説明

調節装置を備えたロール装置

本発明は、脚柱2、12、33を有するスタンドを備えたロール装置1に関し、ロールスタンドの少なくとも1個のロール3、13が脚柱の間の空間領域内に配置され、ロール3を調節するための少なくとも1個の調節装置5、10、30が設けられ、少なくとも1個の調節装置5、10、30がロール3、13と脚柱2、2a、2b、2c、2d、12、33との間に配置され、かつ圧力媒体調節機構14、23、34を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に請求項1の前提部分に係る、特にロール装置のロールの水平方向ずれを調節するための調節装置を備えたロール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロール装置またはロールスタンドは従来技術においてよく知られている。その際、水平方向安定化部材としての隣接する支持ロールと相対的に、作業ロールが水平方向にずらされるロールスタンドが知られている。これは特に、ロール装置によっていろいろなパスプログラムを実施するときに必要である。その際、調節装置として、調節のための伝動要素、液圧シリンダおよび摺動可能なくさびを用いたくさび調節装置が知られている。くさびを備えた調節装置は、例えば、特許文献1によって知られている。特許文献2は液圧シリンダと機械的な調節伝動装置を開示している。
【0003】
機械的な調節装置は調節された位置を見失う、すなわち、調節された位置が運転中に狂うという欠点がある。これは伝動装置を組み込んだ調節装置の場合に不利である。というのは、伝動装置のセルフロックまたは制動が行われず、従って負荷時に位置が移動するからである。これはさらに、監視のために使用されるセンサまたはプローブがその絶対的な位置を見失うことを意味する。伝動装置を備えたロール装置の場合にはさらに、伝動装置のためにロールスタンド内に比較的に大きな空間領域が設けられるので、装置が非常に大きくて重くなる。
【0004】
さらに、調節すべき位置の不十分な再現可能性の作用が変化することになる。必要な構造空間も比較的に大きい。これはくさびを備えた調節装置の場合に該当する。その際、さらに、運転開始時に調節くさびを大きく引き出し、移動させるべき領域に対する接触を解除する。それによって、プローブはその位置を見失い、正確な位置制御をもはや行うことができない。通常、くさびは駆動側および操作側でロールスタンド領域の外に達するので、これはロール交換装置にとって不所望であり、より大きなカバーを必要とする。これもコストの増大につながり、従って不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第1777054A号明細書
【特許文献2】欧州特許第0154896B1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、妨げになり得ない場合でも、従来技術の欠点を回避するロール装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は本発明に従い、特に脚柱を有するスタンドを備えたロール装置であって、ロールスタンドの少なくとも1個のロールが脚柱の間の空間領域内に配置され、ロールを調節するための少なくとも1個の調節装置が設けられ、少なくとも1個の調節装置がロールと脚柱との間に配置され、かつ圧力媒体調節機構を備えている上記ロール装置によって解決される。ロールの各端部に、対向する2つの調節装置が設けられていると有利である。
【0008】
その際、圧力媒体調節機構がピストン/シリンダユニットを有する液圧アクチュエータを備えていると有利である。しかしながら、圧力媒体調節機構は空気圧でまたは他の圧力媒体で運転可能である。
【0009】
ピストン/シリンダユニットがピストンを備え、このピストンの運動方向がロール軸線に対して垂直であるかまたはロール軸線に対して垂直方向に調節が行われるように向けられていると有利である。
【0010】
調節装置がピストンを圧力付勢するために2つの圧力室を備え、ピストンの両側にそれぞれ1つの室が配置されていると有利である。それによって、ピストンの位置を確実に調節または制御することができる。
【0011】
さらに、ピストンに連結されたピストンロッドがロールを直接的にまたは間接的にピストンの調節方向に付勢すると合目的である。
【0012】
さらに、他の実施形態において、ピストン/シリンダユニットがピストンを備え、このピストンの運動方向がロール軸線に対して平行であるかまたはロール軸線に対して平行に調節が行われるように向けられていると有利である。
【0013】
その際、調節装置がピストンを圧力付勢するために2つの圧力室を備え、ピストンの両側にそれぞれ1つの室が配置されていると有利である。
【0014】
さらに、ピストンに連結されたピストンロッドがレバー装置を介してロールを直接的または間接的にロールの調節方向に付勢し、ピストンがロール軸線に対して平行な方向に調節され、レバー装置の少なくとも1つのレバーがロール軸線に対して垂直にロールを調節すると合目的である。
【0015】
さらに、ピストンの位置がセンサによって検出可能であると有利である。その際、センサが調節装置のケーシングと一体化されているかまたはこのケーシングに外側から取付けられるようにこのケーシングに連結されていると合目的である。その際、センサの位置を見失わないので有利である。というのは、センサがピストンシリンダユニットの摺動可能な要素または相対的に摺動可能な要素に直接連結可能であるからである。
【0016】
有利な発展形態は従属請求項に記載してある。
【0017】
次に、図に示した実施形態に基づいて本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】調節装置を有する作業ロールを備えたロール装置の概略図である。
【図2】調節装置の概略図である。
【図3】調節装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、脚柱2a、2b、2c、2dを有する、ロールスタンドのようなスタンド2と、脚柱2a、2b、2c、2dの間の空間領域内に配置された作業ロール3とを備えたロール装置1を概略的に示している。この作業ロールはロール軸受または作業ロール曲げ台4に軸承されて収容されている。ロールまたは作業ロール3をロールの軸方向7に対して垂直な方向6に移動させるために、スタンド2の脚柱2a、2b、2c、2dとロール軸受または作業ロール曲げ台または摺動台4との間には、調節装置5が設けられている。そのために、ロール3はチョック8に軸承されて収容されている。
【0020】
従って、調節装置5はロール3の軸線に対して垂直な方向にロール3を水平に調節する働きをする。
【0021】
図1から分かるように、調節装置5は、軸線7に対して垂直な矢印6の方向への調節運動を制御するように配置されている。
【0022】
本発明の実施形態では、ロール装置の調節装置10は図2に示す液圧アクチュエータ11のような圧力媒体アクチュエータによって形成されている。
【0023】
ロール13と脚柱12との間には液圧媒体アクチュエータ11が設けられ、この液圧媒体アクチュエータは圧力室25が部材23と部材18との間に形成されるように配置されている。その際、圧力室25内に圧力媒体を入れることができるかまたは圧力を加えることができるので、両部材23、18は互いに離れるように付勢されて互いに離隔移動するかあるいは近接するように移動する。
【0024】
さらに、ピストン14がシリンダ室15、16内に収容されているので、圧力媒体で付勢可能な2つのシリンダまたは室15、16が形成されている。この場合、室15、16はそれぞれピストン14の片側に配置されているので、室15の圧力付勢はピストン14をロールの方へ付勢し、室16の圧力付勢はピストン14をロールから離れる方向に付勢する。ピストンシリンダユニット14、15、16によって、保持装置または調整装置が形成される。この保持装置または調整装置は戻しシリンダとして形成され、要素20、21、23を戻す働きをする。
【0025】
室領域15、16は脚柱12に連結されたケーシング17内に形成されている。ケーシング17が2つの部分によって形成され、両ケーシング部分18、19から構成されていると有利である。ピストンのピストン本体はケーシング17内に収容され、ピストンロッドはケーシング部分18の穴を通過し、ロール軸受20に連結されている。中間要素21が設けられていると有利である。この中間要素は調節装置の移動方向に対して垂直およびロール軸線に対して垂直な方向における案内を可能にする。
【0026】
室領域25のシリンダは要素23、18によって形成され、台17の凹部内に収容されている。
【0027】
シリンダ室15、16を有するケーシング17内には、シリンダ14のほかに、センサ22が配置されている。このセンサはシリンダ25によって操作される要素23の位置を間接的にまたは直接的に検出する。その際、センサ22はピン24を備え、このピンは要素21またはこの要素に連結された要素23に支持されている。
【0028】
本実施形態は、圧力付勢可能な室またはシリンダ25および/または15、16によって位置を良好に制御可能であるのできわめて有利である。それによって、要素23および/またはピストン14の位置、ひいてはロール13の位置をいつでも一義的に調節可能である。さらに、図2の実施形態はきわめてコンパクトに構成されている。というのは、ピストン/シリンダユニット25を有する液圧ユニットがロール3に直接作用するからである。
【0029】
本発明に係る他の実施形態では、調節装置30が液圧アクチュエータ31のような圧力媒体アクチュエータによって形成されている。この液圧アクチュエータは図3に示すように、レバー装置32を介してロール3に作用している。ロール3と脚柱33との間において、ピストン34がシリンダ室35、36に収容され、圧力媒体付勢可能な2つの室35、36を形成するように、液圧アクチュエータ31が配置されている。この場合、室35、36がそれぞれピストン34の片側に配置されているので、室35の圧力付勢はピストン34を右側に移動させるかまたは付勢し、室36の圧力付勢はピストン34を左側に移動させるかまたは付勢する。
【0030】
室領域35、36はケーシング37内に形成されている。このケーシングはレバー装置32を収容するケーシング38に連結されている。このケーシング38はさらに、脚柱33に固定されている。ケーシング37が2つの部分によって形成され、両ケーシング部分39、40から構成されていると有利である。この場合、部分39はポット状に形成され、部分40はフランジのように形成されている。フランジ40は突き出ているピストンロッド41が通過する穴を有する。それによって、レバー装置32を介してロール3を移動させることができる。フランジ40の穴の領域にはさらに、シール42が設けられている。
【0031】
ピストンロッド41は軸方向に摺動可能な棒43に連結されている。この棒はヒンジ44を備え、このヒンジにはレバーアーム45が枢着連結されている。このレバーアームは他のヒンジ46を介して要素21に枢着連結されている。この部材21はさらに、ロール軸受20に連結されている。従って、要素21の移動がロール3に直接伝達される。
【0032】
圧力室35および/または36の圧力付勢に基づいてピストン34が移動すると、ピストンロッド41が移動し、予め設定可能な位置に調節される。それによって、例えば、スラストロッドのような棒、ひいてはヒンジ44が軸方向に移動する。ロール軸受20がロール軸線方向に実質的に摺動しないように形成されているので、ヒンジ個所44の移動によって、レバーアーム45の相対位置、すなわちロールの軸線またはこの軸線の垂線に対するその角度位置が変えられる。従って、脚柱33とロールとの間の間隔が決定および調節される。ロール軸受がロール軸線に対して平行な方向に実質的に摺動しないようにするために、このロール軸受はガイド47によってロックされている。このガイドはロール軸線に対して垂直な方向の運動だけを許容する。
【0033】
ピストンとスラストロッドをロール軸線に対して平行に配置したことにより、調節装置のきわめてコンパクトな構造が生じる。
【0034】
さらに、ロールの位置を調整または制御する目的でピストンの位置を検出するために、センサ48が設けられている。このセンサはプローブ49によってピストンの位置を検出する。そのために、ケーシング39のヘッドに穴が形成され、センサ48のプローブ49がこの穴を通過し、ピストンの穴または孔に係合可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 ロール装置
2 スタンド
2a 脚柱
2b 脚柱
2c 脚柱
2d 脚柱
3 ロール
4 ロール軸受、ロール曲げ台
5 調節装置
6 調節方向
7 軸方向、軸線
10 調節装置
11 圧力媒体アクチュエータ
12 脚柱
13 ロール
14 ピストン
15 シリンダ室、圧力室
16 シリンダ室、圧力室
17 ケーシング
18 ケーシング部分
19 ケーシング部分
20 ロール軸受、ロール曲げ台
21 中間要素
22 センサ
23 連結された要素
24 ピン
25 シリンダ、圧力室
30 調節装置
31 液圧アクチュエータ
32 レバー装置
33 脚柱
34 ピストン
35 シリンダ室、圧力室
36 シリンダ室、圧力室
37 ケーシング
38 ケーシング
39 ケーシング部分
40 ケーシング部分、フランジ
41 ピストンロッド
42 シール
43 棒
44 ヒンジ
45 レバーアーム
46 ヒンジ
47 ガイド
48 センサ
49 プローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚柱(2、12、33)を有するスタンドを備えたロール装置(1)であって、ロールスタンドの少なくとも1個のロール(3、13)が脚柱(2a、2b、2c、2d)の間の空間領域内に配置され、ロール(3)を調節するための少なくとも1個の調節装置(5、10、30)が設けられている、ロール装置において、
少なくとも1個の調節装置(5、10、30)がロール(3、13)と脚柱(2、2a、2b、2c、2d、12、33)との間に配置され、かつ圧力媒体調節機構(25)を備えていることを特徴とするロール装置(1)。
【請求項2】
圧力媒体調節機構(25)がピストン/シリンダユニット(25、23)を有する液圧アクチュエータを備えていることを特徴とする請求項1に記載のロール装置。
【請求項3】
ピストン/シリンダユニットがピストン(23)を備え、このピストンの運動方向がロール軸線に対して垂直であることを特徴とする請求項2に記載のロール装置。
【請求項4】
調節装置がピストン(23、14、34)を圧力付勢するために1つまたは2つの圧力室(25、15、16)を備え、ピストン(23)の一方の側に室(25)が配置され、および/またはピストン(14)の両側にそれぞれ1つの室(15、16)が配置されていることを特徴とする請求項3に記載のロール装置。
【請求項5】
ピストン(34)に連結されたピストンロッド(45)がロール(3)を直接的にまたは間接的に調節方向に付勢することを特徴とする請求項3または4に記載のロール装置。
【請求項6】
ピストン/シリンダユニットがピストン(34)を備え、このピストンの運動方向がロール軸線に対して平行であることを特徴とする請求項2に記載のロール装置。
【請求項7】
調節装置がピストン(34)を圧力付勢するために2つの圧力室(35、36)を備え、ピストンの両側にそれぞれ1つの室が配置されていることを特徴とする請求項6に記載のロール装置。
【請求項8】
ピストン(34)に連結されたピストンロッド(41)がレバー装置を介してロール(3)を直接的または間接的に調節方向に付勢し、ピストン(34)がロール軸線に対して平行な方向に調節され、レバーがロール軸線に対して垂直にロールを調節することを特徴とする請求項6または7に記載のロール装置。
【請求項9】
ピストン(14、23、34)の位置がセンサによって検出可能であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のロール装置。
【請求項10】
センサが調節装置のケーシングと一体化されているかまたはこのケーシングに連結されていることを特徴とする請求項9に記載のロール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−527240(P2011−527240A)
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517030(P2011−517030)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際出願番号】PCT/EP2009/004995
【国際公開番号】WO2010/003676
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(390035426)エス・エム・エス・ジーマーク・アクチエンゲゼルシャフト (320)