識別媒体およびその識別方法
【課題】図柄の明確な切り替わりを観察可能な識別媒体を提供する。
【解決手段】観察する側から、ホログラム加工が施されたコレステリック液晶層101、レンチキュラーレンズ102、レンチキュラーレンズ102のレンズ配列に対応したストライプ模様が形成されたストライプ印刷層103を積層した構造とする。見る角度により、コレステリック液晶層101の背景の色彩が切り替わり、それにより円偏光フィルタを介した観察における像の切り替わりが明確となる。
【解決手段】観察する側から、ホログラム加工が施されたコレステリック液晶層101、レンチキュラーレンズ102、レンチキュラーレンズ102のレンズ配列に対応したストライプ模様が形成されたストライプ印刷層103を積層した構造とする。見る角度により、コレステリック液晶層101の背景の色彩が切り替わり、それにより円偏光フィルタを介した観察における像の切り替わりが明確となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、商品の真贋判定に利用される識別媒体およびその識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真贋判定に利用される識別媒体として、左右の円偏光フィルタを介した観察において、異なる像を観察できるようにすることで識別を行うものが知られている(例えば特許文献1を参照)。この技術では、光透過層、第1の図柄を構成する印刷層、コレステリック液晶層と積層され、コレステリック液晶層に型押加工によるホログラム図柄(第2の図柄)を形成した基本構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−172798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の基本構造の識別媒体において、仮に、コレステリック液晶層が右旋回円偏光を選択的に反射する特性であるとする。この際、左旋回円偏光を選択的に透過する円偏光フィルタ(左円偏光フィルタ)を当該識別媒体から離した位置とし、この円偏光フィルタを介して当該識別媒体を観察する場合を考える。この場合、コレステリック液晶層から右旋回円偏光が反射されるが、それは左旋回円偏光フィルタで遮断されるので観察されない。つまり、コレステリック液晶層に形成された第2の図柄は観察できない。
【0005】
一方、印刷層からの反射光は、コレステリック液晶層で反射された特定波長の右旋回円偏光以外の成分である。よって第1の図柄の反射光は、左旋回円偏光フィルタを透過し、観察される。つまりこの場合は、印刷層からの第1の図柄のみが選択的に見える。
【0006】
一方、右旋回円偏光を選択的に透過する円偏光フィルタ(右円偏光フィルタ)を介して当該識別媒体を観察すると、コレステリック液晶層からの右旋回円偏光の反射光が右円偏光フィルタを透過するので、第2の図柄が見える。また、それと同時に第1の図柄が薄く見える。
【0007】
ここで、第1の図柄が観察されるのは以下の理由による。この場合、コレステリック液晶層を透過するのは、特定波長の右旋回円偏光以外の成分である。この透過光は印刷層で反射され、コレステリック液晶層を透過し、右旋回円偏光フィルタに入射する。この入射光には、コレステリック液晶層が反射した特定波長以外の右旋回円偏光成分が含まれるので、この成分が右旋回円偏光フィルタを透過し、印刷層が薄く見えることになる。
【0008】
このように上記の技術では、左右の円偏光フィルタを利用した観察において、第1の図柄が共通に見える。一方、光学的な識別機能という点では、左右の円偏光フィルタの切り替えにより、像が明確に切り替わった方が好ましい。
【0009】
このような背景において、本発明は、像の明確な切り替わりが観察できる識別媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、観察する側から、ホログラム加工が施されたコレステリック液晶層と、予め決められたパターンで規則的に配列された複数のレンズを備えたレンズアレイ層と、第1の光学パターンと前記第1の光学パターンと異なる光学特性を有する第2の光学パターンとを前記複数のレンズの配列に対応させて配列した光学パターン層とが配置された構造を有することを特徴とする識別媒体である。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、レンズアレイ層の機能により、特定の第1の角度において、第1の光学パターンが選択的に見え、特定の第2の角度において、第2の光学パターンが選択的に見え、それによりコレステリック液晶層の背景の色彩や見た目が切り替わる。このため、左右の円偏光フィルタを介した観察における像の明確な切り替わりが得られる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第1の光学パターンまたは前記第2の光学パターンは、特定の色彩を示すパターンであり、前記コレステリック液晶層と前記光学パターン層との間に前記第1または第2の光学パターンと同じ色彩の図柄が形成された図柄層が配置されていることを特徴とする。請求項2に記載の発明によれば、ある角度では図柄層の図柄が背景から分離して観察でき、他の角度では図柄層の図柄が背景に溶け込んで観察できない光学機能が更に得られる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記第1の光学パターンまたは前記第2の光学パターンは、特定の色彩を示すパターンであり、前記第1の光学パターンまたは前記第2の光学パターンに図柄を構成する欠損部分が設けられていることを特徴とする。請求項3に記載の発明によれば、第1の色彩のパターンまたは第2の色彩のパターンに形成された欠損部分が構成する図柄を識別に利用することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明において、前記レンズアレイ層がレンチキュラーレンズであり、前記光学パターン層がストライプ模様を有していることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明において、前記レンズアレイ層が複数の凸レンズが縦横に配列されたマイクロレンズアレイであり、前記光学パターン層が前記複数の凸レンズの配列に対応したドット模様を有することを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の発明において、前記光学パターン層が前記レンズアレイ層に対する印刷により形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記図柄層が前記レンズアレイ層または前記コレステリック液晶層に対する印刷により形成されていることを特徴とする。
【0018】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の識別媒体を第1の角度から左右の円偏光フィルタを介して観察する第1のステップと、請求項1〜7のいずれか一項に記載の識別媒体を第2の角度から左右の円偏光フィルタを介して観察する第2のステップとを有することを特徴とする識別媒体の識別方法である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の発明によれば、見る角度によって、ホログラム像を表示するコレステリック液晶層の背後の見た目の状態が明瞭に切り替わるので、この切り替わりと左右の円偏光フィルタを介して観察した際の上記ホログラム像の切り替わりとの相乗効果により、像の明確な切り替わりが観察できる識別媒体が提供される。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、図柄層の図柄を利用した更に高い識別機能が得られる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、欠損部分を利用した図柄を利用した更に高い識別機能が得られる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、ある角度方向に沿った角度変化に対して、識別機能を発揮する光学機能が得られる。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、直交する2つの角度方向沿った角度変化に対して、識別機能を発揮する光学機能が得られる。
【0024】
請求項6および請求項7に記載の発明によれば、構造が簡略化され、薄型化された識別媒体が提供される。
【0025】
請求項8に記載の発明によれば、本発明の識別媒体を利用した識別の方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施形態の識別媒体の断面図である。
【図2】実施形態の光学機能の原理を示す原理図である。
【図3】実施形態のストライプ印刷層の正面図である。
【図4】実施形態の識別媒体の断面図である。
【図5】実施形態の光学機能の原理を示す原理図である。
【図6】実施形態の断面図である。
【図7】実施形態のストライプ印刷層の正面図である。
【図8】実施形態の光学機能の原理を示す原理図である。
【図9】実施形態のストライプ印刷層の正面図である。
【図10】実施形態のストライプ印刷層の正面図である。
【図11】マイクロレンズアレイを利用した構成の他の例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
1.第1の実施形態
(構成)
以下において、左旋回の円偏光を左円偏光、右旋回の円偏光を右円偏光、左円偏光を選択的に透過する光学フィルタを左円偏光フィルタ、右円偏光を選択的に透過する光学フィルタを右円偏光フィルタと呼ぶ。
【0028】
図1には、実施形態の識別媒体100が示されている。識別媒体100は、観察する側から、コレステリック液晶層101、レンチキュラーレンズ102、ストライプ印刷層103、粘着層104、セパレータ105と積層された構造とされている。
【0029】
コレステリック液晶層101は、緑の中心波長を有する右円偏光を選択的に反射する特性とされている。なお、選択反射する波長と旋回方向は、この例に限定されず、赤等の他の色の左円偏光であってもよい。コレステリック液晶層101には、ホログラム加工が施されている。ホログラム加工は、エンボス型を押し付けることで行われている。ホログラム加工は、エンボス模様により生じる反射光の干渉効果により、ホログラム像を形成する。このホログラム像は、コレステリック液晶層101からの反射光を観察することで認識される。
【0030】
レンチキュラーレンズ102は、断面がかまぼこ型で一方向に延長する凸レンズを規則的に配列したレンズアレイである。図2は、図1の識別媒体100におけるレンチキュラーレンズ102の光学機能の原理を説明する原理図である。図2には、ストライプ印刷層103上にレンチキュラーレンズ102が積層された構成が記載されている。
【0031】
ストライプ印刷層103は、光学パターン層の一例である。ストライプ印刷層103は、レンチキュラーレンズ102を構成するかまぼこ型の凸レンズの延長方向に延在し、更にかまぼこ型の凸レンズの配列のピッチに対応させた間隔を有する色彩Aと色彩Bのストライプ模様が樹脂フィルム上に印刷された構成とされている。この例では、レンチキュラーレンズ102を構成するかまぼこ型の凸レンズの幅は0.0254mmとされている。ストライプ印刷層は白および黒のパターンで構成され、これら白と黒の各パターンの幅は、かまぼこ型の凸レンズの幅の半分の0.0127mmとされ、隣接する白と黒のパターンの合計の幅が、レンチキュラーレンズ102を構成するかまぼこ型の凸レンズの幅となるように設定されている。また、かまぼこ型の凸レンズの中心に白と黒のパターンの境の部分が一致するようにレンチキュラーレンズ102とストライプ印刷層103との位置関係が設定されている。
【0032】
図3には、ストライプ印刷層103の正面図が示されている。ここで、白のパターンが第1の光学パターンの一例であり、黒のパターンが第2の光学パターンの一例である。
【0033】
仮にコレステリック液晶層101が存在しない構成と仮定した場合、レンチキュラーレンズ102の側からストライプ印刷層103を見ると、見る角度によってレンチキュラーレンズ102を構成する各凸レンズの焦点の位置が変わるので、例えば、第1の見る角度では、白のパターンAが選択的に見え、第2の見る角度では、黒のパターンBが選択的に見える。この際、第1の見る角度からの観察では、白のパターンAのみが見えるので、全面が白に見える。また、第2の見る角度からの観察では、黒のパターンBのみが見えるので、全面が黒に見える。
【0034】
ストライプ印刷層103の下には、粘着材料により構成された粘着層104が配置されている。粘着層104が発揮する粘着力により、識別媒体100が識別対象物(例えば、各種製品等)に貼り付けられる。図1には、識別媒体100を識別対象物に貼り付ける前の状態が示されている。この状態では、粘着層104の識別対象物に接触する面に離型紙となるセパレータ105が貼り付けられている。識別対象物に識別媒体100を固定する際は、このセパレータ105を剥がし、粘着層104を露出させて、粘着層104を識別対象物に接触させる。なお、各層同士の固定は、光透過性の樹脂接着剤により行われている。
【0035】
(製造方法)
まず、コレステリック液晶層101を図示しない配向基板上で成長させる。またこれとは別にレンチキュラーレンズ102、ストライプ印刷層103を積層したものを用意する。そして、コレステリック液晶層101を上記配向基板から剥がし、図示省略されている偏光状態を乱さない材質の光透過性のフィルム(例えば、TAC(トリアセチルセルロース)フィルム)に転移した後にホログラム加工を施す。その後、上記の光透過性のフィルム(図示省略)を観察面側とした状態でコレステリック液晶層101をレンチキュラーレンズ102の露出面上に積層する。ここで各層の固定は、光透過性の樹脂接着剤を用いて行う。最後に粘着層104、セパレータ105を形成し、識別媒体100を得る。
【0036】
(光学機能)
識別媒体100をコレステリック液晶層101の側から観察する状態において、識別媒体100を傾け、視線と識別媒体100の垂線とがなす角度(以下、この角度を見る角度という)をある値にすると、レンチキュラーレンズ102の機能により、コレステリック液晶層101を介して、ストライプ印刷層103の白のパターンAのみが見える場合と黒のパターンBのみが見える場合が得られる。ここで、白のパターンAのみが見える場合は、コレステリック液晶層101の背後(下地)が全面白の背景となる。黒のパターンBのみが見える場合は、コレステリック液晶層101の背後(下地)が全面黒の背景となる。
【0037】
以下、白いパターンAのみがコレステリック液晶層101の背景となる場合の見る角度を第1の見る角度とし、黒いパターンBのみがコレステリック液晶層101の背景となる場合の見る角度を第2の見る角度とする。
【0038】
(第1の角度で観察した場合)
まず、第1の角度から識別媒体100を観察する状態において、識別媒体100の手前に距離をおいて右円偏光フィルタを位置させ、右円偏光フィルタ越しに識別媒体100を観察する場合を説明する。この場合、コレステリック液晶層101の背景は、全面白の背景となる。
【0039】
この際、コレステリック液晶層101には、観察者側から自然光が入射し、その中の緑の中心波長を有する右円偏光が観察者側に反射される。また、それ以外の光の成分はコレステリック液晶層101を透過し、ストライプ印刷層103の白のパターンに到達し、そこで反射される。この反射光は、コレステリック液晶層101を図1の上の方向に透過する。
【0040】
コレステリック液晶層101から選択反射された緑の右円偏光は、識別媒体100と観察者との間にある右円偏光フィルタを透過し、観察者に視認される。一方、ストライプ印刷層103からの反射光は、あらゆる偏光方向を含んでいるので、損失を受けながらも右円偏光フィルタを観察者側に透過して観察者に視認される。この結果、コレステリック液晶層101からの選択反斜光(緑の右円偏光)と上記ストライプ印刷層103からの反射光とが同時に視認される。このため、コレステリック液晶層101は白を背景に透明に見え、白を背景に透明なホログラム像が視認される。
【0041】
次に、上記の状態において、右円偏光フィルタを左円偏光フィルタに代えた場合を説明する。この場合、コレステリック液晶層101からの選択反射光(緑の右円偏光)は、左円偏光フィルタで遮断され、観察者に届かない。したがって、背景のストライプ印刷層103の白のパターンから反射された光が観察者側に観察される。具体的には、全体白の背景色のみが観察される。
【0042】
(第2の角度で観察した場合)
次に、第2の角度から識別媒体100を観察する状態において、識別媒体100の手前に距離をおいて右円偏光フィルタを位置させ、右円偏光フィルタ越しに識別媒体100を観察する場合を説明する。この場合、コレステリック液晶層101の背景は、全面黒の背景となる。したがって、コレステリック液晶層101からの選択反射光(緑の右円偏光)のみが、観察者側に向かう。この光は、右円偏光フィルタを透過し、観察者に視認される。したがって、黒い背景の中に緑のホログラム像が浮かび上がって観察される。
【0043】
次に、上記の状態において、右円偏光フィルタを左円偏光フィルタに代えた場合を説明する。この場合、コレステリック液晶層101からの選択反射光(緑の右円偏光)は、左円偏光フィルタで遮断され、観察者に届かない。また、下地は黒であるので、コレステリック液晶層101の背景も黒く見える。したがって、全体が黒く見える。
【0044】
(優位性)
以上述べたように、レンチキュラーレンズの機能により、見る角度を変えることで、コレステリック液晶層の背景色が切り替わる。このため、当該識別媒体を第1の見る角度から右円偏光フィルタを介して観察した場合には、白を背景に透明なホログラム像が見え、そこから見る角度を第2の見る角度にすると、黒い背景の中に緑のホログラム像が浮かび上がった状態に見え方が変化する。
【0045】
また、この状態で右円偏光フィルタを左円偏光フィルタに交換すると、全体が黒く見える状態に変化し、更にこの状態で第1の見る角度とすると、全体が白く見える状態に変化する。
【0046】
このように、見る角度と左右の円偏光フィルタの組み合わせを変えることで、明確に像の切り替わりを視認できる識別媒体が提供される。
【0047】
2.第2の実施形態
(構成)
図4には、実施形態の識別媒体200が示されている。識別媒体200が図1の識別媒体100と異なるのは、コレステリック液晶層101とレンチキュラーレンズ102との間に図柄層201を配置している点である。その他の構成は、識別媒体100と識別媒体200は同じである。
【0048】
図柄層201は、光透過性の樹脂フィルム上に黒(第1の実施形態における第2の光学パターンの色彩)の図柄を印刷した構成を有している。この黒の図柄は、認識可能なものであれば、選択可能であり、模様や図形、文字等が選択可能である。
【0049】
(光学機能)
図5は、図4の識別媒体200の光学機能の原理を示す原理図である。図5において、図2と同じ部分は、図2の場合と内容は同じである。また、第1の角度および第2の角度の意味も図2の場合と同じである。すなわち、第1の角度は、レンチキュラーレンズ102の機能により、白のパターンAが選択的に見える場合であり、第2の角度は、黒のパターンBが選択的に見える場合である。
【0050】
(第1の角度で観察した場合)
まず、第1の角度から識別媒体200を観察する状態において、識別媒体200の手前に距離をおいて右円偏光フィルタを位置させ、右円偏光フィルタ越しに識別媒体200を観察する場合を説明する。この場合、コレステリック液晶層101の背景は、全面白の背景となる。したがって、白い背景の中に図柄層201の黒い図柄が浮かび上がって見える。
【0051】
一方、コレステリック液晶層101からは、選択反射された緑の中心波長を有する右円偏光が反射される。またコレステリック液晶層101に観察面側からストライプ印刷層103側に透過した光が、ストライプ印刷層103の白のパターンで反射され、それが再度コレステリック液晶層101を観察面側に透過する。
【0052】
コレステリック液晶層101から選択反射された緑の右円偏光とストライプ印刷層103からの反射光は、右円偏光フィルタを透過し、観察者に届く。したがって、コレステリック液晶層101は白を背景とした透明なホログラム像が見え、同時に図柄層201の黒い図柄部分には緑のホログラム像が重なって観察される。
【0053】
次に、上記の状態において、右円偏光フィルタを左円偏光フィルタに代えた場合を説明する。この場合、コレステリック液晶層101からの選択反射光(緑の右円偏光)は、左円偏光フィルタで遮断され、観察者に届かない。したがって、背景のストライプ印刷層103の白のパターンから反射された光と図柄層201の黒い図柄のみが観察される。つまり白い背景の中に図柄層201の黒い図柄のみが観察される。
【0054】
(第2の角度で観察した場合)
次に、第2の角度から識別媒体200を観察する状態において、識別媒体200の手前に距離をおいて右円偏光フィルタを位置させ、右円偏光フィルタ越しに識別媒体200を観察する場合を説明する。この場合、コレステリック液晶層101の背景は、全面黒の背景となる。したがって、図柄層201の黒の図柄は、背景に埋もれてしまい視認できない。一方、コレステリック液晶層101からの選択反射光(緑の右円偏光)は、右円偏光フィルタを透過し、観察者側に届く。したがって、黒い背景の中に緑のホログラム像が選択的に観察される。
【0055】
次に、上記の状態において、右円偏光フィルタを左円偏光フィルタに代えた場合を説明する。この場合、コレステリック液晶層101からの選択反射光(緑の右円偏光)は、左円偏光フィルタで遮断され、観察者に届かない。また、下地は全体に一様に黒であるので、図柄層201の図柄も視認できず、コレステリック液晶層101の背景も全体が黒く見える。したがって、識別媒体200は全体が黒く見える。
【0056】
(優位性)
識別媒体200では、識別媒体100に比較して、図柄層201の図柄が更に識別に利用ができ、更に明確な像の切り替わりを観察することができる識別媒体が提供される。なお、図柄層201の図柄の明暗を反転させ、白のパターンで図柄が構成されるようにすることも可能である。
【0057】
3.第3の実施形態
図1の識別媒体100または図4の識別媒体200において、レンチキュラーレンズの代わりにマイクロレンズアレイを用いることもできる。マイクロレンズアレイは、凸レンズが縦横に配列されたレンズアレイである。
【0058】
図6には、マイクロレンズアレイを用いた識別媒体300が示されている。識別媒体300は、図1の識別媒体100において、レンチキュラーレンズ102の代わりにマイクロレンズアレイ301を採用した構造とされている。
【0059】
識別媒体300では、マイクロレンズアレイ301を採用した関係で、図1のストライプ印刷層103に相当する部分にドット印刷層302が配置されている。図7にドット印刷層302の正面図を示す。この例では、第1の光学パターンとして黒い丸のドット模様を採用する例が示されている。この場合、黒い丸のドット以外の部分が第2の光学パターンとなる。
【0060】
図8は、図6の識別媒体300におけるマイクロレンズアレイの光学機能の原理を示す原理図である。図8に示すように、この例では、第1の角度は識別媒体300を垂直な方向(正面の方向)から見た場合であり、この場合に、マイクロレンズの焦点が黒いドットAに合い、第2の角度(斜めの角度)から見た場合にマイクロレンズの焦点がドットA以外の領域である領域B(白の領域)に合う設定とされている。
【0061】
この場合、第1の角度から識別媒体300を観察すると、コレステリック液晶層101の背景は、全面が黒の背景となる。また、第2の角度から識別媒体300を観察すると、コレステリック液晶層101の背景は、全面が白の背景となる。
【0062】
よって、第1の角度から右円偏光フィルタを介して、識別媒体300を観察すると、コレステリック液晶層101からの反射光が黒を背景として浮かび上がり、コレステリック液晶層101から反射される緑の右円偏光が選択的に見える。つまり、黒い背景の中で緑のホログラム像が観察される。
【0063】
また、第1の角度から左円偏光フィルタを介して、識別媒体300を観察すると、コレステリック液晶層101からの反射光が左円偏光フィルタで遮られ、全体が黒く見える。
【0064】
一方、第2の角度から右円偏光フィルタを介して、識別媒体300を観察すると、コレステリック液晶層101の背景からの白の反射光が優先的となり、白を背景として透明なホログラム像(コレステリック液晶層のホログラム像)が観察される。
【0065】
そして、第2の角度から左円偏光フィルタを介して、識別媒体300を観察した場合、コレステリック液晶層101からの反射光が左円偏光フィルタで遮断されてホログラム像は見えない。一方、この場合は、背景で反射した光が左円偏光フィルタを透過してくるので、全体が一様な白っぽい状態に見える。
【0066】
第3の実施形態において、図4に示すような図柄層201をコレステリック液晶層101とマイクロレンズアレイ301との間に介在させた構造も可能である。この場合、図柄層の図柄を黒で構成することで、この図柄層の黒い図柄を識別対象として利用できる。
【0067】
4.第4の実施形態
図1の識別媒体100において、ストライプ印刷層103を図9に示すものとすることができる。図9には、図1のストライプ印刷層103の代わりに利用可能なストライプ印刷層103Aが示されている。ストライプ印刷層103Aは、黒のパターン部分が、一部欠損部分とされ、この欠損部分により、円環形状の図柄に白く抜かれたパターンが形成されている。
【0068】
このストライプ印刷層103Aを備えた識別媒体100(図1参照)を第2の角度から観察すると(図2参照)、上記円形に白くされた部分が白く見えるので、コレステリック液晶層101の背景が全面黒ではなく、黒を背景に円環形状に白く抜かれた状態の背景図柄となる。
【0069】
したがって、右円偏光フィルタを介して第2の角度から識別媒体100を見ると、コレステリック液晶101からの反射光(ホログラム像)と白い円環形状の図柄が見える。また、左円偏光フィルタを介して第2の角度から識別媒体100を見ると、コレステリック液晶101からの反射光(ホログラム像)は見えず、黒の背景に中に白い円環形状の図柄が見える。
【0070】
なお、第1の角度から識別媒体100を見た場合は、コレステリック液晶層101の背景は、全面白となるので、円環形状の図柄は見えず、図1の識別媒体の場合と見え方は同じとなる。
【0071】
また、図10のストライプ印刷層103Bを図1のストライプ印刷層103の代わりに利用すると、第1の見る角度において、白い背景の中に黒の円形の図柄が見え、第2の見る角度では、円形の図柄は見えず、全体が黒く見える。
【0072】
ここでは、円環形状の図柄を利用する例を説明したが、ストライプ印刷層を利用して構成する図柄は、文字や模様等であってもよい。
【0073】
(その他)
以下、以上の例示におけるその他のバリエーションや置き換えが可能な構成について説明する。第1の色彩と第2の色彩の組み合わせは、白と黒の組み合わせに限定されず、色彩の差が明確に認識できる組み合わせであればよい。この組み合わせとしては、濃い色と明るい色の組み合わせ、金属光沢と濃い色の組み合わせ、赤と青の組み合わせ等が挙げられる。ストライプ印刷層103を構成する2色のパターンの幅は、同じでなく、異なる値としてもよい。例えば、白のパターンの幅を大きくすると、白のパターンが選択的に見える角度範囲が広くなり、黒のパターンの幅を大きくすると、黒のパターンが選択的に見える角度範囲が広くなる。
【0074】
図7のドット模様において、白と黒を反転させ、黒い背景の中に白いドットが配列されている構成も可能である。また、白と黒ではなく、明確に区別できる2つの色を利用して、ドット模様を構成することもできる。例えば、青の背景の中に赤のドット模様が形成された構成等が可能である。
【0075】
図1に示す構成において、ストライプ印刷層103をレンチキュラーレンズ102の裏面側に印刷された印刷層により構成することもできる。また、図4に示す構成において、図柄層201をコレステリック液晶層101の裏面側あるいはレンチキュラーレンズ102の表面への印刷により形成することもできる。これらの構成によれば、構造が簡略化され、また全体が薄型化される。
【0076】
第1の見る角度と第2の見る角度の値は、レンチキュラーレンズに対するストライプ印刷層のストライプ模様を構成するパターンの幅(図2の例でいうと、パターンAとパターンBの幅)と位置を調整することで調整される。したがって、見る角度が0°(正面からの観察)でパターンAが選択的に観察され、見る角度を大きくしてゆくと(斜めからの観察で)パターンBが選択的に見える形態とすることも可能である。
【0077】
以上の例示では、光学パターン層の光学パターンとしては、白や黒といった特定の色彩を示すパターンの例を説明した。これ以外の光学パターンの例としては、第1の光学パターンを光透過パターンとし、第2の光学パターンを反射パターンあるいは光吸収パターンとする構成が挙げられる。例えば、図3に示すストライプ印刷層103において、白のパターンAの部分を光透過パターンとする例が挙げられる。この場合、透過パターンと黒のパターン(光吸収パターン)を光学パターンとした光学パターン層となる。
【0078】
この場合、ストライプ印刷層は、光透過性の樹脂フィルム上に黒のパターンBを印刷することで作製される。以下、この透過領域を有するストライプ印刷層を用いた識別媒体の一例を説明する。この場合、図1に示す構成において、粘着層104として透明なものを選択する。
【0079】
この識別媒体は、識別対象物に貼り付けられた状態において、図2の第1の見る角度から観察すると、ストライプ印刷層の透明なパターンが選択的に見え、その下にある識別対象物の表面がコレステリック液晶層101の背景として視認される。また、見る角度を第2の角度とすることで、ストライプ印刷層の黒のパターンが選択的に見え、コレステリック液晶層101の背景が黒く見える。
【0080】
この光学パターン層に光透過パターン層を設ける構成は、図6〜図8に示すマイクロレンズアレイを用いた構成に利用することもできる。この場合、ドット印刷層302の代わりに、ドット模様に光透過パターンが設けられ、それ以外の領域を光反射パターンまたは光吸収パターンとした光学パターン層を利用する。また、ドット印刷層302の代わりに、ドット模様に光反射パターンまたは光吸収パターンが設けられ、それ以外の領域を光透過パターンとした光学パターン層を利用することもできる。
【0081】
図11は、マイクロレンズアレイを利用した構成の他の例を示す概念図である。図11には、マイクロレンズアレイを構成する一つの凸レンズと、この凸レンズに対応するドット印刷層の図柄の状態が概念的に記載されている。
【0082】
図11には、凸レンズ401とその下の部分のドット印刷層402、403、404が示されている。まず、図11(A)には、単純なドット模様の例(図7、図8と同様の例)が示されている。この場合、見る角度(1)と見る角度(2)に対応して、2色の色彩が選択的に観察される。
【0083】
図11(B)と図11(E)の場合、見る角度(1)、(2)、(3)の3つの角度位置において、それぞれ異なる色彩を観察できる。つまり、傾ける角度により多段に色彩が切り替わる。図11(C)と図11(F)の場合、傾ける方位により複数の異なる色彩が選択的に観察される。
【0084】
図11に示す技術を利用すると、コレステリック液晶層の背景として、3以上の異なる色彩を利用することができ、見る角度による像の切り替わりが更に複雑になる。このため、更に高い識別機能を得ることができる。なお、ここでは、色彩が多段に切り替わる例を説明したが、その中に透過状態や光沢反射状態を組み込むことも可能である。
【0085】
以上説明した本発明の各種例示において、ホログラム像や図柄は、識別性が得られるものであればその内容は特に限定されず、図形、文字、数字、各種デザイン、模様等から適宜選択することができる。
【0086】
識別媒体が貼り付けられる物品としては、偽造品を見分ける(真贋の識別が)必要なものであれば、特に限定されない。このような物品の例としては、クレジットカード、パスポート、有価証券、各種製品のパッケージ、免許証、IDカード、衣料品、製品に付けるタグ、小物、電子機器、各種の消耗品等が挙げられる。
【0087】
また、実施形態での説明では、識別媒体から離した位置に観察用の光学フィルタ(円偏光フィルタ)を位置させ、識別のための観察を行う場合を説明したが、左円偏光フィルタや右円偏光フィルタを、識別媒体に接触させた状態で観察を行っても良い。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、真贋の識別を行うための技術に利用することができる。
【符号の説明】
【0089】
100…識別媒体、102…レンチキュラーレンズ、103…ストライプ印刷層、104…粘着層、105…セパレータ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、商品の真贋判定に利用される識別媒体およびその識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真贋判定に利用される識別媒体として、左右の円偏光フィルタを介した観察において、異なる像を観察できるようにすることで識別を行うものが知られている(例えば特許文献1を参照)。この技術では、光透過層、第1の図柄を構成する印刷層、コレステリック液晶層と積層され、コレステリック液晶層に型押加工によるホログラム図柄(第2の図柄)を形成した基本構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−172798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の基本構造の識別媒体において、仮に、コレステリック液晶層が右旋回円偏光を選択的に反射する特性であるとする。この際、左旋回円偏光を選択的に透過する円偏光フィルタ(左円偏光フィルタ)を当該識別媒体から離した位置とし、この円偏光フィルタを介して当該識別媒体を観察する場合を考える。この場合、コレステリック液晶層から右旋回円偏光が反射されるが、それは左旋回円偏光フィルタで遮断されるので観察されない。つまり、コレステリック液晶層に形成された第2の図柄は観察できない。
【0005】
一方、印刷層からの反射光は、コレステリック液晶層で反射された特定波長の右旋回円偏光以外の成分である。よって第1の図柄の反射光は、左旋回円偏光フィルタを透過し、観察される。つまりこの場合は、印刷層からの第1の図柄のみが選択的に見える。
【0006】
一方、右旋回円偏光を選択的に透過する円偏光フィルタ(右円偏光フィルタ)を介して当該識別媒体を観察すると、コレステリック液晶層からの右旋回円偏光の反射光が右円偏光フィルタを透過するので、第2の図柄が見える。また、それと同時に第1の図柄が薄く見える。
【0007】
ここで、第1の図柄が観察されるのは以下の理由による。この場合、コレステリック液晶層を透過するのは、特定波長の右旋回円偏光以外の成分である。この透過光は印刷層で反射され、コレステリック液晶層を透過し、右旋回円偏光フィルタに入射する。この入射光には、コレステリック液晶層が反射した特定波長以外の右旋回円偏光成分が含まれるので、この成分が右旋回円偏光フィルタを透過し、印刷層が薄く見えることになる。
【0008】
このように上記の技術では、左右の円偏光フィルタを利用した観察において、第1の図柄が共通に見える。一方、光学的な識別機能という点では、左右の円偏光フィルタの切り替えにより、像が明確に切り替わった方が好ましい。
【0009】
このような背景において、本発明は、像の明確な切り替わりが観察できる識別媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、観察する側から、ホログラム加工が施されたコレステリック液晶層と、予め決められたパターンで規則的に配列された複数のレンズを備えたレンズアレイ層と、第1の光学パターンと前記第1の光学パターンと異なる光学特性を有する第2の光学パターンとを前記複数のレンズの配列に対応させて配列した光学パターン層とが配置された構造を有することを特徴とする識別媒体である。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、レンズアレイ層の機能により、特定の第1の角度において、第1の光学パターンが選択的に見え、特定の第2の角度において、第2の光学パターンが選択的に見え、それによりコレステリック液晶層の背景の色彩や見た目が切り替わる。このため、左右の円偏光フィルタを介した観察における像の明確な切り替わりが得られる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第1の光学パターンまたは前記第2の光学パターンは、特定の色彩を示すパターンであり、前記コレステリック液晶層と前記光学パターン層との間に前記第1または第2の光学パターンと同じ色彩の図柄が形成された図柄層が配置されていることを特徴とする。請求項2に記載の発明によれば、ある角度では図柄層の図柄が背景から分離して観察でき、他の角度では図柄層の図柄が背景に溶け込んで観察できない光学機能が更に得られる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記第1の光学パターンまたは前記第2の光学パターンは、特定の色彩を示すパターンであり、前記第1の光学パターンまたは前記第2の光学パターンに図柄を構成する欠損部分が設けられていることを特徴とする。請求項3に記載の発明によれば、第1の色彩のパターンまたは第2の色彩のパターンに形成された欠損部分が構成する図柄を識別に利用することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明において、前記レンズアレイ層がレンチキュラーレンズであり、前記光学パターン層がストライプ模様を有していることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明において、前記レンズアレイ層が複数の凸レンズが縦横に配列されたマイクロレンズアレイであり、前記光学パターン層が前記複数の凸レンズの配列に対応したドット模様を有することを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の発明において、前記光学パターン層が前記レンズアレイ層に対する印刷により形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記図柄層が前記レンズアレイ層または前記コレステリック液晶層に対する印刷により形成されていることを特徴とする。
【0018】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の識別媒体を第1の角度から左右の円偏光フィルタを介して観察する第1のステップと、請求項1〜7のいずれか一項に記載の識別媒体を第2の角度から左右の円偏光フィルタを介して観察する第2のステップとを有することを特徴とする識別媒体の識別方法である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の発明によれば、見る角度によって、ホログラム像を表示するコレステリック液晶層の背後の見た目の状態が明瞭に切り替わるので、この切り替わりと左右の円偏光フィルタを介して観察した際の上記ホログラム像の切り替わりとの相乗効果により、像の明確な切り替わりが観察できる識別媒体が提供される。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、図柄層の図柄を利用した更に高い識別機能が得られる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、欠損部分を利用した図柄を利用した更に高い識別機能が得られる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、ある角度方向に沿った角度変化に対して、識別機能を発揮する光学機能が得られる。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、直交する2つの角度方向沿った角度変化に対して、識別機能を発揮する光学機能が得られる。
【0024】
請求項6および請求項7に記載の発明によれば、構造が簡略化され、薄型化された識別媒体が提供される。
【0025】
請求項8に記載の発明によれば、本発明の識別媒体を利用した識別の方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施形態の識別媒体の断面図である。
【図2】実施形態の光学機能の原理を示す原理図である。
【図3】実施形態のストライプ印刷層の正面図である。
【図4】実施形態の識別媒体の断面図である。
【図5】実施形態の光学機能の原理を示す原理図である。
【図6】実施形態の断面図である。
【図7】実施形態のストライプ印刷層の正面図である。
【図8】実施形態の光学機能の原理を示す原理図である。
【図9】実施形態のストライプ印刷層の正面図である。
【図10】実施形態のストライプ印刷層の正面図である。
【図11】マイクロレンズアレイを利用した構成の他の例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
1.第1の実施形態
(構成)
以下において、左旋回の円偏光を左円偏光、右旋回の円偏光を右円偏光、左円偏光を選択的に透過する光学フィルタを左円偏光フィルタ、右円偏光を選択的に透過する光学フィルタを右円偏光フィルタと呼ぶ。
【0028】
図1には、実施形態の識別媒体100が示されている。識別媒体100は、観察する側から、コレステリック液晶層101、レンチキュラーレンズ102、ストライプ印刷層103、粘着層104、セパレータ105と積層された構造とされている。
【0029】
コレステリック液晶層101は、緑の中心波長を有する右円偏光を選択的に反射する特性とされている。なお、選択反射する波長と旋回方向は、この例に限定されず、赤等の他の色の左円偏光であってもよい。コレステリック液晶層101には、ホログラム加工が施されている。ホログラム加工は、エンボス型を押し付けることで行われている。ホログラム加工は、エンボス模様により生じる反射光の干渉効果により、ホログラム像を形成する。このホログラム像は、コレステリック液晶層101からの反射光を観察することで認識される。
【0030】
レンチキュラーレンズ102は、断面がかまぼこ型で一方向に延長する凸レンズを規則的に配列したレンズアレイである。図2は、図1の識別媒体100におけるレンチキュラーレンズ102の光学機能の原理を説明する原理図である。図2には、ストライプ印刷層103上にレンチキュラーレンズ102が積層された構成が記載されている。
【0031】
ストライプ印刷層103は、光学パターン層の一例である。ストライプ印刷層103は、レンチキュラーレンズ102を構成するかまぼこ型の凸レンズの延長方向に延在し、更にかまぼこ型の凸レンズの配列のピッチに対応させた間隔を有する色彩Aと色彩Bのストライプ模様が樹脂フィルム上に印刷された構成とされている。この例では、レンチキュラーレンズ102を構成するかまぼこ型の凸レンズの幅は0.0254mmとされている。ストライプ印刷層は白および黒のパターンで構成され、これら白と黒の各パターンの幅は、かまぼこ型の凸レンズの幅の半分の0.0127mmとされ、隣接する白と黒のパターンの合計の幅が、レンチキュラーレンズ102を構成するかまぼこ型の凸レンズの幅となるように設定されている。また、かまぼこ型の凸レンズの中心に白と黒のパターンの境の部分が一致するようにレンチキュラーレンズ102とストライプ印刷層103との位置関係が設定されている。
【0032】
図3には、ストライプ印刷層103の正面図が示されている。ここで、白のパターンが第1の光学パターンの一例であり、黒のパターンが第2の光学パターンの一例である。
【0033】
仮にコレステリック液晶層101が存在しない構成と仮定した場合、レンチキュラーレンズ102の側からストライプ印刷層103を見ると、見る角度によってレンチキュラーレンズ102を構成する各凸レンズの焦点の位置が変わるので、例えば、第1の見る角度では、白のパターンAが選択的に見え、第2の見る角度では、黒のパターンBが選択的に見える。この際、第1の見る角度からの観察では、白のパターンAのみが見えるので、全面が白に見える。また、第2の見る角度からの観察では、黒のパターンBのみが見えるので、全面が黒に見える。
【0034】
ストライプ印刷層103の下には、粘着材料により構成された粘着層104が配置されている。粘着層104が発揮する粘着力により、識別媒体100が識別対象物(例えば、各種製品等)に貼り付けられる。図1には、識別媒体100を識別対象物に貼り付ける前の状態が示されている。この状態では、粘着層104の識別対象物に接触する面に離型紙となるセパレータ105が貼り付けられている。識別対象物に識別媒体100を固定する際は、このセパレータ105を剥がし、粘着層104を露出させて、粘着層104を識別対象物に接触させる。なお、各層同士の固定は、光透過性の樹脂接着剤により行われている。
【0035】
(製造方法)
まず、コレステリック液晶層101を図示しない配向基板上で成長させる。またこれとは別にレンチキュラーレンズ102、ストライプ印刷層103を積層したものを用意する。そして、コレステリック液晶層101を上記配向基板から剥がし、図示省略されている偏光状態を乱さない材質の光透過性のフィルム(例えば、TAC(トリアセチルセルロース)フィルム)に転移した後にホログラム加工を施す。その後、上記の光透過性のフィルム(図示省略)を観察面側とした状態でコレステリック液晶層101をレンチキュラーレンズ102の露出面上に積層する。ここで各層の固定は、光透過性の樹脂接着剤を用いて行う。最後に粘着層104、セパレータ105を形成し、識別媒体100を得る。
【0036】
(光学機能)
識別媒体100をコレステリック液晶層101の側から観察する状態において、識別媒体100を傾け、視線と識別媒体100の垂線とがなす角度(以下、この角度を見る角度という)をある値にすると、レンチキュラーレンズ102の機能により、コレステリック液晶層101を介して、ストライプ印刷層103の白のパターンAのみが見える場合と黒のパターンBのみが見える場合が得られる。ここで、白のパターンAのみが見える場合は、コレステリック液晶層101の背後(下地)が全面白の背景となる。黒のパターンBのみが見える場合は、コレステリック液晶層101の背後(下地)が全面黒の背景となる。
【0037】
以下、白いパターンAのみがコレステリック液晶層101の背景となる場合の見る角度を第1の見る角度とし、黒いパターンBのみがコレステリック液晶層101の背景となる場合の見る角度を第2の見る角度とする。
【0038】
(第1の角度で観察した場合)
まず、第1の角度から識別媒体100を観察する状態において、識別媒体100の手前に距離をおいて右円偏光フィルタを位置させ、右円偏光フィルタ越しに識別媒体100を観察する場合を説明する。この場合、コレステリック液晶層101の背景は、全面白の背景となる。
【0039】
この際、コレステリック液晶層101には、観察者側から自然光が入射し、その中の緑の中心波長を有する右円偏光が観察者側に反射される。また、それ以外の光の成分はコレステリック液晶層101を透過し、ストライプ印刷層103の白のパターンに到達し、そこで反射される。この反射光は、コレステリック液晶層101を図1の上の方向に透過する。
【0040】
コレステリック液晶層101から選択反射された緑の右円偏光は、識別媒体100と観察者との間にある右円偏光フィルタを透過し、観察者に視認される。一方、ストライプ印刷層103からの反射光は、あらゆる偏光方向を含んでいるので、損失を受けながらも右円偏光フィルタを観察者側に透過して観察者に視認される。この結果、コレステリック液晶層101からの選択反斜光(緑の右円偏光)と上記ストライプ印刷層103からの反射光とが同時に視認される。このため、コレステリック液晶層101は白を背景に透明に見え、白を背景に透明なホログラム像が視認される。
【0041】
次に、上記の状態において、右円偏光フィルタを左円偏光フィルタに代えた場合を説明する。この場合、コレステリック液晶層101からの選択反射光(緑の右円偏光)は、左円偏光フィルタで遮断され、観察者に届かない。したがって、背景のストライプ印刷層103の白のパターンから反射された光が観察者側に観察される。具体的には、全体白の背景色のみが観察される。
【0042】
(第2の角度で観察した場合)
次に、第2の角度から識別媒体100を観察する状態において、識別媒体100の手前に距離をおいて右円偏光フィルタを位置させ、右円偏光フィルタ越しに識別媒体100を観察する場合を説明する。この場合、コレステリック液晶層101の背景は、全面黒の背景となる。したがって、コレステリック液晶層101からの選択反射光(緑の右円偏光)のみが、観察者側に向かう。この光は、右円偏光フィルタを透過し、観察者に視認される。したがって、黒い背景の中に緑のホログラム像が浮かび上がって観察される。
【0043】
次に、上記の状態において、右円偏光フィルタを左円偏光フィルタに代えた場合を説明する。この場合、コレステリック液晶層101からの選択反射光(緑の右円偏光)は、左円偏光フィルタで遮断され、観察者に届かない。また、下地は黒であるので、コレステリック液晶層101の背景も黒く見える。したがって、全体が黒く見える。
【0044】
(優位性)
以上述べたように、レンチキュラーレンズの機能により、見る角度を変えることで、コレステリック液晶層の背景色が切り替わる。このため、当該識別媒体を第1の見る角度から右円偏光フィルタを介して観察した場合には、白を背景に透明なホログラム像が見え、そこから見る角度を第2の見る角度にすると、黒い背景の中に緑のホログラム像が浮かび上がった状態に見え方が変化する。
【0045】
また、この状態で右円偏光フィルタを左円偏光フィルタに交換すると、全体が黒く見える状態に変化し、更にこの状態で第1の見る角度とすると、全体が白く見える状態に変化する。
【0046】
このように、見る角度と左右の円偏光フィルタの組み合わせを変えることで、明確に像の切り替わりを視認できる識別媒体が提供される。
【0047】
2.第2の実施形態
(構成)
図4には、実施形態の識別媒体200が示されている。識別媒体200が図1の識別媒体100と異なるのは、コレステリック液晶層101とレンチキュラーレンズ102との間に図柄層201を配置している点である。その他の構成は、識別媒体100と識別媒体200は同じである。
【0048】
図柄層201は、光透過性の樹脂フィルム上に黒(第1の実施形態における第2の光学パターンの色彩)の図柄を印刷した構成を有している。この黒の図柄は、認識可能なものであれば、選択可能であり、模様や図形、文字等が選択可能である。
【0049】
(光学機能)
図5は、図4の識別媒体200の光学機能の原理を示す原理図である。図5において、図2と同じ部分は、図2の場合と内容は同じである。また、第1の角度および第2の角度の意味も図2の場合と同じである。すなわち、第1の角度は、レンチキュラーレンズ102の機能により、白のパターンAが選択的に見える場合であり、第2の角度は、黒のパターンBが選択的に見える場合である。
【0050】
(第1の角度で観察した場合)
まず、第1の角度から識別媒体200を観察する状態において、識別媒体200の手前に距離をおいて右円偏光フィルタを位置させ、右円偏光フィルタ越しに識別媒体200を観察する場合を説明する。この場合、コレステリック液晶層101の背景は、全面白の背景となる。したがって、白い背景の中に図柄層201の黒い図柄が浮かび上がって見える。
【0051】
一方、コレステリック液晶層101からは、選択反射された緑の中心波長を有する右円偏光が反射される。またコレステリック液晶層101に観察面側からストライプ印刷層103側に透過した光が、ストライプ印刷層103の白のパターンで反射され、それが再度コレステリック液晶層101を観察面側に透過する。
【0052】
コレステリック液晶層101から選択反射された緑の右円偏光とストライプ印刷層103からの反射光は、右円偏光フィルタを透過し、観察者に届く。したがって、コレステリック液晶層101は白を背景とした透明なホログラム像が見え、同時に図柄層201の黒い図柄部分には緑のホログラム像が重なって観察される。
【0053】
次に、上記の状態において、右円偏光フィルタを左円偏光フィルタに代えた場合を説明する。この場合、コレステリック液晶層101からの選択反射光(緑の右円偏光)は、左円偏光フィルタで遮断され、観察者に届かない。したがって、背景のストライプ印刷層103の白のパターンから反射された光と図柄層201の黒い図柄のみが観察される。つまり白い背景の中に図柄層201の黒い図柄のみが観察される。
【0054】
(第2の角度で観察した場合)
次に、第2の角度から識別媒体200を観察する状態において、識別媒体200の手前に距離をおいて右円偏光フィルタを位置させ、右円偏光フィルタ越しに識別媒体200を観察する場合を説明する。この場合、コレステリック液晶層101の背景は、全面黒の背景となる。したがって、図柄層201の黒の図柄は、背景に埋もれてしまい視認できない。一方、コレステリック液晶層101からの選択反射光(緑の右円偏光)は、右円偏光フィルタを透過し、観察者側に届く。したがって、黒い背景の中に緑のホログラム像が選択的に観察される。
【0055】
次に、上記の状態において、右円偏光フィルタを左円偏光フィルタに代えた場合を説明する。この場合、コレステリック液晶層101からの選択反射光(緑の右円偏光)は、左円偏光フィルタで遮断され、観察者に届かない。また、下地は全体に一様に黒であるので、図柄層201の図柄も視認できず、コレステリック液晶層101の背景も全体が黒く見える。したがって、識別媒体200は全体が黒く見える。
【0056】
(優位性)
識別媒体200では、識別媒体100に比較して、図柄層201の図柄が更に識別に利用ができ、更に明確な像の切り替わりを観察することができる識別媒体が提供される。なお、図柄層201の図柄の明暗を反転させ、白のパターンで図柄が構成されるようにすることも可能である。
【0057】
3.第3の実施形態
図1の識別媒体100または図4の識別媒体200において、レンチキュラーレンズの代わりにマイクロレンズアレイを用いることもできる。マイクロレンズアレイは、凸レンズが縦横に配列されたレンズアレイである。
【0058】
図6には、マイクロレンズアレイを用いた識別媒体300が示されている。識別媒体300は、図1の識別媒体100において、レンチキュラーレンズ102の代わりにマイクロレンズアレイ301を採用した構造とされている。
【0059】
識別媒体300では、マイクロレンズアレイ301を採用した関係で、図1のストライプ印刷層103に相当する部分にドット印刷層302が配置されている。図7にドット印刷層302の正面図を示す。この例では、第1の光学パターンとして黒い丸のドット模様を採用する例が示されている。この場合、黒い丸のドット以外の部分が第2の光学パターンとなる。
【0060】
図8は、図6の識別媒体300におけるマイクロレンズアレイの光学機能の原理を示す原理図である。図8に示すように、この例では、第1の角度は識別媒体300を垂直な方向(正面の方向)から見た場合であり、この場合に、マイクロレンズの焦点が黒いドットAに合い、第2の角度(斜めの角度)から見た場合にマイクロレンズの焦点がドットA以外の領域である領域B(白の領域)に合う設定とされている。
【0061】
この場合、第1の角度から識別媒体300を観察すると、コレステリック液晶層101の背景は、全面が黒の背景となる。また、第2の角度から識別媒体300を観察すると、コレステリック液晶層101の背景は、全面が白の背景となる。
【0062】
よって、第1の角度から右円偏光フィルタを介して、識別媒体300を観察すると、コレステリック液晶層101からの反射光が黒を背景として浮かび上がり、コレステリック液晶層101から反射される緑の右円偏光が選択的に見える。つまり、黒い背景の中で緑のホログラム像が観察される。
【0063】
また、第1の角度から左円偏光フィルタを介して、識別媒体300を観察すると、コレステリック液晶層101からの反射光が左円偏光フィルタで遮られ、全体が黒く見える。
【0064】
一方、第2の角度から右円偏光フィルタを介して、識別媒体300を観察すると、コレステリック液晶層101の背景からの白の反射光が優先的となり、白を背景として透明なホログラム像(コレステリック液晶層のホログラム像)が観察される。
【0065】
そして、第2の角度から左円偏光フィルタを介して、識別媒体300を観察した場合、コレステリック液晶層101からの反射光が左円偏光フィルタで遮断されてホログラム像は見えない。一方、この場合は、背景で反射した光が左円偏光フィルタを透過してくるので、全体が一様な白っぽい状態に見える。
【0066】
第3の実施形態において、図4に示すような図柄層201をコレステリック液晶層101とマイクロレンズアレイ301との間に介在させた構造も可能である。この場合、図柄層の図柄を黒で構成することで、この図柄層の黒い図柄を識別対象として利用できる。
【0067】
4.第4の実施形態
図1の識別媒体100において、ストライプ印刷層103を図9に示すものとすることができる。図9には、図1のストライプ印刷層103の代わりに利用可能なストライプ印刷層103Aが示されている。ストライプ印刷層103Aは、黒のパターン部分が、一部欠損部分とされ、この欠損部分により、円環形状の図柄に白く抜かれたパターンが形成されている。
【0068】
このストライプ印刷層103Aを備えた識別媒体100(図1参照)を第2の角度から観察すると(図2参照)、上記円形に白くされた部分が白く見えるので、コレステリック液晶層101の背景が全面黒ではなく、黒を背景に円環形状に白く抜かれた状態の背景図柄となる。
【0069】
したがって、右円偏光フィルタを介して第2の角度から識別媒体100を見ると、コレステリック液晶101からの反射光(ホログラム像)と白い円環形状の図柄が見える。また、左円偏光フィルタを介して第2の角度から識別媒体100を見ると、コレステリック液晶101からの反射光(ホログラム像)は見えず、黒の背景に中に白い円環形状の図柄が見える。
【0070】
なお、第1の角度から識別媒体100を見た場合は、コレステリック液晶層101の背景は、全面白となるので、円環形状の図柄は見えず、図1の識別媒体の場合と見え方は同じとなる。
【0071】
また、図10のストライプ印刷層103Bを図1のストライプ印刷層103の代わりに利用すると、第1の見る角度において、白い背景の中に黒の円形の図柄が見え、第2の見る角度では、円形の図柄は見えず、全体が黒く見える。
【0072】
ここでは、円環形状の図柄を利用する例を説明したが、ストライプ印刷層を利用して構成する図柄は、文字や模様等であってもよい。
【0073】
(その他)
以下、以上の例示におけるその他のバリエーションや置き換えが可能な構成について説明する。第1の色彩と第2の色彩の組み合わせは、白と黒の組み合わせに限定されず、色彩の差が明確に認識できる組み合わせであればよい。この組み合わせとしては、濃い色と明るい色の組み合わせ、金属光沢と濃い色の組み合わせ、赤と青の組み合わせ等が挙げられる。ストライプ印刷層103を構成する2色のパターンの幅は、同じでなく、異なる値としてもよい。例えば、白のパターンの幅を大きくすると、白のパターンが選択的に見える角度範囲が広くなり、黒のパターンの幅を大きくすると、黒のパターンが選択的に見える角度範囲が広くなる。
【0074】
図7のドット模様において、白と黒を反転させ、黒い背景の中に白いドットが配列されている構成も可能である。また、白と黒ではなく、明確に区別できる2つの色を利用して、ドット模様を構成することもできる。例えば、青の背景の中に赤のドット模様が形成された構成等が可能である。
【0075】
図1に示す構成において、ストライプ印刷層103をレンチキュラーレンズ102の裏面側に印刷された印刷層により構成することもできる。また、図4に示す構成において、図柄層201をコレステリック液晶層101の裏面側あるいはレンチキュラーレンズ102の表面への印刷により形成することもできる。これらの構成によれば、構造が簡略化され、また全体が薄型化される。
【0076】
第1の見る角度と第2の見る角度の値は、レンチキュラーレンズに対するストライプ印刷層のストライプ模様を構成するパターンの幅(図2の例でいうと、パターンAとパターンBの幅)と位置を調整することで調整される。したがって、見る角度が0°(正面からの観察)でパターンAが選択的に観察され、見る角度を大きくしてゆくと(斜めからの観察で)パターンBが選択的に見える形態とすることも可能である。
【0077】
以上の例示では、光学パターン層の光学パターンとしては、白や黒といった特定の色彩を示すパターンの例を説明した。これ以外の光学パターンの例としては、第1の光学パターンを光透過パターンとし、第2の光学パターンを反射パターンあるいは光吸収パターンとする構成が挙げられる。例えば、図3に示すストライプ印刷層103において、白のパターンAの部分を光透過パターンとする例が挙げられる。この場合、透過パターンと黒のパターン(光吸収パターン)を光学パターンとした光学パターン層となる。
【0078】
この場合、ストライプ印刷層は、光透過性の樹脂フィルム上に黒のパターンBを印刷することで作製される。以下、この透過領域を有するストライプ印刷層を用いた識別媒体の一例を説明する。この場合、図1に示す構成において、粘着層104として透明なものを選択する。
【0079】
この識別媒体は、識別対象物に貼り付けられた状態において、図2の第1の見る角度から観察すると、ストライプ印刷層の透明なパターンが選択的に見え、その下にある識別対象物の表面がコレステリック液晶層101の背景として視認される。また、見る角度を第2の角度とすることで、ストライプ印刷層の黒のパターンが選択的に見え、コレステリック液晶層101の背景が黒く見える。
【0080】
この光学パターン層に光透過パターン層を設ける構成は、図6〜図8に示すマイクロレンズアレイを用いた構成に利用することもできる。この場合、ドット印刷層302の代わりに、ドット模様に光透過パターンが設けられ、それ以外の領域を光反射パターンまたは光吸収パターンとした光学パターン層を利用する。また、ドット印刷層302の代わりに、ドット模様に光反射パターンまたは光吸収パターンが設けられ、それ以外の領域を光透過パターンとした光学パターン層を利用することもできる。
【0081】
図11は、マイクロレンズアレイを利用した構成の他の例を示す概念図である。図11には、マイクロレンズアレイを構成する一つの凸レンズと、この凸レンズに対応するドット印刷層の図柄の状態が概念的に記載されている。
【0082】
図11には、凸レンズ401とその下の部分のドット印刷層402、403、404が示されている。まず、図11(A)には、単純なドット模様の例(図7、図8と同様の例)が示されている。この場合、見る角度(1)と見る角度(2)に対応して、2色の色彩が選択的に観察される。
【0083】
図11(B)と図11(E)の場合、見る角度(1)、(2)、(3)の3つの角度位置において、それぞれ異なる色彩を観察できる。つまり、傾ける角度により多段に色彩が切り替わる。図11(C)と図11(F)の場合、傾ける方位により複数の異なる色彩が選択的に観察される。
【0084】
図11に示す技術を利用すると、コレステリック液晶層の背景として、3以上の異なる色彩を利用することができ、見る角度による像の切り替わりが更に複雑になる。このため、更に高い識別機能を得ることができる。なお、ここでは、色彩が多段に切り替わる例を説明したが、その中に透過状態や光沢反射状態を組み込むことも可能である。
【0085】
以上説明した本発明の各種例示において、ホログラム像や図柄は、識別性が得られるものであればその内容は特に限定されず、図形、文字、数字、各種デザイン、模様等から適宜選択することができる。
【0086】
識別媒体が貼り付けられる物品としては、偽造品を見分ける(真贋の識別が)必要なものであれば、特に限定されない。このような物品の例としては、クレジットカード、パスポート、有価証券、各種製品のパッケージ、免許証、IDカード、衣料品、製品に付けるタグ、小物、電子機器、各種の消耗品等が挙げられる。
【0087】
また、実施形態での説明では、識別媒体から離した位置に観察用の光学フィルタ(円偏光フィルタ)を位置させ、識別のための観察を行う場合を説明したが、左円偏光フィルタや右円偏光フィルタを、識別媒体に接触させた状態で観察を行っても良い。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、真贋の識別を行うための技術に利用することができる。
【符号の説明】
【0089】
100…識別媒体、102…レンチキュラーレンズ、103…ストライプ印刷層、104…粘着層、105…セパレータ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察する側から、
ホログラム加工が施されたコレステリック液晶層と、
予め決められたパターンで規則的に配列された複数のレンズを備えたレンズアレイ層と、
第1の光学パターンと前記第1の光学パターンと異なる光学特性を有する第2の光学パターンとを前記複数のレンズの配列に対応させて配列した光学パターン層と
が配置された構造を有することを特徴とする識別媒体。
【請求項2】
前記第1の光学パターンまたは前記第2の光学パターンは、特定の色彩を示すパターンであり、
前記コレステリック液晶層と前記光学パターン層との間に前記第1または第2の光学パターンと同じ色彩の図柄が形成された図柄層が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の識別媒体。
【請求項3】
前記第1の光学パターンまたは前記第2の光学パターンは、特定の色彩を示すパターンであり、
前記第1の光学パターンまたは前記第2の光学パターンに図柄を構成する欠損部分が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の識別媒体。
【請求項4】
前記レンズアレイ層がレンチキュラーレンズであり、
前記光学パターン層がストライプ模様を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の識別媒体。
【請求項5】
前記レンズアレイ層が複数の凸レンズが縦横に配列されたマイクロレンズアレイであり、
前記光学パターン層が前記複数の凸レンズの配列に対応したドット模様を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の識別媒体。
【請求項6】
前記光学パターン層が前記レンズアレイ層に対する印刷により形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の識別媒体。
【請求項7】
前記図柄層が前記レンズアレイ層または前記コレステリック液晶層に対する印刷により形成されていることを特徴とする請求項2に記載の識別媒体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の識別媒体を第1の角度から左右の円偏光フィルタを介して観察する第1のステップと、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の識別媒体を第2の角度から左右の円偏光フィルタを介して観察する第2のステップと
を有することを特徴とする識別媒体の識別方法。
【請求項1】
観察する側から、
ホログラム加工が施されたコレステリック液晶層と、
予め決められたパターンで規則的に配列された複数のレンズを備えたレンズアレイ層と、
第1の光学パターンと前記第1の光学パターンと異なる光学特性を有する第2の光学パターンとを前記複数のレンズの配列に対応させて配列した光学パターン層と
が配置された構造を有することを特徴とする識別媒体。
【請求項2】
前記第1の光学パターンまたは前記第2の光学パターンは、特定の色彩を示すパターンであり、
前記コレステリック液晶層と前記光学パターン層との間に前記第1または第2の光学パターンと同じ色彩の図柄が形成された図柄層が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の識別媒体。
【請求項3】
前記第1の光学パターンまたは前記第2の光学パターンは、特定の色彩を示すパターンであり、
前記第1の光学パターンまたは前記第2の光学パターンに図柄を構成する欠損部分が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の識別媒体。
【請求項4】
前記レンズアレイ層がレンチキュラーレンズであり、
前記光学パターン層がストライプ模様を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の識別媒体。
【請求項5】
前記レンズアレイ層が複数の凸レンズが縦横に配列されたマイクロレンズアレイであり、
前記光学パターン層が前記複数の凸レンズの配列に対応したドット模様を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の識別媒体。
【請求項6】
前記光学パターン層が前記レンズアレイ層に対する印刷により形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の識別媒体。
【請求項7】
前記図柄層が前記レンズアレイ層または前記コレステリック液晶層に対する印刷により形成されていることを特徴とする請求項2に記載の識別媒体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の識別媒体を第1の角度から左右の円偏光フィルタを介して観察する第1のステップと、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の識別媒体を第2の角度から左右の円偏光フィルタを介して観察する第2のステップと
を有することを特徴とする識別媒体の識別方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−158795(P2011−158795A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21739(P2010−21739)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]