説明

豚用配合飼料

【課題】生産性を良好として、より効率よく飼料中のビタミンB1を豚肉に移行させ、豚肉中のビタミンB1を増加させることのできる豚用配合飼料及びビタミンB1の増加方法の提供。
【解決手段】ビタミンB1を10〜200ppm及びビタミンEを50〜500ppm含有することを特徴とする豚用配合飼料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豚用配合飼料、これを用いたビタミンB1の増加方法及びビタミンB1高含有豚肉に関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンB1は、糖質の代謝、神経機能正常化等に関与する物質であり、ヒトの健康維持にとって重要な栄養素である。
ビタミンB1は、米・小麦胚芽・大豆等の植物性食品や、牛肉・豚肉・鶏レバー・卵・魚等の動物性食品から摂取することができるが、他の食品と比較してとりわけ豚肉に豊富に含まれていることが広く知られている。例えば、豚のヒレ肉には牛肉と比較して約10倍ものビタミンB1が含まれ、豚のヒレ肉100g食することにより、成人の1日の必要量(1.0mg)を摂取することができる。
従って、更に豊富にビタミンB1を含有する豚肉を提供することができれば、ヒトの健康維持・増進に一層寄与することができ、また高ビタミンB1食品としてのイメージの強化により差別化豚肉としての経済的訴求効果も強まると考えられる。
【0003】
家畜・家禽類の栄養価値を高める試みは従来より行われており、例えば、特許文献1には、活性ビタミンB1誘導体含有ニンニクエキスを配合した飼料を豚に与えて飼育すると、肉質が改善され、且つ生肉中のビタミンB1含量が高くなることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−38071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術において、飼料中に添加したビタミンB1が豚肉に移行しビタミンB1含量が高まると考えられるが、飼料へのビタミンB1供給量を増加しても、豚肉への移行効率が悪く、豚肉中のビタミンB1含量増加にも限界があった。また、飼料中のビタミンB1濃度を単に高めると、食下量が低下し、却って生産性に悪影響を及ぼすことが判明した。
【0006】
従って、本発明の課題は、生産性を良好として、より効率よく飼料中のビタミンB1を豚肉に移行させ、豚肉中のビタミンB1を増加させることのできる豚用配合飼料及びビタミンB1の増加方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、当該課題を解決すべく種々研究を重ねた結果、豚に対しビタミンB1と共にビタミンEをそれぞれ特定の割合で給与すれば、豚肉へのビタミンB1移行効率が向上し、豚肉中のビタミンB1含量が増加することを見出した。さらに、この方法によれば、食下量が低下せず、生産性の悪化を招くことがないことを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、ビタミンB1を10〜200ppm及びビタミンEを50〜500ppm含有することを特徴とする豚用配合飼料により上記課題を解決したものである。
また、本発明は、豚に上記配合飼料を給与することを特徴とする豚肉中のビタミンB1の増加方法により上記課題を解決したものである。
また、本発明は、ビタミンB1を18〜45ppm及びビタミンEを1.5〜11ppm含有することを特徴とするビタミンB1高含有豚肉により上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、食下量低下による生産性の悪化を招くことなく、飼料中のビタミンB1を効率良く豚肉中に移行させることができ、ビタミンB1含量が増加したビタミンB1高含有豚肉を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明で用いられるビタミンB1には、チアミン、ビスチアミン、ビスイブチアミン、ビスベンチアミン、チアミンジスルフィド、オクトチアミン、フルスルチアミン、ベンフォチアミン、ビスチアミン、ジセチアミン等のチアミン誘導体、又はこれらの塩が含まれる。塩としては、薬学的に許容される塩であればよく、例えば硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩等の鉱酸塩;酢酸塩、プロピオン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩等の有機酸塩が挙げられ、具体的には、塩酸チアミン、硝酸チアミン、塩酸フルスルチアミン、塩酸ジセチアミン等を挙げることができる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明において、ビタミンB1としては、塩酸チアミン、硝酸チアミンが好ましい。
ビタミンB1は公知の化合物であり、その入手方法としては、市販品を用いてもよく、また公知の方法に基づき製造することも可能である。
【0011】
飼料中におけるビタミンB1の含有量は10〜200ppmである。飼料中の含有量が10ppm以上であればビタミンB1含量の増加したビタミンB1高含有豚肉が得られ、他方200ppm以下であれば、食下量の低下、生産性の悪化を防ぐことができる。ビタミンB1の含有量は、さらに20〜200ppm、特に40〜200ppmであるのが、同様の点から好ましい。
【0012】
本発明に用いられるビタミンEには、トコフェロール、トコトリエノール、又はこれらの誘導体が含まれる。また、ビタミンEには光学異性体が存在するが、いずれも本発明に含まれる。
具体的には、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、リノール酸dl−α−トコフェロール、リノレイン酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸dl−α−トコフェロール、アスコルビン酸dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロールカルシウム等を挙げることができる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明において、ビタミンEとしては、酢酸dl−α−トコフェロールが好ましい。
ビタミンEは公知の化合物であり、その入手方法としては、市販品を用いてもよく、また公知の方法に基づき製造することも可能である。
【0013】
飼料中におけるビタミンEの含有量は50〜500ppmである。飼料中の含有量が50ppm以上であれば、ビタミンB1の豚肉への移行を効率よく高めることができる。他方500ppmを超えると、ビタミンB1の移行効率が鈍化する傾向にあり、コストアップも招く。ビタミンEの含有量は、さらに50〜115ppmであるのが、同様の点、から好ましい。
【0014】
本発明の配合飼料には、上記成分の他、例えば、とうもろこし、マイロ、玄米、大麦、小麦、ライ麦等の穀類;ふすま等の糟糠類;大豆油粕、菜種油粕等の植物性油粕類;魚粉、肉骨粉等の動物性飼料;食塩、オリゴ糖類、ケイ酸、ビタミンB1及びビタミンE以外の各種ビタミン類、炭酸カルシウム、第3リン酸カルシウム等のミネラル類;アミノ酸類、有機酸類等を配合することができる。
【0015】
本発明の配合飼料は、ビタミンB1及びビタミンE、さらに必要により前記任意成分を含有させ、常法によって混合することにより調製される。その形態は、特に制限されず、例えば、ペレット状、フレーク状、マッシュ状、液体状等とすることができる。
【0016】
本発明において、配合飼料の給与量は、豚の年齢(月齢)、性別などによって異なるが、通常、平均2〜2.5kg/頭/日摂取させるのが好ましい。
【0017】
また、本発明の配合飼料は、豚に全飼育期間に渡って給与しても、飼育期間の一定期間のみ給与してもよいが、出荷前少なくとも50日間給与するのが好ましい。
本発明の配合飼料を給与する豚の種類は、特に限定されず、LWD種、WLD種、ハイブリッド種、バークシャー種等を挙げることができる。
【0018】
本発明により得られる豚肉は、飼料中のビタミンB1が効率良く移行される結果、ビタミンB1含量が増加する。豚肉中のビタミンB1含量は18ppm以上、好ましくは30ppm以上、より好ましくは30〜45ppmである。また、同時にビタミンEも増加し、豚肉中のビタミンE含量は、良質な肉質を維持する点から、1.5〜11ppm、より好ましくは3〜11ppmである。
【実施例】
【0019】
以下、本発明について実施例をあげて具体的に説明するが、本発明はこれらによって何等限定されるものではない。
【0020】
<ビタミンB1含有量の測定法>
配合飼料については、飼料分析基準収載分析法に従って、「高速液体クロマトグラフ法」により、豚ロース肉については五訂日本食品標準成分表分析マニュアルに従って、「高速液体クロマトグラフ法」により測定した。
【0021】
<ビタミンE含有量の測定法>
配合飼料については、飼料分析基準収載分析法に従って、「高速液体クロマトグラフ法」により、豚ロース肉については五訂日本食品標準成分表分析マニュアルに従って、「高速液体クロマトグラフ法」により測定した。
【0022】
下記の表1に示す組成よりなる基礎飼料を準備した。なお、基礎飼料中にはビタミンB1が4.6ppm、ビタミンEが15ppm含まれている。
【0023】
【表1】

【0024】
実施例1
供試豚(LWD種、雄、平均体重60kg)各区5頭を用い、表1に示す基礎飼料にビタミンB1(VB1)及びビタミンE(VE)を表2記載の各濃度になるように添加、混合して7〜10週間飼育した。飼料および水の給与は不断給与とした。
各供試豚について、屠殺直後のロース肉中のビタミンB1含有量を測定し、平均を求めた。その結果を示せば表2のとおりである。
【0025】
【表2】

【0026】
表2の結果から明らかなように、飼料中ビタミンB1含量を10ppm以上に高めると、ビタミンB1含量の高い豚肉が得られることが判った(試験区No.3〜6)。また、飼料中ビタミンB1濃度が同一であっても、50ppm以上のビタミンEを組み合わせて給与させることで、豚肉に効率良くビタミンB1が移行し、豚肉中のビタミンB1含量が増加することが判った(試験区No.3、4)。以上のことから、単に飼料中のビタミンB1含量を高めるだけでなく、適量のビタミンEと組み合わせることで、より効率良く、ビタミンB1高含有豚肉が得られることが確認された。
【0027】
実施例2
表1に示す基礎飼料に、ビタミンB1及びビタミンEを表3記載の各濃度になるように添加、混合して、実施例1と同様にして豚を飼育した。
各供試豚について、屠殺直後のロース肉中のビタミンB1含有量を測定し、平均を求めた。その結果を示せば表3のとおりである。
【0028】
【表3】

【0029】
表3の結果から明らかなように、飼料中ビタミンB1含量が40ppmと同一であっても、50ppm以上のビタミンEを組み合わせて給与することで、豚肉に効率良くビタミンB1が移行し、豚肉中のビタミンB1含量が増加することが判った(試験区No.8〜13)。一方、ビタミンE含量が500ppmを超えると、ビタミンB1移行効率の改善効率が鈍化することが確認された。
豚肉中ビタミンB1含量は、飼料中ビタミンB1含量が200ppmの飼料を給与した際にピークに達し、飼料中ビタミンB1濃度を200ppm以上に高めてもそれ以上には増えなかった(試験区14〜15)。
また、豚肉中のビタミンE含量は、飼料中ビタミンE含量が300ppmの飼料を給与した際にピークに達し、飼料中ビタミンE含量を300ppm以上に増やしても、豚肉中ビタミンE含量はそれ以上には増えなかった(試験区11〜13)。
以上のことから、単に飼料中ビタミンB1含量を高めるだけでなく、飼料中50〜500ppmの濃度範囲のビタミンEと組み合わせることで、より効率良く、ビタミンB1高含有豚肉が得られることが確認された。また、飼料中ビタミンB1含量およびビタミンE含量をそれぞれ一定量以上に高めても、豚肉中のビタミンB1含量は一定量以上に高まらないことが確認された。
【0030】
実施例3
表1に示す基礎飼料に、ビタミンB1及びビタミンEを表4記載の各濃度になるように添加、混合して、実施例1と同様にして豚を飼育した。飼育期間中、毎日食下量を計測し、平均を求めた。その結果を示せば表4のとおりである。
【0031】
【表4】

【0032】
表4の結果より、ビタミンB1の濃度が200ppmを超えると、食下量が低下し、発育不良に繋がるため、飼料中のビタミンB1含有量は200ppm以下とするのが好ましいことが判った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンB1を10〜200ppm及びビタミンEを50〜500ppm含有することを特徴とする豚用配合飼料。
【請求項2】
豚に請求項1記載の配合飼料を給与することを特徴とする豚肉中のビタミンB1の増加方法。
【請求項3】
ビタミンB1を18〜45ppm及びビタミンEを1.5〜11ppm含有することを特徴とするビタミンB1高含有豚肉。

【公開番号】特開2011−205988(P2011−205988A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77945(P2010−77945)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(399106505)日清丸紅飼料株式会社 (25)
【Fターム(参考)】