説明

調速機ロープ巻取り装置

【課題】調速機ロープを巻取る調速機ロープ巻取り装置を提供する。
【解決手段】旧調速機ロープ1が端末取付け金具12によって傾斜ドラム15に取り付けられた状態で手巻きハンドル16を回転させると、旧調速機ロープ1が傾斜ドラム15に巻きつけられる。傾斜ドラム15は、その断面が逆台形状であるため、巻取られた旧調速機ロープ1は、傾斜ドラム15の傾斜により、傾斜ドラム15の下方に置かれたロープ収納箱11に収まっていく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータなどで利用される調速機ロープを巻取る調速機ロープ巻取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの主ロープ用の巻取り装置は知られている(特許文献1など)が、調速機ロープの取替え作業においては、作業者が旧調速機ロープを手で巻取るのが一般的である。
【0003】
図3は、従来のエレベータの調速機ロープの取替え作業を説明するための図である。図3において、旧調速機ロープ1が機械室9に設置された調速機綱車4に巻き回されている。旧調速機ロープ1の一端は、昇降路7のピット7a(昇降路底部)に垂れ下がり、ロープ巻取り部5に巻きつけられている。また、旧調速機ロープ1の他端は、エレベータのかご8側に垂れ下がり、継ぎ治具3を介して、新調速機ロープ2の一端に取り付けられている。なお、新調速機ロープ2の他端側は、新調速機ロープ送り部6内に収められている。
【0004】
調速機ロープを取替える場合、まず、ピット7aに作業者が入れるように、例えば図3に示す位置にかご8を停止させる。次に、旧調速機ロープ1をかご8から取り外し、取り外した旧調速機ロープ1の端部と、新調速機ロープ送り部6から出ている新調速機ロープ2の端部とを継ぎ治具3で連結する。図3では、連結された状態が示されている。そして、機械室9に設けられた調速機綱車4を介してピット7a側に送られている旧調速機ロープ1を、ピット7aに置かれたロープ巻取り部5によって作業者が手作業で巻取る。
【0005】
【特許文献1】特開平10−87217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の手法で調速機ロープを取替える場合、作業者が手作業でロープ巻取り部に旧調速機ロープを巻取るため、作業時間の短縮が困難であった。また、ピットで旧調速機ロープを巻取るため、旧調速機ロープが触れることで床や壁を汚す可能性もあった。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みて成されたものであり、その目的は、調速機ロープを巻取る調速機ロープ巻取り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の好適な態様である調速機ロープ巻取り装置は、回転軸を含む断面の形状が下方ほど細くなる傾斜ドラムと、前記傾斜ドラムに設けられる部材であって調速機ロープの一端が取付けられる端末取付け部材と、を有し、前記傾斜ドラムが回転することによって、前記端末取付け部材に一端が取付けられた調速機ロープが前記傾斜ドラムに巻取られ、巻取られた調速機ロープが前記傾斜ドラムの下方に備えられた収納箱に収められる、ことを特徴とする。
【0009】
望ましくは、前記傾斜ドラムは、その回転軸を含む断面の形状が略逆台形であることを特徴とする。望ましくは、調速機ロープの導入路が設けられた装置フレームと、前記導入路に設けられた補助ローラと、をさらに有し、調速機ロープが、前記導入路を通って前記補助ローラを介して前記装置フレーム内に収められた傾斜ドラムに取付けられる、ことを特徴とする。望ましくは、前記装置フレームの外側から前記傾斜ドラムを回転させる手巻きハンドルをさらに有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、調速機ロープを巻取る調速機ロープ巻取り装置が提供される。このため、例えば、手作業で調速機ロープを巻取る場合に比べて、作業時間の大幅な短縮が見込まれ、また、例えば、装置内にロープの収納箱を設けることにより、床や壁を汚すことなく旧調速機ロープを巻取ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1には、本発明に係る調速機ロープ巻取り装置の好適な実施形態が示されており、図1はその全体構成を示す図である。
【0013】
調速機ロープ巻取り装置20は、傾斜ドラム15が回転することにより、旧調速機ロープ1を巻取る装置である。図1は、この傾斜ドラム15の回転軸を含む平面による装置の断面図である。
【0014】
傾斜ドラム15は、回転軸を含む断面の形状が逆台形となっている。つまり、傾斜ドラム15の立体形状は、円錐をその底面に平行な面で底面側と頂点側との二つの部分に切断した場合における底面側の部分の形状に相当する。なお、傾斜ドラム15は、断面が逆台形のものに限らず、断面が下方ほど細くなっているものであればよい。例えば、傾斜ドラム15の立体形状が円錐そのものでもよい。
【0015】
傾斜ドラム15には、旧調速機ロープ1の端部を取付けるための端末取付け金具12が設けられており、調速機ロープを取替える際に、図1に示すように、旧調速機ロープ1の一端が取付けられる。
【0016】
また、傾斜ドラム15には、これを回転させるための手巻きハンドル16が連結されている。手巻きハンドル16は、装置フレーム10の外側から、装置フレーム10の内側に収められている傾斜ドラム15に連結されている。装置フレーム10と手巻きハンドル16の接触部分には、ハンドル用ベアリング17が設けられ、手巻きハンドル16の回転動作がスムーズに行われる。
【0017】
装置フレーム10には、巻取り用サポート板13によって旧調速機ロープ1の導入路が設けられている。つまり、旧調速機ロープ1が、装置フレーム10の外側から、巻取り用サポート板13を通って、装置フレーム10の内側に挿入される。なお、巻取り用サポート板13には、補助ローラ14が設けられており、補助ローラ14と旧調速機ロープ1が接触し、補助ローラ14が回転することにより、装置フレーム10の内側へ旧調速機ロープ1がスムーズに取り込まれる。
【0018】
旧調速機ロープ1が端末取付け金具12によって傾斜ドラム15に取り付けられた状態(図1に示す状態)で手巻きハンドル16を回転させると、旧調速機ロープ1が傾斜ドラム15に巻きつけられる。傾斜ドラム15は、その断面が逆台形状であるため、巻取られた旧調速機ロープ1は、傾斜ドラム15の傾斜により、傾斜ドラム15の下方に置かれたロープ収納箱11(例えば、ダンボール箱)に収まっていく。
【0019】
巻取り作業の途中から徐々に旧調速機ロープ1がロープ収納箱11に収まっていくようにしてもよく、あるいは、巻取り作業の終了まで旧調速機ロープ1が傾斜ドラム15に巻きついた状態で、端末取付け金具12から外された後に、旧調速機ロープ1がロープ収納箱11に落とされるようにしてもよい。
【0020】
図2は、図1の調速機ロープ巻取り装置20を利用した、エレベータの調速機ロープの取替え作業を説明するための図である。
【0021】
図2において、旧調速機ロープ1が機械室9に設置された調速機綱車4に巻き回されている。旧調速機ロープ1の一端は、昇降路7のピット7a(昇降路底部)に垂れ下がっている。また、旧調速機ロープ1の他端は、エレベータのかご8側に垂れ下がり、継ぎ治具3を介して、新調速機ロープ2の一端に取り付けられている。なお、新調速機ロープ2の他端側は、新調速機ロープ送り部6内に収められている。
【0022】
調速機ロープを取替える場合、まず、ピット7aに作業者が入れるように、例えば図2に示す位置にかご8を停止させる。次に、旧調速機ロープ1をかご8から取り外し、取り外した旧調速機ロープ1の端部と、新調速機ロープ送り部6から出ている新調速機ロープ2の端部とを継ぎ治具3で連結する。図2では、連結された状態が示されている。
【0023】
そして、機械室9に設けられた調速機綱車4を介してピット7a側に送られている旧調速機ロープ1を、ピット7aに置かれた調速機ロープ巻取り装置20に取り付ける。つまり、図1を利用して説明したように、旧調速機ロープ1の端部を装置フレーム10内の傾斜ドラムに取り付ける。この状態で作業者が手巻きハンドル16を回転させることにより、巻取られた旧調速機ロープ1が、ロープ収納箱11に収まっていく。
【0024】
本発明の好適な実施形態により、旧調速機ロープの巻取り時間が大幅に短縮され作業効率が向上する。また、巻取った旧調速機ロープは、装置内に置かれたロープ収納箱に収められるため、床や壁を汚すことなく旧調速機ロープを回収でき、また、回収後の持ち運びにも便利である。
【0025】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。例えば、上述の実施形態では、作業者が手巻きハンドルを利用して傾斜ドラムを回転させる構成を示したが、モータなどの動力を利用して傾斜ドラムを回転させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る調速機ロープ巻取り装置の全体構成を示す図である。
【図2】本発明に係る調速機ロープ巻取り装置を利用した、エレベータの調速機ロープの取替え作業を説明するための図である。
【図3】従来のエレベータの調速機ロープの取替え作業を説明するための図である。
【符号の説明】
【0027】
1 旧調速機ロープ、13 巻取り用サポート板、14 補助ローラ、15 傾斜ドラム、16 手巻きハンドル、20 調速機ロープ巻取り装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を含む断面の形状が下方ほど細くなる傾斜ドラムと、
前記傾斜ドラムに設けられる部材であって調速機ロープの一端が取付けられる端末取付け部材と、
を有し、
前記傾斜ドラムが回転することによって、前記端末取付け部材に一端が取付けられた調速機ロープが前記傾斜ドラムに巻取られ、巻取られた調速機ロープが前記傾斜ドラムの下方に備えられた収納箱に収められる、
ことを特徴とする調速機ロープ巻取り装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、
前記傾斜ドラムは、その回転軸を含む断面の形状が略逆台形である、
ことを特徴とする調速機ロープ巻取り装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置において、
調速機ロープの導入路が設けられた装置フレームと、
前記導入路に設けられた補助ローラと、
をさらに有し、
調速機ロープが、前記導入路を通って前記補助ローラを介して前記装置フレーム内に収められた傾斜ドラムに取付けられる、
ことを特徴とする調速機ロープ巻取り装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置において、
前記装置フレームの外側から前記傾斜ドラムを回転させる手巻きハンドルをさらに有する、
ことを特徴とする調速機ロープ巻取り装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−36436(P2006−36436A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−217599(P2004−217599)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】