説明

豆腐の製造方法及びその豆腐入り容器

【課題】手に持って揉み扱きできる小容量の容器に豆腐原料を充填した状態で加熱処理することにより、3形態の性状の豆腐を製造でき、老若男女を問わず幅広い年齢層に渡り、多様な食生活の面で有用されるとともに、いつでもどこでも吸引状に食せる豆腐食品を供することのできる豆腐の製造方法を提供する。
【解決手段】豆乳濃度がブリックス6乃至15%の豆乳1に対して、凝固剤4として例えば7%塩化マグネシウム溶液0.2乃至1.5体積%の割合で混合され、柔軟性を有する合成樹脂製の小容量の容器に充填され、加熱温度が55℃乃至90℃の範囲で設定されて成る。このほか、加熱温度が容器の各個の内部に満遍なく投与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豆腐が多形態の性状で、それぞれ手揉み扱きできる小容量の容器に収納されて提供される豆腐の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲むことのできる豆腐に関する技術としては、特開2001−352930号公報(特許文献1)に開示されている。特許文献1に開示される技術は得られる豆腐食品の硬度が通常の充填豆腐の硬度の概略1/3以下となるように豆乳と凝固剤の混合割合を調整して容器に充填し、蒸気槽で加熱殺菌する技術であるが、豆乳と凝固剤との混合割合と加熱温度の設定範囲との組合わせによって多形態の性状、例えば液状、流動状、軟硬度固形状の豆腐を提供できるものではなく、また、容器も単に収納する程度に止まるものであり、最終需要者の段階で、内部に収納される豆腐の性状を見ながら手に持って揉み扱くことによって飲み込むに適した状態に加減できる容器の完成には至っていないものである。
【特許文献1】特開2001−352930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記従来技術に鑑みて小容量の手揉み扱きできる容器に豆腐原料を充填した状態で多形態の性状、例えば液状、流動状、軟硬度固形状の豆腐を製造して、老若男女を問わず幅広い年齢層に渡り多様な食生活の面で有用されるとともに、随時随処で吸引状に食べることができる豆腐食品を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の請求項1に記載した豆腐の製造方法は、豆乳と凝固剤とを混合しこれを容器に充填し所要温度で加熱滅菌して成る豆腐の製造方法において、
前記容器が柔軟性を有する合成樹脂製の小容量の容器から成り、豆乳濃度がブリックス6乃至15%の豆乳に対して、凝固剤として例えば7%塩化マグネシウム溶液0.2乃至1.5体積%の割合で混合されて前記容器に充填され、加熱温度が55℃乃至90℃の範囲で設定されて成る。
また、請求項2に記載した発明は、請求項1記載の豆腐の製造方法において加熱温度が容器の各個の内部に満遍無く投与されて成る。
【発明の効果】
【0005】
本発明の豆腐の製造方法によれば、小容器に豆乳と凝固剤とが充填された状態で、液状豆腐や流動状豆腐、軟硬度固形状豆腐をそれぞれ各種にロット生産できるから、大量生産でコスト削減できる上、老若男女を問わず広い年齢層に渡ってシチューやドレッシングなどの調味原料から保健飲料や健康食品、或いは流動食品や介護食品など多様な食生活の面で利用され得る有用な豆腐食品を提供できるものである。このほか、小容量の容器は柔軟性と透光性を有するから、軟硬度固形状豆腐の場合は手に持って揉み扱きながら内部の状態が確認できるので、飲み込み易い形態で食することができる。さらに、加熱槽では各個の容器内部に満遍無く加熱温度が伝熱されるから均一な品質が確保される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明では、豆乳と凝固剤(以下、豆腐原料とする。)が貯留される混合槽に豆腐原料を均一に混合する混合手段を設けるが、加熱槽では小容量の容器内の豆腐原料を加熱するに当たって、各個の容器内部を満遍なく加熱し伝熱するための振動手段や撹拌手段などが配慮される必要がある。また、容器は手持ちできる小容量で原則的に柔軟性を有するもので、液状豆腐、流動状豆腐、軟硬度固形状豆腐のいずれの性状を問わず、不透明乃至透光性が選択される。なお、軟硬度固形状とは、従来から提供されている充填豆腐の硬度と同等乃至1/4の硬度が目安とされる。
【実施例1】
【0007】
本発明の第1実施例を説明すると、図1に示すように、大豆から所要の処理で得られた豆乳1を豆乳貯留槽2に貯留し、ブリックス糖度が12%になるように豆乳濃度を調整し、このように調整された豆乳1に対して凝固剤滴下槽3から塩化マグネシウム濃度7%で0.8体積%の割合で凝固剤(苦汁)4が滴下されて豆腐原料5が混合槽6に貯留されて撹拌混合される。そして、透光性で柔軟性の合成樹脂製(PEやPAなど)の小容量の容器7に口部または底部より混合槽6から豆腐原料5が順次に充填され、次いで口部または底部が気密状に密封されて加熱槽8へ送られ、加熱温度が55℃乃至60℃に制御され、加熱槽8を矢印方向に振動するなどで多数個収納された各容器7の豆腐原料5に満遍無く加熱温度が伝熱され、豆腐原料5が均一に加熱されて液状豆腐が製造される。上記の加熱温度では殺菌温度として不充分である場合は、豆乳をあらかじめ超高温殺菌装置(UHT)を通して加熱殺菌し、これを無菌充填することで保存性のすぐれた豆腐とすることができる。
【実施例2】
【0008】
第2実施例を説明すると、前記と同様に豆乳貯留槽2に豆乳濃度がブリックス12%の豆乳1が貯留され、一方、凝固剤滴下槽3には塩化マグネシウム濃度7%の凝固剤4が貯留され、豆乳貯留槽2から混合槽6に豆乳1が送給され、そして、豆乳1の12重量%に対して凝固剤滴下槽3から0.8体積%の割合で凝固剤4が混合槽6に滴下され、こうして得られた豆腐原料5が混合槽6で撹拌混合される。次いで、前記したように透光性で柔軟性の合成樹脂製の小容量の容器7に混合槽6から豆腐原料5が充填され、気密状に密封されて加熱槽8へ送られ、加熱温度が60℃乃至70℃に制御され、加熱槽8を矢印方向に振動するなどで多数個収納された各容器7の豆腐原料5に満遍無く加熱温度が伝熱され、豆腐原料5が均一に加熱されて流動状豆腐が製造される。
【実施例3】
【0009】
第3実施例を説明すると、前記と同様に豆乳貯留槽2には豆乳濃度がブリックス12%の豆乳1が貯留され、凝固剤滴下槽3には塩化マグネシウム濃度7%の凝固剤4が貯留され、豆乳貯留槽2から混合槽6へ送給される豆乳1の12重量%に対して凝固剤4が凝固剤滴下槽3から0.8体積%の割合で混合槽6に滴下され、こうして得られた豆腐原料5が混合槽6で撹拌混合される。そして前記したように、透光性と柔軟性の合成樹脂製の小容量の容器7に混合槽6から豆腐原料5が充填され、気密状に密封されて加熱槽8へ送られ、加熱温度が70℃乃至90℃に制御され、加熱槽8を矢印方向に振動するなどで多数個収納された各容器7の豆腐原料5に満遍無く加熱温度が伝熱され、豆腐原料5が均一に加熱されて軟硬度固形状豆腐が製造される。容器7としては図4に示す鋭角状の突端を引き裂いて口部7aとするものも使用されるほか、形状的には種々選択される。
【0010】
本発明の豆腐の製造方法によれば、所要条件の豆乳1と凝固剤4から成る豆腐原料5に対して加熱温度を55℃乃至90℃の範囲で種々試行の結果、所定の加熱温度域で前記の液状豆腐、流動状豆腐、軟硬度固形状豆腐の3形態の性状を呈する豆腐が生成されることを知見したものであり、さらに追求すると、前記加熱温度の範囲内の特定温度において、所定の豆乳濃度の豆乳1に対して凝固剤4の混合割合によっても前記3形態の性状を呈する豆腐の生成(後述)が確認できたものである。
このように一定の設備で、しかも、内部に豆腐原料5が充填された容器7を大量にストックする中で、加熱温度を選択することによって、それらの容器7の内容が3形態の性状に変化するものであり、各形態の豆腐がロット生産できるから製造コストが大幅に削減される。また、豆乳1としては調整豆乳や無調整豆乳も対象とされ、凝固剤4としては苦汁のほか塩化マグネシウムや遅効性の硫酸カルシウムやグルコノデルタラクトン、カボス等の柑橘系果汁が代替されたり、図1の仮想線で示すように混合槽6へ各種果実のエキスやスープなどの添加食品や糖、香料などが適宜に投入されることもある。なお、軟硬度固形状豆腐としての軟硬度とは、通常の充填豆腐の硬度の1/10乃至1/3の硬度を目安とされ、容器7を持って手揉み扱けば、容易に軟硬度固形状豆腐は細かく砕かれ、容器7を押し潰せば柔らかい舌触りで食することができるものである。
【0011】
前記実施例のほかに、加熱温度と所定豆乳濃度の豆乳1の量を一定とし、凝固剤の混合割合をパラメータとして得られる3形態の性状の豆腐について説明する。
すなわち、加熱温度を80℃とし豆乳濃度ブリックス12%の豆乳1に対して、凝固剤4が塩化マグネシウム濃度7%で0.2乃至0.4体積%の割合で得られるのが液状豆腐であり、同様に加熱温度80℃、前記豆乳濃度の豆乳1に対して、凝固剤4が塩化マグネシウム濃度7%で0.4乃至0.6体積%の割合で得られるのが流動性豆腐であり、同様に加熱温度80℃、同豆乳濃度の豆乳1に対して、凝固剤4が塩化マグネシウム濃度7%で0.6乃至1.5体積%の割合で得られるのが軟硬度固形状豆腐である。
このように、本発明の豆腐の製造方法によれば、簡単に液状豆腐と流動状豆腐、軟硬度固形状豆腐の3形態の性状を呈する豆腐が得られるから、老若男女を問わず幅広い年齢層が対象とされ食生活を豊かなものとするほか、乳児の離乳食老人の介護食や流動食として栄養源を手軽に摂取できることに貢献する。
【0012】
前記実施例では図1により説明したが、図2に示すように凝固剤滴下槽3より混合槽6下方の流路へ凝固剤を流入させたり、図3に示すように凝固剤滴下槽3と添加食品貯留槽9より混合槽6下方の流路へ流入させることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明は、豆腐原料を小容量の柔軟性を有する容器に充填した状態で、液状豆腐、流動状豆腐、軟硬度固形状豆腐の3形態の性状の豆腐を各ロット別に量産できるから、豆腐製造業界を活性化でき、しかも、提供される商品はその容器を手揉み扱きできるものであるから、老若男女の幅広い年齢層の人がいつでも、どこででも食せるという画期的な需要が期待され得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の豆腐の製造法による製造ラインの概略説明図。
【図2】図1と製造ラインを異にした製造ラインの概略説明図。
【図3】図1、図2と製造ラインを異にした製造ラインの概略説明図。
【図4】豆腐原料充填容器の説明図で、(a)はキャップ付き容器の正面図、(b)は口部7aを引き裂くタイプの容器の正面図。
【符号の説明】
【0015】
1:豆乳
2:豆腐貯留槽
3:凝固剤滴下槽
4:凝固剤
5:豆腐原料
6:混合槽
7:容器
7a:口部
8:加熱槽
9:添加食品貯留槽
10:添加食品原料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
豆乳と凝固剤とを混合しこれを容器に充填し、所要温度で加熱滅菌して成る豆腐の製造方法において、
前記容器が柔軟性を有する合成樹脂製の小容量の容器から成り、豆乳濃度がブリックス6乃至15%の豆乳に対して、凝固剤が0.2乃至1.5体積%の割合で混合されて前記容器に充填され、加熱温度が55℃乃至90℃の範囲で設定されて成り、温度条件を選択することにより液状豆腐、流動状豆腐、軟硬度固形状豆腐の各形態の豆腐を量産できることを特徴とする豆腐の製造方法。
【請求項2】
前記加熱温度が容器の各個の内部に満遍無く投与されて成る請求項1記載の豆腐の製造方法。
【請求項3】
液状豆腐、流動状豆腐、軟硬度固形状豆腐のいずれかの形態の豆腐を手揉み扱きできる容器に収納して成る豆腐入り容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−153386(P2009−153386A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331440(P2007−331440)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(391037917)株式会社ヤマダフーズ (6)
【Fターム(参考)】