説明

警報制御装置、警報制御プログラム、及び警報システム

【課題】出力電圧値と距離との相関をとる作業を無くすことで、運用性、作業性に優れた警報システム、警報制御装置、及び警報制御プログラムを提供する。
【解決手段】警報制御装置19は、巻込事故が生じる危険領域の後方に在る物体を検出する第1センサーから出力される第1信号値を測定する信号測定部191を備える。また、警報制御装置19は、測定された第1信号値の大きさに関わらず、前回測定された前記第1信号値よりも、今回測定された前記第1信号値が所定値だけ大きい場合に、第1センサーに対する物体の接近を検知する物体検知部192を備える。さらに、警報制御装置19は、物体の接近を検知した場合に、危険領域における物体に対する巻込事故を警報するよう警報機を制御する警報制御部197を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻込事故のおそれを警報する警報機を制御する警報制御装置、警報制御プログラム、及び警報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、赤外線センサーから出力された信号に基づいて物体までの距離を検出すると共に、検出した距離に基づいて物体を検知する技術について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−233837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、赤外線センサーは、図14(a)に示すように、赤外線を照射する赤外発光ダイオードSiと、照射された赤外線の反射光の受光位置に応じた信号を出力する光位置センサーSpとを有する。ここで、物体による赤外線の反射位置が点Xbから距離Lだけ遠側の点Xfに移動した場合に、光位置センサーSpにおける反射光の受光位置Pbの移動量Lbfは、同じ距離Lだけ近側の点Xnに物体が移動した場合の変化量Lbnと比べて少ない。このため、物体までの距離と光位置センサーSpが出力する信号の電圧値との相関グラフは、例えば図14(b)に示すような曲線で表される。
【0005】
従来の技術において、物体の接近を警報させる警報制御装置は、例えば物体の接近を判定するために、光位置センサーSpが出力する電圧から算出される距離に対して所定の閾値を設け(例えば50cm)、この閾値よりも小さい距離を検知した場合に物体が接近したと判定するようにしていた。従って所定の距離に対応する光位置センサーSpの電圧を、警報制御装置が予め知っておく必要がある。
【0006】
そのために光位置センサーSpの特性を予め測定しておく、校正という作業を行う。この校正という作業は、光位置センサーSpから出力される電圧と、光位置センサーSpから物体まで距離との相関を特定する作業である。例えば60cmの距離に有る物体を測定した場合の出力電圧値が0.5Vだった場合に、60cmの場合は0.5Vという出力電圧値が得られるというデータを記録する。次に30cmの距離にある物体を測定し、今度は1.0Vという結果を得る。物体との距離に対応して出力される電圧を測定していった結果、図14(b)のような相関図が得られる。
【0007】
図14(b)に示すように、出力電圧値と距離との相関を示す曲線が一次曲線でない場合には、複数のポイントで出力電圧値と距離との相関をとっていかなければならず、時間も手間もかかるという問題がある。
【0008】
さらに、赤外線センサー個々の部品精度等に起因して、同じ距離にある物体を測定しても、異なる赤外線センサーでは得られる出力電圧値が異なるものとなる。一例として本発明の実施例に用いた赤外線センサーでは3%程度の差異を持っていることが確認されている。すなわち、赤外線センサー個々において出力電圧値と距離との相関を示す曲線は若干異なるものとなる。
【0009】
従って、複数の赤外線センサーを用いて、同一の距離にある物体までの距離を測定しようとする場合は、複数のセンサーによる測定結果の差異を無くし、同一の結果が得られるようにするために、個々の赤外線センサーごとに出力電圧値と距離との相関をとる作業(つまり、校正)をしなければならない。しかし、上述のように相関を取る作業は時間も手間もかかる作業であるため、この校正作業を複数の赤外線センサーで行うのであれば、時間と労力を多大に要するという問題があった。
【0010】
さらに、赤外線センサーが故障して、これを交換したい場合にも出力電圧値と距離との相関をとりなおしたうえで交換しなければならず、容易に交換することができないという問題があった。
【0011】
本発明は、このような点に鑑み、その目的とするところは、出力電圧値と距離との相関をとる作業を無くすことで、運用性、作業性に優れた警報システム、警報制御装置、及び警報制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る警報制御装置は、
巻込事故が生じる危険領域の後方に在る物体を検出する第1センサーから出力される第1信号値を測定する信号測定手段と、
前記信号測定手段が測定した前記第1信号値の大きさに関わらず、前回測定された前記第1信号値よりも、今回測定された前記第1信号値が所定値だけ大きい場合に、前記第1センサーに対する前記物体の接近を検知する物体検知手段と、
前記物体検知手段が前記物体の接近を検知した場合に、前記危険領域における前記物体に対する前記巻込事故のおそれがあると判定する巻込判定手段と、
前記巻込判定手段が前記巻込事故のおそれがあると判定した場合に、前記巻込事故を警報するよう警報機を制御する警報制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0013】
第1の観点に係る警報制御装置において、
前記信号測定手段は、前記危険領域の後方、かつ前記第1センサーよりも前方に位置する第2センサーから出力される第2信号値をさらに測定し、
前記物体検知手段は、前回測定された前記第2信号値の大きさに関わらず、今回測定された前記第2信号値が前記所定値だけ大きい場合に、前記第2センサーに対する前記物体の接近をさらに検知し、
前記物体検知手段によって前記第2センサーに対する前記物体の接近が検知される前に、前記第1センサーに対する前記物体の接近が検知された場合に、前記物体の移動方向を前方と判定する移動方向判定手段をさらに備え、
前記巻込判定手段は、前記移動方向判定手段によって前記物体が前方に移動していると判定された場合に、前記危険領域へ向かう前記物体に対する前記巻込事故のおそれがあると判定する、
こととしても良い。
【0014】
また、第1の観点に係る警報制御装置において、
前記物体検知手段は、
測定された前記第1信号値の大きさに関わらず、前回測定された前記第1信号値よりも、今回測定された前記第1信号値が前記所定値だけ小さい場合に、前記第1センサーからの前記物体の離間をさらに検知すると共に、
測定された前記第2信号値の大きさに関わらず、前回測定された前記第2信号値よりも、今回測定された前記第2信号値が前記所定値だけ小さい場合に、前記第2センサーからの前記物体の離間をさらに検知し、
前記巻込判定手段は、前記物体検知手段によって前記第1センサーへの前記物体の接近が検知された後に、前記物体検知手段によって前記第1センサーからの前記物体の離間が検知され、かつ前記第2センサーへの前記物体の接近が検知された場合に、前記物体対する前記巻込事故のおそれがあると判定する、
こととしても良い。
【0015】
また、第1の観点に係る警報制御装置において、
前記巻込判定手段は、前記物体検知手段によって前記第1センサーへの前記物体の接近が検知された後に、前記物体検知手段によって前記第1センサーからの前記物体の離間が検知されず、かつ前記第2センサーへの前記物体の接近が検知された場合に、前記危険領域へ向かう前記物体に前記巻込事故のおそれがないと判定する、
こととしても良い。
【0016】
また、第1の観点に係る警報制御装置において、
前記巻込判定手段は、前記物体検知手段によって前記第1センサーと前記第2センサーとへの前記物体の接近が検知されている場合に、前記物体検知手段によって前記第1センサーへの前記物体のさらなる接近が検知された後に、前記第1センサーからの前記物体の離間が検知され、かつ前記第2センサーへの前記物体のさらなる接近が検知された場合に、前記第2センサーへさらに接近した前記物体に対する前記巻込事故のおそれがあると判定する、
こととしても良い。
【0017】
また、第1の観点に係る警報制御装置において、
前記信号測定手段は、前記危険領域の後方、かつ前記第2センサーよりも前方に位置する第3センサーから出力される第3信号値をさらに測定し、
前記物体検知手段は、前記信号測定手段で測定された前記第3信号値の大きさに関わらず、前回測定された前記第3信号値よりも、今回測定された前記第3信号値が前記所定値だけ大きい場合に、前記第3センサーに対する前記物体の接近をさらに検知し、
前記物体検知手段によって前記物体の前記第1センサーへの接近が検知された第1検知時刻から前記物体の前記第2センサーへの接近が検知された第2検知時刻までの時間に基づいて、前記第3センサーへの前記物体の接近が予想される第1予測時刻を予測する接近予測手段と、
前記物体検知手段が前記第3センサーへの前記物体の接近を検知した第3検知時刻に基づいて、前記接近予測手段の前記第1予測時刻に対する予測が的中したか否かを判定する的中判定手段と、
前記的中判定手段によって前記第1予測時刻に対する予測が的中したと判定された場合に、前記第1センサー、前記第2センサー、及び前記第3センサーに接近した前記物体は同一物であると判定する同一性判定手段と、をさらに備え、
前記巻込判定手段は、前記同一性判定手段によって、前記第1センサー、前記第2センサー、及び前記第3センサーに接近した前記物体が同一物であると判定された場合に、前記物体に対して前記巻込事故のおそれがないと判定する、
こととしても良い。
【0018】
また、第1の観点に係る警報制御装置において、
前記同一性判定手段は、前記的中判定手段によって前記第1予測時刻に対する予測が的中したと判定され、かつ前記第1時刻から前記第3時刻までの間、前記物体検知手段が前記第1センサーへの前記物体の接近を継続して検知していた場合に、前記第1センサー、前記第2センサー、及び前記第3センサーに接近した前記物体は同一物であると判定する、
こととしても良い。
【0019】
また、第1の観点に係る警報制御装置において、
前記信号測定手段は、前記危険領域の後方、かつ前記第3センサーよりも前方に位置する第4センサーから出力された第4信号値をさらに測定し、
前記物体検知手段は、前記信号測定手段で測定された前記第4信号値の大きさに関わらず、前回測定された前記第4信号値よりも、今回測定された前記第4信号値が前記所定値だけ大きい場合に、前記第4センサーに対する前記物体の接近をさらに検知し、
前記接近予測手段は、前記第2検知時刻から前記第3検知時刻までの時間に基づいて、前記4センサーへの前記物体の接近が予想される第2予測時刻をさらに予測し、
前記的中判定手段は、前記物体検知手段によって前記第4センサーへの前記物体の接近が検知された第4検知時刻に基づいて、前記接近予測手段の前記第2予測時刻に対する予測が的中したか否かをさらに判定し、
前記同一性判定手段は、前記的中判定手段によって前記第1予測時刻に対する予測と、前記第2予測時刻に対する予測とが的中したと判定された場合に、前記第1センサー、前記第2センサー、前記第3センサー、及び前記第4センサーに接近した前記物体は同一物であると判定する、
こととしても良い。
【0020】
また、第1の観点に係る警報制御装置において、
前記同一性判定手段は、
前記的中判定手段によって前記第1予測時刻に対する予測と、前記第2予測時刻に対する予測とが的中したと判定され、
前記物体検知手段が、前記第1検知時刻から前記第2検知時刻までの間及び前記第3検知時刻から前記第4検知時刻までの間において、前記前記物体の前記1センサーへの接近を継続して検知し、
かつ前記物体検知手段が、前記第2検知時刻から前記第3検知時刻までの間において、前記物体の前記2センサーへの接近を継続して検知した場合に、
前記第1センサー、前記第2センサー、前記第3センサー、及び前記第4センサーに接近した前記物体は同一物であると判定する、
こととしても良い。
【0021】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る警報制御プログラムは、
コンピュータを、
巻込事故が生じる危険領域の後方に在る物体を検出する第1センサーから出力される第1信号値を測定する信号測定手段と、
前記信号測定手段が測定した前記第1信号値の大きさに関わらず、前回測定された前記第1信号値よりも、今回測定された前記第1信号値が所定値だけ大きい場合に、前記第1センサーに対する前記物体の接近を検知する物体検知手段と、
前記物体検知手段が前記物体の接近を検知した場合に、前記危険領域における前記物体に対する前記巻込事故のおそれがあると判定する巻込判定手段と、
前記巻込判定手段が前記巻込事故のおそれがあると判定した場合に、前記巻込事故を警報するよう警報機を制御する警報制御手段と、
して機能させることを特徴とする。
【0022】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点に係る警報システムは、
巻込事故が生じる危険領域の後方に在る物体を検出する第1センサーと、
前記第1センサーが出力した前記第1信号値の大きさに関わらず、前回出力された前記第1信号値よりも、今回出力された前記第1信号値が所定値だけ大きい場合に、前記第1センサーに対する前記物体の接近を検知する物体検知手段と、
前記物体検知手段が前記物体の接近を検知した場合に、前記危険領域における前記物体に対する前記巻込事故のおそれがあると判定する巻込判定手段と、
前記巻込判定手段が前記巻込事故のおそれがあると判定した場合に、前記巻込事故を警報する警報機と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る警報制御装置、警報制御プログラム、及び警報システムによれば、出力電圧値と距離との相関をとる作業を無くすことができるため、運用性及び作業性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1(a)は、第1の実施形態に係る警報システムの一構成例を表すシステム構成図である。図1(b)は、赤外線センサーの取付位置の一例を表す図である。
【図2】第1の実施形態に係る警報制御装置の一構成例を表すハードウェア構成図である。
【図3】第1の実施形態に係る警報制御装置が実行する警報制御処理の一例を表すフローチャートである。
【図4】第1の実施形態に係る警報制御装置が有する機能の一例を表す機能ブロック図である。
【図5】歩行者が危険領域へ近づいてくる状況の一例を表す図である。図5(a)は、歩行者がいない状況の一例を表す。図5(b)は、歩行者が第1センサーの前に居る状況の一例を表す。図5(c)は、歩行者が第2センサーの前に居る状況の一例を表す。図5(d)は、歩行者が第3センサーの前に居る状況の一例を表す。図5(e)は、歩行者が第4センサーの前に居る状況の一例を表す。
【図6】警報制御装置が実行する検知処理の一例を表すフローチャートである。
【図7】他の車両に追い越される状況の一例を表す図である。 図7(a)は、他の車両が存在しない状況の一例を表す。 図7(b)は、他の車両が第1センサーの前を通過する状況の一例を表す。 図7(c)は、他の車両が第1センサー及び第2センサーの前を通過する状況の一例を表す。 図7(d)は、他の車両が第1センサーから第3センサーの前を通過する状況の一例を表す。 図7(e)は、他の車両が全センサーの前を通過する状況の一例を表す。
【図8】ガードレールとトラックとの間を歩行者が歩行する状況の一例を表す図である。 図8(a)は、ガードレールが全センサーの前に在り、かつ歩行者がいない状況の一例を表す。 図8(b)は、ガードレールが全センサーの前に在り、かつ歩行者が第1センサーの前に居る状況の一例を表す。 図8(c)は、ガードレールが全センサーの前に在り、かつ歩行者が第2センサーの前に居る状況の一例を表す。 図8(d)は、ガードレールが全センサーの前に在り、かつ歩行者が第3センサーの前に居る状況の一例を表す。 図8(e)は、ガードレールが全センサーの前に在り、かつ歩行者が第4センサーの前に居る状況の一例を表す。
【図9】第2の実施形態に係る警報制御装置が実行する警報制御処理の一例を表すフローチャートの一部分である。
【図10】第2の実施形態に係る警報制御装置が実行する警報制御処理の一例を表すフローチャートの他の部分である。
【図11】第2の実施形態に係る警報制御装置が有する機能の一例を表す機能ブロック図である。
【図12】赤外線を反射し難い部分(特定部分)を有した車両によって追い越される状況の一例を表す図である。図12(a)は、車両の特定部分でない部分(通常部分)が第1センサーと第2センサーとの前に在る状況の一例を表す。図12(b)は、車両の特定部分が第1センサーの前に在り、車両の通常部分が第2センサーの前に在る状況の一例を表す。図12(c)は、車両の通常部分が第1センサーから第3センサーの前に在る状況の一例を表す。図12(d)は、車両の特定部分が第2センサーの前に在り、車両の通常部分が第1センサー及び第3センサーの前に在る状況の一例を表す。図12(e)は、車両の通常部分が第1センサーから第4センサーの前に在る状況の一例を表す。
【図13】第2の実施形態に係る警報制御装置が実行する警報制御処理の他の例を表すフローチャートの一部分である。
【図14】図14(a)は、反射位置の変化と受光位置の変化との関係の一例を表す図である。図14(b)は、センサー電圧と反射物までの距離との関係の一例を表す相関図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の最良の実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。
【0026】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る警報システム10は、図1(a)に示すように貨物車両(トラック)に搭載される。警報システム10は、トラックの巻込防止装置(サイドバンパー)1r及び1lから外側に所定距離以内の距離にある領域であって、巻込事故が生じる危険領域DAr及びDAlへ歩行者が入り込んだ場合に、ドライバーに対してトラックが巻込事故を起こすおそれがあることを警報する。尚、巻込事故のおそれを警告するために、存在を検知する対象は、歩行者だけでなく、自転車、車椅子、又は乳母車でも構わない。
【0027】
特に、警報システム10は、車両から外側に所定距離以内の距離にある領域であって、危険領域DAr及びDAlよりも後方に位置する検知領域DEr又はDElを通って歩行者が危険領域DAr又はDAlに入った場合に警報を行う。これは、前方から危険領域DAr又はDAlに入る歩行者よりも、窓、サイドミラー、及びバックミラーの後方死角から危険領域DAr及びDAlに入る歩行者の方が、警報の必要性が高いためである。前方から危険領域DAr又はDAlに入る歩行者は、運転席のドライバーから視認可能だからである。
【0028】
警報システム10は、赤外線センサーSl1からSl4及びSr1からSr4、カーナビゲーション装置17、警報機(スピーカー)18r及び18l、及び警報制御装置19を備える。尚、警報システム10は、赤外線センサーの代わりに、光式、電波式、又は超音波式の距離センサーを備えても良い。
【0029】
赤外線センサーSl1からSl4は、図1(b)に示すようにトラックの台車部分の左側面に後方から順番に等間隔で設置されている。赤外線センサーSr1からSr4は、同様に、台車部分の右側面に設置される。尚、説明を簡単にするため、以下、赤外線センサーSl1からSl4についてのみ説明する。
【0030】
カーナビゲーション装置17は、LCD(Liquid Crystal Display)を備え、警報機18r及び18l並びに警報制御装置19へ接続する。カーナビゲーション装置17は、警報制御装置19の制御に従って、巻込事故のおそれを警告する表示をLCDで行うと共に、警報機18r及び18lに所定の警告音を出力させる。
【0031】
次に、警報制御装置19のハードウェア構成について説明する。
警報制御装置19は、図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)19a、ROM(Read Only Memory)19b、RAM(Random Access Memory)19c、ハードディスク19d、USB(Universal Serial Bus)コントローラー19e、CAN(Controller Area Network)コントローラー19f、入力装置19g、ビデオカード19h、及びLCD(Liquid Crystal Display)19iを備える。
【0032】
CPU19aは、ROM19b又はハードディスク19dに保存されたプログラムに従ってソフトウェア処理を実行することで、警報制御装置19の全体制御を行う。RAM19cは、CPU19aによるプログラムの実行時において、処理対象とするデータを一時的に記憶する。
【0033】
USBコントローラー19eは、警報制御装置19とUSB接続する赤外線センサーSl1からSl4との通信を制御する。CANコントローラー19fは、警報制御装置19と接続するカーナビゲーション装置17とのCAN通信を制御する。ビデオカード19hは、LCD19hの表示を制御し、入力装置19g及びLCD19hは、ユーザーインタフェースを提供する。
【0034】
次に、図2のハードウェアを用いて実行されるソフトウェア処理について説明する。
図2のCPU19aは、図3に示すような警告制御処理を実行することで、図4に示す様な検知部190、方向判定部194、定期監視部195、巻込判定部196、警報制御部197、及び初期化部198として機能する。尚、検知部190は、信号測定部191及び物体検知部192で構成される。
【0035】
先ず、図5(a)から(e)に示すように、歩行者が貨物車両(トラック)の後方から危険領域へ近づく状況において実行される警告制御処理について説明する。
【0036】
図3の警報制御処理の実行が開始されると、図4の方向判定部194は、歩行者の移動方向が貨物車両の前方から後方へ向かう方向であることを表すFフラグが有るか(つまり、Fフラグが立っているか)否かを判断する(ステップS01)。方向判定部194は、Fフラグがデフォルトの値である(つまり、Fフラグがない)と判断する(ステップS01;No)。
【0037】
次に、図4の検知部190は、赤外線センサーSl1に対して図6に示すような検知処理を実行する(ステップS02)。尚、ステップS02が実行されたとき、図5(a)に示すように、赤外線センサーSl1からSl4が赤外線を照射する照射位置に歩行者OWは居ない。
【0038】
図6の検知処理の実行が開始されると、図4の信号測定部191は、赤外線センサーSl1から出力された信号の電圧値を測定する(ステップS21)。次に、信号測定部191は、今回に測定した赤外線センサーSl1の電圧値を変数Bに保存する(ステップS22)。その後、物体検知部192は、前回に測定した値を格納する変数Aに格納されている値と、今回測定した値を格納する変数Bとを比較する(ステップS23)。次に、物体検知部192は、変数Aと変数Bとが同じ値であるか否かを判断する(ステップS24)。
【0039】
ここで、通常、ヒステリシス等による測定結果のばらつきを考慮して、出力された電圧に対して適当な許容値を持たせることが安定した測定のためには望ましい。また、赤外線センサーSl1が出力する信号の電圧値と、赤外線センサーSl1から物体(つまり、歩行者)OWまでの距離との相関関係は、図14(b)に示すような曲線となる。このため、例えば出力した電圧の5%を許容値として赤外線センサーSl1に持たせると、赤外線センサーSl1に近い側(近側)で許容される距離の範囲Rnと、遠い側(遠側)で許容される距離の範囲Rfとが大きく異なる。
【0040】
この問題を解決するためには、範囲Rnと範囲Rfとを、それぞれ別の値として赤外線センサーS11に記憶させることが考えられる。しかし、このようにすると、距離ごとに適正な、範囲Rnと、範囲Rfとを記憶させねばならない。
【0041】
さらに、範囲Rnと、範囲Rfは、上述したように、赤外線センサーごとに相関関係が異なるため、赤外線センサーごとに設定する必要がある。
【0042】
しかしながら、物体検知部192は、赤外線センサーSl1(ないしSl4)の出力電圧から赤外線センサーSl1(ないしSl4)と歩行者との距離を検出した後に、検出した距離に基づいて歩行者を検知するのではなく、出力電圧が前回と同じであるか相違するかに基づいて歩行者の接近及び離間を検知する。
【0043】
従って、本発明においては測定に影響しない限りにおいて、範囲Rnと、範囲Rfとが異なっていても構わない。このような特徴を持つため、特に相関をとることなく測定範囲の全域にわたって、ひとつの許容値を設定するだけで安定した測定を行うことができる。
【0044】
また、同一機種の赤外線センサーを用いる限り、異なる個体であっても測定に影響しない、範囲Rnと、範囲Rfとは概ね同じ値と考えられる。従って、同一機種であって異なる個体であっても、ひとつの許容値を設定するだけで安定した測定を行うことができる。
【0045】
これらの構成によれば、赤外線センサーSl1(ないしSl4)の出力電圧の大小のみを比較して対象物を検出するため、例えば、赤外線センサーSl1(ないしSl4)の性能試験を行うことで、赤外線センサーSl1(ないしSl4)が検出対象物と所定の距離を隔てて設置された場合に、所定の大きさの信号値を出力するようにセンサーSl1(ないしSl4)を調整(つまり、校正)しなくとも、赤外線センサーSl1(ないしSl4)に対する歩行者の接近及び離間を検知できる。
【0046】
また、これらの構成によれば、赤外線センサーSl1(ないしSl4)のセンサー特性が経年とともに変化してしまっても又は取付誤差が生じてしまっても、歩行者の接近及び離間を検知できる。
【0047】
図6のステップS24を実行した後に、物体検知部192は、変数Aと変数Bとが同じであると判断する(ステップS24;Yes)。赤外線センサーSl1が照射した赤外線を反射する歩行者が居ない(過去にも居ない)からである。次に、物体検知部192は、赤外線センサーSl1に対する歩行者の位置の変化(つまり、接近又は離間)の有無、及び変化がある場合にはその方向(以下単に、変化方向という)を表す値を、「変化無し」を表す値「0」とし、次に変化するまで保持し続ける変化方向の値を、既に保持している値のまま保持する(ステップS25)。尚、デフォルトでは、保持される変化方向は、「変化無し」を表す値「0」に設定されている。
【0048】
その後、物体検知部192は、変数Aに変数Bの値を代入して、測定結果を更新する(ステップS31)。次に、物体検知部192は、保持した変化方向を表すデータ(以下、センサーデータという)を出力する(ステップS32)。その後、検知部190は、赤外線センサーSl1に対する検知処理の実行を終了した後に、赤外線センサーSl2からSl4に対してそれぞれ検知処理を行う。これにより、検知部190は、図5(a)に示すように、赤外線センサーSl1からSl4のセンサーデータを値「0」にして出力する。
【0049】
図3のステップS02が実行された後に、定期監視部195は、センサーデータの値が「0」より大きい赤外線センサー(以下、ONセンサーという)が有るか否かを判断する(ステップS03)。定期監視部195は、図5(a)に示すように赤外線センサーSl2からSl4のセンサーデータの全てが値「0」であるため、ONセンサーが無いと判断する(ステップS03;No)。
【0050】
その後、方向判定部194は、ステップS01の処理を実行して、Fフラグが無いと判定する(ステップS01;No)。次に、検知部190は、検知処理(ステップS02)の2回目の実行を開始する。この時に、図5(b)に示すように赤外線センサーSl1によって赤外線を照射される照射位置(第1位置)に歩行者OWが到達した。
【0051】
次に、赤外線センサーSl1に対して図6のステップS21からS23の処理が実行される。その後に、物体検知部192は、赤外線センサーSl1の前回の測定値を格納した変数Aと今回の測定値を格納した変数Bとが同じでないと判断する(ステップS24;No)。第1位置に歩行者OWが到達したためである。
【0052】
次に、物体検知部192は、今回の測定値を格納した変数Bが前回の測定値を格納した変数Aより大きいか否かを判断する(ステップS26)。物体検知部192は、変数Bが変数Aより大きいと判断した後に(ステップS26;Yes)、前回の変化方向(つまり、保持した変化方向)の値が「近(つまり、赤外線センサーSl1に接近する方向)」を表す値「1」であるか否かを判断する(ステップS28)。なお、図14(b)に示すように、所定の範囲内では、赤外線センサーSl1から歩行者OWまでの距離が近いほど出力される電圧値も大きくなる。従って、そのような範囲を測定範囲とすれば、変数Bが変数Aよりも大きい場合には、今回測定した赤外線センサーSl1と歩行者OWとの距離の方が前回測定したときよりも短い(つまり、近づいている)と判断することができる。
【0053】
物体検知部192は、既に保持している変化方向の値がデフォルトの値「0」であって、「近い」を表す値「1」でないと判断して(ステップS28;No)、変化方向の値を「近」を表す値「1」に変化させると共に、変化後の値「1」を保持する(ステップS29)。
【0054】
その後、ステップS31及びステップS32の処理が実行されてから、赤外線センサーSl1に対する検知処理の実行が終了される。尚、検知部190は、赤外線センサーSl2からSl4に対してそれぞれ検知処理を行うことで、図5(b)に示すように、赤外線センサーSl1のセンサーデータの値を「1」にし、それ以外のセンサーデータの値を「0」にして出力する。
【0055】
図3の検知処理(ステップS02)の2回目の実行が終了した後に、図4の定期監視部195は、赤外線センサーSl1がONセンサーであるため、ONセンサー有りと判断し(ステップS03;Yes)、ウォッチドッグタイマー(WDT:WatchDog Timer)をスタートさせる。所定時刻経過後に処理で用いたフラグを初期状態に戻すためである。
【0056】
その後、方向判定部194は、赤外線センサーSl4(第4センサー)が今回初めてONセンサーになったセンサーであるか否かを判断する(ステップS05)。方向判定部194は、赤外線センサーSl1(第1センサー)のみがONセンサーであって、赤外線センサーSl4はONセンサーでないと判断し(ステップS05;No)、歩行者OWが危険領域DAlへ後方から近づいていると判定すると共に、歩行者OWが後方から前方へ移動していることを表すRフラグを立てるRフラグ処理を実行する(ステップS06)。最も前方に設置された赤外線センサーSl4よりも先に赤外線センサーSl1がONセンサーになったためである。
【0057】
その後、ステップS01が再度実行された後に、検知処理の3回目の実行が開始される。この時、図5(c)に示すように、赤外線センサーSl2によって赤外線を照射される照射位置(第2位置)に歩行者OWが到達した。
【0058】
その後、赤外線センサーSl1に対して図6のステップS21からS24の処理が実行された後に、物体検知部192は、赤外線センサーSl1の前回の測定値を格納した変数Aが、今回の測定値を格納した変数Bより大きいと判断する(ステップS26;No)。第1位置から歩行者OWが去ったためである。
【0059】
次に、物体検知部192は、変化方向を表す値を、「遠(つまり、赤外線センサーSl1から離間する方向)」を表す値「0」に変化させ、変化させた値「0」を保持する(ステップS27)。その後、物体検知部192は、ステップS31及びステップS32の処理を実行する。次に、検知部190は、赤外線センサーSl1に対する検知処理の実行を終了し、赤外線センサーSl2からSl4に対してそれぞれ検知処理を行うことで、図5(c)に示すように、赤外線センサーSl2のセンサーデータの値を「1」にし、それ以外のセンサーデータの値を「0」にして出力する。
【0060】
図3の検知処理(ステップS02)の3回目の実行が終了した後に、ステップS04からS06の処理が実行される。赤外線センサーSl2のみがONセンサーだからである。
【0061】
その後、ステップS01の処理が再度実行された後に、検知部190によって検知処理(ステップS02)の4回目の実行が開始される。この時に、図5(d)に示すように、赤外線センサーSl3によって赤外線を照射される照射位置(第3位置)に歩行者OWが到達した。検知部190は、この検知処理の実行によって、図5(d)に示すように、赤外線センサーSl3のセンサーデータの値を「1」にし、それ以外のセンサーデータの値を「0」にして出力する。次に、図3の検知処理(ステップS02)の4回目の実行が終了した後に、ステップS03からS06の処理が実行される。赤外線センサーSl3のみがONセンサーだからである。
【0062】
その後、ステップS01の処理が再度実行された後に、検知部190によって検知処理(ステップS02)の5回目の実行が開始される。この時に、図5(e)に示すように、赤外線センサーSl4によって赤外線を照射される照射位置(第4位置)に歩行者OWが到達した。検知部190は、この検知処理の実行によって、図5(e)に示すように、赤外線センサーSl4のセンサーデータの値を「1」にし、それ以外のセンサーデータの値を「0」にして出力する。
【0063】
図3の検知処理(ステップS02)の4回目の実行が終了した後に、ステップS03からS05の処理が実行される。赤外線センサーSl4のみがONセンサーだからである。その後、方向判定部194は、赤外線センサーSl4(第4センサー)がONセンサーであると判断し(ステップS05;Yes)、Rフラグが有るか(つまり、フラグが立っているか)否かを判断し(ステップS07)、ステップS06で立てたRフラグが有ると判断する(ステップS07;Yes)。
【0064】
その後、巻込判定部196は、赤外線センサーSl1からSl4(つまり、全センサー)がONセンサーであるか否かを判断し(ステップS09)、赤外線センサーSl4のみがONセンサーであると判断する(ステップS09;No)。また、巻込判定部196は、赤外線センサーSl4に対する接近を検知された歩行者OWが貨物車両の後方から危険領域DAlに入るおそれがあり、かつ危険領域DAlに入った歩行者OWに対する巻込事故を貨物車両が起こすおそれがあると、判定する。赤外線センサーSl4は、危険領域DAlに最も近いセンサーであるからである。その後、警報制御部197は、警告音(ブサー音)を鳴らすよう警報機18l及び18rを制御するブザーON処理を実行する(ステップS10)。その後、ステップS01から順に上記処理の実行が繰り返される。
【0065】
これらの構成によれば、警報制御装置19は、赤外線センサーSl1からSl4が検出した距離に基づくのではなく、赤外線センサーSl1からSl4が出力した信号電圧が、前回の測定時よりも増加したか否かに基づいて、物体の赤外線センサーSl1からSl4に対する接近及び離間を検出できる。また、これらの構成によれば、警報制御装置19は、物体の赤外線センサーSl1からSl4に対する接近及び離間に基づいて、危険領域DAlにおいて物体に対して巻込事故を起こすおそれがあるか否かを判定できる。
【0066】
このため、赤外線センサーSl1ないしSl4から物体までの距離が同じ場合に、赤外線センサーSl1ないしSl4から出力される信号の電圧値が同じになるように赤外線センサーSl1ないしSl4を調整しなくとも、巻込事故のおそれが有るか否かを精度良く判定できる。つまり、赤外線センサーSl1からSl4の組立時、設置時、交換時、又は修理時において、赤外線センサーSl1からSl4のセンサー特性が相違してしまっても又は取付誤差が生じてしまっても、巻込事故のおそれが有るか否かを精度良く判定できる。
【0067】
次に、図7を参照して、他の車両(以下、追越車両という)OBが後方から危険領域へ近づく状況(つまり、追越車両に追い越される状況)において実行される警報制御処理について説明する。
【0068】
図3のステップS01の処理が実行された後に、検知処理(ステップS02)が最初に実行される。この時に、図7(a)に示すような状況となる。その後、検知処理が2度目に実行される時に、図7(b)に示すような状況となる。図7(a)及び図7(b)に示す状況は、それぞれ図5(a)及び図5(b)に示す状況と同じであるので、重複した説明を省略する。
【0069】
ステップS01が再度実行された後に、図3の検知処理(ステップS02)の3度目の実行が開始される。この時に、図7(c)に示すように、第1位置に追越車両OBが存在し続け、かつ第2位置に追越車両OBの先端が到達した。
【0070】
検知部190は、赤外線センサーSl1に対して検知処理を実行することで、赤外線センサーSl1の変化方向に変化がないこと(つまり、値が「0」であること)を検知し、「近」を表す値「1」を保持する。赤外線センサーSl1の照射位置に追越車両が存在し続けているからである。
【0071】
また、検知部190は、赤外線センサーSl2に対して検知処理を実行することで、赤外線センサーSl2の変化方向が「近」(つまり、値が「1」)に変化したことを検知する。このため、検知部190は、赤外線センサーSl1及びSl2のセンサーデータを値「1」にして出力し、それ以外のセンサーデータを値「0」にして出力する。その後、図3のステップS03からS06の処理が実行される。赤外線センサーSl1及びSl2がONセンサーだからである。
【0072】
次に、図3のステップS01が再度実行された後に、検知処理(ステップS02)の4回目の実行が開始される。この時に、図7(d)に示すように、第1位置及び第2位置に追越車両が存在し続け、かつ第3位置に追越車両の先端が到達する。検知部190は、この検知処理の実行により、図7(d)に示すように、赤外線センサーSl1からSl3のセンサーデータを値「1」にして出力し、それ以外のセンサーデータを値「0」にして出力する。その後、図3のステップS03からS06の処理が実行される。赤外線センサーSl1からSl3がONセンサーだからである。
【0073】
次に、図3のステップS01が再度実行された後に、検知処理(ステップS02)の5度目の実行が開始される。この時に、図7(e)に示すように、第1位置から第3位置に追越車両が存在し続け、かつ第4位置に追越車両の先端が到達する。検知部190は、この検知処理の実行により、図7(e)に示すように、赤外線センサーSl1からSl4のセンサーデータを全て値「1」にして出力する。
【0074】
図3の検知処理(ステップS02)の5回目の実行が終了した後に、ステップS03からS05、S07、及びS09の処理が実行される。赤外線センサーSl1からSl4の全てがONセンサーだからである。
【0075】
次に、巻込判定部196は、赤外線センサーSl1からSl4の全センサーがONセンサーであると判断する(ステップS09;Yes)と共に、追越車両に追い越されている状況、又は警報システム10を搭載した貨物車両がバックしながら他の車両又はガードレールを追い越している状況であって、赤外線センサーSl1からSl4に接近した物体(つまり、追越車両又はガードレール)に対する巻込事故のおそれがないと判定する。赤外線センサーSl1が赤外線を照射する位置(つまり、第1位置)と、 赤外線センサーSl4が赤外線を照射する位置(つまり、第4位置)との距離は、歩行者(並びに、自転車、乳母車、及び車椅子)よりも長くなるように設定されているためである。このため、警報制御部197が、警告音を鳴らすよう警報機18l及び18rを制御することはない。その後、初期化部198は、RフラグとFフラグとを立ち下げて初期状態にするCフラグ処理を実行する(ステップS11)。その後、ステップS01の処理から繰り返し上記の処理が実行される。
【0076】
次に、図8を参照して、警報システム10を搭載した貨物車両(トラック)とガードレールOGとの間を通って歩行者OWが危険領域DAlへ近づく状況において実行される警報制御処理について説明する。
【0077】
図8(a)に示すように、ガードレールOGが第1位置から第4位置の全ての位置に存在する場合には、赤外線センサーSl1からSl4のセンサーデータは、全て値「1」となることを既に説明した。
【0078】
次に、図3のステップS01が実行された後に、検知処理(ステップS02)の実行が開始される。この時に、図8(b)に示すように、ガードレールOGよりも貨物車両側を歩く歩行者OWが第1位置に到達する。
【0079】
その後、赤外線センサーSl1に対して図6のステップS21からS24及びS26の処理が実行された後に、物体検知部192は、赤外線センサーSl1の前回の観測値を格納した変数Aよりも今回の観測値を格納した変数Bの方が大きいと判断する(ステップS26;Yes)。歩行者OWがガードレールOGよりも赤外線センサーSl1側に接近したからである。
【0080】
次に、物体検知部192は、保持している(つまり、前の)変化方向が赤外線センサーSl1へのガードレールOGの接近を表す「近」であると判断する(ステップS28;Yes)。その後、物体検知部192は、変化方法の値を、「近・近(つまり、赤外線センサーSl1への物体のさらなる接近)」を表す値「2」に変化させると共に、変化後の値を保持する(ステップS30)。
【0081】
その後、ステップS31及びステップS32の処理が実行された後に、赤外線センサーSl1に対する検知処理の実行が終了される。尚、検知部190は、赤外線センサーSl2からSl4に対して検知処理を行うことで、図8(b)に示すように、赤外線センサーSl1のセンサーデータの値を「2」にし、他のセンサーデータの値を「1」にして出力する。その後、図3のステップS03からS06の処理が実行される。今回初めてONセンサーになったのが赤外線センサーSl1だからである。
【0082】
その後、ステップS01の処理が再度実行された後に、検知処理(ステップS02)の実行が開始される。この時に、図8(c)に示すように、歩行者OWが第2位置に到達する。次に、同様に処理が実行され、図8(d)に示すように歩行者OWが第3位置に到達した後に、図8(e)に示すように歩行者OWが第4位置に到達する。その後、検知部190は、赤外線センサーSl1からSl4に対して検知処理を行うことで、赤外線センサーSl4のセンサーデータのみを値「2」にして出力し、他のセンサーデータを値「0」にして出力する。
【0083】
その後、図3のステップS03からS05、S07、及びS09の処理が実行される。今回初めてONセンサーになったのが赤外線センサーSl4だからである。その後に、巻込判定部196は、赤外線センサーSl4のみがONセンサーであるため、全センサーがONセンサーなわけではないと判断する(ステップS09;No)と共に、ガードレールOGと貨物車両との間を通って危険領域DAlへ向かう歩行者OWに対して貨物車両が巻込事故を起こすおそれがあると判定する。このため、警報制御部197は、警報音(ブザー音)を鳴らすよう警報機18r及び18lを制御する(ステップS10)。その後、ステップS01から上記処理を繰り返す。
【0084】
次に、前方から歩行者が検知領域DElを通過した場合に実行される警報制御処理について説明する。
【0085】
最も前方に設置された赤外線センサーSl4の赤外線の照射位置に歩行者が到達した時に、図3のステップS01からS04の処理が実行されると、図4の方向判定部194は、赤外線センサーSl4がONセンサーであると判定する(ステップS05;Yes)。次に、方向判定部194は、最初にONセンサーとなったのが赤外線センサーSl4であるため、Rフラグはデフォルトの状態のままであり、未だ立ち上がっていない(つまり、Rフラグなし)と判断する(ステップS07;Yes)。その後、方向判定部194は、歩行者が検知領域DElを前方から後方へ向かっていると判定すると共に、Fフラグを立てるFフラグ処理を実行する(ステップS08)。
【0086】
次に、方向判定部194は、Fフラグが立っていると判断する(ステップS01;Yes)。その後、方向判定部194は、Fフラグが立ち下げられるまで待機した後、再度ステップS01の処理を繰り返す。尚、初期化部198は、定期監視部195によって開始されたWDTに基づいて所定の時間を経過したことを検知すると共に、Fフラグ及びRフラグを立ち下げて初期状態に戻す。このため、歩行者が検知領域DElを前方から後方へ向かっているため巻込事故のおそれが無い場合に、所定期間の間に限って警報機18r及び18lに誤警報しないように制御できる。
【0087】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明を行う。
第2実施形態に係る警報制御装置29は、複数のセンサーに対する物体の接近を検知した場合に、物体を検知した時刻差に基づいて検知した物体が同一物であるか否かを判定すると共に、同一物であると判定した場合に、巻込事故の警報を行わないよう警報機を制御する。尚、第1実施形態と共通する部分については詳細な説明を省略する。
【0088】
第2実施形態に係る警報制御装置29が備えるCPUは、図9及び図10に示すような警報制御処理を実行することで、図11に示すような検知部290、方向判定部294、定期監視部295、巻込判定部296、警報制御部297、初期化部298、及び警告判定部299として機能する。尚、検知部290は、信号測定部291及び物体検知部292で構成され、警告判定部299は、同一性判定部299a、接近予測部299b、及び的中判定部299cで構成される。
【0089】
ここで、再度図7を参照して、他の車両(追越車両)が後方から危険領域DAlへ近づく状況(つまり、追い越される状況)において実行される警報制御処理について説明する。
【0090】
先ず、図7(a)に示すような追越車両が存在しない状況において、図9のステップS31及びS32の処理が実行される。尚、ステップS31及びS32の処理は、図3のステップS01及びS02の処理とそれぞれ同じ処理である。ステップS32の処理が実行された後に、定期監視部295は、図7(a)に示すように、ONセンサーが存在しないと判断する(ステップS33;No)。
【0091】
その後、ステップS31の処理が再度実行され、検知処理の2回目の実行が開始される(ステップS32)。このとき、図7(b)に示すように、追越車両が第1位置に到達する。検知部290は、この検知処理の実行によって、図7(b)に示すように、赤外線センサーSl1のセンサーデータの値を「1」にし、それ以外のセンサーデータの値を「0」にして出力する。その後、定期監視部295は、赤外線センサーSl1がONセンサーであるため、ONセンサー有りと判断する(ステップS33;Yes)。次に、定期監視部295はWDTをスタートさせる(ステップS34)。
【0092】
その後、方向判定部294は、赤外線センサーSl4(第4センサー)がONセンサーでない(ステップS35;No)と判定した後に、同一性判定部299aは、赤外線センサーSl3(第3センサー)がONセンサーであるか否かを判断する(図10のステップS36)。同一性判定部299aは、赤外線センサーSl3がONセンサーではないと判断した後に(ステップS36;No)、赤外線センサーSl2(第2センサー)がONセンサーであるか否かを判断する(ステップS37)。
【0093】
同一性判定部299aは、赤外線センサーSl2がONセンサーではないと判断する(ステップS37;No)。その後、図11の方向判定部294は、図9のステップS43の処理を実行する(ステップS43)。尚、ステップS43の処理は、図3のステップS06の処理と同じ処理である。
【0094】
その後、ステップS31の処理が再度実行され(ステップS31)、検知処理の3回目の実行が開始される(ステップS32)。このとき、図7(c)に示すように、追越車両が第1位置に存在したまま、第2位置へ到達する。検知部290は、この検知処理の実行によって、図7(c)に示すように、赤外線センサーSl1及びSl2のセンサーデータの値を「1」にし、それ以外のセンサーデータの値を「0」にして出力する。
【0095】
その後、ステップS33からS35、図10のステップS36の処理が実行される。赤外線センサーSl1及びSl2がONセンサーだからである。次に、図11の同一性判定部299aは、赤外線センサーSl2(第2センサー)がONセンサーであると判定する(ステップS37;Yes)。その後、同一性判定部299aは、物体検知部292が赤外線センサーSl1への追越車両OBの接近を検知した(つまり、赤外線センサーSl1がONセンサーになった)第1検知時刻から、赤外線センサーSl2がONセンサーになった第2検知時刻までのΔT12間において、赤外線センサーSl1が継続してONセンサーであったか否かを判断する(ステップS38)。
【0096】
次に、同一性判定部299aは、ΔT12間において赤外線センサーSl1が継続してONセンサーであったと判断する(ステップS38;Yes)。ΔT12間において第1位置には追越車両が存在したためである。その後、図11の接近予測部299bは、第2検知時刻と、赤外線センサーSl3がONセンサーになる第3検知時刻との差異ΔT23を、第1検知時刻から第2検知時刻までのΔT12から所定時間αだけ増減した値(つまり、ΔT12±α)で定まる予測範囲内の値であると予測する(ステップS39)。赤外線センサーSl1から赤外線センサーSl3は、それぞれ等間隔で設置されているため、物体との相対速度が変化しなければ、第2検知時刻から第3検知時刻までの時間ΔT23は、第1検知時刻から第2検知時刻までの時間ΔT12と変化がないためである。その後、図9のステップS43の処理が実行される。
【0097】
尚、同一性判定部299aがΔT12間において、赤外線センサーSl1が継続してONセンサーになっていなかったと判断した場合には(図10のステップS38;No)、ステップS39の処理が実行されずに、図9のステップS43の処理が実行される。検知された物体が、赤外線センサーSl1が赤外線を照射する第1位置と赤外線センサーSl2の第2位置よりも短い物体だからである。
【0098】
次に、ステップS31の処理が再度実行され、検知処理の4回目の実行が開始される(ステップS32)。このとき、図7(d)に示すように、追越車両が第1位置及び第2位置に存在したまま、第3位置へ到達する。検知部290は、この検知処理の実行によって、図7(d)に示すように、赤外線センサーSl1からSl3のセンサーデータの値を「1」にし、それ以外のセンサーデータの値を「0」にして出力する。
【0099】
その後、図9のステップS33からS35の処理が実行された後に、図11の同一性判定部299aは、赤外線センサーSl3(第3センサー)がONセンサーであると判定する(図10のステップS36;Yes)。その後、的中判定部299cは、ステップS39で予測したΔT12±αで定まる予測範囲に、第2検知時刻から第3検知時刻までの所要時間ΔT23が含まれるか否かを判断する(ステップS40)。
【0100】
次に、的中判定部299cは、ΔT12±αで定まる予測範囲に、第2検知時刻から第3検知時刻までの所要時間ΔT23が含まれると判断すると共に(ステップS40;Yes)、第3検知時刻の予測が的中したと判定する。その後、同一性判定部299aは、第2検知時刻から第3検知時刻までのΔT23間において、赤外線センサーSl1が継続してONセンサーであったか否かを判断する(ステップS41)。
【0101】
次に、同一性判定部299aは、ΔT23間において赤外線センサーSl1が継続してONセンサーであったと判断する(ステップS41;Yes)。ΔT23間において追越車両が第1位置に存在していたためである。その後、図11の接近予測部299bは、第3検知時刻と、赤外線センサーSl4がONセンサーになる第4検知時刻との差異ΔT34を、第2検知時刻から第3検知時刻までの時間ΔT23から所定時間αだけ増減した値(つまり、ΔT23±α)で定まる予測範囲内の値であると予測する(ステップS42)。赤外線センサーSl2から赤外線センサーSl4が、それぞれ等間隔で設置されているためである。その後、図9のステップS43の処理が実行される。
【0102】
尚、的中判定部299cがΔT12±αで定まる予測範囲が予測されていないと判断した場合、ΔT12±αで定まる予測範囲に所要時間ΔT23が含まれない(つまり、予測が外れた)と判定した場合(ステップS40;No)、及び同一性判定部299aがΔT23間において赤外線センサーSl1が継続してONセンサーになってはいなかったと判断した場合には(ステップS41;No)、ステップS42の処理が実行されずに、図9のステップS43の処理が実行される。検知された物体が第1位置と第3位置よりも短い物体だからである。
【0103】
その後、ステップS31の処理が再度実行され(ステップS31)、検知処理の5回目の実行が開始される(ステップS32)。このとき、図7(e)に示すように、追越車両が第1位置から第3位置に存在したまま、第4位置へ到達する。検知部290は、この検知処理の実行によって、図7(e)に示すように、赤外線センサーSl1からSl4のセンサーデータの値を全て「1」にして出力する。
【0104】
その後、ステップS33からS35の処理が実行された後に、方向判定部294は、赤外線センサーSl4(第4センサー)がONセンサーであると判定する(ステップS35;Yes)。その後、方向判定部294は、ステップS43においてRフラグが既に立っている(つまり、Rフラグ有り)と判断する(ステップS44;Yes)。
【0105】
その後、同一性判定部299aは、赤外線センサーSl1からSl4の全てがONセンサーであるか否かを判断する(図10のステップS46)。次に、同一性判定部299aは、全てのセンサーがONセンサーであると判断する(ステップS46;Yes)。その後、的中判定部299cは、ステップS42で予測したΔT23±αで定まる予測範囲に第3検知時刻から第4検知時刻までの所要時間ΔT34が含まれるか否かを判断する(ステップS47)。
【0106】
次に、的中判定部299cは、ΔT23±αで定まる予測範囲に所要時間ΔT34が含まれると判断すると共に(ステップS47;Yes)、第4検知時刻の予測が的中したと判定する。その後、同一性判定部299aは、第3検知時刻から第4検知時刻までのΔT34間において、赤外線センサーSl1が継続してONセンサーであったか否かを判断する(ステップS48)。
【0107】
次に、同一性判定部299aは、ΔT34間において赤外線センサーSl1が継続してONセンサーであったと判断する(ステップS48;Yes)と共に、赤外線センサーSl1からSl4に接近した物体は、同一物体であると判断する。このため、巻込判定部296は、赤外線センサーSl1からSl4に接近した物体の長さに基づいて巻込事故のおそれがないと判定する。また、警報制御部297は、警告音を鳴らすよう警報機を制御することはない。その後、初期化部298は、図3のステップS11と同様のCフラグ処理を実行する(ステップS49)。
【0108】
尚、巻込判定部296は、第1検知時刻、第2検知時刻、第3検知時刻、及び第4検知時刻のいずれか1つ以上と、赤外線センサーSl1からSl4の設置位置とに基づいて、検知した物体の貨物車両(トラック)に対する相対速度を算出すると共に、算出した相対速度と貨物車両の速度とに基づいて物体の絶対速度を算出する構成を採用できる。この構成において、巻込判定部296は、物体の絶対速度に基づいて、物体がガードレール、車両、及び歩行者のいずれであるかを判定すると共に、物体が歩行者であると判定した場合に巻込事故のおそれがあると判定し、物体がガードレールであると判定した場合及び物体が車両であると判定した場合に、巻込事故のおそれがないと判定する構成を採用できる。
【0109】
尚、同一性判定部299aが赤外線センサーSl1からSl4のいずれかがONセンサーでないと判断した場合(ステップS46;No)、的中判定部299cがΔT23±αで定まる予測範囲が予想されていないと判断した場合、ΔT23±αで定まる予測範囲に所要時間ΔT34が含まれない(つまり、予測が外れた)と判定した場合(ステップS47;No)、ΔT34間において赤外線センサーSl1が継続してONセンサーとなっていなかったと判断した場合(ステップS48;No)に、巻込判定部296は、巻込事故のおそれがあると判定する。第1位置から第4位置までの距離よりも短い物体が危険領域DAlに最も近い赤外線センサーSl4に接近しているからである。このため、警報制御部297は、警報音(ブザー音)を鳴らすよう警報機を制御する(ステップS50)。
【0110】
次に、第2の実施形態において、警報制御装置29が実行する警報制御処理の他の例について説明する。この警報制御処理は、図12に示すように、赤外線をセンサー方向へ反射し難い特定形状を有した部分(以下、特定部分という)を有した車両(追越車両)OBによって追い越される状況において実行される。
【0111】
図9の警報制御処理の実行が開始された後に、ステップS31が実行され、検知処理(ステップS32)の1回目の実行が開始される。この時に、図12(a)に示すように、追越車両OBの特定部分でない部分(以下、通常部分という)が第1位置に存在し続け、かつ第2位置に追越車両OBの通常部分が到達する。検知部290は、この検知処理の実行によって、図12(a)に示すように、赤外線センサーSl1及びSl2のセンサーデータの値を「1」にし、それ以外のセンサーデータの値を「0」にして出力する。その後、図9のステップS33からS35の処理、図13のステップS66からS69の処理、及び図9のステップS43の処理が実行される。赤外線センサーSl1及びSl2がONセンサーだからである。尚、ステップS66からS69の処理は、図10のステップS36からS39の処理と同じである。
【0112】
次に、図9のステップS31が再度実行された後に、検知処理(ステップS32)の2回目の実行が開始される。この時に、図12(b)に示すように、追越車両OBの特定部分が第1位置に到達し、追越車両OBの通常部分が第2位置に存在し続ける。検知部290は、この検知処理の実行によって、図12(b)に示すように、赤外線センサーSl2のセンサーデータの値を「1」にし、赤外線センサーSl1、Sl2、及びSl3のセンサーデータの値を「0」にして出力する。その後、図9のステップS33からS35の処理、図13のステップS66からS69の処理、及び図9のステップS43の処理が実行される。赤外線センサーSl2のみがONセンサーだからである。
【0113】
次に、ステップS31が再度実行された後に、検知処理(ステップS32)の3回目の実行が開始される。この時に、図12(c)に示すように、追越車両OBの後方の通常部分が第1位置に到達し、前方の通常部分が第2位置に存在し続け、前方の通常部分の先端が第3位置に到達する。検知部290は、この検知処理の実行によって、図13(c)に示すように、赤外線センサーSl1からSl3のセンサーデータの値を「1」にし、それ以外のセンサーデータの値を「0」にして出力する。
【0114】
3回目の検知処理が終了した後に、図9のステップS33からS35の処理、及び図13のステップS66及びS70の処理が実行される。尚、ステップS70の処理は、図10のステップS40の処理と同じである。ステップS70が実行された後に、同一性判定部299aは、第2検知時刻から第3検知時刻までのΔT23間において、赤外線センサーSl1が断続的にONセンサーになっていたか(つまり、ONセンサーであったり、そうでなかったりしたか)否かを判断する(ステップS71)。
【0115】
同一性判定部299aは、ΔT23間において赤外線センサーSl1が断続的にONセンサーになっていたと判断する(ステップS71;Yes)。追越車両OBの特別部分が第1位置を通過したためである。次に、同一性判定部299aは、ΔT23間において赤外線センサーSl2が継続的にONセンサーになっていたか(つまり、ずっとONセンサーであったか)否かを判断する(ステップS71a)。
【0116】
同一性判定部299aは、ΔT23間において赤外線センサーSl2が継続的にONセンサーになっていたと判断する(ステップS71a;Yes)。追越車両OBの前方の通常部分が第2位置に存在し続けたためである。その後、ステップS72及び図9のステップS43の処理が実行される。尚、ステップS72の処理は、図10のステップS42の処理と同じである。
【0117】
尚、同一性判定部299aがΔT23間において赤外線センサーSl1が断続的にONセンサーとなっている訳ではなかったと判断した場合(ステップS71;No)、及びΔT23間において赤外線センサーSl2が継続的にONセンサーとなっている訳ではなかったと判断した場合(ステップS71a;No)には、ステップS72の処理が実行されずに、図9のステップS43の処理が実行される。検知された物体は、第1位置から第3位置までの距離よりも短い物体だからである。
【0118】
その後、ステップS31の処理が再度実行され(ステップS31)、検知処理の4回目の実行が開始される(ステップS32)。このとき、図12(d)に示すように、追越車両OBの後方の通常部分が第1位置に存在したままであり、特定部分が第2位置を通過し、前方の通常部分が第3位置に存在したままである。検知部290は、この検知処理の実行によって、図12(d)に示すように、赤外線センサーSl1及びSl3のセンサーデータの値を「1」にして出力し、赤外線センサーSl2及びSl4のセンサーデータの値を「0」にして出力する。
【0119】
その後、図9のステップS33からS35の処理、図13のステップS66、及びS70からS72の処理、図9のステップS43の処理が実行される。赤外線センサーSl3がONセンサーであって、赤外線センサーSl4がOFFセンサーであるからである。
【0120】
その後、ステップS31の処理が再度実行され(ステップS31)、検知処理の5回目の実行が開始される(ステップS32)。このとき、図12(e)に示すように、追越車両OBの後方の通常部分が第1位置に存在したままであり、後方の通常部分が第2位置に到達し、前方の通常部分が第3位置に存在したままであり、前方の通常部分の先端が第4位置に到達する。検知部290は、この検知処理の実行によって、図12(e)に示すように、赤外線センサーSl1からSl4のセンサーデータの全ての値を「1」にして出力する。
【0121】
その後、図9のステップS33からS35及びS44の処理、図13のステップS76からS78の処理が実行される。赤外線センサーSl1からSl4がONセンサーだからである。尚、ステップS76からS78の処理は、図10のステップS46からS48の処理と同じである。
【0122】
次に、同一性判定部299aは、第3検知時刻から第4検知時刻までのΔT34間において、赤外線センサーSl1が継続してONセンサーであったと判断する(ステップS78;Yes)。ΔT34間において、図12(e)に示すように、追越車両OBの後方の通常部分が第1位置に存在したままだったからである。
【0123】
その後、同一性判定部299aは、ΔT34間において、赤外線センサーSl2が断続的にONセンサーとなっていたと判断する(ステップS78a;Yes)。ΔT34間において、追越車両OBの特定部分が第2位置を通過したからである。
【0124】
その後、同一性判定部299aは、ΔT34間において、赤外線センサーSl3が継続的にONセンサーとなっていたと判断する(ステップS78b;Yes)。ΔT34間において、追越車両OBの前方の通常部分が第3位置に存在していたためである。
【0125】
その後、同一性判定部299aは、赤外線センサーSl1からSl4に接近した物体は、同一物体であると判定する。このため、巻込判定部296は、赤外線センサーSl1からSl4に接近した物体の長さに基づいて巻込事故のおそれがないと判定する。また、警報制御部297は、警告音を鳴らすよう警報機を制御しない。その後、初期化部298は、図3のステップS11と同じCフラグ処理を実行する(ステップS79)。
【0126】
尚、同一性判定部299aがΔT34間において赤外線センサーSl2が断続的にONセンサーとなっていた訳ではないと判断した場合(ステップS78a;No)、ΔT34間において赤外線センサーSl3が継続的にONセンサーとなっていた訳ではないと判断する場合(ステップS78b;No)に、巻込判定部296は、巻込事故のおそれがあると判定する。第1位置から第4位置までの距離よりも短い物体が危険領域DAlに最も近い赤外線センサーSl4に接近しているからである。このため、警報制御部297は、警報音(ブザー音)を鳴らすよう警報機を制御する(ステップS80)。
【0127】
尚、本発明に係る機能を実現するための構成を予め備えた警報制御装置として提供できることはもとより、プログラムの適用により、既存の警報制御装置を本発明に係る警報制御装置として機能させることもできる。すなわち、上記実施形態で例示した警報制御装置19及び29による各機能構成を実現させるための警報制御プログラムを、既存の警報制御装置を制御するコンピュータ(CPUなど)が実行できる様に適用することで、本発明に係る警報制御装置19又は29として機能させることができる。
【0128】
この様プログラムの配布方法は任意であり、例えば、メモリカード、CD−ROM、又はDVD−ROMなどの記録媒体に格納して配布できる他、インターネットなどの通信媒体を介して配布することもできる。
【0129】
以上本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0130】
1r,1l 巻込防止装置(サイドバンパー)
10 警報システム
17 ナビゲーション装置
18r,18l 警報装置(スピーカー)
19,29 警報制御装置
19a CPU
19b ROM
19c RAM
19d ハードディスク
19e USBコントローラー
19f CANコントローラー
19g 入力装置
19h ビデオカード
19i LCD
190,290 検知部
191,291 信号計測部
192,292 物体検知部
194,294 方向判定部
195,295 定期監視部
196,296 巻込判定部
197,297 警報制御部
198,298 初期化部
299a 同一性判定部
299b 接近予測部
299c 的中判定部
DAr,DAl 危険領域
DEr,DEl 検知領域
Sr1,Sr2,Sr3,Sr4,Sl1,Sl2,Sl3,Sl4 赤外線センサー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻込事故が生じる危険領域の後方に在る物体を検出する第1センサーから出力される第1信号値を測定する信号測定手段と、
前記信号測定手段が測定した前記第1信号値の大きさに関わらず、前回測定された前記第1信号値よりも、今回測定された前記第1信号値が所定値だけ大きい場合に、前記第1センサーに対する前記物体の接近を検知する物体検知手段と、
前記物体検知手段が前記物体の接近を検知した場合に、前記危険領域における前記物体に対する前記巻込事故のおそれがあると判定する巻込判定手段と、
前記巻込判定手段が前記巻込事故のおそれがあると判定した場合に、前記巻込事故を警報するよう警報機を制御する警報制御手段と、
を備えることを特徴とする警報制御装置。
【請求項2】
前記信号測定手段は、前記危険領域の後方、かつ前記第1センサーよりも前方に位置する第2センサーから出力される第2信号値をさらに測定し、
前記物体検知手段は、前回測定された前記第2信号値の大きさに関わらず、今回測定された前記第2信号値が前記所定値だけ大きい場合に、前記第2センサーに対する前記物体の接近をさらに検知し、
前記物体検知手段によって前記第2センサーに対する前記物体の接近が検知される前に、前記第1センサーに対する前記物体の接近が検知された場合に、前記物体の移動方向を前方と判定する移動方向判定手段をさらに備え、
前記巻込判定手段は、前記移動方向判定手段によって前記物体が前方に移動していると判定された場合に、前記危険領域へ向かう前記物体に対する前記巻込事故のおそれがあると判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の警報制御装置。
【請求項3】
前記物体検知手段は、
測定された前記第1信号値の大きさに関わらず、前回測定された前記第1信号値よりも、今回測定された前記第1信号値が前記所定値だけ小さい場合に、前記第1センサーからの前記物体の離間をさらに検知すると共に、
測定された前記第2信号値の大きさに関わらず、前回測定された前記第2信号値よりも、今回測定された前記第2信号値が前記所定値だけ小さい場合に、前記第2センサーからの前記物体の離間をさらに検知し、
前記巻込判定手段は、前記物体検知手段によって前記第1センサーへの前記物体の接近が検知された後に、前記物体検知手段によって前記第1センサーからの前記物体の離間が検知され、かつ前記第2センサーへの前記物体の接近が検知された場合に、前記物体対する前記巻込事故のおそれがあると判定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の警報制御装置。
【請求項4】
前記巻込判定手段は、前記物体検知手段によって前記第1センサーへの前記物体の接近が検知された後に、前記物体検知手段によって前記第1センサーからの前記物体の離間が検知されず、かつ前記第2センサーへの前記物体の接近が検知された場合に、前記危険領域へ向かう前記物体に前記巻込事故のおそれがないと判定する、
ことを特徴とする請求項3に記載の警報制御装置。
【請求項5】
前記巻込判定手段は、前記物体検知手段によって前記第1センサーと前記第2センサーとへの前記物体の接近が検知されている場合に、前記物体検知手段によって前記第1センサーへの前記物体のさらなる接近が検知された後に、前記第1センサーからの前記物体の離間が検知され、かつ前記第2センサーへの前記物体のさらなる接近が検知された場合に、前記第2センサーへさらに接近した前記物体に対する前記巻込事故のおそれがあると判定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の警報制御装置。
【請求項6】
前記信号測定手段は、前記危険領域の後方、かつ前記第2センサーよりも前方に位置する第3センサーから出力される第3信号値をさらに測定し、
前記物体検知手段は、前記信号測定手段で測定された前記第3信号値の大きさに関わらず、前回測定された前記第3信号値よりも、今回測定された前記第3信号値が前記所定値だけ大きい場合に、前記第3センサーに対する前記物体の接近をさらに検知し、
前記物体検知手段によって前記物体の前記第1センサーへの接近が検知された第1検知時刻から前記物体の前記第2センサーへの接近が検知された第2検知時刻までの時間に基づいて、前記第3センサーへの前記物体の接近が予想される第1予測時刻を予測する接近予測手段と、
前記物体検知手段が前記第3センサーへの前記物体の接近を検知した第3検知時刻に基づいて、前記接近予測手段の前記第1予測時刻に対する予測が的中したか否かを判定する的中判定手段と、
前記的中判定手段によって前記第1予測時刻に対する予測が的中したと判定された場合に、前記第1センサー、前記第2センサー、及び前記第3センサーに接近した前記物体は同一物であると判定する同一性判定手段と、をさらに備え、
前記巻込判定手段は、前記同一性判定手段によって、前記第1センサー、前記第2センサー、及び前記第3センサーに接近した前記物体が同一物であると判定された場合に、前記物体に対して前記巻込事故のおそれがないと判定する、
ことを特徴とする請求項3に記載の警報制御装置。
【請求項7】
前記同一性判定手段は、前記的中判定手段によって前記第1予測時刻に対する予測が的中したと判定され、かつ前記第1時刻から前記第3時刻までの間、前記物体検知手段が前記第1センサーへの前記物体の接近を継続して検知していた場合に、前記第1センサー、前記第2センサー、及び前記第3センサーに接近した前記物体は同一物であると判定する、
ことを特徴とする請求項6に記載の警報制御装置。
【請求項8】
前記信号測定手段は、前記危険領域の後方、かつ前記第3センサーよりも前方に位置する第4センサーから出力された第4信号値をさらに測定し、
前記物体検知手段は、前記信号測定手段で測定された前記第4信号値の大きさに関わらず、前回測定された前記第4信号値よりも、今回測定された前記第4信号値が前記所定値だけ大きい場合に、前記第4センサーに対する前記物体の接近をさらに検知し、
前記接近予測手段は、前記第2検知時刻から前記第3検知時刻までの時間に基づいて、前記4センサーへの前記物体の接近が予想される第2予測時刻をさらに予測し、
前記的中判定手段は、前記物体検知手段によって前記第4センサーへの前記物体の接近が検知された第4検知時刻に基づいて、前記接近予測手段の前記第2予測時刻に対する予測が的中したか否かをさらに判定し、
前記同一性判定手段は、前記的中判定手段によって前記第1予測時刻に対する予測と、前記第2予測時刻に対する予測とが的中したと判定された場合に、前記第1センサー、前記第2センサー、前記第3センサー、及び前記第4センサーに接近した前記物体は同一物であると判定する、
ことを特徴とする請求項6に記載の警報制御装置。
【請求項9】
前記同一性判定手段は、
前記的中判定手段によって前記第1予測時刻に対する予測と、前記第2予測時刻に対する予測とが的中したと判定され、
前記物体検知手段が、前記第1検知時刻から前記第2検知時刻までの間及び前記第3検知時刻から前記第4検知時刻までの間において、前記前記物体の前記1センサーへの接近を継続して検知し、
かつ前記物体検知手段が、前記第2検知時刻から前記第3検知時刻までの間において、前記物体の前記2センサーへの接近を継続して検知した場合に、
前記第1センサー、前記第2センサー、前記第3センサー、及び前記第4センサーに接近した前記物体は同一物であると判定する、
ことを特徴とする請求項8に記載の警報制御装置。
【請求項10】
コンピュータを、
巻込事故が生じる危険領域の後方に在る物体を検出する第1センサーから出力される第1信号値を測定する信号測定手段と、
前記信号測定手段が測定した前記第1信号値の大きさに関わらず、前回測定された前記第1信号値よりも、今回測定された前記第1信号値が所定値だけ大きい場合に、前記第1センサーに対する前記物体の接近を検知する物体検知手段と、
前記物体検知手段が前記物体の接近を検知した場合に、前記危険領域における前記物体に対する前記巻込事故のおそれがあると判定する巻込判定手段と、
前記巻込判定手段が前記巻込事故のおそれがあると判定した場合に、前記巻込事故を警報するよう警報機を制御する警報制御手段と、
して機能させることを特徴とする警報制御プログラム。
【請求項11】
巻込事故が生じる危険領域の後方に在る物体を検出する第1センサーと、
前記第1センサーが出力した前記第1信号値の大きさに関わらず、前回出力された前記第1信号値よりも、今回出力された前記第1信号値が所定値だけ大きい場合に、前記第1センサーに対する前記物体の接近を検知する物体検知手段と、
前記物体検知手段が前記物体の接近を検知した場合に、前記危険領域における前記物体に対する前記巻込事故のおそれがあると判定する巻込判定手段と、
前記巻込判定手段が前記巻込事故のおそれがあると判定した場合に、前記巻込事故を警報する警報機と、
を備えることを特徴とする警報システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−221673(P2011−221673A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88171(P2010−88171)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】