調理釜用ヒータモジュール
【課題】メンテナンス性に優れた調理釜用ヒータモジュールを提供する。
【解決手段】調理釜60の裏面に接する凹曲面形状をした伝熱板20と、伝熱板20の裏面に装着されたヒータ30と、前記伝熱板20の裏面に装着され、前記伝熱板20と共にヒータを収容する収容体を構成する裏面カバー40と、を備える。この構成では、伝熱板20と裏面カバー40がヒータ30を収容する収容体を構成する。そのため、食材や調理材料がヒータ等に付着等することがない。そのため、ヒータ30が汚れ難くメンテナンス性がよい。
【解決手段】調理釜60の裏面に接する凹曲面形状をした伝熱板20と、伝熱板20の裏面に装着されたヒータ30と、前記伝熱板20の裏面に装着され、前記伝熱板20と共にヒータを収容する収容体を構成する裏面カバー40と、を備える。この構成では、伝熱板20と裏面カバー40がヒータ30を収容する収容体を構成する。そのため、食材や調理材料がヒータ等に付着等することがない。そのため、ヒータ30が汚れ難くメンテナンス性がよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品製造装置の調理釜の加熱に使用される調理釜用ヒータモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、業務用調理釜の加熱はガスバーナが主流となっていた。近年では、熱源をガスから電気に転換する試みがされている。下記特許文献1には、家庭等で使用される調理釜において、内釜と外釜で釜本体を形成し、内釜と外釜の間に内釜を加熱するヒータを配置したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平8−4899公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構造では、内釜を外釜から取り外した時にヒータが露出するので、取り外した内釜から零れた食材がヒータに付着することがある。そのため、ヒータが汚れ易く、メンテナンス性が悪い。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、メンテナンス性に優れた調理釜用ヒータモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、調理釜の裏面に接する凹曲面形状をした伝熱板と、伝熱板の裏面に装着されたヒータと、前記伝熱板の裏面に装着され、前記伝熱板と共にヒータを収容する収容体を構成する裏面カバーと、を備える。この構成では、伝熱板と裏面カバーがヒータを収容する収容体を構成する。そのため、食材や調理材料がヒータに付着することがない。そのため、ヒータが汚れ難く手入れをする必要がほとんどない。よって、メンテナンス性がよい。
【0006】
この発明の実施態様として以下の構成が好ましい。
・前記伝熱板の底面中央部に、前記裏面カバーを貫通する排出路を設ける。このようにしておけば、調理釜から伝熱板上に落ちる食材や料理材料などの落下物を、排出路を通じて排出できる。そのため、伝熱板に対して調理釜をセットした時に、伝熱板に調理釜を隙間なく密着させることが可能となる。逆の言い方をすると、仮に排出路がなく落下物が伝熱板上に残っていると、落下物が鍋と伝熱板との間に隙間を作るので熱伝導効率が低下する恐れがあるが、本発明であれば、そのような心配がない。
【0007】
・前記伝熱板の凹曲面に対して赤外線放射塗料を塗布する。このようにすれば、赤外線放射塗料の輻射効果により、伝熱板から調理釜への熱の伝達効率が一層高まる。
【0008】
・前記伝熱板と前記裏面カバーとの間に断熱材を設ける。このようにすれば、熱が逃げ難くなるので、熱の利用効率が高くなる。
【0009】
・前記伝熱板と前記伝熱板の裏面に装着されたヒータを密着させるための押さえ板を設ける。このようにすれば、伝熱板に対するヒータの密着性を高めることが可能となるので、ヒータから伝熱板への熱伝達のロスを抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、メンテナンス性に優れる調理釜用ヒータモジュールを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態1における調理釜用ヒータモジュールの分解斜視図
【図2】調理釜用ヒータモジュールと調理釜の関係を示す図
【図3】調理釜用ヒータモジュールの底面図(図2を下方側から見た図)
【図4】伝熱板に対するヒータの取り付け構造を示す図
【図5】調理釜用ヒータモジュールの断面図
【図6】調理釜用ヒータモジュールに調理釜をセットした状態を示す断面図
【図7】飴煮炊き装置Mの正面図
【図8】飴煮炊き装置Mの側面図(調理釜の調理位置を示す)
【図9】飴煮炊き装置Mの正面図
【図10】飴煮炊き装置Mの側面図
【図11】飴煮炊き装置Mの側面図(調理釜の移替位置を示す)
【図12】実施形態2における調理釜用ヒータモジュールの分解斜視図
【図13】調理釜用ヒータモジュールの底面図(図12を下方側から見た図)
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図11によって説明する。
1.調理釜用ヒータモジュールの構造説明
【0013】
調理釜用ヒータモジュール10は、伝熱板20と、ヒータ30と、裏面カバー40と、断熱材50と、から構成されている。伝熱板20は、例えば、インコネル等の高耐熱耐食合金製である。伝熱板20は、図1に示すように凹曲面形状をしていて、外周側には全周にフランジ21が形成されている。伝熱板20の凹曲面形状は、図2に示す調理釜60の底面61の凸曲面形状に倣っていて(すなわち凹凸のみ逆の曲面形状)、調理釜60の底面61が隙間なく密着する構造となっている。
【0014】
また、伝熱板20の底面中央部には排出管路(本発明の「排出路」に相当)25が形成されている。排出管路25は、伝熱板20の底面から下向きに延びる円管状とされる。この排出管路25は裏面カバーの貫通孔45を貫通して裏面カバー40より突出する構成となっている。
【0015】
ヒータ30は金属パイプの中心に発熱体であるニクロム抵抗線を挿入したヒーズヒータであり、円管状をなす。図1〜図3に示すように、ヒータ30は、外形寸法の異なる複数本が使用されており、伝熱板20の裏面20B側において同芯円状に概ね等間隔で配置されている。具体的には、伝熱板20の裏面20Bに対して隙間を空けないように密着状に配置されている。各ヒータ30は個々に通電されるようになっていて、ヒータ端部の端子部に絶縁性の樹脂チューブBを介して電源線Lがそれぞれ接続されている。尚、実施形態1では、複数個所を座金33で止めることで、ヒータ30を伝熱板20に固定している。すなわち、図4に示すように、伝熱板20の裏面に溶接したナットに対して、座金(概ね円形の亀座金)33を、ヒータ30を挟んだ状態でビス留めすることにより、伝熱板20にヒータ30を固定している。尚、図3では、ヒータ30を止める複数の座金33のうち、一部のみを図示し残りは省略されている。
【0016】
裏面カバー40は、例えばステンレス製であり、底面が中央に向かってなだらかに傾斜するような逆円錐形状をしている。裏面カバー40の中央部には、伝熱板20の排出管路25を貫通させるための貫通孔45が形成されると共に、外周部には周壁41が設けられている。
【0017】
図1、図2に示すように、裏面カバー40は、伝熱板20の裏面20B側に下方から装着され、周壁41の上端部を伝熱板20のフランジ21に固定することにより、伝熱板20に固定される。そして、裏面カバー40は、伝熱板20の裏面に装着されたヒータ30を包囲する大きさとなっていて、伝熱板20と共にヒータ30を収容する収容体を構成する。
【0018】
裏面カバー40と伝熱板20との間には断熱材50が介挿されている。断熱材50は、例えば、セラミックフェルト等の無機フェルト材料からなり、伝熱板20の裏面20Bに設置されたヒータ30の全体を覆う構成となっている。また、裏面カバー40には開口44が形成されている。この開口44は、収容されたヒータ30を通電するための電源線Lの挿通用である。
【0019】
上記した調理釜用ヒータモジュール10では、図2に示すように調理釜60を伝熱板20上に重ねると、図6に示すように調理釜60の底面61に伝熱板20の表面20Fが隙間なく密着する。そのため、ヒータ30の熱を、伝熱板20を介して調理釜60に伝えることが可能であり、調理釜60を加熱できる。
【0020】
また、この実施形態では、伝熱板20の凹曲面たる表面20Fと調理釜60の底面61には、それぞれ赤外線放射塗料を全面に塗布している。このような構成(伝熱板20と調理釜60の合わせ面に赤外線放射塗料を塗布する構成)としておくことで、赤外線放射塗料の輻射効果により、伝熱板20から調理釜60への熱の伝達効率を高めることが可能となり、調理釜用ヒータモジュール10の加熱性能を高めることが可能となる。
【0021】
2.飴の製造工程で使用される飴煮炊き装置M
キャンデーなどの飴は、水飴や砂糖などの原料を調合する工程(原料調合工程)、調合した原料を煮詰める工程(煮詰め工程)、煮詰めた原料に味付けをする工程(味付け工程)、味付けした原料を練る工程(練工程)、練られた原料を型抜きする工程(型抜き工程)などの各工程を経て製造される。
【0022】
飴煮炊き装置Mは煮詰め工程にて原料を煮詰めるものである。当飴煮炊き装置Mは、銅製の調理釜60と、調理釜60を密閉閉止する蓋部材70と、調理釜60の熱源となる調理釜用ヒータモジュール10などを含み、調理釜60、蓋部材70、調理釜用ヒータモジュール10がそれぞれ斜め方向、又は上下方向に可動する構成となっている。
【0023】
具体的に説明すると、図7に示すように、ベースパネル80上には、調理釜用ヒータモジュール10が配置されている。調理釜用ヒータモジュール10は、左右一対の一対のエアシリンダ83によって支えられた状態で配置されていて、エアシリンダ83の作動により上下動可能となっている。
【0024】
また、ベースパネル80には一対の支柱85が、調理釜用ヒータモジュール10の左右両側に位置して設けられている。支柱85のうち、図7に示す左側の支柱には、ロッドレスシリンダ87が、縦向きに取り付けられている。このロッドレスシリンダ87は、調理釜60を閉止する蓋部材70を上下移動させるものであり、蓋部材70に設けられたブラケット73に対して、可動体88を下から当接させている。
【0025】
また、支柱85の上端部には、左右の支柱を橋渡すようにして連結軸91が設けられている。連結軸91の両側には、スプロケット92が設けられており、各スプロケット92にバランスチェーン93が掛けられている。バランスチェーン93の一端はウエイト95に固定され、他端は蓋部材70に設けられたブラケット73に固定されている。これら連結軸91、スプロケット92、バランスチェーン93は、カウンタバランス機構を構成しており、調理釜60を閉止する蓋部材70の上下移動をアシストする機能を果たす。
【0026】
また、飴煮炊き装置Mには、ベルト駆動方式の移動装置100が設けられている。移動装置100は、調理釜60を、図8に示す調理位置(原料を煮詰める作業が行われる位置)と、図11に示す移替位置(煮詰めた原料を次工程の釜120に移し替える位置)とに、斜め移動させるものであり、ベースパネル80上に設けられた支持フレーム110に取り付けられている。また、この移動装置100は回転機構(図略)を付設していて、図11に示す移替位置にて調理釜60を回転させ得る構成となっている。
【0027】
上記した飴煮炊き装置Mは、調理釜60を図8に示す調理位置に位置させた状態からエアシリンダ83により調理釜用ヒータモジュール10を持ち上げると、調理釜60の底面61に対して調理釜用ヒータ30の伝熱板20の表面20Fが概ね隙間なく密着する。従って、その状態から調理釜用ヒータモジュール10のヒータ30を通電すれば、伝熱板20からの熱伝導と輻射熱の作用により調理釜60を加熱することが可能であり、調理釜60に投入された飴の原料を煮詰めることができる。
【0028】
調理釜用ヒータモジュール10は、ヒータ30の表面温度を概ね700℃にまで加熱することが可能であり、そのとき、伝導板20の表面温度は650℃、調理釜表面温度は130℃〜210℃となる。本実施形態では、調理釜表面温度を130℃〜210℃にした状態で、飴の原料の煮炊きを概ね30分程度行うこととしている。無論、このとき、蓋部材70にて調理釜60を蓋した状態で煮炊きを行う。
【0029】
そして、飴の原料の煮炊きが終了したら、エアシリンダ83とロッドレスシリンダ87をそれぞれ作動させて、調理用ヒータモジュール10を下降させる一方、蓋部材70を上昇させることで、調理釜60を図8に示す調理位置から図11に示す移替位置へ移動可能となる。あとは、移動装置100を作動させて、調理釜60を調理位置から移替位置へ移動させた後、移替位置にて調理釜を回転させることで、煮炊き済みの飴の原料を、次工程の釜120に移し替えることが出来る。
【0030】
3.効果説明
調理釜用ヒータモジュール10は、伝熱板20と裏面カバー40がヒータ30を収容する収容体を構成する。そのため、調理釜60にて煮詰める原料がヒータ30に付着しない。例えば、蓋部材70に攪拌用の羽根(図略)を設けている場合には、煮詰めた原料を次工程の釜120に移し替えるべく、調理釜60を調理位置から移替位置に移動させる時に、蓋部材70側の羽根に付着した原料が、調理釜用ヒータモジュール10上に垂れ落ちる。しかし、本実施形態では、原料は全て伝熱板20上に垂れ落ちるので、そのような原料がヒータ30に付着する恐れがない。そのため、ヒータ30の手入れをする必要がほとんどないことから、メンテナンス性がよい。
【0031】
また、伝熱板20の底面中央部に、裏面カバー40を貫通する排出管路25を設けてあるので、仮に伝熱板20上に原料が垂れても、図5にて示すように垂れた原料Uを、排出管路25を通じて排出できる。そのため、次に、調理釜60に伝熱板20を重ね合わせた時に、伝熱板20に調理釜60を隙間なく密着させることが可能となる。逆の言い方をすると、仮に排出管路25がなく原料が伝熱板20の底面に溜まっていると、溜まった原料が、調理釜60と伝熱板20との間に隙間を作るので、熱伝導効率が低下する恐れがある。この点、本実施形態であれば、そのような心配がない。また、排出管路25は伝熱板20を水洗いする際の排水路としても機能するので、洗浄水の水切りを短時間で行うことが可能であり、メンテナンス性が一層よい。
【0032】
また、本実施形態では、伝熱板20の凹曲面に対して赤外線放射塗料を塗布している。このようにすれば、赤外線放射塗料の輻射効果により、伝熱板20から調理釜60への熱の伝達効率が高まる。また、伝熱板20と裏面カバー40との間に断熱材50を設けてあるので、ヒータ30の熱が外部に逃げ難くなる。よって、熱の利用効率も高い。
【0033】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図12、図13によって説明する。
実施形態1では、伝熱板20に対するヒータ30の固定方法として、円形の亀座金33を用いる固定方法を例示した(図4参照)。伝熱板20に対するヒータ30の固定は、例えば、図12に示すように、平板状の押さえ板(金属板)151〜153を用いることが可能である。この実施形態では、扇型をなす3枚の押さえ板151〜153を用いて、開口44の形成された箇所を除く、ほぼ全面を、伝熱板20側に押さえ付けたヒータ30を伝熱板20に固定する。このような構成とすることで、伝熱板20に対するヒータ30の密着性を高めることが可能となるので、ヒータ30から伝熱板20への熱伝達のロスを抑えることが可能となる。尚、押さえ板151〜153の伝熱板20に対する固定の仕方は、実施形態1の座金33と同様にビス留め等でよい。
【0034】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0035】
(1)実施形態1、2では、調理釜用ヒータモジュールを、飴煮炊き用の調理釜60に適用した例を示したが、調理用ヒータモジュールは、調理に使用される調理釜の加熱用であれば広く使用することが可能であり、例えば、大型回転釜、中華鍋用コンロなどに使用できる。
【0036】
(2)実施形態1、2では、伝熱板20をインコネル製、裏面カバー40の材質をステンレス製とした。伝熱板20、裏面カバー40の材質は実施形態1、2にて例示したものの他に、SUS316、SUS304などを使用することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
10…調理釜用ヒータモジュール
20…伝熱板
25…排出管路(本発明の「排出路」に相当)
30…ヒータ
40…裏面カバー
60…調理釜
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品製造装置の調理釜の加熱に使用される調理釜用ヒータモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、業務用調理釜の加熱はガスバーナが主流となっていた。近年では、熱源をガスから電気に転換する試みがされている。下記特許文献1には、家庭等で使用される調理釜において、内釜と外釜で釜本体を形成し、内釜と外釜の間に内釜を加熱するヒータを配置したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平8−4899公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構造では、内釜を外釜から取り外した時にヒータが露出するので、取り外した内釜から零れた食材がヒータに付着することがある。そのため、ヒータが汚れ易く、メンテナンス性が悪い。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、メンテナンス性に優れた調理釜用ヒータモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、調理釜の裏面に接する凹曲面形状をした伝熱板と、伝熱板の裏面に装着されたヒータと、前記伝熱板の裏面に装着され、前記伝熱板と共にヒータを収容する収容体を構成する裏面カバーと、を備える。この構成では、伝熱板と裏面カバーがヒータを収容する収容体を構成する。そのため、食材や調理材料がヒータに付着することがない。そのため、ヒータが汚れ難く手入れをする必要がほとんどない。よって、メンテナンス性がよい。
【0006】
この発明の実施態様として以下の構成が好ましい。
・前記伝熱板の底面中央部に、前記裏面カバーを貫通する排出路を設ける。このようにしておけば、調理釜から伝熱板上に落ちる食材や料理材料などの落下物を、排出路を通じて排出できる。そのため、伝熱板に対して調理釜をセットした時に、伝熱板に調理釜を隙間なく密着させることが可能となる。逆の言い方をすると、仮に排出路がなく落下物が伝熱板上に残っていると、落下物が鍋と伝熱板との間に隙間を作るので熱伝導効率が低下する恐れがあるが、本発明であれば、そのような心配がない。
【0007】
・前記伝熱板の凹曲面に対して赤外線放射塗料を塗布する。このようにすれば、赤外線放射塗料の輻射効果により、伝熱板から調理釜への熱の伝達効率が一層高まる。
【0008】
・前記伝熱板と前記裏面カバーとの間に断熱材を設ける。このようにすれば、熱が逃げ難くなるので、熱の利用効率が高くなる。
【0009】
・前記伝熱板と前記伝熱板の裏面に装着されたヒータを密着させるための押さえ板を設ける。このようにすれば、伝熱板に対するヒータの密着性を高めることが可能となるので、ヒータから伝熱板への熱伝達のロスを抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、メンテナンス性に優れる調理釜用ヒータモジュールを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態1における調理釜用ヒータモジュールの分解斜視図
【図2】調理釜用ヒータモジュールと調理釜の関係を示す図
【図3】調理釜用ヒータモジュールの底面図(図2を下方側から見た図)
【図4】伝熱板に対するヒータの取り付け構造を示す図
【図5】調理釜用ヒータモジュールの断面図
【図6】調理釜用ヒータモジュールに調理釜をセットした状態を示す断面図
【図7】飴煮炊き装置Mの正面図
【図8】飴煮炊き装置Mの側面図(調理釜の調理位置を示す)
【図9】飴煮炊き装置Mの正面図
【図10】飴煮炊き装置Mの側面図
【図11】飴煮炊き装置Mの側面図(調理釜の移替位置を示す)
【図12】実施形態2における調理釜用ヒータモジュールの分解斜視図
【図13】調理釜用ヒータモジュールの底面図(図12を下方側から見た図)
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図11によって説明する。
1.調理釜用ヒータモジュールの構造説明
【0013】
調理釜用ヒータモジュール10は、伝熱板20と、ヒータ30と、裏面カバー40と、断熱材50と、から構成されている。伝熱板20は、例えば、インコネル等の高耐熱耐食合金製である。伝熱板20は、図1に示すように凹曲面形状をしていて、外周側には全周にフランジ21が形成されている。伝熱板20の凹曲面形状は、図2に示す調理釜60の底面61の凸曲面形状に倣っていて(すなわち凹凸のみ逆の曲面形状)、調理釜60の底面61が隙間なく密着する構造となっている。
【0014】
また、伝熱板20の底面中央部には排出管路(本発明の「排出路」に相当)25が形成されている。排出管路25は、伝熱板20の底面から下向きに延びる円管状とされる。この排出管路25は裏面カバーの貫通孔45を貫通して裏面カバー40より突出する構成となっている。
【0015】
ヒータ30は金属パイプの中心に発熱体であるニクロム抵抗線を挿入したヒーズヒータであり、円管状をなす。図1〜図3に示すように、ヒータ30は、外形寸法の異なる複数本が使用されており、伝熱板20の裏面20B側において同芯円状に概ね等間隔で配置されている。具体的には、伝熱板20の裏面20Bに対して隙間を空けないように密着状に配置されている。各ヒータ30は個々に通電されるようになっていて、ヒータ端部の端子部に絶縁性の樹脂チューブBを介して電源線Lがそれぞれ接続されている。尚、実施形態1では、複数個所を座金33で止めることで、ヒータ30を伝熱板20に固定している。すなわち、図4に示すように、伝熱板20の裏面に溶接したナットに対して、座金(概ね円形の亀座金)33を、ヒータ30を挟んだ状態でビス留めすることにより、伝熱板20にヒータ30を固定している。尚、図3では、ヒータ30を止める複数の座金33のうち、一部のみを図示し残りは省略されている。
【0016】
裏面カバー40は、例えばステンレス製であり、底面が中央に向かってなだらかに傾斜するような逆円錐形状をしている。裏面カバー40の中央部には、伝熱板20の排出管路25を貫通させるための貫通孔45が形成されると共に、外周部には周壁41が設けられている。
【0017】
図1、図2に示すように、裏面カバー40は、伝熱板20の裏面20B側に下方から装着され、周壁41の上端部を伝熱板20のフランジ21に固定することにより、伝熱板20に固定される。そして、裏面カバー40は、伝熱板20の裏面に装着されたヒータ30を包囲する大きさとなっていて、伝熱板20と共にヒータ30を収容する収容体を構成する。
【0018】
裏面カバー40と伝熱板20との間には断熱材50が介挿されている。断熱材50は、例えば、セラミックフェルト等の無機フェルト材料からなり、伝熱板20の裏面20Bに設置されたヒータ30の全体を覆う構成となっている。また、裏面カバー40には開口44が形成されている。この開口44は、収容されたヒータ30を通電するための電源線Lの挿通用である。
【0019】
上記した調理釜用ヒータモジュール10では、図2に示すように調理釜60を伝熱板20上に重ねると、図6に示すように調理釜60の底面61に伝熱板20の表面20Fが隙間なく密着する。そのため、ヒータ30の熱を、伝熱板20を介して調理釜60に伝えることが可能であり、調理釜60を加熱できる。
【0020】
また、この実施形態では、伝熱板20の凹曲面たる表面20Fと調理釜60の底面61には、それぞれ赤外線放射塗料を全面に塗布している。このような構成(伝熱板20と調理釜60の合わせ面に赤外線放射塗料を塗布する構成)としておくことで、赤外線放射塗料の輻射効果により、伝熱板20から調理釜60への熱の伝達効率を高めることが可能となり、調理釜用ヒータモジュール10の加熱性能を高めることが可能となる。
【0021】
2.飴の製造工程で使用される飴煮炊き装置M
キャンデーなどの飴は、水飴や砂糖などの原料を調合する工程(原料調合工程)、調合した原料を煮詰める工程(煮詰め工程)、煮詰めた原料に味付けをする工程(味付け工程)、味付けした原料を練る工程(練工程)、練られた原料を型抜きする工程(型抜き工程)などの各工程を経て製造される。
【0022】
飴煮炊き装置Mは煮詰め工程にて原料を煮詰めるものである。当飴煮炊き装置Mは、銅製の調理釜60と、調理釜60を密閉閉止する蓋部材70と、調理釜60の熱源となる調理釜用ヒータモジュール10などを含み、調理釜60、蓋部材70、調理釜用ヒータモジュール10がそれぞれ斜め方向、又は上下方向に可動する構成となっている。
【0023】
具体的に説明すると、図7に示すように、ベースパネル80上には、調理釜用ヒータモジュール10が配置されている。調理釜用ヒータモジュール10は、左右一対の一対のエアシリンダ83によって支えられた状態で配置されていて、エアシリンダ83の作動により上下動可能となっている。
【0024】
また、ベースパネル80には一対の支柱85が、調理釜用ヒータモジュール10の左右両側に位置して設けられている。支柱85のうち、図7に示す左側の支柱には、ロッドレスシリンダ87が、縦向きに取り付けられている。このロッドレスシリンダ87は、調理釜60を閉止する蓋部材70を上下移動させるものであり、蓋部材70に設けられたブラケット73に対して、可動体88を下から当接させている。
【0025】
また、支柱85の上端部には、左右の支柱を橋渡すようにして連結軸91が設けられている。連結軸91の両側には、スプロケット92が設けられており、各スプロケット92にバランスチェーン93が掛けられている。バランスチェーン93の一端はウエイト95に固定され、他端は蓋部材70に設けられたブラケット73に固定されている。これら連結軸91、スプロケット92、バランスチェーン93は、カウンタバランス機構を構成しており、調理釜60を閉止する蓋部材70の上下移動をアシストする機能を果たす。
【0026】
また、飴煮炊き装置Mには、ベルト駆動方式の移動装置100が設けられている。移動装置100は、調理釜60を、図8に示す調理位置(原料を煮詰める作業が行われる位置)と、図11に示す移替位置(煮詰めた原料を次工程の釜120に移し替える位置)とに、斜め移動させるものであり、ベースパネル80上に設けられた支持フレーム110に取り付けられている。また、この移動装置100は回転機構(図略)を付設していて、図11に示す移替位置にて調理釜60を回転させ得る構成となっている。
【0027】
上記した飴煮炊き装置Mは、調理釜60を図8に示す調理位置に位置させた状態からエアシリンダ83により調理釜用ヒータモジュール10を持ち上げると、調理釜60の底面61に対して調理釜用ヒータ30の伝熱板20の表面20Fが概ね隙間なく密着する。従って、その状態から調理釜用ヒータモジュール10のヒータ30を通電すれば、伝熱板20からの熱伝導と輻射熱の作用により調理釜60を加熱することが可能であり、調理釜60に投入された飴の原料を煮詰めることができる。
【0028】
調理釜用ヒータモジュール10は、ヒータ30の表面温度を概ね700℃にまで加熱することが可能であり、そのとき、伝導板20の表面温度は650℃、調理釜表面温度は130℃〜210℃となる。本実施形態では、調理釜表面温度を130℃〜210℃にした状態で、飴の原料の煮炊きを概ね30分程度行うこととしている。無論、このとき、蓋部材70にて調理釜60を蓋した状態で煮炊きを行う。
【0029】
そして、飴の原料の煮炊きが終了したら、エアシリンダ83とロッドレスシリンダ87をそれぞれ作動させて、調理用ヒータモジュール10を下降させる一方、蓋部材70を上昇させることで、調理釜60を図8に示す調理位置から図11に示す移替位置へ移動可能となる。あとは、移動装置100を作動させて、調理釜60を調理位置から移替位置へ移動させた後、移替位置にて調理釜を回転させることで、煮炊き済みの飴の原料を、次工程の釜120に移し替えることが出来る。
【0030】
3.効果説明
調理釜用ヒータモジュール10は、伝熱板20と裏面カバー40がヒータ30を収容する収容体を構成する。そのため、調理釜60にて煮詰める原料がヒータ30に付着しない。例えば、蓋部材70に攪拌用の羽根(図略)を設けている場合には、煮詰めた原料を次工程の釜120に移し替えるべく、調理釜60を調理位置から移替位置に移動させる時に、蓋部材70側の羽根に付着した原料が、調理釜用ヒータモジュール10上に垂れ落ちる。しかし、本実施形態では、原料は全て伝熱板20上に垂れ落ちるので、そのような原料がヒータ30に付着する恐れがない。そのため、ヒータ30の手入れをする必要がほとんどないことから、メンテナンス性がよい。
【0031】
また、伝熱板20の底面中央部に、裏面カバー40を貫通する排出管路25を設けてあるので、仮に伝熱板20上に原料が垂れても、図5にて示すように垂れた原料Uを、排出管路25を通じて排出できる。そのため、次に、調理釜60に伝熱板20を重ね合わせた時に、伝熱板20に調理釜60を隙間なく密着させることが可能となる。逆の言い方をすると、仮に排出管路25がなく原料が伝熱板20の底面に溜まっていると、溜まった原料が、調理釜60と伝熱板20との間に隙間を作るので、熱伝導効率が低下する恐れがある。この点、本実施形態であれば、そのような心配がない。また、排出管路25は伝熱板20を水洗いする際の排水路としても機能するので、洗浄水の水切りを短時間で行うことが可能であり、メンテナンス性が一層よい。
【0032】
また、本実施形態では、伝熱板20の凹曲面に対して赤外線放射塗料を塗布している。このようにすれば、赤外線放射塗料の輻射効果により、伝熱板20から調理釜60への熱の伝達効率が高まる。また、伝熱板20と裏面カバー40との間に断熱材50を設けてあるので、ヒータ30の熱が外部に逃げ難くなる。よって、熱の利用効率も高い。
【0033】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図12、図13によって説明する。
実施形態1では、伝熱板20に対するヒータ30の固定方法として、円形の亀座金33を用いる固定方法を例示した(図4参照)。伝熱板20に対するヒータ30の固定は、例えば、図12に示すように、平板状の押さえ板(金属板)151〜153を用いることが可能である。この実施形態では、扇型をなす3枚の押さえ板151〜153を用いて、開口44の形成された箇所を除く、ほぼ全面を、伝熱板20側に押さえ付けたヒータ30を伝熱板20に固定する。このような構成とすることで、伝熱板20に対するヒータ30の密着性を高めることが可能となるので、ヒータ30から伝熱板20への熱伝達のロスを抑えることが可能となる。尚、押さえ板151〜153の伝熱板20に対する固定の仕方は、実施形態1の座金33と同様にビス留め等でよい。
【0034】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0035】
(1)実施形態1、2では、調理釜用ヒータモジュールを、飴煮炊き用の調理釜60に適用した例を示したが、調理用ヒータモジュールは、調理に使用される調理釜の加熱用であれば広く使用することが可能であり、例えば、大型回転釜、中華鍋用コンロなどに使用できる。
【0036】
(2)実施形態1、2では、伝熱板20をインコネル製、裏面カバー40の材質をステンレス製とした。伝熱板20、裏面カバー40の材質は実施形態1、2にて例示したものの他に、SUS316、SUS304などを使用することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
10…調理釜用ヒータモジュール
20…伝熱板
25…排出管路(本発明の「排出路」に相当)
30…ヒータ
40…裏面カバー
60…調理釜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理釜の裏面に接する凹曲面形状をした伝熱板と、
伝熱板の裏面に装着されたヒータと、
前記伝熱板の裏面に装着され、前記伝熱板と共にヒータを収容する収容体を構成する裏面カバーと、を備えたことを特徴とする調理釜用ヒータモジュール。
【請求項2】
前記伝熱板の底面中央部に、前記裏面カバーを貫通する排出路を設けたことを特徴とする請求項1に記載の調理釜用ヒータモジュール。
【請求項3】
前記伝熱板の凹曲面に対して赤外線放射塗料を塗布したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の調理釜用ヒータモジュール。
【請求項4】
前記伝熱板と前記裏面カバーとの間に断熱材を設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の調理釜用ヒータモジュール。
【請求項5】
前記伝熱板と前記伝熱板の裏面に装着されたヒータを密着させるための押さえ板を設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の調理釜用ヒータモジュール。
【請求項1】
調理釜の裏面に接する凹曲面形状をした伝熱板と、
伝熱板の裏面に装着されたヒータと、
前記伝熱板の裏面に装着され、前記伝熱板と共にヒータを収容する収容体を構成する裏面カバーと、を備えたことを特徴とする調理釜用ヒータモジュール。
【請求項2】
前記伝熱板の底面中央部に、前記裏面カバーを貫通する排出路を設けたことを特徴とする請求項1に記載の調理釜用ヒータモジュール。
【請求項3】
前記伝熱板の凹曲面に対して赤外線放射塗料を塗布したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の調理釜用ヒータモジュール。
【請求項4】
前記伝熱板と前記裏面カバーとの間に断熱材を設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の調理釜用ヒータモジュール。
【請求項5】
前記伝熱板と前記伝熱板の裏面に装着されたヒータを密着させるための押さえ板を設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の調理釜用ヒータモジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−248508(P2012−248508A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121592(P2011−121592)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】
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