説明

警報器

【課題】警報器においては、火災等発生時に警報音の鳴動と表示灯の点灯をさせたときに急激に電池の電圧が低下してしまい警報が行えないということがないように、電圧を測定して電池の監視を行っている。しかしながら、新品の電池で警報器を動作させた当初は、急激に電圧が低下するおそれがないにもかかわらず、電池電圧試験を一定の間隔で行っていたため、電池を早期に消耗してしまうことになっていた。
【解決手段】本発明の警報器は、動作電源を供給する電池と、監視領域の状態を検出する状態検出手段と、前記状態検出手段が異常を検出したときに、警報を行う警報手段を備えた警報器において、前記警報器は、前記電池の電圧を測定する電池電圧測定部と、タイマとを備え、前記タイマによって警報器の動作時間を計時して、電池の電圧を前記電池電圧測定部により測定する電池電圧試験の間隔を、警報器の動作時間に応じて変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池で駆動する警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災検出時や点検異常時(電池電圧低下時やセンサ異常時など)に警報音を鳴動させる警報鳴動回路と表示を行う表示灯を備え、火災発生時に電池切れで機能が発揮できないということがないように、定期的に電池電圧試験として電池の電圧を測定して、電池が所定の電池残量以下になると、電池あるいは警報器自体を交換すべきことを、警報音を鳴動させて警報する警報器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような警報器は、警報音の鳴動と表示灯の点灯をさせていない監視時においては、電池を長持ちさせるために消費電流が抑えられているが、警報音を鳴動させる警報時においては、消防法の規格により70dB以上の音圧で火災警報を出力することが義務づけられており、警報音の鳴動と表示灯を点灯させるときには消費電流が大きくなる。
通常、電池は、放電を行い電池残量が減るにつれて電圧は徐々に降下していき、やがてある電圧(以下、この電圧を終止電圧と呼び、そのときの電池残量を終止残量と呼ぶ)を境にその低下の度合いが急激になる。つまり、電池が終止残量となったとき、電池からの出力電流が微少な場合には、電池は終止電圧を出力するが、電池からの出力電流が大きい場合には、終止電圧から急激に電圧が低下してしまうこととなる。
そのため、警報器においては、火災等発生時に警報を行うために警報音を鳴動させたときに急激に電池の電圧が低下してしまい警報が行えないということがないように、警報を行ったときと同じ電流を疑似電流として流して電圧を測定し、電池の監視を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−257279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、新品の電池で警報器を動作させた当初は、警報音を鳴動させるために十分な電池容量があり警報音を鳴動させたときに急激に電圧が低下するおそれがないにもかかわらず、電池電圧試験を一定の間隔で行っていたため、電池電圧試験のために電池を早期に消耗してしまうことになっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係わる警報器は、動作電源を供給する電池と、監視領域の状態を検出する状態検出手段と、前記状態検出手段が異常を検出したときに、警報動作を行う警報手段を備えた警報器において、前記警報器は、前記電池の電圧を測定する電池電圧測定部と、タイマとを備え、前記タイマによって警報器の動作時間を計時して、前記電池電圧測定部により電池の電圧を測定する電池電圧試験の間隔を、警報器の動作時間に応じて変更することを特徴とする。
また、本発明に係わる警報器は、さらに警報動作による増加分の電流を流す擬似電流部を備え、前記電池電圧測定部により電池の電圧を測定する際に、前記擬似電流部で電流を流すことを特徴とする。
また、本発明に係わる警報器は、前記電池電圧試験の間隔を警報器の動作時間が長くなるほど、短くすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、警報器は、前記電池の電圧を測定する電池電圧測定部と、タイマとを備え、前記タイマによって警報器の動作時間を計時して、電池の電圧を測定する電池電圧試験の間隔を、警報器の動作時間に応じて変更するため、電池電圧試験のために、電池を早期に消耗するということがない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施の形態に係る火災警報器の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る火災警報器の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、監視領域の煙の濃度に基づき火災判定を行う火災警報器に本発明を適応した場合を例に図1〜2に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る火災警報器100の構成を示すブロック図である。図1において、火災警報器100は、電池1と、記憶部2と、試験スイッチ3と、制御部10と、煙検出部20と、表示部30と、音響部40と、電池電圧試験部50とを備える。
電池1は、火災警報器100を動作させるための動作電源を供給する。記憶部2は、火災警報器100を動作させるためのプログラムを格納している。また、記憶部2は、火災警報器100の動作に係わるデータを一時的に格納する図示しない保管領域2aを有する。
試験スイッチ3は、居住者等のユーザによる押下操作を受け付け、点検機構を動作させるためのスイッチである。
制御部10は、定電圧部11と、リセット部12と、発振部13と、タイマ14と、火災判定部15と、電池電圧判定部16とを有していて、記憶部2に格納されているプログラムに従い火災警報器の全体を制御する。
定電圧部11は、電池1の電源電圧を所定の定電圧電源(例えば、約2.3Vの電圧)として制御部10等に供給する。
リセット部12は、電源投入時に制御部10をリセット状態にし、所定時間後にリセット状態を解除して動作可能な初期状態にさせる。また、制御部10に印加される電圧が制御部10の動作保証電圧より小さくなった場合に、制御部10をリセット状態にする。
発振部13は、制御部10に対してクロック信号を供給する。タイマ14は、発振部13のクロック信号に基づき時間を計時し、制御部10が火災警報器100の各部の制御を行うタイミングを発生させる。また、タイマ14は火災警報器100が新しい電池で起動してからどれだけ動作したかの動作時間を計時する。
火災判定部15は、煙検出部20が検出した煙の濃度に基づき火災を判定する。電池電圧判定部16は、電池電圧試験部50が検出した電池の電圧に基づき電池の電圧が正常であるかを判定する。
煙検出部20は、監視領域の状態を検出する状態検出手段であり、発光駆動部21と、発光部22と、受光部23と、受光電流電圧変換部24と、受光増幅部25とで構成される。
発光駆動部21は、限流抵抗とコンデンサを有し、定電圧部11から供給される電源を限流抵抗によって制限して微少な電流(例えば、最大50μA)でコンデンサを充電する。発光駆動部21は、制御部10の制御により、外光を遮断した暗室の内部に配置されたLED等の発光素子である発光部22にコンデンサに蓄えられたエネルギーを供給して発光させる。
受光部23は、光を受光すると電流を流すフォトダイオードであり、暗室の内部の発光部22が照射した光が直接入力しない位置に配置されている。そのため、暗室に煙が流入していないときには、発光部22が照射した光が受光部23には入力されず、暗室に煙が流入したときには、発光部22が照射した光が煙粒子により散乱され、その散乱光が受光部32に入力して受光部23には煙の濃度に応じた電流が流れる。
受光電流電圧変換部24は、受光部23に発生した電流を電圧に変換する。変換された電圧は、微少な電圧であり、そのままでは火災の判断が困難であるため、受光増幅部25で大きな電圧へと増幅する。
火災判定処理は、制御部10が光駆動部21を制御して開始され、受光増幅部25で増幅された電圧を火災判定部15で閾値電圧と比較して、閾値を超えている場合には火災を検出する。
表示部30は、表示灯制御部31と、表示灯32とで構成される。表示灯制御部31は、制御部10の制御によりLED等の発光素子である表示灯32に定電圧部11から電源を供給して表示灯32を火災時には点灯させたり、異常時には点滅させたりする。
音響部40は、音声DA変換部41と、音声増幅部42と、スピーカ43とから構成される。音声DA変換部41は、制御部10に制御されて記憶部2に格納された音声デジタルデータを電圧信号に変換する。音声増幅部42は、変換された電圧信号(音声信号)を増幅して、スピーカ43に印加して、スピーカ43から火災発生や故障発生の警報音を出力させる。
電池電圧試験部50は、疑似電流部51と、電池電圧測定部52とから構成される。疑似電流部51は、一定の電流を流す定電流回路である。電池電圧測定部52は、電池1の電圧をAD変換して電池電圧信号(以下、電池電圧信号と呼ぶ)に変換する。
電池電圧試験は、制御部10が擬似電流部51を制御して開始され、擬似電流部51で火災を警報するときに表示部30と音響部40とで消費される電流と同じ量の警報動作による増加分の電流を流した状態で、電池電圧測定部52が電池1の電圧を変換した電池電圧信号を閾値と比較する。閾値を下回っている場合には電池異常を検出する。
ここで、擬似電流部51で火災を警報する時と同じ量の電流を流して電池電圧試験を行うのは、電池1が終止電圧となっており、火災警報器100が、消費電流が少ない監視動作では電池1が終止電圧を出力して問題なく動作するが、火災の警報を行うと急激に電圧が低下してリセット状態になり、火災を警報できないということがないようにするためである。
次に、火災警報器100の動作について説明する。
火災警報器100は、電池1から電源が供給され定電圧回路11によって所定の定電圧に変換されて制御部10等の各部に供給されると動作を開始する。各部は、制御部10が有するタイマ14が計時したタイミングに応じて制御され動作する。計時したタイミングに応じた動作については図2の火災警報器100の動作を示すフローチャートにより説明する。
まず、火災警報器100は、タイマ14が3秒計時したかを判定して(S1)、3秒計時した場合には、記憶部2の保管領域2aに火災警報器100の動作時間の記録として3秒計時した回数を更新して格納して(S2)、煙検出部20を動作させて火災判定処理を行う(S3)。
火災判定処理の結果が火災を検出したかを判定して(S4)、火災を検出したのであれば、火災表示灯32を点灯(S5)、および、火災発生の警報音をスピーカ43から出力して(S6)、警報動作を行い火災が発生したことを報知する。その後、S1の処理に戻り繰り返し動作を行う。
火災を検出したかの判定で火災を検出していない場合は(S4)、保管領域2aの3秒計時した回数から火災警報器100の動作年数nを算出する(S7)。その後、保管領域2aの3秒計時の回数が所定数÷(n+1)の倍数か判断して(S8)、倍数であれば電池電圧試験部50を作動させて電池電圧試験を行う(S9)。電池電圧試験の結果が電池電圧異常を検出したかを判定して(S10)、電池電圧異常を検出したのであれば、火災表示灯32を点滅(S11)、および、異常発生の警報音をスピーカ43から出力して(S12)、異常が発生したことを報知する。その後、S1の処理に戻り繰り返し動作を行う。
タイマ14が3秒計時したかの判定で3秒を計時していない場合と(S1)、保管領域2aの3秒タイマカウント数が所定数÷(n+1)の倍数であるかの判定でカウント数が倍数ではない場合には(S8)、試験スイッチ3が押下操作されているかを判定して(S13)、押下操作されている場合は、電池電圧試験を行う(S9)、押下操作されていない場合には、S1の処理に戻り繰り返し動作を行う。
ここで、S8の処理である3秒計時の回数が所定数÷(n+1)の倍数であるかの判定について説明する。例えば所定数=4800とすると、火災警報器100の動作年数が1年のときにはS7の処理からn=1となり、3秒計時の回数が2400の倍数毎、つまり、120分に1回のタイミングで電池電圧試験を行い、動作年数が2年のときには、80分に1回、動作年数が3年のときには、60分に1回と、動作年数が少ないときには、電池電圧試験を行う間隔を長くして、動作年数が経過するほど、電池電圧試験を行う間隔を短くするようになっている。
なお、電池1を交換したときには、試験スイッチ3を連続押下操作(例えば10秒間連続で押す)したときに、保管領域2aに格納されている3秒計時した回数をリセットすることができる。
また、本実施の形態では、火災判定処理を行うタイミングである3秒計時の回数で火災警報器100の動作時間を記録したが、タイマ14により、火災警報器100の動作時間のみを別途計時するようにしても良い。
また、本実施の形態では、火災警報器100の動作年数が経過するほど、電池電圧試験を行う間隔を短くしたが、例えば、電池を交換した場合に、新しい電池の初期不良を検出するために、始めの1ヶ月は電池電圧試験の間隔を短くするなど、適宜、火災警報器100の動作時間により電池電圧試験の間隔を変更するようにしても良い。
上記のように、本発明に係わる警報器は、動作電源を供給する電池と、監視領域の状態を検出する状態検出手段と、前記状態検出手段が異常を検出したときに、警報動作を行う警報手段を備えた警報器において、前記警報器は、前記電池の電圧を測定する電池電圧測定部と、タイマとを備え、前記タイマによって警報器の動作時間を計時して、前記電池電圧測定部により電池の電圧をより測定する電池電圧試験の間隔を、警報器の動作時間に応じて変更することを特徴とし、また、本発明に係わる警報器は、さらに警報動作による増加分の電流を流す擬似電流部を備え、前記電池電圧測定部により電池の電圧を測定する際に、前記擬似電流部で電流を流すことを特徴とし、また、本発明に係わる警報器は、前記電池電圧試験の間隔を警報器の動作時間が長くなるほど、短くすることを特徴とするため、電池の使用時間に応じて電池電圧試験を行うことができるので、電池電圧試験のために、電池を早期に消耗するということがない。
【符号の説明】
【0009】
100 火災警報器、1 電池、2 記憶部、2a 保管領域、3 試験スイッチ、10 制御部、11 定電圧部、12 リセット部、13 発振部、14 タイマ、15 火災判定部、16 電池電圧判定部、20 煙検出部、21 発光駆動部、22 発光部、23 受光部、24 受光電流電圧変換部24、25 受光増幅部、30 表示部、31 表示灯制御部、32 表示灯、40 音響部、41 音声DA変換部、42 音声増幅部、43 スピーカ、50 電池電圧試験部、51 疑似電流部、52 電池電圧測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作電源を供給する電池と、監視領域の状態を検出する状態検出手段と、前記状態検出手段が異常を検出したときに、警報動作を行う警報手段を備えた警報器において、
前記警報器は、前記電池の電圧を測定する電池電圧測定部と、タイマとを備え、
前記タイマによって警報器の動作時間を計時して、
前記電池電圧測定部により電池の電圧を測定する電池電圧試験の間隔を、警報器の動作時間に応じて変更することを特徴とする警報器。
【請求項2】
前記警報器は、さらに警報動作による増加分の電流を流す擬似電流部を備え、
前記電池電圧測定部により電池の電圧を測定する際に、前記擬似電流部で電流を流すことを特徴とする請求項1記載の警報器。
【請求項3】
前記電池電圧試験の間隔は、警報器の動作時間が長くなるほど、短くすることを特徴とする請求項1または請求項2記載の警報器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−3780(P2013−3780A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133369(P2011−133369)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】