液体Lを再生できる。熱交換コイル36と液槽37との間で吸湿性液体Lが循環することにより、徐々に吸湿性液体Lの濃度が高くなっていく。
【0069】
再生処理が行われた液槽37内の吸湿性液体Lは、第2の吸湿液管路51を通って処理機10に戻る。吸湿性液体Lは、処理機10に戻る途中で、熱交換器54によって、再生機30に向かう吸湿性液体Lと熱交換が行われ、吸湿性液体Lの温度が低下する。以上、本実施の形態の調湿装置1の除湿の動作について説明した。
【0070】
上記では、本実施の形態の調湿装置1の除湿の動作について説明したが、加湿の動作を行う場合には、処理機10と再生機30の役割を入れ替えればよい。具体的には、ヒートポンプ21の熱交換コイル16を凝縮器とし、熱交換コイル36を蒸発器として作動させる。なお、加湿動作における吸湿性液体Lの再生処理としては、バルブ42を開いて給水手段41から水を供給してもよい。
【0071】
本実施の形態の調湿装置1は、熱交換コイル16のプレートフィン61の外側に吸湿性液体Lを滞留させる構成としたので、耐腐食性コーティングを行いやすく、かつコーティングの状態を点検できるという効果がある。従来は、吸湿性液体Lを加熱または冷却する熱交換器は、吸湿性液体Lを運ぶ管路に設けられていたので、耐腐食性コーティングは、管路内で行なわなくてはならなかった。管路は、処理機10の筐体11と比べると非常に小さいので、耐腐食性コーティング処理を行うことや、管路内のコーティングの状況を点検することは容易ではなかった。従来の熱交換器の例では、プレートフィンの間隔は0.3mm程度であり、適切なコーティング処理は困難であった。本実施の形態の調湿装置1は、このような不都合をも解消することができる。
【0072】
本実施の形態の調湿装置1は、上記の利点を有するとともに、熱交換コイル16の下方に吸収材27を設ける構成としたので、熱交換コイル16から落下した吸湿性液体Lの速度を弱めた上で、液槽17に溜められた吸湿性液体Lまで落下させることができる。これにより、充填材を熱交換コイルに替えることによって生じる問題、即ち熱交換コイルを通った吸湿性液体が液槽に溜められた吸湿性液体の液面に高速で衝突して飛沫が発生し、吸湿性液体の微粒子が飛散するという問題を軽減できる。
【0073】
以上、本発明の調湿装置について実施の形態を挙げて詳細に説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではない。
【0074】
上記した実施の形態では、処理機および再生機のいずれもが吸収材を有する例を説明したが、処理機または再生機のいずれか一方のみが吸収材を有してもよい。特に、処理機の排気口が室内に向いており、再生機の排気口が室外に向いている場合には、処理機に吸収材を設けて吸湿性液体の微粒子の室内への飛散の軽減を図るとともに、再生機には吸収材を設けない構成としてもよい。
【0075】
上記した実施の形態では、プレートフィン61を有する熱交換コイル16を例として説明したが、別の構成の熱交換コイルを用いることも可能である。
【0076】
また、上記した実施の形態では、ヒートポンプ21を用いた調湿装置1の例について説明したが、本発明の調湿装置は必ずしもヒートポンプ21を用いる必要はなく、吸湿性液体Lを用いて調湿を行う調湿装置であれば適用することが可能である。
【0077】
図3は、本発明の第1の実施の形態の変形例の調湿装置2の構成を示す図である。図3に示す調湿装置2の基本的な構成は、上記した実施の形態の調湿装置1と同じであるが、図3に示す調湿装置2は、ヒートポンプ21ではなく、処理機10側と再生機30側で異なる熱源25,26を用いている点が異なる。処理機10および再生機30の熱源25,26には、例えば、冷水や温水を供給することにより、吸湿性液体Lと熱交換を行う構成を採用することができる。この構成によっても、上記した実施の形態と同様に、空気と吸湿性液体Lとの間の水分の授受(潜熱交換)と同時に、空気および吸湿性液体Lとヒートポンプの冷媒との間の顕熱交換を行って空気の飽和水蒸気量を変化させることにより、エネルギー利用効率を高めることができる。
【0078】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態の調湿装置3は、第1の実施の形態の調湿装置1と同様に、処理機および再生機からなる。調湿装置3の基本的な構成は、上記した実施の形態の調湿装置1と同じであり、本実施の形態の調湿装置3において、処理機60および再生機70を用いて除湿または加湿を行う方法は、第1の実施の形態の調湿装置1と同じである。本実施の形態の調湿装置3は、処理機60および再生機70の内部で吸湿性液体の微粒子の飛散を軽減する方法が、第1の実施の形態の調湿装置1と異なる。以下では、主に本実施の形態の調湿装置3において、吸湿性液体の微粒子の飛散を軽減する方法を説明する。
【0079】
図4は、第2の実施の形態の調湿装置3の構成を示す図である。図4に示すように、処理機60および再生機70では、除湿または加湿すべき空気を熱交換コイルの側方から筐体内に取り込む構成を有する。
【0080】
以下、本実施の形態の処理機60の構成について説明する。吸気口121は、熱交換コイル16の側方に設けられている。具体的には、吸気口121は、熱交換コイル16の側方の筐体11の側壁に設けられている。吸気口121にはファン141が設けられている。排気口131は、熱交換コイル16を挟んで吸気口121とは反対側の筐体11の側壁に設けられている。排気口131にもファン142が設けられている。
【0081】
熱交換コイル16の下方には、吸収材271が設けられている。吸収材271の構成および作用は、第1の実施例の吸収材27と同じである。本実施の形態の処理機10では、さらに、熱交換コイル16の側方に、通気性を有する吸収材272,273が設けられている。吸収材272は、吸気口121と熱交換コイル16との間に設けられている。吸収材272は、熱交換コイル16の側面全体を覆っている。吸収材273は、排気口131と熱交換コイル16との間に設けられている。吸収材273も同様に、熱交換コイル16の側面全体を覆っている。吸収材272,273は、プレートフィン61の平面方向と交わる熱交換コイル16の側面に臨んでおり、プレートフィン61から側方に流れ出た吸湿性液体Lを受けて吸収する。
【0082】
図4の例では、吸収材272と熱交換コイル16とは接触している。吸収材272が熱交換コイル16に接触していれば、熱交換コイル16と吸収材272との間に、熱交換コイル16の側面から漏れでた吸湿性液体の飛沫が発生する空間がなくなり、より確実に吸湿性液体の微粒子の飛散を軽減できる。吸収材272と熱交換コイル16との間が離れていてもよい。但し、吸収材272と熱交換コイル16との間の距離は、長すぎると、熱交換コイル16から流れ出た吸湿性液体Lが吸収材272に接触せずに液槽17の吸湿性液体Lの液面に直接落下して、飛沫が発生することがある。従って、吸収材272と熱交換コイル16との間の距離は短いほどよい。吸収材272と熱交換コイル16との間の距離が十分に短ければ、熱交換コイル16の側方から流れ出た吸湿性液体Lを確実に吸収材272で受けて吸収できる。収材272と熱交換コイル16とが離れている場合は、これらの要素を考慮して、吸収材272と熱交換コイル16との間の距離が決定される。以上より、吸収材272と熱交換コイル16との間の距離は、0〜10mmが好ましく、さらに好ましくは0〜5mmであり、最も好ましいのは吸収材272と熱交換コイル16とが密着していることである。吸収材273と熱交換コイル16との間の距離も同様である。
【0083】
再生機70も処理機60と同様に、吸気口321は熱交換コイル36の側方にあり、排気口331は熱交換コイル36を挟んで吸気口321とは反対側にある。吸気口321および排気口331には、それぞれファン341,342が設けられている。熱交換コイル36の側方には吸気口321および排気口331に対応して、吸収材472,473が設けられ、熱交換コイルの下方にも吸収材471が設けられる。これらの構成は処理機60と同じである。
【0084】
次に、本実施の形態の調湿装置3の動作について説明する。調湿装置3の動作の概要は、第1の実施の形態の調湿装置1と同様である。処理機60は、液槽17から溶液濃度の高い吸湿性液体Lを吸い上げて、吸湿性液体供給部15に供給する。吸湿性液体供給部15では、吸湿性液体Lを複数のノズルから滴下する。滴下された吸湿性液体Lは、熱交換コイル16に一時的に滞留する。
【0085】
処理機60は、上記の動作と同時に、ファン141とファン142を作動させることにより、吸気口121から除湿または加湿すべき空気を取り込み、取り込んだ空気を、通気性を有する吸収材273を介して熱交換コイル16に側方から供給する。このとき、吸気口121に設けられたファン141によって、空気は横方向(水平方向)の流速を得る。この空気の作用によって、熱交換コイル16のプレートフィン61に滞留した吸湿性液体Lが横方向(水平方向)に流されて、吸気口121とは反対側のプレートフィン61の側端から飛び出す。プレートフィン61の側端から飛び出した吸湿性液体Lは吸収材272に吸収される。
【0086】
吸収材272の吸収容量を超える量の吸湿性液体Lが吸収材272に与えられると、吸収材272に吸収されていた吸湿性液体Lは、吸収材272の下面から滲み出し、液滴となって自由落下する。吸収材272から自由落下した液滴は、液槽17に溜められる。
【0087】
このように、吸収材272は、ファン141によって吹き飛ばされて熱交換コイル16のプレートフィン61の側辺から飛び出した吸湿性液体Lを受け止めて吸収することで、熱交換コイル16のプレートフィン61の側端から吹き飛ばされた吸湿性液体Lが液槽17に溜まった吸湿性液体Lの液面に直接当たって飛沫が発生することを防止している。吸収材272から染み出た吸湿性液体Lは液滴となって自由落下して、液槽17に溜まった吸湿性液体Lの液面に衝突することになるが、その際の落下の初速度は0であるため、衝突時の速度は大きくない。よって、吸収材272の下面から自由落下した吸湿性液体Lが液槽17に溜まった吸湿性液体Lの液面に衝突しても飛沫は発生しない。また、上述のように熱交換コイル16の側面と吸収材272とは密着しているので、それらの間の空間で吸湿性液体Lの飛沫が発生することもない。
【0088】
吸収材273も同様に、熱交換コイル16の吸気口121側から飛び出した吸湿性液体Lを吸収するため、吸湿性液体Lが液槽17に溜まった吸湿性液体Lの液面に直接落ちることはなく、吸湿性液体Lの飛沫の発生を防止する。また、吸収材273と熱交換コイル16とが密着しているため、それらの間の空間で吸湿性液体Lの飛沫が発生することはない。再生機70においても処理機60と同様にして、吸湿性液体Lの飛沫の発生を防止する。
【0089】
上記したように、本実施の形態の調湿装置3によれば、熱交換コイル16のプレートフィン61の平面方向と垂直な側面から飛び出す吸湿性液体Lを吸収材272,273で吸収するため、熱交換コイル16の側方から出た吸湿性液体が液槽に溜められた吸湿性液体Lの液面に直接当たって飛沫が発生することが防止される。
【0090】
なお、本実施の形態では、吸収材272が熱交換コイル16の側面を完全に覆う例を説明したが、本発明はこれに限られない。吸収材272が熱交換コイル16の側面の一部しか覆っていないとしても、吸収材272は、プレートフィン61の側辺の少なくとも一部から吹き飛ばれた吸湿性液体を吸収することができ、その限りにおいて上記と同様の効果を得ることができる。
【0091】
また、上記の実施の形態において、吸収材271〜273を一体的に構成してもよい。さらに、熱交換コイル16の上部にも吸収材を設けて、吸収材が熱交換コイル16の全周を取り巻くようにしてもよい。このとき、熱交換コイルの全周を取り巻く吸収材を一体的に構成してもよい。また、吸気口121側の吸収材273を設けない構成としてもよく、熱交換コイル16下方の吸収材271を設けない構成としてもよい。
【0092】
上記の実施の形態では、排気口131を熱交換コイル16の側方に設けたが、第1の実施の形態と同様に排気口131を筐体11の上面に設ける構成としてもよい。
【0093】
(第3の実施の形態)
図5は、第4の実施の形態の熱交換コイル161の断面図である。熱交換コイル161では、第1および第2の実施の形態の熱交換コイル16と同様に、複数のプレートフィン61が並行に配列されている。隣接するプレートフィン61のそれぞれの間には吸収材274が挿入されている。
【0094】
上方から熱交換コイル161に向けて滴下された吸湿性液体Lは、プレートフィン61の間に挿入された吸収材274に吸収される。吸収材274に吸収された吸湿性液体Lの量が増加すると、吸湿性液体Lは吸収材274の下面から液滴となって自由落下する。吸収材274から落下した液滴は、液槽17に溜められる。
【0095】
本実施の形態の熱交換コイル161は、第1の実施の形態の調湿装置1のように空気を下から上(カウンタ方向)に流すタイプの調湿装置にも、第2の実施の形態の調湿装置3のように空気を横方向(クロス方向)に流すタイプの調湿装置にも適用できる。
【0096】
本実施の形態の熱交換コイル161では、吸湿性液体供給部15から滴下された吸湿性液体Lが吸収材274の中を重力方向に進んで熱交換コイル161の下面から滲み出て、液槽17に落下する。熱交換コイル161の下面から落下するときの吸湿性液体Lの液滴の初速は0である。よって、液滴が液槽17に溜められた吸湿性液体Lの液面に当たっても飛沫は生じない。
【0097】
また、本実施の形態の熱交換コイル161では、吸収材274によって、吸湿性液体Lが熱交換コイル161内に保持される。これにより、熱交換コイル16内での吸湿性液体Lの滞留時間が長くなり、吸湿性液体Lが空気と接触する時間が長くなるので、エネルギー利用効率が向上する。
【0098】
このように、本実施の形態の熱交換コイル161は、吸湿性液体の滞留時間を長くするとともに、滞留している吸湿性液体の温度を低温または高温に維持するので、空気との水分の授受の効率を向上できる。これにより、除湿または加湿すべき空気の量に対する吸湿性液体の滴下量を減らすことができる。
【0099】
なお、本実施の形態では、熱交換コイル161のプレートフィン61の間を充填するようにして吸収材274が挿入されたが、本発明はこれに限られない。例えば、プレートフィン61の両表面に吸収材274が貼り付けられて、隣り合うプレートフィン61の対抗する面にそれぞれ貼り付けられた吸収材同士の間に隙間があってもよい。
【0100】
また、本実施の形態では、熱交換コイルの161の上下方向の長さにほぼ対応する長さの吸収材274がプレートフィン61の隙間に挿入されたが、吸収材は例えばプレートフィン61の隙間の下半分の部分のみに挿入されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、吸湿性液体を熱交換コイルに一時的に滞留し、熱交換コイルにて加熱または冷却をしながら、吸湿性液体に空気を通すとともに、吸収材によって吸湿性液体の落下速度を低下させることにより、エネルギー利用効率を向上でき、かつ吸湿性液体の飛散を軽減できるという効果を有し、吸湿性液体を用いて調湿を行う調湿装置等として有用である。
【符号の説明】
【0102】
1,2,3 調湿装置
10,60 処理機
11 筐体
12,121 吸気口
13,131 排気口
14,141,142 ファン
15 吸湿性液体供給部
16 熱交換コイル
17 液槽
18 管
19 ポンプ
20 三方バルブ
21 ヒートポンプ
22 圧縮機
23 膨張弁
24 冷媒管
27,271〜274 吸収材
30,70 再生機
31 筐体
32 吸気口
33 排気口
34,341,342 ファン
35 吸湿性液体供給部
36 熱交換コイル
37 液槽
38 管
39 ポンプ
40 加熱源
41 給水管
42 バルブ
47,471〜473 吸収材
50 第1の吸湿液管路
51 第2の吸湿液管路
52 ポンプ
53 バルブ
54 熱交換器
61 プレートフィン
62 伝熱管
63,64 ヘッダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調湿空間の湿度を調整する調湿装置であって、
空気を取り込む吸気口および調湿処理後の空気を調湿空間に排出する排気口を有する筐体と、
空気との間で水分の授受を行う吸湿性液体を供給する吸湿性液体供給部と、
前記吸湿性液体供給部から供給された吸湿性液体を空気と接触させるために吸湿性液体を一時的に滞留させると共に、空気および吸湿性液体を加熱または冷却する熱交換コイルと、
前記吸湿性液体供給部から供給されて前記熱交換コイルを通った吸湿性液体を入れる液槽と、
前記熱交換コイルに供給された後の吸湿性液体をいったん吸収し、滲み出した吸湿性液体が液槽に落ちるように配置された吸収材と、
を備える調湿装置。
【請求項2】
前記吸収材は、前記熱交換コイルにおける空気の通気面に対応して設けられる請求項1に記載の調湿装置。
【請求項3】
前記吸収材は、前記熱交換コイルの下方に設けられ、
前記熱交換コイルから落ちた吸湿性液体が、前記吸収材を通った後に、前記液槽に入る請求項1または2に記載の調湿装置。
【請求項4】
前記吸収材と前記熱交換コイルは密着している請求項3に記載の調湿装置。
【請求項5】
前記吸湿性液体供給部は、前記吸湿性液体を前記熱交換コイルの上方から供給し、
前記吸気口は、前記吸収材と前記液槽との間の前記筐体の側面に設けられ、
前記吸収材は、通気性を有し、
前記吸気口を通じて取り込んだ空気を、前記吸収材を通して前記熱交換コイルの下方から供給する請求項3に記載の調湿装置。
【請求項6】
前記吸湿性液体供給部は、前記吸湿性液体を前記熱交換コイルの上方から供給し、
前記吸気口は、前記熱交換コイルの側方に設けられ、
前記吸収材は、前記吸気口とは反対側の前記熱交換コイルの側方に設けられ、
前記吸気口を通じて取り込んだ空気を、前記熱交換コイルの側方から供給する請求項1または2に記載の調湿装置。
【請求項7】
前記吸収材と前記熱交換コイルは密着している請求項6に記載の調湿装置。
【請求項8】
前記吸収材は、通気性を有し、前記熱交換コイルと前記吸気口との間にも設けられ、前記吸気口を通じて取り込んだ空気を、前記熱交換コイルと前記吸気口との間の前記吸収材を通して前記熱交換コイルの側方から供給する請求項6に記載の調湿装置。
【請求項9】
前記吸収材の厚さは、1〜300mmである請求項1〜8のいずれかに記載の調湿装置。
【請求項10】
前記吸収材は、前記熱交換コイルの内部に設けられ、
前記吸湿性液体供給部から供給された吸湿性液体は、前記吸収材に吸収されることで、前記熱コイル内に一時的に滞留する請求項1に記載の調湿装置。
【請求項11】
前記吸収材は、多孔質スポンジまたは織布である請求項1〜10のいずれかに記載の調湿装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−64359(P2011−64359A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213637(P2009−213637)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【特許番号】特許第4536147号(P4536147)
【特許公報発行日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(504430008)ダイナエアー株式会社 (6)