説明

豆腐を含有するドレッシング

【課題】古くより日本で食用されてきた食品から製造され、乳化剤を含まないが分離し難く、嗜好面でも優れたドレッシングの提供。
【解決手段】ドレッシングの主原料として豆腐、生のリンゴを用い、さらに熟成させた酢味噌及びコラーゲンを配合したドレッシング。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豆腐、リンゴ及びコラーゲンを含有する、乳化安定性が高く嗜好性のよいドレッシングに関する。
【背景技術】
【0002】
ドレッシングは、農林水産省告示による品質表示基準により、使用原料に関する規定が設けられている。すなわちドレッシングとは、食用植物油脂及び食酢若しくはかんきつ類の果汁を必須原材料とし、食塩、砂糖類、香辛料等を加えて調整し、水中油滴型に乳化した半固体状若しくは乳化液状の調味料又は分離液状の調味料であって、主にサラダに使用するものとされる。
近年日本においても、食生活の欧米化により油脂類の摂取量が増大し、成人病や肥満等を引き起こす一因となっている。そこで、油脂類を多く含有するドレッシングにおいても、油脂含量の低いタイプのもの、あるいはノンオイルタイプのものが消費者より所望されるようになり、低油脂化を実現するためのさまざまな技術が開発されている(特許文献1)。特許文献1には、実施例として油脂分を約40重量%含むドレッシングが開示されている。
油分や水分等の液状成分が分離していない非分離状ドレッシングでは、乳化状態を安定化させるための技術として、大豆タンパクや豆乳を利用したものがある(特許文献2、3)。しかしいずれも、脂肪酸モノグリセライドやポリグリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤が使用され、製造に用いる原材料及び工数が増加し、製造工程が煩雑となる。また、安全性の高い食品への志向が年々高まる中、乳化剤等の添加物を含有しない、自然志向の食品が望まれていることから、古くより食用してきた天然の食品のみから製造することができ、乳化安定性、嗜好的にも優れたドレッシングの開発が課題となっている。特許文献2には、油分が40〜60重量%添加されており、特許文献3では油分が40重量%弱となっている。豆乳を原料に用いたドレッシングも提案されているが、特有の青臭さ、えぐみ、渋み等の風味が強すぎて、バランスを取るのが困難である。
本出願人は、豆腐、リンゴ、酢味噌を含む低油脂化したドレッシングを先に特願2005−121812号として出願した。さらに、低油脂含有のドレッシングの開発を続け、本出願に至った。
【0003】
【特許文献1】特開昭63−24857号
【特許文献2】特開昭55−99173号
【特許文献3】特開2003−274899号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、サラダなどの生野菜の摂取にあたり、油性分が少なく、豆腐の摂取を図ることができるドレッシングを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、ドレッシングの主原料として豆腐、生のリンゴをそのまま用い、さらに、味噌、酢、酒、みりんを混合後熟成させた熟成酢味噌を配合することにより、乳化剤を用いなくても乳化状態が安定することを見出し、本発明を完成した。すなわち本発明は、
(1)豆腐10〜21重量%、リンゴ10〜22重量%、酢味噌20〜30重量%、コラーゲン1〜6%及び植物油1.5〜10重量%を含有することを特徴とするドレッシング、
(2)酢味噌が、味噌、酢、酒、みりんを混合後、熟成させたものであることを特徴とする(1)記載のドレッシング、
(3)ゴマピューレを添加したことを特徴とする(1)又は(2)記載のドレッシング、である。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、豆腐、酢味噌、リンゴ、コラーゲンを含み、大豆蛋白粉等の乳化剤を含まず、嗜好性の高い自然志向の低含油量ドレッシングを提供できる。
豆腐の臭いなどの属性を押さえつつ全体として調和のとれた、油分低含量の非分離タイプのドレッシングを実現できた。
本発明により、健康志向の体に優しく、日本人の嗜好に非常に良く合い、和洋中華の様々な料理に合うドレッシングを提供できる。
本発明品は、コロッケや、鶏・魚のソテー、海鮮サラダ・和風サラダ・中華サラダなどにも良く合います。
本発明により、肉や魚などによらずに生野菜などと共にコラーゲンの摂取ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の基本原料は、豆腐、リンゴ、植物油、酢及び酢味噌、コラーゲンからなり、その他出汁、醤油、塩、砂糖、白ゴマピューレ、リンゴペクチン、ハーブ、香辛料等を添加することができる。
【0008】
豆腐は、大豆を原料として常法により製造されたものでよく、木綿豆腐、絹ごし豆腐、汲み上げ豆腐、島豆腐等を用いることができ、大豆を原料としたものであればこれらに限るものではない。豆腐の配合量は10〜21重量%程度がよく、15〜20重量%が好ましい。15重量%以下では豆腐の呈味が弱くなり10重量%以下では豆腐の感覚が弱くなりすぎる。21重量%以上だと豆腐の味が強すぎ、経時的に分離してしまう。
【0009】
リンゴは、学名をMalus pumila var. domesticaとする、バラ科リンゴ属に属する樹木の果実である。食用のリンゴであれば品種を問わず、ふじ、千秋、ジョナゴールド、紅玉、さんさ、ほくと、むつ、世界一、国光、王林、なつみどり、祝、マッキントッシュ、印度等、あらゆるリンゴを用いることができる。リンゴの配合量は10〜22重量%程度がよく、10重量%以下ではリンゴ風味が無くなり豆腐とのバランスが悪い。15〜18重量%程度がリンゴの香りと酸味が残り、豆腐とのバランスが良い。22重量%以上だとリンゴの呈味が強く、豆腐とのバランスが悪くなる。
【0010】
酢味噌として、食酢と味噌があらかじめ配合されたもの、あるいは食酢と味噌を独自に配合したもののいずれを用いてもよい。この酢味噌と、酒、みりんを加えることができる。更に、本だしを添加することができる。これらの混合し、数時間〜数日間熟成させたものを用いると、風味高く、まろやかな呈味を持つドレッシングを得ることができる。酢と味噌の配合は、1:1〜3程度とする。熟成酢味噌の熟成条件は、20℃で2〜3日間が最も好ましい。20℃で1日間の熟成だと風味が弱く呈味に角があり、温度が20℃未満になると、熟成するのに3日間以上の日数がかかってしまう。
酢味噌に配合する食酢には醸造酢を用い、純玄米酢(黒酢) 、米酢、麦酢、麦芽酢、とうもろこし酢、純きび酢等の穀物酢、リンゴ酢、ワインビネガー、バルサミコビネガー、柿酢等の果実酢、その他にサツマイモ、ジャガイモ、排糖蜜等を用いたものでもよく、醸造酢であればこれらに限らず用いることができる。
酢味噌に配合する味噌は、米味噌、麦味噌、豆味噌のいずれでもよく、白味噌、関西白味噌、府中味噌、讃岐味噌、江戸甘味噌、相白味噌、御膳味噌、白辛味噌、信州味噌、津軽味噌、仙台味噌、越後味噌、佐渡味噌、赤味噌、麦味噌、豆味噌、三州味噌、伊勢味噌等、これらに限ることなく、あらゆる味噌を用いることができる。
熟成酢味噌には、ほんだし等に代表される風味調味料を加えて用いてもよい。風味調味料とは、農林水産省告示の品質表示基準を満たすもので、アミノ酸等の調味料及び、かつおぶし、こんぶ、煮干魚類、貝柱、乾しいたけ等の粉末又は抽出濃縮物からなる風味原料に、砂糖類、香辛料を除く食塩等を加え、乾燥し、粉末状、顆粒状にしたもので、調理の際風味原料の香り及び味を付与するものを指す。
熟成酢味噌は、20〜30重量%添加する。0%では、味が引き締まらずインパクトがない。豆腐の味も、リンゴの味も生きてこない。30%以上では酢味噌の味が強すぎて、豆腐やリンゴの味があまり感じられなくなる。表3に酢味噌のバリエーションを示す。白味噌と酢の比率が、1:2では酢の味が強調され、1:1ではバランスが良く、2:1では味噌の味が強調されたドレッシングを製造することができた。
【0011】
植物油として、サラダ油、大豆油、綿実油、コーン油、ごま油、サフラワー油、菜種油、オリーブ油、米油、ブドウ油、落花生油、紅花油、パーム油などが挙げられる。
【0012】
植物油は、1.5〜10重量%、1.5〜5重量%が好ましい。0%では、水っぽく味が淡泊で、野菜へのからまりが悪い。1.5重量%では、やや水っぽさが残り味も淡泊さ残るが、野菜へのからまりは向上する。約3重量%になると野菜へのからまりが良くなり、味のバランスが良くなる。植物油の添加量は2.5重量%以上であれば、野菜へのからまりなど取扱い性は十分であり、5重量%以上の添加は、嗜好性を考慮して設計することとなる。本発明では、低油含量のドレッシングを提供するものであるので、10重量%までとする。
【0013】
コラーゲンは、1〜6重量%が好ましい。この程度の添加量ではドレッシングの流動性、保存性、乳化安定性に影響が無く使用することができる。食品に添加したコラーゲンの難点とされる呈味ついても改善がなされている。ドレッシングの1回使用量が20g程度であるので、0.2〜1.2g程度のコラーゲン摂取量になるように設定した。
コラーゲンは、動物の結合組織を構成する主要なタンパク質である。筋肉にはわずかしか含まれないので、通常のステーキなどの肉料理からは得られ難く、筋、皮付き素材、骨素材などを利用した食材から得られる。コラーゲンに着目した食品は多数提案されており、コラーゲンを含有する健康食品は数多く上市されている。コラーゲンは特有の獣臭のような呈味を有し、また、タンニン類等と反応して、沈殿、白濁を起こしやすいとされており、配合量を押さえるなど各種の工夫がなされている。
一般的な食事である和食系の食材として、コラーゲンが豊富に含まれているものは、煮魚、焼き魚、甘露煮、シジミ汁、ちゃんこ鍋、けんちん汁など、これらは身も骨も皮も頭もそのまま加熱して調理するものである。代表的なものは「煮こごり」がある。豚骨スープなどにも多量に含まれている。コラーゲンは一日に3〜10g程度が望ましい摂取量と考えられる。無脂肪、低カロリーなので安心であり、ゼラチン成分である漢方薬の阿膠(あきょう)は、3〜15g/日が適量とされている。本発明によるドレッシングは、特別な料理やコラーゲン摂取専用の健康食品などによらず、一般的な食事に普通に用いることができる。
本発明に使用するコラーゲンは、食品素材用コラーゲンを使用することができる。例えば、ゼライス(株)社から発売されている粉末状コラーゲンである製品名「CPAM−5」、「CPF−10U」等が挙げられる。前者は豚皮を原料とし、後者は魚鱗が原料である。
【0014】
その他の原材料としては、砂糖、醤油、食酢、塩、昆布だし、かつおだし、リンゴペクチン、ゴマピューレ、わさび、和からし、ナンプラー、胡麻油、粉チーズ等や、胡椒、唐辛子、山椒、七味唐辛子、コチジャン、おろし生姜、おろしニンニク、柚コショー、ガーリック、パプリカ、ローズマリー、タイム、オレガノ、コリアンダー、クミン、バジル、タラゴン、チコリ、ローレル、クローブ、ナツメグ、キャラウェイ、柚子、ジンジャー等の香辛料及び生ハーブ類等、ドレッシングに通常配合する原料を適宜用いることができる。その他、出し汁のかわりに、カシス、ブルーベリー、マンゴーなどのフルーツ果肉、フルーツ果汁を添加することもできる。
ゴマを添加する場合は、全量に対し1〜3%(荒くすったゴマと細かくすったゴマを半々)程度加えると、風味が向上する。豆乳を2〜4%程度加えるとまろやかさが増す。豆板醤風に仕上げる際は全量に対し2.0〜3.0%、コチジャン風の場合は4〜6%、おろし生姜の場合は2〜6%、おろしにんにくの場合は2〜5%、梅しその場合は2〜5%、柚子こしょう(柚子・青唐辛子等)の場合は1〜3%、わさびの場合は1〜3%程度入れるとそれぞれの風味が増し、美味しくなる。
また、香辛料を4〜5種組み合わせ、各0.01〜0.02%ずつ加えるとインパクトが増し、味が増強する。
【0015】
リンゴペクチンは、粘性の調整に用いる。0.2重量%以下では、経時的に分離が発生し、0.4重量%ではちょうど良い粘性が得られ、混合状態が良い。0.6重量%では、粘性が強すぎる。0.3〜0.5重量%程度が好ましい。
【0016】
ゴマピューレは、豆腐、酢味噌、リンゴと並んで量の多い成分として用いている。ごま風味を加えて、全体の調和を引き出すことができる。10〜20重量%添加する。半擂り状態では、ざらつき感が残る一方、ゴマの風味が弱い。ピューレの状態では、まったり、まろやかで舌の上でゴマの風味が広がる。
【0017】
酢は、酸度を調整する為に添加し、3〜25重量%添加する。酢味噌に含まれる酢の分量を加えると10〜30重量%程度になる。酢の種類は、食酢として用いられている各種が使用可能である。例えば、米酢、黒酢、リンゴ酢、ワインビネガー、醸造酢、柑橘類の果汁等である。
【0018】
その他、味の調整及び香辛料、香味量を少々添加して、利用者の嗜好性に合わせたドレッシングを製造する。粉チーズを用いた場合は、5〜8%添加するとチーズ風味を出すことができる。
本発明のドレッシングは、酒、出汁、芯抜き生リンゴをミキサーにかけて混合し、その後香辛料及び酢以外の材料を混合し、加熱殺菌後、任意のハーブや香辛料及び酢を添加して放冷、冷却後容器充填して完成する。出汁の量を加減することによっても、粘性を調整できる。
【0019】
本発明で得られたドレッシングは、豆腐、酢味噌、リンゴ、コラーゲンなどの配合量を調整して嗜好や使用対象物に合せることができ、また、油分の使用を少なくすることができる。各種ハーブや香辛料との相性もよいので、野菜に限らず、様々な種類の料理に使用できる。
本発明品は、健康志向の体に優しいドレッシングです。
本発明品は、日本人の嗜好に非常に良く合います。
本発明品は、和洋中華の様々な料理に合います。
本発明品は、コロッケや、鶏・魚のソテー、海鮮サラダ・和風サラダ・中華サラダなどにも良く合います。
本発明品は、骨や皮などの特殊な食材によらずに、野菜系中心の食事でもコラーゲンを摂取することができます。
【0020】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに限られるものではない。
表1に実施例1〜4の構成を示す。
【0021】
【表1】

【0022】
〔実施例1〕
<ハーブドレッシング>
表1の配合量に従い、以下のような工程でハーブドレッシングを作成した。
熟成酢味噌は、白味噌300g、米酢300g、酒50cc、みりん50cc、ほんだし6gを混合後、20℃に維持したまま48時間熟成させた。リンゴは、あらかじめ芯を取り除き、10等分程にカットした。出し汁に粉状コラーゲンを溶き、豆腐、カットしたリンゴ、熟成酢味噌、白だし醤油、サラダ油、塩、砂糖、リンゴペクチン、白ゴマピューレをミキサーにかけ、なめらかになるまで混合撹拌した後、100℃で8分間加熱殺菌した。食酢及び表記しないバジルを少々加えて、さらに100℃で2分間加熱殺菌し、冷却後、容器に充填した。
未開封状態で180日間放置(常温保存)しても、分離変性せず、安定したドレッシングが得られた。味の変化は小さかった。
【0023】
〔実施例2〕
<和風ドレッシング>
表1の配合量に従い、以下のような工程で和風ドレッシングを作成した。
熟成酢味噌は、白味噌300g、米酢300g、酒50cc、みりん50cc、ほんだし6gを混合後、20℃に維持したまま48時間熟成させた。リンゴは、あらかじめ芯を取り除き、10等分程にカットした。出し汁に粉状コラーゲンを溶き、豆腐、カットしたリンゴ、熟成酢味噌、白だし醤油、サラダ油、塩、砂糖、リンゴペクチン、白ゴマピューレをミキサーにかけ、なめらかになるまで混合撹拌した後、100℃で8分間加熱殺菌した。食酢及び表記しないわさびを少々加えて、さらに100℃で2分間加熱殺菌し、冷却後、容器に充填した。
未開封状態で180日間放置(常温保存)しても、分離変性せず、安定したドレッシングが得られた。味の変化は小さかった。なお、わさびを一味唐辛子に変えても同様であった。
【0024】
実施例3及び4は、実施例1を基準として、主に豆腐、酢味噌、酢、出汁、醤油、サラダ油、リンゴペクチンの組成を変更した例である。分離変性せず、性状が安定したドレッシングが得られた。
なお、表2に実施例1の組成を基準として、それぞれの変更した成分の変更範囲を示し、及びそれに応じた観察結果を示した。酢味噌は表3に示す配合比に示すものを用いた。
【0025】
本発明のドレッシングの配合例1〜4を表4に示す。
コラーゲンの添加量は、表1の組成では、3.2〜5%であり、表4に示す配合では1〜4.9%である。
表4に示す配合例では、出し汁の混合にあわせてコラーゲンを溶解する。
配合例1はバジル風味、配合例2はゴマ風味、配合例3は豆板醤風味に仕立ててある。配合例4はシンプルなドレッシングである。
【0026】
【表2】

【0027】
【表3】

【0028】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
豆腐10〜21重量%、リンゴ10〜22重量%、酢味噌20〜30重量%、コラーゲン1〜6%及び植物油1.5〜10重量%を含有することを特徴とするドレッシング。
【請求項2】
酢味噌が、味噌、酢、酒、みりんを混合後、熟成させたものであることを特徴とする請求項1記載のドレッシング。
【請求項3】
ゴマピューレを添加したことを特徴とする請求項1又は2記載のドレッシング。


【公開番号】特開2008−72935(P2008−72935A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−254840(P2006−254840)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(596116710)株式会社斎藤商事 (4)
【Fターム(参考)】